(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】リシン置換を含むRomo1由来抗菌ペプチドおよびその変異体
(51)【国際特許分類】
C07K 14/435 20060101AFI20230719BHJP
C07K 9/00 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
C07K14/435 ZNA
C07K9/00
(21)【出願番号】P 2021575448
(86)(22)【出願日】2020-06-17
(86)【国際出願番号】 KR2020007816
(87)【国際公開番号】W WO2020256392
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-01-19
(31)【優先権主張番号】10-2019-0071635
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】314000442
【氏名又は名称】高麗大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】KOREA UNIVERSITY RESEARCH AND BUSINESS FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】145, Anam-ro Seongbuk-gu Seoul 02841, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ユン・ド・ヨ
(72)【発明者】
【氏名】ヘ・ラ・イ
【審査官】小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0123866(KR,A)
【文献】国際公開第2017/109494(WO,A1)
【文献】J. Cell. Biol.,2018年06月04日,Vol.217, No.6,pp.2059-2071
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号24のアミノ酸配列;
配列番号24のアミノ酸配列において1番目
アミノ酸KがTに置換されるか、または12番目アミノ酸TがGに置換されたアミノ酸配列;または
配列番号24のアミノ酸配列において2番目アミノ酸がTに置換されたアミノ酸配列からなる抗菌ペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載の抗菌ペプチドにおいて少なくとも1つのメチオニン
がイソロイシンに置換された
、抗菌ペプチド。
【請求項3】
請求項1に記載の抗菌ペプチドにおいて下記の(a)~(s)のいずれか1つの変異をさらに含む
、抗菌ペプチド:
(a)1~12、14~15、17~21番目アミノ酸のいずれか1つのアミノ酸が欠損、
(b)14番目アミノ酸欠損;および1~8、12、15、または18番目アミノ酸が欠損、
(c)14番目アミノ酸欠損;18番目アミノ酸欠損;および1~8、12、または15番目アミノ酸欠損、
(d)14番目アミノ酸欠損;15番目アミノ酸欠損;およ
び3、4、または12番目アミノ酸欠損、
(e)1または2番目アミノ酸欠損;3または4番目アミノ酸欠損;および18番目アミノ酸欠損、
(f)3、4、14、および18番目アミノ酸欠損、
(g)3または4番目アミノ酸欠損;14番目アミノ酸欠損;18番目アミノ酸欠損;および5、6、7、8、12、または15番目アミノ酸欠損、
(h)14番目アミノ酸欠損;15番目アミノ酸欠損;1または2番目アミノ酸欠損;
および3、4、7、または8番目アミノ酸欠損、
(i)
1または2番目アミノ酸欠損;
7または8番目アミノ酸欠損;14または15番目アミノ酸欠損;
および18番目アミノ酸欠損、
(j)5または6番目アミノ酸欠損;11番目アミノ酸欠損;15番目アミノ酸欠損;18番目アミノ酸欠損;および1または2、3または4、7または8、12、および14番目のいずれか1つのアミノ酸欠損、
(k)1または2番目アミノ酸欠損;7または8番目アミノ酸欠損;および12、14、および15番目アミノ酸欠損、
(l
)5または6番目アミノ酸欠損;3および4番目アミノ酸欠損;
および14、および18番目アミノ酸欠損、
(m)3、4、14、および18番目アミノ酸欠損;5または6番目アミノ酸欠損;および7または8、1
2、および15番目のいずれか1つのアミノ酸欠損、
(n)1または2番目アミノ酸欠損;7または8番目アミノ酸欠損;および12、14、15、および18番目アミノ酸欠損、
(o)3、4、14、および18番目アミノ酸欠損;5または6番目アミノ酸欠損;および7または8、12、および15番目アミノ酸の中から選択された2個のアミノ酸欠損、
(p)1または2番目アミノ酸欠損;5または6番目アミノ酸欠損;7または8番目アミノ酸欠損;
および12、14、15、および18番目アミノ酸が欠損、
(q)3、4、14、および18番目アミノ酸欠損;5または6番目アミノ酸欠損;および1または2、7または8、12、および15番目アミノ酸の中から選択された3個のアミノ酸欠損、
(r)1または2番目アミノ酸欠損;3または4番目アミノ酸欠損;5または6番目アミノ酸欠損;7または8番目アミノ酸欠損;
および12、14、15、および18番目アミノ酸欠損、
(s)1または2番目アミノ酸欠損;3および4番目アミノ酸欠損;5または6番目アミノ酸欠損;7または8番目アミノ酸欠損;
および12、14、15、および18番目アミノ酸欠損。
【請求項4】
請求項1に記載の抗菌ペプチドにおいて10および14番目アミノ酸対、または14および18番目アミノ酸対がステープル化された
、抗菌ペプチド。
【請求項5】
前記ステープル化は、アミノ酸対がペンテニルアラニンまたはオクテニルアラニンに置換されて相互架橋結合したものである、
請求項4に記載の抗菌ペプチド。
【請求項6】
請求項1に記載の抗菌ペプチドにおいてC末端に連結されたアミノ酸配列をさらに含み、
前記C末端に連結されたアミノ酸配列は、RまたはKが1~3個繰り返す配列からなるものである
、抗菌ペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Romo1タンパク質由来の抗菌ペプチドに関し、具体的には、Romo1タンパク質の2番目アルファヘリックス(α-helix2)領域のアミノ酸配列を有する多様なペプチドにおいてグラム陽性、グラム陰性、および多剤耐性バクテリアに対する抗菌活性を確認して、前記各ペプチドと各ペプチドを含む抗菌用組成物などを提供する。
【背景技術】
【0002】
バクテリア感染に対する治療手段として使用されている抗生剤の最も大きな問題点は、バクテリアの抗生剤耐性獲得である。英国政府のウェルカムトラスト報告書によれば、2050年には既存の抗生剤で治療できないスーパーバクテリアによって世界的に死亡者数が1,000万人を超え、死亡原因においてスーパーバクテリア感染が癌を追い越す脅威になると見込まれる。
【0003】
また、世界保健機関(WHO)は、数多くの多剤耐性菌において危急段階(critical priority)にあるバクテリアとしては、カルバペネム耐性アシネトバクター菌(carbapenem-resistant Acinetobacter baumannii)、カルバペネム耐性緑膿菌(carbapenem-resistant Pseudomonas aeruginosa)、およびカルバペネム耐性腸内細菌属(carbapenem-resistant Enterobacteriaceae sp.)菌種を選定し、最後の抗生剤として知られたカルバペネム系抗生剤に耐性を示すグラム陰性スーパーバクテリアを最優先に解決しなければならないと発表した。
【0004】
一方、菌血症は、血液中に細菌が生きている場合をいい、感染の直接的または間接的な影響によって発生するのが敗血症である。すなわち、敗血症は人体に侵入した細菌が血液に感染することで現れる全身性炎症反応症侯群であって、感染後6時間経過後には生存率が30%にならない疾病である。敗血症の原因菌は、連鎖状球菌、黄色ブドウ状球菌、大膓菌、肺炎菌、緑膿菌、真菌を含めて非常に多様であり、このような敗血症誘発原因菌の多様性によってその治療に困難がある。
【0005】
現在まで、敗血症の治療は、主に免疫反応を抑制したり血液凝固を阻害するなど症状の緩和を目的とする治療が最善であり、根本的な治療のためには、初期に患者が感染した菌種の確認のための細菌の同定が必要であるが、上述のように、敗血症による即刻の全身炎症反応によって細菌の同定にかかる時間が確保できないという点に問題がある。また、仮に敗血症原因菌の同定に成功したとしても、その原因菌が抗生剤に対して耐性を有する多剤耐性バクテリアの場合、その治療に適切な薬物がないという点に問題がある。そこで、敗血症原因菌に対する同定なしに広範囲な細菌に対する抗菌活性を有する抗生剤の開発が必要であり、特に、多剤耐性バクテリアに対する抗菌活性を有する抗生物質の開発が要求されている。
【0006】
上述のように、現在まで人類が使用している抗生剤の最も大きな問題点は、バクテリアの耐性獲得であり、これを解決するための多くの研究が進められており、特に、バクテリアの抗生剤耐性獲得を克服するために、抗菌ペプチド(antimicrobial peptide、AMP)の開発が活発に進められている。動物または人間の防御タンパク質(host defense protein)由来の多様な抗菌ペプチドが開発されたが、人体免疫体系内で耐性獲得の可能性があり、血液内で短い半減期と人体に呈する毒性の問題および既存の抗生剤と比較して制限的な薬効を示すなどの問題があって実用化できないのが現状である。一例として、マガイニン(magainin)は、1999年に米国で開発された抗菌ペプチドで、臨床第3相後にFDAの承認を要請したが、その薬効が従来の抗生剤と比較して優れておらず承認が拒否された。また、2003年にダプトマイシン(daptomycin)、2014年にオリタバンシン(oritavancin)が米国食品医薬品局から承認を受けたが、両ペプチドとも、グラム陽性菌でのみ抗菌活性を示し、皮膚感染疾患にのみ適用できた。
【0007】
上述のように、現在までその薬効と適用の制限によって、菌血症および敗血症などの細菌感染疾患の治療に適用可能な抗菌ペプチドは開発されておらず、本発明者らは、ミトコンドリア内膜に位置するRomo1タンパク質の2番目アルファヘリックス構造がグラム陽性、グラム陰性、および多剤耐性バクテリアで抗菌活性を示し、広範囲な細菌感染疾患の治療に適用できることを確認して、本発明を完成した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】WHO, Global Priority List of Antibiotic-Resistant Bacteria to Guide Research, Discovery, and Development of New Antibiotics (2017. 2. 27)
