IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティドの特許一覧 ▶ ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミシガンの特許一覧

特許7315932密度に基づくトポロジー最適化のための表面展開可能性制約
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】密度に基づくトポロジー最適化のための表面展開可能性制約
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/20 20200101AFI20230720BHJP
   G06F 30/10 20200101ALI20230720BHJP
   G06F 111/04 20200101ALN20230720BHJP
   G06F 113/24 20200101ALN20230720BHJP
【FI】
G06F30/20
G06F30/10 100
G06F111:04
G06F113:24
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021011530
(22)【出願日】2021-01-27
(65)【公開番号】P2021125257
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】16/778,082
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507342261
【氏名又は名称】トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド
(73)【特許権者】
【識別番号】507238218
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミシガン
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】チョウ ユイチン
(72)【発明者】
【氏名】野村 壮史
(72)【発明者】
【氏名】カズヒロ サイトウ
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0072014(US,A1)
【文献】国際公開第2007/044277(WO,A2)
【文献】特開2019-114265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/20
G06F 30/10
G06F 111/04
G06F 113/24
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面展開可能性制約を使用して、展開可能表面を有する構造を設計するための自動化された方法であって、
設計ドメインおよび最適化される前記設計ドメインにおける材料の特性関数を提供することと、
前記材料の節点密度を定義することと、
複数の平面の表面法線方向を決定することと、
前記表面法線方向を記述する密度勾配を決定することと、
少なくとも部分的に前記特性関数に基づく表面展開可能性制約を使用して、前記設計ドメインに対してトポロジー最適化のプロセスを実行することと、
前記トポロジー最適化の結果を使用して、幾何学的形状ドメインを前記構造に対して作成すること、
を含み、
前記特性関数は、構造コンプライアンスを最小化すること、及び、熱コンプライアンスを最小化することの少なくとも1つであり、
当該方法は、複合繊維が構造コンプライアンスを最小化するように向けられるように該複合繊維を整列させるための構造、及び、固体伝導材料体積分率の制約のもとで、最小熱コンプライアンスを最適化するための構造の少なくとも1つを提供し、
前記表面展開可能性制約は
【数1】
の式においてまとめられ、
ここで、Dは設計ドメインであり、Ωは材料ドメインであり、更に、前記表面展開可能性制約は、表面法線方向が方向ベクトルに直交するときだけ満たされる、
自動化された方法。
【請求項2】
【数2】

であってRがフィルタ半径である式において提供されるようなスカラー設計変数
正則化するためにフィルタを使用することと、
点密度ρを、
【数3】
の式において提供されるような、平滑化された
【数4】
により定義することを更に含む、請求項1に記載の自動化された方法。
【請求項3】
前記節点密度は、ゼロ(0)と1の間に拘束される、請求項2に記載の自動化された方法。
【請求項4】
数の平面Kは、方向ベクトルv(1)、v(2)、...v(K)により記述され、密度変数の表面法線方向は、
【数5】
の式において提供されるように計算される、請求項3に記載の自動化された方法。
【請求項5】
前記方向ベクトルは設計変数である、請求項4に記載の自動化された方法。
【請求項6】
前記幾何学的形状ドメインを前記構造に対して作成するステップは、少なくとも2つの幾何学的形状パターンを継ぎ合わせることを含む、請求項1に記載の自動化された方法。
【請求項7】
前記幾何学的形状ドメインを前記構造に対して作成するステップは、薄壁構造を作成するための二次元設計を生成することを含む、請求項1に記載の自動化された方法。
【請求項8】
前記特性関数は、コンプライアンスを最小化する、請求項1に記載の自動化された方法。
【請求項9】
前記特性関数は、構造コンプライアンスを最小化し、当該方法は、複合繊維が構造コンプライアンスを最小化するように向けられるように前記複合繊維を整列させるための構造を提供する、請求項1に記載の自動化された方法。
【請求項10】
前記特性関数は熱コンプライアンスを最小化し、当該方法は、固体伝導材料体積分率の制約のもとで、最小熱コンプライアンスを最適化するための構造を提供する、請求項1に記載の自動化された方法。
【請求項11】
非一時的コンピュータ可読媒体であって、実行されると、表面展開可能性制約を使用して、展開可能表面を有する構造を設計する自動化された方法を実行する命令を有しており、該命令は、
設計ドメインおよび最適化される前記設計ドメインにおける材料の特性関数を受信することと、
前記材料の節点密度を定義することと、
複数の平面の表面法線方向を決定することと、
前記表面法線方向を記述する密度勾配を決定することと、
少なくとも部分的に前記特性関数に基づく表面展開可能性制約を使用して、前記設計ドメインに対してトポロジー最適化のプロセスを実行することと、
前記トポロジー最適化の結果を使用して、幾何学的形状ドメインを前記構造に対して作成することと、を有し、
前記特性関数は、構造コンプライアンスを最小化すること、及び、熱コンプライアンスを最小化することの少なくとも1つであり、
