(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】フィラー含有フィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20230720BHJP
H01R 43/00 20060101ALI20230720BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20230720BHJP
H01B 5/16 20060101ALI20230720BHJP
H01R 11/01 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
C08J5/18
H01R43/00 H
H01R43/00 Z
H01B1/22 B
H01B5/16
H01R11/01 501F
(21)【出願番号】P 2022031562
(22)【出願日】2022-03-02
(62)【分割の表示】P 2017159828の分割
【原出願日】2017-08-22
【審査請求日】2022-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2016213298
(32)【優先日】2016-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】弁理士法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚尾 怜司
(72)【発明者】
【氏名】松原 真
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-201435(JP,A)
【文献】特表2002-519473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/18
H01R 11/01
H01R 43/00
H01B 1/22
H01B 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂層と、該樹脂層に単層で分散しているフィラーからなる第1フィラー層と、第1フィラー層と異なる深さで該樹脂層に単層で分散しているフィラーからなる第2フィラー層とを有するフィラー分散層を備えたフィラー含有フィルムであって、
第1フィラー層のフィラーは該樹脂層の一方の表面から露出するか、又は該一方の表面に近接しており、
第2フィラー層のフィラーは該樹脂層の他方の表面から露出するか、又は該他方の表面に近接しており、
該フィラー分散層には、複数個のフィラーで構成されたフィラーユニットが形成されており、
フィラー近傍の樹脂層の表面が、隣接するフィラー間の中央部における樹脂層の接平面に対して傾斜もしくは起伏を有し、該傾斜では、フィラーの周りの樹脂層の表面が前記接平面に対して欠けており、該起伏では、フィラー直上の樹脂層の樹脂量が、該フィラー直上の樹脂層の表面が前記接平面にあるとしたときに比して少なくなっているフィラー含有フィルム。
【請求項2】
樹脂層の層厚(La)とフィラーの平均粒子径Dとの比(La/D)が0.6~10である請求項1記載のフィラー含有フィルム。
【請求項3】
該フィラーユニット内で複数個のフィラーは一列に並んでいるか、又は塊状に集合している請求項1又は2記載のフィラー含有フィルム。
【請求項4】
第1フィラー層のフィラーが該樹脂層の一方の表面に近接し、第2フィラー層のフィラーが該樹脂層の他方の表面に近接している場合において、第1フィラー層のフィラーが、該樹脂層の一方の表面から前記第1フィラー層のフィラーの最深部までの距離(L1)と前記第1フィラー層のフィラーの粒子径(DA)との比率(L1/DA)が110%以下になるように該樹脂層に埋め込まれており、第2フィラー層のフィラーが、該樹脂層の他方の表面から前記第2フィラー層のフィラーの最深部までの距離(L2)と前記第2フィラー層のフィラーの粒子径(DB)との比率(L2/DB)が110%以下になるように該樹脂層に埋め込まれている、請求項1~3のいずれかに記載のフィラー含有フィルム。
【請求項5】
第1フィラー層のフィラー同士又は第2フィラー層のフィラー同士が接触又は近接してなるフィラーユニットが形成されており、フィラーユニット同士が接触せず、フィラーユニットが規則的に配列している請求項1~4のいずれかに記載のフィラー含有フィルム。
【請求項6】
第1フィラー層のフィラーと第2フィラー層のフィラーとが接触又は近接してなるフィラーユニットが形成されており、フィラーユニット同士が接触せず、フィラーユニットが規則的に配列している請求項1~4のいずれかに記載のフィラー含有フィルム。
【請求項7】
平面視にて、第1フィラー層のフィラーユニットの長手方向と第2フィラー層のフィラーユニットの長手方向とが非平行である請求項5記載のフィラー含有フィルム。
【請求項8】
フィラー分散層と、第2の樹脂層とが積層しており、第2の樹脂層はフィラー分散層を形成する樹脂層に比して最低溶融粘度が低い請求項1~7のいずれかに記載のフィラー含有フィルム。
【請求項9】
フィラーが2種以上のフィラーからなる請求項1~
8のいずれかに記載のフィラー含有フィルム。
【請求項10】
フィラーが、無機系フィラー、有機系フィラー、有機系材料と無機系材料とが混在したフィラー及び導電粒子の少なくとも一種である請求請1~9のいずれかに記載のフィラー含有フィルム。
【請求項11】
フィラーが導電粒子であり、樹脂層が絶縁性樹脂層であり、異方性導電フィルムとして使用される請求項1~9のいずれかに記載のフィラー含有フィルム。
【請求項12】
請求項1~10のいずれかに記載のフィラー含有フィルムの製造方法であって、
樹脂層の一方の表面にフィラーを所定の分散状態で保持させ、そのフィラーを樹脂層に押し込み、樹脂層の他方の表面にも別のフィラーを所定の分断状態で保持させ、そのフィラーを樹脂層に押し込むことを特徴とする製造方法。
【請求項13】
フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして使用するために、フィラーとして導電粒子を使用し、樹脂層として絶縁性樹脂層を使用する請求項12記載の製造方法。
【請求項14】
樹脂層の両面にフィラーを所定の分散状態で保持させる際に、樹脂層の一方の表面においてフィラーを保持させる方向と、他方の表面においてフィラーを保持させる方向を反転させる請求項12又は13記載の製造方法。
【請求項15】
請求項1~10のいずれかに記載のフィラー含有フィルムが物品に貼着しているフィルム貼着体。
【請求項16】
請求項1~10のいずれかに記載のフィラー含有フィルムを介して第1物品と第2物品とが接続されている接続構造体。
【請求項17】
請求項11記載のフィラー含有フィルムを介して第1電子部品と第2電子部品とが異方性導電接続されている接続構造体。
【請求項18】
請求項1~10のいずれかに記載のフィラー含有フィルムを介して第1物品と第2物品を圧着することにより第1物品と第2物品とを接続する、接続構造体の製造方法。
【請求項19】
請求項11記載のフィラー含有フィルムを介して第1電子部品と第2電子部品を熱圧着することにより第1電子部品と第2電子部品とを異方性導電接続する、接続構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
フィラーが樹脂層に分散しているフィラー含有フィルムは、艶消しフィルム、コンデンサー用フィルム、光学フィルム、ラベル用フィルム、耐電防止用フィルム、異方性導電フィルムなど多種多様の用途で使用されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4)。
【0003】
フィラー含有フィルムの一態様としては、例えば、ICチップなどの電子部品の実装に異方性導電フィルムが広く使用されている。異方性導電フィルムを高実装密度に対応させる観点から、異方性導電フィルムでは、その絶縁性樹脂層に導電粒子を高密度に分散させることが行われている。しかしながら、導電粒子の個数密度を高めすぎると、異方性導電フィルムを用いた電子部品同士の接続構造体においてショートが発生し易くなる。
【0004】
これに対し、異方性導電フィルムの製造にあたり、グラビアコーター等の表面に規則的な溝を有する塗工ロールを使用して導電粒子を含む樹脂液を絶縁性樹脂層又は剥離フィルムに塗布し、導電粒子を絶縁性樹脂層に単層で規則配列させる方法が提案されている(特許文献5)。また、転写型を用いて所定の配置に分散させた導電粒子を第1絶縁性樹脂層と第2絶縁性樹脂層にそれぞれ転写し、導電粒子が転写した第1絶縁性樹脂と第2絶縁性樹脂とを貼り合わせ、異方性導電フィルムの異なる深さに導電粒子が規則配列した第1導電粒子層と第2導電粒子層を形成する方法が提案されている(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-15680号公報
【文献】特開2015-138904号公報
【文献】特開2013-103368号公報
【文献】特開2014-183266号公報
【文献】特開2016-31888
【文献】特開2015-201435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献5に記載の異方性導電フィルムの製造によれば、導電粒子が規則配列するので、導電粒子の個数密度を高めても、導電粒子がランダムに配置される場合に比してショートの起こり易さが低減する。しかしながら、異方性導電フィルムの片面に導電粒子が単層に配置されるため、個数密度を高めた場合にショートが引き起こされないように導電粒子を精確に配列させることには限界がある。
【0007】
特許文献6に記載の異方性導電フィルムの製造方法によれば、第1絶縁性樹脂層及び第2絶縁性樹脂層のそれぞれに導電粒子を保持させるため、異方性導電フィルム全体としての導電粒子の個数密度を高め、かつショートの発生を抑制することができる。しかしながら、ここに記載の異方性導電フィルムの製造方法に従い、第1絶縁性樹脂層及び第2絶縁性樹脂層に硬化性樹脂を使用し、その硬化により導電粒子をこれらの樹脂層に保持させ、第1絶縁性樹脂層と第2絶縁性樹脂層を貼り合わせると、異方性導電フィルムの表面のタック性が低下する虞があり、電子部品に異方性導電フィルムを貼る仮貼りや、電子部品に異方性導電フィルムを低温圧着して部品に固定する仮圧着を行うときの作業性が低下する。
【0008】
これに対し、本発明は、異方性導電フィルムを初めとするフィラー含有フィルムにおいて、異なる深さに第1フィラー層と第2フィラー層を有することにより、フィラーの個数密度を高めて機能性を向上させる(例えば、高密度実装に対応させる)ことができるようにすることを課題とする。具体的には、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成した場合には、電子部品同士の接続構造体においてショートの発生を抑え、接続信頼性を向上し、更に、異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムの仮貼りや仮圧着における作業性を向上させるためにフィルム表面にタック性をもたせることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、樹脂層の異なる深さに第1フィラー層と第2フィラー層が設けられていることによりフィラーの個数密度を高めつつ、特にフィラー含有フィルムの一態様である異方性導電フィルムとした場合にショートの発生を抑えたフィラー含有フィルムを製造する際に、樹脂層の表裏両面にフィラーを押し込むことにより、第1フィラー層を樹脂層の一方の表面から露出するように又はその表面近傍に設けると共に、第2フィラー層を樹脂層の他方の表面から露出するように又はその表面近傍に設けると、異方性接続する電子部品の端子に導電粒子が捕捉されやすくなって接続信頼性が向上し、また、フィルム表面のタック性も確保しやすいことを見出し、本発明を想到した。このように、両面にフィラーを備えることで、フィラー含有フィルムの性能の付与や向上、品質の安定及びよびコスト削減に寄与することができる。
【0010】
即ち、本発明は、樹脂層と、該樹脂層に単層で分散しているフィラーからなる第1フィラー層と、第1フィラー層と異なる深さで該樹脂層に単層で分散しているフィラーからなる第2フィラー層とを有するフィラー分散層を備えたフィラー含有フィルムであって、
第1フィラー層のフィラーは樹脂層の一方の表面から露出するか、又は該一方の表面に近接しており、
第2フィラー層のフィラーは樹脂層の他方の表面から露出するか、又は該他方の表面に近接しているフィラー含有フィルムを提供する。特に本発明は、フィラー含有フィルムの好ましい一態様として、フィラーが導電粒子であり、樹脂層が絶縁性樹脂層であり、異方性導電フィルムとして使用されるフィラー含有フィルムを提供する。
【0011】
また、本発明は、上述のフィラー含有フィルムの製造方法であって、
樹脂層の一方の表面にフィラーを所定の分散状態で保持させ、そのフィラーを樹脂層に押し込み、樹脂層の他方の表面にも別のフィラーを所定の分断状態で保持させ、そのフィラーを樹脂層に押し込むことを特徴とする製造方法を提供する。
【0012】
また、本発明は、上述のフィラー含有フィルムが物品に貼着しているフィルム貼着体、上述のフィラー含有フィルムを介して第1物品と第2物品とが接続されている接続構造体、特に、異方性導電フィルムとして使用されるフィラー含有フィルムを介して第1電子部品と第2電子部品とが異方性導電接続されている接続構造体を提供する。更に、本発明は、上述のフィラー含有フィルムを介して第1物品と第2物品を圧着する接続構造体の製造方法、並びに、第1物品、第2物品をそれぞれ第1電子部品、第2電子部品とし、異方性導電フィルムとして使用されるフィラー含有フィルムを介して第1電子部品と第2電子部品を熱圧着することにより第1電子部品と第2電子部品が異方性導電接続された接続構造体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のフィラー含有フィルムの一態様である異方性導電フィルムによれば、フィラーが樹脂層の表裏それぞれの表面から露出するか又は表面に近接して存在するので、異方性導電フィルムとして構成した場合に、異方性接続する電子部品の端子に導電粒子が捕捉されやすくなる。したがって、接続信頼性が向上する。
