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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】地盤改良工法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20230720BHJP
   E02D 3/02 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
E02D3/12 101
E02D3/02 103
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022170711
(22)【出願日】2022-10-25
【審査請求日】2022-11-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ウェブサイトの掲載日:令和 4年 2月 4日 ウェブサイトの掲載アドレス(URL):https://1drv.ms/u/s!AvfnHU10tD2ukRrp7YnnGxLea9GV?e=snQHq8
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000162652
【氏名又は名称】強化土エンジニヤリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592254526
【氏名又は名称】学校法人五島育英会
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 隆光
(72)【発明者】
【氏名】島田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】末政 直晃
(72)【発明者】
【氏名】田中 剛
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-159916(JP,A)
【文献】特開2014-177797(JP,A)
【文献】特開2017-082469(JP,A)
【文献】特開2019-100083(JP,A)
【文献】特開2019-049100(JP,A)
【文献】特開2020-033870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
E02D 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤改良の対象となる地盤内に圧入管を挿入し、前記圧入管から地盤内に硬化性材料からなる締固め材料を圧入して地盤改良を行う地盤改良工法であって、前記締固め材料は該圧入管内において、地盤に圧入されるまでは流動性を有し、地盤に圧入されてからは地盤中に加圧脱水して、流動性が低下して、周辺地盤を圧縮して高密度化すると共にそれ自体強固な固結柱を形成することにより、地盤を強化する締固め材料であり、前記締固め材料を圧送する圧入管の外周には螺旋状の羽根が設けられており、前記螺旋状の羽根を介して地盤に繰返し載荷を与えつつ、同時に前記圧入管から地盤内にポンプ圧により締固め材料を圧入することを特徴とする地盤改良工法。
【請求項2】
請求項1記載の地盤改良工法において、前記締固め材料はセメント系硬化性材料、スラグと水ガラスと反応剤とを有効成分とする非セメント系硬化性材料、スラグとアルカリ材を有効成分とする非セメント系材料、スラグと中性シリカゾルとセメントや消石灰を有効成分とする低セメント配合量系材料、フライアッシュとセメントと可塑剤とを有効成分とする可塑状材料、またはスラグとセメントと可塑剤とを有効成分とする可塑状材料であることを特徴とする地盤改良工法。
【請求項3】
請求項1または2記載の地盤改良工法において、前記圧入管の正回転と逆回転を併用し、前記螺旋状の羽根から地盤に繰返し載荷を継続しながら締固め材料を圧入することを特徴とする地盤改良工法。
【請求項4】
請求項1または2記載の地盤改良工法に用いるための圧入管であって、前記圧入管の外周に螺旋状の羽根が設けられていることを特徴とする静的締固め工法用圧入管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤の支持力増加や液状化防止を期待する地盤改良工法の一種であり、地盤改良の対象となる地盤内に圧入管を挿入し、圧入管の外周に設けた突起物を介して地盤に繰返し載荷を与えながら、ポンプ圧による硬化性材料の圧入を行うようにした静的締固め工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地盤の支持力増加や液状化防止を目的とした地盤改良工法の一つとして、密度を増加させる締固め工法があり、大きく分けると動的エネルギーによって締固めを行う動的締固め工法と、静的エネルギーによって締固めを行う静的締固め工法に分類がされている。