前記方法は、複合繊維が構造コンプライアンスを最小化するように向けられるように該複合繊維を整列させるための構造、及び、固体伝導材料体積分率の制約のもとで、最小熱コンプライアンスを最適化するための構造の少なくとも1つを提供し、
前記表面展開可能性制約は
【数6】
の式においてまとめられ、
ここで、Dは設計ドメインであり、Ωは材料ドメインであり、更に、前記表面展開可能性制約は、表面法線方向が方向ベクトルに直交するときだけ満たされる、
非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項12】
【数7】

であってRがフィルタ半径である式において提供されるようなスカラー設計変数
正則化するためにフィルタを使用することと、
点密度ρを、
【数8】
の式において提供されるような、平滑化された
【数9】
により定義することの命令を更に有している、請求項11に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項13】
前記節点密度は、ゼロ(0)と1の間に拘束される、請求項12に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項14】
数の平面Kは、方向ベクトルv(1)、v(2)、...v(K)により記述され、密度変数の表面法線方向は、
【数10】
の式において提供されるように計算される、請求項13に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項15】
前記方向ベクトルは設計変数である、請求項14に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項16】
前記幾何学的形状ドメインを前記構造に対して作成することの命令は、少なくとも2つの幾何学的形状パターンを継ぎ合わせるための命令を有している、請求項11に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項17】
前記幾何学的形状ドメインを前記構造に対して作成することの命令は、薄壁構造を作成するための二次元設計を生成するための命令を有している、請求項11に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全体的には、展開可能表面を有する対象物に関し、特に、展開可能表面を有する対象物を設計するために使用される、密度に基づくトポロジー最適化方法およびアルゴリズムを提供することに関する。
【背景技術】
【0002】
ここにおいて提供される背景技術の記述は、全体的に開示の状況を提示する目的のためである。現在名前が挙げられている発明者の研究は、この背景技術のセクションにおいて記述できる範囲で、および、出願時において先行技術であると認めることができない記述の態様は、本技術に対する先行技術であるとは明示的にも黙示的にも認められない。
【0003】
展開可能構造は、伸縮および破断のない、平面シートのみから製造できる境界表面を有する空間対象物である。展開可能構造の展開可能表面は、平坦な表面、円筒、円錐、および接表面のパッチ(patches)を含むことができる。表面が、同じ平面上に位置しているその表面法線方向を有しているとき、それは展開可能表面である。表面が、少ない有限数の平面上に位置しているその表面法線方向を有しているとき、それは、区分的展開可能表面である。
【0004】
展開可能構造の最先端の開発は、所与の幾何学的形状(geometry)の自動変換、またはユーザ主導の手動設計の何れかに焦点を絞ってきていた。所与の幾何学的形状の展開可能部分への自動変換では、技術は一般的には、パラメトリック(スプライン)または非パラメトリック(メッシュ)入力幾何学的形状に焦点を絞ってきた。しかし、これらの自動変換技術は、最初に入力幾何学的形状を必要とするので、それらは、既に完成している設計の後処理に対して主に有用であり、設計探究または設計作成に対しては有用でない。ユーザ主導の相互設計は速度を向上し、ユーザ指定の境界から表面を補間することによりリアルタイム変換を可能にする。しかし、設計プロセスは、人間の設計者による手動介入を必要とする。
【0005】
従って、目標仕様および必要条件に基づく固体体積構造(solid volumetric structures)の設計の、向上された、より自動化が進んだ制御を提供することは望ましいことである。
【発明の概要】
【0006】
このセクションでは、開示の全体的な概要を提供し、それは、その範囲全体またはその特徴のすべてを網羅している開示ではない。
【0007】
種々の態様においては、本教示は、表面展開可能性制約を使用して、展開可能表面を有する構造を設計するための方法を提供する。自動化された方法およびアルゴリズムは、設計ドメインおよび、最適化される設計ドメインにおける材料の特性関数を提供することを含むことができる。方法は、材料の節点密度を定義することと、複数の平面の表面法線方向を決定することを含んでいる。そして、表面法線方向を記述する密度勾配が決定される。方法は、少なくとも部分的に特性関数に基づく表面展開可能性制約を使用して、設計ドメインに対してトポロジー最適化プロセスを実行することを含んでいる。そして、トポロジー最適化の結果を使用して、幾何学的形状ドメインが構造に対して作成される。
【0008】
他の態様においては、本教示は、実行されると、表面展開可能性制約を使用して、展開可能表面を有する構造を設計するための自動化された方法を実行する命令を含んでいる非一時的コンピュータ可読媒体を提供する。命令は、設計ドメインおよび最適化される設計ドメインにおける材料の特性関数を受信することを含んでいる。材料の節点密度が定義され、命令は、複数の平面の表面法線方向を決定することを含んでいる。表面法線方向を記述する密度勾配が決定される。命令は、少なくとも部分的には特性関数に基づく表面展開可能性制約を使用して、設計ドメインに対してトポロジー最適化プロセスを実行することを含んでいる。そして、トポロジー最適化の結果を使用して、幾何学的形状ドメインが構造に対して作成される。
【0009】
更に他の態様においては、本教示は、固体体積構造、薄壁構造、および、ここにおいて開示される方法に従って製造される種々の製品を提供する。
【0010】
適用可能性の更なる領域および上記の技術を向上する種々の方法は、ここにおいて提供される記述から明白になるであろう。この発明の概要における記述および特定の例は、例示のためのみの目的であることが意図されており、本開示の範囲を制限することは意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本教示は、詳細な記述と付随する図面からより完全に理解されるようになるであろう。