【文献】Lee et al., J. Cell Biol., 217, 2059-2071, 2018
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が達成しようとする技術的課題は、リシン置換を含むRomo1タンパク質由来の抗菌ペプチドおよび前記ペプチドのアミノ酸の一部を置換(substitution)または欠損(deletion)させた、変形された抗菌ペプチドを提供することである。
【0010】
また、本発明は、前記抗菌ペプチドを有効成分として含む抗生剤と前記抗菌ペプチドを含む食品および飼料添加剤、化粧料組成物、生物農薬、および抗菌用医薬部外品組成物を提供することを目的とする。
【0011】
しかし、本発明が達成しようとする技術的課題は上記の課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は以下の記載から当該技術分野における通常の技術者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一態様は、配列番号1で表されるアミノ酸配列で構成されたRomo1タンパク質の配列のうち52~79番目アミノ酸領域から選択される任意のアミノ酸を基準としてカルボキシ(C-)末端方向に連続した7~28個のアミノ酸配列を含む抗菌ペプチドを提供する。
【0013】
一実施形態として、前記抗菌ペプチドを構成する1つ以上のアミノ酸配列が置換(substitution)または欠損(deletion)した抗菌ペプチドを提供する。
【0014】
他の実施形態として、前記ペプチドは、配列番号2~15からなる群より選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を含むか、前記アミノ酸配列からなるペプチドであってもよい。
【0015】
さらに他の実施形態として、前記ペプチドは、配列番号16、30、40、および45からなる群より選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を含むか、前記アミノ酸配列からなるペプチドであってもよい。
【0016】
さらに他の実施形態として、前記配列番号16のアミノ酸配列からなるペプチドは、例えば、配列番号17~29からなる群より選択されたいずれか1つのアミノ酸配列からなるものであってもよい。
【0017】
さらに他の実施形態として、前記配列番号30のアミノ酸配列からなるペプチドは、例えば、配列番号31~39からなる群より選択されたいずれか1つのアミノ酸配列からなるものであってもよい。
【0018】
さらに他の実施形態として、前記配列番号40のアミノ酸配列からなるペプチドは、例えば、配列番号41~44からなる群より選択されたいずれか1つのアミノ酸配列からなるものであってもよい。
【0019】
さらに他の実施形態として、前記配列番号45のアミノ酸配列からなるペプチドは、例えば、配列番号46~47からなる群より選択されるいずれか1つのアミノ酸配列からなるものであってもよい。
【0020】
さらに他の実施形態として、好ましくは、配列番号17~25、27、34、37、39、42、および44からなる群より選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を含むか、前記アミノ酸配列からなるペプチドであってもよく、さらに好ましくは、配列番号22、23、および24からなる群より選択される1つのアミノ酸配列を含むか、前記アミノ酸配列からなるペプチドであってもよい。
【0021】
さらに他の実施形態として、前記ペプチドは、配列番号13のアミノ酸配列;または配列番号13のアミノ酸配列に対して、下記の(a)~(h)の少なくとも1つのアミノ酸置換を含む配列からなる抗菌ペプチドであってもよい。(a)は1番目アミノ酸KをRに置換、(b)は2番目アミノ酸TをKまたはRに置換、(c)は5番目アミノ酸QをKまたはRに置換、(d)は6番目アミノ酸SをK、R、またはHに置換、(e)は9番目アミノ酸TをKまたはRに置換、(f)は10番目アミノ酸FをWに置換、(g)は16番目アミノ酸IをLに置換、(h)は20番目アミノ酸IをGまたはLに置換であってもよい。
【0022】
さらに他の実施形態として、前記抗菌ペプチドは、少なくとも1つのメチオニンがノルロイシンまたはイソロイシンに置換されたものであってもよい。
【0023】
さらに他の実施形態として、前記抗菌ペプチドは、3、4、5、7、8、9、11、17、18、および19番目アミノ酸のいずれか1つが欠損したか;または3または4番目アミノ酸、および7または8番目アミノ酸が欠損したものであってもよい。
【0024】
さらに他の実施形態として、前記抗菌ペプチドは、C末端に連結されたアミノ酸配列をさらに含み、前記C末端に連結されたアミノ酸配列は、RまたはKが1~3個繰り返す配列からなるものであってもよい。
【0025】
他の態様は、配列番号24のアミノ酸配列;または配列番号24のアミノ酸配列において1番目のKがTに置換されるか、または12番目アミノ酸TがGに置換されたアミノ酸配列;または配列番号24のアミノ酸配列において2番目アミノ酸がTに置換されたアミノ酸配列からなる抗菌ペプチドを提供する。
【0026】
一具体例によれば、前記抗菌ペプチドは、少なくとも1つのメチオニンがノルロイシンまたはイソロイシンに置換されたものであってもよい。
【0027】
一具体例によれば、前記抗菌ペプチドは、下記の(a)~(s)のいずれか1つの変異をさらに含むことができる。
(a)1~12、14~15、17~21番目アミノ酸のいずれか1つのアミノ酸が欠損;(b)14番目アミノ酸欠損;および1~8、12、15、または18番目アミノ酸が欠損;(c)14番目アミノ酸欠損;18番目アミノ酸欠損;および1~8、12、または15番目アミノ酸欠損;(d)14番目アミノ酸欠損;15番目アミノ酸欠損;および1、2、または12番目アミノ酸欠損;(e)1または2番目アミノ酸欠損;3または4番目アミノ酸欠損;および18番目アミノ酸欠損;(f)3、4、14、および18番目アミノ酸欠損;(g)3または4番目アミノ酸欠損;14番目アミノ酸欠損;18番目アミノ酸欠損;および5、6、7、8、12、または15番目アミノ酸欠損;(h)14番目アミノ酸欠損;15番目アミノ酸欠損;1または2番目アミノ酸欠損;3、4、7、または8番目アミノ酸欠損;(i)1、2、5、または6番目アミノ酸欠損;7、8、または11番目アミノ酸欠損;14または15番目アミノ酸欠損;18番目アミノ酸欠損;(j)5または6番目アミノ酸欠損;11番目アミノ酸欠損;15番目アミノ酸欠損;18番目アミノ酸欠損;および1または2、3または4、7または8、12、および14番目のいずれか1つのアミノ酸欠損;(k)1または2番目アミノ酸欠損;7または8番目アミノ酸欠損;および12、14、および15番目アミノ酸欠損;(l)1、2、5、または6番目アミノ酸欠損;3および4番目アミノ酸欠損;14、および18番目アミノ酸欠損;(m)3、4、14、および18番目アミノ酸欠損;5または6番目アミノ酸欠損;および7または8、12番目、および15番目のいずれか1つのアミノ酸欠損;(n)1または2番目アミノ酸欠損;7または8番目アミノ酸欠損;および12、14、15、および18番目アミノ酸欠損;(o)3、4、14、および18番目アミノ酸欠損;5または6番目アミノ酸欠損;および7または8、12、および15番目アミノ酸の中から選択された2個のアミノ酸欠損;(p)1または2番目アミノ酸欠損;5または6番目アミノ酸欠損;7または8番目アミノ酸欠損;12、14、15、および18番目アミノ酸が欠損;(q)3、4、14、および18番目アミノ酸欠損;5または6番目アミノ酸欠損;および1または2、7または8、12、および15番目アミノ酸の中から選択された3個
のアミノ酸欠損;(r)1または2番目アミノ酸欠損;3または4番目アミノ酸欠損;5または6番目アミノ酸欠損;7または8番目アミノ酸欠損;12、14、15、および18番目アミノ酸欠損;(s)1または2番目アミノ酸欠損;3および4番目アミノ酸欠損;5または6番目アミノ酸欠損;7または8番目アミノ酸欠損;12、14、15、および18番目アミノ酸欠損。
【0028】
一具体例によれば、前記抗菌ペプチドは、10および14番目アミノ酸対、または14および18番目アミノ酸対がステープル化されたものであってもよい。前記ステープル化は、アミノ酸対がペンテニルアラニンまたはオクテニルアラニンに置換されて相互架橋結合したものであってもよい。
【0029】
一具体例によれば、前記抗菌ペプチドは、C末端に連結されたアミノ酸配列をさらに含むことができ、前記C末端に連結されたアミノ酸配列は、RまたはKが1~3個繰り返す配列からなるものであってもよい。
【0030】
さらに他の実施形態として、前記ペプチドは、1つ以上のアミノ酸配列が変形(modification)されたものであってもよい。
【0031】
さらに他の実施形態として、前記変異は、ペギレーション(PEGylation)、アセチレーション(acetylation)、カルボキシレーション(carboxylation)、リピデーション(lipidation)、またはアミデーション(amidation)であってもよい。
【0032】
さらに他の実施形態として、前記ペプチドを構成するアミノ酸は、それぞれ独立してL-型またはD-型のアミノ酸であってもよいし、放射線または蛍光ラベルされたアミノ酸類似体であってもよい。
【0033】
さらに他の実施形態として、前記ペプチドは、グラム陽性菌、グラム陰性菌、および多剤耐性菌からなる群より選択される1つ以上の細菌に対して抗菌活性を有することができる。
【0034】
さらに他の実施形態として、前記グラム陽性菌は、ブドウ状球菌属(Staphylococcus sp.)、桿菌属(Bacillus sp.)、エンテロコッカス属(Enterococcus sp.)、ストレプトマイセス属(Streptomyces sp.)、およびストレプトコッカス属(Streptococcus sp.)からなる群より選択される1つの属(Genus)に属する細菌であってもよいし、好ましくは、前記グラム陽性菌は、黄色ブドウ状球菌(Staphylococcus aureus)、枯草菌(Bacillus subtilis)、エンテロコッカスフェシウム(Enterococcus faecium)、ストレプトマイセスシンデネンシス(Streptomyces sindenensis)、エンテロコッカスフェカリス(Enterococcus faecalis)、およびストレプトコッカスニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)からなる群より選択される1つ以上の細菌であってもよい。
【0035】
