(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】複合製品を製造する改善方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/24 20060101AFI20230719BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20230719BHJP
B29C 48/285 20190101ALI20230719BHJP
B29C 48/793 20190101ALI20230719BHJP
C08K 7/02 20060101ALI20230719BHJP
C08L 1/00 20060101ALI20230719BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20230719BHJP
C08K 5/16 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
C08J3/24 CEP
C08J3/20 Z
B29C48/285
B29C48/793
C08K7/02
C08L1/00
C08L101/00
C08K5/16
(21)【出願番号】P 2020533688
(86)(22)【出願日】2018-12-18
(86)【国際出願番号】 IB2018060228
(87)【国際公開番号】W WO2019123231
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-10-20
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイエス、ダンカン
(72)【発明者】
【氏名】ピンネーネン、ヤンネ
(72)【発明者】
【氏名】コルペラ、アンティ
【審査官】千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-316248(JP,A)
【文献】特表2008-517095(JP,A)
【文献】特開2008-019355(JP,A)
【文献】特表2012-500873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J3/00-3/28;99/00
C08J5/04-5/10;5/24
C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程を含む、押出複合製品を製造する方法であって:
a)天然繊維及び熱可塑性ポリマーの粒子、及び場合により0.5~5wt%のカップリング剤及び場合により0.5~4wt%の潤滑剤を、押出機中に導入する工程であって、ここで、押出機中に導入される天然繊維及び熱可塑性ポリマー粒子の水分含量が、1重量%未満であり、当該天然繊維は、押出機中に導入される前に1~20重量%の架橋剤と混合されていたか、又は、当該架橋剤は、天然繊維および熱可塑性ポリマー粒子が導入される入口とは別の入口を介して押出機中に導入されるかのいずれかであり、ここで、架橋剤が導入される点での押出機内の温度は、150℃未満である、前記工程;及び
b)カップリング剤及び潤滑剤が工程a)で導入されなかった場合、0.5~5wt%のカップリング剤及び場合により0.5~4wt%の潤滑剤を、天然繊維、熱可塑性粒子および場合により架橋剤が押出機中に導入される場所とは別の入口を介して、押出機中に導入し;混合する工程であって、混合中の押出機内の温度は少なくとも170℃であり、ここで、混合中に押出機内に導入された材料に及ぼされる圧力は少なくとも50バールである、前記工程;及び
c)ダイを通して複合製品を押し出す工程、
架橋剤がクエン酸又はクエン酸一水和物である、前記の方法。
【請求項2】
天然繊維が木粉の形態で提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程a)の前に木粉が熱的または化学的に変性されている、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
天然繊維がパルプの形態で提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
天然繊維の量が、押出複合製品の45~90重量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ポリマー粒子の量が、押出複合製品の50重量%未満である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ポリマー粒子の量が、押出複合製品の30重量%未満である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