図1】本技術の種々の態様を説明するために提供される、一般的な形状で提示される例としてのトポロジー最適化問題である。
図2】表面展開可能性制約を使用して、展開可能表面を有する構造を設計するためのプロセスを示している例としてのフローチャートである。
図3】線形弾性システムに対する、例としての設計ドメインおよび境界条件設定例である。
図4A-4D】本技術の表面展開可能性制約のない従来のトポロジー最適化を使用する最適化された構造を例示している。
図5A-5D】表面展開可能性制約および規定の方向ベクトルを使用する、図4A図4Dの向上した最適化された構造を例示している。
図6A-6B】平坦化シミュレーションツールを使用して2Dパターンに展開された3Dパッチを例示している。
図7】三次元構造に形成できる、例としての2D平坦化パターンを示している。
図8A-8F】本技術に係る、最適化され、且つ印刷された固体体積部分の表面上に形成された2Dパターンを示している一連の例示を提供している。
図9A-9D】図4A図4Dの、別の向上した最適化された構造を例示している。
図10】熱システム例に対する、例としての設計ドメインおよび境界条件設定例である。
図11A-11G】展開可能性制約のない従来のトポロジー最適化を使用する、図10の熱システム例に対する最適化されたベンチマーク設計を例示している。
図12A-12D】展開可能性制約を使用する、向上した最適化された設計を例示している。
図13A-13D】熱設計例に対する、別の向上した最適化された構造を例示している。
【0012】
ここにおいて記述される図面は、ある態様の記述の目的のために、本技術の特性の中で、方法、アルゴリズム、および機器の一般的な特性を例示することが意図されているということに留意すべきである。これらの図面は、任意の所与の態様の特性を正確に反映していないこともあり得、特定の実施形態を、この技術の範囲内に定義または制限することは必ずしも意図されていない。更に、ある態様は、図面の組み合わせからの特徴を組み入れることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本技術は全体的には、薄壁または固体体積構造の自動化設計を得るための数学的フレームワークとして使用される、表面展開可能性制約を有する、密度に基づくトポロジー最適化方法およびアルゴリズムを提供する。この点に関して、本技術は、展開可能表面を有する薄壁または固体体積構造の自由形式の幾何学的形状設計を展開するために構成されている。種々の態様においては、設計は、実装必要条件、設計仕様などを含む、種々の予め定義されている性能目標に基づくことができる。
【0014】
種々の態様においては、本教示は、表面展開可能性制約を使用して、展開可能表面を有する構造を設計するための方法を提供する。表面展開可能性制約は、表面の区分的展開可能性に対する、つまり、表面法線方向が、少ない有限数の平面上に位置しているということに対する十分条件の発見に基づいて展開される。自動化された方法およびアルゴリズムは、設計ドメインおよび最適化される設計ドメインにおける材料の特性関数を提供することを含むことができる。方法は、材料の節点密度を定義すること、および複数の平面の表面法線方向を決定することを含んでいる。そして、表面法線方向を記述する密度勾配が決定される。方法は、少なくとも部分的には特性関数に基づく表面展開可能性制約を使用して、設計ドメインに対してトポロジー最適化プロセスを実行することを含んでいる。そして、トポロジー最適化の結果を使用して、幾何学的形状ドメインが構造に対して作成される。本教示はまた、実行されると、表面展開可能性制約を使用して、展開可能表面を有する構造を設計するための自動化された方法を実行する命令を含んでいる非一時的コンピュータ可読媒体も提供する。
【0015】
この技術においては一般的に知られているように、展開可能構造は、アーキテクチャおよび工学設計に対してますます重要になってきており、種々の薄壁構造の設計における支援において特に重要である。例えば、設計者およびエンジニアは、シートメタル(板金)を、車両の外部、翼のような航空機構成要素、および船体のような輸送船構成要素に対する展開可能構造として使用できる。繊維は、衣類および靴類に対する展開可能構造として使用できる。同様に、紙は折り紙および紙飛行機アートに対する展開可能構造として使用され、ボール紙は包装に使用される、といった具合である。展開可能構造はまた、3D印刷などのような、付加製造法技術を使用しても製作できる。
【0016】
他の態様においては、展開可能構造はまた、側面フライス加工技術を使用するような、加工により製造される固体体積構造に対しても重要である。更に、展開可能表面を有する固体体積構造は、コンピュータ支援設計(CAD)、コンピュータアニメーションと設計、および種々の他のエンタテーメントの目的と、工学に関しての関連性がある。一般的に、ガウス曲率がすべての点において消失する如何なる表面も、平面領域を曲げることにより構築できる。これらは、数学者には展開可能表面(数学用語では、「可展面」)として知られている。シートメタル、繊維、および紙は、上記のように、近似的に非伸縮性であり、伸縮または破断なしに、平面ドメイン上に平坦化できる。そのような表面上に描いた任意の曲線の長さは同じままで留まり、展開可能表面の面積もまたは同じで留まるべきである。
【0017】
この技術においては知られているように、トポロジー最適化は、特定の設計空間内の材料のレイアウトを最適化する数学的方法であり、特定のシステムの性能を最大化するために、負荷、境界条件、および制約の特別な、予め定義されているセットに基づくことができる。本技術では、トポロジー最適化は全体的には、規定の設計ドメイン内に材料を最適に分布させることにより、固体体積構造を、コンピュータを使用して設計するための方法である。この最適化は、構造の所与の初期設計空間内の最適材料分布を予測するための設計プロセスの初期および早い段階において有用である。種々の態様においては、機能仕様および製造制約は、トポロジー最適化のための考慮すべき事柄および境界条件として使用できる。パラメトリック幾何学的形状表現に基づくサイズおよび形状最適化とは異なり、トポロジー最適化は、幾何学的形状を非パラメトリックに記述する。これは、任意の形状の探究を通して、革新的な設計を促進する。
【0018】
一般的に、従来のトポロジー最適化技術により生成された体積固体表面は、展開可能ではない。そのため、探究空間を、展開可能表面を有する幾何学的形状に焦点を絞り、それに制限するために、本技術の方法は、表面展開可能性に対して少なくとも1つの制約を導入する。種々の態様においては、この制約は具体的には、表面法線方向は、規定された有限数の平面上に位置しているべきであるという特徴を強要できる。この制約が一般的には、展開可能表面を有する固体のサブセットの探究を可能にする一方、それは、ガウス曲率に基づくより一般的な制約と比較して計算の面において効率的であるので、トポロジー最適化との使用を非常に適切なものにしている。
