(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】植栽パネル及び競技場
(51)【国際特許分類】
A01G 9/033 20180101AFI20230720BHJP
E04H 3/14 20060101ALI20230720BHJP
A01G 20/20 20180101ALI20230720BHJP
【FI】
A01G9/033
E04H3/14 C
A01G20/20
(21)【出願番号】P 2019112089
(22)【出願日】2019-06-17
【審査請求日】2022-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】593102183
【氏名又は名称】株式会社東畑建築事務所
(73)【特許権者】
【識別番号】519219461
【氏名又は名称】株式会社グリーンマスターズ清水
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】清野 眞一
(72)【発明者】
【氏名】佐野 忍
(72)【発明者】
【氏名】一居 康夫
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-117227(JP,A)
【文献】特開2013-090623(JP,A)
【文献】特開平07-048941(JP,A)
【文献】特開平04-349824(JP,A)
【文献】特開2010-207176(JP,A)
【文献】特開2014-105448(JP,A)
【文献】特開2008-173104(JP,A)
【文献】特開平11-033160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/033
E04H 3/14
A01G 20/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に植えられた植物の根が絡む構成材を備え、水が通過可能な人工土壌部と、
前記人工土壌部の下端に配置された通気性のある透水シートと、
前記人工土壌部を下から支持し、前記水を通過可能とする合成樹脂で構成された排水基礎部と、
前記排水基礎部から流れ落ちた水を受け止めるとともに、前記排水基礎部の下で放熱を行なう
凹凸が形成された鋼製の受け板とを備えたことを特徴とする植栽パネル。
【請求項2】
請求項1に記載の植栽パネルにおいて、
前記人工土壌部から前記受け板を貫通して下方に突出し、外部から給水を行なう給水管に接続可能で、前記植物へと水を供給するための供給管を更に設けたことを特徴とする植栽パネル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の植栽パネルにおいて、
前記受け板は、前記排水基礎部の外周に向かって低くなる傾斜を有していることを特徴とする植栽パネル。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の植栽パネルにおいて、
前記受け板の下面には、複数の梁部材が設けられており、
前記複数の梁部材の間には、照明が設けられていることを特徴とする植栽パネル。
【請求項5】
植栽パネルを備えた競技場において、
前記植栽パネルを上下又は水平に移動させる移動機構を備え、
前記植栽パネルは、
上部に植えられた植物の根が絡む構成材を備え、水が通過可能な人工土壌部と、
前記人工土壌部の下端に配置された通気性のある透水シートと、
前記人工土壌部を下から支持し、前記水を通過可能とする合成樹脂で構成された排水基礎部と、
前記排水基礎部から流れ落ちた水を受け止めるとともに、前記排水基礎部の下で放熱を行なう
凹凸が形成された鋼製の受け板とを備えたことを特徴とする競技場。
【請求項6】
請求項5に記載の競技場において、
前記植栽パネルには、前記人工土壌部から前記受け板を貫通して下方に突出する供給管が更に設けられ、
前記供給管は、前記植物へと水を供給するために、外部の給水管と分離可能に接続し、
前記給水管が、前記供給管と接続可能となるように、前記移動機構による前記植栽パネルの移動前の位置及び移動後の位置に設けられていることを特徴とする競技場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィールドに用いられる植栽パネル及び競技場に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サッカー、ラグビーや陸上競技等を行なうフィールドを、天然芝で構成したスタジアムがある。このようなスタジアムでは、周囲への観客騒音や天候に左右されない開催の目的のために、観客席の上部が、屋根で覆われているものがある。しかし、この屋根により、天然芝に供給される日射量が減り、天然芝を育成できないことがある。
