(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】飛翔害虫捕獲装置及び捕獲昆虫の計数方法
(51)【国際特許分類】
A01M 1/00 20060101AFI20230719BHJP
A01M 1/02 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
A01M1/00 Q
A01M1/02 C
A01M1/02 B
A01M1/02 P
(21)【出願番号】P 2020570649
(86)(22)【出願日】2019-03-05
(86)【国際出願番号】 FR2019050485
(87)【国際公開番号】W WO2019170996
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2022-02-24
(32)【優先日】2018-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】520341094
【氏名又は名称】テクノ バム
【氏名又は名称原語表記】TECHNO BAM
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】ベラガンビ,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】リラマン,シモン
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-192321(JP,A)
【文献】国際公開第2016/168347(WO,A1)
【文献】特開2005-065631(JP,A)
【文献】登録実用新案第3212987(JP,U)
【文献】特開2006-136276(JP,A)
【文献】特開2007-215469(JP,A)
【文献】特開2004-135541(JP,A)
【文献】実公昭47-005582(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のような飛翔害虫を捕獲するための装置:
-昆虫を引き付けるように適合させたガス状誘引性混合物を周囲空気に拡散させる拡散装置(1)
-拡散したガス状誘引性混合物により引き付けられた昆虫を封じ込める周囲空気流の吸引口(220)を備えた吸引装置(2)
-吸引装置(2)を備えた捕虫器(3)で、前記装置により吸引された昆虫が前記捕虫器内に保持されるようにするもの
-光学昆虫計数器
光学昆虫計数器には、吸引口(220)の向こう側に設置された一連の並列偏向器(30)、発光器(31)及び前記偏向器の間にあり各隙間内に設置されている受光器(32)で構成される光バリアが備わっていることを特徴とする。
【請求項2】
偏向器(30)が4mm~9mmの間の距離だけ互いに離れている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
発光器(31)が赤外線LEDであり、受光器(32)が光ダイオードである、請求項1~2のいずれか一項に記載の装置。
【請求項4】
光学昆虫計数器が、吸引口(220)の吸引領域の先端部に配置される、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の装置であって、以下のようなもの:
-フレーム(4)には、拡散装置(1)に接続されたガス供給源(41)が収納されており、このガスは、ガス状誘引性混合物の成分である。
-拡散装置(1)、吸引装置(2)及び捕虫器(3)が構造物(S)を形成し、吸引口(220)の地面レベルからの遊離方向又はそれへの接近方向での前記構造物の少なくとも1つの高さ調整手段によりフレーム(4)に接続されている。
【請求項6】
高さ調節手段が構造物(S)に取り付けられた少なくとも1つの横材(5)の形態であり、その横材が複数の垂直位置(50)に応じてフレーム(4)に接合されており、吸引口の地面レベルからの遊離又は接近を調整できるようにする、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
高さ調節手段がフレーム(4)に取り付けられた少なくとも1つの横材(5)の形態であり、その横材が複数の垂直位置(50)に応じて構造物(S)に固定されており、吸引口(220)の地面レベルからの遊離又は接近を調整できるようにする、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
フレーム(4)に取り付けられたガス供給源と拡散装置(1)の間に流体接続部が形成され、その流体接続部が少なくとも1つの横材(5)を通過する、請求項6又は7に記載の装置。
【請求項9】
電源装置(42)がフレーム(4)に取り付けられ、前記電源装置と前記構造物(S)の間に電気接続部が設けられ、その電気接続部は少なくとも1つの横材(5)を通過する、請求項5~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記フレーム(4)が街灯の形態である、請求項5~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
ガス状誘引性混合物が人間の呼吸数をシミュレートする正弦波周期運動に従って周囲空気中に拡散されるように適合させた制御ユニット(60)により拡散装置(1)が制御されている、請求項1~
10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
制御ユニット(60)が、ガス状誘引性混合物の拡散の正弦波周期運動の周波数を変動させるように適合している、請求項
11に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、飛翔害虫捕獲装置並びに捕獲昆虫の計数方法である。
【0002】
本発明は、特にカ亜目双翅目昆虫(吸血昆虫)及び吸血性双翅目昆虫(刺咬昆虫)等の飛翔害虫をおびき寄せ捕獲できる装置の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0003】
特に蚊の存在に悩まされている区域内では、地方自治体、観光局や各個人は、蚊の幼虫(ボウフラ)を駆除するための予防措置実施にかなりの金額を費やしている。
【0004】
実際には、以下のように多様な蚊対策技術が存在している。
