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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】クロマトグラフィー担体
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/281 20060101AFI20230719BHJP
   G01N 30/02 20060101ALI20230719BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20230719BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20230719BHJP
   C07K 1/16 20060101ALI20230719BHJP
   C07K 1/18 20060101ALN20230719BHJP
   C07K 1/20 20060101ALN20230719BHJP
【FI】
B01J20/281 X
B01J20/281 R
G01N30/02 B
G01N30/88 J
B01J20/30
B01J20/22 D
C07K1/16
C07K1/18
C07K1/20
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020539567
(86)(22)【出願日】2019-08-29
(86)【国際出願番号】 JP2019033820
(87)【国際公開番号】W WO2020045541
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2018161425
(32)【優先日】2018-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502066476
【氏名又は名称】ジェイエスアール マイクロ インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】316008086
【氏名又は名称】ジェイエスアール マイクロ エヌ.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】JSR Micro N.V.
【住所又は居所原語表記】Technologielaan 8, B-3001, Leuven, BELGIUM
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸田 高典
(72)【発明者】
【氏名】則信 智哉
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2002/0156288(US,A1)
【文献】特開2017-138149(JP,A)
【文献】特表2015-501310(JP,A)
【文献】特開2013-033040(JP,A)
【文献】TRAPP,G.A. et al.,A LIGAND COLUMN FOR THE PURIFICATION OF STEROID-BINDING PROTEINS,STEROIDS,1971年,Vol.18, No.4,pp.421-432
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/281 - 20/292
G01N 30/00 - 30/96
B01J 20/30
C07K 1/16
C07K 1/18
C07K 1/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体を含む合成高分子支持体と、下記式(1)で表されるリガンドとを有し、前記重合体が、スルファニル基と反応可能な官能基の残基を有する構造単位(A)及びスルファニル基と反応可能な官能基を有する構造単位(B)を有し、重合体中の構造単位(A)及び(B)の合計含有割合が、重合体中の全構造単位に対して50~100質量%であり、構造単位(A)が、環状エーテル基を有する(メタ)アクリレート系モノマーに由来する、クロマトグラフィー担体(但し、ステロイド残基を有するものを除く)
【化1】
〔式(1)中、
Aは、アニオン性官能基を示し、
Qは、2価の芳香族炭化水素基を示し、
1は、2価の有機基を示し、
2は、水素原子又は炭化水素基を示し、
Xは、チオ基、スルフィニル基又はスルホニル基を示し、
*は、結合手を示す。〕
【請求項2】
Aが、-C(=O)OH、-C(=O)O-+、-C(=O)O-、-S(=O)2OH、-S(=O)2-+、-S(=O)2-、-P(=O)(OH)2、-P(=O)(O-+2、-P(=O)(O-2、-P(=O)(OH)(O-+)、-P(=O)(OH)(O-)、-O-P(=O)(OH)2、-O-P(=O)(O-+2、-O-P(=O)(O-2、-O-P(=O)(OH)(O-+)、又は-O-P(=O)(OH)(O-)(上記M+は、それぞれ対イオンを示す)である、請求項1に記載の担体。
【請求項3】
Qが、下記式(2)又は(3)で表される2価の基である、請求項1又は2に記載の担体。
【化2】
〔式(2)中、
3は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキサミド基又は有機基を示し、
nは、0~4の整数を示し、
*は、結合手を示す。〕
【化3】
〔式(3)中、
4は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキサミド基又は有機基を示し、
mは、0~6の整数を示し、
*は、結合手を示す。〕
【請求項4】
1が、炭素数1~20の2価の炭化水素基である、請求項1~3のいずれか1項に記載の担体。
【請求項5】
Xが、チオ基である、請求項1~4のいずれか1項に記載の担体。
【請求項6】
前記リガンドが、下記式(α)で表されるものである、請求項1~5のいずれか1項に記載の担体。
【化4】
〔式(α)中、
1は、炭素数1~10のアルカンジイル基を示し、
*は、結合手を示す。〕
【請求項7】
前記リガンドが前記支持体に結合されている、請求項1~のいずれか1項に記載の担体。
【請求項8】
タンパク質精製クロマトグラフィー担体である、請求項1~のいずれか1項に記載の担体。
【請求項9】
抗体精製クロマトグラフィー担体である、請求項1~のいずれか1項に記載の担体。
【請求項10】
疎水クロマトグラフィーとカチオン交換クロマトグラフィーとのミックスモードクロマトグラフィー担体である、請求項1~のいずれか1項に記載の担体。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の担体を製造する方法であって、スルファニル基と反応可能な官能基及び重合性不飽和基を有するモノマーに由来する構造単位を分子内に有する支持体と、下記式(β)で表される化合物とを接触させる工程を含み、前記モノマーが、環状エーテル基を有する(メタ)アクリレート系モノマーである、製造方法。
【化5】
〔式(β)中、
Aは、アニオン性官能基を示し、
Qは、2価の芳香族炭化水素基を示し、
1は、2価の有機基を示し、
2は、水素原子又は炭化水素基を示す。〕
【請求項12】
請求項1~10のいずれか1項に記載の担体がカラム容器に充填されている、クロマトグラフィーカラム。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか1項に記載の担体を用いる、標的物質の精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフィー担体に関する。より詳細には、クロマトグラフィー担体、当該担体の製造方法及びその製造中間体、クロマトグラフィーカラム、並びに標的物質の精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抗体医薬等に代表されるバイオ医薬品の分野では、タンパク質等の標的物質の発現技術が著しく進展し、それに伴いクロマトグラフィー等による精製工程での生産性の向上が求められている。特に、治療薬・診断薬として抗体を使用する場合等には、細胞副産物や培養液成分等から抗体を高純度で分離することが必要となる。
【0003】
従来、抗体に代表される標的タンパク質を高純度化する方法としては、アフィニティー精製で夾雑物を除去し、次いでイオン交換精製により更に純度を高める方法が一般的であったが、イオン交換精製では、等電点(pI)が標的タンパク質と近い標的外のタンパク質を標的タンパク質から分離しにくいという問題があった。
そのため、等電点(pI)が標的タンパク質と近い標的外のタンパク質と親疎水性が標的タンパク質と近い標的外のタンパク質の両方を標的タンパク質から分離することを目的として、近年では、イオン交換精製の代わりに、疎水クロマトグラフィー(HIC)とカチオン交換クロマトグラフィーとのミックスモード精製が行われるようになってきた。このミックスモード精製には、アニオン性官能基と疎水性基を含むミックスモードリガンドを有する担体が使用されている。このようなミックスモード担体として、例えば、2-(ベンゾイルアミノ)-4-メルカプト酪酸の残基(特許文献1、2)の他、L-トリプトファンの残基(特許文献3)や4-アミノ馬尿酸の残基(特許文献4)をミックスモードリガンドとして有する担体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2007-525501号公報
【文献】特表2008-505851号公報
【文献】特開2010-210497号公報
【文献】特表2015-501310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、標的タンパク質等の標的物質の更なる高純度化が求められる昨今においては、上記標的物質から標的外のタンパク質等の夾雑物を分離する性能を更に改善させることが要求される。また、特許文献1~4に記載の上記担体は、標的物質に対する動的結合容量にもそもそも改善の余地があった。
本発明が解決しようとする課題は、標的物質に対する動的結合容量が大きく、且つ標的物質と夾雑物とを分離する性能に優れるクロマトグラフィー担体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題は、以下の<1>~<15>の手段により解決された。
<1> 支持体と、下記式(1)で表されるリガンド(以下、「リガンド(1)」ともいう)とを有する、クロマトグラフィー担体(以下、「本発明のクロマトグラフィー担体」ともいう)。
【0007】
【化1】
【0008】
〔式(1)中、
Aは、アニオン性官能基を示し、
Qは、2価の芳香族炭化水素基を示し、
1は、2価の有機基を示し、
2は、水素原子又は炭化水素基を示し、
Xは、チオ基、スルフィニル基又はスルホニル基を示し、