【0003】
そこで、天然芝を育成するために、スタジアムのフィールドを屋根の高さまで上昇させる技術が検討されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載されたスタジアムにおいては、フィールド可動部の周囲に、伸縮可能な架設用柱を配置し、屋根に、フィールド可動部を昇降するためのウインチを設ける。フィールドを使用しない場合には、架設用柱を伸長して、スタジアムの屋根に連結する。そして、フィールド保持部を、ウインチを用いて屋根の高さまで上昇させて、屋根に連結する。
【0004】
更に、天然芝養生のためにフィールドを外に出し日照を確保するスタジアムが検討されている(例えば、非特許文献1参照。)。この非特許文献に記載された技術においては、野球やコンサート・展示会の開催においては、天然芝のステージを、水平方向に移動させて、スタジアムの外に出して芝を育成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】札幌ドーム 「ドームを知る・お役立ち情報 ホヴァリングサッカーステージ」、[online]、[令和1年5月2日検索]、インターネット〈URL:https://www.sapporo-dome.co.jp/dome/hovering.html〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示したように、芝生を育成するために、フィールドを屋根まで上昇させる場合には、フィールドを軽量にすることが望ましい。また、非特許文献1に記載した技術では、空気圧を用いてフィールドを浮かして水平方向に移動させる。この場合においても、円滑な移動のために、フィールドを軽量にすることが望まれている。
【0008】
軽量化のためには、芝生が植えられる床土を薄くする必要がある。
そこで、天然芝の根が絡む繊維質を備えた人工土壌を、床土の上に配置して、床土を薄くすることが考えられる。しかし、この場合、人工土壌は床土よりも保水性がよいため、床土の上に水が滞留し、人工土壌から排水し難いという問題が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する植栽パネルは、上部に植えられた植物の根が絡む構成材を備え、水が通過可能な人工土壌部と、前記人工土壌部の下端に配置された通気性のある透水シートと、前記人工土壌部を下から支持し、前記水を通過可能とする合成樹脂で構成された排水基礎部と、前記排水基礎部の下で放熱を行なう受け板とを備える。
【0010】
上記課題を解決する競技場は、植栽パネルを備えた競技場において、前記植栽パネルを上下又は水平に移動させる移動機構を備え、前記植栽パネルは、上部に植えられた植物の根が絡む構成材を備え、水が通過可能な人工土壌部と、前記人工土壌部の下端に配置された通気性のある透水シートと、前記人工土壌部を下から支持し、前記水を通過可能とする合成樹脂で構成された排水基礎部と、前記排水基礎部の下で放熱を行なう受け板とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、フィールドを軽量化して、効率的に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態における競技場の構成を説明する概略断面図。
【
図2】実施形態における植栽パネルの要部の断面図。
【
図3】実施形態におけるフィールドを上昇させた状態における競技場の構成を説明する概略断面図。
【
図4】実施形態における競技場の要部の斜視図であって、(a)はフィールドを上昇させる前、(b)はフィールドを上昇させた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、
図1~
図4を用いて、植栽パネル及び競技場を具体化した一実施形態を説明する。
図1に示すように、本実施形態の競技場10は、植栽パネルとしての昇降可能なフィールド部20と、スタンド11と、スタンド11の上方を覆う屋根15とを備えている。なお、
図1及び
図3においては、図面を見やすくするために、正面のスタンド11を省略している。
【0014】
フィールド部20は、略直方体形状の本体部30と支持部25とを備える。このフィールド部20の上では、サッカー等の競技を行なう。本体部30の構成の詳細については、後述する。
【0015】
支持部25は、フィールド部20を支持する梁部材であり、例えばトラス構造の複数の梁部材によって構成される。この支持部25の下面(梁部材の間)には、フィールド部20を上昇させたときに、支持部25の下方を照らすための複数の照明(図示せず)が設けられる。
【0016】
