IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社共和電業の特許一覧 ▶ アイシン・エィ・ダブリュ工業株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社ヒカリの特許一覧

特許7315936変位量計測方法、変位量計測装置、変位量計測システム、および、変位量計測プログラム
<>
  • 特許-変位量計測方法、変位量計測装置、変位量計測システム、および、変位量計測プログラム 図1
  • 特許-変位量計測方法、変位量計測装置、変位量計測システム、および、変位量計測プログラム 図2
  • 特許-変位量計測方法、変位量計測装置、変位量計測システム、および、変位量計測プログラム 図3
  • 特許-変位量計測方法、変位量計測装置、変位量計測システム、および、変位量計測プログラム 図4
  • 特許-変位量計測方法、変位量計測装置、変位量計測システム、および、変位量計測プログラム 図5
  • 特許-変位量計測方法、変位量計測装置、変位量計測システム、および、変位量計測プログラム 図6
  • 特許-変位量計測方法、変位量計測装置、変位量計測システム、および、変位量計測プログラム 図7
  • 特許-変位量計測方法、変位量計測装置、変位量計測システム、および、変位量計測プログラム 図8
  • 特許-変位量計測方法、変位量計測装置、変位量計測システム、および、変位量計測プログラム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】変位量計測方法、変位量計測装置、変位量計測システム、および、変位量計測プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/16 20060101AFI20230720BHJP
【FI】
G01B11/16 H
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022057011
(22)【出願日】2022-03-30
(65)【公開番号】P2022161852
(43)【公開日】2022-10-21
【審査請求日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】P 2021066233
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000142067
【氏名又は名称】株式会社共和電業
(73)【特許権者】
【識別番号】594079143
【氏名又は名称】株式会社アイシン福井
(73)【特許権者】
【識別番号】591038299
【氏名又は名称】株式会社ヒカリ
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100176337
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】前田 芳巳
(72)【発明者】
【氏名】竹尾 崇
(72)【発明者】
【氏名】浅井 大介
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-152498(JP,A)
【文献】特開2015-141151(JP,A)
【文献】特開2014-130084(JP,A)
【文献】特開2017-142185(JP,A)
【文献】特開2015-021870(JP,A)
【文献】特許第4831703(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象物に設置された2次元格子パターンを撮影した2次元画像を用いて前記計測対象物の表面の面内方向の変位量を計測する変位量計測方法であって、
前記計測対象物に設置された前記2次元格子パターンを撮像装置によって2次元画像として撮影する撮影処理と、
前記撮像装置によって撮影した前記2次元画像から前記2次元格子パターンを含む領域を解析領域として抽出する解析領域抽出処理と、
前記解析領域から複数のサブ領域を設定するサブ領域設定処理と、
設定した前記複数のサブ領域のいずれか一つのサブ領域に関する2次元画像を用いて、前記複数のサブ領域毎の面内方向の変位量を算出する第1変位量算出処理と、
算出した前記複数のサブ領域の面内方向の変位量に基づいて、前記計測対象物に設置された前記2次元格子パターンの変位軸の傾きまたは角度変化量を算出する格子位置算出処理と、
前記2次元格子パターンの変位軸の傾きまたは角度変化量に基づいて、前記2次元格子パターンの面内方向の変位量を補正することにより、前記計測対象物の面内方向の変位量を算出する第2変位量算出処理と、
を含む、変位量計測方法。
【請求項2】
前記複数のサブ領域は、同じ面積である
請求項1に記載の変位量計測方法。
【請求項3】
前記第2変位量算出処理では、前記計測対象物以外に設置される基準格子パターンの変位軸の傾きまたは角度変化量に基づいて、前記計測対象物に設置される前記2次元格子パターンの変位軸の傾きまたは角度変化量を補正する
請求項1または2に記載の変位量計測方法。
【請求項4】
前記第2変位量算出処理では、前記基準格子パターンの面内方向の変位量に基づいて、前記2次元格子パターンの面内方向の変位量を補正する
請求項3に記載の変位量計測方法。
【請求項5】
前記第2変位量算出処理では、前記解析領域の中心と、前記計測対象物の任意の点との距離に基づいて、前記2次元格子パターンの面内方向の変位量を補正する
請求項1~4のいずれか一項に記載の変位量計測方法。
【請求項6】
前記サブ領域設定処理では、3つ以上のサブ領域を設定し、
