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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】穿刺システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20230720BHJP
   A61M 25/06 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
A61M25/00 540
A61M25/06 510
A61M25/06 556
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021044347
(22)【出願日】2021-03-18
(62)【分割の表示】P 2018524543の分割
【原出願日】2016-07-26
(65)【公開番号】P2021104346
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2021-04-16
(31)【優先権主張番号】102015112388.6
(32)【優先日】2015-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102015117923.7
(32)【優先日】2015-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521423278
【氏名又は名称】エブネット・メディカル・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Ebnet Medical GmbH
【住所又は居所原語表記】August-Bebel-Str. 26, 19055 Schwerin, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(73)【特許権者】
【識別番号】518030438
【氏名又は名称】メールゲン、ローランド
【氏名又は名称原語表記】Molgen,Roland
【住所又は居所原語表記】Harnischstrase 9,30163 Hannover,Germany
(73)【特許権者】
【識別番号】518030450
【氏名又は名称】レイモンドス、コンスタンティノス
【氏名又は名称原語表記】Raymondos,Konstantinos
【住所又は居所原語表記】Gros-Buchholzer Kirchweg 23,30655 Hannover,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】レイモンドス、コンスタンティノス
(72)【発明者】
【氏名】メールゲン、ローランド
(72)【発明者】
【氏名】エブネット、イエンス
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0147877(US,A1)
【文献】国際公開第2014/152005(WO,A2)
【文献】特表2013-526307(JP,A)
【文献】国際公開第2014/006403(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/089014(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0122117(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
A61M 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の身体部分に留置するように構成された外側のチューブ状の本体(2)と、内側のチューブ状の本体(4)と、穿刺ニードル(5)と、患者近傍の端部(10)においてランプ状に拡大していく拡張本体(21)であって、これに前記内側のチューブ状の本体(4)が挿通されるように構成されている拡張本体(21)と、を備える穿刺システム(1)であって、
前記内側のチューブ状の本体(4)は前記外側のチューブ状の本体(2)の作業ルーメン(3)に挿通されるとともに前記外側のチューブ状の本体(2)に対して長手方向スライド可能であり、
前記穿刺ニードル(5)は前記内側のチューブ状の本体(4)の穿刺ルーメンに挿通されており、前記内側のチューブ状の本体(4)は前記穿刺ニードル(5)に対して長手方向スライド可能であり、前記穿刺システム(1)の患者近傍の端部(10)から突出する前記穿刺ニードル(5)の穿刺区域(50)によって身体部分の穿刺が行われた後に前記内側のチューブ状の本体(4)が前記穿刺システム(1)の患者近傍の端部(10)から少なくとも部分的に前記外側のチューブ状の本体(2)から引き出し可能であるとともに、その際に前記穿刺システム(1)の患者近傍の端部(10)から突出する前記穿刺ニードル(5)の穿刺区域(50)を少なくとも部分的に前記内側のチューブ状の本体(4)の前記穿刺ルーメンの中に収容するように構成されている穿刺システム(1)において、
前記内側のチューブ状の本体(4)に対する前記外側のチューブ状の本体(2)の長手方向スライドと、前記穿刺ニードル(5)に対する前記内側のチューブ状の本体(4)の長手方向スライドはそれぞれ互いに独立して前記穿刺システム(1)の患者遠方の端部(11)の操作手段(40,41,51,7)を通じて制御可能であり、
前記内側のチューブ状の本体(4)の外径は前記穿刺ニードル(5)の外径の最大2倍の大きさであり、前記内側のチューブ状の本体(4)は柔軟であり、そのサイズと柔軟さは前記内側のチューブ状の本体(4)を静脈の内腔に沿って静脈内に押し出すことを許容するものであり、
前記外側のチューブ状の本体(2)が液体供給のため内径を備えるように、前記外側のチューブ状の本体(2)の外径は前記内側のチューブ状の本体(4)の外径の少なくとも2倍の大きさであることを特徴とする穿刺システム(1)。
【請求項2】
前記穿刺システム(1)は拡張カニューレを有していないことを特徴とする、請求項1に記載の穿刺システム(1)。
【請求項3】
前記拡張本体(21)は前記内側のチューブ状の本体(4)に対して長手方向スライド可能であることを特徴とする、請求項1に記載の穿刺システム(1)。
【請求項4】
前記拡張本体(21)は前記外側のチューブ状の本体(2)に取り付けられており、または前記外側のチューブ状の本体(2)の一部であることを特徴とする、請求項1又は3に記載の穿刺システム(1)。
【請求項5】
前記外側のチューブ状の本体(2)は少なくとも身体の外部で第1の被覆部(22)によって取り囲まれており、該第1の被覆部によって前記外側のチューブ状の本体(2)が身体部分の外部で滅菌されたまま保たれることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の穿刺システム(1)。
【請求項6】
前記穿刺ニードル(5)および/または前記内側のチューブ状の本体(4)は、患者遠方の端部(11)に、吸引補助具(7)または該吸引補助具(7)を接続するための吸引接続部(51)を有していることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の穿刺システム(1)。
【請求項7】
前記外側のチューブ状の本体(2)はマルチルーメン式に構成されており、個々のルーメンを取り外し可能および/または補足可能であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の穿刺システム(1)。
【請求項8】
前記内側のチューブ状の本体(4)はプラスチック材料でできていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の穿刺システム(1)。
【請求項9】
