(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】車両のステップ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 3/02 20060101AFI20230720BHJP
【FI】
B60R3/02
(21)【出願番号】P 2019196863
(22)【出願日】2019-10-30
【審査請求日】2022-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591038587
【氏名又は名称】株式会社アンセイ
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼増 信哉
(72)【発明者】
【氏名】高橋 聡
(72)【発明者】
【氏名】中田 吉紀
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0294196(US,A1)
【文献】特開2019-094038(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0077697(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0035568(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0039346(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0355137(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗降用ステップと、
車体に固定された車体固定部材と、
一端部に前記乗降用ステップが支持され車幅方向に延びるステップ支持部材と、
一端部が前記車体固定部材に回動可能に支持され、他端部が前記ステップ支持部材の他端部に回動可能に支持された第1リンクアームと、
一端部が前記第1リンクアームと車幅方向外側に離間して前記車体固定部材に回動可能に支持され、他端部が前記ステップ支持部材の他端部に回動可能に支持された第2リンクアームと、
前記第1リンクアームを回転駆動するモータと、を有し、
前記モータにより前記第1リンクアームを回転駆動することで、前記乗降用ステップを前記車体より外方に位置する展開位置と前記車体の下部に位置する格納位置との間で車幅方向に移動させる車両のステップ装置であって、
前記第1リンクアームと前記モータの回転駆動軸とを着脱可能に固定する固定機構を備
え、
前記固定機構は、第1のボルトと、楔形状の第1ブロックとを有し、
前記第1ブロックは、前記モータの回転駆動軸と前記第1リンクアームとの間に配置され、前記第1のボルトによって前記回転駆動軸に押し付けられて、前記第1リンクアームと前記回転駆動軸とを固定し、
前記回転駆動軸の軸線が前記車体の前後方向に延びるように配置され、
前記第1のボルトの軸線は前記回転駆動軸の軸線に対して平行に延びるように配置されることを特徴とする車両のステップ装置。
【請求項2】
乗降用ステップと、
車体に固定された車体固定部材と、
一端部に前記乗降用ステップが支持され車幅方向に延びるステップ支持部材と、
一端部が前記車体固定部材に回動可能に支持され、他端部が前記ステップ支持部材の他端部に回動可能に支持された第1リンクアームと、
一端部が前記第1リンクアームと車幅方向外側に離間して前記車体固定部材に回動可能に支持され、他端部が前記ステップ支持部材の他端部に回動可能に支持された第2リンクアームと、
前記第1リンクアームを回転駆動するモータと、を有し、
前記モータにより前記第1リンクアームを回転駆動することで、前記乗降用ステップを前記車体より外方に位置する展開位置と前記車体の下部に位置する格納位置との間で車幅方向に移動させる車両のステップ装置であって、
前記第1リンクアームと前記モータの回転駆動軸とを着脱可能に固定する固定機構を備え、
前記固定機構は、第1のボルトと、楔形状の第1ブロックとを有し、
前記第1ブロックは、前記モータの回転駆動軸と前記第1リンクアームとの間に配置され、前記第1のボルトによって前記回転駆動軸に押し付けられて、前記第1リンクアームと前記回転駆動軸とを固定
し、
前記第1のボルトの軸線は前記回転駆動軸の軸線に対して垂直方向に延びるように配置され、
前記固定機構は、前記回転駆動軸と前記第1リンクアームとを連結する第2ブロックと、前記第1リンクアームと前記第2ブロックとを着脱可能に固定する第2のボルトと、を備え、
