(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】加工プロセスの特性値を求める方法および加工機械
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20230719BHJP
B23K 26/38 20140101ALI20230719BHJP
B23K 26/03 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
B23K26/00 P
B23K26/38 A
B23K26/03
(21)【出願番号】P 2021519882
(86)(22)【出願日】2019-10-11
(86)【国際出願番号】 EP2019077612
(87)【国際公開番号】W WO2020074713
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-10-19
(31)【優先権主張番号】102018217526.8
(32)【優先日】2018-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502300646
【氏名又は名称】トルンプフ ヴェルクツォイクマシーネン エス・エー プルス コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Werkzeugmaschinen SE + Co. KG
【住所又は居所原語表記】Johann-Maus-Str. 2, 71254 Ditzingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ボリス レゴー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンフリート マグ
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-183455(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0319980(US,A1)
【文献】特開2008-132514(JP,A)
【文献】特開2016-055326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00
B23K 26/38
B23K 26/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工プロセス、特にレーザ切断プロセス時にプロセス品質のための少なくとも1つの特性値(α,γ,P
X,
Y,R
φ)を求めるための方法であって、
加工工具、特にレーザ切断ヘッド(4)とワーク(8)とを互いに対して相対的に運動させながら前記ワーク(8)を特に切断加工するステップと、
前記ワーク(8)において、好適には前記加工工具、特に前記レーザ
切断ヘッド(4)と前記ワーク(8)との相互作用領域(17)を含む領域(26)を監視するステップと、
前記監視された領域(26)に基づいて、前記プロセス品質のための少なくとも1つの特性値(α,γ,P
X,
Y,R
φ)を求めるステップと
を含んでいる方法において、
同一の加工位置(B
X,
Y)における少なくとも1つの特性値(α)の複数の測定値(α
1,...α
N)に基づいて、前記プロセス品質のための、位置に依存する少なくとも1つの特性値(α(x,y))を求めるステップ
および/または
同一の加工方向(Bφ)での、特に1つの同一の加工位置(B
X,
Y)における同一の加工方向(Bφ)での少なくとも1つの特性値(α)の複数の測定値(α
1,...α
N)に基づいて、前記プロセス品質のための、方向に依存する少なくとも1つの特性値(α
φ,α
φ(x,y))を求めるステップ
が設けられて
おり、
前記特性値が、切断カーフ(9)の切断フロント(9a)の切断フロント角(α)および前記切断カーフ(9)の2つの切断側面(33a,b)の間の開放角(γ)を含む群から選択されている、加工プロセス時にプロセス品質のための少なくとも1つの特性値(α,γ,P
X,
Y,R
φ)を求めるための方法。
【請求項2】
前記プロセス品質のための前記位置に依存する特性値(α(x,y))および/または前記方向に依存する特性値(α
φ,α
φ(x,y))を求めるために、前記複数の測定値(α
1,...α
N)の統計的な分析を実施する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記特性値(α)を、加工プロセス中に連続的に検出し、前記測定値(α)の、瞬間的に求められた測定値を、それぞれの加工位置(B
X,
Y)および/またはそれぞれの加工方向(B
φ)に割り当てる、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記位置に依存する特性値(α(x,y))に基づき、前記加工時に少なくとも1つの妨害位置領域(37)形成する加工位置(B
X,
Y)を求める、かつ/または前記方向に依存する特性値(α
φ,α
φ(x,y))に基づき、前記加工時に少なくとも1つの妨害角度領域(38)を形成する加工方向(B
φ)を特定する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記加工工具と前記ワーク(8)との互いに対して相対的な運動時の加工位置(B
X,
Y)および/または加工方向(B
φ)を、求められた前記位置に依存する特性値(α(x,y))に依存して、特
に妨害位置領域(37)に依存して、かつ/または前記方向に依存する特性値(α
φ,α
φ(x,y))に基づいて、特
に妨害角度領域(38)に基づいて決定する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
同一の加工機械(1)における複数の加工プロセスにおいて、前記少なくとも1つの特性値(α)の前記複数の測定値(α
1,...α
N)を求め、かつ/または前記位置に依存する特性値(α(x,y))および/または前記方向に依存する特性値(α
φ,α
φ(x,y))を、複数の構造同一の加工機械(1)において求める、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
同一の加工機械(1)における複数の加工プロセスにおいて、前記少なくとも1つの特性値(α)の前記複数の測定値(α
1,...α
N)を求め、かつ前記位置に依存する特性値(α(x,y))および/または前記方向に依存する特性値(α
φ,α
φ(x,y))を求める場合に、前記測定値(α
1,...α
N)の時間的な変化を考慮する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
求められた前記位置に依存する特性値(α(x,y))および/また
は妨害位置領域(37)および/または求められた前記方向に依存する特性値(α
φ,α
φ(x,y))および/また
