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特許7315627ケーブル劣化診断装置、ケーブル劣化診断方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】ケーブル劣化診断装置、ケーブル劣化診断方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/58 20200101AFI20230719BHJP
   G01R 31/50 20200101ALI20230719BHJP
【FI】
G01R31/58
G01R31/50
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021120692
(22)【出願日】2021-07-21
(65)【公開番号】P2023016407
(43)【公開日】2023-02-02
【審査請求日】2022-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】北 浩志
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-318698(JP,A)
【文献】特開2002-056726(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0154676(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0337530(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/56
G01R 31/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一装置と第二装置との間で信号を伝送する一以上の信号線を含む複数の電線を有するケーブルの劣化を診断する装置であって、
前記複数の電線のうち、前記一以上の信号線から絶縁されたテスト信号送信線に波状のテスト信号を出力するテスト信号出力部と、
前記複数の電線のうち、前記一以上の信号線及び前記テスト信号送信線から絶縁されたテスト信号受信線に前記ケーブル内で伝播した信号から、前記テスト信号に対応する受信テスト信号を抽出するテスト信号抽出部と、
前記テスト信号と、前記受信テスト信号とに基づいて前記ケーブルの劣化を検出する劣化検出部と、を備えるケーブル劣化診断装置。
【請求項2】
前記劣化検出部は、前記テスト信号の強度と、前記受信テスト信号の強度との差の変動量が所定の劣化検知レベルを超えた場合に、前記ケーブルの劣化を検出する、請求項1記載のケーブル劣化診断装置。
【請求項3】
前記テスト信号出力部は、前記テスト信号をキャリア波に重畳したテスト信号変調波を前記テスト信号送信線に出力し、
前記テスト信号抽出部は、前記テスト信号受信線に前記ケーブル内で伝播した信号から前記テスト信号変調波に対応するテスト信号受信波を抽出し、前記テスト信号受信波から前記受信テスト信号を抽出する、請求項2記載のケーブル劣化診断装置。
【請求項4】
前記テスト信号出力部は、前記一以上の信号線が伝送する信号の周波数とは異なる周波数を有する前記キャリア波に前記テスト信号を重畳した前記テスト信号変調波を前記テスト信号送信線に出力する、請求項3記載のケーブル劣化診断装置。
【請求項5】
前記変動量が前記劣化検知レベルを超える頻度に基づいて、前記ケーブルの劣化レベルが許容レベルを超えるまでの期間の長さを表す残寿命推定値を算出する残寿命推定部を更に備える、請求項2~4のいずれか一項記載のケーブル劣化診断装置。
【請求項6】
前記変動量に基づいて、前記ケーブルの劣化レベルが許容レベルを超えるまでの期間の長さを表す残寿命推定値を算出する残寿命推定部を更に備える、請求項2~4のいずれか一項記載のケーブル劣化診断装置。
【請求項7】
前記変動量の複数の帯域ごとの頻度を表す頻度分布データを生成する分布データ生成部と、
前記頻度分布データに基づいて、前記ケーブルの劣化レベルが許容レベルを超えるまでの期間の長さを表す残寿命推定値を算出する残寿命推定部と、を更に備える、請求項2~4のいずれか一項記載のケーブル劣化診断装置。
【請求項8】
前記残寿命推定部は、時系列の二以上の前記頻度分布データに基づいて前記残寿命推定値を算出する、請求項7記載のケーブル劣化診断装置。
【請求項9】
前記残寿命推定部は、時系列の二以上の前記頻度分布データと、時系列の二以上の前記頻度分布データの入力に応じて前記残寿命推定値を出力する寿命予測モデルと、に基づいて前記残寿命推定値を算出する、請求項8記載のケーブル劣化診断装置。
【請求項10】
前記頻度分布データを時系列でデータベースに蓄積するデータ蓄積部と、
前記劣化レベルが前記許容レベルを超えた場合に、前記データベースに蓄積されたデータに基づいて、前記二以上の前記頻度分布データと前記残寿命推定値との関係を表す教師データを生成する教師データ生成部と、
前記教師データに基づく機械学習により前記寿命予測モデルを更新するモデル更新部と、を更に備える、請求項9記載のケーブル劣化診断装置。
【請求項11】
前記残寿命推定値が所定の報知レベルに達したことを報知する報知部を更に備える、請求項5~10のいずれか一項記載のケーブル劣化診断装置。
【請求項12】
前記テスト信号出力部と、前記テスト信号抽出部と、前記劣化検出部とを有する本体と、
前記信号線を前記第一装置に接続し、前記テスト信号送信線及び前記テスト信号受信線を前記本体に接続するアダプタと、を備える、請求項1~11のいずれか一項記載のケーブル劣化診断装置。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項記載のケーブル劣化診断装置と、
前記第一装置と、
前記第二装置と、
前記ケーブルと、を備え、
前記第二装置は、前記ケーブルを曲げながら動作する可動部を有する、マシンシステム。
【請求項14】
前記第二装置は、前記可動部として複数関節を有するロボットである、請求項13記載のマシンシステム。
【請求項15】
第一装置と第二装置との間で信号を伝送する一以上の信号線を含む複数の電線を有するケーブルの劣化を診断する方法であって、
前記複数の電線のうち、前記一以上の信号線から絶縁されたテスト信号送信線に波状のテスト信号を出力することと、
前記複数の電線のうち、前記一以上の信号線及び前記テスト信号送信線から絶縁されたテスト信号受信線に前記ケーブル内で伝播した信号から、前記テスト信号に対応する受信テスト信号を抽出することと、
前記テスト信号と、前記受信テスト信号とに基づいて前記ケーブルの劣化を検出することと、を含むケーブル劣化診断方法。
【請求項16】
第一装置と第二装置との間で信号を伝送する一以上の信号線を含む複数の電線を有するケーブルの劣化を診断する方法であって、
前記複数の電線のうち、前記一以上の信号線から絶縁されたテスト信号送信線に波状のテスト信号を出力することと、
