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特許7315534航空機内装の用途向けのPEI粒子発泡体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】航空機内装の用途向けのPEI粒子発泡体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/16 20060101AFI20230719BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20230719BHJP
   B29C 44/44 20060101ALI20230719BHJP
   B29K 79/00 20060101ALN20230719BHJP
   B29L 31/58 20060101ALN20230719BHJP
【FI】
C08J9/16 CFG
B29C44/00 G
B29C44/44
B29K79:00
B29L31:58
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020511262
(86)(22)【出願日】2018-08-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 EP2018072392
(87)【国際公開番号】W WO2019038213
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-06-25
(31)【優先権主張番号】17187663.4
(32)【優先日】2017-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン トラスル
(72)【発明者】
【氏名】デニス ホライン
(72)【発明者】
【氏名】カイ ベアンハート
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-143933(JP,A)
【文献】特開昭59-036139(JP,A)
【文献】国際公開第2016/052604(WO,A1)
【文献】特開平06-322168(JP,A)
【文献】特開昭61-126146(JP,A)
【文献】特開平06-023857(JP,A)
【文献】特表平07-508938(JP,A)
【文献】特開平03-192135(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0287260(US,A1)
【文献】特開2018-053037(JP,A)
【文献】特開2018-053040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00- 9/42
B29C 44/00-44/60;67/20
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機建造におけるPEI粒子発泡体の使用において、前記発泡PEIのガラス転移温度が180~215℃であり、前記粒子発泡体の平均気泡直径が2mm未満であり、
前記PEI粒子発泡体は、80~99.5重量%のPEI、0.5~10重量%の発泡剤および0~10重量%の添加剤から成る組成物から得られ、
前記発泡剤が、アルコール、アセトン、アルカン、アルケン、CO、N、水、アルデヒドまたはこれらの物質の2つ以上の混合物であり、
ここで、前記PEI粒子発泡体は、多孔板を備えた押出機から前記組成物を押し出すことにより形成され、フィードゾーンとスクリューチップとの間の温度は320~400℃の範囲内にあり、前記多孔板の温度は250~350℃であり、前記多孔板を通過する際の溶融温度は230~360℃であり、
押し出された前記組成物を、温度と圧力との組合せに関して発泡を防ぐように設計されている水中ペレタイザーに案内して、前記発泡剤が添加されたペレットを得、
赤外線放射またはマイクロ波放射から選択されたエネルギーで前記ペレットを予備発泡して、前記PEI粒子発泡体を形成することを特徴とする、粒子発泡体の使用。
【請求項2】
前記添加剤が、難燃剤、可塑剤、顔料、UV安定剤、成核剤、耐衝撃性改良剤、接着促進剤、レオロジー改質剤、鎖延長剤、繊維および/またはナノ粒子であることを特徴とする、請求項1記載の粒子発泡体の使用。
【請求項3】
