(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】コンロバーナ
(51)【国際特許分類】
F23D 14/06 20060101AFI20230719BHJP
【FI】
F23D14/06 D
(21)【出願番号】P 2020019995
(22)【出願日】2020-02-07
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】林 周作
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-202865(JP,A)
【文献】実開昭61-141519(JP,U)
【文献】特開2000-329315(JP,A)
【文献】特開平09-166307(JP,A)
【文献】特開平10-038223(JP,A)
【文献】特開2001-215005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合管の下流端から立ち上がるバーナボディ上に載置されるバーナヘッドを備えるコンロバーナであって、
バーナヘッドは、内周側の内筒部と、外周側の外筒部と、内筒部と外筒部との上端間に跨る上蓋部とを有するヘッド本体と、ヘッド本体内に配置された、板金製の環状板を上下方向の隙間を存して複数枚積層して成る積層体とで構成され、外筒部に、上下方向にのびる炎孔が周方向の間隔を存して複数設けられ、ヘッド本体内にバーナボディから供給される混合気が積層体の各環状板間の隙間を介して各炎孔から噴出するようにしたことを特徴とするコンロバーナ。
【請求項2】
前記各炎孔は、周方向幅が下方に向かって次第に狭くなるように形成されることを特徴とする請求項1記載のコンロバーナ。
【請求項3】
前記外筒部の上部に、周方向に隣接する前記炎孔間に位置させて、炎孔よりも上下方向長さの短い火移り炎孔が設けられることを特徴とする請求項1又は2記載のコンロバーナ。
【請求項4】
前記各環状板は、径方向外方に向けて上方に傾斜していることを特徴とする請求項1~3の何れか1項記載のコンロバーナ。
【請求項5】
前記積層体の下側に、積層体の配置部に向けて流れる混合気の周方向分布を均等化する分布部材が設けられることを特徴とする請求項1~4の何れか1項記載のコンロバーナ。
【請求項6】
前記各環状板の周方向複数箇所に、上下一方に突出する凸部が曲成され、上下に隣接する環状板の位相を変えて、各環状板の各凸部を当該環状板の上下一方に隣接する環状板の各凸部が曲成されていない部分に当接させることで、環状板間の隙間が確保されることを特徴とする請求項1~5の何れか1項記載のコンロバーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合管の下流端から立ち上がるバーナボディ上に載置されるバーナヘッドを備えるコンロバーナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のコンロバーナにおいて、バーナヘッドを、内周側の内筒部と、外周側の外筒部と、内筒部と外筒部との上端間に跨る上蓋部とを有するものとし、外筒部に、上下方向にのびる周方向幅の狭いスリット状の炎孔を周方向の間隔を存して複数設け、バーナヘッド内にバーナボディから供給される混合気がこれら炎孔から噴出するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。尚、このもので、炎孔をスリット状にするのは、炎孔の周方向幅を消炎距離以下として、弱火にしたときの逆火を防止するためである。
【0003】