スタンド11は、フィールド部20の周囲(四方)を囲むように複数、配置される。スタンド11は、階段式の観客席であって、フィールド部20側から外側になるにつれて高くなるように構成されている。
【0017】
スタンド11の外周上部には複数の屋根柱16が配置されており、この屋根柱16によって屋根15が支持される。この屋根15は、例えばトラス構造によって構成されており、スタンド11の上方を覆うとともにフィールドの上方を開放する形状の固定屋根である。更に、屋根15には、第1給水管(図示せず)が固定される。この第1給水管は、屋根15まで上昇させたフィールド部20の供給管に接続され、バルブを介してフィールド部20に水を供給する。
【0018】
更に、屋根15のフィールド部20側の端部には、フィールド部20を昇降させるための昇降装置としてのウインチ(図示せず)が設けられる。このウインチの近傍の屋根15部分には、上昇させたフィールド部20を固定するための連結固定装置が設けられる。
【0019】
(フィールド部20の詳細構成)
図2に示すように、フィールド部20の本体部30は、支持部25の上弦材25aの上に設けられている。この本体部30は、受け板31、断熱部32、排水基礎部33、透水シート34及び人工土壌部35を備え、これらが積層されて構成される。ここで、受け板31、排水基礎部33及び人工土壌部35は、ほぼ同じ平面形状(長方形)を有する。
【0020】
受け板31は、本体部30の下面を支持する。受け板31は、凹凸が形成された鋼製の板で構成され、表面積を大きくすることにより、放熱板として機能する。更に、この受け板31は、本体部30の外周が低くなるように緩やかな傾斜をしている。
【0021】
断熱部32は、複数の小片の発泡スチロールで構成され、受け板31の凹凸を埋めて上面が平らとなるように敷設される。この場合、断熱部32の上面は、受け板31の傾斜に応じて、本体部30の外周が低くなるような傾斜を有する。そして、この断熱部32の上に、排水基礎部33が敷き詰められる。これにより、排水基礎部33から流れ落ちた水は、断熱部32及び受け板31によって受け止められて、傾斜に沿ってフィールド部20の外周に流出する。
【0022】
排水基礎部33は、合成樹脂で構成されたパレット形状のユニットで構成される。本実施形態では、排水基礎部33として、Polypipe社製のPermavoid85(商品名)を用いる。Permavoid85(パーマボイド)は、ポリプロピレン製の厚さ85mmのプラスチックユニットである。この排水基礎部33は、円筒形状の複数の支持部と、他のユニットと連結部材を介して連結するための連結部と、これらを上下左右及び斜めで接続する複数のフレーム部とを備える。このように、空隙を備える構成部材からなる排水基礎部33は排水性に優れる。
排水基礎部33の間には、複数の暗渠排水部33aが、隙間をおいて(例えば5m間隔毎に)配置されている。この暗渠排水部33aは、例えば、グリーンマスターズ清水製のハイテクカンキョウドレーン(商品名)HTCDを2列配置し、その上にネットブリッジフィルタF1を配置した構成を用いる。このネットブリッジフィルタF1として、黒曜石パーライトを用いることにより、更に軽量化を図っている。
【0023】
透水シート34は、不織布で構成され、人工土壌部35の底面を覆う。この透水シート34は、人工土壌部35の構成材が流出しないように、排水基礎部33と人工土壌部35との間に配置される。
【0024】
人工土壌部35は、排水基礎部33の上に透水シート34を介して配置される。人工土壌部35の周囲は、高さ140mm程度であって、板で囲まれる。更に、人工土壌部35の上には、天然芝G1が植えられる。人工土壌部35は、水を通過可能とする繊維質の材料を備える。本実施形態では、人工土壌部35として、Natural Grass社製のAirFibr(登録商標)を用いる。このAirFibr(エアーファイバー)は、マイクロファイバー(人工繊維)、炭化コルク粒及び細かい硅砂を混合して構成される。このため、人工繊維、炭化コルク粒及び硅砂が、人工土壌部35の構成材である。このエアーファイバーは、天然芝G1の根がマイクロファイバーに絡み合って芝生を強化し、硅砂と炭化コルク粒は泥濘化せずに毛細管現象による保水力によって、必要な水分と栄養分を天然芝G1の根を通じて天然芝G1に吸収させる。
【0025】
更に、フィールド部20の本体部30には、複数の供給管36が間隔をおいて配置されている。この供給管36は、天然芝G1に給水するために用いる。供給管36は、受け板31~人工土壌部35を貫通しており、上端部には散水機ヘッド(図示せず)を備える。更に、この供給管36の下部は、受け板31よりも下方に突出し、水平方向に屈曲して、フィールド部20の端部まで延在する。そして、この供給管36の端部の近傍には、バルブ36aが設けられる。
