(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】光学コリメータ
(51)【国際特許分類】
F21V 5/04 20060101AFI20230719BHJP
F21V 5/00 20180101ALI20230719BHJP
F21V 13/04 20060101ALI20230719BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20230719BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20230719BHJP
【FI】
F21V5/04 500
F21V5/00 510
F21V13/04 300
F21V5/00 320
F21V5/04 350
G02B3/00
G02B3/00 A
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2021502430
(86)(22)【出願日】2019-06-18
(86)【国際出願番号】 DE2019100555
(87)【国際公開番号】W WO2020025079
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-03-07
(31)【優先権主張番号】102018118684.3
(32)【優先日】2018-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519421433
【氏名又は名称】レッドレンザー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】LEDLENSER GMBH & CO. KG
【住所又は居所原語表記】Kronenstrasse 5-7, D-42699 Solingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー ドロス
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-534513(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0138546(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0033441(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 5/04
F21V 5/00
F21V 13/04
G02B 3/00
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学密度の変化を有する光境界面をそれぞれ形成する光入射面(3、6)および/または光出射面(4、8)および/または反射面(7)として構成されている複数の光学面を用いて、光を集束するコリメータであって、
光入射面および/または反射面のうちの少なくとも1つに構成されている複数の凹形マイクロレンズ(11)を有する、
コリメータ。
【請求項2】
前記コリメータは、
後方の光入射面(3)および前方の光出射面(4)を有する集光レンズ(2)と、
光入射面(6)、TIR反射器面(7)および光出射面(8)を有する反射器部分(5)と
を、備えたTIRコリメータ(1)として構成されており、
前記反射器部分(5)は、前記TIRコリメータ(1)が、前記集光レンズ(2)の前記光入射面(3)と、前記反射器部分(5)の前記光入射面(6)とによって画定されている後方の空所(9)を有する、ように中央の前記集光レンズ(2)を取り囲んでいる、請求項1記載のコリメータ。
【請求項3】
前記凹形マイクロレンズ(11)が、
前記集光レンズ(2)の前記光入射面(3)および/また
は
前記反射器部分(5)の前記光入射面(6)および/または
前記TIR反射器面(7
)
に形成されている、
請求項2記載のコリメータ。
【請求項4】
前記集光レンズ(2)の前記光出射面(4)および/または前記反射器部分(5)の前記光出射面(8)に、さらなる凹形マイクロレンズが形成されていることを特徴とする、請求項2または3記載のコリメータ。
【請求項5】
凹形マイクロレンズ(11)のない少なくとも1つの光学面に凸形マイクロレンズ(12)が形成されている、請求項3
または4記載のコリメータ。
【請求項6】
前記集光レンズ(2)の前記光入射面(3)に凹形マイクロレンズ(11)が、かつ前記TIR反射器面(7)に凸形マイクロレンズ(12)が形成されている、