*は、結合手を示す。〕
【0009】
<2> Aが、-C(=O)OH、-C(=O)O-+、-C(=O)O-、-S(=O)2OH、-S(=O)2-+、-S(=O)2-、-P(=O)(OH)2、-P(=O)(O-+2、-P(=O)(O-2、-P(=O)(OH)(O-+)、-P(=O)(OH)(O-)、-O-P(=O)(OH)2、-O-P(=O)(O-+2、-O-P(=O)(O-2、-O-P(=O)(OH)(O-+)、又は-O-P(=O)(OH)(O-)(上記M+は、それぞれ対イオンを示す)である、<1>に記載の担体。
【0010】
<3> Qが、下記式(2)又は(3)で表される2価の基である、<1>又は<2>に記載の担体。
【0011】
【化2】
【0012】
〔式(2)中、
3は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキサミド基又は有機基を示し、
nは、0~4の整数を示し、
*は、結合手を示す。〕
【0013】
【化3】
【0014】
〔式(3)中、
4は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキサミド基又は有機基を示し、
mは、0~6の整数を示し、
*は、結合手を示す。〕
【0015】
<4> R1が、炭素数1~20の2価の炭化水素基である、<1>~<3>のいずれかに記載の担体。
【0016】
<5> Xが、チオ基である、<1>~<4>のいずれかに記載の担体。
【0017】
<6> 前記リガンドが、下記式(α)で表されるものである、<1>~<5>のいずれかに記載の担体。
【0018】
【化4】
【0019】
〔式(α)中、
1は、炭素数1~10のアルカンジイル基を示し、
*は、結合手を示す。〕
【0020】
<7> 前記支持体が、合成高分子支持体である、<1>~<6>のいずれかに記載の担体。
【0021】
<8> 前記リガンドが前記支持体に結合されている、<1>~<7>のいずれかに記載の担体。
【0022】
<9> タンパク質精製クロマトグラフィー担体である、<1>~<8>のいずれかに記載の担体。
【0023】
<10> 抗体精製クロマトグラフィー担体である、<1>~<8>のいずれかに記載の担体。
【0024】
<11> 疎水クロマトグラフィーとカチオン交換クロマトグラフィーとのミックスモードクロマトグラフィー担体である、<1>~<10>のいずれかに記載の担体。
【0025】
<12> <1>~<11>のいずれかに記載の担体を製造する方法であって、スルファニル基と反応可能な官能基を分子内に有する支持体と、下記式(β)で表される化合物とを接触させる工程を含む、製造方法(以下、「本発明の製造方法」ともいう)。
【0026】
【化5】
【0027】
〔式(β)中、
Aは、アニオン性官能基を示し、
Qは、2価の芳香族炭化水素基を示し、
1は、2価の有機基を示し、
2は、水素原子又は炭化水素基を示す。〕
【0028】
<13> <1>~<11>のいずれかに記載の担体がカラム容器に充填されている、クロマトグラフィーカラム(以下、「本発明のクロマトグラフィーカラム」ともいう)。
【0029】
<14> <1>~<11>のいずれかに記載の担体を用いる、標的物質の精製方法(以下、「本発明の標的物質の精製方法」ともいう)。
【0030】
<15> 下記式(β)で表される化合物(以下、「本発明の製造中間体」又は「化合物(β)」ともいう)。
【0031】
【化6】
【0032】
〔式(β)中、
Aは、アニオン性官能基を示し、
Qは、2価の芳香族炭化水素基を示し、
1は、2価の有機基を示し、
2は、水素原子又は炭化水素基を示す。〕
【発明の効果】
【0033】
本発明のクロマトグラフィー担体は、標的物質に対する動的結合容量が大きく、且つ標的物質と夾雑物とを分離する性能に優れる。
したがって、本発明のクロマトグラフィーカラム及び標的物質の精製方法によれば、標的物質と夾雑物とを簡便に且つ効率よく分離できる。
また、本発明の製造方法によれば、標的物質に対する動的結合容量が大きく、且つ標的物質と夾雑物とを分離する性能に優れるクロマトグラフィー担体を、簡便に且つ効率よく製造できる。
本発明の製造中間体は、本発明のクロマトグラフィー担体の製造中間体として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
<クロマトグラフィー担体(chromatography carrier)>
本発明のクロマトグラフィー担体は、支持体と、下記式(1)で表されるリガンドとを有することを特徴とするものである。
【0035】
【化7】
【0036】
〔式(1)中、
Aは、アニオン性官能基を示し、
Qは、2価の芳香族炭化水素基を示し、
1は、2価の有機基を示し、
2は、水素原子又は炭化水素基を示し、
Xは、チオ基(-S-)、スルフィニル基(-S(=O)-)又はスルホニル基(-S(=O)2-)を示し、
*は、結合手を示す。〕
【0037】
(リガンド)
本発明において「リガンド」は、タンパク質に代表される標的物質を捕捉できる部位をいい、捕捉の作用機序は化学結合に限られるものではなく、イオン交換、疎水性相互作用等によるものでもよい。本発明のクロマトグラフィー担体は、特定の化学構造を有するリガンド(1)を有することによって、標的物質に対する動的結合容量、標的物質と夾雑物とを分離する性能が改善されたものである。
【0038】
以下、式(1)中の各記号について説明する。
式(1)中、Aは、アニオン性官能基を示す。本発明のクロマトグラフィー担体において、Aで示されるアニオン性官能基は、陽イオン交換基として作用する。
上記アニオン性官能基としては、具体的には、-C(=O)OH、-C(=O)O-+、-C(=O)O-、-S(=O)2OH、-S(=O)2-+、-S(=O)2-、-P(=O)(OH)2、-P(=O)(O-+2、-P(=O)(O-2、-P(=O)(OH)(O-+)、-P(=O)(OH)(O-)、-O-P(=O)(OH)2、-O-P(=O)(O-+2、-O-P(=O)(O-2、-O-P(=O)(OH)(O-+)、-O-P(=O)(OH)(O-)等が挙げられる。
上記M+は、それぞれ対イオンを示す。対イオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン;マグネシウムイオン、カルシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;アンモニウムイオン;有機アンモニウムイオン等が挙げられる。
【0039】
これらアニオン性官能基の中でも、本発明の所望の効果を高めるために、-C(=O)OH、-C(=O)O-+、-C(=O)O-、-S(=O)2OH、-S(=O)2-+、-S(=O)2-、-P(=O)(OH)2、-P(=O)(O-+2、-P(=O)(O-2、-P(=O)(OH)(O-+)、-P(=O)(OH)(O-)が好ましく、-C(=O)OH、-C(=O)O-+、-C(=O)O-、-S(=O)2OH、-S(=O)2-+、-S(=O)2-がより好ましく、-C(=O)OH、-C(=O)O-+、-C(=O)O-が特に好ましい。
【0040】
Qは、2価の芳香族炭化水素基を示す。本発明のクロマトグラフィー担体において、Qで示される2価の芳香族炭化水素基は、疎水性相互作用を奏する疎水性基として作用する。
2価の芳香族炭化水素基の炭素数としては、6~18が好ましく、6~12がより好ましい。2価の芳香族炭化水素基としては、アリーレン基が好ましく、具体的には、フェニレン基、ナフチレン基、フェナントレニレン基等が挙げられる。この中でも、本発明の所望の効果を高めるために、フェニレン基、ナフチレン基が好ましく、フェニレン基が特に好ましい。
なお、2価の芳香族炭化水素基の結合部位は、環上のいずれの炭素上でもよい。
【0041】
また、2価の芳香族炭化水素基は、置換基を有する2価の芳香族炭化水素基、非置換の2価の芳香族炭化水素基のいずれでもよい。なお、2価の芳香族炭化水素基が置換基を有する場合、置換基の置換位置及び個数は任意であり、置換基を2個以上有する場合、該置換基は同一でも異なっていてもよい。置換基としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等のハロゲン原子;ヒドロキシ基;カルボキサミド基;有機基等が挙げられる。有機基としては、炭化水素基、炭素数2以上の炭化水素基の炭素-炭素原子間にエーテル結合、アミド結合及びエステル結合から選ばれる1種以上を有する基が挙げられる。有機基が炭化水素基である場合、その炭素数は、好ましくは1~4であり、より好ましくは1又は2である。「炭素数2以上の炭化水素基の炭素-炭素原子間にエーテル結合、アミド結合及びエステル結合から選ばれる1種以上を有する基」における炭化水素基の炭素数は、好ましくは2~4である。
また、上記炭化水素基としては、アルキル基が好ましい。アルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。
【0042】
Qで示される2価の芳香族炭化水素基としては、本発明の所望の効果を高めるために、下記式(2)又は(3)で表される2価の基が好ましく、式(2)で表される2価の基が特に好ましい。
【0043】
【化8】
【0044】
〔式(2)中、
3は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキサミド基又は有機基を示し、
nは、0~4の整数を示し、
*は、結合手を示す。〕
【0045】
【化9】
【0046】
〔式(3)中、
4は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキサミド基又は有機基を示し、
mは、0~6の整数を示し、
*は、結合手を示す。〕
【0047】
式(2)、(3)中、R3、R4で示されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子が挙げられる。また、R3、R4で示される有機基としては、炭化水素基、炭素数2以上の炭化水素基の炭素-炭素原子間にエーテル結合、アミド結合及びエステル結合から選ばれる1種以上を有する基が挙げられる。有機基が炭化水素基である場合、その炭素数は、好ましくは1~4であり、より好ましくは1又は2である。「炭素数2以上の炭化水素基の炭素-炭素原子間にエーテル結合、アミド結合及びエステル結合から選ばれる1種以上を有する基」における炭化水素基の炭素数は、好ましくは2~4である。
また、上記炭化水素基としては、アルキル基が好ましい。アルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。
【0048】
式(2)中、nは、0~4の整数を示すが、本発明の所望の効果を高めるために、0~2が好ましく、0が特に好ましい。また、式(3)中、mは、0~6の整数を示すが、本発明の所望の効果を高めるために、0~2が好ましく、0が特に好ましい。
