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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】ストリゴラクトン生合成阻害剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 43/653 20060101AFI20230720BHJP
   A01P 21/00 20060101ALI20230720BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20230720BHJP
   C07D 249/08 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
A01N43/653 C
A01P21/00
A01N25/02
C07D249/08 521
C07D249/08 CSP
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018224985
(22)【出願日】2018-11-30
(65)【公開番号】P2020083853
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】598096991
【氏名又は名称】学校法人東京農業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】518426435
【氏名又は名称】浅見 忠男
(74)【代理人】
【識別番号】100122574
【弁理士】
【氏名又は名称】吉永 貴大
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 晋作
(72)【発明者】
【氏名】浅見 忠男
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/086988(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107041358(CN,A)
【文献】特開昭62-126177(JP,A)
【文献】特開昭62-019575(JP,A)
【文献】特表2012-501998(JP,A)
【文献】特開昭61-040269(JP,A)
【文献】特開昭60-092269(JP,A)
【文献】国際公開第2010/040718(WO,A1)
【文献】特開平02-069405(JP,A)
【文献】浅見忠男ら,植物ホルモン機能制御剤の創製とその生理学,遺伝学への展開,有機合成化学協会誌,2012年,70(1),pp. 36-49
【文献】Zhao, Jun et al.,Synthesis and bioactivity of 1-aryl ethanone containing 1H-1,2,4-triazole group,Hecheng Huaxue,1998年,6(4),pp. 398-403
【文献】Zhou, Zheng-Hong et al.,Synthesis and bioreactivity of pinacolone (or 1-arylethanone) containing1H-1,2,4-triazole group and their reduction products,Gaodeng Xuexiao Huaxue Xuebao,1998年,19(6),pp. 903-907
【文献】Xiao, Y. D. et al.,Study of 3D-quantitative structure-activity relationship on a set of 1,2,4-triazole compounds,Chemometrics and Intelligent Laboratory Systems,1999年,45(1,2),pp. 277-280
【文献】Zhou, Zhenghong et al.,Synthesis and bioactivity of 1-aryl ethanone oximes containing 1H-1,2,4-triazole group,Yingyong Huaxue,1998年,15(2),pp. 72-75
【文献】Zhao, Jun et al.,Synthesis and bioactivity of 1-acyl ethanol containing 1H-1,2,4-triazole group,Huaxue Tongbao,1998年,(8),pp. 35-38
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A01N
A01P21/00
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I):
【化1】
