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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】液体加熱容器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/21 20060101AFI20230720BHJP
【FI】
A47J27/21 101S
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019149676
(22)【出願日】2019-08-19
(65)【公開番号】P2021029345
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003702
【氏名又は名称】タイガー魔法瓶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 章浩
(72)【発明者】
【氏名】岡田 真幸
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-000228(JP,A)
【文献】特開2015-033484(JP,A)
【文献】特開2014-226147(JP,A)
【文献】国際公開第2011/078814(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2005/0284861(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/21
A47J 41/00-41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上縁に注ぎ口を具える容器本体と、
前記容器本体を塞ぐ蓋体であって、前記注ぎ口に連通する注湯路と、前記注湯路と連通し、前記容器本体と弁板により連通、遮断される空間と、前記容器本体と連通する蒸気室とを具える蓋体と、
を具えた液体加熱容器であって、
前記蒸気室は、前記容器本体と前記蓋体の後方で連通し、
前記空間と前記蒸気室は、前記蓋体の前方側で逃し路により連通するものであり、
前記逃し路は、前記蒸気室から上方に向けて突設された筒の先端に形成された孔であり、
前記筒には、前記弁板の傾きを防止するガイド棒が摺動可能に配置されている、
液体加熱容器。
【請求項2】
前記逃し路には、結露水の詰まり防止構造を具備する、
請求項1に記載の液体加熱容器。
【請求項3】
上縁に注ぎ口を具える容器本体と、
前記容器本体を塞ぐ蓋体であって、前記注ぎ口に連通する注湯路と、前記注湯路と連通し、前記容器本体と弁板により連通、遮断される空間と、前記容器本体と連通する蒸気室とを具える蓋体と、
を具えた液体加熱容器であって、
前記蒸気室は、前記容器本体と前記蓋体の後方で連通し、
前記空間と前記蒸気室は、前記蓋体の前方側で逃し路により連通するものであり、
前記逃し路には、結露水の詰まり防止構造を具備する
体加熱容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気ケトルなどの液体を加熱し沸騰させる液体加熱容器に関するものであり、より詳細には、蓋体に設けられた蒸気放出ルートを長く採って蒸気を結露させて蒸気の放出量を低減できる液体加熱容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気ケトルは、加熱手段を具えた容器本体を電源台に載置し、電源台から容器本体に給電を行ない、加熱手段に通電している(たとえば特許文献1参照)。湯が沸くと、取っ手を掴んで容器本体を傾け、湯を注ぎ口から注ぎ出す。容器本体は、蓋体により塞いでおり、蓋体には容器本体と注ぎ口とを連通する注湯路が形成されている。注湯路は、中子が配置された中子空間に連通しており、中子に設けられた弁板が、中子空間と容器本体との間を連通又は遮断することで、注湯が制御される。
【0003】
蓋体には、容器本体内で加熱により生じる蒸気を結露(液化)させ、また、注ぎ口を介して外部に放出する蒸気放出ルートが形成されている。蒸気放出ルートは容器本体の下流側に蒸気室が設けられており、蒸気室に流入した蒸気は一部が蒸気室内で結露する。また、蒸気室は蒸気放出ルートの下流側で注湯路と繋がっており、蒸気室に流入した蒸気は、注湯路を通って注ぎ口から直接外部に放出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6265225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
