IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立アプライアンス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-加熱調理器 図1
  • 特許-加熱調理器 図2
  • 特許-加熱調理器 図3
  • 特許-加熱調理器 図4
  • 特許-加熱調理器 図5
  • 特許-加熱調理器 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   F24C 15/00 20060101AFI20230719BHJP
   F24C 7/04 20210101ALI20230719BHJP
   F24C 15/10 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
F24C15/00 B
F24C7/04 A
F24C15/10 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021044469
(22)【出願日】2021-03-18
(65)【公開番号】P2022143775
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】福岡 万由子
(72)【発明者】
【氏名】和田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】関 真人
(72)【発明者】
【氏名】本間 満
【審査官】石川 輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-237465(JP,A)
【文献】特開2012-247073(JP,A)
【文献】特開昭63-178490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 15/00-15/36
F24C 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理物を収納する調理庫と、
該調理庫の前面開口を開閉するドアと、
前記調理庫の底面の下面に接触配置した下ヒーターと、
を具備した加熱調理器であって、
前記調理庫の底面の上面には、畝状の凸部と、該凸部より低い凹部が設けられており、
該凹部の下面と前記下ヒーターが接触しており、
前記下ヒーターは、平面ヒーターであり、
前記凸部の下面と前記平面ヒーターの間に密閉空間が形成されていることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
被調理物を収納する調理庫と、
該調理庫の前面開口を開閉するドアと、
前記調理庫の底面の下面に接触配置した下ヒーターと、
を具備した加熱調理器であって、
前記調理庫の底面の上面には、畝状の凸部と、該凸部より低い凹部が設けられており、
該凹部の下面と前記下ヒーターが接触しており、
前記下ヒーターは、平面ヒーターであり、
前記平面ヒーターの下方を弾性体の断熱部材で覆い、
該断熱部材の下方を剛体の抑え部材で覆い、
該抑え部材を前記調理庫の底面に固定することで、前記下ヒーターを前記調理庫の底面に押し付けることを特徴とする加熱調理器。
【請求項3】
請求項2に記載の加熱調理器において、
前記平面ヒーターには、前記抑え部材を前記調理庫の底面に固定するためのネジを通す切り欠き部を設けたことを特徴とする加熱調理器。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の加熱調理器において、
前記平面ヒーターは、電熱線を耐熱絶縁薄板で挟んだ平面ヒーターであることを特徴とする加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリルユニットを内蔵した加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の誘導加熱調理器(IHクッキングヒーター)には、焼き魚等の調理時に使用するグリルユニットを内蔵したものがある。グリルユニットを使用して焼き魚等を調理すると、油煙等で調理庫内が汚れるため、調理庫内を適時清掃する必要がある。調理庫内の清掃性を高めるため、近年では、調理庫の底面を平坦にし、平坦な底面の下方に下ヒーターを配置することで、下ヒーターへの油煙等の付着を防ぎ、かつ、調理庫底面を清掃し易くした加熱調理器が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1の段落0038には、「加熱調理器1内には、調理室3の底面より下方に位置するヒーター6が備えられており、ヒーター6の熱により、調理室3の底面が加熱され、さらに調理室3の底面からの熱伝導および輻射熱により受け皿4が加熱され、そこからの熱伝導により調理物2が加熱される構成となっている。」との説明があり、また、同文献の図14には、調理室底面の下面に平面ヒーターを接触させた加熱調理器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-220146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の図14の加熱調理器のように、調理室底面の下面に平面ヒーターを接触させた構造にすれば、平面ヒーターの熱を効率よく調理室底面に伝達できるため、受け皿への熱伝導と輻射熱の効率を高めることができる。
【0006】
