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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】火力調節装置
(51)【国際特許分類】
   F23N 1/00 20060101AFI20230719BHJP
   F23N 5/26 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
F23N1/00 102A
F23N5/26 U
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020045937
(22)【出願日】2020-03-17
(65)【公開番号】P2021148324
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】柘植 真吾
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-306815(JP,A)
【文献】実開平05-079238(JP,U)
【文献】特開2000-199623(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0292748(US,A1)
【文献】特開2013-044502(JP,A)
【文献】特開2011-047538(JP,A)
【文献】特許第3974722(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23N 1/00
F23N 5/26
F16K 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1と第2の2つのバーナの火力を水平方向に揺動操作される単一の操作レバーに連動して調節する火力調節装置であって、第1と第2の両バーナへのガス供給路に介設される弁筐内に、第1バーナへの供給ガス量を可変する第1ニードル弁と、第2バーナへの供給ガス量を可変する第2ニードル弁とが並設され、操作レバーに連動して揺動する、弁筐の外側に設けられたカム板を備え、カム板に、第1ニードル弁に固定した第1ピンに係合する第1カム孔と、第2ニードル弁に固定した第2ピンに係合する第2カム孔とが形成され、カム板の揺動により、第1カム孔と第1ピンとを介して第1ニードル弁が当該第1ニードル弁の軸線方向に進退して、第1バーナへの供給ガス量が調節されると共に、第2カム孔と第2ピンとを介して第2ニードル弁が当該第2ニードル弁の軸線方向に進退して、第2バーナへの供給ガス量が調節されるようにしたものにおいて、
水平の直交2軸の一方をX軸、他方をY軸として、第1と第2の各ニードル弁の軸線はX軸に平行であり、第1ニードル弁と第2ニードル弁とがY軸方向に間隔を存して並設され、カム板は水平方向に揺動することを特徴とする火力調節装置。
【請求項2】
前記カム板は、前記操作レバーと一体であることを特徴とする請求項1記載の火力調節装置。
【請求項3】
前記カム板の揺動中心を中心とする所定の扇形範囲で、前記第1カム孔と前記第2カム孔とが部分的にカム板の揺動方向に重なり合っていることを特徴とする請求項1又は2記載の火力調節装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1と第2の2つのバーナの火力を水平方向に揺動操作される単一の操作レバーに連動して調節する、ガスコンロ等のガス器具に組み込まれる火力調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の火力調節装置として、第1と第2の両バーナへのガス供給路に介設される弁筐内に、第1バーナへの供給ガス量を可変する第1ニードル弁と、第2バーナへの供給ガス量を可変する第2ニードル弁とが並設され、操作レバーに連動して揺動する、弁筐の外側に設けられたカム板を備え、カム板に、第1ニードル弁に固定した第1ピンに係合する第1カム孔と、第2ニードル弁に固定した第2ピンに係合する第2カム孔とが形成され、カム板の揺動により、第1カム孔と第1ピンとを介して第1ニードル弁が当該第1ニードル弁の軸線方向に進退して、第1バーナへの供給ガス量が調節されると共に、第2カム孔と第2ピンとを介して第2ニードル弁が当該第2ニードル弁の軸線方向に進退して、第2バーナへの供給ガス量が調節されるようにしたものは知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このもので、第1ニードル弁と第2ニードル弁とは、上下方向に間隔を存して並設されており、カム板は、上下方向に揺動する。そのため、火力調節装置の上下方向寸法が大きくなり、上下方向寸法を小さくした薄型のガス器具に組み込むことが困難になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-306815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、上下方向寸法を短縮できるようにした火力調節装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、第1と第2の2つのバーナの火力を水平方向に揺動操作される単一の操作レバーに連動して調節する火力調節装置であって、第1と第2の両バーナへのガス供給路に介設される弁筐内に、第1バーナへの供給ガス量を可変する第1ニードル弁と、第2バーナへの供給ガス量を可変する第2ニードル弁とが並設され、操作レバーに連動して