は妨害角度領域をデータメモリ(36)内に保存するステップをさらに含む、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記特性値が、前記加工工具と前記ワーク(8)との間の互いに対して相対的な運動時の位置決め精度(P
X,
Y)および方向精度(R
φ)を含む群から選択されている、請求項1から
8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
加工機械、特にレーザ加工機械(1)であって、
ワーク(8)を特に切断加工するための加工工具、特にレーザ
切断ヘッド(4)と、
前記ワーク(8)と前記加工工具とを互いに対して相対的に運動させるための運動装置(13)と、
前記ワーク(8)において、好適には前記加工工具、特に前記レーザ
切断ヘッド(4)と前記ワーク(8)との相互作用領域(17)を含む領域(26)を監視するための監視装置(20)と、
前記監視された領域(26)に基づいて、プロセス品質のための少なくとも1つの特性値(α,γ,P
X,
Y,R
φ)を求めるように構成されている評価装置(32)と
を含んでいる加工機械において、
前記評価装置(32)は、
同一の加工位置(B
X,
Y)における少なくとも1つの特性値(α)の複数の測定値(α
1,...α
N)に基づいて、前記プロセス品質のための、位置に依存する少なくとも1つの特性値(α(x,y))を求め、
かつ/または
同一の加工方向(B
φ)に沿った、特に1つの同一の加工位置(B
X,
Y)における同一の加工方向(B
φ)に沿った少なくとも1つの特性値(α)の複数の測定値(α
1,...α
N)に基づいて、前記プロセス品質のための、方向に依存する少なくとも1つの特性値(α
φ,α
φ(x,y))を求め
、
前記監視装置(20)と前記評価装置(32)とは、前記監視された領域(26)に基づいて、前記プロセス品質のための特性値として、切断カーフ(9)の切断フロント(9a)の切断フロント角(α)、前記切断カーフ(9)の2つの切断側面(33a,b)の間の開放角(γ)、前記加工工具と前記ワーク(8)との間の互いに対して相対的な運動時の位置決め精度(P
X
,
Y
)および方向精度(R
φ
)を求める
ように構成されていることを特徴とする、加工機械。
【請求項11】
前記評価装置(32)は、前記プロセス品質のための前記位置に依存する特性値(α(x,y))および/または前記方向に依存する特性値(α
φ,α
φ(x,y))を求めるために、前記複数の測定値(α
1,...α
N)の統計的な分析を実施するように構成されている、請求項
10記載の加工機械。
【請求項12】
前記監視装置(20)は、前記特性値(α)を、連続的に監視するように構成されていて、前記評価装置(32)は、前記測定値(α)の、瞬間的に求められた測定値を、それぞれの加工位置(B
X,
Y)および/またはそれぞれの加工方向(B
φ)に割り当てるように、構成されている、請求項
10または
11記載の加工機械。
【請求項13】
前記評価装置(32)は、前記位置に依存する特性値(α(x,y))に基づき、前記加工時に少なくとも1つの妨害位置領域(37)を形成する加工位置(B
X,
Y)を求め、かつ/または
前記方向に依存する特性値(α
φ,α
φ(x,y))に基づき、前記加工時に少なくとも1つの妨害角度領域(38)を形成する加工方向(B
φ)を求めるように、構成されている、請求項
10から
12までのいずれか1項記載の加工機械。
【請求項14】
前記加工工具と前記ワーク(8)との互いに対して相対的な運動を制御するための制御装置(35)がさらに含まれており、該制御装置(35)は、好適には、前記加工工具と前記ワーク(8)との互いに対して相対的な運動時の前記加工位置(B(
X,
Y))および/または前記加工方向(Bφ)を、求められた前記位置に依存する特性値(α(x,y))に依存して、特
に妨害位置領域(37)に依存して、かつ/または前記方向に依存する特性値(α
φ,α
φ(x,y))に基づいて、特
に妨害角度領域(38)に基づいて決定するように、構成されている、請求項
10から
13までのいずれか1項記載の加工機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工プロセス、特にレーザ切断プロセスにおいてプロセス品質のための少なくとも1つの特性値を求めるための方法であって、加工工具、特にレーザ加工ヘッドとワークとを互いに対して相対的に運動させながらワークを特に切断加工するステップと、ワークにおいて、好適には加工工具とワークとの相互作用領域を含む領域を監視するステップと、監視された領域に基づき、プロセス品質のための少なくとも1つの特性値を求めるステップとを含む方法に関する。本発明は、加工機械であって、ワークを特に切断加工するための加工工具と、加工工具とワークとを互いに対して相対的に運動させるための運動装置と、ワークにおいて、好適には加工工具とワークとの相互作用領域を含む領域を監視するための監視装置と、監視された領域に基づいて、プロセス品質のための少なくとも1つの特性値を求めるように構成されている評価装置とを含む加工機械にも関する。
【0002】
このような方法および対応する装置は、たとえば国際公開第2012107331号から知られている。上掲の明細書には、特にプロセス品質のための特性値として、レーザ切断プロセスの切断フロント角(Schneidfrontwinkel)を求めることができることが記載されている。
【0003】
国際公開第2015036140号からも、検出された相互作用領域に基づいて、レーザ切断プロセス時に形成された切断カーフの切断フロント角が切断プロセスの特徴的な特性値として求められる方法および装置が知られている。切断フロント角は、特にガス切断時のプロセス品質もしくはプロセス頑健性のための特性値を成す。
【0004】
国際公開第2018069291号には、ワークの厚さ方向での切断カーフのギャップ幅の形状のための、特に切断カーフの両切断側面の間の角度のための少なくとも1つの測定値を、ワークの監視すべき領域の少なくとも1つの画像に基づいて求める方法および装置が記載されている。切断カーフの両切断側面の間の(開放)角度は、特に溶断時のプロセス品質もしくはプロセス頑健性のための特性値を成す。
【0005】
独国特許出願公開第102005022095号明細書には、ワークの加工時の加工ヘッドとワークとの間の横方向の相対運動を決定するための方法および装置が記載されている。この方法では、ワークの表面に、加工ヘッドの領域で光線が当てられ、ワークの表面から反射された光線が、繰り返し光学検出器により場所解像されて検出され、これにより、異なる時間におけるワークの表面の光学的な反射パターンを得ることができる。横方向の相対運動は、時間的に相前後して続く反射パターンの比較により求められる。
【0006】
