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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】複合物品を製造するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/56 20060101AFI20230719BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20230719BHJP
   B29C 45/73 20060101ALI20230719BHJP
   B29C 45/70 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
B29C45/56
B29C45/14
B29C45/73
B29C45/70
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021515275
(86)(22)【出願日】2019-05-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 EP2019063157
(87)【国際公開番号】W WO2019224220
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】18305634.0
(32)【優先日】2018-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508079739
【氏名又は名称】ローディア オペレーションズ
(73)【特許権者】
【識別番号】520459838
【氏名又は名称】ジョルジュ ペルヌー エスアエス
(73)【特許権者】
【識別番号】520459849
【氏名又は名称】ビリオン エスアエス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】オランジュ, ジレ
(72)【発明者】
【氏名】パスカル, ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】ジャケ, パトリス
(72)【発明者】
【氏名】ジルー, アレクサンドル
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/073696(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/179675(WO,A1)
【文献】特開2014-136365(JP,A)
【文献】特開平08-309898(JP,A)
【文献】特表2013-513500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの半結晶性熱可塑性ポリマー及び/又は少なくとも1つの非晶性熱可塑性ポリマーを含むポリマー組成物を射出成形することにより、複合物品を製造するための方法であって、
(a)50℃~温度T 最大の範囲である温度Tを有する予熱された型に少なくとも1つの補強材料を導入する工程であって、T 最大は、以下:
(i)前記ポリマー組成物が溶融転移を有さない場合又は前記ポリマー組成物が少なくとも1つの溶融転移を有し、及び前記ポリマー組成物の最高溶融温度T 最大がT 最大+40℃よりも低い場合、T 最大=T 最大+40℃(ここで、T 最大は、前記ポリマー組成物の最高ガラス転移温度を示す)、又は
(ii)前記ポリマー組成物が少なくとも1つの溶融転移を有し、及び前記ポリマー組成物の最高溶融温度T 最大がT 最大+40℃以上である場合、T 最大=T 最大
の通り定義される、工程と、
(b)前記型が、注入されるポリマー体積の70%~200%の体積で開放ギャップを示すように、前記型を部分的に閉鎖する工程と、
(c)T 最小~T 最大の範囲である温度Tに前記型の温度を上昇させる工程であって、T 最小及びT 最大は、以下:
(i)前記ポリマー組成物が溶融転移を有さない場合、T 最小=T 最大+50℃、T 最大=T 最大+300℃、又は
(ii)前記ポリマー組成物が少なくとも1つの溶融転移を有し、及び前記ポリマー組成物の最高溶融温度T 最大がT 最大+40℃よりも低い場合、T 最小=T 最大+50℃、T 最大=T 最大+150℃、又は
(iii)前記ポリマー組成物が少なくとも1つの溶融転移を有し、及び前記ポリマー組成物の最高溶融温度T 最大がT 最大+40℃以上である場合、T 最小=T 最大+10℃、T 最大=T 最大+100℃
の通り定義される、工程と、
(d)任意選択的に、前記型の前記温度をある期間にわたって維持する工程と、
(e)工程(c)の前記温度及び100s-1の剪断速度でISO 11403-2に従って決定された5~200Pa・sの溶融粘度を有するポリマー組成物を前記型に注入し、前記型の部分的な閉鎖によって得られる空いているキャビティを充填する工程と、
(f)前記型を部品の最終的な厚さに閉鎖し、工程(c)の前記温度を維持し、0.001~0.5mm/sの圧縮速度を使用し、且つ型圧力が0.2~17.5MPaの範囲に上昇させる工程と、
(g)前記型をT 最小~T 最大の範囲である温度Tに冷却する工程であって、T 最小及びT 最大は、以下:
(i)前記ポリマー組成物が結晶化転移を有さない場合、T 最小=T 最小-100℃、T 最大=T 最小+50℃(ここで、T 最小は、前記ポリマー組成物の最低ガラス転移温度を示す)、又は
(ii)前記ポリマー組成物が少なくとも1つの結晶化転移を有する場合、T 最小=T 最小-120℃、T 最大=T 最小+25℃(ここで、T 最小は、前記ポリマー組成物の最低結晶化温度を示す)
の通り定義される、工程と、
(h)前記型を開放し、作製された複合物品を取り出し且つ回収する工程と
を含む方法
【請求項2】
前記予熱された型は、75℃~T 最大の範囲の温度を有する、請求項1に記載の方法
【請求項3】
前記補強材料は、前記型への導入前に加熱される、請求項1又は2に記載の方法
【請求項4】
温度上昇工程(c)は、1分~30分の期間で実行される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法
【請求項5】
注入工程(e)は、10秒~2分の期間で実行される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法
【請求項6】
前記複合物品は、前記複合物品の総体積に基づいて20体積%~65体積%の補強材料を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法
【請求項7】
前記ポリマー組成物の粘度の変動は、±20%未満になる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法
【請求項8】
前記半結晶性ポリマーは、完全に脂肪族のポリアミド若しくは部分的に芳香族のポリアミド又はこれらの混合物を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法
【請求項9】
前記半結晶性ポリマーは、ポリフェニレンスルフィド又は2つ以上のポリフェニレンスルフィドの混合物を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法
【請求項10】
前記ポリマー組成物は、少なくとも1つのポリアミドと、少なくとも1つのポリフェニレンスルフィドとを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法
【請求項11】
前記非晶性熱可塑性ポリマーは、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリジメチルフェニレンエーテル、ポリアリールエーテルスルホン、ポリエーテルイミド及びポリアミドイミドを含む群からの少なくとも1つである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法
【請求項12】
前記ポリマー組成物は、少なくとも1つの半結晶性ポリマーと、少なくとも1つの非晶性ポリマーとを含む混合物を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法
【請求項13】
前記ポリマー組成物は、5℃~80℃のガラス転移温度を有する少なくとも1つのポリマーと、81℃~250℃のガラス転移温度を有する少なくとも1つのポリマーとを含む混合物を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法
【請求項14】
前記ポリマー組成物は、1~50Pa・sの溶融粘度を有する少なくとも1つのポリマーと、75~350Pa・sの溶融粘度を有する少なくとも1つのポリマーとを含む混合物を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法
【請求項15】
前記ポリマー組成物は、10~125Pa・sの溶融粘度ηを示す、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法
【請求項16】
