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特許7315739充放電器制御装置および充放電器制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】充放電器制御装置および充放電器制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/34 20060101AFI20230719BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230719BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20230719BHJP
   H02J 9/04 20060101ALI20230719BHJP
   H02J 7/14 20060101ALI20230719BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
H02J7/34 J
H02J7/34 B
H02J7/00 302C
H02J3/32
H02J9/04
H02J7/34 G
H02J7/00 P
H02J7/14 H
H02J3/38 180
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022031543
(22)【出願日】2022-03-02
【審査請求日】2022-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000242644
【氏名又は名称】北陸電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002712
【氏名又は名称】弁理士法人みなみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井波 光貴
(72)【発明者】
【氏名】古木 庸介
(72)【発明者】
【氏名】田辺 大太郎
(72)【発明者】
【氏名】堀田 剛
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-212659(JP,A)
【文献】特開2018-182925(JP,A)
【文献】特開2022-184645(JP,A)
【文献】特開2021-78266(JP,A)
【文献】特開2023-31736(JP,A)
【文献】特開2016-214003(JP,A)
【文献】特表2007-535282(JP,A)
【文献】特開2015-92798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/34
H02J 3/32
H02J 9/04
H02J 7/00
H02J 7/14
H02J 3/38
H02J 7/35
B60L 55/00
B60L 53/53
B60L 53/30
B60L 53/67
B60L 50/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源と負荷とを接続する幹線に対して並列的に接続される複数の充放電器に接続されるものであって前記の各充放電器を制御する制御部を備え、
前記充放電器は、蓄電装置を接続可能であり、前記蓄電装置へ充電するかまたは前記蓄電装置から放電させるものであって、前記幹線側から電力供給を受ける通常運転と、接続された前記蓄電装置から電力供給を受ける自立運転との何れかの運転が可能なものであり、
前記制御部は、停電時において自立運転で起動された一の前記充放電器をマスターとするマスター判定手段と、
前記マスター以外の前記充放電器を補機として通常運転で起動させる補機起動手段と、
前記負荷の使用電力が多いほど放電させる前記補機の数が多くなるように放電させる前記補機の数を設定する放電補機数設定手段と、
を有するものであることを特徴とする充放電器制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記マスターに接続された前記蓄電装置の放電可能残容量が所定値以下である場合に放電させる前記補機の数を追加する補機追加手段を有するものであることを特徴とする請求項1記載の充放電器制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記マスターに接続された前記蓄電装置の放電可能残容量が少ないほど前記補機の放電電力が大きくなるように前記補機の放電電力を決定する補機放電値決定手段を有するものであることを特徴とする請求項1または2記載の充放電器制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、接続された前記蓄電装置の放電可能残容量が多い前記補機から優先して放電されるように前記補機に順位を設定する補機順位設定手段を有するものであることを特徴とする請求項1、2または3記載の充放電器制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記蓄電装置を取り外す前記補機の選択入力を受け付ける蓄電装置取外判定手段と、前記蓄電装置を取り外すものとして選択された前記補機を停止する取外補機停止手段とを有するものであることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の充放電器制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、優先して放電させる前記補機の選択入力を受け付ける優先補機判定手段と、優先して放電させるものとして選択された前記補機から優先して放電させる優先放電手段とを有するものであることを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の充放電器制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、負荷として大型機器を使用するか否かの選択入力を受け付ける大型機器使用判定手段と、大型機器を使用することが選択された場合に前記補機の放電値を常に最大値とする補機最大放電手段とを有するものであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載の充放電器制御装置。
【請求項8】
商用電源と負荷とを接続する幹線に対して並列的に接続される複数の充放電器の制御をコンピュータに実行させる充放電器制御プログラムであって、
前記充放電器は、蓄電装置を接続可能であり、前記蓄電装置へ充電するかまたは前記蓄電装置から放電させるものであって、前記幹線側から電力供給を受ける通常運転と、接続された前記蓄電装置から電力供給を受ける自立運転との何れかの運転が可能なものであり、
前記コンピュータを、
停電時において自立運転で起動された一の前記充放電器をマスターとするマスター判定手段と、
前記マスター以外の前記充放電器を補機として通常運転で起動させる補機起動手段と、
前記負荷の使用電力が多いほど放電させる前記補機の数が多くなるように放電させる前記補機の数を設定する放電補機数設定手段と、
として機能させるものであることを特徴とする充放電器制御プログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商用電源の停電時に電気自動車のバッテリなどの蓄電装置を電源として用いるための充放電システムにおいて充放電器を制御するための充放電器制御装置および充放電器制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、商用電源と負荷とを接続する幹線に対して充放電器を介して蓄電装置を接続したものであって、商用電源から蓄電装置への充電や蓄電装置から負荷への放電(給電)を可能にした充放電システムが普及し始めている。蓄電装置として主に想定されるのは電気自動車のバッテリであるが、今日では電気自動車の普及が進んでおり、1つの需要家(家庭や各種施設など)が複数台の電気自動車を所有している場合もある。また、マンションや社宅などの集合住宅において、複数台の電気自動車を共有してカーシェアリングが行われている場合もある。このような場合に導入される充放電システムは、複数の充放電器を有しており、1つのシステムに対して複数台の電気自動車が接続される。また、蓄電装置として、電気自動車のバッテリのほか、据え置き型の蓄電池や可搬式の蓄電池が用いられる場合もあり、1つのシステムに対して電気自動車とそれらの蓄電池が接続されることもある。なお、一般にそれらの蓄電池は、上記の充放電器に相当するAC/DC変換器と電池とが一体となった1つの装置となっている。よって、電気自動車の替わりに蓄電池を接続する場合、「充放電器と電気自動車」が蓄電池に置き換えらえる。以下においては、蓄電池のAC/DC変換器を充放電器とみなし、電池を蓄電装置とみなして、特に言及しない限り、システムに電気自動車が接続された場合と蓄電池が接続された場合の両方を含むものとして説明する。
【0003】
このように複数の充放電器を有し複数の蓄電装置が接続された充放電システムにおいて、通常、各充放電器は幹線側(商用電源)から電力の供給を受けて通常運転をしているが、停電により商用電源からの電力供給がなくなると、各充放電器が、接続された蓄電装置から電力供給される自立運転を行う。ここで、通常運転であれば、商用電源の周波数や電圧を基準とした制御が行われるが、自立運転の場合、別途充放電器間の周波数や電圧を調整する制御が必要であり、制御方法や機器構成が複雑化してしまうことが問題であった。