揺動する、弁筐の外側に設けられたカム板を備え、カム板に、第1ニードル弁に固定した第1ピンに係合する第1カム孔と、第2ニードル弁に固定した第2ピンに係合する第2カム孔とが形成され、カム板の揺動により、第1カム孔と第1ピンとを介して第1ニードル弁が当該第1ニードル弁の軸線方向に進退して、第1バーナへの供給ガス量が調節されると共に、第2カム孔と第2ピンとを介して第2ニードル弁が当該第2ニードル弁の軸線方向に進退して、第2バーナへの供給ガス量が調節されるようにしたものにおいて、水平の直交2軸の一方をX軸、他方をY軸として、第1と第2の各ニードル弁の軸線はX軸に平行であり、第1ニードル弁と第2ニードル弁とがY軸方向に間隔を存して並設され、カム板は水平方向に揺動することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、第1と第2の両ニードル弁を水平のY軸方向に並設することで、カム板を水平方向に揺動させて、両ニードル弁をその軸線方向たる水平のX軸方向に進退させ、第1と第2の両バーナの火力を調節することが可能になる。そのため、火力調節装置の上下方向寸法を短縮できる。上記「水平」とは、完全な水平だけでなく、水平から若干傾いた方向も含む用語である。
【0008】
また、本発明では、カム板が水平方向に揺動するため、カム板を水平方向に揺動する操作レバーと一体にすることができる。これにより、部品点数を削減して、コストダウンを図ることができる。
【0009】
また、本発明においては、カム板の揺動中心を中心とする所定の扇形範囲で、第1カム孔と第2カム孔とが部分的にカム板の揺動方向に重なり合っていることが望ましい。これによれば、カム板の揺動方向における幅を短縮して、カム板を小型にできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態の火力調節装置を具備するバルブユニットの斜視図。
図2図1のバルブユニットの平面図。
図3図1のバルブユニットのニードル弁を配置した部分の側面図。
図4図3のIV-IV線で切断した切断平面図。
図5図1のバルブユニットの一部を分解した状態の斜視図。
図6図2のVI-VI線で切断した拡大断面図。
図7】カム板の回転位置と供給ガス量及びカム板の回転負荷との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1図2に示す本発明の実施形態の火力調節装置Aは、大容量の主バーナから成る第1バーナBと小容量の副バーナから成る第2バーナBとを有するコンロバーナBへの供給ガス量を可変するものである。この火力調節装置Aは、下部前端に、図示省略したコンロ本体の前面の点消火釦に押されて動く操作部材11が組付けられたバルブユニット1の上部に設けられている。バルブユニット1の下部には、図示しないが、電磁安全弁とその下流側の開閉弁とが組み込まれており、操作部材11を後方に押し操作したときに電磁安全弁が強制開弁されると共に開閉弁が開弁されて、コンロバーナBにガスが供給される。
【0012】
火力調節装置Aは、バルブユニット1の上部の弁筐2内に、図4に示す如く、軸線方向たる前後方向に進退自在に設けられた第1バーナB用の第1ニードル弁3と第2バーナB用の第2ニードル弁3とを備えている。弁筐2には、第1バーナBに連なる第1ガス出口21と、第2バーナBに連なる第2ガス出口21と、第1ガス出口21に第1弁孔22を介して連通する、前後方向に長手で弁筐2の前方(図4で右方)に開口する第1弁室23と、第2ガス出口21に第2弁孔22を介して連通する、前後方向に長手で弁筐2の前方に開口する第2弁室23と、開閉弁を通過したガスを第1弁室23に流入させる第1ガス入口24と、開閉弁を通過したガスを第2弁室23に流入させる第2ガス入口24とが形成されている。そして、第1と第2の各弁室23,23に、第1と第2の各ニードル弁3,3が前方から摺動自在に挿入されている。
【0013】
第1と第2の各ニードル弁3,3は、後端部に、第1と第2の各弁孔22,22に嵌合可能なニードル部3a,3aと、各ニードル部3a,3aが各弁孔22,22に嵌合した状態でもガスを流すバイパス孔3b,3bとを有している。また、第1弁室23は、後部を小径とした段付き形状に形成されており、第1弁室23の大径部分23aに第1ガス入口24が設けられている。第1ニードル弁3のニードル部3aから若干前方に離れた部分には、第1弁室23の後部の小径部分23bに嵌合可能なOリング3cが装着されている。そして、Oリング3cが第1弁室23の小径部分23bに嵌合している状態では、第1バーナBへのガス供給が停止され、第1ニードル弁3の前方への移動で、Oリング3cが第1弁室23の小径部分23bから大径部分23aに変位したときに、第1バーナBへのガス供給が開始されるようにしている。
【0014】
図1乃至図5を参照して、火力調節装置Aは、更に、図示省略したコンロ本体の前面前方に突出する操作レバー4の水平方向の揺動に連動して揺動する、弁筐2の外側に設けられたカム板5を備えている。カム板5には、第1ニードル弁3に固定した第1ピン6に係合する第1カム孔51と、第2ニードル弁3に固定した第2ピン6に係合する第2カム孔51とが形成されている。また、弁筐2の外面には、カム板5の裏側に位置するガイド板7が固定されている。ガイド板7には、第1と第2の各ピン6,6が挿通される、第1と第2の各ニードル弁3,3の軸線方向(前後方向)に長手の第1と第2の各ガイド孔71,71が形成されている。そして、カム板5の揺動により、第1カム孔51と第1ピン6とを介して第1ニードル弁3が当該第1ニードル弁3の軸線方向に進退して、第1バーナBへの供給ガス量が調節されると共に、第2カム孔51と第2ピン6とを介して第2ニードル弁3が当該第2ニードル弁3の軸線方向に進退して、第2バーナBへの供給ガス量が調節されるようにしている。