なお、nが2~4の整数の場合、n個のR3は同一であっても異なっていてもよい。また、mが2~6の整数の場合、m個のR4は同一であっても異なっていてもよい。
【0049】
1は、2価の有機基を示す。R1で示される2価の有機基としては、2価の炭化水素基、炭素数2以上の2価の炭化水素基の炭素-炭素原子間にエーテル結合、アミド結合及びエステル結合から選ばれる1種以上を有する基が挙げられるが、本発明の所望の効果を高めるために、2価の炭化水素基が好ましい。
1で示される2価の有機基が、2価の炭化水素基である場合、その炭素数は、本発明の所望の効果を高めるために、好ましくは1~20、より好ましくは1~14、更に好ましくは1~10、更に好ましくは1~5、特に好ましくは1又は2である。一方、2価の有機基が、「炭素数2以上の2価の炭化水素基の炭素-炭素原子間にエーテル結合、アミド結合及びエステル結合から選ばれる1種以上を有する基」である場合、斯かる基における2価の炭化水素基の炭素数は、本発明の所望の効果を高めるために、好ましくは2~20、より好ましくは2~14、更に好ましくは2~10、更に好ましくは2~5、特に好ましくは2である。
なお、R1で示される2価の炭化水素基、「炭素数2以上の2価の炭化水素基の炭素-炭素原子間にエーテル結合、アミド結合及びエステル結合から選ばれる1種以上を有する基」における2価の炭化水素基は、置換基を有していてもよい。当該置換基としては、例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシ基等が挙げられる。なお、置換基の置換位置及び個数は任意であり、置換基を2個以上有する場合、該置換基は同一でも異なっていてもよい。
【0050】
1で示される2価の炭化水素基、「炭素数2以上の2価の炭化水素基の炭素-炭素原子間にエーテル結合、アミド結合及びエステル結合から選ばれる1種以上を有する基」における2価の炭化水素基は、2価の飽和炭化水素基でも2価の不飽和炭化水素基でもよい。また、当該2価の炭化水素基としては、2価の脂肪族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基が挙げられるが、本発明の所望の効果を高めるために、2価の脂肪族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基が好ましい。なお、2価の脂肪族炭化水素基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。
【0051】
1で示される2価の有機基が、2価の脂肪族炭化水素基である場合、その炭素数は、本発明の所望の効果を高めるために、好ましくは1~20、より好ましくは1~14、更に好ましくは1~10、更に好ましくは1~5、特に好ましくは1又は2である。一方、2価の有機基が、「炭素数2以上の2価の脂肪族炭化水素基の炭素-炭素原子間にエーテル結合、アミド結合及びエステル結合から選ばれる1種以上を有する基」である場合、斯かる基における2価の脂肪族炭化水素基の炭素数は、本発明の所望の効果を高めるために、好ましくは2~20、より好ましくは2~14、更に好ましくは2~10、更に好ましくは2~5、特に好ましくは2である。
上記2価の脂肪族炭化水素基としては、アルカンジイル基、アルケンジイル基が挙げられるが、本発明の所望の効果を高めるために、アルカンジイル基が好ましい。
アルカンジイル基としては、具体的には、メタン-1,1-ジイル基、エタン-1,1-ジイル基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、ブタン-1,1-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,2-ジイル基、ヘキサン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、デカン-1,2-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基等が挙げられる。
【0052】
上記2価の脂環式炭化水素基の炭素数は、好ましくは3~20であり、より好ましくは3~14であり、更に好ましくは3~10であり、特に好ましくは3~8である。
2価の脂環式炭化水素基としては、シクロアルカンジイル基の他、アダマンチレン基等の2価の橋かけ環炭化水素基が挙げられるが、シクロアルカンジイル基が好ましい。
シクロアルカンジイル基としては、具体的には、シクロヘキサンジイル基、メチルシクロヘキサンジイル基、シクロヘプタンジイル基等が挙げられる。
【0053】
上記2価の芳香族炭化水素基の炭素数は、好ましくは6~18であり、より好ましくは6~12である。2価の芳香族炭化水素基としては、アリーレン基が好ましく、具体的には、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
なお、2価の脂環式炭化水素基の結合部位、及び2価の芳香族炭化水素基の結合部位は、環上のいずれの炭素上でもよい。
【0054】
これら2価の炭化水素基の中でも、本発明の所望の効果を高めるために、アルカンジイル基、シクロアルカンジイル基が好ましく、アルカンジイル基が特に好ましい。
【0055】
2は、水素原子又は炭化水素基を示す。R2で示される炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を包含する概念であり、飽和炭化水素基でも不飽和炭化水素基でもよい。炭化水素基の炭素数は、好ましくは1~4、より好ましくは1又は2である。当該炭化水素基としては、好ましくは脂肪族炭化水素基、より好ましくはアルキル基である。アルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。
また、R2の中では、本発明の所望の効果を高めるために、水素原子が好ましい。
【0056】
Xは、チオ基、スルフィニル基又はスルホニル基を示すが、チオ基が好ましい。
【0057】
リガンド(1)としては、本発明の所望の効果を高めるために、下記式(α)で表されるものが好ましい。
【0058】
【化10】
【0059】
〔式(α)中、
1は、式(1)中のR1と同義であり2価の有機基を示すが、好ましくは炭素数1~10のアルカンジイル基であり、
*は、結合手を示す。〕
【0060】
また、リガンド(1)が光学異性を有する場合、いずれの光学異性体であってもよく、また、1種の光学異性体を単独で用いても、複数種の光学異性体を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
また、リガンド(1)を有する本発明のクロマトグラフィー担体のイオン交換容量は、担体1mLあたりに、好ましくは10~500μeqであり、より好ましくは50~200μeqである。
イオン交換容量は、例えば、本発明のクロマトグラフィー担体がカラム容器に充填されているクロマトグラフィーカラムを平衡化させた後、HCl水溶液を通液して中和し、中和に要したHClのモル数とカラム容量から算出することができる。
より具体的には、次の方法で測定することができる。すなわち、容量4mL(5mmφ×200mm長)のカラム容器に、本発明のクロマトグラフィー担体を充填高さ約20cmで充填してクロマトグラフィーカラムを作製する。得られたカラムをGEヘルスケア社製AKTA Prime Plusに接続した後、0.1M NaOH/2.0M NaCl水溶液を、線流速600cm/hrでカラム容量の5倍通液することで洗浄する。次いで、0.01M NaOH水溶液を、線流速600cm/hrでカラム容量の5倍通液することで平衡化させる。次に、0.01M HCl水溶液を、線流速300cm/hrで中和するまで通液する。ここで得られた中和に要したHClのモル数とカラム容量から算出する等といった方法で測定することができる。
【0062】
(支持体)
支持体としては、合成高分子支持体、天然高分子支持体等の有機系支持体;無機系支持体;これらを組み合わせた有機-有機複合系支持体や有機-無機複合系支持体等が挙げられる。合成高分子支持体としては、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリ(メタ)アクリレート類、ポリ(メタ)アクリルアミド類、ポリスチレン類、エチレン-無水マレイン酸共重合物等で構成されるもの挙げられる。天然高分子支持体としては、例えば、セルロース(結晶性セルロース等)、アガロース、デキストラン等の多糖類で構成されるものが挙げられる。無機系支持体としては、ガラスビーズ、シリカゲル、金属、金属酸化物等で構成されるものが挙げられる。これらの中でも、本発明の所望の効果を高めるために、合成高分子支持体が好ましい。また、支持体は、好ましくは水不溶性支持体である。
【0063】
また、本発明のクロマトグラフィー担体としては、本発明の所望の効果を高めるために、リガンド(1)が支持体に結合されているもの(すなわち、式(1)中の*が支持体に結合しているもの)が好ましい。具体的には、支持体が、スルファニル基と反応可能な官能基の残基を分子内に有し、この残基が、リガンド(1)と化学結合しているものが挙げられる。なお、「スルファニル基と反応可能な官能基の残基」は、スルファニル基と反応可能な官能基がスルファニル基と反応したときに残る残基を意味する。スルファニル基と反応可能な官能基の残基としては、下記で「スルファニル基と反応可能な官能基」として挙げたものがスルファニル基と反応したときに残る残基が挙げられるが、環状エーテル基が開環してなる2価の基、-C(=O)-、-NH-C(=O)-が好ましく、環状エーテル基が開環してなる2価の基がより好ましい。
【0064】
ここで、「スルファニル基と反応可能な官能基」としては、環状エーテル基、カルボキシ基、-C(=O)-O-C(=O)-、コハク酸イミドオキシカルボニル基、ホルミル基、イソシアネート基、マレイミド基、ハロアセチル基(ヨードアセチル基やブロモアセチル基など)、α,β-不飽和カルボニル基、アルケニル基及びアルキニル基からなる群より選ばれる1種以上の官能基が挙げられるが、本発明の所望の効果を高めるために、環状エーテル基が好ましい。
本明細書における「環状エーテル基」としては、環を構成する原子数が3~7個の環状エーテル基が好ましい。環状エーテル基は、置換基としてアルキル基を有していてもよい。環状エーテル基の具体例としては、以下の式(4)~(9)で表される環状エーテル基が挙げられるが、本発明の所望の効果を高めるために、式(4)で表される環状エーテル基が好ましい。
【0065】
【化11】
【0066】
〔式中、R5~R8は、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基を示し、*は、結合手を示す。〕
【0067】
