(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】2-ペンチルフランを有効成分として含有する退行性脳疾患の治療用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/341 20060101AFI20230719BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20230719BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230719BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
A61K31/341
A23L33/10
A61P25/28
A61P43/00 107
(21)【出願番号】P 2021577079
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(86)【国際出願番号】 KR2020008347
(87)【国際公開番号】W WO2020263012
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2021-12-24
(31)【優先権主張番号】10-2019-0077257
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516280679
【氏名又は名称】テグ・ギョンブク・インスティテュート・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ヒュン・ク
(72)【発明者】
【氏名】ナ・ヘ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ユン・ギュ・ジェ
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-515585(JP,A)
【文献】国際公開第2017/130933(WO,A1)
【文献】Food and Chemical Toxicology,2013年,Vol.59,p.586-594
【文献】Medical Mycology,2008年,Vol.46,p.209-215
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K,A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2-ペンチルフラン(pentylfuran)、その溶媒和物、立体異性体またはこれらの薬学的に許容可能な塩を有効成分として含
み、前記2-ペンチルフランは、小膠細胞を活性化させる、アルツハイマー病の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項2】
前記2-ペンチルフランは、下記化学式1で表される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【化1】
【請求項3】
前記組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤をさらに含む、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記活性化した小膠細胞は、食作用が促進され、これによって
アルツハイマー病を誘発する物質を減少させる、請求項
1に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
2-ペンチルフラン(pentylfuran)、その溶媒和物、立体異性体またはこれらの薬学的に許容可能な塩を有効成分として含
み、前記2-ペンチルフランは、小膠細胞を活性化させる、アルツハイマー病の予防または改善用健康機能食品。
【請求項6】
前記2-ペンチルフランは、下記化学式1で表される、請求項
5に記載の
アルツハイマー病の予防または改善用健康機能食品。
【化2】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
退行性脳疾患の治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
退行性脳疾患は、多様な原因によって脳神経に一時的または持続的な損傷が発生して、次第に精神または運動機能の全般的な障害が現れることを特徴とする。退行性脳疾患と報告された疾患は、約70種以上があるが、そのうち代表的なものは、認知症、アルツハイマー、パーキンソン病、または前側頭葉退行病などがよく知られている。
【0003】
そのうち、認知症(dementia)は、誘発率の高い疾患の一つであり、記憶力、注意力、言語機能、視空間能力などに大脳皮質機能障害が発生して、認知症患者が日常、社会生活を営むのに大きな困難に直面することになる。
【0004】
認知症は、発病原因が正確に明らかにされていないが、老化過程でベータアミロイド(β-amyloid;Aβ)タンパク質が脳に蓄積されてくっつき合って発病するアルツハイマー病(Alzheimer’s disease;AD)、脳動脈硬化により発生する血管性認知症、アルコール性認知症などがその原因として提起されている。そのうち、アルツハイマー病による認知症が60%以上と最も多いが、アルツハイマー病は、大脳皮質(cortex)または海馬(hippocampus)に発生する脳萎縮、老人斑(senile plaque)、神経原線維のもつれ(neurofibrillary tangles)および顆粒空胞変性(granulovacuolar degeneration)、平野小体(Hirano body)などの組織学的所見を特徴とする。Aβは、老人斑の主な構成成分であって、Aβの沈着は、アルツハイマー病が発生する重要な原因と推定されている。
【0005】
アルツハイマー病(AD)の症状は、ベータ-アミロイド(Aβ)の沈着による細胞毒性だけでなく、コリン神経系のシナプス障害とも関連がある。コリン神経系の機能障害は、アルツハイマー患者の記憶と認知機能障害に寄与することが知られている。前脳のMeynert基底核(basal nucleus of Meynert)コリン性ニューロンは、側頭葉、海馬、および扁桃体(amygdala)とともに記憶および認知能力に関連するが、アルツハイマー患者の脳では、側頭葉で78%、海馬で60%、Meynert基底核では67%まで神経細胞が減少することが知られている。脳細胞が細胞毒性により損傷を受けることになると、情報の伝達、すなわち神経伝達物質の代謝に障害が発生することになり、これは、記憶認知障害を起こす原因となる。すでに多くの研究者らがアセチルコリン(acetylcholine;ACh)とその合成に関係する酵素(choline acetyltransferase)がアルツハイマー病において選択的に減少することが観察されることを着実に報告してきた。さらに、アルツハイマー病患者の脳では、正常ヒトの脳機能に比べてニコチン性アセチルコリン受容体(nicotinic acetylcholine receptor)およびムスカリン性アセチルコリン受容体(muscarinic acetylcholine receptor)の減少だけでなく、コリンの再吸収とアセチルコリンの分泌機能が低下していることが知られている。
【0006】
現在までFDAなどを通して公式的に認知症治療剤として許可された薬物の大部分は、アルツハイマーによる認知症を対象としているが、その薬物作用点がアセチルコリンエステラーゼ(acetylcholinesterase)に制限されている。しかしながら、この酵素を抑制することは、アセチルコリン低下現象を抑制して正常生活が可能に誘導する役割をするだけてあり、認知症を起こす根本的な原因を治療する方法ではない。その他に、N-メチル-D-アスパラギン酸 (N-methyl-D-aspartate;NMDA)受容体拮抗剤を利用する薬物療法があるが、これも、アルツハイマー病患者においてAChの減少に基づくものであって、同様に根本的な治療方法ではない。すなわち、今までは認知症の発病原因を根本的に戻して正常状態に作る薬物はないのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一態様は、2-ペンチルフラン(Pentylfuran)またはその溶媒和物、立体異性体またはこれらの薬学的に許容可能な塩を含む、退行性脳疾患の予防または治療用組成物を提供することにある。
【0008】
他の態様は、2-ペンチルフラン(Pentylfuran)またはその溶媒和物、立体異性体またはこれらの薬学的に許容可能な塩を含む退行性脳疾患の予防または改善用健康機能食品を提供することにある。
【0009】
本出願の他の目的およびメリットは、添付の請求範囲および図面とともに下記の詳細な説明によりさらに明確になるだろう。本明細書に記載されていない内容は、本出願の技術分野または類似の技術分野における熟練者なら十分に認識し類推できることであるから、その説明を省略する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様は、2-ペンチルフラン、その溶媒和物、立体異性体またはこれらの薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する退行性脳疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供することにある。
【0011】
前記2-ペンチルフランは、下記化学式1で表されるものであってもよい。
【0012】
【0013】
本明細書において用語「立体異性体(stereoisomer)」は、同じ化学式を有し、構成する原子間の結合順序も同一であるが、三次元構造が異なる分子を意味し、鏡像異性体(enantiomer)と部分立体異性体(diastereomer)とに分けられる。また、一具体例による前記ピリドン誘導体化合物の立体化学的異性体の形態は、化学式1の化合物が有しうるすべての可能な化合物を定義する。別途言及したり指摘しない場合、化合物の化学的名称は、すべての可能な立体化学的異性体形態の混合物を指し、前記混合物は、基本分子構造のすべての部分立体異性体および鏡像異性体を含む。特に、立体中心は、R-またはS-配位を有してもよく、2価シクリック(部分的に)飽和ラジカル上の置換基は、シス-またはトランス-配位を有してもよい。二重結合を含む化合物は、前記二重結合においてEまたはZ-立体化学を有してもよい。前記化学式1で表される化合物の立体化学的異性体の形態は、前記発明の範囲内に含まれるものと意図される。
【0014】
本明細書において用語「薬学的に許容可能な」は、過度な毒性、刺激、アレルギー反応またはその他問題点または合併症なしで利益/リスクの比が合理的なので、対象体(例:ヒト)の組織と接触して使用するのに適しており、健全な医学的判断の範疇以内の組成物を意味する。
【0015】
本明細書において使用された用語「薬学的に許容可能な塩」は、薬学的に許容可能な遊離酸(free acid)により形成された酸付加塩が有用である。酸付加塩は、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜硝酸または亜リン酸のような無機酸類と脂肪族モノおよびジカルボキシレート、フェニル-置換されたアルカノエート、ヒドロキシアルカノエートおよびアルカンジオエート、芳香族酸類、脂肪族および芳香族スルホン酸類のような無毒性有機酸から得る。このような薬学的に無毒な塩類としては、サルフェート、ピロサルフェート、バイサルフェート、サルファイト、バイサルファイト、ニトラート、ホスフェート、モノハイドロゲンホスフェート、ジハイドロゲンホスフェート、メタホスフェート、ピロホスフェートクロリド、ブロミド、ヨージド、フルオライド、アセテート、プロピオネート、デカノエート、カプリレート、アクリレート、ホルメート、イソブチレート、カプレート、ヘプタノエート、プロピオレート、オキサレート、マロネート、スクシネート、スベレート、セバケート、フマレート、マリエート、ブチン-1,4-ジオエート、ヘキサン-1,6-ジオエート、ベンゾアート、クロロベンゾアート、メチルベンゾアート、ジニトロベンゾアート、ヒドロキシベンゾアート、メトキシベンゾアート、フタレート、テレフタレート、ベンゼンスルホナート、トルエンスルホナート、クロロベンゼンスルホナート、キシレンスルホナート、フェニルアセテート、フェニルプロピオネート、フェニルブチレート、シトレート、ラクテート、β-ヒドロキシブチレート、グリコールレート、マレート、タルトレート、メタンスルホナート、プロパンスルホナート、ナフタレン-1-スルホナート、ナフタレン-2-スルホナートまたはマンデラートを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0016】
前記酸付加塩は、通常の方法、例えば、前記化学式1または化学式2で表される化合物を過量の酸水溶液中に溶解させ、この塩を水混和性有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、アセトンまたはアセトニトリルを使って沈殿させて製造することができる。また、この混合物から溶媒や過量の酸を蒸発させた後、乾燥させたり、または析出された塩を吸入ろ過させて製造することもできる。
【0017】