【0004】
そこで、本願出願人らは、特許文献1に示す充放電システムを提案している。この充放電システムによれば、停電により商用電源からの電源供給がなくなると、一旦全ての充放電器が停止するが、その後に1台の充放電器について蓄電装置から電力供給を受けて自立運転させれば、その他の充放電器は通電を検知するので、通常運転させることができる(その他の充放電器にとっては、商用電源から電力供給を受ける場合と同様に電力供給を受ける)。1台の充放電器のみが自立運転となり、残りの充放電器は通常運転となるので、システムのユーザによる充放電器間の周波数や電圧の制御は必要なく、また別途の電源などの機器も不要であり、複雑な制御や構成を要しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2021-78266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この特許文献1の充放電システムにおいて、停電時には、主として自立運転させた充放電器(マスターとよぶ)に接続された蓄電装置から負荷へ電力が供給される。他の通常運転する充放電器(補機とよぶ)に接続された蓄電装置は、それを補うものである。すなわち、マスターに接続された蓄電装置の放電量が足りない場合に、補機に接続された蓄電装置から、不足分を負荷へ供給したり、マスターに接続された蓄電装置に充電したりする。この前提の下で、停電時に負荷への電力供給を継続するには、マスターに接続された蓄電装置が、放電電力や残容量などについて健全な状態を維持する必要がある。従来の充放電システムにおいては、手動でそのような状態を維持するように運用することは可能であったが、知識や経験のないこのシステムのユーザが、停電時という特殊な状況において、そのような運用を行うことは難しい場合があった。
【0007】
本発明は、このような事情を鑑みたものであり、複数の充放電器を有するものであって停電時にそのうちの1台が自立運転する充放電システムにおいて、ユーザによる複雑な制御を要することなく、自立運転する充放電器に接続された蓄電装置の健全な状態が維持されるように充放電器を制御するための充放電器制御装置および充放電器制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の充放電器制御装置は、商用電源と負荷とを接続する幹線に対して並列的に接続される複数の充放電器に接続されるものであって前記の各充放電器を制御する制御部を備え、前記充放電器は、蓄電装置を接続可能であり、前記蓄電装置へ充電するかまたは前記蓄電装置から放電させるものであって、前記幹線側から電力供給を受ける通常運転と、接続された前記蓄電装置から電力供給を受ける自立運転との何れかの運転が可能なものであり、前記制御部は、停電時において自立運転で起動された一の前記充放電器をマスターとするマスター判定手段と、前記マスター以外の前記充放電器を補機として通常運転で起動させる補機起動手段と、前記負荷の使用電力が多いほど放電させる前記補機の数が多くなるように放電させる前記補機の数を設定する放電補機数設定手段と、を有するものであることを特徴とする。なお、幹線は、商用電源と負荷との間のみに位置するものではなく、商用電源から負荷まで延びて両者を接続し、さらにその先へと延びるものであってもよい。よって、充放電器は、商用電源と負荷との間に位置する幹線に接続されるものであってもよいし、負荷から見て商用電源側とは反対側に位置する幹線に接続されるものであってもよい。また、「充放電器が幹線側から電力供給を受ける」とは、幹線を経由して商用電源から電力供給を受ける場合と、他の充放電器から、商用電源から電力供給を受ける場合と同じ入力部に電力供給を受ける場合の両方を含む。すなわち、充放電器が幹線側から電力供給を受けて通常運転する際には、商用電源から電力供給を受ける場合と、他の充放電器から電力供給を受ける場合がある。
【0009】
また、本発明は、前記制御部が、前記マスターに接続された前記蓄電装置の放電可能残容量が所定値以下である場合に放電させる前記補機の数を追加する補機追加手段を有するものであってもよい。
【0010】
また、本発明は、前記制御部が、前記マスターに接続された前記蓄電装置の放電可能残容量が少ないほど前記補機の放電電力が大きくなるように前記補機の放電電力を決定する補機放電値決定手段を有するものであってもよい。なお、基準となるマスターの放電可能残容量および決定される補機の放電電力は、段階的に設定されるものであってもよい。
【0011】
また、本発明は、前記制御部が、接続された前記蓄電装置の放電可能残容量が多い前記補機から優先して放電されるように前記補機に順位を設定する補機順位設定手段を有するものであってもよい。
【0012】
また、本発明は、前記制御部が、前記蓄電装置を取り外す前記補機の選択入力を受け付ける蓄電装置取外判定手段と、前記蓄電装置を取り外すものとして選択された前記補機を停止する取外補機停止手段とを有するものであってもよい。
【0013】
また、本発明は、前記制御部が、優先して放電させる前記補機の選択入力を受け付ける優先補機判定手段と、優先して放電させるものとして選択された前記補機から優先して放電させる優先放電手段とを有するものであってもよい。
【0014】
また、本発明は、前記制御部が、負荷として大型機器を使用するか否かの選択入力を受け付ける大型機器使用判定手段と、大型機器を使用することが選択された場合に前記補機の放電値を常に最大値とする補機最大放電手段とを有するものであってもよい。なお、大型機器とは消費電力の大きな機器であるが、具体的に消費電力がどれだけのものを大型機器とするかは、任意に定められる。また、大型機器を使用するか否かの選択入力について、使用する場合と使用しない場合の両方について入力を受け付けるものであってもよいし、一方について入力を受け付け入力がない場合に他方であると判断されるものであってもよい。さらに、補機最大放電手段は、少なくとも1台の補機の放電値を常に最大値とするものである。
【0015】
本発明の充放電器制御プログラムは、商用電源と負荷とを接続する幹線に対して並列的に接続される複数の充放電器の制御をコンピュータに実行させる充放電器制御プログラムであって、前記充放電器は、蓄電装置を接続可能であり、前記蓄電装置へ充電するかまたは前記蓄電装置から放電させるものであって、前記幹線側から電力供給を受ける通常運転と、接続された前記蓄電装置から電力供給を受ける自立運転との何れかの運転が可能なものであり、前記コンピュータを、停電時において自立運転で起動された一の前記充放電器をマスターとするマスター判定手段と、前記マスター以外の前記充放電器を補機として通常運転で起動させる補機起動手段と、前記負荷の使用電力が多いほど放電させる前記補機の数が多くなるように放電させる前記補機の数を設定する放電補機数設定手段と、として機能させるものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の充放電器制御装置によれば、制御部が、負荷の使用電力が多いほど放電させる補機の数が多くなるように放電させる補機の数を設定する放電補機数設定手段を有しているので、負荷の使用電力が多くてもマスターに接続された蓄電装置の放電電力が過大になることが防がれ、マスターに接続された蓄電装置の健全な状態が維持される。一方、負荷の使用電力が少なければ、マスターから優先して放電されるので、マスターに接続された蓄電装置が満充電となることが防がれる。一般に蓄電装置は満充電の状態が維持されると劣化が進むため、これによりマスターに接続された蓄電装置の劣化を抑え、健全な状態が維持される。
【0017】
また、制御部が、マスターに接続された蓄電装置の放電可能残容量が所定値以下である場合に放電させる補機の数を追加する補機追加手段を有するものであれば、補機によりマスターの放電を補い、必要に応じて補機に接続された蓄電装置からマスターに接続された蓄電装置へ充電することもできるので、マスターに接続された蓄電装置の放電可能残容量が少なくなりすぎることを防ぎ、マスターに接続された蓄電装置の健全な状態が維持される。
【0018】
また、制御部が、マスターに接続された蓄電装置の放電可能残容量が少ないほど補機の放電電力が大きくなるように補機の放電電力を決定する補機放電値決定手段を有するものであれば、マスターに接続された蓄電装置の放電可能残容量が少なくなりすぎることが防がれ、マスターに接続された蓄電装置の健全な状態が維持される。
【0019】
また、制御部が、放電可能残容量が多い補機から優先して放電されるように補機に順位を設定する補機順位設定手段を有するものであれば、ユーザの操作を要することなく、負荷へ安定して給電することができる。
【0020】
また、制御部が、蓄電装置を取り外す補機の選択入力を受け付ける蓄電装置取外判定手段と、蓄電装置を取り外すものとして選択された補機を停止する取外補機停止手段とを有するものであれば、ユーザの事情に応じた運用が可能となる。たとえば、蓄電装置が電気自動車のバッテリである場合に、特定の電気自動車をシステムから取り外して使用することができる。
【0021】
また、制御部が、優先して放電させる補機の選択入力を受け付ける優先補機判定手段と、優先して放電させるものとして選択された補機から優先して放電させる優先放電手段とを有するものであれば、ユーザの事情に応じた運用が可能となる。たとえば、蓄電装置が電気自動車のバッテリである場合に、後から使用予定がある電気自動車を先に負荷への給電のために使用することができる。
