IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日鐵住金株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-焼結機 図1
  • 特許-焼結機 図2
  • 特許-焼結機 図3
  • 特許-焼結機 図4
  • 特許-焼結機 図5
  • 特許-焼結機 図6
  • 特許-焼結機 図7
  • 特許-焼結機 図8
  • 特許-焼結機 図9
  • 特許-焼結機 図10
  • 特許-焼結機 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】焼結機
(51)【国際特許分類】
   F27B 21/08 20060101AFI20230720BHJP
【FI】
F27B21/08 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019010560
(22)【出願日】2019-01-24
(65)【公開番号】P2020118379
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001553
【氏名又は名称】アセンド弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】森下 茂
(72)【発明者】
【氏名】森田 雄介
(72)【発明者】
【氏名】川崎 元靖
(72)【発明者】
【氏名】後藤 克弥
【審査官】櫛引 明佳
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-151432(JP,A)
【文献】実開昭55-079798(JP,U)
【文献】実開昭60-187899(JP,U)
【文献】中国実用新案第205909692(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 21/00-21/14
C22B 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料を供給する給鉱部から前記原料が供給される供給箇所、点火炉によって前記原料に点火する点火箇所、及び、前記原料を焼成して得られた焼結鉱を排鉱部に排出する排出箇所を経由する環状の搬送路と、
前記搬送路に沿って一列に配置され、前記供給箇所から前記排出箇所に向かう方向に前記搬送路を周回移動自在な複数のパレット台車と、
を備え、
前記搬送路は、
前記供給箇所及び前記点火箇所を経由する直線状の往路と、
前記往路の下方に対向して配置された復路と、
前記往路から前記復路へ前記複数のパレット台車を案内するカーブトラックと、
前記復路から前記往路へ前記複数のパレット台車を移動させるスプロケットと、を含み、
前記カーブトラックは、始端から下方に傾斜し、前記パレット台車が自重で滑走する直線部を含み
記往路上の前記点火箇所から前記カーブトラックの始端までの区間に対応する位置に固定状態で設けられ、前記パレット台車を制動する制動装置を備えている焼結機。
【請求項2】
請求項1に記載の焼結機であって、
前記パレット台車は、被接触体を含み、
前記制動装置は、前記被接触体に接触する接触状態と、前記被接触体に接触しない非接触状態とに切替え自在に構成され、
前記焼結機はさらに、前記制動装置を前記非接触状態に維持する非接触維持部を備えている焼結機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の焼結機であって、
前記往路の下方には、複数の風箱が前記パレット台車の進行方向に沿って相互に隣接して配置され、
前記制動装置は、前記原料の焼成が完了した箇所である、前記風箱のうち排ガス温度が最高値となる風箱の直上の往路の箇所から前記カーブトラックの始端までの区間に配置されている焼結機。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の焼結機であって、
前記パレット台車は、被接触体を含み、
前記制動装置は、
弾性部材と、
前記弾性部材に取り付けられたコロ群と、を含み、
前記コロ群を前記パレット台車の前記被接触体に押し当てて制動する、焼結機。
【請求項5】
請求項4に記載の焼結機であって、
前記弾性部材は、
大コイルばねと、
前記大コイルばねよりも前記パレット台車の進行方向の後流に配置され、前記大コイルばねよりもばね定数が小さい小コイルばねと、を含む、焼結機。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の焼結機であって、
前記コロ群は、前記パレット台車の前記被接触体に押し当てられる下面を有し、
前記コロ群の前記下面は、前記パレット台車の進行方向で上流側ほど前記往路との離間距離が大きくなる姿勢で配置されている、焼結機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結機に関する。さらに詳しくは、環状の搬送路の排鉱部側の折り返し部分でパレット台車が自重により走行する固定カーブトラック式(コッパース式)の焼結機に関する。
【背景技術】
【0002】
銑鉄を製造する際、高炉には原料の1つとして焼結鉱が投入される。焼結鉱は、焼結機を用いて次のようにして製造される。
【0003】