-幼虫駆除技術:この技術は、未成熟の段階で蚊に作用しその発生を抑える化学製品又は生物由来製品の利用を伴う。蚊の幼虫は一般に最小限の地理的空間しか占有しておらず容易にその位置を突き止められるため、この技術は蚊の発生を抑えるのには効果的である。しかしながら、この技術は非常に高価である。さらに、幼虫駆除剤の頻繁な使用は使用製品への馴化や耐性という現象を引き起こす可能性がある。
-殺虫剤技術:この技術は、合成化学物質又は天然物質(例えばピレスロイド)を用いて蚊の成虫を撲滅しようとするものである。しかしながら、この技術にはかなりの費用がかかり、重度の補給業務が必要となる(空中又は地上散布)。さらに、殺虫剤に含まれている物質も人間や動物の健康に悪影響を及ぼす可能性がある。他方、その反復使用により、耐性のリスクがもたらされる。
-忌避剤技術:この技術は、合成化学物質又は天然物質(例えばディート(DEET)(N,N-ジエチル-3-メチルベンズアミド)を用いてその場所特定能力を攪乱しながら蚊を潜在的な標的からそらすことを目指している。しかし、この技術は、一般に蚊を殺すのではなく、その摂食対象から撃退するものである。さらに、市場で現在提供されている忌避剤に関しては、長期にわたる毒性についての研究がほとんど行われていない。
【0005】
環境調査から、すべての化学製品はひどく劣化し生態系内に拡散する傾向があることが明らかとなっている。食物連鎖の基盤に影響を与えることで処理区域の動物相にとって有害であるのに加えて、蚊の防除は野生地域しか対処しておらず、その迷惑度が最も大きくウィルス感染増殖のリスクが蚊と関係している都市化地域内には対応していないことが最も深刻である。利用されている化学製品が自然界での蚊の捕食者に到達して根絶させることにより、蚊防除運動の全体的な効果が大幅に低下するという影響を及ぼしている。
【0006】
そのため、生態学的により侵襲性の低い手段の研究を通じた、蚊に感染した地域内にある居住区域の保護に移行しつつある。
【0007】
国際公開第2016/020627号(TECHNO BAM(テクノ・バム))、米国特許出願公開第2009/0162253号明細書(PORCHIA(ポルキア))、米国特許出願公開第2007/0006520号明細書(DURAND(デュラン))、米国特許出願公開第2004/0154213号明細書(MOSHER(モシャー))又は米国特許第5813166号明細書(WIGTON(ウィグトン))により、適切な代替対応策を提供でき、実際のニーズに対応した装置が知られている。これらの装置には、一般に以下のようなものが含まれる。
-ガス状の誘引性混合物を周囲の空気に拡散させ、組成物が昆虫を引き付けるのに適している装置。
-周囲空気流を吸引する開口部を備え、拡散したガス状誘引性混合物により誘引された昆虫を封じ込める吸引装置。
-吸引装置が取り付けられた捕虫器で、前記装置により吸い込まれた昆虫が、前記捕虫器に保持されるもの。
-拡散装置に接続されたガス供給源を備えたフレーム(枠)で、そのガスがガス状誘引性混合物成分であるもの。この種の装置は、殺幼虫剤による蚊駆除の代替手段である。
【0008】
これらの従来技術による装置は、一般的に、限られた数の飛翔害虫種しか捕捉できない。実際、さまざまな飛翔害虫種が、すべて同じ高さで飛んでいるわけではない。ヒトスジシマカ(Aedes alobopictus)、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)、ハマダラカ(Aedes anopheles)といった熱帯蚊等のように地面に非常に近い場所を飛ぶ蚊もあれば、鳥類を好む蚊等のように地面から遠く離れた場所を飛ぶ蚊もある。前述の装置では、吸引装置は一般にガス供給源を収納するフレームに固定されているため、吸引口は床から一定の距離だけ離れた位置に配置されている。したがって、これらの装置を昆虫が地面付近を飛行する場所に設置する場合には、その効果が限られたものとなる。
【0009】
欧州特許出願公開第1049373号明細書(AMERICAN BIOPHYSICS CORP(アメリカン・バイオフィジクス・コーポレーション))では、地面から1~3フィートの間に吸引口を配置して、地面付近を飛行する種を捕獲するよう提案している。フックを使用すると、この装置を高所から吊り下げ、例えば林冠内を飛行する特定の熱帯種等のその他の種を捕獲できるようになる。ただこの装置吸引口の高さ調整は、どちらかと言えば不十分かつ不正確なものであり、ユーザーにとっては不便である。
【0010】
国際公開第2016/168347号(フロリダ大学研究財団)では、昆虫個体群の検出、計数、捕獲、撃退を可能にする昆虫捕獲装置を開示している。この装置には、狭い通路を経て方向性のある力を生成し、所定の方向に昆虫を移動させる収納箱が備わっている。またこの装置には、狭い通路沿いにある昆虫の存在を検出する1つ又は複数の検出器が備わっている。プロセッサにより、昆虫又は蚊の存在の検出に基づき、かご内にある個体群の計数が行われる。計数は、音響センサーと映像センサーを組み合わせた光学センサーにより行われる。したがって、計数には3つの異なる種類のセンサーが必要となり、設計が複雑になり、コストが大幅に増加する。さらに、正確な計数を保証するため、狭い通路を介して昆虫を循環させる必要がある。したがって、最適な計数が必要となる場合には、捕獲する昆虫の数を制限しなければならなくなる。また、計数の正確さは、昆虫捕獲能力を犠牲にしてもたらされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第2016/020627号
【文献】米国特許出願公開第2009/0162253号明細書
【文献】米国特許出願公開第2007/0006520号明細書
【文献】米国特許出願公開第2004/0154213号明細書
【文献】米国特許第5813166号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1049373号明細書
【文献】国際公開第2016/168347号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、先行技術が抱える前述のような欠点を改善することを目的としている。本発明の別の目的とは、最適な捕獲能力を確保しながら捕獲された昆虫を正確に計数できるようにする装置を提案することである。
