IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社クリュートメディカルシステムズの特許一覧

特許7315501視覚検査装置、視覚検査プログラムおよび視覚検査方法
<>
  • 特許-視覚検査装置、視覚検査プログラムおよび視覚検査方法 図1
  • 特許-視覚検査装置、視覚検査プログラムおよび視覚検査方法 図2
  • 特許-視覚検査装置、視覚検査プログラムおよび視覚検査方法 図3
  • 特許-視覚検査装置、視覚検査プログラムおよび視覚検査方法 図4
  • 特許-視覚検査装置、視覚検査プログラムおよび視覚検査方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】視覚検査装置、視覚検査プログラムおよび視覚検査方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/024 20060101AFI20230719BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20230719BHJP
   G01B 11/245 20060101ALI20230719BHJP
   A61B 3/10 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
A61B3/024
G01B11/00 H
G01B11/245
A61B3/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020036491
(22)【出願日】2020-03-04
(65)【公開番号】P2021137236
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】513190726
【氏名又は名称】株式会社クリュートメディカルシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100161034
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 知洋
(74)【代理人】
【識別番号】100187632
【弁理士】
【氏名又は名称】橘高 英郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 伸司
(72)【発明者】
【氏名】江口 哲也
【審査官】高松 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-142791(JP,A)
【文献】特開2019-208651(JP,A)
【文献】特開2017-113572(JP,A)
【文献】特開2005-103039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/024
G01B 11/00
G01B 11/245
A61B 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
視覚検査に用いられる視標を呈示する表示部と、
前記表示部と対面する前記視覚検査の被検者を前記表示部の側から撮像して撮像画像を得る撮像部と、
前記撮像部で得た前記撮像画像に基づいて前記表示部と前記被検者との間の距離を認識する画像解析部と、
前記画像解析部で認識した距離と前記視覚検査のために設定された所定距離との対比結果を距離判定結果として出力する距離判定部と、
を備え
前記撮像部は、単眼カメラによって構成されており、
前記撮像部は、前記撮像画像として、検査補助具を装用した状態の前記被検者の画像を得るものであり、
前記検査補助具には、所定間隔で配された複数の基準表号が付されており、
前記画像解析部は、前記撮像画像中における前記複数の基準表号を抽出することにより、前記距離を認識し、
前記検査補助具は、前記被検者の一方の眼を視認可能にし、他方の眼の視界を遮蔽するように構成され、かつ、左右眼の前記視覚検査において当該検査補助具を共用できるように構成されており、
前記複数の基準表号は、左右眼の前記視覚検査のそれぞれに対応するように、前記検査補助具に付されている
視覚検査装置。
【請求項2】
前記複数の基準表号は、それぞれが同一形状で形成されている
請求項に記載の視覚検査装置。
【請求項3】
前記検査補助具は、複数の態様のいずれかで選択的に装用可能に構成されており、
前記複数の基準表号は、前記複数の態様のそれぞれに対応するように、前記検査補助具に付されている
請求項またはに記載の視覚検査装置。
【請求項4】
少なくとも前記表示部および前記撮像部は、可搬型の情報端末装置に設けられている
請求項1からのいずれか1項に記載の視覚検査装置。
【請求項5】
コンピュータを、
視覚検査に用いられる視標を呈示する表示部と、
前記表示部と対面する前記視覚検査の被検者を前記表示部の側から撮像して撮像画像を得る撮像部と、
前記撮像部で得た前記撮像画像に基づいて前記表示部と前記被検者との間の距離を認識する画像解析部と、
前記画像解析部で認識した距離と前記視覚検査のために設定された所定距離との対比結果を距離判定結果として出力する距離判定部と、
として機能させ
前記撮像部は、単眼カメラによって構成されており、
前記撮像部は、前記撮像画像として、検査補助具を装用した状態の前記被検者の画像を得るものであり、
前記検査補助具には、所定間隔で配された複数の基準表号が付されており、
前記画像解析部は、前記撮像画像中における前記複数の基準表号を抽出することにより、前記距離を認識し、
前記検査補助具は、前記被検者の一方の眼を視認可能にし、他方の眼の視界を遮蔽するように構成され、かつ、左右眼の前記視覚検査において当該検査補助具を共用できるように構成されており、