【0003】
動的締固め工法の代表としては、サンドコンパクションパイル工法が挙げられる。サンドコンパクションパイル工法はケーシングパイプの引抜・打ち戻しを繰り返すとともに、バイブロハンマー(起震機)を用いることによって砂を圧入し、砂杭を強制的に造成する工法である。これによって、砂質地盤では密度増加による支持力・せん断強度の増加および液状化防止の効果が期待でき、粘性土地盤では圧密促進、せん断強度の増加が期待できる。
【0004】
サンドコンパクションパイル工法は施工費用が安価であることより国内における施工実績が多いが、使用する機材が大型であることや、振動・騒音が大きいことから、既設構造物直下や既設構造物近傍での施工は困難である。
【0005】
この、大型機械の使用および振動・騒音の問題を改善した締固め工法として、低流動性モルタルや砂または流動化砂を地盤に圧入するコンパクショングラウチング工法や砂圧入式静的締固め工法などの静的締固め工法が開発されている。
【0006】
従来の静的締固め工法においては、動的締固め工法の欠点である、大型な機械設備の必要性や大きな振動・騒音の問題が改善されている一方、静的に締め固めるため、深層部では非常に高い圧送圧力を要することや、浅層部においては施工に伴う地盤の隆起が課題となっている。
【0007】
そこで、これらの静的締固め工法においては、一度圧入した材料に対し、ケーシングパイプの貫入・引抜を繰り返すことによって強制的に地盤を押し広げる工夫がなされている(特許文献1、非特許文献1、非特許文献2)。
【0008】
しかし、材料の圧入と圧入された材料へのケーシングパイプの貫入・引抜による繰返し載荷が独立した工程となっているため、作業効率が悪く、施工速度が低下する傾向にある。
【0009】
このような背景より、特許文献2、非特許文献3のような圧入工程と繰り返し載荷を同時に行う工法として、地盤内で円柱状のゴムバッグを膨張・収縮させることにより、地盤に繰返し載荷を行いながら締固め材料を地盤に圧入する工法が開発されているが、より効率が高く、確実な施工性が確保できる方法の確立が期待されている。
【0010】
また、特許文献3には、振動および騒音の問題がなく、締固め力および杭径を増大できる締固め砂杭等造成装置として、掘削孔内に砂を投入する中空管の外周部に張出部を設け、砂の投入後、中空管を正転、逆転させながら、貫入、引抜きを繰り返すことで、張出部で押圧するようにした砂杭等造成装置が開示されている。
【0011】
また、特許文献4~6には、柱状地盤改良工法に関し、オーガー軸の外周に螺旋状に突設された螺旋搬送部と、略円錐形のヘッドと、ヘッドの外周から突設されたブレードとを備え、ブレードが、オーガー軸の回転時に、周辺土に対して材料を締め固める押圧面を有する地盤改良オーガーを用い、地盤改良基礎やコンクリート構造物を作成することが開示されている。
【0012】
具体的には、上述のような地盤改良オーガーを用い、穴を作成、水を添加せずに混合材料(固化剤と土と砂とを含む混合材料)を作成、圧密しながら混合材料で穴を埋める、圧縮力を加えながら混合材料を固化というフローで地盤内に柱状の改良体を造成するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特許第5598999号公報
【文献】特許第6395238号公報
【文献】特開平06-200521号公報
【文献】特許第6175624号公報
【文献】特許第6276737号公報
【文献】特許第6298192号公報
【非特許文献】
【0014】
【文献】竹之内寛至、佐々真志、山崎浩之、足立雅樹、高田圭太、岡田宙、金子誓、「新たなCPG工法の隆起抑制メカニズムと施工能率向上の検討」、2018年、土木学会論文集B3(海洋開発)、Vol.74、No.2、pp.I_886-I_891
【文献】木下洋樹、磯谷修二、大林淳、新川直利、「SAVEコンポーザー -静的締固め砂杭工法-、2011年、建設機械、Vol.51、No.11、pp.49-54
【文献】山下雄輔、末政直晃、伊藤和也、田中剛、佐々木隆光、「静的締固め工法における繰返し効果の評価に関する模型実験」、2018年、第53回地盤工学研究発表会発表講演集、pp.819-820