【0014】
また、フィルム全体のフィラーの個数密度に比して第1フィラー層の個数密度及び第2フィラー層の個数密度のそれぞれは低い。したがって、フィルム全体ではフィラーが高密度で存在しても、それによりフィルム表面のタック性が低下する虞を回避することができる。さらに、本発明の異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムによれば、樹脂層にフィラーを固定するために樹脂層を硬化させることが必須ではないため、それによってもフィルム表面にタック性を確保することができる。タック性の改善以外にも、フィラー含有フィルムの片面の表面のみではなく、両面にフィラーを備えることにより、片面の表面にのみフィラーを備えた場合とは異なる機能性の付与が期待できる。
【0015】
加えて、フィルム全体のフィラーの個数密度に比して第1フィラー層の個数密度及び第2フィラー層の個数密度がそれぞれ低くなることにより、個々のフィラー層におけるフィラーの配置を精確に制御することが容易となり、異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルム全体としてのフィラーの配置ピッチを狭めてもフィラーを所定の配置に精確に配置することができる。よって、上述の捕捉性の向上と相俟ってファインピッチの接続にも適したものとなり、例えば、端子幅6μm~50μm、端子間スペース6μm~50μmの電子部品の接続に使用することができる。また、有効接続端子幅(接続時に対向した一対の端子の幅のうち、平面視にて重なり合っている部分の幅)が3μm以上、最短端子間距離が3μm以上であれば、ショートを起こすこと無く電子部品を接続することができる。また、他の態様としては例えば光学フィルムがあるが、フィラーの樹脂層における厚み方向および平面視における非接触で独立した個数割合を調整することで、フィラーの光学的な性能を調整することができる。艶消しフィルムなど外観に直結するものにも同様のことが言える。これを両面で調整できるため、性能や品質の向上およびコスト削減に寄与し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】
図1Aは、実施例のフィラー含有フィルム(その一態様である異方性導電フィルム)10Aのフィラー(導電粒子)の配置を示す平面図である。
【
図1B】
図1Bは、実施例のフィラー含有フィルム10Aの断面図である。
【
図2】
図2は、第1フィラー層のフィラーと第2フィラー層のフィラーの埋込率が大凡100%で、フィラーが樹脂層表面から露出しているフィラー含有フィルムの断面図である。
【
図3】
図3は、第1フィラー層のフィラーと第2フィラー層のフィラーの埋込率が大凡100%で、樹脂層の表面が平坦になるようにフィラーが樹脂層に埋め込まれているフィラー含有フィルムの断面図である。
【
図4】
図4は、フィラーの埋込率が100%を若干超え、フィラーの直上の樹脂層の表面に凹みがあるフィラー含有フィルムの断面図である。
【
図5A】
図5Aは、実施例のフィラー含有フィルム(その一態様である異方性導電フィルム)10Bのフィラー(導電粒子)の配置を示す平面図である。
【
図5B】
図5Bは、実施例のフィラー含有フィルム10Bの断面図である。
【
図6】
図6は、フィラー含有フィルム10Aで電子部品を異方性導電接続するときの断面図である。
【
図7A】
図7Aは、実施例のフィラー含有フィルム(その一態様である異方性導電フィルム)10Cのフィラー(導電粒子)の配置を示す平面図である。
【
図7B】
図7Bは、実施例のフィラー含有フィルム(その一態様である異方性導電フィルム)10Cの断面図である。
【
図8A】
図8Aは、実施例のフィラー含有フィルム(その一態様である異方性導電フィルム)10Dのフィラー(導電粒子)の配置を示す平面図である。
【
図8B】
図8Bは、実施例のフィラー含有フィルム10Dの断面図である。
【
図9】
図9は、異方性導電接続の前後のフィラーユニット1Cの配置を示す平面図である。
【
図10】
図10は、フィラー含有フィルム10Dを用いて電子部品を異方性導電接続した接続構造体の断面図である。
【
図11A】
図11Aは、第2の樹脂層を有するフィラー含有フィルム(その一態様である異方性導電フィルム)10Eの断面図である。
【
図11B】
図11Bは、第2の樹脂層を有するフィラー含有フィルム(その一態様である異方性導電フィルム)10Fの断面図である。
【
図11C】
図11Cは、第2の樹脂層を有するフィラー含有フィルム(その一態様である異方性導電フィルム)10Gの断面図である。
【
図12】
図12は、第2の樹脂層を有するフィラー含有フィルム(その一態様である異方性導電フィルム)10の製造方法の工程説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のフィラー含有フィルムを、その一態様である異方性導電フィルムを主にして、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は、同一又は同等の構成要素を表している。
【0018】
<フィラー含有フィルムの全体構成>
図1Aは、本発明の一実施例のフィラー含有フィルム10Aのフィラー配置を説明する平面図であり、
図1BはそのX-X断面図である。
【0019】
フィラー含有フィルム10Aは、樹脂層2と、該樹脂層2の一方の表面2aからフィルム厚方向に所定の深さで単層に分散しているフィラー1Aからなる第1フィラー層と、第1フィラー層と異なる深さで単層に分散しているフィラー1Bからなる第2フィラー層で形成されたフィラー分散層3からなる。第1フィラー層のフィラー1Aは、樹脂層2の一方の表面2a側に偏在し、該表面2aから露出しており、第2のフィラー層のフィラー1Bは、樹脂層2の他方の表面2b側に偏在し、該表面2bから露出している。なお、図では、第1フィラー層のフィラー1Aを濃色に表示し、第2フィラー層のフィラーを白色に表示している。
【0020】
なお、本発明におけるフィラーの分散状態には、特に断らない限り、フィラー1A、1Bがランダムに分散している状態も規則的な配置に分散している状態も含まれる。
【0021】
また、本実施例のフィラー含有フィルム10Aでは、フィルムの長手方向に、第1フィラー層のフィラー1Aの個数密度及び第2フィラー層のフィラー1Bの個数密度の一方が漸次増加し、他方が漸次減少しており、第1フィラー層と第2フィラー層を合わせたフィラー1A、1Bの個数密度のフィルム全体における均一性が優れている。
【0022】
<フィラー>
フィラー1A、1Bは、フィラー含有フィルムの用途に応じて、公知の無機系フィラー(金属、金属酸化物、金属窒化物など)、有機系フィラー(樹脂粒子、ゴム粒子など)、有機系材料と無機系材料が混在したフィラー(例えば、コアが樹脂材料で形成され、表面が金属メッキされている粒子(金属被覆樹脂粒子)、導電粒子の表面に絶縁性微粒子を付着させたもの、導電粒子の表面を絶縁処理したもの等)から、硬さ、光学的性能などの用途に求められる性能に応じて適宜選択される。例えば、光学フィルムや艶消しフィルムでは、シリカフィラー、酸化チタンフィラー、スチレンフィラー、アクリルフィラー、メラミンフィラーや種々のチタン酸塩等を使用することができる。コンデンサー用フィルムでは、酸化チタン、チタン酸マグネシウム、チタン酸亜鉛、チタン酸ビスマス、酸化ランタン、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛及びこれらの混合物等を使用することができる。接着フィルムではポリマー系のゴム粒子、シリコーンゴム粒子等を含有させることができる。異方性導電フィルムでは導電粒子を含有させる。導電粒子としては、ニッケル、コバルト、銀、銅、金、パラジウムなどの金属粒子、ハンダなどの合金粒子、金属被覆樹脂粒子、表面に絶縁性微粒子が付着している金属被覆樹脂粒子などが挙げられる。2種以上を併用することもできる。中でも、金属被覆樹脂粒子が、接続された後に樹脂粒子が反発することで端子との接触が維持され易くなり、導通性能が安定する点から好ましい。また、導電粒子の表面には公知の技術によって、導通特性に支障を来たさない絶縁処理が施されていてもよい。上述の用途別に挙げたフィラーは、当該用途に限定されるものではなく、必要に応じて他の用途のフィラー含有フィルムが含有してもよい。また、各用途のフィラー含有フィルムでは、必要に応じて2種以上のフィラーを併用することができる。
【0023】
フィラーの形状は、フィラー含有フィルムの用途に応じ、球形、楕円球、柱状、針状、それら組み合わせ等から適宜選択して定められる。フィラー配置の確認が容易になり、均等な状体を維持し易い点から、球形が好ましい。特に、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成した場合、フィラーである導電粒子が、略真球であることが好ましい。導電粒子として略真球のものを使用することにより、例えば、特開2014-60150号公報に記載のように転写型を用いて導電粒子を配列させた異方性導電フィルムを製造するにあたり、転写型上で導電粒子が滑らかに転がるので、導電粒子を転写型上の所定の位置へ高精度に充填することができる。したがって、導電粒子を精確に配置することができる。
【0024】
フィラー1A、1Bの粒子径DA、DBは、配線高さのばらつきに対応できるようにし、また、導通抵抗の上昇を抑制し、且つショートの発生を抑制するために、好ましくは1μm以上30μm以下、より好ましくは3μm以上9μm以下である。
【0025】
第1フィラー層のフィラー1Aの粒子径と第2フィラー層のフィラー1Bの粒子径は、同一でも異なっていても良い。フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成した場合、導電粒子である双方のフィラー1A、1Bの異方性導電接続後の扁平率等の圧縮状態、特に導電粒子が金属被覆樹脂粒子である場合にそれらの圧縮状態を同一にして、導通性能を安定させる点からは同一とすることが好ましい。また、フィラー1Aとフィラー1Bの材質や硬さ(例えば、圧縮弾性率など)は、同一でも異なっていても良い。
【0026】
なお、フィラー1A、1Bの粒子径は、一般的な粒度分布測定装置により測定することができ、また、平均粒子径も粒度分布測定装置を用いて求めることができる。測定装置としては、一例としてFPIA-3000(マルバーン社)を挙げることができる。フィルム中のフィラー径は、金属顕微鏡による観察やSEMなどの電子顕微鏡観察から求めることができる。この場合、フィラー径を測定するサンプル数を200以上とすることが望ましい。また、フィラーの形状が球形でない場合、フィラー含有フィルムの平面画像又は断面画像に基づき最大長または球形に模した形状の直径をフィラーの粒子径とすることができる。
【0027】
<フィルム厚方向のフィラーの位置>
フィラー1A、1Bのフィルム厚方向の位置に関し、
図1Bには樹脂層2の一方の表面2aから第1フィラー層のフィラー1Aが露出し、他方の表面2bから第2フィラー層のフィラー1Bが露出している態様を示したが、本発明は、第1フィラー層のフィラー1Aが樹脂層2の一方の表面2aから露出しているか、又はフィラー1Aが樹脂層2内に完全に埋入しているが樹脂層2の表面2aに近接した位置にあり、また、第2フィラー層のフィラー1Bが樹脂層2の他方の表面2bから露出しているか、又は第2フィラー1Bが樹脂層2内に完全に埋入しているが、樹脂層2の表面2bに近接した位置にある態様を含む。ここで、フィラー1A、1Bが樹脂層2に完全に埋入しているが、その表面2a、2bの近傍に位置するとは、一例としてフィラー1A、1Bが樹脂層2から露出せず、かつ後述する埋込率が110%以下、好ましくは105%以下である場合をいう。フィラー1A、1Bが樹脂層2の表面2a、2bから露出していると、フィラー層のフィラー1Bの粒子径は、同一でも異なっていても良い。フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成した場合、異方性導電接続時に導電粒子であるフィラー1A、1Bの捕捉性が顕著に向上するので好ましい。また、フィラー1A、1Bが樹脂層2内に埋入し、かつその表面2a、2bに近接していると、フィラー1A、1Bの捕捉性が損なわれることなく、フィラー含有フィルムのタック性が向上するので好ましい。特に、フィラー1A、1Bが樹脂層2の表面2a、2bに対して0.1μm未満に近接していると、タック性が損なわれることなくフィラー1A、1Bの捕捉性が向上するので好ましい。また、フィラーの個数密度が5000個/mm
2以上もしくは面積占有率2%以上のフィラー層は、フィラー1A、1Bが樹脂層2内に埋入し、かつ樹脂層2の表面2a、2bと略面一であることが好ましい。これにより、フィラーが樹脂層から露出している場合に比してフィラー含有フィルムのタック性が低下せず、かつ埋込率が100%を超えてフィラーが完全に埋め込まれている場合に比して、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成した場合、異方性導電接続時に導電粒子であるフィラーが樹脂流動の影響を受けにくくなり、捕捉性が向上する。これに対し、第1フィラー層及び第2フィラー層のいずれか一方でも樹脂層2から露出せず、かつ樹脂層2の表面2a、2bの近傍にも位置しないと、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成した場合、異方性導電接続時に導電粒子であるフィラーが樹脂流動の影響を受け易くなり、捕捉性の低下が懸念される。もしくは、フィラー近傍の樹脂排除が均一にはなり難くなることで、フィラーの押し込みに悪影響を及ぼすことも懸念される。これは異方性導電フィルム以外のフィラー含有フィルムにおいても、同様のことが言える。
【0028】
