(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】油中水型メーキャップ化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/87 20060101AFI20230719BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20230719BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20230719BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20230719BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230719BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20230719BHJP
A61Q 1/04 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
A61K8/87
A61K8/06
A61K8/25
A61K8/31
A61K8/73
A61K8/891
A61Q1/04
(21)【出願番号】P 2022041218
(22)【出願日】2022-03-16
【審査請求日】2022-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】591230619
【氏名又は名称】株式会社ナリス化粧品
(72)【発明者】
【氏名】大藤 瞳
【審査官】山田 陸翠
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-116365(JP,A)
【文献】特開2018-002664(JP,A)
【文献】特開2021-155386(JP,A)
【文献】特開2014-015425(JP,A)
【文献】特開2022-152038(JP,A)
【文献】国際公開第2022/138646(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(D)
(A)ポリウレタン-79
を0.1質量%~10.0質量%
(B)
パルミチン酸デキストリン及び(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリンから選ばれる1種または2種以上 を0.1質量%~10.0質量%
(C)
ジステアルジモニウムヘクトライト を0.01質量%~10.0質量%
(D)
イソドデカン及びシクロペンタシロキサンから選ばれる1種または2種以上 を5.0質量%~40.0質量%
を含む油中水型
の口唇メーキャップ化粧料。
【請求項2】
さらに成分(E)25℃でペースト状の油剤を
40%以下含む請求項1に記載の油中水型
の口唇メーキャップ化粧料。
【請求項3】
成分(E)が脂肪酸エステル及びN-アシルアミノ酸エステルから選ばれる1種以上である
請求項1または請求項2に記載の油中水型
の口唇メーキャップ化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油中水型メーキャップ化粧料に関し、二次付着レス効果、保湿感、使用性、経時安定性に優れた油中水型メーキャップ化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油中水型メーキャップ化粧料とは、油相を連続層とするメーキャップ化粧料であり、例えば口紅、リップグロス、頬紅、及びアイシャドウなどのメーキャップ化粧料として用いられている。油中水型メーキャップ化粧料は一般的な油型のメーキャップ化粧料よりもみずみずしくべたつきのない使用感が得られ、水溶性の保湿剤や有効成分、植物抽出液などを配合できるためメーキャップ化粧料でありながらスキンケア効果を付与することが可能である。さらに水は安全性が高い揮発性成分であるため、使用性の改善や、完成した皮膜の柔軟性や二次付着性の調整に有用である。ただし、油中水型メーキャップ化粧料は粉体等を含む乳化系であるため経時安定性を得るためには工夫が必要であった。
【0003】
メーキャップ化粧料の効果としては、メイク効果や保湿効果、化粧持ち、二次付着レス効果などが求められており、特に昨今の時勢より、マスクなどにメーキャップが付着しない二次付着レス効果が求められている。中でも、口唇化粧料はマスクと接触しやすいことから、十分な二次付着レス効果が強く求められている。
【0004】
口紅等の口唇化粧料において保湿感も常に求められる機能の1つである。近年特に保湿効果についての需要は高まってきているが、保湿感を高めるとべたつきも増加する傾向があり、マスクなどへの二次付着レス効果との両立が求められている。
【0005】