欧州特許出願公開第3159093号明細書からは、切断工程中断を伴う高出力領域におけるレーザ切断工程を制御するための方法および対応する方法が記載されている。この方法では、第1の部分加工工程中に切断される加工区間の少なくとも1つの部分区間がスキャンされ、スキャン結果に基づいて、加工プロセスの少なくとも1つの品質特徴が決定され、予め規定された品質設定と比較される。切断工程のためには、付加的に少なくとも一時的にオンラインプロセス監視法を実施することができ、それぞれの比較結果により、オンライン監視パラメータセットの少なくとも1つの監視パラメータの調整が行われる。
【0007】
独国特許出願公開第102011079083号明細書には、ワークを加工するための方法が記載されている。この方法では、加工すべきワークの表面トポグラフィが少なくとも部分的に検出され、予め検出された表面トポグラフィに基づいて、ワークから加工ヘッドの最小の目標間隔が決定される。
【0008】
欧州特許出願公開第1497851号明細書からは、基板のレーザ切断のために、焦点面におけるレーザエネルギ密度を出力測定器により位置に依存して測定し、測定された値を、パルスエネルギおよび/またはパルス繰返し速度の制御により、基板上の視界内のスキャンポイントにおいて一定のレーザエネルギ密度を供給するために使用することが知られている。このレーザは、機械固有のレーザ切断ストラテジデータにより制御される。
【0009】
本発明の課題
本発明の根底にある課題は、加工のために使用される加工機械における障害を検知するために、加工プロセスの少なくとも1つの特性値を求める方法および装置を提供することにある。
【0010】
本発明の対象
この課題は、本発明によれば、冒頭で述べた形式の方法であって、同一の加工位置における少なくとも1つの特性値の複数の測定値に基づいて、プロセス品質のための、位置に依存する少なくとも1つの特性値を求めるステップおよび/または同一の加工方向での、特に1つの同一の加工位置における同一の加工方向での少なくとも1つの特性値の複数の測定値に基づいて、プロセス品質のための、方向に依存する少なくとも1つの特性値を求めるステップにより優れている方法により解決される。本出願の意図において、プロセス品質という用語は、プロセス頑健性とも理解される、つまり両用語は同義語として使用される。プロセス品質のための特性値とは、本出願の意図において、プロセス品質に影響を与える特性値であるとも理解される。
【0011】
特に、面状で加工する加工機械、たとえば二次元レーザ加工機械は、プロセス結果もしくはプロセス品質に影響を与える方向および/または位置に依存する妨害(Stoerung)を有している。このような妨害は、典型的には、専ら加工位置もしくは加工方向に依存するが、切断すべき輪郭の幾何学形状、加工プロセスの種類(たとえばガス切断や溶断)および加工パラメータには基本的に依存しない。妨害とは、本出願の意図において、基準状態からの逸脱であると理解される。
【0012】
たとえば、位置に依存する妨害は、加工空間に配置された(支持)ウェブにおいて発生し、方向に依存する妨害は、レーザビームの偏光および/または火線(Kaustik)の不均一性、ガス流もしくは加工時にノズルから流出するガス流の(たとえば、ノズルの損傷またはノズルにガスを供給する加工ヘッドが完全に対称的に構成されていないことに基づく)ガス圧力の不均一性、材料異方性等に起因する。上述の方法により、このような方向および/または位置に依存する妨害を検出する、局所化することが可能である。この目的のためには、特性値の十分な数の測定値によって、位置または方向に依存しない妨害によって引き起こされる同様に発生する偏差を排除することが必要であり、これにより、(実質的に専ら)位置もしくは方向に依存する特性値が形成される。除去のために必要とされる特性値の測定値の個数は、方向および/または位置に依存する妨害がどのくらい著しいかに依存する。測定値の個数は、妨害の位置および/または方向への依存性が比較的小さくなる場合、(極端な場合には)3個の測定値から数百個の測定値に達することもある。たとえば、レーザビームのわずかに不均一であるビーム火線により引き起こされる方向に依存性する妨害時に、多数の測定値が必要となされる一方で、支持ウェブの通過時に検出されるレーザ切断センサ機器の光信号がある場合に、位置に依存しない妨害の寄与を排除するためには、特性値の少数の測定値が必要である。
【0013】
本出願の意図において、方向に依存する特性値とは、加工方向に依存し、たとえば角度(0°から360°の間)によりパラメータ化される特性値であると理解される。方向に依存する少なくとも1つの特性値は、場合によっては、それぞれの加工位置に依存せずに求めることができる。つまり、方向に依存する少なくとも1つの特性値は、加工位置に応じて区別されるのではなく、方向に依存する特性値を求めるために、加工フィールド全体から複数の加工位置における測定値が使用される。しかし、通常、方向に依存する特性値は、それぞれの加工位置において求められる、つまり、方向に依存する特性値を求めるために使用される測定値は、すべて同一の加工位置において測定される。
【0014】
1つのバリエーションでは、プロセス品質のための位置に依存する特性値および/または方向に依存する特性値を求めるために、複数の測定値の統計的な分析が実施される。最も単純な場合、位置に依存する特性値および/または方向に依存する特性値は、それぞれの加工位置において、もしくはそれぞれの加工方向で求められた測定値の平均値を形成することができる。ただし、平均値は、すべての場合において、複数の測定値から位置もしくは方向に依存する特性値を求めるために適切な尺度ではなく、方向もしくは位置に依存しない妨害を排除するために、別の統計的な尺度、たとえば中央値またはより複雑な統計的な評価を実施することができる。
【0015】
別の1つのバリエーションでは、特性値は、加工プロセス中に連続的に、たとえば、センサもしくは監視装置によって検出され、特性値の瞬間的に求められた測定値は、それぞれの加工位置および/またはそれぞれの加工方向に割り当てられる。加工中のプロセス品質を監視するためには、たとえば加工プロセスに瞬時に介入できるようにするために、典型的にはプロセス品質のための少なくとも1つの特性値が継続的に監視される。加工プロセス中に特性値を求めることは、レーザ切断プロセス時の切断輪郭に一致し、機械制御装置に既知である予め規定された軌道カーブに沿って行われる。したがって、特定の時点において求められた特性値を、1つの加工位置および(瞬間的な)加工方向に割り当てることができる。場合によっては、たとえば、加工方向もしくは加工工具とワークとの間の横方向の相対的運動に関して冒頭で引用した独国特許出願公開第102005022095号明細書において記載されているように、瞬間的な加工方向もしくは場合によっては加工位置も同様に、センサもしくは監視装置によって検出することができる。なお、加工位置もしくは加工方向は、典型的には、予め規定された離散化を有している、つまり連続的に検出された特性値に割り当てられる予め規定されたパターンを有している。
【0016】
