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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】建物の施解錠システム
(51)【国際特許分類】
   E05B 49/00 20060101AFI20230719BHJP
【FI】
E05B49/00 Z
E05B49/00 J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020099550
(22)【出願日】2020-06-08
(65)【公開番号】P2021193252
(43)【公開日】2021-12-23
【審査請求日】2022-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】淺田 信行
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-065487(JP,A)
【文献】特開2014-181499(JP,A)
【文献】特開2008-138440(JP,A)
【文献】特開昭63-265088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00 - 85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の出入口を開閉する開閉体に設けられ、開閉体の施解錠をする施錠装置と、
ユーザにより携帯され、固有の識別情報を送信する電子キーと、
建物の出入口付近の所定範囲を通信エリアとして、前記電子キーとの間で無線通信可能が可能な通信装置と、
前記開閉体の屋外側に設けられ、上下方向に延びる屋外ハンドルと、
人の動作を検知する検知手段と、
前記識別情報を記憶する記憶手段と、
前記施錠装置の施解錠を制御する制御手段と、
を備える施解錠の施解錠システムであって、
前記屋外ハンドルは、前記開閉体と、前記屋外ハンドルとの間に空間を有するように設けられ、
前記検知手段は、検知範囲を前記空間内に有し、前記空間内における人の動作を非接触で検知し、
前記記憶手段は、前記検知手段による所定の検知態様をあらかじめ記憶し、
前記制御手段は、前記電子キーから送信される前記識別情報を、前記通信装置を通じて受信し、かつ、前記検知手段による検知の態様が、前記記憶手段が記憶する前記所定の検知態様と一致する場合に、前記施錠装置の解錠制御を実行し、
前記検知手段は、前記空間内において前記検知範囲が互いに異なる複数のセンサにより構成され、
前記複数のセンサには、上下方向に離間して配置され前記検知範囲が水平方向に延びている第1センサ及び第2センサと、前記検知範囲が上下方向に延びている第3センサとが含まれていることを特徴とする、建物の施解錠システム。
【請求項2】
前記所定の検知態様は、所定の時間内における前記検知手段による検知の回数により定められることを特徴とする、請求項1に記載の建物の施解錠システム。
【請求項3】
前記記憶手段は、各ユーザが所持する前記電子キーの前記識別情報と、前記所定の検知態様とを関連付けて記憶し、
前記制御手段は、前記通信装置が受信した識別情報と、前記検知手段による検知の態様とが、前記記憶手段においてユーザと関連付けて記憶されている前記識別情報及び前記所定の検知態様と一致する場合に、前記施錠装置の解錠制御を実行することを特徴とする、請求項1又は2に記載の建物の施解錠システム。
【請求項4】
前記所定の検知態様は、所定の時間内における、前記複数のセンサによる検知の順序により定められることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の建物の施解錠システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の施解錠システムに関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物では、ユーザが携帯する電子キーによる認証に基づいてドアの施解錠を行う施解錠システムが知られている。例えば、電子キーによる認証がなされ、かつ、ユーザがドアのハンドルに触れた場合にドアの施解錠を実行するタッチ式の施解錠システムが存在する。
【0003】
このような施解錠システムにおいて、ユーザ以外の他人が電子キーを拾得した場合に、当該他人により施解錠がなされるおそれがあることは防犯上好ましくない。
【0004】
このため、電子キーからの識別信号による認証に加え、他の方法による認証を行うことで、防犯性を高める技術が提案されている。例えば、特許文献1の発明では、電子キーによる認証と、ユーザが行うハンドル操作の特性である操作特性を利用したユーザの特定とを組み合わせて、ユーザの認証を行う住宅用ハンドル装置を提供する。