第1フィラー層内で隣接するフィラー1A同士の中間部における樹脂層2の表面2aの接平面からフィラー1Aの最深部までの距離(以下、埋込量という)L1と導電粒子1Aの粒子径DAとの比率(L1/DA)である埋込率は、好ましくは30%以上110%以下、より好ましくは30%以上105%以下、さらに好ましくは30%超100%以下、特に好ましくは60%以上100%以下である。同様に、第2フィラー層のフィラー1Bについても、隣接するフィラー1B同士の中間部における樹脂層2の表面2bの接平面からフィラー1Bの最深部までの距離(埋込量)L2とフィラー1Bの粒子径DBとの比率(L2/DB)である埋込率は、好ましくは30%以上110%以下、より好ましくは30%以上105%以下、さらに好ましくは30%超100%以下、特に好ましくは60%以上100%以下である。埋込率(L1/DA)、(L2/DB)を30%以上とすることにより、フィラー1A、1Bを樹脂層2によって所定の規則的な配置あるいは所定の配列に維持することが容易となり、また、110%以下、好ましくは105%以下とすることにより、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成した場合、異方性導電接続時に樹脂の流動により端子間の導電粒子であるフィラーが無用に流されることが起こりにくくなる。また、フィラー含有フィルムにおいて、フィラーが樹脂層2から埋め込み率を揃えることによって、その特性が向上する効果が見込める。一例として、光学フィルムの性能がフィラーに依存する場合、平面視における分散性(独立性)と埋め込み状態に一定以上の規則性があれば、単純に混練しているバインダーを塗布するなどして得たものよりも、性能の向上や品質の安定性が得られると推察される。
【0029】
第1フィラー層のフィラー1Aの埋込率と、第2フィラー層のフィラー1Bの埋込率は同一でも異なっていてもよい。
【0030】
ここで、フィラー径DA、DBは、それぞれ第1フィラー層のフィラー1A、第2フィラー層のフィラー1Bのフィラー径の平均である。
【0031】
また、本発明において、埋込率(L1/DA)、(L2/DB)の数値は、異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムに含まれる全フィラー(例えば導電粒子)数の80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは96%以上が、当該埋込率(L1/DA)、(L2/DB)の数値になっていることをいう。埋込率(L1/DA)、(L2/DB)は、異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムから面積30mm2以上の領域を任意に10箇所以上抜き取り、そのフィルム断面の一部をSEM観察画像し、合計50個以上のフィラーを計測することにより求めることができる。より精度を上げるため、200個以上のフィラーを計測して求めてもよい。
【0032】
樹脂層2におけるフィラー1A、1Bの特に好ましい埋入態様の例として、
図1Bに示したように、フィラー1A、1Bの双方とも埋込率が60%以上100%未満で、導電粒子1A、1Bがそれぞれ樹脂層2の表面2a、2bから露出し、露出しているフィラー1A、1Bの周囲のフィラー樹脂層2に凹み2xが形成されている態様や、
図2に示すように、フィラー1A、1Bの双方とも埋込率が大凡100%で、樹脂層2の表裏でフィラー1A、1Bがそれぞれ樹脂層2の表面2a、2bと面一であり、フィラー1A、1Bが絶縁性樹脂層2の表面2a、2bから露出し、露出しているフィラー1A、1Bの周囲の樹脂層2に凹み2xが形成されている態様をあげることができる。凹み2xが形成されていることにより、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成した場合、異方性導電接続時に導電粒子であるフィラー1A、1Bが端子間で挟持される際に生じるフィラー1A、1Bの偏平化に対して樹脂から受ける抵抗が、凹み2xが無い場合に比して低減し、端子におけるフィラーの捕捉性が向上する。フィラー含有フィルムとしても、単純に混練しているバインダーを塗布するなどして得たものよりも、上述のようにフィラーと樹脂の状態に特異性があることから、性能や品質に特徴が生じることが期待できる。
【0033】
一方、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成した場合、異方性導電フィルムを用いて電子部品同士を接続する際に、空気が巻き込まれないようにする点からは、
図3に示すように、導電粒子であるフィラー1A、1Bの埋込率が大凡100%で、かつフィラー分散層3の表面が平坦になるようにフィラー1A、1Bが樹脂層2に埋め込まれていることが好ましい。
【0034】
また、埋込率が100%を超える場合に、
図4に示すように、フィラー1A、1Bに近接した樹脂層2の表面2a、2bのフィラー1A、1Bの直上の領域に凹み2yが形成されていることが好ましい。凹み2yが形成されていることにより、凹み2yが無い場合に比して、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成した場合、異方性導電接続時の圧力が導電粒子であるフィラー1A、1Bに集中し易くなり、端子におけるフィラー1A、1Bの捕捉性が向上する。フィラー含有フィルムとしても、単純に混練しているバインダーを塗布するなどして得たものよりも、上述のようにフィラーと樹脂の状態に特異性があることから、性能や品質に特徴が生じることが期待できる。
【0035】
<フィラーの配列>
図1Aに示したフィラー含有フィルム10Aにおいて、第1フィラー層のフィラー1Aと第2フィラー層のフィラー1Bはそれぞれ正方格子に配列している。このように本発明のフィラー含有フィルムにおいて、フィラー1A、1Bは規則的に配列していることが好ましい。規則的な配列としては、
図1Aに示した正方格子の他に、長方格子、斜方格子、6方格子等の格子配列をあげることができる。格子配列の以外の規則的な配列としては、フィラーが所定間隔で直線状に並んだ粒子列が所定の間隔で並列しているものをあげることができる。フィラー1A、1Bを格子状等の規則的な配列にすることにより、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成した場合、異方性導電接続時に導電粒子である各フィラー1A、1Bに圧力を均等に加え、導通抵抗のばらつきを低減させることができる。
【0036】
第1フィラー層におけるフィラー1Aの配列と、第2フィラー層におけるフィラー1Bの配列は、同一としてもよく、異ならせてもよい。同一とする場合、例えば
図5A、
図5Bに示したフィラー含有フィルム10Bのようにフィラー含有フィルムの平面視で第1フィラー層のフィラー1Aと第2フィラー層のフィラー1Bが重ならないようにしてもよく、第1フィラー層のフィラー1Aと第2フィラー層のフィラー1Bとが接触又は近接してなるフィラーユニットが形成されるようにしてもよい。その場合、フィラーユニット同士は接触せずに規則的に配列していることが好ましい。それによりショートの発生を抑制することができる。
【0037】
例えば、第1フィラー層と第2フィラー層においてフィラー1A、1Bの配列自体は同じであるが、一方のフィラー1Aの配列が他方のフィラー1Bの配列に対してフィルム面方向に所定距離ずれており、フィラー含有フィルムの平面視で第1フィラー層のフィラー1Aと第2フィラー層のフィラー1Bの一部が重なっているフィラーユニットを構成することができる。この場合、
図1Aに示したフィラー含有フィルム10Aの一態様である異方性導電フィルムのように、フィラー1Aとフィラー1Bとが部分的に重なったフィラーユニット1Cが形成されるようにすると、フィラー含有フィルムは異方性導電フィルムのため、異方性導電接続時に導電粒子であるフィラー1A及び1Bのいずれかが端子に捕捉され易くなる効果が期待できる。即ち、
図1Aに示したフィラー含有フィルム10Aの一態様である異方性導電フィルムを用いて第1電子部品30の端子20と第2電子部品31の端子21とを異方性導電接続する場合において
図6に示すように端子20、21のエッジにフィラー1Aが位置すると、フィラー含有フィルム(異方性導電フィルム)の平面視でフィラー1Aと重なる位置にフィラー1Bが存在するために、加熱加圧時にフィラー1A又は1Bが位置ズレしても、隣接するフィラー1A、1Bのいずれかでは、端子20、21が接続され、端子におけるフィラーの捕捉性を高めることができる。またこの場合、加熱加圧時の樹脂流動が生じればフィラー1Aと1Bの距離が離れるのでショートが発生するリスクも低減する。尚、このように、フィラー1Aと1Bを部分的に重ねることは、フィラー含有フィルムの一態様である異方性導電フィルム全体におけるフィラー径や個数密度、フィラー間の距離、接続する端子サイズや端子間距離などを踏まえ、フィラー1Aと1Bを部分的に重ねても設計上ショートが発生しないことを前提とするが、フィラー1Aと1Bを部分的に重ねると、ショート抑制の効果を満足しつつ補足性向上の効果も満足しやすくなるので好ましい。また、隣接するフィラー1A、1Bが、それぞれ樹脂層2の表裏の面2a、2bと略面一になっている場合、あるは該表裏の面2a、2bから露出している場合には、これらの効果がさらに大きくなるので好ましい。なお、このようにフィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成した場合、上述のフィラー含有フィルムにおいて、仮に第1フィラー層のフィラー1Aと第2フィラー層のフィラー1Bとがフィルム厚方向に完全に重なっていても、異方性導電接続に使用すると、異方導電性接続時の加熱加圧により樹脂の溶融や流動が生じることもあり、重なっていたフィラー1A、1Bの位置はずれるので、実用上問題は無い。異方性導電フィルム以外の態様においても、同様のことが言える。
【0038】
一方、第1フィラー層におけるフィラー1Aの配列と、第2フィラー層におけるフィラー1Bの配列とを異ならせる場合は、例えば、双方の配列の形状が相似であるなどのように、配列に共通点があることが好ましい。これは、異方性導電フィルムに限定はされない。
【0039】
また、フィラー1Aの配列とフィラー1Bの配列をそれぞれ規則的な配列の一部とし、フィラー1Aの配列とフィラー1Bの配列とを合わせて格子状等の規則的な配列が形成されるようにしてもよい。例えば、フィラー1Aの配列とフィラー1Bの配列とを併せて6方格子とする場合にフィラー1Aの配列は、6方格子に含まれる6角形の配列を有し、フィラー1Bの配列はその6角形の中心になる配列とする。なお、この場合の規則的な配列は6方格子に限定はされない。また、フィラー1Aの配列とフィラー1Bの配列が、双方を合わせて形成される規則的な配列のいずれの部分をなすかについても限定されない。フィラー1Aの配列とフィラー1Bの配列を合わせて形成される規則的な配列は、正確な格子配列に対して歪んでいても良く、例えば、本来直線になる格子軸がジグザグになってもよい。このように簡単には再現が困難な配列条件とすることで、ロット管理が可能となり、フィラー含有フィルム及びそれを用いた接続構造体にトレーサビリティ(追跡を可能とする性質)を付与することも可能となる。これは、フィラー含有フィルムやそれを用いた接続構造体の偽造防止、真贋判定、不正利用防止等にも有効となる。また一般に、異方性導電接続においては、直線的に配列している導電粒子の相当数が端子のエッジ部分で捕捉されないという事態が起こり得るが、配列がジクザクになっていることにより、そのような事態を回避できる。よって、端子における導電粒子の捕捉数を一定の範囲に保ちやすくなるので好ましい。またこのような歪みが繰り返されていることにより、配列形状の適否を抜き取り検査などで容易に判断することができる。
【0040】
なお、上述のようなフィラーの歪んだ配列は、一つの転写型を用いて形成することも可能であるが、フィラー1A用の転写型とフィラー1B用の転写型の二つの転写型を組み合わせて形成してもよい。フィラー1A用の転写型とフィラー1B用の転写型の二つの転写型を使用して異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルム全体としてのフィラー(例えば導電粒子)の配列を形成することで、種々の配列を形成することが可能となり、設計変更にも短期間で応じやすくなり、製造コストの削減に寄与することができ、さらには、フィラーの配列が異なる種々の異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムを製造するための製造装置の保有、部品管理、メンテナンスなどに要する費用を含めた異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムの製造に関わるトータルコストを削減することが可能となる。本発明では、以上のようにフィラー1A用の転写型とフィラー1B用の転写型の2種類の転写型を用いて異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルム全体の平面視におけるフィラー(例えば導電粒子)の配列状態を設計するフィラー配列状態の設計方法や、その設計方法に従って2種の転写型を使用する異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムの製造方法をとることが可能である。
【0041】
なお、フィラー1Aおよびフィラー1Bは、フィラー含有フィルムの意図した発明の効果が得られる範囲において、その配列状態に抜けが存在していてもよい。フィルムの所定の方向に規則的に存在することで確認できる。また、フィラーの抜けをフィルムの長手方向に繰り返し存在させること、あるいはフィラーの抜けている箇所をフィルムの長手方向に漸次増加または減少させることにより、上述の歪み同様の効果が得られる。即ち、ロット管理が可能となり、フィラー含有フィルム及びそれを用いた接続構造体にトレーサビリティ(追跡を可能とする性質)を付与することも可能となる。これは、フィラー含有フィルムやそれを用いた接続構造体の偽造防止、真贋判定、不正利用防止等にも有効となる。
【0042】