5~R8で示されるアルキル基の炭素数は、好ましくは1~4であり、より好ましくは1又は2である。アルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。また、R5~R8としては、水素原子が好ましい。なお、環状エーテル基がエポキシ基である場合、環状エーテル基が開環してなる2価の基は、開環エポキシ基(-CHOH-CH2-)である。
【0068】
また、支持体は、下記式(10)で表される基を分子内に有していてもよい。
【0069】
【化12】
【0070】
〔式(10)中、
9は、q+1価の炭化水素基を示し、
1は、チオ基、スルフィニル基又はスルホニル基を示し、
2は、親水性基を示し、
qは、0以上の整数を示し、
*は、結合手を示す。〕
【0071】
式(10)中、R9は、q+1価の炭化水素基を示す。すなわち、q=0のとき、R9は1価の炭化水素基であり、q=1のとき、R9は2価の炭化水素基であり、q=2のとき、R9は3価の炭化水素基である。
9で示される1価の炭化水素基としては、R2で示される炭化水素基と同様のものが挙げられる。R9で示される2価の炭化水素基としては、R1で示される2価の炭化水素基と同様のものが挙げられる。R9で示される3価の炭化水素基の炭素数は、好ましくは1~12、より好ましくは1~6である。3価の炭化水素基としては、メタン-1,1,1-トリイル基、エタン-1,1,1-トリイル基、エタン-1,1,2-トリイル基、プロパン-1,2,3-トリイル基、プロパン-1,2,2-トリイル基等のアルカントリイル基が好ましい。
2で示される親水性基としては、ヒドロキシ基、スルファニル基、カルボキシ基等が挙げられる。
qは、0以上の整数を示すが、好ましくは0~4の整数、より好ましくは0~2の整数である。なお、qが2以上の整数の場合、q個のY2は同一であっても異なっていてもよい。
【0072】
また、支持体が重合体を含む場合、当該重合体としては、スルファニル基と反応可能な官能基の残基を有する構造単位(A)を有するものが好ましい。また、重合体に含まれる複数の構造単位(A)中の上記残基の一部又は全部が、リガンド(1)と結合していることが好ましい。また、重合体に含まれる複数の構造単位(A)中の上記残基の一部が、上記式(10)で表される基と結合していてもよい。
また、上記重合体は、構造単位(A)に加えて、スルファニル基と反応可能な官能基を有する構造単位(B)を有していてもよい。
構造単位(A)としては、下記式(11)で表される構造単位が好ましく、構造単位(B)としては、下記式(12)で表される構造単位が好ましい。
【0073】
【化13】
【0074】
〔式(11)中、
10は、水素原子又はメチル基を示し、
11は、単結合又は2価の連結基を示し、
1は、スルファニル基と反応可能な官能基の残基を示し、
**は、結合手を示す。〕
【0075】
【化14】
【0076】
〔式(12)中、
12は、水素原子又はメチル基を示し、
13は、単結合又は2価の連結基を示し、
2は、スルファニル基と反応可能な官能基を示す。〕
【0077】
式(11)中のZ1で示されるスルファニル基と反応可能な官能基の残基、式(12)中のZ2で示されるスルファニル基と反応可能な官能基としては、上記と同様のものが挙げられる。
【0078】
式(11)中のR11、式(12)中のR13で示される2価の連結基としては、例えば、アルカンジイル基、炭素数2以上のアルカンジイル基の炭素-炭素原子間にエーテル結合を有する基、アリーレン基、-C(=O)O-R14-*、-C(=O)NH-R15-*、-Ar-R16-*、又は-Ar-OR17-*等が挙げられる。ここで、Arは、アリーレン基を示し、R11、R13における*は、上記Z1又はZ2に結合する結合手を示す。R11、R13、Arで示されるアリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基、フェナントレニレン基等が挙げられる。
また、R14~R17は、それぞれ独立して、アルカンジイル基、又は炭素数2以上のアルカンジイル基の炭素-炭素原子間にエーテル結合を有する基を示す。
【0079】
11、R13、R14~R17で示されるアルカンジイル基の炭素数としては、1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3が特に好ましい。当該アルカンジイル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。アルカンジイル基の具体例としては、メタン-1,1-ジイル基、エタン-1,1-ジイル基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、ブタン-1,1-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,1-ジイル基、ペンタン-1,2-ジイル基、ペンタン-1,3-ジイル基、ペンタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,1-ジイル基、ヘキサン-1,2-ジイル基、ヘキサン-1,3-ジイル基、ヘキサン-1,4-ジイル基、ヘキサン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基等が挙げられる。
【0080】
11、R13、R14~R17で示される「炭素数2以上のアルカンジイル基の炭素-炭素原子間にエーテル結合を有する基」としては、-Ra(ORbtORc-で表される基が好ましい(Ra、Rb及びRcは、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルカンジイル基を示し、tは0~30の整数を示す。)。
a、Rb及びRcで示されるアルカンジイル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。具体的には、メタン-1,1-ジイル基、エタン-1,1-ジイル基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、ブタン-1,1-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基が挙げられる。tとしては、0~20の整数が好ましく、0~10の整数がより好ましく、0~5の整数が更に好ましく、0が特に好ましい。なお、tが2~30の整数の場合、t個のRbは同一であっても異なっていてもよい。炭素数2以上のアルカンジイル基の炭素-炭素原子間にエーテル結合を有する基の好適な具体例としては、C1-4アルカンジイルオキシC1-4アルカンジイル基が挙げられる。
なお、R11、R13、R14~R17で示されるアルカンジイル基、炭素数2以上のアルカンジイル基の炭素-炭素原子間にエーテル結合を有する基は、置換基を有していてもよい。当該置換基としては、例えば、ヒドロキシ基等が挙げられる。
【0081】
上記のようなR11、R13の中では、-C(=O)O-R14-*が特に好ましい。
【0082】
構造単位(A)や構造単位(B)を与えるモノマーとしては、スルファニル基と反応可能な官能基及び重合性不飽和基を有するモノマーが好ましい。このようなモノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3-オキシラニルプロピル(メタ)アクリレート、4-オキシラニルブチル(メタ)アクリレート、5-オキシラニルペンチル(メタ)アクリレート、6-オキシラニルヘキシル(メタ)アクリレート、7-オキシラニルヘプチル(メタ)アクリレート、8-オキシラニルオクチル(メタ)アクリレート、(3-メチルオキシラニル)メチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、グリセリンモノ(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、α-(メタ)アクリル-ω-グリシジルポリエチレングリコール、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の環状エーテル基を有する(メタ)アクリレート系モノマー;(ビニルベンジル)グリシジルエーテル、(イソプロペニルベンジル)グリシジルエーテル、(ビニルフェネチル)グリシジルエーテル、(ビニルフェニルブチル)グリシジルエーテル、(ビニルベンジルオキシエチル)グリシジルエーテル、(ビニルフェニル)グリシジルエーテル、(イソプロペニルフェニル)グリシジルエーテル、1,2-エポキシ-3-(4-ビニルベンジル)プロパン等の環状エーテル基を有する芳香族ビニル系モノマー;アリルグリシジルエーテル等の環状エーテル基を有するアリルエーテル系モノマー;イソシアナトエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート系モノマー;マレイン酸無水物、メチルマレイン酸無水物、グルタコン酸無水物等の不飽和ジカルボン酸無水物系モノマーの他、(メタ)アクリル酸、3,4-エポキシ-1-ブテン、3,4-エポキシ-3-メチル-1-ブテン等が挙げられる。これらモノマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
これらモノマーの中では、本発明の所望の効果を高めるために、環状エーテル基を有する(メタ)アクリレート系モノマーが好ましい。
【0083】
支持体に含まれる重合体中の構造単位(A)及び(B)の合計含有割合は、重合体中の全構造単位に対して、好ましくは50~100質量%であり、より好ましくは70~90質量%である。
【0084】
また、支持体に含まれる重合体は、構造単位(A)及び(B)の他にも構造単位を有していてもよい。このような構造単位を与えるモノマー(以下、他のモノマーとも称する)としては、スルファニル基と反応可能な官能基をもたない重合性不飽和基含有モノマーが挙げられる。他のモノマーは、非架橋性モノマー、架橋性モノマーに大別され、これらのうち一方を用いても併用してもよい。
【0085】
上記非架橋性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリレート系非架橋性モノマー、(メタ)アクリルアミド系非架橋性モノマー、芳香族ビニル系非架橋性モノマー、ビニルケトン系非架橋性モノマー、(メタ)アクリロニトリル系非架橋性モノマー、N-ビニルアミド系非架橋性モノマー等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。非架橋性モノマーの中では、(メタ)アクリレート系非架橋性モノマー、芳香族ビニル系非架橋性モノマーが好ましい。
【0086】