まず、給鉱部から供給される鉄鉱石、粉コークスを含む原料を、環状の搬送路の往路に配置された複数のパレット台車に積載する。次に、点火炉を用いて粉コークスに点火し、パレット台車が複数の風箱群上を通る。風箱群により原料に空気を供給し、粉コークスを燃焼させ、鉄鉱石を部分溶融させる。これにより、原料が焼き固められ焼結鉱が生成される。その後、パレット台車が排鉱部近傍に到達し、生成された焼結鉱がクラッシャーによって破砕され、排鉱部に排出される。焼結鉱を排出した後、パレット台車は搬送路の復路を給鉱部側に向かって走行し、パレット台車には再び給鉱部から原料が積載される。
【0004】
このように周回軌道を形成する環状の搬送路を有する焼結機は、ドワイトロイド式焼結機と呼ばれる。ドワイトロイド式焼結機には、大別すると、排鉱部のパレットが反転する側が固定カーブトラック式(コッパース式)と、パレット台車がはまり込むスプロケットを具備した移動フレーム式(ルルギ式)とがある。両者は、排鉱部側のパレット台車が反転する部分(搬送路の往路から復路へ折り返す部分)の構造が異なる。
【0005】
固定カーブトラック式では、排鉱部側のパレット台車が反転する部分にパレット台車の走行状態を制御する機構(パレット台車に外力を加える機構)は設けられず、カーブトラックが設けられる。
【0006】
カーブトラックは、パレット台車を往路から復路へ案内するレールで構成される。パレット台車は、常温で焼結機無端軌道上に上架し、規定台数の合計長さが無端軌道周長よりわずかに短くなるようにカーブトラックの位置が決定されている。これにより、操業時に原料が燃焼を繰り返す時にパレット台車本体の温度が上がり熱膨張した長さを吸収するようにしている。また、操業中にパレット台車を取り替えたりするとき、排鉱部にあるパレット台車間の隙間を詰めて、取り換える台車の両側に隙間を作ったりするための余裕代としての長さが必須である。
【0007】
例えば、152台のパレット台車が焼結機へ上載する台数とし、パレット台車一台当たりの長さが1.0mとして、常温25℃のパレット台車を上載し、操業時パレット台車の温度が250℃まで上がったとすると、一台当たり概ね2.5mm熱膨張するので、152台では380mm周長が長くなる。隣接するパレット台車間にダスト等を挟んで生じる隙間を平均0.2mmとすれば、0.2×152/2=15.2mm、さらに熱間でパレット台車を取り替えるために必要な隙間が100mmとすれば、冷間時の焼結機周長は、冷間のパレット台車の合計長さより、380+15+100=495mm以上、長く取っておく必要があることになる。そうすることで操業中は、100mmの隙間を確保することができる。
【0008】
しかしながら、原料を焼き固める焼結機の往路上において前後するパレット台車間に隙間が生じると、空気がパレット台車の側方から往路の下方に配置された風箱群に吸い込まれるようになる。原料を積載しているグレートバーよりも上方において側方から吸い込まれる空気はさほど問題にはならないが、グレートバーよりも下方において側方から吸い込まれる空気は原料を通過せずに風箱群に吸い込まれる。そのため、原料の焼成に何ら寄与しない、いわゆる漏風を吸い込むことになる。
【0009】
また、往路上において前後するパレット台車間に隙間が生じると、前後のパレット台車のグレートバーにより構成されるグレート面にも隙間が生じる。グレート面の隙間が過大であると、積載されている原料の一部がこの隙間から抜け落ち、竪穴(ラットホール)が開いてしまうことがある。ラットホールには原料が存在しないため、ラットホールを通過して風箱群へ吸い込まれる空気は、原料の焼成に何ら寄与しないため、漏風として大気を吸い込むことになる。
【0010】
漏風対策としては例えば、特公平6-92621号公報(特許文献1)に開示されている。
【0011】
特許文献1の焼結機では、給鉱側のスプロケットを駆動するモータの電流値、回転数等及び排鉱側のスプロケットを支持する移動フレームの位置を検出し、パレット台車の走行状態、焼結機の負荷状態をオンラインで判定できる。これにより、漏風等の諸問題が生じたときに迅速に対処できるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特公平6-92621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1の焼結機では漏風が生じていることは判定できるが、漏風が生じることを抑制できるわけではない。また、特許文献1の焼結機は移動フレーム式である。移動フレーム式では、給鉱部側及び排鉱部側の双方のパレット台車が反転する部分にスプロケットが設けられる。パレット台車がスプロケットに差し掛かると、パレット台車の車輪軸に付いているローラがスプロケットの歯に掛かり、パレット台車の走行がスプロケットによって制御される。すなわち、移動フレーム式はそもそも前後のパレット台車間に隙間が生じにくいように構成されている。したがって、パレット台車の隙間に関する移動フレーム式の技術を固定カーブトラック式に適用しても同様の効果が得られるかは不明である。
【0014】
本発明の目的は、漏風を抑制できる固定カーブトラック式焼結機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本実施形態の焼結機は、原料を供給する給鉱部から原料が供給される供給箇所、点火炉によって原料に点火する点火箇所、及び、原料を焼成して得られた焼結鉱を排鉱部に排出する排出箇所を経由する環状の搬送路と、搬送路に沿って一列に配置され、供給箇所から排出箇所に向かう方向に搬送路を周回移動自在な複数のパレット台車と、を備える。搬送路は、供給箇所及び点火箇所を経由する直線状の往路と、往路の下方に対向して配置された復路と、往路から復路へ複数のパレット台車を案内するカーブトラックと、復路から往路へ複数のパレット台車を移動させるスプロケットと、を含む。焼結機はさらに、点火箇所からカーブトラックの始端までの区間において、パレット台車を制動する制動装置を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明の固定カーブトラック式焼結機によれば、漏風を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、第1実施形態の焼結機の側面図である。