【0013】
本発明の別の目的とは、設置場所に関係なく効果が最適となる装置を提案することである。
【0014】
本発明の他の目的とは、ユーザーにとって便利であり、設計が簡単で安価であり、使いやすく操作しやすい装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明により提案される解決策とは、飛翔害虫を捕獲するための装置であって、以下を含む。
-組成が昆虫を誘引するよう適合させたガス状誘引性混合物を周囲空気に拡散させる装置
-拡散したガス状誘引性混合物により引き付けられた昆虫を封じ込める周囲空気流吸引口を備えた吸引装置
-吸引装置とともに配置された捕虫器で、前記装置により吸引された昆虫が前記捕虫器内に保持されるようにしたもの
【0016】
本装置は、光学昆虫計数器には、吸引口の向こう側に設置された一連の並列偏向器(デフレクタ)、前記偏向器間の各隙間内に設置されている発光器及び受光器からなる光バリアが備わっているという点で注目に値する。
【0017】
吸引口が複数の検出センサーと繋がるように、発光器・受光器の各対が検出センサーを形成している。したがって、吸引口のサイズや直径に関係なく、各昆虫が検出センサーに送られ、カウントされることが確実になる。そのため、比較的大きなサイズ又は直径220(mm)という吸引口を使用でき、非常に正確な計数を行いながら最大数の昆虫を捕獲することができる。
【0018】
本発明の他の有利な特徴を以下に挙げる。これらの特性のそれぞれは、単独で、又は上記で明らかにした注目すべき特性と組み合わせて考えることができ、該当する場合には、1つ又は複数の分割特許出願の対象となる。
-有利なことに、偏向器は、互いに4mm~9mmの間の距離だけ間隔が空いている。
-有利なことに、発光器は赤外線LEDであり、受光器は光ダイオードである。
-有利なことに、光学昆虫計数器は、吸引口の吸引領域先端部に配置される。
-本発明の有利な特徴によれば、フレームには拡散装置に接続されたガス供給源が搭載されており、そのガスがガス状誘引性混合物となるが、拡散装置、吸引装置及び捕虫器はフレームにつながる構造物を形成しており、吸引口の地面から離れる方向又は近づく方向において前記構造物の高さ調整手段が少なくとも1つある。
-有利なことに、高さ調整手段は、構造物に固定された少なくとも1つの横材という形態であり、その横材は複数の垂直位置でフレームに固定され、吸引口の地面レベルからの遊離又は接近を調整できるようになる。
-代替実施形態によれば、高さ調整手段は、フレームに固定された少なくとも1つの横材という形態であり、この横材は、複数の垂直位置で構造物に固定され、吸引口の地面からの遊離又は接近を調整できるようになる。
-有利なことに、フレーム内に取り付けられたガス供給源と拡散装置の間に流体接続部が設けられ、この流体接続部が、少なくとも1つの横材を通過する。
-電源装置をフレームに取り付けることができ、前記電源装置と構造物の間で電気的接続部が設けられ、この電気的接続部が少なくとも1つの横材を通過する。
-フレームは都市部での街灯の形態とすることができる。
-有利なことに、吸引装置は、開口部(オリフィス)の上流部で前記吸引口の高さに配置された発熱体(240)を備えている。
-この発熱体は、好ましくは、35℃から45℃までの間の温度に加熱される。
-有利なことに、拡散装置は、人間の呼吸数をシミュレート(模倣)した正弦波周期運動に従ってガス状誘引性混合物が周囲空気に拡散されるように適合させた制御ユニットにより制御されている。
-この制御ユニットは、好ましくは、ガス状誘引性混合物拡散の正弦波周期運動の周波数を変動させるのに適合している。
【0019】
本発明の別の態様は、飛翔害虫を数える方法に関するもので、前記方法とは以下のようなものである。
-周囲空気中に、昆虫を誘引するように組成を適合させたガス状誘引性混合物を拡散させる。
-拡散したガス状誘引混合物により引き寄せられた昆虫を封じ込める周囲空気流を吸引口により吸引する。
-吸引された昆虫を捕虫器内に保持する、
-吸引口から吸引された昆虫を光学的にカウントする。
さらに、この方法には、以下のような手順が含まれる。
-吸引口の向こう側に一連の並列偏向器を取り付ける。
-偏向器間の各隙間に、発光器と受光器で構成される光バリアを取り付ける。
【0020】
本発明のその他の利点及び特徴は、参考用及び非限定的な例として作成され、以下に関するものである添付の図面を参照しながら、以下に記載する好ましい実施形態の説明を読むと、より明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】拡散装置を部分的に分解した
図1の装置を示す。
【
図3a】拡散装置を構成する折り畳みプレートの透視図である。
【
図3b】
図3aのプレートを折り畳んで得られる拡散装置の透視図である。
【
図4a】吸引装置を構成する折り畳みプレートの透視図である。
【
図4b】プレートを折り畳んで得られる吸引装置の透視図である。
【
図5a】ガス供給源を収納するフレームを構成する折り畳み式プレートの透視図である。
【
図5b】
図5aのプレートを折り畳んで得られるフレームの透視図である。
【
図6a】光学昆虫計数器に繋がる吸引口の拡大図である。
【
図6b】吸引口の高さでの光学昆虫計数器の配置を上から見た概略図である。
【
図8】代替実施形態による本発明に適合した装置を示す。
【
図9】周囲大気中のガス状誘引性混合物のさまざまな正弦波拡散速度を示す図である。
【
図10】横材の高さでの流体接続部と電気接続部の構成概略を示す。
【
図11】ネットワーク接続された本発明に適合するいくつかの装置を備えた設備を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の対象である装置は、蚊等のカ亜目双翅目昆虫(吸血昆虫)及びブユ等の吸血性双翅目昆虫(刺咬昆虫)の捕獲を目的とする。その原理とは、設置場所での哺乳類の存在と呼吸をシミュレートすることからなる。より一般的には、本発明は、飛翔害虫の捕獲を目的としている。誘引性混合物に引き寄せられた対象昆虫をそのまま吸引し捕獲する。このような方法で捕獲された昆虫は、殺すことも、例えばその後の科学的研究のため生きたまま回収することもできる。
【0023】
図1及び2で、装置Aには以下が含まれる。
