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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】フレキシブル吸音ハニカム
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/16 20060101AFI20230719BHJP
   G10K 11/168 20060101ALI20230719BHJP
   G10K 11/172 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
G10K11/16 110
G10K11/168
G10K11/172
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020502259
(86)(22)【出願日】2018-06-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-10
(86)【国際出願番号】 US2018039908
(87)【国際公開番号】W WO2019018110
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-06-25
(31)【優先権主張番号】15/653,686
(32)【優先日】2017-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503308494
【氏名又は名称】ヘクセル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボーウェン、リサ、ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ミラー、ジェシカ
【審査官】渡邊 正宏
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-526713(JP,A)
【文献】国際公開第2016/182693(WO,A1)
【文献】特開平06-316012(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0179773(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62- 1/99
G10K 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸音構造体であって、吸音セプタムが、供給源から発生させられる騒音を低減させるために、ハニカムのセルの中に位置付けされており、前記吸音構造体は、
A) ハニカムであって、前記ハニカムは、前記供給源の最も近くに位置付けされることとなる第1の縁部、および、第2の縁部を含み、前記ハニカムは、複数のセルを含み、それぞれのセルは、左側部および右側部を有しており、前記セルは、下側壁部および上側壁部によって画定されており、前記下側壁部は、前記第1の縁部と前記第2の縁部との間に延在しており、前記上側壁部も、前記第1の縁部と前記第2の縁部との間に延在しており、前記下側壁部は、湾曲した下側左端部部分、湾曲した下側右端部部分、および、中央の凸形部分を含み、前記凸形部分は、前記下側左端部部分と前記下側右端部部分との間に位置付けされており、前記上側壁部は、湾曲した上側左端部部分、湾曲した上側右端部部分、および、中央の凹形部分を含み、前記凹形部分は、前記上側左端部部分とおよび前記上側右端部部分との間に位置付けされており、前記下側左端部部分および前記上側左端部部分は、前記セルの前記左側部に沿って左側接合部を形成するように接続されており、前記下側右端部部分および前記上側右端部部分は、前記セルの前記右側部に沿って右側接合部を形成するように接続されている、ハニカムと、
B) 吸音セプタムであって、前記吸音セプタムは、
a) 前記上側壁部および前記下側壁部に対して横断方向に延在する平面的な吸音部分であって、前記平面的な吸音部分は、右側境界線、左側境界線、下側境界線、および上側境界線を有している、平面的な吸音部分;
b) 前記右側境界線において前記吸音部分から突出する右側タブ部分;
c) 前記左側境界線において前記吸音部分から突出する左側タブ部分;
d) 前記下側境界線において前記吸音部分から突出する下側タブ部分;ならびに、
e) 前記上側境界線において前記吸音部分から突出する上側タブ部分
を含み、
ノッチが、前記上側タブ部分を前記右側タブ部分から分離しており、ノッチが、前記上側タブ部分を前記左側タブ部分から分離しており、ノッチが、前記下側タブ部分を前記右側タブ部分から分離しており、ノッチが、前記下側タブ部分を前記左側タブ部分から分離している、吸音セプタムと、
C) 接着剤であって、前記接着剤は、前記右側タブ部分、左側タブ部分、下側タブ部分、および上側タブ部分を前記ハニカムに結合しており、前記右側タブ部分は、前記下側右端部部分および前記上側右端部部分に結合されており、前記左側タブ部分は、前記下側左端部部分および前記上側左端部部分に結合されており、前記下側タブ部分は、前記凸形部分に結合されており、前記上側タブ部分は、前記凹形部分に結合されている、接着剤と
を含む、吸音構造体。
【請求項2】
前記上側タブ部分は、上側左ローブおよび上側右ローブを含み、前記下側タブ部分は、下側左ローブおよび下側右ローブを含む、請求項1に記載の吸音構造体。
【請求項3】
V字形状のノッチは、前記右側タブ部分および前記左側タブ部分から前記上側タブ部分を分離している、請求項1に記載の吸音構造体。
【請求項4】
前記下側左ローブは、V字形状のノッチによって前記下側右ローブから分離されている、請求項2に記載の吸音構造体。
【請求項5】
前記上側左ローブおよび前記上側右ローブは、湾曲した周囲部をそれぞれ有している、請求項2に記載の吸音構造体。
【請求項6】
前記下側左ローブおよび前記下側右ローブは、中央に位置付けされた頂点を備えた角張った周囲部によって形成された外側端部をそれぞれ有している、請求項2に記載の吸音構造体。
