(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】情報伝送装置および移動体および情報伝送方法および情報伝送プログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 27/10 20060101AFI20230720BHJP
G08C 15/00 20060101ALI20230720BHJP
H04L 27/02 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
H04L27/10 Z
G08C15/00 D
H04L27/02 Z
(21)【出願番号】P 2020000827
(22)【出願日】2020-01-07
【審査請求日】2022-06-23
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 第30条第2項適用、令和元年8月27日 一般社団法人電子情報通信学会 2019年電子情報通信学会ソサイエティ大会講演論文集がウェブサイトで公開、及び令和元年9月11日大阪大学において開催された一般社団法人電子情報通信学会 2019年電子情報通信学会ソサイエティ大会で発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 第30条第2項適用、令和元年11月28日 一般社団法人電子情報通信学会 スマート無線研究会(SR)技術研究報告がウェブサイトで公開、及び令和元年12月5日石垣市民会館において開催された一般社団法人電子情報通信学会 スマート無線研究会(SR)で発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成31年度、総務省、戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(72)【発明者】
【氏名】田久 修
(72)【発明者】
【氏名】天野 直哉
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-025354(JP,A)
【文献】国際公開第2006/022410(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/064472(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0156320(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0258830(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0025736(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/10
G08C 15/00
H04L 27/02
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車輪を有する移動体の姿勢に係る情報を送信する情報伝送装置であって、
前記車輪ごとに設けられ、位置情報を三軸座標系で測定し出力するセンサ群と、
前記センサ群の各出力のうちx軸上の位置情報およびy軸上の位置情報に係るそれぞれの出力に応じてキャリアを第1の物理量で変調するユニットと、
前記センサ群の各出力のうちz軸上の位置情報の符号に係る少なくとも1ビットの情報に応じて、前記第1の物理量で
変調を受けたキャリアのうち何れか一方を、さらに第1の物理量と異なる第2の物理量で変調するユニットと、
前記第1の物理量で変調され前記第2の物理量での変調を受けていないキャリア、ならびに前記第1の物理量および第2の物理量で変調を受けたキャリアを
、それぞれ時系列で送信するユニットと、を備えた情報伝送装置。
【請求項2】
前記移動体は自動車であり、前記センサ群は前後左右の車輪をそれぞれ保持するダンパに1個ずつ設けられていることを特徴とする請求項1に記載の情報伝送装置。
【請求項3】
前記x軸は前記移動体の前後方向の軸であり、前記y軸は前記移動体の左右方向の軸であり、前記z軸は前記移動体の底面に対して垂直方向の軸であることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の情報伝送装置。
【請求項4】
前記第1の物理量は前記キャリアの周波数であること特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の情報伝送装置。
【請求項5】