上記(メタ)アクリレート系非架橋性モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ブタントリオールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、イノシトールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0087】
また、上記(メタ)アクリルアミド系非架橋性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0088】
また、上記芳香族ビニル系非架橋性モノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、4-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、エチルビニルベンゼン、4-イソプロピルスチレン、4-n-ブチルスチレン、4-イソブチルスチレン、4-tert-ブチルスチレン等のスチレン類;1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン等のビニルナフタレン類等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0089】
また、上記ビニルケトン系非架橋性モノマーとしては、例えば、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、イソプロピルビニルケトン等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
また、上記(メタ)アクリロニトリル系非架橋性モノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
また、上記N-ビニルアミド系非架橋性モノマーとしては、例えば、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルプロピオンアミド等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0090】
支持体に含まれる重合体中の非架橋性モノマー由来の構造単位の含有割合は、重合体中の全構造単位に対して、好ましくは0~50質量%であり、より好ましくは0~20質量%である。
【0091】
また、上記架橋性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリレート系架橋性モノマー、芳香族ビニル系架橋性モノマー、アリル系架橋性モノマー等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。また、架橋性モノマーとしては、2~5官能の架橋性モノマーが好ましく、2又は3官能の架橋性モノマーがより好ましい。
架橋性モノマーの中では、本発明の所望の効果を高めるために、(メタ)アクリレート系架橋性モノマー、芳香族ビニル系架橋性モノマーが好ましく、芳香族ビニル系架橋性モノマーが特に好ましい。
【0092】
上記(メタ)アクリレート系架橋性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ブタントリオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グルコースジ(メタ)アクリレート、グルコーストリ(メタ)アクリレート、グルコーステトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、イノシトールジ(メタ)アクリレート、イノシトールトリ(メタ)アクリレート、イノシトールテトラ(メタ)アクリレート、マンニトールジ(メタ)アクリレート、マンニトールトリ(メタ)アクリレート、マンニトールテトラ(メタ)アクリレート、マンニトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0093】
また、上記芳香族ビニル系架橋性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、ジビニルエチルベンゼン、ジビニルナフタレン等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0094】
また、上記アリル系架橋性モノマーとしては、例えば、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、フマル酸ジアリル、イタコン酸ジアリル、トリメリット酸ジアリル、トリメリット酸トリアリル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸ジアリル、イソシアヌル酸トリアリル等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
さらに、架橋性モノマーとしては、上記例示したものの他に、ジアミノプロパノール、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、グルコサミン等のアミノアルコールと(メタ)アクリル酸との脱水縮合反応物や、ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィン等を挙げることができる。
【0095】
支持体に含まれる重合体中の架橋性モノマー由来の構造単位の含有割合は、重合体中の全構造単位に対して、好ましくは5~50質量%であり、より好ましくは10~30質量%である。
【0096】
また、支持体の含有量は、本発明のクロマトグラフィー担体中、好ましくは50~99.9質量%であり、より好ましくは80~99質量%である。
【0097】
また、本発明のクロマトグラフィー担体は、クロマトグラフィー担体として使用できる形態であればよい。このような形態としては、例えば、粒子状、モノリス状、板状、膜状(中空糸を含む)、繊維状、カセット状、チップ状等が挙げられ、好ましくは粒子状である。また、本発明のクロマトグラフィー担体としては、多孔質粒子等の多孔質担体が好ましい。また、多孔質粒子としては、多孔質ポリマー粒子が好ましい。
【0098】
また、本発明のクロマトグラフィー担体が粒子状の担体である場合、平均粒径(体積平均粒径)は、耐圧性能や耐破損性能を高めるために、好ましくは20~150μmであり、より好ましくは40~100μmである。また、平均粒径の変動係数は、好ましくは40%以下であり、より好ましくは30%以下である。
また、本発明のクロマトグラフィー担体の比表面積は、好ましくは1~500m2/gであり、より好ましくは10~300m2/gである。
また、本発明のクロマトグラフィー担体の体積平均細孔径は、好ましくは10~300nmである。
なお、上記平均粒径、変動係数、比表面積及び体積平均細孔径は、レーザー回析・散乱粒子径分布測定等により測定できる。
【0099】
<担体の製造方法>
本発明のクロマトグラフィー担体は、常法を適宜組み合わせて製造することができるが、クロマトグラフィー担体を簡便に且つ効率よく製造するために、スルファニル基と反応可能な官能基を分子内に有する支持体(以下、原料支持体ともいう)と、下記式(β)で表される化合物とを接触させる工程を含む方法で製造するのが好ましい。なお、式(β)中の各記号は、式(1)中のものと同義である。
【0100】
【化15】
【0101】
〔式(β)中、
Aは、アニオン性官能基を示し、
Qは、2価の芳香族炭化水素基を示し、
1は、2価の有機基を示し、
2は、水素原子又は炭化水素基を示す。〕
【0102】
本発明の製造方法としては、例えば、(工程P1-1)原料支持体を準備するとともに、(工程P1-2)化合物(β)を準備し、(工程P2)原料支持体と化合物(β)とを接触させる方法が挙げられる。
以下、上記各工程について、具体的に説明する。
【0103】
(工程P1-1)
工程P1-1は、原料支持体を準備する工程である。
原料支持体は、市販品を使用しても、特表2007-525501号公報、特表2008-505851号公報、特開2010-210497号公報、特表2015-501310号公報、国際公開第2015/119255号、特開2016-50897号公報等に記載の公知の方法を参考にして調製したものを使用してもよい。原料支持体を調製する方法としては、具体的には、スルファニル基と反応可能な官能基及び重合性不飽和基を有するモノマーを(共)重合(好ましくは懸濁重合)させる方法が挙げられる。
スルファニル基と反応可能な官能基及び重合性不飽和基を有するモノマーとしては、構造単位(A)、(B)を与えるモノマーとして例示したものが挙げられる。また、スルファニル基と反応可能な官能基及び重合性不飽和基を有するモノマーとともに上記他のモノマー(非架橋性モノマー、架橋性モノマー)を共重合させてもよい。
スルファニル基と反応可能な官能基及び重合性不飽和基を有するモノマーの合計使用量としては、工程P1-1で使用するモノマー総量100質量部に対して、50~100質量部が好ましく、70~90質量部がより好ましい。
架橋性モノマーの合計使用量としては、工程P1-1で使用するモノマー総量100質量部に対して、5~50質量部が好ましく、10~30質量部がより好ましい。
なお、非架橋性モノマーを使用する場合、その合計使用量は、スルファニル基と反応可能な官能基及び重合性不飽和基を有するモノマーや架橋性モノマー以外の残余の量である。
【0104】
また、工程P1-1の具体的な方法としては、例えば、モノマー及び必要に応じて多孔化剤を含む混合溶液(単量体溶液)に重合開始剤を溶解させ、水系媒体中に懸濁させて所定温度まで加熱して重合させる方法や、モノマー及び必要に応じて多孔化剤を含む混合溶液(単量体溶液)に重合開始剤を溶解させ、所定温度まで加熱した水系媒体中に添加して重合させる方法、モノマー及び必要に応じて多孔化剤を含む混合溶液(単量体溶液)を、水系媒体中に懸濁させて所定温度まで加熱して、重合開始剤を添加し重合させる方法等が挙げられる。
【0105】
重合開始剤としてはラジカル重合開始剤が好ましい。ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤等が挙げられ、具体的には、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、過酸化ベンゾイル、過酸化ジ-tert-ブチル、過酸化ベンゾイル-ジメチルアニリン等が挙げられる。重合開始剤の合計使用量は、通常、モノマー総量100質量部に対して0.01~10質量部程度である。
【0106】
上記多孔化剤は、多孔質粒子を製造するために使用され、油滴内の重合において、モノマーと共に存在し、非重合成分として孔を形成する役割を有する。多孔化剤は、多孔質表面において容易に除去可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、各種の有機溶剤や混合モノマーに可溶な線状重合物等が挙げられ、これらを併用してもよい。