前記第1のボルトは、前記第2ブロックと前記回転駆動軸とを前記第1ブロックを介して固定することを特徴とする車両のステップ装置。
【請求項3】
前記第2ブロックから取り外した前記第2のボルトによって、前記乗降用ステップの格納位置において前記第1リンクアームと前記車体固定部材と固定するための前記第2のボルトの挿入穴を、前記第1リンクアーム及び前記車体固定部材に備えたことを特徴とする
請求項2に記載の車両のステップ装置。
【請求項4】
前記第2のボルトの軸線が前記車体の前後方向に延びるように配置されることを特徴とする
請求項3に記載の車両のステップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に備えられたステップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フロア位置の高い自動車等の車両において、乗員の乗降性を向上させるためにステップ装置が備えられたものがある。例えば、特許文献1には、車両のサイドドアの下部に備えられた可動式のサイドステップ装置が開示されている。特許文献1に記載されたサイドステップ装置は、車体の下部に平行リンクを介して乗降用ステップ(サイドステップ)が連結されており、車体に対して縦方向(上下方向及び車幅方向)に乗降用ステップが揺動可能な構造になっている。当該サイドステップ装置は、アクチュエータを作動させることで、車体下部に収納される収納位置と、車体より側方に突出した展開位置との間で、乗降用ステップが移動可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のように展開位置において車両側方に突出する乗降用ステップを備えた車両において、例えば展開位置においてアクチュエータが作動不能となり、乗降用ステップが格納不能になった場合に、乗降用ステップを車両側方に突出したまま車両を走行させることは望ましくない。更に、特許文献1のように縦方向に移動するステップ装置においては、アクチュエータが作動不能となった際に、乗降用ステップが格納位置よりも下方に位置する可能性があり、車両走行が困難になる虞もある。
【0005】
したがって、特許文献1のように車体の下部において縦方向に移動するステップ装置において、乗降用ステップを手動で容易に格納可能にすることが要求されている。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、乗降用ステップを手動で容易に格納可能にした縦リンク式の車両のステップ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の車両のステップ装置は、乗降用ステップと、車体に固定された車体固定部材と、一端部に前記乗降用ステップが支持され車幅方向に延びるステップ支持部材と、一端部が前記車体固定部材に回動可能に支持され、他端部が前記ステップ支持部材の他端部に回動可能に支持された第1リンクアームと、一端部が前記第1リンクアームと車幅方向外側に離間して前記車体固定部材に回動可能に支持され、他端部が前記ステップ支持部材の他端部に回動可能に支持された第2リンクアームと、前記第1リンクアームを回転駆動するモータと、を有し、前記モータにより前記第1リンクアームを回転駆動することで、前記乗降用ステップを前記車体より外方に位置する展開位置と前記車体の下部に位置する格納位置との間で車幅方向に移動させる車両のステップ装置であって、前記第1リンクアームと前記モータの回転駆動軸とを着脱可能に固定する固定機構を備え、前記固定機構は、第1のボルトと、楔形状の第1ブロックとを有し、前記第1ブロックは、前記モータの回転駆動軸と前記第1リンクアームとの間に配置され、前記第1のボルトによって前記回転駆動軸に押し付けられて、前記第1リンクアームと前記回転駆動軸とを固定し、前記回転駆動軸の軸線が前記車体の前後方向に延びるように配置され、
前記第1のボルトの軸線は前記回転駆動軸の軸線に対して平行に延びるように配置される。
【0007】
これにより、モータの故障等により回転駆動軸が回転不能になっても、固定機構による第1リンクアームとモータの回転駆動軸との固定を解除することで、第1リンクアームを回転させることができる。したがって、格納位置以外でモータの回転駆動軸が回転不能になっても、乗降用ステップを手動で格納位置に移動させることができる。
【0008】
また、固定機構を、ボルトと楔形状の第1ブロックといった簡単かつ小型の部品で安価に構成することができる。
【0009】