前記複数の電線のうち、前記一以上の信号線及び前記テスト信号送信線から絶縁されたテスト信号受信線に前記ケーブル内で伝播した信号から、前記テスト信号に対応する受信テスト信号を抽出することと、
前記テスト信号と、前記受信テスト信号とに基づいて前記ケーブルの劣化を検出することと、を含むケーブル劣化診断方法を装置に実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ケーブル劣化診断装置、ケーブル劣化診断方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、高周波パルスを電線またはケーブルの導体に注入し、この注入による高周波パルスが電線またはケーブルから反射パルスとして反射してくる波形を測定し、この波形に基づいて電線またはケーブルの導体の断線を検出する電線・ケーブルの断線検出方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-121102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、ケーブル劣化をより簡素な構成で検出するのに有効な装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係るケーブル劣化診断装置は、第一装置と第二装置との間で信号を伝送する一以上の信号線を含む複数の電線を有するケーブルの劣化を診断する装置であって、複数の電線のうち、一以上の信号線から独立したテスト信号送信線に波状のテスト信号を出力するテスト信号出力部と、複数の電線のうち、一以上の信号線及びテスト信号送信線から独立したテスト信号受信線に伝播した信号から、テスト信号に対応する受信テスト信号を抽出するテスト信号抽出部と、テスト信号と、受信テスト信号とに基づいてケーブルの劣化を検出する劣化検出部と、を備える。
【0006】
本開示の更に他の側面に係るケーブル劣化診断方法は、第一装置と第二装置との間で信号を伝送する一以上の信号線を含む複数の電線を有するケーブルの劣化を診断する方法であって、複数の電線のうち、一以上の信号線から独立したテスト信号送信線に波状のテスト信号を出力することと、複数の電線のうち、一以上の信号線及びテスト信号送信線から独立したテスト信号受信線に伝播した信号から、テスト信号に対応する受信テスト信号を抽出することと、テスト信号と、受信テスト信号とに基づいてケーブルの劣化を検出することと、を含む。
【0007】
本開示の更に他の側面に係るプログラムは、第一装置と第二装置との間で信号を伝送する一以上の信号線を含む複数の電線を有するケーブルの劣化を診断する方法であって、複数の電線のうち、一以上の信号線から独立したテスト信号送信線に波状のテスト信号を出力することと、複数の電線のうち、一以上の信号線及びテスト信号送信線から独立したテスト信号受信線に伝播した信号から、テスト信号に対応する受信テスト信号を抽出することと、テスト信号と、受信テスト信号とに基づいてケーブルの劣化を検出することと、を含むケーブル劣化診断方法を装置に実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ケーブル劣化をより簡素な構成で検出するのに有効な装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】マシンシステムの構成を例示する模式図である。
図2】ケーブル劣化診断装置の機能的な構成を例示するブロック図である。
図3】ケーブル劣化診断装置の機能的な構成を例示するブロック図である。
図4】寿命予測モデルを例示するグラフである。
図5】マップデータを例示する模式図である。
図6】ケーブル劣化診断装置のハードウェア構成を例示するブロック図である。
図7】ケーブル劣化診断手順を例示するフローチャートである。
図8】モデル更新手順を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0011】
〔マシンシステム〕
図1に示すマシンシステム1は、第一装置2と、第二装置3と、第一装置2と第二装置3とを接続するケーブル70と、ケーブル70の劣化状態を診断するケーブル劣化診断装置100とを備える。
【0012】
第二装置3は、ケーブル70を曲げながら動作する可動部4を有する装置であり、第一装置2は第二装置3を制御するコントローラである。第二装置3の具体例としては、ロボットが挙げられる。ロボットは、可動部4として複数関節を有する。
【0013】
図1に例示す第二装置3は、産業用の垂直多関節ロボットであり、基部11と、旋回部12と、第一アーム13と、第二アーム14と、手首部15と、先端部16と、関節41,42,43,44,45,46と、アクチュエータ51,52,53,54,55,56と、センサ61,センサ62,センサ63,センサ64,センサ65,センサ66とを有する。
【0014】
基部11は、作業エリアの床面等に設置される。旋回部12は、鉛直な軸線31まわりに回転可能となるように基部11の上に取り付けられている。例えば第二装置3は、旋回部12を軸線31まわりに回転可能となるように基部11に取り付ける関節41を有する。第一アーム13は、軸線31に交差(例えば直交)する軸線32まわりに回転可能となるように旋回部12に接続されている。例えば第二装置3は、第一アーム13を軸線32まわりに回転可能となるように旋回部12に接続する関節42を有する。交差は、いわゆる立体交差のように、ねじれの関係にあることを含む。以下においても同様である。第一アーム13は、軸線32に交差(例えば直交)する一方向に沿って旋回部12から延びている。
【0015】
第二アーム14は、軸線32に平行な軸線33まわりに回転可能となるように第一アーム13の端部に接続されている。例えば第二装置3は、第二アーム14を軸線33まわりに回転可能となるように第一アーム13に接続する関節43を有する。第二アーム14は、軸線33に交差(例えば直交)する一方向に沿って第一アーム13の端部から延びるアーム基部17と、同じ一方向に沿ってアーム基部17の端部から更に延びるアーム端部18とを有する。アーム端部18は、アーム基部17に対して軸線34まわりに回転可能である。軸線34は、軸線33に交差(例えば直交)する。例えば第二装置3は、アーム端部18を軸線34まわりに回転可能となるようにアーム基部17に接続する関節44を有する。
【0016】
手首部15は、軸線34に交差(例えば直交)する軸線35まわりに回転可能となるようにアーム端部18の端部に接続されている。例えば第二装置3は、手首部15を軸線35まわりに回転可能となるようにアーム端部18に接続する関節45を有する。手首部15は、軸線35に交差(例えば直行)する一方向に沿ってアーム端部18の端部から延びている。先端部16は、軸線35に交差(例えば直交)する軸線36まわりに回転可能となるように、手首部15の端部に接続されている。例えば第二装置3は、先端部16を軸線36まわりに回転可能となるように手首部15に接続する関節46を有する。