図2図2は、図1のカーブトラック近傍の拡大図である。
図3図3は、焼結機の側面から見た制動装置の一部断面図である。
図4図4は、焼結機の正面から見た制動装置の一部断面図である。
図5図5は、焼結機の側面から見た制動装置の配置を示す図である。
図6図6は、焼結機の正面から見た制動装置の配置を示す図である。
図7図7は、焼結機の側面から見た第1実施形態の焼結機の非接触維持部の概略図である。
図8図8は、第2実施形態の焼結機の正面から見た制動装置の配置を示す図である。
図9図9は、焼結機の側面から見た第4実施形態の制動装置の一部断面図である。
図10図10は、焼結機の側面から見た第5実施形態の制動装置の一部断面図である。
図11図11は、従来技術の固定カーブトラック式焼結機のカーブトラック近傍のパレット台車を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0019】
本発明者らは、固定カーブトラック式焼結機(以下、単に焼結機という。)で漏風が生じる原因について検討した。
【0020】
上述したように、固定カーブトラック式では、移動フレーム式のようにパレット台車を排鉱部側から給鉱部側に押し付ける機構がない。そのため、パレット台車間に原料等が挟まったり、パレット台車が熱膨張したりすると、全パレット台車の進行方向の長さの合計(以下、パレット台車の周長という)が長くなる。パレット台車の周長の変化を吸収するために、固定カーブトラック式では、カーブトラックの周長がカーブトラックを通過しているパレット台車の周長よりも長く設定される。しかしながら、カーブトラックの周長を長く設定することで、次のような事態が生じる。
【0021】
図11は、従来技術の固定カーブトラック式焼結機のカーブトラック近傍のパレット台車を示す図である。カーブトラック13に進入した直後のパレット台車3と、このパレット台車の1台前のパレット台車との間には、カーブトラック13の周長がパレット台車の周長より大きい分、隙間Sが空いている。そのため、カーブトラック13に進入したパレット台車3はカーブトラック13の勾配により自重でカーブトラック13を走行し始める(滑走し始める)。
【0022】
その一方で、往路11上では焼結鉱の原料が焼き固められるため、往路11を走行中のパレット台車3及びカーブトラック13に進入した直後のパレット台車3に積載されている焼結鉱30は、一体的に繋がっている。先行するパレット台車3と後行するパレット台車とが焼結鉱30を介して繋がっているため、先行するパレット台車3が自重で走行し始めると、先行するパレット台車3がまだ往路11上を走行している後行するパレット台車を牽引するように引きずり、後行するパレット台車とさらに後ろのパレット台車との間に隙間が生じることになり、漏風が生じることになる。
【0023】
そこで、本発明者らは、まだ往路11上を走行しているパレット台車がカーブトラック13に進入した先行するパレット台車3に引きずられないようにすれば、往路11上を走行中の後行するパレット台車間に隙間が生じることを抑制できると考えた。そして、カーブトラック13に進入した先行するパレット台車3の影響を受ける可能性のある往路11上のパレット台車に走行抵抗を与えることで、往路11上のパレット台車に隙間が生じることを抑制でき、漏風が生じることを抑制できることを見出した。
【0024】
以上の知見に基づいた本実施形態の焼結機は、次の通りである。
【0025】
(1)本実施形態の焼結機は、原料を供給する給鉱部から原料が供給される供給箇所、点火炉によって原料に点火する点火箇所、及び、原料を焼成して得られた焼結鉱を排鉱部に排出する排出箇所を経由する環状の搬送路と、搬送路に沿って一列に配置され、供給箇所から排出箇所に向かう方向に搬送路を周回移動自在な複数のパレット台車と、を備える。搬送路は、供給箇所及び点火箇所を経由する直線状の往路と、往路の下方に対向して配置された復路と、往路から復路へ複数のパレット台車を案内するカーブトラックと、復路から往路へ複数のパレット台車を移動させるスプロケットと、を含む。焼結機はさらに、点火箇所からカーブトラックの始端までの区間において、パレット台車を制動する制動装置を備える。
【0026】
上記(1)の焼結機は、往路から復路への折り返し部分にスプロケット等のパレット台車の間隔を制御する機構がない固定カーブトラック式である。つまり、上述したようにカーブトラックでは焼結鉱が分裂することによりパレット台車が自重で走行する。制動装置は、この自重により走行するパレット台車によって進行方向に引きずられる後行するパレット台車(点火箇所からカーブトラックの始端までの区間を走行するパレット台車)を制動する。これにより、自重により走行するパレット台車によって後行するパレット台車が進行方向に引きずられることが抑制され、後行するパレット台車間に隙間が生じることが抑制される。すなわち、漏風が抑制される。
【0027】
(2)上記(1)の焼結機において、パレット台車は、被接触体を含み、制動装置は、被接触体に接触する接触状態と、被接触体に接触しない非接触状態とに切替え自在に構成され、焼結機はさらに、制動装置を非接触状態に維持する非接触維持部を備えているのが好ましい。