【0005】
具体的には、ユーザが所持する電子キーの識別情報や当該ユーザがハンドルを操作する際の操作特性(例えば、ハンドルの把持位置)といった、各ユーザに紐づいた認証情報をあらかじめユーザデータベースに記憶させておく。そして、電子キーからの識別情報を受信し、かつハンドルに設けた検知手段により、ハンドルへの接触及びその際の操作特性を検知すると、それら認証情報をユーザデータベースと照合してユーザの特定を行う。このようにして、ユーザ認証時における信頼性の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-65487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ユーザの認証に利用される操作特性は、近くにいる第三者からも理解しやすいものであるため、第三者から視認された場合に特定されることが懸念される。この点で、上記特許文献1の発明には未だ改善の余地があると考えられる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、解錠方法の第三者による特定を困難にすることにより防犯性の向上を図ることができる、建物の施解錠システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明の建物の施解錠システムは、
建物の出入口を開閉する開閉体に設けられ、開閉体の施解錠をする施錠装置と、
ユーザにより携帯され、固有の識別情報を送信する電子キーと、
建物の出入口付近の所定範囲を通信エリアとして、前記電子キーとの間で無線通信可能が可能な通信装置と、
前記開閉体の屋外側に設けられた屋外ハンドルと、
人の動作を検知する検知手段と、
前記識別情報を記憶する記憶手段と、
前記施錠装置の施解錠を制御する制御手段と、
を備える施解錠の施解錠システムであって、
前記屋外ハンドルは、前記開閉体と、前記屋外ハンドルとの間に空間を有するように設けられ、
前記検知手段は、検知範囲を前記空間内に有し、前記空間内における人の動作を非接触で検知し、
前記記憶手段は、前記検知手段による所定の検知態様をあらかじめ記憶し、
前記制御手段は、前記電子キーから送信される前記識別情報を、前記通信装置を通じて受信し、かつ、前記検知手段による検知の態様が、前記記憶手段が記憶する前記所定の検知態様と一致する場合に、前記施錠装置の解錠制御を実行することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、施錠装置の解錠時におけるユーザの認証は、電子キーからの識別情報と検知手段による検知の態様とに基づいて行われる。そして、検知手段は、開閉体と屋外ハンドルとの間に形成された空間内に検知範囲を有する。このため、ユーザは、ユーザ認証のための動作(以下、「認証動作」という。)を当該空間内において実行することになる。かかる構成においては、屋外ハンドルによって死角が形成されることにより、認証動作が第三者から視認されることを抑制できる。したがって、第三者が認証動作を特定することが困難となり防犯性に優れる。また、検知手段を非接触型のものとすることで、ユーザは、ユーザ認証のために屋外ハンドルに手を触れる必要がない。このため、屋外ハンドルに付着した指紋等を手掛かりに認証動作が特定されることを抑制できる。
【0011】
第2の発明の建物の施解錠システムは、第1の発明において、
前記所定の検知態様は、所定の時間内における前記検知手段による検知の回数により定められることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、ユーザは、検知手段によるユーザ認証時において、検知手段の検知範囲を通過するように手を動かすことになる。このため、ある特定の位置で手を静止させてユーザ認証を行う場合よりも、視認によってユーザ認証の方法を特定することは困難となる。このため防犯性を向上させることができる。
【0013】
第3の発明の建物の施解錠システムは、第1又は第2の発明において、
前記記憶手段は、各ユーザが所持する前記電子キーの前記識別情報と、前記所定の検知態様とを関連付けて記憶し、
前記制御手段は、前記通信装置が受信した識別情報と、前記検知手段による検知の態様とが、前記記憶手段においてユーザと関連付けて記憶されている前記識別情報及び前記所定の検知態様と一致する場合に、前記施錠装置の解錠制御を実行することを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、識別情報が記憶された複数の電子キーのそれぞれに対して、認証動作を個別で設定することができる。これにより、各電子キーを所有するユーザごとに、各人にとって実行しやすい認証動作を設定でき、利便性に優れる。また、ユーザでない第三者は、ある特定の電子キーに対応する認証動作を特定したとしても、当該電子キーを入手しない限り施錠装置を不正解錠できない。このため、防犯性にも優れる。