さらに他の実施形態として、前記グラム陰性菌は、大膓菌属(Escherichia sp.)、クレブシエラ属(Klebsiella sp.)、アシネトバクター属(Acinetobacter sp.)、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)、およびエンテロバクター属(Enterobacter sp.)からなる群より選択される1つの属(Genus)に属する細菌であってもよいし、好ましくは、前記グラム陰性菌は、大膓菌(Escherichia coli)、クレブシエラニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、アシネトバクターバウマニ(Acinetobacter baumannii)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、およびエンテロバクターアエロゲネス(Enterobacter aerogenes)からなる群より選択される1つ以上の細菌であってもよい。
【0036】
さらに他の実施形態として、前記多剤耐性菌は、ペニシリン系(penicillins)、カルバペネム系(carbapenems)、セファロスポリン系(cephalosporins)、キノロン系(quinolones)、マクロライド系(macrolides)、テトラサイクリン系(tetracyclins)、またはグリコペプチド系(glycopeptides)に属する1種以上の抗生物質に対する耐性を有する前記グラム陽性菌またはグラム陰性菌であって、好ましくは、前記多剤耐性菌は、メチシリン耐性ブドウ状球菌(methicillin-resistant Staphylococcus sp.)、多剤耐性シュードモナス属(multidrug-resistant Pseudomonas sp.)、バンコマイシン耐性エンテロコッカス属(vancomycin-resistant Enterococcus sp.)、多剤耐性クレブシエラ属(multidrug-resistant Klebsiella sp.)、多剤耐性アシネトバクター属(multidrug-resistant Acinetobacter sp.)、およびバンコマイシン耐性ブドウ状球菌(vancomycin-resistant Staphylococcus sp.)からなる群より選択される1つの属(Genus)に属する細菌であってもよい。
【0037】
さらに他の実施形態として、前記多剤耐性菌は、メチシリン耐性黄色ブドウ状球菌(methicillin-resistant S.aureus)、多剤耐性緑膿菌(multidrug-resistant P.aeruginosa)、多剤耐性アシネトバクターバウマニ(multidrug-resistant A.baumannii)、多剤耐性クレブシエラニューモニエ(multidrug-resistant K.pneumoniae)、バンコマイシン耐性エンテロコッカスフェシウム(vancomycin-resistant E.faecium)、およびバンコマイシン耐性黄色ブドウ状球菌(vancomycin-resistant S.aureus)からなる群より選択される1つ以上の細菌であってもよい。
【0038】
さらに他の実施形態として、前記多剤耐性緑膿菌は、ピペラシリン(piperacilin)、ピペラシリンタゾバクタム(piperacilin-tazobactam)、セフタジジム(ceftazidime)、イミペネム(imipenem)、メロペネム(meropenem)、ゲンタマイシン(gentamicin)、アミカシン(amikacin)、およびシプロフロキサシン(ciprofloxacin)からなる群より選択される1種以上の抗生剤に対する耐性を有するものであってもよいし、前記多剤耐性アシネトバクターバウマニは、ピペラシリン、ピペラシリンタゾバクタム、セフタジジム、イミペネム、メロペネム、ゲンタマイシン、アミカシン、シプロフロキサシン、およびセフェピム(cefepime)からなる群より選択される1種以上の抗生剤に対する耐性を有するものであってもよく、前記多剤耐性クレブシエラニューモニエは、ピペラシリンタゾバクタム、セフタジジム、セフェピム、イミペネム、ゲンタマイシン、およびシプロフロキサシンからなる群より選択される1種以上の抗生剤に対する耐性を有するものであってもよい。
【0039】
さらに他の実施形態として、前記バンコマイシン耐性エンテロコッカスフェシウムは、バンコマイシンのほかにも、リファンピン(rifampin)、テトラサイクリン、ゲンタマイシン、エリスロマイシン(erythromycin)、ストレプトマイシン(streptomycin)、およびアンピシリン(ampicillin)からなる群より選択される1種以上の抗生剤に対する耐性を追加的に有するものであってもよいし、前記バンコマイシン耐性黄色ブドウ状球菌は、バンコマイシンのほかにも、オキサシリン(oxacillin)、ベンジルペニシリン(benzylpenicillin)、アンピシリン、およびセファゾリン(cefazolin)からなる群より選択される1種以上の抗生剤に対する耐性を追加的に有するものであってもよい。
【0040】
他の態様は、前記抗菌ペプチドを有効成分として含む抗生剤を提供する。
【0041】
さらに他の態様は、前記抗菌ペプチドを有効成分として含む細菌性感染疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0042】
さらに他の態様は、前記抗菌ペプチドを個体に投与するステップを含む細菌性感染疾患の予防または治療方法を提供する。
【0043】
さらに他の態様は、細菌性感染疾患の予防または治療用薬剤の製造のための前記抗菌ペプチドの用途を提供する。
【0044】
一実施形態として、前記細菌性感染疾患は、皮膚感染、食中毒、中耳炎、膀胱炎、腹膜炎、尿路感染、乳房炎、肺炎、心内膜炎、結膜炎、関節炎、子宮内膜炎、腺疫、菌血症、敗血症、およびニキビからなる群より選択される1つ以上の疾病であってもよく、好ましくは、肺炎または敗血症であってもよい。
【0045】
さらに他の態様は、前記抗菌ペプチドを含む抗菌用医薬部外品組成物、化粧料組成物、食品添加剤、および飼料添加剤を提供する。
【発明の効果】
【0046】
本発明のRomo1由来ペプチドおよびその変異体は、既存の抗生物質および抗生ペプチドより多様な種類の細菌に対して高い抗生能力を有することにより、細菌感染性疾患患者の血液内で多様な原因菌を初期に同時に除去することができる。特に、本発明のペプチドは、抗生剤耐性を有するバクテリアに対して高い抗菌能力を発揮し、既存の抗生剤適用の限界を超えて多剤耐性バクテリアによる感染性疾患の予防または治療剤として提供できる。また、本発明のRomo1由来ペプチドおよびその変異体は、耐性獲得の可能性が低く、毒性が低く、特に血液内で既存の抗菌ペプチドより高い抗菌能力があるという点から、広範囲な細菌性感染疾患の予防または治療を目的として医薬用、医薬部外用、食品および飼料添加用、農薬および化粧品添加用など多様な方面に利用されることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】KU-5878と従来の抗菌ペプチド(LL-37、マガイニン2、およびダプトマイシン)とのグラム陽性およびグラム陰性バクテリアに対する抗菌活性を比較確認した図である。
【
図2】KU-5878と従来の抗菌ペプチド(LL-37、マガイニン2、およびダプトマイシン)との多剤耐性バクテリアに対する抗菌活性を比較確認した図である。
【
図3】KU-5878と従来の抗生物質(イミペネム)とのグラム陽性およびグラム陰性バクテリアに対する抗菌活性を比較確認した図である。
【
図4】KU-5878と従来の抗生物質(イミペネム)との多剤耐性バクテリアに対する抗菌活性を比較確認した図である。
【
図5】KU-5878と従来の抗菌ペプチド(マガイニン2およびメリチン)とのヒト血管内皮由来細胞株(HUVEC cell)に対する毒性を比較確認した図である。
【
図6】KU-5878およびKU-5878変異体(KU-5878-K4およびKU-5878-K4-D)と従来の抗菌ペプチド(LL-37、マガイニン2、およびメリチン)とのマウスの赤血球細胞に対する毒性を、赤血球溶血現象の程度により比較確認した図である。
【
図7】in vivoにおけるKU-5878の無毒性を、マウス体重の観察結果を通して確認した図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
Romo1(Reactive oxygen species modulator1)タンパク質は、ミトコンドリアの内膜に位置する膜タンパク質であって、ミトコンドリアの活性酸素の生成、TNF-α信号伝達、細胞老化、癌の進行および浸潤、およびミトコンドリア内部のタンパク質輸送などに関与することが知られている。Romo1タンパク質の構造は2個のアルファヘリックスを含むタンパク質であって、1番目アルファヘリックス(α-helix1)は主に疎水性アミノ酸で構成されており、2番目アルファヘリックス(α-helix2)は親水性および疎水性の二面性を有する。
【0049】
本発明者らは、Romo1タンパク質のα-helix1領域は水に溶けにくい性質を有するので研究から排除し、α-helix2領域のアミノ酸配列(52-79a.a.)を有する多様な長さのペプチドを合成してその抗菌活性を確認し、前記ペプチドの変異体から抗菌活性を確認して、本発明を完成した。
【0050】
本発明の具体的な実施例において、本発明者らは、Romo1タンパク質の52-79アミノ酸領域から選択される1つのアミノ酸を基準として、連続するアミノ酸配列を含みかつ、互いに長さが異なる数種のペプチドを合成し、緑膿菌および黄色ブドウ状球菌に対する前記各ペプチドの抗菌活性を、バクテリア殺菌最小濃度測定法を利用して確認した。その結果、Romo1タンパク質の52-62アミノ酸領域において任意のアミノ酸を基準として連続した18個のアミノ酸配列を含むペプチドのすべてで緑膿菌と黄色ブドウ状球菌に対する抗菌活性を確認したが、なかでも特に、Romo1タンパク質の58-78アミノ酸配列を含むKU-5878ペプチドで優れた抗菌活性を確認することができた(実施例1参照)。
【0051】
このため、本発明者らは、Romo1由来抗菌ペプチドを提供する。
【0052】
本明細書において、「Romo1由来ペプチド」は、配列番号1で表されるアミノ酸配列で構成されたRomo1タンパク質の52-79アミノ酸領域内の連続するアミノ酸配列を含むペプチドであり、「ペプチド」は、ペプチド結合によってアミノ酸残基が互いに結合して形成された線状の分子を意味する。前記Romo1由来ペプチドは、Romo1タンパク質を断片化して獲得することができ、当業界にて公知の化学的合成方法、特に固相合成技術または液相合成技術により製造できる。
【0053】
さらに、本発明のRomo1由来ペプチドは、配列番号1で表されるアミノ酸配列で構成されたRomo1タンパク質の配列のうち52~79番目アミノ酸領域において任意のアミノ酸を基準として連続したアミノ酸配列を含むものであれば、その長さに限定されるものではないが、好ましくは7~28mer、さらに好ましくは18~28merであってもよい。
【0054】