【0022】
また、制御部が、負荷として大型機器を使用するか否かの選択入力を受け付ける大型機器使用判定手段と、大型機器を使用することが選択された場合に補機の放電値を常に最大値とする補機最大放電手段とを有するものであれば、ユーザが予め大型機器を使用することを選択しておくことで、使用電力が多い大型機器を安定して稼働させることができる。
【0023】
本発明の充放電器制御プログラムによれば、コンピュータを、負荷の使用電力が多いほど放電させる補機の数が多くなるように放電させる補機の数を設定する放電補機数設定手段として機能させるので、負荷の使用電力が多くてもマスターに接続された蓄電装置の放電電力が過大になることが防がれ、マスターに接続された蓄電装置の健全な状態が維持される。一方、負荷の使用電力が少なければ、マスターから優先して放電されるので、マスターに接続された蓄電装置が満充電となることが防がれる。一般に蓄電装置は満充電の状態が維持されると劣化が進むため、これによりマスターに接続された蓄電装置の劣化を抑え、健全な状態が維持される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】充放電システムの説明図であり、通常時を示す。
図2】充放電器本体の模式図である。
図3】充放電システムの説明図であり、停電時を示す。
図4】制御プログラムのフローチャート(1)である。
図5】制御プログラムのフローチャート(2)である。
図6】制御プログラムのフローチャート(3)である。
図7】制御プログラムのフローチャート(4)である。
図8】制御プログラムのフローチャート(5)である。
図9】制御プログラムのフローチャート(6)である。
図10】制御プログラムのフローチャート(7)である。
図11】制御プログラムのフローチャート(8)である。
図12】制御プログラムのフローチャート(9)である。
図13】制御プログラムのフローチャート(10)である。
図14】制御プログラムのフローチャート(11)である。
図15】制御プログラムのフローチャート(12)である。
図16】端末に表示される画面の例である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の充放電器制御装置を有する充放電システムおよび充放電器制御プログラムの具体的な内容について説明する。この充放電システムは、種々の場所に設置され得るものであるが、ここで示す実施例は、マンションや社宅などの集合住宅において、複数台の電気自動車(EV)を共有してカーシェアリングが行われる場合を想定したものであって、図1に示すように、3台の充放電器2と、本発明の充放電器制御装置の構成要素である制御部6を有しており、蓄電装置としての3台の電気自動車Eに対応するものである。以下において、3台の充放電器2に共通の説明をする際には、3台をまとめて充放電器2とよび、個々の充放電器2について説明をする際には、それぞれ第一充放電器2a、第二充放電器2b、第三充放電器2cとよぶ(図中ではそれぞれPS1、PS2、PS3と表記する場合がある)。また、第一充放電器2a、第二充放電器2b、第三充放電器2cのそれぞれの構成要素の符号にも、a,b,cを付すものとする。
【0026】
まず、この充放電システムの構成について説明する。図1に示すように、この充放電システムは、商用電源Pと集合住宅内の負荷Lとを接続する幹線1に対して並列的に接続される3台の充放電器2(第一充放電器2a、第二充放電器2b、第三充放電器2c)と、各充放電器2に接続された制御部6と、を備える。幹線1において、商用電源P側が上流側、負荷L側が下流側となる。幹線1の最上流側には、スマートメータ101が取り付けられており、スマートメータ101の下流側に、主開閉器102が取り付けられている。そして、幹線1の、主開閉器102の下流側から、接続線3が分岐している。接続線3の中間部には、接続線遮断器104が取り付けられており、接続線3の先に、3台の充放電器2が取り付けられている。さらに、幹線1の、接続線3の接続部よりも下流側に、漏電遮断器103が取り付けられている。そして、漏電遮断器103の下流側に、負荷Lが取り付けられている。なお、この構成は一例であり、たとえば幹線1が負荷Lよりもさらに下流側へと延びるものであって、充放電器2が幹線1の負荷Lよりも下流側に接続されるものであってもよい。
【0027】
3台の充放電器2(第一充放電器2a、第二充放電器2b、第三充放電器2c)は、何れも同じ構成であるので、ここではまとめて説明する。なお、この実施例において、1台の充放電器2の充放電電力は最大で5.9kWであり、システム全体としての負荷Lへの供給可能電力は、理論上は最大で17.7kWとなる。充放電器2は、充放電器本体21と、接続線3と充放電器本体21とを接続する分岐線4と、分岐線4の中間部分に取り付けられた分岐線遮断器5と、充放電器2の通常運転と自立運転とを切り替える切替手段8と、を有するものである。
【0028】
充放電器本体21は、市販品であって、電気自動車Eの駐車場の傍に設置されている。図2に示すように、充放電器本体21は、箱形の筐体210を有しており、筐体210の内部に、AC/DCコンバータを有する変換部215と、変換部215に接続された個別制御部216を有している。また、筐体210の外側部分に、充放電ケーブル211と、通常運転用入出力部212および自立運転用入出力部213と、操作ボタン217(充電ボタン、放電ボタンおよび停止ボタンや、後述のコネクタ214を施解錠するためのボタンなど)が設けられている。その他、各種の値などを表示するための表示部(液晶パネルなどからなるもの)などを備えていてもよい。充放電ケーブル211は、充放電のための電流が流れる電力線211aと、充放電器2と電気自動車Eが通信するための通信線211bからなり、筐体210の外側の一端にコネクタ214が取り付けられていて、このコネクタ214を電気自動車Eの充放電口に差し込んで接続できる。コネクタ214は、電気自動車Eに接続された状態で、操作ボタン217により、取り外し不可能となる施錠状態と、取り外し可能となる解錠状態とに切り替えられる。充放電ケーブル211の他端は、筐体210の内部に延びており、電力線211aは変換部215に接続されており、通信線211bは個別制御部216に接続されている。通常運転用入出力部212および自立運転用入出力部213は、筐体210の外側に露出するように設けられた端子であり、筐体210の内部において変換部215に接続されている。操作ボタン217は、筐体210の上部に設けられており、個別制御部216に接続されている。この充放電器本体21を介して、幹線1側から電気自動車Eのバッテリへ充電し、また電気自動車Eのバッテリから幹線1側へ放電することができる。なお、以下において、電気自動車Eのバッテリへ充電する、または電気自動車Eのバッテリから放電することを、単に電気自動車Eへ充電する、または電気自動車Eから放電するともいう。そして、この充放電器本体21は、幹線1側から電力供給される通常運転と、電気自動車Eから電力供給される自立運転が可能である。
【0029】
充放電器本体21の変換部215は、商用電源Pから供給される交流電力を直流化して電気自動車Eに供給し、また逆に電気自動車Eから供給される直流電力を交流化して負荷Lに供給するためのものである。個別制御部216は、操作ボタン217による入力や、制御部6からの指令(信号)に基づき、変換部215の動作を制御する。通常運転時において、電気自動車Eから負荷Lへ電力を供給する際には、商用電源Pの周波数や電圧を基準として、変換部215の出力を制御する。また、電気自動車Eからの放電について、通常運転の場合、変換部215から通常運転用入出力部212へ出力され、自立運転の場合、変換部215から自立運転用入出力部213へ出力される。
【0030】
切替手段8は、通常運転用入出力部212と自立運転用入出力部213とを切替可能な切替スイッチからなるものである。そして、分岐線4は、接続線3と切替手段8とを接続するものであり、接続線3の端部に3本の分岐線4が接続されるかたちとなっている。
【0031】
そして、本発明の充放電器制御装置は、制御部6からなるものであって、制御部6は、3台の充放電器2の全体を制御するためのものである。この制御部6は、本発明の充放電器制御プログラム(以下、単に制御プログラムともいう)が実行されるパーソナルコンピュータやPLCなどのハードウェア(コンピュータ)からなり、プログラムの命令を順番に実行するCPUや、プログラムやプログラムの実行に必要なデータおよび処理結果などを保存しておく記憶装置を構成要素とするものであって、制御プログラムがハードウェアを制御部6として機能させるともいえる(クラウド上のサーバにおいてプログラムが実行される場合も含む)。制御部6は、各充放電器本体21の個別制御部216と接続されている。また、制御部6は、ユーザが所有するパソコンやタブレットなどの端末7と接続されており、ユーザが端末7からこの充放電システムを操作できる。なお、制御部6と、個別制御部216または端末7との接続は、有線であるか無線であるかを問わず、またインターネットやLANなどのネットワークによるものなど、どのような接続方式によるものであってもよく、その接続方式に応じて、適宜必要な通信機器(図示省略)を介するものである。
【0032】
