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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】電動アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/20 20060101AFI20230719BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20230719BHJP
   H02K 7/06 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
F16H25/20 B
H02K7/116
H02K7/06 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021558230
(86)(22)【出願日】2020-10-20
(86)【国際出願番号】 JP2020039377
(87)【国際公開番号】W WO2021100390
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2019210431
(32)【優先日】2019-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000131511
【氏名又は名称】株式会社シブタニ
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】品川 靖幸
(72)【発明者】
【氏名】田中 敦士
(72)【発明者】
【氏名】尾藤 良祐
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-183492(JP,A)
【文献】特開平10-051997(JP,A)
【文献】特開平10-008799(JP,A)
【文献】実開昭49-101175(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/20
H02K 7/116
H02K 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正転及び逆転が可能なモータの回転出力軸が、円柱状外周面を有する案内回転体に動力の伝達を可能とされており、
前記案内回転体には、らせん状の疎巻きのコイルバネが前記案内回転体の軸方向に移動可能に巻装されており、
前記コイルバネの両端において、前記案内回転体の外周側に延出した部分に形成された2つの延出部が、移動部材に係合されることにより、前記コイルバネの回転が阻止されており、
前記案内回転体は、外周面の軸方向中間部の同心円上の周方向複数位置に形成された複数の突起を含み、
前記複数の突起のうち、第1の突起は、前記案内回転体の一方向への回転によって前記コイルバネのピッチ間隙に対し、前記ピッチ間隙の螺旋状の長手方向に沿って相対的に移動されることにより、前記コイルバネと係合して前記コイルバネを軸方向に移動し、
前記第1の突起は、前記ピッチ間隙の螺旋状の長手方向の端に達した後、前記コイルバネとの係合が解除され、前記第1の突起と前記コイルバネとの係合が解除されたときに、前記複数の突起のうち、第2の突起と前記コイルバネとが係合する、
電動アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載の電動アクチュエータにおいて
前記複数の突起の数は、2つ~4つのいずれか1であり、前記案内回転体の同心円上の周方向複数位置に均等に配置される、
電動アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、宅配ボックスや配電盤収納箱等の扉付ボックスにおいて、扉の施解錠を行うための電気錠が設けられる場合がある。電気錠では、電動アクチュエータが組み込まれて、扉の施解錠を電気的に行う。
【0003】
特許文献1には、正転及び逆転が可能なモータの回転出力軸に対し円柱状外周面を有する案内部材(案内回転体)が動力の伝達を可能に連結されており、案内部材には、らせん状の疎巻きのコイルバネが案内部材の軸方向に移動可能に巻装されている電動アクチュエータが記載されている。この構成では、案内部材の外周面の長さ方向中央部に、コイルバネのピッチ間隙を遊動できる単一の突起が形成される。コイルバネの両端において、案内部材の径方向外側に延出した部分が、被動部材(移動部材)に係合されることによりコイルバネの回り止めが施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3963981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された電動アクチュエータでは、案内部材の軸方向に疎巻きのコイルバネが移動したときに案内部材の回転位置によっては外周面の突起とコイルバネとの係合が一旦解除されてコイルばねが大きく伸張し、その状態で再度突起がコイルバネの係合解除部分とは別の部分に係合する場合がある。これにより、コイルバネにより移動部材に安定した力で付勢できない可能性がある。例えば、特許文献1に記載された構成を電気錠の施錠に用いる場合に、移動部材の移動によって施錠する構成で移動部材に付与するバネ力にばらつきが生じて、施錠のための力が不安定になる可能性がある。