前記内側のチューブ状の本体(4)は前記外側のチューブ状の本体(2)よりも長く、および/または前記穿刺ニードル(5)は前記内側のチューブ状の本体(4)よりも長いことを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の穿刺システム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体の身体部分に留置するためにセットアップされた外側のチューブ状の本体を備える、たとえば血管内に留置するためにセットアップされたカテーテルホースを備える、中心静脈カテーテルを有する穿刺システムに関する。
【0002】
さらに本発明は、処置方法が特許権保護の対象となる管轄の観点から、特にたとえば中心静脈カテーテルなどの本発明による穿刺システムを利用して、穿刺システムを、たとえば中心静脈カテーテルを適用する改良された方法に関する。
【背景技術】
【0003】
中心静脈カテーテルは、中心の静脈カテーテル、中心静脈内カテーテル、もしくは中心静脈アクセスとも呼ばれ、または略してCVCと呼ばれる。
【0004】
中心静脈カテーテル法の実施は、もっとも頻繁に行われる医師の措置の1つである。CVCは、比較的大きく穿刺可能な、心臓のすぐ近傍ではないいわゆる「末梢静脈」へ挿入され、その先端が心臓近傍で「中心静脈」にくるカテーテルである。これを通じて液体や血液製剤を注入できるだけでなく、薬剤を注入することもできる。さらに血液試料を採取し、静脈圧を測定することができる。中心静脈カテーテルは、合併症なしに経過していれば、何週間も患者内にとどめておくことができる。
【0005】
中心静脈カテーテルの適用は、病院内の救急医療、麻酔科、および集中医療におけるルーチン方法となっている。あるいはそれ以外の臨床分野でも利用されており、それはたとえば腫瘍学で化学療法薬を投与するためや、集中医療でたとえば胃腸手術の後に高カロリーの非経口の栄養補給をするためである。
【0006】
中心静脈カテーテルを通じて、循環を安定化する薬剤やその他の物質を心臓近傍で投与することができ、その場所で薬剤が直接有効となる。電解溶液や栄養補給液などの強力に濃縮された輸液は、しばしば中心静脈カテーテルを通じてしか処置することができない。これらは小さな静脈(たとえば手の甲や腕の静脈)をあまりに強力に刺激して、そのために炎症や血栓を生じることになるからである。
【0007】
通常の場合には中心静脈カテーテルは、静脈へ挿入される共通の1つのカテーテルホースとして患者に向かって合流する、1つから5つのいわゆる「内腔」(ルーメン)を患者遠方に有している。カテーテルホースはたとえばポリウレタンなどの身体適合的な材料でできていて、そのような材料が熱可塑性の特性をこれに与える。すなわちカテーテルホースは体温まで温められると軟質になる。皮膚レベルからのカテーテルホースの挿入深さは、成人患者の場合には約15~20cmであり、これは選択されるアクセス経路や、身長、体重などの患者固有の要因に左右される。
【0008】
CVCは多くの場合、1953年に記載されたセルディンガーワイヤを用いるセルディンガー技術によって身体へ挿入される。この技術はいくつかの欠点を有する。複数のシーケンシャルな作業ステップの必要性、および滅菌された作業区画の必要性に基づき、患者と適用者にとっての損傷と感染の危険性がある。セルディンガーワイヤが心臓を傷つけて心臓リズム障害を引き起こすことがあり、さらには偶発的に患者に残存することがある。身体内でのその長さが不明瞭になり得る。通りわけセルディンガー技術は実施に関して複雑であり、高いコストと結びついている。したがって、臨床外や非常に狭いスペース状況でのこの方法の適用はほぼ不可能である。これまでに存在しているセルディンガーワイヤなしでの直接穿刺技術は、限定された直径でしか挿入可能でないカテーテルホースに基づき、幅広い臨床上の用途で普及することができていない。
【発明の概要】
【0009】
したがって本発明の課題は、いっそう簡単かつ迅速に患者で適用することができる穿刺システム、たとえば中心静脈カテーテルを提供することにある。
【0010】
さらに、処置方法が特許権保護の対象となる管轄の観点から、本発明の課題は、穿刺システムを、たとえば中心静脈カテーテルを適用する改良された方法を提供することにある。
【0011】
上に掲げた課題は、静脈内に留置するためにセットアップされたカテーテルホースを備える中心静脈カテーテルによって解決され、カテーテルは少なくとも1つのカニューレと穿刺ニードルとを有しており、カニューレはカテーテルホースの作業ルーメンに挿通されるとともにカテーテルホースに対して長手方向スライド可能であり、穿刺ニードルはカニューレの穿刺ルーメンに挿通されており、カニューレは穿刺ニードルに対して長手方向スライド可能であり、カテーテルの患者近傍の端部から突出する穿刺ニードルの穿刺区域によって静脈の穿刺が行われた後にカニューレがカテーテルの患者近傍の端部から少なくとも部分的にカテーテルホースから引き出し可能であるとともに、その際にカテーテルの患者近傍の端部から突出する穿刺ニードルの穿刺区域を少なくとも部分的にカニューレの穿刺ルーメンの中に収容するように構成されている。
【0012】
本発明は、公知の解決法よりもはるかに簡単かつ迅速に、中心静脈カテーテルを患者に適用することができるという利点を有する。その際に、セルディンガーワイヤおよびこれと結びついた比較的時間コストのかかる各ステップを全面的に省略することができる。このとき本発明は、セルディンガー技術の十分に好ましい基本的原理を援用しているが、これをさらに発展させて、患者にとってのリスクが最低限に抑えられるようになっている。カテーテルが、内側に配置された穿刺ニードル、その周囲の外側に配置されたカテーテルホース、およびこれらの中間に位置するカニューレの形態の層を含むマルチシェル構造を有しており、個々の層である穿刺ニードル/カニューレ/カテーテルホースまたはその作業容積部が原則として任意に相互に長手方向スライド可能であることにより、中心静脈カテーテルを適用するまったく新規の技術が可能となる。ここではカニューレは、穿刺ニードルの穿刺区域によって静脈が相応に穿刺された後に、こうして形成された静脈の開口部へ差し込むことができる。このときカニューレが、穿刺ニードルの先端による損傷に対する静脈の保護をすでに惹起する。さらにカニューレはその後、この状態のときに従来のセルディンガーワイヤに類似する機能を有するので、静脈へのカテーテルホースの挿入補助として機能する。しかしセルディンガーワイヤとは異なり、カニューレはその長さに関して常にコントロールすることができ、所望の時点で取り外すこともできる。同様に穿刺ニードルも所望の時点で引き戻すことができ、もしくは全面的に取り出すことができる。
【0013】
本発明のさらに別の利点は、従来では複数の末梢静脈への静脈アクセス部がつくられていたケースで、本発明に基づく中心静脈カテーテルによって単一のアクセス部とすることが可能であり、それで十分であることにある。従来技術に基づく中心静脈カテーテルの適用と結びつている合併症に基づき、これまでは少なからぬケースで中心静脈カテーテルに代えて、複数の末梢静脈への静脈アクセス部が適用されてきた。そのような不都合な状況も、ここで説明している本発明によって改善することができる。それによって感染の危険性を低減することができる。1つの中心静脈のアクセス部しか必要なくなるので、これまでの高いコストのかかる複数の静脈アクセス部のケアが簡略化される。薬剤投与時の明瞭性およびそれに伴う患者安全性も向上する。
【0014】
本発明に基づく中心静脈カテーテルは、たとえばさまざまな身長の人間用として(大人/子供)、さまざまなサイズで提供することができる。
【0015】
さらに、先ほど中心静脈カテーテルの例を引いて説明した穿刺システムは、身体部分への穿刺のために別様に好ましく適用することもできることが確認されている。穿刺システムまたは中心静脈カテーテルの上述した部分は先ほど説明したままであるが、適用ケースに応じて、特にその長さおよび場合により直径に関して適合化することができる。