より具体的には、前記抗菌ペプチドは、Romo1タンパク質の配列のうち52-62アミノ酸領域において任意のアミノ酸を基準として連続した18個のアミノ酸配列を含むものであってもよいし、好ましくは、配列番号2-15からなる群、さらに好ましくは、配列番号5、8、9、13、および14からなる群より選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を含むものであってもよい。
【0055】
本明細書において、アミノ酸配列は、N-末端からC-末端の順に並べられており、Romo1タンパク質の配列のうち特定領域から選択されるアミノ酸を基準として「連続するアミノ酸配列」とは、前記基準アミノ酸のC-末端方向に連続するアミノ酸配列を意味する。また、本明細書において、Romo1タンパク質の特定領域から選択される任意のアミノ酸を基準として連続する7~28個のアミノ酸配列とは、前記Romo1タンパク質の特定領域から選択された基準アミノ酸を含み、前記基準アミノ酸のC-末端方向に連続するアミノ酸配列を含む計7~28個のアミノ酸配列を意味する。
【0056】
本発明の具体的な実施例において、本発明者らは、前記Romo1由来抗菌ペプチドの適用範囲を確認するために、配列番号13で表されるアミノ酸配列を含むKU-5878ペプチドを代表に選定して、黄色ブドウ状球菌、枯草菌、腸内球菌、ストレプトマイセスシンデネンシス、エンテロコッカスフェカリス、ストレプトコッカスニューモニエ、大膓菌、クレブシエラニューモニエ、アシネトバクターバウマニ、緑膿菌、エンテロバクターアエロゲネス、メチシリン耐性黄色ブドウ状球菌、多剤耐性緑膿菌、多剤耐性アシネトバクターバウマニ、多剤耐性クレブシエラニューモニエ、バンコマイシン耐性エンテロコッカスフェシウム、およびバンコマイシン耐性黄色ブドウ状球菌に対する前記ペプチドの抗菌活性を確認した。その結果、本発明のRomo1由来抗菌ペプチドは、グラム陽性菌、グラム陰性菌、および多剤耐性バクテリアのすべてで広範囲な抗菌活性を示すことが分かった(実施例2参照)。
【0057】
また、より優れた抗菌活性を有するペプチドの探索のために、KU-5878を構成する各アミノ酸を、その性質によって、X1X1MMX1X1GGX1FGX1FMAIGMGIR(配列番号16)、KTX2X2QSGGTFGTFX2AX2GX2GX2R(配列番号30)、KTMMQSGGTX3GTX3MAIGMGIR(配列番号40)、およびKTMMQSX4X4TFX4TFMX4IX4MX4IR(配列番号45)に区分して、各X1~X4のアミノ酸を置換したペプチドを合成してその抗菌活性を確認した。
【0058】
本発明の具体的な実施例において、本発明者らは、KU-5878ペプチドにおいて親水性残基を含むアミノ酸を正電荷を含むアミノ酸に置換する場合に抗菌活性の変化を確認した。KU-5878ペプチドにおいて親水性残基を含むアミノ酸の位置は、配列番号16においてX1で表されており、X1位置のアミノ酸をそれぞれ独立して置換した。Romo1タンパク質のα-helix2領域において親水性アミノ酸を正電荷を含んでいるアミノ酸(R、H、またはK)または他の親水性アミノ酸(T、S、Q、またはN)に置換する場合でその抗菌活性の変化を確認した。その結果、抗菌活性が維持されるか、それより優れた抗菌活性を示すことが分かった(実施例4-1参照)。
【0059】
また、本発明の他の具体的な実施例において、本発明者らは、KU-5878ペプチドにおいてメチオニン(M)またはイソロイシン(I)を疎水性残基を含みその構造が類似するアミノ酸(M、L、I、V、またはNle)に置換する場合と、疎水性残基を含むもののその構造が異なるアミノ酸(F、Y、またはW)に置換する場合とでその抗菌活性の変化を確認した。KU-5878ペプチドにおいてメチオニン(M)およびイソロイシン(I)は、配列番号30においてX2で表されており、X2位置のアミノ酸は、それぞれ独立して置換された。その結果、メチオニンをノルロイシン(Nle)に置換する場合にその抗菌活性が維持され、また、イソロイシンをトリプトファン(W)に置換する場合に抗菌活性が減少した。一方、イソロイシンをグリシンに置換する場合、抗菌活性が向上したペプチドが得られることを確認した(実施例4-3参照)。
【0060】
また、本発明の他の具体的な実施例において、本発明者らは、KU-5878ペプチドにおいて疎水性残基を含むフェニルアラニン(F)を親水性アミノ酸またはその構造が類似する疎水性アミノ酸(F、Y、またはW)、またはその構造が異なる疎水性アミノ酸(M、L、I、V、またはNle)に置換する場合に、その抗菌活性の変化を確認した。KU-5878ペプチドにおいてフェニルアラニンは、配列番号40においてX3で表されており、X3位置のアミノ酸は、それぞれ独立して置換された。その結果、フェニルアラニンをトリプトファン(W)に置換する場合、抗菌活性が向上したペプチドが得られることを確認した(実施例4-4参照)。
【0061】
また、本発明の他の具体的な実施例において、本発明者らは、KU-5878においてアラニン(A)またはグリシン(G)をそれぞれグリシンまたはアラニンに置換する場合に、抗菌活性の変化を確認した。KU-5878ペプチドにおいてアラニンとグリシンは、配列番号45においてX4で表されており、X4位置のアミノ酸をそれぞれ独立して置換した。その結果、アラニンをグリシンに置換する場合、およびグリシンをアラニンに置換する場合、抗菌活性を示すが、KU-5878ペプチドと比較して減少した抗菌活性を示すことを確認した(実施例4-5参照)。
【0062】
上記から、本発明のRomo1由来ペプチドは、Romo1の52-79領域内において任意のアミノ酸を基準として連続する7-28個のアミノ酸配列を含みかつ、その抗菌活性を示す範囲内で1つ以上のアミノ酸置換(substitution)を含むことができる。
【0063】
本発明の具体的な実施例において、本発明者らは、KU-5878変異体の適用範囲を確認するために、KU-5878-K4を代表に選定し、多様な細菌に対する抗菌活性を確認した。その結果、KU-5878-K4も、KU-5878と同じく、グラム陽性菌、グラム陰性菌、および多剤耐性バクテリアのすべてで広範囲な抗菌活性を示すことが分かった(実施例4-2参照)。
【0064】
また、本発明者らは、具体的な実施例により、KU-5878およびKU-5878-K4を構成するアミノ酸の一部または全部をD-型アミノ酸に置換したペプチドの場合にも、KU-5878と類似の抗菌活性を示し、特にウシ血清の存在下、KU-5878およびKU-5878-K4の場合に抗菌活性が大きく減少するが、D-型アミノ酸に置換された変異体の場合に抗菌活性の減少幅が少ないことが分かった(実施例4-6参照)。
【0065】
上記から、本発明のRomo1由来ペプチドを構成するアミノ酸は、それぞれ独立してL-形態またはD-形態であってもよいし、各アミノ酸は、アミノ酸類似体、放射線ラベリングアミノ酸、または蛍光タグアミノ酸であってもよい。
【0066】
一方、本発明のRomo1由来ペプチドは、アミノ酸配列の一部部位を選定し、その活性を増加させるために、アミノ(N-)末端またはカルボキシ(C-)末端の変形を誘導することができる。このような変形により、本発明のペプチドは、生体内投与時の増加した半減期を有することができる。
【0067】
本発明者らは、具体的な実施例により、C-末端がアミデーション(amidation)されたKU-5878変異体の場合に抗菌活性が増加することを確認した(実施例5参照)。
【0068】
したがって、本発明のRomo1由来ペプチドのアミノ末端は、アセチル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、ホルミル基、パルミトイル基、ミリスチル基、ステアリル基、およびポリエチレングリコール(PEG)などの保護基が結合可能であり、ペプチドのカルボキシ末端は、ヒドロキシ基(-OH)、アミノ基(-NH2)、アジド(-NHNH2)などに変形可能である。また、本発明のペプチドの末端またはアミノ酸のR-残基(R-group)に脂肪酸(fatty acids)、糖鎖(oligosaccharides chains)、すべてのナノ粒子(ゴールド粒子、リポソーム、ヘパリン、ヒドロゲルなど)、アミノ酸、担体タンパク質(carrier proteins)などを結合することができる。上述したアミノ酸の変形は、本発明のペプチドの力価(potency)と安定性を改善する作用をする。本明細書において、用語「安定性」は、生体内(in vivo)の安定性だけでなく、保存安定性(常温、冷蔵、冷凍保管時の保存安定性を含む)も意味する。
【0069】
一方、本発明のRomo1由来抗菌ペプチドは、これを構成する1つ以上のアミノ酸配列が欠失したペプチドであってもよい。上記により、本発明のRomo1由来ペプチドを構成する1つ以上のアミノ酸を置換(substitution)、変異(modification)、または欠損(deletion)させたペプチドでも抗菌活性を確認できたことから、本発明は、Romo1由来ペプチド変異体を抗菌ペプチドとして提供することができる。
【0070】
本発明において、「変異体」は、抗菌活性を示す範囲で前記Romo1由来ペプチドを構成する1つ以上のアミノ酸が置換(substitution)、変異(modification)、および/または欠損(deletion)したペプチドを意味し、抗菌活性を示すものであれば、本発明のRomo1由来ペプチドより優れた抗菌活性を示す変異体に制限されない。
【0071】
本発明の抗菌ペプチドは、配列番号13のアミノ酸配列;または配列番号13のアミノ酸配列に対して、下記の(a)~(h)の少なくとも1つのアミノ酸置換を含む配列からなるものであってもよい。
【0072】
前記(a)は1番目アミノ酸KをRに置換、(b)は2番目アミノ酸TをKまたはRに置換、(c)は5番目アミノ酸QをKまたはRに置換、(d)は6番目アミノ酸SをK、R、またはHに置換、(e)は9番目アミノ酸TをKまたはRに置換、(f)は10番目アミノ酸FをWに置換、(g)は16番目アミノ酸IをLに置換、(h)は20番目アミノ酸IをGまたはLに置換であってもよい。実施例8および9によれば、本発明者は、KU-5878のアミノ酸配列を前記(a)~(h)のいずれか1つに置換すれば、ペプチドの抗菌効果が向上することを確認した。
【0073】
さらに他の実施形態として、前記抗菌ペプチドは、少なくとも1つのメチオニンがノルロイシンまたはイソロイシンに置換されたものであってもよい。ノルロイシン(Norleucine)は、メチオニンと比較すれば、硫黄(S)が炭素に置換されたことを除けば構造が同一であり、イソロイシンは、ノルロイシンと比較すれば、炭素数が同じアルキル置換基を有する共通点を有する。本発明者は、KU-5878のアミノ酸配列上にある4個のメチオニンのうち1~4個をノルロイシンに置換すれば抗菌活性が改善されることを確認した。(表13参照)
【0074】
さらに他の実施形態として、前記抗菌ペプチドは、3、4、5、7、8、9、11、17、18、および19番目アミノ酸のいずれか1つが欠損するか;または3または4番目アミノ酸、および7または8番目アミノ酸が欠損したものであってもよい。本願の実施例6、7によれば、KU-5878の3、4、5、7、8、9、11、17、18、および19番目アミノ酸のいずれか1つが欠損すると抗菌活性が増加し、KU-5878の一部のアミノ酸が置換されたペプチドに対しても同じ効果を期待することができる。