【0017】
アクチュエータ51,52,53,54,55,56は、関節41,42,43,44,45,46を駆動する。アクチュエータ51,52,53,54,55,56のそれぞれは、例えば電動モータと、電動モータの動力を関節41,42,43,44,45,46に伝える伝達部(例えば減速機)とを有する。例えばアクチュエータ51は、軸線31まわりに旋回部12を回転させるように関節41を駆動する。アクチュエータ52は、軸線32まわりに第一アーム13を回転させるように関節42を駆動する。アクチュエータ53は、軸線33まわりに第二アーム14を回転させるように関節43を駆動する。アクチュエータ54は、軸線34まわりにアーム端部18を回転させるように関節44を駆動する。アクチュエータ55は、軸線35まわりに手首部15を回転させるように関節45を駆動する。アクチュエータ56は、軸線36まわりに先端部16を回転させるように関節46を駆動する。
【0018】
センサ61,センサ62,センサ63,センサ64,センサ65,センサ66は、関節41,42,43,44,45,46の回転角度(又はアクチュエータ51,52,53,54、55,56のロータの回転角度)をそれぞれ検出する。例えばセンサ61は基部11に対する旋回部12の回転角度を検出し、センサ62は旋回部12に対する第一アーム13の回転角度を検出し、センサ63は第一アーム13に対する第二アーム14の回転角度を検出し、センサ64はアーム基部17に対するアーム端部18の回転角度を検出し、センサ65はアーム端部18に対する手首部15の回転角度を検出し、センサ66は手首部15に対する先端部16の回転角度を検出する。例えばセンサ61,センサ62,センサ63,センサ64,センサ65,センサ66はロータリーエンコーダであり、対応する関節、又はアクチュエータのロータの回転角に対応する信号に基づいて対応する関節、又はアクチュエータのロータの動作角度を検出する。センサ61,センサ62,センサ63,センサ64,センサ65,センサ66は、動作角度の検出結果を表すデジタル信号をケーブル70により第一装置2に送信する。例えばセンサ61,センサ62,センサ63,センサ64,センサ65,センサ66は、上記デジタル信号をシリアル通信により第一装置2に送信する。
【0019】
第一装置2は、予め定められた動作プログラムに基づいて第二装置3を制御する。動作プログラムは、時系列の複数の動作指令を含む。複数の動作指令のそれぞれは、少なくとも先端部16の位置、姿勢及び移動速度に対する指令を含む。第一装置2は、少なくとも以下の処理を含む制御サイクルを所定サイクルで繰り返す。
処理1)動作指令に基づいて、先端部16の目標位置及び目標姿勢を算出する。
処理2)先端部16の目標位置及び目標姿勢に逆運動演算を行って関節41,42,43,44,45,46の目標角度を算出する。
処理3)センサ61,センサ62,センサ63,センサ64,センサ65,センサ66から受信した関節41,42,43,44,45,46の動作角度に基づいて、関節41,42,43,44,45,46の動作角度を目標角度に追従させるように、アクチュエータ51,52,53,54,55,56を制御する。
【0020】
ケーブル70は、第一装置2に接続される第一端部77と、第二装置3に接続される第二端部78とを有し、第一装置2と第二装置3との間で一以上の信号を伝送する。図2に示すように、ケーブル70は、複数の電線71と、シールド線75と、絶縁シース76と、コネクタ80とを含む。複数の電線71は、一以上の信号線72と、テスト信号送信線73と、テスト信号受信線74とを含む。複数の電線71のそれぞれは絶縁性の個別シースにより被覆されており、他の電線71から絶縁されている。このため、テスト信号送信線73は一以上の信号線72から独立しており、テスト信号受信線74は一以上の信号線72及びテスト信号送信線73から独立している。
【0021】
一以上の信号線72は、第一装置2と第二装置3との間で上記一以上の信号をそれぞれ伝送する。第一装置2と第二装置3との間で複数の信号を伝送する場合、複数の電線71は、複数の信号にそれぞれ対応する複数の信号線72を有する。複数の信号の具体例としては、センサ61,センサ62,センサ63,センサ64,センサ65,センサ66がそれぞれ送信する複数のデジタル信号が挙げられる。複数の電線71は、複数の信号にそれぞれ対応する複数対の信号線72を有してもよい。複数対のそれぞれは、例えばツイステッドペアを構成し、対応する信号を差動信号として伝送する。テスト信号送信線73及びテスト信号受信線74は、第一端部77においてケーブル劣化診断装置100に電気的に接続される。テスト信号送信線73及びテスト信号受信線74は、第二端部78において第二装置3に接続されず、周囲から絶縁された状態で解放されている。
【0022】
シールド線75は、複数の電線71を被覆するように編まれた網状の導電部材である。絶縁シース76は、シールド線75を被覆するように成形された絶縁性のチューブである。
【0023】
コネクタ80は、第一端部77に設けられており、導電性の複数の端子81を有する。複数の端子81は、一以上の信号端子82と、テスト信号送信端子83と、テスト信号受信端子84とを含む。一以上の信号端子82は、一以上の信号線72にそれぞれ接続される。テスト信号送信端子83はテスト信号送信線73に接続される。テスト信号受信端子84はテスト信号受信線74に接続される。複数の電線71が複数対の信号線72を含む場合、複数の端子81は、複数対の信号線72にそれぞれ対応する複数対の信号端子82を含む。
【0024】
ケーブル劣化診断装置100は、ケーブル70の劣化を診断する。劣化とは、損傷による電気的伝導性の変化、不平衡等がケーブル70に生じることを意味する。電気的特性の変化の具体例としては、個々の電線71の電気抵抗、インダクタンス等の変化、二以上の電線71間の静電容量の変化等が挙げられる。損傷のないケーブル70に曲げ伸ばし等の動きを加えたとしても、電気的特性は実質的に変化しない。一方、ケーブル70に損傷が生じると電気的特性の変化が生じる。更に、損傷が生じた箇所に曲げ伸ばしなどの動きが加わることによりケーブル70の電気的特性が更に変化する。ケーブル70の損傷の具体例としては、電線71の導電性の芯線が部分的又は全体的に断線すること、電線71の個別シースが薄肉化すること等が挙げられる。芯線の断線及び個別シースの薄肉化は、第二装置3の動作に伴う曲げ伸ばし等の繰り返しストレスにより生じ得る。また、芯線の断線及び個別シースの薄肉化は、ケーブル70の挟み込み等の突発性のストレスによっても生じ得る。
【0025】