-昆虫を誘引するように組成を適合させたガス状誘引性混合物を周囲空気に拡散できるようにした拡散装置1
-拡散装置1により拡散されたガス状誘引性混合物により引き付けられた昆虫を封じ込める周囲空気流の吸引口20を備えた吸引装置2
-吸引装置2とともに配置された捕虫器3で、前記装置により吸引された昆虫が前記捕虫器内で保持されるようにしたもの。
-拡散装置1に接続されたガス供給源を収納したフレーム4で、このガスは、ガス状誘引性混合物の成分である。フレーム4は地面に直接配置され、可動式又は移動可能な形で車輪を取り付けることができる。
【0024】
図2において、拡散装置1には、トレイ11上に固定された中空平行六面体箱10が備わっており、キャップを形成している。例えば、箱10の高さは10cmから20cmまでの間にあり、側面の長さも10cmから20cmまでの間である。箱10のトレイ11上への取り付けは、ユーザーがこれら2つの部品を容易に分離できるようにする磁化により行うのが好ましい。ねじ込み又は歯止めによる取り付けも可能である。トレイ11は、鋼又はプラスチック、特に好ましくはFOAMLITE(登録商標)という商標で市販されている発泡ポリプロピレン型のプラスチック材料でできた正方形の水平平板の形をしている。トレイ11の側面は、箱10の側面よりも大きな寸法を有する。例えば、トレイ11の側面は、箱10の側面の長さの2倍である。
【0025】
図3a及び3bでは、箱10は、側板100a、100b、100c、100dで構成されたプレート100から作られており、屈曲部101により相互に接続され、その容量が形成される。箱10形状の維持は、100aと100dの端部パネルの側端を接着、溶接、又は連動させて固定することにより確実になる。容量(ボリューム)が形成された後、蓋110により箱10の上部が閉じるようになる。蓋110は、有利な点として、箱10の内部に簡単に到達できるように取り外し可能となっている。
【0026】
このようなプレート100を使用すると、特に次のようないくつかの利点が生じる-特定のツールを必要としないシンプルな容量形成、容量を形成する前の輸送及び/又は保管の段階では特にかなり縮小されたサイズ。
【0027】
プレート100及び蓋110は、好ましくは商標FOAMLITE(登録商標)で市販されている発泡ポリプロピレン型のプラスチック材料でできている。この材料は実際、軽量であることに加えて、優れた機械的耐性と優れた化学的侵襲への耐性を備えている。
【0028】
プレート100の各パネル100a~100dには、その内面(つまりその容積形成後箱10の内側にある面)に長手方向の溝102があり、その内部では、その他の種類の固定手段なしで、前項で説明した支持プレートの縁が収容されている。
【0029】
容量を形成し蓋110により閉じると、箱10により中空室15が定まり、その内部にガス状誘引性混合物を分配できるようにする部品が取り付けられる。後者は、好ましくは、CO2と揮発性芳香擬餌の混合物である。CO2は、温血哺乳類の呼吸により生成されるものと類似の神経刺激を昆虫に対し誘発する。有利なことに、使用する芳香性擬餌は、人間の皮膚の匂いを再現する。例えば、オクテノール(C8H16O)、特に1-オクテン-3-オール(CAS ♯ 3391-86-4)及び/又は乳酸が使用され、これらの化合物は良好な結果をもたらす。これらの化合物により、ミツバチ等の無害な飛翔昆虫の誘引も避けられる。
【0030】
より具体的に
図7を参照すると、芳香性擬餌は着脱式カートリッジ9内に配置され、そのカートリッジはファン(送風機)6の上にある中空室15に配置されている。カートリッジ9は、前述の縦溝102に収まる支持プレート90の上面に取り付けられている。ファン6は、この支持プレート90の下側に取り付けられている。したがって、後者により、中空室15が次の2つの領域に分割される。つまり、カートリッジ9が設置される上部領域とファン6が設置される下部領域である。プレート90には、中空室15の下部領域から上部領域への空気循環を可能にする開口部又は設備がある。
【0031】
芳香性擬餌は、ファン6により、中空室15内で生成された空気流Fb内に配置されている擬餌ホルダー内に有利に含まれるか含浸される。この擬餌ホルダーは、好ましくは、(i)ろうそく、(ii)毛細管効果を利用した木製球体等の多孔性支持体、(iii)ゲル状支持体、(iv)多かれ少なかれ海綿状である吸収材料からなるパッドの中から選択される。擬餌ホルダーが多孔質で、芳香性擬餌を液体状態で使用すると、良い結果が得られる。
【0032】
図7では、フレーム4にCO
2供給源41が収納されている。これは、例えば、再充填可能な加圧シリンダーの形態であり、その含有量は、例えば0.5Kgから50Kgまでの間である。可撓性配管42は、シリンダー41と中空室15、より具体的には、ファン6が収納される前記中空室の下部領域を流体で連通させる。CO
2は、実際には、ファン6により吸い込まれた空気流及びカートリッジ9に入った揮発性芳香擬餌と混ざり合う。流量計43は、中空室15に注入されるCO
2の流量を調整するのに使用される。この流量が0.15L/分から0.5L/分の間にあるならば、非常に良好な結果が得られる。本発明の有利な特徴によれば、CO
2は、中空室内で連続的に拡散される。ファン6が作動していないときでも、CO
2は、前記ファンのブレードを通過することでタンク51内に拡散する。シリンダー41は、前記シリンダーが空であるときにオペレータに警告できるセンサーと組み合わせることができる。
【0033】
このシリンダーの温度が周囲空気の温度よりも高い場合、昆虫はCO2により引き付けられる。したがって、その拡散前に、CO2を前もって加熱することが有利となりうる。この加熱は、中空室15を加熱する太陽の入射光線により自然に誘発できる。この自然現象を増幅するため、中空室15は、熱を蓄え、それを流れFbしたがってCO2に戻すのに適している耐火材料(鋼板、溶岩等)により形成されるか、それらを格納することができる。
【0034】
ファン6により生成されCO2が充填された空気流Fbが通過すると、カートリッジ9に含まれる芳香擬餌が気化する。しかしながら、その擬餌は、ファン6により生成された空気流がない場合でも、中空室15内で連続的に拡散する。これは、基本的には、中空室15が太陽からの入射光線により加熱されるという事実によるものであり、箱10の内部で優勢な温度により、前記中空室内の芳香擬餌の継続的な気化が引き起こされる。カートリッジ9が空になったとき、蓋110を取り外して除去し、別のものと交換するだけで十分である。カートリッジ9は、空のときにオペレータに警告できるセンサーと組み合わせることができる。