【0075】
さらに他の実施形態として、前記抗菌ペプチドは、C末端に連結されたアミノ酸配列をさらに含み、前記C末端に連結されたアミノ酸配列は、RまたはKが1~3個繰り返す配列からなるものであってもよい。実施例10によれば、本発明者は、KU-5878のC末端にRRRまたはKKからなるアミノ酸配列をさらに付加すると抗菌活性が増加することを確認した。
【0076】
他の態様は、配列番号24のアミノ酸配列;または配列番号24のアミノ酸配列において1番目のKがTに置換されるか、または12番目アミノ酸TがGに置換されたアミノ酸配列;または配列番号24のアミノ酸配列において2番目アミノ酸がTに置換されたアミノ酸配列からなる抗菌ペプチドを提供する。
【0077】
一具体例によれば、前記抗菌ペプチドは、少なくとも1つのメチオニンがノルロイシンまたはイソロイシンに置換されたものであってもよい。
【0078】
一具体例によれば、前記抗菌ペプチドは、下記の(a)~(s)のいずれか1つの変異をさらに含むことができる。
(a)1~12、14~15、17~21番目アミノ酸のいずれか1つのアミノ酸が欠損;(b)14番目アミノ酸欠損;および1~8、12、15、または18番目アミノ酸が欠損;(c)14番目アミノ酸欠損;18番目アミノ酸欠損;および1~8、12、または15番目アミノ酸欠損;(d)14番目アミノ酸欠損;15番目アミノ酸欠損;および1、2、または12番目アミノ酸欠損;(e)1または2番目アミノ酸欠損;3または4番目アミノ酸欠損;および18番目アミノ酸欠損;(f)3、4、14、および18番目アミノ酸欠損;(g)3または4番目アミノ酸欠損;14番目アミノ酸欠損;18番目アミノ酸欠損;および5、6、7、8、12、または15番目アミノ酸欠損;(h)14番目アミノ酸欠損;15番目アミノ酸欠損;1または2番目アミノ酸欠損;3、4、7、または8番目アミノ酸欠損;(i)1、2、5、または6番目アミノ酸欠損;7、8、または11番目アミノ酸欠損;14または15番目アミノ酸欠損;18番目アミノ酸欠損;(j)5または6番目アミノ酸欠損;11番目アミノ酸欠損;15番目アミノ酸欠損;18番目アミノ酸欠損;および1または2、3または4、7または8、12、および14番目のいずれか1つのアミノ酸欠損;(k)1または2番目アミノ酸欠損;7または8番目アミノ酸欠損;および12、14、および15番目アミノ酸欠損;(l)1、2、5、または6番目アミノ酸欠損;3および4番目アミノ酸欠損;14、および18番目アミノ酸欠損;(m)3、4、14、および18番目アミノ酸欠損;5または6番目アミノ酸欠損;および7または8、12番目、および15番目のいずれか1つのアミノ酸欠損;(n)1または2番目アミノ酸欠損;7または8番目アミノ酸欠損;および12、14、15、および18番目アミノ酸欠損;(o)3、4、14、および18番目アミノ酸欠損;5または6番目アミノ酸欠損;および7または8、12、および15番目アミノ酸の中から選択された2個のアミノ酸欠損;(p)1または2番目アミノ酸欠損;5または6番目アミノ酸欠損;7または8番目アミノ酸欠損;12、14、15、および18番目アミノ酸が欠損;(q)3、4、14、および18番目アミノ酸欠損;5または6番目アミノ酸欠損;および1または2、7または8、12、および15番目アミノ酸の中から選択された3個
のアミノ酸欠損;(r)1または2番目アミノ酸欠損;3または4番目アミノ酸欠損;5または6番目アミノ酸欠損;7または8番目アミノ酸欠損;12、14、15、および18番目アミノ酸欠損;(s)1または2番目アミノ酸欠損;3および4番目アミノ酸欠損;5または6番目アミノ酸欠損;7または8番目アミノ酸欠損;12、14、15、および18番目アミノ酸欠損。
【0079】
一具体例によれば、前記抗菌ペプチドは、10および14番目アミノ酸対、または14および18番目アミノ酸対がステープル化されたものであってもよい。前記ステープル化は、アミノ酸対がペンテニルアラニンまたはオクテニルアラニンに置換されて相互架橋結合したものであってもよい。
【0080】
一具体例によれば、前記抗菌ペプチドは、C末端に連結されたアミノ酸配列をさらに含むことができ、前記C末端に連結されたアミノ酸配列は、RまたはKが1~3個繰り返す配列からなるものであってもよい。
【0081】
本発明のRomo1由来ペプチドおよびその変異体は、グラム陽性菌、グラム陰性菌、および多剤耐性バクテリアに対する抗菌活性を有していることから、本発明は、前記抗菌ペプチドを有効成分として含む細菌感染性疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供することができる。
【0082】
本発明のRomo1由来ペプチドおよびその変異体が増殖および/またはその生長を妨げる前記グラム陽性菌の非制限的な例としては、ブドウ状球菌属(Staphylococcus sp.)、桿菌属(Bacillus sp.)、エンテロコッカス属(Enterococcus sp.)、ストレプトマイセス属(Streptomyces sp.)、およびストレプトコッカス属(Streptococcus sp.)などがあり、好ましくは、黄色ブドウ状球菌(Staphylococcus aureus)、枯草菌(Bacillus subtilis)、エンテロコッカスフェシウム(Enterococcus faecium)、ストレプトマイセスシンデネンシス(Streptomyces sindenensis)、エンテロコッカスフェカリス(Enterococcus faecalis)、および/またはストレプトコッカスニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)であってもよい。
【0083】
また、本発明のRomo1由来ペプチドおよびその変異体が増殖および/またはその生長を妨げる前記グラム陰性菌の非制限的な例としては、大膓菌属(Escherichia sp.)、クレブシエラ属(Klebsiella sp.)、アシネトバクター属(Acinetobacter sp.)、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)、およびエンテロバクター属(Enterobacter sp.)などがあるが、好ましくは、大膓菌(Escherichia coli)、クレブシエラニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、アシネトバクターバウマニ(Acinetobacter baumannii)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、および/またはエンテロバクターアエロゲネス(Enterobacter aerogenes)であってもよい。
【0084】
さらに、本発明のRomo1由来ペプチドおよびその変異体は、多剤耐性菌に対する抗菌活性を有していることから、Romo1由来ペプチドおよびその変異体が増殖および/またはその生長を妨げる前記多剤耐性菌は、ペニシリン系(penicillins)、カルバペネム系(carbapenems)、セファロスポリン系(cephalosporins)、キノロン系(quinolones)、マクロライド系(macrolides)、テトラサイクリン系(tetracyclins)、またはグリコペプチド系(glycopeptides)に属する1種以上の抗生物質に対する耐性を有する前記グラム陽性菌またはグラム陰性菌であってもよいし、好ましくは、メチシリン耐性ブドウ状球菌属(methicillin-resistant Staphylococcus sp.)、多剤耐性シュードモナス属(multidrug-resistant Pseudomonas sp.)、バンコマイシン耐性エンテロコッカス属(vancomycin-resistant Enterococcus sp.)、多剤耐性クレブシエラ属(multidrug-resistant Klebsiella sp.)、多剤耐性アシネトバクター属(multidrug-resistant Acinetobacter sp.)、および/またはバンコマイシン耐性ブドウ状球菌属(vancomycin-resistant Staphylococcus sp.)であってもよい。
【0085】
本発明は、Romo1由来ペプチドおよび/またはその変異体を有効成分として含む薬学的組成物、すなわち抗生剤を提供することができ、本発明の薬学的組成物が予防または治療の対象とする「細菌性感染疾患」は、前記グラム陽性菌、グラム陰性菌、および/または多剤耐性菌の感染による疾患であってもよいし、好ましくは、前記細菌感染によって誘発される皮膚感染、食中毒、中耳炎、膀胱炎、腹膜炎、尿路感染、乳房炎、肺炎、心内膜炎、結膜炎、関節炎、子宮内膜炎、腺疫、菌血症、敗血症、および/またはニキビなどであってもよく、さらに好ましくは、敗血症または肺炎であってもよい。
【0086】
また、本発明は、Romo1由来ペプチドおよび/またはその変異体を個体に投与するステップを含む細菌性感染疾患の予防または治療方法を提供する。
【0087】
本発明において、「個体」とは、哺乳類であれば制限されないが、好ましくは、ヒトまたは家畜であってもよい。
【0088】
本発明において、予防とは、本発明による薬学的組成物の投与によって前記グラム陽性菌、グラム陰性菌、および/または多剤耐性細菌の感染を遅延させるか、その感染による疾病の発病を遅延させるすべての行為を意味し、治療とは、本発明による薬学的組成物の投与によって前記細菌感染による症状が好転したり有利に変更されるすべての行為を意味する。
【0089】
本発明において、薬学的組成物(pharmaceutical composition)は、Romo1由来ペプチドおよび/またはその変異体のほかに公知の抗生物質を1種以上さらに含むことができ、薬学的組成物の製造に通常使用される適切な担体、賦形剤、および希釈剤をさらに含むことができる。
【0090】
本発明において、「担体(carrier)」とは、ビヒクル(vehicle)とも呼ばれ、細胞または組織内へのタンパク質またはペプチドの付加を容易にする化合物を意味するものであって、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)は、生物体の細胞または組織内への多くの有機物の投入を容易にする通常使用される担体である。
【0091】
本発明において、「希釈剤(diluent)」とは、対象タンパク質またはペプチドの生物学的活性形態を安定化させるだけでなく、タンパク質またはペプチドを溶解させる水で希釈する化合物と定義される。バッファー溶液に溶解している塩は、当該分野にて希釈剤として使用される。通常使用されるバッファー溶液はホスフェートバッファー食塩水であり、これはヒト溶液の塩状態を模倣しているからである。バッファー塩は低い濃度で溶液のpHを制御できるため、バッファー希釈剤が化合物の生物学的活性を変形することは希である。これに使用されたアゼライン酸を含有する化合物は人間患者にそのものとして、または結合療法のように他の成分と共にまたは適当な担体や賦形剤と共に混合された薬剤学的組成物として、投与可能である。