一以上の信号線72の劣化を検出するためには、一以上の信号線72自体にテスト信号を付加し、応答を確認することが考えられる。しかしながら、一以上の信号線72自体にテスト信号を付加する方式によれば、ケーブル70が複数の信号線72を有する場合に、複数の信号線72のそれぞれに対してテスト信号を付加することが必要となる。これに対し、ケーブル劣化診断装置100は、テスト信号送信線73に波状のテスト信号を出力することと、テスト信号受信線74に伝播した信号から、テスト信号に対応する受信テスト信号を抽出することと、テスト信号と、受信テスト信号とに基づいてケーブル70の劣化を検出することと、を実行するように構成されている。
【0026】
このため、信号線72の本数によらず、一本のテスト信号送信線73に出力されたテスト信号と、一本のテスト信号受信線74に伝播した受信テスト信号とに基づいて、ケーブル70の劣化を検出することができる。従って、ケーブル70の劣化をより簡素な構成で検出するのに有効である。
【0027】
例えばケーブル劣化診断装置100は、本体101と、アダプタ200とを備える。ケーブル劣化診断装置100は、本体101と、アダプタ200とを備える。本体101は、機能上の構成(以下、「機能ブロック」という。)として、テスト信号出力部111と、テスト信号抽出部112と、劣化検出部113とを有する。
【0028】
テスト信号出力部111は、信号線72に波状のテスト信号を出力する。例えばテスト信号出力部111は、テスト信号をキャリア波に重畳したテスト信号変調波を信号線72に出力する。
【0029】
例えばテスト信号出力部111は、機能ブロックとして、テスト信号生成部121と、キャリア波生成部122と、変調波生成部123とを有する。テスト信号生成部121は、波状のテスト信号を生成する。テスト信号の波形に特に制限はない。例えばテスト信号生成部121は、矩形波状のテスト信号を生成してもよく、鋸波状のテスト信号を生成してもよく、正弦波状のテスト信号を生成してもよい。キャリア波生成部122は、キャリア波を生成する。キャリア波の波形にも特に制限はない。例えばキャリア波生成部122は、矩形波状のテスト信号を生成してもよく、鋸波状のテスト信号を生成してもよく、正弦波状のテスト信号を生成してもよい。変調波生成部123は、キャリア波生成部122が生成したキャリア波に、テスト信号生成部121が生成したテスト信号を重畳したテスト信号変調波を生成し、信号線72に出力する。
【0030】
例えば変調波生成部123は、テスト信号によりキャリア波の周波数を変調したFM(Frequency Modulation)変調波をテスト信号変調波として生成する。変調波生成部123は、テスト信号によりキャリア波の振幅を変調したAM(Amplitude Modulation)変調波をテスト信号変調波として生成してもよい。変調波生成部123は、テスト信号によりキャリア波の位相を変調したPM(Phase Modulation)変調波をテスト信号変調波として生成してもよい。
【0031】
テスト信号抽出部112は、テスト信号送信線73に伝播した信号から、テスト信号に対応する受信テスト信号を抽出する。例えばテスト信号抽出部112は、テスト信号送信線73に伝播した信号からテスト信号変調波に対応するテスト信号受信波を抽出し、テスト信号受信波から受信テスト信号を抽出する。
【0032】
例えばテスト信号抽出部112は、機能ブロックとして、変調波抽出部131と、復調部132とを有する。変調波抽出部131は、テスト信号送信線73に伝播した信号からテスト信号変調波に対応するテスト信号受信波を抽出する。例えば変調波抽出部131は、テスト信号変調波の周波数帯域に対応するバンドパスフィルタによって、テスト信号受信波を抽出する。復調部132は、テスト信号変調波を生成するための変調処理に対応する復調処理をテスト信号受信波に施して受信テスト信号を抽出する。
【0033】
劣化検出部113は、テスト信号と、受信テスト信号とに基づいてケーブル70の劣化を検出する。例えば劣化検出部113は、テスト信号の強度(例えば振幅)と、受信テスト信号の強度(例えば振幅)との差の変動に基づいてケーブル70の劣化を検出する。
【0034】
例えば劣化検出部113は、テスト信号の強度(例えば振幅)と、受信テスト信号の強度(例えば振幅)との差の変動量が所定の劣化検知レベルを超えた場合に、ケーブル70の劣化を検出する。劣化検出部113は、上記変動量が劣化検知レベルに満たない場合、ケーブル70の劣化を検出しない(ケーブル70に劣化がないことを検出する)。
【0035】
テスト信号出力部111は、一以上の信号線72が伝送する信号の周波数とは異なる周波数を有するキャリア波にテスト信号を重畳したテスト信号変調波を信号線72に出力してもよい。例えばキャリア波生成部122は、複数の信号線72のそれぞれが伝送する信号の周波数とは異なる周波数を有するキャリア波を生成する。
【0036】
この場合、キャリア波の周波数をいかなる大きさとすべきかは、ケーブルの太さと複数の信号線72のそれぞれが伝送する信号の周波数によって変わることとなる。そこで、ケーブル劣化診断装置100は、キャリア波の周波数を変更し得るように構成されていてもよい。例えば本体101は、機能ブロックとして周波数設定部141を更に有する。周波数設定部141は、オペレータによる操作入力(例えば後述の入力デバイス199に対する入力)に基づいてキャリア波の周波数を設定する。キャリア波生成部122は、周波数設定部141が設定した周波数のキャリア波を生成する。この構成によれば、操作入力によって、キャリア波の周波数を変更することが可能となる。
【0037】
テスト信号送信線73及びテスト信号受信線74を電気的に接続するために、本体101はコネクタ180を更に有する。コネクタ180は、導電性のテスト信号送信端子181と、導電性のテスト信号受信端子182とを有する。テスト信号送信端子181は、テスト信号送信線73に電気的に接続され、テスト信号受信端子182は、テスト信号受信線74に電気的に接続される。変調波生成部123は、テスト信号変調波をテスト信号送信端子181に出力し、変調波抽出部131は、テスト信号受信線74に伝播した信号をテスト信号受信端子182から取得する。
【0038】
アダプタ200は、一以上の電線71を第一装置2に接続し、テスト信号送信線73及びテスト信号受信線74を本体101に接続する。アダプタ200は、第一コネクタ210と、メインケーブル230と、第二コネクタ220と、分岐ケーブル240と、第三コネクタ250とを有する。
【0039】
第一コネクタ210は、コネクタ80に接続される。第一コネクタ210は、導電性の複数の端子211を有する。複数の端子211は、コネクタ80の複数の端子81にそれぞれ接触する。複数の端子211は、一以上の信号端子82にそれぞれ接触する一以上の信号端子212と、テスト信号送信端子83に接触するテスト信号送信端子213と、テスト信号受信端子84に接触するテスト信号受信端子214とを含む。
【0040】