また、車体の前後方向に延びる回転駆動軸に対して平行に延びる第1のボルトによって、楔形状の第1ブロックを回転駆動軸に平行に移動して押し付け、回転駆動軸と第1リンクアームとを固定することができる。また、第1のボルトは車両前後方向に延びるように配置されるので、乗員等の作業者が車両前後方向から第1のボルトにアプローチして第1のボルトの着脱を容易に行うことが可能になる。
【0010】
あるいは、本発明の車両のステップ装置は、乗降用ステップと、車体に固定された車体固定部材と、一端部に前記乗降用ステップが支持され車幅方向に延びるステップ支持部材と、一端部が前記車体固定部材に回動可能に支持され、他端部が前記ステップ支持部材の他端部に回動可能に支持された第1リンクアームと、一端部が前記第1リンクアームと車幅方向外側に離間して前記車体固定部材に回動可能に支持され、他端部が前記ステップ支持部材の他端部に回動可能に支持された第2リンクアームと、前記第1リンクアームを回転駆動するモータと、を有し、前記モータにより前記第1リンクアームを回転駆動することで、前記乗降用ステップを前記車体より外方に位置する展開位置と前記車体の下部に位置する格納位置との間で車幅方向に移動させる車両のステップ装置であって、前記第1リンクアームと前記モータの回転駆動軸とを着脱可能に固定する固定機構を備え、前記固定機構は、第1のボルトと、楔形状の第1ブロックとを有し、前記第1ブロックは、前記モータの回転駆動軸と前記第1リンクアームとの間に配置され、前記第1のボルトによって前記回転駆動軸に押し付けられて、前記第1リンクアームと前記回転駆動軸とを固定し、
前記第1のボルトの軸線は前記回転駆動軸の軸線に対して垂直方向に延びるように配置され、前記固定機構は、前記回転駆動軸と前記第1リンクアームとを連結する第2ブロックと、前記第1リンクアームと前記第2ブロックとを着脱可能に固定する第2のボルトと、を備え、前記第1のボルトは、前記第2ブロックと前記回転駆動軸とを前記第1ブロックを介して固定する。
これにより、モータの故障等により回転駆動軸が回転不能になっても、固定機構による第1リンクアームとモータの回転駆動軸との固定を解除することで、第1リンクアームを回転させることができる。したがって、格納位置以外でモータの回転駆動軸が回転不能になっても、乗降用ステップを手動で格納位置に移動させることができる。
また、固定機構を、ボルトと楔形状の第1ブロックといった簡単かつ小型の部品で安価に構成することができる。
また、回転駆動軸に対して垂直方向に延びる第1のボルトによって、楔形状の第1ブロックを垂直に回転駆動軸に押し付けて、回転駆動軸と第1リンクアームとを固定することができる。
また、第1のボルトによって第2ブロックと回転駆動軸とを固定したまま、第2のボルトによる固定を解除することで、回転駆動軸と第1リンクアームとの固定を解除することが可能となり、乗降用ステップを手動で展開位置から格納位置に移動させることができる。
【0011】
また、第1のボルトは楔形状の第1ブロックを介して回転駆動軸と第2ブロックとを強固に固定した状態に維持することができる。一方、第1リンクアームと第2ブロックとは第2のボルトによって容易に着脱可能に固定することができる。
好ましくは、前記第2ブロックから取り外した前記第2のボルトによって、前記乗降用ステップの格納位置において前記第1リンクアームと前記車体固定部材と固定するための前記第2のボルトの挿入穴を、前記第1リンクアーム及び前記車体固定部材に備えるとよい。
【0012】
これにより、第2ブロックから第2のボルト取り外して乗降用ステップを手動で展開位置から格納位置に移動させた状態で、第2のボルトを挿入穴に挿入して、乗降用ステップを格納位置に維持させることができ、車両の走行移動が可能となる。
好ましくは、前記第2のボルトの軸線が前記車体の前後方向に延びるように配置されるとよい。
【0013】
これにより、乗員等の作業者が車両前後方向から第2のボルトにアプローチして第2のボルトの着脱を容易に可能にすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の車両のステップ装置は、乗降用ステップが格納位置以外でモータの回転駆動軸が回転不能になっても、固定機構による第1リンクアームとモータの回転駆動軸との固定を解除することで、乗降用ステップを手動で容易に格納位置に移動させることができる。これにより、例えば乗降用ステップを格納位置で把持させておくことで、車両を修理工場等に走行移動することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態のステップ装置を備えた車両の外形図である。
【
図2】格納状態におけるリヤリンク機構の概略構成図である。
【
図3】展開状態におけるリヤリンク機構の概略構成図である。
【
図4】ステップ装置におけるステッププレートの移動経路を示す説明図である。