工程(h)で回収される前記複合物品を第2の型に配置し、且つ続いて射出成形を介して前記複合物品の表面を第2のポリマー組成物で少なくとも部分的にオーバーモールドする工程を更に含み、前記オーバーモールド中、前記注入された第2のポリマー組成物と前記複合物品との間の温度差は、175℃より低い、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の方法を実施するための装置であって、押出機と、型と、前記型の加熱/冷却システムと、プロセスパラメータ制御手段とを含み、(i)前記押出機は、400℃を超える動作温度において、5~200Pa・sの、100s-1で工程(c)の前記温度においてISO 11403-2によって決定される溶融粘度を有するポリマー組成物を処理することができ、(ii)前記型は、固定ブロックと可動ブロックとを含み、且つ400℃を超える温度で動作することができ、(iii)前記型の前記固定ブロック及び前記可動ブロックにおける前記加熱/冷却システムは、いくつかの独立して制御可能な加熱ゾーンを含み、且つ50℃/分までの速度で前記型を加熱し、且つ150℃/分までの速度で前記型を冷却することを可能にするように設計されており、及び(iv)プロセスパラメータ制御手段は、温度の調整又は測定のための温度センサーと、型の閉鎖中に圧力を測定するための圧力センサーとを含む、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料の製造のための布地又は工業用布地の形態における補強材料を含浸させるための熱可塑性ポリマー組成物の使用に関する。本発明の分野は、複合材料並びに成形/圧密プロセス及び得られる部品の分野である。本発明は、より具体的には、射出成形によって複合物品を製造する方法であって、少なくとも、予熱された型に少なくとも1つの補強布地を導入する工程と、型の部分的閉鎖と、型の温度上昇工程と、任意選択的に、型の温度を維持する工程と、熱可塑性ポリマー組成物を型に注入する工程と、型を閉鎖し、熱可塑性ポリマーが補強布地を通して流れることを可能にし、且つ複合物品にその最終的な厚さを達成させる工程と、冷却工程と、得られた複合物品の回収工程とを含む方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高性能材料の分野では、複合材料がもたらすその性能及び軽量化により、複合材料が重要な位置を占めている。これまでで最も知られている高性能複合材料は、熱硬化性樹脂から得られ、熱硬化性樹脂の使用は、主に、航空、エネルギー及びモータースポーツでの低~中程度の一連の用途に限定され、製造時間は、最良の場合の数十分~数時間の範囲であり、これは、熱硬化性樹脂の硬化に必要な時間を含む。これらの材料の費用及び/又は製造時間は、大量の使用に適合させることを困難にする。加えて、熱硬化性樹脂の使用には、多くの場合、溶媒及び反応性前駆体(モノマー、触媒など)の存在を伴う。最後に、これらの複合材料は、リサイクルが困難である。
【0003】
熱可塑性ポリマーには、熱硬化性樹脂に比べていくつかの利点があり、これにより、特に自動車、鉄道、エネルギー、スポーツ及びレジャーなどの大量市場又はより限定的であるが、航空産業などの発展途上の市場などにおいて、熱可塑性ポリマーが複合材料構造の開発にとって非常に興味深い可能性があるものとして見なされ得る。これらの利点には、特に延性、耐衝撃性及び疲労性を含む良好な固有の機械的性能、溶剤耐性を含む良好な化学的安定性並びに統合された部品の全体のリサイクル性が含まれる。
【0004】
連続補強を有する熱可塑性ポリマー系物品の開発は、現在、特に生産速度及び費用を含むプロセスの問題によって制限されている。市場で入手可能なポリマーは、溶融粘度が高く、典型的には250Pa・sを超えるため、特に繊維含有量が50体積%を超える場合、補強布地の含浸が困難になる。市場で入手可能な熱可塑性マトリックスに関連する含浸の難しさは、長時間の含浸時間を必要とするか、又は大きい部品で問題を引き起こすかなりの操作圧力を必要とする。ほとんどの場合、これらのマトリックスから得られた複合材料には、微小な空隙及び不十分な含浸領域があり得る。これらの微小な空隙は、材料がいくつかの補強層(ラミネート)からなる場合、機械的故障、材料の早期老化及び剥離の問題を引き起こす場合がある。
【0005】
複合物品の製造のサイクル時間を短縮しようとすると、機械的特性が失われる現象が更により顕著になる。ポリマーの高レベルの粘度は、成形技術に関して制限を課し、複雑な形状の部品を製造することができない。
【0006】
高い樹脂粘度に関連する課題を克服するために、様々な手法が開発されており、例えば混合技術又は繊維束のコーティング、適切な補強を得るためにポリマーを補強材料の近くに配置すること、又は低粘度の反応性前駆体(例えば、カプロラクタム、ラウリルラクタム、CBT(登録商標)樹脂など)を使用し、含浸後の補強材料においてその場で重合させること、又は鎖延長剤の存在下における粘度が低下したオリゴマー(プレポリマー)の使用及び補強材料の含浸後のその場でのポリマー鎖の延長などである。更に、溶融粘度が非常に低い熱可塑性ポリマーが開発されており、その場での重合への代替経路を使用することが可能になり、樹脂トランスファー成形(RTM TP)又は引抜成形(射出引抜成形TP)技術が使用されている(例えば、米国特許出願公開第2011/231249A1号明細書、米国特許出願公開第2012/322326A1号明細書、米国特許出願公開第2012/238164A1号明細書、米国特許出願公開第2013/115836A1号明細書、米国特許出願公開第2017/342267A1号明細書及び米国特許出願公開第2017/342268A1号明細書を参照されたい)。しかしながら、これらの手法には、加工性、最終性能又は費用の点において、特に大量市場へのこれらの適用を制限する特定のいくつかの欠点がある。50Pa・s未満の溶融粘度を有する熱可塑性ポリマーのみが前記RTM TPプロセスでの使用に適しており、そうでない場合、補強繊維材料を通したポリマー溶融物の流れが困難になり、射出圧力の上昇が必要になり、製品の不良が発生するからである。
【0007】
従って、本発明の目的は、良好な機械的特性などの良好な使用特性を有しながら、短いサイクル時間で製造することができる複合物品を提供することにより、これらの欠点を克服することである。別の目的は、強く印付けられた屈曲などの比較的複雑な形状を有することができる複合物品を提案することである。
【0008】
特に、熱硬化性樹脂複合材料で一般的に使用される技術である圧縮樹脂トランスファー成形(C-RTM TP)技術を使用することにより、半結晶性又は非晶性の熱可塑性ポリマー材料から複合物品を得ることが可能であることがわかっている。これらの物品の機械的性能は、例えば、フィルムスタッキングなどの従来の熱成形技術によって得られるものと同様である。C-RTM TP成形プロセスでは、ガラス、炭素又はアラミド繊維などの長い又は連続した補強繊維が事前に配置された部分的にのみ閉鎖された型に樹脂を低圧で注入し、注入後に型を完全に閉鎖すること(「クランプ」)又は型を部分的に閉鎖すること(クランプなし)で圧縮を実行することを伴う。
【0009】
米国特許出願公開第2013/0001817A1号明細書は、例えば、射出圧縮成形により、繊維強化熱可塑性複合材料を製造するための方法であって、(a)補強繊維からなる不織布Nを可動型に入れる工程と、(b)可動型を固定型に向かって動かして、型を閉鎖してクランプし、次いで熱可塑性樹脂を型に注入して、不織布N及び熱可塑性樹脂で形成された成形物品を得る工程とを含む方法を開示している。得られた繊維補強複合材料の機械的強度は、工程b)の射出成形プロセスとして圧縮成形プロセスを適用することによって高めることができる。最大繊維長は、9mm以下であり、複合材料の機械的特性のレベルによって証明されるように、複合材料の繊維含有量は、実質的に50重量%未満である。
【0010】
それにもかかわらず、従来技術の射出圧縮プロセスは、圧縮工程中に使用される圧力が依然として高いため、サイクル時間要件を満たし、且つ/又は優れた機械的性能の複合部品を提供するには不十分である場合がある。型を閉鎖する際に高いプロセス圧力及び高い圧力速度を使用すると、繊維補強材料が大幅に変形し、複合部品の機械的特性に悪影響を及ぼす。
【0011】
80℃~250℃のガラス転移温度を有する非晶性ポリマー及び100℃~380℃などの溶融温度を有する半結晶性ポリマーなどの部品材料を使用して複合部品を製造する場合、高強度の複合部品を提供するために、補強繊維材料にかかる機械的応力を低減し、こうして繊維補強材料の変形を低減する、改善された射出成形プロセスが必要とされている。
【0012】
従って、性能及び経済的要件に同時に対応する改善された射出成形プロセスの継続的な探求がある。
【発明の概要】
【0013】
特に明記されていない限り、本明細書の全ての温度は、摂氏(℃)単位である。
【0014】
複合物品は、改良された圧縮樹脂トランスファー成形(C-RTM TP)技術を使用することにより、様々な半結晶性又は非晶性の熱可塑性ポリマーから製造できることが予期せず発見された。得られた物品は、優れた機械的特性を有し、魅力的なサイクル時間で製造することができる。このようにして得られた物品は、良好な剛性及び引張り強度、良好な耐衝撃性及び良好な疲労挙動を提供する補強材料の優れた含浸を示し、これは、典型的には0.5MPa未満、好ましくは0.25未満の比較的低い射出圧力であり、サイクル時間は、含浸される補強材料の量に対応し、任意の他の成形前又は成形後の処理はない。これにより、短いサイクル時間を用いて低圧工具を使用することにより、製造費用を削減し、比較的複雑な形状を有し得る部品を製造するという利点を有する複合材料を提供することが可能になる。
【0015】
本発明による物品は、特に剛性、軽さ及びリサイクル性並びに良好な表面外観の利点を有し、強く印付けられた屈曲を提示する可能性がある。
【0016】
本発明は、比較的複雑な形状の物品を作製することを可能にし、補強材料は、所望の形状を提示するために、事前に切り込みされたプライの組み立て体の形態又は事前に形成された3Dプリフォームの形態のいずれかで導入される。
【0017】
本発明は、第1に、少なくとも1つ半結晶性熱可塑性ポリマー及び/又は少なくとも1つの非晶性熱可塑性ポリマーを含むポリマー組成物を射出成形することにより、複合物品を製造するためのプロセスであって、
(a)50℃~温度T 最大、好ましくは75℃~温度T 最大の範囲である温度Tを有する予熱された型に少なくとも1つの補強材料を導入する工程であって、T 最大は、以下:
(i)ポリマー組成物が溶融転移を有さない場合又はポリマー組成物が少なくとも1つの溶融転移を有し、及びポリマー組成物の最高溶融温度T 最大がT 最大+40℃よりも低い場合、T 最大=T 最大+40℃(ここで、T 最大は、ポリマー組成物の最高ガラス転移温度を示す)、又は
(ii)ポリマー組成物が少なくとも1つの溶融転移を有し、及びポリマー組成物の最高溶融温度T 最大がT 最大+40℃以上である場合、T 最大=T 最大
の通り定義される、工程と、
(b)型が、注入されるポリマー体積の70%~200%の体積で開放ギャップを示すように、型を部分的に閉鎖する工程と、
(c)T 最小~T 最大の範囲である温度Tに型の温度を上昇させる工程であって、
最小及びT 最大は、以下:
(i)ポリマー組成物が溶融転移を有さない場合、T 最小=T 最大+50℃、T 最大=T 最大+300℃、又は
(ii)ポリマー組成物が少なくとも1つの溶融転移を有し、及びポリマー組成物の最高溶融温度T 最大がT 最大+40℃よりも低い場合、T 最小=T 最大+50℃、T 最大=T 最大+150℃、又は
(iii)ポリマー組成物が少なくとも1つの溶融転移を有し、及びポリマー組成物の最高溶融温度T 最大がT 最大+40℃以上である場合、T 最小=T 最大+10℃、T 最大=T 最大+100℃
の通り定義される、工程と、
(d)任意選択的に、型の温度をある期間にわたって維持する工程と、