【0015】
第4の発明の建物の施解錠システムは、第1~第3のいずれかの発明において、
前記検知手段は、前記空間内において前記検知範囲が互いに異なる複数のセンサにより構成されることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、検知手段は検知範囲が互いに異なる複数のセンサから構成され、開閉体と屋外ハンドルとの間に形成された空間内には、互いに異なる複数の検知範囲が存在することになる。このため、ユーザが認証動作を行うべき位置についても複数設定することができる。例えば、ユーザの身長によって認証動作を実行しやすい高さは異なる。ここで、それぞれの検知範囲が上下に並ぶように複数のセンサを設け、認証に用いるセンサをユーザごとに使い分けることで、ユーザの身長によらず使い勝手のよいものとなる。
【0017】
第5の発明の建物の施解錠システムは、第4の発明において、
前記所定の検知態様は、所定の時間内における、前記複数のセンサによる検知の順序により定められることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、検知範囲が互いに異なる複数のセンサを用いて1つの認証動作を識別する。このため、認証動作をより複雑かつ多様な形で設定することが可能となる。したがって、視認による認証動作を特定することは、より困難となり防犯性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】玄関周辺を示す平面図
図2】玄関周辺を示す側面図
図3】屋外ハンドルの側面図
図4】施解錠システムの電気的構成を示す図
図5】制御処理の流れを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図1図3を参照しつつ説明する。
【0021】
図1に示すように、建物10には屋内スペースとして、玄関部11、廊下12、居室13などが設けられている。玄関部11には出入口としての玄関口15が設けられている。また、玄関口15には開閉体としての玄関ドア16が設けられている。玄関ドア16は、例えば回動式の開き戸からなり右吊元とされている。この玄関ドア16により玄関口15が開閉されるようになっている。
【0022】
玄関ドア16(屋内側)には施錠装置32が取り付けられている。施錠装置32は通電により施解錠を行う電気錠からなる。施錠装置32はユーザである建物10の居住者が携帯する電子キー31によって施解錠されるようになっている。また、施錠装置32は屋内側からの施解錠操作が可能なサムターン部(図示略)を有している。居住者が施錠装置32を屋内側から施解錠する場合には、このサムターン部を操作することにより施解錠することができる。
【0023】
施錠装置32は玄関ドア16に収納される錠ケース33と、錠ケース33に収容され玄関ドア16の戸先から突出可能なデッドボルト34とを備えている。このデッドボルト34に対応する受孔部35が玄関口15の側面に設けられている。玄関ドア16の戸先から施錠装置32によりデッドボルト34を突出させて受孔部35に挿入することにより、施錠装置32が施錠される。すなわち、デッドボルト34を突出又は収納させることにより施錠装置32が施錠又は解錠され、玄関ドア16の開閉が規制又は許容される。換言すれば、デッドボルト34が受孔部35に挿入されて係合構造となることにより施錠装置32が施錠状態とされる。
【0024】
図2及び図3に示すように、玄関ドア16の屋外側には屋外ハンドル21が設けられている。屋外ハンドル21はグリップ22と上下一対の台座23とから構成されている。グリップ22は上下方向に延びる長尺状に形成され、玄関ドア16の表面において屋外方向へ突出して設けられる台座23により支持されている。玄関ドア16と屋外ハンドル21との間には、玄関ドア16の表面とグリップ22と上下の台座23とで囲まれて形成される空間24が存在し、居住者は当該空間24に手を差し入れることができるようになっている。
【0025】