二次付着レス効果を高める技術としては、揮発性シリコーン油や揮発性炭化水素油、揮発性のハイドロフルオロエーテル、水などの常温で蒸発する成分を多量に配合することと、硬い転写性のないシリコーン系樹脂などの油性皮膜形成剤を組み合わせる技術が開示されている。例えば特許文献1では油中水型組成物に、環状シリコーン油や軽質流動イソパラフィンと揮発性のハイドロフルオロエーテルに油溶性のシリコーン系樹脂を配合することが開示されている。組成物中の揮発成分が蒸散するとともに二次付着レス効果が表れるが満足いく程の効果ではなく、さらに使用されているシリコーン系樹脂は剛直な油性皮膜を形成するため硬い皮膜となり保湿感も損なわれる。
【0006】
特許文献2では、油性化粧料又は油中水型組成物に環状シリコーンや軽質流動イソパラフィンと、アクリル-シリコーン系グラフト共重合体及び/またはトリメチルシロキシケイ酸といった油溶性皮膜形成剤を多量に配合することで高い二次付着レス効果を得ることができる。しかし油溶性皮膜形成剤の配合量が著しく多く、化粧料として一般的な配合量では満足いく二次付着レス効果は実現できない。加えて、特許文献1と同様で二次付着レス効果が表れると、硬い皮膜の形成に伴い保湿感が損なわれる上に、揮発成分が蒸散してしまう直前に特有のタック感が表れたり、唇同士が接着してしまうなどの強い違和感を生じてしまっていた。
【0007】
他にも二次付着レス効果を高める一般的な技術として、揮発性油剤と多量の粉体を配合し、塗布後に油剤が揮発することで組成物中の粉体比が上昇し、塗布膜のべたつきを低下させる技術が用いられている。しかし、多量の粉体を配合することは強い乾燥感を引き起こし、さらには製剤の粘度が上昇し塗布時の快適さが損なわれてしまっていた。
【0008】
また、揮発性油剤とワックスを配合し、製剤を塗布し油剤が揮発した後に硬化したワックスが唇上に残ることでべたつきを軽減させ二次付着レス効果を向上させる技術も広く用いられている。しかし、ワックスの配合により製剤が硬くなることで使用性に難が生じやすく、さらに口唇においてはワックス特有の硬さがより感じやすく乾燥感にも繋がっていた。
【0009】
上記従来技術は塗布膜のべたつきを軽減することで二次付着レス効果を高めていた。その一方で、特許文献3では、デキストリン脂肪酸エステルと、特定の配合量および配合比率の非揮発性炭化水素油と非揮発性シリコーン油を配合することで、塗布後に不揮発性シリコーン油が表層に染み出してコート膜を形成する技術が開示されている。しかし、この技術では製剤中に水分を配合することや、固形以外の製剤にすることは経時安定性の観点から非常に困難であった。
【0010】
保湿効果を高めるためには、特許文献4のようにポリアクリレートー44と(カプリル/カプリン/ミリスチン/ステアリン酸)トリグリセリルにより唇上の水分を保つ技術や、特許文献5のように糖骨格を有する油ゲル化剤とアスタキサンチン類と特定の高粘度油より塗布膜に十分な厚みを持たせることによって保湿感を付与する技術があったが、いずれも油性化粧料のためみずみずしさに欠け、さらに二次付着レス効果が十分ではなかった。
【0011】
このように、高い保湿感や快適な使用性を持ちながら二次付着レス効果を高めることは、従来技術においては非常に困難であった。
【0012】
さらに油中水型メーキャップ化粧料の抱える課題として、経時安定性があげられる。特に油中水型メーキャップ化粧料は、伸びがよく塗りやすいことから使用性に優れる特徴があるが、乳化系でありながら粉体などを含むことで経時安定性が悪くなる傾向がある。半固形型の油中水型口唇化粧料として、特許文献6のような脂肪酸デキストリンとシリカを配合することで経時安定性を向上させている例があるが、製剤が重くなってしまい伸びの軽さや使用性に劣っていた。さらに半固形の性状では、その粘性によりマスクやカップに付着しやすくなり二次付着レス効果が著しく低下する可能性が高い。
【0013】
また油中水型化粧料においてはワックスを配合することで経時安定性を向上することが一般的であるが、ワックスの配合は前述のように使用性の悪化や乾燥感を引き起こす。
【0014】
以上のことから十分な二次付着レス効果と保湿効果、使用性、経時的安定性を有し、使用感のよい油中水型メーキャップ化粧料を作ることは技術的に大きな課題があった。
【0015】
本発明で用いているポリウレタン-79を配合した従来技術について、特許文献7では、油溶性増粘剤として特定のポリウレタン-79を用いる技術が開示されている。パルミチン酸デキストリンやポリエチレンワックスなどの油溶性ゲル化剤に比べて耐衝撃性や成型性に優れた油性組成物となることが示されている。さらに特許文献8では、ポリウレタン-79は油および油混合物を効率的に増粘またはゲル化する粘度調整剤として開示されている。多種類の油性成分を高い透明性をもちながら増粘することが示されており、様々な油性組成物への増粘による使用性の向上が期待されている。しかし、どちらの文献においてもポリウレタン-79を油中水型組成物のように半固形で保湿性の高い組成物へ配合することを示唆するものではない。さらにポリウレタン-79には皮膜形成性が知られているが、形成される皮膜はシリコーン系樹脂と比較して軟質である。一般的に二次付着レス効果を高めるにはべたつかず、速乾性の高い剛直な皮膜剤を用いることからも、軟質な皮膜では化粧もちの向上効果や、マスクやカップへの二次付着レス効果が得られることは想起できない。