架橋剤が、天然繊維および熱可塑性ポリマー粒子が導入される入口とは別の入口を介して押出機中に導入され、ここで、架橋剤が導入される点での押出機内の温度は、150℃未満である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、天然繊維および熱可塑性ポリマーを含む押出複合製品を製造する改善方法に関する。本発明によれば、混合ならびに反応性架橋は、押出機の内部で行われる。天然繊維は、例えば、パルプまたは木材粒子の形態で提供されてもよい。
【背景技術】
【0002】
背景
木材-ポリマー複合製品の押出および押出配合の分野では、最終製品の望ましい特性を達成するために、繊維のヒドロキシル基間の架橋が重要である。同時に、製造方法は効率的である必要がある。
【0003】
熱可塑性マトリックスの量を減らした複合製品、すなわちできるだけ多くの天然繊維を含む製品を製造できることが望ましい。一般に、熱可塑性マトリックスの量が減少するにつれて、複合製品はよりもろくなり、前記のもろさは典型的に望ましくない特性である。
【0004】
標準的な木材繊維ポリマー複合材料(WPC)の場合、一般的な問題は、複合材料の吸湿とクリープである。この問題は、クラッディング、デッキ、建具製品など、より詳細で挑戦的な屋外用途での標準的な木材繊維ポリマー複合材料の使用を制限することがよくある。この問題は、厳しい屋外用途や湿度にさらされる射出成形製品にも当てはまる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、複合製品の十分な機械的特性を維持しながら、吸湿量が低減された複合体を実現するためのより効率的なプロセスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
驚くべきことに、本発明による方法は、より効率的な反応性架橋を提供し、水分取り込み(吸湿量)の減少ならびに高寸法安定性および剛性を含む押出複合製品のいくつかの有利な特性をもたらすことが見出された。本発明はまた、大量の天然繊維の使用を可能にし、これは、再生可能な材料であるという点だけでなく、リサイクルを容易にし、軽量の押出複合製品に寄与するという点でも、役立つ。さらに、本発明による方法によって製造された押出複合製品は、従来の木材プラスチック複合体と比較して驚くほど低いクリープを示すことが見出された。本発明による方法で得られた押出複合製品は、高い生物学的耐久性も有する。
【0007】
したがって、本発明は、下記の工程を含む、押出複合製品を製造する方法に関する:
a)天然繊維及び熱可塑性ポリマーの粒子、及び場合により0.5~5wt%のカップリング剤及び場合により0.5~4wt%の潤滑剤を、押出機中に導入する工程であって、ここで、押出機中に導入される天然繊維及び熱可塑性ポリマー粒子の水分含量が、1重量%未満であり、当該天然繊維は、押出機中に導入される前に1~20重量%の架橋剤と混合されていたか、又は、当該架橋剤は、天然繊維および熱可塑性ポリマー粒子が導入される入口とは別の入口を介して押出機中に導入されるかのいずれかであり、ここで、架橋剤が導入される点での押出機内の温度は、150℃未満である、前記工程;及び
b)カップリング剤及び潤滑剤が工程a)で導入されなかった場合、0.5~5wt%のカップリング剤及び場合により0.5~4wt%の潤滑剤を、天然繊維、熱可塑性粒子および場合により架橋剤が押出機中に導入される場所とは別の入口を介して、押出機中に導入し;混合する工程であって、混合中の押出機内の温度は少なくとも170℃であり、ここで、混合中に押出機内に導入された材料に及ぼされる圧力は少なくとも50バールである、前記工程;及び
c)ダイを通して複合製品を押し出す工程。
【0008】
本発明に従って製造された複合製品は、例えば、押出成形製品であってもよく、または複合顆粒にさらに加工されてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
本発明による方法の工程a)では、天然繊維およびポリマー粒子が押出機中に供給される。天然繊維は、異なるタイプの繊維の混合物であってもよく、例えば、木材粒子またはパルプであってもよい。パルプの例としては、機械的パルプ、半機械的または化学的パルプ、例えば熱機械的パルプ、ケミサーモメカニカル(化学熱機械的)パルプまたは化学的パルプ(クラフトまたは亜硫酸法で製造)または溶解パルプが挙げられる。木材粒子は、例えば、粉砕木材、木粉またはおがくずであり得る。天然繊維は、工程a)の前に圧縮されてもよい。パルプは加工または変性されてもよく、天然繊維は、少なくとも部分的に、ミクロフィブリル化セルロースの形態で提供されてもよい。天然繊維の含水率は1wt%未満である。その含水率を達成するために、天然繊維は、典型的には工程a)の前に乾燥に供される。