(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】水系のエマルジョン型粘着剤組成物及び粘着テープ
(51)【国際特許分類】
C09J 107/02 20060101AFI20230719BHJP
C09J 109/08 20060101ALI20230719BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20230719BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20230719BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20230719BHJP
C09J 7/24 20180101ALI20230719BHJP
【FI】
C09J107/02
C09J109/08
C09J11/06
C09J11/08
C09J7/38
C09J7/24
(21)【出願番号】P 2020024950
(22)【出願日】2020-02-18
【審査請求日】2022-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】澤村 翔太
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2020/026697(JP,A1)
【文献】特開2011-084615(JP,A)
【文献】特開2018-178008(JP,A)
【文献】国際公開第2019/230067(WO,A1)
【文献】特開2000-053939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴム5~40質量部及び合成ゴム60~95質量部を含むゴム成分100質量部と、粘着付与樹脂70~130質量部と、界面活性剤0.1~5質量部と、架橋剤5~30質量部とを含む、水系のエマルジョン型粘着剤組成物であって、
前記水系のエマルジョン型粘着剤組成物のゲル分率が30~50%である、水系のエマルジョン型粘着剤組成物。
【請求項2】
前記架橋剤が、硫黄系架橋剤である、請求項1に記載の水系のエマルジョン型粘着剤組成物。
【請求項3】
前記天然ゴムのゲル分率が、70~100%である、請求項1または2に記載の水系のエマルジョン型粘着剤組成物。
【請求項4】
前記合成ゴムが、スチレン-ブタジエンゴムを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の水系のエマルジョン型粘着剤組成物。
【請求項5】
前記スチレン-ブタジエンゴムのスチレン比率が20~50質量%である、請求項4に記載の水系のエマルジョン型粘着剤組成物。
【請求項6】
前記スチレン-ブタジエンゴムのゲル分率が0~20%である、請求項4または5に記載の水系のエマルジョン型粘着剤組成物。
【請求項7】
前記粘着付与樹脂が、石油樹脂、ロジン樹脂、及びテルペン樹脂からなる群より選択される少なくとも1つの樹脂であり、数平均分子量が300~3000である、請求項1から6のいずれか一項に記載の水系のエマルジョン型粘着剤組成物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の水系のエマルジョン型粘着剤組成物より得られる粘着剤層を、基材の少なくとも一方の面に備える、粘着テープ。
【請求項9】
前記基材が、塩化ビニル系樹脂を含む樹脂で構成されている、請求項8に記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系のエマルジョン型粘着剤組成物及び粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の配線には、電線類を粘着テープ等で所定の形状に束ねたものが用いられている。このような電線類の結束用の粘着テープには、長期間電線類を結束できる高い粘着力が求められる。
粘着テープの粘着力を向上させる方法として、粘着付与樹脂を配合した粘着剤組成物を用いる方法が知られている。このような粘着剤組成物は、粘着剤と粘着付与樹脂とを、有機溶剤中で相溶化させることが多いため、揮発性有機化合物(VOC)が多量に発生する。そのため、環境への負荷が大きいという問題がある。
【0003】
ところで、エンジン周り等、高温になりやすい環境下に配置される電線類の粘着テープには、上記の粘着力の他、高い耐熱性能も要求される。耐熱性の低い粘着テープを用いた場合、電線に巻き付けた粘着テープの端部が剥がれるという問題が生じる。粘着テープの耐熱性を向上させるために、架橋処理を施した粘着剤組成物(例えば、特許文献1等)を用いる方法が知られている。しかしながら、前記架橋処理は、一般にトルエン等の有機溶剤中で行われるため、やはりVOCによる環境負荷の問題がある。
このようなVOCによる問題を生じにくい粘着剤組成物として、粘着剤成分を水系バインダー中に分散させた水系エマルジョン型の粘着剤組成物も知られている。しかしながら、このような粘着剤組成物は一般に耐熱性が低く、前述の高温になりやすい環境下で使用されるワイヤーハーネス用粘着テープには、適用が難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、高い粘着力と耐熱性能とを有し、環境への負荷が小さい水系のエマルジョン型粘着剤組成物及び前記水系のエマルジョン型粘着剤組成物を用いた粘着テープの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に対して、本願発明者らは鋭意検討した結果、特定の粘着剤成分と、特定のゲル分率とを有する水系のエマルジョン型粘着剤組成物を用いることで、水系であっても、高い粘着力と高い耐熱性能とを発現できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の態様を有する。