前記粒子発泡体が、ISO1926に準拠した0.5MPaを超える引張強度、ISO1926に準拠した8%~12%の破断点伸び、ASTM C273に準拠した8MPaを超える室温での剪断弾性率、ASTM C273に準拠した0.45MPaを超える室温での剪断強度、ISO 844に準拠した13MPaを超える室温での圧縮弾性率およびISO 844に準拠した0.4MPaを超える室温での圧縮強度を満たすことを特徴とする、請求項1または2記載の粒子発泡体の使用。
【請求項4】
前記粒子発泡体が航空機の内部領域に設置されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の粒子発泡体の使用。
【請求項5】
前記粒子発泡体の平均気泡直径が500μm未満であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の粒子発泡体の使用。
【請求項6】
80~99.5重量%のPEI、0.5~10重量%の発泡剤、および0~10重量%の添加剤から成る組成物を、多孔板を備えた押出機により処理して発泡ペレットを得て、引き続き、前記発泡ペレットをさらに発泡させて粒子発泡体を得ることを特徴とし、ここで、フィードゾーンとスクリューチップとの間の温度は320~400℃の範囲内にあり、前記多孔板の温度は250~350℃であり、前記多孔板を通過する際の溶融温度は230~360℃であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の使用のためのPEI粒子発泡体の製造方法。
【請求項7】
90~100重量%のPEIおよび0~10重量%の添加剤から成る組成物を、多孔板を備えた押出機によって処理してペレットを得て、引き続き、前記ペレットに、発泡剤を0.5~10重量%で含むように、オートクレーブ内で発泡剤を添加し、引き続き、前記発泡剤が添加されたペレットを、放圧によりおよび/または200℃を超える温度に加熱することにより発泡させて粒子発泡体を得ることを特徴とし、ここで、フィードゾーンとスクリューチップとの間の温度は320~400℃の範囲内にあり、前記多孔板の温度は300~350℃であり、前記多孔板を通過する際の溶融温度は250~360℃であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の使用のためのPEI粒子発泡体の製造方法。
【請求項8】
請求項6または7記載の方法により製造された前記粒子発泡体を、カバー材料に接着、縫い付けまたは溶着することを特徴とする、複合部材の製造方法。
【請求項9】
前記押出機を通過した前記PEIを、任意にカバー材料を含む、任意に加熱された型に導入し、成形しながら発泡させて粒子発泡体または複合材料を得ることを特徴とする、請求項6記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
ポリエーテルイミド(PEI)をベースとするポリマー発泡体は、航空機内装向けに航空機産業が要求する法的仕様を満たす。特に、火災性状、耐媒体性および機械的特性に対する要求は、ここでの大きな課題である。先行技術によれば、適切なポリマー発泡体は半製品として製造される。成形部材を得るための後処理は、たとえば大量の切断屑のせいで、時間と材料利用の点で不経済である。本発明は、原則的に適切な材料を処理して粒子発泡成形部材を得ることができるという点でこの課題を解決する。これらの成形部材は、後処理なしで、短いサイクル時間で、ひいては経済的に製造できる。さらに、このことから、たとえば発泡体にインサートなどを直接組み込むことにより、設計の自由度に関して、機能的統合の新しい手段が生まれる。
【0002】
先行技術
航空機産業での設置に適した発泡材料は、一般的に知られている。しかしながら、この目的のために記載されている発泡体の大部分は、純粋なPMI(ポリメタクリルイミド)、PPSU(ポリフェニレンスルホン)またはPES(ポリエーテルスルホン)のみで構成されている。毒物学的な観点からは不適切であるが、文献にはPI(ポリアリールイミド)も見つけられる。これらの材料はすべて、これまでもっぱらブロック材料またはスラブ材料として使用されてきた。
【0003】
他の材料も、航空機産業で設置するためのスラブ材料としてあまり詳細に説明されていない。そのような材料の例が、ポリ(オキシ-1,4-フェニルスルホニル-1,4-フェニル)(PESU)である。これは、たとえばDIAB社からDivinycell Fの製品名で販売されている。しかしながら、これらの押出発泡体スラブの更なる処理では、不経済にも大量のオフカット材料が発生する。
【0004】