【請求項7】
前記右側タブ部分および前記左側タブ部分は、中央に位置付けされた頂点を備えた角張った周囲部によって形成された外側端部をそれぞれ有している、請求項1に記載の吸音構造体。
【請求項8】
前記吸音セプタムは、ドミナント・モノフィラメント・ファイバーを含む吸音メッシュであり、前記ドミナント・モノフィラメント・ファイバーは、前記下側タブ部分から前記上側タブ部分への方向に互いに平行に延在している、請求項1に記載の吸音構造体。
【請求項9】
前記吸音セプタムは、ドミナント・モノフィラメント・ファイバーを含む吸音メッシュであり、前記ドミナント・モノフィラメント・ファイバーは、前記左側タブ部分から前記右側タブ部分への方向に互いに平行に延在している、請求項1に記載の吸音構造体。
【請求項10】
前記吸音構造体は、前記ハニカムの前記第1の縁部に取り付けられている音透過性のシートと、前記ハニカムの前記第2の縁部に取り付けられている中実の音不透過性のシートとを含む、請求項1に記載の吸音構造体。
【請求項11】
吸音構造体を作製するための方法であって、吸音セプタムが、供給源から発生させられる騒音を低減させるために、ハニカムのセルの中に位置付けされており、前記方法は、
A) ハニカムを提供するステップであって、前記ハニカムは、前記供給源の最も近くに位置付けされることとなる第1の縁部、および、第2の縁部を含み、前記ハニカムは、複数のセルを含み、それぞれのセルは、左側部および右側部を有しており、前記セルは、下側壁部および上側壁部によって画定されており、前記下側壁部は、前記第1の縁部と前記第2の縁部との間に延在しており、前記上側壁部も、前記第1の縁部と前記第2の縁部との間に延在しており、前記下側壁部は、湾曲した下側左端部部分、湾曲した下側右端部部分、および、中央の凸形部分を含み、前記凸形部分は、前記下側左端部部分と前記下側右端部部分との間に位置付けされており、前記上側壁部は、湾曲した上側左端部部分、湾曲した上側右端部部分、および、中央の凹形部分を含み、前記凹形部分は、前記上側左端部部分とおよび前記上側右端部部分との間に位置付けされており、前記下側左端部部分および前記上側左端部部分は、前記セルの前記左側部に沿って左側接合部を形成するように接続されており、前記下側右端部部分および前記上側右端部部分は、前記セルの前記右側部に沿って右側接合部を形成するように接続されている、ステップと
B) 平面的な吸音セプタム・インサートを提供するステップであって、前記平面的な吸音セプタム・インサートは、
a) 右側境界線、左側境界線、下側境界線、および上側境界線を有する平面的な吸音部分;
b) 前記右側境界線において前記吸音部分から突出する右側タブ部分;
c) 前記左側境界線において前記吸音部分から突出する左側タブ部分;
d) 前記下側境界線において前記吸音部分から突出する下側タブ部分;ならびに、
e) 前記上側境界線において前記吸音部分から突出する上側タブ部分
を含み、
ノッチが、前記上側タブ部分を前記右側タブ部分から分離しており、ノッチが、前記上側タブ部分を前記左側タブ部分から分離しており、ノッチが、前記下側タブ部分を前記右側タブ部分から分離しており、ノッチが、前記下側タブ部分を前記左側タブ部分から分離している、ステップと、
C) 前記平面的な吸音セプタム・インサートを前記セルの中へ挿入し、吸音セプタムを形成するステップであって、前記平面的な吸音部分は、前記上側壁部および前記下側壁部に対して横断方向に延在している、ステップと、
D) 前記右側タブ部分、左側タブ部分、下側タブ部分、および上側タブ部分を前記ハニカムに結合するステップであって、前記右側タブ部分は、前記下側右端部部分および前記上側右端部部分に結合されており、前記左側タブ部分は、前記下側左端部部分および前記上側左端部部分に結合されており、前記下側タブ部分は、前記凸形部分に結合されており、前記上側タブ部分は、前記凹形部分に結合されている、ステップと
を含む、方法。
【請求項12】
前記上側タブ部分は、上側左ローブおよび上側右ローブを含み、前記下側タブ部分は、下側左ローブおよび下側右ローブを含む、請求項11に記載の吸音構造体を作製するための方法。
【請求項13】
V字形状のノッチは、前記右側タブ部分および前記左側タブ部分から前記上側タブ部分を分離している、請求項11に記載の吸音構造体を作製するための方法。
【請求項14】
前記下側左ローブは、V字形状のノッチによって前記下側右ローブから分離されている、請求項12に記載の吸音構造体を作製するための方法。
【請求項15】
前記上側左ローブおよび前記上側右ローブは、湾曲した周囲部をそれぞれ有している、請求項12に記載の吸音構造体を作製するための方法。
【請求項16】
前記下側左ローブおよび前記下側右ローブは、中央に位置付けされた頂点を備えた角張った周囲部をそれぞれ有している、請求項12に記載の吸音構造体を作製するための方法。
【請求項17】
前記右側タブ部分および前記左側タブ部分は、中央に位置付けされた頂点を備えた角張った周囲部によって形成された外側端部をそれぞれ有している、請求項11に記載の吸音構造体を作製するための方法。
【請求項18】
前記吸音セプタムは、ドミナント・モノフィラメント・ファイバーを含む吸音メッシュであり、前記ドミナント・モノフィラメント・ファイバーは、前記下側タブ部分から前記上側タブ部分への方向に互いに平行に延在している、請求項11に記載の吸音構造体を作製するための方法。
【請求項19】
前記吸音セプタムは、ドミナント・モノフィラメント・ファイバーを含む吸音メッシュであり、前記ドミナント・モノフィラメント・ファイバーは、前記左側タブ部分から前記右側タブ部分への方向に互いに平行に延在している、請求項11に記載の吸音構造体を作製するための方法。
【請求項20】