供給管36は、フィールド部20を降下させた位置では第2給水管41に接続され、フィールド部20を上昇させた位置では第1給水管に接続される。第2給水管41には、供給管36との接続部の近傍に、バルブ41aが設けられる。
【0026】
更に、フィールド部20の本体部30の外周には、排気溝37が設けられる。排気溝37には、緩衝材37aが配置されている。この排気溝37は、排水基礎部33を通過し、受け板31からの熱を取得した空気を排気する。
排気溝37の下方には、排水溝38が設けられている。この排水溝38は、受け板31の外周部まで延在するように形成されている。
【0027】
(フィールド部20の作用)
図1及び
図4(a)に示すように、フィールド部20を降下させた状態においては、フィールド部20の上で、天然芝G1を用いた競技を行なう。フィールド部20が降下した位置においては、供給管36は第2給水管41に接続され、バルブ36a,41aを開く。そして、この位置において、必要に応じて、供給管36の上端部から天然芝G1の上に水を散布する。散布された水は、フィールド部20の人工土壌部35、透水シート34、排水基礎部33及び断熱部32を介して、受け板31の上に到達する。そして、この水は、受け板31の傾斜に応じてフィールド部20の本体の外周に流出する。
【0028】
<天然芝G1の育成>
そして、天然芝G1の全面に日光を照射する場合には、
図3及び
図4(b)に示すように、フィールド部20を上昇させる。
【0029】
具体的には、まず、バルブ36a,41aを閉じて、供給管36と第2給水管41とを分離する。次に、屋根15に固定したウインチのロープを降下させて、フィールド部20に掛止する。そして、各ウインチのモータを回転駆動してロープを巻き取ることにより、フィールド部20を屋根15の高さまで上昇させる。次に、屋根15に設けた連結固定装置(図示せず)を用いて、フィールド部20を屋根15に連結して固定する。そして、フィールド部20の供給管36を、屋根15に固定された第1給水管に接続する。
【0030】
この場合、フィールド部20の下方でイベントを行なうことも可能である。イベントを行なう場合には、フィールド部20の受け板31の下に設けた照明を用いる。この場合には、フィールド部20の天然芝G1の全面に日光を照射しながら、バルブ36a及び第1給水管のバルブを開いて、第1給水管及び供給管36を介して、適宜、天然芝G1に水を供給する。この場合、屋根の位置に天然芝G1を配置しているので、芝生育成に必要な通風性を確保することができる。
【0031】
フィールド部20を降下させる場合には、連結固定装置を取り外して、フィールド部20と屋根15との連結固定を解除する。そして、各ウインチのモータを回転駆動して、フィールド部20を降下させる。フィールド部20が着地した場合、各ウインチのロープをフィールド部20から取り外し、ロープを巻き上げる。
【0032】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態のフィールド部20の本体部30は、天然芝G1が植えられる人工土壌部35と、透水シート34を介して配置された排水基礎部33とを備える。人工土壌部35は、水を通過可能とし、天然芝G1の根が絡むマイクロファイバーを備える。排水基礎部33は、人工土壌部35を下から支持し、水を通過可能とする合成樹脂で構成される。これにより、床土を省略してフィールド部20の厚みを薄くした構成においても、排水基礎部33が人工土壌部35を支持し、人工土壌部35により天然芝G1を定着させて、フィールド部20を軽量化することができる。この場合、人工土壌部35から排水基礎部33に排水できるため、人工土壌部35における水はけを向上させることもできる。
【0033】
(2)本実施形態のフィールド部20の本体部30は、排水基礎部33の下に、放熱を行なう受け板31を備える。更に、受け板31の下には照明が設けられる。上昇させたフィールド部20の下方でイベントを行なった場合、照明や集客によって熱が発生する。この場合にも、受け板31において放熱して、人工土壌部35への熱の伝達を抑制し、天然芝G1の温度上場を抑制することができる。
【0034】
(3)本実施形態のフィールド部20の本体部30は、排水基礎部33と受け板31との間に断熱部32を配置する。これにより、断熱部32を介して、人工土壌部35の上の天然芝G1への熱の伝達を抑制することができる。
【0035】
(4)本実施形態の受け板31は、外周に向かって傾斜している。これにより、排水基礎部33からの水を本体部30の外周に排出することができる。
(5)本実施形態のフィールド部20の本体部30は、フィールド部20(人工土壌部35)の外周に排気溝37を設ける。これにより、排水基礎部33を換気して、排気溝37にて排熱できる。