三次元発泡体成形部材の製造における切断屑を回避するための経済的な方法は、ブロック発泡体の代わりに発泡体粒子(ビーズフォーム)を使用することである。先行技術に従って利用可能なすべての粒子発泡体は、高温での使用時に欠点を有するか、または概して、特にこれらの高温で最適でない機械的特性を有する。さらに、易可燃性ではなく、それゆえ、たとえば道路、鉄道または航空機に係る乗り物内部に設置できることが知られている発泡体の数は非常に限られている。たとえば、ポリプロピレン(EPP)、ポリスチレン(EPS)、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(E-TPU)またはPMI(ROHACELL Triple F)をベースとする粒子発泡体は、難燃効果が不十分であるのに対して、難燃性を固有に持つ、原則的に適切なすべてのポリマー、たとえば、PES、PEIまたはPPSUなどは、最新の先行技術に従って処理してブロック発泡体を得ることができる。
【0005】
課題
本発明の課題は、先行技術に鑑みて、たとえば、熱可塑性または架橋されたカバー層を有する発泡体コアであり得る新規の発泡体または複合材料を製造するための組成物を、航空機建造における使用に提供することであった。得られた発泡体は、高温での可用性、特に十分な破断点伸びに関する良好な機械的特性と、車両および航空機の建造分野での多くの用途にとって少なくとも十分な難燃効果との優れた組合せを有している。
【0006】
特に、発泡体は、多岐にわたる液体、酸性、塩基性または疎水性の液体およびエマルジョンに対して高い安定性を有するべきである。
【0007】
発泡体はさらに、多種多様な異なる方法で、かつ広範な三次元形状をもってして開発される組成物から実現可能であり、最終コンポーネントの製造中に発生するオフカット材料が可能な限りないか、たとえあったとしてもごくわずかであるべきである。
【0008】
更なる非明示的な課題は、この目的のためにここで明示的に列挙されていなくても、本明細書の説明、特許請求の範囲または実施例から明らかとなり得る。
【0009】
解決手段
これらの課題は、航空機産業、特に航空機建造における使用のための、耐熱性、難燃性の発泡材料を製造するための新規組成物の提供によって解決される。この本発明による発泡体の製造のための組成物は、ポリエーテルイミド(PEI)をベースとする粒子発泡体であることを特徴とする。本発明による粒子発泡体は、発泡された材料として180~215℃のガラス転移温度を有し、粒子発泡体の平均気泡直径は2mm未満、好ましくは1mm未満、特に好ましくは500μm未満、最も好ましくは250μm未満である。
【0010】
このことが特に驚くべき点であるのは、PEIの実際のガラス転移温度は215~217℃であり、したがって、この材料は、たとえば水中ペレット化による最新の先行技術に従って処理しても粒子発泡体を得ることができないからである。
【0011】
本発明によれば、「気泡」という用語は、マトリックス材料を含まないが、少なくとも部分的にそれにより取り囲まれている発泡体内の領域を表す。気泡は、ここでは細孔とも呼ばれる。理想的には、硬質発泡体では、これらの細孔または気泡は閉じられており、このことはまた、気泡が発泡体のマトリックス材料により完全に取り囲まれていることを意味する。より軟質の発泡体の場合、開放気泡が少なくとも部分的に存在する。それにもかかわらず、これらは、不完全な壁または極端な場合にはウェブの配置によって個々の気泡として識別できる。したがって、そのような開放気泡のサイズを決定することもできる。気泡のサイズは、多くの場合、たとえば顕微鏡を使用して簡単に測定できる。これらの要因も考慮に入れることで、発泡体の最大気泡サイズを遵守することは当業者にとって簡単なことである。
【0012】
本発明によれば、発泡体粒子とは、個々の未発泡粒子または予備発泡粒子の発泡により定義される粒子発泡体の領域を意味する。互いに結合した個々の発泡体粒子間の境界は、肉眼で容易に見分けることができるか、光学顕微鏡で決定できる。これは、特に2つの発泡体粒子間の境界の見分けがつきやすい場合に適用可能である。しかしながら、必ずしもそうである場合はないことから、本発明により単純化された方法が使用される。この目的のために、発泡体粒子の理論平均直径が、未発泡粒子の直径、未発泡粒子の総体積および完成した発泡体部材の体積から簡単に計算される。当業者は、粒子発泡体の場合、発泡体部材の周縁領域でのみわずかな偏差が生じるように発泡体粒子の規則的なサイズ分布を達成できることを知っている。本発明の利点はさらに、個々の発泡体粒子間の隙間の体積割合が非常にわずかであることから、完成した発泡体部材の体積測定にこの隙間がほとんど現れないことである。好ましくは、完成した発泡体中のこれらの発泡体粒子は、1cm未満、特に好ましくは0.7cm未満である。