別の1つのバリエーションでは、位置に依存する特性値に基づいて、加工時に少なくとも1つの妨害位置領域を形成する加工位置を求め、かつ/または方向に依存する特性値を用いて、加工時に少なくとも1つの妨害角度領域を形成する加工方向を規定する。同一の加工位置もしくは同一の加工方向で頻繁に測定することにより、優先位置や優先角度もしくは妨害位置もしくは妨害角度を特定することができる。また、妨害位置もしくは妨害角度の特定は、同様に、位置に依存する特性値もしくは方向に依存する特性値に基づく統計的な方法により行うことができる。最も単純な場合では、位置に依存する特性値または方向に依存する特性値と閾値との比較に基づいて、妨害位置領域もしくは妨害角度領域が求められる。特性値が閾値を上回るか、または下回った加工位置もしくは加工方向が妨害位置領域もしくは妨害角度領域として特定される。
【0017】
たとえば、レーザ加工機械の場合、優先角度領域もしくは妨害角度領域を求めることができる。優先角度領域もしくは妨害角度領域の要因は、たとえば、加工ビーム(偏光、火
線の不均一性、入射角等)、加工工具および/またはワークの運動のために使用される運動装置もしくは駆動装置(横方向および/または長手方向振動)、またはたとえば、ワークの材料(異方性、圧延方向)などにある。
【0018】
したがって、加工位置もしくは作業空間内の位置に依存し、その要因が、たとえば、(特にCO2レーザの場合に)レーザビームガイド、たとえばレーザ加工ヘッドの形の加工工具の機械的な懸架、(たとえば突出した支持部における好ましくないモーメント、歯車バックラッシュ、機械的な公差等)、ワーク(金属薄板)の機械的な支承、たとえばプレート振動、劣悪または少なすぎる支持ウェブ、ウェブの支持点(支持点を超えた場合の潜在的なエラー箇所、スラグ化したウェブによるプロセスへの影響)またはワークもしくは金属薄板特性(縁部領域における肉薄化、汚れた領域)にある妨害位置領域を決定することができる。
【0019】
1つのバリエーションでは、加工工具とワークピースとの互いに対して相対的な運動時の加工位置および/または加工方向が、求められた位置に依存する特性値、特に妨害位置領域に関連して、かつ/または方向に依存する特性値、特に妨害角度領域に基づいて決定される。特に良好であるプロセス特性もしくは特に劣悪なプロセス特性を備えた領域および/または方向に関する知識は、加工時の妨害位置領域または妨害角度領域を回避するために使用することができ、このことは、たとえば、ワークから自由に切断されるべきワーク部分の切断輪郭の適切な入れ込み(Schachtelung)もしくは配置によって、つまり機械加工プロセスの適切なプロセスプランニングにより実現することができる。なお、目的に合ったエラー診断も行うことができ、つまり、妨害の原因のための目的に合った検査を、それぞれの妨害位置領域もしくはそれぞれの妨害角度領域において実施することができる。エラー診断も作業プランニングの最適化、つまり重要な妨害位置領域もしくは妨害角度領域の回避は、オペレータの介入なしに完全に自動で行うことができる。
【0020】
別の1つのバリエーションでは、同一の加工機械における複数の加工プロセスにおいて、少なくとも1つの特性値の複数の測定値を求め、かつ/または位置に依存する特性値および/または方向に依存する特性値を、複数の構造同一の加工機械において求める。第1の場合では、エラーを特定するために、1つの特定の加工機械において、位置もしくは方向に依存する特性値を求め、第2の場合、同一の構造の複数の加工機械において位置もしくは方向に依存する特性値を求める。複数の同一の加工機械において求められた偏光もしくは方向に依存する特性値の間の比較により、個々の加工機械の影響を排除することができ、加工機械のそれぞれのタイプの機械構造の系統的な弱点を確認することができる。
【0021】
別の改良形では、同一の加工機械における複数の加工プロセスにおいて、少なくとも1つの特性値の複数の測定値を求め、位置に依存する特性値および/または方向に依存する特性値を求める場合に、測定値の時間的な変化を考慮する。1つの同一の加工機械における連続した加工プロセスにおいて求められる少なくとも1つの特性値の測定値は、時間的な変化を受けてしまう。測定値が求められる特性値が、たとえば、レーザビームのビーム方向の焦点位置である場合、この特性値は、たとえば、加工光学系の汚れにより時間的に変化する。なぜならば、この特性値は、いわゆる熱レンズ効果をもたらし、焦点位置の変化が生じるからである。測定値に統計的に有意な時間的変化が突き止められた場合、この変化は、特性値を求める場合に、考慮することができる。
【0022】
概して、特性値を求める場合に、古い測定値に、それほど昔に行われていない機械加工プロセス時に求められた測定値に比べて、あまり強く重み付けしないことにより、測定値の時間的な変化を考慮することが可能である。場合によっては、かなり昔に行われた加工プロセスにおいて求められた測定値を、特性値を求める場合に、もはや考慮しないことができる。特に、これらの測定値は、場合によっては廃棄または削除することができる。
【0023】
別の1つのバリエーションでは、本方法は、求められた位置に依存する特性値および/または妨害位置領域ならびに/または求められた方向に依存する特性値および/または妨害方向領域をデータメモリに保存するステップを含む。データメモリ内、たとえば機械制御装置内、中央コンピュータ、またはクラウド上で、妨害位置領域および/または妨害位置方向に関するデータが収集される。特に、データメモリ内に、異なる場所で運転される複数の加工機械から、位置に依存する特性値もしくは角度に依存する特性値もしくは妨害位置領域もしくは妨害角度領域を集めることができる。
【0024】
1つのバリエーションでは、特性値は、切断カーフの切断フロントの切断フロント角および切断カーフの2つの切断側面の間の開放角を含む群から選択されている。切断フロント角は、特にガス切断におけるプロセス品質の特性値を成し、たとえば、冒頭で引用した国際公開第2012107331号に記載されている形式または冒頭に引用した国際公開第2015036140号に記載されている形式で求めることができる。たとえば、切断カーフの切断側面の間の開放角もしくは開放角のための間接的な測定サイズにより求めることができる(冒頭で引用した国際公開第2018069291号参照)ワークの厚さ方向での切断ギャップの切断カーフの幅の減少は、溶断時のプロセス品質またはプロセス頑健性のための特性値を成す。
【0025】
別の1つのバリエーションでは、特性値は、加工工具とワークとの互いに対して相対的な運動時の位置決め精度および方向性精度を含む群から選択されている。位置決め精度もしくは方向性精度も、加工品質への影響を有しており、加工工具の懸架もしくはワークの支承に基づいて、加工位置もしくは加工方向に依存する。加工時の方向精度は、たとえば、冒頭で引用した独国特許出願公開第102005022095号明細書に記載された方法により求めることができる。この方法は、加工工具とワークとの間の横方向の相対運動を記載する。軌道プランニングに基づいて得られた目標加工方向との比較により、それぞれの加工位置における相対運動の方向精度を求めることができる。対応して、瞬間的な加工位置も、適切なセンサもしくは適切な監視装置を介して求めることができ、位置決め精度を求めるために、軌道プランニングに基づいて得られた目標加工位置と比較することができる。