なお、主開閉器102、接続線遮断器104および3つの分岐線遮断器5は、開閉器盤400に納まっている。また、漏電遮断器103は、宅内の分電盤500に納まっている。なお、この構成は一例であり、主開閉器102、接続線遮断器104および3つの分岐線遮断器5に加えて3つの切替手段8も開閉器盤400に納まっているものや、3つの切替手段8が開閉器盤400とは別の盤に納まっているものなど、設置箇所の状況に応じて適宜変更できるものである。
【0033】
続いて、このように構成された本発明の充放電器制御装置を有する充放電システムの動作について示す。なお、各図において、配線のうち太線で描かれている部分は、電流が流れていることを表す。まず、通常時、すなわち商用電源Pから電力供給されている状態について説明する。この場合、図1に示すように、各充放電器2の切替手段8において通常運転用入出力部212が選択されている。そして、各充放電器2の充放電器本体21は、幹線1側(商用電源P)から電力供給される通常運転をしている。
【0034】
この状態では、商用電源Pから充放電器2を介して電気自動車Eへ充電することが可能であり、逆に電気自動車Eから充放電器2を介して幹線1側へ放電して負荷Lに電力供給することもできる。また、一または複数の電気自動車Eから他の電気自動車Eへ給電することもできる。なお、充放電器2は、電気自動車Eへの充電する際、この充放電システムが設置された集合住宅の契約電力を超えないように、自動的に充電量を調整するものである。
【0035】
次に、非常時、すなわち商用電源Pからの電力供給がなくなる停電状態について説明する。停電状態においては、充放電器2に対する電力供給が停止されるので、全ての充放電器2が電源を失い停止する。そこで、図3に示すように、ユーザが、主開閉器102を切にしたうえで、1台の充放電器2(ここでは第一充放電器2aとする)の切替手段8aを通常運転用入出力部212a側から自立運転用入出力部213a側へ切り替え、接続された電気自動車Eから電力の供給を受けて、第一充放電器2aを自立運転させる。これにより、幹線1側へ電力が供給され、負荷Lに電力が供給されるとともに、第二充放電器2bおよび第三充放電器2cにも電力が供給される。よって、第二充放電器2bおよび第三充放電器2cは、通常運転させることができる。以下においては、非常時に自立運転する第一充放電器2aをマスター2a、通常運転する第二充放電器2bおよび第三充放電器2cをそれぞれ第一補機2bおよび第二補機2cともいう。第一補機2bと第二補機2cをまとめて示すときは単に補機という。
【0036】
その後、負荷Lの電力消費量に応じて、第二充放電器2bと第三充放電器2cの何れかまたは両方からも放電し、負荷Lに電力が供給される。また、必要に応じて電気自動車Eに充電される。さらに、第二充放電器2bおよび/または第三充放電器2cに接続された電気自動車Eのバッテリ残量が少なくなったら、放電を停止して、別のバッテリ残量の多い電気自動車に入れ替えることも可能であり、これを繰り返すことにより、停電時においても長時間の連続的な電力供給が可能となる。
【0037】
このように停電時において本システムを運用し続けるには、自立運転させた第一充放電器2aを健全に運転させ続けなければならない。第一充放電器2aから供給される電力がなければ、第二充放電器2bおよび第三充放電器2cを通常運転させることができないからである。そこで、本システムは、第一充放電器2aに接続された電気自動車Eが放電電力や残容量などについて健全な状態を維持するように、制御部6が3台の充放電器2の全体を制御するものであり、制御プログラムにより種々のステップが実行され、制御部6が種々の手段として機能して、充放電器2を様々に動作させるものである。言い換えれば、制御部6が種々の手段を有しており、それらの種々の手段により充放電器2を様々に動作させるものである。以下において、改めて停電が発生した時点から、制御部6による制御について説明する。なお、以下の説明においては、停電した時点で、少なくとも第一充放電器2aに電気自動車Eが接続されているものとする。
【0038】
まず、以下の制御において必要な各種の数値を予め設定する。これらの数値は、ユーザが任意に設定できるものである。まず、負荷Lの使用電力について、制御値(1)、制御値(2)、制御値(3)という3つの値を設定する。ただし、制御値(1)<制御値(2)<制御値(3)である。この実施例では、制御値(1)=5.0kW、制御値(2)=9.0kW、制御値(3)=14kWとする。また、補機から放電させる電力について、放電値(1)、放電値(2)、放電値(3)という3つの値を設定する。補機からの放電値は、この3つの値の何れかとなる。ただし、放電値(1)>放電値(2)>放電値(3)である。この実施例では、放電値(1)=4.5kW、放電値(2)=3.5kW、放電値(3)=2.5kWとする。また、マスター2aに接続された電気自動車Eのバッテリの放電可能残容量について、各種の閾値を設定する。閾値は満容量に対するパーセンテージで表され、具体的には以下の制御プログラムの説明の中で示す。また、補機に接続された電気自動車Eのバッテリの残容量について、最低必要容量を設定する。最低必要容量は、満容量に対するパーセンテージで表され、ユーザが設定しない場合には、デフォルト値として、車種により定められた放電可能な最低容量(10%など)とする。
【0039】
まず、図4のフローチャートに示すように、制御プログラムにより、停電判定ステップS1が実行されて、制御部6が停電判定手段として機能する(停電発生前から常時機能している)。停電が発生すると、充放電器2に供給されていた電力が停止するので、全ての充放電器2が停止する。なおこの際、電気自動車Eに接続されている充放電器2のコネクタ214が解錠されて取り外し可能な状態となる。通常、制御部6は各充放電器2と通信して状態を把握しているが、停電判定手段は、各充放電器2との通信断絶状態が所定時間以上継続した場合に、停電が発生したと判定する。そして、停電判定手段は、ユーザの端末7に、停電が発生した旨を表示する。停電が発生したと判定されなければ、処理がループして停電判定ステップS1が繰り返される。
【0040】
次に、制御プログラムにより、停電時情報表示ステップS2が実行されて、制御部6が停電時情報表示手段として機能する。停電状態において充放電器2を自立運転させるためには、充放電器2の仕様に応じて、充放電器本体21と電気自動車Eを12V電源ケーブルで接続するなど、電気自動車Eから充放電器2へ給電するためのユーザによる種々の操作が必要となる。また、自立運転の場合、電気自動車Eからの電力は自立運転用入出力部213へ出力されるので、ユーザが、切替手段8により出力先を通常運転用入出力部212から自立運転用入出力部213へ切り替える必要がある。そこで、停電時情報表示手段は、ユーザの端末7に、充放電器2を自立運転させるための操作の手順を表示する。また、停電したことで各所のブレーカ(開閉器・遮断器)が落ちていることが想定される。そこで、停電時情報表示手段は、ユーザの端末7に、ブレーカの操作の指示を表示する。ユーザは、端末7の表示に基づき、各種の操作を行い、1台の充放電器2(ここでは第一充放電器2aとする)を自立運転させる。
【0041】
次に、制御プログラムにより、停電対応モード起動ステップS3が実行されて、制御部6が停電対応モード起動手段として機能する。停電対応モード起動手段は、ユーザの端末7に、停電対応モードを起動するための起動ボタンを表示する。停電対応モードは、停電状態における以後の各充放電器2の制御をシステムに委ねるモードである。ユーザにより起動ボタンが押されると、停電対応モード起動手段が停電対応モードを起動し、自立運転させた第一充放電器2aから負荷Lへの放電(給電)を開始する。第一充放電器2aからの放電量は、負荷Lの電力使用量に追従して自動的に定められる。なお、この時点で起動するのは第一充放電器2aのみであるから、停電対応モードを起動する際、ユーザは、負荷Lの電力使用量が第一充放電器2aの最大放電電力以下となるように、負荷Lを調整しておく。1台の充放電器2の最大放電電力は5.9kWであるが、ここでは裕度を持たせるために4.5kW以下にするものとする。
【0042】
次に、制御プログラムにより、マスター判定ステップS4が実行されて、制御部6がマスター判定手段として機能する。マスター判定手段は、自立運転している充放電器2をマスターとして認識するものであり、ここでは第一充放電器2aがマスター2aとなる。すなわち、ユーザが自立運転させた充放電器2がマスターとなる。マスターが認識されない場合、すなわち自立運転している充放電器2がない場合、処理がループしてマスター判定ステップS4が繰り返される。
【0043】
次に、制御プログラムにより、補機起動ステップS5が実行されて、制御部6が補機起動手段として機能する。補機起動手段は、マスター2aからの放電が開始されてから所定時間経過後に、マスター2a以外の充放電器2(第二充放電器2bおよび第三充放電器2c)を補機として通常運転で起動させる。既にマスター2aが起動して放電が開始されているので、これらの充放電器2についてはマスター2aから電力の供給を受けて通常運転させることができる。ここでは第二充放電器2bおよび第三充放電器2cがそれぞれ第一補機2bおよび第二補機2cとなる。そして、補機起動手段は、第一補機2bと第二補機2cに電気自動車Eが接続されていれば、そのコネクタ214を施錠して取り外し不可能な状態とする。
【0044】
