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特許7315693ガス用ドライポンプ、及び複数のガス用ドライポンプのセット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】ガス用ドライポンプ、及び複数のガス用ドライポンプのセット
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/16 20060101AFI20230719BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
F04C18/16 B
F04C29/00 B
F04C29/00 D
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021554379
(86)(22)【出願日】2019-03-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-16
(86)【国際出願番号】 EP2019056501
(87)【国際公開番号】W WO2020182317
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】500119813
【氏名又は名称】アテリエ ビスク ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Atelier Busch SA
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イルチェフ,セオドア
(72)【発明者】
【氏名】ヴァリン,ステファニ
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,ディディエ
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-185778(JP,A)
【文献】特開2012-207660(JP,A)
【文献】特開2008-196390(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0025858(US,A1)
【文献】特開2011-026981(JP,A)
【文献】特開昭55-019923(JP,A)
【文献】特表平11-508015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/16、18/18、18/20
F04C 23/00-29/12
F04C 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のローブ部(1A)及び第一のスクリュー(1B)を含む第一のローター(1)と、
第二のローブ部(2A)及び第二のスクリュー(2B)を含む第二のローター(2)と、
前記第一及び第二のスクリュー(1B,2B)が噛み合い、前記第一及び第二のローブ部(1A,2A)が互いに係合して回転するように、第一及び第二のローター(1,2)が取り付けられているケーシング(3)と
を備え、
前記ケーシング(3)は、前記第一及び第二のスクリュー(1B,2B)と前記第一及び第二のローブ部(1A,2A)とが、一緒に配置される内容積部(14)を画成し、
少なくとも一つの吸気口(15)が、前記第一及び第二のローブ部(1A,2A)のところで、前記内容積部(14)の内部に通じており、
少なくとも一つの、前記内容積部(14)からの排気口(16)が、前記第一及び第二のスクリュー(1B,2B)に対して、前記吸気口(15)と反対側に設置され、
前記第一及び第二のスクリュー(1B,2B)のそれぞれが、その全長にわたって一定のネジ加工部を含み、
前記第一及び第二のローター(1,2)が、
・前記第一及び第二のローブ部(1A,2A)、前記第一のスクリュー(1B)の一部、前記第二のスクリュー(2B)の一部、及び前記ケーシング(3)が協働して、閉じられたチャンバー(30)を画成する第一の配置、
・前記第一及び第二のローブ部(1A,2A)、前記第一のスクリュー(1B)の一部、前記第二のスクリュー(2B)の一部、及び前記ケーシング(3)によって、前記チャンバー(30)が閉じられるとともに、前記第一の配置よりも容積が小さくなるように引き続き画成される第二の配置、