【0026】
本発明の別の態様は、冒頭で述べた種類の加工機械であって、評価装置が、同一の加工位置における少なくとも1つの特性値の複数の測定値に基づいて、プロセス品質のための、位置に依存する少なくとも1つの特性値を求め、かつ/または同一の加工方向に沿った、特に1つの同一の加工位置における同一の加工方向に沿った少なくとも1つの特性値の複数の測定値に基づいて、プロセス品質のための、方向に依存する少なくとも1つの特性値を求めるように、構成もしくはプログラミングされていることを特徴とする。方法に関連して上述したように、加工機械において、位置および/または方向に依存する特性値に基づいて、位置および/または方向に依存する妨害を求めることができる。加工機械は、特に、いわゆる二次元レーザ切断機械であってよく、この加工機械では、ワークが、典型的には、ワーク支持台上に置かれており、レーザ加工ヘッドの形態の加工工具は、ワーク上で横方向に運動する。
【0027】
1つの実施形態では、評価装置は、プロセス品質のための位置に依存する特性値および/または方向に依存する特性値を求めるために、複数の測定値の統計的な分析を実施するように構成またはプログラムされている。上述したように、測定値の統計的な分析もしくは評価は、加工位置および/または加工方向に依存しないプロセス品質への影響を排除するために、使用することができる。
【0028】
別の1つの実施形態では、監視装置は、特性値を、加工プロセス中に連続的に検出するように構成されていて、評価装置は、測定値の、瞬間的に求められた測定値を、それぞれの加工位置および/またはそれぞれの加工方向に割り当てるように、構成されている。評価装置は、加工工具内に設けられていてもよいが、加工機械の制御装置の一部であってもよい。
【0029】
別の1つの実施形態では、評価装置は、位置に依存する特性値に基づき、加工時に少なくとも1つの妨害位置領域を形成する加工位置を求め、かつ/または方向に依存する特性値に基づき、加工時に少なくとも1つの妨害角度領域を形成する加工方向を求めるように、構成もしくはプログラムされている。本実施形態に関しては、方法に関連した上記の説明を参照されたい。
【0030】
別の1つの実施形態では、加工機械は、加工工具とワークとの互いに対して相対的な運動を制御するための制御装置を含んでおり、この制御装置は、好適には、加工工具とワークとの互いに対して相対的な運動時の加工位置および/または加工方向を、求められた位置に依存する特性値に依存して、特に妨害位置領域に依存して、かつ/または方向に依存する特性値に基づいて、特に妨害角度領域に基づいて決定するように、構成されている。上述のように、妨害位置領域もしくは妨害角度領域は、これらの妨害位置領域もしくは妨害角度領域を加工時にできるだけ回避するために、作業プランニング時もしくは金属薄板配置時に考慮することができる。
【0031】
1つの実施形態では、監視装置と評価装置とは、監視された領域に基づいて、プロセス品質のための特性値として、切断カーフの切断フロントの切断フロント角、切断カーフの2つの切断側面の間の開放角、加工工具とワークとの間の互いに対して相対的な運動時の位置決め精度および方向精度を求めるように、構成されている。相対運動時の位置決め精度および/または方向精度を表す特性値は、たとえば、駆動装置の不均一な運動(チャタリング)に起因する、目標運動に対する実際運動の偏差であってもよい。求めることができる別の特性値は、切断ギャップ幅もしくは目標切断ギャップ幅からの切断ギャップ幅の偏差、加工ノズルの噴射位置、(加工)ノズルとワークとの間の間隔の、目標値からの偏差、ノズルを通過する圧力もしくはガス流量の目標値からの偏差、ノズルとワークの間の電気的な抵抗、ならびに決定されたもしくは予め規定された波長帯においてセンサによって、たとえば突き刺しセンサにおけるフォトダイオードによって同軸上で測定された放射線強度がある。これらの特性値を求めることは、特に方法に関連して上述した方法で行うことができる。
【0032】
本発明の別の利点は、本明細書および図面から判る。同様に、上述の特徴およびさらに説明される特徴は、それぞれそれ自体でも、任意の組合せにおいて複数でも使用することができる。図示され、説明される実施形態は、完結したリストとして理解すべきではなく、むしろ本発明を説明するための例示的な性格を有している。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】ワークを切断加工するためのレーザ加工機械の形の加工機械の実施例を示す概略図である。
【
図2】aは、
図1に示したレーザ加工機械の、監視装置を有するレーザ加工ヘッドを示す図であり、bは、監視装置の絞りを示す図である。
【
図3】ワークにおけるレーザ切断プロセス時に形成される切断カーフの詳細の3次元図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下の図面の説明において、同一もしくは機能同一の構成部材のためには、同一の参照符号が使用される。
【0035】
図1は、レーザ源2、レーザ加工ヘッド4およびワーク支持台5を備えたレーザ加工機械1を示している。レーザ源2により形成されたレーザビーム6は、ビームガイド3により偏向ミラー(図示せず)を用いてレーザ加工ヘッド4へとガイドされ、このレーザ加工ヘッド4内で集束され、同様に図示しないミラーによりワーク8の表面8aに対して垂直方向に位置調整される、つまりレーザビーム6のビーム軸(光学軸)は、ワーク8に対して垂直方向に延びている。図示された例では、レーザ源2は、CO
2レーザ源である。代替的には、レーザビーム6は、たとえば固体レーザにより形成することができる。
【0036】
ワーク8をレーザ切断するために、レーザビーム6がまず突き刺し(eingestochen)を行う、つまりワーク8が1つの箇所において点状に溶融されるかまたは酸化され、この場合に発生する溶融物が吹き飛ばされる。次いで、レーザビーム6が、ワーク8上で運動させられるので、一貫した切断カーフ9が発生する。この切断カーフ9においてレーザビーム6に沿ってワーク8が分断される。突き刺しも、レーザ切断も、ガスを加えることによりアシストされる。切断ガス10として、酸素、窒素、圧縮空気および/または用途固有のガスを使用することができる。発生した粒子およびガスは、サクション装置11によりサクションチャンバ12から吸い出すことができる。
【0037】
レーザ加工機械1は、レーザ加工ヘッド4とワーク8とを互いに対して相対的に運動させるための運動装置13も有している。図示の実施例では、ワーク8は、加工中にワーク支持台5上に置かれていて、レーザ加工ヘッド4が、加工時に、XYZ座標系の2つの軸線X,Yに沿って運動させられる。この目的のためには、運動装置13は、双方向矢印により示唆された駆動装置によってX方向で移動可能なガントリ14を有している。レーザ加工ヘッド4は、運動装置13の、双方向矢印により示唆された別の駆動装置によってX方向に移動させることができ、これにより、レーザ加工ヘッド4の可動性もしくはワーク8により規定される作業領域において、X方向およびY方向の任意の加工位置B