[1]天然ゴム5~40質量部及び合成ゴム60~95質量部を含むゴム成分100質量部と、粘着付与樹脂70~130質量部と、界面活性剤0.1~5質量部と、架橋剤5~30質量部とを含む、水系のエマルジョン型粘着剤組成物であって、前記水系のエマルジョン型粘着剤組成物のゲル分率が30~50%である、水系のエマルジョン型粘着剤組成物。
[2]前記架橋剤が、硫黄系架橋剤である、[1]に記載の水系のエマルジョン型粘着剤組成物。
[3]前記天然ゴムのゲル分率が、70~100%である[1]または[2]に記載の水系のエマルジョン型粘着剤組成物。
[4]前記合成ゴムが、スチレン-ブタジエンゴムを含む、[1]から[3]のいずれか一項に記載の水系のエマルジョン型粘着剤組成物。
[5]前記スチレン-ブタジエンゴムのスチレン比率が20~50質量%である[4]に記載の水系のエマルジョン型粘着剤組成物。
[6]前記スチレン-ブタジエンゴムのゲル分率が0~20%である、[4]または[5]に記載の水系のエマルジョン型粘着剤組成物。
[7]前記粘着付与樹脂が、石油樹脂、ロジン樹脂、及びテルペン樹脂からなる群より選択される少なくとも1つの樹脂であり、数平均分子量が300~3000である、[1]から[6]のいずれか一項に記載の水系のエマルジョン型粘着剤組成物。
[8][1]から[7]のいずれか一項に記載の水系のエマルジョン型粘着剤組成物より得られる粘着剤層を、基材の少なくとも一方の面に備える、粘着テープ。
[9]前記基材が、塩化ビニル系樹脂を含む樹脂で構成されている、[8]に記載の粘着テープ。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高い粘着力と耐熱性能とを有し、環境への負荷が小さい水系のエマルジョン型粘着剤組成物及び前記水系のエマルジョン型粘着剤組成物を用いた粘着テープを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例及び比較例の耐熱試験で用いた試験片の説明図である。
【
図2】実施例及び比較例の耐熱試験の測定方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の態様に限定されるものではない。
[水系のエマルジョン型粘着剤組成物]
本発明の1つの態様は、天然ゴム5~40質量部及び合成ゴム60~95質量部を含むゴム成分100質量部と、粘着付与樹脂70~130質量部と、界面活性剤0.1~5質量部と、架橋剤5~30質量部とを含む、水系のエマルジョン型粘着剤組成物であって、前記水系のエマルジョン型粘着剤組成物のゲル分率が30~50%である、水系のエマルジョン型粘着剤組成物である。なお、本明細書において「水系のエマルジョン型」とは、水を含む分散媒を用いたエマルジョンのことを意味する。
【0010】
本発明の粘着剤組成物は、水系のエマルジョン型粘着剤組成物(以下、単に「粘着剤組成物」と記載することもある)である。本発明の粘着剤組成物は、揮発性有機化合物(VOC)を用いない。そのため、本発明の粘着剤組成物より得られる粘着テープは、環境への負荷が小さい。
また、本発明の粘着剤組成物は、そのゲル分率が30~50%の範囲に調整されている。これにより、水系のエマルジョン型粘着剤組成物でありながら、高い耐熱性を発現することができる。粘着剤組成物のゲル分率は、40~50%であることがより好ましい。
粘着剤組成物のゲル分率は、トルエン不溶分測定によって求めた値のことを指す。
また、本発明の1つの態様において、粘着剤組成物の固形分は、40~60%であることが好ましい。固形分が40~60%であれば、塗工性が良好となる。
以下、粘着剤組成物の各成分について説明する。
なお、本明細書において、各成分の配合量は特に断りのない限り、固形分換算での値である。
【0011】
<ゴム成分>
本発明の粘着剤組成物はゴム成分を含む。ゴム成分は粘着剤成分であり、天然ゴムと合成ゴムとを含む。本発明の1つの態様において、ゴム成分は、天然ゴムと合成ゴムとからなることが好ましい。
天然ゴムとしては、本発明の効果を有する限り特に限定されないが、例えば、固形分が60質量%の天然ゴムエマルジョン、固形分が60質量%の架橋天然ゴムエマルジョン等を用いることができる。このような天然ゴムとしては、市販されているものを用いてもよく、例えば、(株)レヂテックス製の架橋天然ゴムエマルジョン(商品名「SS58」)、(株)レヂテックス製の天然ゴムエマルジョン(商品名「HA LATEX」)等を用いることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ゴム成分100質量部中の天然ゴムの配合量は、5~40質量部であり、20~40質量部がより好ましい。天然ゴムの配合量が5~40質量部であれば、高い保持力が得られやすくなる。
また、天然ゴムのゲル分率は、70~100%であることが好ましく、70~95%であることがより好ましく、85~95%であることがさらに好ましい。天然ゴムのゲル分率が前記範囲内であれば、高い保持力が得られやすくなる。なお、天然ゴムのゲル分率は、後述のトルエン不溶分測定によって求めた値のことを指す。