【0016】
有機変性粘土鉱物は一般的に油中水型乳化化粧料の経時安定性向上に用いられることが多く、例えば特許文献9では扁平セルロース粉体と不揮発性液状油、粉体、有機変性粘土鉱物を組み合わせることで油中水型乳化化粧料の経時安定性を改善し、塗布時のずるつきや塗布後のべたつきがない化粧料が報告されている。しかし実施例を見ると有機変性粘土鉱物の配合によりべたつきが大きく改善しているわけではなく、さらには二次付着レス効果が向上するようなデータもないことから、経時安定性の向上と十分な二次付着レス効果の付与については課題を残している。
【0017】
以上のことから、二次付着レス効果の向上において剛直な皮膜を形成することが一般的であったのに対し、軟質な皮膜で二次付着レス効果を見出すことは非常に困難であった。さらに、二次付着レス効果と保湿感・使用性・経時安定性を両立させた油中水型メーキャップ化粧料はこれまでに例がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】特開2005-225806号公報
【文献】特開2006-306860号公報
【文献】国際公開2009/150852号公報
【文献】特開2020-158477号公報
【文献】特開2015-048323号公報
【文献】特開2018-162224号公報
【文献】特開2020-29442号公報
【文献】特表2017-537930号公報
【文献】特開2014-198672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであって、経時安定性を維持しつつ、高い二次付着レス効果と、優れた保湿感、使用性を両立させた油中水型メーキャップ化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するため、本発明者が、鋭意研究した結果、
次の成分(A)~(D)
(A)ポリウレタン-79
(B)デキストリン脂肪酸エステル
(C)有機変性粘土鉱物
(D)揮発性油剤
を含む油中水型メーキャップ化粧料を提供することで、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、経時安定性を維持しつつ、二次付着レス効果、保湿感、使用性に優れた油中水型メーキャップ化粧料を提供することができる。特に、塗布時の使用性や保湿感を損なうことなく、高い二次付着レス効果を有し、なおかつ経時的に安定な油中水型組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明について更に詳しく説明する。なお、特段注釈のない限り、以下で成分の配合量を「%」で表示する場合は質量%を意味する。
【0023】
本発明に用いる成分(A)ポリウレタン-79は、水素添加したポリブタンジオール、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、水添ジリノレイルアルコール及び1,4-ブタンジオールの反応によって得られる共重合体の両末端をステアリルアルコールでブロックしたものである。水素結合によって、広範な液状油で増粘を引き起こす。一般的には増粘剤として用いられているが、本発明では成分(B)デキストリン脂肪酸エステル、(C)有機変性粘土鉱物と組み合わせることで保湿感を十分に感じられる厚みを有しつつも、二次付着レス効果を有する柔軟な塗布膜を形成することを見出した。そのため使用時に柔らかく唇の変形に対する追従性が良好で、べたつきが少なく保湿感があり、使用時の違和感が無いという、今までにないメーキャップ化粧料とすることができる。
【0024】
成分(A)ポリウレタン-79の市販品としては、OILKEMIA 5S POLYNER(LUBRIZOL社製)が挙げられる。
【0025】
成分(A)ポリウレタン-79の配合量は特に限定されないが、経時安定性や使用性に加え、保湿感、二次付着レス効果に優れる等の観点から、0.05~10.0%が好ましく、0.1~7.5%がより好ましい。
【0026】
本発明に用いる成分(B)デキストリン脂肪酸エステルは、デキストリンと脂肪酸とのエステル化物である。化粧料に用いられるものであれば特に限定されず、デキストリンの糖鎖は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、脂肪酸も直鎖状、分岐鎖状のいずれでも良い。
【0027】
成分(B)デキストリン脂肪酸エステルに用いられるデキストリンのグルコース平均重合度は、特に限定されないが、二次付着レス効果、油中水型組成物の経時安定性に優れる等の観点から、3~150であることが好ましく、10~100であることがより好ましい。
