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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】アンテナ装置および無線通信装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 5/378 20150101AFI20230719BHJP
   H01Q 1/24 20060101ALI20230719BHJP
   H01Q 5/385 20150101ALI20230719BHJP
   H01Q 1/50 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
H01Q5/378
H01Q1/24 Z
H01Q5/385
H01Q1/50
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021554553
(86)(22)【出願日】2019-11-08
(86)【国際出願番号】 JP2019043983
(87)【国際公開番号】W WO2021090499
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】318012780
【氏名又は名称】FCNT株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伴 泰光
(72)【発明者】
【氏名】篠島 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】▲崎▼田 聡史
(72)【発明者】
【氏名】吉川 学
(72)【発明者】
【氏名】古賀 洋平
(72)【発明者】
【氏名】殿岡 旅人
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0129612(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0070239(US,A1)
【文献】特開2009-111999(JP,A)
【文献】特開2018-148533(JP,A)
【文献】特表2008-503972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 5/378
H01Q 1/24
H01Q 5/385
H01Q 1/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電点を有し、接地されたグランド基板と、
一端が前記グランド基板の接地された領域と電気的に接続し、前記グランド基板と平行な板状の第1導体素子と、
一端が前記給電点と電気的に接続し、前記グランド基板と平行な板状の第2導体素子と、
隙間を介して前記第2導体素子と並んで配置される、板状の第3導体素子と、
前記第1導体素子の他端と前記第3導体素子とを電気的に接続する接続部と、を備え、
前記隙間は、前記給電点から前記第2導体素子を経て前記第3導体素子に至る経路長の4倍の長さを1波長とする電波に対して前記第2導体素子と前記第3導体素子とを容量結合させる、
アンテナ装置。
【請求項2】
前記給電点は、前記グランド基板の一方の面に設けられ、
前記第1導体素子は、前記グランド基板の他方の面と電気的に接続する、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記隙間には、前記給電点から前記第2導体素子を経て前記第3導体素子に至る経路長の4倍の長さを1波長とする電波に対して前記第2導体素子と前記第3導体素子とを容量結合させる整合回路が設けられる、
請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記整合回路は、コンデンサとインダクタの並列回路を含む、
請求項3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記整合回路は、チップ部品を含む、
請求項3または4に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のアンテナ装置を実装した、
無線通信装置。
【請求項7】
前記無線通信装置の側面は金属製の外装フレームによって囲まれており、
前記第1導体素子は、前記外装フレームの一部の領域で形成される、