【0013】
本発明によれば、報告されるガラス転移温度は、特に明記しない限り、DSC(示差走査熱量測定)によって測定される。これに関して、当業者は、DSCが十分に担保されるのは、材料の最高ガラス転移温度または融解温度よりも最低25℃高いが、最低分解温度よりも少なくとも20℃低い温度までの第一の加熱サイクル後に、材料サンプルが少なくとも2分間この温度で保たれる場合に限られることを知っている。その後、サンプルは、未測定の最低ガラス転移温度または融解温度よりも少なくとも20℃低い温度まで再び冷却され、ここで、冷却速度は、最大20℃/分、好ましくは最大10℃/分であることが望ましい。さらに数分の待ち時間の後、実際の測定が行われ、この測定では、サンプルは、一般に10℃/分以下の加熱速度で最高融点または最高ガラス転移温度を少なくとも20℃上回る温度まで加熱される。
【0014】
好ましくは、粒子発泡体の製造のための本発明による組成物は、本発明の第1の代替実施形態では、80~99.5重量%のPEIから成る。この組成物はさらに、0.5~10重量%、好ましくは1~9重量%の発泡剤を有する。そのうえまた、とりわけ0~10重量%、好ましくは1~5重量%の添加剤が含まれていてもよい。
【0015】
添加剤は、特に、難燃剤、可塑剤、顔料、UV安定剤、成核剤、耐衝撃性改良剤、接着促進剤、レオロジー改質剤、鎖延長剤、繊維および/またはナノ粒子であり得る。
【0016】
難燃剤として、一般にリン化合物、特にリン酸エステル、ホスフィンまたは亜リン酸エステルが使用される。適切なUV安定剤またはUV吸収剤は、当業者に一般的に知られている。一般に、この目的のために、HALS化合物、チウビン(Tiuvine)またはトリアゾールが使用される。耐衝撃性改良剤として、一般に、エラストマー相または軟質相を有するポリマー粒子が使用される。これらのポリマー粒子は、しばしば、それ自体はせいぜいわずかに架橋されており、純粋なポリマーとして少なくともPEIとの最小限の混和性を示す外側コアを有するコア-(シェル-)シェル粒子である。顔料として、原則的にすべての公知の顔料を用いることができる。当然ながら、特に、比較的量が多い場合は、0.1重量%を超える比較的多い量で使用される他のすべての添加剤と同様に、発泡プロセスへの影響について調べることが望ましい。これは、当業者にとってあまり負担にならずに実施可能である。
【0017】
適切な可塑剤、レオロジー改質剤および鎖延長剤は、一般的に、PEIまたはPEIを含むブレンドからのシート、膜または成形部材の製造から当業者に知られており、したがって、本発明による組成物からの発泡体の製造にほとんど手間なく移行できる。
【0018】
任意に添加される繊維は、一般に、ポリマー組成物に添加できる既知の繊維材料である。本発明の特に適切な実施形態では、繊維は、PEI繊維、PES繊維、PPSU繊維またはブレンド繊維であり、後者は上述のポリマーの選択からのものである。
【0019】
たとえば、チューブ、プレート、ロッド、球体として、または他の既知の形態で存在してもよいナノ粒子は、一般に無機材料である。これらは、完成した発泡体でさまざまな機能を同時に果たし得る。たとえば、これらの粒子は発泡時の成核剤として部分的に作用する。粒子はさらに、発泡体の(ガス)拡散特性だけでなく、機械的特性にも影響を及ぼし得る。粒子はさらに、難燃性に寄与する。
【0020】
列挙されたナノ粒子とは別に、微粒子またはほとんど混和性でない相分離ポリマーも成核剤として加えられていてもよい。組成物の考察において、記載されたポリマーは、他の成核剤とは切り離して考える必要がある。なぜなら、他のこの成核剤は、主として発泡体の機械的特性、組成物の溶融粘度、ひいては発泡条件に影響を与えるからである。成核剤としての相分離ポリマーの追加の効果は、これらの成分の追加の望ましい効果であるが、この場合には主要な効果ではない。こうした理由から、これらの追加のポリマーは、その他の添加剤とは別に全体的なバランスでさらに上で列挙される。
【0021】
任意に、添加剤には、物理的特性の調整のために9重量%までの更なるポリマー成分も含まれていてよい。追加のポリマーは、たとえば、ポリアミド、ポリオレフィン、特にPP、ポリエステル、特にPET、硫黄系ポリマー、たとえばPSU、PPSU、PESまたはポリ(メタ)アクリルイミドなどであってもよい。
【0022】