【0016】
それに応じて冒頭に掲げた課題は、請求項1に記載の全般的な穿刺システムによっても解決される。先ほど説明した中心静脈カテーテル(または一般にカテーテル)の適用事例と比較して、この穿刺システムは、カテーテルホースに代えて、剛直または柔軟であってよい外側のチューブ状の本体をたとえば管やホースの形態で有している。さらにこの穿刺システムは、カニューレに代えて内側のチューブ状の本体を有している。これはカニューレとして構成されていてもよいが、このことは強制的ではない。このような穿刺システムにより、中心静脈カテーテルと比較したとき、静脈を穿刺できるだけでなく、原則として生体のどのような身体部分でも穿刺することができる。
【0017】
それに応じて生体の穿刺されるべき身体部分として、たとえば膀胱、各種の気管や血管、特に静脈や動脈など、どのような中空体でも穿刺システムによって好ましく穿刺することができる。さらに、たとえば器官、たとえば膿瘍のような液体蓄積部などの非中空体も好ましく穿刺することができる。器官間腔も好ましく穿刺することができる。
【0018】
このようにして穿刺システムにより、次のような利用分野をカバーすることができる。脈管学、心臓学、胸膜間腔の穿刺(液体、空気)、泌尿器学、(インターベンショナル)ラジオロジー、気管切開術、開頭術、心臓補助システムの移植。
【0019】
このとき、穿刺システムまたは少なくとも外側のチューブ用の本体が透明であると好ましい。このことは、特に穿刺システムに流れ込む液体の色や流速によって、穿刺プロセスの状態の改善された判断可能性を可能にする。
【0020】
この意味において、中心静脈カテーテル(または単にカテーテル)の例に準拠する以下の説明は、そこに記載されている用途や機能ならびに技術的な構成要件を、一般的な意味の穿刺システムによっても具体化できるという意味にも理解されるべきである。この意味において、以下の説明は穿刺システム一般にも関連づけられ、したがって、以下においてはカテーテルホースによって一般に外側のチューブ状の本体も意味され、カニューレによって内側のチューブ状の本体も意味され、静脈によって、先ほど説明した生体の穿刺されるべき身体部分も意味される。
【0021】
本発明による穿刺システムは、セルディンガーワイヤとの組合せで利用することもできる。このようなケースでは、長さに関して従来型のセルディンガーワイヤと同様に、またはこれよりも短いバージョンで構成されていてよい中空のセルディンガーワイヤが利用されると好ましい。中空のセルディンガーワイヤとしての構成により、血液、液体、空気の吸引を可能にすることが可能となり、そのようにして、穿刺通路が拡張される前に、中空のセルディンガーワイヤの位置を目標構造物の領域で検証することができる。さらに緊急事態では、挿入されているセルディンガーワイヤを通じて、穿刺システムの他の部材が挿入される前に薬剤をすでに注入することができ、このことは重要な時間節約を可能にする。中空のセルディンガーワイヤは近位に向かって、すなわち利用者に向かって、場合によりすでに注射器に存在するアダプタを介して、たとえば注射器などの吸引補助具と適合的であってよい。このことは、まず中空のセルディンガーワイヤを通じての自然な還流を期待することができ(たとえば動脈を誤穿刺した場合には拍動性)、次いで、吸引補助具を嵌め込むことができるという利点がある。中空のセルディンガーワイヤを挿入する前に、まず穿刺ニードルがワイヤを通じて引き戻される。
【0022】
本発明による穿刺システム、および特にその外側のチューブ状の本体は、生体の身体部分に留置するためにセットアップされている。「留置する」とみなされるのは、ここではたとえばCVCで該当するような通常の医療上の意味での留置であり、すなわち、数日または数週間または数ヵ月の範囲内の留置である。このとき穿刺システムおよび特にその外側のチューブ状の本体は、利用者によって位置に関して保持されなくてもよく、留置の際に人間の身体を傷つけることがないという意味で留置をするためにもセットアップされる。そのために外側のチューブ状の本体は、たとえば熱可塑性で角がなくせん断可能でない材料から構成される。それに応じて外側のチューブ状の本体は、ホースまたは小管として構成されていてよい。外側のチューブ状の本体が生体の身体部分に穿刺システムによって取り付けられた後、内側のチューブ状の本体ならびに穿刺ニードルが外側のチューブ状の本体から完全に取り外され、その結果、身体部分での留置の段階中には外側のチューブ状の本体だけがそこに留置される。外側のチューブ状の本体、内側のチューブ状の本体、および穿刺ニードルの間で好都合に選択される直径比率に基づき、生体の身体部分への穿刺システムの取り付けが、特に皮膚切開なしに非常に容易に可能である。
【0023】
穿刺システムおよび特にその外側のチューブ状の本体を生体の身体部分に、たとえば皮膚に固定するために、たとえば石膏による接着や皮膚への縫付けを行うことができる。本発明の1つの好ましい発展例では、穿刺システムはクリック・クリップ・メカニズムを皮膚への固定のために有している。傷口を閉じるためのステープルに類似するように構成されていてよいこのようなクリック・クリップ・メカニズムにより、手作業での操作によって、たとえば上から指で押さえることによって、固定ステープルを皮膚に穿孔することができ、それにより穿刺システムが皮膚に固定される。そのようにして、時間コストのかかる穿刺システムの縫合を省略することができる。
【0024】
さらに、処置方法が特許権保護の対象となる管轄の観点から、冒頭に掲げた課題は、患者に中心静脈カテーテルを、特に上で説明した種類のカテーテルを適用する方法であって、次の各ステップを有するものによって解決される。
【0025】
a)カテーテルの患者近傍の端部から突出する穿刺ニードルの穿刺区域によって患者の静脈が穿刺され、
b)穿刺ニードルが静脈内で正しく配置されたときに静脈へ、すなわち穿刺ニードルの穿刺区域を介してカニューレが押し出され、
c)静脈内に配置されたカニューレを介してカテーテルホースが押し出され、それによりカテーテルホースも静脈へ挿入される。
【0026】
穿刺ニードルは、静脈へのカテーテルホースの挿入の前または後に引き戻すことができ、または取り外すことができる。特に、場合により生じる損傷の危険をいっそう最低限に抑えるために、静脈へのカテーテルホースの挿入前の穿刺ニードルの取り外しが好ましい。最終的にカニューレも、それが患者遠方の端部でカテーテルホースから引き出されることによって、取り外すことができる。同様の仕方で穿刺ニードルを取り外すことができる。
【0027】
ここではさしあたり主要なステップだけを挙げている。実践において有意義かつ必要なその他のステップ、たとえば穿刺ニードルの位置をコントロールするための静脈血の吸引、カテーテルの各コンポーネントの固定なども、同じく実行することができる。さらなる詳細を含む中心静脈カテーテルの適用の一例としてのプロセスは、以下において、実施例の説明の枠内でさらに記載する。
【0028】
本発明の1つの好ましい発展例では、カニューレに対するカテーテルホースの長手方向スライドと、穿刺ニードルに対するカニューレの長手方向スライドは、それぞれ互いに独立して、カテーテルの患者遠方の端部から操作手段を通じて制御可能である。それにより、先ほど言及したカテーテルを適用する革新的な技術がいっそう促進される。穿刺ニードルの長手方向スライドのための操作手段としては、たとえば患者遠方の端部で穿刺ニードルと結合される注射器が役目を果たすことができる。カニューレの操作手段としては、たとえばカテーテルの患者遠方の端部でカニューレと結合される固定フラッグが役目を果たすことができる。
【0029】
本発明の好ましい発展例では、カテーテルは拡張カニューレを有していない。このことは、カテーテルが簡素に少ないコンポーネントで構成されていてよく、それに応じて容易に取り扱えるという利点がある。特に、拡張カニューレの別途の操作が必要ない。
【0030】