第1フィラー層及び第2フィラー層のそれぞれにおいて、フィラー1A、1Bの配列の格子軸又は配列軸は、異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルム10Aの長手方向に対して平行でもよく、異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルム10Aの長手方向と交叉してもよい。例えば異方性導電フィルムとした場合においては、接続する端子幅、端子ピッチなどに応じて定めることができるため、特に制限はない。例えば、ファインピッチ用の異方性導電性フィルムとする場合、
図1Aに示したように第1フィラー層のフィラー1Aの格子軸Aを異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルム10Aの長手方向に対して斜行させ、異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルム10Aで接続する端子20の長手方向(フィルムの短手方向)と格子軸Aとのなす角度θを好ましくは6°~84°、より好ましくは11°~74°とする。異方性導電フィルム以外の用途であっても、このように傾斜させることで捕捉状態を安定にできる効果が見込まれる。
【0043】
フィラー1A、1Bの粒子間距離は、フィラー(例えば導電粒子)ユニット1Cの形成の有無、異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムで接続する端子の大きさ、端子ピッチ等に応じて適宜定める。例えば、第1フィラー層内で隣り合うフィラー1A同士の最近接粒子間距離L3および第2フィラー層内で隣り合うフィラー1B同士の最近接粒子間距離L4(
図1A)は、異方性導電フィルムの場合には、該隣り合う導電粒子であるフィラー1Aおよび1Bが一つのフィラーユニット(導電粒子ユニット)に属さない場合、フィラー1A、1Bの粒子径DA、DBの1.5倍以上であることがショート抑制の観点から好ましく、また、66倍以下とすることが端子におけるフィラーの捕捉数を最低限確保し、安定した導通を得る上で好ましい。特に、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成した場合、異方性導電フィルムをファインピッチのCOG(Chip On Glass)に対応させる場合、最近接粒子間距離L3、L4は粒子径の1.5~5倍とすることが好ましく、ピッチが比較的大きいFOG(Film On Glass)に対応させる場合には粒子径の10~66倍とすることが好ましい。異方性導電フィルム以外では、その特性に応じて適宜調整すればよい。
【0044】
なお、後述するように第1フィラー層内の複数のフィラー1Aでフィラーユニット1Cを形成する場合や、第2フィラー層内の複数のフィラー1Bでフィラーユニット1Cを形成する場合には、フィラー含有フィルムの一態様である異方性導電フィルムの場合において、1つのフィアーユニット1C内での第1フィラー層のフィラー1A同士の距離はフィラー1Aの粒子径DAの1/4倍以下とすることが好ましく、フィラー1A同士が接していても良い。同様に、1つのフィラーユニット1C内での第2フィラー層のフィラー1B同士の距離はフィラー1Bの粒子径DBの1/4倍以下とすることが好ましく、フィラー1B同士が接していても良い。異方性導電フィルム以外では、その特性に応じて適宜調整すればよい。
【0045】
<フィラーの個数密度>
本発明のフィラー含有フィルム全体のフィラーの個数密度は、その用途や求められる特性とフィラー1A、1Bの粒子径、配列等に応じて適宜調整されるので特に限定はされないが、下記の異方性導電フィルムの場合を適用することができる。フィラー含有フィルムとしての製造条件は、異方性導電フィルムの場合と概ね同じになるため、フィラーの個数密度の条件もと概ね同様になると考えて差し支えない。フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成した場合、異方性導電フィルムで接続する電子部品における端子のピッチ、異方性導電フィルムにおけるフィラー(導電粒子)1A、1Bの粒子径、配列等に応じて適宜調整される。例えば個数密度の上限に関しては、ショート抑制のために70000個/mm2以下が好ましく、50000個/mm2以下がより好ましく、35000個/mm2以下が更により好ましい。一方、個数密度の下限に関しては、コスト抑制のためにフィラー(導電粒子)を削減し且つ導通性能を満足させるためにも、100/mm2以上が好ましく、150/mm2個以上が好ましく、400個/mm2以上が更により好ましい。特に、異方性導電フィルムで接続する電子部品の最小の端子の接続面積が2000μm2以下のファインピッチ用途とする場合には、10000個/mm2以上が好ましい。第1フィラー層のフィラー1Aの設計上の個数密度と第2フィラー層のフィラー1Bの設計上の個数密度は等しくても、異なっていてもよい。
【0046】
フィラー含有フィルムの製造にあたり、フィラーをフィラー含有フィルムの長手方向に付着させていく場合に、フィラーの抜けや分布の不均一性が不可避的に増加していく傾向があるときには、フィラー含有フィルムの長手方向に、第1フィラー層のフィラーの個数密度及び第2フィラー層のフィラーの個数密度の一方が漸次増加し、他方が漸次減少していること、即ち、個数密度の増加又は減少の方向が第1フィラー層と第2フィラー層で反対向きとなっていることが好ましい。異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルム全体における第1フィラーの個数密度の平均を等しくした場合には、上述のようにフィラーの個数密度を漸次増加又は減少させることにより、フィラー含有フィルムの一端10Apと他端10Aqとでは、第1フィラー層の個数密度と第2フィラー層の個数密度との大小関係が逆転し、フィラー含有フィルム全体におけるフィラーの個数密度の均一性は向上する。これは異方性導電フィルムのように、全面における個数密度の均一性が強く求められる場合に、製造難易度が低下することから、その効果を期待できる。また異方性導電フィルムでもそれ以外の用途であっても同様に、コスト削減の効果が期待できる。
【0047】
異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムの長手方向の第1フィラー層又は第2フィラー層におけるフィラーの個数密度は、フィラー含有フィルムの長手方向にフィルム全長の20%以上又は3m以上となる領域内において、フィラーの個数密度の測定領域として1辺が100μm以上の矩形領域をフィラー含有フィルムの長手方向の異なる位置に複数箇所(好ましくは5カ所以上、より好ましくは10カ所以上)を設定し、測定領域の合計面積を好ましくは2mm2以上とし、各測定領域のフィラーの個数密度を金属顕微鏡を用いて測定し、それらを平均するか、あるいは、上述のフィルム全長の20%以上又は3m以上の領域内の画像を撮り、画像解析ソフト(例えば、WinROOF、三谷商事株式会社等)によってフィラーの個数密度を測定することにより求めることができ、また、フィラーの個数密度が漸次増加又は減少していることは、各測定領域で計測されたフィラーの個数密度が、異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムの長手方向に対して、単調に増加又は減少していることにより確認することができる。なお、面積100μm×100μm領域は、バンプ間スペース50μm以下の接続対象物において、1個以上のバンプが存在する領域になる。尚、測定領域はフィラーの個数密度によって、その測定領域の1辺の上限を適宜調整してもよい。著しく密もしくは疎な場合は、例えばフィラー個数が合計面積の総数で200個以上、好ましくは1000個以上になるように調整してもよい。
【0048】
フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成した場合、異方性導電フィルムを、該異方性導電フィルムで接続する電子部品の最小の端子の接続面積が2000μm2以下のファインピッチ用途とする際に、フィラー含有フィルム(異方性導電フィルム)の一端10Apにおける、第1フィラー層と第2フィラー層を合わせたフィラー1A、1Bの個数密度NpABと、他端10Aqにおける第1フィラー層と第2フィラー層を合わせたフィラー1A、1Bの個数密度NqABとの差(NpAB-NqAB)が、それらの平均((NpAB+NqAB)/2)に対して好ましくは±2%以内、より好ましくは±1.5%以内、更により好ましくは±1%以内であり、最小の端子の接続面積が2000μm2を超えるノーマルピッチの場合には、(NpAB-NqAB)は((NpAB+NqAB)/2)に対して好ましくは±20%以内、より好ましくは±10%以内である。
【0049】
第1フィラー層と第2フィラー層で設計上のフィラーの配列と個数密度を等しくする場合、樹脂層2に第1フィラー層と第2フィラー層を形成する工程としては、後述するように第1フィラー層となるフィラー1Aを樹脂層2に付着させるときと、第2フィラー層となるフィラー1Bを樹脂層2に付着させるときとで樹脂層2の走行方向を逆転させ、同一工程を繰り返すことが製造上好ましい。このように走行方向を逆転させることは、フィラーの付着に使用する転写型に仮に欠陥があった場合に、異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルム上の欠陥の位置がフィルムの表裏で重ならず、フィルム全体としては不良になるリスクを回避することができる点でも好ましい。
【0050】
一方、第1フィラー層と第2フィラー層のフィラー1A、1Bの個数密度を異ならせる場合、これらのうち個数密度が高いフィラー層を異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムの外界面により近接した位置とすることが、端子におけるフィラーの捕捉性を高める点で好ましい。また、異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムの外表面にフィラー層を露出させる場合、異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムのタック性の低減を抑制する点から、露出させるフィラー層は個数密度の低いもの(個数密度の低い側)とすることが好ましい。このようにフィラー含有フィルムでは、求められる特性によって、適宜第1フィラー層と第2フィラー層のフィラー1A、1Bの個数密度を異ならせることができる。
【0051】
<樹脂層>
(樹脂層の粘度)
樹脂層2の最低溶融粘度は、特に制限はなく、フィラー含有フィルムの用途や、フィラー含有フィルムの製造方法等に応じて適宜定めることができる。例えば、上述の凹み2x、2yを形成できる限り、フィラー含有フィルムの製造方法によっては1000Pa・s程度とすることもできる。一方、フィラー含有フィルムの製造方法として、フィラーを樹脂層の表面に所定の配置で保持させ、そのフィラーを樹脂層に押し込む方法を行うとき、樹脂層がフィルム成形を可能とする点から樹脂の最低溶融粘度を1100Pa・s以上とすることが好ましい。凹み2x、2yは両面にあってもよく、片面(即ち、フィラー1A、1Bのいづれか一方)だけであってもよい。
【0052】
また、後述のフィラー含有フィルムの製造方法で説明するように、
図1Bに示すように樹脂層2に押し込んだフィラー1A、1Bの露出部分の周りに凹み2xを形成したり、
図4に示すように樹脂層2に押し込んだフィラー1A、1Bの直上に凹み2yを形成したりする点から、好ましくは1500Pa・s以上、より好ましくは2000Pa・s以上、さらに好ましくは3000~15000Pa・s、さらにより好ましくは3000~10000Pa・sである。この最低溶融粘度は、一例として回転式レオメータ(TA instrument社製)を用い、測定圧力5gで一定に保持し、直径8mmの測定プレートを使用し求めることができ、より具体的には、温度範囲30~200℃において、昇温速度10℃/分、測定周波数10Hz、前記測定プレートに対する荷重変動5gとすることにより求めることができる。
【0053】
樹脂層2の最低溶融粘度を1500Pa・s以上の高粘度とすることにより、フィラー含有フィルムの物品への圧着にフィラーの不用な移動を抑制でき、特に、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとする場合には、異方性導電接続時に端子間で挟持されるべき導電粒子が樹脂流動により流されてしまうことを防止できる。
【0054】
また、樹脂層2にフィラー1A、1Bを押し込むことによりフィラー含有フィルム10Aのフィラー分散層3を形成する場合において、フィラー1A、1Bを押し込むときの樹脂層2は、フィラー1A、1Bが樹脂層2から露出するようにフィラー1A、1Bを樹脂層2に押し込んだときに、樹脂層2が塑性変形してフィラー1A、1Bの周囲の樹脂層2に凹み2x(
図1B)が形成されるような高粘度な粘性体とするか、あるいは、フィラー1A、1Bが樹脂層2から露出することなく樹脂層2に埋まるようにフィラー1A、1Bを押し込んだときに、フィラー1A、1Bの直上の樹脂層2の表面に凹み2y(
図4)が形成されるような高粘度な粘性体とする。そのため、樹脂層2の60℃における粘度は、下限は好ましくは3000Pa・s以上、より好ましくは4000Pa・s以上、さらに好ましくは4500Pa・s以上であり、上限は、好ましくは20000Pa・s以下、より好ましくは15000Pa・s以下、さらに好ましくは10000Pa・s以下である。この測定は最低溶融粘度と同様の測定方法で行い、温度が60℃の値を抽出して求めることができる。
【0055】
樹脂層2にフィラー1A、1Bを押し込むときの該樹脂層2の具体的な粘度は、形成する凹み2x、2yの形状や深さなどに応じて、下限は好ましくは3000Pa・s以上、より好ましくは4000Pa・s以上、さらに好ましくは4500Pa・s以上であり、上限は、好ましくは20000Pa・s以下、より好ましくは15000Pa・s以下、さらに好ましくは10000Pa・s以下である。また、このような粘度を好ましくは40~80℃、より好ましくは50~60℃で得られるようにする。