メインケーブル230は、第一装置2に接続される第一端部234と、ケーブル70に接続される第二端部235とを有する。メインケーブル230は、一以上の信号線231と、シールド線232と、ケーブルシース233とを有する。一以上の信号線231と、シールド線232と、ケーブルシース233とのそれぞれは絶縁性の個別シースにより被覆されており、他の電線から絶縁されている。シールド線232は、一以上の信号線231を被覆するように編まれた網状の導電部材である。ケーブルシース233は、シールド線232を被覆するように成形された絶縁性のチューブである。
【0041】
第二端部235は、上記第一コネクタ210に接続される。第一コネクタ210において、一以上の信号線231は、一以上の信号端子212にそれぞれ接続されている。第一端部234には、第二コネクタ220が設けられる。第二コネクタ220は、導電性の一以上の信号端子221を有する。第二コネクタ220において、一以上の信号線231は、一以上の信号端子221にそれぞれ接続されている。第二コネクタ220は、第一装置2に接続される。一以上の信号端子221のそれぞれは、第一装置2の制御回路に電気的に接続される。これにより、一以上の電線71が、メインケーブル230の一以上の信号線231を介して第一装置2に接続される。
【0042】
分岐ケーブル240は、本体101に接続される第一端部245と、ケーブル70に接続される第二端部246とを有する。分岐ケーブル240は、テスト信号送信線241と、テスト信号受信線242と、シールド線243と、ケーブルシース244とを有する。テスト信号送信線241と、テスト信号受信線242とのそれぞれは絶縁性の個別シースにより被覆されており、互いに絶縁されている。シールド線243は、テスト信号送信線241とテスト信号受信線242とを被覆するように編まれた網状の導電部材である。ケーブルシース244は、シールド線243を被覆するように成形された絶縁性のチューブである。第二端部246は、上記第一コネクタ210に接続される。第一コネクタ210において、テスト信号送信線241はテスト信号送信端子213に接続され、テスト信号受信線242はテスト信号受信端子214に接続されている。
【0043】
第一端部245には第三コネクタ250が設けられる。第三コネクタ250は、導電性のテスト信号送信端子251と、導電性のテスト信号受信端子252とを有する。第三コネクタ250において、テスト信号送信線241はテスト信号送信端子251に接続され、テスト信号受信線242はテスト信号受信端子252に接続される。第三コネクタ250は、本体101のコネクタ180に接続される。テスト信号送信端子251はテスト信号送信端子181に接触し、テスト信号受信端子252はテスト信号受信端子182に接触する。これにより、テスト信号送信線73及びテスト信号受信線74が、分岐ケーブル240のテスト信号送信線241及びテスト信号受信線242を介して本体101に接続される。
【0044】
ケーブル劣化診断装置100は、上記変動量が劣化検知レベルを超える頻度に基づいて、ケーブル70の劣化レベルが許容レベルを超えるまでの期間の長さを表す残寿命推定値を算出するように構成されていてもよい。頻度とは、例えば単位時間当たりの発生回数である。
【0045】
例えば本体101は、図3に示すように、機能ブロックとして、データ蓄積部142と、データベース143と、モデル保持部145と、残寿命推定部144とを更に有する。データ蓄積部142は、変動量が劣化検知レベルを超える度に、変動量の値と時刻とを対応付けた変動レコードをデータベース143に蓄積する。モデル保持部145は、寿命予測モデルを記憶する。寿命予測モデルは、上記頻度を含むデータの入力に応じて、残寿命推定値を出力する。
【0046】
図4は、寿命予測モデルを例示するグラフである。図4において、横軸は頻度を表し、縦軸は残寿命推定値を表す。図4に実線ラインで示される寿命予測モデル148は、頻度の入力に応じて残寿命推定値を出力するように、例えば一変数の関数等によって定義されている。
【0047】
図3に戻り、残寿命推定部144は、変動量が劣化検知レベルを超える頻度に基づいて、残寿命推定値を算出する。例えば残寿命推定部144は、データベース143に蓄積された変動レコードに基づいて、変動量が劣化検知レベルを超える頻度を算出する。残寿命推定部144は、算出した頻度を寿命予測モデル148に入力して残寿命推定値を算出する。
【0048】
ケーブル劣化診断装置100は、上記変動量に基づいて残寿命推定値を算出するように構成されていてもよい。例えばモデル保持部145が記憶する寿命予測モデル148は、変動量を含むデータの入力に応じて、残寿命推定値を出力するように構成されていてもよい。例えば寿命予測モデル148は、変動量の入力に応じて残寿命推定値を出力するように、例えば一変数の関数等によって定義されていてもよい。残寿命推定部144は、最新の変動レコードに含まれる変動量を寿命予測モデル148に入力して残寿命推定値を算出する。
【0049】
ケーブル劣化診断装置100は、上記変動量と、上記頻度とに基づいて残寿命推定値を算出するように構成されていてもよい。例えばモデル保持部145が記憶する寿命予測モデル148は、変動量と頻度とを含むデータの入力に応じて、残寿命推定値を出力するように構成されていてもよい。例えば寿命予測モデル148は、変動量及び頻度の入力に応じて残寿命推定値を出力するように、例えば二変数の関数等によって定義されていてもよい。残寿命推定部144は、データベース143に蓄積された変動レコードに基づいて、変動量が劣化検知レベルを超える頻度を算出する。残寿命推定部144は、算出した頻度と、最新の変動レコードに含まれる変動量とを寿命予測モデル148に入力して残寿命推定値を算出する。
【0050】
ケーブル劣化診断装置100は、変動量の複数の帯域ごとの頻度を表す頻度分布データに基づいて、残寿命推定値を算出するように構成されていてもよい。例えば本体101は、機能ブロックとして分布データ生成部146を更に有する。分布データ生成部146は、データベース143に蓄積された変動レコードに基づいて、複数の帯域ごとの頻度を表す頻度分布データを生成する。
【0051】
例えば分布データ生成部146は、変動量の大きさを、等間隔に並ぶ複数の境界値により区画して得られる複数の帯域ごとの頻度を表す頻度分布データ(例えば度数分布表)を生成する。モデル保持部145が記憶する寿命予測モデル148は、頻度分布データの入力に応じて、残寿命推定値を出力するように構成されていてもよい。寿命予測モデル148の具体例としては、機械学習により構築されるニューラルネットワーク又は自己組織化マップ等が挙げられる。残寿命推定部144は、分布データ生成部146が生成した頻度分布データと、寿命予測モデル148とに基づいて残寿命推定値を算出する。例えば残寿命推定部144は、分布データ生成部146が生成した頻度分布データを寿命予測モデル148に入力して残寿命推定値を算出する。
【0052】