本発明の好ましい発展例では、カテーテルは患者近傍の端部で静脈へカテーテルホースを挿入するために、ランプ状に拡大していく拡張本体を有していて、これにカニューレが挿通される。このことは、静脈へのカテーテルホースの挿入のために必要な拡張を簡単な仕方で実行できるという利点があり、それは、拡張本体がまずカニューレを介して、そのような仕方で形成される本体開口部へ差し込まれることによる。そのために拡張本体が、カニューレに対して長手方向スライド可能に構成されるのが好ましい。このとき拡張本体は、カテーテルホースが押し出されるときの力付勢により、カテーテルホースによってカニューレに対して押し出すことができる。本発明の好ましい発展例では、拡張本体はカテーテルホースに取り付けられているか、またはカテーテルホースの一部である。拡張本体とカテーテルホースとの間のこのような固定的な結合により、拡張本体の位置も常時コントロールすることができる。たとえば拡張本体は、カテーテルホースの患者近傍の端部にランプ状に構成されているカテーテルホースの領域として構成されていてよい。
【0031】
ランプ状に拡大していく拡張本体の部分は、線形または非線形にランプ状に拡大していくように構成されていてよい。さらに、拡張本体が摩擦抵抗の少ない材料、すなわち特別に摺動性の材料で構成されているか、または少なくともそのような材料でコーティングされていると好ましい。それによっても、皮膚を通して押し出すときの、およびそれに伴う拡張プロセスのときの摩擦抵抗を最低限に抑えることができる。
【0032】
前述した通り、穿刺システムの患者近傍の端部から突出する穿刺ニードルの穿刺区域によって身体部分の穿刺が行われた後、内側のチューブ状の本体を穿刺システムの患者近傍の端部から少なくとも部分的に外側のチューブ状の本体から引き出し可能である。したがって、このとき内側のチューブ状の本体は患者のほうに向かって押し出し可能であり、その際に生体の身体部分へも容易に押し出すことができ、そのときに皮膚を貫通する。外側のチューブ状の本体も遠位で患者のほうに向かって、内側のチューブ状の本体を介してスライドさせることができ、その際にやはり生体の身体部分へ容易に押し出すことができ、そのときに皮膚を貫通し、それは特に穿刺ニードルが取り外されるとき、または引き戻されるときである。
【0033】
本発明の好ましい発展例では、カテーテルホースは少なくとも静脈の外部で第1の被覆部によって取り囲まれ、該被覆部によってカテーテルホースが静脈の外部で滅菌されたまま保たれる。カテーテルホースが静脈へ差し込まれると、第1の被覆部は患者の皮膚接触の結果として引き戻され、それによりカテーテルホースが滅菌状態で静脈内に達する。このことは、利用者にとって追加のコストと結びついていない。第1の被覆部は、静脈へカテーテルホースが差し込まれるときに自動的に引き戻され、または押し縮められるからである。第1の被覆部は、たとえば袋状の外皮またはベローズの形態で構成されていてよい。
【0034】
本発明によるカテーテルのさらに別の特殊性は、小内腔のカニューレを使用できるといいう点にある。このことは、穿刺ニードルによってつくられる皮膚開口部を、カニューレを押し出すときにさほど広げなくてすむという利点がある。特にこの場合、通常の医療上の意味における拡張は必要ない。したがって本発明によるカテーテルは、拡張カニューレなしでも具体化することができる。その代わりにカニューレは、穿刺ニードルによってつくられる内腔を保全する機能を有する。したがって、このカニューレを内腔保全カニューレと呼ぶこともできる。したがって本発明の好ましい発展例では、カニューレの外径は穿刺ニードルの外径の最大で2倍の大きさである。好ましい発展例では、カニューレの外径は穿刺ニードルの外径の最大1.5倍の大きさである。
【0035】
このように他の公知の提案とは異なり、カテーテルホースよりも小さい直径を有し、それに伴って小さい穴しか皮膚に残さない穿刺ニードルが提案される。
【0036】
公知のカテーテル解決法と比べて決定的な利点はこの点にもある。たとえば公知のシステムでは大きい直径を有するカニューレが使用され、これを通してカテーテルホースが静脈へ挿入される。カニューレは残したままにするか、または場合により分割して取り外すことができる。皮膚の穿刺穴は、このようなシステムではカテーテルホースよりも大きい直径を有しており、そのために通常、カテーテルホースの皮膚入口個所からの出血が起こる。しかも、挿入されるべきカテーテルホースの直径はカニューレの直径によって制限される。カニューレがすでにある程度の直径を有さざるを得ないので、カテーテルホースの直径も制限され、その結果、単位時間あたりに特別に多い液体量を静脈に注入することができない。さらに公知のシステムでの欠点は、穿刺のために使用される穿刺ニードルも同様に大きい直径を有しており、そのために穿刺が外傷を与えることにある。誤穿刺が甚大な損傷を帰結する可能性がある。そのような欠点が本発明によって克服される。
【0037】
それに応じて穿刺ニードルからカニューレへの移行部に、わずかな口径飛躍しか存在しない。カニューレの挿入をいっそう簡易化するために、カニューレは患者近傍の端部のところで面取りされて構成されていてよい。
【0038】
カテーテルホースに関しては、カニューレと比較して大きい口径飛躍が生じるが、このことは、多い量の液体を供給するのに必要となる所要の内径を具体化するためにも必要である。したがって本発明の好ましい発展例では、カテーテルホースの外径はカニューレの外径の少なくとも2倍の大きさである。それによって大きい流量が保証される。本発明の好ましい発展例では、カテーテルホースの外径はカニューレの外径の少なくとも3倍の大きさである。
【0039】
それに応じて、カテーテルホースを静脈へ挿入するときに初めて拡張ステップが必要である。
【0040】
本発明の好ましい発展例では、カテーテルは患者遠方の端部に吸引補助具または吸引補助具の接続部との吸引接続部を有している。たとえば従来型の注射器として構成されていてよい吸引補助具は、吸引接続部を介してたとえば穿刺ニードルと接続することができる。このケースでは穿刺ニードルを中空ニードルとして構成するのが好ましく、それにより、穿刺ニードルを通過するように液体を移送することができる。この吸引補助具またはさらに別の吸引補助具は、患者遠方の端部でカニューレと結合することもできる。このようにして、カニューレも患者遠方の端部のところで吸引補助具またはたとえばホースシステムなどの他のシステムと適合的であってよく、このことは、静脈の穿刺と動脈の穿刺との間の差別化のために非常に有益である。本発明の別の主要な利点をこの点に見出すことができる。利用者はたとえば注入ホースを接続して、血液がこの注入ホースへと拍動的に上昇しているか(動脈の穿刺)、そうでないかを目視で確認することができる。さらに、非拍動性の血液流を有する患者のときにも、たとえば移植された心臓補助システムのときにも、静脈の穿刺と動脈の穿刺とをいっそう容易に区別することができる。
【0041】
本発明の好ましい発展例では、カテーテルホースは穿刺ニードルの先端と吸引接続部または吸引補助具との間に配置される。
【0042】
本発明の好ましい発展例では、カテーテルホースは少なくとも12cmの長さを有しているが、あるいは多くの用途についてこれよりも長く構成されていてもよい。
【0043】
本発明の好ましい発展例では、カテーテルホースはマルチルーメン式に構成される。このことは、作業ルーメン以外にもさらに1つまたは複数の内腔が提供され、これを介して別個にたとえば液体を移送することができ、あるいは心電図誘導を行うことができるという利点がある。たとえばカテーテルは作業ルーメンと、1つまたは複数の補助ルーメン、たとえば側方の静脈内の出口個所とを有するように構成されていてよい。本発明の好ましい発展例では、個々のルーメンは取り外し可能および/または補足可能である。それによってモジュール形式のルーメンシステムが創出され、このことは、たとえばカテーテルホースが患者内に長いあいだ留置される場合に感染の恐れを低減するために、事前に、またはすでに挿入されているカテーテルホースで、ルーメンを取り外し、かつ/または補足することを可能にする。