・前記チャンバー(30)、専ら前記第一及び第二のスクリュー(1B,2B)によって、容積を変えることなく変位し、少なくとも前記第一のスクリュー(1B)のネジ加工部の螺旋ネジ山(21)、前記第二のスクリュー(2B)のネジ加工部の螺旋ネジ山(23)、及び前記第一のスクリュー(1B)の前記螺旋ネジ山(21)と前記第二のスクリュー(2B)の前記螺旋ネジ山(23)との交差によるブロッキングによって、前記ローブ部から離隔される第三の配置、
・前記チャンバー(30)、前記第一及び第二のスクリュー(1B,2B)の下流端に変位し、前記排気口(16)と連通する第四の配置、
を連続的にとることができるように、反対方向に回転し、
前記第一及び第二のスクリュー(1B,2B)が、チャンバーを、ブロックし又は開く役割を担い、前記第一及び第二のローブ部(1A,2A)がガスの圧縮を実行する役割を担うことを特徴とするガス用ドライポンプ。
【請求項2】
前記第一及び第二のローブ部(1A,2)は、ローブ(20,22)を含み、ローブ(20,22)のそれぞれは、前記第一及び第二のスクリュー(1B,2B)のネジ加工部の螺旋ネジ山(21,23)の一つに近接して延在していることを特徴とする請求項1に記載のガス用ドライポンプ。
【請求項3】
前記第一のローブ部(1A)の前記ローブ(20)の数は、前記第一のスクリュー(1B)の前記ネジ加工部の前記螺旋ネジ山(21)の条数と等しく、前記第二のローブ部(2A)の前記ローブ(22)の数は、前記第二のスクリュー(2B)の前記ネジ加工部の前記螺旋ネジ山(23)の条数と等しいことを特徴とする請求項2に記載のガス用ドライポンプ。
【請求項4】
前記チャンバー(30)は、前記第一及び第二のローター(1,2)と、前記ケーシング(3)とが協働して画成する複数の連続するチャンバー(18,25,30,31,32,33)の一つであることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載のガス用ドライポンプ。
【請求項5】
前記第一及び第二のローター(1,2)のそれぞれの角度位置にかかわらず、前記連続するチャンバー(18,25,30,31,32,33)のうち、二つのチャンバーが常に閉じていることを特徴とする請求項に記載のガス用ドライポンプ。
【請求項6】
前記連続するチャンバー(18,25,30,31,32,33)の一つは、前記内容積部(14)からの前記排気口(16)を有する集合チャンバー(18)であることを特徴とする請求項に記載のガス用ドライポンプ。
【請求項7】
前記第一のスクリュー(1B)のネジ加工部と、前記第二のスクリュー(2B)のネジ加工部とが、螺旋溝を画成し、これらの螺旋溝の下流端が開放され、前記第一及び第二のローター(1,2)の角度位置にかかわらず、前記集合チャンバー(18)内に通じていることを特徴とする請求項に記載のガス用ドライポンプ。
【請求項8】
前記第一のローター(1)は雄ローターであり、前記第二のローター(2)は雌ローターであることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載のガス用ドライポンプ。
【請求項9】
前記第二のローター(2)は、前記第一のローター(1)よりも一つ多いローブを含むことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載のガス用ドライポンプ。
【請求項10】
前記第一のローター(1)は複数のローブを含み、その数は二つであり、前記第二のローター(2)は複数のローブを含み、その数は三つであることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載のガス用ドライポンプ。
【請求項11】
前記第一のローター(1)は、その角度配向を除いて、第一のローブ部(1A)の全体で同じ断面を有しており、前記第二のローター(2)は、その角度配向を除いて、第二のローブ部(2A)の全体で同じ断面を有していることを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載のガス用ドライポンプ。
【請求項12】
前記第一のローター(1)は、一体にされた、少なくとも二つのモノブロック要素を含み、これらは、少なくとも前記第一のスクリュー(1B)を含む第一のモノブロック要素と、少なくとも前記第一のローブ部(1A)の一部を含む第二のモノブロック要素であることを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載のガス用ドライポンプ。