容器本体は、弁板で中子空間と容器本体との間を遮断しても、蒸気放出ルートにより注ぎ口に連通している。そして、湯が沸騰した際に、容器本体で生じた蒸気は蒸気室にて一部は結露するが、蒸気室と注湯路が連通しており、蒸気放出ルートは比較的短い。このため、蒸気は結露せずに大半が注ぎ口から放出されてしまう。従って、蒸気放出ルートを長く採り、蒸気放出ルートにおいて蒸気を効果的に結露させて、蒸気の放出を抑えることが望まれる。しかしながら、蓋体の小型化の要請等により蒸気放出ルートを長く採ることは困難であった。また、蒸気放出ルートを長く採った場合、ルート中で結露水がウォーターシールとなって詰まりが生ずる虞がある。さらに、容器本体を転倒させたときに、蒸気放出ルートを通じて湯が注ぎ口から漏れ出すが、蒸気放出ルートを長く採ったことにより、蒸気放出ルートが詰まってしまうと、沸騰直後には容器本体の内圧が高くなって勢いよく湯が飛び出すスプラッシュが生じることがあった。
【0006】
本発明の目的は、蓋体に設けられた蒸気放出ルートを長く採って蒸気を結露させて蒸気の放出量を低減できる液体加熱容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液体加熱容器は、
上縁に注ぎ口を具える容器本体と、
前記容器本体を塞ぐ蓋体であって、前記注ぎ口に連通する注湯路と、前記注湯路と連通し、前記容器本体と弁板により連通、遮断される空間と、前記容器本体と連通する蒸気室とを具える蓋体と、
を具えた液体加熱容器であって、
前記蒸気室は、前記容器本体と前記蓋体の後方で連通しており、
前記空間と前記蒸気室は、前記蓋体の前方側で逃し路により連通している。
【0008】
前記逃し路は、蒸気室から上方に向けて突設された筒の先端に形成された孔であり、
前記筒には、前記弁板の傾きを防止するガイド棒が摺動可能に配置されている構成とすることができる。
【0009】
前記逃し路には、結露水の詰まり防止構造を具備することが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の液体加熱容器によれば、蓋体の後方から前方に向けて延びる蒸気室を有することで、蒸気放出ルートを長く採ることができ、蒸気放出ルート中で蒸気を結露させて、外部に放出される蒸気量を低減できる。また、蒸気放出ルート中で比較的通路が狭くなる逃し路に詰まり防止構造を採用することで、蒸気放出ルートが結露水により詰まってしまうことも防止できる。蒸気放出ルートを詰まり難い構成としたことで、液体加熱容器を転倒させて蒸気放出ルートに湯が浸入した場合でも蒸気放出ルートは詰まらず、内圧の高まりによって湯が勢いよく飛び出すスプラッシュも防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、電気ケトルの斜視図である。
図2図2は、図1の線II-IIに沿う蓋体近傍の断面図である。
図3図3は、図2の蓋体の要部断面図である。
図4図4は、排水孔を含む面にて蓋体を左右方向に切断した断面図である。
図5図5は、蓋体本体の斜視図であって、蓋体カバーや蒸気室カバーを取り外した状態を示している。
図6図6は、ガイド筒及び逃し路の拡大図であって、詰まり防止構造としてテーパーを採用した実施形態を示している。
図7図7は、詰まり防止構造としてガイド棒に針を設けた実施形態を示す拡大図である。
図8図8は、詰まり防止構造として栓部材を採用した実施形態を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照しながら本発明の液体加熱容器について説明を行なう。なお、以下では、液体加熱容器としてヤカン型の電気湯沸かし器である電気ケトル10を例示して説明を行なうが、液体加熱容器は、電気ケトル10に限らず、電気ポットなどであってもよい。
【0013】
概略構成として、電気ケトル10は、図1に示すように、ヤカン型の容器本体20と容器本体20に装着される蓋体30、容器本体20が載置される電源台12を具える。
【0014】
容器本体20は、外郭を構成する外装カバー21内と、外装カバー21の内側に形成され、水や湯を入れる内容器27(図2にその一部を示す)の二重構造を採用できる。内容器27の前方上縁には注ぎ口28が形成されると共に、外装カバー21の背面側にはユーザーが掴む取っ手22が設けられている。
【0015】
容器本体20は、図示しないヒーター等の加熱手段を内装しており、取っ手22に設けられたスイッチ23の操作により、電源台12から電源の供給を受けて内容器27を加熱し、内容器27に収容された水を沸騰させる。