(e)工程(c)の温度及び100s-1の剪断速度で決定された5~200Pa・sの溶融粘度を有するポリマー組成物を型に注入し、型の部分的な閉鎖によって得られる空いているキャビティを充填する工程と、
(f)型を部品の最終的な厚さに閉鎖し、工程(c)の温度を維持し、0.001~0.5mm/sの圧縮速度を使用し、且つ型圧力が0.2~17.5MPa、好ましくは0.5~10MPaの範囲に上昇させる工程と、
(g)型をT 最小~T 最大の範囲である温度Tに冷却する工程であって、T 最小及びT 最大は、以下:
(i)ポリマー組成物が結晶化転移を有さない場合、T 最小=T 最小-100℃、T 最大=T 最小+50℃(ここで、T 最小は、ポリマー組成物の最低ガラス転移温度を示す)、又は
(ii)ポリマー組成物が少なくとも1つの結晶化転移を有する場合、T 最小=T 最小-120℃T 最大=T 最小+25℃(ここで、T 最小は、ポリマー組成物の最低結晶化温度を示す)
の通り定義される、工程と、
(h)型を開放し、作製された複合物品を取り出し且つ回収する工程と
を含むプロセスに関する。
【0018】
補強材料という用語は、ポリマーマトリックス以外の任意のタイプの材料、好ましくは特に接着結合、フェルト、編組、織り、縫製又は編みなどの任意の方法によって一体にされた糸状又は繊維を組み立てることによって得られる繊維構造を意味することを意図している。これらの材料は、繊維状又はフィラメント状のネットワークとも呼ばれる。糸状は、単一のタイプの繊維又は複数のタイプの繊維から密接な混合物として得られるモノフィラメント、連続マルチフィラメント糸状又は短繊維糸状を意味すると理解される。また、連続糸状は、いくつかのマルチフィラメント糸状を組み立てることによって得ることもできる。繊維とは、切断、亀裂又は変換されたフィラメント又はフィラメントの組み合わせを意味すると理解される。
【0019】
本発明による補強糸状及び/又は繊維は、好ましくは、炭素、ガラス、アラミド、ポリイミド、亜麻、麻、サイザル麻、コイア、ジュート、ケナフ及び/又はこれらの混合物から形成される糸状及び/又は繊維から選択される。より好ましくは、補強材料は、ポリマーマトリックスと適合性のある補強糸状及び/又は繊維のみから構成され、炭素、ガラス、アラミド、ポリイミド、亜麻、麻、サイザル麻、コイア、ジュート、ケナフ及び/又はこれらの混合物から形成された糸状及び/又は繊維から選択される。
【0020】
これらの補強材料は、好ましくは、50~5,000g/m、より好ましくは100~1,200g/mの坪量、即ち1平方メートル当たりの重量を有する。
【0021】
これらの構造は、ランダム、一方向性(1D)又は多方向性(2D、2.5D、3Dなど)であり得る。
【0022】
本発明による複合物品は、性質又は構造が同一であるか又は異なるいくつかの補強材料を含み得る。
【0023】
好ましくは、補強材料は、所望の形状を提示するために、事前に形成された3Dプリフォームの形態で導入される。
【0024】
補強材料は、予熱された型に導入される前に加熱することができる。
【0025】
含浸を容易にするために、補強材料と組み合わせて、樹脂の流れを容易にする排水材料又は布地を使用することが有利であり得る。補強材料は、特に熱硬化性又は熱可塑性系のバインダーを使用することによって実施することができる。
【0026】
本発明による半結晶性ポリマーは、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリアリールスルフィド(PPS)、ポリアリールエーテルスルホン、部分芳香族ポリエステル(PET、PBTなど)、ポリアセタール(POM)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK、特にPEEK及びPEKK)及びこれらの混合物を含む群から選択され得る。
【0027】
ポリアミドは、(i)少なくとも1つの非芳香族二酸又はその誘導体と少なくとも1つの芳香族ジアミンとの重縮合反応によって得られる繰り返し単位、及び/又は(ii)少なくとも1つの芳香族二酸と少なくとも1つの非芳香族ジアミンとの重縮合反応間の重縮合反応によって得られる繰り返し単位を含む少なくとも1つの半芳香族ポリアミドから選択することができる。
【0028】
二酸(若しくはその誘導体)又はジアミンは、本発明の目的のために、1つ以上の芳香族基を含む場合、「芳香族」と考えられる。二酸(若しくはその誘導体)、又はジアミン、又はアミノカルボン酸(若しくはその誘導体)は、本発明の目的のために、芳香族基を含まない場合、「非芳香族」と考えられる。
【0029】
具体的には、半芳香族ポリアミド(PA1)の50モル%超の繰り返し単位は、少なくとも1つの非芳香族二酸(又はその誘導体)と芳香族ジアミンとの重縮合反応によって得ることができる(好ましくはそれによって得られる)。
【0030】
好ましくは75モル%超、より好ましくは85モル%超の前記繰り返し単位を少なくとも1つの脂肪族二酸又はその誘導体と少なくとも1つの芳香族ジアミンとの重縮合反応によって得ることができる(好ましくは得られる)。更により好ましくは、半芳香族ポリアミド(PA1)の繰り返し単位の本質的に全て又は更に全ては、少なくとも1つの脂肪族二酸又はその誘導体と少なくとも1つの芳香族ジアミンとの重縮合反応によって得ることができる(好ましくは得られる)。
【0031】
用語二酸誘導体は、重縮合反応に有利に使用することができる酸ハロゲン化物、特に塩化物、酸無水物、酸塩、酸アミドなどを包含することが意図される。
【0032】
表現「少なくとも1つの脂肪族二酸又はその誘導体」及び「少なくとも1つの芳香族ジアミン」は、1つ以上の脂肪族二酸又はその誘導体と1つ以上の芳香族ジアミンとが、上に明記されたように反応するようにされ得ることを意味すると理解される。
【0033】
芳香族ジアミンは、好ましくは、C~C24-芳香族ジアミン、より好ましくはC~C18-芳香族ジアミン、更により好ましくはm-キシリレンジアミン(MXDA)などのC~C10-ジアミンである。芳香族ジアミンの芳香族性は、好ましくは、一般的に1~2の範囲の総量でm-フェニレン及び/又はo-フェニレン基がその中に存在することから生じる。芳香族ジアミンの非限定的な例には、以下に示すように、m-フェニレンジアミン(MPD)、p-フェニレンジアミン(PPD)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(3,4-ODA)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(4,4’-ODA)及びm-キシリレンジアミン(MXDA):
及びp-キシリレンジアミン(PXDA、表示されず)が含まれる。
【0034】
脂肪族二酸は、好ましくは、C~C16-脂肪族二酸、より好ましくはC~C12-脂肪族二酸、更により好ましくはアジピン酸などのC~C10-脂肪族二酸である。脂肪族二酸は、好ましく、は直鎖である。
【0035】
上述のように、このような脂肪族二酸は、特に遊離酸及び/又は酸クロリドの形態で重縮合反応に使用することができる。
【0036】
脂肪族二酸の非限定な例は、特にシュウ酸(HOOC-COOH)、マロン酸(HOOC-CH-COOH)、コハク酸[HOOC-(CH-COOH]、グルタル酸[HOOC-(CH-COOH]、2,2-ジメチル-グルタル酸[HOOC-C(CH-(CH-COOH]、アジピン酸[HOOC-(CH-COOH]、2,4,4-トリメチル-アジピン酸[HOOC-CH(CH)-CH-C(CH-CH-COOH]、ピメリン酸[HOOC-(CH-COOH]、スベリン酸[HOOC-(CH-COOH]、アゼライン酸[HOOC-(CH-COOH]、セバシン酸[HOOC-(CH-COOH]、ウンデカン二酸[HOOC-(CH-COOH]、ドデカン二酸[HOOC-(CH10-COOH]及びテトラデカン二酸[HOOC-(CH12-COOH]である。例えば、シクロヘキサンジカルボン酸のような、環中に4~8の炭素原子を有する少なくとも1つの炭素環を含む脂環式二酸も使用され得る。
【0037】
本発明の一実施形態によれば、MXD6ポリマーは、ポリアミド(PA1)として使用される。
【0038】
本発明の目的上、MXD6ポリマーは、半芳香族ポリアミドであって、その繰り返し単位の、全てではないにしても本質的に全ては、アジピン酸とメタ-キシレンジアミンとの重縮合反応によって得ることができる(好ましくはそれによって得られる)、半芳香族ポリアミドを表すことを意図している。
【0039】
MXD6ポリマー及びポリアミド(PA1)として好適な他のポリマーは、特に三菱ガス化学株式会社から商業的に入手可能である。MXD6と第2のポリアミド(例えば、以下でポリアミド(PA3)と呼ぶタイプのもの)とを含むポリマー材料は、Solvay Advanced Polymers,L.L.CからIXEF(登録商標)ポリアミドとして特に市販されている。
【0040】
本発明の目的のために、「半芳香族ポリアミド(PA1)」の定義は、50モル%未満、好ましくは25モル%未満、より好ましくは15モル%未満の、上記のように、少なくとも1つの脂肪族二酸又はその誘導体と少なくとも1つの脂肪族ジアミンとの重縮合反応によって得ることができる(好ましくはそれによって得られる)繰り返し単位を更に含むポリアミドを含むことも理解されたい。この特定の実施形態では、前記少なくとも1つの脂肪族ジアミンは、上に明記されたような芳香族ジアミンの1つと併せて使用されるコモノマーであり得る。前記脂肪族ジアミンは、例えば、1,2-ジアミノエタン、1,2-ジアミノプロパン、プロピレン-1,3-ジアミン、1,3-ジアミノブタン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ヘキサンジアミン又はヘキサメチレンジアミン(HMDA)、1,8-ジアミノオクタン、1,10及び-ジアミノデカン、1,12-ジアミノドデカン1-アミノ-3-Nメチル-N-(3-アミノプロピル)-アミノプロパンの中から選択され得る。好ましい脂肪族ジアミンは、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)である。例えば、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン又はビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタンのような、環中に4~8の炭素原子を有する少なくとも1つの炭素環を含む脂環式ジアミンも好適である。
【0041】
本発明のポリマー組成物中のポリアミド(PA1)の含有量は、ポリマー組成物のポリマー成分の総重量に基づいて0~50重量%、より好ましくは0~40重量%、更により好ましくは0~30重量%、更により好ましくは0~20重量%、最も好ましくは0~10重量%である。