【0107】
上記多孔化剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ヘキサノール等の脂肪族アルコール類;シクロヘキサノール等の脂環式アルコール類;2-フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール等の芳香族アルコール類;ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、アセトフェノン、2-オクタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、アニソール、エトキシベンゼン等のエーテル類;酢酸イソペンチル、酢酸ブチル、酢酸-3-メトキシブチル、マロン酸ジエチル等のエステル類の他、非架橋性ビニルモノマーのホモポリマー等の線状重合物が挙げられる。多孔化剤は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
上記多孔化剤の合計使用量は、通常、モノマー総量100質量部に対して40~600質量部程度である。
【0108】
上記水系媒体としては、例えば水溶性高分子水溶液等が挙げられ、水溶性高分子としては、例えばヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デンプン、ゼラチン等が挙げられる。
水系媒体の合計使用量は、通常、モノマー総量100質量部に対して200~7000質量部程度である。
また、水系媒体の分散媒として水を用いる場合、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、硫酸ナトリウム、燐酸カルシウム、塩化ナトリウム等の分散安定剤を使用してもよい。
【0109】
また、工程P1-1には、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリール硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、脂肪酸塩等のアニオン性界面活性剤をはじめとする各種界面活性剤を用いてもよい。また、亜硝酸ナトリウム等の亜硝酸塩、ヨウ化カリウム等のヨウ化物塩、tert-ブチルピロカテコール、ベンゾキノン、ピクリン酸、ハイドロキノン、塩化銅、塩化第二鉄等の重合禁止剤を用いることもできる。また、ドデシルメルカプタン等の重合調製剤を用いてもよい。
【0110】
また、工程P1-1の重合温度は重合開始剤に応じて決定すればよいが、通常2~100℃程度であり、アゾビスイソブチロニトリルを重合開始剤として用いる場合は、50~100℃が好ましく、60~90℃がより好ましい。また、重合時間は通常5分間~48時間、好ましくは10分間~24時間である。
【0111】
(工程P1-2)
工程P1-2は、化合物(β)を準備する工程である。
化合物(β)は、例えば、下記カルボン酸(PR-A)と下記スルファニル化合物(PR-C)とを接触させることにより得ることができる。また、化合物(β)のうち、アニオン性官能基Aが-C(=O)OHである下記化合物(β')については、下記ジカルボン酸無水物(PR-B)と下記スルファニル化合物(PR-C)とを接触させることにより得ることもできる。なお、本明細書においては、カルボン酸(PR-A)とスルファニル化合物(PR-C)との反応、ジカルボン酸無水物(PR-B)とスルファニル化合物(PR-C)との反応を、「化合物(β)合成反応」と総称する。
化合物(β')を得る場合は、所望の化合物を効率よく得るために、ジカルボン酸無水物(PR-B)とスルファニル化合物(PR-C)との接触により得ることが好ましい。
【0112】
【化16】
【0113】
〔式中の各記号は前記と同義である。〕
【0114】
カルボン酸(PR-A)としては、例えば、3-スルホプロパン酸、4-スルホブタン酸、5-スルホペンタン酸、3-ホスホノプロピオン酸、4-ホスホノ酪酸等が挙げられる。
ジカルボン酸無水物(PR-B)としては、例えば、コハク酸無水物、メチルコハク酸無水物、ジメチルコハク酸無水物、ブチルコハク酸無水物、オクチルコハク酸無水物、ジクロロコハク酸無水物、シクロプロパン-1,2-ジカルボン酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、グルタル酸無水物、2,4-ジエチルグルタル酸無水物、セバシン酸無水物、しょうのう酸無水物、マレイン酸無水物、メチルマレイン酸無水物、グルタコン酸無水物等が挙げられる。
スルファニル化合物(PR-C)としては、例えば、2-アミノベンゼンチオール、3-アミノベンゼンチオール、4-アミノベンゼンチオール、1-アミノ-2-ナフタレンチオール等が挙げられる。
化合物(β)合成反応において、スルファニル化合物(PR-C)の使用量は、カルボン酸(PR-A)又はジカルボン酸無水物(PR-B)1モルに対して、通常1.0~3.0モル当量であり、好ましくは1.0~1.5モル当量である。
【0115】
化合物(β)合成反応は、所望の化合物を効率よく得るために、溶媒存在下で行うのが好ましい。溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の芳香族炭化水素系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族アルカン系溶媒;シクロヘキサン、シクロヘプタン、デカリン等のシクロアルカン系溶媒;クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒等が挙げられる。これらのうち1種を単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
溶媒の使用量は、カルボン酸(PR-A)又はジカルボン酸無水物(PR-B)とスルファニル化合物(PR-C)との合計100質量部に対して、通常100~50000質量部であり、好ましくは500~10000質量部である。
【0116】
また、化合物(β)合成反応の反応時間は特に限定されないが、通常15分間~96時間程度であり、好ましくは1~24時間である。また、反応温度は、溶媒の沸点以下で適宜選択すればよいが、通常20~100℃程度である。
【0117】
なお、工程P1-2で得られる化合物(β)は、新規化合物であり、本発明のクロマトグラフィー担体の製造中間体として有用である。
【0118】
(工程P2)
工程P2は、原料支持体と化合物(β)とを接触させる工程である。
化合物(β)の使用量は、原料支持体に含まれるスルファニル基と反応可能な官能基1モルに対して、好ましくは0.1~20モル当量、より好ましくは0.5~5モル当量である。
【0119】
工程P2は、所望の担体を効率よく得るために、溶媒存在下で行うのが好ましい。溶媒としては、水;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール等のアルコール類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられる。これらのうち1種を単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
溶媒の使用量は、原料支持体100質量部に対して、通常300~3000質量部であり、好ましくは500~2000質量部である。
【0120】
工程P2のpHは、所望の担体を効率よく得るために、好ましくは8~16、より好ましくは10~14である。
また、工程P2の反応時間は特に限定されないが、通常0.5~72時間程度であり、好ましくは1~48時間である。また、反応温度は、溶媒の沸点以下で適宜選択すればよいが、通常10~100℃程度である。
【0121】
また、式(1)中のXがスルフィニル基又はスルホニル基である担体を製造する場合は、上記の工程P2で得られた式(1)中のXがチオ基である担体を酸化すればよい。
上記酸化は、国際公開第2015/119255号、特開2016-50897号公報等に記載の公知の方法を参考にして行えばよいが、具体的には、酸化剤を用いる方法が挙げられる。酸化剤としては、過酢酸、過安息香酸、メタクロロ過安息香酸、tert-ブチルヒドロペルオキシド等の有機酸化剤;過酸化水素、クロム酸、過マンガン酸塩等の無機酸化剤が挙げられる。なお、これら酸化剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0122】
また、上記のようにして得られた担体に、メタンチオール、チオグリセロール等のスルファニル化合物を接触させ、未反応の官能基を開環等させてもよい。この処理は、国際公開第2015/119255号パンフレット等の記載を参考にして行えばよい。
なお、上記各工程で得られる反応生成物を、蒸留、抽出、洗浄等の分離手段で精製してもよい。
【0123】
そして、上記のようにして製造することができる本発明のクロマトグラフィー担体は、標的物質に対する動的結合容量が大きく、且つ標的物質と夾雑物とを分離する性能に優れる。特に、後記実施例に記載のとおり、タンパク質を複数種含む混合液から各タンパク質を簡便に且つ効率よく分離することができるため、標的タンパク質と標的外のタンパク質の分離に有用である。
このような効果が奏される理由は必ずしも明らかではないが、2価の芳香族炭化水素基とアニオン性官能基を含むリガンドを有するということだけではなく、式(1)中のQで示される2価の芳香族炭化水素基が、Xで示されるチオ基、スルフィニル基又はスルホニル基と隣接しており、且つQで示される2価の芳香族炭化水素基と、Aで示されるアニオン性官能基が、-N(-R2)-C(=O)-R1-という特定の連結基を介して連結されているためであると、本発明者らは推察する。
したがって、本発明のクロマトグラフィー担体は、タンパク質精製に適し、抗体精製にも適する。また、本発明のクロマトグラフィー担体は、疎水クロマトグラフィーとカチオン交換クロマトグラフィーとのミックスモードクロマトグラフィーに極めて有用である。
【0124】
<クロマトグラフィーカラム>
本発明のクロマトグラフィーカラムは、本発明のクロマトグラフィー担体がカラム容器に充填されているものである。
本発明のクロマトグラフィーカラムは、タンパク質精製に適し、抗体精製にも適する。また、疎水クロマトグラフィーとカチオン交換クロマトグラフィーとのミックスモードクロマトグラフィーに極めて有用である。
【0125】
<精製方法>
本発明の標的物質の精製方法は、本発明のクロマトグラフィー担体を用いることを特徴とするものである。