次に、制御プログラムにより、リセット判定ステップS6が実行されて、制御部6がリセット判定手段として機能する。リセット判定手段は、後述する各運転モード(入替モードおよび優先モード)のために各充放電器2に立てられたフラグをリセットする。停電後、最初にマスター2aと第一補機2bおよび第二補機2cが起動した直後には、何れの運転モードも設定されていないので、何も行われない。図4以下のフローチャートに示すように、制御プログラムの処理は、リセット判定ステップS6以降、種々のステップを経て、リセット判定ステップS6に戻るので、その際にリセット判定手段が有効に機能することになる。
【0045】
次に、制御プログラムにより、車両接続判定ステップS7が実行されて、制御部6が車両接続判定手段として機能する。マスター2aには必ず電気自動車Eが接続されており、車両接続判定手段は、マスター2a以外の第一補機2bおよび第二補機2cに接続された電気自動車Eがあるか否かを判定する。第一補機2bおよび第二補機2cに電気自動車Eが接続されていない場合、すなわちマスター2aのみに電気自動車Eが接続されている場合、ユーザの端末7にその旨を知らせるメッセージが表示され、制御プログラムの処理は、リセット判定ステップS6に戻る。よって、新たに第一補機2bまたは第二補機2cに電気自動車Eが接続されない限り、単にマスター2aから負荷Lへの給電が行われるだけとなる。そして、第一補機2bと第二補機2cの少なくとも一方に電気自動車Eが接続されている場合、制御プログラムの処理は、図5のフローチャートへと進む。以下においては、特に言及した場合を除いて、第一補機2bと第二補機2cの両方に電気自動車Eが接続されているものとする。
【0046】
次に、図5のフローチャートに示すように、制御プログラムにより、補機順位設定ステップS8が実行されて、制御部6が補機順位設定手段として機能する。補機順位設定手段は、第一補機2bと第二補機2cのどちらから優先して放電させるかの順位を設定するものであり、接続された電気自動車Eのバッテリの放電可能残容量が多い順に順位を設定する。ここでは、第一補機2bの方が高順位となり優先されるものとする。
【0047】
次に、制御プログラムにより、蓄電装置取外判定ステップS9が実行されて、制御部6が蓄電装置取外判定手段として機能する。蓄電装置取外判定手段は、ユーザの端末7に、第一補機2bと第二補機2c(マスター2a以外の充放電器2)についての取り外し準備ボタンを表示して、電気自動車Eを取り外す充放電器2の選択入力を受け付ける。そして、ユーザが取り外し準備ボタンを押すと、対象の充放電器2(第一補機2bおよび/または第二補機2c)に紐付けて取り外しフラグを立てる。なお、フラグを立てるとは、すなわちそのフラグに割り当てられた変数=1として制御部6の記憶装置に保存することであり、フラグをリセットするとは、その変数=0として制御部6の記憶装置に保存することである。図中ではフラグが立てられていることを簡便にフラグ=1と表す。
【0048】
次に、制御プログラムにより、優先補機判定ステップS10が実行されて、制御部6が優先補機判定手段として機能する。優先補機判定手段は、ユーザの端末7に、第一補機2bと第二補機2c(マスター2a以外の充放電器2)についての放電優先ボタンを表示して、優先して放電させる充放電器2の選択入力を受け付ける。そして、ユーザが放電優先ボタンを押すと、対象の充放電器2(第一補機2bおよび/または第二補機2c)に紐付けて優先フラグを立てる。
【0049】
次に、制御プログラムにより、大型機器使用判定ステップS11が実行されて、制御部6が大型機器使用判定手段として機能する。大型機器使用判定手段は、ユーザの端末7に、大型機器使用ボタンを表示して、負荷Lとして大型機器を使用するか否かの選択入力を受け付ける。そして、ユーザが大型機器使用ボタンを押した場合、大型機器を使用するものと判断され、ユーザが大型機器使用ボタンを押さない場合、大型機器を使用しないものと判断される。
【0050】
次に、制御プログラムにより、運転モード判定ステップS12が実行されて、制御部6が運転モード判定手段として機能する。運転モード判定手段は、蓄電装置取外判定ステップS9、優先補機判定ステップS10および大型機器使用判定ステップS11におけるユーザの入力結果に基づき、システムの運転モードを判定する。まず、運転モード判定手段は、蓄電装置取外判定手段により何れかの充放電器2に取り外しフラグが立てられている場合、入替モードであると判定する。次に、運転モード判定手段は、優先補機判定手段により何れかの充放電器2に優先フラグが立てられている場合に、優先モードであると判定する。次に、運転モード判定手段は、大型機器使用判定手段により大型機器を使用するものと判断されている場合に、大型機器使用モードであると判定する。入替モード、優先モードおよび大型機器使用モードと判定されなかった場合、運転モード判定手段は、運転モードの判定をしない。
【0051】
次に、制御プログラムにより、補機残容量確認ステップS13が実行されて、制御部6が補機残容量確認手段として機能する。補機残容量確認手段は、第一補機2bおよび第二補機2cに接続された電気自動車Eのバッテリの残容量を確認し、それぞれについて所定の値を下回る場合には、ユーザの端末7にその旨を知らせるメッセージを表示する。所定の値について、ここでは「最低必要容量+10%(=最低必要容量に満容量の10%の容量を加えた値)」とする。最低必要容量は、上記のとおり予め設定された値またはデフォルト値であり、「+10%」の部分についてもユーザが設定できる。
【0052】
次に、制御プログラムにより、放電補機数設定ステップS14が実行されて、制御部6が放電補機数設定手段として機能する。放電補機数設定手段は、負荷Lの使用電力が多いほど、放電させる補機の数が多くなるように、放電させる補機の数を設定する。より具体的には、放電補機数設定手段は、上記のとおり予め設定された制御値(1)~制御値(3)に基づいて、負荷Lの使用電力<制御値(1)のとき、放電させる補機の数を0台と設定する。また、制御値(1)≦負荷Lの使用電力<制御値(2)のとき、放電させる補機の数を1台と設定する。さらに、制御値(2)≦負荷Lの使用電力<制御値(3)のとき、放電させる補機の数を2台と設定する。ただし、ここで設定された放電させる補機の数は、負荷Lの使用電力がそれぞれの値である場合における基本の数であり、他の条件により変わる場合がある。なお、このフローチャートではこの時点で明示的に台数が設定されているが、実際に放電される時点でこれらの台数となるものであってもよい。また、制御値(3)≦負荷Lの使用電力の場合も、放電させる補機の数は上限である2台となる。さらに、制御値(2)≦負荷Lの使用電力であるときに、システムの運転モードが入替モードである場合、ユーザの端末7に負荷Lの使用電力が多いので電気自動車Eの入れ替えができない旨を知らせるメッセージを表示する。
【0053】
図5のフローチャートに示すように、以下の処理は負荷Lの使用電力の値に応じて分岐する。まず、負荷Lの使用電力<制御値(1)の場合について説明する。この場合、図6に示すように、最初に、制御プログラムにより、残容量僅少補機停止ステップS15が実行されて、制御部6が残容量僅少補機停止手段として機能する。残容量僅少補機停止手段は、第一補機2bおよび/または第二補機2cに接続された電気自動車Eのバッテリの残容量が少ない場合に、その補機を停止する。より具体的には、残容量僅少補機停止手段は、まず、第一補機2bに接続された電気自動車Eのバッテリの残容量を確認し、続いて、第二補機2cに接続された電気自動車Eのバッテリの残容量を確認する。両方の補機においてバッテリの残容量が最低必要容量よりも少ない場合、残容量僅少補機停止手段は、両方の補機を停止して、ユーザの端末7にその旨を知らせるメッセージを表示する。また、何れか一方の補機においてバッテリの残容量が最低必要容量よりも少ない場合、残容量僅少補機停止手段は、その補機を停止して、ユーザの端末7にその旨を知らせるメッセージを表示する。この場合、停止しなかった他方の補機に対しては、指示はされない。そして、何れの場合においても、制御プログラムの処理は、リセット判定ステップS6に戻る。両方の補機においてバッテリの残容量が最低必要容量以上である場合、制御プログラムの処理はさらに以下のように進行する。
【0054】
次に、図7に示すように、システムの運転モードが入替モードである場合において、制御プログラムにより、取外補機停止ステップS16が実行されて、制御部6が取外補機停止手段として機能する。取外補機停止手段は、蓄電装置取外判定ステップS9においてユーザが電気自動車Eを取り外すことを選択した補機を停止する。より具体的には、取外補機停止手段は、まず、第二補機2cに取り外しフラグが立てられているか否かを確認し、立てられていなければ、第一補機2bを停止する(入替モードであるということは、少なくとも一方の補機に取り外しフラグが立てられているということなので、第二補機2cにフラグが立てられていなければ、第一補機2bにフラグが立てられていることになる)。第二補機2cに取り外しフラグが立てられていれば、続いて、第一補機2bに取り外しフラグが立てられているか否かを確認し、立てられていなければ、第二補機2cを停止する。第一補機2bを停止した場合と第二補機2cを停止した場合の何れにおいても、停止しなかった他方の補機に対しては、指示はされない。そして、何れの場合においても、制御プログラムの処理は、リセット判定ステップS6に戻る。また、第一補機2bと第二補機2cの両方に取り外しフラグが立てられていれば、両方の補機を停止する。そして、大型機器使用モードが選択されていなければ、制御プログラムの処理は、リセット判定ステップS6に戻る。また、大型機器使用モードが選択されていれば、ユーザの端末7に大型機器の使用ができない旨を知らせるメッセージを表示し、運転モードをリセットする。そして、制御プログラムの処理は、リセット判定ステップS6に戻る。システムの運転モードが入替モードでない場合、制御プログラムの処理はさらに以下のように進行する。