【0028】
上記(2)の焼結機によれば、次のような効果を奏する。パレット台車の制動される部分(被接触体、例えば車輪)が制動装置と往路との間を抜け出るとき、制動装置によりパレット台車が進行方向に押し出されようとする。しかしながら、非接触維持部が制動装置と被接触体(例えば車輪)との非接触状態を維持するため、パレット台車が進行方向に押し出されることが抑制され、漏風がさらに抑制される。
【0029】
(3)上記(1)又は(2)の焼結機において、制動装置は、原料の焼成が完了した箇所からカーブトラックの始端までの区間に配置されているのが好ましい。
【0030】
上記(3)の焼結機によれば、自重により走行するパレット台車に最も引きずられやすい原料の焼成が完了した箇所からカーブトラックの始端までのパレット台車を制動することができる。これにより、効果的に点火箇所からカーブトラックの始端までの区間を走行するパレット台車間に隙間が生じることを抑制できる。
【0031】
(4)上記(1)~(3)のいずれかの焼結機において、制動装置は、弾性部材と、弾性部材に取り付けられたコロ群と、を含み、コロ群をパレット台車に押し当てて制動するのが好ましい。
【0032】
上記(4)の焼結機によれば、制動装置のコロ群がパレット台車(例えばパレット台車の車輪)に押し当てられるため、パレット台車と制動装置との接触による摩擦が軽減され、パレット台車の寿命が長くなる。
【0033】
(5)上記(4)の焼結機において、弾性部材は、大コイルばねと、大コイルばねよりもパレット台車の進行方向の後流に配置され、大コイルばねよりもばね定数が小さい小コイルばねと、を含むのが好ましい。
【0034】
上記(5)の焼結機によれば、制動装置が、パレット台車(例えばパレット台車の車輪)をまず小コイルばねの作用により減速させ、次に大コイルばねの作用により制動する。つまり、パレット台車を段階的に徐々に減速させることができ、パレット台車と制動装置のコロ群との摩擦が軽減され、パレット台車の寿命が長くなる。また、パレット台車を徐々に減速させることで、パレット台車に積載されている焼結鉱がグレートバー表面で滑ることが急制動時より緩制動時の方が少なくなるため、焼結鉱がパレット台車へ与える進行方向の力が少なくなり、グレートバー支持部材の割損などの悪影響が小さくなる。
【0035】
(6)上記(1)~(5)のいずれかの焼結機において、コロ群の下面の勾配は、コロ群の下面と対向する点火箇所からカーブトラックの始端までの区間の勾配よりも大きいのが好ましい。
【0036】
上記(6)の焼結機によれば、制動装置のコロ群の後流側(パレット台車が進入してくる側)が大きく開かれているため、パレット台車がコロ群と点火箇所からカーブトラックの始端までの区間(往路上の区間)との間に進入しやすい。
【0037】
以下、本実施形態の焼結機についてさらに詳しく説明する。
【0038】
[第1実施形態]
第1実施形態の焼結機について説明する。
【0039】
[焼結機]
図1は、第1実施形態の焼結機の側面図である。焼結機1は、搬送路2と、複数のパレット台車3と、制動装置4と、を含む。
【0040】
[搬送路]
搬送路2は、周回経路を形成する環状の搬送路である。搬送路2は、往路11と、復路12と、カーブトラック13と、スプロケット14と、を含む。
【0041】
往路11は、複数のパレット台車3が走行するレールである。往路11は、給鉱部5及び点火炉7の下方に配置され、水平方向に直線状に延びる。往路11を走行するパレット台車3には給鉱部5から焼結鉱の原料が供給される。本明細書では、原料が供給される往路11上の領域(往路11の給鉱部5の直下の領域)を供給箇所という。すなわち、往路11は供給箇所を経由する。
【0042】
供給箇所でパレット台車3に積載された原料は点火炉7によって点火され、燃焼する。本明細書では、点火炉7によって原料に点火する領域(往路11の点火炉7の直下の領域)を点火箇所という。すなわち、往路11は点火箇所22を経由する。点火された原料は往路11を走行中にパレット台車3上で焼き固められ(焼成され)、焼結鉱となる。
【0043】
往路11の下方には複数の風箱31(風箱群)が配置される。風箱31内は大気圧よりも低い圧力(負圧)に設定されており、往路11周辺の空気を吸引し、往路11上での原料の燃焼を促進する。吸引された空気は、図示しない排ダクトへ排出される。
【0044】
復路12は、往路11同様に複数のパレット台車3が走行するレールであり、焼結鉱を排鉱部6に排出したパレット台車3が走行する。復路12は、往路11及び風箱31の下方に配置され、往路11に沿って水平方向に直線状に延びる。すなわち、復路12は往路11に上下方向において対向して配置される。
【0045】
カーブトラック13は、複数のパレット台車3が走行するレールであり、往路11の排鉱部6側の端(カーブトラック13の始端21)と、復路12の排鉱部6側の端(カーブトラック13の終端)とを繋ぐ。すなわち、カーブトラック13は、パレット台車3の進行方向を反転させ、往路11から復路12へパレット台車3を案内する。なお、本明細書において「案内する」とは、スプロケット等のパレット台車に外力を与える機構を用いず、パレット台車を誘導することを意味する。
【0046】
図2は、図1のカーブトラック近傍の拡大図である。カーブトラック13は、直線部13Aと、曲線部13Bと、を含む。直線部13Aは、往路11の排鉱部側の端(カーブトラック13の始端21)から延び、下方に傾斜している。曲線部13Bは、直線部13Aのパレット台車の進行方向下流側の端から延び、焼結機の側面から見て円弧状に湾曲している。曲線部13Bのパレット台車の進行方向下流側の端は、復路12の排鉱部側の端に繋がる。なお、本明細書において「焼結機の側面から見て」とは、パレット台車3の進行方向を向いた際の左右方向から焼結機を見ることを意味する。