前記第2の物理量は前記キャリアの振幅であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の情報伝送装置。
【請求項6】
車体に複数の車輪が設けられた移動体であって、
前記車輪ごとに設けられ、位置情報を三軸座標系で測定し出力するセンサ群と、
前記センサ群の各出力のうちx軸上の位置情報およびy軸上の位置情報に係るそれぞれの出力に応じてキャリアを第1の物理量で変調するユニットと、
前記センサ群の各出力のうちz軸上の位置情報の符号に係る少なくとも1ビットの情報に応じて、前記第1の物理量で
変調を受けたキャリアのうち何れか一方を、さらに第1の物理量と異なる第2の物理量で変調するユニットと、
前記第1の物理量で変調され前記第2の物理量での変調を受けていないキャリア、ならびに前記第1の物理量および第2の物理量で変調を受けたキャリアを
、それぞれ時系列で送信するユニットと、を備えた移動体。
【請求項7】
前記x軸は前記車体の前後方向の軸であり、前記y軸は前記車体の左右方向の軸であり、前記z軸は前記車体の底面に対して垂直方向の軸であることを特徴とする請求項6に記載の移動体。
【請求項8】
前記第1の物理量は前記キャリアの周波数であること特徴とする請求項6または請求項7のいずれかに記載の移動体。
【請求項9】
前記第2の物理量は前記キャリアの振幅であることを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の移動体
。
【請求項10】
複数の車輪を有する移動体の姿勢に係る情報を送信する情報伝送方法であって、
前記車輪ごとに設けられ、位置情報を三軸座標系で測定し出力するセンサ群からの情報を取得するステップと、
前記センサ群の各出力のうちx軸上の位置情報およびy軸上の位置情報に係るそれぞれの出力に応じてキャリアを第1の物理量で変調するステップと、
前記センサ群の各出力のうちz軸上の位置情報の符号に係る少なくとも1ビットの情報に応じて、前記第1の物理量での変調と併せて、前記キャリアを第1の物理量と異なる第2の物理量で変調するステップと、を含む情報伝送方法。
【請求項11】
前記第1の物理量は前記キャリアの周波数であることを特徴とする請求項10に記載の情報伝送方法。
【請求項12】
前記第2の物理量は前記キャリアの振幅であることを特徴とする請求項10または請求項11のいずれかに記載の情報伝送方法。
【請求項13】
複数の車輪を有する移動体の姿勢に係る情報を送信する情報伝送プログラムであって、
前記車輪ごとに設けられ、位置情報を三軸座標系で測定し出力するセンサ群からの情報を取得するステップと、
前記センサ群の各出力のうちx軸上の位置情報およびy軸上の位置情報に係るそれぞれの出力に応じてキャリアを第1の物理量で変調するステップと、
前記センサ群の各出力のうちz軸上の位置情報の符号に係る少なくとも1ビットの情報に応じて、前記第1の物理量での変調と併せて、前記キャリアを第1の物理量と異なる第2の物理量で変調するステップと、を含む情報伝送プログラム。
【請求項14】
前記第1の物理量は前記キャリアの周波数であること特徴とする請求項13に記載の情報伝送プログラム。
【請求項15】
前記第2の物理量は前記キャリアの振幅であることを特徴とする請求項13または請求項14のいずれかに記載の情報伝送プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の移動体の姿勢に係る情報を効率的に伝送する情報伝送装置および移動体および情報伝送方法および情報伝送プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
CASE(Connected、Autonomous、Shared&Service、Electric)というキーワードに代表されるように、近年、自動車のAI化、IoT化が急速に進みつつある。特に、Connectedの分野では、車もしくは車載モバイルがセンサなどで、ドライブに関するさまざまなデータを感知し、それを人工知能が高次元で分析し、ドライバーへ有益な情報をリアルタイムで提供する、いわゆる「相互接続」が注目を集めている。例えば、車体ダンパにセンサを設置し、各々のダンパをモニタリングしつつ車体全体の姿勢を認識することで、ダンパを品質管理を実現することができる。
【0003】
車に限らず、物体の状態を認識するセンサに無線機能を取り付けることで、インターネット上でセンサ情報を記録し、状態モニタや機器制御、課金情報の収集などを行う技術が開発されており、特にセンサ情報収集用の無線通信は、無線センサネットワーク(WSN)と呼ばれている。しかし無線通信の用途が広がる一方で、無線通信資源である周波数の枯渇が問題となる。
【0004】