前記方法は、音透過性のシートを前記ハニカムの前記第1の縁部に取り付けるステップと、中実の音不透過性のシートを前記ハニカムの前記第2の縁部に取り付けるステップとを含む、請求項11に記載の吸音構造体を作製するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、特定の供給源から生じる騒音を低減させるために使用される吸音構造体に関する。より具体的には、本発明は、厳しい半径の湾曲および/または複合的な湾曲を有する吸音構造体を形成するように輪郭決めされ得る、フレキシブル吸音ハニカムを提供することに関する。
【背景技術】
【0002】
特定の供給源によって発生させられる過剰な騒音を取り扱う最良の方法は、供給源において騒音を処理することであるということが広く認識されている。これは、典型的に、吸音減衰構造体(吸音処理)を騒音供給源の構造体に追加することによって達成される。1つのとりわけ問題のある騒音供給源は、大部分の乗客航空機の上で使用されているジェット・エンジンである。吸音処理は、典型的に、エンジン入口部、ナセル、および排気構造体の中に組み込まれている。これらの吸音処理は、比較的に薄い吸音材料を含有する吸音共鳴器を含み、または、エンジンによって発生させられる音エネルギーに対して音響インピーダンスを生成させる数百万個の孔部を有するグリッドを含む。
【0003】
ハニカムは、航空機および航空宇宙車両の中で使用するための一般に普及した材料である。その理由は、それが比較的に強力かつ軽量であるからである。エンジン・ナセルなどのような吸音用途に関して、吸音材料が、ハニカム構造体に追加されており、ハニカム・セルが、エンジンから離れて位置付けされている端部において、中実の音不透過性のシートまたはスキンによって音響的に閉じられており、エンジンの最も近くに位置付けされている端部において、多孔性のまたは穿孔された音透過性の被覆体によってカバーされるようになっている。このように吸音材料によってハニカム・セルを閉じることは、騒音の低減、減衰、および/または抑制を提供する吸音共鳴器を生成させる。また、共鳴器に追加的な騒音低減特性を提供するために、吸音セプタムは、通常、ハニカム・セルの内部の中へ組み込まれている。
【0004】
吸音セプタムをハニカム・セルの中へ組み込む1つの方法は、最初に、吸音メッシュまたは穿孔された吸音フィルムなどのような、吸音材料から平面的な吸音インサートを形成することである。平面的な吸音インサートは、セル開口部よりも大きく作製されている。したがって、インサートがプランジャーによってセルの中へ押し込まれるときに、それらは、キャップの形態で吸音セプタムの中へ折り曲げられる。キャップ形状は、セル壁部に接触するアンカー固定部分と、セルの中の音波を低減させる中央のセプタム部分とを提供する。セルの中へ挿入されると、吸音セプタム・キャップのアンカー固定部分とハニカム壁部との間の摩擦は、吸音セプタム・キャップを適切な場所に一時的にロックする。次いで、接着剤が適用され、挿入された吸音セプタム・キャップのアンカー固定部分をセル壁部に恒久的に結合する。
【0005】
吸音セプタム・キャップの恒久的な結合は、典型的に、ハニカム全体を液体接着剤のプールの中へ浸漬させることによって達成される。ハニカムが接着剤の中へ浸漬される深さは、挿入された吸音セプタム・キャップのアンカー固定部分が液体接着剤の中に浸されるように選ばれる。この接着剤浸漬プロセスは、とりわけ効果的である。その理由は、それが、典型的な吸音ハニカムの中に位置付けされている何百個もの吸音セプタムの同時の結合を提供するからである。
【0006】
セプタム・キャップをハニカムの中へ挿入し、吸音ハニカムを形成することは、米国特許第7,434,659号明細書、米国特許第7,510,052号明細書、米国特許第7,854,298号明細書、および米国特許第9,016,430号明細書に説明されている。これらの発行された特許に記載されているように、セプタム・キャップの摩擦ロッキングは、セプタム挿入手順の重要な態様である。たとえば、セプタムは、摩擦ロッキングが十分でない場合には、ハンドリングの間に、シフトするかまたはその他の方法で移動する可能性がある。セプタムの任意のシフトは、結合の間に、セプタムに均一に接着剤を適用することを困難にする。また、セプタムのシフトは、吸音特性の制御されない変更を引き起こす。最悪のケースでは、摩擦ロッキングが十分でない場合には、セプタムがハニカム・セルから完全に抜け落ちる可能性がある。
【0007】
吸音処理において使用されているハニカムの大部分は、六角形のセルを有している。そのような六角形のハニカムは、硬くなる傾向があり、セル壁部を座屈させることなく、湾曲した構造体へと形成することは困難である可能性がある。ほとんどのケースでは、湾曲した吸音構造体は、六角形の吸音ハニカムの複数のセクションを繋ぎ合わせることによって作製される。フレキシブル・ハニカムが利用可能であり、それは、厳しい半径の湾曲および/または複合的な曲線を有する構造体へと形成され得る。Flex-Core(登録商標)ハニカムは、所定のタイプのフレキシブル・ハニカムであり、それは、Hexcel Corporation(Dublin、CA)から入手可能である。Flex-Core(登録商標)ハニカムは、セル壁部が凸形および凹形の湾曲を含むという独自のセル構成を有している。凸形および凹形のセル壁部湾曲、ならびに、Flex-Core(登録商標)ハニカムの他のセル設計特徴の独自の組み合わせは、可撓性および形成可能性をハニカムに付与し、厳しい半径の湾曲および/または複合的な湾曲を有する構造体が、低減された背反湾曲(anticlastic curvature)を伴って、および、セル壁部を座屈させることなく、形成され得るようになっている。
【0008】
Flex-Core(登録商標)ハニカムの固有の可撓性は、それを、厳しい半径の湾曲および/または複合的な湾曲が要求される吸音構造体を作製する際に使用するための望ましいハニカムにする。しかし、Flex-Core(登録商標)ハニカムの独自のセル構成は、セプタム・キャップ・スタイルの吸音セプタムをセルの中へ挿入することに関して複雑な難題を提示する。
【発明の概要】
【0009】