【0055】
次に、図8に示すように、システムの運転モードが優先モードである場合において、制御プログラムにより、優先放電ステップS17が実行されて、制御部6が優先放電手段として機能する。優先放電手段は、優先補機判定ステップS10においてユーザが優先して放電させることを選択した補機から放電させるものであり、放電補機数設定ステップS14において設定された放電させる補機の基本の数よりも優先される。より具体的には、優先放電手段は、まず、マスター2aに接続された電気自動車Eのバッテリの放電可能残容量を確認し、放電可能残容量が80%(任意に設定できる値であり、マスター2aに接続された電気自動車Eのバッテリの放電可能残容量の以下における各閾値についても同様である)より多い場合、両方の補機を待機させ、ユーザの端末7にその旨を知らせるメッセージを表示する。そして、制御プログラムの処理は、リセット判定ステップS6に戻る。
なお、補機の待機状態とは、放電しておらず、必要時にすぐに放電させられる状態であるが、充放電器によっては、全く放電していない状態から放電させるよりも、微小に放電(たとえば1W)している状態から放電させる方が、スムーズに放電させられる。よって、待機状態には、全く放電していない場合と、微小に放電している場合の両方を含む。
放電可能残容量が80%以下の場合において、さらに放電可能残容量が70%より多い場合、制御プログラムの処理は、リセット判定ステップS6に戻る。放電可能残容量が80%以下の場合において、さらに放電可能残容量が70%以下の場合、優先放電手段は、まず、第二補機2cに優先フラグが立てられているか否かを確認し、立てられていなければ、第二補機2cを待機させた後、第一補機2bを放電値(1)で放電させる(優先モードであるということは、少なくとも一方の補機に優先フラグが立てられているということなので、第二補機2cにフラグが立てられていなければ、第一補機2bにフラグが立てられていることになる)。そして、制御プログラムの処理は、リセット判定ステップS6に戻る。第二補機2cに取り外しフラグが立てられていれば、第一補機2bを待機させた後、第二補機2cを放電値(1)で放電させる。さらに、第一補機2bに優先フラグが立てられているか否かを確認し、立てられていなければ、制御プログラムの処理は、リセット判定ステップS6に戻る。第一補機2bに優先フラグが立てられていれば、ユーザの端末7に両方の補機が優先の設定となっている旨を知らせるメッセージを表示する。そして、制御プログラムの処理は、リセット判定ステップS6に戻る。システムの運転モードが優先モードでない場合、制御プログラムの処理はさらに以下のように進行する。
【0056】
次に、図9に示すように、システムの運転モードが大型機器使用モードである場合において、制御プログラムにより、大型機器使用時補機数設定ステップS18が実行されて、制御部6が大型機器使用時補機数設定手段として機能する。大型機器使用時補機数設定手段は、マスター2aに接続された電気自動車Eのバッテリの放電可能残容量に応じて、放電させる補機の数を決定するものであり、放電補機数設定ステップS14において設定された放電させる補機の基本の数よりも優先される。なお、ここでは負荷Lの使用電力<制御値(1)であり、放電させる補機の基本の数は0台である。より具体的には、大型機器使用時補機数設定手段は、まず、マスター2aに接続された電気自動車Eのバッテリの放電可能残容量を確認し、放電可能残容量が90%より多い場合、放電させる補機の数を基本の数のまま0台とする。すなわち、両方の補機を待機させ、ユーザの端末7にその旨を知らせるメッセージを表示する。そして、制御プログラムの処理は、リセット判定ステップS6に戻る。
放電可能残容量が90%以下の場合において、さらに放電可能残容量が80%以下の場合、大型機器使用時補機数設定手段は、放電させる補機の数を基本の数に追加して1台とする。ここでは、補機順位設定ステップS8において高順位となった第一補機2bから放電させる。ここで、制御プログラムにより、補機最大放電ステップS19が実行されて、制御部6が補機最大放電手段として機能する。補機最大放電手段は、大型機器使用モードにおいて補機の放電値を常に最大値とする。より具体的には、補機最大放電手段は、第二補機2cを待機させた後、大型機器使用時補機数設定ステップS18において追加されることとなった第一補機2bを、最大値である放電値(1)で放電させる。そして、制御プログラムの処理は、リセット判定ステップS6に戻る。
放電可能残容量が90%以下の場合において、さらに放電可能残容量が80%より多い場合に、両方の補機が放電している状態であれば、大型機器使用時補機数設定手段は、放電させる補機の数を1台とする。すなわち、第一補機2bに対しては指示を出さずそのまま放電させ、第二補機2cを待機させる。そして、制御プログラムの処理は、リセット判定ステップS6に戻る。放電可能残容量が90%以下の場合において、さらに放電可能残容量が80%より多い場合に、1台以上の補機が放電していない状態であれば、そのままで、制御プログラムの処理は、リセット判定ステップS6に戻る。システムの運転モードが大型機器使用モードでない場合、制御プログラムの処理はさらに以下のように進行する。
【0057】
次に、図10に示すように、制御プログラムにより、補機追加ステップS20が実行されて、制御部6が補機追加手段として機能する。補機追加手段は、マスター2aに接続された電気自動車Eのバッテリの放電可能残容量が所定値以下である場合に、放電させる補機の数を追加するものであり、放電補機数設定ステップS14において設定された放電させる補機の基本の数よりも優先される。なお、ここでは負荷Lの使用電力<制御値(1)であり、放電させる補機の基本の数は0台である。より具体的には、補機追加手段は、まず、マスター2aに接続された電気自動車Eのバッテリの放電可能残容量を確認し、放電可能残容量が80%より多い場合、放電させる補機の数を追加しない。すなわち、両方の補機を待機させる。そして、制御プログラムの処理は、リセット判定ステップS6に戻る。
放電可能残容量が80%以下の場合、補機追加手段は、放電させる補機の数を基本の数に追加して1台とする。ここでは、補機順位設定ステップS8において高順位となった第一補機2bから放電させる。まず、放電可能残容量が70%より多い場合に、両方の補機が放電している状態であれば、補機追加手段は、第一補機2bに対しては指示を出さずそのまま放電させ、第二補機2cを待機させる。そして、制御プログラムの処理は、リセット判定ステップS6に戻る。放電可能残容量が70%より多い場合に、1台以上の補機が放電していない状態であれば、そのままで、制御プログラムの処理は、リセット判定ステップS6に戻る。
そして、放電可能残容量が70%以下の場合、制御プログラムにより、補機放電値決定ステップS21が実行されて、制御部6が補機放電値決定手段として機能する。補機放電値決定手段は、マスター2aに接続された電気自動車Eのバッテリの放電可能残容量が少ないほど、補機の放電電力が大きくなるように補機の放電電力を決定する。より具体的には、放電可能残容量が20%以下の場合、補機放電値決定手段は、第二補機2cを待機させた後、第一補機2bを最大値である放電値(1)(4.5kW)で放電させる。放電可能残容量が20%より多く50%以下の場合、補機放電値決定手段は、第二補機2cを待機させた後、第一補機2bを放電値(2)(3.5kW)で放電させる。放電可能残容量が50%より多く70%以下の場合、補機放電値決定手段は、第二補機2cを待機させた後、第一補機2bを最小値である放電値(3)(2.5kW)で放電させる。そして、何れの場合においても、制御プログラムの処理は、リセット判定ステップS6に戻る。以上で、負荷Lの使用電力<制御値(1)である場合の制御プログラムの一通りの処理が終了する。
【0058】
次に、図11に示すように、制御値(1)≦負荷Lの使用電力<制御値(2)の場合について説明する。この場合、最初に、制御プログラムにより、残容量僅少補機停止ステップS15が実行されて、制御部6が残容量僅少補機停止手段として機能する。残容量僅少補機停止手段は、第一補機2bおよび/または第二補機2cに接続された電気自動車Eのバッテリの残容量が少ない場合に、その補機を停止する。より具体的には、残容量僅少補機停止手段は、まず、第一補機2bに接続された電気自動車Eのバッテリの残容量を確認し、続いて、第二補機2cに接続された電気自動車Eのバッテリの残容量を確認する。両方の補機においてバッテリの残容量が最低必要容量よりも少ない場合、残容量僅少補機停止手段は、両方の補機を停止するが、この場合、マスター2aのみでは負荷Lの使用電力に対して放電値が足りなくなってしまうので、エラーとなる。また、何れか一方の補機においてバッテリの残容量が最低必要容量よりも少ない場合、残容量僅少補機停止手段は、放電させる補機の基本の数が1台なので、バッテリの残容量が最低必要容量以上である方の補機を放電値(1)で放電させた後、バッテリの残容量が最低必要容量よりも少ない方の補機を停止して、ユーザの端末7にその旨を知らせるメッセージを表示する。そして、何れの場合においても、制御プログラムの処理は、リセット判定ステップS6に戻る。両方の補機においてバッテリの残容量が最低必要容量以上である場合、制御プログラムの処理はさらに以下のように進行する。