【0006】
本開示の目的は、疎巻きのコイルバネが軸方向に移動したときに、コイルバネの両端に係合する移動部材に対し、コイルバネにより安定した力で付勢できる電動アクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の電動アクチュエータは、正転及び逆転が可能なモータの回転出力軸が、円柱状外周面を有する案内回転体に動力の伝達を可能とされており、案内回転体には、らせん状の疎巻きのコイルバネが前記案内回転体の軸方向に移動可能に巻装されており、コイルバネの両端において、案内回転体の外周側に延出した部分に形成された2つの延出部が、移動部材に係合されることにより、コイルバネの回転が阻止されており、案内回転体は、外周面の軸方向中間部の同心円上の周方向複数位置に形成された複数の突起を含み、複数の突起のうち、第1の突起は、案内回転体の一方向への回転によってコイルバネのピッチ間隙に対し、ピッチ間隙の螺旋状の長手方向に沿って相対的に移動されることにより、コイルバネと係合してコイルバネを軸方向に移動し、第1の突起は、ピッチ間隙の螺旋状の長手方向の端に達した後、コイルバネとの係合が解除され、第1の突起とコイルバネとの係合が解除されたときに、複数の突起のうち、第2の突起とコイルバネとが係合する、電動アクチュエータである。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る電動アクチュエータによれば、疎巻きのコイルバネが軸方向に移動したときに、コイルバネの両端に係合する移動部材に対し、コイルバネにより安定した力で付勢できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の電動アクチュエータにおいて、コイルバネが軸方向の移動範囲の第1端に達した状態を、蓋を取り外して示す図である。
図2】実施形態の電動アクチュエータにおいて、コイルバネが軸方向の移動範囲の第2端に達した状態を、蓋を取り外して示す図である。
図3】実施形態の電動アクチュエータにおいて、コイルバネが軸方向の移動範囲の第2端に達する前の状態を示している図2のA部拡大相当図である。
図4】実施形態において、案内回転体を軸方向一方側から見た図である。
図5】実施形態において、コイルバネが軸方向の移動範囲の第2端側に移動する状態を示している模式図である。
図6】実施形態において、コイルバネが軸方向の移動範囲の第2端に達した状態で案内回転体がさらに回転した状態を示している図2の左半部に対応する図である。
図7】比較例において、コイルバネが図6と同じ位置にある場合に、突起の位置により疎巻きコイルバネが軸方向の移動範囲の第1端側に戻る状態を示している図6に対応する図である。
図8】実施形態の別例において、案内回転体を軸方向一方側から見た図である。
図9】実施形態の別例において、案内回転体を軸方向一方側から見た図である。
図10】実施形態及び実施形態の別例において、突起の数と、案内回転体の回転位置の違いによるバネ力のばらつきと、モータ出力との関係を求めた結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本開示の実施形態を説明する。以下で説明する形状、配置位置及び個数は、説明のための例示であって、電動アクチュエータの仕様に応じて適宜変更することができる。以下ではすべての図面において同等の要素には同一の符号を付して説明する。また、本文中の説明においては、必要に応じてそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0011】
図1は、実施形態の電動アクチュエータ10において、疎巻きのコイルバネ12が軸方向の移動範囲の第1端に達した状態を、蓋を取り外して示す図である。図2は、電動アクチュエータ10において、コイルバネ12が軸方向の移動範囲の第2端に達した状態を、蓋を取り外して示す図である。図3は、電動アクチュエータ10において、コイルバネ12が軸方向の移動範囲の第2端に達する前の状態を示している図2のA部拡大相当図である。
【0012】