前記複数の基準表号は、左右眼の前記視覚検査のそれぞれに対応するように、前記検査補助具に付されている
視覚検査プログラム。
【請求項6】
視覚検査の被検者に対し表示部で視標を呈示して当該視覚検査を行う視覚検査方法であって、
前記表示部と対面する前記被検者を撮像部により前記表示部の側から撮像して撮像画像を得る撮像ステップと、
前記撮像画像に基づいて画像解析部により前記表示部と前記被検者との間の距離を認識する画像解析ステップと、
認識した距離と前記視覚検査のために設定された所定距離との対比結果を距離判定結果として出力する距離判定ステップと、
を備え
前記撮像部は、単眼カメラによって構成されており、
前記撮像部は、前記撮像画像として、検査補助具を装用した状態の前記被検者の画像を得るものであり、
前記検査補助具には、所定間隔で配された複数の基準表号が付されており、
前記画像解析部は、前記撮像画像中における前記複数の基準表号を抽出することにより、前記距離を認識し、
前記検査補助具は、前記被検者の一方の眼を視認可能にし、他方の眼の視界を遮蔽するように構成され、かつ、左右眼の前記視覚検査において当該検査補助具を共用できるように構成されており、
前記複数の基準表号は、左右眼の前記視覚検査のそれぞれに対応するように、前記検査補助具に付されている
視覚検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視覚検査装置、視覚検査プログラムおよび視覚検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
眼の検査の一つに、眼の視覚機能を検査する「視覚検査」がある。視覚検査の代表的なものとしては「視野検査」がある。視野検査は、例えば緑内障や網膜剥離等が原因で起こる視野狭窄、視野欠損等を診断するために行うもので、そのための検査装置が種々提案されている。視野検査装置としては、例えば、タブレットコンピュータのモニター画面に視標を呈示して被検者の視野を検査するものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2015-500732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モニター画面に視標を呈示して被検者の視野を検査する場合、その検査を適切に行うためには、視標(ディスプレイ画面)と被検者の眼との間を所定距離に保つ必要がある。
上述した従来の視野検査装置では、ディスプレイ画面の前方側に顔面支持部を配し、その顔面支持部を利用して被検者の顔を固定することで、視標と被検者の眼との間を所定距離に保つようになっている。しかしながら、顔面支持部を要することから、装置構成の複雑化や大型化等を招いてしまい、利用者(被検者や検査者等)にとっての利便性が損なわれてしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、利便性が損なわれることなく、視標と被検者の眼との間を容易かつ確実に所定距離とすることができ、視標を呈示して行う視覚検査の適切化を図ることを可能にする視覚検査装置、視覚検査プログラムおよび視覚検査方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
視覚検査に用いられる視標を呈示する表示部と、
前記表示部と対面する前記視覚検査の被検者を前記表示部の側から撮像して撮像画像を得る撮像部と、
前記撮像部で得た前記撮像画像に基づいて前記表示部と前記被検者との間の距離を認識する画像解析部と、
前記画像解析部で認識した距離と前記視覚検査のために設定された所定距離との対比結果を距離判定結果として出力する距離判定部と、
を備える視覚検査装置である。
【0007】
また、本発明の他の一態様は、
コンピュータを、
視覚検査に用いられる視標を呈示する表示部と、
前記表示部と対面する前記視覚検査の被検者を前記表示部の側から撮像して撮像画像を得る撮像部と、
前記撮像部で得た前記撮像画像に基づいて前記表示部と前記被検者との間の距離を認識する画像解析部と、
前記画像解析部で認識した距離と前記視覚検査のために設定された所定距離との対比結果を距離判定結果として出力する距離判定部と、
として機能させる視覚検査プログラムである。
【0008】
また、本発明のさらに他の一態様は、
視覚検査の被検者に対し表示部で視標を呈示して当該視覚検査を行う視覚検査方法であって、
前記表示部と対面する前記被検者を前記表示部の側から撮像して撮像画像を得る撮像ステップと、
前記撮像画像に基づいて前記表示部と前記被検者との間の距離を認識する画像解析ステップと、
認識した距離と前記視覚検査のために設定された所定距離との対比結果を距離判定結果として出力する距離判定ステップと、
を備える視覚検査方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、利便性が損なわれることなく、視標と被検者の眼との間を容易かつ確実に所定距離とすることができ、視標を呈示して行う視覚検査の適切化を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る視覚検査装置の概要を示す説明図である。
図2】本発明に係る視覚検査装置の概略構成例を示すブロック図である。
図3】本発明に係る視覚検査装置で用いられる検査補助具の一例を示す説明図であり、(a)は被験者による装用状態を模式的に示す図、(b)は反転装用のための構成例を模式的に示す図である。
図4】本発明に係る視覚検査方法の手順の概要を示すフロー図である。
図5】本発明に係る視覚検査装置の他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