本発明の標的物質の精製方法は、本発明のクロマトグラフィー担体を用いること以外は、公知の方法と同様にして行うことができる。例えば、特表2007-525501号公報、特表2008-505851号公報、特開2010-210497号公報、特表2015-501310号公報等に記載の公知の方法を参考にして行えばよい。具体的には、本発明のクロマトグラフィー担体と、標的物質を含む試料とを接触させる工程を含む方法が挙げられる。また、この工程によって担体に捕捉された標的物質を溶出させる溶出工程を更に含むことが好ましい。溶出工程には、リガンドと標的物質を解離させる解離液が通常使用される。
また、精製は、本発明のクロマトグラフィーカラムを用いて行ってもよい。このような方法としては、本発明のクロマトグラフィーカラムに、標的物質を含む試料を通液する工程を含む方法が挙げられ、上記と同様に溶出工程を更に含むことが好ましい。
【0126】
標的物質としては、例えば、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、糖、多糖、脂質、ビタミン、DNA、RNA等の生体関連物質が挙げられるが、タンパク質、ペプチドが好ましく、タンパク質がより好ましい。標的となるタンパク質としては、抗原、抗体、ウイルス粒子等が挙げられるが、抗体が好ましい。抗体としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、合成抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、Fabフラグメント、Fab'フラグメント、F(ab')2フラグメント、Fv断片、Fv'断片、Fab発現ライブラリーにより産生されたフラグメント、抗イディオタイプ(抗-Id)抗体、上記のいずれかのエピトープ結合フラグメントが挙げられる。また、抗体のクラスとしては、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAが挙げられる。なお、サブクラスは特に限定されない。
標的物質を含む試料としては、例えば、全血、血清、血漿、血液成分、各種血球、血餅、血小板等の血液組成成分、尿、精液、母乳、汗、間質液、間質性リンパ液、骨髄液、組織液、唾液、胃液、関節液、胸水、胆汁、腹水、羊水等の体液、菌体液、細胞培養の培地、細胞培養上清、組織細胞の破砕液等の各種液体が挙げられる。また、試料として、アフィニティー精製等の他の精製処理が1回又は複数回行われた試料を使用することも、このような他の精製処理が行われていない試料を使用することもできる。
夾雑物としては、例えば、標的外のタンパク質が挙げられる。具体的には、抗体を標的物質とする場合は、抗体以外のタンパク質である。また、ウイルス粒子を標的物質とする場合は、DNAや宿主細胞由来タンパク質である。
【0127】
本発明の標的物質の精製方法としては、より具体的には、以下の工程S1及びS2を含む方法が挙げられる。そして、工程S2で担体から溶出した標的物質を回収することができる。
(工程S1)本発明のクロマトグラフィー担体と、標的物質を含む試料とを接触させる工程
(工程S2)前記担体が有するリガンドと前記標的物質とを解離させる解離液と、工程S1で標的物質を捕捉した担体とを接触させる工程
【0128】
(工程S1)
工程S1は、本発明のクロマトグラフィー担体と、標的物質を含む試料とを接触させる工程である。工程S1により、本発明のクロマトグラフィー担体に標的物質が捕捉される。
工程S1は、バッファー存在下で通常行われる。工程S1に使用するバッファーのpH(25℃)は、標的物質を夾雑物から効率よく分離するために、好ましくは2~9の範囲、より好ましくは3~8の範囲である。また、バッファーの塩濃度は、好ましくは0~0.5Mである。
【0129】
(工程S2)
工程S2は、本発明のクロマトグラフィー担体が有するリガンドと前記標的物質とを解離させる解離液と、工程S1で標的物質を捕捉した担体とを接触させる工程である。工程S2により、担体に捕捉された標的物質が溶出し、また、本発明のクロマトグラフィー担体と標的物質の親和性が、本発明のクロマトグラフィー担体と夾雑物の親和性と異なることを利用して、標的物質を夾雑物から分離できる。
工程S2は、バッファー存在下で通常行われる。工程S2に使用するバッファーのpH(25℃)は、標的物質を夾雑物から効率よく分離するために、好ましくは2~9の範囲、より好ましくは3~8の範囲である。
工程S2においては、ステップワイズ方式、グラジェント方式、又はこれら両方を組み合わせた方式で標的物質を担体から溶出させることができる。また、バッファーの塩濃度は、通常1.0~3.0Mまで高くすればよい。
ステップワイズ方式とは、塩濃度が異なる複数種のバッファーを使用して段階的に塩濃度を変化させて、標的物質を担体から溶出させる方式をいう。
グラジェント方式とは、連続的に塩濃度を変化させて標的物質を担体から溶出させる方式をいう。グラジェント方式で溶出を行う場合、好ましくは0.001~0.2M/分、より好ましくは0.01~0.1M/分で濃度を高くすることが好ましい。
【実施例
【0130】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0131】
[合成例1]
以下の合成経路に従い、化合物(E-A1)を得た。
【0132】
【化17】
【0133】
すなわち、ジムロートを取り付けた3口フラスコに、4-アミノベンゼンチオール11.27gと無水コハク酸9.01gを加え、脱気窒素置換操作を行った。その後、脱水トルエン400mLと脱水THF450mLを加え、50℃で4時間撹拌した。放冷後、溶媒を留去し、化合物(E-A1)20.22gを得た。
【0134】
1H NMR (600MHz, DMSO-d6) : δ2.53(m,4H), 7.21(d, J= 8.4 Hz,2H), 7.47(d, J= 8.4 Hz,2H), 9.94(s, 1H), 12.10(brs, 1H)
【0135】
[合成例2]
無水コハク酸9.01gをグルタル酸無水物10.27gに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、以下の化合物(E-A2)21.40gを得た。
【0136】
【化18】
【0137】
1H NMR (600MHz, DMSO-d6) : δ1.79(m,2H), 2.26(dd, J= 7.5 Hz,2H), 2.32(dd, J= 7.5 Hz,2H), 7.21(d, J= 8.6 Hz,2H), 7.48(d, J= 8.6 Hz,2H), 9.88(s, 1H), 12.05(brs, 1H)
【0138】
[比較合成例1]
以下の合成経路に従い、化合物(E-B1)を得た。
【0139】
【化19】
【0140】
(1)すなわち、フラスコに、4-アミノ馬尿酸4.75g及び1M水酸化ナトリウム水溶液25.5gを加え、氷浴にて撹拌した。そこに、ブロモ酢酸クロライド4.25gと5M水酸化ナトリウム水溶液6.50gとを交互に滴下した。滴下終了後、溶液を氷浴から取り出し、室温にて30分間撹拌した。その後、溶液から白濁沈殿が生じるまで2M塩酸水溶液を加え、さらに酢酸エチルを加えて分液抽出操作を行った。減圧留去後、真空乾燥を行い、中間体化合物(E-PB1)3.80gを得た。
(2)続いて、別のフラスコに中間体化合物(E-PB1)3.10gを加え、アセトン150mLに溶解させた。そこに、チオ酢酸カリウム1.13gを加え、40℃にて4時間撹拌した。アセトンを減圧留去後、酢酸エチルを加えて反応物を溶解させた。そこに、5質量%クエン酸水溶液を加え、洗浄操作を行った。得られた有機相を減圧留去した後、真空乾燥することで、中間体化合物(E-PB2)を3.01g得た。
(3)続いて、新たなフラスコに、中間体化合物(E-PB2)2.80g及びメタノール20gを加えて撹拌した。さらに、1M水酸化ナトリウム水溶液20.0gを加え、室温で1時間撹拌した。減圧留去にてメタノールを留去後、2M塩酸水溶液を加えることで沈殿を生じさせた。その後、酢酸エチルを加え、抽出操作を行った。得られた有機相を飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムにて水を除去した。さらに得られた有機相を減圧留去した後、真空乾燥することで、化合物(E-B1)2.30gを得た。
【0141】
[比較合成例2]
以下の合成経路に従い、化合物(E-B2)を得た。
【0142】
【化20】
【0143】
(1)すなわち、脱気窒素置換を行ったフラスコに、DL-ホモシステインチオラクトン塩酸塩5.00g及び脱水DMF150mLを加え、氷浴にて撹拌した。その後、塩化ベンゾイル5.49g及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン5.05gを加えた後、溶液を氷浴から取り出し、室温にて2時間撹拌した。減圧蒸留にてDMFを留去し、そこに酢酸エチルを加えた。飽和食塩水及び蒸留水にて洗浄操作後、有機相を減圧蒸留及び真空乾燥することで、中間体化合物(E-PB3)を6.12g得た。
(2)続いて、別のフラスコに、中間体化合物(E-PB3)5.00g及びTHF100mLを加えて撹拌した。さらに、1M水酸化ナトリウム水溶液25.0gを加え、室温で1時間撹拌した。減圧留去にてTHFを留去後、2M塩酸水溶液を加えることで沈殿を生じさせた。その後、酢酸エチルを加え、抽出操作を行った。得られた有機相を飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムにて水を除去した。さらに得られた有機相を減圧留去及び真空乾燥することで、化合物(E-B2)を5.33g得た。
【0144】
[比較合成例3]
以下の合成経路に従い、化合物(E-B3)を得た。
【0145】
【化21】
【0146】
(1)すなわち、フラスコに、L-トリプトファン5.00g及び1M水酸化ナトリウム水溶液25.5gを加え、氷浴にて撹拌した。そこに、ブロモ酢酸クロライド4.25gと5M水酸化ナトリウム水溶液6.50gとを交互に滴下した。滴下終了後、溶液を氷浴から取り出し、室温にて30分間撹拌した。その後、溶液から白濁沈殿が生じるまで2M塩酸水溶液を加え、さらに酢酸エチルを加えて分液抽出操作を行った。減圧留去後、真空乾燥を行い、中間体化合物(E-PB4)3.48gを得た。
(2)続いて、別のフラスコに中間体化合物(E-PB4)3.20gを加え、アセトン150mLに溶解させた。そこに、チオ酢酸カリウム1.13gを加え、40℃にて4時間撹拌した。アセトンを減圧留去後、酢酸エチルを加えて反応物を溶解させた。そこに、5質量%クエン酸水溶液を加え、洗浄操作を行った。得られた有機相を減圧留去した後、真空乾燥することで、中間体化合物(E-PB5)を3.05g得た。
(3)続いて、新たなフラスコに、中間体化合物(E-PB5)2.90g及びメタノール20gを加えて撹拌した。さらに、1M水酸化ナトリウム水溶液20.0gを加え、室温で1時間撹拌した。減圧留去にてメタノールを留去後、2M塩酸水溶液を加えることで沈殿を生じさせた。その後、酢酸エチルを加え、抽出操作を行った。得られた有機相を飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムにて水を除去した。さらに得られた有機相を減圧留去した後、真空乾燥することで、化合物(E-B3)を2.31g得た。