X,Yにレーザ加工ヘッド4を運動させることができる。それぞれの加工位置B
X,Yにおいて、レーザビーム6は、(瞬間的な)加工方向B
φを有している。この加工方向B
φは、(任意に)負のY方向を基点として測定された、
図1に示された例ではφ=0°である加工角度φにより説明される。
【0038】
図2aにおいて確認することができるように、レーザビーム6は、ワーク8における切断加工の実施のために、焦点レンズ15の形の焦点合わせ装置によりワーク8上で焦点合わせされる。焦点レンズ15は、示された実施例では、セレン化亜鉛から成るレンズであり、このレンズは、レーザビーム6を、レーザ加工ノズル16を通して、より詳細にはそのノズル開口16aを通してワーク8上で、しかも図示の実施例では、ワーク8の上面8aにおける焦点位置F上で焦点合わせする。レーザビーム6は、この焦点位置Fにおいて、ワーク8との相互作用領域17を形成する。この相互作用領域17の背後で、加工方向B
φとは反対方向、もしくはレーザ切断プロセスの切断方向とは反対方向で、
図1に示した切断カーフ9が形成される。固体レーザからのレーザビーム6の場合、たとえば石英ガラスから成る焦点レンズを使用することができる。
【0039】
図2において同様に、部分透過性に形成された偏向ミラー18を確認することができる。この偏向ミラー18は、(たとえば約10.6μmの波長を備えた)入射するレーザビーム2を反射し、プロセス監視のために、関連する観察放射線を部分透過性の別の偏向ミラー19に送る。偏向ミラー18は、図示された実施例では、約700nm~2000nmの波長λの熱放射線の形の観察放射線に対して部分透過性に形成されている。部分透過性の別の偏向ミラー19は、観察放射線を監視装置20へと反射させる。照明源21は、ワーク8を照明光線22で同軸的に照明するために働く。照明光線22は、部分透過性の別の偏向ミラー19および偏向ミラー18により送られ、レーザ加工ノズル16のノズル開口16aを通ってワーク8へと向けられる。
【0040】
部分透過性の偏向ミラー18,19に対して代替的に、入射する放射線を単に1つの縁部領域において反射するスクレーパーミラーまたは穴あきミラーを使用することもでき、これにより観察放射線を監視装置20に供給することができる、もしくは照明光線22をワーク8に供給することができる。観察を可能にするために、レーザビーム6のレイパスに側方で導入された少なくとも1つのミラーを使用することもできる。
【0041】
照明源21として、
図2aに示されているようにレーザビーム軸24に対して同軸的に、あるいは軸をずらして配置することができるダイオードレーザまたはLEDまたはフラッシュランプを設けることができる。照明源21は、たとえば、レーザ加工ヘッド4の外側(特に隣)に配置されていて、ワーク8に向けられていてもよい。代替的には、照明源21は、レーザ加工ヘッド4内に配置されていて、レーザビーム6に対して非同軸的にワーク8に向けられていてよい。場合によっては、レーザ加工ヘッド4は、照明源21なしにも運転することができる。
【0042】
監視装置20の一部は、さらに観察放射線路23において部分透過性の別の偏向ミラー19の背後に配置された幾何学的に高解像度のカメラ25である。カメラ25は、レーザビーム軸24に対して同軸的に、またはレーザビーム軸24の延長線部に対して同軸的に、したがって方向に依存しないで配置されているハイスピードカメラであってもよい。図示の実施例では、切断プロセスのプロセス固有発光や熱画像を撮影するために、近赤外/赤外波長領域において反射光法でカメラ25による画像の撮影が行われる。
図2aに示した実施例では、カメラ25による検出から別の放射線成分もしくは波長成分を排除することが望ましい場合、カメラ25の前にフィルタを配置することができる。フィルタは、たとえば、約800nm付近の範囲の波長λを透過させる、たとえば約15nmの半値幅を有する狭帯域バンドパスフィルタとして形成されていてよい。
【0043】
カメラ25の検出面25a上に、ワーク8の、切断カーフ9もしくは切断フロント9aを有する切断カーフ9の一部を含む、
図3に示した監視すべき領域26の画像を生成するために、監視装置20は結像光学系27を有している。図示の実施例では、結像光学系27は、中心の回転軸線Dを中心として回転可能に支承されている絞り28を有しているので、回転時に、偏心して配置された絞り開口28aの位置が、回転軸線Dを中心として1つの円弧上で運動する(
図2b参照)。
【0044】
結像光学系27の、レンズ29によって焦点合わせされるレイパス内に絞り28が配置されていることにより、焦点レンズ15の縁部領域を通過し、焦点レンズ15の下流側で収束するレイパスにおいて、レーザビーム6のビーム軸24に対して角度βを形成して配向されている観察放射線路23の一部のみが、レーザビーム6のビーム軸24の延長部に対して偏心して配置された絞り開口28aを通過し、検出面25a上に結像される観察放射線23aを形成する。
図2aに示した実施例では、観察放射線23aの観察方向R1は、XY平面、もしくはレーザビーム6とワーク8とがXY平面において互いに対して相対的に運動させられる加工方向B
φ(ここではφ=0)に対して平行なワーク平面への投影図において、所望の切断輪郭を形成するために延びている、つまり、突き刺し方向の観察が行われる。図示の実施例では、観察方向R1がレーザビーム6のビーム軸24に対して形成する角度βは、約1°~約5°、たとえば約4°である。
【0045】
図2aにおいて確認することができるように、絞り28に、偏光フィルタ30が取り付けられている。この偏光フィルタ30は、回転軸線Dを中心として絞り28とともに回転する。偏光フィルタ30は、図示の実施例では、(瞬間的な)加工方向B
φならびにZ方向もしくはレーザビーム6のビーム軸24を含む平面(XZ平面)に平行に配向されている直線偏光成分pをフィルタリングするように形成されている。
図2aにおいて確認することができるように、観察放射線23aは、偏光フィルタ30の通過後に、XZ平面に対して垂直方向に配向された偏光成分sのみを有している。観察放射線23aの直線偏光成分のフィルタリングは、切断カーフ9もしくは監視すべき領域26の観察にとって有益であることが判った。なお、XZ平面に対して平行に配向された偏光成分pの代わりに、場合によってはXZ平面に対して垂直方向に配向された偏光成分sまたは異なって配向された偏光成分を偏光フィルタ30によりフィルタリングすることができる。実質的に2つの光条(Leuchtstreifen)31a,bに対応する、
図3に示されている破線で示されている線は、多くのS偏光された放射線を放出するために最適な角度を有しているので、S偏光された偏向成分の使用は、切断カーフ9を観察するために特に有利であることが判った。
【0046】
機械的に調節可能な絞り28の代わりに、たとえばLCDアレイの形をした電気的に調節可能な絞りを使用することができる。この絞りでは、絞り効果を形成するために、個々のピクセルまたはピクセル群が電子的にオンまたはオフにさせられる。また、機械的な絞り28は、