なお、以下に説明する実施の形態では、視覚検査の一つである視野検査を行う視覚検査装置および視覚検査方法に本発明を適用した場合を例に挙げる。
【0012】
<第1の実施の形態>
まず、本発明の第1の実施の形態について説明する。
【0013】
(装置概要)
図1は、視覚検査装置の概要を示す説明図である。
図例の視覚検査装置1は、視野検査の被検者2に対して視標を呈示して、その被検者2の視野を検査するものである。
【0014】
ここで、「視標」とは、被検者2の視野を検査するにあたって、被検者2の眼球に光による刺激を与えるために表示されるものである。視標に関しては、特に大きさ、形状等の制限はない。例えば、緑内障検査の際には、所定の大きさで光の点を視標として表示するとともに、その光の点の位置を変化させることにより、欠損した視野の有無や欠損場所を検査(特定)することができる。
【0015】
視標を利用した視野検査は、例えば、次のように行われる。まず、被検者2の視野内の一点に視標を呈示し、その明るさを徐々に増していく。その場合に、視標がある明るさになると、被検者2から視標が見えるようになる。そこで、被検者2が視標を見えるようになったときの明るさに対応する値を、そのときに視標を呈示している点での網膜感度とする。そして、視野内の各点について同様の測定を行うことにより、視野内の網膜感度の相違を量的に調べ、感度マップを作成する。このようにして作成した網膜上の感度マップが、被検者2の視野検査の結果として出力される。なお、視野検査の具体的な手法や手順等については、公知技術を利用したものであればよいことから、ここでの説明は省略する。
【0016】
このような視野検査は、通常、被検者2の左眼と右眼とについて別々に行われる。そのため、視野検査にあたり、被検者2は、検査補助具3を装用する。検査補助具3は、被検者2が装用することによって、その被検者2の一方の眼(検査対象眼)を視認可能にし、他方の眼の視界を遮蔽するように構成されたものである。具体的には、検査補助具3として、例えば、詳細を後述する眼鏡タイプのものがある。
【0017】
以上のような視野検査に用いられる視覚検査装置1につき、本実施の形態においては、その視覚検査装置1が、例えば、可搬型の情報端末装置であるタブレット端末装置(以下、単に「タブレット」と称す。)によって構成されている。視覚検査装置1がタブレットである場合、被検者2に対する視標の呈示は、タブレットのディスプレイ画面を利用して行うことになる。タブレットを視覚検査装置1として用いれば、持ち運びが容易であり、検査スペース(設置スペース)も小さくて済むことから、利用者(被検者や検査者等)にとっての利便性が非常に優れたものとなる。なお、ここでは視覚検査装置1がタブレットである場合を例示するが、必ずしもこれに限定されることはなく、例えば、一般的な構成のパーソナルコンピュータ装置(以下、単に「PC装置」と称す。)を視覚検査装置1として用いた場合であっても、ディスプレイ画面を利用して視標を呈示することで、被検者2の視野検査を行うことが可能である。
【0018】
ところで、被検者2の視野検査に際しては、視覚検査装置1がタブレットであるかPC装置であるかを問わず、呈示する視標(ディスプレイ画面)と被検者2の眼との間を所定距離Lに保つ必要がある。所定距離Lから外れると、被検者2の視野の範囲とディスプレイ画面の位置との関係が想定とは異なってしまい、視野検査の精度に悪影響が及び得るからである。なお、所定距離Lは、視標を呈示するディスプレイ画面のサイズから一意に特定することが可能であり、例えば、視覚検査を適切に行い得る距離範囲(例えば、20cm以上35cm以下、好ましくは22cm以上30cm以下、より好ましくは25cm程度)として規定されるものとする。
【0019】
そこで、本実施の形態においては、視標と被検者2の眼との間を容易かつ確実に所定距離Lとすることができ、しかもそのために利用者にとっての利便性を損なうような構成要素(例えば、特許文献1参照)を必要とすることもなく、視標を呈示して行う視覚検査の適切化を図れるようにすべく、視覚検査装置1が被検者2との間の距離を自動判定する機能を有して構成されているのである。
【0020】
(装置の具体的な構成)
以下、視覚検査装置1の具体的な構成について、視覚検査装置1がタブレットである場合を例に挙げて説明する。
図2は、視覚検査装置の概略構成例を示すブロック図である。
図例のように、視覚検査装置1は、表示部11と、撮像部12と、操作部13と、出力部14と、ストレージ部15と、情報処理部16と、を備えて構成されている。
【0021】
表示部11は、視覚検査に用いられる視標を呈示するものであり、例えば、バックライトを備える液晶表示素子や自発光型の有機EL(Electro Luminescence)表示素子等のディスプレイ画面を用いて構成されている。表示部11のディスプレイ画面は、多数のピクセルをマトリクス状に配置した構成になっている。そして、表示部11は、情報処理部16に接続されており、実際にディスプレイ画面に画像(視標を含む)を表示するときには、情報処理部16からの指示に基づいて、ピクセル単位で画像の表示と非表示(オン/オフ)を制御できるようになっている。これにより、表示部11のディスプレイ画面上には、例えば、十字型の固定視標や、視野検査のための所定の明るさ(輝度)を有する刺激視標等を、視標として呈示することができる。
【0022】
撮像部12は、表示内容視認のために表示部11と対面する視覚検査の被検者2を表示部11の側から撮像して撮像画像を得るものであり、例えば、CCD(Charge Coupled Device)撮像素子やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)撮像素子等を用いた単眼カメラによって構成されている。単眼カメラによって構成された撮像部12は、詳細を後述する検査補助具3を装用した状態の被検者2の顔の画像を、撮像画像として得るようになっている。そして、撮像部12は、情報処理部16に接続されており、被検者2の顔の撮像結果である撮像画像の画像データを情報処理部16に送信するように構成されている。