【0012】
合成ゴムとしては、例えば、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル-ブタジエンゴム、イソブチレンゴム(ブチルゴム)、クロロプレンゴム、アクリルゴム等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。このうち、スチレン-ブタジエンゴムが、粘着力の観点から好ましい。また、スチレン比率が20~50質量%のスチレン-ブタジエンゴムがより好ましい。
また、これら合成ゴムはエマルジョンであってもよい。合成ゴムのエマルジョンを用いる場合、固形分は40~60%が好ましい。
ゴム成分100質量部中の合成ゴムの配合量は、60~95質量部であり、80~95質量部がより好ましい。合成ゴムの配合量が60~95質量部であれば、高い粘着力が得られる。
本発明の1つの態様において、合成ゴムのゲル分率は、0~20%が好ましく、0.5~10%がより好ましく、0.5~5%がさらに好ましい。合成ゴムのゲル分率が前記範囲内であれば、架橋されやすく、高い保持力が得られやすくなる。なお、合成ゴムのゲル分率は、前述の天然ゴムのゲル分率と同様の方法で求めた値のことを指す。
本発明の1つの態様においては、前記合成ゴムとしてスチレン-ブタジエンゴムを用いることが好ましく、スチレン比率が20~50質量%のスチレン-ブタジエンゴムを用いることが特に好ましい。
【0013】
<粘着付与樹脂>
本発明の粘着剤組成物は、粘着付与樹脂を含む。粘着付与樹脂は、本発明の粘着剤組成物の粘着力を向上させる目的で配合される。
粘着付与樹脂としては、例えば、テルペン樹脂、ロジン樹脂、水添ロジン樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン樹脂、脂肪族及び脂環族等の石油樹脂、水添した脂肪族及び脂環族などの石油樹脂、テルペン-フェノール樹脂、キシレン樹脂、その他の脂肪族炭化水素樹脂や芳香族炭化水素樹脂等が挙げられる。このうち、粘着剤組成物の粘着力がより向上しやすい観点から、石油樹脂、ロジン樹脂、及びテルペン樹脂からなる群より選択される少なくとも1つの樹脂であることが好ましい。
また、本発明の1つの態様において、粘着付与樹脂の数平均分子量が300~3000であることが好ましい。数平均分子量が前記範囲内であれば、高い粘着力が得られやすくなる。また、数平均分子量が300~3000の石油樹脂、ロジン樹脂、及びテルペン樹脂からなる群より選択される少なくとも1つの樹脂であることが特に好ましい。
【0014】
粘着剤組成物中の粘着付与剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、70~130質量部であり、100~130質量部であることがより好ましい。粘着付与剤の配合量が70~130質量部であれば、高い粘着力が得られる。
【0015】
<界面活性剤>
本発明の粘着剤組成物は界面活性剤を含む。界面活性剤は、エマルジョンの安定化及び良好な塗工性付与の目的で配合される。
界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。但しアニオン性界面活性剤とカチオン系界面活性剤を併用することはお互いの効果を相殺するため好ましくない。本発明においては、水への分散性と乳化安定性、乾燥時の塗布不良(ハジキ等)が少ないことから、アニオン性界面活性剤であることが好ましい。アニオン性界面活性剤としては、例えば、スルホン酸系界面活性剤、硫酸エステル系界面活性剤、カルボン酸系界面活性剤等が挙げられる。このうち、乳化安定性の観点から、スルホン酸系界面活性剤がより好ましい。
粘着剤組成物中の界面活性剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1~5質量部であり、3~5質量部がより好ましい。また、界面活性剤の配合量は、水分100質量部に対し、0.1~5質量部であり、1~5質量部がより好ましい。界面活性剤の配合量がゴム成分100質量部に対して0.1~5質量部であれば、粘着力及び耐熱性能を損ねずに高い乳化安定性が得られる。また、水分100質量部に対して0.1~5質量部であれば、エマルジョンの高い貯蔵安定性と良好な塗工性が得られやすい。
【0016】
<架橋剤>
本発明の粘着剤組成物は架橋剤を含む。架橋剤を含むことで、粘着剤組成物のゲル分率を30~50%の範囲に制御することができる。その結果、本発明の粘着剤組成物より得られる粘着テープの耐熱性が向上する。また、粘着力も向上する。
架橋剤としては、例えば、硫黄系化合物、有機過酸化物系化合物、イソシアネート系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤等が挙げられる。