【0056】
上述したように、樹脂層2から露出しているフィラー1A、1Bの周囲に凹み2x(
図1B)が形成されていることにより、フィラー含有フィルムの物品への圧着時に生じるフィラー1A、1Bの偏平化に対して樹脂から受ける抵抗が、凹み2xが無い場合に比して低減する。このため、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとした場合には、異方性導電接続時に端子で導電粒子が挟持され易くなることで導通性能が向上し、また捕捉性が向上する。特に異方性導電フィルムでは、樹脂層2の両面に導電粒子であるフィラー1A、1Bが存在することから、樹脂から受ける抵抗を低減させるためにも、このような凹み2xが、何れか一方の面にあることが好ましく、両面にあることがより好ましい。
【0057】
また、樹脂層2から露出することなく埋まっているフィラー1A、1Bの直上の樹脂層2の表面に凹み2y(
図4)が形成されていることにより、凹み2yが無い場合に比してフィラー含有フィルムの物品への圧着時の圧力がフィラー1A、1Bに集中し易くなる。このため、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとした場合には、異方性導電接続時に端子で導電粒子が挟持され易くなることで捕捉性が向上し、導通性能が向上する。特に異方性導電フィルムでは、上記同様の理由からこのような凹み2yが、何れか一方の面にあることが好ましく、両面にあることがより好ましい。2xと2yが片面ずつに存在していてもよく、混在していてもよい。
【0058】
<凹みに代わる“傾斜”もしくは“起伏”>
図1B、
図4に示すようなフィラー含有フィルムの 「凹み」2x、2yは、「傾斜」もしくは「起伏」という観点から説明することもできる。以下に、図面を参照しながら説明する。
【0059】
異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルム10Aはフィラー分散層3から構成されている(
図1B)。フィラー分散層3では、樹脂層2の片面にフィラー1A、1Bが露出した状態で規則的に分散している。フィルムの平面視にてフィラー1A、1Bは互いに接触しておらず、フィルム厚方向にもフィラー1A、1Bが互いに重なることなく規則的に分散し、フィラー1A、1Bのフィルム厚方向の位置が揃った単層のフィラー層を構成している。
【0060】
個々のフィラー1A、1Bの周囲の樹脂層2の表面2a、2bには、隣接するフィラー間の中央部における樹脂層2の接平面2pに対して傾斜2xが形成されている。なお後述するように、本発明のフィラー含有フィルムでは、樹脂層2に埋め込まれたフィラー1A、1Bの直上の樹脂層の表面に起伏2yが形成されていてもよい(
図4)。
【0061】
本発明において、「傾斜」とは、フィラー1A、1Bの近傍で樹脂層の表面の平坦性が損なわれ、前記接平面2pに対して樹脂層の一部が欠けて樹脂量が低減している状態を意味する。換言すれば、傾斜では、フィラーの周りの樹脂層の表面が接平面に対して欠けていることになる。一方、「起伏」とは、フィラーの直上の樹脂層の表面にうねりがあり、うねりのように高低差がある部分が存在することで樹脂が低減している状態を意味する。換言すれば、フィラー直上の樹脂層の樹脂量が、フィラー直上の樹脂層の表面が接平面にあるとしたときに比して少なくなる。これらは、フィラーの直上に相当する部位とフィラー間の平坦な表面部分(
図1B、
図4)とを対比して認識することができる。なお、起伏の開始点が傾斜として存在する場合もある。
【0062】
上述したように、樹脂層2から露出しているフィラー1A、1Bの周囲に傾斜2x(
図1B)が形成されていることにより、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成する場合、異方性導電接続時にフィラー1A、1Bが端子間で挟持される際に生じるフィラー1A、1Bの偏平化に対して樹脂から受ける抵抗が、傾斜2xが無い場合に比して低減するため、端子におけるフィラーの挟持がされ易くなることで導通性能が向上し、また捕捉性が向上する。この傾斜は、フィラーの外形に沿っていることが好ましい。接続における効果がより発現しやすくなる以外に、フィラーを認識し易くなることで、異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムの製造における検査などが行い易くなるからである。また、この傾斜および起伏は樹脂層にヒートプレスするなどにより、その一部が消失してしまう場合があるが、本発明はこれを包含する。この場合、フィラーは樹脂層の表面に1点で露出する場合がある。なお、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成する場合、接続する電子部品が多様であり、これらに合わせてチューニングする以上、種々の要件を満たせるように設計の自由度が高いことが望まれるので、傾斜もしくは起伏を低減させても部分的に消失させても用いることができる。
【0063】
また、樹脂層2から露出することなく埋まっているフィラー1A、1Bの直上の樹脂層2の表面に起伏2y(
図4)が形成されていることにより、傾斜の場合と同様に、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成する場合、異方性接続時に端子からの押圧力がフィラーにかかりやすくなる。また、起伏があることにより樹脂が平坦に堆積している場合よりもフィラーの直上の樹脂量が低減しているため、接続時のフィラー直上の樹脂の排除が生じやすくなり、端子とフィラーとが接触し易くなることから、端子におけるフィラーの捕捉性が向上し、導通信頼性が向上する。
【0064】
上述したフィラーの露出部分の周りの樹脂層2の傾斜2x(
図1B)や、フィラーの直上の樹脂層の起伏2y(
図4)の効果を得易くする点からフィラー1A、1Bの露出部分の周りの傾斜2xの最大深さLeとフィラー1A、1Bの粒子径DA、DBとの比(Le/DA)、(Le/DB)は、好ましくは50%未満、より好ましくは30%未満、さらに好ましくは20~25%であり、フィラー1A、1Bの露出部分の周りの傾斜2xの最大径Ldとフィラー1A、1Bの粒子径DA、DBとの比(Ld/DA)、(Ld/DB)は、好ましくは100%以上、より好ましくは100~150%であり、フィラー1A、1Bの直上の樹脂における起伏2yの最大深さLfとフィラー1A、1Bの粒子径DA、DBとの比(Lf/DA)、(Lf/DB)は、0より大きく、好ましくは10%未満、より好ましくは5%以下である。
【0065】
なお、フィラー1A、1Bの露出部分の径Lcは、フィラー1A、1Bの粒子径DA、DB以下とすることができ、好ましくは粒子径DA、DBの10~90%である。また、導電粒子1の頂部の1点で露出するようにしてもよく、DA、DBが樹脂層2内に完全に埋まり、径Lcがゼロとなるようにしてもよい。
【0066】
このような本発明において、樹脂層2の表面の傾斜2x、起伏2yの存在は、異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムの断面を走査型電子顕微鏡で観察することにより確認することができ、面視野観察においても確認できる。光学顕微鏡、金属顕微鏡でも傾斜2x、起伏2yの観察は可能である。また、傾斜2x、起伏2yの大きさは画像観察時の焦点調整などで確認することもできる。上述のようにヒートプレスにより傾斜もしくは起伏を減少させた後であっても、同様である。痕跡が残る場合があるからである。
【0067】
(樹脂層の層厚)
本発明の異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムでは、樹脂層2の層厚Laと全フィラー1A、1Bの平均粒子径DA、DBとの比(La/DA)、(La/DB)は、好ましくは0.3以上、0.6~10、より好ましくは0.6~8、さらに好ましくは0.6~6である。平均粒子径DA、DBとしては、第1フィラー層のフィラー1Aと第2フィラー層のフィラー1Bのそれぞれの平均粒子径が異なる場合に、これらの平均としてもよい。樹脂層2の層厚Laが大き過ぎてこの比が10を上回ると、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成した場合、異方性導電接続時に導電粒子であるフィラー1A、1Bが位置ズレしやすくなり、端子におけるフィラー1A、1Bの捕捉性が低下する。反対に樹脂層2の層厚Laが小さすぎてこの比が0.6未満となると、樹脂層2でフィラー1A、1Bを所定の配列に維持することが困難となる。
【0068】
(樹脂層の組成)
樹脂層2は、フィラー含有フィルムの用途に応じて導電性でも絶縁性でもよく、また、可塑性でも硬化性であってもよいが、好ましくは絶縁性の硬化性樹脂組成物から形成することができ、例えば、熱重合性化合物と熱重合開始剤とを含有する絶縁性の熱重合性組成物から形成することができる。熱重合性組成物には必要に応じて光重合開始剤を含有させてもよい。これらは、公知の樹脂や化合物を用いることができる。以下、フィラー含有フィルムの一態様における異方性導電フィルムを主として、絶縁性樹脂の場合を説明する。
【0069】
熱重合開始剤と光重合開始剤を併用する場合に、熱重合性化合物として光重合性化合物としても機能するものを使用してもよく、熱重合性化合物とは別に光重合性化合物を含有させてもよい。好ましくは、熱重合性化合物とは別に光重合性化合物を含有させる。例えば、熱重合開始剤としてカチオン系硬化開始剤、熱重合性化合物としてエポキシ樹脂を使用し、光重合開始剤として光ラジカル開始剤、光重合性化合物としてアクリレート化合物を使用する。
【0070】
光重合開始剤として、波長の異なる光に反応する複数種類を含有させてもよい。これにより、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成した場合、異方性導電フィルムの製造時における、絶縁性樹脂層を構成する樹脂の光硬化と、異方性接続時に電子部品同士を接着するための樹脂の光硬化とで使用する波長を使い分けることができる。
【0071】
フィラー含有フィルムの一態様における異方性導電フィルムの製造時の光硬化では、樹脂層に含まれる光重合性化合物の全部又は一部を光硬化させることができる。この光硬化により、樹脂層2におけるフィラー1A、1Bの配置が保持乃至固定化され、ショートの抑制と捕捉の向上が見込まれる。また、この光硬化により、異方性導電フィルムの製造工程における樹脂層の粘度を適宜調整してもよい。
【0072】
樹脂層における光重合性化合物の配合量は30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、2%質量未満がより好ましい。光重合性化合物が多すぎると接続時の押し込みにかかる推力が増加するためである。特に異方性接続の場合には、このようにすることが好ましい。樹脂流動と、樹脂に保持される導電粒子の押し込みを両立させるためである。
【0073】
熱重合性組成物の例としては、(メタ)アクリレート化合物と熱ラジカル重合開始剤とを含む熱ラジカル重合性アクリレート系組成物、エポキシ化合物と熱カチオン重合開始剤とを含む熱カチオン重合性エポキシ系組成物等が挙げられる。熱カチオン重合開始剤を含む熱カチオン重合性エポキシ系組成物に代えて、熱アニオン重合開始剤を含む熱アニオン重合性エポキシ系組成物を使用してもよい。また、特に支障を来たさなければ、複数種の重合性組成物を併用してもよい。併用例としては、熱カチオン重合性化合物と熱ラジカル重合性化合物の併用などが挙げられる。
【0074】
ここで、(メタ)アクリレート化合物としては、従来公知の熱重合型(メタ)アクリレートモノマーを使用することができる。例えば、単官能(メタ)アクリレート系モノマー、二官能以上の多官能(メタ)アクリレート系モノマーを使用することができる。
【0075】
熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物、アゾ系化合物等を挙げることができる。特に、気泡の原因となる窒素を発生しない有機過酸化物を好ましく使用することができる。
【0076】
熱ラジカル重合開始剤の使用量は、少なすぎると硬化不良となり、多すぎると製品ライフの低下となるので、(メタ)アクリレート化合物100質量部に対し、好ましくは2~60質量部、より好ましくは5~40質量部である。
【0077】
エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、それらの変性エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などを挙げることができ、これらの2種以上を併用することができる。また、エポキシ化合物に加えてオキセタン化合物を併用してもよい。
【0078】
熱カチオン重合開始剤としては、エポキシ化合物の熱カチオン重合開始剤として公知のものを採用することができ、例えば、熱により酸を発生するヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、フェロセン類等を用いることができ、特に、温度に対して良好な潜在性を示す芳香族スルホニウム塩を好ましく使用することができる。
【0079】
熱カチオン重合開始剤の使用量は、少なすぎても硬化不良となる傾向があり、多すぎても製品ライフが低下する傾向があるので、エポキシ化合物100質量部に対し、好ましくは2~60質量部、より好ましくは5~40質量部である。
【0080】
熱重合性組成物は、膜形成樹脂やシランカップリング剤を含有することが好ましい。膜形成樹脂としては、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂等を挙げることができ、これらの2種以上を併用することができる。これらの中でも、成膜性、加工性、接続信頼性の観点から、フェノキシ樹脂を好ましく使用することができる。重量平均分子量は10000以上であることが好ましい。また、シランカップリング剤としては、エポキシ系シランカップリング剤、アクリル系シランカップリング剤等を挙げることができる。これらのシランカップリング剤は、主としてアルコキシシラン誘導体である。