また、塩基を使って薬学的に許容可能な金属塩を製造することもできる。アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩は、例えば、化合物を過量のアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物溶液中に溶解し、非溶解化合物塩をろ過し、ろ液を蒸発、乾燥させて得ることができる。この際、金属塩としては、ナトリウム、カリウムまたはカルシウム塩を製造することが薬学的に適合する。これに対応する銀塩は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩を適当な銀塩(例、硝酸銀)と反応させて得ることができる。
【0018】
本明細書において用語「退行性脳疾患」は、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease)と他の類型の認知症(dimentias)、パーキンソン病(Parkinson’s diease)と関連疾患(PD-related disorders)、プリオン病、運動ニューロン疾患(Motor neuron disease)、ハンチントン病(Huntington disease)、ルー・ゲーリック病(amyotrophic lateral sclerosis)、ニーマン・ピック病(Niemann-Pick disease)、脊髄性筋萎縮症(Spinal muscular atrophy)、脊髄小脳失調症(spinocerebellar ataxia)および脳卒中からなる群から一つ以上を含むものであってもよい。退行性脳疾患の発病原因と成分との関係によって、前記薬学組成物の退行性脳疾患の予防および治療のための有効物質として使用できる。
【0019】
本明細書において使用された用語「予防」は、本発明による薬学組成物の投与により退行性脳疾患関連疾患を抑制させたり発病を遅延させるすべての行為を意味する。
【0020】
本明細書において使用された用語「治療」は、本発明による薬学組成物の投与により退行性脳疾患関連疾患に対する症状が好転したり有益に変更されるすべての行為を意味する。
【0021】
他の具体例において、2-Pentylfuranは、小膠細胞を活性化させたり、前記小膠細胞により食作用が増加するものであってもよい。より具体的に、増加した食作用により退行性脳疾患を誘発する物質(例えば、ベータアミロイド)の除去が増加する。一般的に、前記退行性脳疾患を誘発する物質は、ベータアミロイドでありうる。特定理論に制限されることなく、脳中でベータアミロイドに囲まれた小膠細胞は、免疫反応性が増加することができ、ベータアミロイドに対する食作用が増加することができ、したがって、このような食作用によりベータアミロイドを減少させて退行性脳疾患を治療および改善させることができることが報告されたことがある(Olibera M.Mitrasinovic et al.Accelerated Phagocytosis of Amyloid by Mouse and Human Microglia Overexpressing the Macrophage Colony-stimulating Factor Receptor,THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,Vol.277,No.33,1p.)。したがって、一具体例による2-ペンチルフランは、小膠細胞の食作用を活性化させてベータアミロイドを減少させることによって、認知症を含む退行性脳疾患に有用に使用できる。
【0022】
本明細書において用語「小膠細胞(Microglia)」は、中胚葉に由来する中枢神経系における神経膠細胞であって、中枢神経系で1次免疫機能を行う細胞をいう。小膠細胞は、組織を支持し、神経細胞に必要な物質を供給、組織内の物質運搬、破壊、および除去を担当し、活性化の有無によって異なる特性を有する。
【0023】
本明細書において用語「活性化した小膠細胞」とは、小膠細胞の活性化後の小膠細胞をいうものであり、小膠細胞の活性化とは、本来細長い枝と薄い細胞体の形状を維持している小膠細胞が外部から流入したり内部で発生する毒素を探知する場合、これらの毒素から神経細胞を保護するために、太くて短い枝と太い細胞体を有する活性化した形状に変化することである。前記活性化した小膠細胞は、正常状態の小膠細胞とは異なって、食作用を活発にし、細胞増殖をし、TNF-α、IL-1βおよびIL-6などのようなサイトカイン、ケモカイン、iNOS(inducible nitric oxide synthase)、COX-2(cyclooxygenase-2)などの遺伝子を発現させて炎症媒介物質を生成する。小膠細胞の活性化は、損傷した細胞を除去し、外部から侵入するバクテリアやウイルスから神経細胞を保護する一面があり、同時に過活性化する場合、神経細胞を損傷させる一面もある。
【0024】
前記小膠細胞の活性化物質としては、バクテリアの内毒素であるリポポリサッカライド(lipopolysaccharide,LPS)、インターフェロン-γ、ベータアミロイド、ガングリオシドおよび2-Pentylfuranなどが含まれ得、一具体例において、2-Pentylfuranであってもよい。
【0025】
本明細書において用語「食作用(Phagocytosis)」は、食菌作用、食細胞作用、飽食作用、ファゴサイトーシス、貪食作用とも命名でき、特定細胞が環境から固形粒子を取り入れて細胞内消化をする現象を意味する。前記特定細胞は、網状細胞、組織球、血管内上皮細胞、星状細胞、リンパ球、白血球および小膠細胞でありうる。本発明の一実施例において、好ましくは、小膠細胞(microglia)でありうる。前記固形粒子は、細菌、ウイルス、細胞デブリなどの異物でありうる。本発明の一実施例において、好ましくは、退行性脳疾患を誘発する物質でありうる。2-Pentylfuranにより活性化した小膠細胞は、食作用を活発にし、このような食作用により退行性脳疾患を誘発する物質を除去するものでありうる。
【0026】
前記薬学組成物は、有効成分以外に薬学的に許容可能な担体を含んでもよい。この際、薬学的に許容可能な担体は、製剤時に通常用いられるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾアート、プロピルヒドロキシベンゾアート、滑石、ステアリン酸マグネシウムおよびミネラルオイルなどを含むが、これらに限定されるものではない。また、前記成分以外に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含んでもよい
【0027】
前記薬学組成物は、目的とする方法によって経口投与(経口剤)したり、非経口投与(例えば、注射剤として静脈内、皮下、腹腔内または局所に適用)することができ、例えば、皮下(すなわち、皮膚外用剤)または経口(すなわち、経口剤)投与することもできるが、これらに限定されない。
【0028】
前記各種剤形に添加される緩衝液としては、等張(isotonic)であり、pH4-9、pH5-9の無刺激のものを使用することが好ましい。投与量は、患者の状態および体重、病気の程度、薬物形態、投与経路および時間によって異なるが、当業者が適宜選択できる。
【0029】
前記薬学組成物は、薬学的に有効な量で投与することができる。用語「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的なベネフィット/リスクの割合で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量レベルは、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する感度、投与時間、投与経路および排出比率、治療期間、同時使用される薬物を含む要素およびその他医学分野によく知られた要素によって決定できる。本発明の他の薬学組成物は、個別治療剤として投与したり、他の治療剤と併用して投与することができ、既存の治療剤とは順次にまたは同時に投与してもよく、単一または多重投与してもよい。前記要素を全部考慮して副作用なしで最小限の量で最大効果を得ることができる量を投与することが重要であり、これは、当業者か容易に決定できる。
【0030】
前記薬学組成物の有効量は、患者の年齢、性別、状態、体重、体内活性成分の吸収度、不活性率および排泄速度、病気の種類、併用薬物によって異なり、一般的には、1日に体重1kg当たり0.1~500mgの範囲内であっもよく、毎日または隔日で投与したり、1日に1~5回の範囲内に分けて投与してもよい。しかしながら、投与経路、肥満の重症度、性別、体重、年齢などによって増減できるので、前記投与量がいかなる方法でもその範囲を限定するものではない。
【0031】
他の態様は、上記に記載された化合物のうち一つの化合物、その溶媒和物、立体異性体またはこれらの健康機能食品学的に許容可能な塩を含む、退行性脳疾患の予防または改善用健康機能食品を提供する。
【0032】
本明細書において使用された用語「改善」は、異常状態と関連したパラメーター、例えば症状の程度を少なくとも減少させるすべての行為を意味する。この際、前記健康機能性食品組成物は、退行性脳疾患の予防または改善のために、当該疾患の発病段階前または発病後、治療のための薬剤と同時にまたは個別的に使用できる。
【0033】
より具体的に、本明細書における改善は、2-pentylfuranを含む健康機能食品を摂取する場合、小膠細胞の活性化が高まり、これによって、食作用が増加することによって、退行性脳疾患を誘発する物質を減少させることを含んでもよい。
【0034】
前記食品組成物は、有効成分を食品にそのまま添加したり、他の食品または食品成分と共に使用でき、通常の方法により適切に使用できる。有効成分の混合量は、その使用目的(予防または改善用)によって好適に決定できる。一般的に、食品または飲料の製造時に、本発明の組成物は、原料に対して60重量%以下、好ましくは、40重量%以下の量で添加される。しかしながら、健康および衛生を目的としたり、または健康調節を目的とする長期間の摂取の場合には、前記量は、前記範囲以下でありうる。
【0035】
前記食品組成物は、指示された割合で必須成分として前記有効成分を含有すること以外に、追加される他の成分には、特別な制限がなく、通常の飲料と同様に、様々な香味剤または天然炭水化物などをさらなる成分として含有してもよい。上述した天然炭水化物の例は、モノサッカライド、例えば、ブドウ糖、果糖など;ジサッカライド、例えばマルトース、スクロースなど;およびポリサッカライド、例えばデキストリン、シクロデキストリンなどのような通常の糖、およびキシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールである。上述したもの以外の香味剤として天然香味剤(ソーマチン、ステビア抽出物(例えばレバウディオサイドA、グリチルリチンなど))および合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を有利に使用できる。前記天然炭水化物の割合は、当業者の選択により適切に決定できる。
【0036】
上記の他にも、食品組成物は、様々な栄養剤、ビタミン、ミネラル(電解質)、合成風味剤および天然風味剤などの風味剤、着色剤および増進剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸およびその塩、アルギン酸およびその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含有してもよい。このような成分は、独立して、または組み合わせて使用できる。このような添加剤の割合も、当業者が適宜選択できる。
【0037】
本出願で開示されたそれぞれの説明および実施形態は、それぞれの他の説明および実施形態にも適用可能である。すなわち、本出願で開示された多様な要素のすべての組み合わせが本出願の範疇に属する。また、下記記述された具体的な叙述により本出願の範疇が制限されるとみなすわけではない。
【発明の効果】
【0038】
一態様による2-Pentylfuranまたはその溶媒和物、立体異性体または薬学的に許容可能な塩は、退行性脳疾患を誘発する物質を除去する効果があるので、退行性脳疾患を予防または治療できるところ、既存の治療剤を代替できる有効物質として活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】上方のcolor heat mapは、それぞれマウスに肺炎球菌(10
4、10
5、および10
6 colony-formation-units,CFU)を3つの異なる量で投与したcontrol media(Ctrl)とculture supernatants(Sup)を腹腔内(IP)注射した後のresidence frequencyを示すイメージである。総距離値は、同じ条件下で数量化された(n=5で10/condition)。(P<0.05;
**、P<0.01;および
***、P<1.0×10
-3)。
【
図2】小膠細胞におけるpro-(Tnf、Il6、Il1b)とanti-inflammatory cytokine(Il10、Il13)のmRNA発現量をSup処置とIP注射した大脳皮質で測定した図である。
【
図3】星状細胞のpro-(Tnf、Il6、Il1b)とanti-inflammatory cytokine(Il10、Il13)のmRNA発現量をSup処置とIP注射した大脳皮質で測定した図である。
【
図4】4つの異なる肺炎球菌投与量(1、10、100、および1000 multiplicity of infection、MOI;n=5/condition)で製造されたSup処置した初代小膠細胞で測定されたサイトカインのタンパク質量を示すイメージである。(Tnf、IL6、IL1b)。(P<0.05;
**、P<0.01;および
***、P<1.0×10
-3)
【