【
図5】展開状態における第1実施形態の固定部の概略構成図である。
【
図7】手動格納状態における第1実施形態の固定部の構成図である。
【
図8】展開状態における第1実施形態の固定部の断面図である。
【
図9】手動格納状態における第1実施形態の固定部の断面図である。
【
図12】
第2実施形態の固定部の概略構成図である。
【
図14】展開状態における
第2実施形態の固定部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した車両のステップ装置の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態のステップ装置1を備えた車両2の外形図である。なお、
図1では、車両2の助手席側のフロントドア及びリヤドアの図示を省略しており、ステップ装置1は展開状態である。
図2は、格納状態におけるリヤリンク機構5の概略構成図である。
図3は、展開状態におけるリヤリンク機構5の概略構成図である。
図4は、ステップ装置1におけるステッププレート3の作動経路を示す説明図である。なお、
図2~4は、リヤリンク機構5及びその周辺部を車両後方から視た図である。
【0017】
図1に示すように、本発明の一実施形態のステップ装置1は、例えば1BOX型の車両2の助手席側の下部に備えられた可動式のステップ装置である。
ステップ装置1は、ステッププレート3(乗降用ステップ)及び2個のリンク機構4、5を備えている。
ステッププレート3は、車両2の助手席側のフロントドアの開口部6及びスライド式のリヤドアの開口部7の下方を車両前後方向に延び、乗員の足を載せることが可能な車幅方向長さに設定されている。
【0018】
ステッププレート3は、2個のリンク機構4、5を介して、車体の下部、詳しくは車両2の助手席側のサイドシル8の下部に支持されている。2個のリンク機構4、5は、車両前後方向に互いに間隔をおいて配置されている。
ステップ装置1は、ステッププレート3が、車両2の下部に収納される収納位置と、サイドシル8より車幅方向外側に突出した展開位置との間で、車幅方向に移動可能に構成されている。
【0019】
2個のリンク機構4、5のうち、車両後方側のリヤリンク機構5は、リンク(後述するドライブリンク12)を駆動させる駆動モータ10(モータ)を備えている。車両前方側のフロントリンク機構4は、駆動モータを備えておらず、ステッププレート3の移動に追従して作動する。
以下、駆動モータ10を備えたリヤリンク機構5について説明するが、フロントリンク機構4はリヤリンク機構5と駆動モータが備えられていない点が異なり、リンク機構4、5における各リンクの長さ、車両2における車幅方向位置及び上下位置等については、同一の構成になっている。
【0020】
図2、3に示すように、リヤリンク機構5は、リンクブラケット11(車体固定部材)、ドライブリンク12(第1リンクアーム)、ドリブンリンク13(第2リンクアーム)、及びリンクアーム14(ステップ支持部材)を備えている。
リンクブラケット11は、車両前後方向に間隔をおいて配置され車幅方向及び上下方向に延びる2枚の厚板状の縦板部材15を有し、下方が開口した箱型に形成されている。リンクブラケット11は、車体20の下部に前後左右4か所でボルトによって固定されている。
【0021】
リンクアーム14は、車幅方向に延びるように配置されたアーム状の部材であり、車両前後方向に間隔をおいて配置された2枚の厚板状の縦板部材16を有し、当該縦板部材16が車幅方向外側の部位で連結されて構成されている。リンクアーム14の車幅方向外側となる端部には、ステッププレート3が固定されている。リンクブラケット11とリンクアーム14とは、同一の車両前後位置に配置されている。詳しくは、リンクブラケット11の前側の縦板部材15とリンクアーム14の前側の縦板部材16、リンクブラケット11の後側の縦板部材15とリンクアーム14の後側の縦板部材16は、夫々同一の車両前後位置に配置されている。
【0022】
ドライブリンク12及びドリブンリンク13は、断面が箱型のアーム状の部材であって、夫々、一端がリンクブラケット11に他端がリンクアーム14に、車両前後方向に軸線が延びるように配置されたリンクピン21、22、23、24によって回動可能に支持されている。したがって、ドライブリンク12及びドリブンリンク13は、車体20に対して車幅方向に揺動可能に配置されている。
【0023】
ドライブリンク12は、ドリブンリンク13の車幅方向内側(車両右側)に配置されている。また、ドライブリンク12はドリブンリンク13よりも短く形成されている。