請求項6に記載の無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置および無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の周波数に共振可能なアンテナ装置が提案されている(例えば、特許文献1-3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-111999号公報
【文献】特開2018-148533号公報
【文献】特表2008-503972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アンテナ装置において、共振可能な周波数の追加は無給電素子を追加することで実現していた。しかしながら、共振可能な周波数を追加するたびに無給電素子を追加してしまうと、アンテナ装置の小型化が困難になるとともに、当該アンテナ装置を実装する無線通信装置の小型化も困難となる。
【0005】
開示の技術の1つの側面は、より小型で複数の周波数に対応するアンテナ装置および当該アンテナ装置を実装した無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の技術の1つの側面は、次のようなアンテナ装置によって例示される。本アンテナ装置は、給電点を有し、接地されたグランド基板と、一端が前記グランド基板の接地された領域と電気的に接続し、前記グランド基板と平行な板状の第1導体素子と、一端が前記給電点と電気的に接続し、前記グランド基板と平行な板状の第2導体素子と、隙間を介して前記第2導体素子と並んで配置される、板状の第3導体素子と、前記第1導体素子の他端と前記第3導体素子とを電気的に接続する接続部と、を備え、前記隙間は、前記給電点から前記第2導体素子を経て前記第3導体素子に至る経路長の4倍の長さを1波長とする電波に対して前記第2導体素子と前記第3導体素子とを容量結合させる。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術は、より小型で複数の周波数に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係るアンテナ装置の一例を示す図である。
図2図2は、実施形態に係るアンテナ装置の共振状態を模式的に示す第1の図である。
図3図3は、実施形態に係るアンテナ装置の共振状態を模式的に示す第2の図である。
図4図4は、実施形態に係るアンテナ装置の共振状態を模式的に示す第3の図である。
図5図5は、実施形態に係るアンテナ装置の共振状態を模式的に示す第4の図である。
図6図6は、実施形態に係るアンテナ装置の反射係数を例示する図である。
図7図7は、実施形態に係るアンテナ装置をスマートフォンに実装する構成を例示する図である。
図8図8は、実装例に係るスマートフォンが実装したアンテナ装置の構成の一例を示す第1の図である。
図9図9は、実装例に係るスマートフォンが実装したアンテナ装置の構成の一例を示す第2の図である。
図10図10は、実装例に係るスマートフォンが実装したアンテナ装置の構成の一例を示す第3の図である。
図11図11は、実装例に係るスマートフォンが実装したアンテナ装置の構成の一例を示す第4の図である。
図12図12は、実装例におけるアンテナ装置の反射係数を例示する図である。
図13図13は、実施形態に係るアンテナをスマートフォンに実装する他の例を示す図である。
図14図14は、アンテナ装置の隙間に挿入した整合回路の一例を示す図である。
図15図15は、シミュレーションに用いたパラメータを例示する図である。
図16図16は、シミュレーションの結果を例示する図である。
図17図17は、第1変形例に係るアンテナ装置の一例を示す図である。
図18図18は、第1変形例に係るアンテナ装置の共振状態を模式的に示す第1の図である。
図19図19は、第1変形例に係るアンテナ装置の共振状態を模式的に示す第2の図である。
図20図20は、第1変形例に係るアンテナ装置の共振状態を模式的に示す第3の図である。
図21図21は、第1変形例に係るアンテナ装置の共振状態を模式的に示す第4の図である。
図22図22は、第1変形例に係るアンテナ装置の共振状態を模式的に示す第5の図である。
図23図23は、第2変形例に係るアンテナ装置の一例を示す図である。
図24図24は、第2変形例に係るアンテナ装置の共振状態を模式的に示す図である。
図25図25は、第2変形例において、第2導体素子と第3導体素子との間にチップ部品を配置した構成の一例を示す図である。
図26図26は、第3変形例に係るアンテナ装置の一例を示す図である。
図27図27は、第3変形例に係るアンテナ装置において、第2導体素子と第3導体素子とを外した状態を例示する図である。
