(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】端子の固着方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/40 20060101AFI20230719BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20230719BHJP
B23K 1/00 20060101ALI20230719BHJP
B23K 1/005 20060101ALI20230719BHJP
H01R 43/02 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
H05K3/40 Z
H05K3/34 501C
B23K1/00 330D
B23K1/005 A
H01R43/02 B
(21)【出願番号】P 2020201601
(22)【出願日】2020-12-04
【審査請求日】2022-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】松永 雄太
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-104194(JP,A)
【文献】特開平10-335806(JP,A)
【文献】特開平02-117791(JP,A)
【文献】特開2003-069163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/40
H05K 3/34
B23K 1/00
B23K 1/005
H01R 43/02
H05K 1/11
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に設けられている複数のランドのそれぞれに、レーザ溶接によって端子を固着させる端子の固着方法であって、
前記複数のランドは、前記端子が設置される端子設置用ランドと、前記端子設置用ランドよりも大きいダミーランドとで成り立っており、
前記レーザ溶接では、レーザ発振器から出射され複数に分けられたレーザ光のそれぞれを、前記複数のランドのうちの一部の複数のランドのそれぞれに向けて照射するようになっており、
前記一部の複数のランドが前記端子設置用ランドで成り立っているか、もしくは、前記一部の複数のランドが前記端子設置用ランドと前記ダミーランドとで成り立って
おり、
前記ダミーランドは、前記基板の厚さ方向の一方の面である表面に設けられている表面ダミーランドと、前記基板の厚さ方向の他方の面である裏面に設けられている裏面ダミーランドとで成り立っていて、前記表面ダミーランドと前記裏面ダミーランドとは、前記基板を貫通している連結部によってお互いがつながっている端子の固着方法。
【請求項2】
前記表面ダミーランドの面積と前記裏面ダミーランドの面積とは、お互いが異なっている請求項
1に記載の端子の固着方法。
【請求項3】
前記レーザ溶接では、前記ダミーランドにろうを配置しておき、前記ダミーランドに向けて前記レーザ光を照射する請求項1
または請求項
2に記載の端子の固着方法。
【請求項4】
前記ダミーランドの少なくとも一部が、前記基板に設けられているカバーレイで覆われている請求項1~請求項
3のいずれか1項に記載の端子の固着方法。
【請求項5】
前記基板がFPCである請求項1~請求項
4のいずれか1項に記載の端子の固着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子の固着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電池の電圧検出を行うためには、コネクタにFPC(電圧検出配索部材;Flexible Printed Circuits)を接合する必要がある。そこで、FPCにランドを設定し、このランドからコネクタ端子を突出させている端子付きFPCが知られている。
【0003】
この端子付きFPCでは、コネクタ端子を用いてFPCをコネクタに接合している。また、この端子付きFPCでは、レーザハンダ(レーザ溶接)によって、コネクタ端子(コネクタ端子ピン)をFPCのランドに接合している。すなわち、レーザ光によってハンダを一時的に溶融させ、この後、ハンダを固化させることで、コネクタ端子をFPCのランドに固着している。
【0004】
ここで、端子付きFPCの生産性向上のために、レーザハンダでのレーザの照射方法を、シングル工法からプリズム工法にすることがある。