請求項
5記載のコリメータ。
【請求項7】
前記凹形マイクロレンズ(11)は、実質的に円形に構成されているか、または多角形の境界を有し、かつ好適には0.4mm~3mmの平均直径Dを有する、請求項1から
6までのいずれか1項記載のコリメータ。
【請求項8】
前記凹形マイクロレンズ(11)は、球面状または非球面状に構成されており、球面状のマイクロレンズ(11)は、好適には0.3mm~100mmの曲率半径Rを有する、請求項1から
7までのいずれか1項記載のコリメータ。
【請求項9】
前記凹形マイクロレンズ(11)は、0.05mm~1mmの深さTを有する、請求項1から
8までのいずれか1項記載のコリメータ。
【請求項10】
前記コリメータの前記
光入射面および/または前記反射面において前記凹形マイクロレンズ(11)が、均等または不均等に配置されている、請求項1から
9までのいずれか1項記載のコリメータ。
【請求項11】
可変の光学的設計を有するマイクロレンズ、特に、種々異なる曲率半径および/または異なる平均直径を有するマイクロレンズが配置され、かつ/または非球面状のマイクロレンズが配置されている、請求項1から
10までのいずれか1項記載のコリメータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学密度(optischen Dichte)の変化を有する光境界面をそれぞれ形成する光入射面および/または光出射面および/または反射面として構成されている複数の光学面を用いて、光を集束する光学コリメータに関する。
【0002】
このようなコリメータは、従来技術から公知であり、光源から放出される光を束ねるために使用され、これにより、個別の設定に照明を適合させることが可能である。特に懐中電灯およびヘッドランプでは、放出される光円錐を集束するためにこのようなコリメータが使用される。
【0003】
大きな光束を形成するためには、例えば、正方向に配置された4つのLEDまたはLEDケーシングにおける複数のLEDチップのように互いに密に配置された複数の光源が使用されることが多い。しかしながらこれにより、均質な光源は得られず、これによって特に、比較的小型のコリメータとの組み合わせでは、不均質な照明が生じてしまう。均質な照明とは、照明光学系において、照明装置によって照射されるテスト表面において照明強度が均等に配置されていることであると理解される。例えば、正方向状、点状または十字形の明暗コントラストのような不均質な照明におけるアーチファクトは、均質な照明においては人間の眼に見えない。
【0004】
このようなアーチファクトを回避するために、数多くの小さな散乱中心を有しかつ光源とは反対側を向いた、コリメータの面に配置されているディフューザもしくは散乱プレートが公知である。しかしながらこのような付加的なディフューザは、欠点を有する。というのは、ディフューザは、作製および取り付けの際に付加的なコストを生じ、またはディフューザは、小さく手頃な懐中電灯およびヘッドランプには限定的にしか得られない付加的なスペースを必要とするからである。
【0005】
さらに、コリメータの光出射面をディフューザとして構成することが公知である。このために、コリメータの光出射面の一部または全体が、つや消し仕上げされる。このことは不利なことにも、光の一定の後方散乱に結び付いてしまい、これによって効率が低下してしまう。さらに拡散構造は、指定するのが困難であり、かつ再現可能に作製するのが困難である。というのは、侵食またはエッチングのような非決定的なプロセスがこのために使用されることが多いからである。
【0006】
最後に、コリメータの光出射面に凸形マイクロレンズを配置することが公知であり、このことは特に、コリメータと光源との間の間隔が変化するズーム光学系では、光分散における不均質性に結び付くことがある。この不均質性が生じるのは、マイクロレンズが、コリメータの特定の設定において光源の近くに配置されている焦平面を有し、これにより、光源の多重画像が遠方場に投影されるからである。多重画像は、振幅が小さい場合であっても人間の眼に知覚され得る波長の短い輝度変調を生じさせる。このような場合、テスト表面には一般にグリッド状の明暗コントラストが識別され得る。
【0007】
この問題は確かに少なくとも部分的には、マイクロレンズを小型化することによって取り除くことが可能である。というのはこれにより、光散乱の作用は維持されるが、マイクロレンズの焦点距離が短くなるからである。しかしながらこのような小型のマイクロレンズの作製には比較的コストがかかり、またマイクロレンズを作製するための成形型に対する要求が高い。