図28図28は、第3変形例において、第1導体素子とグランド基板との間に介在するそれぞれのチップ部品をオープンにした状態と短絡させた状態におけるアンテナ装置の放射効率を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施形態>
以下、実施形態について説明する。以下に示す実施形態の構成は例示であり、開示の技術は実施形態の構成に限定されない。実施形態に係るアンテナ装置は、
給電点を有し、接地されたグランド基板と、
一端が前記グランド基板の接地された領域と電気的に接続し、前記グランド基板と平行な板状の第1導体素子と、
一端が前記給電点と電気的に接続し、前記グランド基板と平行な板状の第2導体素子と、
隙間を介して前記第2導体素子と並んで配置される、板状の第3導体素子と、
前記第1導体素子の他端と前記第3導体素子とを電気的に接続する接続部と、を備え、
前記隙間は、前記給電点から前記第2導体素子を経て前記第3導体素子に至る経路長の4倍の長さを1波長とする電波に対して前記第2導体素子と前記第3導体素子とを容量結合させる。
【0010】
実施形態に係るアンテナ装置では、第1導体素子とグランド基板とが電気的に接続され、第1導体素子と第3導体素子とが電気的に接続されていることから、グランド基板から第1導体素子を経て第3導体素子に至る経路長の4倍の長さを1波長とする第1電波に対しては、グランド基板から第1導体素子を経て第3導体素子に至るモノポールアンテナとして動作することができる。
【0011】
さらに、実施形態に係るアンテナ装置では、第2導体素子と第3導体素子との間に隙間を設ける。隙間の距離は、給電点から第2導体素子を経て第3導体素子に至る経路長の4倍の長さを1波長とする第2電波に対して第2導体素子と第3導体素子とを容量結合させるものである。そのため、実施形態に係るアンテナ装置は、第2電波に対しては、給電点から第2導体素子を経て第3導体素子に至るモノポールアンテナとして動作することができる。実施形態に係るアンテナ装置は、給電点から第2導体素子に至る経路長の4倍の長さを1波長とする第3電波に対しては、給電点から第2導体素子に至るモノポールアンテナとして動作することができる。
【0012】
さらに、実施形態に係るアンテナ装置は、給電点から第2導体素子、第3導体素子および第1導体素子を経てグランド基板に至る経路長を1波長とする第4電波に対しては、給電点から第2導体素子、第3導体素子および第1導体素子を経てグランド基板に至るループアンテナとして動作することができる。本実施形態に係るアンテナ装置は、第2導体素子と第3導体素子の2つの無給電素子を有するところ、第1電波から第4電波の4つの周波数の電波に共振可能となる。すなわち、実施形態に係るアンテナ装置は、備えた無給電素子の数よりも多くの周波数で動作可能となるため、複数の周波数に対応しつつアンテナ装置の小型化が容易となる。
【0013】
実施形態に係るアンテナ装置は、次の特徴を備えてもよい。前記給電点は、前記グランド基板の一方の面に設けられ、前記第1導体素子は、前記グランド基板の他方の面と電気的に接続する。このような特徴を備えることで、本アンテナ装置は、グランド基板の他方の面側に第1導体素子を配置し、グランド基板の一方の面側に第2導体素子と第3導体素子とを配置することができる。
【0014】
実施形態に係るアンテナ装置は、次の特徴を備えてもよい。前記隙間には、前記給電点から前記第2導体素子を経て前記第3導体素子に至る経路長の4倍の長さを1波長とする電波に対して前記第2導体素子と前記第3導体素子とを容量結合させる整合回路が設けられる。整合回路を用いることで、アンテナ装置をスマートフォン等の無線通信装置に実装する際のアンテナ装置の感度低下を抑制することができる。また、整合回路はコンデンサとインダクタの並列回路であってもよく、チップ部品を含んでもよい。
【0015】
本実施形態は、上記したアンテナ装置を実装した無線通信装置であってもよい。無線通信装置は、例えば、スマートフォン、フィーチャーフォン、タブレット型コンピュータ、ウェアラブルコンピュータ等である。また、前記第1導体素子は、無線通信装置の側面を囲む金属製の外装フレームの一部の領域で形成されてもよい。外装フレームの一部の領域で第1導体素子を形成することで、無線通信装置をより小型化することができる。
【0016】
以下、図面を参照して、実施形態についてさらに説明する。図1は、実施形態に係るアンテナ装置の一例を示す図である。図1に例示されるアンテナ装置1は、第1導体素子11、第2導体素子12、第3導体素子13、グランド基板2、第1接続導体31、第2接続導体32を含む。以下、本明細書において、第1導体素子11側を下、第2導体素子12側を上、図1に向かって右方向を右、図1に向かって左方向を左とする。