【0019】
その非パラメトリック幾何学的形状表現のため、トポロジー最適化は、究極の形状探究設計の自由さを提供できる。設計において役割を果たし、その特定の例が下記において提供される古典力学問題および熱転送問題に加えて、本技術のトポロジー最適化法はまた、種々の機能仕様、特性関数、および、各設計に対して適合させる必要のある製造制約を有する設計の他の多様な適用にも適用できる。この技術が有用である非制限的技術には、乱流問題、電磁設計、固有または複雑アーキテクチャ特徴、およびマイクロシステムの設計および作成が含まれる。
【0020】
種々の態様においては、本技術は、密度に基づくSIMP(Solid Isotropic Material Penalization)法のフレームワーク上に幅広く確立できる。種々の態様においては、SIMP法は、1つ以上の所与の負荷の場合、境界条件、製造制約、性能必要条件などに対して、所与の設計空間内に提供される材料の最適分布を予測するために使用できる。
【0021】
本技術のより良好な理解のために、最初は図1を参照する。図1は、非常に一般的な形状におけるトポロジー最適化問題を提供している。例えば、全体を参照番号20で示されている規定の設計ドメインDには、空隙領域であり、材料のない第1領域22、材料を含む第2領域24、および、設計点26が提供される。1つの例においては、Γdに対する変位境界条件と、Γnに対する牽引境界条件を有する力学モデルに対する所与の境界条件のもとでは、問題は、構造剛性などのような性能目標を最適化することであるといえる。これは、各設計点における材料の存在、例えば、重量制限などのようなある物理的平衡および追加的制約の影響を受ける材料の存在を指定することで達成できる。
【0022】
本技術で有用な密度に基づくSIMPフレームワークにおいては、材料の存在は、相対密度ρにより表わされる。相対密度ρは、ゼロ(0)と1の範囲で与えられ、ゼロ(0)の値は空隙を示し、1の値は固体材料の存在を示す。相対密度ρは、効率的な勾配に基づく最適化に対して要求できる連続変数であるが、ρがゼロ(0)または1である略分離最終設計を、ペナルティスキームを通して強制することができ、中間密度は、対応する物理システムに基づいて、材料の非効率的な使用法に対してペナルティが与えられる。管理している物理学は、しばしば有限要素法で解かれ、勾配に基づく最適化の反復は、隣接感度解析により導くことができる。
【0023】
上記のように、展開可能表面は、平坦表面、円筒、円錐、および接平面の多数のパッチから構成できる。これらすべてのパッチは、ガウス曲率は、任意の点においてゼロ(0)に等しいという同じ特質を共有している。従って、ゼロのガウス曲率は、表面展開可能性に対する必要十分条件である。ある点における表面のガウス曲率Kは、式(1)において提供されるように、主要曲率k1とk2の積である。
【数1】
陰表面Sに対しては、ガウス曲率はまた、式(2)に提供されるように計算できる。
【数2】
ここにおいて、▽Sは勾配であり、H*(S)はヘッセの随伴行列である。密度に基づくトポロジー最適化に対しては、密度空間勾配は計算できて、式(2)に組み込むことができるが、結果としての数値的複雑さは、感度駆動の勾配に基づく最適化においての使用を妨げる可能性がある。直接的なガウス曲率計算と関連付けられている数値的複雑さに対処するために、本技術は、表面法線(つまり、▽S)のみに基づく、表面展開可能性に対する、代替としての、より簡単な基準を提案する。
【0024】
表面が、同じ平面上に位置しているその表面法線方向を有するときは、それは展開可能表面パッチである。更に、表面が、少ない有限数の平面上に位置しているその表面法線方向を有しているとき、それは、区分的展開可能表面である。従って、少ない有限数の平面上の表面法線方向は、区分的展開可能性に対する十分条件である。ここにおいて提案される条件は、法線方向が同じ平面に位置している平坦表面および円筒をカバーする。しかし、円錐および接平面の場合は、それらの法線方向が同じ平面上に位置していないので、提案される条件ではカバーされない。従って、提案される条件は、一般的な区分的展開可能性(つまり、局所的ゼロガウス曲率)に対する必要条件ではない。展開可能表面の大部分が平坦または円筒表面のみから構成されているので、本技術は、上記の条件を、トポロジー最適化との使用に対する制約を構築するために使用する。円錐および接平面を含む、展開可能性の全探究空間を潜在的にカバーできるより一般的な条件は、将来の技術において考察されるかもしれない。しかし、より広くカバーすることは、制約計算に対する、増大した数値的複雑さという結果になり得るということが予測される。
【0025】
再び図1を参照すると、設計ドメインDにおいては、式(3)において一般的に提供されるように最適化される材料ドメインΩdを記述するために特性関数χを定義でき、
【数3】
ここにおいて、xはドメインDにおける設計点を表わし、χ(x)は、スカラー関数φとヘヴィサイド関数Hにより、関係(4)の条件が下記のように満たされるように定義される。
【数4】
ソリューションおよびメッシュ非依存特質の存在を確実にするために、ヘルムホルツPDEフィルタを、スカラー設計変数φを、式(5)において提供されるように正則化するために使用でき、
【数5】
ここにおいてRはフィルタ半径である。そして、密度ρを、式(6)において提供されるように、追加的な平滑化された
【数6】
により定義できる。
【数7】
φからφ~そしてρへの一連の正則化の後、結果としての密度ρは、ゼロ(0)と1の間に拘束される。
【0026】
展開可能性制約に関して、所与の平面は、方向ベクトルv(1)、v(2)、...v(K)により記述でき、密度変数の表面法線方向は、式(7)において提供されるように計算できる。
【数8】
表面法線方向は、直接ρに基づいて評価される必要はなく、より良好な数値的安定性のためにφ~に適用できるということが分かる。最終的に、展開可能性制約は、式(8)において下記のようにまとめることができる。
【数9】
上記の展開可能性制約は、表面法線方向(存在するときはいつでも)が、方向ベクトルの1つに直交している場合のみ満たされるということは理解されるべきである。表面法線方向が存在しないときは(つまり、表面上でない、または空隙領域にある)、▽φ~はゼロ(0)に等しく、展開可能性制約には貢献しない。従って、式(8)における展開可能性制約は、上記に検討したように、区分的展開可能性に対する提案された十分条件を評価することと等価である。
【0027】