【0059】
次に、図12に示すように、システムの運転モードが入替モードである場合において、制御プログラムにより、取外補機停止ステップS16が実行されて、制御部6が取外補機停止手段として機能する。取外補機停止手段は、蓄電装置取外判定ステップS9においてユーザが電気自動車Eを取り外すことを選択した補機を停止する。より具体的には、取外補機停止手段は、まず、第二補機2cに取り外しフラグが立てられているか否かを確認し、立てられていなければ、放電させる補機の基本の数が1台なので、第二補機2cを放電値(1)で放電させた後、第一補機2bを停止する(入替モードであるということは、少なくとも一方の補機に取り外しフラグが立てられているということなので、第二補機2cにフラグが立てられていなければ、第一補機2bにフラグが立てられていることになる)。そして、制御プログラムの処理は、リセット判定ステップS6に戻る。第二補機2cに取り外しフラグが立てられていれば、第一補機2bを放電値(1)で放電させた後、第二補機2cを停止する。その後、取外補機停止手段は、第一補機2bに取り外しフラグが立てられているか否かを確認し、立てられていなければ、制御プログラムの処理は、リセット判定ステップS6に戻る。第一補機2bに取り外しフラグが立てられていれば、ユーザの端末7に両方の補機の電気自動車Eを取り外すことはできない旨を知らせるメッセージを表示する。そして、制御プログラムの処理は、リセット判定ステップS6に戻る。システムの運転モードが入替モードでない場合、制御プログラムの処理はさらに以下のように進行する。
【0060】
次に、図13に示すように、システムの運転モードが優先モードである場合において、制御プログラムにより、優先放電ステップS17が実行されて、制御部6が優先放電手段として機能する。優先放電手段は、優先補機判定ステップS10においてユーザが優先して放電させることを選択した補機から放電させるものであり、放電補機数設定ステップS14において設定された放電させる補機の基本の数よりも優先される。より具体的には、優先放電手段は、まず、マスター2aに接続された電気自動車Eのバッテリの放電可能残容量を確認し、放電可能残容量が80%より多い場合、まず、第二補機2cに優先フラグが立てられているか否かを確認し、立てられていなければ、第一補機2bを放電値(1)で放電させた後、第二補機2cを待機させる(優先モードであるということは、少なくとも一方の補機に優先フラグが立てられているということなので、第二補機2cにフラグが立てられていなければ、第一補機2bにフラグが立てられていることになる)。そして、制御プログラムの処理は、リセット判定ステップS6に戻る。第二補機2cに取り外しフラグが立てられていれば、第二補機2cを放電値(1)で放電させた後、第一補機2bを待機させる。さらに、第一補機2bに優先フラグが立てられているか否かを確認し、立てられていなければ、制御プログラムの処理は、リセット判定ステップS6に戻る。第一補機2bに優先フラグが立てられていれば、ユーザの端末7に両方の補機が優先の設定となっている旨を知らせるメッセージを表示する。そして、制御プログラムの処理は、リセット判定ステップS6に戻る。
放電可能残容量が80%以下の場合において、さらに放電可能残容量が70%以下の場合、優先放電手段は、まず、第二補機2cに優先フラグが立てられているか否かを確認し、立てられていなければ、制御プログラムの処理は、後述のポイント(図中の「♯10」)に進む。第二補機2cに取り外しフラグが立てられていれば、さらに、第一補機2bに優先フラグが立てられているか否かを確認する。第一補機2bにも取り外しフラグが立てられていれば、両方の補機を放電値(1)で放電させる。そして、制御プログラムの処理は、リセット判定ステップS6に戻る。第一補機2bに優先フラグが立てられていなければ、制御プログラムにより、補機放電値決定ステップS21が実行されて、制御部6が補機放電値決定手段として機能する。補機放電値決定手段は、マスター2aに接続された電気自動車Eのバッテリの放電可能残容量が少ないほど、補機の放電電力が大きくなるように補機の放電電力を決定する。ただし、ここでは補機放電値決定手段は第一補機2bの放電電力を決定するものであり、第二補機2cは何れの場合においても放電値(1)で放電させる。より具体的には、放電可能残容量が20%以下の場合、補機放電値決定手段は、第一補機2bを最大値である放電値(1)(4.5kW)で放電させる。放電可能残容量が20%より多く50%以下の場合、補機放電値決定手段は、第一補機2bを放電値(2)(3.5kW)で放電させる。放電可能残容量が50%より多い場合、補機放電値決定手段は、第一補機2bを最小値である放電値(3)(2.5kW)で放電させる。そして、何れの場合においても、制御プログラムの処理は、リセット判定ステップS6に戻る。
放電可能残容量が80%以下の場合において、さらに放電可能残容量が70%より多い場合に、両方の補機が待機している状態であれば、優先放電手段は、第一補機2bを放電値(1)で放電させ、第二補機2cに対しては指示を出さずそのまま待機させる。そして、制御プログラムの処理は、リセット判定ステップS6に戻る。放電可能残容量が80%以下の場合において、さらに放電可能残容量が70%より多い場合に、1台以上の補機が待機していない状態であれば、そのままで、制御プログラムの処理は、リセット判定ステップS6に戻る。システムの運転モードが優先モードでない場合、制御プログラムの処理はさらに以下のように進行する。
【0061】
次に、図14に示すように、システムの運転モードが大型機器使用モードである場合において、制御プログラムにより、大型機器使用時補機数設定ステップS18が実行されて、制御部6が大型機器使用時補機数設定手段として機能する。大型機器使用時補機数設定手段は、マスター2aに接続された電気自動車Eのバッテリの放電可能残容量に応じて、放電させる補機の数を決定するものであり、放電補機数設定ステップS14において設定された放電させる補機の基本の数よりも優先される。なお、ここでは制御値(1)≦負荷Lの使用電力<制御値(2)であり、放電させる補機の基本の数は1台である。より具体的には、大型機器使用時補機数設定手段は、まず、マスター2aに接続された電気自動車Eのバッテリの放電可能残容量を確認し、放電可能残容量が90%より多い場合、放電させる補機の数を基本の数のまま1台とする。ここでは、補機順位設定ステップS8において高順位となった第一補機2bから放電させる。すなわち、第一補機2bを放電値(1)で放電させ、第二補機2cを待機させる。そして、制御プログラムの処理は、リセット判定ステップS6に戻る。
放電可能残容量が90%以下の場合において、さらに放電可能残容量が80%以下の場合、大型機器使用時補機数設定手段は、放電させる補機の数を基本の数に追加して2台とする。ここで、制御プログラムにより、補機最大放電ステップS19が実行されて、制御部6が補機最大放電手段として機能する。補機最大放電手段は、大型機器使用モードにおいて補機の放電値を常に最大値とする。より具体的には、補機最大放電手段は、両方の補機を最大値である放電値(1)で放電させる。そして、制御プログラムの処理は、リセット判定ステップS6に戻る。
放電可能残容量が90%以下の場合において、さらに放電可能残容量が80%より多い場合、大型機器使用時補機数設定手段は、第一補機2bを放電値(1)で放電させ、第二補機2cに対しては指示を出さない。そして、制御プログラムの処理は、リセット判定ステップS6に戻る。システムの運転モードが大型機器使用モードでない場合、制御プログラムの処理はさらに以下のように進行する。
【0062】
次に、図15に示すように、制御プログラムにより、補機追加ステップS20が実行されて、制御部6が補機追加手段として機能する。補機追加手段は、マスター2aに接続された電気自動車Eのバッテリの放電可能残容量が所定値以下である場合に、放電させる補機の数を追加するものであり、放電補機数設定ステップS14において設定された放電させる補機の基本の数よりも優先される。なお、ここでは制御値(1)≦負荷Lの使用電力<制御値(2)であり、放電させる補機の基本の数は1台である。より具体的には、補機追加手段は、まず、マスター2aに接続された電気自動車Eのバッテリの放電可能残容量を確認し、放電可能残容量が80%より多い場合、放電させる補機の数を基本の数のまま1台とする。ここでは、補機順位設定ステップS8において高順位となった第一補機2bから放電させる。すなわち、補機追加手段は、第一補機2bを放電値(1)で放電させた後、第二補機2cを待機させる。そして、制御プログラムの処理は、リセット判定ステップS6に戻る。
また、放電可能残容量が80%以下の場合、まずここが、上述の優先放電ステップS17から制御プログラムの処理が進むポイント(図中の「♯10」)となる。そして、放電可能残容量が80%以下の場合において、さらに放電可能残容量が70%より多い場合に、両方の補機が待機している状態であれば、放電させる補機の数を基本の数のまま1台とする。すなわち、補機追加手段は、第一補機2bを放電値(1)で放電させ、第二補機2cに対しては指示を出さずそのまま待機させる。そして、制御プログラムの処理は、リセット判定ステップS6に戻る。放電可能残容量が80%以下の場合において、さらに放電可能残容量が70%より多い場合に、1台以上の補機が待機していない状態であれば、そのままで、制御プログラムの処理は、リセット判定ステップS6に戻る。