【0028】
成分(B)デキストリン脂肪酸エステルに用いられる脂肪酸は、炭素数4~26の直鎖および/または分岐飽和脂肪酸の1種又は2種以上を必須とし、さらに炭素数2~22の直鎖飽和脂肪酸、炭素数6~30の直鎖又は分岐の不飽和脂肪酸、及び炭素数6~30の環状の飽和又は不飽和脂肪酸よりなる群から選ばれる1種又は2種以上を含有してもよいものである。具体的にはパルミチン酸、ステアリン酸、エチルヘキサン酸などの脂肪酸があげられる。
【0029】
成分(B)デキストリン脂肪酸エステルの市販品としては、レオパールKL2、レオパールTL2、レオパールMKL2、レオパールTT2、レオパールWX(以上、千葉製粉社製)等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。
【0030】
本発明における成分(B)デキストリン脂肪酸エステルの含有量は特に限定されないが、二次付着レス効果、使用性、経時安定性に優れる等の観点から、0.1~10.0%が好ましく、0.5~5.0%より好ましい。
【0031】
本発明に用いる成分(C)有機変性粘土鉱物は、水膨潤性粘土鉱物をアルキル四級アンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤でイオン交換して得られるものである。化粧料に一般に使用されるものであれば特に制限されず、いずれのものも使用することが可能であるが、本発明ではベンジルジメチルステアリルアンモニウムイオンで交換されたもの、ジメチルジステアリルアンモニウムイオンで交換されたものが二次付着レス効果や使用性、経時安定性の点で特に好ましい。水膨潤性粘土鉱物としては、例えば三層構造を有するコロイド性含水ケイ酸アルミニウムの一種で、具体的にはモンモリロナイト、ヘクトライト及びラポナイト等の天然又は合成のモンモリロナイト群が挙げられ、特にモンモリロナイト、ヘクトライトが二次付着レス効果や使用性、油中水型組成物の経時安定性の点で好ましい。
【0032】
成分(C)有機変性粘土鉱物の市販品としては、BENTONE GEL 1002 V、BENTONE GEL EUG V、BENTONE GEL GTCC V、BENTONE GEL IHD V、BENTONE GEL IPM V、BENTONE GEL ISD V、BENTONE GEL MIO V、BENTONE GEL PTIS V、BENTONE GEL PTM V、BENTONE GEL VS-5PC V HV、BENTONE 27、BENTONE 38、BENTONE 27V、BENTONE 38V(以上、エレメンティス社製)が挙げられる。また、その他の水膨潤性粘土鉱物、例えばベントナイトとカチオン性化合物を処理し、任意の変性率の有機変性粘土鉱物としたのち本発明に応用したものであってもよい。さらに、これらの水膨潤性粘土鉱物とカチオン性化合物をそれぞれ別々に配合し、本発明の油中水型乳化化粧料の系内で有機変性粘土鉱物とせしめることも可能である。これら成分(C)の有機変性粘土鉱物は1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0033】
本発明における成分(C)有機変性粘土鉱物の含有量は特に限定されないが、二次付着レス効果、使用性、経時安定性に優れる等の観点から、0.01~10.0%が好ましく、0.1~7.5%がより好ましい。
【0034】
(D)揮発性油剤は、組成物を塗布する際に使用しやすいように固さ、粘稠性を調整するために必要である。つまり使用する時には柔らかく均一に塗布でき、塗布後に揮発することで、柔軟でべたつきのない二次付着レス効果を有する皮膜を形成させるために必要である。本発明に用いる成分(D)揮発性油剤は、1気圧での沸点が270℃以下で揮発性を有するものとする。通常化粧料に用いられるものであれば特に限定されない。具体的には、軽質イソパラフィン、イソドデカン、イソヘキサデカン等の炭化水素油、ジメチルポリシロキサン、メチルトリメチコン、エチルトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等のシリコーン油等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。本発明においては、二次付着レス効果や使用性の観点からイソドデカンや軽質流動イソパラフィンが望ましい。
【0035】
本発明に用いる成分(D)揮発性油剤の含有量は特に限定されないが、二次付着レス効果、使用性、経時安定性等の観点から、5.0~40.0%が好ましく、10.0~30.0%がより好ましい。
【0036】