【0023】
操作部13は、視覚検査装置1の利用者(被検者や検査者等)が操作するためのものであり、例えば、表示部11に重ねて配されたタッチパネルや有線または無線で接続されたキーボード等の情報入力デバイスによって構成されている。操作部13で行われる操作としては、例えば、視覚検査の開始または終了を指示する操作がある。また、その他に、例えば、いわゆる自覚式検査を行う場合であれば、視標が見えたことについて被検者2が応答するための操作がある。
【0024】
出力部14は、視覚検査装置1の利用者(被検者や検査者等)に対し必要に応じて情報出力を行うためのものである。情報出力は、利用者が視認可能な表示出力によるものであってもよいし、利用者が可聴できる音出力によるものであってもよいし、これらの両方によるものであってもよい。表示出力を行う場合には、上述した表示部11を出力部14としても機能させるようにすればよい。音出力を行う場合、出力部14は、例えば、スピーカ等の音出力デバイスによって構成される。
【0025】
ストレージ部15は、必要に応じて各種の情報、データ、プログラム等を記憶保持するものであり、半導体メモリデバイスによって構成されている。ストレージ部15には、撮像部12で得た画像データや操作部13で入力された各種情報の他に、情報処理部16の処理動作に必要となる所定のアプリケーションプログラム(以下、「所定プログラム」または「所定アプリ」ということもある。)が記憶されるようになっている。
【0026】
情報処理部16は、視覚検査装置1の全体の処理動作を制御するものであり、視覚検査に際して各種の機能(手段)を実現するものである。そのために、情報処理部16は、CPU(Central Processing Unit)、各種メモリ、各種インタフェース等が組み合わされたコンピュータとして構成されている。そして、情報処理部16は、ストレージ部15に記憶された所定プログラムを読みだして実行することにより、各種の機能を実現するように構成されている。
【0027】
つまり、情報処理部16は、コンピュータとしてのハードウエア資源を備えており、所定プログラムを実行することで、そのプログラム(ソフトウエア)とハードウエア資源とが協働して、各種の機能を実現するようになっている。情報処理部16が実現する各種の機能としては、例えば、視標呈示部16aと、感度検査部16bと、画像解析部16cと、距離判定部16dと、がある。
【0028】
視標呈示部16aは、表示部11に視標を呈示させるための機能を実現するものである。視標呈示部16aが表示部11に指示を与えることで、表示部11のディスプレイ画面上には、例えば、固定視標や刺激視標等が、視覚検査に用いられる視標として、被検者2に対して呈示されることになる。
【0029】
感度検査部16bは、操作部13での被検者2による応答操作に基づき、被検者2が応答したときに表示部11が呈示していた視標の明るさ(輝度)を網膜感度として認識し、これを視野内の各点についてマッピングするための機能を実現するものである。このようにして作成した網膜上の感度マップが、被検者2の視野検査の結果となる。なお、感度検査部16bは、被検者2による応答操作を基にする自覚式視野検査ではなく、いわゆる他覚式視野検査に対応するものであってもよい。他覚式視野検査の場合には、例えば、被検者2の瞳孔を監視しつつ、瞳孔の縮瞳を検出したときの視標の明るさ(輝度)を網膜感度として認識すればよい。
【0030】
画像解析部16cは、撮像部12で得た被検者2の撮像画像を基に、その撮像画像を解析することで、視標を呈示する表示部11と被検者2との間の距離を認識するための機能を実現するものである。なお、撮像画像の解析結果を利用した距離認識の具体的な手順については、詳細を後述する。
【0031】
距離判定部16dは、画像解析部16cで認識した距離と視覚検査のために設定された所定距離Lとを対比して、その対比結果を距離判定結果として出力部14に出力させるための機能を実現するものである。所定距離Lは、予めストレージ部15に設定されているものとする。つまり、距離判定部16dは、被検者2までの間の距離の認識結果を予め設定されている所定距離Lと対比して、距離認識結果が所定距離Lの範囲内であるか否か、すなわち適切に視野検査を行い得る距離に被検者2が位置しているか否かを、距離判定結果として出力部14に出力させるようになっている。なお、所定距離Lとの対比を含む距離判定の具体的な手順については、詳細を後述する。
【0032】
これらの各機能を情報処理部16に実現させるための所定プログラムは、視覚検査装置1にインストールして用いられるが、そのインストールに先立ち、情報処理部16で読み取り可能な記録媒体(例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等)に格納されて提供されるものであってもよいし、インターネットや専用回線等のネットワークを通じて外部から提供されるものであってもよい。
【0033】
以上のような視覚検査装置1は、タブレットによって構成される場合、そのタブレットに上述した所定プログラムをインストールすることで実現できる。つまり、視覚検査装置1における表示部11や撮像部12等については、タブレットが本来的に有している機能を利用することができる。そして、そのタブレットに上述した所定プログラムをインストールすれば、そのタブレットは、本実施の形態で説明する視覚検査装置1として機能する。したがって、視覚検査装置1がタブレットである場合、その視覚検査装置1は、利用者にとっての利便性が非常に優れていることに加えて、経済性(コスト面)においても非常に優れたものとなる。