【0017】
グランド基板2は、板状に形成される。グランド基板2の表面21および裏面22は接地される。板状に形成されたグランド基板2の裏面22には、給電点221が設けられる。
【0018】
第1導体素子11は、金属等の導体を板状に形成し、グランド基板2の表面21側に配置される素子である。第1導体素子11は、グランド基板2に対して平行である。第1導体素子11の一端111は第1接続導体31を介して、グランド基板2の表面21と電気的に接続される。
【0019】
第2導体素子12は、金属等の導体を板状に形成し、グランド基板2の裏面22側に配置される素子である。第2導体素子12は、グランド基板2に対して平行である。すなわち、図1の例では、第1導体素子11と第2導体素子12とは平行である。第2導体素子12の一端121は、グランド基板2の裏面22に設けられた給電点221と電気的に接続される。
【0020】
第3導体素子13は、金属等の導体を板状に形成し、グランド基板2の裏面22側に配置される素子である。第3導体素子13は、グランド基板2に対して平行である。すなわち、図1の例では、第1導体素子11と第3導体素子13とは平行である。また、第3導体素子13の長手方向の中心軸と、第2導体素子12の長手方向の中心軸とは略一致する。第3導体素子13の一端131と第2導体素子12の他端122との間には、隙間4が形成される。第3導体素子13は、一端131と他端132との間の接続部分133において、第2接続導体32を介して、第1導体素子11の他端112と電気的に接続される。図1では、第3導体素子13は接続部分133からさらに右方向に突出しているが、第3導体素子13は接続部分133からさらに右方向に突出しなくともよい。すなわち、第3導体素子13において、接続部分133が第3導体素子13の他端132と一致してもよい。
【0021】
ここで、隙間4の距離(第2導体素子12の他端122と第3導体素子13の一端131との間の距離)は、給電点221から第2導体素子12の他端122までの長さの4倍の長さを波長とする電波に対しては第2導体素子12と第3導体素子13とを絶縁する距離である。また、隙間4の距離は、給電点221から第2導体素子12を経て第3導体素子13の他端132までの長さの4倍の長さを波長とする電波に対しては第2導体素子12と第3導体素子13とを容量結合させる距離である。
【0022】
図2から図5は、実施形態に係るアンテナ装置の共振状態を模式的に示す図である。図2では、アンテナ101が共振する状態が例示される。アンテナ101は、第1接続導体31、第1導体素子11、第2接続導体32および第3導体素子13における接続部分133から他端132までを含む。すなわち、アンテナ101は、第1接続導体31、第1導体素子11、第2接続導体32および接続部分133を経て第3導体素子13の他端132までの長さ(図2において点線矢印L1として例示)の4倍の長さを波長とする第1電波で共振する。換言すれば、アンテナ101は、第1電波の1/4波長で共振するモノポールアンテナである。
【0023】
図3では、アンテナ102が共振する状態が例示される。アンテナ102は、給電点221、第2導体素子12および第3導体素子13を含む。ここで、隙間4の距離は、給電点221から第2導体素子12を経て第3導体素子13の他端132までの長さ(図3において、点線矢印L2として例示)の4倍の長さ以上を波長とする電波に対しては第2導体素子12と第3導体素子13とを容量結合させる距離である。そのため、アンテナ102は、給電点221から、第2導体素子12を経て第3導体素子13の他端132までの長さの4倍の長さを波長とする第2電波で共振する。換言すれば、アンテナ102は、第2電波の1/4波長で共振するモノポールアンテナである。
【0024】
図4では、アンテナ103が共振する状態が例示される。アンテナ103は、給電点221および第2導体素子12を含む。ここで、隙間4の距離は、給電点221から第2導体素子12の他端122までの長さ(図4において、点線矢印L3として例示)の4倍の長さを波長とする電波に対しては第2導体素子12と第3導体素子13とを絶縁する長さである。そのため、アンテナ103は、給電点221から第2導体素子12の他端122に至る長さの4倍の長さを波長とする第3電波で共振する。換言すれば、アンテナ103は、第3電波の1/4波長で共振するモノポールアンテナである。
【0025】