しかしながら、平面ヒーターの発熱量をより大きくしたい場合には、より高温となった調理室底面が熱応力で変形し、調理室底面と平面ヒーターの密着性が悪化する虞がある。調理室底面と平面ヒーターの間に隙間が生じると、隙間の近傍では平面ヒーターから調理室への熱伝導の効率が劣化し、調理室から受け皿への熱輻射の効率も劣化する。そして、このような熱伝導効率や熱輻射効率の劣化が発生すると、平面ヒーターの発熱量をより大きくしても、調理を適切に実行できない可能性があった。
【0007】
そこで、本発明では、調理庫底面と下ヒーターを接触させたグリルユニット構造を採用する場合、調理庫底面の熱変形を抑制することで、調理庫底面と平面ヒータの密着性を維持し、下ヒーターから調理庫底面への熱伝導効率、および、調理庫底面から調理容器への輻射熱効率の劣化を抑制することができる加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の加熱調理器は、被調理物を収納する調理庫と、該調理庫の前面開口を開閉するドアと、前記調理庫の底面の下面に接触配置した下ヒーターと、を具備し、前記調理庫の底面の上面には、畝状の凸部と、該凸部より低い凹部が設けられており、該凹部の下面と前記下ヒーターが接触しているものとした。
【発明の効果】
【0009】
本発明の加熱調理器によれば、調理庫底面と下ヒーターを接触させたグリルユニット構造を採用する場合、調理庫底面の熱変形を抑制し、することで、調理庫底面と平面ヒータの密着性を維持し、下ヒーターから調理庫底面への熱伝導効率、および、調理庫底面から調理容器への輻射熱効率の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施例の加熱調理器をシステムキッチンに組み込んだ状態を示す外観斜視図。
図2】一実施例のグリルユニットの外観斜視図。
図3】一実施例のグリルユニットの縦断面図。
図4】一実施例のグリルユニットの調理庫底面を上面視した平面図。
図5図4の調理庫底面の図示を省略した透視平面図。
図6図4の調理庫底面への凹凸形成方法を説明するための拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1から図6を用いて、本発明の一実施例に係る加熱調理器を説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施例に係る加熱調理器10を、システムキッチンに組み込んだ状態を示す外観斜視図である。なお、図1に例示する加熱調理器10は、ビルトイン型のIHクッキングヒーターであるが、据え置き型のIHクッキングヒーターに本発明を適用しても良い。
【0013】
<加熱調理器10>
本実施例の加熱調理器10は、本体11の左前面に、焼き魚等の調理時に使用するグリルユニット20を備えている。また、本体11の上面には、耐熱性の高い素材、例えば、結晶化ガラスなどのトッププレート12が載置されている。トッププレート12の上面には、複数の鍋載置部13(13a、13b、13c)が設けられ、金属鍋等の被加熱物の載置場所を表示している。鍋載置部13の夫々の下方には、加熱コイル14(14a、14b、14c)が設けられている。これらの加熱コイル14は、インバータ回路からの高周波電流を印加して高周波磁界を発生させ、鍋載置部13に載置された金属鍋等を誘導加熱する。トッププレート12の上面手前側には、主に加熱コイル14を制御するための上面操作部15が設けられている。本体11の前面右側には、主にグリルユニット20を制御するための前面操作部16が設けられている。
【0014】
<グリルユニット20>
図2は、グリルユニット20の構成を説明するための外観斜視図である。ここでは、構成を分かりやすく説明するため、グリルユニット20の前面のドア21を取り外し、さらに、内部構造物を引き出した状態を図示している。ここに示すように、グリルユニット20は、前方が開口した箱状の調理庫22と、魚、肉、ピザなどの食材(被調理物)を載せる深皿状のグリルパン23と、グリルパン23を載置する網状のグリルパンホルダ24と、グリルパンホルダ24を手前側に引き出したり調理庫22内に戻したりするためのレール25を有している。なお、このレール25の手前側には、調理庫22の前面開口22aを塞ぐためのドア21(図1参照)が取り付けられる。
【0015】
図3は、ドア21を取り外し、レール25を収納した状態の、グリルユニット20の縦断面図である。ここに示すように、本実施例のグリルユニット20には、グリルパン23を加熱するヒーターとして、調理庫22の天面22bの上面側に上平面ヒーター26aを設け、底面22cの下面側に下平面ヒーター26bを設けている。これらのヒーターは、例えば、ニクロム線等の電熱線をマイカ等の耐熱絶縁薄板で挟んだ厚さ1mm程度の平面ヒーターである。
【0016】
また、上平面ヒーター26aの上面を弾性のある上断熱マット27a(例えば、厚さ5mm程度のガラス繊維塊)で覆い、下平面ヒーター26bの下面を弾性のある下断熱マット27b(例えば、厚さ5mm程度のガラス繊維塊)で覆っている。これにより、上平面ヒーター26aの熱が上方に漏洩したり、下平面ヒーター26bの熱が下方に漏洩したりするのを抑制している。
【0017】
さらに、上断熱マット27aの上面を厚さ1mm程度の金属薄板(ステンレス板等)である上抑え板28aで覆い、上抑え板28aを複数のネジ29で天面22bのネジ穴22dに固定している。同様に、下断熱マット27bの下面を厚さ1mm程度の金属薄板(ステンレス板等)である下抑え板28bで覆い、下抑え板28bを複数のネジ29で底面22cのネジ穴22dに固定している。
【0018】