電動アクチュエータ10は、例えば宅配ボックス等の扉付ボックスにおける扉の開閉と施解錠とを行うための電気錠に組み込んで用いられる。電気錠は、本体ケーシングと、本体ケーシングに回転可能に支持される軸部材80と、軸部材80に固定されるハンドル本体と、軸部材80の回転によって本体ケーシングに対し移動するラッチと、軸部材80に係合可能な移動部材15を有する電動アクチュエータ10とを含む。図1図2では、電気錠を構成する電動アクチュエータ10以外の構成要素として、軸部材80において、一端に形成したロックカム81部分のみを斜線部で示している。電動アクチュエータ10の作動により移動部材15が移動して軸部材80のロックカム81に係合すると、軸部材80の回転が阻止されるので、本体ケーシングからラッチの先端部が突出した状態で本体ケーシングに対するラッチの退避が阻止される。これにより、ラッチの先端部が扉付ボックスの外装体に形成された係止部に係止されてその状態が維持されるので扉が施錠される。
【0013】
以下、電動アクチュエータ10をより詳しく説明する。電動アクチュエータ10は、本体ケーシングの扉内面側に固定されるケーシング20と、ケーシング20内に配置されるモータ25、小歯車28、案内回転体30、疎巻きのコイルバネ12、及び移動部材15とを含んで構成される。ケーシング20は、底板部21と、底板部21の外周部から一方側(図1図2の紙面の表側)に突出する周壁部22とを有し、一方側端(図1図2の紙面の表側端)に開口22aを有する。開口22aは、蓋(図示せず)により塞がれる。電動アクチュエータのケーシングは、電気錠の本体ケーシングと一体に形成されてもよい。
【0014】
モータ25は、モータケース26がケーシング20の内側に固定され、モータケース26から突出した回転出力軸27に小歯車28が固定される。小歯車28は、後述の案内回転体30の軸方向一端部に形成された大歯車31と噛み合うことで減速機構を形成する。モータ25は、正転及び逆転が可能であり、制御装置(図示せず)によって制御され、電源装置(図示せず)から電力が供給されることにより駆動される。回転出力軸27は、減速機構により案内回転体30に動力の伝達を可能につながっている。
【0015】
案内回転体30は、円柱状外周面を有するコイルバネ配置部32と、コイルバネ配置部32の軸方向一端部に形成された大歯車31とを有し、ケーシング20の内側に回転可能に支持される。モータ25の回転出力軸27と、案内回転体30の中心軸とは第1方向(図1図2の上下方向)に対し平行である。なお、モータ25の回転出力軸に減速機構を介さずに直接に案内回転体30を同軸状態で結合して、回転出力軸が案内回転体30に動力の伝達を可能とされてもよい。
【0016】
コイルバネ配置部32の円筒状外周面の外側には、らせん状の疎巻きのコイルバネ12が案内回転体30の軸方向に移動可能に巻装されている。コイルバネ12の軸方向の移動範囲の第1端は、大歯車31のコイルバネ配置部32側側面で決定され、この側面が、コイルバネ12が第1端側に移動するときのストッパとなる。コイルバネ12の軸方向の移動範囲の第2端は、ケーシング20において、案内回転体30の大歯車31と反対側の端面が対向する内側面で決定され、その内側面が、コイルバネ12が第2端側に移動するときのストッパとなる。
【0017】
図4は、実施形態において、案内回転体30を軸方向一方側から見た図である。図4に示すように、案内回転体30のコイルバネ配置部32の外周面の軸方向中間部において、同心円上の周方向複数位置には、複数の突起として2つの突起33,34が形成される。2つの突起33,34は、第1の突起33と第2の突起34とである。2つの突起33は、例えば、軸状に形成され、コイルバネ配置部32の外周面の位相が180度異なる位置に、径方向外側に突出するように配置される。これにより、案内回転体30の同心円上の周方向の2つの位置に、2つの突起33,34が均等に配置される。各突起33,34は、コイルバネ12を軸方向に案内するために形成される。
【0018】
コイルバネ12は、軸方向のピッチが大きくなることで、1巻きずつのターン部の間に突起33,34を挿入可能にピッチ間隙12aが形成される。コイルバネ12の両端には、案内回転体30の外周側に延出されることにより、2つの延出部13,14が形成される。2つの延出部13,14は、後述の移動部材15に係合される。コイルバネ12は、鋼等の金属線または樹脂により形成することができる。
【0019】
移動部材15は、アーム状であり、第1方向に対し直交する第2方向(図1図2の紙面の表裏方向)に沿う軸部40を中心に、ケーシング20に対し回動可能に支持される。コイルバネ12の各延出部13,14は、移動部材15の長手方向の一端部(図1図2の右端部)に形成された穴または溝等の係合部に挿入されて係合される。これにより、案内回転体30の周りでのコイルバネ12の回転が阻止される。そして、モータ25が回転すると、案内回転体30が回転し、2つの突起33,34のうち、少なくとも一方の突起がコイルバネ12を押す力における案内回転体30の軸方向の分力によって、コイルバネ12を軸方向の第1端側(図1図3の下側)または第2端側(図1図3の上側)に押して移動させる。モータ25が正方向に回転すると、コイルバネ12は第2端側に移動し、モータ25が逆方向に回転すると、コイルバネ12は第1端側に移動する。例えば、モータ25が正方向に回転し、案内回転体30が一方向へ回転することによって、少なくとも第1の突起33がコイルバネ12のピッチ間隙12aに対し、ピッチ間隙12aの螺旋状の長手方向に沿って相対的に移動される。これにより、第1の突起33は、コイルバネ12と係合してコイルバネ12を軸方向の第2端側に移動する。