図5】GFPの強度がCtrl-およびSup処置した状態の小膠細胞の形態を反映する代表蛍光イメージである。イメージは、CX3CR1
GFP/+マウスにCtrlまたはSupのIP注射後に大脳皮質にある小膠細胞を示す。Scale bar:20um。GFP強度は、次の2つの条件下で数量化された(n=3 to 5 mice/condition)。
【
図6】25分間1分間隔で測定されたCtrlおよびSup処置後に生成後に蓄積されたO
2-の量を示すイメージである。Dataは、Mean±SEMで各時点で示す。
【
図7】CtrlまたはSupで移住した初代小膠細胞を示すイメージである。イメージは、Boyden chamber assayを使って作成した。走化性指数は、移住した小膠細胞の(n=5/condition)の数量化された個数を示す。
【
図8】CtrlまたはSup処理した後、Fluorescence activated cell sorting(FACS)analysisで測定したFluorescein isothiocyanate(FITC)-dextranの初代小膠細胞の分布を示す。食細胞作用指数は、mean fluorescence intensities(MFIs)(n=5/condition)を表す。
【
図9】走化性分析とROS生成を示すイメージである。(P<0.05;
**、P<0.01;および
***、P<1.0×10
-3)
【
図10】走化性分析を示し、Ctrl、Supとflow-through(FT)処理した後の食細胞作用を示すイメージである。(P<0.05;
**、P<0.01;および
***、P<1.0×10
-3)
【
図11】mRNA-seq dataによれば、嗅覚受容体が初代小膠細胞で発現することを示すイメージである。
【
図12】Sup処置で誘導された嗅覚受容体の相対発現量を示すイメージである。
【
図13】Olfr110とOlfr111の相対的luciferase活性(y軸)が11個のfuran analogueの増加する濃度で測定されたことを示すイメージである。
【
図14】候補代謝物に対してOlfr110とOlfr111を比較して相対的ルシフェラーゼ活性を示すイメージである。
【
図15】Olfr111の相対的ルシフェラーゼ活性を示すイメージである。
【
図16】11個のfuran analogueに対するOlfr110とOlfr111の分子収容範囲を説明する環状マップを示すイメージである。中心に位置する類似体は、最も反応性の強い類似体を意味し、最も外側に位置する類似体は、最も反応性が弱いことを意味する。
【
図17】2-PFとOlrf110との相互作用のための4つの決定的残基(F102、F104、Y252、およびY259)を示す2-PF-Olfr110高分子集合の構造モデルを示すイメージである。
【
図18】増加する濃度(x軸)の2-PFで測定されたwild-type Olfr110と(凡例に表記された)9個のOlfr110突然変異の相対的luciferase活性(y軸)を示すイメージである。
【
図19】上方のイメージは、MOCK、Olfr110、あるいは、Olfr111 to 2-PFを発現している移住したHana3A細胞を示す。イメージは、Boyden chamber assayを使って作成した。移住した小膠細胞の個数を示す走化性指数は、control solvent(NT)と2-PF at concentrations of 10、100、1000um(n=5/condtion)を処置した後に測定された。
【
図20】合成2-PF、Sup、control media(Ctrl)に対するLC-MS/MS datasetsから得られた2-PFの前駆イオンに(m/z=153.091)対して抽出されたion chromatograms(EICs)を示すイメージである。
【
図21】合成2-PF中の2-PF前駆イオンと2-PF前駆イオンのSup.FragmentedイオンのMS/MS spectraを示すイメージであり、HMDBにより予測構想されたそれぞれに該当する構造とともに示される(Wishart et al.,2007)。
【
図22】10
2と10
4uM 2-PFを追加で入れた後、Sup中の2-PF前駆イオンに対するEICを示すイメージである。
【
図23】細胞毒性のassayを示すイメージである。
【
図24】活性酸素のassayを示すイメージである。
【
図25】食作用のassayを示すイメージである。Supにcontrol media(Ctrl)の処置とATPと(本文参照)増加する濃度の2-PF(0、100、300、および500uM)を加えた後に測定された。
【
図26】初代小膠細胞と星状細胞Olfr110のウェスタンブロット分析と一緒に、positive controlとして使用された嗅覚上皮(OE)と嗅球(OB)を示すイメージである。Loading controlとしては、β-actinが使用された。
【
図27】大脳皮質における(上段パネル)Olfr110(赤色)とIba-1(緑色)の発現を示すco-immunostaining analysisを示すイメージである。小膠細胞マーカー;海馬における(中間パネル)Olfr110とGFAP(緑色)の発現、小膠細胞マーカー;大脳皮質における(下段パネル)Olfr110とNeuN(緑色)の発現、神経細胞マーカー。DAPIは、青色で示される。Scale bar:50umである。
【
図28】CX3CR1
GFP/+大脳皮質中のGFP(+)小膠細胞(緑色)Olfr110(赤色)の発現を示すImmunostaining analysisを示すイメージである。左右パネルは、低解像度と高解像度イメージを示す。Scale bar:50um(左側)とScale bar:20um(右側)。
【
図29】Control media(Ctrl)とSup(上段パネル)と一緒にPBS(Ctrl)と2-PF(下段パネル)の処置後に測定したOlfr110の発現を示すImmunostaining analysisを示すイメージである。Olfr110発現量は、赤色の強度によって数量化された。
【
図30】3つの濃度でPBS溶媒と2-PFのIP注入後にマウスの居住頻度をそれぞれ示すヒートマップである。総移動距離は、同じ条件下で定量化して棒グラフに表示した。
【
図31】2-PFのIP注射後に大脳皮質で測定された炎症性サイトカインのmRNA発現レベルを示すグラフである。
【
図32】コントロールまたは2-PFをCX3CR1
GFP/+マウスに注入した後の小膠細胞のGFPの強度を示す蛍光イメージである。大脳皮質の小膠細胞により生成された。
【
図33】コントロールあるいは2-PF処理をした後にそれぞれ1、16、25、40および92分に大脳皮質の切片を測定して形成された低速の共焦点顕微鏡のイメージである。小膠細胞の体積は緑色で、食作用中の突出部分は矢印で表現された。
【
図34】2-PF前処理後にnon-targeting siRNA+Mock(siCtrl)、siRNA against Olfr110+Mock(siOlfr110)、そしてsiRNA against Olfr110+the rescue vector(Rescue)で形質感染された初代小膠細胞の炎症性サイトカインのmRNA表現程度を示すグラフである(
*、P<0.05;
**、P<0.01;および
***、P<0.001)。
【
図35】培養上澄み液で測定した2-PF処理後のTnfおよびIl6のタンパク質レベルを示すグラフである。
【
図36】2-PF処理後にsiRNA transfectionさせた場合の初代小膠細胞で生成された蓄積された酸素濃度の量を示すグラフである。1分間隔で25分間の測定値が示されている。
【
図37】siRNA transfection後にFACS分析により測定されたFITCデキストリン強度を有する初代小膠細胞の分布を示すグラフである。
図36に記述された通りである。食菌指数は、定量化された平均蛍光強度を示す。
【
図38】3つの異なる濃度である10、100、および1000μM 2-PFにおける初代小膠細胞を示すイメージである。
【
図39】形質感染された小膠細胞を示す代表的な脳イメージである(黄色)。非小膠細胞は赤色で表示されており、形質感染されない小膠細胞は緑色で示されている。星印で表示された領域は、stereotactic注入後にCX3CR1
GFP/+マウスの大脳皮質の部分である。
【
図40】Olfr110と111のmRNA発現レベルを測定したグラフである。それぞれ、non-targeting siRNA+Mock+siGLO(Ctrl);Olfr110 siRNA+Mock+siGLO(siOlfr110);あるいはOlfr110 siRNA+rescue vector+siGLO(Rescue)注入後に測定されたのである。(
*、P<0.05;
**、P<0.01;および
***、P<0.001)
【
図41】CX3CR1
GFP/+マウスの脳中で3タイプの細胞におけるBeadsの分布を示すイメージである。Beadは白色点、小膠細胞は黄色点で表示している。3つの条件下で3匹の独立的なマウス内部の6個の位置で計数し、計数したBeadsは棒グラフで表示された。(
*、P<0.05;
**、P<0.01;および
***、P<0.001)
【
図42】対照群と実験群の小膠細胞間のDEGs関係を示すイメージである。それぞれの数字はDEGの数字を意味する。
【
図43】up-regulated(赤色)とdown-regulated(緑色)遺伝子のlog
2-fold-changesを示すヒートマップのイメージである。
【
図44】2-PF処理された小膠細胞中のup-regulated遺伝子によりGOBPsを豊富にすることを示すグラフである。
【
図45】異なる濃度(0、100、および500μM)の条件下で処理された小膠細胞(n=5/condition)のcAMP生成濃度を示すグラフである。それぞれはSQ22536(adenylyl cyclase inhibitor)で処理された群であるか、またはそうでない群である。
【
図46】同じ濃度の2-PFで処理した後、初代小膠細胞で生産されるcAMPを示すグラフである。(n=5/条件)
【
図47】小膠細胞の内部に増加したカルシウム濃度をfura-2AM calcium imagingで測定して示すイメージである。高い濃度は赤色で、低い濃度は緑色で示した。
【
図48】2-PFおよびLPS処理後、0、2、5、10、20および30分にウェスタンブロット分析を使って1次微視神経細胞で測定されたリン酸化ERK(pERK)、p38(pp38)、JNK(pJNK)およびAkt(pAkt)のウェスタンブロットの結果を示すイメージである。β-アクチンをローディングに使用した。
【
図49】2-PF前処理後に初代小膠細胞から分泌されるTnfとIl6の濃度を示したのである。adenylyl cyclase(SQ:SQ22536)で前処理した群と、そうでない群とに分けられる。
【
図50】
図49と同じ実験条件下で活性酸素の生成量を示すグラフである。
【
図51】
図49と同じ実験条件下で食作用の程度を示すグラフである。
【
図52】移動した小膠細胞を示すイメージであり、同時に
図49と同じ実験条件下で細胞毒性を示すグラフである。(n=5)
【
図53】SQ22536またはpd98059と前培養させ、2-PFを処理した後にウェスタンブロットにより初代小膠細胞で測定されるERK、phosphor-ERK(pERK)、CREB、およびphosphor-CREB(pCREB)の量を示すグラフである。(
*、P<0.05;
**、P<0.01;および
***、P<0.001)
【
図54】x軸は、300μMの2-PFで同時処理された2-EFの濃度増加、y軸は、Olfr110の相対的ルシフェラーゼ活性を示すグラフである。(
*、P<0.05;
**、P<0.01;および
***、P<1.0)
【
図55】2-EF処理されたSupと処理されないSupでそれぞれ処理された初代小膠細胞で発生した活性酸素生成のグラフである(左側)。また、500μMの2-PFで同時処理された2-EF Supとそうでない2-EFが処理されたSupでそれぞれ処理された初代小膠細胞で発生した活性酸素生成のグラフである(右側)(
*、P<0.05;
**、P<0.01;および
***、P<1.0)。ANOVAとともにTukey post-hoc修正法を利用した。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明する。しかしながら、これらの実施例は、本発明を例示的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
参考例:実験材料および実験準備
1.小膠細胞と星状細胞の培養