種々の態様においては、本技術は、規定の方向ベクトルを有する最適化されたモデルとして、または、可変方向ベクトルを有する最適化されたモデルとして適用可能である。規定の方向ベクトルを有する最適化モデル、および、規定の方向ベクトルv(1)、v(2)、...v(K)としての所与のKを提供するために、全体の最適化モデルは、制約のセットに影響され得る、性能目標F(φ)を最小化するようにまとめることができ、式群(9)のようにまとめて提供される。
【数10】
【0028】
性能目標Fは、対応する物理システムに依存する。力学および熱システムに対する例としての物理システムは、下記により詳細に検討される。特に、
【数11】
は、利用可能材料の量に制限を与え、
【数12】
が材料体積に対する上界となる。
【数13】
は展開可能性制約である。定数Kは、規定の数の方向ベクトルであり、
【数14】
は微小値である。
【0029】
可変方向ベクトルを有する最適化モデルに関して、上記に提示した最適化モデルの緩和として方向ベクトルv(k)を、設計変数として考えることができる。展開可能性制約に対して有利である、v(k)=(0、0、0)への収束を回避するために、||v(k)||≧1の追加的制約を各方向ベクトルに対して導入できる。そして、結果としての最適化モデルは、制約のセットの影響を受け得る性能目標F(φ;v(1)、v(2)、...v(K))を最小化するようにまとめることができ、式群(10)のようにまとめて提供される。
【数15】
【0030】
【数16】
は本来、より小さな||v(K)||の方が有利なので、制約g3 (K)は、最適化の最後においては、それが1以上に収束することを確実にする。
【0031】
図2は、表面展開可能性制約を使用して、展開可能表面を有する構造を設計するための上記のプロセス100を示す例としてのフローチャートである。示されているように、自動化された方法およびアルゴリズムは、設計ドメインおよび最適化される設計ドメインにおける材料の特性関数を提供することを、方法ステップ110に示されているように含むことができる。方法ステップ120は、材料の節点密度を定義することを含んでおり、これに、方法ステップ130に示されている、複数の平面の表面法線方向を決定することが続く。そして、表面法線方向を記述する密度勾配が、方法ステップ140に示されているように決定される。方法ステップ150を参照すると、本技術は、少なくとも部分的には特性関数に基づく表面展開可能性制約を使用して、設計ドメインに対してトポロジー最適化プロセスを行うことを含んでいる。そして、方法ステップ160に示されているように、トポロジー最適化の結果を使用して、幾何学的形状ドメインが構造に対して作成される。
【0032】
設計例
本技術は、力学システム設計例および熱システム設計例のような設計例を使用して、更に説明できる。下記に提示される例では、式群(9)と(10)における最適化モデルは、移動漸近線の方法(MMA)を使用して解くことができる。物理平衡式は、両者ともCOMSOL Multiphysicsを使用する、有限要素法、および、標準随伴行列法による感度解析により解くことができる。許容体積分率に対する上界は、両方の例に対して35%として設定される。密度設計変数は、
【数17】
がアクティブとなるように一様に初期化される。これらの例に対しては、最適化は、目的関数における変化が十分に小さくなると、または、規定回数の反復に到達すると終了する。
【0033】
力学設計例
第1例は、その境界条件および設計ドメインが図3に示されている、線形弾性システムの設計に関する。参照番号40で示されている規定の設計ドメインに対する例としての寸法は、1.0×1.0×0.5である。図3において矢印で示されているように、単位力が、参照番号42で示されている底部表面の中心領域に加えられ、この中心領域には、0.1×0.1の相対寸法が与えられている。参照番号44で示されている4つのエッジ領域には0.1×0.1の相対寸法が与えられ、領域44は、すべての自由度において固定されているという境界条件を有している。この力学設計システムは、35%の固体弾性材料体積分率の制約のもとで、最小構造コンプライアンスに対して最適化される。
【0034】
この例に対しては、目的関数Fは、構造コンプライアンス(構造剛性の逆数として与えられる)であり、F=fTuとして定義され、ここにおいてfは外力であり、uは変位である。変位uは、まとめて式群(11)
【数18】
として与えられる線形弾性平衡式を解くことにより得ることができ、ここにおいて、σ=C・εは応力場であり、Cは弾性テンソルであり、εはひずみ場である。ドメインΓdは、ゼロの規定変位により定義されるディリクレ境界であり、Γnは、法線nおよび規定力fにより定義されるノイマン境界である。弾性テンソルCは、その密度との関係が、式(12)において与えられている古典SIMP補間により定義される有効弾性テンソルであり、
【数19】
ここにおいてC0は固体材料に対する全弾性テンソルであり、Pは、SIMPべき法則に対するペナルティパラメータである。
【0035】
この例に対するベンチマークとして、展開可能性制約のない従来のトポロジー最適化を使用する最適化された設計が、図4A~4Dにおいて提示されている。図4Aは、最適化された設計の構造46の側部透視図であり、上部48、下部50、および複数の延伸かつ屈曲している脚部52を有している、本体と称されるものを有して示されている。図4Bは上部平面図であり、図4Cは底部平面図であり、図4Dは側部平面図である。結果としての構造コンプライアンス目標は1.0(正規化されている)である。最適化の間は固定される2つの方向ベクトルv(1)=(1,0,0)とv(2)=(0,1,0)を規定して、式(9)を解くことにより、最適化された設計が図5A~5Dに示され、ここでは、本技術の展開可能性制約が適用されている。図5Aは、最適化された設計の構造54の側部透視図であり、上部56、下部58、および複数の延伸している脚部60を有している、本体と称されるものを有して示されている。図5Bは上部平面図であり、図5Cは底部平面図であり、図5Dは側部平面図である。その正規化された構造コンプライアンス目標は1.04であり、つまり、展開可能性制約を適用しない、図4A~4Dのベンチマーク設計と比較して、4%の性能低下である。展開可能性制約の有効性を評価すると、図5A~5Dの構造は、表面法線方向は、規定された方向ベクトルの少なくとも1つに直交するということを立証している。
【0036】
図5A~5Dを見れば分かるように、結果としての最適化された構造設計は、区分的展開可能表面を有している。例えば、本体56、58および脚部60の種々の部分は、伸縮なしで2Dパターンに平坦化できる表面を有している。最適化された密度変数をCOMSOL Multiphysicsから直接取ると、表面再構成は、まず市場で入手可能なコンピュータ支援設計(CAD)ツールを使用して作成できる。その後、任意の必要な裁断により、パッチ62は、平坦化シミュレーションツールにより2Dパターンに展開でき、例えば、図6Aおよび6Bに示されているようになる。最終的に、結果としての全体の平坦化および合成された2Dパターン64は図7において提示されており、三次元構造に形成するために使用できる例としての2D平坦化パターンにおける種々の折り畳み線を例示している。