【0047】
カーブトラック13はさらに、ガイドレール15を含む。ガイドレール15は、直線部13A及び曲線部13Bから外側に一定の距離を置いて設けられ、直線部13A及び曲線部13Bに沿って延びる。ガイドレール15と直線部13A及び曲線部13Bとの間には、パレット台車3の車輪が通る。すなわち、ガイドレール15はパレット台車3が搬送路から脱線することを防止する。
【0048】
図1を参照して、カーブトラック13を走行中に、パレット台車3の上下は反転する。この際、パレット台車3に積載されている焼結鉱が排鉱部6に排出される。本明細書では、パレット台車に積載されている焼結鉱を排鉱部6に排出するカーブトラック13上の領域(カーブトラック13の排鉱部6の直上の領域)を排出箇所という。すなわち、カーブトラック13は排出箇所を経由する。
【0049】
スプロケット14は、復路12の給鉱部5側の端と、往路11の給鉱部5側の端とを繋ぐ。スプロケット14は、図示しない駆動装置によって回転する。スプロケット14は、復路12の給鉱部5側の端に到着したパレット台車3の車軸にスプロケットの歯を引っ掛け、パレット台車3を往路11の給鉱部5側の端へ移動させる。
【0050】
[パレット台車]
複数のパレット台車3は、搬送路2に沿って一列に配置され、供給箇所から排出箇所に向かう方向に搬送路2を周回移動自在に走行する。パレット台車3は、フレームと、グレートバーと、被接触体(第1実施形態では車輪)とを含む。フレームはパレット台車の進行方向から見て左右両側に跨る矩形の箱状の形状を成しており、通気のため上方から見ると概略格子状の空間を持つ形状である。グレートバーは左右のフレームの概略格子状の空間に跨るように配置され火格子面を構成する。グレートバー上には焼結鉱の原料又は生成された焼結鉱が積載される。被接触体は、第1実施形態では車輪である。被接触体は、後述する制動装置と接触するパレット台車の部分を意味する。パレット台車は、周知の構成であるのでその構成の詳細な説明は省略する。
【0051】
[制動装置]
図3は、焼結機の側面から見た制動装置の一部断面図である。制動装置4は、弾性部材8と、コロ群9と、を含む。弾性部材8はたとえば、皿ばね、コイルばね等である。第1実施形態では弾性部材が皿ばねである場合について説明する。コロ群9は、長円形の周回状に配置された複数のコロ10を含む。コロ10は、鋼等の金属からなる。コロ10は、平滑な外周面を含む円筒形状である。コロ10は、中心軸がパレット台車の進行方向から見て左右方向に沿うように配置される。複数のコロ10は、隣接するコロ同士連結されており、各コロ10は中心軸周りに自転可能になっている。
【0052】
図4は、焼結機の正面から見た制動装置の一部断面図である。制動装置4はさらに、上壁16と、下壁17と、支持軸18と、2つの連結部材19と、コロ群支持部材20と、を含む。上壁16は、皿ばね受け部材であり、焼結機を覆うフレーム等の固定された部材に取り付けられる。下壁17は、自由側の皿ばね受け部材であり、皿ばねの伸縮量、コロの変位量に応じてその位置を変化させることができる。上壁16と下壁17との間には弾性部材8が設けられる。支持軸18は、下壁17から上壁16に向かって延び、支持軸18の下方側の端は下壁17に固定される。支持軸18は、上壁16に設けられた孔を貫通し、支持軸18の上方側の端は自由端となっている。
【0053】
2つの連結部材19は、焼結機の正面から見てコロ群9の両側にそれぞれ配置され、下壁17に固定される。コロ群支持部材20は、2つの連結部材19に支持される。
【0054】
図3を参照して、焼結機の側面から見て、コロ群支持部材20はパレット台車の進行方向を長手方向とする平板である。コロ群支持部材20は、周回状に配置されたコロ群9の内周側に配置され、コロ群9を支持する。
【0055】
[制動装置の配置]
図1を参照して、制動装置の配置について説明する。上述したように、往路11上での漏風は、前後のパレット台車3が焼結鉱によって繋がれることで生じる。パレット台車3に積載された原料が完全に焼き固められ焼結鉱となるのは、カーブトラックに進入する少し前である。しかしながら、点火箇所22を過ぎた原料は上層から下層に向かって徐々に焼き固められるため、点火箇所22の直ぐ下流でも原料の上層部分が焼き固められ前後のパレット台車3は繋がれている。すなわち、点火箇所22よりも下流では漏風が生じる可能性がある。したがって、制動装置4は、往路11上の点火箇所22からカーブトラックの始端21までの区間と対向する位置に設けられる。
【0056】
図5は、焼結機の側面から見た制動装置の配置を示す図である。制動装置4は、焼結機の側面から見て、コロ群支持部材20の長手方向がコロ群9と対向する往路11と平行となるように設けられる。このように設けることで、コロ群9の複数のコロ10のうち下方側に配置されている複数のコロ10が、対向する往路11と平行に配列されやすい。下方側のコロ10が往路11と平行に配列されれば、パレット台車3の被接触体(車輪)がコロ群9と往路11との間を通っている間、弾性部材8の伸縮量が一定に保たれやすく、制動装置4が安定して制動力を発揮できる。
【0057】