ところで、熱効率を高めるには、コンロバーナの火力を強火にしても、調理容器の外側に火炎が大きく張り出さないように、バーナヘッドを小径化することが望まれる。また、混合管への空気の吸引量を十分に確保するには、炎孔総開口面積をある程度以上にして、混合気の噴出抵抗を小さくする必要がある。ここで、バーナヘッドを小径化すると、バーナヘッドの外筒部に形成可能な炎孔の数が減少する。そのため、炎孔総開口面積の減少を回避するには、各炎孔の周方向幅を広くすることが必要になる。然し、これでは、弱火での逆火を生じてしまう。従って、上記従来例のコンロバーナでは、バーナヘッドの小径化が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、各炎孔の周方向幅を広くしても逆火を生じないようにして、バーナヘッドの小径化を可能としたコンロバーナを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、混合管の下流端から立ち上がるバーナボディ上に載置されるバーナヘッドを備えるコンロバーナであって、バーナヘッドは、内周側の内筒部と、外周側の外筒部と、内筒部と外筒部との上端間に跨る上蓋部とを有するヘッド本体と、ヘッド本体内に配置された、板金製の環状板を上下方向の隙間を存して複数枚積層して成る積層体とで構成され、外筒部に、上下方向にのびる炎孔が周方向の間隔を存して複数設けられ、ヘッド本体内にバーナボディから供給される混合気が積層体の各環状板間の隙間を介して各炎孔から噴出するようにしたことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、各炎孔の周方向幅が広くても、各環状板間の隙間を消炎距離以下にすることで、弱火での逆火を防止することができる。そして、各炎孔の周方向幅を広くすることができるため、炎孔総開口面積を左程減少させずにバーナヘッドを小径化することが可能になり、熱効率を向上させることができる。
【0008】
また、本発明において、各炎孔は、周方向幅が下方に向かって次第に狭くなるように形成されることが望ましい。これによれば、バーナヘッドの外側に沿って二次空気が下方から炎孔上部まで確実に供給されるようになる。その結果、調理容器の加熱に効率的に寄与する炎孔上部での燃焼性が良好になると共に、炎孔上部が幅広になってそこでの燃焼発熱量が大きくなり、熱効率が一層向上する。
【0009】
また、本発明においては、外筒部の上部に、周方向に隣接する炎孔間に位置させて、炎孔よりも上下方向長さの短い火移り炎孔が設けられることが望ましい。ここで、火移り炎孔を、外筒部の下部に設けることも可能であるが、上記の如く上部に設ければ、火移り炎孔の火炎も調理容器の加熱に寄与し、熱効率の向上に役立つ。
【0010】
また、本発明において、各環状板は、径方向外方に向けて上方に傾斜していることが望ましい。これによれば、各環状板間の隙間を介して混合気が炎孔から斜め上向きに噴出する。そのため、火炎の外側への広がりが抑えられ、熱効率が更に向上する。
【0011】
また、本発明においては、積層体の下側に、積層体の配置部に向けて流れる混合気の周方向分布を均等化する分布部材が設けられることが望ましい。これによれば、外筒部の周方向何れの箇所の炎孔にも均等に火炎が形成され、調理容器の加熱の均等性を確保できる。
【0012】
ところで、環状板間の隙間を確保するために、環状板間にスペーサを介設することも可能であるが、これでは、部品点数が増してしまう。そのため、本発明においては、各環状板の周方向複数箇所に、上下一方に突出する凸部を曲成し、上下に隣接する環状板の位相を変えて、各環状板の各凸部を当該環状板の上下一方に隣接する環状板の各凸部が曲成されていない部分に当接させることで、環状板間の隙間を確保することが望ましい。これによれば、スペーサが不要で部品点数が増加せず、コストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態のコンロバーナを備えるコンロの要部の斜視図。
【
図3】
図2のIII-III線で切断した切断平面図。
【
図4】実施形態のコンロバーナに設けられる積層体の構成要素である環状板の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1、
図2を参照して、1は、コンロの天板であり、天板1に開設したバーナ用開口11に臨ませて本発明の実施形態のコンロバーナ2が設置されている。尚、天板1上には、バーナ用開口11を囲うようにして、複数の五徳爪12aを有する五徳12が載置されると共に、バーナ用開口11とコンロバーナ2との間の隙間を覆うカバーリング13が載置されている。