本発明に用いる成分(E)ペースト油は25℃で半固形状であり、融点が25~70℃のものであれば特に制限されず、例えば、ワセリン、水添ポリイソブテン等の炭化水素油や、水添パーム油、シア脂、カカオ脂等の植物油、オレイン酸フィトステリル、テトラ(ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリチル、テトライソステアリン酸ペンタエリトリット、トリ(カプリル酸/カプリン酸/ミリスチン酸/ステアリン酸)グリセリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、(エチルヘキサン酸/ステアリン酸/アジピン酸)グリセリル、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル)等のエステル油等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。本発明において二次付着レス効果を損なうことなく、保湿性を高めるペースト油としてはN-アシルアミノ酸エステルおよびダイマー酸が非常に好ましく、中でも特にテトラ(ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリチル、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル、およびダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル)が好ましい。
【0037】
本発明に用いる成分(E)ペースト油の含有量は特に限定されないが、二次付着レス効果を維持しながら保湿感を高めるには、1.0~50.0%が好ましく、5.0~40.0%がより好ましい。
【0038】
本発明の組成物には、上記の必須成分のほかに、必要に応じ一般的に化粧料などに用いられる成分を配合することも可能である。例えば、パール剤、保湿剤、水溶性高分子、香料、殺菌剤、防腐剤、酸化防止剤、pH調整剤、キレート剤、紫外線吸収剤、抗炎症剤、抗酸化剤、清涼剤、生薬抽出物やビタミン類等の添加物を適時配合することができる。これら成分を含有させる場合の配合割合は、その種類や目的に応じて適宜選択することができ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。
【実施例】
【0039】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に説明する。メーキャップ化粧料としては、口紅、リップグロス、頬紅、及びアイシャドウなどがあるが、二次付着レス効果と保湿感、経時安定性、使用性の改善がもっとも難しい口唇化粧料において実施例と比較例を示す。これら実施例は本発明を何ら限定するものではない。
【0040】
<保湿感評価方法>
保湿感評価試験は、評価試料を唇に塗布し6時間後の保湿感について、10名の専門判定員が以下の評価基準に従って評価点をつけ、その平均点に従って、4.0以上を◎、3.0以上4.0未満を○、2.0以上3.0未満を△、2.0未満を×とした。
【0041】
(評価基準)
5:非常に保湿感がある。
4:保湿感がある。
3:どちらともいえない。
2:乾燥感がある。
1:非常に乾燥感がある。
【0042】
<使用性評価方法>
使用性評価試験はPET樹脂製の底面積1.5cm2、高さ7cmの円柱状の透明容器に製剤を5g充填し、中栓をした後にフロッキーチップを差し込んで製剤を取り、唇に塗布したときの唇への塗りやすさを評価した。10名の専門判定員が塗りやすいかどうかを判断し、以下の評価基準に従って評価した。
【0043】
(評価基準)
◎:塗りやすいと答えた人が8人以上
〇:塗りやすいと答えた人が4人以上~7人以下
×:塗りやすいと答えた人が3人以下
【0044】
<二次付着レス効果評価方法>
使用性評価試験は、製剤0.25gを人工皮革(サプラーレ:出光テクノファイン製)に5cm角の正方形状にフロッキーチップで均一に塗布し、1分間放置してなじませた後、ポリプロピレン製の白い不織布(スプリトップSP-1070E:前田工繊製、目付70g/m2)を乗せ、さらにその上から50gの分銅を1回乗せた後の不織布への色移りの量を目視で観察した。専門判定員が以下の評価基準に従って評価点をつけた。
【0045】
(評価基準)
◎:不織布に全く色が付かない
○:不織布に僅かに色が付く
×:不織布に明らかに色が付く
【0046】
<経時安定性評価方法>
調製した製剤をAS樹脂製の底面積12.5cm2、高さ3cmの透明な円柱状のジャー容器に10g充填し、40℃下で2週間静置した。2週間後、40℃での分離状態を専門判定員が目視にて確認した。
【0047】
<評価基準>
◎:分離なし
〇:表層に液状成分がわずかににじんでいるが、問題ないレベル
×:液状成分が分離している
【0048】
【表1】
*1:レオパールKL2(千葉製粉社製)
*2:レオパールTT2(千葉製粉社製)
【0049】
【0050】