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述のように、非特許文献1および非特許文献2などに記載されている既往の静的締固め工法では、締固め材料の圧入を行った後にケーシングパイプを上下動させ繰返し載荷を行っているが、これらが独立した工程となっているため、作業性および施工速度が低下する傾向にある。
【0016】
一方、圧入と繰返し載荷の工程を同時に行える静的締固め工法としては、特許文献2があり、圧入管に取付けられた円柱状のゴムスリーブが膨張・収縮することにより地盤に繰返し載荷を行いながら、締固め材料を圧入する特徴がある。これによって、施工性および施工速度が改善されている。
【0017】
しかし、地盤内の密度に異方性がある場合、ゴムスリーブが偏心することにより、均質に締固めが行えない場合や、地盤の密度が極端に低い条件では想定以上に膨張しゴムスリーブが破裂することや、尖りがある礫分を含む地盤条件では、ゴムスリーブが破損する恐れがある。
【0018】
特許文献3記載の発明は、砂を投入する中空管の外周部に設けた張出部による押圧力を締固めに利用しているものの、原理的には特許文献1、非特許文献1、非特許文献2と同様、中空管の繰り返しの貫入圧力による締固めであり、締固め材料の圧入と繰返し載荷が独立した工程となっているため、作業性および施工速度の問題がある。
【0019】
また、特許文献4~6記載の発明は、砂ではなく水を添加しない状態の固化剤と土と砂とを含む混合材料を掘削孔に投入し、地盤改良オーガーの先端のブレードを利用して、オーガー軸の回転時に、周辺土に対して材料を締め固めるようにしたものであるが、この場合も混合材料の投入と、繰り返し載荷による締固めは独立した工程になっている。
【0020】
本発明は従来技術における上述のような課題の解決を図ったものであり、硬化性材料を用いた静的締固め工法において、より効率的で、確実な施工性が確保できる静的締固め工法を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、地盤改良の対象となる地盤内に圧入管を挿入し、前記圧入管から地盤内に硬化性材料からなる締固め材料を圧入して地盤改良を行う静的締固め工法であって、前記締固め材料を圧送する圧入管の外周に突起物が設けられており、前記突起物を介して地盤に繰返し載荷を与えつつ、同時に前記圧入管から地盤内にポンプ圧により締固め材料を圧入することを特徴とするものである。
【0022】
すなわち、本発明は、圧入管を通して硬化性材料を圧入するための圧入ポンプのポンプ圧による締め固めと、圧入管の突起物を介しての繰返し載荷を同時に行うことで、高い締固め効果と施工性の向上を図ったものである。
【0023】
また、本発明の静的締固め工法用圧入管は、地盤改良の対象となる地盤に繰返し載荷を与えつつ、同時に地盤内に硬化性材料からなる締固め材料を圧入して地盤改良を行う静的締固め工法に用いるための圧入管であって、前記圧入管の外周に突起物が設けられていることを特徴とするものである。
【0024】
本発明で用いる硬化性材料からなる締固め材料としては、セメント系硬化性材料、スラグと水ガラスと反応剤とを含有する非セメント系硬化性材料、スラグとアルカリ材を含有する非セメント系材料、スラグと中性シリカゾルとセメントや消石灰やアルカリ性を呈する塩等を有効成分とする硬化性材料、フライアッシュとセメントと可塑剤とを含有する可塑状ゲル、スラグとセメントと可塑剤とを含有する可塑状ゲルなどが挙げられる。
【0025】
また、これらにポリアクリル酸塩やCMC等の高分子系増粘剤を加えて粘性を増加させたり、マイクロバブルやナノバブルを加えて増粘したまま流動性を増加させて、大きな固結体を形成することもできる。
【0026】
これらの硬化性材料は、静的締固め工法において、圧密および締固めを行いながら、地盤中に圧入され、さらに硬化性材料の効果に伴い、地盤強度が高められていく。
【0027】
セメント系硬化性材料としては、例えばセメントグラウト、セメント・スラググラウトセメント・ベントナイトグラウトなどを用いることができる。
【0028】
これらのグラウトは本工法に用いることにより、圧入管内において、地盤に圧入されるまでは流動性を有し、地盤に圧入されてからは地盤中に加圧脱水して、流動性が低下して、周辺地盤を圧縮して高密度化すると共にそれ自体強固な固結柱を形成する。
【0029】
以下に本工法に適した本出願人による懸濁型硬化材料の例を用いて、本発明の改良効果を説明する。なお、本発明に用いる懸濁型グラウトは上述した流動固化特性をもつ懸濁型グラウトであれば良く、これらの例に限定されるものではない。
【0030】