ケーブル劣化診断装置100は、時系列の二以上の頻度分布データに基づいて残寿命推定値を算出するように構成されていてもよい。例えば分布データ生成部146は、所定数の変動レコードがデータベース143に追加される度に、頻度分布データを繰り返し生成する。所定数は一つであってもよく、二つ以上であってもよい。データ蓄積部142は、分布データ生成部146が繰り返し生成する頻度分布データを時系列でデータベース143に蓄積する。例えばデータ蓄積部142は、頻度分布データを時刻(例えば頻度分布データの生成時刻)に対応付けてデータベース143に蓄積する。
【0053】
モデル保持部145が記憶する寿命予測モデル148は、時系列の二以上の頻度分布データの入力に応じて残寿命推定値を出力するように構成されていてもよい。残寿命推定部144は、データベース143に蓄積された時系列の二以上の頻度分布データと、寿命予測モデル148とに基づいて残寿命推定値を算出する。例えば残寿命推定部144は、データベース143に蓄積された時系列の二以上の頻度分布データを寿命予測モデル148に入力して残寿命推定値を算出する。図5は、寿命予測モデル148に入力される二以上の頻度分布データを例示するグラフである。図5において、横軸は変動量を表し、縦軸は経過時間を表す。横一列に並ぶ複数の丸印が、一セットの頻度分布データである。複数の丸印のそれぞれの大きさは、頻度を表す。図5のグラフは、時系列の六セットの頻度分布データを含んでいる。
【0054】
図3に戻り、ケーブル劣化診断装置100は、残寿命推定値が所定の報知レベルに達したことを報知するように構成されていてもよい。例えば本体101は、機能ブロックとして報知部147を更に有する。報知部147は、残寿命推定部144により算出された残寿命推定値が所定の報知レベルに達するまで低下したことを報知する警告表示を後述の表示デバイス198等に表示させる。例えば報知部147は、残寿命推定部144により算出された残寿命推定値と報知レベルとを比較し、残寿命推定値が報知レベルを下回っている場合に警告表示を表示デバイス198等に表示させる。
【0055】
ケーブル劣化診断装置100は、劣化レベルが許容レベルを超えた場合に、データベース143に蓄積されたデータに基づいて寿命予測モデル148を更新するように構成されていてもよい。例えば本体101は、機能ブロックとして、寿命検知部151と、教師データ生成部152と、モデル更新部153とを更に有する。
【0056】
寿命検知部151は、劣化レベルが許容レベルを超えたことを検知する。以下、劣化レベルが許容レベルを超えることを「ケーブル70の寿命」という。許容レベルの具体例としては、ケーブル70による通信不良の発生が第一装置2において検出されるレベルが挙げられる。この場合、寿命検知部151は、ケーブル70による通信不良の発生を示す信号を第一装置2から取得した場合に、ケーブル70の寿命を検知する。許容レベルは、上記変動量が劣化検知レベルを超える頻度が所定の上限値を超えるレベルであってもよい。この場合、寿命検知部151は、データベース143に蓄積された変動レコードに基づいて頻度を算出し、頻度が上限値を上回った場合に、ケーブル70の寿命を検知する。許容レベルは、上記変動量が所定の上限値を超えるレベルであってもよい。この場合、寿命検知部151は、最新の変動レコードに含まれる変動量が上限値を上回った場合に、ケーブル70の寿命を検知する。寿命検知部151は、後述の入力デバイス199に対する入力に基づいて、ケーブル70の寿命を検知してもよい。
【0057】
教師データ生成部152は、劣化レベルが許容レベルを超えた場合に、データベース143に蓄積されたデータに基づいて、二以上の頻度分布データと残寿命推定値との関係を表す教師データを生成する。例えば教師データ生成部152は、寿命検知部151によりケーブル70の寿命が検知された場合に、データベース143に蓄積されたデータに基づいて教師データを生成する。以下、教師データの生成に必要な二以上の頻度分布データをマップデータという。
【0058】
データベース143に蓄積された頻度分布データの数が、マップデータにおける頻度分布データの数よりも多い場合に、教師データ生成部152は、二以上の教師データを生成してもよい。データベース143に蓄積された頻度分布データの数が、マップデータにおける頻度分布データの数よりも多い場合、データベース143には、最新の頻度分布データと、最古の頻度分布データとが互いに異なる二以上のマップデータを含むこととなる。教師データ生成部152は、二以上のマップデータのそれぞれについて、最新の頻度分布データの生成タイミングから、ケーブル70の寿命の検知タイミングまでの期間を生成する。以下、ここで生成される期間を、「実測寿命期間」という。教師データ生成部152は、二以上のマップデータのそれぞれに実測寿命期間を対応付けて二以上の教師データを生成する。
【0059】
データ蓄積部142は、教師データ生成部152が生成する教師データをデータベース143に蓄積する。モデル更新部153は、データベース143に蓄積された教師データに基づく機械学習により寿命予測モデル148を更新し、更新済の寿命予測モデル148をモデル保持部145に記憶させる。
【0060】
図6は、本体101のハードウェア構成を例示するブロック図である。図6に例示するように、本体101は、回路190と、上記180とを備える。回路190は、一以上のプロセッサ191と、メモリ192と、ストレージ193と、キャリア波生成回路194と、ベースバンド生成回路195と、変調回路196と、AD変換回路197と、表示デバイス198と、入力デバイス199とを有する。ストレージ193は、テスト信号送信線73に波状のテスト信号を出力することと、テスト信号受信線74に伝播した信号から、テスト信号に対応する受信テスト信号を抽出することと、テスト信号と、受信テスト信号とに基づいてケーブル70の劣化を検出することと、を含む劣化診断方法を装置に実行させるためのプログラムを記憶する。例えばストレージ193は、上記各機能ブロックをケーブル劣化診断装置100に構成させるためのプログラムを記憶している。
【0061】
ストレージ193は、プログラムを記憶する記憶媒体を含む。記憶媒体の具体例としては、ハードディスク、不揮発性メモリ等の据え置き型の媒体と、USBメモリ、光ディスク、磁気ディスク等の可搬型の媒体とが挙げられる。
【0062】
メモリ192は、ストレージ193からロードされたプログラムを一時的に記憶する。一以上のプロセッサ191は、メモリ192にロードされたプログラムを実行することで、上記各機能ブロックを本体101に構成する。プログラムの実行過程で一以上のプロセッサ191が生成するデータは適宜メモリ192に格納される。
【0063】
キャリア波生成回路194は、一以上のプロセッサ191により定められた周波数にて上記キャリア波を生成する。ベースバンド生成回路195は、一以上のプロセッサ191により定められた上記テスト信号を生成する。変調回路196は、キャリア波生成回路194が生成したキャリア波を、ベースバンド生成回路195が生成したテスト信号により変調して上記テスト信号変調波を生成し、コネクタ180のテスト信号送信端子181を介してテスト信号送信線73に出力する。