本発明によれば、特定の平面的な吸音セプタム・インサート構成が、Flex-Core(登録商標)ハニカム・セル、および、同様に輪郭決めされたセルを有するハニカムの中への挿入に良く適しているということが発見された。平面的な吸音セプタム・インサートは、セル輪郭の独自の形状を計算に入れるように構成されており、フレキシブル・ハニカム・セルの中へ挿入されているときに所望の量の摩擦ロッキングを提供し、一方、フレキシブル・ハニカムが湾曲した吸音構造体の中へ形成されたときでも、適切な場所に恒久的に結合された後にも依然として所望の吸音特性を提供することができる。
【0010】
本発明による吸音構造体を作製するために使用されるフレキシブル・ハニカムは、音供給源の最も近くに位置付けされることとなる第1の縁部、および、第2の縁部を含む。フレキシブル・ハニカムは、左側部および右側部を有するセルを含む。セルは、下側壁部および上側壁部によって画定されており、下側壁部は、第1の縁部と第2の縁部との間に延在しており、上側壁部も、第1の縁部と第2の縁部との間に延在している。下側壁部は、下側左端部部分、下側右端部部分、および、それらの間に位置付けされている凸形部分を有している。上側壁部は、上側左端部部分、上側右端部部分、および、それらの間に位置付けされている凹形部分を有している。下側左端部部分および上側左端部部分は、セルの左側部に沿って左側接合部を形成するように接続されている。下側右端部部分および上側右端部部分は、前記セルの右側部に沿って右側接合部を形成するように接続されている。
【0011】
本発明の特徴として、吸音セプタムは、セルの中に位置付けされている。吸音セプタムは、セルの上側壁部および下側壁部に対して横断方向に延在する平面的な吸音部分を含む。平面的な吸音部分は、フレキシブル・ハニカムの第1の縁部の最も近くに位置付けされている上部側部、第2の縁部の最も近くに位置付けされている底部側部、右側境界線、左側境界線、下側境界線、および上側境界線を有している。吸音セプタムは、右側境界線において吸音部分から突出する右側タブ部分と、左側境界線において吸音部分から突出する左側タブ部分と、下側境界線において吸音部分から突出する下側タブ部分と、上側境界線において吸音部分から突出する上側タブ部分とをさらに含む。
【0012】
本発明のさらなる特徴として、右側タブ、左側タブ、下側タブ、および上側タブは、セル壁部に接着剤によって結合されており、右側タブが、下側右部分および上側右部分に結合されており、左側タブが、下側左部分および上側左部分に結合されており、下側タブが、凸形部分に結合されており、上側タブが、凹形部分に結合されているようになっている。この特定の結合構成は、セルの中の騒音を低減させるのに良く適している平面的な吸音部分を提供する。
【0013】
本発明は、セルの中に摩擦ロックされるセプタム・キャッを形成するために、フレキシブル・ハニカム・セルの中へ挿入される平面的な吸音セプタム・インサートに関する。また、本発明は、セプタム・キャップがその中に摩擦ロックされているフレキシブル・ハニカムに関し、また、湾曲した構造体へと形成される前または後のいずれかに、セプタム・キャップがセル壁部に恒久的に結合される、吸音ハニカムに関する。本発明は、ジェット・エンジンの音減衰とともに使用されるナセル、吸音パネル、および他の吸音処理を含む、吸音ハニカムを含有する吸音構造体に関する。加えて、本発明は、平面的な吸音セプタム・インサートを作製するための方法をカバーし、また、フレキシブル吸音ハニカム、および、フレキシブル吸音ハニカムがその中に位置付けされている吸音構造体を作製するための方法をカバーする。
【0014】
上記に説明されている特徴および多くの他の特徴、ならびに、本発明に付随する利点は、添付の図面に関連して見られるときに、以下の詳細な説明を参照することによって、より良好に理解されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による例示的なフレキシブル吸音ハニカムの斜視図である。
図2】例示的な平面的な吸音セプタム・インサートを示す図である。
図3】好適な例示的な平面的な吸音セプタム・インサートを示す図である。
図4図1に示されているフレキシブル・ハニカムからの単一のセルの断面図である。
図5】平面的な吸音セプタム・インサートをフレキシブル・ハニカムのセルの中へ挿入する際に使用するための例示的なプランジャーの部分的な斜視図である。
図6】セプタム・キャップをハニカム・セルの中へ恒久的に結合するために、セプタム・キャップへの接着剤の適用を示す簡単化された図である。
図7】騒音の供給源からの音を低減させるために適切な場所にある、本発明による例示的なフレキシブル吸音構造体の簡単化された図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明による吸音構造体において使用するための例示的なフレキシブル吸音ハニカムが、全体的に図1の中の10に示されている。フレキシブル吸音ハニカム10は、縦方向(L)、幅方向(W)、および厚さ方向(T)を有している。フレキシブル吸音ハニカム10は、フレキシブル・ハニカム12を含み、フレキシブル・ハニカム12は、第1の縁部14および第2の縁部16を有しており、第1の縁部14は、騒音供給源の最も近くに位置付けされることとなる。フレキシブル吸音ハニカム10は、セル18を有しており、セル18は、左側部20および右側部22をそれぞれ有している。それぞれのセルは、下側壁部24および上側壁部26を有しており、下側壁部24は、第1の縁部14と第2の縁部16との間に延在しており、上側壁部26は、また、第1の縁部14と第2の縁部16との間に延在している。セル18のそれぞれは、ハニカム厚さ(T)に等しい深さを有しており、ハニカム厚さ(T)は、2つの縁部14と16との間の距離である。また、それぞれのセル18は、セル壁部24および26に対して垂直に測定される断面積を有している。
【0017】