【0005】
すなわち、1つのレーザ発振器から出射されプリズムによって2つに分けられたレーザ光のそれぞれを、2つのランドに向けて同時に照射することで、コネクタ端子を2つずつFPCのランドに固着している。ここで、従来の技術に関連する文献として特許文献1を掲げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、プリズム工法を採用した場合においてコネクタ端子のピン配が奇数になっていると、コネクタ端子が無い箇所にレーザ光を照射する事態が発生する。これにより、FPCが焼失し絶縁(ミーズリング等)の外観不良が発生してしまう。
【0008】
すなわち、お互いが隣接してならんでいるランドの数が奇数個であると、複数のランドとコネクタ端子とについて2本ずつレーザ光を照射するので、最後の1つのランドとこのランドに固着される1つのコネクタ端子とが残ってしまう。
【0009】
この残った1つのランドに向けて2本のレーザ光のうちの1本のレーザ光を照射すると、2本のレーザ光のうちの他の1本のレーザ光がFPCに照射されてしまい、他の1本のレーザ光が照射されたFPCの部位が焼失する等の不具合が発生する。この不具合は、FPC以外の基板に端子を設置する場合も同様に発生する。
【0010】
本発明は、基板の複数のランドのそれぞれにレーザ溶接によって端子を固着させる端子の固着方法であって、生産性を向上させつつ、レーザ光によって基板に不具合が発生することを防止する端子の固着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の態様に係る端子の固着方法は、基板に設けられている複数のランドのそれぞれに、レーザ溶接によって端子を固着させる端子の固着方法であって、前記複数のランドは、前記端子が設置される端子設置用ランドと、前記端子設置用ランドよりも大きいダミーランドとで成り立っており、前記レーザ溶接では、レーザ発振器から出射され複数に分けられたレーザ光のそれぞれを、前記複数のランドのうちの一部の複数のランドのそれぞれに向けて照射するようになっており、前記一部の複数のランドが前記端子設置用ランドで成り立っているか、もしくは、前記一部の複数のランドが前記端子設置用ランドと前記ダミーランドとで成り立っている端子の固着方法である。
【0012】
また、本発明の態様に係る端子の固着方法では、前記ダミーランドが、前記基板の厚さ方向の一方の面である表面に設けられている表面ダミーランドと、前記基板の厚さ方向の他方の面である裏面に設けられている裏面ダミーランドとで成り立っている。
【0013】
また、本発明の態様に係る端子の固着方法では、前記表面ダミーランドの面積と前記裏面ダミーランドの面積とが、お互いが異なっている。
【0014】
また、本発明の態様に係る端子の固着方法では、前記表面ダミーランドと前記裏面ダミーランドとは、前記基板を貫通している連結部によってお互いがつながっている。
【0015】
また、本発明の態様に係る端子の固着方法では、前記レーザ溶接をするときに、前記ダミーランドにろうを配置しておき、前記ダミーランドに向けて前記レーザ光を照射する。
【0016】
また、本発明の態様に係る端子の固着方法では、前記ダミーランドの少なくとも一部が、前記基板に設けられているカバーレイで覆われている。
【0017】
また、本発明の態様に係る端子の固着方法では、前記基板がFPCになっている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、基板の複数のランドのそれぞれにレーザ溶接によって端子を固着させる端子の固着方法であって、生産性を向上させつつ、レーザ光によって基板に不具合が発生することを防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る端子の固着方法を用いて製造された端子付きFPCをコネクタに設置した状態を示す平面図(Z方向で見た図)である。
【
図2】(a)は
図1におけるIIA部の拡大図であり、(b)は(a)におけるIIB-IIB断面を示す図である。
【
図3】ダミーランドの平面図であって、(a)は表側から見たダミーランドを示しており、(b)は裏側から見たダミーランドを示している。
【
図4】端子設置用ランドとカバーレイが設けられたダミーランドとの平面図である。
【
図5】(a)は