(式中、R1は水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を示し;R2及びR3は水酸基及び水素原子の組み合わせを示すか、又はR2とR3が一緒になってオキソ基を示し、;L1は(CH2)2-O-(CH2)2-O又はCH2-CH=CH-CH2-Oを示し、;R4は水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を示す。R 1 、R 4 が水素原子以外の置換基である場合は、その置換基数は1~2個である。)で表される化合物又はその塩を含む、ストリゴラクトン生合成阻害剤。
【請求項2】
R1が水素原子である、請求項1に記載のストリゴラクトン生合成阻害剤。
【請求項3】
R2とR3が一緒になってオキソ基である、請求項1又は2に記載のストリゴラクトン生合成阻害剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のストリゴラクトン生合成阻害剤を含む、植物の枝分かれ増加剤。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載のストリゴラクトン生合成阻害剤を含む、イネ科植物の分げつ促進剤。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載のストリゴラクトン生合成阻害剤を含む、花数増加剤。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項に記載のストリゴラクトン生合成阻害剤を含む、バイオマス増加剤。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか1項に記載のストリゴラクトン生合成阻害剤を含む、作物収量増加剤。
【請求項9】
請求項1~3のいずれか1項に記載のストリゴラクトン生合成阻害剤を含む、寄生雑草の発芽防止剤。
【請求項10】
請求項1に記載の一般式(I)(式中、R1は水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を示し;R2及びR3は水酸基及び水素原子の組み合わせを示すか、又はR2とR3が一緒になってオキソ基を示し、;L1は(CH2)2-O-(CH2)2-O又はCH2-CH=CH-CH2-Oを示し、;R4は水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を示す。R 1 、R 4 が水素原子以外の置換基である場合は、その置換基数は1~2個である。)で表される化合物又はその塩。
【請求項11】
6-(2-メチルフェノキシ)-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ヘキサン-1-オン(KK101);
6-(2,6-ジメチルフェノキシ)-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ヘキサン-1-オン(KK102);
6-(3,6-ジメチルフェノキシ)-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ヘキサン-1-オン(KK103);
6-(4-ニトロフェノキシ)-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ヘキサン-1-オン(KK106);
からなる群から選択された少なくとも1種である、化合物又はその塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物の枝分かれなどを制御している植物ホルモンであるストリゴラクトンに対する生合成阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ストリゴラクトン類は、アフリカ地域の食糧生産に問題となっている根寄生植物であるStrigaとOrobancheの種子発芽を促進して、作物への寄生雑草の寄生を増大する作用、及び共生菌であるアーバスキュラー菌根菌(AM菌)の菌糸分岐を誘導してリンや水分の吸収を促進する作用を有する植物生理活性物質として知られている。最近、このストリゴラクトン類やその代謝物が植物の枝分かれを制御する植物ホルモンとして機能することが示唆されており、正常な栄養生長とその後の生殖生長を行うための制御を担う物質として注目されている。
【0003】
ストリゴラクトンはカロテノイド酸化開裂酵素(CCD7及びCCD8)及びシトクロムP450モノオキシゲナーゼにより生合成されること、並びにF-boxタンパク質がそのシグナル伝達に関与することが知られているが、枝分かれを制御する機構についてはほとんど解明されていない。ストリゴラクトンとしては、ストリゴール(strigol)、ソルゴモール(sorgomol)、5-デオキシストリゴール(5-deoxystrigol)、及びオロバンコール(orbanchol)が知られており、合成ストリゴラクトンとしてGR24が知られている。
【0004】