【0015】
尚、第1と第2の各ガイド孔71,71は、第1と第2の各ニードル弁3,3が若干回転しながら軸線方向に移動するように、軸線方向に対し若干傾いている。また、第1カム孔51の端部と第2カム孔51の端部とをつなぐ孔を設けて、第1と第2の両カム孔51,51を一筆書き状に連続させてもよい。
【0016】
カム板5が図1図2に示す最小火力位置から同図で反時計回り方向に揺動すると、第1カム孔51と第1ピン6とを介して第1ニードル弁3図4に示す位置からX軸方向一方(前方)に移動して、第1バーナBへの供給ガス量が図7のa線で示す如く変化すると共に、第2カム孔51と第2ピン6とを介して第2ニードル弁3図4に示す位置からX軸方向一方に移動して、第2バーナBへの供給ガス量が図7のb線で示す如く変化する。
【0017】
ここで、カム板5が第1バーナBへのガス供給が開始される揺動位置を含む所定の揺動範囲θaでゆっくりと揺動されると、第1バーナBでの逆火を生ずる恐れがある。そのため、カム板5がこの揺動範囲θaに回転されたときにクリック感を与えて、この揺動範囲θaでカム板5が勢いよく揺動されるようにすることが望まれる。そこで、カム板5が上記揺動範囲θaに揺動されたときにクリック感を与えるクリック機構8を設けている。
【0018】
クリック機構8は、カム板5の裏側の上記ガイド板7に設けられたカム板5側に突出する突起81と、カム板5の表側に配置された板バネ82とで構成されている。板バネ82には、カム板5を軸支する後述するボス部25に外嵌する軸支孔821が形成されている。そして、ボス部25に螺着する押えネジ83で板バネ82を押えている。突起81は、図6に示す如く、カム板5に形成した透孔53を通して板バネ82の先端部822に常時圧接している。更に、板バネ82には、カム板5に形成した係止孔54と切欠き55に係合する爪部823,824が設けられており、板バネ82がカム板5と一緒に回転する。
【0019】
また、板バネ82の先端部822の周方向中央部には、カム板5側に突出する凸部825が設けられている。そして、カム板5が上記揺動範囲θaに回転されたときに、凸部825が突起81に当接して乗り上げることで、カム板5の揺動負荷が図7のc線で示すように増加してクリック感が与えられるようにしている。そのため、カム板5の上記揺動範囲θaでは、増加した揺動負荷に抗するように操作レバー4に加える力を強くすることになり、カム板5が勢いよく揺動されて、第1バーナBでの逆火を防止することができる。
【0020】
ここで、水平の直交2軸の一方である前後方向の軸をX軸、他方である横方向の軸をY軸として、本実施形態では、第1と第2の各ニードル弁3,3の軸線をX軸に平行とし、第1ニードル弁3と第2ニードル弁3とをY軸方向に間隔を存して並設している。また、カム板5には、弁筐2の上面に突設したボス部25に外嵌する軸支孔52が形成されており、ボス部25を支点にしてカム板5が水平方向に揺動する。このように、第1と第2の両ニードル弁3,3を水平のY軸方向に並設することで、カム板5を水平方向に揺動させて、両ニードル弁3,3をその軸線方向たる水平のX軸方向に進退させ、第1と第2の両バーナB,Bの火力を調節できる。そのため、火力調節装置Aの上下方向寸法を短縮でき、上下方向寸法を小さくした薄型のガスコンロにも火力調節装置Aを組み込むことが可能になる。
【0021】
また、カム板5が水平方向に揺動するため、カム板5を水平方向に揺動する操作レバー4と一体にすることができる。そこで、本実施形態では、カム板5の外縁に操作レバー4を一体に曲成して、カム板5を操作レバー4と一体にしている。これにより、部品点数を削減して、コストダウンを図ることができる。
【0022】
また、本実施形態では、図2に明示する如く、カム板5の揺動中心を中心とする所定の扇形範囲Wで、第1カム孔51と第2カム孔51とが部分的にカム板5の揺動方向に重なり合っている。これによれば、カム板5の揺動方向における幅を短縮して、カム板5を小型できる。
【0023】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、弁筐2に、上記第1と第2の各ガイド孔71,71に相当するガイド孔を形成して、ガイド板7を省略し、弁筐2に一体にクリック機構8用の突起を形成することも可能である。然し、弁筐2は、一般的に、アルミダイキャスト製とするため、これにガイド孔や突起を形成したのでは、耐久性を確保することが困難になる。従って、上記実施形態の如くガイド板7を設けて、ガイド板7に第1と第2の各ガイド孔71,71と突起81とを形成することが望ましい。また、上記実施形態は、主バーナから成る第1バーナBと副バーナから成る第2バーナBとを有するコンロバーナBの火力を調節するものであるが、グリルの上火バーナから成る第1バーナと下火バーナから成る第2バーナとの火力を調節する火力調節装置にも同様に本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0024】
A…火力調節装置、B…第1バーナ、B…第2バーナ、2…弁筐、3…第1ニードル弁、3…第2ニードル弁、4…操作レバー、5…カム板、51…第1カム孔、51…第2カム孔、6…第1ピン、6…第2ピン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7