【0035】
ファン6は、有利なことに、10m
3/H~300m
3/H、好ましくは約150m
3/Hの流量で流れFbを吐き出すように適合している。これにより、中空室15の下部領域内にあるプレート90の下で、プレート100のパネル100a~100d(
図3a、3b及び7)に作られた開口部130から周囲空気が吸い込まれる。ファン6により吸引された空気流は中空室15の上部領域内で跳ね返され、そこからプレート90の上方にあるプレート100のパネル100a~100d(
図3a、3b及び7)に形成された開口部140から外に出る。開口部130及び140は、周囲空気に向かって開口するが、箱10の周囲に均一に配置されることもないこともある。したがって、ガス状誘引性混合物は、約10,000m
2の面積に対応する約50mから60mまでなど、特に動作半径にわたって広範囲に広がることができる。
【0036】
実際には、ファン6には、バッテリーから電力の兆候を引き出してブレードを回転させ、それにより流れFbを生成するモーターが備わっている。ファン6は、例えばプロセッサ及び/又はタイマーを組み込んだ電子カードの形態である制御ユニット60(
図7)により制御される。
【0037】
本発明者らは、ガス状誘引性混合物が人間の呼吸数をシミュレートする正弦波周期運動で周囲の空気中に拡散すると、閉じ込められる昆虫の数が増加することを発見した。また、制御ユニット60は、それにより生成される流れFbがこの正弦波周期運動に従うようにファン6を駆動するように設定されている。スポーツ活動に関連する呼吸数の増加又は休息期間中の減少をシミュレートするため、ガス状誘引性混合物拡散の正弦波周期運動の周波数(単位時間あたりのサイクル数又は期間数)を1日の間に変化させる。この周波数は、好ましくは毎分10サイクルから毎分70サイクルの間である。
【0038】
図9は、ガス状誘引性混合物の周囲大気中への拡散の異なる正弦波速度を示す図である。横軸は時間(t)に相当し、縦軸は箱10から出た流れFbの流量(Q
Fb)に相当する。3つのシーケンスR1、R2、R3を示す。R1シーケンスは、成人の呼吸数をシミュレートしており、例えば毎分20~40サイクルである。R2シーケンスは、安静時における成人の呼吸数をシミュレートしており、例えば毎分10~20サイクルである。R3シーケンスは、スポーツ活動期間中における成人の呼吸数をシミュレートしており、例えば1分あたり40~60サイクルである。この
図9では、振幅は各シーケンスで同じである。ただし、シーケンスによって、又は同じシーケンス中にも異なる場合がある。
【0039】
ここで、吸引装置2及び捕虫器3についてより詳細に説明する。
図1及び
図2では、吸引装置2は拡散装置1の下に配置されている。
図4a及び
図4bを参照すると、吸引装置2は、中空の平行六面体の箱20を備えており、例えば、高さは30cmから60cm、側面の長さは10cmから20cmの間である。
図4a及び4bでは、箱20は、その容積を形成できる屈曲部201により相互に結ばれた側板200a、200b、200c、200dを備えたプレート200に適合している。箱20の形状維持は、接着、溶接、又は端部パネル200a及び200dの側縁の嵌合を通じた固定により確実になる。プレート200は、その容積形成後に箱20の上部を閉じるようになる蓋210とも繋がっている。この蓋210は、吸引口を形成する円形の開口部220を有し、その直径は、例えば8cmと18cmの間であり、この直径範囲により、一度に多数の昆虫を捕獲できるようになる。
【0040】
プレート200は、好ましくは発泡ポリプロピレン型のプラスチック材料でできており、好ましくはFOAMLITE(登録商標)で市販されているものである。このようなプレート200の使用は、プレート100を参照しながら上述したものと比べ、重量、組み立ての容易さ及びサイズ縮小という点で同じ利点を有する。
【0041】
容積が形成されると、箱20により、内部に捕虫器3が取り付けられた中空室25が定まる。
図1及び2では、有利なことに、閉位置(
図1)と開位置(
図2)の間で可動式にて取り付けられた落とし穴及び/又はドア250が備えられ、中空室25の内部への到達が可能になる。添付の図では、このドア250は、垂直方向に並進する可動式で取り付けられている。ただし、ヒンジを中心に回転運動する可能性がある。
【0042】
図7を参照すると、吸引口220は、この捕虫器3に通じており、その捕虫器は、柔軟性のあるメッシュバッグ又はネットの形態である。これは、例えば、吸引口220の高さでひも又はクランプにより取り付けられる。このネット3は、有利な点として再利用可能であり、ドア250から回収及び交換することができる。ネット3は、その充填度合いを表示することができるセンサーに繋ぐことができる。
【0043】
図7では、吸引装置2は、好ましくはファンの形態を取る吸引手段23を備えている。この吸引手段23は、15m
3/H~500m
3/H、好ましくは約350m
3/Hの流量で周囲空気を吸引するのに適している。流れFa及びFbの流量は、有利なことに異なっている。実際、本発明者らは、排気Fa流量が吸気Fb流量よりも大きい場合に、より多くの昆虫が捕獲されていることを観察した。
【0044】
ファン23により、箱20内に真空が生成され、ネット3により吸引口220を介して周囲空気が吸引される。吸引された周囲空気流を、
図7においてFaで示される矢印で図式的に示している。実際には、ファン23には、バッテリーから電力信号を引き出してブレードを回転させ、それにより流れFaを生成するモーターが装備されている。ファン23は制御ユニット230に連結しており、その動作を制御できる。
【0045】
図1、2及び7において、拡散装置1は、吸引装置2及び捕虫器3の上に配置される。トレイ11にはいくつかの機能がある。つまり、悪天候から吸引口220を保護し、特に箱20と捕虫器3の内部に浸透する雨水を防ぐ。また、これにより、ガス状誘引性混合物で充填された排気流Fbが、吸引空気流Faに巻き込まれるのを防ぐ物理的障壁が形成される。
【0046】
図6a及び