押出機は、単軸または二軸押出機であってよい。天然繊維が木材粒子の形態で提供される場合、前記木材粒子は物理的または化学的に前処理されてもよい。例えば、木材粒子は、熱的に変性されたものでもよく、または、木材粒子を得るために、粉砕にかけられたか又は他の手段によって機械的に処理されて熱的に変性された木材に由来するものでもよい。木材の粒子は化学的に変性されたものでもよい。例えば、粒子自体は、工程a)の前に化学的に変性されていてもよく、または粒子は、化学的に変性された木材に由来してもよい。天然繊維の量は、押出複合製品の約45~90重量%、例えば55~90重量%または60~90重量%または60~80重量%である。熱可塑性ポリマー粒子は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、SMA(スチレン無水マレイン酸)ポリマーまたはHIPS(高衝撃強度ポリスチレン)などのスチレンベースのポリマー、それらのコポリマーまたは混合物である。ポリマー粒子の量は、押出複合製品の50重量%未満、例えば40重量%未満、35重量%未満、30重量%未満、25重量%未満、20重量%未満、15重量%未満、または10重量%未満である。熱可塑性ポリマー粒子は、例えば、ペレットまたは顆粒の形態で提供されてもよい。
【0010】
天然繊維は、押出機中に導入される前に架橋剤と混合されるか、または、架橋剤は、別個のホッパーを通して押出機中に導入される。天然繊維を押出機中に導入する前に架橋剤と混合する場合、混合は、例えば、繊維を浸すことによって、または繊維上に噴霧することによって、すなわち、架橋剤が液体の形態で提供されることによって、行うことができる。繊維を押出機中に導入する前に架橋剤と混合される前の繊維の乾燥は、典型的には120℃未満の温度で行われる。架橋剤は、例えば、クエン酸、クエン酸一水和物および類似のアルファヒドロキシ酸、またはFixapret(DMDHEU、すなわちジメチロールジヒドロキシエチレン尿素)またはmDMDHEU、DHDMI(1,3-ジメチル-4,5-ヒドロキシ-2-イミダゾリドン)、DMEU(ジメチロールエチレン尿素)ポリカルボン酸またはそれらの混合物であってよく;場合により触媒と組み合わせてもよい。好ましくは、架橋剤はクエン酸である。架橋剤は、粉末形態などの固体形態または液体形態で提供されてもよく、そこでは、それは、噴霧によって適用されてもよく、または混合装置中で混合されてもよい。使用する架橋剤の量は、天然繊維のヒドロキシル基間の反応性架橋の必要なレベル及び目標とする強度要件に、依存する。典型的には、架橋剤の量は、押出複合製品の1~20重量%、例えば1~15重量%または2~10重量%である。プロセスのこの段階では、成分は混合されるだけで反応はしない。工程aの温度)は、反応が発生するのに必要な温度を下回っている。
【0011】
本発明による方法の工程b)において、熱可塑性ポリマーとMAPPなどの無水マレイン酸とのグラフト化カップリング剤は、それが工程a)で導入されない限り、押出機中に導入される。カップリング剤は、天然繊維と熱可塑性ポリマーとの間の界面を強化する。使用されるカップリング剤の量は、典型的には、押出複合製品の2~5重量%である。さらに、混合物の付着を防いで押出機内の流れを助けるために、それが工程a)で追加されない限り、木材-ポリマー複合体の押出で通常使用されるワックスまたは他の潤滑剤などの潤滑助剤が、追加される。使用されるワックスまたは潤滑剤の量は、典型的には、押出複合製品の0.5~4重量%である。カップリング剤が添加されて、工程a)からc)を含む方法の後に押出複合製品に適用することができる外層またはスキンとコア押出複合製品との間に、インターフェースリンクを作成する。工程b)は、典型的には、少なくとも170℃の押出機内部の温度および少なくとも50バールの圧力で行われる。
【0012】
この方法の工程c)において、複合製品は、成形ダイを通して押し出される。成形ダイは、形成ダイまたはプロファイルダイとも呼ばれ得る。成形中の温度は通常、少なくとも170℃である。工程c)で行われる押出は、工程b)で使用されたのと同じ押出機または別の押出機で行われてもよい。
【0013】
工程b)およびc)は、同じ押出機で実行されてもよく、または工程b)は、1つの押出機で実行され、工程c)は、工程b)とは別の押出機で実行されてもよい。したがって、工程b)で得られた材料は、1回または2回、または2回より多く押し出されている、すなわち、押出機を1回、2回または2回より多く通過させていることができる。各押出は、同じ押出機または異なる押出機で実施することができる。カップリング剤が工程a)で押出機に導入されるとき、工程b)で得られた材料は、少なくとも2回押出されている、すなわち工程b)で得られた材料は、押出機を少なくとも2回通過していることが好ましい。押出プロセス全体における導入された材料の滞留時間は、好ましくは1分~20分である。