図4におけるVA-VA断面を示す図であり、(b)は(a)においてスルーホールを設けたものを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態に係る端子付き基板(たとえば、端子付きFPC)1は、たとえば車両に搭載されている電池の電圧検出を行うために使用されるものである。端子付きFPC1は、
図1で示すように、端子付きFPC1に設けられている端子(コネクタ端子)3を用いてコネクタ5に接続されるようになっている。コネクタ5はECU(Electronic Control Unit)7に接続されるようになっている。
【0021】
端子付き基板1は、基板(たとえばFPC)9とランドと端子3とを備えて構成されている。上記ランドは、端子設置用ランド11とダミーランド13とで成り立っている。FPC9は、絶縁性を備えた合成樹脂等で構成されている板状の基板本体部と、この基板本体部に設けられている回路部(図示せず)とを備えて構成されている。以下、「FPC」というとき、この「FPC」は回路部を除いた基板本体部を指すものとする。
【0022】
ここで、説明の便宜のために空間における所定の一方向をX方向とし、X方向に対して直交する所定の一方向をY方向とし、X方向とY方向とに対して直交する方向をZ方向とする。
【0023】
端子設置用ランド11とダミーランド13と端子3は、導電性を備えた金属等の材料で構成されている。端子設置用ランド11は上記回路部に適宜接続されている。ダミーランド13は、上記回路部から離れている。
【0024】
端子設置用ランド11とダミーランド13とは、薄い膜状に形成されており、厚さ方向がFPC9の厚さ方向と一致するようにして、FPC9の表面(ひょうめん)に設けられている。FPC9の厚さ方向と端子設置用ランド11の厚さ方向とダミーランド13の厚さ方向とはZ方向になっている。
【0025】
端子設置用ランド11は、Z方向で見てたとえば矩形状に形成されており、複数でしかも奇数個設けられている。また、複数の端子設置用ランド11は、一定の間隔をあけお互いが隣接してX方向にならんでFPC9に設けられている。なお、各端子設置用ランド11の形状はお互いが一致している。
【0026】
ダミーランド13は、Z方向で見てたとえば矩形状もしくは変形された矩形状に形成されており、端子設置用ランド11よりも大きく形成されており、奇数個(たとえば1つ)設けられている。1つのダミーランド13は、端子設置用ランド11に隣接してFPC9に設けられている。
【0027】
さらに説明すると、複数の端子設置用ランド11と1つのダミーランド13とは、一定の間隔をあけお互いが離れかつお互いが隣接してX方向にならんでFPC9に設けられている。また、複数の端子設置用ランド11と1つのダミーランド13とのX方向における設置のピッチは一定になっている。さらに、1つのダミーランド13は、たとえば、複数の端子設置用ランド11のうちの最も端に位置している端子設置用ランド11に隣接している。また、すでに理解されるように、複数の端子設置用ランド11の数と1つのダミーランド13の数との合計数は、偶数になっている。
【0028】
端子3は、複数の端子設置用ランド11のそれぞれにろう(たとえばハンダ)15によって固着されている。ダミーランド13には、端子が設けられていない。
【0029】
端子設置用ランド11とダミーランド13とで成り立っているランドは、たとえば、
図1で示すように、複数の群として設けられている。すなわち、8つのランドで構成されているA群のランド群10Aと、同様に、複数かつ偶数のランドで構成されているB群のランド群10Bと、C群のランド群10Cと、D群のランド群10Dと、E群のランド群10Eとで、複数の群となっている。各ランド群10Aから10Eのいずれのランド群でも、複数の端子設置用ランド11もしくは1つの端子設置用ランド11と1つのダミーランド13とが、X方向に一定の間隔をあけてならんでいる。
【0030】
ここで、端子3の固着の態様(FPC9への設置の態様)について詳しく説明する。
【0031】
端子3は、
図2等で示すように、たとえば円柱状等の柱状に形成されている。端子設置用ランド11は、たとえば、表面(おもてめん)と裏面とに設けられている。表面に設けられている端子設置用ランド11と、裏面に設けられている端子設置用ランド11とは、たとえば、お互いが同形状に形成されている。また、Z方向で見ると、表面に設けられている端子設置用ランド11の総てと裏面に設けられている端子設置用ランド11の総てとがお互いに重なっている。
【0032】