硫黄系化合物としては、例えば、硫黄、塩化硫黄、二塩化硫黄、高分子多硫化物、モルホリンジスルフィド(4,4’-ジチオジモルホリン)、アルキルフェノ-ルジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジメチルジチオカルバミン酸セレン等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機過酸化物系化合物としては、例えば、ジアルキルパーオキサイド類(ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルクミルパーオキサイド等)、ジアシルパーオキサイド類(ジベンゾイルパーオキサイド等)、ケトンパーオキサイド類(メチルエチルケトンパーオキサイド等)、アルキルパーエステル類(t-ヘキシルペルオキシラウレート等)、パーオキシカーボネート類(t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等)が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、イソシアネート基を有する化合物であり、コアシェル構造等による親水性の外層によりイソシアネートを保護して保存安定性を高めた水分散性イソシアネートや、熱解離性を有するブロック剤でイソシアネートを保護したブロックイソシアネート等が挙げられる。水分散性イソシアネートの例には、三井化学(株)製のタケネートWDシリーズや、旭化成(株)製のデュラネートシリーズ、DIC(株)製のバーノックシリーズなどが含まれる。ブロックイソシアネートの例には、Baxenden社製のAqua BI200、Aqua BI220などが含まれる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
カルボジイミド系架橋剤としては、カルボジイミド基を有する化合物であり、例えば、ポリカルボジイミド、ジシクロヘキシルカルポジイミド、ジイソプロピルカルポジイミド等が含まれる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これら架橋剤のうち、保持力の観点から、硫黄系化合物(硫黄系架橋剤)が好ましく、、テトラチウラムジスルフィドがより好ましい。
粘着剤組成物中の架橋剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、5~30質量部であり、15~30質量部がより好ましい。架橋剤の配合量が5~30質量部であれば、粘着剤組成物のゲル分率を30~50%に調整でき、本発明の粘着剤組成物より得られる粘着テープの耐熱性能が向上する。また、粘着力も向上する。
【0017】
<その他添加剤>
本発明の粘着剤組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、その他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、例えば、増粘剤、軟化剤、表面潤滑剤、レベリング剤、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、シランカップリンング剤、滑剤、無機又は有機の充填剤、金属粉、顔料等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
粘着剤組成物がその他の添加剤を含む場合、その合計量は、ゴム成分100質量部に対して、0.2~10質量部であることが好ましい。
【0018】
増粘剤としては、例えば、水溶性高分子増粘剤、会合型増粘剤等が挙げられる。水溶性高分子増粘剤を選択する場合、その配合量は、水分100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましい。会合型増粘剤を選択する場合、その配合量は、ゴム成分100質量部に対して、0.2~3質量部が好ましい。このうち、粘着剤塗工液の粘度の安定性の観点から、水溶性高分子増粘剤を含むことが好ましい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
本発明の粘着剤組成物は、その粘度が3000~9000mPa・s/20℃であることが好ましい。前記範囲の粘度を有することにより、粘着テープを作成する際の塗工性が良好となりやすい。また、前記粘度は、B型粘度計によって求めた値のことを指す。
なお、本発明の粘着剤組成物は分散媒中に各成分が分散したエマルジョン型である。分散媒には水が含まれる。また、水のみを分散媒として用いることがより好ましい。
【0020】
[粘着剤組成物の製造方法]
本発明の粘着剤組成物は、前述のゴム成分、粘着付与樹脂、界面活性剤、架橋剤、及び必要に応じてその他添加剤を適宜選択して分散媒中に添加した後、混合する方法にて製造することができる。また、必要に応じて、適宜水を追加して、固形分及び粘度を調整してもよい。
【0021】
[粘着テープ]
本発明のその他の態様は、前記粘着剤組成物から得られる粘着剤層を、基材の少なくとも一方の面に備える、粘着テープである。本発明の粘着テープは、基材と、前記粘着剤組成物を前記基材の一方の面に塗工・乾燥することによって得られる粘着剤層とを備えるものである。本発明の粘着剤組成物から得られる粘着剤層を備える本発明の粘着テープは、高い粘着力及び耐熱性能を有し、環境への負荷が小さい。
以下、本発明の粘着テープについて詳細に説明する。
【0022】
<基材>
本発明の粘着テープは、基材を備える。基材としては、各種の材料を各種用途に応じて適宜選択して用いることができる。例えば低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリフェニルスルフィド、アラミド(紙)、ガラス、ガラスクロス、フッ素樹脂、塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、シリコーン樹脂、金属(箔)、紙等があげられる。
このうち、電線類等の結束用の粘着テープとして使用する場合、基材としては、塩化ビニル系樹脂が好ましい。