【0014】
したがって、本発明の一態様(以下では方法Aと呼ぶ)は、下記の工程を含む、押出複合製品を製造する方法である:
a)天然繊維及び熱可塑性ポリマーの粒子を、押出機中に導入する工程であって、ここで、押出機中に導入される天然繊維及び熱可塑性ポリマー粒子の水分含量が、1重量%未満であり、当該天然繊維は、押出機中に導入される前に1~20重量%の架橋剤と混合されていたか、又は、当該架橋剤は、天然繊維および熱可塑性ポリマー粒子が導入される入口とは別の入口を介して押出機中に導入されるかのいずれかであり、ここで、架橋剤が導入される点での押出機内の温度は、150℃未満である、前記工程;及び
b)0.5~5wt%のカップリング剤及び場合により0.5~4wt%の潤滑剤を、天然繊維および熱可塑性ポリマー粒子が押出機中に導入される場所とは別の入口を介して、押出機中に導入し;混合する工程であって、混合中の押出機内の温度は少なくとも170℃であり、ここで、混合中に押出機内に導入された材料に及ぼされる圧力は少なくとも50バールである、前記工程;及び
c)ダイを通して複合製品を押し出す工程。
【0015】
したがって、本発明の一態様(以下で方法Bと呼ぶ)は、下記の工程を含む、押出複合製品を製造する方法である:
a)天然繊維及び熱可塑性ポリマーの粒子及び0.5~5wt%のカップリング剤及び0.5~4wt%の潤滑剤を、押出機中に導入する工程であって、ここで、押出機中に導入される天然繊維及び熱可塑性ポリマー粒子の水分含量が、1重量%未満であり、当該天然繊維は、押出機中に導入される前に1~20重量%の架橋剤と混合されていたか、又は、当該架橋剤は、天然繊維および熱可塑性ポリマー粒子が導入される入口とは別の入口を介して押出機中に導入されるかのいずれかであり、ここで、架橋剤が導入される点での押出機内の温度は、150℃未満である、前記工程;及び
b)混合する工程であって、混合中の押出機内の温度は少なくとも170℃であり、ここで、混合中に押出機内に導入された材料に及ぼされる圧力は少なくとも50バールである、前記工程;及び
c)ダイを通して複合製品を押し出す工程。
【0016】
本発明はまた、工程a)~c)を含む方法により得られる押出複合製品に関する。本発明に従って製造される複合製品は、例えば、押出成形製品、すなわち、本発明による方法の工程c)における直接押出によって調製された製品、または、複合顆粒にさらに加工することができる製品、であることができる。複合顆粒は、例えば、射出成形、押出またはシート成形で使用することができる。
【0017】
工程a)からc)を含む方法を使用して得られた押出複合製品には、それが複合顆粒でない限り、工程c)の後に、(たとえば、複合製品がプロファイルの場合、)スキンとも呼ばれる追加の外層を提供できる。外層は、典型的に、熱可塑性ポリマーを含み、木材粒子を含んでもよく、その場合、外層は複合材料である。外層はまた、顔料および他の添加剤を含み得る。それはまた、エンボス加工されていてもよいし、構造化された表面を備えていてもよい。外層は、典型的に、約0.1~5mm、例えば1~3mmの厚さを有する。外層は、側方押出機を使用して、工程a)からc)で得られた押出複合製品の上に提供することができる。
【0018】
押出複合体は、例えばデッキ、クラッディング、フローリング、窓枠、サイディングまたは同様の建築コンポーネント用のコア層として使用できる。
【0019】
例
例1
サンプルはそれぞれ方法Aおよび方法Bに従って調製した(上記を参照)。
【0020】
サンプルでは、天然繊維の量は47.5wt%だった。使用された架橋剤はクエン酸であり、それは2.5重量%の量で使用された。使用した熱可塑性ポリマーはポリプロピレンであり、45重量%の量で使用した。使用したカップリング剤は、ポリプロピレン-無水マレイン酸であり、これは3重量%の量で使用した。潤滑剤(Structol)を2重量%の量で使用した。
【0021】
架橋剤を省略した参照サンプルを調製した。参照サンプルでは、天然繊維の量は50wt%だった。使用した熱可塑性ポリマーはポリプロピレンであり、45重量%の量で使用した。使用したカップリング剤は、ポリプロピレン-無水マレイン酸であり、これは3重量%の量で使用した。潤滑剤(Structol)を2重量%の量で使用した。
【0022】
使用した天然繊維は、熱機械パルプ(TMP)、SW(針葉樹クラフトパルプ)、または熱変性おがくず(Thermo SD)のいずれかの形で存在していた。
【0023】
以下の結果が得られた、強度試験:
【0024】
TMP
クエン酸の添加により、方法Bを使用して調製した参照サンプルと比較して、方法Bを使用すると、破断点ひずみが約30%増加した。破断点ひずみは、標準的な方法に従って測定された。
【0025】
SW(針葉樹)