【0042】
また、本発明のポリマー組成物は、少なくとも1つの半芳香族ポリアミド(PA2)若しくは少なくとも1つのポリアミド(PA3)又はこれらの混合物を含み得る。
【0043】
半芳香族ポリアミド(PA2)の繰り返し単位の50モル%超は、少なくとも1つの芳香族二酸又はその誘導体と少なくとも1つの脂肪族ジアミンとの重縮合反応によって得ることができる(好ましくはそれによって得られる)。
【0044】
表現「少なくとも1つの芳香族二酸又はその誘導体」及び「少なくとも1つの脂肪族ジアミン」は、1つ以上の芳香族二酸又はその誘導体と1つ以上の脂肪族ジアミンとが、上に明記されたように反応するようにされ得ることを意味すると理解される。
【0045】
脂肪族ジアミンの非限定的な例は、特に1,2-ジアミノエタン、1,2-ジアミノプロパン、プロピレン-1,3-ジアミン、1,3-ジアミノブタン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン又はヘキサメチレンジアミン(HMDA)、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、2-メチル-1,8-ジアミノオクタン、1,10-ジアミノデカン、1,12-ジアミノドデカン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、1-アミノ-3-Nメチル-N-(3-アミノプロピル)-アミノプロパン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン又はビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタンである。
【0046】
好ましい脂肪族ジアミンは、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)である。
【0047】
半芳香族ポリアミド(PA2)を生成するための重縮合反応に用いられる芳香族二酸及びこれらの誘導体は、特に限定されない。芳香族二酸の非限定な例は、特にイソフタル酸(IPA)、テレフタル酸(TPA)及び(オルト)フタル酸(OPA)を含むフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2,5-ピリジンジカルボン酸、2,4-ピリジンジカルボン酸、3,5-ピリジンジカルボン酸、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)プロパン、ビス(4-カルボキシフェニル)メタン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ケトン、4,4’-ビス(4-カルボキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)プロパン、ビス(3-カルボキシフェニル)メタン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)ケトン及びビス(3-カルボキシフェノキシ)ベンゼンである。
【0048】
好ましくは、半芳香族ポリアミド(PA2)は、ポリフタルアミド、即ち繰り返し単位の50モル%超が、IPA、TPA、PA又はこれらの誘導体から選択される少なくとも1つのフタル酸と少なくとも1つの脂肪族ジアミンとの重縮合反応によって得ることができる(好ましくはそれによって得られる)芳香族ポリアミドである。誤解を避けるために、TPA、IPA、PAの化学構造は、本明細書で以下に図示される。
【0049】
IPA、TPA及びPA又はこれらの誘導体から選択される少なくとも1つのフタル酸と少なくとも1つの脂肪族ジアミンとの重縮合反応によって得ることができる(好ましくはそれによって得られる)ポリアミドの例としては、(i)PA10T及びPA10Tのコポリマー、(ii)PA6T/66、(iii)PA6T/DT、(iv)PA6T/6I及び(v)PA9T/XTが挙げられ、これらの用語は、(i)TPAと1,10-ジアミノデカン及び任意選択的に更に脂肪族ジアミン、(ii)TPA、アジピン酸及びHMDA、(iii)TPA、HMDA及び2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、(iv)TPA、IPA及びHMDA、並びに(v)TPA、1,9-ジアミノノナン及び2-メチル-1,8-ジアミノオクタンとの重縮合反応によって得ることができる(好ましくはそれによって得られる)ポリアミドを示す。
【0050】
この好ましい実施形態による適切なポリフタルアミドは、Solvay Advanced Polymers L.L.CからAMODEL(登録商標)ポリフタルアミドとして特に入手可能である。
【0051】
半芳香族ポリアミド(PA2)は、特に好ましくは、ポリ(テレ/イソ)フタルアミドから選択され得る。
【0052】
本発明の目的のために、ポリ(テレ/イソ)フタルアミドは、以下の芳香族ポリアミドとして定義される:(i)繰り返し単位の50モル%超は、テレフタル酸、イソフタル酸と少なくとも1つの脂肪族ジアミンとの重縮合反応によって形成され、
(ii)25モル%超~50モル%までの繰り返し単位は、テレフタル酸と少なくとも1つの脂肪族ジアミンとの重縮合反応によって形成され、
(iii)繰り返し単位の1~25モル%は、イソフタル酸と少なくとも1つの脂肪族ジアミンとの重縮合反応によって形成される。
【0053】
ポリ(テレ/イソ)フタルアミドは、少なくとも1つの脂肪族二酸と少なくとも1つの脂肪族ジアミンとの重縮合反応によって形成される繰り返し単位を更に含み得る。加えて、ポリ(テレ/シソ)フタルアミドは、好ましくは、(オルト)フタル酸(PA)と少なくとも1つのジアミン(脂肪族又は芳香族)との重縮合反応によって形成される繰り返し単位を含まない。
【0054】
半芳香族ポリアミド(PA2)は、ポリテレフタルアミド又はポリイソフタルアミドからも選択され得る。
【0055】
本発明の目的のために、ポリテレフタルアミド又はポリイソフタルアミドは、繰り返し単位の50モル%超がテレフタル酸又はイソフタル酸と少なくとも1つの脂肪族ジアミンとの重縮合反応によって形成される芳香族ポリアミドと定義される。
【0056】
第1クラスのポリテレフタルアミド又はポリイソフタルアミドは、これらの繰り返し単位が、全部ではないが、本質的に全て、テレフタル酸又はイソフタル酸と少なくとも1つの脂肪族ジアミンとの重縮合反応によって形成されるそれぞれのポリアミドからなる[クラス(I)]。
【0057】
第2クラスのポリテレフタルアミド又はポリイソフタルアミドは、これらの繰り返し単位が、全部ではないが、本質的に全て、テレフタル酸及びイソフタル酸の混合物と少なくとも1つの脂肪族ジアミンとの重縮合反応によって形成されるそれぞれのポリアミドからなる[クラス(II)]。テレフタル酸対イソフタル酸のモル比は、特定の制約を受けず、一般的に85:15~15:85の範囲、好ましくは70:30~30:70の範囲であり得る。
【0058】
第3クラスのポリテレフタルアミド又はポリイソフタルアミドは、これらの繰り返し単位が、全部ではないが、本質的に全て、テレフタル酸又はイソフタル酸及び少なくとも1つの脂肪族二酸の混合物と少なくとも1つの脂肪族ジアミンとの重縮合反応によって形成されるそれぞれのポリアミドからなる[クラス(III)]。このような繰り返し単位は、テレフタルアミド又はイソフタルアミド及び脂肪族酸-アミド繰り返し単位とそれぞれ言われる。
【0059】
クラス(III)内において、サブクラスは、ポリテレフタルアミド又はポリイソフタルアミドからなり、繰り返し単位の総モル数に基づくテレフタルアミド又はイソフタルアミド繰り返し単位のモル比(即ちテレフタルアミド又はイソフタルアミド及び脂肪酸-アミドの繰り返し単位)は、60モル%以上であり、加えて、有利には80モル%以下、好ましくは70モル%以下である[サブクラス(III-1)]。
【0060】
クラス(III)内において、第2のサブクラスは、ポリテレフタルアミド又はポリイソフタルアミドからなり、繰り返し単位の総モル数に基づくテレフタルアミド又はイソフタルアミド繰り返し単位のモル比(即ちテレフタルアミド又はイソフタルアミド及び脂肪族酸-アミドの繰り返し単位)は、60モル%未満である[サブクラス(III-2)]。
【0061】
第4のクラスのポリテレフタルアミド又はポリイソフタルアミドは、これらの繰り返し単位が、全部ではないが、本質的に全て、テレフタル酸、イソフタル酸、少なくとも1つの脂肪族二酸と少なくとも1つの脂肪族ジアミンとの重縮合反応によって形成されるそれぞれのポリアミドからなる[クラス(IV)]。
【0062】
クラス(I)~(IV)のために有用な脂肪族酸及び脂肪族アミンは、ポリマー(PA1)及び(PA2)に好適として上に記載されたものである。
【0063】
別の実施形態によれば、本発明によるポリマー組成物は、少なくとも1つの脂肪族ポリアミド(PA3)を含む。
【0064】
脂肪族ポリアミド(PA3)の繰り返し単位の50モル%超は、脂肪族二酸(及び/又はその誘導体)と脂肪族ジアミンとの重縮合反応により、且つ/又はアミノカルボン酸とラクタムの少なくとも1つとの自動重縮合反応により得られる。脂肪族二酸及び脂肪族ジアミンは、ポリマー(PA1)及び(PA2)に好適であると上に記載されたものである。
【0065】
好ましくは、75モル%超、より好ましくは85モル%超の脂肪族ポリアミド(PA3)の繰り返し単位は、脂肪族二酸(及び/又はその誘導体)と脂肪族ジアミンとの重縮合反応により、且つ/又はアミノカルボン酸及び/又はラクタムの自動重縮合反応により得ることができる(好ましくはそれによって得られる)。更により好ましくは、脂肪族ポリアミド(PA3)の繰り返し単位の本質的に全て又は更に全ては、少なくとも1つの脂肪族二酸又はその誘導体と少なくとも1つの脂肪族ジアミンとの重縮合反応によって得ることができる(好ましくはそれによって得られる)。
【0066】
脂肪族ポリアミド(PA3)は、好ましくは、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(ナイロン66)、ポリ(ヘキサメチレンアゼラミド)(ナイロン69)、ポリ(ヘキサメチレンセバカミド)(ナイロン610)、ポリ(ヘキサメチレンドデカノアミド)(ナイロン612)、ポリ(ドデカメチレンドデカノアミド)(ナイロン1212)、ポリ(11-アミノ-ウンデカノアミド)(ナイロン11)及びこれらのコポリマー及び混合物からなる群から選択される。
【0067】