図6は、焼結機の正面から見た制動装置の配置を示す図である。制動装置4は、パレット台車3の進行方向から見て、パレット台車3の被接触体(車輪)の軌道上に設けられる。また、制動装置4は、コロ群9の下端(焼結機の側面から見て最も下方に配置されるコロの下端)と往路11との距離が、パレット台車3の被接触体(車輪)の直径よりも短くなるように配置される。これにより、パレット台車3の被接触体(車輪)がコロ群9と往路11との間を通ると、被接触体(車輪)にコロ群9を押し当てることができ、後述するようにパレット台車3を制動することができる。
【0058】
図5及び図6では、制動装置4がパレット台車3の左側の車輪にコロ群9を押し当てるように配置されている場合を示すが、制動装置4はパレット台車3の右側の車輪にコロ群9を押し当てるように配置されてもよいし、パレット台車3の左右両側の車輪にコロ群9を押し当てるように配置されてもよい。
【0059】
このような第1実施形態の制動装置4は、パレット台車3の被接触体(車輪)に接触する接触状態と、被接触体(車輪)に接触しない非接触状態とに切替え自在に構成される。接触状態は、上述したように制動装置4のコロ群9をパレット台車3の被接触体(車輪)に押し当てている状態である。非接触状態への切替えは次のようにして実現することができる。
【0060】
[非接触維持部]
第1実施形態の焼結機はさらに、非接触維持部を含む。
【0061】
図7は、焼結機の側面から見た第1実施形態の焼結機の非接触維持部の概略図である。パレット台車3の被接触体(車輪)がコロ群9と往路11との間に入ると、弾性部材8が収縮し車輪を往路11に押し付けることでパレット台車3に走行抵抗を与えることは上述した通りである。しかしながら、車輪の前半分がコロ群9と往路11との間を抜けたとき、車輪の後ろ半分が往路11に押し付けられる。そのため、車輪の前半分がコロ群9と往路11との間を抜けた後、制動装置4はパレット台車3を進行方向に押し出すことになり、後行するパレット台車と隙間が生じやすくなる。
【0062】
これを抑制するため、非接触維持部は制動装置4を非接触状態に維持する。本実施形態に係る非接触維持部は、油圧ダンパ41と、スロットルチェック弁32とを含む。
【0063】
油圧ダンパ41は、ピストンロッドと、ピストンと、シリンダとを含む。ピストンロッドは、制動装置4の支持軸18の上端に取り付けられ、支持軸18と一体的に連動する。ピストンは、ピストンロッドの先端に取り付けられる。シリンダは、ピストンを収容し、その内部には作動油が充填されている。油圧ダンパ41は周知の構成であるため、その他の詳細な説明は省略する。
【0064】
スロットルチェック弁32は、2つの油路によって油圧ダンパ41のシリンダに接続されている。一方の油路はピストンによって分割される一方のシリンダ内部の空間に接続され、他方の油路はピストンによって分割される他方のシリンダ内部の空間に接続される。スロットルチェック弁32は、ピストン(支持軸18)が上方に移動するときシリンダから流れ込む作動油を自由に通過させ、ピストン(支持軸18)が下方に移動するとき作動油の流量を少なくする(絞る)。
【0065】
パレット台車3の車輪がコロ群9と往路11との間に入るとコロ群9が上方に押し上げられる。コロ群9が押し上げられることで支持軸18も上方に押し上げられる。これにより、ピストンがシリンダ内で上方に移動し、作動油がスロットルチェック弁32に流れる。ピストンが上方に移動するとき、作動油はスロットルチェック弁32を自由に流れることができるため、油圧ダンパ41に大きな減衰力は生じない。そのため、コロ群9がパレット台車3の車輪を往路11に押し付けることができ、接触状態となる。
【0066】
一方、パレット台車3の車輪がコロ群9と往路11との間を抜けるとコロ群9は自重により下方に下がろうとする。この際、スロットルチェック弁32にはピストンが上方に移動する場合とは反対方向に作動油が流れようとする。スロットルチェック弁32はピストンが下方に移動するとき作動油の流量を絞るため、シリンダ内から作動油が流出しにくくなり、油圧ダンパ41に大きな減衰力が生じる。そのため、コロ群9が下方に下がりにくくなり、コロ群9とパレット台車3の車輪が非接触又は車輪の後ろ半分が往路11に押し付けられる力が弱くなる非接触状態となる。これにより、パレット台車3が進行方向に押し出されることが抑制される。
【0067】
[漏風の抑制]
図1を参照して、第1実施形態の焼結機による漏風の抑制について説明する。先行するあるパレット台車3がカーブトラック13の始端21を超えると、そのパレット台車3は自重によりカーブトラック13を滑走しようとする。これにより、自重により滑走するパレット台車3と焼結鉱30によって繋がっている後行するパレット台車が引きずられ、往路11上を走行しているパレット台車間で隙間が生じやすくなる。しかしながら、制動装置4がこの先行するパレット台車3に引きずられるパレット台車に走行抵抗を与え、制動する。そのため、往路11上を走行するパレット台車間に隙間が生じることが抑制され、漏風が抑制される。
【0068】
なお、本明細書において「点火箇所からカーブトラックの始端までの区間において、パレット台車を制動する」とは、この区間を走行する複数のパレット台車のうちの一部のパレット台車を制動装置によって制動する場合だけでなく、この区間を走行する複数のパレット台車の全てを制動装置によって制動する場合も含む。
【0069】
その他にも、第1実施形態の焼結機では、制動装置4はコロ群9を含む。そのため、パレット台車3の車輪が往路11とコロ群9の下端との間に入り込みやすい。コロ群9の各コロ10は自転可能であるため、コロ群9をパレット台車3の車輪に押し当てても車輪が傷つきにくい。
【0070】
[好ましい形態]