【0037】
更に例を示すために、図8A~8Dは、本技術に係る最適化された固体体積構造の表面上に形成されている平坦化2Dパターンを示している一連の例示を提供する。この例においては、図7の平坦化2Dパターン64が紙の上に印刷されて切断されている。図5A~5Dにおける最適化された設計は、3D印刷技術を使用して、固体体積構造68として製造できる。一連の例示において示されているように、2Dパターン64は、図8Eと8Fに示されているように、伸縮、しわ、および破断なく、固体体積構造68の表面に固定できる(つまり、テープで張り付ける、または糊で張り付けることができる)。特に、類似の平坦化2Dパターン64は、伸縮、しわ、および破断なく、図4A~4Dにおいて提供される構造の表面にテープで張り付けることはできない。
【0038】
代替としての最適化された構造70が図9A~9Dに提示されている。図9Aは、代替としての最適化された設計の構造の側部透視図であり、図9Bは上部平面図であり、図9Cは底部平面図であり、図9Dは側部平面図である。代替としての最適化された構造70には、方向ベクトルの異なるセットv(1)=(√2/2,√2/2,0)とv(2)=(√2/2,-√2/2,0)が設けられており、それらは規定され、最適化を通して固定されている。その結果としての最適化された構造コンプライアンス目標は1.06(正規化されている)である。全体形状が、図4A~4Dおおび図5A~5Dの以前の2つの設計の全体形状とは大きく異なっていることが分かる。性能低下は、ベンチマーク設計と比較して相対的に小さいので(<10%)、可変方向ベクトルのケースをこの力学例においては行われない。
【0039】
熱設計例
この第2例は、線形熱伝導システムの設計に関し、その境界条件と初期設計ドメイン設定は図10に提供されている。参照番号72で示されている、規定されている設計ドメインに対する例としての寸法は1.0×1.0×0.5である。この特別な例では、ゼロ度が、参照番号74により示されている底部表面の中心領域に適用され、相対寸法0.3×0.3が与えられている。表面の残りの部分は、絶縁されて設けられている。設計ドメイン72全体は一様に加熱される。システムは、35%固体伝導材料体積分率の制約のもとで、最小熱コンプライアンスに対して最適化される。
【0040】
この例に対しては、目的関数Fは熱コンプライアンス(定常状態平均温度に比例)であり、F=QTtとして定義され、ここでQは熱流束源であり、定常状態平均温度tは、まとめて式群(13)として提供される下記の線形熱伝導平衡式
【数20】
により解かれ、ここにおいて、▽tは温度勾配であり、kは熱伝導係数である。ドメインΓdは、ゼロ規定温度で定義されるディリクレ境界であり、Γnは、絶縁(例えば、断熱)として定義されるノイマン境界である。熱伝導係数kは、式(14)
【数21】
におけるように定義される有効熱伝導係数であり、ここにおいて、k0は、固体伝導材料に対する全熱伝導係数であり、Pは、SIMPべき法則に類似するペナルティパラメータである。
【0041】
ベンチマークとして、展開可能性制約のない従来のトポロジー最適化を使用する最適化された設計が図11A~11Dに提示されている。図11Aは、最適化された設計の構造76の側部透視図であり、図11Bは、上部平面図であり、図11Cは、底部平面図であり、図11Dは、側部平面図である。最適化されたヒートシンク上の定常状態温度分布tもまた図11Eおよび11Fに提供されており、影を付けた領域78は、より低い温度を示している。例えば、図11Eは上部平面図であり、図11Fは、底部平面図であり、図11Gは、側部平面図である。結果としての熱コンプライアンス目標は1.0(正規化されている)である。
【0042】
3つの方向ベクトルv(1)=(1,0,0)、v(2)=(0,1,0)、およびv(3)=(0,0,1)を規定し、式(9)を解くことにより、展開可能性制約のある最適化されたヒートシンク設計が図12A~12Dにおいて提示され、ベクトルは最適化を通して固定されている。図12Aは、最適化された設計の構造80の側部透視図であり、図12Bは上部平面図であり、図12Cは底部平面図であり、図12Dは側部平面図である。その熱コンプライアンス目標は、1.19(正規化されている)であり、つまり、本技術の展開可能性制約を適用しない、ベンチマークヒートシンク設計と比較して、19%の性能低下である。
【0043】
目標性能を更に向上するために、式(10)における最適化モデルを、4つのランダムに初期化された方向ベクトルで解くことができる。最適化された設計は、図13A~13Dに提示されている。図13Aは、最適化された設計の構造82の側部透視図であり、図13Bは上部平面図であり、図13Cは底部平面図であり、図13Dは側部平面図である。その熱コンプライアンス目標は1.13(正規化されている)に向上されている。それは、依然として、展開可能性制約なしのベンチマークよりも劣っているが、規定された方向ベクトルに基づいて最適化された設計から大幅に向上されている。収束した方向ベクトルはv(1)=(-0.34,-0.91,0.23)、v(2)=(0.67,0.51,0.64)、v(3)=(0.39,-0.77,-0.51)、およびv(4)=(0.79,-0.21,0.57)である。決定論的勾配に基づく最適化の性質のため、最適化された設計は、方向ベクトルの初期化に依存するということが分かる。この点に関して、マルチスタート法を、より良好な局所解を得るために推奨できる。
【0044】
全体的に見て、本技術は、表面法線方向が、少ない有限数の平面上に位置していることを、表面の区分的展開可能性に対する十分条件として提案する。この特徴に基づいて、表面展開可能性制約を構築して、密度に基づくトポロジー最適化フレームワークに統合できる。提案されている基準は、表面展開可能性に対する必要条件ではない(つまり、円錐および接平面はカバーされていない)が、展開可能表面を有する構造に対する自動設計探究を提供する。異なる物理システム(力学および熱システム)に対する2つの設計例は、提案されている方法の有効性を証明している。展開可能性制約のないベンチマークトポロジー最適化結果と比較すると、本技術に係る新しい設計は、表面の区分的展開可能性を保証するが、一方で、何らかの性能目標をある程度犠牲にしている。方向ベクトル最適化法を採用することにより、性能目標は、規定された方向ベクトルによる設計に対して向上できる。
【0045】