アミノカルボン酸及び/又はラクタムの自己重縮合反応によって得ることができる(好ましくはそれによって得られる)ポリアミドの例は、ポリカプロラクタム(ナイロン6)及びポリ(11-アミノ-ウンデカノ-アミド)(ナイロン11)である。
【0068】
より好ましくは、脂肪族ポリアミド(PA3)は、ナイロン6及びナイロン66から選択される。
【0069】
更により好ましくは、脂肪族ポリアミド(PA3)は、ナイロン66、即ち1,6-ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸(及び/又はその誘導体)との重縮合反応によって得られるポリアミドである。
【0070】
本発明のポリマー組成物に使用されるポリアミドは、特に直鎖ポリマーから星状ポリマーまでのこれらの分子構造を制御することにより、又はその合成中、特にポリアミドモノマーの重合前又はその間の、特にジアミン、ジカルボン酸、モノアミン及び/又はモノカルボン酸など、鎖の長さを変更するモノマーの添加により、これらの分子量を制御することによって得ることができる。また、多機能化合物を重合に加えることが可能である。
【0071】
また、本発明のポリマー組成物に使用されるポリアミドは、特にジアミン、ジカルボン酸、モノアミン及び/又はモノカルボン酸など、鎖の長さを変更するモノマーとポリアミドとをブレンドすること、特に溶融ブレンドすることによって得ることができる。
【0072】
また、本発明のポリマー組成物は、特に上記のポリアミドに由来するコポリアミド又はこれらのポリアミド若しくは(コ)ポリアミドのブレンドを含み得る。
【0073】
本発明の目的のために、ポリ(アリーレンスルフィド)(PPS)は、50重量%超の繰り返し単位が、一般的なタイプの1つ以上の式:
-Ar-S-(R2)
(式中、Ar基は、フェニレン又はナフチレン基などの任意選択的に置換されたアリーレン基を示し、これらは、その2つの端部のそれぞれによって2つの硫黄原子に結合され、直接C-S結合を介してスルフィド基を形成する)
の繰り返し単位(R2)であるポリマーを示すことを意図している。好ましい繰り返し単位Arは、任意選択的に置換されたp-フェニレン(
などの繰り返し単位(R2)をもたらす)及び任意選択的に置換されたm-フェニレン(
などの繰り返し単位(R2)をもたらす)である。
【0074】
任意選択的に置換されたアリーレン基Arは、非置換であり得、これは、多くの場合に好ましい。
【0075】
特定の実施形態では、任意選択的に置換されたアリーレン基Arは、ハロゲン原子、C~C12アルキル、C~C24アルキルアリール、C~C24アラルキル、C~C18アリール、C~C12アルコキシ基及びC6~18アリールオキシ基並びに置換又は非置換のアリーレンスルフィド基自体を含むが、これらに限定されない、1つ以上の置換基で置換され得、また、これらのアリーレン基は、
におけるように、その2つの端部のそれぞれによって2つの硫黄原子に結合され、直接C-S結合を介してスルフィド基を形成し、これにより、分岐した、最大で架橋したポリマー鎖が作成される。
【0076】
ポリ(アリーレンスルフィド)は、好ましくは、70重量%超、より好ましくは80重量%超、更により好ましくは90重量%超の繰り返し単位(R2)を含む。最も好ましくは、これは、(R2)以外の繰り返し単位を含まない。
【0077】
好ましいポリ(アリーレンスルフィド)は、ポリ(フェニレンスルフィド)、即ち50重量%超の繰り返し単位が、一般的なタイプの1つ以上の式:
-pPh-S-(R3)
(式中、pPh基は、その2つの端部のそれぞれによって2つの硫黄原子に結合され、直接C-S結合を介してスルフィド基を形成する、任意選択的に置換されたp-フェニレン基を示す)
の繰り返し単位であるポリマーである。pPhは、非置換であり得るが、これは、多くの場合に好ましい。
【0078】
特定の実施形態では、pPhは、ハロゲン原子、C~C12アルキル(
などの置換単位(R3)をもたらす)、C~C24アルキルアリール、C~C24アラルキル、C~C18アリール、C~C12アルコキシ基、C~C18アリールオキシ基及び置換又は非置換のアリーレンスルフィド基自体(場合により置換又は非置換のp-フェニレンスルフィド基自体)を含むが、これらに限定されない、1つ以上の置換基によって置換され得、また、これらのアリーレン基は、その2つ端部のそれぞれによって2つの硫黄原子に結合され、直接C-S結合を介してスルフィド基を形成し、例えば、
などである。
【0079】
ポリフェニレンスルフィドは、好ましくは、70重量%超、より好ましくは80重量%超、更により好ましくは90重量%超の繰り返し単位(R3)を含む。
【0080】
ポリ(アリーレンスルフィド)、特にポリ(フェニレンスルフィド)は、(R2)以外の繰り返し単位を更に含み得、(R2)以外の繰り返し単位の非限定的な例は、ジハロ化合物からの塩素原子の除去によるNaSと、一般式Cl-Ar°-D-Ar°-Clのジハロ化合物との間の反応によって形成され得る繰り返し単位である:
NaS+Cl-Ar°-D-Ar°-Cl→-Ar°-D-Ar°-S-繰り返し単位(R4)
(式中、Ar°は、任意選択的に置換されたアリーレン基であり、Dは、スルフィド(-S-)又はスルフィドにより両端で終端されたジラジカル(-S-D’-S-、この場合、D’は、任意のジラジカルであり得る)以外の任意のジラジカルであり得る)。
【0081】
繰り返し単位(R4)の両方のフラグメント-Ar°-S-は、任意選択的に置換された基Ar°のいずれもその2つの端部のそれぞれによって2つの硫黄原子に結合されておらず、直接C-S結合を介してスルフィド基を形成しているという点で繰り返し単位(R2)と異なり、それぞれのアリーレン基Ar°の少なくとも1つの端部が上記のようにDに結合している。
【0082】
繰り返し単位(R4)の非限定的な例には、
-Ar°-O-Ar°-S-、
など、-Ar°-S(=O)-Ar°-S-、
など、-Ar°-C(=O)-Ar°-S-、
など、及びこれらの混合物が含まれ、この場合、ジラジカルDは、それぞれオキシ、スルホニル又はカルボニルジラジカルである。
【0083】
ポリ(アリーレンスルフィド)に繰り返し単位(R2)以外の繰り返し単位が含まれていない場合、良好な結果が得られる。ポリ(アリーレンスルフィド)が、繰り返し単位(R3)以外の繰り返し単位を含まないポリ(フェニレンスルフィド)である場合、非常に良好な結果が得られる。ポリ(アリーレンスルフィド)が、非置換のp-フェニレン繰り返し単位以外の繰り返し単位を含まないポリ(フェニレンスルフィド)である場合、優れた結果を得ることができる。
【0084】
ポリ(アリーレンスルフィド)は、Solvay Specialty Polymers USA,LLC,Fortron Industries及びGE Plasticsなどの供給元から市販されている。商用グレードのポリ(アリーレンスルフィド)には、RYTON(登録商標)、PRIMEF(登録商標)、FORTRON(登録商標)及びSUPEC(登録商標)ポリ(フェニレンスルフィド)が含まれる。
【0085】
上で説明したように、ポリ(アリーレンスルフィド)(P2)は、直鎖ポリマー、分岐ポリマー及び/又は架橋ポリマーの形態であり得る。
【0086】
本発明による好ましい非晶性熱可塑性ポリマーは、セルロース、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリジメチルフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリアリールエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド及びこれらの混合物を含む群から選択され得る。
【0087】
本発明の目的のために、ポリアリールエーテルスルホンは、ポリマーの繰り返し単位の総重量に基づいて50重量%超の繰り返し単位が、少なくとも1つのアリーレン基と、[特に少なくとも1つのp-フェニレン基
]と、少なくとも1つのエーテル基(-O-)と、少なくとも1つのスルホン基
とを含む任意のポリマーを示すことを意図する。
【0088】
ポリアリールエーテルスルホンは、一般的に、繰り返し単位(R1)
(式中、Ar’は、芳香族二価基、特に、
である)
を、ポリアリールエーテルスルホンの繰り返し単位の総重量に基づいて50%を超える重量で含む。非常に多くの場合、ポリアリールエーテルスルホンの繰り返し単位の総重量に基づいて、繰り返し単位(R1)の重量は、90%を超える。多くの場合、ポリアリールエーテルスルホンは、単一の繰り返し単位として繰り返し単位(R1)を含み、即ち、ポリアリールエーテルスルホンは、ホモポリマーである。
【0089】
本発明に有用な産業上重要性の高いポリアリールエーテルスルホンには、以下が含まれる。
- ポリスルホン、ビスフェノールAポリスルホンとも呼ばれ、即ちその繰り返し単位が繰り返し単位(R2)であるホモポリマー:
- ポリエーテルスルホン、即ちその繰り返し単位が繰り返し単位(R3)であるホモポリマー:
、及び
- ポリフェニルスルホン、即ちその繰り返し単位が繰り返し単位(R4)であるホモポリマー:
ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PESU)及びポリフェニルスルホン(PPSU)は、それぞれUDEL(登録商標)PSU、VERADEL(登録商標)PESU及びRADEL(登録商標)PPSUとしてSolvay Specialty Polymers USA,L.L.C.から入手可能である。
【0090】
一実施形態では、本発明のプロセスのポリマー組成物は、少なくとも2つの熱可塑性ポリマーの混合物を含む。
【0091】
別の実施形態では、本発明のプロセスのポリマー組成物は、混和性である少なくとも2つの熱可塑性ポリマーの混合物を含む。
【0092】
別の実施形態では、本発明のプロセスのポリマー組成物は、非混和性である少なくとも2つの熱可塑性ポリマーの混合物を含む。
【0093】
別の実施形態では、本発明のプロセスのポリマー組成物は、部分的に混和性である少なくとも2つの熱可塑性ポリマーの混合物を含む。
【0094】
別の実施形態では、本発明のプロセスのポリマー組成物は、少なくとも1つの半結晶性ポリマーと少なくとも1つの非晶性ポリマーの混合物とを含む。
【0095】
別の実施形態では、本発明のプロセスのポリマー組成物は、少なくとも2つの半結晶性ポリマーの混合物を含む。
【0096】
別の実施形態では、本発明のプロセスのポリマー組成物は、少なくとも2つの非晶性ポリマーの混合物を含む。
【0097】