屋外ハンドル21には、非接触型の検知手段としての第1センサ41、第2センサ42及び第3センサ43(以下、「センサ41~43」とまとめて称する場合もある。)が設けられている。これらのセンサ41~43はビーム式の赤外線センサであって、光軸が遮られた場合に検知する。センサ41~43のうち、第1センサ41及び第2センサ42は、屋外ハンドル21を構成するグリップ22の側面に玄関ドア16の表面に向けて設けられ、赤外線ビームを玄関ドア16の表面に向けて水平に照射する。すなわち、第1センサ41の検知範囲DA1及び第2センサ42の検知範囲DA2は、水平方向に向いた光軸により形成されている。また、第1センサ41及び第2センサ42は上下方向に離間して配置されており、第1センサ41が上側に、第2センサ42が下側に設けられている。第1センサ41は検知範囲DA1を空間24の上部に有し、第2センサ42は検知範囲DA2を空間24の下部に有している。
【0026】
第3センサ43は赤外線を発光する投光器44aと、投光器44aからの光を受光する受光器44bとから構成される。投光器44aは、屋外ハンドル21を構成する上下一対の台座23のうち一方の台座23の空間24側の面に設けられている。受光器44bはもう一方の台座23の空間24側の面に投光器44aと対向して設けられている。より具体的には、投光器44aが上側の台座23の下面に取り付けられ、受光器44bが下側の台座23の上面に取り付けられている。すなわち、第3センサ43の検知範囲DA3は上下方向を向いた光軸により形成されている。このように、センサ41~43は、それぞれの検知範囲DA1、DA2、DA3を玄関ドア16表面と屋外ハンドル21とで囲まれて形成される空間24内に有し、空間24内における居住者の手指の動作を検知するように構成されている。
【0027】
玄関ドア16付近の屋外側(玄関ドア16の屋外側の面でも可)には、無線通信可能な通信装置51が設けられている。通信装置51における無線通信用の通信エリアCAは、平面視において通信装置51を中心とする円形の所定範囲であり、その範囲が玄関口15の屋内側及び屋外側に跨るように設定されている。詳しくは、通信装置51の通信エリアCAは、玄関ドア16の屋外側で住人が屋外ハンドル21をつかんだ場合、居住者が通信エリアCA内に位置するように設定されている。通信装置51は、その通信エリアCA内にて電子キー31と通信可能とされている。
【0028】
続いて、施解錠システムの電気的構成について図4に基づいて説明する。
【0029】
施解錠システムは制御手段としてのコントローラ61を備える。コントローラ61はCPU、ROM、RAMなどからなる周知のマイクロコンピュータを含んで構成され、建物10の屋内側(例えば、玄関口15周辺の壁面など)に設けられている。なお、コントローラ61は玄関ドア16内に設けられていてもよい。
【0030】
コントローラ61には、電子キー31のID情報やセンサ41~43などの各種機器からの検知結果などを記憶する記憶手段としての記憶部62と、時間を計測する場合に用いられるタイマ63とが設けられている。
【0031】
さらに、記憶部62には、居住者認証のための識別情報としてセンサ41~43における検知の態様(以下、「所定の検知態様」という。)が記憶されている。その際、所定の検知態様は電子キー31のID情報と関連付けて記憶される。つまり、電子キー31ごとに所定の検知態様を設定することが可能となっている。また、本実施例では、所定の検知態様は、所定の時間内におけるセンサ41~43による検知の回数と、それらの検知を3つのセンサ41~43のうちいずれにより行うかについての情報とから構成される。
【0032】
施錠装置32には、施錠装置32が施錠状態にあるか又は解錠状態にあるかを検知する施解錠検知センサ36が内蔵されている。コントローラ61には施解錠検知センサ36から逐次検知結果が入力される。コントローラ61は、入力された検知結果に基づいて施錠装置32の施解錠状態(施錠状態又は解錠状態)を判定する。
【0033】
コントローラ61には通信装置51が接続されている。通信装置51は建物10に居住する各住人の携帯する電子キー31とそれぞれ無線通信が可能とされている。この場合、コントローラ61は、通信装置51を介して各住人の電子キー31と無線通信が可能とされている。
【0034】
電子キー31は、電子キー31ごとに固有のID情報を記憶するメモリ(図示略)を備えており、コントローラ61からの要求に応じてID情報を送信する。ここで、通信装置51はリクエスト信号を所定の時間周期(例えば0.5秒ごとに)で送信する。これに対し、電子キー31は通信装置51の通信エリアCAである通信エリアCAに進入してリクエスト信号を受信すると、そのリクエスト信号に応答してID情報を通信装置51に送信する。そして、ID情報が通信装置51により受信されると当該ID情報が通信装置51からコントローラ61に入力される。コントローラ61は通信装置51を介して電子キー31からのID情報が入力されると、当該ID情報とあらかじめ記憶部62に登録されたID情報との一致判定を行い、正規の電子キー31であるか否かの認証を行う。
【0035】