リンクブラケット11とドライブリンク12とを支持する第1リンクピン21(回転駆動軸)は、駆動モータ10の駆動軸と一体に構成されている。駆動モータ10はリンクブラケット11に固定されている。また、第1リンクピン21は、ドライブリンク12に固定され、駆動モータ10の駆動軸を回転駆動することで、ドライブリンク12が回動する。
【0024】
リンクブラケット11とドリブンリンク13とを支持する第2リンクピン22は、第1リンクピン21に対して車幅方向外側に離間して配置されるとともに、第1リンクピン21よりも下方にオフセットして配置されている。
一方、車幅方向に延びるリンクアーム14において、リンクアーム14とドライブリンク12とを支持する第3リンクピン23は、リンクアーム14の車幅方向内側端部に配置されている。リンクアーム14とドリブンリンク13とを支持する第4リンクピン24は、リンクアーム14の車幅方向内側端部近傍に配置されるとともに、第3リンクピン23よりも車幅方向外側かつ下方に離間して配置されている。
【0025】
図2に示すように、ステッププレート3の格納位置(格納状態)では、ドライブリンク12及びドリブンリンク13は車幅方向内側に揺動し、第3リンクピン23及び第4リンクピン24が、第1リンクピン21及び第2リンクピン22よりも車幅方向内側に位置する。
図3に示すように、ステッププレート3の展開位置(展開状態)では、ドライブリンク12及びドリブンリンク13は車幅方向外側に揺動し、第3リンクピン23及び第4リンクピン24が、第1リンクピン21及び第2リンクピン22よりも車幅方向外側に位置する。
【0026】
ステッププレート3の展開位置では、ステッププレート3の上面が略水平(車体20の水平面と平行)となっている。一方、
図2に示すように、ステッププレート3の格納位置では、ステッププレート3は展開位置よりも車幅方向内側に位置し、かつステッププレート3の上面が展開位置よりもわずかに上方に位置するとともに車幅方向外側に向けて下方にわずかに傾斜している。
【0027】
駆動モータ10を駆動して、ドライブリンク12を回転させることで、ステッププレート3が展開位置と格納位置との間を移動する。ステッププレート3が格納位置から展開位置に移動すると、ステッププレート3の車幅方向最外側上端部の位置は、
図4中の2点鎖線Tlsで示すように、わずかに下方に移動しながら車幅方向外側に移動する。
次に、
図5~
図9を用いて、本発明の第1実施形態の、第1リンクピン21とドライブリンク12とを固定する固定部55(固定機構)の構造について説明する。
【0028】
図5は、展開状態における本発明の第1実施形態の固定部55の概略構成図である。
図6は、第1実施形態の固定部55の組立図である。
図7は、手動格納状態における固定部55の構成図である。
図8は、展開状態における固定部55の断面図である。
図9は、手動格納状態における固定部55の断面図である。なお、
図5及び
図7は、車両後方から視た図である。
図8は、
図5中に記載されたA-A部の断面図である。
図9は、
図7中に記載されたB-B部の断面図である。
【0029】
図5、6、8に示すように、第1リンクピン21とドライブリンク12とを固定する固定部55は、第1ブロック56、第2ブロック57、第1のボルト58、第2のボルト59を備えている。
第1ブロック56は、断面が台形の矩形ブロック状に形成されており、中心線を挟んで対向する1組の面が互いに傾斜した傾斜面60、61になっている。第1ブロック56の中心線には、第1のボルト58を締結する雌ねじ穴62が貫通して形成されている。
【0030】
第2ブロック57は、ドライブリンク12の一対の縦板部材63、64の間に挿入されるとともに、第1リンクピン21が挿入される駆動シャフト支持穴65を有している。第2ブロック57は、駆動シャフト支持穴65から径方向に延び、駆動シャフト支持穴65から径方向に離間した位置で、駆動シャフト支持穴65と平行に第2のボルト59が締結される雌ねじ穴66が形成されている。
【0031】
また、第2ブロック57には、駆動シャフト支持穴65に挿入された第1リンクピン21に隣接した位置に、第1ブロック56が挿入される第1ブロック収納用凹部67が形成されている。第2ブロック57の第1ブロック収納用凹部67の底部には、第1のボルト58が挿入されるボルト挿入穴68が形成されている。ボルト挿入穴68は、駆動シャフト支持穴65から径方向に例えば数cm離間した位置で、駆動シャフト支持穴65の軸線とは垂直に延びるように形成されている。第1ブロック収納用凹部67は、駆動シャフト支持穴65に挿入した第1リンクピン21の一部が、第1ブロック収納用凹部67内を通過するように形成されている。