【請求項13】
請求項1~12にいずれか一項に記載の、複数のガス用ドライポンプのセットであって、前記セットの第一のガス用ドライポンプ及び前記セットの第二のガス用ドライポンプの前記第一のスクリュー(1B)が同じであり、前記セットの第一のガス用ドライポンプ及び前記セットの第二のガス用ドライポンプの前記第二のスクリュー(2B)が同じであり、前記第一のガス用ドライポンプの前記第一及び第二のローブ部(1A,2)は、第一の軸方向寸法である軸方向寸法を有し、前記第二のガス用ドライポンプの前記第一及び第二のローブ部(1A,2)は、前記第一の軸方向寸法と異なる第二の軸方向寸法である軸方向寸法を有することを特徴とする複数のガス用ドライポンプのセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスのポンピング及び圧縮の分野に関する。より具体的には、本発明は、ガス用ドライポンプ、及び複数のガス用ドライポンプのセットに関する。
【背景技術】
【0002】
ガス用ドライポンプの一態様は、スクリューポンプである。スクリューポンプは、互いに噛み合って、二つの平行な回転軸のうち、それぞれの回転軸上で反対方向に駆動される、二つのスクリューを備える。ある特定の混合ポンプの場合、各スクリューはローターに付属し、ローターは、例えば、特許文献1の場合のように、スクリューポンプとローブポンプとが組み合わされるように、ローブ部をさらに含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第7611340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スクリューポンプでは、スクリューのネジ加工部は、スクリューの上流端と、その下流端との間のガスの内部圧縮比を規定するために、スクリューに沿って変化させることができる。例えば、スクリューのネジ加工部は、各ネジ山のピッチを漸進的又は段階的に変えることによって変化させることができる。さらに、スクリューポンプでは、動的な「気密性」、したがって、スクリューポンプによって達成される最終圧力又は最終真空圧力を調節するために、スクリューに沿ったネジ山の山数を変えることができ、すなわち、スクリューの長さを変えることができる。いずれにせよ、圧縮比の調節には、各スクリューについて、それを実現する新たな形状のスクリューを必要とするが、スクリューポンプでは、可変ネジ山のスクリューの形状は非常に複雑であるため、設計と機械加工が非常に困難である。
【0005】
同じ回転速度と同じ間隔を維持しながら、スクリューポンプの公称流量を調節するために、スクリューの上流端のネジ山のピッチ、及び/又はネジ山の底の直径、延いては、ネジ山の頂部の直径(ネジ山の外形の高さ)を調節することができる。これらの調節は、回転時の機械的安定性の制限の範囲内、及び工業上の機械加工が可能な範囲内にあらねばならない。いずれにせよ、公称流量を変更するには、各スクリューについて、それを実現する新たな形状のスクリューを必要とするが、スクリューポンプでは、可変ネジ山のスクリューの形状は非常に複雑であるため、設計と機械加工が非常に困難である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、少なくとも、異なる圧縮比を有する種々のガス用ドライポンプの設計及び/又は製造を単純化することにある。より具体的には、本発明の目的は、嵩高さ、エネルギー消費などに関する同じ又は同様の制約に対して、可変ピッチスクリューポンプの適用性及び利点を提供しつつ、設計及び/又は機械加工が容易な形状を有するローターを備えた種々のガス用ドライポンプを提供することにある。
【0007】
本発明によれば、この目的は、第一のローブ部及び第一のスクリューを含む第一のローターと、第二のローブ部及び第二のスクリューを含む第二のローターと、前記第一及び第二のスクリューが噛み合い、前記第一及び第二のローブ部が互いに係合して回転するように、第一及び第二のローターが取り付けられているケーシングとを備えるガス用ドライポンプによって達成される。ケーシングは、第一及び第二のスクリューと第一及び第二のローブ部とが、一緒に配置される内容積部を画成する。少なくとも一つの吸気口が、第一及び第二のローブ部のところで、内容積部の内部に通じている。少なくとも一つの、内容積部の排気口が、第一及び第二のスクリューに対して、吸気口と反対側に設置されている。第一及び第二のスクリューのそれぞれが、その全長にわたって一定のネジ加工部を含む。