これらの硬化材は地盤中に圧入管を通して圧入されるが圧入管先端部までは流動性を有し、地盤中に圧入されて後、圧入ポンプのポンプ圧と圧入管の突起物を介しての繰り返し載荷が同時に行われると加圧脱水により濃度が増大して流動性が低下して周辺地盤を圧縮し、高密度化すると共にそれ自体高強度の固結性を形成する。このため改良地盤は高強度の固結柱と高密度化した地盤からなる複合地盤となり、高強度の改良地盤を形成することができる。
【0031】
スラグと水ガラスを有効成分とする非セメント系硬化性材料としては、高炉スラグ微粉末に水ガラスのアルカリが作用してスラグの潜在水硬性を刺激すると共に水ガラスのシリカがゲル化をもたらすことによって、長いゲル化時間で高強度を発現する。これを本工法に用いることにより加圧脱水して高強度の固結柱を作ると共に周辺地盤を高密度化するのみならず脱水したシリカ分がゲル化して大きな固結体を形成する。
【0032】
また、スラグやフライアッシュとアルカリ剤(例えば消石灰や炭酸塩等のアルカリ性を呈する塩)を有効成分とする材料を用いることもできる。以上の硬化性材料は、本出願人によるハイブリッドシリカ(商標登録第3301921号)に相当し、低炭素系グラウト(ジオポリマーグラウト)ということができる。
【0033】
スラグと中性シリカゾルとセメントや消石灰や石膏を含有する材料としては、少ないセメント量でスラグの潜在水硬性を刺激して、かつ中性シリカゾルでゲル化するので、低炭素系グラウトということができる。またその改良効果は上述と同じく高強度固結柱と周辺地盤の高密度化を実現する。以上の硬化性材料は、本出願人によるハイブリッドシリカやハイブリッドジオポリマー(商標登録第6126913号)に相当する。
【0034】
フライアッシュとセメントと可塑剤とを含有する可塑状ゲルは、本工法に用いることにより加圧脱水により大きな固結中の形成は周辺地盤の高密度化を得ることができる。この硬化性材料は、本出願人による可塑状FMグラウト(商標登録第4873098号)、可塑状ゲル圧入工法(商標登録第4836390号)に相当する。
【0035】
上記において、スラグの代わりにフライアッシュを用いることもでき、またフライアッシュの代わりにスラグを用いることができ、また両者併用することもできる。
【0036】
また、上記において、スラグやフライアッシュの代わりに焼成スラッジや二和土、三和土、火山灰、凝石灰、珪藻土、焼成粘土等、Ca(石灰等)やMg(塩化マグネシウム等)と反応してポゾラン作用で固化する材料を用いることもできる。
【0037】
また、近年地球温暖化の問題から非セメント系或いはセメント量を低減した低炭素型地盤改良工法が課題となっているが、上記固結材料は産業副成品を用いることにより、その課題を解決した環境保全型地盤改良工法ということができる。
【0038】
圧入管の外周に設けられた突起物は、地盤内に挿入される圧入管を軸回りに回転させることにより、圧入管とともに地盤内で回転させることができる。
【0039】
また、圧入管の回転に関しては、正回転と逆回転を併用し、突起物から地盤に繰返し載荷を継続しながら締固め材料を圧入するようにすることで、より効率的に締固めを行うことができる。
【0040】
突起物としては、圧入管の外周面に固定される螺旋状の羽根や、圧入管の径方向に拡大または拡径する機構を備えたものなどを用いることができる。
【0041】
また、圧入管は単管形式のものに限らず、多重管構造の圧入管を用いることもできる。
【0042】
本発明の静的締固め工法は、上述のような構成からなり、単管または多重管構造の圧入管の外周に突起物としての螺旋状の羽根、あるいは圧入管の径方向に拡大または拡径する機構の突起物を備えており、地盤内への圧入管の挿入あるいはその回転運動によって、地盤に対し繰返し載荷を行うことができる。
【0043】
圧入管による繰返し載荷の効果としては、砂地盤において、排水条件下では、図1図2に示すように、砂地盤はある一定の応力を繰返し載荷すると体積ひずみがマイナス値を示し、地盤を締め固める効果が得られる。
【0044】
図1は排水条件下での三軸排水繰返し載荷試験における繰返しせん断応力比と体積ひずみの時間変化を示すグラフである。図2は排水条件下における繰返し載荷に伴う軸ひずみと体積ひずみの関係を示すグラフである。
【0045】
一方、非排水条件下では、図3図4に示すように、繰返し載荷を行うと過剰間隙水圧が上昇し、有効応力が低下する。なお、繰返し載荷を継続すると、完全に有効応力を消失し、液状化に至る。
【0046】
図3は非排水条件下での三軸排水繰返し載荷試験における繰返しせん断応力比と過剰感激水圧比の時間変化を示すグラフである。図4は横軸に有効平均主応力、縦軸に軸差応力をとった非排水条件下における有効応力経路図である。