【0016】
蓋体30には、図1及び図2に示すように、注湯を制御する蓋ボタン32を具える。蓋ボタン32を押下することで、内容器27が後述する中子空間40、注湯路47を介して注ぎ口28と連通した注湯ルートA(図2参照)を形成する。この状態で、取っ手22を掴んで容器本体20を持ち上げ、注ぎ口28側に容器本体20を傾けることで、内容器27内の湯が注ぎ口28から注ぎ出される。
【0017】
蓋体30は、図2乃至図4に示すように、上方が拡径した蓋体本体35と、上面を構成する蓋体カバー31を具え、内容器27に着脱可能に嵌まる。蓋体本体35の下縁には環状にシールパッキン36が装着されており、図2に示すように、蓋体30を内容器27に挿入した状態で、シールパッキン36が内容器27の内面フランジ29に当接し、内容器27を液密に維持する。
【0018】
蓋体30には、内容器27に装着した状態で、注ぎ口28と連通する注湯路47が後方に向けて斜め下方に傾斜するよう設けられている。そして、注湯路47の後端は、蓋体本体35の下面に凹設された短円筒状の中子空間40に連通している。中子空間40は、図2乃至図4に示すように、蓋ボタン32に連動して上下動する中子60が摺動可能に配置されている。中子60には、中子空間40の下縁に当接可能な外周にシール部材62を配置した弁板61を具え、弁板61が中子空間40から離れることで、中子空間40は内容器27と連通する。また、弁板61が中子空間40の下縁に当接することで、シール部材62により中子空間40と内容器27は遮断され、液密な状態を維持する。当該動作は、バネ33(図2図3参照)により上向きに付勢された蓋ボタン32に連動して実行され、蓋ボタン32には、中子60の弁棒63の上端が連繋されている。蓋ボタン32が押下されることで弁板61は中子60と共に下方に移動し、中子空間40を内容器27に対して開放する。また、蓋ボタン32が再度押下されることでバネ33の付勢力により上方に中子60が移動し、弁板61が内容器27に対して中子空間40を遮断する。
【0019】
中子60の下方移動により、弁板61が中子空間40を内容器27に対して開放することで、内容器27と中子空間40は連通し、内容器27から中子空間40、注湯路47を通って注ぎ口28を繋ぐ注湯ルート(図2中矢印A)が形成される。この状態で、容器本体20を前方に傾けることで、注ぎ口28から水や湯が注ぎ出される。
【0020】
本実施形態では、図2に示すように、中子空間40は蓋体30のやや前方寄りに設けているから、中子60は、弁板61の中心から弁棒63を突設すると、弁棒63が前方寄りに位置してしまう。その結果、蓋ボタン32も蓋体カバー31の中央ではなく、前方寄りの位置に設ける必要があり、デザイン上好ましくない。このため、弁棒63は、弁板61のやや後方寄り、すなわち、蓋体カバー31の中心に突設している。このため、弁棒63を上下動させたときに、弁板61が傾き、平行にスライドできない虞があるが、弁棒63の前方に弁棒63と平行にガイド棒64を立設している。ガイド棒64は、中子空間40の天面41から上向きに凹設されたガイド筒42にスライド可能に嵌まるようにしている。
【0021】
容器本体20には、上記注湯ルートAに加えて、内容器27内で水が沸騰する際に生じる蒸気を外部に放出する蒸気放出ルート(図2中矢印B)を有する。蒸気放出ルートBは、内容器27から蓋体30内を通って中子空間40、注湯路47を通じて注ぎ口28に至る通路である。蒸気放出ルートBは、外部に放出される蒸気量を軽減するために、蓋体30内に蒸気を結露(液化)させる蒸気室50を設け、蒸気室50に蒸気を導入することで蒸気の一部を液化させる。
【0022】
本実施形態では、蒸気放出ルートBは、内容器27から、内容器27の背面側にて取っ手22内に侵入する取っ手内通路24を経由している。取っ手内通路24には、図2に示すようにバイメタルスイッチなどの蒸気検知手段25を具え、内容器27内の水が沸騰して取っ手内通路24に蒸気が侵入すると、バイメタルスイッチが作動して、加熱手段による加熱を止めるようにしている。
【0023】
取っ手内通路24は、蓋体30に形成された蒸気室50と連通している。蒸気室50は、たとえば図2乃至図4に示すように、中子空間40の上部に形成することができる。図示の実施形態では、中子空間40の天面41の上部に蒸気室カバー51を装着し、蒸気室50を区画形成している。
【0024】