【0008】
第一及び第二のローターは、以下の配置を連続的にとることができるように、反対方向に回転する。
・第一及び第二のローブ部、第一のスクリューの一部、第二のスクリューの一部、及びケーシングが協働して、閉じられたチャンバーを画成する第一の配置、
・第一及び第二のローブ部、第一のスクリューの一部、第二のスクリューの一部、及びケーシングによって、チャンバーが閉じられるとともに、第一の配置よりも容積が小さくなるように引き続き画成される第二の配置、
・チャンバーが、専ら第一及び第二のスクリューのところで変位し、少なくとも第一のスクリューのネジ加工部の螺旋ネジ山記第二のスクリューのネジ加工部の螺旋ネジ山、及び第一のスクリューの螺旋ネジ山と第二のスクリューの螺旋ネジ山との交差によるブロッキングによって、ローブ部から離隔される第三の配置、
・チャンバーが、第一及び第二のスクリューの下流端に変位し、排気口と連通する第四の配置。
【0009】
第一及び第二のスクリューは、チャンバーをブロックする役割と、チャンバーを開く役割とを担う。第一及び第二のローブ部は、圧縮を実行する役割を担う。したがって、第一及び第二のスクリューは、圧縮を実行する役割を担わず、それぞれのネジ加工部は、その長さが一定である。このため、これらの第一及び第二のスクリューは、可変ねじ切り加工のスクリューと比較して、設計も製造も難しくない。
【0010】
さらに、圧縮比は、第一及び第二のローブ部の関数となる。この圧縮比は、軸方向の第一及び第二のローブ部の寸法を変えることによって、変更することができる。したがって、所与の第一のスクリュー及び所与の第二のスクリューから、これらの第一及び第二のスクリューに関連するローブ部の軸方向寸法に応じて、同じ圧縮比が同じでないポンプを構築することができる。しかも、ローブ部は、製造することが、スクリューよりもずっと困難ではない。
【0011】
したがって、本発明によれば、異なる圧縮比を有する種々のガス用ドライポンプを、より容易に設計及び製造することができる。
【0012】
上記ガス用ドライポンプは、特に以下で規定されたものの中から、単独で又は組み合わせて、一つ以上の他の有利な特徴を組み込むことができる。
【0013】
好ましくは、第一及び第二のローブ部は、ローブを含み、ローブ部のそれぞれは、第一及び第二のスクリューのネジ加工部の螺旋ネジ山の一つに近接して延在している。
【0014】
好ましくは、第一のローブ部のローブの数は、第一のスクリューのネジ加工部の螺旋ネジ山の条数と等しく、第二のローブ部のローブの数は、第二のスクリューのネジ加工部の螺旋ネジ山の条数と等しい。
【0015】
好ましくは、排気口は、第一及び第二のスクリューから離れた位置にある。
【0016】
好ましくは、チャンバーは、第一及び第二のローターと、ケーシングとが協働して画成する複数の連続するチャンバーの一つである。
【0017】
好ましくは、第一及び第二のローターのそれぞれの角度位置にかかわらず、連続するチャンバーのうち、二つのチャンバーが常に閉じている。
【0018】
好ましくは、連続するチャンバーの一つは、内容積部からの排気口を有する集合チャンバーである。
【0019】
好ましくは、第一のスクリューのネジ加工部と、第二のスクリューのネジ加工部とが、螺旋溝を画成し、第一及び第二のローターの角度位置にかかわらず、これらの螺旋溝の下流端が開放され、集合チャンバー内に通じている。このような場合には、第一及び第二のスクリューは、圧縮を実行しない。その圧縮によるガスの発熱は、主に第一及び第二のローブ部で起こる。そのため、動作中の第一及び第二のスクリューの温度が大幅に上昇するのを防ぐとともに、これらの第一及び第二のスクリューの膨張による著しい変形を防ぐことがより容易になる。
【0020】
好ましくは、連続するチャンバーの一つは、吸気口と連通する吸気チャンバーである。
【0021】
好ましくは、第一のローターは雄ローターであり、第二のローターは雌ローターである。
【0022】
好ましくは、第二のローターは、第一のローターより一つ多いローブを含む。
【0023】
好ましくは、第一のローターは複数のローブを含み、その数は二つであり、第二のローターは複数のローブを含み、その数は三つである
【0024】
好ましくは、第一のローターは、その角度配向を除いて、第一のローブ部で同じ断面を有し、第一のスクリューで同じ断面を有しており、第二のローターは、その角度配向を除いて、第二のローブ部で同じ断面を有し、第二のスクリューで同じ断面を有している。