【0044】
本発明の好ましい発展例では、カニューレはプラスチック材料、特に熱可塑性のプラスチック材料でできている。それによりカニューレが比較的柔軟に構成されていてよく、それにもかかわらず丈夫である。可能性のある損傷のリスクがそれによって最低限に抑えられる。カテーテルホースもプラスチック材料でできていてよい。穿刺ニードルは金属ニードルとして構成されていてよいのが好ましい。
【0045】
本発明の好ましい発展例では、カニューレはカテーテルホースよりも長く、および/または穿刺ニードルはカニューレよりも長い。それに応じてカニューレは両方の側でカテーテルホースから突出することができ、穿刺ニードルは両方の側でカニューレから突出することができる。このことは、穿刺ニードルとカニューレのそれぞれカテーテルの患者遠方の端部からの長手方向スライドと取り外しを簡易化する。
【0046】
本発明の好ましい発展例では、カテーテルは、カテーテルの患者遠方の端部に配置され、カテーテルの患者遠方の端部でカテーテルホースから突出するカニューレの領域を少なくとも取り囲む第2の被覆部を有しており、それにより、カニューレはこの領域で滅菌されたままに保たれる。第1の被覆部と第2の被覆部は別々の被覆部として構成されていてよい。このような2部分からなる保護被覆は、本発明によるカテーテルのさらに別の特殊性である。第2の被覆部は、たとえば袋状の外皮またはベローズの形態で構成されていてよい。
【0047】
本発明の好ましい発展例では、カテーテルはその全体の外側表面および/もしくは内側表面またはこれらの部分領域に液体をはじく表面、たとえば一種のロータス効果の表面を有している。このようにしてカテーテルは、そのような領域で同時に血液をはじく特性を有する。このことは、血液または滴る血液または分泌物で内腔が詰まることがあり得なくなるという利点がある。さらに、カテーテルが衛生面や感染症学の観点から改良される。さらに、カテーテルが使用時にいっそう快適かつ美的になる。外部からも血液の堆積や汚れが発生しなくなるからである。したがって表面が低い湿潤性を有しており、水や血液滴などの液体が滴下して、その際に表面の汚れ粒子も取り去る。
【0048】
このようにして、テレスコピック状で層状の特性を有する新規のカテーテルが提供される。このカテーテルは少なくとも3層からなる構造に基づき、穿刺プロセス中にそれ自体として安定している。内側から外側に向かって増えていく各層の直径に基づき、穿刺通路の増していく伸長がさほど大きな口径飛躍なしに行われる。このとき穿刺ニードルは、誤穿刺の際に組織や血管にできる限り少ししか外傷を与えないために、セルディンガー技術の場合に類似して薄く構成されていてよい。カテーテルの患者遠方の端部には、カテーテルホースの後方に、血液吸引と静脈内の位置の検証をするための注射器を配置することができる。血液吸引の直後に、カニューレが穿刺ニードルを介して定義された区間だけ静脈内に挿入される。それにより、静脈から穿刺システムが外れて転位する危険が低減される。その後、カテーテルホースがカニューレを介して体内へ押し出される。引き戻し可能な第1の被覆部が、その際にカテーテルホースを滅菌されたままに保つ。カテーテルホースは患者近傍の端部に、たとえば熱可塑性の材料からなる拡張本体を有している。このように、別個のダイレータを省略することができる。したがってセルディンガーワイヤとは異なり、明らかに少ない作業ステップしか必要ない。それにより、損傷や感染の危険性が患者や利用者にとって最低限に抑えられる。セルディンガーワイヤによって惹起される合併症が生じることがあり得なくなる。カテーテルホースの位置を心電図誘導によって連続して監視することができる。少ないコストでの容易な取扱性によって、たとえばプレホスピタルの救急医療などの新たな利用分野が開拓される。
【0049】
さらに第1および/または第2の被覆部により、関連する衛生の側面を全面的な範囲で満たすことができる一種の「閉鎖システム」を創出することができる。
【0050】
本発明は、たとえば次のような構成部品を有する穿刺セットとして提供することができる(長さの表示は一例にすぎず、実際には変更可能である)。
【0051】
1)ニードル先端の上に防護キャップを有する長さ25cmの穿刺ニードル20G
2)たとえば患者遠方の固定フラッグを有する、穿刺ニードルの上のプラスチックカニューレの形態の長さ23.5cmのカニューレ(穿刺ニードルとカニューレはカテーテルホースの作業ルーメンの中にある)
3)拡張する性質を有する(熱可塑性)長さ17cmのカテーテルホース、3ルーメン式、そのうち短いほうの作業ルーメン14~16Gおよびそれぞれ12Gの2つのルーメンは側方の静脈内の出口個所と、患者遠方の延長部(「内腔」)と、予備組付けされた3方コックとを有する。追加的に縫付け固定用のクランプとフラップ
4)作業ルーメンを閉止するためのキャップ。穿刺終了後の追加の注入ルーメンとして作業ルーメンを利用する場合のためのカニューレ、追加の3方コックを含む
5)血液吸引のための10ml注射器(5mlの生理食塩水/蒸留水で予備充填)
6)穿刺後に内腔を洗浄するための2つの注射器(それぞれ10mlの生理食塩水/蒸留水で予備充填)
7)カテーテルホース外装のための引き戻し可能な滅菌された外皮
8)縫合セットと外科用メス
要約すると、本発明によって次のような新たな利点がもたらされる。
【0052】
-血液吸引の直後にカニューレを静脈へ挿入することができる。このことは、血管から再び「抜け落ちる」危険性を低減する。穿刺ニードルをただちに取り外すことができ、身体に穿刺ニードルを残したままさらに動かす必要がない。このことは、患者や利用者にとっての損傷の危険を最低限に抑える。カニューレの挿入も穿刺そのものと同等にさほど外傷を与えず、動脈の誤穿刺のケースでは合併症リスクを想定可能である。
【0053】
-引き戻し可能な被覆部がカテーテルホースを滅菌されたままに保ち、上で説明したように滅菌された周辺区域は必要ない。所要スペースが最小限であり、穿刺者とセットそのものの合算から生じるにすぎない。
【0054】
-滅菌された材料と周囲との偶発的な接触の危険は、穿刺システムの各コンポーネントすなわち本発明によるカテーテルが統合されていることによって最低限に抑えられる。このことは、患者と利用者にとっての感染の危険性を低減する。
【0055】
-偶発的に身体内に残されたり、その他の合併症を引き起こしたりする可能性があるセルディンガーワイヤやその他のコンポーネントが必要ない。
【0056】
-カテーテルホースを押し出すときに恒常的な位置コントロールを行うことができ、心電図信号を希望に応じてカテーテルホースの先端を介して直接的に誘導することができる。さらに、カテーテルホースの静脈位置を、これを通じての血液吸引によっていつの時点でも変更することができる(「恒常的なルーメンコントロール」)。
【0057】
-旧来のセルディンガー技術の数多くのステップが必要なくなり(連結解除、挿通など)、アシスタント人員が必要ない。
【0058】
-Braunuele(登録商標)は利用者の間ですでに十分な信頼を得ている。このことは、特に経験のある利用者にとって、本発明によるカテーテルを用いた新規の穿刺技術を学ぶ際に助けとなり得る。
【0059】
-このシステムは、穿刺にあたって長い穿刺ニードルにもかかわらず十分に安定的であり、層状の特性に基づいてそれ自体安定化する。
【0060】
-ダイレータがカテーテルホースに統合されており、熱可塑性の特性を有している。カテーテルホースの先端は、既存の穿刺穴を利用するだけでよいので、比較的軟質に構成されていてよい。穿刺穴の中にあるのは、カテーテルホースを押し出す時点ではカニューレだけである。拡張本体によって初めて、皮膚通路の真の「穏やかな拡張」が行われる。このような「穏やかな拡張」は、ランプ状に拡大していく拡張本体によって促進できるという利点があり、その直径も「穏やかに」、すなわち低い勾配で増加していくにすぎない。