【0034】
(検査補助具の構成)
次に、上述した構成の視覚検査装置1において、視野検査を行う場合に用いられる検査補助具3について説明する。
【0035】
既述のように、視野検査に際しては、被検者2の左右眼をそれぞれ別々に検査すべく、被検者2が検査補助具3を装用する。
図3は、視野検査で用いられる検査補助具の一例を示す説明図である。
図例の検査補助具3は、眼鏡タイプのものである。
【0036】
詳しくは、ここで例に挙げる検査補助具3は、図3(a)に示すように、眼鏡のリムやブリッジ等に相当する眼前部と、眼鏡のテンプルやモダン等に相当するテンプル部と、を備えて構成されている。このような構成により、検査補助具3は、一般的な眼鏡と同様に、視野検査の被検者2に装用される。なお、被検者2が眼鏡装用者である場合には、その被検者2が装用する眼鏡に重ねるようにして、検査補助具3を装用することが可能である。
【0037】
検査補助具3には、被検者2による装用状態において、一方の眼の前に配置される眼前部の部分に、一方の眼の視線を通過させる開口部3aが設けられている。ただし、他方の眼の前に配置される眼前部の部分には、開口部3aが設けられておらず、他方の眼の視線を遮蔽するように構成されている。図3(a)に示す例の場合、向かって右側の眼の前のみに開口部3aが設けられており、向かって左側の眼の視線が遮蔽されるようになっている。このような構成の検査補助具3を装用することで、被検者2は、一方の眼(検査対象眼)は視認可能であるが、他方の眼の視界が遮蔽されることになり、片眼についての視野検査を行えるようになる。
【0038】
被検者2の片眼毎に別々に視野検査をする場合には、左眼の側に開口部3aを有する検査補助具3と右眼の側に開口部3aを有する検査補助具3とをそれぞれ用意してもよいが、それでは開口部3aの位置が異なる複数の検査補助具3を必要とするため、必ずしも効率的ではない。そのため、検査補助具3については、図3(b)に示すように、左右両側のテンプル部3bを延伸方向に対して反対方向に折り曲げ可能な構成とすることが好ましい。このように、テンプル部3bを反対方向に折り曲げて反転可能にすると、反転前の装用状態では右眼の視線が遮蔽されていた検査補助具3であっても、反転後には左眼の視線が遮蔽される検査補助具3として被検者2が装用することが可能となる。つまり、本実施の形態において、検査補助具3は、テンプル部3bの反転前後のそれぞれの態様での装用に対応しており、これら複数の態様のいずれかで被検者2が選択的に装用することが可能に構成されている。なお、テンプル部3bの折り曲げについては、上述したような反転装用が可能であれば、その折り曲げ角度等が特に限定されるものではない。
【0039】
このような折り曲げ反転を容易に実現すべく、検査補助具3は、板状の紙材によって形成されていることが好ましい。紙材によって形成されていれば、折り曲げ反転を容易に実現し得るので使い勝手の良さが向上することに加えて、経済性(コスト面)においても非常に優れたものとなり、使い捨て用途に適したものとなる。ただし、検査補助具3は、必ずしも紙材に限定されることはなく、折り曲げ反転が可能であれば、他の形成材料(例えば樹脂材)によるものであってもよい。また、少なくとも眼前部とテンプル部との連結部分(眼鏡の智(ヨロイ)に相当する部分)が反転に対応していればよく、例えば反転可能な丁番(ヒンジ)を備えて構成されたものであってもよい。
【0040】
ところで、検査補助具3には、図3(a)および(b)に示すように、眼前部における左右テンプル部との連結部分近傍のそれぞれに基準表号4が付されている。基準表号4は、それぞれが予め設定された所定間隔P1で配置されている。つまり、検査補助具3には、所定間隔P1で配された複数(具体的には二つ)の基準表号4が付されている。
【0041】
検査補助具3が複数の態様での装用に対応している場合、所定間隔P1で配された二つの基準表号4は、当該複数の態様のそれぞれに対応するように、検査補助具3に付されているものとする。具体的には、テンプル部3bの反転前後のそれぞれの態様での装用に対応している場合であれば、検査補助具3における眼前部両面のそれぞれに、所定間隔P1で配された二つの基準表号4が付されているものとする。
【0042】
検査補助具3に付される基準表号4は、視覚検査装置1の情報処理部16における画像解析部16cとしての機能が、被検者2との間の距離を認識するために用いられるものである。そのため、基準表号4は、画像解析部16cでの画像解析(特に、特徴抽出やパターンマッチング等)を容易に行い得るものであることが好ましい。このような基準表号4としては、例えば、所定形状の図形マークが挙げられる。
【0043】
図形マークを基準表号4とする場合、そのマーク形状自体が特に限定されることはなく、適宜設定された形状のものを基準表号4として用いればよい。ただし、所定間隔P1で配された二つの基準表号4については、それぞれが同一形状で形成されていることが好ましい。それぞれが同一形状であれば、それぞれが異なる形状の場合に比べて、画像解析部16cが画像解析を行う際の処理負荷軽減が図れるからである。
【0044】
このような構成の基準表号4は、例えば、検査補助具3が紙材によって形成されている場合であれば、印刷の手法を用いて検査補助具3に付すことができる。したがって、所定間隔P1を担保しつつ容易に基準表号4を付すことができ、経済性(コスト面)でも優れたものとなるので、この点においても使い捨て用途に適したものとなる。
【0045】
(視覚検査の手順)
次に、上述した構成の視覚検査装置1および検査補助具3を用いて行う視野検査の手順、すなわち本実施の形態における視覚検査方法の手順について、具体的に説明する。
【0046】
図4は、視覚検査方法の手順の概要を示すフロー図である。