ストリゴラクトン類に対して生合成阻害作用を有する物質としては、アバミン(abamine: N-[3-3,4-ジメトキシフェニル]-2-プロペニル)-N-(4-フルオロベンジル)グリシンメチルエステル)がソルガムにおいて5-デオキシストリゴールとソルゴモール分泌量を減少させ、イネにおいても5-デオキシストリゴール分泌量を減少させることが報告されている。また、ブラシノステロイド生合成酵素阻害剤やアブシジン酸生合成酵素阻害剤のなかにはストリゴラクトン生合成阻害作用を有する化合物が含まれている可能性が示唆されており、実際にいくつかの化合物(化学構造は明らかにされていない)においてイネに対する分げつ異常を引き起こすこと、及びその分げつ異常はGR24と共処理することで回復することが報告されている。
【0005】
発明者らも、特開2013-56832号公報において、ストリゴラクトン生合成阻害作用を有する物質として、2,2-ジメチル-7-フェノキシ-4-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ヘプタン-3-オン(MA39)及びその誘導体が、植物の枝分かれを増加させ、イネ科植物においては分げつを促進することにより、植物、特にイネやサトウキビにおけるバイオマスを増加させることができることを報告した(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-56832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、従来報告されているストリゴラクトンの生合成阻害剤に比べ、より高活性な阻害剤群を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、下記の一般式(I)で表される化合物が植物に対して茎を増やす作用(分げつ作用)を有しており、その作用が従来報告されているストリゴラクトン生合成阻害作用よりも高いストリゴラクトン生合成阻害作用を奏することを見出した。本発明は上記の知見を基にして完成されたものである。
【0009】
すなわち、本発明により、下記の一般式(I):
【0010】
【化1】
(式中、R1は水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を示し;R2及びR3は水酸基及び水素原子の組み合わせを示すか、又はR2とR3が一緒になってオキソ基を示し、;L1(CH 2 ) 2 -O-(CH 2 ) 2 -O又はCH 2 -CH=CH-CH 2 -Oを示し、;R4は水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を示す。R 1 、R 4 が水素原子以外の置換基である場合は、その置換基数は1~2個である。)で表される化合物又はその塩を含む、ストリゴラクトン生合成阻害剤が提供される。
【0011】
この発明の好ましい態様によれば、L1が(CH2)n-O(nは2~6の整数を示す)であり、かつ、R4が水素原子、又はベンゼン環上の任意の位置に存在する1個又は2個のハロゲン原子である化合物又はその塩は含まない、上記のストリゴラクトン生合成阻害剤;R1が水素原子である、上記のストリゴラクトン合成阻害剤;R2とR3が一緒になってオキソ基である、上記のストリゴラクトン合成阻害剤;L1が直鎖状アルキレンの任意の連続しない炭素原子が酸素原子に置き換わった置換基である、上記のストリゴラクトン生合成阻害剤;L1がAr1-O-Ar2-O(Ar1、Ar2は飽和、又は不飽和の直鎖状のアルキレンであって、Ar1とAr2の炭素原子数の和は2~6である)又はAr3-O(Ar3は飽和、又は不飽和の直鎖状のアルキレンであって、炭素原子数は1~7である)である、上記のストリゴラクトン生合成阻害剤;L1が(CH2)2-O-(CH2)2-O、CH2-CH=CH-CH2-O、又は(CH2)4-Oからなる群から選択される少なくとも1種の置換基である、上記のストリゴラクトン生合成阻害剤が提供される。
【0012】
また、本発明により、上記のストリゴラクトン生合成阻害剤を含む、植物の枝分かれ増加剤;上記のストリゴラクトン生合成阻害剤を含む、イネ科植物の分げつ促進剤;上記のストリゴラクトン生合成阻害剤を含む、花数増加剤;上記のストリゴラクトン生合成阻害剤を含む、バイオマス増加剤;上記のストリゴラクトン生合成阻害剤を含む、作物収量増加剤;上記のストリゴラクトン生合成阻害剤を含む、寄生雑草の発芽防止剤が提供される。
【0013】
さらに別の観点からは、植物においてストリゴラクトンの生合成を阻害する方法であって、上記の一般式(I)で表される化合物又はその塩を植物に適用する工程を含む方法;植物の枝分かれを増加する方法であって、上記の一般式(I)で表される化合物又はその塩を植物に適用する工程を含む方法;イネ科植物において分げつを促進する方法であって、上記の一般式(I)で表される化合物又はその塩をイネ科植物に適用する工程を含む方法;開花植物の花の数を枝分かれにより増加させる方法であって、上記の一般式(I)で表される化合物又はその塩を植物に適用する工程を含む方法;バイオマスを増加させる方法であって、上記の一般式(I)で表される化合物又はその塩を植物に適用する工程を含む方法;作物収量を増加させる方法であって、上記の一般式(I)で表される化合物又はその塩を植物に適用する工程を含む方法;寄生雑草の発芽を防止する方法であって、上記の一般式(I)で表される化合物又はその塩を植物に適用する工程を含む方法が提供される。