発泡剤の選択は比較的自由であり、当業者にとっては、特に、選択された発泡方法、ポリマーへの溶解度および発泡温度により決定される。適切な例は、アルコール、たとえばイソプロパノールまたはブタノールなど、ケトン、たとえばアセトンまたはメチルエチルケトン、アルカン、たとえばイソブタンもしくはn-ブタンまたはイソペンタンもしくはn-ペンタン、ヘキサン、ヘプタンまたはオクタン、アルケン、たとえばペンテン、ヘキセン、ヘプテンまたはオクテンなど、CO、N、水、エーテル、たとえばジエチルエーテルなど、アルデヒド、たとえばホルムアルデヒドまたはプロパナールなど、ハイドロ(クロロ)フルオロカーボン、化学発泡剤またはこれらの物質の2つ以上からの混合物である。
【0023】
化学発泡剤は、比較的または完全に不揮発性の物質であり、発泡条件下で化学分解を受け、分解時に実際の発泡剤を形成する。tert-ブタノールは、発泡条件下でイソブテンと水とを形成するという点で非常に簡単な例である。更なる例は、NaHCO、クエン酸もしくはその誘導体、アゾジカルボンアミド(ADC)もしくはそれらを出発物質とする化合物、トルエンスルホニルヒドラジン(TSH)、オキシビス(ベンゾスルホヒドロアジド)(OBSH)または5-フェニルテトラゾール(5-PT)である。
【0024】
好ましくは、本発明による粒子発泡体は、ISO1926に準拠した0.5MPaを超える引張強度、ISO1926に準拠した8~12%の破断点伸び、ASTM C273に準拠した8MPaを超える室温での剪断弾性率、ASTM C273に準拠した0.45MPaを超える室温での剪断強度、ISO 844に準拠した13MPaを超える室温での圧縮弾性率およびISO 844に準拠した0.4MPaを超える室温での圧縮強度を有する。粒子発泡体の製造のためのさらに下で記載される方法が使用される場合、本発明によるガラス転移温度および気泡サイズを維持しながら、これらの機械的特性を遵守することは当業者にとって簡単なことである。そのうえまた驚くべきことに、本発明による粒子発泡体は、航空機産業において、特に航空機内部での使用に重要な、FAR 25.852に準拠した防火仕様または防火特性を満たして適用可能であることもわかった。
【0025】
さらに非常に驚くべきことに、航空機内部で使用するための前提条件である、すべての必要とされる材料特性が、スラブ形態の対応する発泡体と同様に、本発明による粒子発泡体によって満たされる。たとえば、PMIの場合、この関係は成り立たない。なぜなら、このポリメタクリルイミドの場合、ブロック発泡体からのスラブ品が条件を満たすのに対して、粒子発泡体は、ブロック発泡体よりも機械的特性が劣ることが多いからである。そのうえまた、特に驚くべき利点としてわかったことは、そのような粒子発泡体が、ブロック発泡体とは対照的に、有意な気泡配向を有しないか、全く気泡配向を有しないことである。このことから、多くの場合、粒子発泡体では、有利な等方性の機械的特性が生じるのに対して、対応するブロック発泡体は、しばしば、1つの面とこの面に垂直な軸とが異なるという異方性の機械的特性を有する。特定の用途に応じて、特に、異なる方向からの均一な圧縮応力が生じる場合、等方性の機械的特性が非常に有利となり得る。
【0026】
好ましくは、本発明による発泡体は、未発泡材料と比べて1~98%、好ましくは50~97%、特に好ましくは70~95%の密度の低下に相当する発泡度を有する。好ましくは、発泡体は、20~1000kg/m、好ましくは40~250kg/m、特に好ましくは50~150kg/mの密度を有する。
【0027】
本発明による粒子発泡体とは別に、その製造方法も本発明の一部である。
【0028】
原則的に、本発明によるPEI粒子発泡体の製造には2つの好ましい手順が存在する。第1の方法変形例では、80~99.5重量%のPEI、0.5~10重量%の発泡剤、および0~10重量%の添加剤から成る組成物が、多孔板を備えた押出機により処理されて発泡または発泡性ペレットが得られる。ここで、フィードゾーンとスクリューチップとの間の温度は、好ましくは320~400℃の範囲内にある。さらに、たいていの場合、この距離にわたって均一な温度は存在せず、たとえば、ポリマー溶融物の搬送方向で温度が上昇する勾配が存在する。多孔板の温度は250~350℃であり、多孔板を通過する際の溶融温度は230~360℃である。発泡剤の添加は、一般に押出機中で行われる。水中ペレット化の圧力が発泡剤の膨張力よりも低い場合、ペレットは多孔板を通過する際に発泡する。次いで、このように発泡されたペレットは、好ましくは引き続きさらに処理されて粒子発泡体が得られる。
【0029】