【0020】
図5は、実施形態において、コイルバネ12が軸方向の移動範囲の第2端側(図5の上側)に移動する状態を示している模式図である。図5では、移動部材15を矩形で示しており、軸部40を中心に回動可能としている。図5では、案内回転体30は、2つの突起33,34を有する円柱状で示している。例えば、図5(a)の状態からモータ25(図1図3)の正方向の回転により、案内回転体30が一方向(図5(a)の矢印C方向)に回転すると、第1の突起33がコイルバネ12を図5の上側に押して、図5(b)に示すように案内回転体30に対しコイルバネ12を軸方向の第2端側に移動させる。
【0021】
さらに、図2に示すように、第1の突起33は、ピッチ間隙12aの螺旋状の長手方向の端に達した後、後述の図6に示すようにコイルバネ12の軸方向の端に達し、コイルバネ12の一方の延出部13の始点近傍で、第1の突起33とコイルバネ12との係合が解除される。第1の突起33とコイルバネ12との係合が解除されたときに、複数の突起33,34のうち、第2の突起34とコイルバネ12とが係合する。これにより、後述のように、移動部材15に対し、コイルバネ12により安定した力で付勢できる。
【0022】
モータ25が正方向に回転することにより、図2に示すように、コイルバネ12が軸方向の移動範囲の第2端に達した状態で、移動部材15は、図2の矢印α方向に移動しており、移動部材15の長手方向の他端部(図2の右端部)が、軸部材80の一端部に形成されたロックカム81に係合する。この状態で軸部材80において図2の矢印β方向への回転は阻止される。また、軸部材80と連動するラッチと、本体ケーシングとの間に設けられたバネ(図示せず)の付勢力により、軸部材80の矢印β方向と逆方向への回転も阻止される。これにより、扉付ボックスの扉が施錠される。また、この状態で、移動部材15の長手方向の他端部がマイクロスイッチ41(図1図2)の可動片42を押圧することでマイクロスイッチ41がオンされる。マイクロスイッチ41のオンを表す信号は制御装置に送信される。これにより、コイルバネ12が第2端に達したことが検出されるので、制御装置はモータ25の回転を停止させる。
【0023】
一方、モータ25が図2の状態から逆方向に回転することにより、図1に示すように、コイルバネ12が軸方向の移動範囲の第1端に達した状態では、移動部材15が、図1の矢印γ方向に移動しており、移動部材15の長手方向の他端部(図1の右端部)と、軸部材80のロックカム81との係合が解除される。これにより、軸部材80が図1の矢印β方向に回転することが可能となり、扉が解錠される。この状態では、ユーザによるハンドル本体の操作に応じて軸部材80が矢印β方向に回転するので、ラッチがケーシングに退避して扉付ボックスの扉が開く。また、移動部材15の長手方向の他端部がマイクロスイッチ41の可動片42から離れることにより、マイクロスイッチ41はオフされる。マイクロスイッチ41がオンからオフに切り換えられたことを表す信号も制御装置に送信される。これにより、制御装置は、モータ25の回転を停止させる。このとき、コイルバネ12が大歯車31の端面に達しコイルバネ12がこの端面及び少なくとも一方の突起33,34との間で滑りを生じたときに、モータ25が停止されるようにしてもよい。
【0024】
図6は、実施形態において、コイルバネ12が図2のように軸方向の移動範囲の第2端に達した状態で案内回転体30がさらに回転した状態を示している図2の左半部に対応する図である。上記のようにコイルバネ12が軸方向の移動範囲の第2端に達するとモータ25は停止されるが、モータ25への電流供給が遮断されてもモータ25及び案内回転体30が慣性で回転し続ける可能性がある。例えば、コイルバネ12が軸方向の移動範囲の第2端に達した状態で、図2の状態から図6の状態に、案内回転体30が回転して突起33,34の位置が変化する可能性がある。例えば、図6の状態では、第1の突起33が、ピッチ間隙12aの螺旋状の長手方向の端に達した後、コイルバネ12の軸方向の端に達し、コイルバネ12の一方の延出部13の始点近傍で、第1の突起33とコイルバネ12との係合が解除される。この場合でも、本例の構成では、案内回転体30の外周面の位相が180度異なる2つの位置に2つの突起33,34が形成されるので、2つの突起33,34のうち、第2の突起34がコイルバネ12に係合する。このとき、コイルバネ12がケーシング20と少なくとも一方の突起33,34との間で軸方向に圧縮されたり、マイクロスイッチ41の可動片42が開くように付勢されていることで、コイルバネ12は、軸方向の移動範囲の第1端側に移動する方向に付勢される。このため、コイルバネ12とすべての突起との係合が解除されると、コイルバネ12が軸方向に大きく伸張する可能性がある。本例の構成では、コイルバネ12と第1の突起33との係合が解除されたときに、コイルバネ12と第2の突起34とが係合するので、コイルバネ12の軸方向長さが、突起33,34の位置により大きく変化することがない。これにより、コイルバネ12が軸方向に移動したときに、コイルバネ12の両端に係合する移動部材15に対し、コイルバネ12により安定した力である安定したバネ力で付勢できる。