塩化ビニル系樹脂としては、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-エチレン共重合体、塩化ビニル-プロピレン共重合体等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、柔軟性、伸張性、及び成型加工性に優れ、かつ汎用的で安価に使用可能であることから、ポリ塩化ビニルが好ましい。
【0023】
ポリ塩化ビニルの重合度は、本発明の効果を有する限り特に限定されないが、良好な加工性を得る観点から、平均重合度が500~4000のものが好ましく、800~3000のものがより好ましく、1000~2000のものが特に好ましい。
【0024】
本発明の1つの態様において、基材は、可塑剤を含んでいてもよい。
可塑剤としては、フタル酸系可塑剤、イソフタル酸系可塑剤、テレフタル酸系可塑剤、アジピン酸系可塑剤及びそれらのポリエステル系可塑剤、リン酸系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤、エポキシ系可塑剤等を使用することができる。
さらに具体的な例として、例えば、フタル酸ジイソニル(DINP)、フタル酸ジヘプチル(DHP)、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DOP)、フタル酸ジ-n-オクチル(n-DOP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、イソフタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DOIP)、テレフタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DOTP)、ベンジルブチルフタレート(BBP)、トリメリット酸トリ-2-エチルヘキシル(TOTM)、アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル(DOA)、トリクレジルホスフェート(TCP)、ベンジルオクチルアジペート(BOA)、アジピン酸-プロピレングリコール系ポリエステル、アジピン酸-ブチレングリコール系ポリエステル、フタル酸-プロピレングリコール系ポリエステル、ジフェニルクレジルホスフェート(DPCP)、アジピン酸ジイソデシル、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、塩素化パラフィン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、耐熱性付与効果の高い、トリメリット酸系可塑剤が好ましく、TOTMがより好ましい。
【0025】
基材が可塑剤を含む場合、その配合量は、基材を構成する樹脂、例えば、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して20~100質量部が好ましく、30~80質量部がより好ましく、40~60質量部がさらに好ましい。可塑剤の含有量が20質量部以上であれば、粘着テープの伸張性が向上しやすくなり、電線や配線等を覆った後に被保護物を屈曲させやすくなる。可塑剤の含有量が100質量部以下であれば、粘着テープの耐摩耗性が低下しにくい。また、耐熱性能が高くなりやすい。
【0026】
基材には、必要に応じて本発明の効果を阻害しない範囲で、無機充填剤、改質剤、及びその他添加剤等を配合することができる。その他添加剤としては、例えば、着色剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤等が挙げられる。
【0027】
前記無機充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、トリフェニルホスフィート、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸アミド、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化モリブデン、リン酸グアニジン、ハイドロタルサイト、スネークタイト、硼酸亜鉛、無水硼酸亜鉛、メタ硼酸亜鉛、メタ硼酸バリウム、酸化アンチモン、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、赤燐、タルク、アルミナ、シリカ、ベーマイト、ベントナイト、珪酸ソーダ、珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カーボンブラック等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記の無機充填剤のうち、タルク、アルミナ、シリカ、珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムが好ましく、より好ましくは経済性に優れた炭酸カルシウムである。
前記無機充填剤は、天然物を粉砕して得られたものでもよく、水溶液等にしたものを中和させ析出して得られたものであっても良い。また、表面処理剤等で官能基を導入したものであってもよい。表面処理剤としては、例えば、脂肪酸、ロジン酸、リグニン酸、4級アンモニウム塩等が使用できる。
【0028】
前記改質剤としては、例えば、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-エチレン共重合体、塩化ビニル-プロピレン共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリ塩化ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート-ブチルアクリレート共重合体、熱可塑性ポリウレタン、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