【0032】
ドライブリンク12の端部には、一対の縦板部材63、64の夫々に、第1リンクピン21が回動可能に挿入される駆動シャフト挿入穴69が形成されている。また、ドライブリンク12の端部には、車両後方側の縦板部材63に、駆動シャフト挿入穴69から径方向に離間して第2のボルト59が挿入されるボルト挿入穴70が形成されている。なお、駆動シャフト挿入穴69とボルト挿入穴70との距離は、第2ブロック57の駆動シャフト支持穴65と雌ねじ穴66との距離に一致している。また、ドライブリンク12には、後述する手動格納状態において、ボルト挿入穴70及び雌ねじ穴66から取り外した第2のボルト59を締結可能な雌ねじ穴71(挿入穴)が形成されている。
【0033】
第1リンクピン21は、第2ブロック57の第1ブロック収納用凹部67内の位置で、外周面の一部が平面状に形成され、第1ブロック収納用凹部67内に収納された第1ブロック56の傾斜面60と対向して傾斜した平面部72を有している。
以下、
図6を用いて第1実施形態の固定部55の組み立て方法を説明する。
図6に示すように、まず、ドライブリンク12の端部の一対の縦板部材63、64の間に第2ブロック57を挿入し、第1リンクピン21を駆動シャフト挿入穴69及び駆動シャフト支持穴65に挿入する。そして、第2ブロック57及びドライブリンク12と第1リンクピン21とを軸方向に位置合わせする。この軸方向の位置合わせとは、第2ブロック57の第1ブロック収納用凹部67内に第1リンクピン21の平面部72を位置させることである。
【0034】
次に、第2ブロック57の第1ブロック収納用凹部67に第1ブロック56を挿入して、第1リンクピン21の平面部72に第1ブロック56の傾斜面60を当接させる。そして、第1のボルト58を第2ブロック57のボルト挿入穴68に挿入して、第1のボルト58によって第2ブロック57と第1ブロック56とを締結する。第1のボルト58を締めつけることで、第1ブロック56の傾斜面60と第1リンクピン21の平面部72とが押し付けられ、第1リンクピン21と第2ブロック57とが固定される。
【0035】
次に、ドライブリンク12と第2ブロック57とを第1リンクピン21回りに相対的に回転させて、第2ブロック57の雌ねじ穴66とドライブリンク12のボルト挿入穴70との位置を合わせ、第2のボルト59によってドライブリンク12と第2ブロック57とを締結する。
以上により、ドライブリンク12は、第2ブロック57及び第1ブロック56を介して第1リンクピン21に固定される。したがって、駆動モータ10によって第1リンクピン21を回転駆動することで、ドライブリンク12が回動する構成になっている。
【0036】
上記の構成のリヤリンク機構5において、ステッププレート3が展開位置で駆動モータ10の駆動軸が回転不能になった場合には、第2のボルト59を取り外せばよい。これにより、第2ブロック57及び第1リンクピン21に対して、ドライブリンク12が第1リンクピン21回りを回動可能になる。したがって、例えば乗員がステッププレート3を車幅方向内側に押すことで、ステッププレート3を手動で格納位置に移動させることができる。なお、ステッププレート3の車幅方向先端は展開完了直前に下方に移動するようにリヤリンク機構5が構成されているので、手動でステッププレート3を格納する際には、ステッププレート3の車幅方向先端部を上方に持ち上げながら車幅方向内側に押すことで、ステッププレート3を容易に格納することができる。
【0037】
なお、
図7、9に示すように、リンクブラケット11の車両後方側の縦板部材15には、第2のボルト59の頭部を車両後方側に露出させるために、第1リンクピン21の挿入用穴73を中心に円弧状に屈曲した開口部74が形成されている。開口部74は、ステッププレート3が格納位置と展開位置との間を移動しても、車両後方側から視て第2のボルト59の頭部が常に露出するように形成されている。
【0038】
また、リンクブラケット11の車両後方側の縦板部材15には、第1リンクピン21を支持するための第1リンクピン21の挿入用穴73から車幅方向内側に離間した位置に、第2のボルト59を挿入可能な手動格納用ボルト穴75(挿入穴)が形成されている。手動格納用ボルト穴75は、ステッププレート3の格納位置において、ドライブリンク12の雌ねじ穴71と軸線が一致するように設けられている。
【0039】
そして、ステッププレート3を手動で格納位置にした状態で、第2のボルト59を手動格納用ボルト穴75に挿入してドライブリンク12の雌ねじ穴71に締結することで、ドライブリンク12とリンクブラケット11とを固定することができる。これにより、ステッププレート3を格納位置に維持することができる。