【0015】
コンロバーナ2は、混合管3と、混合管3の下流端から立ち上がってバーナ用開口11に挿通されるバーナボディ4と、バーナボディ4上に載置されるバーナヘッド5とを備えている。混合管3の上流端の流入口31に臨む図示省略したノズルから噴射される燃料ガスと、燃料ガスの噴射に伴い流入口31から吸引される一次空気とが混合管3内で混合されて混合気が生成される。
【0016】
バーナボディ4は、内外2重の筒状であって、内周側の内筒部41と、外周側の外筒部42とを有している。そして、混合管3からの混合気がバーナボディ4の内筒部41と外筒部42との間の空間に流入する。尚、内筒部41は、混合管3に一体成形された板金製の下半部41aと、その上端に結合された板金製の上半部41bとで構成され、また、外筒部42も、混合管3に一体成形された板金製の下半部42aと、その上端に結合された板金製の上半部42bとで構成されている。
【0017】
バーナヘッド5は、内周側の内筒部61と、外周側の外筒部62と、内筒部61と外筒部62の上端間に跨る上蓋部63とを有するヘッド本体6と、ヘッド本体6内に配置された、板金製の環状板71を上下方向の隙間を存して複数枚積層して成る積層体7とで構成されている。ヘッド本体6の外筒部62には、上下方向にのびる炎孔64が周方向の間隔を存して複数設けられている。そして、ヘッド本体6内にバーナボディ4から供給される混合気が積層体7の各環状板71,71間の隙間を介して各炎孔64から噴出するようにしている。また、外筒部62の上部には、周方向に隣接する炎孔64,64間に位置させて、炎孔64よりも上下方向長さの短い火移り炎孔65が設けられている。尚、外筒部62の各五徳爪12aと同一方位に位置する周方向部分では、火炎が五徳爪12aに触れないよう炎孔64,64間の間隔を広くし、炎孔64,64間に2個の火移り炎孔65,65を並設している。
【0018】
ヘッド本体6の内筒部61は、板金製であり、その下部がバーナボディ4の内筒部41の上半部41bに内嵌している。また、ヘッド本体6の外筒部62は、バーナボディ4の外筒部42の上半部42bに内嵌する板金製の下半部62aと、下半部62aの上端部に外嵌させた状態で固定される板金製の上半部62bとで構成されている。炎孔64及び火移り炎孔65は、外筒部62の上半部62bに形成されている。更に、この上半部62bの上端には、上蓋部63が一体成形され、また、上半部62bの下端には、カバーリング13の内周寄り部分を上方から覆って、煮こぼれ汁がバーナ用開口11内に落下することを防止するスカート部62cが一体成形されている。
【0019】
外筒部62の下半部62aの上端には、内曲げフランジから成る環状の分布部材66が一体成形されている。そして、外筒部62の上半部62bと内筒部61との間に、積層体7を挿入し、この積層体7を分布部材66により下方から支えた状態で、外筒部62の下半部62aと上半部62bとを結合して、バーナヘッド5を組み立てるようにしている。尚、積層体7と上蓋部63との間には、積層体7を押さえる押え筒67が介設されている。
【0020】
分布部材66には、
図3に示す如く、円弧状の分布孔66aが周方向に等間隔で6個形成されている。そして、混合管3に最も近い♯1の分布孔66aの径方向幅を、分布部材66の上側の積層体7の配置部に向けて混合気が混合管3に近い側でより多く流れること抑制するために、最も狭くし、♯1の分布孔66aの両隣りの♯2、♯3の分布孔66aの径方向幅を♯1の分布孔66aよりも広くし、残りの♯4、♯5、♯6の分布孔66aの径方向幅を♯2、♯3の分布孔66aよりも広くしている。これにより、積層体7の配置部に向けて流れる混合気の周方向分布を均等化することができる。
【0021】
図4を参照して、積層体7の構成要素となる各環状板71は、ヘッド本体6の外筒部62に内嵌する外側環状部71aと、ヘッド本体6の内筒部61に外嵌する内側環状部71bと、外側と内側の両環状部71a,71bを連結する周方向複数箇所のブリッジ部71cとを有している。外側環状部71aの周方向複数箇所には、下方に突出する凸部71dが曲成されている。そして、上下に隣接する環状板71,71の位相を変えて、各環状板71の各凸部71dを当該環状板71の下方に隣接する環状板71の凸部71dが形成されていない部分に当接させることで、環状板71,71間の隙間が確保されるようにしている。具体的には、外側環状部71aの外周縁部に、周方向に120°間隔で3個の凸部71dを曲成し、上下に隣接する環状板71,71の位相を60°変えている。