【0047】
従って、この状態にて圧入管の内側を通して締固め材料を圧送し、地盤に圧入することによって地盤を容易に締め固めることが可能となる。
【0048】
これによって、特許文献1、非特許文献1、非特許文献2記載の発明では、締固めと繰り返し載荷の工程が独立していたものを同時に行うことができる。また、特許文献2記載の発明では、出来形の偏芯やゴムスリーブの破裂・破損の可能性があったが、本発明では機械的・強制的に繰返し載荷を行うことができるため、確実・均質な締固め効果を得られるようになる。
【0049】
本発明では、圧入管に取付けられた羽根などの突起物が回転・上下運動をすることにより、地盤に繰返し載荷を与え、砂粒子にダイレイションが生じやすい状態、あるいは局所的液状化状態とする。
【0050】
載荷荷重の方向は、地盤に水平、または水平から下部方向に加えられることが望ましい。そしてこの状態にて本発明における硬化性材料からなる締固め材を地盤に圧入することにより、地盤を効果的に締め固めることができる。これによって、深層部では低圧で材料を圧入することが可能となり、浅層部では地盤の水平方向へ広がりやすくなるため、地表面の隆起が低減される。その後、硬化性材料の硬化により地盤強度が高められていく。
【発明の効果】
【0051】
圧入管に取付けられた羽根などの突起物により地盤に繰返し載荷が行われ、次の現象が期待される。
(1)過剰間隙水圧の上昇に伴う有効応力の低下。
(2)局部的な液状化現象。
(3)細粒分を含む場合、粘着力の低下。
【0052】
これらの現象はいずれも地盤のせん断抵抗が低減するものであり、この状態にて同時に硬化性材料からなる締固め材料を圧入管内に加わるポンプ圧を利用して圧入することにより、次の効果が期待できる。
(1)確実な改良効果。
(2)圧入圧力の低減。
(3)広範囲の締固め。
(4)隆起抑制。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】排水条件下での三軸排水繰返し載荷試験における繰返しせん断応力比と体積ひずみの時間変化を示すグラフである。
図2】排水条件下における繰返し載荷に伴う軸ひずみと体積ひずみの関係を示すグラフである。
図3】非排水条件下での三軸排水繰返し載荷試験における繰返しせん断応力比と過剰感激水圧比の時間変化を示すグラフである。
図4】非排水条件下における有効応力経路図である。
図5】圧入管の一実施形態(単管式)を示す正面図である。
図6】圧入管の他の実施形態(二重管拡翼型I)を示す正面図である。
図7】圧入管のさらに他の実施形態(二重管拡翼型II)を示す正面図である。
図8】圧入管のさらに他の実施形態(二重管拡径型)を示す正面図である。
図9】単管式の圧入管を用いた施工手順(S1~S6)の一例を示す断面図である。
図10】貫入速度の定義に関する説明図である。
図11】実験模型土槽の説明図である。
図12】正回転による繰返し載荷に伴う水平応力の増減を示すグラフである。
図13】逆回転による繰返し載荷に伴う水平応力の増減を示すグラフである。
図14】繰返し載荷を伴わない圧入における圧入圧力と圧入量の関係を示すグラフである。
図15】繰返し載荷を伴う圧入における圧入圧力と圧入量の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、本発明の具体的な実施形態を、図5図9を参照して説明する。
図5図8は圧入管1の例を示したものである。
【0055】
図5は単管2に螺旋状の羽根3が取付けられたものであり、この羽根3の効果は、圧入管1の回転による地盤への繰返し載荷の効果のほかに、地盤への圧入管1の挿入をスムーズに行う機能もある。
【0056】
単管式の施工方法は、例えば、以下の手順(ステップ)S1~S6ように行うことができる(図9参照)。
S1:圧入機械を所定の位置に設置する。
S2:所定の回転数(正回転)および速度で圧入管1を地盤に貫入して行く。
S3:所定の深度まで圧入管1を貫入する。
S4:正回転および逆回転を併用しながら、圧入管1から硬化性材料からなる締固め材料を圧入する。
S5:圧入管1を逆回転させながら引き上げる。
S6:上記(4)、(5)の工程を繰返し、所定の範囲を締め固める。
【0057】
なお、回転方向と貫入速度の定義は、図10に示すように、回転に伴い地盤深さ方向へ掘進するものを正回転とし、貫入速度とは一回転当たりの貫入量を羽根のピッチで除した値である。従って、正の回転と地盤の深さ方向の値をプラスとすると、図9のS2およびS5においては、貫入速度S/Pは1が最適な値となる。