【0014】
また、本発明により、上記一般式(I)(式中、R1は水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を示し;R2及びR3は水酸基及び水素原子の組み合わせを示すか、又はR2とR3が一緒になってオキソ基を示し、;L1は直鎖又は分枝鎖状アルキレンの任意の連続しない炭素原子が酸素原子に置き換わった置換基を示し、;R4は水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を示すが、L1は(CH2)n-O(nは2~6の整数を示す)を示さない)で表される化合物又はその塩;6-(2-メチルフェノキシ)-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ヘキサン-1-オン(KK101);6-(2,6-ジメチルフェノキシ)-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ヘキサン-1-オン(KK102);6-(3,6-ジメチルフェノキシ)-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ヘキサン-1-オン(KK103);6-(4-ニトロフェノキシ)-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ヘキサン-1-オン(KK106);からなる群から選択された少なくとも1種である、化合物又はその塩;が提供される。
【発明の効果】
【0015】
一般式(I)で表される化合物又はその塩は植物におけるストリゴラクトンの生合成を阻害する作用を有しており、例えば植物の枝分かれを増加させ、イネ科植物においては分げつを促進することにより、植物、特にイネやサトウキビにおけるバイオマスを増加させることができる。また、開花植物においては枝分かれを増加させることにより花数を増加させることもできるので園芸分野においても有用である。さらに、寄生雑草に対しては発芽防止作用を有することから、寄生植物の作物への寄生を抑制することができ、作物収量を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】化合物処理によるストリゴラクトン分泌量の減少効果を示した図である。
図2】化合物処理によるストリゴラクトン分泌量の減少効果を示した図である。
図3】化合物処理によるストリゴラクトン分泌量の減少効果を示した図である。
図4】化合物処理によるストリゴラクトン内生量の減少効果を示した図である。
図5】KK5処理したシロイヌナズナの遺伝子発現変動の結果を示した図である。
図6】KK5処理したシロイヌナズナの枝分かれの増加を示した図である。
図7】KK5はジベレリン生合成阻害効果がないことを示した図である。
図8】KK5はブラシノステロイド生合成阻害効果がないことを示した図である。
図9】KK5、KK12、KK13、KK16、KK18はジベレリン生合成阻害効果がないことを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書において、「ストリゴラクトン」の用語はカロテノイド酸化開裂酵素(CCD7及びCCD8)及びシトクロムP450モノオキシゲナーゼにより生合成され、植物の枝分かれを制御する作用を有する植物ホルモンを意味しているが、その詳細についてはNature,455,pp.189-194,2008及びNature,455,pp.195-200,2008に説明されている。本発明の阻害剤の対象となるストリゴラクトンとしては天然由来のストリゴラクトン(例えばストリゴール、ソルゴモール、5-デオキシストリゴール、及びオロバンコールなど)のほか、非天然のストリゴラクトン(例えばGR24など)が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0018】
R1、R4が示すアルキル基は、飽和、又は不飽和のいずれでもよく、また、直鎖状、分枝鎖状、環状、又はそれらの組み合わせのいずれでもよい。炭素数は1~6個程度である。アルキル基としては、例えば、メチル基が好ましい例として挙げられる。R1、R4が示すハロゲン化アルキル基のアルキル基は、飽和、又は不飽和のいずれでもよく、また、直鎖状、分枝鎖状、環状、又はそれらの組み合わせのいずれでもよい。炭素数は1~6個程度である。ハロゲン化アルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基が好ましい例として挙げられる。R1、R4が示すアルコキシ基のアルキル基は、飽和、又は不飽和のいずれでもよく、また、直鎖状、分枝鎖状、環状、又はそれらの組み合わせのいずれでもよい。炭素数は1~6個程度である。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基が好ましい例として挙げられる。R1、R4が示すアリール基としては、例えばフェニル基又はナフチル基などが挙げられるが、好ましくはフェニル基を用いることができる。