【0061】
-カテーテルホースの先端は軟質の、かつそれに伴って組織保全的な材料でできていてよい。皮膚通路や静脈壁の拡張が、後続する拡張本体によって初めて行われるからである。この拡張本体は軟質の先端部に追随するだけなので、組織または静脈の中での拡張本体の位置で、これによる非常にわずかな損傷の危険しか生じることがない。損傷の危険は、すぐ上で説明した拡張本体の熱可塑性の特性によっていっそう低減される。拡張本体は低い「上昇勾配」を有することができ、それに伴って非常に「穏やかな」拡張を可能にする。
【0062】
-この技術はプレホスピタルの分野で適用することができる。
【0063】
-開発の初期におけるコストの上昇は、別の個所での節減によって補うことができる(少ない時間コスト、滅菌された材料が手順中に抜け落ちて代替が必要となる危険の最小化など)。
【0064】
この新規の穿刺システムにより、どのような大きさの静脈の穿刺も可能である。それは、カテーテルホースの先端の中心静脈の位置が必ずしも第1に必要とされるのでない場合にも当てはまるが、そのような位置をも問題なく実現することができる。滅菌された周辺区域の設備の必要性なしに、高いフローレートを有するマルチルーメン式のシステムの設備が可能であることに基づき、たとえば次のような利用可能性がもたらされる:
-外傷ケアに重点をおくプレホスピタルの救急医療
-病院内の救急医療
-集中治療
-たとえば集中治療ステーションでの透析
-重大な容積損失を伴う大規模な外科的介入に重点をおく麻酔学
-戦争地域、危機的地域、災害地域における医療
-空間的に狭い状況での医療(航空機、地上走行する安全・救急車両、船舶など)
この新規の穿刺システムは、テレスコピック状で層状の特性を有している。1つの穿刺システムでただちに相前後して、一種のカテーテル・オーバー・ニードル技術の2回の実施が行われる。それによって全面的に新規の穿刺技術がもたらされる。穿刺通路はさしあたり小さく、それにより、誤穿刺に基づく合併症のリスクを見通すことが可能である。この利点は、これまでセルディンガー技術では留保されてきた。この技術は、さまざまな中間ステップを通じて小さい穿刺通路によりこれを拡張させることで、大きなカテーテルホースを挿入することを可能にするだけだからである。
【0065】
この新規の穿刺システムでは、カテーテルホースはたとえば穿刺ニードルの先端と血液吸引のための注射器との間にある。カテーテルホースの先端の近位数ミリメートルのところでこれに固定的な部分が埋設されていてよく、その長さは同様にわずか数ミリメートルである。このカテーテルホースは拡張する特性を有しており、そのようにして、セルディンガー技術で使用されるダイレータの代替となる。静脈壁の損傷は非常に可能性が低く、それは、固定的な部分そのものが鋭利な特性を有しておらず、カテーテルホースの比較的軟質の先端が追随するだけだからである。しかも、拡張する部分は熱可塑性の特性を有することができ、それにより身体内でいっそう軟質になり、周囲にある構造体を甚大に刺激することがなくなる。
【0066】
静脈穿刺が行われた後でまずカニューレが数センチメートルだけ静脈に挿入され、穿刺ニードルをただちに引き戻すか、または取り外すことができることによって、カテーテルホースの挿入の静脈内の位置を効果的に固定することができる。カテーテルホースが挿入されるとき、中に位置する鋭利な穿刺ニードルによる損傷の危険がなくなる。それによって患者安全性が改善される。利用者にとっての怪我の危険も同様に最低限に抑えられる。すべてのコンポーネントが1つの穿刺システムに統合されており、少ない作業ステップしか必要ないからである。それにより、患者や利用者にとっての感染の危険も低減する。引き戻し可能な被覆部がカテーテルホースを滅菌されたままに保ち、旧来のセルディンガー技術におけるような滅菌された周辺区域は必要ない。このことは、たとえばプレホスピタルの分野など、あらゆる種類の適用を促進する。
【0067】
たとえば非常に大きい程度に挿入されたセルディンガーワイヤによる心臓の損傷の危険も同じくなくなる。さらに、心臓リズム障害の可能性も非常に低い。静脈内の位置を固定し、後続するカテーテルホースに静脈内への経路を開くための程度までしか、カニューレが静脈内にないからである。セルディンガー技術とは異なり、カテーテルホースはワイヤを介して心臓の手前まで直接案内されるのではない。このことは、カテーテルホースがカニューレにより案内されて確実に静脈内に位置し、「正しい方向」(心臓に向かって)をとっているのであれば必要ないと思われる。その場合、カテーテルホースを確実に心臓の方向に押し出すことができる。留意しなければならないのは、セルディンガー技術では誤位置が頻繁に生じ、その場合、誤った経路がワイヤによって非常に徹底して辿られることである。本発明ではすでにカテーテルホースを押し出すとき、連続する心電図誘導を位置コントロールのために行うことができる。セルディンガー技術でのセルディンガーワイヤの挿入時に生じるその位置不確定性は、このようにして生じることがなくなる。
【0068】
本発明は、カニューレの挿入後に、拡張する部分を含めたカテーテルホースを挿入する以前から、静脈位置をあらためてコントロールすることを可能にする。それにより、拡張が行われる前に、システムの動脈の誤穿刺/血管外の位置をあらためて認識することができる。合併症のリスクがそれによってさらに低減される。最初に挿入されたカニューレが誤位置を有していても、それはまだ大きいルーメンを有していないので、リスクを見通すことが可能である。動脈の誤穿刺を、場合によっては吸引なしでも気づくことができる。穿刺ニードルを取り外した後、通常の場合には明るい色の血液がカニューレから拍動しながら出て、または、長いカテーテルにもかかわらずスムーズに流れ出るからである。カニューレは、近位のフラッグにより体内に侵入することが構造上妨げられるので、偶発的に体内に残ることがあり得ない。
【0069】
旧来のセルディンガー技術の数多くのステップが必要なくなる。連結解除ステップおよび再連結ステップ/挿通ステップを省略することができる。このことは本方法の複雑性を低減し、さらには人員コストと材料コストを節減することができる。
【0070】
要約すると、この新規の穿刺システムによって、大きいカテーテルホースを当初は小さい穿刺通路を介して直接かつ確実に心臓近傍の静脈へ挿入することができる。患者や利用者にとっての損傷や感染の危険が最低限に抑えられ、中に位置するセルディンガーワイヤによる危険がなくなる。カテーテルホースの位置を連続して監視することができる。この新規の穿刺システムは簡単な取扱を可能にし、コストを削減することができる。
【0071】
本発明は次の各構成要件によって好ましく発展させることができる。
【0072】
-単純な心電図信号だけを検出する胸郭の上のモニタを通じての、簡略化された形態でのカテーテルホースの患者近傍の端部の位置コントロールのための心電図誘導。この方法はプレホスピタルや病院内の救急医療上のセッティングも含めてどこででも適用可能である。
【0073】
-中心静脈カテーテルの設置期間が長い場合の感染の危険を低減するための取り外し可能なルーメン/モジュール形式の/補足可能なシステム。
【0074】
-カテーテルホースの患者近傍の端部の位置を自動的に表示する半自動式のシステム。
【0075】
-心電図誘導のための導電性の特性を有する、金属蒸着された導電性の先端および/またはカテーテルホース。
【0076】
-初心者/非熟練者用も含めて、簡略化された操作性のための中心静脈カテーテル(多色の中心静脈カテーテル)およびセット包装(1-2-3、赤-黄-緑)における信号灯システム。
【0077】
-カテーテルホースの患者近傍の端部での血流を自動的に評価するためのシステム(「完全自動機械」)。
【0078】
-電流強さ測定によってカテーテルホースの患者近傍の端部の位置決定をするためのシステム。中心静脈カテーテルが初期に「深すぎる」挿入をされることがなくなる。