【0092】
また、本発明によるRomo1由来ペプチドおよび/またはその変異体を有効成分として含む細菌性感染疾患の予防または治療用薬学的組成物は、それぞれ通常の方法により、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの外用剤および滅菌注射溶液の形態に剤形化して使用可能であり、本発明の抗菌用組成物は、目的とする方法によって経口投与するか非経口投与(例えば、静脈内、皮下、腹腔内または局所に適用)することができ、投与量は、患者の状態および体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路および期間によって異なるが、当業者によって適宜選択可能であり、例えば、薬学的に許容可能な担体と混合された形態で約0.001mg~1000mg投与可能である。本発明の抗菌用組成物は、必要に応じて1日1回~数回に分けて投与することができ、単独で、または手術、ホルモン治療、薬物治療および生物学的反応調節剤を使用する方法と併用して使用可能である。
【0093】
また、本発明のRomo1由来ペプチドおよび/またはその変異体は、細菌感染疾患の予防または改善を目的とする医薬部外品組成物を提供することができ、本発明の医薬部外品組成物は、他の医薬部外品または医薬部外品成分と共に使用可能であり、通常の方法により適宜使用可能である。前記医薬部外品組成物は、消毒清潔剤、シャワーフォーム、うがい薬、ウェットティッシュ、洗剤石鹸、ハンドウォッシュ、加湿器充填剤、マスク、軟膏剤、またはフィルタ充填剤などに利用可能であるが、これに限定されるものではない。
【0094】
さらに、本発明のRomo1由来ペプチドおよび/またはその変異体は、化粧料組成物の形態で提供できる。本発明による化粧料組成物の剤形は、スキンローション、スキンソフナー、スキントナー、アストリンゼント、ローション、ミルクローション、モイスチャーローション、栄養ローション、マッサージクリーム、栄養クリーム、モイスチャークリーム、ハンドクリーム、ファウンデーション、エッセンス、栄養エッセンス、パック、石鹸、クレンジングフォーム、クレンジングローション、クレンジングクリーム、ボディローションまたはボディクレンザーの形態であってもよい。本発明の化粧料組成物には、前記必須成分とともに、必要に応じて通常の化粧品に配合される他の成分と共に配合可能である。
【0095】
同時に、本発明は、Romo1由来ペプチドおよび/またはその変異体を有効成分として含む食品組成物または飼料組成物を提供する。本発明のRomo1由来ペプチドおよび/またはその変異体を食品または飼料の添加物として使用する場合、前記Romo1由来ペプチドおよび/またはその変異体をそのまま添加するか他の食品、飼料、またはその成分と共に使用可能であり、通常の方法によって適宜使用可能である。有効成分の混合量は、使用目的(細菌の増殖および生長抑制による感染性疾患の予防、健康または治療的処置)によって好適に決定可能である。一般的に、飼料、食品または飲料の製造時、本発明のRomo1由来ペプチドおよび/またはその変異体は、原料に対して15重量%以下、好ましくは10重量%以下の量で添加される。しかし、健康および衛生を目的とするか、または健康調節を目的とする長期間の摂取の場合、前記量は前記範囲以下であってもよいし、安全性の面で何ら問題がないため、有効成分は前記範囲以上の量でも使用できる。前記食品および飼料の種類には特別な制限はない。
【0096】
本発明では、アミノ酸配列をIUPAC-IUB命名法により、以下のように略語で記載した。
アルギニン(Arg、R)、リシン(Lys、K)、ヒスチジン(His、H)、セリン(Ser、S)、トレオニン(Thr、T)、グルタミン(Gln、Q)、アスパラギン(Asp、N)、メチオニン(Met、M)、ロイシン(Leu、L)、イソロイシン(Ile、I)、バリン(Val、V)、フェニルアラニン(Phe、F)、トリプトファン(Trp、W)、チロシン(Tyr、Y)、アラニン(Ala、A)、グリシン(Gly、G)、プロリン(Pro、P)、システイン(Cys、C)、アスパラギン酸(Asp、D)、グルタミン酸(Glu、E)、ノルロイシン(Nle)
【0097】
本発明は、多様な変換が加えられて様々な実施例を有することができるが、以下、特定の実施例を図面に例示して詳細な説明に詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるあらゆる変換、均等物乃至代替物を含むことが理解されなければならない。本発明を説明するにあたり、かかる公知の技術に関する具体的な説明が本発明の要旨をあいまいにしうると判断された場合、その詳細な説明を省略する。
【0098】
[実施例]
実施例1.Romo1由来ペプチドの抗菌活性の確認および最適なペプチドの探索
Romo1タンパク質は2個のアルファヘリックス(α-helix)を含んでいる。本発明者らは、親水性および疎水性の二面性を有する2番目アルファヘリックス(α-helix2)領域を合成し、バクテリア殺菌最小濃度測定法(minimum bactericidal concentration:MBC)を利用してその抗菌活性を確認し、これをKU-5279(Romo1タンパク質の52-79アミノ酸領域)と名付けた。次いで、人体適用に有利であり、抗菌活性に優れたペプチドを探索するために、Romo1タンパク質の52-79アミノ酸領域において任意のアミノ酸を基準として連続するアミノ酸配列を含む数種のペプチドを合成して、バクテリア殺菌最小濃度測定法により各ペプチドの抗菌活性を比較確認した(各ペプチドの情報は下記表1参照)。前記各ペプチドのバクテリア殺菌最小濃度測定法を利用した抗菌活性の確認は、具体的には下記のように行われた。
【0099】
まず、緑膿菌(ATCC27853)と黄色ブドウ状球菌(ATCC29213)を3%(w/v)TSB(Tryptic Soy Broth)液体培地に37℃、200rpmの条件で4時間培養した後、再度同一の条件で5×106CFU/mlの濃度となるように3時間2次培養した。前記2次培養した各菌株の最終濃度が2×105CFU/mlの濃度となるようにSP(Sodium phosphate buffer:10mM Sodium phosphate、1%TSB)溶液で希釈して菌株溶液を用意した。
【0100】
次いで、96-ウェルマイクロプレートの各ウェルに濃度を異ならせて(0μg/ml~300μg/mlのペプチド)各ペプチドを分注し、前記用意された菌株溶液を100μl(1×105CFU/ml)を入れて、混合して、37℃恒温器で1時間反応させた。
【0101】
そして、TS(Tryptic Soy)30g/Lおよび寒天15g/Lを蒸留水に溶かし、滅菌した後、100mmの円形プレートに25mlを注いで、1日以上室温で固めて製造したTS寒天プレートに前記ペプチドと菌株との反応溶液を10μlずつ一定の大きさに塗抹し、37℃恒温器で18時間培養した後、プレートでコロニーの生成を確認した。バクテリア殺菌最小濃度はコロニーがたった1つも生成されないペプチドの最小濃度と定義し、実験結果は下記表1の通りである。
【0102】
【0103】
前記表1に示すように、pCM19とKU-5279ペプチドは類似の殺菌力を示すが、pCM12の場合、低い殺菌力のため、バクテリア殺菌最小濃度測定法を利用して抗菌活性の測定が不可能であった。一方、21個のアミノ酸残基で構成されているKU-5878ペプチドの抗菌活性が最も優れており、KU-5878は、KU-5279より3倍優れた抗菌活性を有することを確認することができた。
【0104】
実施例2.KU-5878の抗菌活性の確認
2-1.多様な細菌に対する抗菌活性の確認
前記実施例1で抗菌活性を確認したRomo1タンパク質の52-79アミノ酸領域またはその一部領域を含むペプチドが殺菌力を発揮する細菌の種類を確認するために、前記表1に示した合成ペプチドのうちKU-5878を代表に選定して、下記表2に示した細菌に対する抗菌活性をバクテリア殺菌最小濃度測定法を利用して測定した。バクテリア殺菌最小濃度測定法は、前記実施例1の方法と同一である。
【0105】
具体的には、各細菌を3%(w/v)TSB液体培地に37℃、200rpmの条件で4時間培養した後、再度同一の条件で5×106CFU/mlの濃度となるように3時間2次培養した。前記2次培養した各菌株の最終濃度が2×105CFU/mlの濃度となるようにSP溶液で希釈して菌株溶液を用意した。
【0106】
次いで、96-ウェルマイクロプレートの各ウェルに濃度を異ならせて(0μg/ml~300μg/mlのペプチド)KU-5878ペプチドを分注し、前記用意された各菌株を100μl(1×105CFU/ml)を入れて、混合して、37℃恒温器で1時間反応させた。
【0107】
そして、TS寒天プレートに前記ペプチドと菌株との反応溶液を10μlずつ一定の大きさに塗抹し、37℃恒温器で18時間培養した後、プレートでコロニーの生成を確認した。バクテリア殺菌最小濃度はコロニーがたった1つも生成されないペプチドの最小濃度と定義し、実験結果は下記表2の通りである。
【0108】
一方、下記表2にて、多剤耐性緑膿菌、多剤耐性アシネトバクター、および多剤耐性クレブシエラは高麗大学アンアム病院の患者から分離した菌であって、多剤耐性緑膿菌の場合、ピペラシリン(piperacilin)、ピペラシリンタゾバクタム(piperacilin-tazobactam)、セフタジジム(ceftazidime)、イミペネム(imipenem)、メロペネム(meropenem)、ゲンタマイシン(gentamicin)、アミカシン(amikacin)、およびシプロフロキサシン(ciprofloxacin)抗生剤に耐性を示し、多剤耐性アシネトバクターは、ピペラシリン、ピペラシリンタゾバクタム、セフタジジム、イミペネム、メロペネム、ゲンタマイシン、アミカシン、シプロフロキサシン、およびセフェピム(cefepime)抗生剤に耐性を示し、多剤耐性クレブシエラは、ピペラシリンタゾバクタム、セフタジジム、セフェピム、イミペネム、ゲンタマイシン、およびシプロフロキサシン抗生剤に耐性を示すことを確認し、実験に用いた。
【0109】
【0110】
前記表2から確認できるように、KU-5878は、グラム陽性菌、グラム陰性菌、および多剤耐性バクテリアのすべてで広範囲な抗菌活性を示すことが分かった。
【0111】
2-2.公知の抗菌ペプチドとKU-5878の抗菌活性の比較確認
In vitroにおける抗菌活性を確認したKU-5878ペプチドがin vivo、特に動物の血管内での細菌に対する殺菌力を効果的に発揮するかを確認するために、グラム陽性菌としては黄色ブドウ状球菌、グラム陰性菌としては緑膿菌、多剤耐性菌としてはメタシリン耐性黄色ブドウ状球菌および多剤耐性緑膿菌を代表に選定して、下記の実験を行った。
【0112】