【0147】
[実施例1]
(1)448gの純水にポリビニルアルコール(クラレ社製 PVA-217)2.69gを添加し、加熱撹拌してポリビニルアルコールを溶解させ、冷却した後、ドデシル硫酸ナトリウム(和光純薬工業製)0.045gを添加し、撹拌して水溶液Sを調製した。
一方、ジビニルベンゼン(和光純薬工業製)3.63g、1-エチル-4-ビニルベンゼン(ChemSampCo社製)0.36g及びグリシジルメタクリレート(三菱ガス化学社製)14.15gからなる単量体組成物を、2-オクタノン(東洋合成社製)29.38gに溶解させ、単量体溶液を調製した。
次いで、前記水溶液Sを、セパラブルフラスコ内に全量投入し、温度計、撹拌翼及び冷却管を装着して、温水バスにセットし、窒素雰囲気下で撹拌を開始した。セパラブルフラスコ内に前記単量体溶液を全量投入して、温水バスにより加温し内温が85℃に到達したところで2,2'-アゾイソブチロニトリル(和光純薬工業社製)1.34gを添加し、内温を86℃にした。
【0148】
(2)その後、86℃に温度を維持したまま、3時間撹拌を行った。次いで、反応液を冷却した後、斯かる反応液をろ過し、純水とエタノールで洗浄した。洗浄した粒子を純水に分散させてデカンテーションを3回行い、小粒子を除いた。次いで、粒子の濃度が10質量%となるように粒子を純水に分散させ、多孔質粒子分散液を得た。この分散液に含まれる多孔質粒子を、「多孔質担体1」と称する。
(3)その後、多孔質粒子分散液を20g分取し、水を除去後、1M水酸化ナトリウム水溶液9.5g及び化合物(E-A1)0.976gを加え、50℃で15時間撹拌を行った。次いで、斯かる反応液をろ過し、純水で洗浄した。
(4)次いで、α-チオグリセロール(東京化成工業株式会社製)7.30g及び水酸化ナトリウム2.16gを加え、70℃で3時間撹拌を行った。次いで、斯かる反応液をろ過し、純水で洗浄した後、粒子の濃度が10質量%となるように粒子を純水に分散させた。この分散液に含まれる多孔質粒子を、「クロマトグラフィー担体V1」と称する。
【0149】
[実施例2]
実施例1の工程(3)の化合物(E-A1)0.976gを、化合物(E-A2)1.036gに変更した以外は、実施例1の工程(1)~(4)と同様の操作を行った。得られた分散液に含まれる多孔質粒子を、「クロマトグラフィー担体V2」と称する。
【0150】
[比較例1]
実施例1の工程(3)の化合物(E-A1)0.976gを、化合物(E-B1)1.162gに変更した以外は、実施例1の工程(1)~(4)と同様の操作を行った。得られた分散液に含まれる多孔質粒子を、「クロマトグラフィー担体X1」と称する。
【0151】
[比較例2]
実施例1の工程(3)の化合物(E-A1)0.976gを、化合物(E-B2)1.036gに変更した以外は、実施例1の工程(1)~(4)と同様の操作を行った。得られた分散液に含まれる多孔質粒子を、「クロマトグラフィー担体X2」と称する。
【0152】
[比較例3]
実施例1の工程(3)の化合物(E-A1)0.976gを、化合物(E-B3)1.205gに変更した以外は、実施例1の工程(1)~(4)と同様の操作を行った。得られた分散液に含まれる多孔質粒子を、「クロマトグラフィー担体X3」と称する。
【0153】
[実施例3]
実施例1の工程(1)のジビニルベンゼン(和光純薬工業製)3.63g、1-エチル-4-ビニルベンゼン(ChemSampCo社製)0.36gを、エチレングリコールジメタクリレート5.56gに変更した以外は、実施例1の工程(1)~(4)と同様の操作を行った。得られた分散液に含まれる多孔質粒子を、「クロマトグラフィー担体V3」と称する。なお、エチレングリコールジメタクリレートを使用することで多孔質担体1の代わりに調製された多孔質担体を、「多孔質担体2」と称する。
【0154】
[実施例4]
実施例1の工程(1)のジビニルベンゼン(和光純薬工業製)3.63g、1-エチル-4-ビニルベンゼン(ChemSampCo社製)0.36gを、エチレングリコールジメタクリレート5.56gに変更し、更に実施例1の工程(3)の化合物(E-A1)0.976gを、化合物(E-A2)1.036gに変更した以外は、実施例1の工程(1)~(4)と同様の操作を行った。得られた分散液に含まれる多孔質粒子を、「クロマトグラフィー担体V4」と称する。
【0155】
[比較例4]
実施例1の工程(1)のジビニルベンゼン(和光純薬工業製)3.63g、1-エチル-4-ビニルベンゼン(ChemSampCo社製)0.36gを、エチレングリコールジメタクリレート5.56gに変更し、更に実施例1の工程(3)の化合物(E-A1)0.976gを、化合物(E-B1)1.162gに変更した以外は、実施例1の工程(1)~(4)と同様の操作を行った。得られた分散液に含まれる多孔質粒子を、「クロマトグラフィー担体X4」と称する。
【0156】
[比較例5]
実施例1の工程(1)のジビニルベンゼン(和光純薬工業製)3.63g、1-エチル-4-ビニルベンゼン(ChemSampCo社製)0.36gを、エチレングリコールジメタクリレート5.56gに変更し、更に実施例1の工程(3)の化合物(E-A1)0.976gを、化合物(E-B2)1.036gに変更した以外は、実施例1の工程(1)~(4)と同様の操作を行った。得られた分散液に含まれる多孔質粒子を、「クロマトグラフィー担体X5」と称する。
【0157】
[比較例6]
実施例1の工程(1)のジビニルベンゼン(和光純薬工業製)3.63g、1-エチル-4-ビニルベンゼン(ChemSampCo社製)0.36gを、エチレングリコールジメタクリレート5.56gに変更し、更に実施例1の工程(3)の化合物(E-A1)0.976gを、化合物(E-B3)1.205gに変更した以外は、実施例1の工程(1)~(4)と同様の操作を行った。得られた分散液に含まれる多孔質粒子を、「クロマトグラフィー担体X6」と称する。
【0158】
[試験例1 (DBCの測定)]
GEヘルスケア社製AKTA Prime Plusを用いて、線流速300cm/hrにおけるタンパク質(ヒトIgG抗体、Equitech Bio社製 HGG-1000)に対する各実施例及び比較例の担体V1~V4、X1~X6のDBCを測定した。カラム容器は容量4mL(5mmφ×200mm長)のものを、タンパク質は50mM酢酸ナトリウム/100mM塩化ナトリウム水溶液(pH4.7)にタンパク質を5mg/mL溶解したものをそれぞれ使用し、溶出先端10%ブレークスルーのときのタンパク質捕捉量とカラム充填体積からDBCを求めた。結果を表1に示す。
【0159】
[試験例2 (タンパク質の分離)]
各実施例及び比較例の担体を使用して、3種類のタンパク質(トリプシノーゲン(pI=10、Mw=23kDa)、シトクロムC(pI=10、Mw=12kDa)、リゾチーム(pI=11、Mw=14kDa))を含む液体サンプルから各タンパク質を分離させることで、タンパク質分離能を評価した。具体的手順を以下に示す。
容量4mL(5mmφ×200mm長)のカラム容器に、充填高さ約5cmで各担体を充填してカラムを作製した。得られたカラムをGEヘルスケア社製AKTA Prime Plusに接続した。20mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0)を、カラム容量の4倍通液し、平衡化させた。
次いで、トリプシノーゲン、シトクロムC及びリゾチームを、20mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0)に溶解させて、タンパク質混合液(トリプシノーゲン:0.2mg/mL、シトクロムC:0.1mg/mL、リゾチーム:0.2mg/mL)を調製した。
次に、上記タンパク質混合液100μLを、線流速300cm/hrでカラムに通液した。
次いで、20mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0)100%から20mMリン酸ナトリウム/1.5M塩化ナトリウムバッファー(pH7.0)100%へのリニアグラジェント溶出を40分間かけて行った後、20mMリン酸ナトリウム/1.5M塩化ナトリウムバッファー(pH7.0)100%で溶出を10分間続けた。溶出時の各タンパク質のピークの溶出体積V及びピーク幅Wの値を、GEヘルスケア社製AKTA Prime Plus付属の分光光度計を用いて取得した(UV検出波長:280nm)。
溶出体積Vは、ピークの最高吸光度値の点からベースラインに垂線を引いたときにベースラインと交わる接点から求めた溶出液の体積値である。
ピーク幅Wは、ピーク左右の変曲点を通る2本の接線を引いたときにベースラインと交わる2つの接点の間の幅から求めた体積値である。ただし、溶出ピークが重なっている場合は、これら重なるピーク間の最低吸光度値の点からベースラインに垂線を引いたときにベースラインと交わる接点から求めた。ピーク幅Wの値が小さいほど、タンパク質が高濃度で回収されており、タンパク質分離能に優れるといえる。
また、溶出体積V及びピーク幅Wの値を用いて、以下の算出式から分離能Rs1、Rs2をそれぞれ算出した。分離能Rs1、Rs2の値が大きいほど、タンパク質分離能に優れるといえる。試験例2の結果を表1に示す。
【0160】
Rs1 = (2(V2-V1)) / (W2+W1
Rs2 = (2(V3-V2)) / (W3+W2
【0161】
1:トリプシノーゲンの溶出体積、V2:シトクロムCの溶出体積、V3:リゾチームの溶出体積、W1:トリプシノーゲンのピーク幅、W2:シトクロムCのピーク幅、W3:リゾチームのピーク幅
【0162】
【表1】
【0163】
表1に示すとおり、化合物(E-A1)、(E-A2)をリガンドとして結合させた担体を用いた場合(実施例1~2、実施例3~4)は、4-アミノ馬尿酸の残基をリガンドとする担体を用いた場合(比較例1、4)よりも、分離能Rs2が大となった。また、DBCの測定値も大きかった。
また、化合物(E-A1)、(E-A2)をリガンドとして結合させた担体を用いた場合(実施例1~2、実施例3~4)は、2-(ベンゾイルアミノ)-4-メルカプト酪酸の残基又はL-トリプトファンの残基をリガンドとする担体を用いた場合(比較例2~3、比較例5~6)よりも、分離能Rs1が大となった。また、DBCの測定値も大きかった。
また、比較例2~3の結果に示すとおり、2-(ベンゾイルアミノ)-4-メルカプト酪酸の残基又はL-トリプトファンの残基をリガンドとする担体は、支持体(ベース粒子)の種類によってはそもそもリゾチームが溶出すらせず、分離能Rs2を算出できなかった。