なお、表面に設けられている端子設置用ランド11と、裏面に設けられている端子設置用ランド11とが、異なった形状、異なった大きさに形成されていてもよい。また、Z方向で見て、表面に設けられている端子設置用ランド11の一部と裏面に設けられている端子設置用ランド11の一部とがお互いに重なっていてもよい。さらに、Z方向で見て、表面に設けられている端子設置用ランド11の内側に裏面に設けられている端子設置用ランド11の総てが収まっていてもよいし、この逆の態様になっていてもよい。
【0033】
FPC9と端子設置用ランド11とには、たとえば円柱状に形成されている貫通孔17が設けられている。貫通孔17の内径の値は端子3の外径の値よりも僅かに大きくなっている。貫通孔17の中心軸と端子設置用ランド11の中心軸とはZ方向に延びておりお互いがほぼ一致している。端子3は貫通孔17を貫通している。
【0034】
ハンダ15の表側部位は、端子3をFPC9の端子設置用ランド11に固着するために設けられている。ハンダ15の表側部位は、表面(おもてめん)に設けられている端子設置用ランド11の表面(ひょうめん)と、端子3の、端子設置用ランド11の表面(ひょうめん)から突出している部位とに接している。
【0035】
また、ハンダ15の裏側部位は、裏面に設けられている端子設置用ランド11の表面(ひょうめん)と端子3の、端子設置用ランド11の裏面から突出している部位とに接している。
【0036】
さらに、ハンダ15は、端子3と貫通孔17との間の間隙に入り込んでいる。この入り込んでいる部位によって、ハンダ15の表側部位とハンダ15の裏側部位とはお互いがつながっている。
【0037】
ダミーランド13も、たとえば、FPC9の表面(おもてめん)と裏面とに設けられている。表面に設けられているダミーランド13と、裏面に設けられているダミーランド13とは、たとえば、お互いが同形状に形成されている。また、Z方向で見ると、表面(おもてめん)に設けられているダミーランド13の総てと裏面に設けられているダミーランド13の総てとがお互いに重なっている。
【0038】
なお、
図3で示すように、表面(おもてめん)に設けられているダミーランド13と、裏面に設けられているダミーランド13とが、異なった形状、異なった大きさに形成されていてもよい。また、Z方向で見て、表面に設けられているダミーランド13の一部と裏面に設けられているダミーランド13の一部とがお互いに重なっていてもよい。さらに、Z方向で見て、裏面に設けられているダミーランド13の内側に表面に設けられているダミーランド13の総てが収まっていてもよいし、この逆の態様になっていてもよい。
【0039】
また、
図2で示すように、表面(おもてめん)に設けられているダミーランド13の表面(ひょうめん)にも、ハンダ15が設けられている。
【0040】
ここで、ダミーランド13が端子設置用ランド11よりも大きいことについてさらに詳しく説明する。
【0041】
ダミーランド13が端子設置用ランド11よりも大きいとは、たとえば、1つのダミーランド13の熱容量が、1つの端子設置用ランド11の熱容量よりも大きくなっていることである。ダミーランド13と端子設置用ランド11との比熱がお互いに等しければ、1つのダミーランド13の体積が、1つの端子設置用ランド11の体積よりも大きくなっていることである。
【0042】
ダミーランド13と端子設置用ランド11との比熱がお互いに等しいこととして具体的説明する。端子設置用ランド11の厚さ寸法の値と、ダミーランド13の厚さ寸法の値とはお互いが等しくなっていることとする。Z方向で見ると、1つのダミーランド13の面積が1つの端子設置用ランド11の面積よりも大きくなっている。
【0043】
さらには、FPC9の表面(おもてめん)に設けられているダミーランド13(13a)の面積がFPC9の表面(おもてめん)に設けられている端子設置用ランド11の面積よりも大きくなっている。また、FPC9の裏面に設けられているダミーランド13(13b)の面積がFPC9の裏面に設けられている端子設置用ランド11の面積よりも大きくなっている。
【0044】
なお、ダミーランド13の熱容量が、端子設置用ランド11の熱容量よりも大きくなっているのであれば、FPC9の表裏面の端子設置用ランド11の面積、FPC9の表裏面のダミーランド13の面積について、上述した関係が保たれている必要はない。ただし、FPC9の熱伝導率の値が、端子設置用ランド11およびダミーランド13の熱伝導率の値よりも小さい場合、FPC9の表裏面の端子設置用ランド11の面積、ダミーランド13の面積は、上記熱伝導率の関係を考慮して決める必要がある。
【0045】