【0058】
また、貫入速度S/Pが1以上の時、圧入管周辺の地盤は下側に、貫入速度S/Pが1以下では上側に押される傾向にあるため、図9のS4およびS6においては地表面変位を計測しながら正・逆回転を併用することが有効である。
【0059】
このように、圧入管の回転運動を正回転、逆回転を併用しながら繰返し載荷を継続しながら、締固め材料を圧入することができる。
【0060】
図6図7は二重管拡翼型の圧入管1の例であるが、これは二重管の内管2aをスライドさせることにより地盤内で拡翼4(図6)または拡翼5a、5b(図7)が拡がるものである。よって、施工は所定深度まで削孔を行った後、羽根を拡げ、その後の工程は図9のS4以降と同様である。ただし、圧入管1を引き上げる際は、一度、羽根を格納したのちに行うことが望ましい。
【0061】
また、図8は二重管拡径型のものであり、内管2aを押し込むことによって縦方向に分割された先端部の拡径部6a、6bが横方向へ拡径する構造となっている。
【0062】
以下に、模型実験における結果を説明する。
図11は模型実験土槽であり、圧入管先端は地表面より175mmの深度にある。その圧入管の外径は19mmであり、先端にはピッチが7.7mm、外径が35mmの羽根が設けられている。
【0063】
また、地盤内には圧入管先端の深度で、管より40mm、60mm、80mm離れた位置に土圧計が設置されている。
【0064】
実験では、初めに圧入管の回転により繰返し載荷が地盤に行えることを確認する目的で、正回転と逆回転の条件にて土圧の測定を行った。
【0065】
図12は正回転による繰返し載荷に伴い発生した土圧の時刻歴である。いずれの位置の土圧計も初期値を中心に増減が繰り返される傾向にあり、羽根の回転によって繰返し載荷が行われていることが確認できる。また、土圧計の位置に着目すると、圧入管に近い位置ほど、土圧の増減が大きい。
【0066】
一方、図13は逆回転による土圧の時刻歴であるが、土圧は増減を繰り返しながら初期値より増加していく傾向を示している。これは、羽根の回転によって羽根上部にある締固め材料が下方向に取り込められようとするが、圧入管は上下方向の変位を拘束されているため、横方向への土圧が大きくなったものである。
【0067】
このことより、回転方向によって得られる効果は異なり、施工状況に応じて適切な回転方向を決定するとより効果的な締固めが行えるものと考えられる。
【0068】
具体的には、深度が深く高い圧力が必要な場合には、正回転で横方向へ載荷することが理想的であり、深度が浅く、地盤隆起の懸念がある場合には、逆回転によって強制的に下方向へ締固められることが理想的である。
【0069】
図14は圧入管を回転せず、締固め材料としての可塑状ゲルを圧入したときの、圧入量と圧入圧量および地表面変位の関係である。圧入圧力は圧入に伴い増加する傾向を示す。また、地表面変位は圧入初期より隆起する傾向にあった。
【0070】
一方、図15は圧入管を逆回転させながら可塑状ゲルを圧入した結果であるが、圧入圧力は繰返し載荷を行わなかったものと比較して低い傾向にある。また、地表面変位は初期において沈下する傾向にあり、その後隆起する傾向にあったが、最終的な地表面変位は0mm程度となっている。
【0071】
このように、繰返し載荷を地盤に与えることによって、低い圧入圧力で施工が行えることや、隆起の抑制効果があることを確認した。
【符号の説明】
【0072】
1…圧入管、2…単管、2a…内管、2b…外管、3…羽根、4…拡翼、5a、5b…拡翼、6a、6b…拡径部
【要約】      (修正有)
【課題】硬化性材料を用いた静的締固め工法において、より効率良く、確実な施工性が確保できる地盤改良工法を提供する。
【解決手段】地盤改良の対象となる地盤内に圧入管1を挿入し、圧入管1から地盤内に硬化性材料からなる締固め材料を圧入して地盤改良を行う地盤改良工法であって、締固め材料を圧送する圧入管1の外周に螺旋状の羽根3などの突起物を設け、突起物を介して地盤に繰返し載荷を与えつつ、同時に圧入管1から地盤内にポンプ圧により締固め材料を圧入する。圧入管1に取り付けられた羽根3が回転・上下運動をすることによる地盤への繰返し載荷とポンプ圧により締固め材料の圧入との相乗効果により、地盤を効率的に締め固めることができる。
【選択図】図9
図1
図2
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図5
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図14
図15