R1、R4が示すアリール基の環上の任意の位置には、例えば、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基などの置換基が1個又は2個以上存在していてもよいが、無置換のアリール基であってもよい。R1、R4が示すアリールオキシ基としては、例えばフェノキシ基又はナフトキシ基などが挙げられるが、好ましくはフェノキシ基を用いることができる。R1、R4が示すアリールオキシ基のアリール環上の任意の位置には、例えば、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基などの置換基が1個又は2個以上存在していてもよいが、無置換のアリール基であってもよい。R1、R4が示すハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子のいずれであってもよいが、好ましくはフッ素原子、塩素原子、又は臭素原子である。R1、R4が水素原子以外の置換基である場合は、その置換基数は1~2個が好ましい。水素原子以外の置換基の置換位置は特に限定されず、任意の位置に置換可能である。水素原子以外の置換基が複数ある場合は、それらの置換基は同一でも異なってもよい。
【0019】
L1が示す直鎖又は分枝鎖状アルキレンの任意の連続しない炭素原子が酸素原子に置き換わった置換基における直鎖又は分岐鎖状アルキレン部分は、飽和、又は不飽和のいずれでもよい。L1が示す直鎖状アルキレンの任意の連続しない炭素原子が酸素原子に置き換わった置換基における直鎖の長さ、L1が示す分枝鎖状アルキレンの任意の連続しない炭素原子が酸素原子に置き換わった置換基における主鎖の長さは、共に2~8原子程度である。L1が示す分枝鎖状アルキレンの任意の連続しない炭素原子が酸素原子に置き換わった置換基における分岐鎖の長さは1~4原子程度である。L1としては、例えば、直鎖状アルキレンの任意の連続しない炭素原子が酸素原子に置き換わった置換基が、好ましい例として挙げられる。さらに、好ましい例として、Ar1-O-Ar2-O(Ar1、Ar2は飽和、又は不飽和の直鎖状のアルキレンであって、Ar1とAr2の炭素原子数の和は2~6である)又はAr3-O(Ar3は飽和、又は不飽和の直鎖状のアルキレンであって、炭素原子数は1~7である)が挙げられる。これらのうち(CH2)2-O-(CH2)2-O、CH2-CH=CH-CH2-O、又は(CH2)4-Oが特に好ましい。
【0020】
上記式(I)で表される化合物は少なくとも1個の不斉炭素を有しており、置換基の種類に応じてさらに1個又は2個以上の不斉炭素を有する場合があるが、これらの不斉炭素に基づく純粋な形態の光学活性体又はジアステレオ異性体のほか、任意の異性体混合物(例えば、2種以上のジアステレオ異性体の混合物)又はラセミ体などを本発明の阻害剤の有効成分として用いてもよい。
【0021】
また、上記式(I)で表される化合物は酸付加塩を形成することができ、置換基の種類に応じて酸付加塩を形成することもある。塩の種類は特に限定されず、塩酸、硫酸などの鉱酸類との塩、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、酒石酸などの有機酸類との塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩などの金属塩、アンモニウム塩、トリエチルアミンなどの有機アミンとの塩、グリシンなどのアミノ酸との塩を挙げることができる。さらに、上記式(I)で表される化合物又はその塩は水和物又は溶媒和物として存在することもあるが、これらの物質を本発明の阻害剤の有効成分として用いてもよい。
【0022】
上記一般式(I)で表される化合物において、L1は(CH2)n-O(nは2~6の整数を示す)を示さない化合物、6-(2-メチルフェノキシ)-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ヘキサン-1-オン(KK101)、6-(2,6-ジメチルフェノキシ)-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ヘキサン-1-オン(KK102)、6-(3,6-ジメチルフェノキシ)-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ヘキサン-1-オン(KK103)、6-(4-ニトロフェノキシ)-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ヘキサン-1-オン(KK106)、は新規化合物である。これらの化合物の任意の塩のほか、これらの化合物又はその塩の任意の水和物又は溶媒和物が本発明の範囲に包含されることは言うまでもない。
【0023】
本発明の阻害剤の有効成分として好ましい化合物としては、例えば、
6-フェノキシ-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)4-ヘキセン-1-オン(KK3);
4-(2-フェノキシエトキシ)-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ブタン-1-オン(KK5);