また、端子設置用ランド11には、ハンダ15(15A)と端子3とが設けられており、ダミーランド13には、ハンダ15(15B)が設けられている。端子設置用ランド11の熱容量とダミーランド13の熱容量とは、ハンダ15と端子3との設置を考慮して決めることもできる。
【0046】
すなわち、端子設置用ランド11の熱容量とハンダ15Aの熱容量と端子3の熱容量との合計値が、ダミーランド13の熱容量とハンダ15Bの熱容量との合計値と概ね等しくなるようにすればよい。なお、ハンダ15の熱容量としてハンダ15の融解熱も含まれる。
【0047】
次に、端子3の固着方法について説明する。なお、端子3の固着方法を端子の設置方法もしくは端子の接続方法もしくは基板への端子の固着方法としてもよい。また、
図1に示すA群のランド群10Aに端子3を固着する場合を例に掲げて説明する。B群のランド群10B等に端子3を固着する場合も、A群のランド群10Aに端子3を固着する場合と同様なことがされる。
【0048】
端子3の固着方法は、FPC9に設けられているA群のランド群(第1群のランド)10Aのそれぞれに、レーザ溶接によって複数の端子3のそれぞれを固着させて一体的に設ける方法である。
【0049】
上述したように、第1群(A群)のランド群10Aは、端子3が設置される奇数個で複数の端子設置用ランド11と、奇数個のダミーランド(たとえば1つのダミーランド)13とで成り立っている。
【0050】
また、1つの端子設置用ランド11に1つの端子3が設置されるようになっており、ダミーランド13に端子が設置されることはない。
【0051】
レーザ溶接は、プリズム工法を実行するためのレーザ照射器21を用いてされる。レーザ溶接では、レーザ照射器21の1つのレーザ発振器から出射されプリズムによって複数に分けられた(たとえば2つに分けられた)分割レーザ光19(19A、19B)を用いる。分割レーザ光19A、19Bは、お互いの強度が等しくなっているとともに、お互いの進行方向が異なっている。なお、レーザ照射器21において、分割レーザ光19A、19Bの強度を適宜調整することはできず、分割レーザ光19A、19Bの強度は、たとえば、常にお互いが等しくなっている。
【0052】
レーザ溶接では、分割レーザ光19A、19Bのそれぞれを、第1群のランド群10Aのうちの一部の複数のランド(第2群のランド;たとえば2つのランド)のそれぞれに向けて同時に照射する。
【0053】
この分割レーザ光19A、19Bの照射では、第2群のランドが、端子設置用ランド(たとえば、2つの端子設置用ランド)11のみで成り立っている。もしくは、分割レーザ光19A、19Bの照射では、第2群のランドが、端子設置用ランド(たとえば、1つの端子設置用ランド)11とダミーランド(たとえば1つのダミーランド)13とで成り立っている。
【0054】
レーザ溶接をする前の状態では、端子設置用ランド11のところに設けられている貫通孔17に端子3が適宜挿入配置されている。レーザ溶接をする前の状態では、図示しないハンダ供給装置によって、端子設置用ランド11と端子3とのところに溶融前のハンダ(たとえば糸ハンダ)が供給されている。また、レーザ溶接をする前の状態では、ダミーランド13にも同様にして溶融前のハンダ(たとえば糸ハンダ)が供給されている。
【0055】
上記供給されているハンダ15が、分割レーザ光19A、19Bの照射によって、一時的に溶融し、
図2(b)で示すように、端子3がハンダ15Aによって端子設置用ランド11に固着され、ハンダ15Bがダミーランド13に設置される。
【0056】
なお、分割レーザ光19A、19Bによって溶融するのは、ハンダ15だけであるので、溶接を狭義の意味で用いれば「レーザ溶接」という文言はあてはまらないかもしれないが、溶接を広義の意味で用いることで、ハンダ15しか溶融しないにもかかわらず「レーザ溶接」という文言を使用することができると考える。
【0057】
レーザ溶接は、FPC9等に対してレーザ照射器21を適宜移動位置決めしつつ複数回繰り返してされるようになっており、これによって、複数のランド11、13の総てに向けて、1回ずつ分割レーザ光19A、19Bが照射されるようになっている。
【0058】
例を掲げてさらに説明する。
図2で示すように分割レーザ光19A、19Bは2つになっており、
図1で示すように、ランド群10Aでは端子設置用ランド11が7つ設けられており、ダミーランド13が1つ設けられている。
【0059】