図1および図4に示されているように、下側セル壁部24は、下側左端部部分28、下側右端部部分30、および凸形部分32を有しており、凸形部分32は、下側左端部部分と下側右端部部分との間に位置付けされている。上側セル壁部26は、上側左端部部分34、上側右端部部分36、および凹形部分38を有しており、凹形部分38は、上側左端部部分と上側右端部部分との間に位置付けされている。下側左端部部分28および上側左端部部分34は、セルの左側部に沿って左側接合部40を形成するように接続されている。下側右端部部分30および上側右端部部分36は、前記セルの右側部に沿って右側接合部42を形成するように接続されている。上側セル壁部および下側セル壁部の中のさまざまな部分の間の移行部のおおよその場所は、図4の中のハッシュ・マーク「w」、「x」、「y」、および「z」によって示されている。
【0018】
吸音ハニカム10は、セプタム44を含む。セプタム44は、図2に示されているような多数の平面的な吸音セプタム・インサート46をハニカム・セルの中へ挿入し、吸音セプタム・キャップを形成することによって形成され、吸音セプタム・キャップは、初期には適切な場所に摩擦ロックされ、次いで、接着剤によってセルに結合され、セプタム44を形成する。吸音セプタム・インサートの形状および構成は、下記に説明されているように、特定のクライテリアを満たさなければならず、吸音セプタム・インサートが、挿入の間に適正に折れ曲がり、セプタム・キャップを形成するようになっており、セプタム・キャップは、セルの中に十分に摩擦ロックされ、セプタム・キャップがセル壁部に接着剤によって結合された後に、吸音的にアクティブな適切な平面的な中央部分を提供するということが発見された。
【0019】
図2に示されているように、平面的な吸音セプタム・インサート46は、中央に位置付けされている平面的な吸音部分48から構成されており、平面的な吸音部分48は、点線50として示されている周囲部または全体的な境界線を有している。全体的な境界線50は、右側境界線52、左側境界線54、下側境界線56、および上側境界線58によって形成されている。右側境界線または右側周囲部セクション52は、境界線マーカー「a」と「b」との間に延在している。左側境界線または左側周囲部セクション54は、境界線マーカー「c」と「d」との間に延在している。下側境界線または下側周囲部セクション56は、境界線マーカー「c」と「b」との間に延在している。上側境界線または上側周囲部セクション58は、境界線マーカー「d」と「a」との間に延在している。
【0020】
平面的な吸音部分48は、タブによって取り囲まれており、タブは、挿入の間にセル壁部に対抗して適切な場所の中へ折り曲げられ、セル壁部への吸音セプタム・インサート46の摩擦ロッキングを提供し、後に、セル壁部に恒久的に結合されるアンカー固定タブとして機能する。右側タブ部分60は、右側境界線52において吸音部分から突出している。左側タブ部分62は、左側境界線54において吸音部分から突出している。下側タブ部分64は、下側境界線56において吸音部分から突出している。上側タブ部分66は、前記上側境界線58において吸音部分から突出している。
【0021】
右側タブ部分60は、外側端部を含み、外側端部は、中央に位置付けされた頂点を備えた角張った周囲部を有している。具体的には、角張った周囲部は、第1の外向きに延在する縁部60aおよび第2の外向きに延在する縁部60bによって形成されており、第1の外向きに延在する縁部60aおよび第2の外向きに延在する縁部60bは、互いに対して角度(e)で配向されており、それらが頂点61において出会うようになっている。また、左側タブ部分62は、外側端部を含み、外側端部は、中央に位置付けされた頂点を備えた角張った周囲部を有している。左側タブ部分の外側端部の角張った周囲部は、第1の外向きに延在する縁部62aおよび第2の外向きに延在する縁部62bによって形成されており、第1の外向きに延在する縁部62aおよび第2の外向きに延在する縁部62bは、互いに対して角度(f)で配向されており、それらが頂点63において出会うようになっている。角度「e」および「f」は、好ましくは、おおよそに等しくなっており(±5°)、フレキシブル・ハニカム・セルの特定の構成に応じて、60°から120°の範囲にあることが可能である。Flex-Core(登録商標)ハニカムに関して、90°から110°の角度が好適である。角度「e」および「f」は、頂点63および61がセルの側部において接合部40および42の中にそれぞれフィットするように、タブ62および60が折り曲げられることを確保するように選ばれる。
【0022】
上側タブ部分66は、上側左ローブ66aおよび上側右ローブ66bを含む。ローブ66aおよび66bは、V字形状のノッチ66cによって分離されている。ローブの外側周囲部70および72は、好ましくは、図2に示されているように、形状がアーチ形になっている。アーチ形の周囲部70および72とV字形状のノッチ66cとの組み合わせは、セル壁部の凹形部分38の中での上側タブ部分66のとりわけ効果的な折り曲げおよび摩擦ロッキングを提供する。
【0023】
下側タブ部分64は、下側左ローブ64aおよび下側右ローブ64bを含む。ローブ64aおよび64bは、V字形状のノッチ64cによって分離されている。下側左ローブ64aは、外側端部を含み、外側端部は、中央に位置付けされた頂点を備えた角張った周囲部を有している。角張った周囲部は、第1の外向きに延在する縁部74aおよび第2の外向きに延在する縁部74bによって形成されており、第1の外向きに延在する縁部74aおよび第2の外向きに延在する縁部74bは、互いに対して角度(g)で配向されており、それらが頂点75において出会うようになっている。また、下側右ローブ64bは、外側端部を含み、外側端部は、中央に位置付けされた頂点を備えた角張った周囲部を有している。下側右ローブの角張った周囲部は、第1の外向きに延在する縁部76aおよび第2の外向きに延在する縁部76bによって形成されており、第1の外向きに延在する縁部76aおよび第2の外向きに延在する縁部76bは、互いに対して角度(h)で配向されており、それらが頂点77において出会うようになっている。角度「g」および「h」は、好ましくは、おおよそに等しくなっており(±5°)、フレキシブル・ハニカム・セルの特定の構成に応じて、100°から160°の範囲にあることが可能である。Flex-Core(登録商標)ハニカムに関して、120°から140°の角度が好適である。角張った周囲部および中央に位置付けされた頂点を備えた外側端部を有する下側左ローブおよび下側右ローブは、V字形状のノッチ64cと組み合わされているときに、セル壁部の凸形部分32に対する下側タブ部分64の効果的な折り曲げおよび摩擦ロッキングを提供する。