無機充填剤、改質剤、及びその他添加剤の含有量は、特に限定されず、本発明の効果を阻害しない範囲で配合することができる。例えば、基材に用いられる塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、0質量部を超え50質量部以下を配合することができる。
【0030】
基材の成形方法としては、例えば、塩化ビニル系樹脂、及び必要に応じて、可塑剤、無機充填剤、熱安定剤、光吸収剤、顔料、その他添加剤等を混合した組成物を溶融混練したのち、所定の厚みに成形する方法が挙げられる。溶融混練方法は、本発明の効果を有する限り特に限定されないが、例えば、二軸押出機、連続式及びバッチ式のニーダー、ロール、バンバリーミキサー等の加熱装置を備えた各種混合機、混練機が使用できる。前記混錬方法によって、前記組成物が均一分散するように混合し、得られた混合物を慣用の成形方法であるカレンダー法、Tダイ法、インフレーション法等によりシート状基材に成形する。成形機は生産性、色変え、形状の均一性等の面からカレンダー成形機が好ましい。カレンダー成形におけるロール配列方式は、例えば、L型、逆L型、Z型等の公知の方式を採用できる。また、ロール温度は通常150~200℃、好ましくは155~190℃に設定される。
【0031】
基材の厚みは、使用目的や用途等に応じて様々であるが、好ましくは30~400μmであり、より好ましくは50~300μmであり、さらに好ましくは80~200μmである。
【0032】
<粘着剤層>
本発明の粘着テープは、前記粘着剤組成物より得られる粘着剤層を備える。粘着剤層は、基材の少なくとも一方の面に設けられており、基材の両面に設けられていてもよい。
粘着剤層の厚みは、粘着力、及び塗工性の観点から、10~50μmが好ましく、15~40μmがより好ましい。
【0033】
<中間層>
本発明の1つの態様においては、基材と粘着剤層との密着性をより向上させる目的で、基材と粘着剤層との間に中間層を設けてもよい。
前記中間層を構成する材料としては、例えば、メタクリル酸メチルグラフト天然ゴム等が挙げられる。
メタクリル酸メチルグラフト天然ゴムは、天然ゴムとメタクリル酸とがグラフト共重合した重合体である。このような重合体は、例えば、基材として塩化ビニル系樹脂を用いた場合、塩化ビニル系樹脂と前記粘着剤組成物の両方と親和性を有するため、これを用いて中間層を形成することにより、基材と粘着剤層との接着性がより向上しやすくなる。
また、中間層を構成する材料には、前記メタクリル酸メチルグラフト天然ゴムに、その他のモノマーを共重合させたものを用いてもよい。その他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸i-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸i-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等のメタクリル酸エステル、スチレン、アクリロニトリル、メタクリル酸等が挙げられる。これらその他のモノマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
中間層を構成する材料には、必要に応じて他の合成ゴムを添加してもよい。合成ゴムとしては、例えば、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル-ブタジエンゴム、イソブチレンゴム(ブチルゴム)、クロロプレンゴム、アクリルゴム、熱可塑性エラストマー(例えば、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-エチレン-スチレンコポリマー、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレンコポリマー、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンコポリマー等)、アクリルゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
中間層の厚みは、基材と粘着剤層との密着力、中間層の構造維持の観点から、0.1~3μmが好ましく、0.2~2μmがより好ましく、0.3~1μmが特に好ましい。
【0036】
[粘着テープの製造方法]
本発明の粘着テープの製造方法としては、前述の粘着剤組成物の製造方法により得られる本発明の粘着剤組成物を塗工液として、基材の少なくとも一方の面に塗工し、乾燥炉により乾燥した後、ロール状に巻き取る方法によって製造することができる。また、中間層を設ける場合は、中間層を構成する材料の溶液、エマルジョン、又はディスパージョンを、基材の少なくとも一方の面に塗工して中間層を形成した後、粘着剤組成物の塗工液を前記中間層の上に塗工して乾燥する方法によって、粘着テープを製造することができる。
巻き取り時の応力緩和、中間層及び粘着剤層の密着性の向上、粘着剤層成分同士の親和性を向上させる目的で、さらに、ロール状に巻き取った粘着テープを所定時間エージングする工程、所定温度で熱処理を施す工程を備えていてもよい。なお、粘着剤組成物、及び中間層を構成する材料の塗工方法としては、例えば、正回転ロール方式、リバースロール方式、グラビアロール方式、スプレー方式、キスロール方式、バー方式、ナイフ方式、コンマ方式、リップダイ方式等が挙げられる。