4-[2-(2,6-ジクロロフェノキシ)エトキシ]-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ブタン-1-オン(KK12);
4-[2-(3-クロロフェノキシ)エトキシ]-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ブタン-1-オン(KK13);
4-[2-(4-ブロモフェノキシ)エトキシ]-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ブタン-1-オン(KK14);
4-[2-(4-メトキシフェノキシ)エトキシ]-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ブタン-1-オン(KK15);
4-[2-(2,6-ジメチルフェノキシ)エトキシ]-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ブタン-1-オン(KK16);
4-[2-(3-トリフルオロメチルフェノキシ)エトキシ]-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ブタン-1-オン(KK17);
4-[2-(2-フルオロフェノキシ)エトキシ]-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ブタン-1-オン(KK18);
4-[2-(4-フェノキシフェノキシ)エトキシ]-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ブタン-1-オン(KK19);
4-[2-(4-フェニルフェノキシ)エトキシ]-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ブタン-1-オン(KK20);
6-(2-メチルフェノキシ)-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ヘキサン-1-オン(KK101);
6-(2,6-ジメチルフェノキシ)-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ヘキサン-1-オン(KK102);
6-(3,6-ジメチルフェノキシ)-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ヘキサン-1-オン(KK103);
6-(4-ニトロフェノキシ)-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ヘキサン-1-オン(KK106);
を挙げることができるが、これらに限定されることはない。これらのうち、KK3及びKK5がより好ましく、特に好ましいのはKK5である。
【0024】
一般式(I)で表される化合物又はその塩は植物におけるストリゴラクトンの生合成を阻害する作用を有しており、例えば植物の枝分かれを増加させる目的で植物に適用することができる。また、一般式(I)で表される化合物又はその塩はイネ科植物においては分げつを促進することができる。本明細書において「分げつ」の用語は、イネ科作物において根に近い茎の関節から側枝が発生して成長することを意味するが、この用語をいかなる意味においても限定的に解釈してはならず、最も広義に解釈しなければならない。従って、本発明の阻害剤をイネやサトウキビに適用することにより、枝分かれによるバイオマス増加を達成することができる。
【0025】
また、一般式(I)で表される化合物又はその塩は開花植物においては枝分かれを増加させることにより花数を増加させることができるので、農園芸用の花数増加剤として適用することが可能である。適用対象である開花植物は特に限定されず、イネや果樹などの農作物のほか、チューリップやバラなどの園芸植物など任意の開花植物に適用することができる。
【0026】
さらに、ストリゴラクトン類は根寄生植物であるStriga及びOrobancheの種子発芽を促進して作物への寄生雑草の寄生を増大するが、一般式(I)で表される化合物又はその塩を用いてストリゴラクトンの生合成を阻害することにより、寄生雑草、好ましくはStriga及びOrobancheなどの寄生雑草の発芽を防止し、寄生植物の作物への寄生を抑制して作物収量を増大させることができる。
【0027】
本発明の阻害剤は、例えば、当業界で周知の製剤用添加物を用いて、農薬用組成物として調製することができる。農薬用組成物の形態は特に限定されず、当業界で利用可能な形態であればいかなる形態を採用してもよい。例えば、乳剤、液剤、油剤、水溶剤、水和剤、フロアブル、粉剤、微粒剤、粒剤、エアゾール、くん蒸剤、又はペースト剤などの形態の組成物を用いることができる。農薬用組成物の製造方法も特に限定されず、当業者に利用可能な方法を適宜採用することができる。本発明の阻害剤の有効成分としては、上記式(I)で表される化合物またはその塩の2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、適用目的に応じて、殺虫剤、殺菌剤、殺虫殺菌剤、除草剤などの他の農薬の有効成分を配合してもよい。本発明の阻害剤の適用方法及び適用量は、適用目的、剤型、適用場所などの条件に応じて当業者が適宜選択可能である。例えばイネなどに対しては0.1μM~50μM程度、好ましくは0.5~20μM程度を選択することができるが、適用量は上記の特定の範囲に限定されることはない。