【0025】
好ましくは、第一のローターは、一体にされた、少なくとも二つのモノブロック要素を含み、これらは、少なくとも第一のスクリューを含む第一のモノブロック要素と、少なくとも第一のローブ部の一部を含む第二のモノブロック要素である。
【0026】
本発明は、先に規定されたようなガス用ドライポンプの複数のセットも主題としている。
セットの第一のガス用ドライポンプ及びセットの第二のガス用ドライポンプの第一のスクリューが同じであり、セットの第一のガス用ドライポンプ及びセットの第二のガス用ドライポンプの第二のスクリューが同じであり、第一のガス用ドライポンプの第一及び第二のローブ部は、第一の軸方向寸法である軸方向寸法を有し、第二のガス用ドライポンプの第一及び第二のローブ部は、第一の軸方向寸法と異なる第二の軸方向寸法である軸方向寸法を有する。
【0027】
他の利点及び特徴は、非限定的な例として与えられ、その添付の図面に表されている、本発明の特定の実施形態の以下の説明からより明確に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るガス用ドライポンプの概略図であり、軸方向断面図である。
図2図2は、図1のポンプを構成する二つのローターを表す斜視図であり、これらのローターのシャフトが省略されている点で簡略化されている。
図3図3は、分解側面図であり、図1のポンプの二つのローターのうちの一つだけを示しており、示されているローターのシャフトが省略されている点で簡略化されている。
図4図4は、図2及び図3のように簡略化され、図2と同一のローターと、図1のポンプにおいて、これらのローターによって部分的に画成されたチャンバーとを示す、ローターを一方の端から見た図面である。
図5図5は、図2及び図3のように簡略化され、図2と同一のローターと、図1のポンプにおいて、これらのローターによって部分的に画成されたチャンバーとを示す斜視図である。
図6図6は、図4及び図5に表示されているチャンバーのうち一つのチャンバーを示す斜視図である。
図7図7は、図6と同じチャンバーであるが、その後、すなわち、このチャンバーの図6に示すような瞬間後の瞬間における斜視図である。
図8図8は、図6及び図7と同じチャンバーであるが、その後、すなわち、このチャンバーの図7に示すような瞬間後の瞬間における斜視図である。
図9図9は、図6図8のチャンバーの容積の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1において、本発明の一実施形態に係るガス用ドライポンプは、第一のローター1及び第二のローター2を含み、これらは、いくつかの部品が組み立てられた状態でケーシング3内に取り付けられている。
【0030】
第一のローター1が、回転軸X-X’を中心に回転するように、第一のローター1のシャフト6を複数のベアリング5が支持している。第二のローター2が、回転軸X-X’に平行な回転軸X-X’上で回転するように、第二のローター2のシャフト8を複数のベアリング7が支持している。本明細書及び添付の特許請求の範囲において、軸方向は、回転軸X-X’,X-X’に平行な方向をいうものとし、軸方向寸法は、回転軸X-X’,X-X’に平行な方向の寸法をいうものとする。
【0031】
シャフト8の一端は、第一及び第二のローター1,2を駆動するためのモーター10に結合されている。モーター10の反対側で、第二のローター2のシャフト8は、歯車11を支持しており、歯車11は、第一のローター1のシャフト6に支持された歯車12と噛み合っている。歯車11,12は、第一のローター1が第二のローター2よりも速く回転するように、ギア比が3/2に等しい変速装置を構成する。
【0032】
第一のローター1は、第一のローブ部1A及び第一のスクリュー1Bを含み、これらは、これらの間に距離を置かずに軸方向に互いに随伴している。第二のローター2は、第二のローブ部2A及び第二のスクリュー2Bを含み、これらは、これらの間に距離を置かずに軸方向に互いに随伴している。第一のローブ部1A、第一のスクリュー1B、第二のローブ部2A及び第二のスクリュー2Bは、全て同じ内容積部14内にあり、ケーシング3が、内容積部14を区画に分けることなく、内容積部14を画成している。
【0033】