コントローラ61には第1センサ41、第2センサ42及び第3センサ43が接続されている。コントローラ61にはこれらのセンサ41~43から逐次検知結果が入力される。そして、上記ID情報によって電子キー31が正規認証されている状況において、センサ41~43から検知結果が入力されると、コントローラ61はその検知の態様に基づいて施錠装置32の施解錠制御を実行する。ただし、電子キー31が正規のものに該当しない場合には施錠装置32の施解錠は実行されない。
【0036】
次に、コントローラ61により実行される制御処理の内容について図5に基づいて説明する。本処理は、所定の時間周期で繰り返し実行される。
【0037】
ステップS11では、通信装置51を介して電子キー31からのID情報を受信したか否かを判定する。ID情報を受信した場合はステップS12に進む。ID情報が受信されない場合は本処理を終了する。
【0038】
ステップS12では、受信したID情報と予め登録されたID情報とを比較して正規の電子キー31であるか否かの認証を行う。判定がYESである場合はステップS13に進む。NOである場合は本処理を終了する。これにより、居住者以外の第三者がセンサ41~43により玄関ドア16の解錠を行うことを抑制できる。
【0039】
ステップS13では、認証した電子キー31と対応して記憶されているセンサ41~43による所定の検知態様を、居住者の認証の基準として設定する。上述のとおり、所定の検知態様は電子キー31ごとに設定可能である。このため、電子キー31を所持する居住者ごとに当該居住者に適した態様を設定することができる。例えば、身長が高い居住者には第1センサ41を用いた所定の検知態様を設定する一方で、子供など身長が低い居住者には、より低い位置に設けられた第2センサ42を用いた所定の検知態様を設定することができる。
【0040】
ステップS14以降では、センサ41~43に基づく施解錠の制御を行う。ここで、居住者は、玄関ドア16表面と屋外ハンドル21とで囲まれて形成される空間24において認証動作を行う。まず、ステップS14では、センサ41~43のいずれかにおいて検知が行われたか否かを判定する。判定がYESの場合はステップS15に進む。NOの場合は本処理を終了する。なお、上述のとおり、第1センサ41及び第2センサ42は水平方向に検知範囲DA1、DA2を有している。これにより、居住者による手の上下動作を検知するようになっている。第3センサ43は上下方向に検知範囲DA3を有し、居住者による手指の屈伸動作を検知するようになっている。
【0041】
ステップS15では、施錠装置32の施解錠状態が施錠状態であるか否かを判定する。施錠装置32が施錠状態である場合にはステップS16に進む。解錠状態である場合にはステップS25に進む。
【0042】
ステップS16では、タイマ63をセットし、タイマ63による計時を開始する。続いてステップS17に進む。また、電子キー31が認証され、センサ41~43のうちいずれかにおいて検知を行い、かつ施錠装置32が解錠状態である場合、すなわちステップS15においてNO判定である場合には、上述のとおりステップS25に進む。ステップS25では、施錠処理を実行する。具体的には、施錠装置32に施錠信号を出力すると、施錠信号を受信した施錠装置32はデッドボルト34を吊元側から戸先側へと移動させる。そして、錠ケース33に収納されていたデッドボルト34が受孔部35に挿入されると、玄関ドア16は開閉不可となり本処理は終了する。
【0043】
ステップS17では、タイマ63により計時されている時間が所定時間T1を経過したか否かを判定する。所定時間T1が経過していない場合にはステップS18に進む。ここで、所定時間T1は居住者が所定の動作を実行するために設けられる時間であり、例えば3秒に設定される。すなわち、居住者は、センサ41~43で初回の検知がなされてから所定時間T1が経過するまでに所定の動作を完了しなければならない。
【0044】
ステップS18では、センサ41~43から受信した検知信号を記憶部62に記憶する。そして、ステップS17に戻り各処理を繰り返す。すなわち、所定時間T1が経過するまでの間、受信した検知信号を逐次記憶していく。
【0045】
所定時間T1が経過すると、続いてステップS19の処理が実行される。ステップS19では、所定時間T1内に記憶されたセンサ41~43の検知態様が、所定の検知態様と一致するか否かを判定する。ここで具体例として、所定の検知態様が、第1センサ41で2回検知し、続いて第3センサ43で2回検知し、更に第1センサ41で1回検知するものとして規定されている場合について説明する。この場合、居住者が、所定時間T1である3秒間で、第1センサ41の光軸を2回遮光し、続いて第3センサ43の光軸を2回遮光し、更に第1センサ41の光軸を1回遮光するように動作を実行すると、一致と判定される。このように、本ステップでは、所定時間T1内に居住者が実行した動作に基づき居住者であるか否かの認証を行うようになっている。そして、ここでの判定がYESの場合はステップS20に進む。NOの場合はステップS21に進む。