本実施例では、1次的に小膠細胞または星状細胞をE18.5マウス胚芽の大脳皮質から抽出した後(Tamashiro et al.,2012)、実施例1のように培養した。より具体的に、マウス胚芽の皮質を収集した後、冷たい上澄み液(#14170-112;Thermo Fisher Scientific)に貯蔵し、0.25%トリプシン溶液(#15090-046;Thermo Fisher Scientific)で37℃で20分間前処理した。その後、10%FBS(#SH30919.03;Hyclone)、2mM L-グルタミン(#25030-081;Thermo Fisher Scientific)、0.04%ブドウ糖(#G7021;Sigma Aldrich)、および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(#15140-122;Thermo Fisher Scientific)が添加された最小栄養培地で細胞をプレーティングした後に、40μmストレーナー(#352340;Thermo Fisher Scientific)を用いてろ過した。小膠細胞は、poly-D-lysine(#P7280;Sigma Aldrich)でメッキされたT75フラスコに1.2×107 cellの密度でプレーティングした。2時間後、前記混合物は、Dulbecco’s modified eagle medium(DMEM;#SH30243.01;Hyclone)培地に移され、2週間3日を周期として培地を交替した。このような混合液から小膠細胞を分離するために、まず37℃で150rpmで2時間振とうした後に、小膠細胞を含む混合液を上部から別途に抽出して移した後、室温で1300rpmで5分間遠心分離して小膠細胞を分離することができた。分離した小膠細胞は、培養培地に移した。小膠細胞を移した後、残った混合液を160rpmで1日間振とう培養して小膠細胞を完全に除去した。次に、0.25%トリプシンを処理して星状細胞を分離し、T75フラスコで4日間さらに培養して収集した。収集した小膠細胞と星状細胞の純度は、qRT-PCR分析およびマーカー遺伝子とタンパク質であるIba-1およびGfapを用いてimmunocytochemistryを用いて評価した。
【0042】
2.肺炎球菌培養液から2-pentylfuranの選別
カプセル化した2つの血清型の菌株(D39 S.pneumonia,Kim et al.,2015)を30gの滅菌されたTodd Hewitt Broth(#249240;BD Biosciences)、0.5%の酵母抽出液(#288620;BD Biosciences)と共に培養した。次に、成長したバクテリアをThy brothに移し、37℃で24~48時間の間培養して108CFU/mlの濃度になるようにした。培養液は、4,000xgで4℃を維持しつつ、10分間遠心分離して培養上澄み液(Sup)を分離し、腹腔内注射(IP)に使用した。代謝物を含む分画物を分離するために、ultracel YM-3膜を用いて追加でろ過した(3kDa pore,Millipore Corporation,Bedford,MA)。しかも、実験のために98%純度の合成2-PF溶液を準備した後に、同量のメタノールを溶液に添加して混合溶液を作成した(St.Louis,MO,USA社の溶液を購入)。102または104濃度の2-pentylfuranがSupに添加され、結果物は、0.1%のTFAで処理された。
【0043】
3.動物モデルの準備
すべてのマウスは、標準温度調節、実験室条件、または着色されたトンネル、迷路、登山材料、ランニングホイールに自由に接近できる条件下で、DGISTの動物管理倫理委員会の承認を受けたプロトコルに従って維持、および管理された。in vivo、ex vivoの実験両方で8~10週のBL6Jまたは異型接合体CX3CR1+/GFPマウスを利用した。前記マウスは、C57/BL6JとCX3CR1GFP/GFPを交差交配して生成した(Jung et al.2000)。すべてのマウスは、室温で12時間の周期で任意に無菌食品と水を提供された。
【0044】
4.qRT-PCRの実行方法
mRNAの測定のために、製造メーカーのプロトコルに従ってTRIzol試薬(Invitrogen,Carlsbad,CA)を用いてMagNa lyser(Roche Molecular Diagnostics)を使って赤血球と小膠細胞、星状細胞、Hana3A細胞または大脳皮質細胞からRNAを分離した。以後、分離したmRNAを使って逆転写を通じてcDNAを生成した(PrimeScriptTM 1st strおよびcDNA Synthesis kit-#6110;Takara Bio Incを利用)。この過程は、quantitative real-time-PCR(LightCycler(登録商標)480 SYBR Green I Masterを利用)を通じてリアルタイムで定量的に測定した。測定値は、2-ΔΔCt methodを用いて計算した。
【0045】
5.Cytokine ELISA assayの実行方法
小膠細胞から分泌されたTnf、Il6、Il1bサイトカインの発現レベルは、製造メーカープロトコルに従って測定された。より具体的には、2-PFあるいは細胞上澄み液で処理した後24時間後にELISAにより測定された。ELISAキットは、BD biosciencesから購入した(#DY410 for Tnf;#DY406 for Il6;#DY401 for Il1b)。
【0046】
6.Quantitative morphological analysis方法
小膠細胞活性化の形態学的変化を分析するために、9週齢のCX3CR1GFP/+マウスを使用した。2つのマウスに2-PFが含まれたIPおよび含まれていないIPをそれぞれ注入した後、2時間後に低温切除術を用いて脳切片を抽出した。厚さ40μmの脳組織の切片を1μmにさらに小さく均一化して準備した後に、40倍拡大共焦点顕微鏡を用いて小膠細胞のGFPシグナルを測定した。Zeiss ZEN Software(Zeiss)を使って小膠細胞のGFP-pixel signalを分析した。
【0047】
7.Measurement of superoxide(O2
-)濃度測定方法
スーパーオキシドの濃度は、VersaMax microplate readerを使ってシトクロムcが減少する程度を測定して計算した(Babior et al.,1973)。小膠細胞は、96 well plateに1.0×105 cells/wellの濃度で培養され、前記小膠細胞は、2-ペンチルフラン、シトクロムcが存在する10μM ATP溶液、あるいはSupをcytochalasin B(5μM;#C66762;Sigma Aldrich)と混ぜた溶液により活性化した。これによるROSの濃度は、1分間隔で25分間550nmで光吸収の変化を通じて測定された。
【0048】
8.細胞走化性の測定方法
multiwell Boyden chamberを用いて細胞走化性を測定した。より具体的には、PBSに2時間の間10mg/mlフィブロネクチン(Sigma-Aldrich)によりポリカーボネートフィルター(8μm pore;#101-8;Neuroprobe)をコーティングし、コーティングされたフィルターをBoyden chamberに設置した。また、プレートの底面を2-ペンチルフランを含有する無血清DMEMまたは培養上澄み液で満たした。次に、小膠細胞またはHana3A細胞を嗅覚受容体構造に感染させた後、無血清DMEMに懸濁させた。その後、37℃で小膠細胞は4時間、Hana3A細胞は8時間の間放置した。底面に沈んだ細胞は、4%PFAで固定させ、ヘマトキシリンで10分間染色した。固定された細胞は、scored eyepieceを使って無作為に選択された5個の固定磁場(200X)で光学顕微鏡で計数された。化学走化性指数は、無処理群を標準として細胞の移動数として定義された。
【0049】
9.食作用の測定方法
初代小膠細胞を24-well plate(5×105 cells/well)に接種後、24時間の間培養した。細胞を2-PFまたはsupとともに30分間予備培養し、37℃で30日間無血清DMEMからFITC-dextran(1mg/ml、PBSの中の20mg/ml;#FD70S;Sigma Aldrich)に移して4℃のPBSで洗浄した。PBSで0.25%トリプシン(#15090-046;Thermo Fisher Scientific)により細胞を分離し、分離した細胞をFACS AccuriTM C6(BD Biosciences)で分析した。平均蛍光強度(MFI)は、前記ソフトウェアを使って各条件における蛍光ヒストグラムを統合して計算した。食作用指数は、無処理群を標準としてMFIとして定義された。
【0050】
10.活性酸素濃度の測定方法
活性酸素の濃度は、2’,7’ -Dichlorodihydrofluorescein diacetate(DCF-DA,#D6883;Sigma Aldrich)を使って既存の方法からささいな修正を経た方法を用いて測定した(Bae et al.,2001)。より具体的に、初代小膠細胞を24時間の間24-well plate(5.0×105 cells/well)で10μM DCF-DAで37℃の温度で30分間処理した。一つのプレートは、2-PFで処理し、一つは、そうではなかった。それぞれのwellにある細胞は、flow cytometer(FACS AccuriTM C6;BD Biosciences)で測定された。MFIは、前記方法の同様に測定された。
【0051】
11.嗅覚受容体クローニングおよび細胞表面発現測定
マウスとヒトゲノムDNAからの全体長さの嗅覚受容体遺伝子を適切なプライマーを使って増幅させた。これによって生成されたcDNAを制限酵素で分解した後、前記記述されたように、N-terminal Lucy、Flag、およびRho tagsを含有するPME18S表現ベクターで制限酵素部位を有する嗅覚受容体構造を生成するために生成物を連結させた。すべての嗅覚受容体の構造は、配列分析により確認された(Shepard et al.,2013)。次に、RTP1Sを有するHana3A細胞で形質を感染させ、以前に記述されたように、細胞膜における位置と存在を確認した(Behrens et al.,2009;ZhuangおよびMatsunami、2008)。このような形質感染は、Lipofectamine2000(#11668-019;Thermo Fisher Scientific)を使って製造メーカーの指示により行われた。より具体的には、形質転換された細胞をポリDリシン(10μg/ml;#P7280;Sigma Aldrich)でコーティングされたカバースリップ(#0101050;Marienfeld)上で成長させた。次に、暖かいPBS溶液で洗浄し、氷で30分間冷却させて、エンドシトシスを遮断させた。その後、冷たいPBSで洗浄した後、細胞を2分間氷で冷却されたメタノールとアセトンで固定させた(v/v=1:1)(Methanol:#106009;MERCK,Acetone:#179124;Sigma Aldrich)。その後、細胞を室温下に1時間の間正常ウマ血清(#008-000-121;Jackson ImmunoResearch)と共にインキュベーションした。マウス抗ロドプシン(anti-Rho;1:1,000;#MABN15;Millipore)あるいはウサギ抗Olfr110(#ab177327;Abcam)を4℃で一晩中インキュベーションさせた。その後、PBSで洗浄した後、Cy3-コンジュゲートロバ抗マウス抗体(1:1,000;#715-165-150;Jackson ImmunoResearch)、Alexa488-コンジュゲートロバ抗マウス(1:1,000;#715-545-150;Jackson ImmunoResearch)、あるいはCy3-コンジュゲートロバ抗ウサギ抗体(1:1,000;#711-165-152;Jackson ImmunoResearch)を室温で1時間の間処理した。細胞をDAPI(#H-1200;Vector Laboratories)を含むVectashield蛍光マウント媒質で装着した。異種嗅覚受容体の表現は、共焦点レーザースキャニング顕微鏡LSM700とZENソフトウェア(Zeiss)で分析した。
【0052】
12.Luciferase assay測定方法
Dual-Gloルシフェラーゼ分析システム(#E2940;Promega)を嗅覚受容体リガンドスクリーニングに使用した。より具体的には、Hana3A細胞を形質転換する1日前に白色ポリスチレン96-well plate(#353296;BD Biosciences)に形質感染1日前に塗抹した。各プレートに対してpCRELuc(1μg;#219076;Agilent Technologies)、pRL-SV40(1μg;#E2231;Promega)、RTP1S(1μg)、およびOR(6μg;あるいはMock)ベクターを24時間の間形質感染させた。製造メーカーのプロトコルに従ってLipofectamine2000(#11668-019;Thermo Fisher Scientific)を使って分析した。形質感染した細胞を多様な濃度の希釈されたodorantsを用いてCD293培地(#11913-019;Thermo Fisher Scientific)内で37℃で4時間の間刺激させた。ルシフェラーゼの活性は、renilla luciferaseの活性で正常化した。SpectraMax L microplate reader(Molecular Devices)を用いて発光量を測定した。
【0053】
13.相同性モデリング方法
Olfr110/111のマウスの嗅覚受容体相同性モデリングは、テンプレート検索、遺伝子シーケンスの整列、モデル確定、モデル量評価などを含む。また、これは、ウェブ基盤相同性モデリングツールであるSWISS-MODELを通じて行われた。Olfr110/111のアミノ酸配列は、UniprotKB/Swiss-Prot databaseを使ってNCBI Protein BLASTから初めて収得した。Olfr110/111に対するテンプレート検索は、SWISS-MODEL Template Library(SMTL)のBLASTおよびHHblitsを使用した。結果的に、179個と186個のテンプレートを発見することができた。Olfr110/111の相同性モデルを構築するために、ヒトアデノシンA2A受容体(resolution:2.7Å,PDB ID:3VG9)のX線結晶構造を鋳型構造として選択し、これは、配列同一性および類似性の両方に基づく。3d相同性モデル構造は、Promodを使って生成した。生成されたモデルの全体的な評価は、QMEAN scoring機能を利用した。Olfr110/111の最終3Dモデル構造は、SWISS-MODELウェブサイトからダウンロードされた。