【実施例
【0028】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
【0029】
1.ストリゴラクトン生合成阻害剤の製造
1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)エタノン(1.08g)をジメチルホルムアミド(14mL)に溶解し、水素化ナトリウム(0.85g)を窒素条件、氷冷下で加えた。2-(2-ブロモエトキシ)エトキシ)ベンゼンをジメチルホルムアミド(5mL)に溶解して加えた。室温で30分反応させた後、75℃で2時間反応させ、再び室温に戻し、2.5時間反応させた。氷上で水を加えて反応を停止後、酢酸エチルで3回抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮した。濃縮液の分離はシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1より段階的に酢酸エチル濃度を1:1まで変化させる)にて分離し、4-(2-フェノキシエトキシ)-1-フェニル-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ブタン-1-オンの白色結晶111mg(5.5%)を得た。
1H NMR (400 MHZ CDCl3): d=8.31 (s,1H),7.94 (d,J=7.5 HZ,2H), 7.91 (s,1H),7.56 (t,J=7.3,1H),7.41 (t,J=7.7 HZ,2H),7.29 (t,J=7.9 HZ,2H),7.00-6.89 (m,3H),6.31 (dd,J=9.9,5.2 HZ,1H),4.11 (t,J=4.6 HZ,2H),3.81-3.68 (m,2H),3.68-3.59 (m,1H),3.33-3.24 (m,1H),2.62-2.50 (m,1H),2.41-2.30 (m,1H).13C NMR (400 MHz CDCl3):d 194.1,159.2,151.8,143.7,134.2 134.3,134.2,129.6,129.1,128.8,121.2,114.7,69.9,67.2,66.4,60.4,32.7
【0030】
同様にして以下の表1の化合物を製造した。
【0031】
【表1】
【0032】
2.ストリゴラクトン阻害作用
(A)方法
(i)イネの生育方法
イネ種子(シオカリ)に滅菌溶液I(2.5%次亜塩素酸ナトリウム、0.01% Tween-20) を加え、室温にて15分間震盪した。滅菌溶液Iを捨て、滅菌溶液II(2.5%次亜塩素酸ナトリウム) を加え、室温にて15分間震盪した。クリーンベンチ内にて滅菌溶液IIを捨て、滅菌水で種子を5回洗浄し、暗所、25℃にて2日間静置した。2日後、イネ水耕用寒天培地に発芽種子を移植し、明期16時間、暗期8時間、25℃で6日間静置した。容量12mLの褐色バイアル瓶にイネ水耕用培地を12mL加え、寒天培地よりイネを移植し、明期16時間、暗期8時間、25℃で6日間静置した。途中、4日目にイネ水耕用培地を5mLずつ補充した。イネ水耕用培地を化合物含有水耕用培地と交換し、24時間25℃で静置した。水耕液はそのまま回収し、根は重量を測定後アセトンに浸した状態で4℃にて保存した。
【0033】
(ii)イネ水耕液の精製
イネ水耕液10mLあたり200pgのd6-4-デオキシオロバンコールを加えた後、3mLの酢酸エチルにて2回抽出を行った。有機層を窒素ガスにて乾固させ、Sep-pak Silica 1mL cartridges (Waters) に加え、酢酸エチル:n-ヘキサン (15:85) で洗浄した後、酢酸エチル:n-ヘキサン (35:65) で溶出した。サンプルを乾固して50%アセトニトリルに溶解し、LC/MS-MSによる分析を行った。
【0034】
(iii)イネ根の精製
アセトンに浸した根に200pgのd6-4-デオキシオロバンコールを加えた後、破砕した。固形物を濾過し、窒素ガスにて乾固させた後、酢酸エチル及び水を加え、酢酸エチルにて2回抽出を行った。有機層を乾固して10%アセトンに溶解し、Oasis HLB 3mL cartridges (Waters) に加え、脱イオン水で洗浄後、アセトンで溶出を行った。有機層を窒素ガスにて乾固させ、Sep-pak Silica 1mL cartridges (Waters) に加え、酢酸エチル:n-ヘキサン (15:85) で洗浄した後、酢酸エチル:n-ヘキサン (35:65) で溶出した。サンプルを乾固して50%アセトニトリルに溶解し、LC/MS-MSによる分析を行った。
【0035】
(B)結果