ガス吸入用の吸気口15が、ケーシング3を貫通して、第一及び第二のローブ部2A,2Bのところで、回転軸X-X’,X-X’を通る平面の一方の側の内容積部14内に通じている。ガス排出用の排気口16が、ケーシング3を貫通して、内容積部14の下流側の部分によって構成され、第一の及び第二のスクリュー1B,2Bの出口、すなわち、これらの第一の及び第二のスクリュー1B,2Bに対して、第一及び第二のローブ部1A,2Aの反対側に位置する集合チャンバー18のところで、内容積部14と連通している。
【0034】
内容積部14は、それぞれの軸が回転軸X-X’,X-X’である、相互に貫入する二つの円筒状の回転体の結合によって構成され、少なくとも第一及び第二のスクリュー1B,2Bのところで円筒形である。第一及び第二のローブ部1A,2Aのところで、内容積部14は、回転軸X-X’,X-X’を含む平面に対して、少なくとも吸気口15と反対側において、同じように円筒形である。吸気口15のところで、内容積部14の下流の側部は、内容積部14が側方に拡大され、吸気口15が通じる吸気チャンバーを構成することができる。
【0035】
符号17は、それぞれがケーシング3とシャフト6,8のうちの一方との間を気密にする機構を示す。
【0036】
図2に示すように、第一のローター1は、雄ローターである。第一のローブ部1Aは、複数のローブ20を含み、これらのローブ20は同一であり、実施形態におけるローブ20の数は二つである。スクリュー1Bは、ローブ20の数と同じ条数の螺旋ネジ21からなるネジ加工部を含む。このネジ加工部は、スクリュー1Bの全長で一定である。そのピッチ、その平均直径、及びその外形、すなわち、回転軸X-X’を通る軸平面に沿ったその断面の形状及び寸法は、スクリュー1Bの全長にわたって一定である。各ローブ20は、同一な二条の螺旋ネジ21の一つに近接して延在している。ローブ20の数は、二つでなくてもよい。螺旋ネジ21の条数も同様である。
【0037】
第二のローター2は、雌ローターである。第二のローブ部2Aは、複数のローブ22を含み、これらのローブ22は同一であり、実施形態におけるローブ22の数は三つである。スクリュー2Bは、ローブ22の数と同じ条数の螺旋ネジ23からなるネジ加工部を含む。このネジ加工部は、スクリュー2Bの全長で一定である。そのピッチ、その平均直径、及びその外形、すなわち、回転軸X-X’を通る軸平面に沿ったその断面の形状及び寸法は、スクリュー2Bの全長にわたって一定である。各ローブ22は、同一な三条の螺旋ネジ23の一つに近接して延在している。ローブ22の数は、二つでなくてもよい。螺旋ネジ23の条数も同様である。
【0038】
第一のローブ部1Aは、第二のローブ部2Aと噛み合う。第一及び第二のスクリュー1B,2Bが連動する。
【0039】
第一のローター1は、その角度配向を除いて、第一のローブ部1Aで同じ断面を有し、第一のスクリュー1Bで同じ断面を有している。同様に、第2のローター2は、その角度配向を除いて、第2のローブ部2Aで同じ断面を有し、第2のスクリュー2Bで同じ断面を有している。
【0040】
図3によく示されているように、第一のローター1は、複数のモノブロック要素の組み合わせからなり、第一のモノブロック要素は第一のローブ部1Aを含み、第二のモノブロック要素は第一のスクリュー1Bを含む。シャフト6は、第一のローター1の第一のモノブロック要素の一部、又は第一のローター1の第二のモノブロック要素の一部とすることができる。同様に、第一のローター1の第三のモノブロック要素が、シャフト6を構成することができる。第二のローター2は、複数のモノブロック要素の組み合わせからなり、第一のモノブロック要素は第二のローブ部2Aを含み、第二のモノブロック要素は第二のスクリュー2Bを含む。シャフト8は、第二のローター2の第一及び第二のモノブロック要素のいずれかの一部とすることができる。同様に、第二のローター2の第一及び第二のモノブロック要素とは異なるモノブロック要素が、シャフト8を構成することができる。
【0041】
常時、第一のローター1、第二のローター2、及びケーシング3は、複数の連続するチャンバーを協働して画成し、図4に、いくつかのチャンバーが示され、図5に、全てのチャンバーが示されている、これらの連続するチャンバーの中には、集合チャンバー18、図4及び5において符号25によって示される前述した吸気チャンバー、及びチャンバー30,31,32,33がある。
【0042】
第一及び第二のローター1,2が、図4及び図5に示す配置にある場合、チャンバー30,31,32,33は閉じている。図1のガス用ドライポンプが作動すると、図4において矢印で示されているように、第一及び第二のローター1が反対方向に回転する。したがって、連続する瞬間におけるチャンバー30のみを描写する図6図8に示されるように、チャンバー30、31、32、33は進展する。