上述の説明では、制動装置4を点火箇所22からカーブトラックの始端21までの区間に配置する場合について説明した。しかしながら、制動装置4の配置場所はカーブトラックの始端21に近い方が好ましい。この理由は、次の通りである。パレット台車3に積載された原料の焼成は、カーブトラックの始端21に近づくにつれ進んでいく。上述したように、漏風の原因である往路11のパレット台車3間の隙間は、往路11のパレット台車3とカーブトラック13を自重で走行するパレット台車3とが焼結鉱によって繋がっているためである。そのため、原料の焼成が完了に近づくにつれ前後のパレット台車3間の繋がりが強固になっていく。したがって、前後のパレット台車3と強固に繋がっているパレット台車を制動すれば、効率的に漏風を抑制できる。
【0071】
好ましくは、制動装置4は、点火箇所22からカーブトラックの始端21までの中央の箇所からカーブトラックの始端21までの区間において、パレット台車を制動する。より好ましくは、制動装置4は、原料の焼成が6割以上完了した箇所からカーブトラックの始端21までの区間において、パレット台車を制動する。さらに好ましくは、制動装置4は、原料の焼成が完了した箇所からカーブトラックの始端21において、パレット台車を制動する。なお、原料の完了度合いは、風箱31に設置した排ガス温度センサによって検知すればよい。例えば、原料の焼成が完了した箇所を特定するには、複数の風箱それぞれに設置された排ガス温度センサを参照して、排ガス温度が最高値を示す風箱を特定すれば、その風箱の直上の往路の箇所が焼成が完了した箇所と特定できる。
【0072】
上述の説明では、制動装置4がコロ群9を含む場合について説明した。しかしながら、第1実施形態の焼結機はこれに限定されない。たとえば、パレット台車3はコロ群9に代えてブレーキパッドを含んでもよい。ブレーキパッドをパレット台車3に押し当てることで、上述したパレット台車3の運動エネルギーを弾性部材8の弾性エネルギーに変換することによってパレット台車3を制動することができるだけでなく、ブレーキパッドとパレット台車との摩擦によってもパレット台車3を制動することができる。これにより、パレット台車3をさらに強力に制動することができる。
【0073】
以上、第1実施形態の焼結機について説明した。しかしながら、本実施形態の焼結機は上述の第1実施形態に限定されず、以下のような実施形態とすることもできる。
【0074】
[第2実施形態]
第2実施形態の焼結機について説明する。第2実施形態の焼結機は、被接触体がパレット台車のフレームに設けられる点で第1実施形態の焼結機と相違する。以下の第2実施形態の焼結機の説明では、第1実施形態の焼結機と異なる点について説明し、第1実施形態の焼結機と同じ構成については説明を省略する。
【0075】
図8は、第2実施形態の焼結機の正面から見た制動装置の配置を示す図である。第2実施形態では、パレット台車3の被接触体33は、フレームに設けられた突起部である。被接触体33(突起部)は、パレット台車のフレームの側面から左右方向外側に突出する平板である。第2実施形態では、制動装置4のコロ群9を被接触体33(突起部)に押し当てることで、パレット台車3を制動する。
【0076】
被接触体33が平板であれば、第1実施形態で説明したような被接触体が制動装置と往路との間を抜け出る際のパレット台車の押し出しは生じにくい。そのため、第2実施形態の焼結機は非接触維持部を含んでいない。このような第2実施形態の焼結機であっても、制動装置4が先行するパレット台車に引きずられるパレット台車に走行抵抗を与え、制動できる。そのため、往路上を走行するパレット台車間に隙間が生じることが抑制され、漏風が抑制される。
【0077】
[第3実施形態]
第3実施形態の焼結機について説明する。第3実施形態の制動装置は、第1実施形態の油圧ダンパ及びスロットルチェック弁に代えてアクチュエータ(図示なし)を含む。
【0078】
アクチュエータを制動装置4の支持軸18に取り付けると、アクチュエータを作動させることで、支持軸18(コロ群9)の高さ方向の位置を制御できる。パレット台車3の車輪がコロ群9と往路11との間に入る前から、車輪の前半分がコロ群9と往路11との間を抜けるまで支持軸18(コロ群9)が下方に位置するようにアクチュエータを制御し、車輪の前半分がコロ群9と往路11との間を抜けたとき支持軸18(コロ群9)が上方に位置するようにアクチュエータを制御する。これにより、第3実施形態の制動装置も第2実施形態の制動装置と同様の効果を奏する。なお、車輪の前半分がコロ群9と往路11との間を抜けたか否かはセンサ等により検知すればよい。
【0079】
[第4実施形態]
第4実施形態の焼結機について説明する。第4実施形態の焼結機は、制動装置の構成が第1実施形態と異なる。第4実施形態の制動装置は、第2及び第3実施形態の焼結機にも適用可能であるが、以下では第1実施形態の焼結機を基本として説明する。以下の第4実施形態の焼結機の説明では、第1実施形態の焼結機と異なる点について説明し、第1実施形態の焼結機と同じ構成については説明を省略する。
【0080】
図9は、焼結機の側面から見た第4実施形態の制動装置の一部断面図である。第4実施形態では、制動装置4の弾性部材8は、小コイルばね23と、大コイルばね24とを含む。小コイルばね23のばね定数は、大コイルばね24のばね定数よりも小さい。小コイルばね23は、大コイルばね24よりもパレット台車3の進行方向の後流(往路側)に配置される。
【0081】