【0047】
視覚検査装置1を用いて視野検査を行う場合には、まず、その視覚検査装置1において、利用者が操作部13を操作して、所定アプリを起動する(ステップ101、以下ステップを「S」と略す。)。所定アプリが起動すると、その後は、視覚検査装置1において、以下に説明する一連の処理が実施される。なお、以下の説明において、視覚検査装置1を構成する各部の動作は、アプリ起動に応じてストレージ部15から所定プログラムを読みだして実行する情報処理部16によって制御されることになる。
【0048】
アプリ起動後は、検査補助具3を装用した状態で視覚検査装置1の表示部11と対面するように位置する被検者2について、撮像部12が表示部11の側から撮像する。これにより、撮像部12は、検査補助具3を装用した状態の被検者2の顔の画像を撮像画像として得ることになる(S102)。このようにして得られる撮像画像の画像データは、撮像部12から情報処理部16に送信される。
【0049】
撮像画像の画像データを受信すると、情報処理部16では、その画像データを用いて画像解析部16cが撮像画像(すなわち、検査補助具3を装用した状態の被検者2の顔の画像)の解析を行う(S103)。具体的には、画像解析部16cは、特徴抽出やパターンマッチング等といった公知の画像処理技術を利用して、画像中における各基準表号4を抽出して、各基準表号4の画像上の間隔(例えば画素数)を求める。各基準表号4の画像上の間隔を求めたら、続いて、実際に各基準表号4が配される所定間隔P1との対応関係を求める。この対応関係を基にすることで、撮像画像を得た撮像部12の焦点位置と各基準表号4が配された面(すなわち、検査補助具3における眼前部の前面)との間の距離を、公知の測長演算技術を用いて求めることができる。このとき、画像解析部16cは、必要に応じて、撮像部12の焦点位置と表示部11のディスプレイ画面との間のオフセット量と、検査補助具3の眼前部前面と被検者2の眼との間のオフセット量とについて、これらを補正する演算処理を行う。これにより、画像解析部16cは、撮像部12で得た撮像画像の解析結果から、視標を呈示する表示部11のディスプレイ画面と被検者2の眼との間の距離を認識することができる。なお、画像解析部16cでの処理に必要となる各種の数値情報や演算式情報等については、ストレージ部15に予め記憶されているものとする。
【0050】
画像解析部16cが距離認識を行ったら、続いて、情報処理部16では、画像解析部16cが認識した距離と視覚検査のために設定された所定距離Lとについて、距離判定部16dがこれらを互いに対比して、適切に視野検査を行い得る距離に被検者2が位置しているか否かを判定する(S104)。具体的には、距離判定部16dは、画像解析部16cによる距離認識結果が所定距離Lの範囲内であるか否か判断し、所定距離Lの範囲内であれば適切に視野検査を行い得る距離に被検者2が位置していると判定する一方で、所定距離Lの範囲内になければ適切に視野検査を行い得る距離には被検者2が位置していないと判定する。
【0051】
その結果、距離認識結果が所定距離Lの範囲内になければ(S105)、距離判定部16dは、その旨の情報(すなわち、表示部11のディスプレイ画面に対する距離が遠すぎる旨の情報、または、表示部11のディスプレイ画面に対する距離が近すぎる旨の情報のいずれか)を、距離判定結果として出力部14に出力させる。このときの情報出力は、表示出力によるものであってもよいし、音出力によるものであってもよいし、これらの両方によるものであってもよい。このような情報出力に応じて被検者2が移動すると、視覚検査装置1は、再び、撮像画像を得るステップから上述した一連の各ステップを繰り返し行う(S102~S105)。
【0052】
また、距離認識結果が所定距離Lの範囲内にある場合には(S105)、距離判定部16dは、その旨の情報(すなわち、適切に視野検査を行い得る距離に位置している旨の情報)を、距離判定結果として出力部14に出力させる。このときの情報出力も、表示出力、音出力、または、これらの両方によるものであってもよい。そして、距離判定部16dは、視野検査が開始可能である旨の情報を、視標呈示部16aおよび感度検査部16bに通知する。
【0053】
その後、視標呈示部16aおよび感度検査部16bは、被検者2に対して視標を呈示して視野検査を行う(S106)。具体的には、まず、視標呈示部16aは、被検者2の視野内の一点に視標を呈示し、その明るさを徐々に増していくように、表示部11に対して動作指示を与える。その場合に、視標がある明るさになると、被検者2から視標が見えるようになるので、その旨の応答操作を操作部13で行わせる。そして、被検者2による応答操作があると、感度検査部16bは、そのときの視標の明るさに対応する値を、その視標を呈示している点での網膜感度とする。
【0054】
視標呈示部16aおよび感度検査部16bは、以上のような視標の呈示を利用した網膜感度の測定処理を、視野内の各点について終了するまで(S107)、繰り返し行う(S106~S107)。
【0055】
そして、視野内の各点についての網膜感度の測定処理が終了したら、感度検査部16bは、視野内における網膜感度の相違を量的に調べて感度マップを作成して、その感度マップを被検者2の視野検査の結果として出力部14から出力する(S108)。
【0056】
このようにして、本実施の形態では、被検者2の片眼(検査対象眼)についての視野検査を行う。引き続き、被検者2の他方の眼についても視野検査を行う場合には、検査補助具3を反転させた装用状態とした後に、再び、上述した一連の手順による視野検査を行えばよい(S101~S108)。
【0057】
(本実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、以下に示す一つまたは複数の効果を奏する。