図5では、アンテナ104が共振する状態が例示される。アンテナ104は、給電点221、第2導体素子12、第3導体素子13の一端131から接続部分133、第2接続導体32、第1導体素子11および第1接続導体31を含む。隙間4は、上記の通り、給電点221から第2導体素子12を経て第3導体素子13の他端132までの長さの4倍の長さ以上の波長の電波に対しては、第2導体素子12と第3導体素子13とを容量結合させる距離である。そのため、アンテナ104は、給電点221から、第2導体素子12、第3導体素子13の一端131から接続部分133、第2接続導体32、第1導体素子11および第1接続導体31を経てグランド基板2の表面21に至る長さ(図5において、点線矢印L4として例示)を波長とする第4電波で共振する。ここで、点線矢印L4の矢印が向かい合う位置(例えば、隙間4)がアンテナ104において共振する波形の節(電流の弱い位置)となり、節と節の中間部分(例えば、給電点221)がアンテナ104において共振する波形の腹(強い電流が生じる位置)となる。換言すれば、アンテナ104は、第4電波の1波長で共振するループアンテナである。
【0026】
図6は、実施形態に係るアンテナ装置の反射係数を例示する図である。図6では、縦軸が反射係数(|S1、1|)を例示し、横軸が周波数を例示する。図6に例示するように、アンテナ装置1では、第1電波の周波数f1、第2電波の周波数f2、第3電波の周波数f3、第3電波の周波数f4において、好適なアンテナ性能を発揮することが理解できる。
【0027】
<実施形態の作用効果>
実施形態に係るアンテナ装置1では、第2導体素子12と第3導体素子13との間に隙間4を設ける。隙間4の距離は、アンテナ103のアンテナ長の4倍の長さを波長とする電波に対しては第2導体素子12と第3導体素子13とを絶縁し、アンテナ102のアンテナ長の4倍の長さを波長とする電波に対しては第2導体素子12と第3導体素子13とを容量結合させる距離に設定される。このような構成を有するアンテナ装置1は、第1電波、第2電波、第3電波および第4電波の4つの周波数に対して共振可能となる。従来のアンテナ装置では、共振可能な周波数を増やすごとに無給電素子を増やすことになるため、4つの周波数に共振可能とするには、例えば、1つの給電素子と3つの無給電素子を設けることになる。本実施形態によれば、1つの給電素子(第2導体素子12)と2つの無給電素子(第1導体素子11、第3導体素子13)で4つの周波数に共振可能とすることができる。すなわち、本実施形態によれば、従来よりも少ない素子数でより多くの周波数に対して共振可能なアンテナ装置を実現することができる。すなわち、本実施形態に係るアンテナ装置1は、より小型で複数の周波数に共振可能なアンテナを実現することができる。
【0028】
<実装例>
実施形態に係るアンテナ装置1は、様々な機器に搭載可能である。図7は、実施形態に係るアンテナ装置をスマートフォンに実装する構成を例示する図である。図7では、スマートフォン500の前面側のカバーを開けた状態が例示される。スマートフォン500は板状に形成され、所定の厚みを有する。板状に形成されるスマートフォン500の側面は、金属フレーム51が囲んでいる。金属フレーム51に囲まれる領域内には、各種の電子部品を実装するベース基板3が設けられる。ベース基板3の金属フレーム51と面する側面は、例えば、接地されている。
【0029】
スマートフォン500は、Central Processing Unit(CPU)やメモリ等を備える可搬型の無線通信装置である。スマートフォン500では、アンテナ装置1は、例えば、楕円R1で囲まれる領域内に設けられる。図8から図11は、実装例に係るスマートフォンが実装したアンテナ装置の構成の一例を示す図である。図8はスマートフォン500の前面側のカバーを開けた状態が例示される。図9は、第2導体素子12、第3導体素子13および、Laser Direct Structuring(LDS)用基板53を取り外した状態が例示される。図10図8のA-A線断面図であり、図11図8のB-B線断面図である。
【0030】
図8に例示するように、スマートフォン500に実装されたアンテナ装置1では、第1導体素子11として金属フレーム51の一部の領域が用いられる。金属フレーム51において、第1導体素子11として用いる領域と他の領域との間は、例えば、スリット51aが設けられることで、互いに絶縁される。第2導体素子12と第3導体素子13は、LDS用基板53上にLDSによって薄い板状に形成されている。また、図9に例示するように、グランド基板2上には給電点221が設けられる。
【0031】
図10に例示するように、グランド基板2は、例えば、ベース基板3上に設けられる。グランド基板2は、ベース基板3と電気的に接続されることで接地される。グランド基板2とベース基板3は、接地を共有していれば、一体として形成されてもよいし、別部材として形成されてもよい。LDS用基板53は、グランド基板2とベース基板3とは別に、グランド基板2に対して平行に設けられる。