【0046】
なお、ステップS19の認証では、センサ41~43による検知結果と所定の検知態様とが完全一致した場合にのみ、一致と判定するようになっている。このため、居住者が所定の動作の一部のみを実行した場合や、所定の動作を完了後、更にその他の動作を実行した場合については不一致と判定するようになっている。例えば、3秒間で、第1センサ41での2回の検知と、第2センサ42での1回の検知が行われた場合には、所定の動作の一部のみが実行されており不一致と判定される。また、3秒間で、第1センサ41で2回検知し、続いて第3センサ43で2回検知し、更に第1センサ41で1回検知し、加えて第2センサ42で2回検知した場合には、最後の2回の検知により不一致と判定される。これにより、第三者がランダムな動作を行った場合に誤って居住者と認証してしまうことを抑制できる。
【0047】
ステップS20では、ステップS19において居住者の認証に成功したことに基づき解錠処理を実行する。施錠装置32に解錠信号を出力すると、解錠信号を受信した施錠装置32はデッドボルト34を戸先側から吊元側へと移動させる。そして、受孔部35に挿入されていたデッドボルト34が錠ケース33に収納されると、玄関ドア16は開閉可能となり本処理は終了する。
【0048】
ステップS21では、ステップS19において居住者の認証に失敗したことに基づき認証に失敗した旨の報知を行う。具体的には、屋外ハンドル21には報知部(図示略)が設けられており、その報知部が音声を出力することで報知を行う。
【0049】
また、記憶部62は電子キー31ごとにセンサ41~43による認証に失敗した回数を記憶するようになっている。そして、ステップS22では、当該電子キー31について記憶されているセンサ41~43による認証に失敗した回数の記憶値に加算を行う。ただし、当該電子キー31によりセンサ41~43による認証に成功した場合には、当該電子キー31に関する記憶値はリセットされるようになっている。つまり、認証に連続して失敗した場合に、その回数が記憶されるようになっている。続いて、ステップS23へ進む。
【0050】
ステップS23では、当該電子キー31に関して記憶されているセンサ41~43による認証に失敗した回数の記憶値が3回に達したか否かを判定する。判定がNOの場合はステップS14に戻り上述の処理を繰り返す。そして、施錠装置32が解錠されるまでに失敗回数が3回に達した場合には、判定がYESとなりステップS24に進む。
【0051】
ステップS24では、当該電子キー31に基づく施錠装置32の制御を無効化する。その後、本処理を終了する。すなわち、同一の電子キー31についてセンサ41~43による認証に3回連続で失敗すると、当該電子キー31は使用不能となる。これにより、電子キー31を拾得した第三者により施錠装置32が解錠されてしまうことを抑制できる。
【0052】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0053】
本実施形態では、施錠装置32の解錠時における居住者の認証は、電子キー31からの識別情報と居住者の動作の態様とに基づいて行われる。そして、居住者の動作の検知は玄関ドア16と屋外ハンドル21とで囲まれて形成された空間24内で行われる。このため、屋外ハンドル21が死角を形成することにより、第三者から動作を視認されることが抑制される。したがって、第三者が解錠方法を特定することが困難となり防犯性に優れる。
【0054】
本実施形態では、所定の時間内におけるセンサ41~43の検知回数により居住者の認証を行う。すなわち、居住者はセンサ41~43の検知範囲DA1~DA3を通過するように手を動かすことになる。したがって、ある特定の位置で手を静止させて認証を行う場合よりも、視認による解錠方法の特定がより困難となる。また、第1センサ41の検知範囲DA1及び第2センサ42の検知範囲DA2は水平方向となっており、居住者の手指の上下方向の動作を検知できるようになっている。第3センサ43の検知範囲DA3は上下方向に延びており、居住者の手指の曲げ伸ばしを検知できるようになっている。そして、検知範囲が互いに異なる複数のセンサ41~43による検知を組み合わせることで、認証動作の多様化を図っている。
【0055】