本実施例の上平面ヒーター26aや下平面ヒーター26bは、発熱中に膨張する特性を有しているため、単に天面22bや底面22cと接触配置しただけでは、膨張により天面22bや底面22cから剥離する虞がある。そこで、本実施例では、剛体の上抑え板28aと弾性体の上断熱マット27aで上平面ヒーター26aの全体を天面22bの上面に押し付け、剛体の下抑え板28bと弾性体の下断熱マット27bで下平面ヒーター26bの全体を底面22cの下面に押し付けている。これにより、上平面ヒーター26aや下平面ヒーター26bが発熱により膨張した場合であっても、天面22bや底面22cとの密着を維持できるので、上平面ヒーター26aや下平面ヒーター26bから調理庫22への伝熱効率を高め、調理庫22からグリルパン23への輻射熱を高めることができる。
【0019】
なお、ドア21の閉鎖時には、グリルパン23の後端部底面は、調理庫22の底面22cから突出する温度センサ30と接触している。従って、グリルユニット20による調理中には、温度センサ30が測定したグリルパン23の温度に基づいて、上平面ヒーター26aや下平面ヒーター26bを制御することができる。
【0020】
図4は、調理庫22の底面22cを上面視した平面図である。ここに示すように、底面22cの上面には、前後方向または左右方向に延びる複数の畝状の凸部と、凸部より2mm程度低く、かつ、凸部より上面視面積の広い凹部が形成されている。また、底面22cの凹部には、下抑え板28bを固定するための複数のネジ穴22dが設けられている。
【0021】
調理庫22の底面22cは、厚さ1mm程度の金属薄板(ステンレス板等)であるため、凹凸のない平面であれば十分な剛性を確保できず熱応力により変形する虞があるが、図4のように複数の畝状の凸部を設けることで底面22cの剛性が強化されるので、下平面ヒーター26bの使用中の熱応力による底面22cの変形を抑制することができる。なお、底板22cに凹凸を設けると、平坦底面を用いる場合に比べ清掃性が悪化するが、底板22cの凹凸は2mm程度の小さなものであるため、清掃性が大きく損なわれることはない。
【0022】
図5は、図4の底面22cの図示を省略した透視平面図である。ここに示すように、底面22cの下方には、底面22cの凹部下面の全域と接触する形状の下平面ヒーター26bが配置されている。また、下平面ヒーター26bと下断熱マット27bには、底面22cのネジ穴22dと対向する部分にネジ29を通すための切り欠き部を設けている。従って、下方から下抑え板28bのネジ穴と下平面ヒーター26b等の切り欠き部を通したネジ29を、底面22cのネジ穴22dに固定することで、下抑え板28bと底面22cの間に下断熱マット27bと下平面ヒーター26bを挟み込んで固定することができる。
【0023】
図3から図5で説明した構成により、下平面ヒーター26bの全面を底面22cの下面に押し付けながら発熱させると、面積の広い凹部下面を介して効率よく底面22cを熱することができる。このとき、発生した熱応力によって底面22cが変形しようとするが、本実施例の底面22cは、図4に示す複数の畝状の凸部により前後方向および左右方向の剛性が高まっているので、熱応力による変形が抑制される。従って、下平面ヒーター26bの発熱中であっても、底面22cと下平面ヒーター26bの密着性は劣化せず、グリルパン23を正常に加熱することができる。
【0024】
一方、図3から図5で説明した構成により、下平面ヒーター26bの全面を底面22cの下面に押し付けても、下平面ヒーター26bは、底面22cの凹部下面より2mm程度高い凸部下面には到達しないため、凸部下方には下平面ヒーター26bにより閉鎖される密閉空間が形成される。従って、グリルユニット20の調理庫22の下方に冷却風を流す構成を採用した場合には、底面22cの凸部下方空間に冷却風が流れ込むことがなく、冷却風の影響により調理庫22の加熱効率が劣化することはない。
【0025】
なお、下平面ヒーター26bで発生した熱の一部は、下断熱マット27bを超えて下抑え板28bにも伝わるため、下平面ヒーター26bの使用中に下抑え板28bが熱変形する虞がある。そこで、下抑え板28bにも底面22cと同等の畝状の凸部を形成し、下抑え板28bの剛性を高め、下抑え板28bの熱変形を抑制できるようにしても良い。
【0026】
図6は、調理庫22の底面22cへの凹凸の形成方法を説明する拡大断面図である。図6(a)は、底面22cの基準面の下側に凹部を形成するプレス加工を利用して凹凸を形成した構造を例示しており、図6(b)は、底面22cの基準面の上側に凸部を形成するプレス加工を利用して凹凸を形成した構造を例示している。底面22cに凹凸を形成する際には、どちらの方法を採用しても良いが、図6(b)の凹凸形成方法を採用すれば、下平面ヒーター26bをより上方に配置できるので、グリルパン23の加熱効率をより高めることができる。
【0027】
以上で説明したように、本実施例の加熱調理器によれば、調理庫底面と下ヒーターを接触させたグリルユニット構造を採用する場合、調理庫底面の熱変形を抑制し、することで、調理庫底面と平面ヒータの密着性を維持し、下ヒーターから調理庫底面への熱伝導効率、および、調理庫底面から調理容器への輻射熱効率の劣化を抑制することができる。
【符号の説明】
【0028】
10 加熱調理器
11 本体
12 トッププレート
13 鍋載置部
14 加熱コイル
15 上面操作部
16 前面操作部
20 グリルユニット
21 ドア
22 調理庫
22a 前面開口
22b 天面
22c 底面
22d ネジ穴
23 グリルパン
24 グリルパンホルダ
25 レール
26a 上平面ヒーター
26b 下平面ヒーター
27a 上断熱マット
27b 下断熱マット
28a 上抑え板
28b 下抑え板
29 ネジ
30 温度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6