別の実施形態では、少なくとも1つの半結晶性ポリマーと少なくとも1つの非晶性ポリマー、少なくとも2つの半結晶性ポリマー又は少なくとも2つの非晶性ポリマーとの前記混合物に含まれるポリマーは、混和性、非混和性又は部分的に混和性である。
【0098】
別の実施形態では、本発明のプロセスのポリマー組成物は、5℃~80℃のガラス転移温度を有する少なくとも1つのポリマーと、81℃~250℃のガラス転移温度を有する少なくとも1つのポリマーとを含む混合物を含む。
【0099】
更なる実施形態では、ポリマー組成物は、1~50Pa・sの溶融粘度を有する少なくとも1つのポリマーと、75~350Pa・sの溶融粘度を有する少なくとも1つのポリマーとを含む混合物を含む。
【0100】
本発明による半結晶性又は非晶性熱可塑性ポリマーの溶融粘度(η)は、ISO11403-2に従い、直径50mmの面平面レオメーター(例えば、Rheometrics ScientificのARESタイプの機器)を使用して、1~100s-1の範囲の段階的剪断掃引を使用して測定することができる。ポリマーは、150μmの厚さのフィルムの形態、顆粒の形態又は粉末の形態である。ポリマーは、半結晶性の場合、その溶融温度より25~30℃高い温度になり、次いで測定が実行される。ポリマーは、非晶性の場合、その分解温度を超えないように、そのガラス転移温度より50℃~250℃高い、より好ましくは100~150℃高い温度にされ、次いで測定が実行される。粘度測定条件での本発明による熱可塑性ポリマー組成物は、5~200Pa・s、好ましくは10~125Pa・s、更に好ましくは15~100Pa・s、最も好ましくは20~80Pa・sの溶融粘度ηを示す。最適には、本発明による半結晶性又は非晶性熱可塑性ポリマーは、本発明の製造プロセス中、これらの粘度、即ちこれらの分子量を維持する。本発明の製造プロセス中の粘度変動は、ポリマー組成物の元の粘度に基づいて好ましくは±20%未満、更に好ましくは±15%未満になる。
【0101】
ケンブリッジ辞書(Cambridge Dictionary)で与えられている「溶融」の定義(「固いものから柔らかいもの若しくは液体に変えること又は何らかのものにこれを行わせること」に従い、本発明の範囲内の非晶性熱可塑性ポリマー又は半結晶性熱可塑性ポリマーの「溶融」という用語は、そのガラス転移温度を超える非晶性熱可塑性ポリマー又はその溶融温度を超える半結晶性熱可塑性ポリマーを包含することを意図している。
【0102】
本発明によるポリマー及びポリマー組成物の溶融温度、結晶化温度及びガラス転移温度は、10K/分の加熱又は冷却速度を使用する示差走査熱量測定(DSC)によって測定される溶融温度、結晶化温度及びガラス転移温度を意味する(例えば、“Thermal Analysis of Polymers”,Handbook Mettler Toledoを参照されたい)。ガラス転移は、熱流の工程として観察される。本発明によるガラス転移温度は、熱流における前記工程の中点温度を意味する。溶融又は結晶化転移は、熱流のピークとして観察される。本発明による溶融又は結晶化温度は、溶融/結晶化ピークの先端の温度を意味する。TA InstrumentsのQ2000 DSC機器を使用して、本発明による溶融/結晶化温度及びガラス転移温度を決定した。
【0103】
本明細書で上記に開示したように、熱可塑性ポリマーの混合物を含むポリマー組成物を本発明のプロセスで使用することができる。前記混合物は、混和性、非混和性又は部分的に混和性である熱可塑性ポリマーを含み得る。本発明の範囲内の混和性は、示差走査熱量測定(DSC)によって決定される混和性を示すものとする。使用されるポリマーが完全に混和性である場合、1つのガラス転移(T)のみ、及び該当する場合、溶融/結晶化転移(T/T)が、通常、T間で観察され、該当する場合、単一成分のT/Tが観察される。使用されるポリマーが部分的に混和性又は非混和性のみである場合、2つ以上のTが存在する可能性があり、該当する場合、T/TがDSC走査で表示される。
【0104】
本明細書で使用されるポリマー組成物という用語は、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含む組成物を指す。また、本発明によるポリマー組成物及び/又は複合物品は、物品の製造に使用されるポリマー系の組成物で通常使用される全ての添加剤を含み得る。従って、添加剤の例には、熱安定剤、UV安定剤、酸化防止剤、潤滑剤、顔料、染料、可塑剤、結晶化改質剤、補強充填剤、難燃剤及び衝撃改質剤が含まれる。
【0105】
本発明によるポリマー組成物は、ポリマー組成物の総体積に対して50~100体積%、好ましくは20~65体積%、より好ましくは25~60体積%の熱可塑性ポリマーを示す。
【0106】
ポリマー補強材料の品質を向上させるための添加剤も使用できる。これらの添加剤は、例えば、ポリマー組成物に組み込まれ得るか、補強材料の糸状及び/若しくは繊維に組み込まれ得るか、前記材料の糸状及び/若しくは繊維に存在し得るか、又は補強材料に堆積され得る。これらの添加剤は、ガラスの場合にはアミノシラン、グリシドシラン又はクロロシランのタイプ、炭素の場合には無水マレイン酸、ポリビニルピロリドン若しくはエポキシのタイプ又は流動化剤若しくは湿潤剤或いはこれらの組み合わせのものなどのカップリング剤であり得る。
【0107】
補強充填剤、特にいわゆる「微細」充填剤をポリマー組成物に組み込むことができる。これらの充填剤は、短いガラス繊維などの繊維性充填剤又は例えばグラファイト、カオリン、タルク、シリカ、雲母若しくはウォラストナイトなどの非繊維性充填剤から選択することができる。これらのサイズは、一般的に、0.05~50μm、好ましくは0.05~25μm、より好ましくは0.05~20μm、より好ましくは0.05~5μmである。サブミクロン又は更にナノメートルのサイズの充填剤も単独で又は他の充填剤に加えて使用することができる。
【0108】
また、本発明は、本発明の方法によって得ることができる物品に関する。物品は、特に補強布地を含むポリアミド系又はポリフェニレンスルフィド(PPS)系の複合物品であり得、この場合、ポリアミドは、10~100Pa・s、好ましくは15~80Pa・s、より好ましくは30~75Pa・sの溶融粘度ηを有し、PPSは、10~300Pa・s、好ましくは30~200Pa・s、より好ましくは50~100Pa・sの溶融粘度ηを有する。
【0109】
本発明による物品は、総体積に対して好ましくは20~65体積%、より好ましくは25~60体積%の補強材料を含む。
【0110】
本発明による圧縮樹脂トランスファー成形による複合物品の作製サイクルは、一般的に予熱された型への少なくとも1つの補強材の導入と、型の部分的閉鎖と、ポリマー溶融点又はポリマーガラス転移点を超える型の温度上昇工程と、任意選択的な温度維持工程と、ポリマーの注入工程と、補強材料の完全な含浸をもたらす部品の最終的な厚さまで型を閉鎖する工程と、冷却工程と、最後に複合物品を回収する工程とを含む。ポリマーの流れは、補強材料の平面に平行又は垂直のいずれかであり得る。
【0111】
第1の工程(a)では、補強材料は、予熱された型又は成形チャンバーに配置される。型又は成形チャンバーは、50℃~温度T 最大、好ましくは75℃~温度T 最大の範囲である温度Tに予熱され、この場合、T 最大は、以下:
(i)ポリマー組成物が溶融転移を有さない場合又はポリマー組成物が少なくとも1つの溶融転移を有し、及びポリマー組成物の最高溶融温度T 最大がT 最大+40℃よりも低い場合、T 最大=T 最大+40℃(ここで、T 最大は、ポリマー組成物の最高ガラス転移温度を示す)、又は
(ii)ポリマー組成物が少なくとも1つの溶融転移を有し、及びポリマー組成物の最高溶融温度T 最大がT 最大+40℃以上である場合、T 最大=T 最大
の通り定義される。T 最大は、10K/分の加熱速度でDSCによって決定される、少なくとも1つの半結晶性ポリマーを含むポリマー組成物の最も高い観察可能な溶融転移温度を意味する。T 最大は、10K/分の加熱速度でDSCによって決定される、少なくとも1つの非晶性ポリマーを含むポリマー組成物の最も高い観察可能なガラス転移温度を意味する。
【0112】
1つ以上の補強材料を同じ型に入れることができる。いくつかの型を同時に使用できる。好ましくは、補強材料は、本発明の以下のプロセス工程に適切である温度を得るために、予熱された型に配置される。代わりに、補強材料を非加熱の型に入れ、その後、実施される必要な温度に加熱することができる。補強材料と同時に型に金属又は複合インサートを配置することも可能である。型は、例えば、抵抗器若しくは加熱カートリッジを介したジュール効果加熱、熱伝達流体の循環又は高周波磁気誘導などの様々な既知の手段により、所望の温度にされ且つ維持される。また、プロセスのこの部分は、熱硬化性材料の樹脂トランスファー成形(RTM)で知られており、これは、補強繊維が事前に配置された閉鎖された型に樹脂を射出することからなる。工程(a)は、一般的に、低圧下又は更にゼロ圧力で実行される。
【0113】
第2の工程(b)では、型は、部分的に閉鎖され、その結果、型は、注入されるポリマー体積の70%~200%に対応する体積を有する開放ギャップを示す。換言すれば、型の部分的閉鎖は、補強材料(例えば、繊維状プリフォーム)と型表面との間の空間が0.1~7.5mm、好ましくは0.5~3mmの範囲であるように実施される。
【0114】
型の温度上昇工程(c)は、1分~30分、好ましくは1分~5分の範囲の時間で実施することができる。有利には、工程(c)は、可能な限り迅速に実行される。好ましくは、最終温度Tは、T 最小~T 最大の範囲であり、この場合、T 最小及びT 最大は、以下:
(i)ポリマー組成物が溶融転移を有さない場合、T 最小=T 最大+50℃、T 最大=T 最大+300℃、又は
(ii)ポリマー組成物が少なくとも1つの溶融転移を有し、及びポリマー組成物の最高溶融温度T 最大がT 最大+40℃よりも低い場合、T 最小=T 最大+50℃、T 最大=T 最大+150℃、又は
(iii)ポリマー組成物が少なくとも1つの溶融転移を有し、及びポリマー組成物の最高溶融温度T 最大がT 最大+40℃以上である場合、T 最小=T 最大+10℃、T 最大=T 最大+100℃
の通り定義される。最終温度は、ポリマー組成物の熱分解温度(TDT)又はその成分のTDTを超えないように選択される。本発明の目的のため、熱分解温度は、20℃/分の加熱速度及び25ml/分の窒素パージを使用するTGA(熱重量分析)熱曲線(ISO 11358)の外挿された開始温度を意味する。
【0115】
型の温度は、任意選択的に10秒~数分の期間にわたって維持される(工程(d))。
【0116】