【0036】
(6)本実施形態のフィールド部20の本体部30は、受け板31~人工土壌部35を貫通する供給管36を備える。供給管36の水平方向を人工土壌部35に埋設した場合には、その分、天然芝G1の根を張る領域を確保するために人工土壌部35を厚くする必要がある。そこで、供給管36の水平方向の配管を本体部30の下に露出させることにより、フィールド部20の厚みを薄くして、フィールド部20をより軽くすることができる。
【0037】
(7)本実施形態のフィールド部20の供給管36は、フィールド部20が上昇した位置においては、第1給水管に接続される。このため、天然芝G1の育成のために、フィールド部20を上昇させた状態で、供給管36を用いて給水することができる。
【0038】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態のフィールド部20は、透水シート34を介して人工土壌部35の下に排水基礎部33を配置した。人工土壌部35と排水基礎部33との積層構造は、透水シート34を介した構造に限られない。例えば、人工土壌部35からの水はけをよくできるのであれば、人工土壌部35の下で排水基礎部33と上に、薄い床土を配置した構造であってもよい。
【0039】
・上記実施形態では、人工土壌部35としてエアーファイバーを用いた。人工土壌部35としてエアーファイバーを用いる場合に限られず、天然芝G1の根が絡み合い、かつ天然芝G1に水分と栄養分を供給でき、従来の床土よりも厚みを薄くできる構成材を有する人工的な土壌であればよい。
【0040】
・上記実施形態では、排水基礎部33としてパーマボイドを用いた。排水基礎部33の構成材は、パーマボイドに限られず、人工土壌部35を下から支持し、人工土壌部35から流出した水をそのまま通過可能とする合成樹脂で構成された部材であればよい。
【0041】
・上記実施形態のフィールド部20の受け板31は、排水のために外周が低くなるような傾斜で構成される。受け板31の構成は、この構成に限定されず、凹凸がない平坦な板形状で構成してもよいし、中央に水を集めて排水する構成にしてもよい。
【0042】
・上記実施形態では、フィールド部20の外周に排気溝37を設けた。フィールド部20の排熱機構は、これに限られない。例えば、冷風装置を、排水基礎部33や受け板31の側方や、排気溝37の下方や上方に配置して、強制的に冷風を流してもよい。
【0043】
・上記実施形態において、フィールド部20を上昇させた。この状態で、芝のメンテナンスを実行してもよい。例えば、屋根15の近傍に、芝のメンテナンスに用いる車両を走行させる機構を設けてもよいし、メンテナンス用の倉庫を設けてもよい。後者の場合には、屋根15において、フィールド部20を上昇させた位置における芝のメンテナンスに必要な資材の取り出しを容易に行なうことができる。
【0044】
・上記実施形態では、フィールド部20を、屋根15まで上昇させて固定した。フィールド部20を昇降させて固定する位置(高さ)は、これに限定されない。この場合、任意の高さまで昇降可能な昇降機構と、任意の高さでフィールド部20を固定する固定部材とを設けてもよい。例えば、下に人が入れる高さまで上昇させて固定してもよいし、フィールド部20をスタンド11の途中の高さまで上昇させて固定させてもよい。前者の場合には、フィールド部20の下部(受け板31等)のメンテナンスを効率的に行なうことができる。また、後者の場合には、フィールド部20の上で競技を行ない、フィールド部20の下でイベント等を行なってもよい。この場合には、フィールド部20の上で行なう競技を見るための観客席に至る通路と、下で行なうイベント等を見るための観客席に至る通路を分けてもよい。
【0045】
・上記実施形態では、屋根15に設けたウインチでフィールド部20を昇降した。フィールド部20を昇降する機構は、これに限られない。例えば、フィールド部20の下方にジャッキや架設用柱等を配置し、これらを昇降させてフィールド部20を昇降させてもよい。
【0046】
・上記実施形態では、フィールド部20を上下方向に移動させた。フィールド部20を移動させる方向は上下方向に限られず、水平方向に移動させてもよい。
【符号の説明】
【0047】
F1…ネットブリッジフィルタ、G1…天然芝、HTCD…ハイテクカンキョウドレーン、10…競技場、11…スタンド、15…屋根、16…屋根柱、20…フィールド部、25…支持部、25a…上弦材、30…本体部、31…受け板、32…断熱部、33…排水基礎部、33a…暗渠排水部、34…透水シート、35…人工土壌部、36…供給管、36a,41a…バルブ、37…排気溝、37a…緩衝材、38…排水溝、41…第2給水管。