図6bに示す本発明の有利な特徴によれば、吸引装置2には、吸引口220の高さに配置された光学昆虫計数器が備わっている。この計数器には、吸引口220の向こう側に取り付けられた並列偏向器30一式が備わっている。これらの偏向器30は、例えば、鋼又はプラスチックでできている。
【0047】
偏向器30の間にある各隙間(又は2つの連続する偏向器を隔てるスペース又は偏向器のいずれかの側に配置されたスペース)には、発光器31と受光器32で構成される光バリアが取り付けられている。発光器31は隙間の一端に配置され、受光器32は反対側、すなわち前記隙間の他端に配置される。発光器31と受光器32を同じ端に設置するように装備することもでき、反射器(例えばミラー)を他端に配置して、発光器から放射された光を受光器に向けて反射する。発光器31-受光器32の各対が検出センサーを形成し、その結果、吸引口220は、複数の検出センサーと繋がっている。
【0048】
設計を簡素化し、計数器のエネルギー消費量を制限するため、発光器31は、好ましくは赤外線LEDである。そして、受光器32は、好ましくは光ダイオードである。したがって、吸引口220は、一連の光バリアにより「遮断」される。偏向器30の機能は、昆虫をこれらの光バリアに向けて分配し、導くことである。したがって、吸引口220のサイズ又は直径に関係なく、各昆虫が検出センサーに向けられ、カウントされることが確かなものとなる。そのため、非常に正確な計数を維持しながら、比較的大きなサイズ又は直径の吸引口220を使用して、最大数の昆虫を捕獲できるようになる。
【0049】
昆虫が発光器31と受光器32の間を通過するとき、後者は発光しない。これは非導電状態にある。光バリアを遮断する昆虫が存在しない場合には、受光器32は発光器31により直接照らされ、導電状態にある。これらの2つの状態は、光バリアを遮断して昆虫の数を数えられるようにする2つのバイナリ状態0又は1によりマイクロコントローラーで解釈される。
【0050】
好ましくは、偏向器30は、4mmから9mmの間の距離だけ互いに離れている。この間隔により、偏向器30の間にある各隙間が光バリアにより完全に掃引されることが確実となり、その結果、前記偏向器の間を通過する各昆虫が検出される。
【0051】
計数器は、有利な点として、吸引領域の先端部で吸引口220のできるだけ近くに配置される。実際、この場所で昆虫の落下距離と吸引距離が最小限に抑えられているため、光バリアの前を通過する速度が遅くなり、計数がより正確になる。またこの性能により、受光器32の感度を過度に増加させないようになり、それにより、吸引装置2により吸引されやすい他の粒子(例えばほこり)の計数が回避される。
【0052】
図5a及び5bを参照すると、フレーム4は、例えば、高さが60cmから150cmの間であり、側面の長さが20cmから40cmの間である中空平行六面体の箱40を備えている。箱40は、屈曲部401により相互に接続されている側板400a、400b、400c、400dを含むプレート400から形成され、その容積が形成できるようになる。箱40は、接着、溶接、又は端部パネル400a及び400dの側縁を連結して固定することにより、その形状維持が確実になる。箱40は、上部が蓋410により閉じており、下部が底板411により閉じている。蓋410は、有利な点として着脱式となっており、箱40の内部には容易に到達できるようになっている。
【0053】
容積が形成されると、箱40により中空室45が定まり、その内部には、ガス供給源41と、装置Aのさまざまな構成部品に電気を供給するのに適した、例えばバッテリー型の電源装置46、特にさまざまな電気部品60、230、30及びアクチュエータ6、23が取り付けられている。バッテリー46を1つ又は複数のソーラーパネル及び/又は風力タービンに連結し、装置Aを自律的にすることができる。バッテリー46は、電源変圧器型の電源装置に接続するだけで再充電することもできる。一般に、電源装置46は、昆虫があまり活動していない期間、例えば、真夜中から午前4時までの間、装置Aを停止するように調整したタイマーセットに連結することができる。
【0054】
図8に示す代替実施形態では、フレーム4は、都市部での街灯の形態である。この場合、ガス供給源41は、街灯構造物の内部に直接組み込まれる。電力供給源は、街灯構造物及び/又は配電網に統合されたバッテリー及び/又は前記街灯構造物上に設置された光起電性パネルP及び/又は風力タービンで構成することができる。装置Aは、例えば、配電網のおかげで照明期間中、及びバッテリーのおかげでそうした照明期間以外で作動することができ、後者は、照明期間中における充電に適合している。
【0055】
次に、装置Aの動作及び捕獲技術について、さらに詳細に説明する。ガス状誘引性混合物の全部又は一部が中空室15内に分配される。次に、
図9を参照しながらすでに説明したように、このガス状誘引性混合物は、正弦波周期運動に従って周囲空気に放出される。カートリッジ9に含まれる芳香性擬餌、好ましくはCO
2が、中空室15の内部に連続的に分配される。したがって、後者には、ガス状誘引性混合物が充填される。本発明者らは、0.03ml/日と0.3ml/日の間にある方向性擬餌排出速度が誘引性混合物の誘引特性の改善に寄与することを実証できた。ファン6が作動すると、CO
2が充填された生成空気流Fbは、中空室15の上部領域内で濃縮芳香性擬餌と密に混合し、ガス状誘引性混合物が開口部140を介して前記中空室から排出される。
【0056】
発明者らは、驚くべきことに、正弦波の周期運動に従って完全に均質化されて放出されたこの混合物の誘引特性が、前述の各特許出願書に記載されている技術に従って、特に連続的な周期運動に従って分配された誘引性混合物と比較して著しく改善されているのを観察できた。これらの呼気の正弦波周期運動により、すべての双翅目昆虫用センサーが最適に励起されたため、吸血昆虫も同様に捕獲することができる。この刺激に引き寄せられた昆虫は、本能的に誘引性混合物が最大濃度の領域、つまり中空室15に到達しようとする。
【0057】
誘引性混合物供給源の近くに到達すると、昆虫は中空室15に向かって移動する。ファン23は、吸引口220の高さで連続的な窪みを生み出し、空気流Faを生成する。昆虫が中空室15に到達しようとして吸引口220付近を飛行する際、空気流Faに吸い込まれ、次いで捕虫器3内に保持される。
【0058】