【0054】
14.受容体-リガンド分子モデリング結合方法
リガンドの二次元的構造は、ChemBioDraw(ver.11.0.1)により生成され、これをChem3D Pro(ver.11.0.1)に伝送して3次元構造を生成した。リガンド準備および最適化に利用された過程は、SYBYL-X 2.1.1(Tripos Inc.,St.Louis)の「sanitize」プロトコル(基本値)を使って行われた。Olfr110/111(template structure PDB ID:3VG9)の相同性モデルは、SWISS-MODEL相同性モデリングツールを用いて生成された。SYBYL-X 2.1.1の構造準備ツールは、タンパク質の準備過程でも利用された。アミノ酸残基の欠損は修正され、TRIPOS force fieldを用いてタンパク質に水素原子が追加で添加された。次に、POWELL方法(Abagyan et al.,1994)で、初期最適化設定が基本設定から‘none’変化させた後、タンパク質最小化過程を行った。EHgks終結勾配は、0.5kcal/(mol*Å)に設定され、最大反復は、1000回に設定された。次に、Surflex-Dock GeomX module(SYBYL-X 2.1.1)を用いて前記方法で準備されたタンパク質とリガンドを使って全体ドッキングプロセスが行われた。ドッキングサイトは、Surflex-Dock protomolにより誘導され、これは、理想的なリガンドの表現型であって、存在する結合部位とのすべての相互作用を示すことができることが特徴である。このプロトコルは、SYBYL-X 2.1.1.のMulti channel surfaceで最も大きく発現する受容体を共同で選択して捜し出して定義された。2つのプロトコルの発生因子であるBloatとThersholdは、それぞれ0.5(Å)および0に設定された。発生するposesの最大値は、20であり、生成されたフォース間の最小RMSDは、20に設定された。poses間のRMSDの最小値は、0.05に設定された。Surflex-dock GeomXの他のドッキング因子は、基本値に設定された。
【0055】
15.構造特異的突然変異生成方法
Olfr110構造の特異的突然変異ベクターは、PfuUltra High-Fidelity DNA polymerase(#600380;Agilent Technologies)を使って生成した。すべての突然変異ベクター(F102W;F104W;Y252F;Y259F;F102W/F104W;Y252F/Y259F;F102W/Y252F/Y259F;F104W/Y252F/Y259F;F102W/F104W/Y252F/Y259F)の順序は、正方向および逆方向である(Macrogen)。
【0056】
16.サンプル準備
合成2-PF溶液(98%以上の純度)は、Sigma Aldrich(St.Louis,MO,USA)から購入した。同量のabsolute(99.9%)メタノールを2PFのoriginal溶液に添加した。2-PFのoriginal溶液とメタノールを添加した溶液(2-PF+CH
3OH)を直接注入質量分光法(direct infusion mass spectrometry)で分析した。合成2-PFのliquid-chromatography-tandem-mass-spectrometry(LC-MS/MS)分析のために、2-PF+CH
3OH溶液を使用した。SupおよびControl media(Ctrl)のLC-MS/MS分析のために、SupまたはCtrl(1 ml)を3kDの加工サイズを有するultracel YM-3膜を通じてフィルタリングしてタンパク質を除去した(Millipore Corporation,Bedford,MA)。500μlのflow-throughを同じ体積のメタノールと混合した。生成されたサンプルを10分間超音波(sonicated)処理し、4℃で20分間14,000gで遠心分離させた(Lau et al.,2015)。上澄み液をLC-MS/MSで分析した(
図3A-B)。また、10
2と10
4uM濃度の2-PFがSupに追加された。生成されたサンプルを0.1%TFA(trifluoroacetic acid)で酸性化させた後、LC-MS/MSで分析した。
【0057】
17.Direct infusion with HESI source
2-PFおよび2-PF+CH3OHサンプルを500μlガス密閉注射器を使って加熱したエレクトロスプレーイオン源に20μl/分の流速で注入した。また、Q Exactive Hybrid Quadrupole-Orbitrap mass spectrometerの単一イオンモニタリング方法で8分間測定した。しかも、キャピラリー電圧は、3.5kV(ポジティブモード)に設定され、ソルベント除去キャピラリーの温度は、250℃に設定された。次に、全体MSを70,000(m/z 200)の分解能で50~750 Thomsons(Th)間の質量範囲でモニタリングした。最大イオン注入時間は、100msであり、自動利得制御値は、1×106である。隔離窓は、1.0m/zに設定された(Looβe et al.,2015)。
【0058】
18.LC-MS/MS分析法
analytical column(Thermo Scientific,Easy-Column、75μm×50cm)とtrap column(75μm×2cm)が装着されたThermo EASY-nLC 1000(Thermo Scientific,Odense,Denmark)をLC separationに利用した。これより、パラメーターは次の通りである:injection volume=10μl;operation temperature of the analytical columns=50℃;flow rate=300 nL/min;およびmobile phase A=0.1%formic acidおよびmobile phase B=0.1%formic acidおよび2%water in acetonitrile.LC separationのために、次のような濃度勾配が50分間利用された。:2% to 40% solvent Bを36min、40%~80% solvent B over 6分およびfrom 80%~2%solvent B over 6分。LCから溶出された試料は、ナノ電子噴霧装置が装着されたQ-ExactiveTM hybrid quadrupole-Orbitrap mass spectrometer(Thermo Scientific)を使って分析した。キャピラリー電圧は、3.5kV(positive mode)に設定され、キャピラリーの温度は、250℃に設定された。また、Q-Exactiveは、データ依存モードに設定され、7万解像度(at m/z 200)で50~750Th質量範囲のスキャンを行った。実験結果、最も多く検出された上位10個のイオンまで1.0m/zで隔離された。また、前記イオンは、高いエネルギーとの衝突によって切片化されることを確認した。MSスキャンは、17,500の解像度として検出された(Saigusa et al.,2016)。最大イオン注入時間は、full MSおよびMS/MS scansの場合、それぞれ100msおよび50msであった。automated gain control target valueは、full MSおよびMS/MS scansそれぞれに対して1.0×106および1.0×105に設定された。
【0059】
19.Extracted ion chromatogram(EIC)およびMS/MS spectra測定方法
full MSおよびMS/MS scansを含む全体MSスキャンを用いて取得した未加工データから2-PFの前駆体イオンが抽出された(m/z=153.091 Da)。前記前駆体イオンは、2ppmの許容誤差内でクロマトグラフィーピークを17および22または16および22に設定して抽出されたのである。それぞれのスペクトルでm/zf-the mass of CH3のピークと相当するものを連結し、結果的に断片化されたピークイオンとして候補構造が得られた(HMDB)(Wishart et al.,2007)。
【0060】
20.ウェスタンブロット方法
protease inhibitors(#04-693-116-001;Roche Molecular Diagnostics)、DMSF(Sigma-Aldrich)およびlysed using MagNA lyser(Roche Molecular Diagnostics)があるT-PER(登録商標)reagent(#78510;Thermo Fisher Scientific)を用いて細胞と組織を準備した後、MagNAレーザーを使って溶解させた(Roche Molecular Diagnostics)。総タンパク質抽出物は、Bradford分析法で定量化した。前記サンプルを7.5%SDS-PAGEあるいは4-20%gradient mini-PROTEIN TGX Precast Gels(#456-1064;Bio-Rad Laboratories)に溶解した後、nitrocellulose membranes(#10600002;GE Healthcare)にブロッティングした。その後、膜を5%の脱脂粉乳とTBST、0.1%TWEEN(登録商標)20(#P9416;Sigma-Aldrich)およびTris-buffered salineで1時間の間ブロッキングした後、4℃で一晩中1次抗体と共にインキュベーションさせた。前記抗体は、次の通りである:Olfr110(36kDa;1:1,000;#ab177327;Abcam)、抗ロドプシン(39kDa;1:1,000;#MABN15;Millipore)、CREB(43kDa;1:1,000;#9197;Cell Signaling Technology)、phospho-CREB(43kDa;1:1,000;#9198;Cell Signaling Technology)、ERK(44kDa;1:1,000;#sc094;Santa Cruz)、phospho-ERK(42,44kDa;1:1,000;#sc-7383;Santa Cruz)、phospho-Akt(60kDa;1:500;sc-293125;Santa Cruz)、phospho-JNK(46,54kDa;1:500;sc-6254;Santa Cruz)、phosphor-p38(38kDa;1:1,000;sc-7973;Santa Cruz)、あるいはbeta-Actin(45kDa;1:10,000;#4967;Cell Signaling Technology)。また、Isotype-matched horseradishペルオキシダーゼ-コンジュゲート2次抗体は、常温で2時間の間TBST中の抗ウサギ(#711-035-152;Jackson ImmunoResearch)を1:100,000として、抗マウス(#715-035-150;Jackson ImmunoResearch)を1:40,000として使用された。免疫反応性タンパク質バンドは、SuperSignalTM West Pico Chemiluminescent Substrate(#34080;Thermo Fisher Scientific)を使用した。
【0061】
21.免疫染色法
免疫蛍光染色のために48時間の間標準条件でpoly-D-lysine(10μg/ml;#P7280;Sigma Aldrich)で22mmカバースリップ(#0101050;Marienfeld)をコーティングした後に、小膠細胞を培養させた。その後、細胞をPBSで洗浄し、4%のパラホルムアルデヒド(#6148;Sigma Aldrich)で5分間固定させた。その後、4%の正常ウマ血清(#008-000-121;Jackson ImmunoResearch)と0.1%TWEEN(登録商標)20(#P9416;Sigma-Aldrich)を含有するPBSで室温で1時間の間培養させた。次に、細胞を羅列した1次抗体とともに4℃で一晩中ブロッキングした。抗体は、次の通りである:Olfr110(rabbit-anti-Olfr110;1:10,000;#ab177327;Abcam)、Iba-1(goat-anti-Iba-1;1:1,000;#ab5076;Abcam)、およびGFAP(mouse-anti-GFAP;1:1,000;#556330;BD Biosciences)。サンプルは、常温で1時間の間2次抗体とともに0.1%TWEEN(登録商標)20(#P9416;Sigma-Aldrich)を含むPBS溶液で培養された。2次抗体は、次の通りである:Cy3-コンジュゲートロバ抗ウサギ(1:1,000;#711-165-152;Jackson ImmunoResearch)、Alexa488-コンジュゲートロバ抗ヤギ(1:1,000;#705-545-147;Jackson ImmunoResearch)、あるいはAlexa488-コンジュゲートロバ抗マウス(1:1,000;#715-545-150;Jackson ImmunoResearch)。その後、細胞をDAPI(#H-1200;Vector Laboratories)を含むVectashield蛍光物質で装着させた後に、共焦点レーザースキャニング顕微鏡を用いて、LSM700とZENソフトウェア(Zeiss)を用いて実験の結果物となるイメージを収得した。
【0062】
22.免疫組織化学法