【0081】
熱重合性組成物には、溶融粘度調整のために、上述のフィラー1A、1Bとは別に絶縁性フィラーを含有させてもよい。これはシリカ粉やアルミナ粉などが挙げられる。絶縁性フィラー粒径20~1000nmの微小なフィラーが好ましく、また、配合量はエポキシ化合物等の熱重合性化合物(光重合性組成物)100質量部に対して5~50質量部とすることが好ましい。フィラー1A、1Bとは別に含有させる絶縁性フィラーは、フィラー含有フィルムの用途が異方性導電フィルムの場合に好ましく使用されるが、用途によっては絶縁性でなくともよく、例えば導電性の微小なフィラーを含有させてもよい。フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成する場合、フィラー分散層を形成する樹脂層には、必要に応じて、フィラー1A、1Bとは異なるより微小な絶縁性フィラー(所謂ナノフィラー)を適宜含有させることができる。
【0082】
本発明のフィラー含有フィルムには、上述の絶縁性又は導電性のフィラーとは別に充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤(顔料、染料)、有機溶剤、イオンキャッチャー剤などを含有させてもよい。
【0083】
<フィラー含有フィルムの変形態様>
(フィラーユニット)
本発明のフィラー含有フィルムは、フィラーの配列に関し、種々の態様をとることができる。
【0084】
例えば、
図7A、
図7Bに示す異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルム10Cのように、第1フィラー層の複数個のフィラー1Aでフィラーユニット1C
1が形成され、第2フィラー層の複数個のフィラー1Bでフィラーユニット1C
2が形成され、フィラーユニット1C
1、1C
2同士が接触せず、フィラー含有フィルムの平面視でも重なっておらず、フィラーユニット1C
1、1C
2が格子状に配列したものをあげることができる。この場合、第1フィラー層のフィラーユニット1C
1の1個あたりのフィラー1Aの個数は、例えば2~9個、特に2~4個とすることができる。フィラーユニット内でフィラー1Aは、一列に並んでいてもよく、塊状に集合していてもよい。第2フィラー層のフィラーユニット1C
2の1個あたりのフィラー1Bの個数も同様に、例えば2~9個、特に2~4個とすることができる。フィラーユニット内でフィラー1Bは一列に並んでいてもよく、塊状に集合していてもよい。これは異方性導電フィルムの場合には、端子レイアウトに応じてショートリスクが低くなるようにフィラーユニットを配置させることで適用させることもできる。異方性導電フィルム以外の用途では、目的に応じて適宜調整すればよい。
【0085】
異方性導電フィルムの場合には、フィラー(導電粒子)の捕捉性を向上させ、かつショートを抑制する点からは、好ましくは、第1フィラー層のフィラーユニット1C
1と第2フィラー層のフィラーユニット1C
2をそれぞれ一列に並んだフィラーから構成し、それらの長手方向を非平行とすることが好ましく、特に、
図7A、
図7Bに示したように、直交させることが好ましい。
【0086】
また、
図8A、
図8Bに示す異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルム10Dのように、互いに接触又は近接した第1フィラー層の複数個のフィラー1Aと、互いに接触又は近接した第2フィラー層の複数個のフィラー1Bとを接触又は近接させてフィラーユニット1Cを形成してもよい。このフィラーユニット1C同士も互いに接触することなく、フィラーユニット1Cを規則配列させることが好ましい。また、フィラーユニット1Cの1個あたりの第1フィラー層のフィラー1Aの個数は2~9個、特に2~4個とし、第2フィラー層のフィラー1Bは2~9個、特に2~4個とすることが好ましい。これも上記同様に、異方性導電フィルムの場合には、端子レイアウトに応じてショートリスクが低くなるようにフィラーユニットを配置させることで適用させることもできる。異方性導電フィルム以外の用途では、目的に応じて適宜調整すればよい。
【0087】
異方性導電フィルムの場合には、このように複数個のフィラー(導電粒子)1A、1Bから形成したフィラーユニット1Cを有するフィラー含有フィルム10Dを異方性導電接続に使用し、フィルム厚方向に押圧すると、
図9に示すように、互いに接触していたフィラー(導電粒子)1A、1Bを放射状に広がらせ、フィラー(導電粒子)1A、1B同士を離間させることができる。この場合、
図10に示すように、フィラー(導電粒子)1A、1Bが対向する端子20、21で押圧されない端子間領域においても、異方性導電接続前にフィラーユニット1Cを形成していたフィラー1A、1Bは離間する。よって、このフィラー含有フィルム10Dによれば、隣接する端子間のショートを抑制することができる。一方、異方性導電接続前に対向する端子20、21のエッジ部分に導電粒子1A、1Bが位置した場合でも、異方性導電接続によりフィラー1A及び1Bの少なくとも一方は端子20、21に捕捉される。したがって、このフィラー含有フィルム10Dによれば、導電粒子の捕捉効率が向上する。異方性導電フィルム以外の用途にも、目的に応じてこのようなフィラーユニット1Cを形成してもよい。圧着ローラーで押圧する場合に、適用することが好ましいと考えられる。フィルムの厚み方向以外の方向にも加圧の荷重がかかり易いためである。
【0088】
(一方のフィラー層の配置の抜けを他方のフィラー層で補う態様)
第1フィラー層及び第2フィラー層の一方のフィラー層を、設計上、所定の配列及び所定の個数密度で形成し、その後全領域についてフィラーの配列と個数密度を確認し、その一方の導電粒子層の粒子配置に合わせるように、さらに必要に応じて一方のフィラー層の粒子配置における抜けを補うように、他方のフィラー層を形成し、異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルム全体として、フィラーを所定の配置とし、かつ抜けを解消してもよい。したがって後から形成されるフィラー層は、フィラー含有フィルムの長手方向に個数密度が変化していてもよい。このようにすることで、フィラー含有フィルムの歩留まりが向上し、コスト削減の効果が期待できる。
【0089】
(第2の樹脂層の積層)
図11Aに示した異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルム10Eのように、フィラー分散層3の一方の表面に、フィラー分散層3を形成する樹脂層2よりも好ましくは最低溶融粘度が低い第2の樹脂層4を積層してもよい。また、第1フィラー層と第2フィラー層の樹脂層2における埋込率が異なり、第1フィラー層が第2フィラー層よりも樹脂層から露出している場合に、
図11Bに示した異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルム10Fのように樹脂層2からの突出量が大きい第1樹脂層側に第2の樹脂層4を積層してもよく、
図11Cに示した異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルム10Gのように、フィラー層が突出していない樹脂層2の表面に第2の樹脂層4を積層してもよい。第2の樹脂層4の積層により、異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムを用いて電子部品を異方性導電接続するときに、電子部品の電極やバンプによって形成される空間を充填し、接着性を向上させることができる。なお、第2の樹脂層4を積層する場合、第2の樹脂層4がツールで加圧する電子部品に貼られるようにする(樹脂層2がステージに載置される電子部品に貼られるようにする)ことが好ましい。このようにすることで、フィラーの不本意な移動を避けることができ、捕捉性を向上させることができる。
【0090】
樹脂層2と第2の樹脂層4との最低溶融粘度は、差があるほど電子部品の電極やバンプによって形成される空間が第2の樹脂4で充填されやすくなり、電子部品同士の接着性を向上させる効果が期待できる。また、この差があるほどフィラー分散層3中に存在する樹脂2の移動量が相対的に小さくなるため、端子におけるフィラーの捕捉性が向上しやすくなる。実用上は、樹脂層2と第2の樹脂層4との最低溶融粘度比は、好ましくは2以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは8以上である。一方、この比が大きすぎると長尺の異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムを巻装体にした場合に、樹脂のはみだしやブロッキングの虞があるので、実用上は15以下が好ましい。第2の樹脂層4の好ましい最低溶融粘度は、より具体的には、上述の比を満たし、かつ3000Pa・s以下、より好ましくは2000Pa・s以下であり、特に100~2000Pa・sである。
【0091】
なお、第2の樹脂層4は、樹脂層と同様の樹脂組成物において、粘度を調整することにより形成することができる。
【0092】
第2の樹脂層4の層厚は、好ましくは4~20μmである。もしくは、フィラー径に対して、1~8倍である。
【0093】
また、樹脂層2と第2の樹脂層4を合わせた異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルム10E、10F、10G全体の最低溶融粘度は、実用上は8000Pa・s以下、好ましくは200~7000Pa・s以下、特に好ましくは、200~4000Pa・sである。
【0094】
(第3の樹脂層の積層)
第2の樹脂層4と樹脂層2を挟んで反対側に第3の樹脂層が設けられていてもよい。第3の樹脂層をタック層として機能させることができる。
【0095】
第3の樹脂層の樹脂組成、粘度及び厚みは第2の樹脂層と同様でもよく、異なっていても良い。樹脂層2と第2の樹脂層4と第3の樹脂層を合わせた異方性導電フィルムの最低溶融粘度は特に制限はないが、実用上は8000Pa・s以下、好ましくは200~7000Pa・s以下、特に好ましくは、200~4000Pa・sである。
【0096】
(その他の積層態様)
フィラー含有フィルムの用途によっては、複数のフィラー分散層3を積層してもよく、積層したフィラー分散層間に、第2の樹脂層のようにフィラーを含有していない層を介在していてもよく、最外層に第2の樹脂層や第3の樹脂層を設けてもよい。
【0097】
<フィラー含有フィルムの製造方法>
樹脂層として、フィラー分散層3の単層を有する本発明のフィラー含有フィルムは、例えば、樹脂層2の一方の表面にフィラー1Aを所定の分散で保持(好ましくは所定の配列で保持)させ、そのフィラー1Aを平板又はローラー等で樹脂層2に押し込み、樹脂層2の他方の表面にも、同様にフィラー1Bを所定の分散で保持(好ましくは所定の配列で保持)させ押し込むことにより得ることができる。また、樹脂層の両面にフィラーを所定の分散状態で保持させる際に、塗工ロールを用いて付着させたり、転写型を用いて付着させたり、様々な手法で付着させることが可能であるが、樹脂層の一方の表面においてフィラーを保持させる方向と、他方の表面においてフィラーを保持させる方向を反転(180度)させることが好ましい。これによりフィルムの表面におけるフィラーの分散状態の不均一性と、裏面におけるフィラーの分散状態の不均性とを、表裏一体で見たときに緩和することが可能となる。
【0098】
また、フィラー分散層3に第2の樹脂層4が積層されている異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムは、例えば
図12に示すようにして得ることができる。即ち、樹脂層2の一方の表面にフィラー1Aを付着させ(同図a)、押し込み(同図b)、次いで、そのフィラー1Aを押し込んだ面に第2の樹脂層4を積層する(同図c)。第2の樹脂層4と反対側の樹脂層2の表面にフィラー1Bを付着させ(同図d)、そのフィラー1Bを樹脂層2に押し込む(同図e)。こうして、フィラー分散層3に第2の樹脂層4が積層されている異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルム10を得ることができる。この場合、樹脂層2の一方の表面から押し込むフィラー1Aの配置と、他方の面から押し込むフィラー1Bの配置を適宜設定することにより、平面視でこれらのフィラー1A、1Bが接触又は近接したフィラーユニット1Cを形成する。
【0099】
樹脂層がフィラー分散層3の単層から形成されている異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムについても、フィラー分散層3に第2の樹脂層4が積層されている異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムについても、さらには第3の樹脂層が積層されている態様についても、樹脂層2にフィラー1A、1Bを付着させる手法あるいはフィラー1A、1Bが分散した樹脂層2を形成する方法としては、転写型を使用して樹脂層にフィラーを転写する方法、樹脂層にフィラーを散布する方法、特許文献1に記載の方法と同様にグラビアコーター等の表面に規則的な溝を有する塗工ロールを使用してフィラーを含む樹脂液を樹脂層又は剥離フィルムに塗布する方法等をあげることができる。なお、塗工ロールを使用してフィラーを含む樹脂液を剥離フィルムに塗布する方法では、それにより形成される樹脂層を樹脂層2とすることができる。特許文献1に記載の方法では、前述したように、転写型を使用する方法に比してフィラーを精確に規則配列させることができないことが推察されるが、本発明において第1フィラー層を形成するフィラー1Aと第2フィラー層を形成するフィラー1Bの、異方性導電フィルムの長手方向における付着方向を反転させれば、導電粒子層の形成にあたり、フィラーの抜けや個数密度の不均一な箇所が形成される場合でも、第1フィラー層及び第2フィラー層の双方でフィラーの抜けや個数密度の不均一な部分が重なることは略無いので、個々のフィラー層におけるフィラー(導電粒子)の抜けや個数密度の不均一性が導通特性に及ぼす影響を低減させることができる。