表1および表2の結果から明らかな如く、実施例1~11の油中水型メーキャップ化粧料は、ニ次付着レス、保湿感、使用性、経時安定性の全てにおいて良好なものであった。成分(E)を加えた実施例12~14は二次付着レス効果を維持させたまま、保湿感をさらに向上させる効果があるため、より油中水型メーキャップ化粧料として優れたものになっていることがわかる。以上の結果からも、成分(A)~(D)、及び(E)を含む油中水型メーキャップ化粧料は、ニ次付着レス、保湿感、使用性、経時安定性に優れたものであることが言える。
【0051】
比較例1と実施例1を比較すると、二次付着レス効果や使用性、経時安定性が顕著に悪化しており、保湿感も悪化する傾向が見られた。軟質な皮膜形成能を有する成分を配合した比較例2、剛直な皮膜形成能を有する成分を配合した比較例3~5では、いずれも満足のいく二次付着レス効果を実現することはできず、保湿感や使用性、経時安定性も悪化する傾向であった。比較例6~7は成分(B)を抜いた例、類似の成分に置き換えた例であるが、比較例6は二次付着レス効果や経時安定性、比較例7は二次付着レス効果や使用性、経時安定性が悪化している。また比較例8は成分(B)の代わりに、ワックスを用いているが、顕著に保湿感が悪くなり、製剤が硬くなることから使用性も悪化傾向である。したがって成分(B)は本発明において必須であることがわかる。
比較例9、10は成分(C)を抜いた例、もしくは類似の成分に置き換えた例であるが、二次付着レス効果が若干悪化し、使用性や経時安定性は顕著に悪くなることがわかった。成分(D)を抜いた比較例11は、二次付着レス効果が悪化するだけでなく、製剤が硬くなり使用性にも顕著な課題を生じさせた。以上のことからも成分(A)~(D)は他の類似の性質を有するものに置き換えることができないことがわかる。したがって、成分(A)~(D)、及び(E)を配合することで本願課題を解決することができる。
【0052】
常法にて、各処方の組成物を作製した。いずれの処方においても本発明の効果を奏することが確認された。
【0053】
<口紅>
配合成分 配合量(%)
1.ポリウレタン-79 0.05
2.(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン 10.0
3.ジステアルジモニウムヘクトライト 0.01
4.イソドデカン 40.0
5.ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル) 1.0
6.イソステアリン酸ポリグリセリル-2 4.0
7.ジイソステアリン酸ポリグリセリル-3 4.0
8.トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル 0.05
9.炭酸プロピレン 0.005
10.1,3-ブチレングリコール 4.0
11.赤202 0.3
12.酸化鉄 0.5
13.酸化チタン 1.00
14.精製水 to 100%
15.2-フェノキシエタノール 適量
【0054】
<口紅>
配合成分 配合量(%)
1.ポリウレタン-79 10.0
2.(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン 0.1
3.ジステアルジモニウムヘクトライト 10.0
4.イソドデカン 5.0
5.ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル) 30.0
6.イソステアリン酸ポリグリセリル-2 4.0
7.ジイソステアリン酸ポリグリセリル-3 4.0
8.トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル 10.0
9.炭酸プロピレン 5.0
10.1,3-ブチレングリコール 4.0
11.赤202 0.3
12.酸化鉄 0.5
13.酸化チタン 1.0
14.精製水 to 100%
15.2-フェノキシエタノール 適量
【0055】
<口紅>
配合成分 配合量(%)
1.ポリウレタン-79 1.0
2.(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン 1.0
3.ミリスチン酸デキストリン 1.0
4.(パルミチン酸/ヘキシルデカン酸)デキストリン 1.0
5.ジステアルジモニウムヘクトライト 2.0
6.イソドデカン 6.0
7.軽質イソパラフィン 6.0
8.イソヘキサデカン 6.0
9.ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル) 6.25
10.ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル) 6.25
11.ワセリン 6.25
12.シア脂 6.25
13.テトラ(ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリチル 6.25
14.テトライソステアリン酸ペンタエリトリット 6.25
15.トリ(カプリル酸/カプリン酸/ミリスチン酸/ステアリン酸)グリセリル 6.25