【0008】
上記のことから出発して、本発明の課題は、従来技術の欠点を少なくとも部分的に取り除くことである。特に、複数の光源を使用する場合であっても均質の照明を可能にするコリメータを提案したい。この際にコリメータが、コンパクトに形成され、かつコストをかけずに作製できるようにしたい。
【0009】
この課題は、請求項1に記載されたコリメータによって解決され、これによれば、本発明により、コリメータが、複数の光学面のうちの少なくとも1つに構成されている多数の凹形マイクロレンズを有する、ように構成される。
【0010】
遠方場に投影され得る凹形マイクロレンズ焦平面は、凸形マイクロレンズの焦平面とは異なり、仮想的でありかつ光源とは反対側の面にある。これにより、多重結像によるアーチファクトが阻止される一方で、その他の点においてはマイクロレンズの散乱特性が維持される。
【0011】
以下および従属請求項において本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0012】
好ましい第1実施形態によれば、コリメータは、いわゆるTIRコリメータ(Total Internal Reflection - Kollimator)として構成されている。TIRコリメータは、後方の光入射面および前方の光出射面を有する中央の集光レンズ2を備えている。後方の光入射面は、平坦、凹または凸に構成可能である。さらにTIRコリメータは、光入射面、TIR反射器面および光出射面を有する反射器部分を有し、この反射器部分は、コリメータが、集光レンズの光入射面と、反射器部分の光入射面とによって画定されている後方の空所を有する、ように中央の集光レンズを取り囲んでいる。このようなTIRコリメータの凹形マイクロレンズは、好適には、集光レンズの光入射面、集光レンズの光出射面、反射器部分の光入射面、TIR反射器表面、および/または反射器部分の光出射面に形成されている。問題にしているアーチファクトの大部分は、集光レンズによって生じるため、大多数の適用事例では、集光レンズの光入射面または光出射面が凹形マイクロレンズを有すればそれだけで十分である。補足的には、残りの光学面が、任意の組み合わせで凹形マイクロレンズを同様に有してもよい。
【0013】
本発明の好ましい一実施形態によれば、凹形マイクロレンズのない少なくとも1つの光学面に凸形マイクロレンズが形成されている、ように構成される。この際に好適には、集光レンズの光入射面に凹形マイクロレンズが、かつTIR反射器面に凸形マイクロレンズが形成されている、ように構成される。集光レンズの光入射面は、特に、この実施形態において凹形に形成されていてよく、この際には集光レンズの凸形の光出射面の曲率半径よりも格段に大きい曲率半径が設定される。
【0014】
凹形マイクロレンズが、簡単な手段でかつコストをかけずに作製できるようにするために、凹形マイクロレンズレンズは、実質的に円形に構成されているか、または多角形の境界線を有し、かつ好適に0.4mm~3mmの平均直径を有する。これにより、統一されたマイクロレンズの好ましい配置において、マイクロレンズ密度は、1cm2あたり9~625個のマイクロレンズが実現される。しかしながら適用事例に応じて、種々異なる直径を有するマイクロレンズが配置され、これにより、コリメータの散乱特性にプラスの影響を生じさせる、ようにも構成される。
【0015】
マイクロレンズは、球面状または非球面状に構成されていてよく、球面状のマイクロレンズは、好適には0.3mm~20mmの曲率半径Rを有する。ここでは、マイクロレンズの深さTが、0.05mm~1mmで変化する、ように構成される。
【0016】
大きさが均等でないマイクロレンズを配置することに加えて、コリメータの光学表面において、凹形マイクロレンズおよび凸形マイクロレンズは、均等または不均等に配置(Verteilung)される、ようにも構成される。さらに、可変の光学的設計(variabler optischer Auslegung)を有するマイクロレンズ、例えば、種々異なる曲率半径、異なる平均直径または非球面状のマイクロレンズを有するマイクロレンズが配置される、ようにも構成される。同様に、領域毎または面を覆ってマイクロレンズが配置される、ように構成される。
【0017】
凹形マイクロレンズを有する上で説明したコリメータは、好適には、射出成形法で作製され、このためにマイクロレンズに対応する凸形構造体が射出成形型に設けられており、これらの凸形構造体は、ダイヤモンド旋削、高速フライス切削またはこれに相当する機械加工を用いて直接に導入することが可能である。しかしながらマイクロレンズの縁部には、使用される成形型の半径および別の製造技術的なパラメータに大きさが依存する丸みが発生する。この丸みが十分に小さい場合、マイクロレンズの光学的な機能は、これによって大きく損なわれることはない。