【0100】
上述の方法のうち、フィラーの配列の精度を向上させる点からは、転写型を使用することが好ましい。転写型としては、例えば、シリコン、各種セラミックス、ガラス、ステンレススチールなどの金属等の無機材料や、各種樹脂等の有機材料などに対し、フォトリソグラフ法等の公知の開口形成方法によって開口を形成したものを使用することができる。また、転写型は、板状、ロール状等の形状をとることができる。
【0101】
一般に、転写型を使用して導電粒子等のフィラーを樹脂層に付着させる工程では、長尺の異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムを製造するために、樹脂層の一端から他端の方向に順次導電粒子を付着させていくが、フィラーの付着工程の継続に伴い、型の目詰まりによりフィラーが樹脂層に付着せず、異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムにおいてフィラーの抜けとなる箇所が増える傾向がある。そのため、第1フィラー層となるフィラーを樹脂層の一端から他端に向けて付着させる場合、第2フィラー層となるフィラーは、樹脂層の他端から一端に向けて付着させることが好ましい。このように付着方向を反転させることにより、第1フィラー層で導電粒子の抜けの存在確率の高い領域は、第2フィラー層ではフィラーの抜けの存在確率が低い領域となり、異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルム全体としてフィラーの個数密度を均一化することができ、異方性導電接続においてフィラーの性能に影響を及ぼす過度な抜け(異方性導電フィルムの場合は、接続不良)をなくすことができる。また、長尺の異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムは一般に巻装体として製造されるので、第1フィラー層と第2フィラー層の付着方向を反転させて製造する場合、まず、長尺の樹脂層の一端から他端に向かって第1フィラー層となるフィラーを付着させつつ樹脂層を巻装体とし、次にその巻装体を巻き戻しつつ、第2フィラー層となるフィラーを、第1フィラー層の付着方向とは反転した方向で樹脂層に付着させ、その樹脂層を巻装体とすることが好ましい。これにより、第1フィラー層を形成した樹脂層の巻装体を巻き戻し、再度第1フィラー層と同じ付着方向で、第2フィラー層となるフィラーを樹脂層に付着させるよりも工程を簡略化できるので、コスト削減の効果が見込まれる。なお、付着方向を反転させる際に、必要に応じて目詰まりした転写型を新しいものに交換してもよく、清掃してもよい。フィラーの抜けがある程度許容できるような製品の場合、転写型の交換や清掃の頻度を少なくすることができるため、この点でもコスト削減の効果が見込まれる。
【0102】
塗工ロールを使用して導電粒子を含む樹脂液を樹脂層又は剥離フィルムに塗布する方法においても、塗布の継続に伴い塗工ロール表面の溝が目詰してフィラーは該フィルムの他端から一端に向けて塗布することが好ましい。
【0103】
また、樹脂層にフィラーを散布する方法においても、フィラーの抜けが周期的に繰り返される場合がある。そのような場合も第1フィラー層となるフィラーを樹脂層に付着させるときと、第2フィラー層となるフィラーを樹脂層に付着させるときとでは、樹脂層の走行方向を反転させることが、フィラーの抜けの発生部位が樹脂層の表裏で重ならないようにする点から好ましい。
【0104】
上述のいずれの製法で製造する場合でも、長尺の異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムを製造する場合には、フィラーの抜けとなる箇所が不可避的に形成されることが予想されるが、第1フィラー層と第2フィラー層の異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムの長手方向におけるフィラーの付着方向を反転させることにより、異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルム上で抜けとなる箇所を一箇所に集中させず、抜けとなる箇所を分散させることができる。したがって、異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムの歩留まりの向上や製造コストの削減に寄与することができる。
【0105】
なお、異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムにおける第1フィラー層の付着方向と、第2フィラー層の付着方向を反転させることは、第1フィラー層におけるフィラーの配列パターンや個数密度と、第2フィラーにおけるフィラーの配列パターンや個数密度が同一の場合にも、異なる場合にも異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムにおけるフィラーの個数密度のばらつきを低減させる上で有効である。例えば、異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムの設計上は、第1フィラー層と第2フィラー層とでフィラーの配列を等しくし、それぞれ個数密度を、例えば400個/mm2にした場合、上述の製法によれば実際に製造される異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムの長手方向の一端と他端の個数密度の差の絶対値が好ましくは160個/mm2以下、より好ましくは80個/mm2以下となり、同様に第1フィラー層と第2フィラー層の導電粒子の個数密度をそれぞれ65000個/mm2にした場合、異方性導電フィルムの長手方向の一端と他端の個数密度の差の絶対値が好ましくは26000個/mm2以下、より好ましくは13000個/mm2以下となる。即ち、異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムの長手方向の一端と他端の個数密度の差の絶対値は第1フィラー層と第2フィラー層を合わせた導電粒子の個数密度の平均である800~130000個/mm2の好ましくは±20%の範囲内、より好ましくは±10%の範囲内となる。尚、本発明は個数密度が400個/mm2より少ない場合を除外するものではない。また、異方性導電フィルムを例に説明しているが、これに限定されるものでもない。例えば光学フィルムにおいても、個数密度を均一にすることは、その性能を安定化できることは容易に推察できる。艶消しフィルムなど外観に直結するものにも同様のことが言える。
【0106】
樹脂層2に付着させたフィラー1A、1Bの埋込量は、フィラー1A、1Bの押し込み時の押圧力、温度等により調整することができ、また、凹み2x、2yの有無、形状及び深さは、押し込み時の樹脂層2の粘度、押込速度、温度等により調整することができる。埋込率を100%超とする押し込み方法としては、フィラーの配列に対応した凸部を有する押し板で押し込む方法をあげることができる。
【0107】
長尺に形成した異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムは、適宜カットし、巻装体として異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムの製品となる。したがって、本発明の異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムは、例えば、5~5000mの長さを有し、巻装体とすることができる。
【0108】
フィラー含有フィルムに包含される異方性導電フィルムを用いで電子部品の接続を経済的に行うには、異方性導電フィルムはある程度の長尺であることが好ましい。そこで異方性導電フィルムは長さを、好ましくは5m以上、より好ましくは10m以上、さらに好ましくは25m以上に製造する。一方、異方性導電フィルムを過度に長くすると、異方性導電フィルムを用いて電子部品の製造を行う場合に使用する従前の接続装置を使用することができなくなり、取り扱い性も劣る。そこで、異方性導電フィルムは長さを好ましくは5000m以下、より好ましくは1000m以下、さらに好ましくは500m以下に製造する。異方性導電フィルムのこのような長尺体は、巻芯に巻かれた巻装体とすることが取り扱い性に優れる点から好ましい。
【0109】
<フィラー含有フィルムの使用方法>
本発明のフィラー含有フィルムは、従前のフィラー含有フィルムと同様に使用することができ、フィラー含有フィルムを貼り合わせることができれば物品に特に制限はない。フィラー含有フィルムの用途に応じた種々の物品に圧着により、好ましくは熱圧着により貼着することができる。この貼り合わせ時には光照射を利用してもよく、熱と光を併用してもよい。例えば、フィラー含有フィルムの樹脂層が、該フィラー含有フィルムを貼り合わせる物品に対して十分な粘着性を有する場合、フィラー含有フィルムの樹脂層を物品に軽く押し付けることによりフィラー含有フィルムが一つの物品の表面に貼着したフィルム貼着体を得ることができる。この場合に、物品の表面は平面に限られず、凹凸があってもよく、全体として屈曲していてもよい。物品がフィルム状又は平板状である場合には、圧着ローラーを用いてフィラー含有フィルムをそれらの物品に貼り合わせてもよい。これにより、フィラー含有フィルムのフィラーと物品を直接的に接合させることもできる。
【0110】
また、対向する2つの物品の間にフィラー含有フィルムを介在させ、熱圧着ローラーや圧着ツールで対向する2つの物品を接合し、その物品間でフィラーが挟持されるようにしてもよい。また、フィラーと物品とを直接接触させないようにしてフィラー含有フィルムを物品で挟み込むようにしてもよい。
【0111】
特に、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとする場合、熱圧着ツールを用いて、該異方性導電フィルムを介してICチップ、ICモジュール、FPCなどの第1電子部品と、FPC、ガラス基板、プラスチック基板、リジッド基板、セラミック基板などの第2電子部品とを異方性導電接続する際に好ましく使用することができる。異方性導電フィルムを用いてICチップやウェーハーをスタックして多層化してもよい。なお、本発明の異方性導電フィルムで接続する電子部品は、上述の電子部品に限定されるものではない。近年、多様化している種々の電子部品に使用することができる。
【0112】
したがって、本発明は、本発明のフィラー含有フィルムを種々の物品に圧着により貼着した接続構造体や、その製造方法を包含する。特に、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとする場合には、その異方性導電フィルムを用いて電子部品同士を異方性導電接続する接続構造体の製造方法や、それにより得られた接続構造体、即ち、本発明の異方性導電フィルムにより電子部品同士が異方性導電接続されている接続構造体も包含する。
【0113】
異方性導電フィルムを用いた電子部品の接続方法としては、異方性導電フィルムが導電粒子分散層3の単層からなる場合、各種基板などの第2電子部品に対し、異方性導電フィルムの導電粒子1が表面に埋め込まれている側から仮貼りして仮圧着し、仮圧着した異方性導電フィルムの導電粒子1が表面に埋め込まれていない側にICチップ等の第1電子部品を合わせ、熱圧着することにより製造することができる。異方性導電フィルムの絶縁性樹脂層に熱重合開始剤と熱重合性化合物だけでなく、光重合開始剤と光重合性化合物(熱重合性化合物と同一でもよい)が含まれている場合、光と熱を併用した圧着方法でもよい。このようにすれば、導電粒子の不本意な移動は最小限に抑えることができる。また、導電粒子が埋め込まれていない側を第2電子部品に仮貼りして使用してもよい。尚、第2電子部品ではなく、第1電子部品に異方性導電フィルムを仮貼りすることもできる。
【0114】
また、異方性導電フィルムが、導電粒子分散層3と第2の絶縁性樹脂層4の積層体から形成されている場合、導電粒子分散層3を各種基板などの第2電子部品に仮貼りして仮圧着し、仮圧着した異方性導電フィルムの第2の絶縁性樹脂層4側にICチップ等の第1電子部品をアライメントして載置し、熱圧着する。異方性導電フィルムの第2の絶縁性樹脂層4側を第1電子部品に仮貼りしてもよい。また、導電粒子分散層3側を第1電子部品に仮貼りして使用することもできる。
【実施例】
【0115】
以下、本発明のフィラー含有フィルムの一態様である異方性導電フィルムについて、実施例により具体的に説明する。
(1)異方導電性フィルムの製造
(1-1)実施例1A、1B~実施例8
表1に示した配合で、(i)導電粒子分散層を形成する高粘度の第1の絶縁性樹脂層(以下、A層ともいう)、(ii)第1の絶縁性樹脂層よりも低粘度の第2の絶縁性樹脂層(以下、N層ともいう)、及び(iii)タック層を形成する第3の絶縁性樹脂層を形成する樹脂組成物を調製した。
【0116】
第1の絶縁性樹脂層(A層)を形成する樹脂組成物をバーコーターでフィルム厚さ50μmのPETフィルム上に塗布し、80℃のオーブンにて5分間乾燥させ、PETフィルム上に表2に示す厚さの絶縁性樹脂層を形成した。同様にして、第2の絶縁性樹脂層(N層)及び第3の絶縁性樹脂層(タック層)を、それぞれ表2に示す厚さでPETフィルム上に形成した。
【0117】
【0118】
一方、第1導電粒子層の導電粒子(平均粒子径3μm)が平面視で
図1Aに示す正方孔格子配列で、導電粒子の面密度が表2に示すように、FOG用に800個/mm
2(実施例1A、1B)又はCOG用に10000、20000又は30000個/mm
2(実施例2~8)となるように金型を作製した。即ち、金型の凸部パターンが正方格子配列で、格子軸と異方性導電フィルムの短手方向とのなす角度θが15°となる金型を作製し、公知の透明性樹脂のペレットを溶融させた状態で該金型に流し込み、冷やして固めることで、凹部が
図1Aに示す配列パターンの樹脂型をロール状に形成した。