具体的には、黄色ブドウ状球菌、メチシリン耐性黄色ブドウ状球菌、緑膿菌、または多剤耐性緑膿菌を3%(w/v)TSB液体培地に37℃、200rpmの条件で4時間培養した後、再度同一の条件で5×109CFU/mlの濃度となるように3時間2次培養した。前記2次培養した各菌株の最終濃度が1×105CFU/μlの濃度となるようにPBS溶液で希釈して菌株溶液を用意した。
【0113】
次いで、10週齢の雄マウス(C57BL/6)の尾静脈に各菌株100μlを静脈注射(IV、Intravenous Injection)を実施した。1時間後にKU-5878を10mg/kgの濃度で静脈注射した。対照群としてはPBSを、陽性対照群としてはLL-37、マガイニン2、またはダプトマイシンをそれぞれ10mg/kgの濃度で静脈注射した。
【0114】
各薬物の静脈注射後40分後にマウスの尾の端の約1cmになる地点を手術用ハサミを用いて切断し、切断面の端の血液の10μlを採取してPBSで希釈させた。希釈させた血液サンプルは予め用意したTSB寒天プレートに塗抹し、37℃恒温器で18時間培養した後、生成されたコロニーを計数して比較した。
【0115】
その結果、
図1および
図2に示すように、マウス血管に残存するバクテリア数は薬物の静脈注射によって減少し、KU-5878の投与時に最も大きく減少することが分かった。上記から、KU-5878が抗菌活性を有することが公知のLL-37、マガイニン2、およびダプトマイシンより著しく優れた抗菌活性を示すことが分かった。
【0116】
2-3.公知の抗生剤とKU-5878の抗菌活性の比較確認
前記実施例2-2に続き、in vivoにおけるKU-5878ペプチドの抗菌活性を確認するために、グラム陽性菌としては黄色ブドウ状球菌、グラム陰性菌としては緑膿菌、クレブシエラニューモニエ、およびアシネトバクターバウマニ、多剤耐性菌としては多剤耐性緑膿菌、メチシリン耐性黄色ブドウ状球菌、多剤耐性クレブシエラニューモニエ、多剤耐性アシネトバクターバウマニを選定して、下記の実験を行った。
【0117】
実験方法は前記実施例2-2の通りである。ただし、マウスに投与する各菌株の最終濃度は下記表3の通りであり、陽性対照群はマウスに前記各細菌を注射し、24時間経過後にカルバペネム系抗生物質であるイミペネム30mg/kgを腹腔注射(IP、Intraperitoneal injection)し、以後、12時間間隔で計4回同量のイミペネムを腹腔投与した。各対照群と実験群の生存率を24時間間隔で測定した。
【0118】
【0119】
その結果、
図3から確認されるように、グラム陽性またはグラム陰性バクテリアのみを注射したマウスの生存率は0-20%、KU-5878を注射したマウスの場合は60%、イミペネムを注射したマウスは約60-80%の生存率を示した。また、
図4から確認できるように、多剤耐性バクテリアのみ注射したマウスは0-7%、KU-5878を注射したマウスの場合は60-67%、イミペネムを注射したマウスは7-27%の生存率を示した。
【0120】
実施例3.KU-5878の毒性の確認
前記実施例1および2でグラム陽性、グラム陰性、および多剤耐性細菌に対する殺菌力を確認したRomo1タンパク質の52-79アミノ酸領域またはその一部領域を含むペプチドが個体に適用可能であるかを確認するために、その毒性を測定しようとした。以下の実験では、前記表1に示した合成ペプチドのうちKU-5878を代表に選定して、その毒性を確認した。
【0121】
3-1.血管内皮細胞由来ヒューベック細胞(HUVEC cells)に対する毒性の確認
ヒトの血管内皮細胞由来細胞株であるヒューベック細胞を96-ウェルマイクロプレートに培養し、MTT(3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyltetrazoliurn bromide)試薬は2mg/mlの濃度でPBSに溶かした後、0.2μm membrane filterで滅菌濾過して用意した。対照群としてPBSを使用した。
【0122】
ヒューベック細胞培地を新たに切り替え、KU-5878、メリチン、またはマガイニン2を濃度を異ならせて(0μg/ml~300μg/ml)分注した。次いで、各ウェルにMTT試薬を100μl処理し、37℃で2時間恒温反応させた。次いで、細胞が分離されないように注意深く培地およびペプチドを除去し、DMSO(Dimethyl sulfoxide)100μlを添加し、分光光度計で570nmの波長で吸光度を測定した。相対的細胞生存度を、対照群である非処理細胞の生存度の百分率として計算した。
【0123】
その結果、
図5から確認されるように、KU-5878はヒューベック細胞において非常に低い毒性を示すことが分かった。
【0124】
3-2.赤血球に対する毒性の確認
血液赤血球をPBSで希釈した後、900gで10分間3回繰り返し遠心分離して洗浄した。前記希釈した赤血球溶液(10%v/v PBS)を96-ウェルマイクロプレートに100μlずつ分注し、KU-5878、KU-5878-K4、KU-5878-K4-D、メリチン、マガイニン2、またはダプトマイシンを添加し、200μlとなるようにPBSで満たして、37℃のインキュベーション(incubation)で1時間培養して反応させた。次いで、前記反応溶液の上層液を分離し、分光光度計を用いて550nmの波長で吸光度を測定した。対照群としてPBSと0.1%トリトンX-100(Triton X-100)溶液を使用した。
【0125】
前記吸光度の測定結果に基づき、下記の数式1により赤血球細胞の破壊程度を計算して、その結果を
図6に示した。
【0126】
【0127】
その結果、
図6から確認されるように、KU-5878は、高い濃度でも溶血現象がほとんど現れないことを確認した。KU-5878と同じく、KU-5878-K4およびKU-5878-K4-Dも、マガイニン2、ダプトマイシン、およびメリチンと比較して赤血球の溶血現象がほとんど現れないことから、赤血球に対する毒性が非常に底いことが分かった。
【0128】
3-3.in vivoにおける毒性の確認
In vitroにおける無毒性を確認したKU-5878ペプチドがin vivo、特に動物(個体)の血管に注射した時、個体に毒性を呈しないかを確認するために、10週齢の雄マウス(C57BL/6)の尾静脈にKU-5878を100mg/kgの濃度で投与した。この時、注射用量の最大体積は150μlであった。注射後1時間マウスの行動を観察し、以後、24時間間隔で12日間マウスの体重変化を測定した。
【0129】
その結果、KU-5878を投与したマウスはすべて生存し、
図7に示すように、KU-5878はマウスの体重には全く影響を与えないことを確認することができた。
【0130】
実施例4.KU-5878を構成する一部のアミノ酸が置換されたペプチドの抗菌活性の確認
4-1.配列番号16のアミノ酸配列を含むKU-5878変異体の抗菌活性の確認
次いで、より抗菌活性に優れたペプチドを探索するために、KU-5878の親水性残基を含むアミノ酸を正電荷を含んでいるリシン(K)またはアルギニン(R)に置換した後、その変異体の抗菌活性をバクテリア殺菌最小濃度測定法を利用して比較確認した。実験は前記実施例1と同様の方法で行った。KU-5878変異体の具体的な情報および各細菌に対するMBC値は下記表4に示した。
【0131】
【0132】
前記表4から確認できるように、Romo1タンパク質の59、62、63、または66番目アミノ酸をリシンに置換したペプチドと59番目アミノ酸をアルギニンに置換したペプチドが、KU-5878より抗菌活性に優れていることが分かった。また、Romo1タンパク質の58番目アミノ酸をアルギニンに置換したKU-5878変異体も、KU-5878と類似の抗菌活性を示すことが分かった。上記の結果から、Romo1タンパク質のα-helix2領域における親水性アミノ酸を正電荷を含んでいるアミノ酸、特にリシン(K)またはアルギニン(R)に置換する場合も、類似の抗菌活性を示すか、より優れた抗菌活性を示すことができることが分かる。
【0133】
上記の結果から、Romo1タンパク質のα-helix2領域における親水性アミノ酸を正電荷を含んでいるアミノ酸、特にリシン(K)またはアルギニン(R)に置換する場合も、類似の抗菌活性を示すか、より優れた抗菌活性を示すことができることが分かる。
【0134】
4-2.KU-5878-K4の多様な細菌に対する抗菌活性の確認
前記実施例4-1で抗菌活性を確認したKU-5878変異体が殺菌力を発揮する細菌の種類を確認するために、前記表4に示したKU-5878変異体のうちKU-5878-K4を代表に選定して、下記表5に示した細菌に対する抗菌活性をバクテリア殺菌最小濃度測定法を利用して測定した。バクテリア殺菌最小濃度測定法は前記実施例1の方法と同様に行った。
【0135】
【0136】
前記表5から確認できるように、KU-5878-K4は、グラム陽性菌、グラム陰性菌、および多剤耐性バクテリアのすべてで広範囲な抗菌活性を示すことが分かった。
【0137】
4-3.配列番号30のアミノ酸配列を含むKU-5878変異体の抗菌活性の確認
前記実施例4-1でKU-5878の親水性残基を正電荷を含むアミノ酸に置換する場合にも、その抗菌活性が維持されるか、より優れた抗菌活性を示すことを確認し、次いで、KU-5878の疎水性残基を含み残基の構造が類似するメチオニン(M)またはイソロイシン(I)を親水性または残基の構造が異なるアミノ酸に置換した後、抗菌活性を殺菌最小濃度測定法を利用して比較確認した。実験は前記実施例1と同様の方法で行った。KU-5878変異体の具体的な情報および各細菌に対するMBC値は下記表6に示した。
【0138】
【0139】
前記表6から確認できるように、KU-5878において疎水性残基を含み残基の構造が類似するメチオニンまたはイソロイシンのうちの1個を親水性アミノ酸に置換した場合、抗菌活性が減少した。これに対し、メチオニンを類似の残基構造を有するノルロイシン(Nle)に置換する場合、抗菌活性の変化が大きくなかった。また、イソロイシンをグリシン(G)に置換する場合、抗菌活性が増加することが分かった。
【0140】
4-4.配列番号40のアミノ酸配列を含むKU-5878変異体の抗菌活性の確認
次いで、KU-5878の抗菌活性に相応するか、それを上回る抗菌活性を有するKU-5878変異体を探索するために、KU-5878において疎水性残基を含むフェニルアラニン(F)を親水性または残基の構造が異なるアミノ酸に置換した後、抗菌活性を殺菌最小濃度測定法を利用して比較確認した。実験は前記実施例1と同様の方法で行った。KU-5878変異体の具体的な情報および各細菌に対するMBC値は下記表7に示した。
【0141】
【0142】
その結果、表7から確認できるように、KU-5878において疎水性残基を含む67番フェニルアラニンを類似の残基構造を有するトリプトファンに置換する場合、抗菌活性が増加することが分かった。
【0143】
4-5.配列番号45のアミノ酸配列を含むKU-5878変異体の抗菌活性の確認
前記実施例4-4に続き、KU-5878においてアラニン(A)またはグリシン(G)をそれぞれグリシンまたはアラニンに置換した後、抗菌活性を殺菌最小濃度測定法を利用して比較確認した。実験は前記実施例1と同様の方法で行った。KU-5878変異体の具体的な情報および各細菌に対するMBC値は下記表8に示した。