【0018】
択一的には、マイクロレンズに対応する構造が凹形に形成されている、成形型のネガを作製することができ、これにより、機械加工ツールはこの構造に容易に到達可能である。これについては第2ステップにおいて、例えば十分な厚さのニッケル層のガルバニック成長によって成形型が複製され、引き続いてこのニッケル層がネガから外されてさらに加工される。次にこの成形型では、成形構造が凸形になり、また誘電体によって複製される際に、凹形マイクロレンズを有するコリメータが生じ、その縁部には丸みが発生することがない。
【0019】
以下、図面に基づき、本発明の具体的な実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】従来技術によるTIRコリメータの断面図である。
【
図2】本発明によるコリメータの種々異なる断面図である。
【
図4】マイクロレンズの種々異なる配置を示す図である。
【0021】
図1には、従来技術から公知であるTIRコリメータ1が示されている。このようなTIRコリメータ1は、後方の光入射面3および前方の光出射面4によって定められている中央の集光レンズ2を有する。中央の集光レンズ2は、側方に光入射面6、TIR反射面7を有しかつ前面側に光出射面8を有する反射器部分5によって取り囲まれている。反射器部分5は、TIRコリメータ1が、反射器部分5の光入射面6と、中央の集光レンズ2の光入射面3とによって画定されている後方の空所9を有する、ように中央の集光レンズ2を取り囲んでいる。このようなTIRコリメータ1の取付状態において、光源10は、空所9の内部または下方に設けられており、これにより、LEDの放出された光は、完全にまたは少なくとも大部分がTIRコリメータ1に進入する。この光は、TIRコリメータ1内で、中央の集光レンズ2において束ねられるか、または反射器部分5のTIR反射器面7において全反射される。光束を増大させるために、一般に複数の光源10が使用され、これらの光源10間にはわずかな間隔Aが配置されている。これにより、もはや均質な光源10は存在せず、放出された光は、明暗コントラスの形態の不均質性を有する。
【0022】
このような不均質性を取り除くために、本発明の具体的な一実施形態によれば、凹形マイクロレンズ11が、中央の集光レンズ2の光入射面3に配置される、ように構成される。これにより、多重結像が阻止され、かつ説明した不均質性が回避される。
図2aには、中央の集光レンズ2の光入射面3に凹形マイクロレンズ11が配置されているこのようなTIRコリメータ1が示されている。
【0023】
図2b~fには、TIRコリメータ1の別の光学面に凹形マイクロレンズ11が備え付けられている択一的な複数の実施形態が示されている。具体的にはマイクロレンズ11は、反射器5の光出射面8(
図2b)に、反射器部分5の光入射面6(
図2c)に、集光レンズ2の光出射面4(
図2d)に、かつ/またはTIR反射器面7(
図2e)に構成されている。
【0024】
図2fには、凹形マイクロレンズ11および凸形マイクロレンズ12の配置が、異なる光学面において混在する、本発明の特に好ましい一実施形態が示されている。図示した実施例において凹形マイクロレンズ11が、集光レンズ2の凹形の光入射面3に構成されているのに対し、TIR反射器面7は、凸形マイクロレンズ12を有する。TIR反射器面7において凸形マイクロレンズ12を使用することにより、この適用例において不均質性が形成されることはなく、またここでは成形型がより容易に作製できるという理由から、凸形マイクロレンズ12の使用は好ましい。
【0025】
図3には、個々の凹形マイクロレンズ11の断面が部分的に示されており、これらの凹形マイクロレンズは、断面において実質的に部分円状に構成されている。図示したマイクロレンズ11は、1mmの平均直径Dと、4mmの曲率半径Rを有する。さらにこのマイクロレンズは、0.03mmの深さTを有する。
【0026】
マイクロレンズは、均等または不均等に、ならびに部分的にまたは面を覆って光学面に配置されていてよい。
図4a~cは、平均して同じ大きさを有するマイクロレンズの好ましい配置が示されている。具体的には
図4aには、マイクロレンズの六角形状の配置が、また
図4bには同心円におけるマイクロレンズの配置が示されている。
図4cには、葉序状の配置が示されている。