発明者らは、熱帯蚊等の特定の刺咬昆虫が吸込口220に向かう進路を完成させるのが困難な場合があることも発見した。また、これらの昆虫の誘引をさらに向上させるため、吸引装置2には、有利な点として、吸引口220の高さに配置された発熱体が備わっており、この発熱体により体温がシミュレートされる。
図7では、発熱体240は、その上流部吸引口220の上に配置されている。この発熱体240は、加熱電気抵抗の形態とすることもできる。この抵抗体は、好ましくは、35℃~45℃の温度に加熱される。この加熱点のおかげで、刺咬昆虫或いはバイターにより、その刺し傷や咬み傷を促進させることができるシミュレートされた身体領域を視覚化することができる。次いで、昆虫は、流れFaの吸引量がその飛行能力よりも大きくなる、帰還不能な領域に案内され、その結果、そうした昆虫は開口部220を経て吸引され、捕捉される。
【0059】
添付の図に示すとおり、拡散装置1、吸引装置2及び捕虫器3は、フレーム4に接合された構造物Sを形成する。この構造物Sは、フレーム4から隔たっており、そのフレームから横方向に離れている。
【0060】
構造物Sとフレーム4との接続は、前記構造物の高さを、吸引口220の地面レベルからの分離又はそれへの接近という方向に調整するための少なくとも1つの手段により形成されている。この高さ調整の可能性により、ユーザーは、予め特定した一つ又は複数の捕獲対象飛翔害虫の種類に応じて、装置Aの構成を調整することができる。したがって、ユーザーは、識別した処理対象種が地面の近くを飛行するか、地面から離れて飛行するかに応じて、吸引口220の高さを最適に調整することができ、捕獲という観点から実際に装置の効果が改善されている。換言すれば、ユーザーが装置を処理対象区域内に設置し、捕獲対象である一又は複数の飛翔害虫種を決定した場合、ユーザーはその構造物Sの高さを調整するだけで済む。処理対象種が地面付近を飛行する場合、吸引口220の地面レベルに近づく方向に調整を行う。逆に、処理対象種が地面から離れて飛ぶ場合、吸引口220の地面から離れる方向に調整を行う。したがって、本装置は、どのような地理的区域内でも、また捕獲対象の飛翔害虫種が何であろうとも、最適に機能する限り、汎用的であるとみなすことができる。
【0061】
地面と吸引口220との距離「D」が40cmから1mまで変化するとき、大半の有害な飛行昆虫種を処理できる良好な結果が得られる。次のような3つの異なる高さ調整位置を提供することによっても、満足のいく結果が得られる。つまり、「D」が約50cmに等しい低位置、「D」が約65cmに等しい中間位置、そして「D」が約80cmに等しい高位置である。このモジュール性は、地面近くを飛行し、その下半身部位で獲物に噛み付こうとするヒトスジシマカ(Aedes alobopictus)、ネッタイシマカ(A. aegypti)、ハマダラカ(A. anopheles)といった種等の熱帯の蚊には特に効果的である。
【0062】
特に
図1、2、7に示す第1の実施形態によれば、高さ調整手段は、構造物Sに、より詳細には箱20に取り付けられた少なくとも1つ、好ましくは2つの横材5の形態である。この実施形態では、横材5と箱20の間で相対運動は生じない。
【0063】
横材5は、水平に、又は換言すれば箱20及び40の壁に垂直に配置された並列剛性形鋼という形態である。その断面は、正方形、長方形、円形、楕円形、又はその他となる可能性があり、有利な点として鋼又はプラスチックでできている。その長さは、例えば10cmから30cmの間であり、構造物Sは、この同じ長さだけフレーム4から明確に離れている。各横材5は、押し出し、成形又は機械加工により得られる一体型とすることも、前記横材の中央面に沿って一緒に組み立てた2つの部品で製造することもできる。横材5は、ねじ、ボルト締め、スナップ、又はフランジにより、横材の遠位端で箱20の壁面に取り付けられる。
【0064】
各横材5は、複数の垂直位置でフレーム4に接合され、吸引口220の地面レベルからの遊離又は接近を調整できるようになる。これらの異なる垂直位置は、フレーム4を形成する箱40の少なくとも1つの壁面に作られた凹部又は窪み50により実現する。これらの凹部又は窪み50は、好ましくは、貫通しており、横材5の断面に対応する断面を有する。したがって、横材5の近位端は、凹部又は窪み50に嵌合することで収納されるようになる。横材5の凹部又は窪み50内の所定位置での維持は、前記横材の近位端を箱40の壁面にねじ込む、ボルト締めする又はスナップ留めするという解決策により確保することができる。
【0065】
凹部又は窪み50は、柱状に配置され、添付の図では4つある。しかしながら、その数は、使用される横材5の数及び/又は所望の高さ調整に応じて、2個から10個まで変化しうる。
【0066】
代替実施形態では、高さは構造物Sのレベルで調整される。ここで、横材5は、前記横材と前記箱の間での相対的なずれなしに、フレーム4、より具体的には箱40に取り付けられる。各横材5は、複数の垂直位置で構造物Sに接合され、吸引口220の地面レベルからの遊離又は近接を調整することができるようになる。したがって、上述の凹部又は窪み50は、吸引装置2を形成する箱20の少なくとも1つの壁面内に作られ、その結果、横材5の遠位端は、選択した高さ調整位置に応じて前記凹部の1つに嵌合することで収納されるようになる。
【0067】
本発明の有利な特徴によれば、ガス供給源41と拡散装置1の間にある流体接続部は、少なくとも1つの横材5を通過する。同様に、電源装置42と構造物Sの間にある電気接続部は、少なくとも1つの横材5を通過する。流体接続部及び電気接続部は、同じ横材5を通過することも、別個の横材を通過することもできる。
【0068】
したがって、横材5により、これらの接続部は物理的に保護される。さらに、横材5がこれらの接続部の支持体として機能するという事実により、特に誘引・吸引部分(構造物S)から技術的部分(フレーム4)へのガスと電気の接続及び供給等、吸引口220の高さを調整するときに装置Aのモジュール性が容易になる。
【0069】
設計を簡素化するため、横材5は、その両端に中空ダクト開口部を備え、その中に流体・電気接続部が収納されている。より具体的には、それらの遠位端は箱20の中空室25内に開口し、それらの近位端は箱40の中空室45内に開口している。
【0070】