【0144】
【0145】
その結果、前記表8から確認できるように、KU-5878においてアラニンをグリシンに置換またはグリシンをアラニンに置換したペプチドは抗菌活性を示してはいるものの、KU-5878と比較して減少した抗菌活性を示すことが分かった。
【0146】
4-6.KU-5878およびKU-5878-K4を構成するアミノ酸の一部または全部をD-型アミノ酸に置換したペプチドの抗菌活性の確認
前記実施例1~5に続き、KU-5878およびKU-5878-K4を構成するアミノ酸をD-型アミノ酸に置換したペプチド(KU-5878-D(all)およびKU-5878-K4-D)を合成してその抗菌活性を比較確認した。KU-5878-K4-Dは、KU-5878-K4において59番、62番、63番、66番リシンアミノ酸残基をD-形態のアミノ酸に置換したペプチドであり、KU-5878-D(all)は、KU-5878のすべてのアミノ酸をD-形態のアミノ酸に置換したペプチドである。
【0147】
ウシ血清(bovine serum)の有無を異ならせて、前記実施例1の方法と同様に各ペプチドの殺菌最初濃度の測定を行って、その結果を下記表9に示した。
【0148】
【0149】
前記表9から確認できるように、ウシ血清を追加した抗菌活性実験でKU-5878とKU-5878-K4は抗菌活性が低くなったが、KU-5878-K4-Dの場合、KU-5878-K4と比較して抗菌活性の減少幅が少ないことが分かった。
【0150】
実施例5.KU-5878を構成する一部のアミノ酸が変異したペプチドの抗菌活性の確認
KU-5878の優れた抗菌活性とより高い安定性を有するペプチドを探索するために、KU-5878のC-末端をアミデーション(amidation)後、ペプチドの抗菌活性をバクテリア殺菌最小濃度測定法を利用して比較確認した。実験は前記実施例1と同様の方法で行った。KU-5878変異体の具体的な情報および各細菌に対するMBC値は下記表10に示した。
【0151】
【0152】
前記表10から確認できるように、KU-5878の末端が変異したペプチドの場合、抗菌活性が増加することが分かった。
【0153】
実施例6.KU-5878において1個のアミノ酸が欠損したペプチドの抗菌活性評価
KU-5878(配列番号13)のアミノ酸配列に対して1個のアミノ酸を欠損させた変異体を作製し、抗菌活性を評価した。抗菌活性評価は下記表11に開示されている。
【0154】
その結果、KU05878のアミノ酸の順序を58番~78番にすれば、60、61、62、64、65、66、68、74、75、または76番目アミノ酸が欠損した場合、抗菌活性が増加した。同一のアミノ酸が連続していることを考慮すれば、61番目のMの欠損は60番目のMの欠損と同一であり、65番目のGの欠損は64番目のGの欠損と同一である。
【0155】
配列番号13を基準とすれば、3、4、5、7、8、9、11、17、18、または19番目アミノ酸が欠損した場合、抗菌活性が増加した。
【0156】
【0157】
実施例7.KU-5878において2個以上のアミノ酸が欠損したペプチドの抗菌活性評価
KU-5878(配列番号13)のアミノ酸配列に対して1つのアミノ酸を欠損させ、抗菌活性を評価した。抗菌活性評価は下記表12に開示されている。
【0158】
60番目のM、64番目のGを欠損させた場合を除いて大部分抗菌活性が低下した。同一のアミノ酸が連続していることを考慮すれば、60番目のMの欠損は61番目のMの欠損と同一であり、64番目のGの欠損は65番目のGの欠損と同一である。
【0159】
配列番号13を基準とすれば、3または4番目アミノ酸が欠損し、7または8番目アミノ酸が欠損した場合、抗菌活性が増加した。
【0160】
【0161】
実施例8.KU-5878において1個のアミノ酸が置換されたペプチドの抗菌活性評価
KU-5878(配列番号13)のアミノ酸配列に対して1つのアミノ酸を置換させ、抗菌活性を評価した。抗菌活性評価は下記表13に開示されている。
【0162】
配列番号13を基準とすれば、1番目アミノ酸KをRに置換、2番目アミノ酸TをKまたはRに置換、5番目アミノ酸QをKまたはRに置換、6番目アミノ酸SをK、R、またはHに置換、9番目アミノ酸TをKまたはRに置換、10番目アミノ酸FをWに置換、16番目アミノ酸IをLに置換、20番目アミノ酸IをGまたはLに置換した場合、抗菌活性が増加した。
【0163】
また、下記表13のKU-5878-4Nleを参照すれば、KU-5878の4個のメチオニンをすべてノルロイシン(Norleucine)に置換した結果、抗菌活性が改善されたことを確認した。これは、メチオニンとノルロイシンが硫黄が炭素に変更されたことを除けば、構造が同一であるためと推測される。
【0164】
【0165】
実施例9.KU-5878において59番アミノ酸置換に基づく多置換ペプチドの抗菌活性の確認
U-5878-T59Kアミノ酸配列に対してQ62K、S63K、T66Kの置換を順次に追加し、抗菌活性を評価した。抗菌活性評価は下記表14に開示されている。
前記T59K、Q62K、S63K、T66Kの置換位置は、配列番号13を基準として2、5、6、9番目アミノ酸に相当する。
【0166】
【0167】
実施例10.C末端にアミノ酸配列追加されたKU-5878の抗菌活性の確認
KU-5878のC末端にアミノ酸の繰り返し配列を追加し、抗菌活性度を評価した。下記表15によれば、KU-5878のC末端にR(arginine)繰り返し配列またはK(lysine)配列を付加すると抗菌活性が増加した。
【0168】
【0169】
実施例11.KU-5878-K4変異体の抗菌活性の確認
KU-5878の配列においてT59K、Q62K、S63K、およびT66Kの変異を有するKU-5878-K4に基づくアミノ酸変異時、抗菌活性の変化を確認した。KU-5878-K4は以下にK4と略称することができる。
【0170】
K4の配列は配列番号24に開示されている。下記表16にて、K4-K58Tは、配列番号24における1番目アミノ酸がTに置換されたペプチドを意味し、K4-4MIは、K4の配列に存在する4個のメチオニンのすべてがイソロイシンに置換されたペプチドを意味し、K4-T69Gは、配列番号24における12番目アミノ酸がGに置換されたペプチドを意味する。これらはすべてKU-5878より抗菌活性が高かった。
【0171】
【0172】
実施例12.1個のアミノ酸が欠損したK4ペプチドの抗菌活性
K4のアミノ酸配列に対して1つのアミノ酸を欠損させ、抗菌活性を評価した。抗菌活性評価は下記表17に開示されている。
【0173】
下記表17によれば、配列番号24の1番目~12番目アミノ酸、14~15番目アミノ酸、17~21番目アミノ酸のうちの1つのアミノ酸が欠損した場合、5878より抗菌活性が高かった。
【0174】
【0175】
実施例13.2個のアミノ酸が欠損したK4ペプチドの抗菌活性
K4のアミノ酸配列に対して2個のアミノ酸を欠損させ、抗菌活性を評価した。抗菌活性評価は下記表18に開示されている。
【0176】
下記表18によれば、配列番号24の14番目アミノ酸が欠損し、1~8、12、15、および18番目アミノ酸のいずれか1つのアミノ酸がさらに欠損した場合、5878より抗菌活性が高かった。
【0177】
【0178】
実施例14.3個のアミノ酸が欠損したK4ペプチドの抗菌活性
K4のアミノ酸配列に対して3個のアミノ酸を欠損させ、抗菌活性を評価した。抗菌活性評価は下記表19に開示されており、5878より抗菌活性が高かった。
【0179】
【0180】
実施例15.4個のアミノ酸が欠損したK4ペプチドの抗菌活性
K4のアミノ酸配列に対して4個のアミノ酸を欠損させ、抗菌活性を評価した。抗菌活性評価は下記表20に開示されている。
【0181】
【0182】
実施例16.5個のアミノ酸が欠損したK4ペプチドの抗菌活性
K4のアミノ酸配列に対して5個のアミノ酸を欠損させ、抗菌活性を評価した。抗菌活性評価は下記表21に開示されている。
【0183】
【0184】
実施例17.6個のアミノ酸が欠損したK4ペプチドの抗菌活性
K4のアミノ酸配列に対して6個のアミノ酸を欠損させ、抗菌活性を評価した。抗菌活性評価は下記表22に開示されている。
【0185】
【0186】
実施例18.7個のアミノ酸が欠損したK4ペプチドの抗菌活性
K4のアミノ酸配列に対して7個のアミノ酸を欠損させ、抗菌活性を評価した。抗菌活性評価は下記表23に開示されている。
【0187】
【0188】
実施例19.8個のアミノ酸が欠損したK4ペプチドの抗菌活性
K4のアミノ酸配列に対して8個のアミノ酸を欠損させ、抗菌活性を評価した。抗菌活性評価は下記表24に開示されている。
【0189】
【0190】
実施例20.9個のアミノ酸が欠損したK4ペプチドの抗菌活性
K4のアミノ酸配列に対して9個のアミノ酸を欠損させ、抗菌活性を評価した。抗菌活性評価は下記表25に開示されている。
【0191】
【0192】
実施例21.ペギル化(pegylation)されたK4の抗菌活性の確認
4個のアミノ酸が欠失したK4および8個のアミノ酸が欠失したK4をペギル化させ、抗菌活性を測定した。
【0193】
下記表26によれば、抗菌活性はペギル化前よりはやや減少したものの、5878よりははるかに優れた抗菌活性を示すことを確認した。
【0194】
【0195】
実施例22.ステープルペプチドの抗菌活性
K4のアミノ酸配列に対して2番目アミノ酸をTに置換し(以下、K4-K59Tと称することができる)、抗菌活性を評価した。
【0196】
K4-K59Tは配列番号23のK3と比較すれば、2番目アミノ酸および9番目アミノ酸配列において差異がある他の配列である。下記表27にて、ステープル化(stapled)は、一対のアミノ酸がペンテニルアラニンまたはオクテニルアラニンに置換され、これらが互いに架橋結合した場合を意味する。stapled peptide-1は10および14番目アミノ酸対がペンテニルアラニン(S5と表示)に置換されて相互架橋結合したものであり、stapled peptide-2は14および18番目アミノ酸対がペンテニルアラニンに置換されて相互架橋結合したものである。
【0197】
K4-K59Tおよびステープル化されたK4-K59Tに対する抗菌活性評価は下記表27に開示されている。
【0198】
【0199】
実施例23.C末端に配列が付加されたK4変異体の抗菌活性の確認
K4の2欠失変異体のC末端またはK4の4欠失変異体のC末端にRまたはKアミノ酸を付加し、抗菌活性を測定した。下記表28によれば、RまたはKの単独または繰り返し配列が付加されたペプチドは抗菌活性が増加した。
【0200】
【0201】
以上、本発明の内容の特定部分を詳細に記述したが、当業界における通常の知識を有する者にとって、このような具体的な記述は単に好ましい実施態様に過ぎず、これによって本発明の範囲が限定されるものではないことは自明であろう。したがって、本発明の実質的な範囲は添付した請求項とそれらの等価物によって定義される。
【配列表】