ポリマー組成物の注入(工程(e))は、物品の形状及び型の設定に依存する期間で実施される。ポリマー組成物は、典型的には、工程(c)の温度及び100s-1の剪断速度で決定される5~200Pa・sの溶融粘度を有する。典型的な注入期間は、10秒~2分、好ましくは15秒~1分の範囲である。注入は、単一の注入点を介して一度に実施されるか、又は複数の注入点を介して複数のショットを使用して実施される。樹脂の流れを制御し、プロセス及び更なるプロセスの条件で適用される圧力に適合させる必要がある。典型的な樹脂の流速及び圧力は、低く、典型的にはそれぞれ0.5~20cm/s(好ましくは2.5~15cm/s)及び0.05~0.5MPa(好ましくは0.2MPa未満)の範囲である。工程(e)は、樹脂を型に移し、補強材料の含浸を開始するのに役立つ。空気などの閉じ込められたガスの除去を容易にし、従って部品の有孔性を回避するために、型に真空を適用することができる。
【0117】
段階的且つ制御された型の閉鎖(工程(f))により、補強材料の含浸が完了する。型の閉鎖速度は、0.001~0.5mm/sの範囲であり、0.005~0.05mm/sが好ましい。加工条件下で生じる型圧力は、典型的には、0.2~17.5MPa、好ましくは0.5~10MPaの範囲である。圧力速度の制御は、補強材料を変形させることなく補強材料を迅速に含浸させるために重要である。好ましくは、工程(f)の初期圧縮段階において、圧力は、1MPa未満に上昇する。圧縮の最終段階では、型圧力は、典型的には1~10MPaに上昇する。次いで、型の閉鎖が停止され、冷却が開始される。
【0118】
工程(g)でポリマー組成物中に半結晶性ポリマーが存在する場合、その結晶化の管理は、ポリマー鎖の構造化をもたらし、良好な複合部品性能をもたらすために冷却時に重要である。従って、該当する場合、型から部品を解放する前の冷却は、温度Tまで実施され、この場合、Tは、上限として25℃以下の結晶化の最低温度(T 最小)を超える温度及び下限として120℃以下のポリマー組成物の結晶化の最低温度を下回る温度を有する範囲である。50℃~150℃/分の典型的な速度での急速冷却が必要である。これらは、射出成形で従来使用されているものよりも高い冷却速度である。10K/分の冷却速度でDSCによって決定されるポリマー組成物のT 最小は、ポリマー組成物の最も低い観察可能な結晶化温度を意味する。結晶化転移がない場合、上記で定義したのと同じ冷却速度が適用される。冷却は、温度Tまで実施されることになり、この場合、Tは、上限として50℃以下のポリマー組成物の最低ガラス転移温度(T 最小)を超える温度及び下限として100℃以下のポリマー組成物の最低ガラス転移温度(T 最小)を下回る温度を有する範囲である。10K/分の加熱速度でDSCによって決定されるポリマー組成物のT 最小は、ポリマー組成物の最も低い観察可能なガラス転移温度を意味する。
【0119】
従って、好ましくは、工程(g)で、型を冷却する工程は、T 最小~T 最大の範囲である温度Tまで行われ、この場合、T 最小及びT 最大は、以下:
(i)ポリマー組成物が結晶化転移を有さない場合、T 最小=T 最小-100℃、T 最大=T 最小+50℃(ここで、T 最小は、ポリマー組成物の最低ガラス転移温度を示す)、又は
(ii)ポリマー組成物が少なくとも1つの結晶化転移を有する場合、T 最小=T 最小-120℃、T 最大=T 最小+25℃(ここで、T 最小は、ポリマー組成物の最低結晶化温度を示す)
の通り定義される。
【0120】
結晶化転移がないポリマー組成物の特定の実施形態では、T 最大=T 最小である。結晶化転移がないポリマー組成物の好ましい実施形態では、T 最小=T 最小-50℃である。
【0121】
少なくとも1つの結晶化転移を有するポリマー組成物の特定の実施形態では、T 最大=T 最小である。少なくとも1つの結晶化転移を有するポリマー組成物の好ましい実施形態では、T 最小=T 最小-60℃である。
【0122】
更なる実施形態では、冷却は、存在する場合、半結晶性ポリマーの結晶化を最適化し、物品の特性を改善するのに適した傾斜を適用して有利に実施することができる。
【0123】
冷却工程(g)は、1分~20分、最も好ましくは1分~5分の時間で優先的に実施される。
【0124】
最終処理工程(h)は、当業者によく知られている手順を使用して実施される。
【0125】
別の実施形態では、型からの部品の解放の直後に、工程(a)で始まる更なる作製サイクル、即ち予熱された型への補強材料の配置が続く。サイクル時間を短縮するために、工程(g)で使用される温度Tは、工程(a)で使用される温度Tと等しいか又はそれに少なくとも非常に近い温度に有利に選択される。
【0126】
複合部品の製造のための溶融熱可塑性ポリマー組成物による乾式補強(プリフォーム)材料の含浸からなる本発明の製造プロセスは、ポリマー組成物の最高溶融温度(T 最大)を超える温度又は最高ガラス転移温度(T 最大)のいずれか高い温度で動作できる高温の型を備えた射出成形機(電気型又はハイブリッド型)を使用して実施することができる。
【0127】
プロセス条件は、特に溶融射出工程に関して開発され、低いポリマー流量(典型的には2~15cm/s)、低い圧力(0.25MPa未満)約0.001~0.075MPa/sの典型的な圧力速度での型の閉鎖の正確な制御を使用する。有利には、低い粘度のポリマー組成物は、プロセス及び含浸の条件に適合された高透過性の繊維状プリフォームと組み合わせて使用される。こうして得られた技術的進歩により、典型的には数分の複合部品の作製におけるサイクル時間がもたらされる。従って、本発明は、特定の技術的選択肢で改良された標準的な射出成形機を使用して複合部品を作製するという経済的に競争力のある産業上の代替案を提案する。
【0128】
射出成形機及び高温の型を超えて、本発明のプロセスを実施するための装置は、型の熱プロファイル及び加熱/冷却速度の制御を可能にする加熱/冷却システムを含む。
【0129】
射出成形機:本発明のプロセスで使用される射出成形機は、標準的な射出成形機から開発された。射出成形機は、自動化されており、プロセスの要件に適合した特定の制御機能が装備されている。射出成形機は、型からの温度及び圧力のフィードバック又は加熱/冷却システムからのフィードバックに関して閉ループ制御を有する。溶融ポリマーを型に射出するために使用されるホットランナー及びシャッターバルブは、射出成形機によって管理される。射出成形機は、100s-1でISO 11403-2により決定される、400℃を超える動作温度で1~250Pa・sの溶融粘度を有するポリマー組成物を処理することができる。
【0130】
高温の型:型は、2つの加熱された鋼のブロックからなる:可動ブロック及び固定ブロックは、400℃を超える温度で動作することができる。中央部(成形キャビティ)は、高性能断熱材料により型枠から隔離されている。加熱は、例えば、いくつかの加熱ゾーンを含む集合体に挿入された加熱カートリッジなど、従来の技術によって行われ得る。2つのブロックの冷却は、循環する空気/水の混合物によって行われる。各ブロックは、いくつかの独立した加熱ゾーンに分割されており、成形キャビティ内の熱プロファイルを調整できる。ブロックの温度調整並びに成形キャビティの実際の温度の測定には、いくつかの熱電対が使用される。型の閉鎖を認める前に、2つの加熱されたブロック間の温度差を制御する必要がある。熱膨張による鋼の変形応力を制限し、型の変形を回避するために、成形キャビティは、両方の横方向に膨張できるように設計されている。冷却は、成形キャビティの表面にできるだけ近づけて型内の空気/水混合物を循環させることによって行われる。射出点におけるポリマー溶融注入口は、流体材料に適合したホットランナー及び特定のバルブゲートを介して制御できる。圧力センサー及び温度センサーなど、いくつかのセンサーを型に組み込むことができる。
【0131】
加熱/冷却システム及び調整:加熱は、型に挿入された発熱体の電力制御と調整によって行われる。冷却は、プレート式熱交換器を備えた水タンクからの閉回路での空気/水混合物の循環によって有利に行われる。このシステムは、型を50~75℃/分の速度で加熱し、型を150℃/分までの速度で冷却できるように設計されている。型のブロック間の温度差は、厳密に制御する必要がある。型からの全てのフィードバックデータ(型のキャビティからの圧力及び温度、調整熱電対からの温度)は、プロセスの制御、即ち射出成形機の制御、加熱/冷却工程、制御された型の閉鎖及び物品の取り出しのための型の開放を改善するために使用される。
【0132】
形状及び構造の更なる層を、本発明のプロセスによって製造された複合部品に加えることができる。これは、例えば、上記の工程(h)で回収される高温の複合物品を第2の型に入れ、続いて少なくとも部分的に射出成形を介して複合物品の表面を第2のポリマー組成物でオーバーモールドすることによって達成され得る。オーバーモールド中、注入された第2のポリマー組成物と複合物品との間の温度差が175℃より低く、好ましくは150℃より低く、より好ましくは125℃より低いことが重要である。
【0133】
オーバーモールドされた複合物品は、オーバーモールドされた複合物品を第3の連続する型に配置し、オーバーモールドされた複合物品を更なるポリマー組成物でオーバーモールドすることにより、更なるオーバーモールドを受けることができる。
【0134】
[該当する場合、オーバーモールドされた]複合物品へのオーバーモールドされた層の接着を強化するために、オーバーモールドに使用されるポリマー組成物は、好ましくは、複合物品の作製に使用されるものと同じポリマー骨格を有するポリマーを含む。更に、オーバーモールドに使用されるポリマー組成物は、本明細書で上記に指定されるように決定される、150~5,000Pa・s、好ましくは150~2,500Pa・sの範囲の溶融粘度を有する。更に、オーバーモールドに使用されるポリマー組成物は、短繊維及び/又はエラストマーノジュールなどの充填剤を含み得る。
【0135】
得られた複合物品は、優れた機械的特性を有し、5分未満の魅力的なサイクル時間で他の成形前又は成形後の圧密処理を必要とせずに製造することができる。更に、これらの物品は、良好な剛性及び引張り強度、良好な耐衝撃性並びに良好な疲労挙動をもたらす補強材料の優れた含浸を示す。これは、全て典型的には0.50MPa未満、好ましくは0.25MPa未満の比較的低い射出圧力で達成でき、30~75Pa・sを超える溶融粘度を有する熱可塑性ポリマーを使用する。低圧工具を使用し、短いサイクル時間を用いる本発明のプロセスは、製造費用の削減及び比較的複雑な形状の部品の製造という利点を有する複合物品を提供することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0136】