【0032】
図11に例示するように、第2接続導体32と第3導体素子13とは、LDS用基板53に設けられたビア54を介して接続される。金属フレーム51の一部の領域を第1導体素子11として利用するため、図8では、第1導体素子11と第2導体素子12や第3導体素子13とは、左右方向に並べて配置される。スマートフォン500では、第1導体素子11として、金属フレーム51が用いることで、スマートフォン500におけるアンテナ装置1の部品点数を削減することができる。
【0033】
図12は、実装例におけるアンテナ装置の反射係数を例示する図である。図12では、縦軸が反射係数(|S1、1|)を例示し、横軸が周波数を例示する。図12に例示するように、スマートフォン500に実装したアンテナ装置1では、1.5GHz(図中、三角数字1)、2.4GHz(図中、三角数字2)、3.5GHz(図中、三角数字3)、5.5GHz(図中、三角数字4)において、好適なアンテナ性能を発揮することが理解できる。
【0034】
なお、上記実装例では、スマートフォン500の側面を囲む金属フレーム51を第1導体素子11としても利用したが、スマートフォン500にアンテナ装置1を実装する際には、金属フレーム51をアンテナとして利用しなくともよい。図13は、実施形態に係るアンテナをスマートフォンに実装する他の例を示す図である。図13は、実施形態に係るアンテナをスマートフォンに実装する他の例の構成を-Y方向から見た図の一例である。図13では、スマートフォン500の前面側(+Z側)に第2導体素子12が設けられ、後面側(-Z側)に第1導体素子11が設けられる。すなわち、第1導体素子11と第2導体素子12や第3導体素子13とは、厚み方向に並べられている。このような構成とすることで、スマートフォン500の金属フレーム51内にアンテナ装置1を収容することができる。
【0035】
<整合回路>
アンテナ装置1をスマートフォン500に実装する場合、アンテナ装置1をスマートフォン500内に固定するために、例えば、第3導体素子13にねじ穴が設けられ、ねじによってアンテナ装置1がスマートフォン500に固定される。ねじ穴が設けられると、アンテナ装置1の感度が低下することが考えられる。そこで、第2導体素子12と第3導体素子13との間の隙間4に整合回路を設けることで、アンテナ装置1の感度の低下を抑制することについて検討する。
【0036】
図14は、アンテナ装置の隙間に挿入した整合回路の一例を示す図である。図14に例示される整合回路800は、一端が第2導体素子12の他端122に接続され、他端が第3導体素子13の一端131に接続される。整合回路800では、第2導体素子12の他端122側から第3導体素子13の一端131に向かって順に、コンデンサC0、インダクタL1とコンデンサC1とを含む並列回路、インダクタL2とコンデンサC2とを含む並列回路、が直列に接続される。
【0037】
整合回路800の効果を検証するため、シミュレーションを行ったので説明する。本シミュレーションでは、縦横それぞれ150mmの銅板をグランド基板2として使用する。第2導体素子12の長さを10mm、第3導体素子13の長さを30mmとする。第2導体素子12と第1導体素子11との距離、および、第3導体素子13と第1導体素子11との距離を、5mmとする。第2導体素子12と第3導体素子13との間の隙間4の距離を変化させるとともに、整合回路800のコンデンサC0、C1、C2の静電容量や、インダクタL1、L2のインダクタンスを変化させた。
【0038】
図15は、シミュレーションに用いたパラメータを例示する図である。図15において、「隙間」は隙間4の距離(単位はmm)を示す。「C0」は、コンデンサC0の静電容量(単位はpF)を示す。「L1」は、インダクタL1のインダクタンス(単位はnH)を示す。「C1」」は、コンデンサC1の静電容量(単位はpF)を示す。「L2」は、インダクタL2のインダクタンス(単位はnH)を示す。「C2」は、コンデンサC2の静電容量(単位はpF)を示す。「番号」は、各パラメータの組を一意に識別する番号である。
【0039】
図16は、シミュレーションの結果を例示する図である。図16は、図15に例示した番号1から番号5までの各パラメータの組み合わせを適用した場合について、アンテナ装置1のトータル効率を例示する。図16の縦軸はトータル効率(dB)を示し、横軸は周波数(GHz)を示す。無線通信における(LTE)や第5世代(例えば、ミリ波)で使用される周波数1.5GHz、2.4GHz、3.5GHz、5.5GHzの各周波数について図16で例示されるトータル効率を確認すると、番号5のパラメータの組み合わせを採用することで、ねじ穴を設けない場合に近いトータル効率をアンテナ装置1が発揮できることが理解できる。