制動装置4はさらに、小上壁16Aと、小下壁17Aと、小支持軸18Aと、2つの小連結部材19Aとを含む。小上壁16Aは、平板であり、焼結機を覆うフレーム等の固定された部材に取り付けられる。小下壁17Aは、平板であり、小上壁16Aの下方に小上壁から所定の距離を置いて配置される。小上壁16Aと小下壁17Aとの間には小コイルばね23が設けられる。小支持軸18Aは、鉛直方向に延び、小支持軸18Aの下方側の端は小下壁17Aに固定される。小支持軸18Aは、小上壁16Aに設けられた孔を貫通し、小支持軸18Aの上方側の端は自由端となっている。2つの小連結部材19Aは、左右方向からコロ群9を挟むように配置される。2つの小連結部材19Aは、小下壁17Aに固定され、小下壁17Aから下方に延びる。2つの小連結部材19Aは、コロ群支持部材20のパレット台車の進行方向の後流側の端部を支持する。支持方法は、2つの小連結部材19Aとコロ群支持部材20とをピンで接続する。これにより、コロ群支持部材20がピンを中心として回動することができる。
【0082】
制動装置4はさらに、大上壁16Bと、大下壁17Bと、大支持軸18Bと、2つの大連結部材19Bとを含む。大上壁16Bは、平板であり、焼結機を覆うフレーム等の固定された部材に取り付けられる。大下壁17Bは、平板であり、大上壁16Bの下方に大上壁から所定の距離を置いて配置される。大上壁16Bと大下壁17Bとの間には大コイルばね24が設けられる。大支持軸18Bは、鉛直方向に延び、大支持軸18Bの下方側の端は大下壁17Bに固定される。大支持軸18Bは、大上壁16Bに設けられた孔を貫通し、大支持軸18Bの上方側の端は自由端となっている。2つの大連結部材19Bは、左右方向からコロ群9を挟むように配置される。2つの大連結部材19Bは、大下壁17Bに固定され、大下壁17Bから下方に延びる。2つの大連結部材19Bは、コロ群支持部材20のパレット台車の進行方向の上流側の端部を支持する。支持方法は、小連結部材と同様である。
【0083】
このような制動装置の構成により、小コイルばね23と、大コイルばね24とは各々独立して伸縮することができる。この制動装置4と往路11との間にパレット台車3の車輪が進入すると、次のようになる。
【0084】
パレット台車3の車輪は、まず後流側に配置されている小コイルばね23の直下に到達し、小コイルばね23を押し上げる。この状態では、パレット台車3は主に小コイルばね23の作用によって制動される。すなわち、パレット台車3の運動エネルギーの一部は主に小コイルばね23に蓄積される弾性エネルギーに変換される。
【0085】
パレット台車3がさらに進むと、パレット台車3の車輪は小コイルばね23の直下を離れ、大コイルばね24の直下に到達し、大コイルばね24を押し上げる。この状態では、パレット台車3は主に大コイルばね24の作用によって制動される。すなわち、パレット台車3の運動エネルギーの一部は主に大コイルばね24に蓄積される弾性エネルギーに変換される。
【0086】
このように第4実施形態の制動装置によれば、パレット台車3をまず小コイルばね23により緩やかに制動させ、次に大コイルばね24により強力に制動することができ、パレット台車3を段階的に徐々に減速させることができる。これにより、パレット台車3が急激に減速することが抑制されるため、焼結鉱のパレット台車上の積載位置がずれたり、あるいは排鉱部に到達する前に焼結鉱がパレット台車3から落下することを抑制できる。また、コロ群9とパレット台車3の車輪との摩擦も緩和され、コロ群9及びパレット台車3の車輪の寿命が長くなる。
【0087】
[第5実施形態]
第5実施形態の焼結機について説明する。第5実施形態の焼結機は、第4実施形態の焼結機の制動装置とコロ群の配置角度が異なる。第5実施形態の制動装置は、第1~第3実施形態の焼結機にも適用可能であるが、以下では第4実施形態の焼結機を基本として説明する。以下の第5実施形態の焼結機の説明では、第4実施形態の焼結機と異なる点について説明し、第4実施形態の焼結機と同じ構成については説明を省略する。
【0088】
図10は、焼結機の側面から見た第5実施形態の制動装置の一部断面図である。制動装置4では、焼結機の側面から見て、コロ群支持部材20がコロ群9と対向する往路11の面に対して傾いている。より具体的には、コロ群支持部材20の長手方向の延長線がコロ群9と対向する往路11の延長線と交差する。また、コロ群支持部材20のパレット台車3の進行方向の後流側が上方に位置し、下流側が下方に位置する。
【0089】
このように制動装置4を設けることで、コロ群9の下面Aの勾配がコロ群9と対向する往路11の勾配よりも大きくなり、コロ群9の下面Aの延長面とコロ群9と対向する往路11の面の延長面とが角度θで交差する。角度θはたとえば、1~10°である。これにより、パレット台車3の車輪がコロ群9と往路11との間に進入しやすくなる。なお、本明細書において「コロ群の下面」とは、コロ群支持部材20の長手方向に平行かつパレット台車の左右方向に延びる面であって、複数のコロ10のうちコロ群支持部材20から下方側に最も離れたコロ10の下端と接する面を意味する。
【0090】
以上、本発明の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の焼結機は、銑鉄の原料となる焼結鉱の製造に用いることができる。
【符号の説明】
【0092】
1 :焼結機
2 :搬送路
3 :パレット台車
4 :制動装置
5 :給鉱部
6 :排鉱部
7 :点火炉
8 :弾性部材
9 :コロ群
10 :コロ
11 :往路
12 :復路
13 :カーブトラック
14 :スプロケット
21 :カーブトラックの始端
22 :点火箇所
31 :風箱
32 :スロットルチェック弁
33 :被接触体
41 :油圧ダンパ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11