さらに、本実施形態では、水平方向の光軸を有する第1センサ41又は第2センサ42と、上下方向の光軸を有する第3センサ43とを組み合わせて用いることで、斜め方向の動作を検知することも可能である。例えば、所定の検知態様を「第3センサ43で1回、第1センサ41で2回、第3センサ43で1回」として設定した場合について、図3を参照しつつ説明する。かかる設定において、居住者が実行すべき認証動作としては、「空間24の上部で手を握った状態から、斜め上方に手指を伸ばして検知範囲DA3と検知範囲DA1とを通過し、検知範囲DA1を完全に通過したら、続いて手指を曲げていき、検知範囲DA1と検知範囲DA3とを通過する」ものが一例として考えられる。この場合、認証動作は斜め方向の動作により構成されている。また、当該認証動作を実行する際には、適切な角度で指の曲げ伸ばしを行うことや、検知範囲DA1を完全に通過するまで指を伸ばすことといった様々な留意点が存在する。このため、第三者による解錠は困難なものとなり防犯性に優れる。
【0056】
ちなみに、「第1センサ41が2回検知を行う」動作は、上述のように、検知範囲DA1を完全に通過するような手指の曲げ伸ばし動作を1回行い、往復で検知がなされるものであってもよいし、検知範囲DA1に入ると同時に引き返すような手指の曲げ伸ばし動作を2回繰り返すものであってもよい。すなわち、ある所定の検知態様を満たす認証動作は複数存在し得る。このため、複数の認証動作を適宜使い分けることで、第三者による操作態様の特定を、より一層困難なものとすることができる。
【0057】
本実施形態では、電子キー31ごとに所定の検知態様を設定することができる。これにより、各電子キー31を所有する居住者ごとに各居住者にとって実行しやすい動作を設定できる。また、第1センサ41及び第2センサ42は上下に離間して設けられており、第1センサ41は空間24の上部に検知範囲DA1を有し、第2センサ42は空間24の下部に検知範囲DA2を有している。このため、身長の高い居住者(例えば、大人)には、主に第1センサ41による検知から構成された所定の検知態様を設定し、身長の低い居住者(例えば、子供)には、主に第2センサ42による検知から構成された所定の検知態様を設定することで、本施解錠システムは、居住者の身長によらず使いやすいものとなる。なお、第3センサ43は、上下方向に延びる検知範囲DA3を有するため、投光器44aと受光器44bとの間であれば、高さによらず居住者の動作を検知できる。このため、居住者の身長にかかわらず共通で活用することができる。
【0058】
ここで、居住者の身長に応じた所定の検知態様の設定について例示する。例えば、「第3センサ43で1回、第1センサ41で1回検知」を解錠時における所定の検知態様として設定した場合、居住者は、「空間24の上部において、手指を斜め上方に伸ばす」ように動作することで施錠装置32を解錠できる。この認証動作はより高い位置で動作を行うものであるため身長の高い居住者に好適である。また、「第2センサ42で2回、第3センサ43で1回検知」を解錠時における所定の検知態様として設定した場合、居住者は、「空間24の下部において、手を握った状態で上下に2回動かし、続いて手を開く」ように動作することで施錠装置32を解錠できる。この認証動作はより低い位置で動作を行うものであるため身長の低い居住者に好適である。
【0059】
本実施形態では、居住者は、施錠装置32を施錠する場合には、電子キー31の認証がなされた状態で、センサ41~43のうちいずれかにおいて検知がなされるように動作すればよい。すなわち、居住者は施錠装置32を施錠する際には簡単な動作を行うだけでよい。また、施錠装置32の解錠時と施錠時とで居住者が実行すべき認証動作が異なるため、これらの認証動作を使い分けることで、居住者は意図したとおりに施錠装置32の施解錠を行うことができる。なお、施錠装置32を施錠するための認証動作については、簡単なものであったとしても防犯性が損なわれることはない。
【0060】
本発明は、上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0061】
上記実施形態では、光軸方向が異なる複数のセンサ41~43を設け、これら複数のセンサ41~43を組み合わせて居住者の動作を検知する構成としたが、ある特定の1つのセンサで居住者の動作を検知する構成としてもよい。すなわち、設けるセンサの数は限定されるものではなく、1つであってもよいし複数であってもよい。例えば、上記実施形態から第1センサ41及び第2センサ42を除き、第3センサ43のみを設けた構成としてもよい。この場合には、上述のとおり、投光器44aと受光器44bとの間であれば高さによらず居住者の動作を検知できる。このため、センサ数を減らしつつ、居住者の身長にかかわらず使いやすい構成とすることができる。
【0062】