【0064】
AD変換回路197は、コネクタ180のテスト信号受信端子182を介してテスト信号送信線73からアナログ信号を取得し、取得したアナログ信号をデジタル信号に変換する。この変換によりAD変換回路197が生成したデジタル信号に対し、デジタル信号処理を施すことにより、上記テスト信号受信波の抽出、及び上記受信テスト信号の抽出とが行われる。
【0065】
表示デバイス198は、一以上のプロセッサ191からの要求に応じた画像を表示する。表示デバイス198の具体例としては、液晶モニタ等が挙げられる。入力デバイス199は、オペレータの操作入力を取得し、操作入力の内容を一以上のオペレータに通知する。入力デバイス199の具体例としては、キーボード、マウス等が挙げられる。入力デバイス199は、所謂タッチパネルとして表示デバイス198に一体化されていてもよい。
【0066】
以上に示したハードウェア構成はあくまで一例であり、適宜変更可能である。例えば、上記機能ブロックの少なくともいずれかが、汎用のプロセッサ191ではなく、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の専用の回路素子により構成されていてもよい。
【0067】
〔ケーブル劣化診断手順〕
続いて、ケーブル劣化診断方法の一例として、ケーブル劣化診断装置100が実行するケーブル劣化診断手順を例示する。この手順は、テスト信号送信線73に波状のテスト信号を出力することと、テスト信号受信線74に伝播した信号から、テスト信号に対応する受信テスト信号を抽出することと、テスト信号と、受信テスト信号とに基づいてケーブル70の劣化を検出することと、を含む。
【0068】
例えば図7に示すように、ケーブル劣化診断装置100は、まずステップS01,S02を実行する。ステップS01では、周波数設定部141が、オペレータの操作入力に基づいてキャリア波の周波数を設定する。
【0069】
ステップS02では、テスト信号抽出部112が、テスト信号の出力を開始する。例えば、テスト信号生成部121がテスト信号の生成を開始し、キャリア波生成部122がキャリア波の生成を開始し、変調波生成部123が、テスト信号変調波の生成と、テスト信号送信線73への出力とを開始する。
【0070】
次に、ケーブル劣化診断装置100はステップS03,S04を実行する。ステップS03では、変調波抽出部131が、テスト信号送信線73に伝播した信号からテスト信号変調波に対応するテスト信号受信波を抽出する。ステップS04では、復調部132が、テスト信号変調波を生成するための変調処理に対応する復調処理をテスト信号受信波に施して受信テスト信号を抽出する。
【0071】
次に、ケーブル劣化診断装置100は、ステップS05,S06を実行する。ステップS05では、劣化検出部113が、テスト信号の強度と、受信テスト信号の強度との差の変動量を算出する。ステップS06では、変動量が劣化検知レベルを上回っているか否かを劣化検出部113が確認する。
【0072】
ステップS06において、変動量が劣化検知レベルを下回っていると判定した場合、ケーブル劣化診断装置100は処理をステップS03に戻す。ステップS06において、変動量が劣化検知レベルを上回っていると判定した場合、ケーブル劣化診断装置100はステップS07,S08を実行する。ステップS07では、データ蓄積部142が、変動量の値と時刻とを対応付けた上記変動レコードをデータベース143に蓄積する。ステップS08では、分布データ生成部146が、データベース143に蓄積された変動レコードに基づいて、複数の帯域ごとの頻度を表す上記頻度分布データを生成する。生成された頻度分布データは、データ蓄積部142によってデータベース143に蓄積される。
【0073】
次に、ケーブル劣化診断装置100は、ステップS09,S11を実行する。ステップS09では、残寿命推定部144が、頻度分布データを寿命予測モデル148に入力して残寿命推定値を算出する。残寿命推定部144は、時系列の二以上の頻度分布データを寿命予測モデル148に入力して残寿命推定値を算出してもよい。ステップS11では、残寿命推定値が報知レベルを下回っているか否かを報知部147が確認する。
【0074】
ステップS11において、残寿命推定値は報知レベルを上回っていると判定した場合、ケーブル劣化診断装置100は処理をステップS03に戻す。ステップS11において、残寿命推定値は報知レベルを下回っていると判定した場合、ケーブル劣化診断装置100はステップS12を実行する。ステップS12では、報知部147が、上記警告表示を表示デバイス198に表示させる。その後、ケーブル劣化診断装置100は処理をステップS03に戻す。ケーブル劣化診断装置100は、ステップS03~S12を繰り返し実行する。
【0075】
上述したように、ケーブル劣化診断装置100は、劣化レベルが許容れベルを超えた場合に、データベース143に蓄積されたデータに基づいて寿命予測モデル148を更新するように構成されていてもよい。図8は、寿命予測モデル148の更新手順を例示するフローチャートである。この手順は、上述したケーブル劣化診断手順と並行して実行される。
【0076】
図8に示すように、ケーブル劣化診断装置100は、ステップS21,ステップS22を実行する。ステップS21では、寿命検知部151が、ケーブル70の劣化レベルが許容レベルを超えるのを待機する。ステップS22では、教師データ生成部152が、二以上の頻度分布データと残寿命推定値との関係を表す教師データを生成する。生成された教師データは、データ蓄積部142によりデータベース143に蓄積される。
【0077】
次に、ケーブル劣化診断装置100はステップS23を実行する。ステップS23では、モデル更新部153が、データベース143に蓄積された未学習の教師データの数が、所定の更新閾値を上回ったか否かを確認する。未学習の教師データとは、寿命予測モデル148の更新に未だ用いられていない教師データを意味する。
【0078】
ステップS23において、未学習の教師データの数が更新閾値を下回っていると判定した場合、ケーブル劣化診断装置100は処理をステップS21に戻す。ステップS23において、未学習の教師データの数が更新閾値を上回っていると判定した場合、ケーブル劣化診断装置100はステップS24を実行する。ステップS24では、モデル更新部153が、データベース143に蓄積された教師データに基づく機械学習により寿命予測モデル148を更新し、更新済の寿命予測モデル148をモデル保持部145に記憶させる。その後、ケーブル劣化診断装置100は処理をステップS21に戻す。ケーブル劣化診断装置100は、以上の処理を繰り返し実行する。
【0079】
〔本実施形態の効果〕