そこで、無線センサネットワークに特化した手法として、無線信号の周波数および位相や継続時間などを無線物理量と定義し、センサ情報を無線物理量に比例して変化させることで、一度に多数のセンサの情報を通知する方法が提案されている(特許文献1、特許文献2)。このような方法は(無線通信パラメタ変換型)一括情報収集法(PhyC-SN)と称される。この方法は、情報源が近接した場合でも情報の分離が可能であり、しかも少ないステップですべてのセンサから情報を収集することができる。例えば、前記ダンパのモニタリングの場合、外部の情報(GPS等)を使わず、コマンド通知のみでセンサ情報の一括同時集約が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-187552号公報
【文献】特開2017-046027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、将来的に膨大な数の車が無線センサネットワークに接続される可能性があり、一括情報収集法等による伝送効率の向上対策だけでは周波数の枯渇問題は解決されない。そこで、一括情報収集法等の情報伝送技術と併せて、扱う情報の特徴に応じて情報の圧縮を行う等、情報量そのものを低減する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る情報伝送装置は、複数の車輪を有する移動体の姿勢に係る情報を送信する情報伝送装置であって、前記車輪ごとに設けられ、位置情報を三軸座標系で測定し出力するセンサ群と、前記センサ群の各出力のうちx軸上の位置情報およびy軸上の位置情報に係るそれぞれの出力に応じてキャリアを第1の物理量で変調するユニットと、前記センサ群の各出力のうちz軸上の位置情報の符号に係る少なくとも1ビットの情報に応じて、前記第1の物理量で変調を受けたキャリアのうち何れか一方を、さらに第1の物理量と異なる第2の物理量で変調するユニットと、前記第1の物理量で変調され前記第2の物理量での変調を受けていないキャリア、ならびに前記第1の物理量および第2の物理量で変調を受けたキャリアを、それぞれ時系列で送信するユニットと、を備えたものである。
【0008】
前記情報伝送装置における前記移動体は自動車であり、前記センサ群は前後左右の車輪をそれぞれ保持するダンパに1個ずつ設けられていてもよい。
【0009】
前記情報伝送装置における前記x軸は前記移動体の前後方向の軸であり、前記y軸は前記移動体の左右方向の軸であり、前記z軸は前記移動体の底面に対して垂直方向の軸であってもよい。
【0010】
前記情報伝送装置における前記第1の物理量は前記キャリアの周波数であってもよい。
【0011】
前記情報伝送装置における前記第2の物理量は前記キャリアの振幅であってもよい。
【0012】
本開示の一態様に係る移動体は、車体に複数の車輪が設けられた移動体であって、前記車輪ごとに設けられ、位置情報を三軸座標系で測定し出力するセンサ群と、前記センサ群の各出力のうちx軸上の位置情報およびy軸上の位置情報に係るそれぞれの出力に応じてキャリアを第1の物理量で変調するユニットと、前記センサ群の各出力のうちz軸上の位置情報の符号に係る少なくとも1ビットの情報に応じて、前記第1の物理量で変調を受けたキャリアのうち何れか一方を、さらに第1の物理量と異なる第2の物理量で変調するユニットと、前記第1の物理量で変調され前記第2の物理量での変調を受けていないキャリア、ならびに前記第1の物理量および第2の物理量で変調を受けたキャリアを、それぞれ時系列で送信するユニットと、を備えたものである。
【0013】
前記移動体における前記x軸は前記車体の前後方向の軸であり、前記y軸は前記車体の左右方向の軸であってもよい。
【0014】
前記移動体における前記第1の物理量は前記キャリアの周波数であってもよい。
【0015】
前記移動体における前記第2の物理量は前記キャリアの振幅であってもよい。
【0016】
本開示の一態様に係る情報伝送方法は、複数の車輪を有する移動体の姿勢に係る情報を送信する情報伝送方法であって、前記車輪ごとに設けられ、位置情報を三軸座標系で測定し出力するセンサ群からの情報を取得するステップと、前記センサ群の各出力のうちx軸上の位置情報およびy軸上の位置情報に係るそれぞれの出力に応じてキャリアを第1の物理量で変調するステップと、前記センサ群の各出力のうちz軸上の位置情報の符号に係る少なくとも1ビットの情報に応じて、前記第1の物理量での変調と併せて、前記キャリアを第1の物理量と異なる第2の物理量で変調するステップと、を含む。
【0017】
前記情報伝送方法における前記第1の物理量は前記キャリアの周波数であってもよい。
【0018】
前記情報伝送方法における前記第2の物理量は前記キャリアの振幅であってもよい。