図2a,bに示したものとは異なり、観察放射線路23の種々異なる部分を遮蔽するか、もしくは観察のために開放するために、観察放射線路23に対して横方向に、たとえばYZ平面内で運動もしくは移動させることができる。また、絞り28は、開閉可能な1つまたは複数の機械的なエレメントの形で実現することができる。対応して、偏光フィルタ30が、フィルタリングされた偏光成分の配向を適切に選択するために、特にフィルタリングされた偏光成分の配向を回転させるために、液晶偏光板として形成されていてもよい。必要に応じて、レーザ切断プロセスを監視するために有利である限り、絞り28および/または偏光フィルタ30を観察放射線路23から完全に取り除くこともできる。
【0047】
監視装置20と信号技術的に接続されている評価装置32により、レーザ切断プロセスのプロセス品質のための種々異なる特性値を求めることができる。たとえば、
図3に示した光条32a,bの形状に基づき、(厚さdを有する)ワーク8の厚さ方向Zでの切断カーフ9のギャップ幅b(z)の形状、より正確には切断カーフ9の両方の横方向の切断側面33a,bの間の角度γを推測することができる。角度γの測定量として、2つの光条31a,bの間の距離および/または角度を、たとえば、冒頭で引用した国際公開第2018069291号に記載されているように、評価装置32を用いて決定することができる。国際公開第2018069291号は、その全体が参照により本願の内容とされる。切断カーフ9の両切断側面33a,bの間の開放角γは、典型的には溶融切断時のプロセス品質またはプロセス頑健性のための特性値を成す、つまり、開放角γが大きければ大きいほど、切断カーフ9のV字形状が顕著になり、かつ典型的には切断品質も悪くなる。
【0048】
図3において同様に確認することができるように、ワーク8における切断加工時に、切断カーフ9の前縁において、実質的に円筒形の切断フロント9aが形成される。この切断フロント9aは、ワークの厚さdに沿って、ワーク8の上面8aおよび下面8bに関して切断フロント角αを形成しながら延びている。監視装置20により、監視された領域26に基づいて、より詳細には相互作用領域17に基づいて、評価装置32を用いて、切断フロント角αを求めることができる。これは、たとえば、冒頭で引用した国際公開第2015036140号に記載されているような形式で行うことができる。この国際公開第2015036140号は、その全体が参照により本願の内容とされる。この場合、相互作用領域17の観察が、引きずり観察方向または突き刺し観察方向で行われると、切断フロント角αを求めるために有利である。この場合、偏光フィルタ30の使用を省略することができる。代わりに、切断フロント角αは、たとえば、冒頭で引用した国際公開第2012107331号に記載されているように、切断カーフ9の幾何学的特徴に基づいて求めることもできる。この国際公開第2012107331号も、その全体が参照により本願の内容とされる。
【0049】
監視装置20もしくは評価装置32により、加工品質のための別の特性値、たとえば、レーザ加工ヘッド4を加工位置BX,Yに位置決めする場合の位置決め精度PX,Y、つまり実際加工位置と目標加工位置との間の偏差ならびに方向精度Rφ、つまり加工位置BX,Yにおける瞬間的な加工方向Bφと所望の加工方向との偏差を求めることができる。方向の不正確さRφは、たとえば、レーザ加工ヘッド4とワーク8との間の横方向の相対移動を決定するための、独国特許出願公開第102005022095号明細書に記載されている方法を実施し、これにより求められた横方向の相対移動もしくは瞬間的な加工方向Bφを、評価装置32または別の場所に保存されている目標加工方向のための値と比較することにより、評価装置32との組み合わせにおいて監視装置20により求めることができる。位置決め精度PX,Yおよび方向精度Rφは、それぞれの目標値からの偏差が、切断カーフ9の幾何学形状と目標幾何学形状との偏差をもたらすので、プロセス品質のための特性値を成す。
【0050】
なお、監視装置20および/または評価装置32により、同様に国際公開第2012107331号にも記載されているように、たとえば、切断カーフ9でのバリ形成の発生などに関するプロセス品質のための別の特性値を求めることができる。評価装置32において求められるプロセス品質のための特性値の種類は、レーザ切断プロセスの種類に依存してよく、たとえば、切断フロント角αは、ガス切断プロセスにおける特性値として役立つことができる一方で、切断カーフの開放角γは、典型的には、溶断プロセス時にプロセス品質のための特性値として機能する。
【0051】
レーザ加工機械1の制御タスクを担う
図1に示す制御装置34は、評価装置32に信号技術的に接続されている。制御装置34は、加工プロセス時に最適なプロセス品質を形成するために、調整(閉ループ制御)装置(Regeleinrichtung)35を構成している。調整装置35は、たとえば、少なくとも1つの作動パラメータ、たとえば、送り速度および/またはレーザビーム6の出力に適切に影響を与えることにより、切断フロント角αを予め規定された一定の値に調整するように、構成されていてもよい。
【0052】
以下では、加工品質のための特性値としての切断フロント角αにとって例示的に、加工機械1によるワーク8の加工時に、位置および/または方向に依存する障害をどのように求めるかを説明する。上述したように、切断フロント角αは、切断プロセス中に監視装置20によって連続的に検出される。それぞれの瞬間に求められた切断フロント角αの測定値は、瞬間的な加工位置BX,Yに割り当てられる。この加工位置BX,Yは、図示の実施例では、加工機械1の作業フィールドにおけるXY座標に対応する。割り当ては、たとえば、評価装置32、制御装置34またはデータメモリ36内に保存されているデータベース等に格納することができ、データメモリ36は、場合によっては外部の中央コンピュータまたはクラウド上で提供される。作業フィールドにおけるそれぞれの加工位置BX,Yに対する切断フロント角αの割り当ては、複数の切断加工プロセスのために、ひいては複数の測定値α1,α2,...αNのために行われる。ここでNは、測定値の個数であり、この個数は典型的にはN=10よりも多い。作業フィールドにおいてそれぞれの加工位置BX,Y、つまりそれぞれのXY座標において求められた測定値α1,α2,...αNから、作業フィールドにおけるXY座標もしくはXY位置に依存する切断フロント角α(X,Y)が求められる。したがって、位置に依存する切断フロント角α(X,Y)は、XY座標に依存する関数である。
【0053】
位置に依存する切断フロント角α(X,Y)に対するそれぞれの加工プロセスまたはそれぞれの加工パラメータの影響を排除するために、それぞれの加工位置BX,Yにおいて異なる時間もしくは異なる加工プロセス時に求められた複数個Nの測定値α1,α2,...αNの統計的な分析が実施される。最も単純な場合、位置に依存する切断フロント角α(X,Y)を求めるために、それぞれの加工位置BX,Yにおける測定値α1,α2,...αNの平均値を計算することができる。なお、位置に依存する切断フロント角α(X,Y)を求めるために、平均値の代わりに、それぞれの加工位置BX,Yに依存しない妨害の影響をできるだけ完全に排除することができる別の適切な統計的な尺度を使用することもできる。