図1】典型的なプロセスユニット。C:樹脂加工及び注入ユニットを含む射出成形機、B:高温の型、A:型の閉鎖ユニット、D:加熱/冷却システム。
図2】典型的なプロセスサイクル。P:圧力、T:温度、P最大:最大圧力、T:導入温度(請求項1の工程(a)、(b))、A:請求項1の加熱工程(c)、T:最高温度、B:請求項1の温度維持工程(d)、C:請求項1の注入工程(e)、D:請求項1の圧縮工程(f)、E:請求項1の冷却工程(g)。
図3】プロセスサイクルに沿った高温の型の描写。A:ポリマー組成物の注入、B:型の閉鎖(圧縮)、(a):プリフォームの導入、(b):初期厚さへの閉鎖、(c):注入、(d):最終的な厚さへの閉鎖及び排出、(e):型の開放。
【実施例
【0137】
A)ポリマー
A-1:脂肪族ポリアミド(PA6):Evolite(登録商標)XS1480(Solvay)
A-2:脂肪族ポリアミド(PA66):Evolite(登録商標)XA1481(Solvay)
A-3:脂肪族ポリアミド(PA66):Technyl(登録商標)22FE1(Solvay)
A-4:ポリフェニレンスルフィド(PPS):Ryton(登録商標)QA200N(Solvay)
A-5:ポリフェニレンスルフィドブレンド(PPS):Ryton(登録商標)QA321N(Solvay)
A-6:ポリフェニレンスルフィドブレンド(PPS):Ryton(登録商標)QA200N/Ryton(登録商標)QA321N(50/50、w/w)(Solvay)
A-7:脂肪族ポリアミド(PA6)に基づく化合物:Technyl(登録商標)C246 SIV30(Solvay)
A-8:ポリフェニレンスルフィド(PPS)に基づく化合物:Ryton(登録商標)R-4-240(Solvay)
【0138】
ポリマー組成物の溶融粘度(η)(ISO 11403-2、100s-1):
A-1:T=300℃で15Pa・s、T=285℃で30Pa・s
A-2:T=275℃で50Pa・s
A-3:T=275℃で75Pa・s
A-4:T=300℃で290~300Pa・s、T=350℃で75~80Pa・s
A-5:T=300℃で25~30Pa・s、T=350℃で15~18Pa・s
A-6:T=325℃で50Pa・s
A-7:T=270℃で2,000~2,500Pa・s
A-8:T=300℃で2,250~2,500Pa・s
【0139】
B)補強材料
B-1:平織りガラス布地(600g/m):G-Weave 600P AC 80(Chromarat)
B-2:綾織りガラス布地2×2(650g/m):G-Weave 650T/PA(Chromarat)
B-3:綾織り炭素繊維布地(650g/m)、C-Weave 650T 12K HS(Chromarat)
【0140】
C)手順
本発明による試験に使用される装置:射出成形機、高温の型、加熱/冷却システム。
【0141】
1)射出成形機:電気型射出成形機、閉鎖力:125トン(Billion(仏国)のSelect H470-125T)。可塑化ユニット:直径40mm、L/Dが23.5で、400℃までで動作可能。調整されたバルブと制御されたシャフト/バルブを備えたホットランナー。自動化によるサイクルの制御。特別に開発されたソフトウェアが使用された。
【0142】
2)G.Pernoud(仏国)によって開発された高温の型(400℃)。2.5mm~5mmの調整可能な深さの190×270mmの成形キャビティ。漏れの回避は、温度に関係なく、固定ブロックと可動ブロックとの間の0.02mmの制御された機能的な間隔によって保証される。加熱は、400℃までの温度で動作可能な電気カートリッジ(40kW)によって実施される。冷却は、空気/水混合物の循環によって実施される。装備:熱電対(16)及び圧力センサー(6)。
【0143】
3)Pinette Emidecau Industries(仏国)の調整を備えた加熱/冷却。電気カートリッジによる加熱(36)。8つのゾーンの調整(型の可動ブロックに4つ/型の固定ブロックに4つ)。加熱速度:50℃/分。型内の空気/水混合物の循環による冷却。冷却速度:100~150℃/分。様々な温度及び圧力センサーからのパラメーターの自動化及び取得による監視/制御。
【0144】
射出成形機自動化と加熱/冷却システム自動化との間の通信。
【0145】
型の閉鎖は、0.01mmで変位制御される。サイズ190×270×2.5mm又は190×270×e(eが2~5mm)のプレートを作製した。注入流の順序は、定義されたプロファイル、典型的には2-10-6-4cm/sに関してプログラムされる。全ての部品は、良好な断熱性と温度調節のために完全に箱に入れられている。温度傾斜が、25~50℃/分のプロセスの工程(c)で使用される。冷却には、プロセスの工程(g)で50~150℃/分の温度傾斜が使用される。
【0146】
手順A
補強材料は、予熱された(125℃)型に入れられ、次いで部分的に閉鎖され、数分で約300℃の温度に加熱される(工程(c))。型のキャビティの温度は、280℃で1.5分間維持される(工程(d))。ポリマー組成物は、290℃(工程(e))及び0.1MPa未満の圧力で2~10cm/秒の速度を使用して注入されて、空いているキャビティを充填する。注入を停止し、所望の最終部品の厚さに達するまで、0.005~0.030MPa・s-1の圧力速度を使用して型を徐々に閉鎖する(工程(f))。冷却を開始する。型の温度は、約125℃に下げることができる。型が開放され、複合物品が取り出される。
【0147】
手順B
手順A及びCの変形形態では、サイクル時間を短縮するために、温度維持工程(工程(d))が省略され、型の段階的な閉鎖(工程(f))が(工程(e))、即ちポリマー組成物の注入中ですでに実施されている。
【0148】
手順C
補強材料は、予熱された(150℃)型に入れられ、次いで、型は、部分的に閉鎖され、数分で約290℃の温度に加熱される(工程(c))。型のキャビティの温度は、270℃で1.5分間維持される(工程(d))。ポリマー組成物は、280℃(工程(e))及び0.1MPa未満の圧力において2~10cm/秒の速度で注入されて、空いているキャビティを満たす。注入を停止し、所望の最終部品の厚さに達するまで、0.0025~0.035MPa・s-1の圧力速度を使用して型を徐々に閉鎖する(工程(f))。冷却を開始する。型の温度は、約150℃に下げることができる。型が開放され、複合物品が取り出される。
【0149】
手順D
補強材料は、予熱された(150℃)型に入れられ、次いで、型は、部分的に閉鎖され、数分で約350℃の温度に加熱される(工程(c))。型のキャビティの温度は、325℃で1.5分間維持される(工程(d))。ポリマー組成物は、335℃(工程(e))及び0.1MPa未満の圧力において、2~10cm/秒の速度で注入されて、空いているキャビティを満たす。注入を停止し、所望の最終部品の厚さに達するまで、0.003~0.05MPa・s-1の圧力速度を使用して型を徐々に閉鎖する(工程(f))。冷却を開始する。型の温度は、約150℃に下げることができる。型が開放され、複合物品が取り出される。
【0150】
手順E(比較手順)
手順Aの手順を、型の温度が200℃に設定されたことを除いて使用した(即ち米国特許出願公開第2013/0001817A1号明細書に開示されているように、成形組成物の溶融温度より低い)。
【0151】
実施例1:
ポリマー:A-1、補強材料:B-2(5つのプライ)
【0152】
実施例2:
ポリマー:A-1、補強材料:B-2(6つのプライ)
【0153】
実施例3:
ポリマー:A-2、補強材料:B-2(6つのプライ)
【0154】
実施例4:
ポリマー:A-6、補強材料:B-2(5つのプライ)
【0155】
比較例(手順Eを使用):
ポリマー:A-1、補強材料:B-2(6つのプライ)、繊維含有量:50体積%
【0156】
【0157】
【0158】
実施例5:オーバーモールド(手順F)
手順A~Dのいずれかで作製された複合物品は、オーバーモールドにそのまま使用されるか、又はこの手順Fに従い、事前に0.2~2.5ミリメートルの厚さのポリマー被覆でオーバーモールドされた物品として使用される。本発明によるオーバーモールドされた複合物品は、以下に記載される手順により、複合物品(厚さ1.75mm:4つのプライ)に対して約1~1.5mmの厚さのオーバーモールド樹脂組成物(ポリマーA-7)を射出成形することによって作製された。
【0159】
手順AによりポリマーA-1から作成された190×270×1.75mmの複合プレートをインサートとして型のキャビティ内に配置し、最大の係止力が1,250kNである射出成形機(Select H470-125T Dixit3(Billion製、仏国))を使用してポリマーA-7でオーバーインジェクション成形した。400℃を超える温度で動作可能な高温の型(G.Pernoud製、仏国)を使用した。型を100℃~180℃の温度に電気的に加熱した。オーバーインジェクション成形工程前に、複合物品は、100℃に15分間予熱されたか、又はTc最小若しくはTg最小を下回る温度で本発明のプロセスの工程(h)から得られた。射出成形機は、270℃の溶融射出温度に設定した。型の圧力を約1分間10.0MPa未満に設定し、続いて更に約1~3分間20.0MPaに設定し、その後、125℃未満に冷却した。
【0160】
接着強度
手順Fで作製したオーバーモールドされた複合物品を、ダイヤモンドブレード及び水冷を使用して、幅1.25cm、長さ6.5cmの試験片に切断した。試験片の引張り側(外側のスパン)でビームを支持することによる4点法を使用して、複合構造へのオーバーモールドされた樹脂組成物の接着/結合強度を特性評価した。
【0161】
試験は、万能試験機(インストロン)を使用して2.0mm/分で実施した。
【0162】
ビーム試験片(12.5mm×65mm)は、オーバーモールドされた複合プレートから機械加工した。ビーム試験片のオーバーモールドされた層は、試験前に、低速のダイアモンドのこぎりを使用してオーバーモールドされた層の深さの約95%を切断することによってノッチが付けられた。新しいかみそりのブレードを使用して、プレノッチを横切ってスライドさせることによりプレノッチを研いだ。試験片のノッチが付けられた側を外側のスパンの支持体に配置し、ラミネートを荷重した。得られた荷重-変位曲線は、ピークを示し、次いで急激に低下し、最終的に接着レベルに対応する安定期を示す。
【0163】
表3は、オーバーモールド試験片から得られた結果を列挙する。
【0164】
【0165】
表3に示すように、熱可塑性ポリマー組成物のオーバーモールドと複合物品との間の接着は、溶融温度と複合インサート温度との温度差の関数である。
図1
図2
図3