上記実施形態では、センサ41~43の光軸方向は水平方向又は上下方向としたが、玄関ドア16と屋外ハンドル21で囲まれて形成された空間24において居住者の動作を検知可能であれば、センサの位置及びその光軸の方向はこれに限定されない。また、複数のセンサを設ける場合、各センサの光軸は同一平面上にある必要はなく、互いにねじれの関係にあってもよい。
【0063】
上記実施形態では、玄関ドア16表面とグリップ22と上下の台座23とで囲まれて空間24が形成されているが、居住者が玄関ドア16と屋外ハンドル21との間で動作を行うことができるものであれば、解放部分があってもよい。例えば、上記実施形態の屋外ハンドル21から下方の台座23を除いた構成の屋外ハンドルであっても、居住者は玄関ドア16と当該屋外ハンドルとの間で動作を行うことが可能であり、本発明の施解錠システムに適用することができる。
【0064】
上記実施形態では、検知手段として赤外線センサを使用したが、非接触で居住者の動作を検知できるものであれば、これに限定されない。例えば、超音波センサであってもよい。また、複数のセンサがある場合、全てのセンサを非接触で検知するものとする必要はなく、一部のセンサについては接触式のものを用いてもよい。
【0065】
上記実施形態では、電子キー31ごとに所定の検知態様を設定することが可能となっているが、1つの電子キー31に設定できる所定の検知態様は1種類に限定されず、複数種類であってもよい。すなわち、あらかじめ設定された複数の所定の検知態様のうち、いずれかを満たした場合に施錠装置32が解錠されるようにしてもよい。この場合、居住者が所定の検知態様を忘れてしまい、施錠装置32を解錠できなくなることを抑制できる。また、複数の所定の検知態様が存在することにより、認証動作が多様化する。このため、第三者による解錠方法の推定は困難となる。さらに、上述のとおり、ある所定の検知態様を満たす認証動作は複数存在し得るため、様々な認証動作を適宜使い分けることによって、より好適に不正解錠を抑制できる。
【0066】
また、複数の電子キー31が存在する場合、複数の電子キー31において共通で使用できる認証動作(以下、「マスター操作」という。)を設定してもよい。マスター操作を設定した場合、例えば、外出を急いでいる際に自分の電子キー31が見当たらない場合、家族の電子キー31を借りる場合も想定される。この場合であっても、マスター操作により施錠装置32を解錠できる。また、マスター操作による解錠が行われた場合に、コントローラ61が当該電子キー31の本来の所有者と異なる居住者により解錠が行われたと判断するようにしてもよい。この場合、施解錠システムに通報手段(図示略)を設け、コントローラ61からの指令に基づき、各居住者が所有するモバイル端末(図示略)にマスター操作による解錠が行われた旨の通報を行うようにすることで、各居住者は異常を認識でき、速やかに対応を講じることが可能となる。
【0067】
所定の検知態様は、センサ41~43が1つずつ順番に検知を行うものに限定されず、複数のセンサ41~43で同時に検知を行うものであってもよい。例えば、第1センサ41と第2センサ42とが同時に検知を行うことを条件とすることができる。この場合の認証動作としては、第1センサ41の光軸と第2センサ42の光軸とを、両手を使って同時に遮るものが考えられる。両手を用いる認証動作は、片手で実行可能な認証動作と比べて動作のしやすさの点で劣るが、より明確な意図により実行されるため、上述のマスター操作のような特殊な操作に適用するとよい。
【0068】
上記実施形態では、施錠装置32が解錠状態にあり、かつ電子キー31の認証がなされている場合、センサ41~43のうちいずれかにおいて検知がなされると施錠されるようになっているが、施錠のための所定の検知態様として、複数の検知の組み合わせにより構成されたものを設定してもよい。この場合、居住者の意図に反した施解錠を抑制するため、所定の検知態様は施錠時と解錠時とで区別しやすいものを設定するとよい。
【0069】
上記実施形態では、所定時間T1(例えば、3秒)が設けられ、センサ41~43において初回の検知が行われてから所定時間T1の経過後に、施錠装置32の解錠を実行するようになっているが、所定時間T1の経過前であっても、センサ41~43による検知結果が所定の検知態様と一致した時点で解錠を実行するようにしてもよい。この場合、より速やかに施錠装置32を解錠できるため利便性の点で優れる。
【符号の説明】
【0070】
10…建物、15…出入口としての玄関口、16…開閉体としての玄関ドア、21…屋外ハンドル、24…空間、31…電子キー、32…施錠装置、41~43…検知手段としてのセンサ、51…通信装置、61…制御手段としてのコントローラ、62…記憶手段としての記憶部、CA…通信エリア、DA1~DA3…検知範囲。
図1
図2
図3
図4
図5