以上に説明したように、ケーブル劣化診断装置100は、第一装置2と第二装置3との間で信号を伝送する一以上の信号線72を含む複数の電線を有するケーブル70の劣化を診断する装置であって、複数の電線のうち、一以上の信号線72から独立したテスト信号送信線73に波状のテスト信号を出力するテスト信号出力部111と、複数の電線のうち、一以上の信号線72及びテスト信号送信線73から独立したテスト信号受信線74に伝播した信号から、テスト信号に対応する受信テスト信号を抽出するテスト信号抽出部112と、テスト信号と、受信テスト信号とに基づいてケーブル70の劣化を検出する劣化検出部113と、を備える。
【0080】
劣化の検出対象となる信号線72自体に高周波パルスを付加する方式によれば、複数本の信号線72の劣化を検出するために、複数の信号線72のそれぞれに高周波パルスを注入する必要がある。これに対し、ケーブル劣化診断装置100によれば、信号線72の本数によらず、一本のテスト信号送信線73に出力されたテスト信号と、一本のテスト信号受信線74に伝播した受信テスト信号とに基づいて、ケーブル70の劣化を検出することができる。従って、ケーブル70劣化をより簡素な構成で検出するのに有効である。
【0081】
劣化検出部113は、テスト信号の強度と、受信テスト信号の強度との差の変動量が所定の劣化検知レベルを超えた場合に、ケーブル70の劣化を検出してもよい。この場合、劣化検知レベルを適切に設定することによって、ケーブル70劣化を高い信頼性で検出することができる。
【0082】
テスト信号出力部111は、テスト信号をキャリア波に重畳したテスト信号変調波をテスト信号送信線73に出力し、テスト信号抽出部112は、テスト信号受信線74に伝播した信号からテスト信号変調波に対応するテスト信号受信波を抽出し、テスト信号受信波から受信テスト信号を抽出してもよい。この場合、キャリア波への重畳によって、受信テスト信号をより高い信頼性で抽出することができる。
【0083】
テスト信号出力部111は、一以上の信号線72が伝送する信号の周波数とは異なる周波数を有するキャリア波にテスト信号を重畳したテスト信号変調波をテスト信号送信線73に出力してもよい。この場合、キャリア波の周波数を適切に設定することによって、受信テスト信号をより高い信頼性で抽出することができる。
【0084】
変動量が劣化検知レベルを超える頻度に基づいて、ケーブル70の劣化レベルが許容レベルを超えるまでの期間の長さを表す残寿命推定値を算出する残寿命推定部144を更に備えてもよい。頻度と、残寿命推定値との間には相関関係がある。そこで、頻度に基づくことで、高い信頼性で残寿命推定値を算出することができる。
【0085】
変動量に基づいて、ケーブル70の劣化レベルが許容レベルを超えるまでの期間の長さを表す残寿命推定値を算出する残寿命推定部144を更に備えてもよい。変動量と、残寿命推定値との間には相関関係がある。そこで、変動量に基づくことで、高い信頼性で残寿命推定値を算出することができる。
【0086】
変動量の複数の帯域ごとの頻度を表す頻度分布データを生成する分布データ生成部146と、頻度分布データに基づいて、ケーブル70の劣化レベルが許容レベルを超えるまでの期間の長さを表す残寿命推定値を算出する残寿命推定部144と、を更に備えてもよい。変動量の帯域ごとの頻度に基づくことで、より高い信頼性で残寿命推定値を算出することができる。
【0087】
残寿命推定部144は、時系列の二以上の頻度分布データに基づいて残寿命推定値を算出してもよい。頻度分布データの時間変化に更に基づくことで、より高い信頼性で残寿命推定値を算出することができる。
【0088】
残寿命推定部144は、時系列の二以上の頻度分布データと、時系列の二以上の頻度分布データの入力に応じて残寿命推定値を出力する寿命予測モデルと、に基づいて残寿命推定値を算出してもよい。頻度分布データの時間変化に更に基づくことで、より高い信頼性で残寿命推定値を算出することができる。
【0089】
頻度分布データを時系列でデータベース143に蓄積するデータ蓄積部142と、劣化レベルが許容レベルを超えた場合に、データベース143に蓄積されたデータに基づいて、二以上の頻度分布データと残寿命推定値との関係を表す教師データを生成する教師データ生成部152と、教師データに基づく機械学習により寿命予測モデルを更新するモデル更新部153と、を更に備えてもよい。この場合、実測された残寿命実績値に基づき、寿命推定モデルを更新することで、寿命予測モデルに基づき算出される残寿命推定値の信頼性を更に向上させることができる。
【0090】
残寿命推定値が所定の報知レベルに達したことを報知する報知部147を更に備えてもよい。この場合、より適切なタイミングでケーブル70の劣化を報知することができる。
【0091】
テスト信号出力部111と、テスト信号抽出部112と、劣化検出部113とを有する本体101と、信号線72を第一装置2に接続し、テスト信号送信線73及びテスト信号受信線74を本体101に接続するアダプタ200と、を備えてもよい。この場合、第一装置2とケーブル70との間に、ケーブル劣化診断装置100を容易に挿入することができる。
【0092】
マシンシステム1は、上記ケーブル劣化診断装置100と、第一装置2と第二装置3と、ケーブル70と、を備え、第二装置3は、ケーブル70を曲げながら動作する可動部4を有する。ケーブル70に曲げが加わるマシンシステム1に、ケーブル劣化診断装置100が適用されているので、ケーブル70劣化をより簡素な構成で検出できることが更に有益である。なお、ケーブル劣化診断装置100によれば、例えばマシンシステム1の外部のオブジェクトがケーブル70に接触することにより生じたケーブル劣化も検知可能である。このため、ケーブル70を曲げながら動作する可動部4を有しないシステムにも適用可能である。
【0093】
第二装置3は、可動部4として複数関節41,42,43,44,45,46を有するロボットであってもよい。ケーブル70に対し、より高頻度で曲げが加わり易いロボットに、ケーブル劣化診断装置100が適用されているので、ケーブル70劣化をより簡素な構成で検出できることが更に有益である。
【0094】
以上、実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0095】
1…マシンシステム、2…第一装置、3…第二装置、4…可動部、41,42,43,44,45,46…関節、70…ケーブル、72…信号線、73…テスト信号送信線、74…テスト信号受信線、100…ケーブル劣化診断装置、101…本体、111…テスト信号出力部、112…テスト信号抽出部、113…劣化検出部、200…アダプタ、142…データ蓄積部、143…データベース、144…残寿命推定部、146…分布データ生成部、147…報知部、152…教師データ生成部、153…モデル更新部。
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