マウスを400mgのketamine/kg体重の用量を麻酔させ、硬膜外に灌流させた後、4%のPBS中のパラホルムアルデヒド(PFA;#6148;Sigma Aldrich)で固定させた。マウスの脳は、4時間の間4℃の4%PFAに移した後、30%のスクラーゼ溶液で1日間保管した。その後、O.C.T化合物(#4583;Scigen)を用いて洗浄した後に、cryotome(#HM 550;Thermo Fisher Scientific)を用いて厚さ40μmに切り出して標本を形成した。前記脳標本は、スライドに保管され、同時に0.3%PBST(1X PBS/0.3%Triton X-100)中の2%ロバ血清で30分間浸漬させた後に、4℃のblocking bufferで一晩中1次抗体と共に培養された。1次抗体は、次の通りである:rabbit anti-Olfr110;1:10,000;#ab177327;Abcam,goat anti-Iba-1;1:1,000;#ab5076;Abcam,mouse anti-GFAP;1:1,000;#556330;BD Biosciences)
【0063】
Knockdownおよびrescue experiment後続段階で、スライドは、PBST中の2次抗体と共に培養された。2次抗体は、次の通りである:Cy3-コンジュゲートロバ抗ウサギ;1:1,000;#711-165-152;Jackson ImmunoResearch,Alexa488-コンジュゲートロバ抗マウス;1:1,000;#715-545-150;Jackson ImmunoResearch,Alexa488-コンジュゲートロバanti-goat(1:1,000;#705-545-147;Jackson ImmunoResearch)。次に、染色されたスライドは、DAPI(#H-1200;Vector Laboratories)を含むVectashield蛍光物質で処理した。実験の結果物として収得されるイメージは、共焦点レーザースキャニング顕微鏡LSM700(Zeiss)を使って20倍拡大イメージを示した。
【0064】
23.Knockdownおよびrescue実験方法
マウスの初代小膠細胞は、形質感染1日前に6 well plateに位置させた。次に、初代小膠細胞を分化させるために、製造メーカーのプロトコルに従ってOpti-MEM(#11058021;Thermo Fisher Scientific)中でLipofectamine RNAiMAX(#13778150,Themo Fisher Scientific)を使用した。また、100nMのOlfr110 siRNA(#LQ-064350-01-0002;4セットのON-TARGET+マウスOlfr110 siRNA;#1:CCUGUAAUUUAUACGCUAA;#2:CGUUAAGGUACUCAUUUAU;#3:CUGAAUGAAUUGCAGUAUU #4:GAUUGAUCUCAGUGCUGUA,Dharmacon)または100nM非標的siRNA(UGGUUUACAUGUCGACUAA,Thermo Fisher Scientific)を用いて24時間の間培養した。siRNA伝達効率は、siGLO Red oligonucleotide duplex(#D-001630-02-05,Thermo Fisher Scientific)を用いて確認した。以後、言及した部位指定突然変異誘発法を用いていくつかの沈黙ホモ突然変異(5’-CUCAACGAGCUGCAAUACC-3’)を有するOlfr110のsiRNA #3構造ベクターを生成した後、Olfr110ノックダウンのために24時間の間形質感染させた。構造ベクター実験で、前記構造ベクターは、製造メーカーのプロトコルに従ってLipofectamineLTX(#15338100;Thermo Fisher Scientific)を使用し、非標的またはsiRNA #3形質感染細胞で24時間の間形質を感染させた。
【0065】
24.Ex vivo knockdownおよびrescue実験法
9週齢のCX3CR1GFP/+雄マウスをケタミンで麻酔させた後に小さい穴(~1mM in diameter)を頭蓋骨に穿設し、脳に接近可能なstereotaxic注入を施行した(bregma-0.11mm、1mm left spot from longitudinal fissure)。製造メーカーのプロトコルに従って、Lipofectamine RNAiMAXを用いてMock vector(knockdownの場合)あるいはrescue vector(recoveryの場合)が存在する0.5μl of siRNA(665ng)および0.5μl of siGLO Red oligonucleotide duplex(133ng,#D-001630-02-05,Thermo Fisher Scientific)を大脳皮質に注入した。0.5μl/minの速度でヘミルトン注射器を用いて注入が行われた。注射後48時間後に、前述した方法(Takayama et al.,2016)とは若干修正して生体外イメージング分析方法を行った。siRNA構造の伝達は、siGLO REDオリゴヌクレオチド二量体の赤色蛍光により確認できた。また、qRT-PCRを用いて注射部位で形質感染の効率性も確認できた。
【0066】
25.mRNA-sequencingおよびdata analysis
2時間の間vehicle(対照群)、Sup(MOI 100)または2-PF(100μM)を処理した後、RNeasy mini Kit(Qiagen、74104)を使って2×106個の初代小膠細胞からトータルRNAを分離し、定量製造メーカーの標準プロトコルに従ってQubit RNA HS分析キット(Thermo Fisher Scientific,Q32852)を使って分析した。Agilent Technologies 2100 BioAnalyzerを使って各サンプルのRNA integrity number(RIN)を測定し、すべてのサンプルのRINは、8.5以上であり、これは、mRNAシーケンシングに適合する。製造メーカーの推奨プロトコルSMARTer-Seq v4 Ultra Low input RNA Kit(Clontech,634888)に従って全長cDNAを生成した。cDNAの一番目のストランド合成は、10ngのtotal RNAから1μlの3’SMART CDS primer II Aを3分間72℃で添加することによって始まった。SMARTer-seq v4 oligoおよびSMARTScribe逆転写酵素を添加して2番目のストランドを合成し、反応物を42℃で90分間インキュベーションした後、70℃で10分間不活性化させた。二本鎖cDNAをPCRにより8サイクルの間増幅させ、Agencourt AMPure bead(Beckman,A63881)を使って精製した。mRNA-seq libraryは、製造メーカーのNextera XT DNA library準備キット(illumina,FC-131-1024)推奨プロトコルに従って生成された。cDNAは、tagmentation(sequencing adaptorで分割されると同時にタギング)し、Nextera XT DNA Index Kit(Illumina,FC-131-1001)のIndex Primersを使ってPCRで増幅させた。PCR後、AMPure beadsを使ってDNA libraryを精製し、Agilent 2100 Bioanalyzerを使って品質を評価した。個別サンプルのDNA libraryは、KAPA library定量キット(KAPA biosystems,KK4854)を使って定量化した後、poolingした。Illumina Hiseq2500装備ですべてのライブラリーをシーケンシングして、二重インデックスされた100bp paired readsを生成し、各サンプルに対して平均5,800万readsを生成した。FastQC(Babraham Bioinformatics)を使ってraw sequencesの品質を確認し、cutadapterソフトウェアを使ってアダプタシーケンスを整理した。残っているreadsは、基本オプションと共にTopHat(Trapnell et al.,2009)を使ってマウスreference genome(GRCm38)に整列した。次に、整列したreadsをannotationが完了した遺伝子に組み立て、Cufflinks(Trapnell et al.,2010)を使ってfragments per kilobase per million mapped reads FPKMを計算した。
【0067】
26.分化発現した遺伝子の選別
平均的に各標本から5,800万件のデータが収集され、データの89.9%がマウスの参照ゲノムに整列された。少なくとも一つのサンプルでFPKM>1の遺伝子は、以前に記述されたように発現することが明らかにされた(Graveley et al.,2011)。それぞれのサンプルのFPKM値を集めた後に、log2に変換されたFPKM値に量子正規化(Bolstad et al.,2003)を適用した。DEGを識別するために、このような正規値を以前に報告された統合統計テスト(Leeなど、2010)を使って次のような比較を行った。前記比較は、Sup-treated samplesとControlを(Sup)、2-PF処理されたサンプルとControl(2-PF)を比較することである。まず、各遺伝子に対してStudent’s t-testを行って、T-valueを得た後に、無作為標本抽出実験を1,000回行い、これを通じて得られたT値にガウスカーネル密度推定を適用した。T値に対する経験的ヌル分布を生成した。また、各遺伝子に対して、観察されたT値の補正P値は、両側検定法による経験的分布を使って計算された。DEGは、補正されたP値が0.05未満であり、絶対log2-median-ratio>cutoff(Sup vs 対照群の場合、log2倍数変化=0.41および0.54、対照群の場合、2 vs PF)遺伝子であることが確認された。
【0068】
カットオフは、上記で説明した無作為標本抽出実験で得られたlog2倍数変化の分布で5番目および95番目の百分位数値の平均として決定した。遺伝子オントロジー生物学的過程(GOBP)のエンリッチメント解析は、DAVIDソフトウェアを使って行われた(Huang da et al.,2009)。結果的に、濃縮されたGOBPは、DAVIDから計算されたP<0.05であり、カウントは、≧3であった。
【0069】
27.cAMP ELISA assay
初代小膠細胞を48 well plate(2×105 cells/well)に接種し、30分間30μM forskolin(#F3917,Sigma Aldrich)、または2-PF(10,100,500μM)で処理した。抑制剤の効果を確認するために、1mM of SQ22536(#17318-31-9;Calbiochem)を30分間前処理した。細胞を10分間0.1M of HCl with 1%triton × 100 for 10min溶液で溶解させ、溶解液を600Хgの強度で2分間遠心分離させた。前記上澄み液は、直接cAMP ELISAキット(Enzo Life Science)を用いて製造メーカーのプロトコルに従ってcAMP分析に使用した。光学密度は、405nmでVersaMax microplate reader(Molecular Devices)を使って分析した。
【0070】
28.カルシウムイメージング
poly-D-lysineでコーティングされた18mm口径顕微鏡cover glasses(#0111580;Marienfeld)に新しく分離した小膠細胞を位置させ、24時間後に、前記小膠細胞は、superfusion chamberで30分間培養させる。前記チャンバーは、0.22μmでろ過したRinger’s solution(115mM NaCl,2.5mM KCl,1mM CaCl2,1.5mM MgCl2,4.5mM HEPES,pH7.4)中に4μM of Fura-2/AM(Ca2+-sensitive fluorescent dye;#F1221;Thermo Fisher Scientific)が一緒にあるものである。前記カルシウム染色培養後に、チャンバーは、反転した顕微鏡に位置させ、3-PF処理前にRinger’s solutionで20分間洗浄した。この際、前記溶液のflow rateは、12ml/minである。次に、初代小膠細胞に300μM ATP(#A2383;Sigma Aldrich)を5秒間処理させた。その後、5分間洗浄後、100μM濃度の2-ペンチルフラン溶液で5秒間初代小膠細胞を処理した。この段階は、2つの濃度(300および1000μM)の2-ペンチルフラン溶液で進行された。最後に、300μM ATP溶液を5秒間処理する。放出された蛍光物質は、2秒ごとにCCDカメラを用いて撮影された。Pseudo-color imagesは、fractional fluorescence changes(ΔF/F、Δ[Ca2+]i)を用いて変換された。また、このイメージは、細胞内部のカルシウムイオンの変化を示す。撮影されたイメージの色強度は、最大1.5±0.1AU(arbitrary linear units)および最小0.4±0.1AUに設定された。代表的は、カルシウムイオンピークは、160個の細胞を分析した後に選択された。
【0071】
29.Chemicalsおよびinhibitors