【0022】
また、各環状板71、具体的には、各環状板71の外側環状部71aは、径方向外方に向けて上方に傾斜している。尚、本実施形態では、各環状板71の内側環状部71bの内周に下方への曲げ縁部71eを形成している。そして、各環状板71の曲げ縁部71eを当該環状板71の下方に隣接する環状板71の内側環状部71bの内周縁に当接させて、環状板71,71間の隙間が内周側でも確保されるようにしている。
【0023】
以上の構成によれば、混合気が各環状板71,71間の隙間を介して各炎孔64から噴出するため、各炎孔64の周方向幅が広くても、各環状板71,71間の隙間を1mm程度と消炎距離以下にすることで、弱火での逆火を防止することができる。そして、各炎孔64の周方向幅を広くすることができるため、炎孔総開口面積を左程減少させずにバーナヘッド5を小径化することが可能になり、熱効率を向上させることができる。
【0024】
また、本実施形態において、各炎孔64は、
図1に示す如く、周方向幅が下方に向かって次第に狭くなるように形成されている。これによれば、バーナヘッド5の外側に沿って下方から供給される二次空気の炎孔64の下部における消費量が減少して、二次空気が炎孔64の上部まで確実に供給されるようになる。その結果、五徳12に載置する調理容器の加熱に効率的に寄与する炎孔64の上部での燃焼性が良好になると共に、炎孔64の上部が幅広になってそこでの燃焼発熱量が大きくなり、熱効率が一層向上する。
【0025】
更に、本実施形態では、各環状板71を径方向外方に向けて上方に傾斜させているため、各環状板71,71間の隙間を介して混合気が炎孔64から斜め上向きに噴出する。その結果、火炎の外側への広がりが抑えられ、熱効率が更に向上する。
【0026】
また、本実施形態では、ヘッド本体6の外筒部62の上部に火移り炎孔65が設けられているため、外筒部62の下部に火移り炎孔を設けるものと異なり、火移り炎孔65の火炎も調理容器の加熱に寄与し、熱効率の向上に役立つ。
【0027】
更に、本実施形態では、積層体7の下側に、積層体7の配置部に向けて流れる混合気の周方向分布を均等化する分布部材66を設けているため、ヘッド本体6の外筒部62の周方向何れの箇所の炎孔64にも均等に火炎が形成される。その結果、調理容器の加熱の均等性も確保できる。
【0028】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、環状板71,71間の隙間を確保するために、環状板71,71間にスペーサを介設することも可能である。但し、これでは、部品点数が増してしまう。これに対し、上記実施形態の如く、上下に隣接する環状板71,71の位相を変えて、各環状板71に曲成した各凸部71dを隣接する環状板71の各凸部71dが曲成されていない部分に当接させることで、環状板71,71間の隙間を確保すれば、スペーサが不要で部品点数が増加せず、コストダウンを図ることができて有利である。
【0029】
また、上記実施形態では、各環状板71に曲成する凸部71dの突出方向を下方にしているが、この突出方向を上方にしてもよい。この場合は、上下に隣接する環状板71,71の位相を変えて、各環状板71の各凸部71dを当該環状板71の上方に隣接する環状板71の各凸部71dが曲成されていない部分に当接させればよい。更に、上記実施形態では、各環状板71を、外側環状部71aと内側環状部71bとブリッジ部71cとを有するものとしているが、内側環状部71b及びブリッジ部71cの無いものとすることも可能である。
【符号の説明】
【0030】
2…コンロバーナ、3…混合管、4…バーナボディ、5…バーナヘッド、6…ヘッド本体、61…内筒部、62…外筒部、63…上蓋部、64…炎孔、65…火移り炎孔、66…分布部材、7…積層体、71…環状板、71d…凸部。