【0040】
<第1変形例>
実施形態に係るアンテナ装置1は、様々に変形することができる。図17は、第1変形例に係るアンテナ装置の一例を示す図である。図17は、第1変形例に係るアンテナ装置1aを側面から見た図となっている。アンテナ装置1aは、グランド基板2が、グランド基板2aとグランド部2bとを含み、第1導体素子11が接続導体31aとグランド部2bとで接地される点で、実施形態に係るアンテナ装置1とは異なる。
【0041】
グランド基板2aは、第1導体素子11、第2導体素子12および第3導体素子13と平行な基板である。グランド基板2aは、例えば、縦横200mmの正方形に形成される。実施形態に係るアンテナ装置1では、グランド基板2の表面21側に第1導体素子11が配置され、裏面22側に第2導体素子12と第3導体素子13とが配置された。第1変形例に係るアンテナ装置1aでは、第1導体素子11、第2導体素子12および第3導体素子13のいずれもが、グランド基板2aの表面21a側に配置される。
【0042】
グランド基板2aの表面21aには、柱状のグランド部2bが立設される。グランド部2bの先端には、給電点221が設けられる。アンテナ装置1aでは、第1導体素子11は、グランド部2bの側面と電気的に接続されることで、接地される。また、第1導体素子11は、第1導体素子11の一端111と他端112との間に位置する接続部分113において、接続導体31aによってグランド基板2aの表面21と電気的に接続されることでも、接地される。
【0043】
図18から図22は、第1変形例に係るアンテナ装置の共振状態を模式的に示す図である。図18では、アンテナ201が共振する状態が例示される。アンテナ201は、第1導体素子11、第2接続導体32および第3導体素子13における接続部分133から他端132までを含む。すなわち、アンテナ201は、第1導体素子11、第2接続導体32および接続部分133を経て第3導体素子13の他端132までの長さ(図18において点線矢印L11として例示)の4倍の長さを波長とする第1電波で共振する。換言すれば、アンテナ201は、第1電波の1/4波長で共振するモノポールアンテナである。
【0044】
図19では、アンテナ202が共振する状態が例示される。アンテナ202は、給電点221、第2導体素子12および第3導体素子13を含む。アンテナ202は、給電点221から、第2導体素子12を経て第3導体素子13の他端132までの長さ(図19において点線矢印L12として例示)の4倍の長さを波長とする第2電波で共振する。換言すれば、アンテナ202は、第2電波の1/4波長で共振するモノポールアンテナである。
【0045】
図20では、アンテナ203が共振する状態が例示される。アンテナ203は、給電点221および第2導体素子12を含む。ここで、隙間4の距離は、給電点221から第2導体素子12の他端122までの長さ(図20において、点線矢印L13として例示)の4倍の長さを波長とする電波に対しては第2導体素子12と第3導体素子13とを絶縁する長さである。そのため、アンテナ203は、給電点221から第2導体素子12の他端122に至る長さの4倍の長さを波長とする第3電波で共振する。換言すれば、アンテナ203は、第3電波の1/4波長で共振するモノポールアンテナである。
【0046】
図21では、アンテナ204が共振する状態が例示される。アンテナ204は、給電点221、第2導体素子12、第3導体素子13の一端131から接続部分133、第2接続導体32、第1導体素子11およびグランド部2bを含む。アンテナ204は、給電点221から、第2導体素子12、第3導体素子13の一端131から接続部分133、第2接続導体32、第1導体素子11およびグランド部2bを経て給電点221に戻る長さ(図21において、点線矢印L14として例示)を波長とする第4電波で共振する。アンテナ104において共振する波形の節や腹の位置は、図5に例示するアンテナ104と同様である。換言すれば、アンテナ204は、第4電波の1波長で共振するループアンテナである。
【0047】
図22では、アンテナ205が共振する状態が例示される。アンテナ205は、接続導体31aおよび第1導体素子11における接続部分113から他端112までを含む。そのため、アンテナ205は、接続導体31a、接続部分113を経て第1導体素子11の他端112に至る長さ(図22において、点線矢印L15として例示)を波長とする第5電波で共振する。換言すれば、アンテナ205は、第5電波の1/4波長で共振するモノポールアンテナである。