エージングや熱処理は粘着テープの性能が十分に安定する時間、温度にて行うことが好ましく、特に本発明の粘着テープの場合は、粘着剤層の軟化点またはガラス転移点以上の温度で行うことが好ましい。
具体的には、粘着テープの熱処理温度としては、例えば、100℃以上130℃以下が好ましい。また、エージングの時間は、1時間以上6時間以下であることが好ましい。
【0037】
<用途>
本発明の粘着テープは、上述の特徴的な粘着剤組成物により得られる粘着剤層を備えるため、高い粘着力と耐熱性能とを有している。また、VOCを用いてないため環境への負荷が小さい。そのため、高い粘着力と耐熱性が要求される分野、例えば、自動車の電線類等の結束用粘着テープ、特に、エンジン周り等、高温になりやすい環境に配置される電線類等の結束用粘着テープとして好適に用いることができる。なお、当然ながら本実施形態の粘着テープは、その用途が電線類等の結束用に限定されるわけではない。
【実施例】
【0038】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0039】
[実施例1]
<粘着剤組成物の製造>
ゴム成分として、天然ゴム((株)レヂテックス製、商品名「HA-LATEX」。ゲル分率68%)20質量部と、合成ゴム(スチレン-ブタジエンゴム;日本エイアンドエル(株)製、商品名「ナルスター(登録商標) SR-116」。スチレン比率55質量%、ゲル分率15%)80質量部とを配合し、さらに粘着付与樹脂100質量部、界面活性剤(両親媒性界面活性剤;花王(株)製、商品名「ぺレックス(登録商標)OT-P」)3質量部、架橋剤(イソシアネート系架橋剤;旭化成(株)製、商品名「デュラネート(登録商標) WB40-100」)15質量部をそれぞれ配合し、純水で粘度を調整して、水系のエマルジョン型粘着剤組成物を製造した。なお、各成分の配合量は固形分換算の値である。得られた粘着剤組成物のゲル分率は、35%であった。なお、上記粘着付与樹脂のエマルジョンとしては、クマロン樹脂(日塗化学(株)製、商品名「ニットレジン(登録商標) クマロン G-90」、数平均分子量220)75部をメチルシクロヘキサン25部に溶解し、これに界面活性剤(花王(株)製、商品名「エマルゲン(登録商標)920」)3.5部及び水46.5部を加えてホモミキサーにて撹拌乳化し、減圧蒸留にてメチルシクロヘキサンを除去したものである。得られた粘着剤組成物の組成を表1に示す。
【0040】
(粘着剤組成物のゲル分率の測定方法)
得られた粘着剤組成物について、以下の方法でゲル分率を測定した。結果を表1に示す。
エタノール100gに対し、得られた粘着剤組成物1gを加え、恒温水槽(50℃±2℃)に共栓付三角フラスコをセットし、スターラーで回転数600/minにて2時間撹拌した。撹拌後、共栓付三角フラスコを氷水で23℃以下まで冷却し、試料を予め重量を計量しておいた270メッシュの金網にて全量濾過した。濾過後の不溶分を100±2℃で10分間加熱し、エタノール不溶分を得た。得られたエタノール不溶分の重量をW1(g)とし、これにトルエン100gをホールピペットで加え、回転子を入れた後、密栓した。恒温水槽(50℃±2℃)に共栓付三角フラスコをセットし、スターラーで回転数600/minにて2時間撹拌した。撹拌後、共栓付三角フラスコを氷水で23℃以下まで冷却し、重量W2(g)の270メッシュの金網にて全量濾過した。濾過後の金網を140℃±2℃にて1時間加熱したのち、金網重量を計量した(乾燥後の金網重量をW3(g)とする)。上記測定にて得られたW1~W3を用いて、以下の式からゲル分率を算出した。
ゲル分率(質量%)=[(W3-W2)/W1]×100
【0041】
<粘着テープの製造>
(基材の作成)
塩化ビニル系樹脂としてポリ塩化ビニル(大洋塩ビ(株)製、商品名「TH-1000」)100質量部に対し、トリメリット酸トリス2-エチルヘキシル(DIC(株)製、商品名「W-700」)を50質量部、難燃助剤として三酸化二アンチモン(鈴裕化学(株)製、商品名「ファイヤーカットTOP-5」)、さらに安定剤、滑剤をそれぞれ配合し、バンバリーミキサーで溶融混錬し、ロール温度165℃のカレンダー成形機にて、厚みが125μmとなるように成形して基材を得た。
【0042】
次に、実施例1で得られた粘着剤組成物を塗工液として用い、前記基材の一方の面に塗工後、120℃で1分間乾燥して粘着剤層を形成した。得られた粘着テープの粘着剤層の厚みは25μmであった。
得られた粘着テープの粘着力及び耐熱性能を、以下の方法に従って評価した。結果を表1に示す。
【0043】
(粘着力の評価)
以下の方法に従って、自背面粘着力の評価を行った。また、得られた粘着力が1.5N/10mm以上のものを、「〇」(粘着力が高い)、1.5N/10mm未満のものを「×」(粘着力が低い)として評価した。
JIS Z 0237に従って測定した。幅10mmの粘着テープを温度23±2℃、湿度50±5%RHに設定された評価試験室内に24時間以上静置した。厚さ1mmの金属板に長さ150mmの粘着テープを貼り合わせ、自背面測定用のテープ基材面サンプルを作製した。更に長さ150mmの粘着テープを用意し、その粘着面を自背面測定用のテープ基材面上に貼り合わせたのち、重さ2000gのローラーを5mm/sの速度で1往復させて貼り合わせた。貼り合わせ20分後に、引張試験機((株)島津製作所製、製品名「オートグラフAGX」)を用いてテープ粘着面とテープ基材面との間の180度剥離強度(N/10mm)を測定した。