以上のように、第1実施形態のリヤリンク機構5においては、ステッププレート3が展開位置で駆動モータ10が作動不能になった場合に、第2のボルト59を取り外すことで、ドライブリンク12を回動させることが可能になり、ステッププレート3を手動で車幅方向に押して格納位置にすることができる。
【0040】
更に、ステッププレート3を格納位置にした状態で、第2のボルト59によってドライブリンク12とリンクブラケット11とを固定して、ステッププレート3を格納位置に維持することができる。ステッププレート3を格納位置に維持するために第2のボルト59を使用するので、拘束部材等を新たに用意する必要がない。
また、第1リンクピン21と第2ブロック57とは、楔形状の第1ブロック56を押し付けて固定されるので、簡単かつ小型の構成で、第1リンクピン21と第2ブロック57とを確実に固定することができる。また、第1ブロック56は第1リンクピン21の軸線に対して垂直方向に押し付ける構成になっているので、第1リンクピン21と第2ブロック57とを効率よく押し付けて強固に固定することができる。
【0041】
本実施形態では、第1のボルト58を締結したまま、第2のボルト59を取り外すことで、手動でドライブリンク12を回動させることが可能になるので、第1のボルト58による第1リンクピン21と第2ブロック57との固定を強固に維持したまま、第2のボルト59によって第2ブロック57とドライブリンク12とを容易に着脱可能に固定し、したがって第1リンクピン21とドライブリンク12とを容易に着脱可能に固定することができる。
【0042】
また、第2のボルト59は、軸線が車両前後方向に延びるように配置されているので、リヤリンク機構5に対し乗員等が車両後方側からアプローチして、第2のボルト59を容易に着脱することが可能となる。
次に、
図10、11を用いて、本発明の
参考形態の固定部80(固定機構)の構造について説明する。
【0043】
図10は、
参考形態の固定部80の概略構成図である。
図11は、固定部80の組立図である。なお、
図10は、車両後方から視た図である。
図10、11に示すように、
参考形態の固定部80は、第1実施形態の固定部55と比較して、第2ブロック57及び第2のボルト59を使用しておらず、第1のボルト58及び第1ブロック56によって第1リンクピン21とドライブリンク81とを固定している点が異なる。
【0044】
ドライブリンク81には、駆動シャフト挿入穴69に隣接して、第1実施形態の第2ブロック57に設けられた第1ブロック収納用凹部67及びボルト挿入穴68と同様な形状の第1ブロック収納用凹部67及びボルト挿入穴68が設けられている。なお、本実施形態では、第1ブロック収納用凹部67は、ドライブリンク81の車幅方向外側に配置されており、第1のボルト58は、車幅方向内側からドライブリンク81のボルト挿入穴68に挿入する構造になっている。
【0045】
このような構成により、参考形態の固定部80を採用したステップ装置1では、ステッププレート3が展開位置で駆動モータ10が作動不能になった場合に、第1のボルト58の締結を緩めたり取り外したりすることで、ドライブリンク81を回動させることが可能になり、ステッププレート3を手動で車幅方向に押して格納位置にすることができる。
【0046】
手動で格納位置にしたステッププレート3を格納位置に維持するには、ベルト等の拘束具を用意して、ステッププレート3やリンクアーム14等の可動部を車体等に固定すればよい。
本参考形態では、第1のボルト58の締結を緩めたり取り外したりすることで、ステッププレート3の手動格納が可能になるが、ステッププレート3の展開位置において第1のボルト58が車幅方向に軸線が延びるように配置され、乗員等により第1のボルト58へ車幅方向内側からアプローチする構造になっており、第1の実施形態よりも手動格納作業が困難になっている。また、第1のボルト58を再度締結した際に締め付けトルクを十分に管理する必要もある。しかしながら、本参考形態では、第2ブロック57及び第2のボルト59を必要としないので、固定部80の構成部品を減少させることができる。
【0047】
なお、第1実施形態のように、リンクブラケット11及びドライブリンク81に手動格納用ボルト穴75及び雌ねじ穴71を備えておいてもよい。手動格納用ボルト穴75及び雌ねじ穴71を備えている場合には、別途用意したボルトによってドライブリンク81とリンクブラケット11とを固定することで、ステッププレート3を格納位置に維持することができる。
【0048】
次に、
図12、13、14を用いて、本発明の
第2実施形態の固定部85(固定機構)の構造について説明する。
図12は、