【0079】
-標準ステーション用も含めて、カテーテルホースの患者近傍の端部を連続的または間欠的に位置コントロールするためのシステム。
【0080】
-神経外科介入の枠内において座った位置で動脈と静脈の位置および静脈の空気塞栓を検知するための統合されたドップラーシステム、別の遠位の穴ないし別の追加の穴を介しての空気の自動的な吸出しを含む。
【0081】
-内側に位置するカニューレが取り外された後に自動で閉止するルーメン。それにより、他のルーメンを通るいっそう高いフローレートが可能となる。
【0082】
-患者遠方の部分のところで硬質でない穿刺ニードル。それにより、穿刺ニードルが静脈へ過大な程度に挿入されることがあり得ない。
【0083】
-硬質プラスチックからなる穿刺ニードル。穿刺ニードルを押し出すときに軟質になる(または固定フラッグが引き戻されたときも。この場合、穿刺ニードルとカニューレとの間の結合が成立する)。
【0084】
-コネクタを介して先端と結合された穿刺ニードル。カテーテルホースはループ状に巻き付けられる。
【0085】
-中心静脈カテーテルの固定がステープルを有する専用の「クリック・メカニズム」を通じて皮膚で行われ、縫合が必要なくなる。
【0086】
-患者近傍の(第1の)被覆部の潤滑剤。それにより、カテーテルホースをいっそう容易に皮膚および静脈へ通すことができる。
【0087】
次に、図面を利用しながら実施例を参照して本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0088】
図1】第1の実施形態における中心静脈カテーテルである。
図2図1のカテーテルの患者近傍の端部を示す拡大した詳細図である。
図3】中心静脈カテーテルの第2の実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0089】
図面においては、互いに対応する部材については同じ符号が使われる。
【0090】
図1は、本発明によるカテーテル1の基本的な構造を示している。納品状態ではすべてのルーメンが滅菌された食塩水および/または蒸留水ですでに予備充填されており、それによりカテーテル1を排気せずにそのまま使用できるものと想定する。カテーテル1は、または穿刺システムを形成するその他すべての構成要素も、図示した形態で滅菌されて包装して納品され、包装の開封後にただちに他の準備作業なしに利用可能である。滅菌条件のもとでの開封は必要ない。
【0091】
カテーテル1は患者近傍の端部10を有していて、ここでカテーテル1の一部分が患者の静脈に挿入される。さらにカテーテル1は、図に見える通り、患者近傍の端部10と反対を向いているカテーテル1の端部領域に配置された患者遠方の端部11を有している。患者遠方の端部11では、利用者によってカテーテル1の操作が行われる。
【0092】
カテーテル1は、カテーテルホース2と、作業ルーメン3と、カニューレ4と、穿刺ニードル5とを有している。カテーテルホース2の作業ルーメン3の内部で、カニューレ4がカテーテルホース2または作業ルーメン3へ長手方向に挿通されている。カニューレ4の内部で、穿刺ニードル5がカニューレ4へ長手方向に挿通されている。患者近傍の端部10では、穿刺ニードル5が穿刺区域50をもってカテーテル1から突出している。ここで図1では、カニューレ4がすでにカテーテルホース2から引き出されているが、このことは当初は、すなわちカテーテル1の納品状態では当てはまるケースではない。このようなケースは、後でまた詳しく説明するように、患者にカテーテル1を適用する過程で初めて生じるものである。当初は、穿刺ニードル5の穿刺区域50だけが患者近傍の端部10でカテーテル1から突出している。穿刺区域50は当初は、すなわち納品状態では、たとえば注射器カニューレで使用されるような防護キャップによって、非滅菌の要因から保護されている。
【0093】
カテーテル1は比較的長く構成されており、図1ではカテーテル1は中央の領域で短縮して図示されており、このことをマーキング20によって記号で示すことにする。実際には、カテーテル1はこれよりも明らかに長いプロポーションを有することができる。
【0094】
カテーテル1はマルチルーメン式に構成されており、作業ルーメン3の他に、第1のカテーテルアタッチメント63を備える第1の補助ルーメン61、および第2のカテーテルアタッチメント66を備える第2の補助ルーメン64を有している。作業ルーメン3および補助ルーメン61,64は、患者に取り付けるためのカテーテルの固定翼部としても利用することができる結合区域6を介して合流して、カテーテルホース2と連結されている。補助ルーメン61,64は、公知の中心静脈カテーテルの場合と同じく従来式に構成されており、たとえばそれぞれホース61,64、ホース61,64を結紮するためのホースクランプ62,65、およびカテーテルアタッチメントとも呼ぶ接続体の形態で構成され、この接続体を介してそれぞれ注射器またはホースを補助ルーメン61,64のうちの1つに接続することができる。たとえば第2の補助ルーメン64に、カテーテルホースを介しての離散的な連続する心電図誘導のための電気接続回線60が存在していてよい。
【0095】
カテーテルホース2は、図1にやはり認められる通り、カニューレ4に比べて比較的大きい口径飛躍を有している。したがって、静脈へカテーテルホース2を挿入するために拡張ステップが必要である。この目的のために、カテーテル2の患者近傍の端部10には、カテーテルホース2の端部の面取りされた形態で構成されていてよい拡張本体21がある。
【0096】
カテーテルホース2は、これを静脈への挿入前に滅菌されたまま保つために、袋状の外皮の形態の第1の被覆部22によって包囲されている。この被覆部は患者近傍の端部10から結合区域6まで延びている。患者近傍の端部10には、第1の被覆部22がカテーテルホース2の上でスライド可能なように配置されており、患者の静脈へカテーテルホース2を押し出すときに皮膚接触によって自動的に引き戻される。
【0097】
患者遠方の端部11には、作業ルーメン3にホースクランプ31が配置されており、これを介して作業ルーメン3を、少なくともカニューレ4と穿刺ニードル5がこれから取り外された後で結紮可能である。
【0098】
作業ルーメン3は患者遠方の端部11で、終端片30をもって終わっている。この終端片は、カニューレ4が希望されないほど大きく押し出され得ないことを保証するために、カニューレ4の押し出しのためのストッパとしての役目を果たす。カニューレ4は患者遠方の端部11で、終端片40をもって終わっており、この終端片に固定フラッグ41が配置されている。固定フラッグ41は、中央の層すなわちカニューレ4が過度に大きく静脈へ押し出され得ないようにするための役目を果たす。それにより、カニューレ4が過失により体内に残ったり、または、カテーテルホース2から大きく突出しすぎてカテーテルホース2が心臓の方向へ押し出されたときに心臓を刺激したりするのを回避することが意図される。これに加えて固定フラッグ41は、カニューレ4を押し出したり引き出したりするときに手で握るために利用することができ、したがって、同時にカニューレ4の操作手段としても機能する。カニューレ4は前方に向かって患者近傍の端部10の方向へ、終端片40が終端片30に当接するまで押し出すことができる。
【0099】
カテーテル1は、カニューレ4の露出している領域を患者遠方の端部11で取り囲んでこれを滅菌されたままに保つ、袋状の外皮の形態の第2の被覆部32を有している。このように本発明による穿刺システムは、2部分に分かれる滅菌された被覆部を有するように構成されていてよく、すなわち、穿刺システムで患者に向かって遠位にある第1の被覆部22と、これに追加して、これよりも患者から遠くで近位にある第2の被覆部32とであり、そこでは穿刺前に内側のチューブ状の本体4が外側のチューブ状の本体2から突出する。このとき特に被覆部の患者近傍の部分は、すなわち第1の被覆部22は、滅菌された潤滑ジェルを有することができ、外側のチューブ状の本体が生体の身体部分内へ、特に皮膚を通して押し出されるときの摩擦がこれによって最低限に抑えられる。