【0054】
作業フィールドにおける位置に依存する切断フロント角α(X,Y)に基づいて、位置に依存する切断フロント角α(X,Y)が、加工品質が低くなるか、またはプロセスが場合によってはもはや安定的に行われなくなるほど小さくなる加工位置B
X,Yを求めることができる。これらの加工位置B
X,Yを求めるためには、位置に依存する切断フロント角α(X,Y)を、(通常は一定であり、つまり位置に依存しない)閾値と比較することができる。閾値が下回わられた加工位置B
X,Yが、作業フィールド内で妨害位置領域37の形の部分領域を形成し、これらの部分領域のうち、2つの部分領域が例示的に
図1に図示されている。作業フィールドの、妨害位置領域37の外側にある部分領域は、ワーク8における切断プロセスのための優先位置領域を形成する。
【0055】
制御装置34における軌道プランニング時に、ワーク8から切断されるべきワークピース部品の、切断時に形成すべき切断輪郭は、この切断輪郭が理想的には完全に妨害位置領域37外に位置するか、もしくは加工プロセスのできるだけ小さな部分が妨害位置領域37内で行われるように、選択される。加工機械1の、上述の形式で求められた妨害位置領域37は、データメモリ36に保存することができる。
【0056】
上述の形式で妨害位置領域37を求めることは、場合によっては予め規定された時間間隔で繰り返すことができる。位置に依存する切断フロント角αを求めるために、十分に多数の測定値α1,α2,...αNを使用した場合、妨害位置領域37は通常変化しないか、または軽微にしか変化しない、つまり、妨害位置領域37は時間的にほぼ一定である。同一の構造種類の複数の加工機械1の妨害位置領域37に関する情報は、1つの共通のデータメモリ36に保存することができる。データメモリ36に保存されている、妨害位置領域37に関するデータおよび/または位置に依存する切断フロント角α(x,y)に関するデータに基づいて、機械構造の脆弱箇所を検出することができる。
【0057】
位置に依存する切断フロント角α(X,Y)を上述のように求めることと同様に、切断フロント角αは、加工方向Bφに依存しても決定することができる。最も単純な場合、ここでは、切断フロント角αのための瞬間的に求められた測定値が、それぞれの加工位置BX,Yを考慮することなしに、それぞれの瞬間的な加工方向Bφに割り当てられる、つまり加工機械1の方向に依存する切断フロント角αφは、方向に依存する切断フロント角αφのための複数の測定値を上述の形式で統計的に評価することにより、加工位置BX,Yに依存しないで求められる。しかし好適には、方向に依存する切断フロント角αφが、付加的に加工位置BX,Yに関連して求められる。つまり、方向に依存する切断フロント角αφは、1つの同一の加工位置BX,Yにおいて、それぞれの加工方向Bφにおける複数の測定値α1,α2,...αNに基づいて決定される。したがって、方向に依存する切断フロント角αφ(X,Y)は、付加的に作業フィールドのXY位置に依存する。
【0058】
妨害位置領域37を上述のように求めることと同様に、妨害角度領域38も求めることができる。妨害角度領域38は、場合によってはそれぞれの加工位置B
X,Yに依存する(上記を参照)。たとえば、この目的のために、方向に依存する切断フロント角α
φのそれぞれの値を閾値と比較することができる。
図1には、例示的に加工位置B
X,Yにおいて、約35°~約45°の間の角度間隔φにわたって延びる妨害角度領域38が図示されている。妨害位置領域37に関連して上述したように、加工方向B
φは、ワーク8の加工時に、この妨害角度領域38が加工時にできるだけ回避されるように選択することができる。同様に、方向に依存する、典型的には付加的に位置に依存する切断フロント角α
φ(X,Y)もしくは妨害角度領域38は、エラー診断を実施することができるように、もしくは作業プランニングを最適化することができるように、データメモリ36に保存することができる。
【0059】
上述したように、少なくとも1つの作動パラメータ、たとえば送り速度および/またはレーザビーム6の出力に適切に影響を与えることにより、切断フロント角αを予め規定された一定の値に調整することができる。理想的な調整時に、制御量は一定である、つまり位置および/または方向に依存しないが、調整のために使用される測定量は、妨害に基づいて位置および/または方向に依存して変化してしまい、このことは、制御値(本明細書に記載された実施例では切断フロント角α)を一定に保つために、調整時に考慮されることが望ましい。
【0060】
ワーク支持台5のウェブ上でのレーザ切断時に、たとえば、プロセス放射線を測定量として検出する光学的なレーザ切断センサ機器からの高い測定信号が生じる。したがって、このような1つの加工位置BX,Yにおいて、全く調整が行われないか、または調整量、たとえば切断フロント角αを一定に保つために、測定量の高い値を期待しなければならない。この場合、プロセス放射線の測定信号は、上述の方法で求められ、加工位置BX,Yに依存するその変動が、その目標値への調整量の調整時に考慮される、位置に依存する特性値である。なお、このような手順は、別の特性値のためにも可能である。
【0061】
たとえば、ノズル16の非円形の内側輪郭16aにより引き起こされる楕円形のビーム横断面を有するレーザビーム6を用いたレーザ切断時に、たとえば、切断ギャップ9を一定の幅b(調整量)に調整するために、たとえばレーザビーム6の伝搬方向(Z方向)でのレーザビーム6の焦点位置Fを作動量として調節することができる。切断ギャップ9に対して横方向にレーザビーム6の長い側で切断する場合、ワーク9上でのレーザビーム6のビーム断面が小さくなるように焦点位置Fを選択することが望ましい一方、切断ギャップ9に対して横方向にレーザビームの狭い側で切断する場合に、焦点内のビーム横断面は大きく調節することが望ましく、これにより全体的に切断ギャップ9の幅bを一定に維持することができる。したがって、この場合、Z方向の焦点位置の方向に依存する調節が必要である。
【0062】
レーザ加工機械1の運転期間が長くなるにつれて、たとえば焦点レンズ15の汚れが発生してしまう。この汚れは、焦点位置Fの変化(公称焦点位置のずれ)をもたらすいわゆる熱レンズ効果につながってしまう。したがって、レーザビーム6の焦点位置F(伝搬方向)が、レーザ加工機械1における時間に相前後して連続した複数の加工プロセス時に特性値として求められると、方向および/または位置に依存する焦点位置Fを求める場合に、測定値の時間的な変化を考慮することが有意であるだろう。たとえば、焦点位置Fを求める場合に、少し前の機械加工プロセス時に求められた測定値のみを考慮することができ、したがって、焦点レンズ15の現在の汚染度に対応することができる。
【0063】
なお、上述した方法は、切断フロント角α、焦点位置F等とは異なる、プロセス品質のための別の特性値でも同一の形式で実施することができる。