【0058】
(a)本実施の形態においては、視標を呈示する表示部11と対面する視覚検査の被検者2を撮像して撮像画像を得て、その撮像画像を基に表示部11と被検者2との間の距離を認識し、認識した距離と視覚検査のために設定された所定距離Lとの対比結果を距離判定結果として出力するようになっている。つまり、本実施の形態において、視覚検査装置1は、被検者2との間の距離を自動判定する機能を有して構成されている。
したがって、本実施の形態によれば、被検者の顔を固定する顔面支持部(例えば、特許文献1参照)のような利用者にとっての利便性を損なう構成要素を必要とすることなく、視標と被検者2の眼との間を容易かつ確実に所定距離Lとすることができる。これにより、視標(ディスプレイ画面)と被検者2の眼との間を所定距離Lに容易かつ確実に保てるので、ディスプレイ画面に視標を呈示して行う視覚検査の適切化を図ることが可能になる。
【0059】
(b)本実施の形態においては、撮像部12が単眼カメラによって構成されている。そのため、本実施の形態によれば、視野検査にあたり撮像画像の取得が必要であっても、撮像部12を簡素に構成することができ、その結果として視覚検査装置1の構成が複雑化してしまうのを抑制することができる。このことは、特に、視覚検査装置1が可搬型のタブレットである場合に非常に有用である。単眼カメラであれば、タブレットが本来的に有している機能を利用して視覚検査装置1を構成することが可能となるからである。
【0060】
(c)本実施の形態においては、検査補助具3に所定間隔P1で配された複数の基準表号4が付されており、これら複数の基準表号4が付された検査補助具3を装用した状態の被検者2の顔の画像(すなわち、各基準表号4を含む画像)を撮像部12で撮像するようになっている。そのため、本実施の形態によれば、撮像部12が単眼カメラによって構成されていても、画像上での各基準表号4の位置を利用することで、視標を呈示する表示部11のディスプレイ画面と被検者2の眼との間の距離を認識することができる。
【0061】
(d)本実施の形態において、所定間隔P1で配された複数の基準表号4は、それぞれが同一形状で形成されている。そのため、本実施の形態によれば、それぞれが異なる形状の場合に比べると、画像解析部16cでの画像解析(特に、特徴抽出やパターンマッチング等)の際の処理負荷軽減が図れる。
【0062】
(e)本実施の形態において、検査補助具3は、テンプル部3bの反転前後のそれぞれの態様での装用に対応しており、これら複数の態様のいずれかで被検者2が選択的に装用することが可能に構成されている。そのため、本実施の形態によれば、被検者2の片眼毎に別々に視野検査をする場合であっても、左右眼のそれぞれにつき一つの検査補助具3を共用することができるので、経済性(コスト面)において非常に優れたものとなり、使い捨て用途にも適したものとなる。
しかも、本実施の形態によれば、複数の態様のそれぞれに対応するように、所定間隔P1で配された複数の基準表号4が検査補助具3に付されているので、いずれの態様で被検者2が装用した場合であっても、撮像画像を利用した被検者2との間の距離判定を行うことができる。つまり、いずれの態様で被検者2が装用した場合であっても、視標を呈示して行う視覚検査の適切化を図ることが可能になる。
【0063】
(f)本実施の形態においては、視覚検査装置1が可搬型の情報端末装置であるタブレットによって構成されている。そのため、本実施の形態によれば、視覚検査装置1の持ち運びが容易であり、検査スペース(設置スペース)も小さくて済むことから、利用者(被検者や検査者等)にとっての利便性が非常に優れたものとなる。しかも、少なくとも表示部11および撮像部12については、タブレットが本来的に有している機能を利用することができるので、利用者にとっての利便性が非常に優れていることに加えて、経済性(コスト面)においても非常に優れたものとなる。
【0064】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、ここでは、主として、上述した第1の実施の形態との相違について説明する。
【0065】
(装置の具体的な構成)
図5は、視覚検査装置の他の例を示す説明図である。
ここで例に挙げる視覚検査装置1は、撮像部12がステレオカメラによって構成されている点で、第1の実施の形態の場合とは異なる。
【0066】
撮像部12を構成するステレオカメラは、所定間隔P2で離れて配された複数(具体的には二つ)のレンズ部を備え、各レンズ部を通じて得られる複数の画像を同時に撮像するように構成されたものである。ステレオカメラは、例えば視覚検査装置1がタブレットによって構成される場合に、そのタブレットに後付けする機能によって実現することができる。ただし、タブレットがステレオカメラに相当する機能を本来的に有していれば、その機能を利用して実現されるものであってもよい。
【0067】
(視覚検査の手順)
このような構成の視覚検査装置1を用いて視野検査を行う場合には、撮像部12を構成するステレオカメラにより、検査補助具3を装用した状態の被検者2を撮像する。検査補助具3は、片眼毎に別々に視野検査をするために、被検者2に装用させる。ただし、ステレオカメラで撮像することから、このときに被検者2が装用する検査補助具3は、基準表号4が付されている必要はない。
【0068】
被検者2を撮像すると、撮像部12は、ステレオカメラの各レンズ部のそれぞれを通じて、被検者2の顔の画像を撮像画像として得ることになる。このとき、撮像部12は、撮像画像として、被検者2の所定部位を含む画像を得るものとする。所定部位は、例えば、検査補助具3の開口部3aを介して見える被検者2の瞳孔(すなわち、検査対象眼の瞳孔)である。この所定部位は詳細を後述するように距離認識のための基準点の一つとなるが、所定部位を検査対象眼の瞳孔とすれば、被検者2の眼までの距離を認識する上で非常に好ましいものとなる。