本技術に関する更なる考察は、3つの別個の主題として認めることができる。第1に、提案された展開可能性基準は、表面展開可能性に対して、円錐および接平面を除いて十分条件である。勾配に基づくトポロジー最適化内における使用のための計算の容易さを保ちながら、より多くを含む基準を、必要十分でなくても提供することは依然として課題として残り得る。第2に、提案された方法に起因する上記に言及した構造は、依然として、二次元における接続されたパターンに展開可能とするために追加的切断を要求する可能性がある。例えば、切断のない単一体の展開を確実にするためには、追加的な不足角を最適化の間に考慮する必要がある。第3に、現在の最適化された設計は、展開可能表面を有する固体体積構造である。側面フライス加工に対するそれらの工学的関連性を上記に検討したが、提案された方法を、薄壁構造に対するトポロジー最適化内に統合すれば、より多くの適用を見出すことができる。
【0046】
前記の記述は、例示および記述の目的のために提供されており、開示、その適用、または使用法を制限することは決して意図されていない。それは、すべてを網羅しているということは意図されておらずまた、開示を制限することも意図されていない。特別な実施形態の個々の要素または特徴は、一般的にはその特別な実施形態に制限されず、適用可能であれば、特に示され、または記述されていなくても、交換可能であり、選択された実施形態において使用可能である。同じことはまた、多くの方法で変更できる。そのような変形例は、開示からの逸脱とは見なされるべきではなく、そのような修正例のすべては、開示の範囲内に含まれるということが意図されている。
【0047】
ここにおいて使用されているように、A、B,およびCの少なくとも1つというフレーズは、非排他的論理「和」を使用して、(AまたはBまたはC)という論理和を意味していると解釈されるべきである。方法における種々のステップは、本開示の理念を変えることなく異なる順序で実行できるということは理解されるべきである。範囲の開示は、端点を含むすべての範囲および全範囲内の細分化された範囲の開示を含む。
【0048】
ここにおいて使用されている見出し(「背景技術」および「発明の概要」などのような)および小見出しは、本開示内の主題の一般的な構成のみが意図されており、技術またはその何れの態様の開示も制限することは意図されていない。特徴を記述した多数の実施形態の詳述は、追加的特徴を有する他の実施形態、または、記述された特徴の異なる組み合わせを取り入れている他の実施形態を除くことは意図されていない。
【0049】
ここにおいて使用されているように、「備えている」および「含んでいる」およびそれらの変形の用語は,非制限的であることが意図されており、連続する項目またはリストの詳述は、この技術の機器および方法においても有用であり得る他の類似する項目を除外するものではない。同様に、「可能」および「できる」およびその変形の用語は、非制限的であることが意図されており、実施形態がある要素または特徴を備えることが可能またはできるという詳述は、それらの要素または特徴を含んでいない本技術の他の実施形態を除外するものではない。
【0050】
本開示の概略の教示は、種々の形状で実現できる。従って、この開示は特別な例を含んでいるが、他の修正例が、明細書および下記の請求項を研究することにより当業者には明確になるので、開示の真の範囲はそのように制限されるべきではない。ここにおける1つの態様または種々の態様への言及は、実施形態または特別なシステムと関連して記述される特別な特徴、構造、または特性は、少なくとも1つの実施形態または態様に含まれるということを意味している。「1つの態様において」(またはその変形)というフレーズの出現は、必ずしも同じ態様または実施形態に言及しているとは限らない。ここにおいて検討された種々の方法ステップは、記述されている順序と同じ順序で実行する必要はなく、各方法ステップは、各態様または実施形態において要求されるわけではない。
【0051】
上記のシステム、構成要素、および/またはプロセスは、ハードウェアまたはハードウェアとソフトウェアとの組み合わせにおいて実現でき、1つの処理システムにおける集中型で実現でき、または、異なる要素が、幾つかの相互接続されている処理システムにわたり拡散されている分散型で実現できる。ここにおいて記述されている方法を実行するように適合されている処理システムまたは他の装置の如何なる種類も適切である。ハードウェアとソフトウェアの典型的な組み合わせは、ロードされて実行されると、処理システムが、ここにおいて記述される方法を実行するように処理システムを制御するコンピュータ使用可能プログラムコードを有する処理システムであることができる。システム、構成要素、および/またはプロセスはまた、コンピュータプログラム製品または他のデータプログラム格納機器などのような、マシンにより可読で、ここにおいて記述されている方法およびプロセスを実行するためにマシンにより実行可能な命令のプログラムを実体的に含んでいるコンピュータ可読格納装置に埋め込むことができる。これらの要素はまた、ここにおいて記述されている方法の実現を可能にするすべての特徴を備え、処理システムにおいてロードされると、これらの方法を実行できるアプリケーション製品に埋め込むこともできる。
【0052】
更に、ここにおいて記述されている配置は、そこに含まれている、例えば、そこに格納されているコンピュータ可読プログラムコードを有している1つ以上のコンピュータ可読媒体に含まれているコンピュータプログラム製品の形状を取ることができる。1つ以上のコンピュータ可読媒体の如何なる組合せも利用できる。コンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読信号媒体またはコンピュータ可読格納媒体であってよい。「コンピュータ可読格納媒体」といフレーズは、非一時的格納媒体を意味する。コンピュータ可読格納媒体は、例えば、下記に制限されないが、電子、磁気、光、電磁気、赤外線、または、半導体システム、装置、または機器、または、それらの任意の適切な組み合わせであってよい。コンピュータ可読格納媒体の、より具体的な例(すべてを網羅しているリストではない)としては、下記の、携帯型コンピュータディスケット、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能型プログラマブルリードオンリメモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、携帯型コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多目的ディスク(DVD)、光格納機器、磁気格納機器、または、それらの任意の適切な組み合わせが挙げられる。この文献の状況においては、コンピュータ可読格納媒体は、命令実行システム、装置、または機器による、またはそれらと連携しての使用のためのプログラムを含む、または格納できる任意の実体的な媒体であることができる。