そして、放電可能残容量が70%以下の場合、制御プログラムにより、補機放電値決定ステップS21が実行されて、制御部6が補機放電値決定手段として機能する。補機放電値決定手段は、マスター2aに接続された電気自動車Eのバッテリの放電可能残容量が少ないほど、補機の放電電力が大きくなるように補機の放電電力を決定する。ただし、ここでは補機放電値決定手段は第二補機2cの放電電力を決定するものであり、第一補機2bは何れの場合においても放電値(1)で放電させる。より具体的には、放電可能残容量が20%以下の場合、補機放電値決定手段は、第二補機2cを最大値である放電値(1)(4.5kW)で放電させる。放電可能残容量が20%より多く50%以下の場合、補機放電値決定手段は、第二補機2cを放電値(2)(3.5kW)で放電させる。放電可能残容量が50%より多く70%以下の場合、補機放電値決定手段は、第二補機2cを最小値である放電値(3)(2.5kW)で放電させる。そして、何れの場合においても、制御プログラムの処理は、リセット判定ステップS6に戻る。以上で、制御値(1)≦負荷Lの使用電力<制御値(2)である場合の制御プログラムの一通りの処理が終了する。
【0063】
次に、制御値(2)≦負荷Lの使用電力<制御値(3)の場合について説明する。この場合、図5に示すように、制御プログラムにより、高負荷時対応ステップS22が実行されて、制御部6が高負荷時対応手段として機能する。放電させる補機の基本の数は2台であり、高負荷時対応手段は、両方の補機を最大値である放電値(1)(4.5kW)で放電させ、ユーザの端末7にその旨を知らせるメッセージを表示する。そして、制御プログラムの処理は、リセット判定ステップS6に戻る。以上で、制御値(2)≦負荷Lの使用電力<制御値(3)である場合の制御プログラムの一通りの処理が終了する。
【0064】
次に、制御値(3)≦負荷Lの使用電力の場合について説明する。この場合、図5に示すように、制御プログラムにより、過負荷時対応ステップS23が実行されて、制御部6が過負荷時対応手段として機能する。放電させる補機の数は上限である2台であり、過負荷時対応手段は、両方の補機を最大値である放電値(1)(4.5kW)で放電させ、ユーザの端末7にその旨および負荷Lの使用電力がシステム全体の供給可能電力を超えることを警告する旨のメッセージを表示する。そして、制御プログラムの処理は、リセット判定ステップS6に戻る。以上で、制御値(3)≦負荷Lの使用電力である場合の制御プログラムの一通りの処理が終了する。
【0065】
図16に示すのは、ユーザの端末7に表示される画面の一例である。画面の上部には、全体情報表示部71が設けられており、状況に応じたユーザへのお知らせや、負荷Lの使用電力、残りの使用可能負荷、供給可能時間および電池残量合計が表示されている。画面の左下には、機器情報表示部72が設けられており、各充放電器2についての現在の状態、電池残量および優先設定の状態が表示されている。画面の右下には、ユーザがシステムに対する指示を入力するための入力ボタン73が設けられており、ここでは電気自動車Eの取り外し(入替)のための取り外し準備ボタンと、負荷Lとして大型機器を使用するための大型機器使用ボタンが表示されている。なお、制御プログラムの処理の進行状態に応じて、上記以外にも適宜必要な情報やユーザが入力するためのボタンが表示される。
【0066】
なお、上記の説明は、当初から3台の電気自動車Eがそれぞれ充放電器2に接続された状態を前提にしたものであるが、少なくともマスター2aとなる1台の電気自動車Eが接続されていれば、このシステムを起動させることができる。よって、接続された電気自動車Eが2台以下の状態でシステムを起動し、後から電気自動車Eを追加して接続することもできる。
【0067】
このような本発明の充放電器制御装置および充放電器制御プログラムによれば、制御部6が、負荷Lの使用電力が多いほど放電させる補機の数が多くなるように放電させる補機の数を設定する放電補機数設定手段を有しているので、負荷Lの使用電力が多くてもマスター2aに接続された電気自動車Eのバッテリの放電電力が過大になることが防がれ、マスター2aに接続された電気自動車Eのバッテリの健全な状態が維持される。一方、負荷Lの使用電力が少なければ、マスター2aから優先して放電されるので、マスター2aに接続された電気自動車Eのバッテリが満充電となることが防がれる。一般にバッテリは満充電の状態が維持されると劣化が進むため、これによりマスター2aに接続されたバッテリの劣化を抑え、健全な状態が維持される。
また、制御部6が、マスター2aに接続された電気自動車Eのバッテリの放電可能残容量が所定値以下である場合に放電させる補機の数を追加する補機追加手段を有するものであるから、補機によりマスター2aの放電を補い、必要に応じて補機に接続された電気自動車Eのバッテリからマスター2aに接続された電気自動車Eのバッテリへ充電することもできるので、マスター2aに接続された電気自動車Eのバッテリの放電可能残容量が少なくなりすぎることを防ぎ、マスター2aに接続された電気自動車Eのバッテリの健全な状態が維持される。
また、制御部6が、マスター2aに接続された電気自動車Eのバッテリの放電可能残容量が少ないほど補機の放電電力が大きくなるように補機の放電電力を決定する補機放電値決定手段を有するものであるから、マスター2aに接続された電気自動車Eのバッテリの放電可能残容量が少なくなりすぎることが防がれ、マスターに接続された電気自動車Eのバッテリの健全な状態が維持される。
また、制御部6が、放電可能残容量が多い補機から優先して放電されるように補機に順位を設定する補機順位設定手段を有するものであるから、ユーザの操作を要することなく、負荷へ安定して給電することができる。
また、制御部6が、電気自動車Eを取り外す補機の選択入力を受け付ける蓄電装置取外判定手段と、電気自動車Eを取り外すものとして選択された補機を停止する取外補機停止手段とを有するものであるから、ユーザの事情に応じた運用が可能となる。たとえば、特定の電気自動車Eをシステムから取り外して使用することができる。
また、制御部6が、優先して放電させる補機の選択入力を受け付ける優先補機判定手段と、優先して放電させるものとして選択された補機から優先して放電させる優先放電手段とを有するものであるから、ユーザの事情に応じた運用が可能となる。たとえば、後から使用予定がある電気自動車Eを先に負荷Lへの給電のために使用することができる。
また、制御部6が、負荷Lとして大型機器を使用するか否かの選択入力を受け付ける大型機器使用判定手段と、大型機器を使用することが選択された場合に補機の放電値を常に最大値とする補機最大放電手段とを有するものであるから、ユーザが予め大型機器を使用することを選択しておくことで、使用電力が多い大型機器を安定して稼働させることができる。
【0068】
また、充放電器本体21は、市販品であって、本発明の充放電器制御装置を適用した際に特別な動作をさせるものではないから、メーカーや仕様を問わず、種々の充放電器本体21を用いることができる。また、既設の充放電器2に対して、後から本発明の充放電器制御装置を適用することもできるし、既設の本発明の充放電器制御装置を有する充放電システムに対して、後から充放電器2の数を増やすこともできる。
【0069】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨の範囲内で適宜変更できる。たとえば、制御プログラムは、各フローチャートで示したものに対して、処理の順序が異なるもの、一部の処理を除外したもの、または他の処理を付加したものであってもよい。また、制御の対象となる充放電器の数は、2台以上であれば何台であってもよい。充放電器が4台以上になる場合、制御プログラムにおいて、制御値や放電値も4つ以上設定して、より細かい条件分岐が行われるようにしてもよい。また、充放電器に接続される蓄電装置は、電気自動車のバッテリ以外に、据え置き型の蓄電池や可搬式の蓄電池などであってもよい。さらに、このシステムに、商用電源以外の電源として、太陽光発電装置、風力発電装置や燃料電池装置などの非商用電源が接続されていてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 幹線
2(2a,2b,2c) 充放電器
6 制御部
E(EA,EB,EC) 電気自動車
L 負荷
P 商用電源

【要約】
【課題】ユーザによる複雑な制御を要することなく、自立運転する充放電器に接続された蓄電装置の健全な状態が維持されるように充放電器を制御するための充放電器制御装置および充放電器制御プログラムを提供する。
【解決手段】商用電源と負荷とを接続する幹線に対して並列的に接続される複数の充放電器に接続されるものであって前記の各充放電器を制御する制御部を備え、前記充放電器は、蓄電装置を接続可能であり、前記蓄電装置へ充電するかまたは前記蓄電装置から放電させるものであって、前記制御部は、停電時において自立運転で起動された一の前記充放電器をマスターとするマスター判定手段と、前記マスター以外の前記充放電器を補機として通常運転で起動させる補機起動手段と、前記負荷の使用電力が多いほど放電させる前記補機の数が多くなるように放電させる前記補機の数を決定する放電補機数決定手段と、を有する。
【選択図】図1

図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
図11
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図15
図16