【0069】
このようにして得られる各レンズ部のそれぞれでの撮像画像(すなわち、左撮像画像および右撮像画像)の画像データは、撮像部12から情報処理部16に送信される。左撮像画像および右撮像画像の画像データを受信すると、情報処理部16では、その画像データを用いて画像解析部16cが画像解析を行う。具体的には、画像解析部16cは、特徴抽出等といった公知の画像処理技術を利用して、左撮像画像および右撮像画像のそれぞれにつき、各画像中での基準点となる所定部位(例えば、検査対象眼の瞳孔)の画像部分を抽出する。そして、抽出した基準点を利用した各画像のマッチング処理により、左撮像画像と右撮像画像との撮像位置の差分(視差)を求める。このようにして視差を求めたら、三角測量の原理に基づいて、撮像部12の焦点位置と被検者2の所定部位(例えば、検査対象眼の瞳孔)までの距離を算出することができる。このとき、画像解析部16cは、必要に応じて、撮像部12の焦点位置と表示部11のディスプレイ画面との間のオフセット量について、これを補正する演算処理を行う。これにより、画像解析部16cは、撮像部12で得た撮像画像の解析結果から、視標を呈示する表示部11のディスプレイ画面と被検者2の眼との間の距離を認識することができる。なお、画像解析部16cでの処理に必要となる各種の数値情報や演算式情報等については、ストレージ部15に予め記憶されているものとする。
【0070】
以上のようなステレオカメラを利用した距離認識処理の他は、本実施の形態においても、上述した第1の実施の形態の場合と同様の処理を行えばよい。
【0071】
(本実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、第1の実施の形態で説明した一つまたは複数の効果に加えて、以下に示す一つまたは複数の効果を奏する。
【0072】
(g)本実施の形態においては、撮像部12がステレオカメラによって構成されている。そのため、本実施の形態によれば、ステレオカメラの各レンズ部を通じて得られる左撮像画像と右撮像画像との視差を利用することで、視標を呈示する表示部11のディスプレイ画面と被検者2の眼との間の距離を認識することができる。しかも、ステレオカメラを利用することで、基準表号4を必要とせずに距離認識を行うことができる。つまり、本実施の形態によれば、被検者2との間の距離認識を、適切かつ簡便に行うことができる。
【0073】
(h)本実施の形態においては、撮像部12が撮像画像として被検者2の所定部位(例えば、検査対象眼の瞳孔)を含む画像を得るようになっている。そのため、本実施の形態によれば、基準表号4が付された検査補助具3を被検者2に装用させるといった特別な準備を要することなく、例えば被検者2が片眼を手で覆うといった手法でも片眼毎の視野検査が可能となり、利用者にとっての利便性が非常に優れたものとなることに加えて、視野検査の自由度や汎用性等の向上も図れるようになる。
【0074】
<変形例等>
以上に、本発明の第1および第2の実施の形態を具体的に説明したが、本発明の技術的範囲は上述した各実施の形態の内容に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0075】
上述した各実施の形態では、視覚検査の一つである視野検査を行う場合を例に挙げて説明したが、本発明がこれに限定されることはない。すなわち、本発明は、被検者に対して視標を呈示して行う視覚検査であれば、例えば、加齢黄斑変性症の検査や小児の視覚異常(例えば弱視)の検査等を行う視覚検査であっても、上述した各実施の形態の場合と全く同様に適用することが可能である。
【0076】
上述した各実施の形態では、主として、視覚検査装置1がタブレットである場合を例に挙げたが、必ずしもこれに限定されることはなく、PC装置を視覚検査装置1として用いても構わない。
また、タブレットであるかPC装置であるかを問わず、本発明に係る視覚検査装置1は、構成要素の全てが同一のタブレットまたはPC装置に設けられている必要はない。本発明に係る視覚検査装置1は、少なくとも表示部11および撮像部12が被検者2と対面する位置に配されたタブレットまたはPC装置に設けられていれば、他の構成要素については、そのタブレットまたはPC装置と通信可能な他装置(例えば、クラウドサーバ)に設けられていてもよい。
【0077】
上述した各実施の形態では、被検者2の片眼毎に視野検査を行うのにあたり、眼鏡タイプの検査補助具3を用いる場合を例に挙げたが、本発明がこれに限定されることはなく、他のタイプ(例えば、手持ちタイプ)の検査補助具を用いるようにしてもよい。さらには、必ずしも片眼毎の検査である必要はなく、例えば両眼について同時に検査を行う場合であっても、本発明を適用することが可能である。
【0078】
また、眼鏡タイプの検査補助具3を用いる場合において、上述した各実施の形態では、テンプル部3bの反転前後で片眼検査における検査対象眼を切り換える例に挙げたが、本発明がこれに限定されることはない。例えば、上下を反転させた状態での装用を可能にした検査補助具を用い、上下反転の前後で片眼検査における検査対象眼を切り換えるようにしても構わない。つまり、片眼検査における検査対象眼を切り換えるための検査補助具の具体的な態様は、特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0079】
1…視覚検査装置、2…被検者、3…検査補助具、3a…開口部、3b…テンプル部、4…基準表号、11…表示部、12…撮像部、13…操作部、14…出力部、15…ストレージ部、16…情報処理部、16a…視標呈示部、16b…感度検査部、16c…画像解析部、16d…距離判定部
図1
図2
図3
図4
図5