16.マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル 6.25
17.イソステアリン酸ポリグリセリル-2 4.0
18.ジイソステアリン酸ポリグリセリル-3 4.0
19.トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル 1.0
20.炭酸プロピレン 1.0
21.1,3-ブチレングリコール 4.0
22.赤202 0.3
23.酸化鉄 0.5
24.酸化チタン 1.0
25.グリチルリチン酸ステアリル 0.05
26.アスコルビルグルコシド 0.01
27.3-O-エチルアスコルビン酸 0.0001
28.パルミチン酸アスコルビルリン酸3Na 0.0001
29.ヒアルロン酸 0.0001
30.ジラウロイルグルタミン酸リシンNa 0.0001
31.パルミチン酸レチノール 0.01
32.レチノイン酸トコフェリル 0.01
33.アスタキサンチン 0.001
34.精製水 to 100%
35.2-フェノキシエタノール 適量
【0056】
<アイシャドウ>
配合成分 配合量(%)
1.ポリウレタン-79 1.0
2.(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン 2.0
3.ジステアルジモニウムヘクトライト 2.5
4.イソドデカン 16.0
5.イソステアリン酸ポリグリセリル-2 4.0
6.トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル 1.0
7.炭酸プロピレン 1.25
8.1.3-ブチレングリコール 8.0
9.赤202 0.3
10.黄4 0.1
11.グンジョウ 0.05
12.酸化鉄 0.5
13.酸化チタン 1.0
14.マイカ 2.0
15.ホウケイ酸(Ca/Al) 2.0
16.合成フルオロゴパイト 2.0
17.精製水 to 100%
18.2-フェノキシエタノール 適量
【0057】
<ほほ紅>
配合成分 配合量(%)
1.ポリウレタン-79 1.0
2.(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン 2.0
3.ジステアルジモニウムヘクトライト 2.5
4.イソドデカン 16.0
5.イソステアリン酸ポリグリセリル-2 4.0
6.ジイソステアリン酸ポリグリセリル-3 4.0
7.トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル 1.0
8.炭酸プロピレン 1.25
9.1.3-ブチレングリコール 8.0
10.赤202 0.3
11.黄4 0.1
12.グンジョウ 0.05
13.酸化鉄 0.5
14.酸化チタン 1.0
15.マイカ 1.0
16.窒化ホウ素 1.0
17.タルク 1.0
18.ラウロイルリシン 1.0
19.(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー
1.0
20.ラウリン酸亜鉛 1.0
21.ポリメタクリル酸メチル 1.0
22.精製水 to 100%
23.2-フェノキシエタノール 適量
【0058】
<サンスクリーン>
配合成分 配合量(%)
1.ポリウレタン-79 1.0
2.(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン 2.0
3.ジステアルジモニウムヘクトライト 2.5
4.イソドデカン 16.0
5.イソステアリン酸ポリグリセリル-2 4.0
6.ジイソステアリン酸ポリグリセリル-3 4.0
7.トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル 1.0
8.炭酸プロピレン 1.25
9.1.3-ブチレングリコール 8.0
10.酸化鉄 0.5
11.酸化チタン 6.0
12.微粒子酸化チタン 3.0
13.酸化亜鉛 3.0
14.ジメチルシリル化シリカ 1.0
15.シリカ 1.0
16.精製水 to 100%
17.2-フェノキシエタノール 適量
【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、経時安定性を維持しつつ、二次付着レス効果、保湿感、使用性に優れた油中水型メーキャップ化粧料を提供することを課題とする。
【解決手段】次の成分(A)~(D)
(A)ポリウレタン-79
(B)デキストリン脂肪酸エステル
(C)有機変性粘土鉱物
(D)揮発性油剤
を含む油中水型メーキャップ化粧料である。
【効果】本発明によれば、経時安定性を維持しつつ、二次付着レス効果、保湿感、使用性に優れた油中水型メーキャップ化粧料を提供することができる。特に、塗布時の使用性や保湿感を損なうことなく、高い二次付着レス効果を有し、なおかつ経時的に安定な油中水型組成物を提供することができる。
【選択図】なし