蒸気室50は、図4に示すように、中子空間40の両側に沿って下方に低くなった結露水貯まり52が形成されており、結露水貯まり52には、弁板61により開閉する排水孔53が形成されている。蒸気室50にて結露した結露水は、結露水貯まり52に一旦貯溜され、ユーザーが湯を注ぐ際に蓋ボタン32を操作することで、排水孔53が開放して結露水を内容器27に落下させるようにしている。
【0025】
また、蒸気室50には、排水孔53よりも高い位置、本実施形態では、図2及び図3に示すように、蒸気室50から上向きに凹設された煙突状のガイド筒42に蒸気や圧力を逃す逃し路43を形成している。図5は、蓋体本体35の斜視図であって、蓋体カバー31や蒸気室カバー51を取り外した状態を示している。図を参照すると、逃し路43は、ガイド筒42の上端に形成された孔であり、蒸気室50に流入した蒸気の一部は、図2中矢印Bで示すように、逃し路43を通って中子空間40、注湯路47、注ぎ口28に至る蒸気放出ルートを経由して外部に放出される。逃し路43は、蒸気室50の後方から流入した蒸気をできる限り結露させて、外部への蒸気放出量を抑えるために、蓋体30の中でも、蒸気室50の比較的前方に設けて蒸気放出ルートBの距離を長く採れるようにしている。
【0026】
なお、ガイド筒42に設けられた逃し路43は、蒸気放出ルートBの中で最も通路が狭くなっている。このため、逃し路43には結露水が詰まってしまう虞がある。そこで、図6に示すように、逃し路43は、詰まりを防止する構造70を具備することが望ましい。図6の詰まり防止構造70は、中子空間40側に設けられた逃し路43を拡径するテーパー71である。テーパー71を設けることで、蒸気の通りを良好とし、結露水によるウォーターシールを防止することができる。
【0027】
また、図7は、詰まり防止構造70の異なる実施形態を示している。図7の実施形態では、ガイド筒42を往復するガイド棒64の先端に、逃し路43に侵入する形状、たとえば、図示のような鋭利な形状の針72を突設し、中子60の摺動により、ガイド棒64がガイド筒42内で上昇したときに、針72が逃し路43に侵入して、結露水によるウォーターシールを破る構成とすることもできる。
【0028】
そして、逃し路43を通過した蒸気は、図2及び図3に示すように、蒸気放出ルートBを構成するガイド筒42を通過し、中子空間40から注湯路47を通って注ぎ口28に排出される。本発明によれば、蒸気放出ルートBを長く採って蒸気を結露させて蒸気の放出量を低減できる。また、蒸気放出ルートB中で通路の狭い逃し路43には、結露水の詰まり防止構造70を採用すること、結露水が逃し路43に詰まって蒸気放出ルートBを遮断してしまうことを防止できる。さらには、逃し路43を詰まり難い構造としたことで、容器本体20が転倒した場合であっても蒸気室50等の内圧の高まりを抑えることができるから、湯が勢いよく飛び出すスプラッシュも防止される。
【0029】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を限縮するように解すべきではない。また、本発明の各部構成は、上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【0030】
たとえば、中子空間40、蒸気室50、注湯ルートA、蒸気放出ルートBなどの構成は上記実施形態に限定されるものではなく、配置や大きさなども種々変更可能である。また、上記実施形態では逃し路43はガイド筒42に設けているが、ガイド筒42以外の部分に設けることもできる。一方、ガイド筒42に逃し路43を設ける場合であっても、逃し路43となる孔はガイド筒42の先端ではなく側面に形成しても構わない。
【0031】
さらに、逃し路43の詰まり防止構造70として、8(a)に示すように、ガイド筒42内には、逃し路43とガイド棒64との間にボールの如き栓部材73を配置する構成とすることもできる。栓部材73は、通常時は自重によりガイド棒64の上にあり、逃し路43を開放している。しかしながら、図8(b)に示すように、容器本体20が転倒したときには、栓部材73は、斜め下向きになったガイド筒42の内面を転がって、逃し路43を塞ぐ。このように容器本体20が転倒したときに逃し路43を塞ぐ栓部材73を採用することで、通常時に蒸気が通過する逃し路43の内径を大きく採ることができ、結露水による詰まりも防止される。
【符号の説明】
【0032】
10 電気ケトル
20 容器本体
27 内容器
28 注ぎ口
30 蓋体
40 中子空間
43 逃し路
47 注湯路
50 蒸気室
70 詰まり防止構造
A 注湯ルート
B 蒸気放出ルート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8