【0100】
穿刺ニードル5は患者遠方の端部11でカニューレ4から外に出ており、たとえば注射器7を接続するための接続本体51を有している。注射器7または接続本体51は、同時に、静脈へのカニューレ4の挿入が行われた後に、穿刺ニードル5を引き出すための操作手段として利用することができる。注射器7によって血液吸引を実行することができる。
【0101】
図1のカテーテル1を患者に適用するとき、次のように手順を進めることができるのが好ましい。
【0102】
1)穿刺ニードルによって静脈を穿刺する。
【0103】
2)静脈血を吸引するときはカニューレを静脈の中へ押し出す。このとき固定フラッグの押し出しが、それ以上は押し出すことができなくなるまで、すなわち作業ルーメンに到達するまで行われる(ここでは意図的にその中へは嵌らない)。
【0104】
3)穿刺ニードルを取り外す。
【0105】
4)カニューレをただちに閉止し、または注射器によって正しい静脈内の位置をあらためて点検する。
【0106】
5)カニューレを通じてカテーテルホースを静脈内へ押し出す。
【0107】
6)カニューレを取り外す。
【0108】
7)場合によりカテーテルホースを皮膚に固定する。
【0109】
図2は、カテーテル1の患者近傍の端部10の詳細を拡大した断面図として示している。カテーテルホース2の内部に、またはその作業ルーメン3の内部に、カニューレ4が配置されるとともに、カニューレ4の内部に穿刺ニードル5が配置された少なくとも3層からなる構造を認めることができる。穿刺ニードル5は長軸Lの方向へスライド可能であり、すなわち長手方向スライド可能である。カニューレ4も同じく長軸Lの方向へスライド可能であり、すなわち長手方向スライド可能である。作業ルーメン3は、ここではカテーテルホース2と固定的に結合されていてよい。カニューレ4はその患者近傍の端部42のところで、静脈への挿入を容易にするために、たとえば面取りされて構成されていてよい。穿刺ニードル5は、注射器カニューレの場合に類似して、端部に先端52を有している。
【0110】
図3は、図1の実施形態と比較して保持手段67が補足されたカテーテル1の実施形態を示しており、この保持手段に、結合区域6から出ていく3つの内腔すなわち作業ルーメン3および補助ルーメン61,64ならびにこれらと結合された部品が、全面的または部分的に固定されていてよい。このようにして取扱が簡易化される。これらの内腔がルーズに動くことがあり得なくなり、事前定義された位置にとどまるからである。保持手段67は、たとえば保持プレートの形態で、たとえば三角形またはこれに類似する形状で構成されていてよい。
【0111】
補足としてカテーテル1の患者近傍の端部10には、穿刺の際にもう一方の手でカテーテル1の患者近傍の端部10を保持して制御し、またはいっそう安定化させることを利用者に可能にする保持体が配置されていてよい。この保持体はカテーテルホース2に対してスライド可能なようにカテーテル1に取り付けられていてよく、そのようにして、体内へのカテーテルホース2の挿入時にその固定された位置で保持することができる。これに加えて保持体は、市販されている末梢静脈留置カニューレに類似して、たとえば継ぎ目を介してカテーテル1を追加的に固定することができる翼部を含むことができる。あるいは保持体は挿入プロセスの最後に取り外すこともでき、すなわちカテーテル1に取り外し可能に取り付けられていてよい。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] 生体の身体部分に留置するためにセットアップされた外側のチューブ状の本体(2)を有する穿刺システム(1)において、前記穿刺システム(1)は少なくとも1つの内側のチューブ状の本体(4)と穿刺ニードル(5)とを有しており、前記内側のチューブ状の本体(4)は前記外側のチューブ状の本体(2)の作業ルーメン(3)に挿通されるとともに前記外側のチューブ状の本体(2)に対して長手方向スライド可能であり、前記穿刺ニードル(5)は前記内側のチューブ状の本体(4)の穿刺ルーメンに挿通されており、前記内側のチューブ状の本体(4)は前記穿刺ニードル(5)に対して長手方向スライド可能であり、前記穿刺システム(1)の患者近傍の端部(10)から突出する前記穿刺ニードル(5)の穿刺区域(50)によって身体部分の穿刺が行われた後に前記内側のチューブ状の本体(4)が前記穿刺システム(1)の患者近傍の端部(10)から少なくとも部分的に前記外側のチューブ状の本体(2)から引き出し可能であるとともに、その際に前記穿刺システム(1)の患者近傍の端部(10)から突出する前記穿刺ニードル(5)の穿刺区域(50)を少なくとも部分的に前記内側のチューブ状の本体(4)の前記穿刺ルーメンの中に収容するように構成されていることを特徴とする穿刺システム。 [2] 前記内側のチューブ状の本体(4)に対する前記外側のチューブ状の本体(2)の長手方向スライドと、前記穿刺ニードル(5)に対する前記内側のチューブ状の本体(4)の長手方向スライドはそれぞれ互いに独立して操作手段(40,41,51,7)を通じて前記穿刺システム(1)の患者遠方の端部(11)から制御可能であることを特徴とする、[1]に記載の穿刺システム。
[3] 前記穿刺システム(1)は拡張カニューレを有していないことを特徴とする、[1]または[2]に記載の穿刺システム。
[4] 前記外側のチューブ状の本体(2)を身体部分へ挿入するために前記穿刺システム(1)は患者近傍の端部(10)にランプ状に拡大していく拡張本体(21)を有していて、これに前記内側のチューブ状の本体(4)が挿通されていることを特徴とする、[1]から[3]のいずれか1項に記載の穿刺システム。
[5] 前記拡張本体(21)は前記内側のチューブ状の本体(4)に対して長手方向スライド可能であることを特徴とする、[4]に記載の穿刺システム。
[6] 前記拡張本体(21)は前記外側のチューブ状の本体(2)に取り付けられており、または前記外側のチューブ状の本体(2)の一部であることを特徴とする、[4]または[5]に記載の穿刺システム。
[7] 前記外側のチューブ状の本体(2)は少なくとも身体の外部で第1の被覆部(22)によって取り囲まれており、該第1の被覆部によって前記外側のチューブ状の本体(2)が身体部分の外部で滅菌されたまま保たれることを特徴とする、[1]から[6]のいずれか1項に記載の穿刺システム。
[8] 前記内側のチューブ状の本体(4)の外径は前記穿刺ニードル(5)の外径の最大2倍の大きさであることを特徴とする、[1]から[7]のいずれか1項に記載の穿刺システム。
[9] 前記外側のチューブ状の本体(2)の外径は前記内側のチューブ状の本体(4)の外径の少なくとも2倍の大きさであることを特徴とする、[1]から[8]のいずれか1項に記載の穿刺システム。
[10] 前記穿刺システム(1)、特にその前記穿刺ニードル(5)および/またはその前記内側のチューブ状の本体(4)は患者遠方の端部(11)に吸引補助具(7)または該吸引補助具(7)を接続するための吸引接続部(51)を有していることを特徴とする、[1]から[9]のいずれか1項に記載の穿刺システム。
[11] 前記外側のチューブ状の本体(2)はマルチルーメン式に構成されており、個々のルーメンを取り外し可能および/または補足可能であることを特徴とする、[1]から[10]のいずれか1項に記載の穿刺システム。
[12] 前記内側のチューブ状の本体(4)はプラスチック材料でできていることを特徴とする、[1]から[11]のいずれか1項に記載の穿刺システム。
[13] 前記内側のチューブ状の本体(4)は前記外側のチューブ状の本体(2)よりも長く、および/または前記穿刺ニードル(5)は前記内側のチューブ状の本体(4)よりも長いことを特徴とする、[1]から[12]のいずれか1項に記載の穿刺システム。
図1
図2
図3