【0025】
図7は、比較例において、コイルバネ12が図6と同じ位置にある場合に、突起35の位置によりコイルバネ12が伸張して軸方向の移動範囲の第1端側に戻る状態を示している図6に対応する図である。比較例では、図1図6の実施形態と異なり、案内回転体30の外周面には突起35が1つのみ形成されている。このような比較例では、図7に示すように、コイルバネ12が軸方向の移動範囲の第2端に達した状態でも、案内回転体30がさらに回転することにより、突起35がコイルバネ12を図7の矢印D方向に滑ってコイルバネ12の一方の延出部13の近傍で、コイルバネ12と突起35との係合が解除される場合がある。この場合には、コイルバネ12が伸張して突起35がコイルバネ12の図7で点Pに示す位置で係合する。この状態では、コイルバネ12の圧縮状態が緩まってコイルバネ12が大きく伸張する。これにより、コイルバネ12により移動部材15を付勢する力が変化する。このように、比較例では、案内回転体30の回転位置により、移動部材15に対しコイルバネ12により付勢する力(バネ力)が大きくばらつく可能性がある。図1図6の実施形態によれば、このような不都合を解消できる。
【0026】
図1図6の実施形態では、案内回転体30に2つの突起33,34を形成する場合を説明したが、図8に示す別例の構成のように、案内回転体30aの同心円上の周方向の3つの位置に、3つの突起33,34,36が均等に配置されてもよい。また、図9に示す別例の構成のように、案内回転体30bの同心円上の周方向の4つの位置に、4つの突起33,34,36,37が均等に配置されてもよい。図8図9の別例では、複数の突起は、第1の突起33及び第2の突起34を含んでいる。図8図9のいずれの別例の場合でも、図1図6の構成と同様に、コイルバネ12(図1)が軸方向に移動したときに、コイルバネ12の両端に係合する移動部材15(図1)に対し、コイルバネ12により安定したバネ力で付勢できる。
【0027】
また、コイルバネ12が軸方向に移動したときに、コイルバネ12の両端に係合する移動部材15に対し、コイルバネ12により安定したバネ力を付勢する面からは、案内回転体30,30a、30bに形成する突起の数は多いほどよい。一方、突起の数が多くなると、案内回転体30,30a、30bとコイルバネ12との摩擦力が大きくなるので、モータ25で必要となるモータ出力が大きくなる可能性がある。必要となるモータ出力が大きくなると、モータ25が大型化する原因となる。
【0028】
このような事情から本発明者は、案内回転体30,30a,30bに形成する突起の数と、案内回転体の回転位置の違いによるバネ力のばらつき及び移動部材15を移動するのに必要な最小のモータ出力との関係を求めた。図10は、実施形態及び実施形態の別例において、突起の数と、突起位置の違いによるコイルバネ12のバネ力のばらつきと、モータ出力との関係を求めた結果を示す図である。図10において、バネ力のばらつきの欄中、1~5の数値は、5段階評価で、最もバネ力のばらつきが小さい最良の場合を5で示し、数値が低くなるほどバネ力のばらつきが大きくなることを示している。また、図10において、モータ出力の欄中、1~5の数値は、5段階評価で、最もモータ出力が低い最良の場合を5で示し、数値が低くなるほどモータ出力が高くなることを示している。
【0029】
図10に示した結果から、案内回転体30に形成する突起の数は、2つ~4つのいずれか1であり、案内回転体30の同心円上の周方向複数位置に、複数の突起を均等に配置することにより、バネ力のばらつきを小さくできる効果と、モータ出力を小さくできる効果とを高い次元で両立できることを確認できた。
【0030】
上記の実施形態では、電動アクチュエータを電気錠に組み込む場合を説明したが、本開示の電動アクチュエータは、このような用途に用いるものに限定せず、種々の装置と組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0031】
10 電動アクチュエータ、12 コイルバネ、12a ピッチ間隙、13,14 延出部、15 移動部材、20 ケーシング、21 底板部、22 周壁部、22a 開口、25 モータ、26 モータケース、27 回転出力軸、28 小歯車、30,30a,30b 案内回転体、31 大歯車、32 コイルバネ配置部、33 第1の突起、34 第2の突起、35,36,37 突起、40 軸部、41 マイクロスイッチ、42 可動片、80 軸部材、81 ロックカム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10