【0024】
セルの中への挿入の間の平面的な吸音インサートの所望の折り曲げを推進するために、および、セル壁部に対するインサートの必要な摩擦ロッキングを提供するために、タブ部分は、78、80、82、および84に示されているように、V字形状のノッチによって分離されているということが好適である。V字形ノッチは、内向きに延在しており、平面的な吸音部分48の境界線50の比較的に近くに終端している。V字形ノッチは、境界線50を横切って延在するべきではない。
【0025】
図7に示されているように、フレキシブル吸音ハニカム10は、典型的に、多孔性のまたは穿孔された音透過性のフェイス・シート11と中実の音不透過性の吸音バリア・フェイス・シート13との間に位置付けされており、吸音減衰パネルまたは構造体を形成しており、吸音減衰パネルまたは構造体は、ジェット・エンジンの内部などのような、騒音15の供給源の近くに位置付けされている。中実の吸音バリア・フェイス・シート13は、ハニカム10の第2の縁部16に対応する吸音セル18の底部に吸音バリアを形成している。それぞれのセルは、第1の縁部14と第2の縁部16との間の距離に等しい深さを有する吸音共鳴器を形成している。セルの吸音底部がハニカム10の第2の縁部16に対応することが望まれないときには、個々の吸音バリアが、セル18の中へ挿入され得る。セルの中への中実のバリアの挿入は、望まれるときには、ハニカム10の第1の縁部14と第2の縁部16との間の距離よりも小さい深さを有する吸音共鳴器を形成することを可能にする。
【0026】
また、図7に示されているように、タブ部分は、好ましくは、挿入の間に折り曲げられており、タブ部分のすべてが、騒音供給源に最も近いセプタム部分の側部にあるようになっている。これは、ハニカムの第1の縁部および騒音供給源の最も近くに位置付けされているセプタム部分の側に、ハニカム壁部へのセプタムのアンカー固定を提供する。しかし、いくつかの状況では、タブ部分が第2の縁部の最も近くに騒音供給源から離れるように位置付けされるように、セルの中でセプタム部分を配向させることが望ましい可能性がある。
【0027】
平面的な吸音セプタム46は、挿入ツールまたはプランジャーを使用してハニカム・セル18の中へ挿入される。別個のフォーミング・ダイが、ハニカム・セルの中への挿入の前に、平面的な吸音セプタムの初期の折り曲げを提供するために使用され得る。しかし、プレ・フォーミング・ダイは、通常、必要とされず、または、使用されない。典型的に、ハニカムの第1の縁部14は、平面的な吸音セプタムの挿入の間にフォーミング・ダイとして機能する。単一の平面的な吸音セプタムが、単一のプランジャーを使用して挿入され得るか、または、複数のセプタムが、複数のプランジャーを使用して同時に挿入され得る。
【0028】
プランジャーの断面形状、ならびに、平面的な吸音セプタムおよびセル断面サイズに対する断面サイズが、適正な折り曲げおよび摩擦ロッキングを保証するために考慮に入れられなければならない。好適なプランジャー設計は、図5の中の90に示されている。プランジャー90は、プランジャー本体部92およびプランジャー面94を含み、プランジャー面94は、平面的な吸音セプタムに接触する。プランジャー面94は、好ましくは、図5に示されているような断面形状を有している。
【0029】
他の断面形状も可能であるが、図5に示されている断面形状は、ハニカムの中への挿入の間に平面的な吸音セプタムの所望の折り曲げを提供し、セルの中にしっかりと摩擦ロックされる所望の平面的な部分48を提供することが見出された。好適なプランジャー面は、凸形部分96および凹形部分98を有している。凸形部分は、中央に位置付けされた頂点100を含む。セプタム挿入の間に、頂点100は、セルの凹形部分38に隣接して位置付けされており、プランジャーの凹形部分98は、セルの凸形部分32に隣接して位置付けされている。プランジャー面94の断面サイズは、セプタム材料の厚さ、セプタム材料の固有のスプリング・バック、ならびに、セル開口部のサイズおよび形状に応じて選ばれる。
【0030】
図6は、セプタム・キャップ44Pの簡単化された側断面図を示しており、セプタム・キャップ44Pは、平面的な吸音セプタム・インサート46から形成されており、それは、プランジャー90を使用してフレキシブル・ハニカム10Pの中の適切な場所に押し込まれている。フレキシブル吸音ハニカム10を形成するために、ハニカムが、セプタム・キャップ44Pの恒久的な結合を依然として必要とする前駆構造体(precursor structure)であるということを示すために、Pが追加されていることを除いて、図6の中の識別番号は、図1および図2の中の番号に対応している。セプタム・キャップ44Pは、吸音インサート材料の固有の跳ね返りによって適切な場所に摩擦ロックされる。挿入プロセスは、平面的なセプタム部分48Pが所望の挿入深さにおいてセル壁部に対して横断方向(90°±10°)に延在するように、平面的なセプタム部分48Pを置く。タブ部分は、51においてそれらの折り曲げられた位置に示されている。
【0031】
フレキシブル・ハニカム10Pは、接着剤110のプールの中へ浸漬され、タブ部分が接着剤の中に浸されるようになっている。フレキシブル・ハニカム10Pは、接着剤プール110から除去され、液体接着剤は、乾燥または硬化され、フレキシブル吸音ハニカム10を形成する。このタイプの接着剤適用手順は、フレキシブル吸音ハニカム10の中でのセプタム・キャップ44の恒久的な結合を提供する。形成されると、フレキシブル吸音ハニカムは、厳しい半径の湾曲および/または複合的な曲線を有する多種多様な湾曲した構造体を形成するために使用され得る。