図1~3にイネにおける被検化合物処理時のストリゴラクトン分泌量阻害効果を示す。図4は内生ストリゴラクトン量の阻害効果を示す。図中の4DOは4-デオキシオロバンコールを示す。
【0036】
3.ストリゴラクトン生合成遺伝子の発現
(A)方法
シロイヌナズナ種子を70%エタノールにより表面殺菌した後、1/2MS培地に播種した。4℃にて2日間静置後、22℃で4週間生育させた。滅菌水にKK5を5μMになるように添加した液に各10個体ずつ浸し、1日静置した。処置した植物の根をPlant RNA Isolation reagent (Invitrogen) を用いて添付のプロトコルに従いRNA抽出した。RNA1μgをPrimeScript RT reagent Kit with gDNA Eraser (TaKaRa) を用いて逆転写した。発現量の定量はThermal Cycler Dice Real Time System II (TaKaRa) を用いた。表2は用いた遺伝子プライマーの配列である。定量値は付属のソフトウェアを用いて算出した。
【0037】
【表2】
【0038】
(B)結果
図5にシロイヌナズナにおけるストリゴラクトン生合成遺伝子発現効果を示す。未処理区と比較した時にストリゴラクトン生合成遺伝子であるAtMAX3とAtMAX4の発現量が有意に増加した。ストリゴラクトン生合成が阻害された場合、フィードバック効果によりストリゴラクトン生合成遺伝子の発現量が増加することが知られており、シロイヌナズナにおいてKK5がストリゴラクトン生合成を阻害することが示された。
【0039】
4.シロイヌナズナ枝分かれ試験
(A)方法
シロイヌナズナ種子を70%エタノールにより表面殺菌した後、PCRチューブに200μLの1/2MS培地を加えたものに1チューブにつき1粒播種した。4℃下にて2日間静置した後、22℃で1週間生育させた。その後クリーンベンチ内でPCRチューブの下部 (約5mm) を加熱したSURGICAL BLADE (カイ インダストリーズ株式会社) を用いて切り取った。1つの96well PCRチューブ立てにPCRチューブを16個ずつ等間隔に並べた。PCRチューブ立てにKK5が0.1μM,1μM,3μMになるよう (n=4) 調整した水耕培地で4週間生育させた。水耕液は約3日に1回注ぎ足し、1週間に1回は取り替えた。2mm以上伸長した枝の数を計測した。
【0040】
(B)結果
図6にKK5を加えた時の枝分かれ数を示す。3μM KK5処理により有意に枝分かれの数が増加した。このことからKK5は枝分かれ促進作用を有することが示唆された。
【0041】
5.シロイヌナズナ発芽試験
(A)方法
シロイヌナズナ種子を70%エタノールにより表面殺菌した後、各化合物の含まれる1/2MS培地に播種し、4℃下にて2日間静置した。22℃で一晩静置した後の発芽率を測定した。
【0042】
(B)結果
図7に発芽率の結果を示す。ジベレリン生合成阻害剤であるパクロブトラゾールを処理した場合、発芽率の顕著な低下が見られた。TIS108処理では3μM,10μMと処理濃度を上げることで発芽率の低下が観察されたが、KK5処理では発芽率の低下は観察されなかった。このことからKK5はTIS108よりもジベレリン生合成阻害活性が弱く、副作用の少ない化合物であることが示唆された。
【0043】
6.シロイヌナズナ暗所胚軸伸長試験
(A)方法
1/2MS培地を20mlずつプラントボックスに分注した。TIS108,KK5をそれぞれ1μMになるように添加した。各5ボックスずつ用意した。滅菌した種を各培地に播種した。4℃下にて2日間静置した後、アルミホイルを巻いたまま22℃で1週間生育させた。胚軸の長さを測定した。
【0044】
(B)結果
図8に胚軸の長さを示す。ブラシノステロイド生合成阻害剤であるブラシナゾールを処理した場合、胚軸伸長の顕著な抑制が見られた。一方TIS108やKK5処理ではその抑制は観察されなかった。このことからTIS108やKK5はブラシノステロイド生合成阻害活性は弱い、もしくはないことが明らかとなった。
【0045】
7.イネ第二葉鞘伸張試験
(A)方法
イネ種子(シオカリ)に滅菌溶液I(2.5%次亜塩素酸ナトリウム、0.01% Tween-20) を加え、室温にて15分間震盪した。滅菌溶液Iを捨て、滅菌溶液II(2.5%次亜塩素酸ナトリウム) を加え、室温にて15分間震盪した。クリーンベンチ内にて滅菌溶液IIを捨て、滅菌水で種子を5回洗浄し、暗所、25℃にて2日間静置した。2日後、濃度50μMの化合物の含まれたイネ水耕用寒天培地に発芽種子を移植し、明期16時間、暗期8時間、25℃で6日間静置した後の第二葉鞘の長さを測定した。
【0046】
(B)結果
図9に第二葉鞘の長さを示す。ジベレリン生合成阻害剤であるパクロブトラゾールを処理した場合、第二葉鞘伸張の顕著な抑制がみられた。一方、TIS108やKK5、KK12、KK13、KK16、KK18処理ではその抑制は観察されなかった。このことからこれらの化合物はイネにおいてジベレリン生合成阻害活性がないことが明らかとなった。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9