図7において、シリンダー41に接続された配管42は、横材5の内側を通って箱20の中空室25内に入り、拡散装置1の中空室15の下部領域内に通じている。バッテリー46に接続された電気ケーブル460は、同じ横材5内を通り中空室25に通じており、構造物S内に収納されている各種電子部品60、230、30及びアクチュエータ6、23に電力を供給できる。そのため、フレーム4と構造物Sの間にある流体・電気接続部は非常に単純かつ完全に安全な方法で形成され、これらは完全に保護され到達不可能になっている。
【0071】
ユーザーが構造物Sの高さを変更する場合には、横材5を凹部又は窪み50から外して他の凹部又は窪みに再配置する必要がある。この操作を容易にするため、配管42及び電気ケーブル460に着脱式コネクタを設けるのが有利であると思われる。
図10を参照すると、配管42には、迅速接合型の着脱式コネクタ420と、雄雌プラグ型着脱式電気コネクタ4600の電気ケーブル460が設けられている。これらのコネクタ420、4600は、横材5の近位端に配置され、フレーム4の中空室45の内側から到達できる。
【0072】
そのため、横材5の位置を変更するには、ユーザーは次のようなことを行うだけでよい。つまり、コネクタ420、4600を切り離す。横材5を取り付けられている凹部また窪みから外す。横材5を別の凹部又は窪みに再配置する。そして最後に、コネクタ420、4600を再接続する。
【0073】
図1及び
図2では、拡散装置1は、スペーサ12により吸引口220から一定の距離に保たれている。このスペーサは、好ましくは長さが例えば2cmから15cmまでの間である中空管で構成されており、一方では箱20の蓋210上に、他方では吸引口220の周りでトレイ11に取り付けられている。ガス及び電気を拡散装置1に供給する場合、
図7では、配管42と電気ケーブル460がこれらのスペーサ12を通過しているため、箱20と拡散装置1の間での流体・電気接続部が完全に保護され、到達できなくなることが認められる。
【0074】
これらの装置Aを慎重に選択された場所に複数配置することにより、小さな都市コミュニティ又は公共空地の周りに保護地帯を形成でき、対象となっている害虫による不快感からそうした区域を保護できる。もちろん、CO2の供給は、各装置Aに固有のものでも、複数の装置に共通のものでも差し支えない。
【0075】
装置A(又は各装置)には、有利なことに、その自律的な又はプログラム化された動作を保証するように適合させた電子カードが備わっている。この電子カードにより、例えば次のようなことを行える。
-装置A(又は各装置)の動作範囲を制御する。
-及び/又は装置への電力供給をバッテリー46と配電網の間で切り替える。
-及び/又は装置Aが配置されている環境に関連する大気データを含む電子信号を受信する。この電子信号を処理する。そして、電子信号に飛翔害虫の捕獲には好ましくない大気データが含まれている場合、装置Aの動作の中断を命令する。問題のある大気データとして、外気温、屋外湿度、気圧、風速等が挙げられる。これらのデータは、装置Aの外部に配置されたセンサーから直接取得することも、地方又は地域の気象台から取得することもできる。
-及び/又は装置Aが相互に通信できるようにする。このため、
図11を参照すると、複数の装置A1、A2、A3がネットワークで接続されており、互いに通信するのに適合している場合、装置のうちの1つであるA1を親機とみなし、他の装置を子機とみなすのが有利である。親機A1は、子機A2、A3から情報及び/又はデータを収集し、それらをリモートサーバーSer.に伝達する。Lora(登録商標)型の通信ソリューションは、好ましくは、装置A1、A2、A3間の内部対話を容易にするように使用する。親機A1とリモートサーバーSer.の間での通信は、WIFI、3G、又は他の種類のワイヤレス通信手段を使用して実行される。このトポロジ(位相幾何学)は、インストールに必要なネットワークポイントの数を単一の親機A1に制限しているため、ネットワーク範囲が不十分な地域で特に役立つ。
-及び/又は例えばWIFI、3G又はその他の種類の無線通信手段を用いて、リモートで装置Aの操作を管理する。
-及び/又は起こりうる誤動作の迅速な管理を目的として、装置Aからリモートサーバーに誤動作メッセージを送信する。
【0076】
上述の実施形態における本発明のさまざまな要素及び/又は手段及び/又は手順の配置は、すべての実施においてそのような配置を必要とするものと理解されるべきではない。いずれにしても、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、これらの要素及び/又は手段及び/又は手順にさまざまな変更を加えることができることが理解されよう。特に、
-箱10、20、40は必ずしも平行六面体形状である必要はなく、多角形、円筒形等の形状にすることができる。
-吸引口220は、円形、楕円形、長方形、正方形等となりうる。
-フレーム4は必ずしも平行六面体又は円筒形である必要はない。当業者に適した任意のその他の形状となりうる。
-吸引手段23は、真空ポンプの形態とすることができる。
-流れFbを生成する手段6は、機械的に作動する送風機の形態、又はポンプの形態となりうる。
-例えばファン6の動作と同じ周期運動に従うなど中空室15内の正弦波周期運動に従って、CO2を拡散させることができる。
-ガス状誘引性混合物を構成するCO2を、当業者に適したその他のガスに代替することができる。
-芳香性擬餌は、ガス形状で利用できる。
-中空室5の内部及び必要に応じて含有耐火材料を加熱するのに、電気抵抗を設けることができる。
-昆虫計数は、偏向器30の間に設置された他の検出器、例えば通過する昆虫が発する赤外線を前記偏向器の間で検出するよう適合している受動赤外線センサー(又は英語でのPIRセンサー)により保証することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 拡散装置
2 吸引装置
3 捕虫器
4 フレーム
5 横材
6 ファン
9 カートリッジ
10、20、40 箱
11 トレイ
12 スペーサ
15、25、45 中空室
30 偏向器
31 発光器
32 受光器
60 制御ユニット
100、200、400 プレート
101、201、401 屈曲部
110、210、410 蓋
220 吸引口
230 制御ユニット
240 発熱体
420、4600 コネクタ
460 電気ケーブル
A 装置
S 構造物