第2実施形態の固定部85の概略構成図である。
図13は、固定部85の組立図である。
図14は、展開状態における固定部85の断面図である。なお、
図12は、車両後方から視た図である。
図14は、
図12中に記載されたC-C部の断面図である。
【0049】
図12~14に示すように、
第2実施形態の固定部85は、
参考形態のように第2ブロック57及び第2のボルト59を使用しておらず、第1のボルト86及び第1ブロック87(ブロック)によって、第1リンクピン21とドライブリンク12とを固定するものの、第1のボルト86が第1リンクピン21に対して平行に配置される点が
参考形態と異なる。
【0050】
本実施形態では、第1ブロック87を固定するための第1のボルト86を挿入するボルト挿入穴68は、ドライブリンク88の車両後方側の縦板部材63に、駆動シャフト挿入穴69と平行に設けられている。
ドライブリンク88に設けられた第1ブロック収納用凹部89は、内部で第1ブロック87が駆動シャフト挿入穴69の軸線方向に例えば数cm程度移動可能に形成されている。第1ブロック収納用凹部89の底部には、駆動シャフト挿入穴69と平行に延び上方に突出した凸状のガイド90が設けられている。一方、第1ブロック87には、ガイド90に支持される凹部91を備えており、第1ブロック収納用凹部89に収納された第1ブロック87が、ガイド90に沿って駆動シャフト挿入穴69の軸線方向に摺動可能となっている。
【0051】
また、第1ブロック87の傾斜面60は、第1ブロック収納用凹部89に収納された際に、第1リンクピン21の軸線方向に沿って車両後方側が第1リンクピン21から遠ざかる方向に傾斜するように構成されている。更に、第1リンクピン21は、第1ブロック87の傾斜面60に当接する平面部72が、第1リンクピン21の軸線方向に沿って車両後方側が第1リンクピン21の軸線から遠ざかる方向に傾斜するように構成されている。
【0052】
また、リンクブラケット11の車両後方側の縦板部材15には、第1のボルト86の頭部を車両後方側に露出させるための開口部92が形成されている。開口部92は、ステッププレート3が展開位置と格納位置とを移動する範囲で、第1のボルト86の頭部が露出するように形成されている。
第2実施形態の固定部85では、ドライブリンク88の駆動シャフト挿入穴69に第1リンクピン21を挿入して、ドライブリンク88と第1リンクピン21との軸方向の位置合わせをした状態から、ドライブリンク88の第1ブロック収納用凹部89に傾斜面60と平面部72とが当接するように第1ブロック87を収納し、第1のボルト86によってドライブリンク88と第1ブロック87とを締め付けることで、第1ブロック87は第1ブロック収納用凹部89内で車両後方側に移動する。これにより、第1ブロック87の傾斜面60と第1リンクピン21の平面部72とが楔状に接触し、第1ブロック87を介して第1リンクピン21とドライブリンク88とが強固に固定される。
【0053】
第2実施形態の固定部85を採用したステップ装置1では、参考形態と同様に、第1のボルト86の締結を緩めたり取り外したりすることで、ドライブリンク88を回動させることが可能になり、ステッププレート3を手動で車幅方向に押して格納位置にすることができる。
第2実施形態では、第1のボルト86が車両前後方向に延び、乗員等が第1のボルト86の頭部を車両後方側からアプローチできるため、手動でステッププレート3を格納する際に、第1のボルト86を容易に取り外すことが可能となる。
【0054】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定するものではない。
例えば、上記実施形態では、ドライブリンク12とドリブンリンク13のうち車幅方向内側に配置されたドライブリンク12を駆動モータ10によって回転駆動する構造であるが、車幅方向外側に駆動モータ10によって回転駆動するドライブリンク12を配置した構造のステップ装置であってもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 ステップ装置
3 ステッププレート(乗降用ステップ)
5 リヤリンク機構
10 駆動モータ(モータ)
11 リンクブラケット(車体固定部材)
12、81、88 ドライブリンク(第1リンクアーム)
13 ドリブンリンク(第2リンクアーム)
14 リンクアーム(ステップ支持部材)
21 第1リンクピン(回転駆動軸)
55、80、85 固定部(固定機構)
56、87 第1ブロック
57 第2ブロック
58、86 第1のボルト
59 第2のボルト
71 雌ねじ穴(挿入穴)
75 手動格納用ボルト穴(挿入穴)