この実施形態の一変形例では、押出機を通過した組成物を水中ペレタイザーに案内してもよい。この水中ペレタイザーは、温度と圧力との組合せに関して、発泡を防ぐように設計されている。この手順により、発泡剤が添加されたペレットが得られる。これは、あとでエネルギーの新たな供給によって所望の密度に発泡され、かつ/または任意に成形しながらさらに加工されて粒子発泡ワークピースが得られる。予備発泡に必要なエネルギー入力は、たとえば空気循環炉での接触加熱によって、またはIR放射もしくはマイクロ波放射による放射ベースの方法で行うことができる。
【0030】
PEI粒子発泡体の製造のための第2の方法変形例では、90~100重量%のPEIおよび0~10重量%の添加剤から成る組成物が、同様に多孔板を備えた押出機によって最初に処理されてペレットが得られるが、ただし発泡剤は添加されていない。ここでも、フィードゾーンとスクリューチップとの間の温度は必ずしも均一ではないが、320~400℃の範囲内にある。同様に多孔板の温度は250~350℃であり、多孔板を通過する際の溶融温度は230~360℃である。ここで、ペレットは、発泡剤を0.5~10重量%で含むように、引き続きオートクレーブ内で発泡剤が添加される。引き続き、発泡剤が添加されたペレットは、放圧によりおよび/または200℃を超える温度に加熱することにより発泡されて粒子発泡体が得られる。
【0031】
実際の発泡に関して、当業者には、特に熱可塑性発泡体のための方法に関して本発明の組成物に適用可能である、ポリマー組成物を発泡させるための多岐にわたる方法が原則的に知られている。たとえば、組成物は、150~250℃の温度および0.1~2barの圧力で発泡させることができる。好ましくは、実際の発泡は、押出後に続かない場合、標準圧力雰囲気において180~230℃の温度で行われる。
【0032】
あとで発泡剤を添加する変形例では、発泡剤をまだ含まない組成物に、オートクレーブ内で、たとえば20~120℃の温度と、たとえば30~100barの圧力とで発泡剤が加えられ、引き続き、圧力を下げて温度を発泡温度に上げることによりオートクレーブ内で発泡される。選択的に、発泡剤が加えられた組成物は、オートクレーブ内で冷却され、冷却後に取り出される。次いで、この組成物は、発泡温度に加熱することにより、あとで発泡可能である。これはまた、たとえば、更なる成形下で、またはインサートもしくはカバー層などの他の要素と組み合わせて行ってもよい。
【0033】
特に好ましくは、製造された粒子発泡体には、使用される方法に関係なく、引き続きカバー材料が接着されるか、縫い付けられるか、溶着される。ここで「溶着」とは、成分の加熱により、たとえば発泡体表面の開気孔をカバー材料で部分的に充填することにより、材料間に素材結合または付着が生じることを意味する。
【0034】
カバー材料は、木材、金属、装飾フィルム、複合材料、プリプレグまたは他の既知の材料であってもよい。
【0035】
たとえば、オートクレーブ内に発泡剤を添加した後、使用した材料をあとで発泡させた場合、製造された粒子発泡体は、選択的に、カバー材料の存在下でも、接着または溶着によってカバー材料が発泡体に結合するように発泡させてもよい。
【0036】
発泡剤の添加を押出機中で行うことができる方法変形例では、PEIは、選択的に、押出機を通過する際に、任意にカバー材料を含む、任意に加熱された型に導入してもよい。この場合、成形しながら発泡されて粒子発泡体または複合材料が得られる。選択的に、組成物は、押出機を通過する際に、発泡噴霧装置に案内してもよい。この装置では、次いで成形しながら発泡が直接行われる。
【0037】
使用される変形例に関係なく、発泡中に粒子発泡体もしくは複合材料にインサートを設けることができ、かつ/または粒子発泡体にチャネルを組み込むことができる。
【0038】
本発明による発泡体、または本発明による方法に従って製造された発泡体は、宇宙船または航空機の建造、特にその内部または外部において用いられる。これには、本発明による方法に従って製造されたか否かにかかわらず、粒子発泡体ならびに同様にそれから実現された複合材料が含まれ得る。特に難燃性に基づき、本発明による発泡体は、これらの車両の内部空間に設置することもできる。
【0039】
特に、純粋なPEI粒子発泡体は、航空機の内部領域に組み込むのに特に適している。航空機には、特に、ジェット機または小型航空機とは別に、ヘリコプター、さらには宇宙船も含まれる。そのような航空機の内部空間への設置の例は、たとえば、旅客機の座席の裏側に折りたたむことができるトレイ、座席の充填材または隔壁や、それにたとえば内部ドアである。
【0040】
そのうえまた、PEIを含むブレンドに基づく粒子発泡体は、航空機の外部領域への組込みにも適している。「外部領域」とは、航空機の外皮の充填材としてだけでなく、特に航空機の機首、尾部、翼部、外側のドア、方向舵またはローターブレードの充填材も意味する。