【0032】
典型的にセプタム・キャップをハニカム壁部に結合するために使用される液体接着剤のいずれかが、セプタム・キャップをフレキシブル・ハニカム壁部に結合するために使用され得る。好適な接着剤は、高い温度(150~200℃)において安定しているものを含む。例示的な接着剤は、エポキシ、アクリル、フェノール類、シアノアクリレート、ビスマレイミド、ポリアミド・イミド、およびポリイミドを含む。ポリアミド・イミド接着剤が好適である。接着剤は、セプタム材料およびハニカム材料の両方と相性の良いように選ばれる。
【0033】
フレキシブル・ハニカム10を作製するために使用される材料は、金属および複合材料などのような、フレキシブル・ハニカムを作製するために典型的に使用されるもののいずれかであることが可能である。例示的な金属は、アルミニウムおよびアルミニウム合金を含む。例示的な複合材料は、ファイバーグラス、樹脂含浸アラミド紙、たとえば、Nomex(登録商標)など、および、グラファイト・ファイバーと適切なマトリックス樹脂とのさまざまな組み合わせを含む。比較的に高い温度(150~200℃)に耐えることができるマトリックス樹脂が好適である。
【0034】
中実の吸音バリア・フェイス・シート13を作製するために使用される材料は、吸音構造体のために一般に使用される中実のフェイス・シート材料のいずれかであることが可能であり、それは、典型的に、ハニカム構造体を作製するために使用される同じタイプの材料を含む。また、穿孔された音透過性のフェイス・シート11を作製するために使用される材料は、構造体の中の細孔または穿孔が十分になっており、ジェット・エンジンまたは他の騒音供給源からの音波が吸音セルまたは共鳴器の中へ進入することを可能にするという条件で、そのような多孔性の構造体のために一般に使用される材料のいずれかであることが可能である。フェイス・シート材料は、それが所望の湾曲した構造体へと形成されると、フェイス・シートとフレキシブル・ハニカムとの結合を可能にするように十分に可撓性であるべきである。
【0035】
吸音ハニカムを作製するために使用されるフレキシブル・ハニカムは、以前に記載されているように凸形および凹形の湾曲の組み合わせを提供するように形状決めされているセルのタイプを有する任意のフレキシブル・ハニカムであることが可能である。好適なフレキシブル・ハニカムは、Flex-Core(登録商標)フレキシブル・ハニカムであり、それは、Hexcel Corporation(Dublin、California)から入手可能である。図1に示されているフレキシブル・ハニカムは、Flex-Core(登録商標)フレキシブル・ハニカムの代表例である。Flex-Core(登録商標)フレキシブル・ハニカムは、5052または5056アルミニウム、アラミド/フェノール複合材、およびファイバーグラス/フェノール複合材を含む、さまざまな適切な材料から作製されている。
【0036】
フレキシブル吸音ハニカムを作製するために使用されるフレキシブル・ハニカム・セルは、典型的に、0.05平方インチから1平方インチ以上の範囲にある断面積を有することとなる。吸音セルの深さ(ハニカムまたはコア厚さT)は、一般的に、0.25インチから3インチ以上の範囲にあることとなる。ハニカム材料の壁部厚さは、典型的に、0.001インチから0.050インチの範囲にあることとなる。ジェット・エンジン・ナセルに関して、フレキシブル・ハニカム・セルは、典型的に、約0.1平方インチから0.5平方インチの断面積、おおよそ0.025インチから0.05インチの壁部厚さ、および、約1.0インチから2.0インチの深さを有することとなる。
【0037】
標準的な吸音材料のいずれかが、セプタム・キャップ44を形成するために使用され得る。これらの吸音材料は、典型的に、比較的に薄いシートとして提供され、比較的に薄いシートは、騒音低減を提供するように設計されている、穿孔された、多孔性の、または、オープン・メッシュのファブリックである。セプタムがフレキシブル・ハニカム・セルの中に設置される前または後のいずれかに、穿孔が、中実のシート材料の中に形成される。任意の適切な金属、セラミック、またはプラスチックの吸音材料が、穿孔されたセプタムを作製するために使用され得るが、吸音材料は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、または、高温用途に適切な同様の耐薬品性ポリマー材料であるということが好適である。PEEKのシートまたはフィルムは、商品名VICTREX(登録商標)PEEK(商標)ポリマーの下でPEEKのシートを生産しているVictrex USA(Greenville、South Carolina)などのような、複数の供給源から市販されている。
【0038】
セプタム材料として中実のフィルムを使用するときに、孔部が、平面的な吸音部分48の全体的な境界線50の中のフィルムを通してドリル加工される。孔部は、レーザーまたは他の適切な孔部ドリリング・システムを使用してドリル加工され得る。全体的な境界線50の外側に位置付けされているさまざまなタブ部分は、中実のままであることが可能であり、または、また、所望の場合には、さまざまな程度にドリル加工され、表面積、および、タブ部分とセル壁部との接着剤結合を増加させることが可能である。
【0039】