【0019】
本開示の一態様に係る情報伝送プログラムは、複数の車輪を有する移動体の姿勢に係る情報を送信する情報伝送プログラムであって、前記車輪ごとに設けられ、位置情報を三軸座標系で測定し出力するセンサ群からの情報を取得するステップと、前記センサ群の各出力のうちx軸上の位置情報およびy軸上の位置情報に係るそれぞれの出力に応じてキャリアを第1の物理量で変調するステップと、前記センサ群の各出力のうちz軸上の位置情報の符号に係る少なくとも1ビットの情報に応じて、前記第1の物理量での変調と併せて、前記キャリアを第1の物理量と異なる第2の物理量で変調するステップと、含む。
【0020】
前記情報伝送プログラムにおける前記第1の物理量は前記キャリアの周波数であってもよい。
【0021】
前記情報伝送プログラムにおける前記第2の物理量は前記キャリアの振幅であってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本開示の一態様によれば、自動車等の地上を走行する移動体の揺れまたは変位の特徴に合わせたセンサ情報の圧縮を行うことにより、一括情報収集法における伝送情報量を大幅に圧縮することができ、周波数のさらなる有効利用を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】典型的な一括情報収集法モデルの概念図である。
【
図4】本実施の形態におけるセンサの配置と検出位置情報の説明図である。
【
図5】本実施の形態のプロセッサの動作を示すフローチャートである。
【
図6】本実施の形態の送信信号のイメージ図である。
【
図8】本実施の形態の移動体の変位の特徴を示すシミュレーション図である。
【
図9】本実施の形態における基本条件を示す説明図である。
【
図10】本開示の実施例1の結果を示すグラフである。
【
図11】本開示の実施例2の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本開示の一態様に係る実施の形態(以下、本実施の形態)における情報伝送装置について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
まず、
図1に典型的な無線通信パラメタ変換型一括情報収集法(PhyC-SN)モデルを例示する。
図1において201、202、203はそれぞれ送信機能を持つセンサ(#1、#2、#3)であり、204は各センサ(201、202、203)から送信された信号をすべて受信する情報集約局である。各センサはキャリア(搬送波)の周波数f
0に対し、それぞれ観測した温度に応じた周波数だけキャリア周波数を変位させて、送信する場合を挙げる。例えば、センサ201が19℃を観測したら、19+f
0(Hz)の周波数の信号を送信し、同様にセンサ202、203はそれぞれ24+f
0(Hz)、15+f
0(Hz)の信号を送信する(
図2)。
【0026】
情報集約局204はセンサ201、202、203からの信号を同時に受信し、情報源の特定と情報の分離を実行する。上記センサの送信周波数が十分離れていれば、受信された信号の周波数スペクトルを検出することにより、19Hz、24Hz、15Hzの周波数成分をそれぞれ検出することができる。
【0027】
以下、本実施の形態について説明する。
図3は本実施の形態における情報伝送装置1のブロック図を示す。
図3において、2a、2b、2c、2dはそれぞれモーションセンサ(センサ)であり、
図4(a)に示すように自動車(移動体)の各車輪を支えるダンパ(図中円で表示、裏側は点線)に設けられ、位置情報を三軸座標系で測定し出力する。なお、任意のモーションセンサ(例えば2a)が検出する位置は、同図(c)で示されるように、車の前後方向(x軸方向)、左右方向(y軸方向)、車の底面に対して垂直方向(z軸方向)、を三軸座標系として、(A
x、A
y、A
z)で表してもよいし、x軸、y軸、z軸を中心とするオイラー角(α、β、γ)で表してもよい。
【0028】
10はプロセッサであり、
図5のフローチャートで示される処理を実行する。まず、モーションセンサ2a、2b、2c、2dが検出した位置情報(A
x、A
y、A
z)、(B
x、B
y、B
z)、(C
x、C
y、C
z)、(D
x、D
y、D
z)を受け取り(S11)、x軸とy軸方向の位置情報に係るそれぞれの出力(A
x、A
y)、(B
x、B
y)、(C
x、C
y)、(D
x、D
y)に応じて、順次キャリアを周波数変調する(S12)。ここで、それぞれのz軸座標値(A
z、B
z、C
z、D
z)については、位置情報を送らず、符号情報のみをA
y、B
y、C
y、D