【0044】
(耐熱性能の評価)
長さ800±20mmの、JASO D 611に規定されたAVX電線を10本集束して電線束を作製し、
図1に示すような試験片Aを作成した。すなわち、電線束1の中央部を含む長さ400±10mmの範囲に、幅20mmの粘着テープ10をハーフラップ巻き、すなわち、1周巻いた後の粘着テープ10が、前周のテープ幅の半分(9.5mm)に覆いかぶさるような角度で、粘着テープ10を電線束1にらせん状に約20周巻き付けて試験片Aを作成した。作成した試験片Aを、
図2に示すように、直径80mmのマンドレル2に1周させた状態で粘着テープ10で固定したのちに、120±2℃のオーブンで168時間加熱し、室温23±2℃環境にて冷却し、試験片Aの粘着テープ10の端部の位置ずれ、剥がれの状態を確認した。評価基準を以下の通りとし、その結果を表に記載した。
(評価基準)
◎:粘着テープ端部の位置ずれ、剥がれが全くない。
〇:粘着テープ端部の位置がずれているが、電線から剥がれてはいない。
×:粘着テープ端部が電線から剥がれ、めくれている。
【0045】
(保持力の評価)
以下の方法に従って、粘着テープの保持力を評価した。保持力は、粘着テープの粘着保持性の高さの指標となるものである。なお、得られた保持力の値が、200分以上のものを、「〇」(粘着保持性が高い)、200分未満のものを「×」(粘着保持性が低い)として評価した。
JIS Z 0237に従って測定した。幅20mmの粘着テープを温度23±2℃、湿度50±5%RH環境下で24時間以上静置した後で、ガラス板に長さ25mmの粘着テープを貼り付けた。その後、粘着テープの片面に重さ100gの錘をチャックで挟み、100℃雰囲気化で20分予熱したのち、錘100gの荷重をかけ、テープがガラス板から剥がれて落下するまでの経過時間(分)を測定した。
【0046】
[実施例2~20、比較例1~8]
粘着剤組成物の組成を表1に示す通りとした以外は、実施例1と同様の方法で粘着剤組成物を調整した。また得られた粘着剤組成物を用いて、実施例1と同様の方法でゲル分率を測定した。また、実施例1と同様の方法で粘着テープを作成し、粘着力及び耐熱性能について評価を行った。なお、比較例8は、基材表面に粘着剤組成物を塗布させたのち、エージングを行なわずに粘着テープを作成した。結果を表1~2に示す。
【0047】
なお、表1~2中の各成分の詳細は以下のとおりである。
天然ゴム1:天然ゴムエマルジョン((株)レヂテックス製、商品名「HA-LATEX」、ゲル分率68%)。
天然ゴム2:天然ゴムエマルジョン((株)レヂテックス製、商品名「SS-58」、ゲル分率95%)。
天然ゴム3:天然ゴムエマルジョン(ムサシノケミカル(株)製、商品名「ECXELTEX HLX LATZ」、ゲル分率73%)。
合成ゴム1:スチレン-ブタジエンゴム(日本エイアンドエル(株)製、「ナルスター SR-116」、スチレン比率:55質量%、ゲル分率15%)。
合成ゴム2:スチレン-ブタジエンゴム(JSR(株)製、商品名「T-093A」、スチレン比率:40質量%、ゲル分率0.5%)。
合成ゴム3:スチレン-ブタジエンゴム(JSR(株)製「0545」を密閉容器内で10日間加熱、スチレン比率:25質量%、ゲル分率10%)。
粘着付与樹脂1:クマロン樹脂のエマルジョン(日塗化学(株)製、商品名「ニットレジン クマロン G-90」の乳化物、固形分50%、数平均分子量220)。
粘着付与樹脂2:石油樹脂(脂肪族系と芳香族系の共重合体)のエマルジョン(日本ゼオン(株)製、商品名「クイントン(登録商標) G115」の乳化物、固形分50%、数平均分子量1300)。
粘着付与樹脂3:石油樹脂(脂肪族系)のエマルジョン(JXTGエネルギー(株)製、商品名「T-REZ RA100」の乳化物、固形分50%、数平均分子量1300)。
粘着付与樹脂4:石油樹脂(芳香族系)のエマルジョン(アリゾナケミカル(株)製、商品名「Sylvares(登録商標) SA140」の乳化物、固形分50%、数平均分子量2200)。
粘着付与樹脂5:テルペン樹脂のエマルジョン(ヤスハラケミカル(株)製、商品名「YSレジン1150」の乳化物、固形分50%、数平均分子量1000)。
粘着付与樹脂6:ロジン樹脂のエマルジョン(ハリマ化成(株)製、商品名「ハリタックPCJ」の乳化物、固形分50%、数平均分子量700)。
界面活性剤:(花王(株)製、商品名「ぺレックスOT-P」)。
架橋剤1:硫黄系架橋剤(化合物名テトラメチルチウラムジスルフィド)(レヂテックス社製、商品名「TT加硫剤分散体」)。
架橋剤2:イソシアネート系架橋剤(旭化成(株)製、商品名「デュラネート WB40-100」)。
架橋剤3:カルボジイミド系架橋剤(日清紡ケミカル(株)製、商品名「カルボジライト(登録商標) V-02」)。
【0048】
【0049】
【0050】
表1~2に示す通り、本発明の粘着剤組成物より得られる粘着剤層を備える実施例1~20の粘着テープは、高い粘着力を有し、かつ耐熱性能にも優れていた。一方、本発明の粘着剤組成物以外を用いた比較例1~8の粘着テープは、耐熱性能が低かった。以上の結果から、本発明の粘着剤組成物及び前記粘着剤組成物を用いて得られる粘着テープは、高い粘着力と耐熱性能とを有することが確認された。また、本発明の粘着剤組成物は水系の粘着剤組成物であるため、環境への負荷が小さい。
【符号の説明】
【0051】
1:電線束
2:マンドレル
10:粘着テープ
A:試験片