さまざまな材料(金属、セラミック、プラスチック)の穿孔されたおよび多孔性のシートが使用され得るが、吸音材料は、モノフィラメント・ファイバーから織られたオープン・メッシュのファブリックであるということが好適である。ファイバーは、ガラス、炭素、セラミック、またはポリマーから構成され得る。ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフルオロエチレンプロピレン(FEP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド6(ナイロン、6PA6)およびポリアミド12(ナイロン12、PA12)から作製されたモノフィラメント・ポリマー・ファイバーは、単にわずかな例に過ぎない。PEEKから作製されたオープン・メッシュのモノフィラメント・ファブリックが、高温用途に好適である。オープン・メッシュのモノフィラメント吸音ファブリック、および、本発明によるセプタム・キャップを形成するために使用され得る他の吸音材料が、多種多様な市販向けの供給源から入手可能である。たとえば、オープン・メッシュのモノフィラメント吸音ファブリックのシートが、SEFAR PETEX、SEFAR NITEX、およびSEFAR PEEKTEXという商品名の下で、SEFAR America Inc.(Buffalo Division Headquarters 111 Calumet Street Depew、 NY 14043)から取得され得る。
【0040】
ハイブリッド・セプタム・キャップが可能であり、その場合には、平面的なセプタム部分が、オープン・メッシュのモノフィラメント・ファブリックから作製されており、タブ部分は、プラスチックの中実のフィルムから作製されている。特定の状況では、この組み合わせは、所望の吸音特性およびセプタム強度を提供することが可能である。たとえば、PEEKの中実フィルムであるタブ部分と組み合わせられたPEEKのオープン・メッシュ・ファブリックの平面的なセプタム部分が可能である。PEEKのオープン・メッシュのファブリックは、公知の熱結合手順にしたがって、中実のフィルム・タブ部分に熱結合されるかまたは溶接される。タブ部分とセル壁部との接着剤結合を補助することが望まれる場合には、中実のフィルム・タブ部分は穿孔され得る。
【0041】
吸音ファブリックは、異なる織られたファイバーの組み合わせから作製され得るが、吸音ファブリックの中のファイバーは同じ材料から作製されるということが好適である。多くの吸音ファブリックにおいて、縦方向ファイバー(縦ファイバー)は、一般的に、横方向ファイバー(横ファイバー)よりも小さい直径のファイバーから作製されている。したがって、横ファイバーは、縦方向ファイバーよりも強力で可撓性が低くなる傾向がある。また、横ファイバーの可撓性は、横ファイバーの(直径というよりもむしろ)化学的性質を変更することによって、縦ファイバーに対して増加させられ、より硬いファイバーを提供することが可能である。
【0042】
1つの方向へのファイバーが、クロス方向ファイバーよりも可撓性が低くまたは強力である、織られたファブリックにおいて、より強力なファイバーは、一般に、ドミナント・ファイバーと称される。平面的な吸音セプタム・インサートは、ドミナント・ファイバーが存在しないものを含む、すべてのタイプの織られた吸音ファブリックから作製され得る。しかし、織られたモノフィラメント吸音セプタム材料は、ドミナント・ファイバーを含むということ、および、ドミナント・ファイバーが横ファイバーであるということが好適である。
【0043】
好適な平面的な吸音セプタム・インサートは、図3の中の120において示されている。平面的な吸音セプタム・インサートは、織られたモノフィラメントのオープン・メッシュの吸音ファブリックであり、そこでは、ドミナント・横ファイバー122が互いに平行に配向されており、下側タブ部分124から上側タブ部分126への方向に延在している。縦ファイバー128は、互いに平行に配向されており、左側タブ部分および右側タブ部分の外側端部の頂点130と頂点132との間の方向に延在している。図3に示されているように、横(ドミナント)ファイバーおよび縦ファイバーを配向させるということは、ハニカム・セル壁部に対する平面的な吸音セプタム・インサートの折り曲げおよび摩擦ロッキングを提供し、それは、他のドミナント・ファイバー配向よりも効果的であるということが発見された。
【0044】
好適な横ファイバー配向は、図3に示されているように、横ファイバーがライン140に対して実質的に垂直の方向に延在する場合のものを含む。ライン140は、好ましくは、下側タブ部分124の外向きに延在する縁部140aおよび140bに対して平行になっている。また、ライン140は、図2に示されている平面的な吸音インサートの下側タブ部分64の外向きに延在する縁部74bおよび76aに対して平行になっていることとなる。実質的に垂直であるということは、横ファイバー方向とライン140との間の角度が80度から100度の間で変化することが可能であるということを意味している。また、ライン140は、好ましくは、頂点130から頂点132へ延在するラインに対して平行になっている。
【0045】
代替的な好適な平面的な吸音セプタム・インサートは、ドミナント・横ファイバーが、互いに平行に配向されており、左側タブ部分および右側タブ部分の外側端部の頂点と頂点との間の方向に延在するというものである。縦ファイバーは、互いに平行に配向されており、下側タブ部分から上側タブ部分への方向に延在している。また、ドミナント・横ファイバーのこの配向は、ハニカム・セル壁部に対する平面的な吸音セプタム・インサートの折り曲げおよび摩擦ロッキングを提供し、それは、他のドミナント・ファイバー配向よりも効果的である。加えて、V字形状のノッチ66cは、ドミナント・ファイバーのこの配向が利用されるときに排除され得る。代替的な好適な平面的な吸音セプタム・インサートは、ドミナント・横ファイバー配向を含み、そこでは、横ファイバーが、ライン140に対して実質的に平行の方向に延在している。実質的に平行であるということは、横ファイバー方向とライン140との間の角度が、+10度から-10度の間で変化することが可能であるということを意味している。
【0046】
本発明の例示的な実施形態がこのように説明されてきたが、開示の範囲内のものは、単に例示的なものに過ぎないということ、ならびに、さまざまな他の代替、適合、および修正が、本発明の範囲内で行われ得るということが当業者によって留意されるべきである。したがって、本発明は、上記に説明された実施形態によって限定されるのではなく、以下の特許請求の範囲のみによって限定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7