【0119】
この樹脂型の凹部に導電粒子(積水化学工業(株)、AUL703、平均粒子径3μm)を充填し、その上に上述の第1の絶縁性樹脂層(A層)を被せ、加圧ロールを用いて60℃、0.5MPaで押圧することで、第1の絶縁性樹脂層の一端から他端に向かって長さ300mにわたって導電粒子を貼着させた。そして、型から第1の絶縁性樹脂層(A層)を剥離し、第1の絶縁性樹脂層(A層)上の導電粒子を、加圧ロール(押圧条件:70℃、0.5MPa)により該第1の絶縁性樹脂層(A層)に押し込み、第1導電粒子層を形成した。押込率は100%とし、導電粒子と第1の絶縁性樹脂層(A層)の表面とが面一となるようにした。押し込まれた導電粒子の周囲には、隣接する導電粒子間の中央部における第1の絶縁性樹脂層の接平面に対して凹みが形成されていた。
【0120】
次に、第1の絶縁性樹脂層(A層)の導電粒子を押し込んだ面に第2の絶縁性樹脂層(N層)を加熱加圧(45℃、0.5MPa)により貼り合わせ、その反対側の面に上述と同様にして導電粒子を長さ300mにわたって付着させ、導電粒子を押し込むことにより第2導電粒子層を形成し、導電粒子分散層を得た。この場合、先に押し込んだ導電粒子(第1導電粒子層)と後から押し込んだ導電粒子(第2導電粒子層)がフィルム短手方向に3μmずれるようにした。導電粒子を付着させる第1の絶縁性樹脂層の走行方向を第1導電粒子層を形成する場合と反転させた。また、第2導電粒子層を形成する場合も、押込率は100%とし、導電粒子と第1の絶縁性樹脂層(A層)の表面とが面一となるようにした。押し込まれた導電粒子の周囲には、隣接する導電粒子間の中央部における第1の絶縁性樹脂層の接平面に対して凹みが形成されていた。
【0121】
実施例1A、2、3、4、6、7、8では、上述のようにして得た導電粒子分散層を異方性導電フィルムとした。実施例1Bでは、第1導電粒子層となる導電粒子を第1の絶縁性樹脂層に付着させるときのフィルムの走行方向と、第2導電粒子層となる導電粒子を第1の絶縁性樹脂層に付着させるときのフィルムの走行方向を等しくした。
【0122】
実施例5では、導電粒子分散層の第2の絶縁性樹脂層(N層)と反対側の面に、第3の絶縁性樹脂層(タック層)を加熱加圧(45℃、0.5MPa)により貼り合わせた。
【0123】
各実施例の異方性導電フィルムの一端から他端にかけての長さ300mの領域内に、導電粒子の個数密度の測定領域として1辺が200μmの矩形領域を長手方向に異なる位置で10箇所設定し、この測定領域で第1導電粒子層及び第2導電粒子層を金属顕微鏡で観察し、それぞれの導電粒子層における導電粒子の個数密度を求め、前記一端から他端にかけての導電粒子の個数密度の変動傾向(増加又は減少の傾向)を調べた。結果を表2及び表3に示す。
【0124】
(1-2)比較例1~3
実施例1と同様に、表1に示した樹脂組成の第1の絶縁性樹脂層(A層)、第2の絶縁性樹脂層(N層)、第3の絶縁性樹脂層(タック層)を形成した。
【0125】
但し、比較例1では、第1の絶縁性樹脂層(A層)を形成する樹脂組成物に導電粒子を均一に分散させ、それをPETフィルムに塗布し、乾燥することにより、導電粒子が面密度40000個/mm2で単分散している導電粒子分散層を形成した。
【0126】
比較例2では、導電粒子層として、第2の絶縁性樹脂層(N層)側となる第1導電粒子層のみを面密度40000個/mm2で形成する以外は、実施例2と同様にして異方性導電フィルムを製造した。
【0127】
比較例3では、導電粒子層として、第2の絶縁性樹脂層(N層)の反対側となる第2導電粒子層のみを面密度40000個/mm2で形成する以外は、実施例2と同様にして異方性導電フィルムを製造した。
【0128】
比較例1~3の異方性導電フィルムについても、その一端から他端にかけての導電粒子の個数密度の変動傾向(増加又は減少の傾向)を調べた。結果を表2及び表3に示す。
【0129】
(2)評価
(1)で作製した実施例及び比較例の異方性導電フィルムに対し、接続に十分な面積で截断し、以下のようにして(a)初期導通抵抗、(b)信頼性試験後の導通抵抗、(c)粒子捕捉性、(d)ショート率、(e)仮圧着性を測定ないし評価した。結果を表2及び表3に示す。
【0130】
この場合、評価に供する試料として、実施例1A及び実施例1B(FOG用異方性導電フィルム)では長さ300mの異方導電性フィルムの長さ方向の一端及び他端を使用し、実施例2~8及び比較例1~3(COG用異方性導電フィルム)では異方性導電フィルムの長さ方向の中間部分(一端から150mの部分)を使用した。
【0131】
(a)初期導通抵抗
(a1)FOG用異方性導電フィルムの導通特性の評価(実施例1A、1B)
異方性導電フィルムの試料を導通特性の評価用FPCとガラス基板との間に挟み、ツール幅1.5mm、加熱加圧(200℃、5MPa、5sec)し、各評価用接続物を得、得られた評価用接続物の導通抵抗を測定した。初期導通抵抗は実用上1Ω以下が望ましい。そこで初期導通1Ω以下をOK、1Ωを超える場合をNGとした。
【0132】
ここで、評価用FPCとガラス基板は、それらの端子パターンが対応しており、サイズは次の通りである。また、評価用FPCとガラス基板を接続する際は異方性導電フィルムの長手方向と端子の短手方向を合わせた。
【0133】
導通特性の評価用PFC
端子ピッチ 50μm
端子幅:端子間スペース=1:1
ポリイミドフィルム厚/銅箔厚(PI/Cu)=38/8、Sn plating
【0134】
ガラス基板
電極 ITO coating
厚み 0.7mm
【0135】
(a2)COG用異方性導電フィルムの導通特性の評価(実施例2~8、比較例1~3)
異方性導電フィルムの試料を導通特性の評価用ICとガラス基板との間に挟み、加熱加圧(180℃、80MPa、5秒)して各評価用接続物を得、得られた評価用接続物の導通抵抗を測定した。初期導通抵抗は実用上1Ω以下が望ましい。そこで、初期導通抵抗1Ω以下をOK、1Ωを超える場合をNGと評価した。
【0136】
ここで、評価用ICとガラス基板は、それらの端子パターンが対応しており、サイズは次の通りである。また、評価用ICとガラス基板を接続する際には、異方導電性フィルムの長手方向とバンプの短手方向を合わせた。
【0137】
導通特性の評価用IC
外形 1.8×20.0mm
厚み 0.5mm
バンプ仕様 サイズ30×85μm、バンプ間距離50μm、バンプ高さ15μm
【0138】
ガラス基板
ガラス材質 コーニング社製1737F
外形 30×50mm
厚み 0.5mm
電極 ITO配線
【0139】
(b)信頼性試験後の導通抵抗
(a)で作製した評価用接続物を、温度85℃、湿度85%RHの恒温槽に500時間おいた後の導通抵抗を、初期導通抵抗と同様に測定した。信頼性試験後の導通抵抗は実用上6Ω以下が望ましい。そこで、6Ω以下をOK、6Ωを超える場合をNGとした。
【0140】
(c)粒子捕捉性
(c1)FOG用異方性導電フィルムの粒子捕捉性の評価(実施例1A、1B)
導通特性評価用の接続物において、接続部分のFPC端子のうち25×400μmの領域の100個について、導電粒子の捕捉数を計測し、最低捕捉数を求め、次の基準で評価した。
A(良好):3個以上
B(実用上問題なし):3個未満
【0141】
(c2)COG用異方性導電フィルムの粒子捕捉性の評価(実施例2~8、比較例1~3)
粒子捕捉性の評価用ICを使用し、この評価用ICと、端子パターンが対応するガラス基板とを、アライメントを6μmずらして加熱加圧(180℃、80MPa、5秒)し、評価用ICのバンプと基板の端子とが重なる6μm×66.6μmの領域の100個について導電粒子の捕捉数を計測し、最低捕捉数を求め、次の基準で評価した。実用上、B評価以上であることが好ましい。
【0142】
粒子捕捉性の評価用IC
外形 1.6×29.8mm
厚み 0.3mm
バンプ仕様 サイズ12×66.6μm、バンプピッチ22μm、バンプ高さ12μm
【0143】
粒子捕捉性評価基準
A(良好):5個以上
B(実用上問題なし):3個以上5個未満
C(不良):3個未満
【0144】
(d)ショート率
(d1)FOG用異方性導電フィルムのショート率の評価(実施例1A、1B)
導通特性の評価用FPCと同じFPCをノンアルカリガラス(厚み0.7mm)に加熱加圧(200℃、5MPa、5sec)し、得られた評価用接続物のショート数を計測し、計測されたショート数と評価用接続物のギャップ数からショート発生率を求め次の基準で評価した。
A(良好):50ppm未満
B(実用上問題なし):50ppm以上200ppm未満
C(不良):200ppm以上
【0145】
(d2)COG用異方性導電フィルムのショート率の評価(実施例2~8、比較例1~3)
ショート率の評価用ICを使用し、(a)初期導通抵抗の評価と同様にして評価用接続物を得、得られた評価用接続物のショート数を計測し、計測されたショート数と評価用接続物のギャップ数からショート発生率を求め、次の基準で評価した。
【0146】
ショート率の評価用IC(7.5μmスペースの櫛歯TEG(test element group))
外形 15×13mm
厚み0.5mm
バンプ仕様 サイズ25×140μm、バンプ間距離7.5μm、バンプ高さ15μm
【0147】
ショート率評価基準
A:50ppm未満
B:50ppm以上200ppm未満
C:200ppm以上
【0148】
(e)仮圧着性
圧着ツールを用いて、PETフィルム付の異方性導電フィルム(幅1.5mm、長さ50mm)をITOガラスに温度60℃又は70℃、圧着圧力1MPa、圧着時間1秒で押し付けることにより仮圧着した。この場合、圧着ツールとPETフィルムとの間には緩衝材としてシリコンラバー350μm厚を介在させた。こうして異方性導電フィルムをITOガラスに押し付けた仮圧着サンプル100個についてPETフィルムを剥がした。その際、仮圧着の成否を、PETフィルムと共に異方性導電フィルムがITOガラスから1個も剥離しなかった場合をOK、1個でも剥離した場合をNGと便宜的に判定した。
A:60℃以上でOK
B:70℃以上でOK
C:70℃以上でNG
【0149】
【0150】
【0151】
表2に示すように、絶縁性樹脂層の表裏の表面にそれぞれ導電粒子が埋込率100%で埋め込まれており、異方性導電フィルムの長さ方向の一端から他端に掛けて導電粒子の個数密度の増減傾向が第1導電粒子層と第2導電粒子層とで反対方向である実施例1Aでは、異方性導電フィルムの一端においても他端においても導通抵抗、導通抵抗の信頼性、粒子捕捉率、ショート率、仮圧着性のいずれにおいても良好な評価が得られた。これに対し、この個数密度の増減傾向が第1導電粒子層と第2導電粒子層とが揃っている実施例1Bでは、第1導電粒子層と第2導電粒子層を合わせた導電粒子の個数密度が低くなるフィルム一端では粒子捕捉性に劣る部分があり、個数密度が高くなるフィルム他端では、粒子捕捉性を含め良好な評価が得られた。なお、この評価では十分な接続面積のため、3個未満のB評価であっても実用上問題はないと判断している。
【0152】
表3に示すように、実施例2~8の異方性導電フィルムも、絶縁性樹脂層の表裏の表面にそれぞれ導電粒子が埋込率100%で埋め込まれており、異方性導電フィルムの長手方向における導電粒子の個数密度の増減傾向が、第1導電粒子層と第2導電粒子層とで反対方向であり、いずれの評価項目においても良好であった。特に、実施例2と実施例5から、本発明の異方性導電フィルムはタック層を設けなくても仮貼り性がよく、作業性に優れており、かつ粒子捕捉性も優れていることがわかる。
【0153】
また、比較例1から、導電粒子分散層に導電粒子が単分散していると、粒子捕捉性もショート率も劣ることがわかる。比較例2から、導電粒子層が第2の絶縁性樹脂層(N層)側にのみ形成されていると粒子捕捉性が劣ることがわかり、比較例3から、導電粒子層が第2の絶縁性樹脂層(N層)と反対側にのみ形成されていると、仮圧着性が劣ることがわかる。なお、比較例3では、仮圧着温度を75℃にすると、仮圧着サンプルを500個にしてもITOガラスから異方性導電フィルムが剥離したものは無かったため、比較例3は仮圧着温度の設定によっては実使用に供し得ると認められる。
【0154】
(3)転写率
実施例1の異方導電性フィルムについて、第1導電粒子層の形成時(1回目)の導電粒子の転写率と第2導電粒子層形成時(2回目)の導電粒子の転写率をそれぞれ計測した。
ここで転写率は、樹脂型に充填した導電粒子数に対する、第1の絶縁性樹脂層に転写した導電粒子数の割合である。
【0155】
転写率の計測は、異方性導電フィルムの長さ0m、50m、100m、200m、300mに位置する面積1mm2に存在する第1導電粒子層又は第2導電粒子層の導電粒子数を金属顕微鏡を用いて計測しその平均を算出した。なお、第1導電粒子層(1回目)は異方性導電フィルムの0m側から300m側の方向に導電粒子を転写していき、第2導電粒子層(2回目)は異方性導電フィルムの300m側から0m側の方向に転写していくことにより形成した。
【0156】
その結果、第1導電粒子層でも第2導電粒子層でも、転写開始点から100mまでは転写率は99.9%を超えていたが、転写の進行に伴って転写率が低下した。しかしながら、第1導電粒子層と第2導電粒子層を合わせた転写率は、転写開始点から300mまでのいずれにおいても99.9%を超えていた。
【符号の説明】
【0157】
1A、1B フィラー
1C、1C1、1C2 フィラーユニット
2 樹脂層
2a、2b 樹脂層の表面
2x 凹み
2y 凹み
3 フィラー分散層
4 第2の樹脂層
10、10A、10B、10C、10D、10E、10F、10G 実施例のフィラー含有フィルム
10Ap フィラー含有フィルムの一端
10Aq フィラー含有フィルムの他端
20、21 端子
30 第1電子部品
31 第2電子部品
A フィラーの配列の格子軸
DA、DB 粒子径
La 樹脂層の層厚
L1、L2 埋込量
L3 第1フィラー層内のフィラー間の最近接粒子間距離
L4 第2フィラー層内のフィラー間の最近接粒子間距離
Lc フィラーの露出部分の径
Ld 凹み(傾斜)の最大径
Le 凹み(傾斜)の最大深さ
Lf 凹み(起伏)の最大深さ
θ 端子の長手方向と導電粒子の配列の格子軸とのなす角度