1回目のレーザ溶接では、お互いが隣り合っている1つ目の端子設置用ランド11Aと2つ目の端子設置用ランド11Bとに向けて2つの分割レーザ光19A、19Bのそれぞれを同時に照射する。
【0060】
2回目のレーザ溶接では、お互いが隣り合っている3つ目の端子設置用ランド11Cと4つ目の端子設置用ランド11Dとに向けて2つの分割レーザ光19A、19Bのそれぞれを同時に照射する。
【0061】
3回目のレーザ溶接では、お互いが隣り合っている5つ目の端子設置用ランド11Eと6つ目の端子設置用ランド11Fとに向けて2つの分割レーザ光19A、19Bのそれぞれを同時に照射する。
【0062】
4回目のレーザ溶接では、お互いが隣り合っている7つ目の端子設置用ランド11Gと1つのダミーランド13とに向けて2つの分割レーザ光19A、19Bのそれぞれを同時に照射する。
【0063】
なお、3回目のレーザ溶接は
図2(b)に参照符号P1で示す位置にあるレーザ照射器21によってされる。また、4回目のレーザ溶接は
図2(b)に参照符号P2で示す位置にあるレーザ照射器21によってされる。
【0064】
ダミーランド13は、上述したように、FPC9の厚さ方向の一方の面である表面(おもてめん)に設けられている表面ダミーランド13aと、FPC9の厚さ方向の他方の面である裏面に設けられている裏面ダミーランド13bとで成り立っている。
【0065】
また、表面ダミーランド13aの面積と裏面ダミーランド13bの面積とは、お互いが異なっている。たとえば、
図3で示すように、裏面ダミーランド13bの面積の値が、表面ダミーランド13aの面積の値よりも大きくなっている。
【0066】
図3で示す表面ダミーランド13aの形状と、裏面ダミーランド13bの形状とは、幅の広い部位(X方向の寸法の値が大きい部位)と、幅の狭い部位(X方向の寸法の値が小さい部位)とを備えて、Y方向に長くなっている。これは、図示しない回路部(FPC9の回路部)を避けている等の理由による。ダミーランド13の形状が、
図3で示す形状以外の形状になっていてもよい。
【0067】
また、表面ダミーランド13aと裏面ダミーランド13bとは、
図5(a)で示すように、これらの間にあるFPC9によって途切れているが、
図5(b)で示すように、連結部(スルーホール)23を設けてもよい。すなわち、FPC9を貫通している連結部23によって、表面ダミーランド13aと裏面ダミーランド13bとがお互いにつながっていてもよい。なお、連結部23は、ランドを同様に金属等の導電性材料で構成されている。
【0068】
また、レーザ溶接では、上述したように、ダミーランド13にもハンダ15を配置しておき、ダミーランド13に向けて分割レーザ光19Bを照射し、ハンダ15を一時的に溶融させて、ダミーランド13に固着する。
【0069】
また、
図4、
図5で示すように、端子付きFPC1において、ダミーランド13の少なくとも一部が、FPC9に一体的に設けられているカバーレイ25で覆われていてもよい。カバーレイ25は板状に形成されており、厚さ方向がZ方向になっている。また、カバーレイ25は、ダミーランド13の長手方向(Y方向)の両端部を覆っている。換言すれば、ダミーランド13の長手方向の両端部は、FPC9とカバーレイ25とで挟み込まれている。
【0070】
端子3の固着方法では、複数のランドが奇数の端子設置用ランド11と1つのダミーランド13とで成り立っている。そして、レーザ溶接では、2本の分割レーザ光19A、19Bのそれぞれが2つのランド11(11、13)のそれぞれに向けて照射するようになっている。また、端子3の固着方法では、2つのランド11(11、13)が、2つの端子設置用ランド11で成り立っているか、もしくは、1つの端子設置用ランド11と1つのダミーランド13とで成り立っている。
【0071】
これにより、2本の分割レーザ光19A、19Bを用いたレーザ溶接を複数回繰り返して、FPC9の複数のランド11のそれぞれに端子3を固着させる場合、生産性を向上させることができる。また、2本の分割レーザ光19A、19Bを用いたレーザ溶接において、レーザ光19によってFPC9に不具合が発生することを防止することができる。すなわち、端子設置用ランド11とダミーランド13との合計数が偶数になっているので、2本の分割レーザ光19A,19Bが、FPC9の、ランドが設けられていない部位に照射されることがなくなる。そして、分割レーザ光19A、19Bが照射されたFPC9の部位が焼失する等の不具合が発生することが防止される。
【0072】