yの変調信号に重畳させる。具体的には、A
y、B
y、C
y、D
yで周波数変調された信号に対し、それぞれA
z、B
z、C
z、D
zの符号に応じた振幅変調を実行させる(S13)。
【0029】
符号情報は少なくとも1ビットあればよい。例えば、モーションセンサが検出した位置情報(座標)が(Ax、Ay、Az)=(2.51、1.12、0.2)のときは「1」を、(Ax、Ay、Az)=(1.22、2.68、-1.34)のときは「0」を、符号情報とする。符号情報は1ビット以上あってもよいが、振幅変調はフェージングの影響を非常に受けやすいので、情報量はできるだけ少ない方がよく、また後述のように、α≒0とみなせる場合、符号さえ判ればz軸座標の値はx、y軸座標の値から推定できるので、符号情報は1ビットの方がむしろ好ましい。
【0030】
なお、本実施の形態においては、
図5で示されるフローチャートがプロセッサ10に組み込まれたプログラムによって実行されることを前提としているが、この形態に限定されなくともよい。例えば、各ステップ(S11~S14)の全てまたは一部をASICやFPGA等によりユニット化されたハードウェアで実現してもよい。また前記プログラムは予めプロセッサ10に組み込まれたものでなくてもよい。例えば通信回線を通して基地局またはサーバーよりアプリケーションとして随時供給されるものであってもよい。
【0031】
また、
図5においては、周波数変調(S12)の後に振幅変調(S13)を実行するとしているが、この順序に限定されなくてもよい。周波数変調と併せて振幅変調が施されていれば、反対の手順で行われてもよい。また、y軸に係る周波数変調信号の代わりにx軸に係る周波数変調信号に対して振幅変調を施してもよい。
【0032】
以上のステップで得られた変調信号は順次、送信部3に送られ(S14)、さらにアンテナ4を介して基地局に送られる。このときの送信される信号p(t)のイメージを
図6に示す。同図においてはモーションセンサ2a、2bの出力に係る信号のみを図示しており、他の信号は省略している。y軸座標に係る信号(A
y、B
y)が送信される際、z軸座標の符号に応じて振幅変調されている。
【0033】
このように、各センサ出力のうちz軸上の位置情報の符号に係る1ビットの情報に応じて周波数変調と併せて振幅変調を実施することにより、移動体の姿勢に係る情報の伝送効率を高めることができる。
図7(a)は、仮に、x軸、y軸、z軸全ての位置情報を一括情報収集法(PhyC-SN)を用いて伝送する比較例の周波数×時間リソースの状態を示す。同図においては、各センサ出力は周波数分割で、各座標軸については時分割で伝送されるとする。合計4×3=12チャネルのリソースが必要となる。一方実施の形態(同図(b))では、z軸座標の情報は符号情報のみがy軸座標の信号に重畳されるため、チャネルリソースは4×2=8で済む。すなわち、一括情報収集法をそのまま用いた場合よりも、必要とされる周波数×時間リソースを2/3に低減することができる。
【0034】
z軸座標(A
z、B
z、C
z、D
z)に係る情報を符号1ビットにまで縮減できる理由について述べる。
図8に自動車(移動体)の各モーションセンサの初期位置(a
x、a
y、a
z)、(b
x、b
y、b
z)、(c
x、c
y、c
z)、(d
x、d
y、d
z)と路面等の状況で車体がランダムに揺れたときの各モーションセンサの位置(A
x、A
y、A
z)、(B
x、B
y、B
z)、(C
x、C
y、C
z)、(D
x、D
y、D
z)をシミュレートしたグラフを示す。
【0035】
図8に示されるように、自動車等、陸上を移動する移動体の場合、揺れはx軸回りの揺れ(横揺れ)もしくはy軸回りの揺れ(縦揺れ)あるいはこれらを合成した揺れにほぼ限定される。z軸回りの揺れ(車体底面に対する垂線回りに回転する揺れ)は殆ど生じない。すなわち変位をそれぞれオイラー角(
図4(c))で表した場合、自動車等の場合、車体の変位はβとγにのみ現れ、αは常に0か非常に小さい値を示す。
【0036】
α=0またはαが無視できる程度の微小量であるとみなせる場合、x軸方向およびy軸方向の変位情報からz軸方向の変位を推定することができる。簡単な説明図を
図9に示す。同図は車体がy軸回りにβ回転したときに、z軸方向から見た車体の様子を模式的に描いたものである。同図にはz軸座標の情報は示されていないが、y軸回りに回転した結果、x軸方向に“縮んで”見える。この比率A
x/a
xが判ればy軸回りのオイラー角γ=cos
-1(A
x/a
x)が求まり、z軸方向の変位はsin(γ)と推定することができる。
【0037】
ただし、γは正負の値を取りえる。つまり、
図9において、車体の左側左回りに回転したのかそれとも右回りに回転したのかが、