【0043】
第一及び第二のローター1,2が、図4及び図5に示される配置にある場合、チャンバー30は、図6に示すようになる。第一のローター1及び第二のローター2が、図3及び図4にある位置から、それぞれ半回転及び3分の1回転した後、チャンバー30は、図7に示すようになる。図7に示すように、チャンバー30は、チャンバー31が図3及び図4に示す形状及び位置を有する。第一のローター1及び第二のローター2が、図3及び図4の位置から、それぞれ1回転及び2/3回転した後、チャンバー30は、図8に示すようになる。図8に示すように、チャンバー30は、チャンバー32が図3及び図4に示す形状及び位置を有する。
【0044】
ここで説明するのは、第一及び第二のローターが反対方向に連続的に回転する間の、経時変化に伴うチャンバー30の進展である。
【0045】
図6において、チャンバー30は、その下流端で、すなわちP1で、螺旋ネジ山21と螺旋ネジ山23とが交差することによって、ブロックされて閉じられている。さらに図6では、第一及び第二のローブ部1A,2A、第一のスクリュー1Bの一部、第二のスクリュー2Bの一部、及びケーシング3が協働して、ほぼ最大容量に達したチャンバー30を画成する。
【0046】
第一及び第二のローター1,2の反対方向への回転は、図4及び図5のそれらの位置から連続的に継続する。したがって、第一及び第二のローブ部1A,2Aは、それらが協働して、螺旋ネジ山21と螺旋ネジ山23との交差によって、P1で下流端が依然としてブロックされているチャンバー30の容積を減少させる配置に達する。図7において、チャンバー30は、第一及び第二のローブ部1A,2Aが協働して、チャンバー30の容積を減少させている際の抜粋された瞬間が示されている。第一及び第二のローブ部1A,2Aが協働してチャンバー30の容積を減少させると同時に、このチャンバー30内に存在するガスの圧縮が起こる。
【0047】
第一及び第二のローター1,2の反対方向への回転が継続する際に、チャンバー30内の圧縮の後に、このチャンバー30の上流端の、螺旋ネジ山21と螺旋ネジ山23との交差によるブロッキングが続く。上流端のブロッキングが生じた後、チャンバー30は、図8に示すようになる。チャンバー30の上流端のブロッキングは、この図8のP2の位置にある。
【0048】
P2でブロッキングが起こると、第一及び第二のローター1,2の反対方向への回転が継続することにより、チャンバー30は、容積を変えることなく、軸方向の下流に変位する。換言すれば、P2でブロッキングが生じた後、チャンバー30内で圧縮は起こらない。
【0049】
チャンバー30が、第一及び第二のスクリュー1B,2Bの下流端に到達するとき、排気口16が第一及び第二のスクリュー1B,2Bから離れているため、この場合にも、このチャンバー30内で圧縮は起こらない。
【0050】
図9の曲線Cは、時間tの関数として、チャンバー30の容積Vを示すグラフである。
【0051】
前述のことから、第一及び第二のスクリュー1B,2Bの役割は、容積の減少、したがって圧縮が起こらないようにすることが理解できる。第一及び第二のスクリューは、ガスを留めるP1のブロッキングポイントで、このガスが、チャンバー30内で、第一及び第二のローブ部1A,2Aによって圧縮されるときに、同様のブロッキングが連続してなされるようにする役割を担う。第一及び第二のスクリューは、第一及び第二のローブ部1A,2Aのチャンバー30に存在するガスを、このガスの圧縮後に離隔するP2のブロッキングポイントで、同様のブロッキングが連続してなされるようにする役割も果たす。
【0052】
圧縮は、主に第一及び第二のローブ部1A,2Aで行われるので、この圧縮による昇温も、主に第一及び第二のローブ部1A,2Aで生じる。これにより、第一及び第二のローブ部1A,2Aのところで、内容積部14を効率的に冷却しながら、第一及び第二のスクリュー1B,2Bの温度上昇を低くすることができる。さらに、第一及び第二のスクリュー1B,2Bの温度上昇を低くすることは、そのようなスクリューが複雑な形状をしているため、スクリューの膨張の影響を抑制することが、とても困難であることから、有利である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9