【0048】
第1変形例では、第1導体素子11をグランド部2bおよび接続導体31aで接地することで、第5電波についても共振可能とすることができる。
【0049】
<第2変形例>
図23は、第2変形例に係るアンテナ装置の一例を示す図である。第2変形例に係るアンテナ装置1bは、接続導体32が第3導体素子13の途中部分ではなく他端132側の端部に接続される点で、実施形態に係るアンテナ装置1とは異なる。
【0050】
図24は、第2変形例に係るアンテナ装置の共振状態を模式的に示す図である。図24は、アンテナ301が共振する状態が例示される。アンテナ201は、第1接続導体31、第1導体素子11、第2接続導体32までを含む。すなわち、アンテナ301は、第1接続導体31、第1導体素子11、第2接続導体32および接続部分133を経て第3導体素子13の他端132までの長さ(図24において点線矢印L21として例示)の4倍の長さを波長とする第11電波で共振する。換言すれば、アンテナ201は、第11電波の1/4波長で共振するモノポールアンテナである。なお、第2変形例では、上記の通り、接続導体32が第3導体素子13の他端132側の端部に接続されることから、点線矢印L21の長さは点線矢印L1よりも短い。すなわち、第2変形例に係るアンテナ装置1bのアンテナ301が共振する第11電波は、実施形態に係るアンテナ装置1のアンテナ101が共振する第1電波よりも短波長となる。
【0051】
なお、アンテナ装置1bの構成は、接続導体32が第3導体素子13の他端132側の端部に接続される点を除いて実施形態に係るアンテナ装置1と同様である。そのため、アンテナ装置1bは、第2電波、第3電波および第4電波についても共振可能である。第2変形例に係るアンテナ装置1bにおいて、上記実装例のように、第1導体素子11をスマートフォン500の金属フレーム51の一部の領域を用いることもできる。
【0052】
図25は、第2変形例において、第2導体素子と第3導体素子との間にチップ部品を配置した構成の一例を示す図である。チップ部品41は、例えば、チップ抵抗やチップコンデンサである。図25に例示されるように、隙間4にチップ抵抗やチップコンデンサ等のチップ部品41を挿入してもよい。
【0053】
<第3変形例>
図26は、第3変形例に係るアンテナ装置の一例を示す図である。第3変形例に係るアンテナ装置1cは、上記実装例と同様に、図7に例示されるスマートフォン500の楕円R1で囲まれる領域内に設けられる。図26は、図7の楕円R1で囲まれる領域の拡大図の一例である。アンテナ装置1cは、金属フレーム51の一部の領域を第1導体素子11として用いる。
【0054】
図27は、第3変形例に係るアンテナ装置において、第2導体素子と第3導体素子とを外した状態を例示する図である。図27を参照すると理解できるように、第1導体素子11は、一端111側の端部において、第1接続導体31およびチップ部品41aによってグランド基板2の側面と電気的に接続されることで接地される。また、第1導体素子11は、第1接続導体31よりも他端112側において、第1接続導体31aとチップ部品41bによってグランド基板2の側面と電気的に接続されることで、接地される。
【0055】
図28は、第3変形例において、第1導体素子とグランドとの間に介在するそれぞれのチップ部品をオープンにした状態と短絡させた状態におけるアンテナ装置の放射効率を例示する図である。図28において、縦軸は放射効率(dB)、横軸は周波数(GHz)を例示する。また、図28の凡例において、「a」はチップ部品41aを示し、「b」はチップ部品41bを示す。図28を参照すると理解できるように、チップ部品41a、41bのそれぞれについてオープン、短絡を適宜選択することで、アンテナ装置1cを共振させる電波の周波数を変更することができる。
【0056】
以上説明した実施形態や変形例は適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0057】
1、1a、1b、1c・・・アンテナ装置
2・・・グランド基板
211・・・給電点
3・・・ベース基板
11・・・第1導体素子
12・・・第2導体素子
13・・・第3導体素子
4・・・隙間
41、41a、41b・・・チップ部品
101、102、103、104、201、202,203、204、205・・・アンテナ
500・・・スマートフォン
51・・・金属フレーム
800・・・整合回路
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