図9の情報だけからはわからない。つまりz軸座標の絶対値については、x軸、y軸座標の値から推定できるものの、符号は推定できない。そこで符号については必ず伝送する必要がある。
【0038】
以下、数式を用いてより詳しく説明する。本実施の形態においてモーションセンサは4点設けられているが、以下モーションセンサ2aのみに着目する。まず、任意の時間におけるx、y、z各座標軸におけるモーションセンサ2aの出力を式(1)のようにベクトルAで表示する。また、初期位置における各座標軸の値を式(2)のように表す。
【数1】
【数2】
【0039】
すると、任意の時間における座標ベクトルAと初期座標ベクトルaは式(3)のように関係付けられる。
【数3】
ここでU、V、Wは以下(3-1)、(3-2)、(3-3)で定義付けされた行列である。
【数4】
【数5】
【数6】
なお、γ、β、αはそれぞれx軸、y軸、z軸回りのオイラー角である。
【0040】
ここで、α=0とすると、行列Wは単位行列となり、式(3)は以下のようになる。
【数7】
そこで、式(4)をx、y、それぞれの成分ごとに計算すると、以下式(5)、(6)が得られる。
【数8】
【数9】
なお、初期状態における車体底面をxy平面としたため、a
z=0とした。
【0041】
式、(5)、(6)よりγおよびβを求めると、式(7)、(8)となる。
【数10】
【数11】
【0042】
以上のように得られたγおよびβをz成分の式(9)に代入すると、z軸方向の位置Azの推定値を得ることができる。
【数12】
ここで、式(7)、(8)いずれにおいても、γとβはいずれも、正負の値を取りえる。よって、式(9)からAzを正確に推定するためにはz軸座標の符号の情報が必要となる。他のモーションセンサのz方向の位置B
z、C
z、D
zについても、それぞれの初期値b
z、c
z、d
zに対し、式(9)を適用することにより、求めることができる。
【0043】
なお、本実施の形態では、数値計算によりz軸座標の値を計算したが、実際に基地局側で式(7)~(9)を使って演算を行うとすると、伝送路でノイズが混入した場合、計算結果が大きくずれることがある。そこで、例えば、オイラー角α、β、γとxyz座標(Ax、Ay、Az)の関係を計算または実測し、予めテーブル化しておく方法がある。基地局側でx、y軸座標位置が受信されたら、テーブルの中から実測値とできるだけ近い(例えば自乗誤差最小となる)Ax、Ayの対を探し、Azを推定することができる。このときAzの符号が正のものと負のものが検索されるが、同時に送られてくる符号情報からいずれかを選択すればよい。
【実施例】
【0044】
以下、本開示の実施例について説明する。
(実施例1)
図10は、z軸方向の符号の情報が無いときに、取りえる2つのパターンの例を計算したものである。
図10において、左図はα=0、β=-20°、γ=20°のときの移動体の姿勢を示し、右図はα=0、β=20°、γ=-20°のときの移動体の姿勢を示す。これら両者をz軸に沿って真上から眺めた場合、全く同じ図形に見える。
【0045】
(実施例2)
本実施例では、任意の角度での認識精度をRMSEで評価した。シミュレーション条件は以下のとおりである。
【表1】
ここでRMSEの計算には以下の式(10)を用いた。
【数13】
nは試行回数を、x
iは基地局で認識したオイラー角ベクトル(推定値含む)を、Xはモーションセンサで検出された真値オイラー角ベクトル(α、β、γ)を表す。本実施例では、α=0°、β=20°、γ=-20°に固定している。また、X
maxは
駆動角度の最大角度を表す。
【0046】
基地局側のz軸位置情報推定手段はテーブルを用いた。予めオイラー角α、β、γとxyz座標(Ax、Ay、Az)の関係を1°刻みで取得しておき、ノイズを含むxy軸位置情報をテーブルと符号情報を考慮してマッチングさせることにより、オイラー角α、β、γおよびz軸位置情報を求めた。
【0047】
図11にシミュレーション結果を示す。グラフ横の数字はα、β、γそれぞれにおけるRMSE値である。最大角度でも高々3%程度の誤差で3次元情報が推定できていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、例えば、CASEに対応した自動車やその他の移動手段に利用可能である。また、陸上を走行するものであれば自動車に限らず、鉄道や、離発着時に滑走路上を車輪を使って移動する航空機にも利用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 情報伝送装置
2a、2b、2c、2d モーションセンサ
3 送信部
4 アンテナ
10 プロセッサ