本実験で使用された化学物質は、Sigma-Aldrichから購入した。購入したすべての化合物は、次の通りである:Acetic acid(#695092)、acetone(#W332607)、2-aminoacetophenone(#W390607)、dimethyl sulfide(#471577)、ethanol(#E7023)、hexanal(#115606)、hydrogen sulfide(#742546)、indole(#W259306)、isopentanol(#320021)、2-pentylfuran(#W331708)、trimethylamine(#W324108)、furan(#185922)、2-methylfuran(#M46846)、2,3-dimethylfuran(#428469)、2-ethylfuran(#W367303)、2-propylfuran(#P1488;東京化成工業株式会社try,TCI)、2-butylfuran(#CDS001204)、2-t-butylfuran(#386278)、2-hexylfuran(#H26698;Alfa Aesar)、およびDMSOに希釈された2-heptylfuran(#A10604;AlfaAesar)(#D2650;Sigma Aldrich)。DMSOに希釈されたATP(#A2383;Sigma Aldrich)。DMSOに希釈されたadenylyl cyclase、PKA、ERK、G、およびPLC経路の抑制剤、次の濃度による抑制剤:pd98059 50μM(#PHZ1164;Thermo Fisher Scientific)、300μM SQ22536(#568500;Calbiochem)、5μM U73122(#662035;Calbiochem)、10μM H-89(#tlrl-h89;InvivoGen)、および10μM Gallein(#371709;Calbiochem.また、それぞれの抑制剤は、実験1時間前に前処理された。
【0072】
30.統計的分析法
本実験ですべてのデータは、平均±SEMで表示された。統計的有意性は、測定を繰り返したり、the GraphPad Prism 5 Software package(GraphPad Software Inc.)を用いてrespective control valuesをunpaired Student’s t-test方法で測定した。
【0073】
実施例1.S.pneumoniaeによる代謝物の小膠細胞の活性化有無の確認
病的行動は、過多サイトカインの分泌により誘発される症状の一つであることが知られている(Dantzer et al.,2008)。本実験では、マウスの腹腔内にS.pneumoniae培養液を注射後にマウスの移動性を測定して、病的行動の誘導可否と反応を確認した。マウスに現れる反応中の摂取の変化、体重の変化、体重や体温などの変化は、即刻反応に該当した。実験者らは、マウスの移動性変化量に集中した(Dantzer et al.,2008)。腹腔内注射後にマウスの移動性が大幅に(P<0.01)減少することを確認し、このような変化は、注射量にも有意的な依存性があった(
図1参照)。これとは対照的に、対照群を腹腔内に投入したマウスの場合、症状の訴えがないことを観察できた。このような症状の訴え、病的行動は、免疫系の過多サイトカイン分泌によるものであって(Konsman et al.,2002)、実際マウスのサイトカイン分泌の有無を確認するために、大脳皮質におけるサイトカインmRNAレベルを測定して比較した。この際、分析方法としては、quantitative real-time polymerase chain reaction(qPT-PCR)を利用した。実験群において腹腔内注射は、大脳皮質における炎症性、そして非炎症性サイトカインの分泌を対照群と比較したとき、全部有意的に(P<1.0×10
-3)増加したことを確認できた(
図2参照)。感染後の小膠細胞と星状細胞は、それぞれ全部proとantiサイトカインを分泌することが知られており(Norden et al.,2016)、本発明者らは、小膠細胞と星状細胞を腹腔内に注射した場合、2つのうちいずれかの場合において優先的にサイトカイン分泌が上昇するかを調査した。結果的に、5個のサイトカインのmRNAの分泌の有意的な(P<1.0×10
-3)上昇が小膠細胞において確認された。Tnf、Il6、Il1b、Il10、Il13サイトカインがそれであり、これらは、全部小膠細胞の注入時に上昇したが、星状細胞の注入によってはそうでなかった(
図3参照)。またTnf、Il6、Il1bの増加は、また、用量依存的であることを確認できた(
図4参照)。
【0074】
しかも、小膠細胞の活性化時に既存の分裂した形態からアメーバ形態に形態学的変化をもたらし、同時に段階の数とそれぞれの長さも増加させることが知られている(Kreutzberg、1996)。本発明者らは、上記のような形態学的変化を確認するために、対照群とmicroglia-specific tagged GFPを用いてCX3CR1
GFP/+miceにおけるGFPの強度を比較した。その結果、GFPの強度は、対照群と比較したとき、小膠細胞が腹腔内注射された群において有意的に(P<1.0×10
-3)高いことを確認できた。これは、2-PFの注入により小膠細胞の活性化が起こり、このような活性化によって小膠細胞の数と長さが増加することを意味する(
図5参照)。しかも、時間が経過するほど小膠細胞が活性化し、形状が変化することを確認できる。これは、既存の分裂した形態からアメーバ形態への変化である。また、対照群に比べてSupを注入した実験群の小膠細胞のGFP強度が有意的に(P<1.0×10
-3)高いことが分かった。したがって、2-pentylfuran注入後に小膠細胞の活性化が起こり、形態学的変化も起こるという結論に至ることになる(
図6~
図8参照)。
【0075】
結果的に、S.pneumoniaeに由来する小分子がサイトカインの分泌を増加させ、食作用も増加させ(
図9~
図10参照)、小膠細胞の形態学的変化をもたらす小膠細胞の活性化を誘発することが確認された。
【0076】
実施例2.2-pentylfuranの小膠細胞Olfr110との相互作用の有無の確認
本発明者は、S.pneumoniaeから放出された代謝物が嗅覚受容体に結合して小膠細胞の活性化を誘導できるという仮設をたてた。1次的に嗅覚受容体候補を決定するために、初代小膠細胞のmRNA sequencing分析を施行した。これによって発見された13個の嗅覚受容体は、Olfr111、Olfr110、Olfr482、Olfr99、Olfr132、Olfr115、Olfr77、Olfr543、Olfr461、Olfr455、Olfr1420、Olfr1417、およびOlfr57であり、このうち、Olfr111/110が最も多く発現することを確認できた(
図11参照)。また、遺伝子表現型データベース(GSE52564;(Zhang et al.,2014)を用いて小膠細胞で発現する7種類の嗅覚受容体を追加で発見した(Olfr110、Olfr111、Olfr99、Olfr1029、Olfr433、Olfr222、およびOlfr920)。このような7個の嗅覚受容体は、Olfr111/110を含み、他の細胞と比較すると、小膠細胞において特に発現するものである。このような過程を統合して合計17個の候補受容体を算出した。
【0077】
また、病原菌と関連したパターンを認知する多くの受容体は、効果的免疫反応のために病原菌感染により誘導されることがある(Wornle et al.,2006)。したがって、本発明者らは、まず、qRT-PCRを用いてSup処理後に17個の嗅覚受容体候補が初代小膠細胞から誘導されたか否かを調査した。結果的に、Supの処理がOlfr110/111を最も多く増加させ、後にOlfr920、Olfr1417、Olfr99が続くことを確認できた(
図12参照)。次に、この5個の候補嗅覚受容体がSupの揮発性分子と反応するかを調査した。
【0078】
小膠細胞のmRNA-sequencing analysisを通じて、S.pneumoniaeに由来する11個の揮発性代謝物を選別した(Olfr111、Olfr110、Olfr482、Olfr99、Olfr132、Olfr115、Olfr77、Olfr543、Olfr461、Olfr455、Olfr1420、Olfr1417、およびOlfr57)。このような11個の代謝物を用いて候補嗅覚受容体を瞬間的に感染させた後、活性化することを確認した後に、Hana3A細胞とともにルシフェラーゼ分析(ZhuangおよびMatsunami、2008)を使って反応性を確認した。11個の代謝物のうち、特に2-PFに強い反応性を示すことを確認できた。残りの3つの受容体は、エタノールにも高い反応性を示したが、MOCKにも反応したことから見て、これは、非特異的反応と見える。したがって、このような結果は、Olfr110/111が2-pentylfuranに対する選択的リガンドとして作用できることを意味する(
図13参照)。
【0079】
2-PF-ORを追加評価するために、分子的に受容体を分析した。より具体的に、ルシフェラーゼ分析法を使って2-PFをOlfr110/111で処理した後に反応性を比較した。このようなアナログには、2-PF、2-butylfuran、2-t-butylfuran、2-hexylfuran、および2-propylfuranの5個のフランが含まれていた。5個のフランは、Olfr110/111に対して全部反応性を示した(
図14~
図16参照)。特に、これらのうち2-PFが最も大きい反応性を示し、特にOlfr110と最も強い反応性を示した(データ不図示)。Olfr110の相同性モデリングとOlfr110と2-PF間のドッキング分析方法を用いて2-PFに結合するOlfr110の重要残基を調査した。Olfr110のアミノ酸を予測したドッキング分析は、2-PFと膜貫通領域3のF102、F104と膜貫通領域6のY252とY259のような疎水性相互作用に重要である(
図17参照)。その中でも、MOR256-3による嗅覚的認識にF104、Y252が特に重要であることが分かった。ルシフェラーゼ分析により予測された4つの残基(F102、F104、Y252およびY259)のうち一つ、あるいは多重の位置指定突然変異誘発方法を用いて分析を進めた。その結果、F104W突然変異の場合、ルシフェラーゼ活性を完全に喪失したが、これは、F104が2-PFとOlfr110間の相互作用で最も重要な役割を行っていることを示す(
図18参照)。2-PFを処理してから、細胞走化性分析を通じてOlfr110/111処理した細胞が濃度に比例して移動が増加することが分かった。このようなデータは、前記2-PFとOlfr110間の相互作用が細胞移動を増加させるなど、細胞機能を変化させることができることを示す(
図19参照)。
【0080】
実施例3.2-pentylfuranによる小膠細胞の活性化の確認
3.1.2-PFによる小膠細胞の活性化有無の確認
次に、liquid-chromatography-tandemmass-spectrometry(LC-MS/MS)分析を用いてSupに2-PFが存在するかを確認した。liquid-chromatography-tandemmass-spectrometry(LC-MS/MS)を使って2-PFに関するデータを得た後、質量電荷比を用いて2-PFイオン前駆体を確認した(m/z=153.091)。結果的に、前駆体イオンは、Sup中では確認されたが、対照群では確認されなかった(
図20参照)。また、合成2-PFのSupにおいて同じMSスペクトルを有することを確認した(
図21参照)。F102で処理した場合と、F104で処理した場合、2-PF前駆体イオンの強度を比較した結果、F104を処理した場合、F102を処理した場合よりさらに強度が増加したこと(56.0倍)を確認できた(
図22参照)。このような結果は、Supに2-PFが具体的に存在することを意味する。また、Supにおいて2-PFが小膠細胞の活性化を誘発するかを調査するために、2-PFを100、300、500μMで処理し、1次的に小膠細胞を処理した。結果的に、小膠細胞の濃度勾配に比例して有意的に(P<1.0×10
-3)細胞走化性(
図23参照)、活性酸素分泌(
図24参照)、食作用(
図25参照)が増加することを確認できた。
【0081】
次に、実験マウスの脳で2-PFにより誘導された代謝物に対する実験を進めた。小膠細胞においてOlfr110が発現することを調査し、抗体を利用するウェスタンブロットを用いてOlfr110が小膠細胞において特異的に発現するが、嗅覚組織や星状細胞ではそうではないという点を確認した(
図26参照)。
【0082】
免疫染色法(immunostaining)は、Olfr110で強い発現を確認するが、GFAP陽性の星状細胞(GFAP-positive astrocytes)や大脳皮質のNeuN陽性ニューロン(NeuN-positive neurons in the cerebral cortex)、CX3CR1
GFP/+miceのGFP陽性の小膠細胞(GFP(+)microglia of CX3CR1
GFP/+mice)ではそうではなかった(
図28参照)。大脳皮質と海馬、視床下部、黒色質のような多様な大脳部分では、Iba-1-positive microglia中の特定のOlfr110表現が観察される(データ不図示)。Sup処理がOlfr110のmRNA発現レベルを誘導し(
図21参照)、Olfr110のタンパク質レベルを増加させたことを示した(
図29参照、top image)。興味深くにも、2-PFは、有意的に(P<1.0×10
-3)Olfr110のレベルを増加させた(
図29参照、bottom image)。2-PFの注入により誘発された病的行動は、濃度に比例してマウスの移動性が減少する様相を示した(