【0053】
コンピュータ可読媒体上に含まれるプログラムコードは、下記に制限されないが、無線、ワイヤ線、光ファイバー、ケーブル、RFなど、または、それらの任意の適切な組み合わせを含む、任意の適切な媒体を使用して送信できる。本配置の態様のための動作を実行するためのコンピュータプログラムコードは、Java(登録商標)TM、Smalltalk、C++などのようなオブジェクト指向プログラミング言語、および、「C」プログラミング言語または類似のプログラミング言語のような、従来の手続き型プログラミング言語を含む1つ以上のプログラミング言語の任意の組み合わせにおいて記述できる。プログラムコードは、スタンドアロンソフトウェアパッケージとして、ユーザのコンピュータ上で全部を実行でき、または、ユーザのコンピュータ上で一部を実行でき、または、ユーザのコンピュータ上で一部、そしてリモートコンピュータ上で一部、または、リモートコンピュータまたはサーバ上で全部を実行できる。後者のシナリオにおいては、リモートコンピュータは、ローカルエリアネットワーク(LAN)またはワイドエリアネットワーク(WAN)を含む任意のタイプのネットワークを通してユーザのコンピュータに接続でき、または、外部コンピュータへの接続を行うことができる(例えば、インタ―ネットサービスプロバイダを使用するインターネットを通して)。
本明細書に開示される発明は以下の態様を含む。
〔態様1〕
表面展開可能性制約を使用して、展開可能表面を有する構造を設計するための自動化された方法であって、
設計ドメインおよび最適化される前記設計ドメインにおける材料の特性関数を提供することと、
前記材料の節点密度を定義することと、
複数の平面の表面法線方向を決定することと、
前記表面法線方向を記述する密度勾配を決定することと、
少なくとも部分的に前記特性関数に基づく表面展開可能性制約を使用して、前記設計ドメインに対してトポロジー最適化のプロセスを実行することと、
前記トポロジー最適化の結果を使用して、幾何学的形状ドメインを前記構造に対して作成すること、
を含む、自動化された方法。
〔態様2〕
〔数1〕
であってRがフィルタ半径である式において提供されるようなスカラー設計変数φを正則化するためにフィルタを使用することと、
前記節点密度ρを、
〔数2〕
の式において提供されるような、平滑化された
〔数3〕
により定義することを更に含む、態様1に記載の自動化された方法。
〔態様3〕
前記節点密度は、ゼロ(0)と1の間に拘束される、態様2に記載の自動化された方法。
〔態様4〕
前記複数の平面Kは、方向ベクトルv (1) 、v (2) 、...v (K) により記述され、密度変数の表面法線方向は、
〔数4〕
の式において提供されるように計算される、態様3に記載の自動化された方法。
〔態様5〕
前記表面展開可能性制約は
〔数5〕
の式においてまとめられ、
更に、前記表面展開可能性制約は、表面法線方向が方向ベクトルに直交するときだけ満たされる、態様4に記載の自動化された方法。
〔態様6〕
前記方向ベクトルは設計変数である、態様5に記載の自動化された方法
〔態様7〕
前記幾何学的形状ドメインを前記構造に対して作成するステップは、少なくとも2つの幾何学的形状パターンを継ぎ合わせることを含む、態様1に記載の自動化された方法。
〔態様8〕
前記幾何学的形状ドメインを前記構造に対して作成するステップは、薄壁構造を作成するための二次元設計を生成することを含む、態様1に記載の自動化された方法。
〔態様9〕
前記特性関数は、コンプライアンスを最小化する、態様1に記載の自動化された方法。
〔態様10〕
前記特性関数は、構造コンプライアンスを最小化し、当該方法は、複合繊維を、構造コンプライアンスを最小化するように向くように前記繊維を整列させるための構造を提供する、態様1に記載の自動化された方法。
〔態様11〕
前記特性関数は熱コンプライアンスを最小化し、当該方法は、固体伝導材料体積分率の制約のもとで、最小熱コンプライアンスを最適化するための構造を提供する、態様1に記載の自動化された方法。
〔態様12〕
態様1に記載の方法に従って製造された展開可能表面を有する、固体体積構造
〔態様13〕
非一時的コンピュータ可読媒体であって、実行されると、表面展開可能性制約を使用して、展開可能表面を有する構造を設計する自動化された方法を実行する命令を有しており、該命令は、
設計ドメインおよび最適化される前記設計ドメインにおける材料の特性関数を受信することと、
前記材料の節点密度を定義することと、
複数の平面の表面法線方向を決定することと
前記表面法線方向を記述する密度勾配を決定することと、
少なくとも部分的に前記特性関数に基づく表面展開可能性制約を使用して、前記設計ドメインに対してトポロジー最適化のプロセスを実行することと、
前記トポロジー最適化の結果を使用して、幾何学的形状ドメインを前記構造に対して作成すること、を有している、非一時的コンピュータ可読媒体。
〔態様14〕
〔数6〕
であってRがフィルタ半径である式において提供されるようなスカラー設計変数φを正則化するためにフィルタを使用することと、
前記節点密度ρを、
〔数7〕
の式において提供されるような、平滑化された
〔数8〕
により定義することの命令を更に有している、態様12の非一時的コンピュータ可読媒体。
〔態様15〕
前記節点密度は、ゼロ(0)と1の間に拘束される、態様14の非一時的コンピュータ可読媒体。
〔態様16〕
前記複数の平面Kは、方向ベクトルv (1) 、v (2) 、...v (K) により記述され、密度変数の表面法線方向は、
〔数9〕
の式において提供されるように計算される、態様15の非一時的コンピュータ可読媒体。
〔態様17〕
前記表面展開可能性制約は、
〔数10〕
の式においてまとめられ、
更に、前記表面展開可能性制約は、表面法線方向が方向ベクトルに直交するときだけ満たされる、態様16の非一時的コンピュータ可読媒体。
〔態様18〕
前記方向ベクトルは設計変数である、態様17の非一時的コンピュータ可読媒体
〔態様19〕
前記幾何学的形状ドメインを前記構造に対して作成することの命令は、少なくとも2つの幾何学的形状パターンを継ぎ合わせるための命令を有している、態様13の非一時的コンピュータ可読媒体。
〔態様20〕
前記幾何学的形状ドメインを前記構造に対して作成することの命令は、薄壁構造を作成するための二次元設計を生成するための命令を有している、態様13の非一時的コンピュータ可読媒体。
図1
図2
図3
図4A-4D】
図5A-5D】
図6A-6B】
図7
図8A-8F】
図9A-9D】
図10
図11A-11G】
図12A-12D】
図13A-13D】