また、ダミーランド13が端子設置用ランド11よりも大きくなっている。これにより、分割レーザ光19Aを端子設置用ランド11に向けて照射し、分割レーザ光19Bをダミーランド13に向けて照射したときに、FPC9にダメージを与えてしまうことが防止される。
【0073】
比較例に係る端子3の固着方法では、たとえば、
図1で示すダミーランド13が設けられていない。したがって、分割レーザ光19Aを1つの端子設置用ランド11に向けて照射した場合、分割レーザ光19Bが、FPC9の、ランドが設けられていない部位に照射されてしまう。
【0074】
また、端子3の固着方法によれば、ダミーランド13がFPC9の厚さ方向の両面に設けられているので、ダミーランド13の熱容量の調整範囲を広くすることができ、ダミーランド13の熱容量の値を容易に大きくすることができる。
【0075】
また、端子3の固着方法によれば、表面ダミーランド13aの面積と裏面ダミーランド13bの面積とはお互いが異なっているので、FPC9の表面、裏面の空いている部位を有効活用して、ダミーランド13の熱容量の調整範囲を広げることができる。
【0076】
また、端子3の固着方法において、表面ダミーランド13aと裏面ダミーランド13bとをスルーホール23によってお互いにつなげる。これにより、表面ダミーランド13aと裏面ダミーランド13bとの間の熱伝導がよりスムーズになされ、ダミーランド13の大きさを小さくすることができる。
【0077】
また、端子3の固着方法では、レーザ溶接をするときに、ダミーランド13にハンダ(ダミーランド用ハンダ)を配置しておき、ダミーランド13に向けて分割レーザ光を照射するようになっている。これにより、ダミーランド13用のハンダも熱容量の値を大きくすることに貢献していることになり、ダミーランド13の大きさを小さくすることができる。
【0078】
また、端子3の固着方法では、ダミーランド13には端子が設置されないので、ハンダ重量分の衝撃がダミーランド加わってしまい、ダミーランド13がFPC9から剥がれるおそれがある。しかし、ダミーランド13の少なくとも一部を、FPC9に一体的に設けられているカバーレイ25で覆うことで、ダミーランド13がカバーレイ25で抑えられ。これにより、ダミーランド13のFPC9からの剥がれを防止することができる。
【0079】
また、端子3の固着方法で基板9がFPC(Flexible Printed Circuits)であっても、レーザ光19によるFPC9の損傷を防止することができる。さらに説明すると、基板9がリジッド基板であると、この厚さは0.3mm~1.6mm程度になっている。したがって、ダミーランド13を設けなくても、レーザ光19の照射によって、リジッド基板自体が不良品になるような焼失等の損傷を受けるおそれは、ほとんど発生しない。
【0080】
基板9がFPCであると、この厚さは12μm~50μm程度になっている。したがって、ダミーランド13を設けていないと、FPC9自体がレーザ光19の照射によって、不良品になるような焼失等の損傷を受けてしまうおそれが高くなる。しかし、ダミーランド13等を設けていることで、レーザ光19の照射の熱を吸収することができ、焼失等の損傷の発生を回避することができる。
【0081】
レーザ光19の照射を、端子設置用ランド11、ダミーランド13に向けてする場合には、レーザ照射器21に対するFPC9の位置決めが当然必要になる。そこで、
図1で示すように、位置決めピン31によって、コネクタ5に対するFPC9の位置決めをしている。そして、弾性をほとんど備えておらずほぼ剛体とみなせるコネクタ5に対してレーザ照射器21を適宜移動位置決めし、レーザ光19の照射を、端子設置用ランド11、ダミーランド13に向けてしている。なお、FPC9は、可撓性を備えているが、
図1で示すX方向およびY方向での変形はほとんどせず、X方向およびY方向での力に対してはほぼ剛体とみなすことができる。
【0082】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。たとえば、上記説明では、レーザ光が2つに分割されているが、レーザ光がN個に分割されていてもよい。ただし、「N」は、3以上の任意の自然数とする。この場合、たとえば、ランド群10A等のランド数は、「N」の倍数になる。
【符号の説明】
【0083】
1 端子付きFPC
3 端子(コネクタ端子)
9 基板(FPC)
11 端子設置用ランド
13 ダミーランド
13a 表面ダミーランド
13b 裏面ダミーランド
15 ろう(ハンダ)
19、19A、19B レーザ光(分割レーザ光)
25 カバーレイ