図30参照)。2-PFの注入は、また、炎症性サイトカインの発現レベルを有意的に(P<0.05)増加させた(Tnf、Il6、Il1b、およびIl10)(Figure 3L)。また、2-PF treated CX3CR1
GFP/+miceのGFP発現強度も、非常に増加させた(
図32参照)。このような結果は、2-PFにより誘導された小膠細胞の形態学的変化が小膠細胞の活性化につながることができることを意味する。また、2-PFがCX3CR1
GFP/+マウスの脳切片において2-PF培養後に小膠細胞の体外食作用を変化させることができるか否かを調査した。Time-lapse confocal microscopy imagingを通じて小膠細胞の容量、突出程度、食細胞作用の活性程度が増加することが分かった(
図33参照;マクロファージが顕著に(P<1.0×10
-3)増加するほど、食作用(
図22参照)も増加することを見ることができた。総合してみると、このようなデータは、2-PFが脳で小膠細胞を活性化させるという結論に到達する。
【0083】
3.2.病的行動の増加実験
小膠細胞の活性化による病的行動の増加は、分泌されるサイトカインの増加に起因することが知られている。サイトカインの増加とともに病的行動の増加を確認するために本実験が進行された。病的行動の評価は、前記マウスにSupまたは2-PFのIPの注入後に行われた。
【0084】
IPの注入後に、四面が開放された空間(40×40×40cm、white field,black wall)にマウスを位置させ、30分間カメラを使ってマウスの位置を記録した後、移動距離を計算した。その後、EthoVision XT(Noldus,Netherlands)を用いてpseudo-color heat mapで作成した。
【0085】
3.3.Ex vivoにおける食作用の増加実験
本実験では、小膠細胞の食作用を調べるために、9週齢の雄CX3CR1GFP/+マウスの脳をvibratome(Leica VT1200)を用いて厚さ150μmに切り出した後、氷冷された人工脳脊髄液(aCSF:120mM NaCl,25mM NaHCO3,1.25mM NaH2PO4,5mM KCl,1mM CaCl2,1mM MgSO4,305mOsm glucose,pH7.4)に保管した。その後、スライスされた脳を細胞破片の除去のために培養させた。酸素処理されたaCSFを37℃で2時間の間perfusion chamberで前処理した。引き続いて、培養前に9.10×107 microspheres(360/407mm;#17458;Polysciences)を含む500μlのaCSFとともに培養し、オーダーメード型ナイロングリッドで覆った。共焦点顕微鏡を使って92分間1分間隔でTime lapse動画を撮影した。食細胞作用をする小膠細胞の数をイメージから計算した。
【0086】
実施例4.Olfr110の2-PFによる小膠細胞の活性化調節の可否
本発明者らは、2-PFにより誘導される小膠細胞の活性化がOlfr110により仲介されるかを実験した。実験で、Olfr110に対する特定siRNAとsiRNAを回復させるOlfr110の特異的突然変異ベクター構造を設計した。4つのsiRNA候補のうち3番がHana3A細胞においてOlfr110のmRNAとタンパク質レベルを効果的に減少させることができた。形質感染後、初代小膠細胞においてmRNAとタンパク質の減少を観察できたが、構造ベクターは、siRNAにより誘発されたmRNAとタンパク質の減少を回復させた。このsiRNAと構造ベクターを用いて、Olfr110が2-PF誘発性小膠細胞の活性化に及ぼす影響を確認できた。第一に、Olfr110の無力化は、2-PFにより誘導された初代小膠細胞の炎症性サイトカインmRNAレベルの増加を減少させ、反対に、構造ベクターは、このような無力化による効果を回復させた。また、mRNAだけでなく、タンパク質レベルでも同様の効果を観察できた。2-PFにより誘導されて増加した活性酸素は、siRNAにより減少し、構造ベクターによりさらに回復された。しかしながら、P2Y受容体により仲介される活性酸素の増加は、構造ベクターの存在により影響を受けなかった。Olfr110 knockdownおよびrescue effects後、食作用と細胞走化性においても2-PFによる同様の現象を観察できた。
【0087】
次に、本発明者らは、Olfr110 knockdownおよびrescue効果がマウスの脳で発生したかを調査した。より具体的に、CX3CR1
GFP/+マウスの大脳皮質にnon-targeting siRNA+Mock+siGLO(Ctrlの場合)、Olfr110 siRNA+Mock+siGLO(siOlfr110)、およびOlfr110 siRNA+rescue vector+siGLO(Rescueの場合)のような組み合わせをstereotactic注入した(Takayama et al.,2016)。注入後、マウスの脳スライスで感染した小膠細胞(黄色)と感染しない小膠細胞(緑色)および感染した非小膠細胞(赤色)を比較して観察した(
図39参照)。スライスされた脳の切片で蛍光部分をmicrodissectした後に、qRT-PCRを用いてOlfr110の発現レベルを測定した。結果的に、siOlfr110の注射後に、当該嗅覚受容体の有意的な(P<1.0×10
-3)減少を発見し、同時に陰性対照群であるOlfr920の場合に、このような変化がないことを観察できた。実験者らは、CX3CR1
GFP/+マウスの大脳皮質においても同様のknockdownおよびrescue効果を観察できた。総合してみると、in vitroとex vivoの両方でOlfr110は、2-PFにより誘導された小膠細胞の活性化(サイトカイン分泌、活性酸素の分泌、細胞毒性、食作用)を調節できるという結論が出る。
【0088】
実施例5.2-PFにより誘導されるOlfr110依存的小膠細胞活性化のG
αs
-s-cAMP-PKAERKおよびG
βγ
-PLC-Ca
2+
pathways経路による調節の可否
Olfr110を通した小膠細胞の活性化を分子的観点で理解するために、本実験では、Supまたは2-PFで処理した初代小膠細胞のmRNA-シーケンス分析を行った。mRNAシーケンシングデータを使ってそれぞれ1124、1438個の表現された遺伝子(DEGs)を確認できた(
図42参照)。このような(DEGs)の有意的部分は(P<0.01)は、253個の遺伝子部分であり、本実験で253個の遺伝子(22.5および17.6% of 1124および1438 DEGs)が2つの実験群の間で共有されることを確認した。253個の共有DEGの中で135および78個の遺伝子が2-PF処理された小膠細胞においてそれぞれ一定にup-regulatedあるいはdown regulatedされる形状を示したが、残りの40個の遺伝子は、そうではなかった(
図43参照)。次に、gene ontology biological processes(GOBPs)分析方法を用いて上と下に重なるこのような重なり遺伝子と関連した調査を行った。up-regulatedされる遺伝子は、小膠細胞活性と関連があった。活性化の具体的な内容は、次の通りである(
図44参照):サイトカイン分泌(サイトカイン生成および分泌)、細胞走化性(血液細胞移動および走化性)、活性酸素生成(活性酸素および活性酸素代謝過程に対する細胞反応)および食作用である。このようなデータは、Supと2-PF処理した実験群の両方が小膠細胞の活性化を調節する遺伝子をup-regulatedすることによって活性化を誘導する反面、down-regulated遺伝子は転写を調節することを意味する(データ不図示)。結果的に、Olfr110に対する2-PFの結合が小膠細胞活性化に関与し、これによって、up-regulatedを誘導するシグナル伝達経路が活性化されるという事実を確認できた。このようなシグナル伝達システムを理解するために、サイトカイン生成、走化性、活性酸素生成および食作用に関連したシグナル伝達システムの相互作用を説明するネットワークモデルを再構成する必要があった(データ不図示)。新しく確立されたモデルは、cAMP、MAPK、PI3K、PLC、およびCa
2+のシグナル伝達経路が小膠細胞の活性化に関与する遺伝子をup-regulatedすることを確認し、これは、以前の研究結果と一致した(VerderioおよびMatteoli、2001)。
【0089】
次に、確立されたネットワークモデルを用いて2-PFの効果に対して実験した。cAMPシグナル伝達経路の場合、2-PF処理後、初代小膠細胞においてcAMP濃度を測定した。結果的に、adenylyl cyclase抑制剤により処理されたcAMPの場合、2-PF処理により小膠細胞の活性化が増加したことが確認され、これは、濃度依存的であった(
図45参照)。Olfr110のsiRNAを利用すると、2-PFにより誘導されるcAMPの生産を減少させることができ、構造ベクターを注入する場合、反対の効果を得ることができた(
図46参照)。カルシウムシグナル経路の場合、2-PF処理後にカルシウムイメージングを行った。結果的に、細胞内のカルシウムイオンの濃度が注入量につれて増加することを確認できた(
図47参照)。MAPKおよびPI3Kシグナル伝達経路に対して、ERK、p38、JNK、およびAktのリン酸化レベルを測定し、処理後にリン酸化レベルが2分から増加し、20分で中止されることを確認できた。次に、このようなシグナル伝達経路の抑制剤を用いて小膠細胞の活性化に対する相対的寄与度を調査した。adenylyl cyclase(SQ22536)、PKA(H-89)、ERK(pd98059)、あるいはPLC抑制剤(U73122)で前処理した後に、2-PFタンパク質を処理し、TnfおよびIl6 cytokineの濃度を測定した。結果的に、SQ22536あるいはH-89によっては大きい減少を、pd98059あるいはU73122によっては相対的に小さい減少を示すことを確認できた(
図49参照)。特にU73122は、ROSの生成を完全に(P<1.0×10
-3)抑制した(
図50参照)。活性酸素生成がG
αss-cAMP-PKAERKおよびG
βγ-PLC-Ca
2+経路の抑制剤であるgalleinにより同様に抑制されることを確認できた(Bonacci et al.,2006;Ukhanov et al.,2011)。すべての阻害剤は、食作用を顕著に減少(P<0.05)させ、ほぼ完全に(P<1.0×10
-3)細胞走化性を減少させた。CREBおよびERKのリン酸化は、SQ22536およびpd98059により大きく減少した(
図53参照)。本研究は、G
αs-cAMP-PKA-ERK経路がサイトカインの生産、細胞毒性、および食作用を調節する反面、G
βγ-PLC-Ca
2+経路は、ROS生成を調節することを示す。
【0090】
実施例6.2-PFの競合的抑制剤の選別
以前の研究により嗅覚受容体の場合、活性剤と抑制剤が構造的に関連があるという報告があった。これを基に本発明者らは、2-PFと誘導体のうちでOlfr110とOlfr1111と結合しない誘導体(2-メチルフラン、2,3-ジメチルフラン、2-エチルフラン、2-ヘキシルフラン、または2-ヘプチルフラン)を同時に処理して、2-PFの活性を減少させる2-エチルフラン(2-ethylfuran、2-EF)を選別した。Hana3A細胞にOlfr110をtransfectionした後、2-PFを300μMで固定し、2-EFを1μM~10mMまでそれぞれ異なる濃度で2-PFとともに処理して競合的活性を測定し、2-EFの濃度が増加するほど2-PFの活性が減少することを確認した(K
d=120μM)。結果的に、Olfr110のagonistである2-PFが誘導させた活性酸素は、その競合的抑制剤(competitive inhibitor,antagonist)の2-EFにより減少する(
図54参照)。競合的抑制剤として選別された2-EFの小膠細胞活性を確認するために、初代小膠細胞に2-EFの濃度を0、100、300、および500μMで前処理し、100 MOIのSupを処理し、活性酸素の生成量を測定した。結果的に、100のMOIにより生成された活性酸素は、2-EFの濃度が増加するほど、生成された活性酸素の量が少なくなることを観察できた(
図55の左側を参照)。次に、Supに5のMOIを処理し、同時に2-PFを500μM処理後、2-エチルフランの濃度を0、100、300、および500μMで同時に処理した。その後、活性酸素の濃度を測定した。その結果、MOI5により活性酸素が生成され、また、500μMの2-PFにより活性酸素の生成がさらに増加した(
図55の右側を参照)。しかしながら、添加された2-EFの濃度が高いほど、生成された活性酸素の濃度が低いことを確認できた。これは、活性酸素が経済的抑制剤である2-EFにより抑制された結果を得たことを意味する。
【0091】
前述した本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で容易に変形が可能であることを理解できる。したがって、以上で記述した実施例は、すべての面において例示的なものであり、限定的でないものと理解しなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明によれば、2-Pentylfuranが小膠細胞を活性化させ、これによって、前記細胞による食作用が増加することを確認したところ、これから2-Pentylfuranまたはその溶媒和物、立体異性体または薬学的に許容可能な塩は、上記のような結果から退行性脳疾患を誘発する物質を除去する効果により退行性脳疾患を予防または治療できるところ、退行性脳疾患の治療剤開発分野において既存の治療剤を代替できる有効物質として有用に用いられる。