方法Bで調製した参照サンプルと比較して、クエン酸の添加により、方法Bではヤング率が最大10%増加した。ヤング率は、標準的な方法に従ってGPaで測定された。
【0026】
熱変性されたおがくず(Thermo SD)
クエン酸の添加により、方法Aと方法Bでそれぞれ調製した参照サンプルと比較して、方法Aを使用すると破断点ひずみが約30%、方法Bを使用すると約30%増加した。破断点ひずみは標準的な方法に従って測定された。
【0027】
さらに、クエン酸の添加により、それぞれ方法Aおよび方法Bで調製した参照サンプルと比較して、方法Aを使用すると約15%、方法Bを使用すると約10%破断応力が増加した。破断応力は、標準的な方法に従ってMPaで測定した。
【0028】
さらに、クエン酸の添加により、それぞれ方法Aおよび方法Bで調製した参照サンプルと比較して、方法Aを使用すると約10%、方法Bを使用すると約13%衝撃強度が増加した。衝撃強度は、標準的な方法に従ってkJ/m2で測定された。
【0029】
吸水率
吸水率(吸水量)を測定するために、サンプルは上記のように調製され、室温で約1300時間、水中で保存された。各サンプルの重量と面積は、サンプルを水中に保存する前後に測定された。水中で保存された後のサンプルの重量および/または面積の増加は、サンプルの吸水率を決定するために使用される。
【0030】
SWおよびTMPサンプルの場合、クエン酸の添加により、重量変化が約65~75%減少し、面積変化が65~75%減少することがわかった。また、方法Aおよび方法Bによる押し出しにより、標準の押し出し方法と比較して、重量変化と面積変化の低減がさらに改善されることもわかった。
【0031】
熱変性おがくずを使用したサンプルでは、クエン酸の添加により、重量変化が約20%減少し、面積変化が30~50%減少することがわかった。また、方法Aと方法Bに従って押し出すと、標準の押し出し方法と比較して、重量変化と面積変化の減少がさらに改善されることもわかった。
【0032】
本発明の上記の詳細な説明を考慮すると、他の修正および変更が当業者には明らかになるであろう。しかしながら、そのような他の修正および変形が、本発明の精神および範囲から逸脱することなくもたらされ得ることは明らかであるはずである。
本発明に関して、以下の内容を更に開示する。
[1]
下記の工程を含む、押出複合製品を製造する方法:
a)天然繊維及び熱可塑性ポリマーの粒子、及び場合により0.5~5wt%のカップリング剤及び場合により0.5~4wt%の潤滑剤を、押出機中に導入する工程であって、ここで、押出機中に導入される天然繊維及び熱可塑性ポリマー粒子の水分含量が、1重量%未満であり、当該天然繊維は、押出機中に導入される前に1~20重量%の架橋剤と混合されていたか、又は、当該架橋剤は、天然繊維および熱可塑性ポリマー粒子が導入される入口とは別の入口を介して押出機中に導入されるかのいずれかであり、ここで、架橋剤が導入される点での押出機内の温度は、150℃未満である、前記工程;及び
b)カップリング剤及び潤滑剤が工程a)で導入されなかった場合、0.5~5wt%のカップリング剤及び場合により0.5~4wt%の潤滑剤を、天然繊維、熱可塑性粒子および場合により架橋剤が押出機中に導入される場所とは別の入口を介して、押出機中に導入し;混合する工程であって、混合中の押出機内の温度は少なくとも170℃であり、ここで、混合中に押出機内に導入された材料に及ぼされる圧力は少なくとも50バールである、前記工程;及び
c)ダイを通して複合製品を押し出す工程。
[2]
天然繊維が木粉の形態で提供される、[1]に記載の方法。
[3]
工程a)の前に木粉が熱的または化学的に変性されている、[2]に記載の方法。
[4]
天然繊維がパルプの形態で提供される、[1]に記載の方法。
[5]
架橋剤がクエン酸である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の方法。
[6]
天然繊維の量が、押出複合製品の45~90重量%である、[1]~[5]のいずれか一項に記載の方法。
[7]
ポリマー粒子の量が、押出複合製品の50重量%未満である、[1]~[6]のいずれか一項に記載の方法。
[8]
ポリマー粒子の量が、押出複合製品の30重量%未満である、[7]に記載の方法。
[9]
架橋剤が、天然繊維および熱可塑性ポリマー粒子が導入される入口とは別の入口を介して押出機中に導入され、ここで、架橋剤が導入される点での押出機内の温度は、150℃未満である、[1]~[8]のいずれか一項に記載の方法。
[10]
[1]~[9]のいずれか一項に記載の方法により得られる押出複合製品。
[11]
複合製品が、複合顆粒にさらに加工されるか、または、場合によりパッケージ、トレイまたは他の熱成形品など、追加の層と一緒に、プロセスで熱成形され得るシートに押出される、[10]に記載の押出複合製品。