前記格子位置算出処理では、前記複数のサブ領域における前記2次元格子パターンの変位軸の傾きまたは角度変化量の平均値を算出し、
前記第2変位量算出処理では、前記複数のサブ領域における前記2次元格子パターンの変位軸の傾きまたは角度変化量の平均値に基づいて、前記2次元格子パターンの面内方向の変位量を補正する
請求項1~5のいずれか一項に記載の変位量計測方法。
【請求項7】
計測対象物に設置された2次元格子パターンを撮影した画像を用いて前記計測対象物の表面の面内方向の変位量を計測する変位量計測装置であって、
撮像装置によって撮影した前記2次元画像から前記2次元格子パターンを含む領域を解析領域として抽出する解析領域抽出部と、
前記解析領域から複数のサブ領域を設定するサブ領域設定部と、
設定した前記複数のサブ領域のいずれか一つのサブ領域に関する2次元画像を用いて、前記複数のサブ領域毎の面内方向の変位量を算出する第1変位量算出部と、
算出した前記複数のサブ領域の面内方向の変位量に基づいて、前記計測対象物に設置された前記2次元格子パターンの変位軸の傾きまたは角度変化量を算出する格子位置算出部と、
前記2次元格子パターンの変位軸の傾きまたは角度変化量に基づいて、前記2次元格子パターンの面内方向の変位量を補正することにより、前記計測対象物の面内方向の変位量を算出する第2変位量算出部と、
を含む、変位量計測装置。
【請求項8】
請求項7に記載の変位量計測装置と、
前記撮像装置と、を含む
変位量計測システム。
【請求項9】
計測対象物に設置された2次元格子パターンを撮影した2次元画像を用いて前記計測対象物の表面の面内方向の変位量を計測する変位量計測プログラムであって、
撮像装置によって撮影した前記2次元画像から前記2次元格子パターンを含む領域を解析領域として抽出する解析領域抽出処理と、
前記解析領域から複数のサブ領域を設定するサブ領域設定処理と、
設定した前記複数のサブ領域のいずれか一つのサブ領域に関する2次元画像を用いて、前記複数のサブ領域毎の面内方向の変位量を算出する第1変位量算出処理と、
算出した前記複数のサブ領域の面内方向の変位量に基づいて前記計測対象物に設置された前記2次元格子パターンの変位軸の傾きまたは角度変化量を算出する格子位置算出処理と、
前記2次元格子パターンの変位軸の傾きまたは角度変化量に基づいて、前記2次元格子パターンの面内方向の変位量を補正することにより、前記計測対象物の面内方向の変位量を算出する第2変位量算出処理と、をコンピュータに実行させる
変位量計測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変位量計測方法、変位量計測装置、変位量計測システム、および、変位量計測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁および鉄塔等の計測対象物の点検作業では、例えば、計測対象物の面内方向の変位量が計測される。特許文献1は、計測対象物の面内方向の変位量計測方法の一例を開示している。特許文献1に開示される変位量計測方法では、計測対象物に設置された2次元格子パターンを撮影した2次元画像を用いて計測対象物の表面の面内方向の変位量を計測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4831703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記変位量計測方法では、例えば、計測対象物の軸に対して、計測対象物に設置された2次元格子パターンの軸の角度がずれている場合、計測対象物に設置された2次元格子パターンがY方向に変位すると、2次元格子パターンは、実際には、X方向に変位していないにも関わらず、計測対象物の軸との角度差分だけ、X方向に変位したように計測される。同様に、計測対象物に設置された2次元格子パターンがX方向に変位すると、2次元格子パターンは、実際には、Y方向に変位していないにも関わらず、計測対象物の軸との角度差分だけ、Y方向に変位したように計測される。このため、計測対象物の面内方向の変位量の計測の精度が低い。
【0005】
本発明は、計測対象物の面内方向の変位量を精度よく計測できる変位量計測方法、変位量計測装置、変位量計測システム、および、変位量計測プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係る変位量計測方法は、計測対象物に設置された2次元格子パターンを撮影した2次元画像を用いて前記計測対象物の表面の面内方向の変位量を計測する変位量計測方法であって、前記計測対象物に設置された前記2次元格子パターンを撮像装置によって2次元画像として撮影する撮影処理と、前記撮像装置によって撮影した前記2次元画像から前記2次元格子パターンを含む領域を解析領域として抽出する解析領域抽出処理と、前記解析領域から複数のサブ領域を設定するサブ領域設定処理と、設定した前記複数のサブ領域のいずれか一つのサブ領域に関する2次元画像を用いて、前記複数のサブ領域における面内方向の変位量を算出する第1変位量算出処理と、算出した前記複数のサブ領域の面内方向の変位量に基づいて、前記計測対象物に設置された前記2次元格子パターンの変位軸の傾きまたは角度変化量を算出する格子位置算出処理と、前記2次元格子パターンの変位軸の傾きまたは角度変化量に基づいて、前記2次元格子パターンの面内方向の変位量を補正することにより、前記計測対象物の面内方向の変位量を算出する第2変位量算出処理と、を含む。
【0007】
上記変位量計測方法では、2次元格子パターンの変位軸の傾きまたは角度変化量に基づいて、計測対象物面内方向の変位量を補正するため、計測対象物の軸に対して2次元格子パターンの軸の角度がずれている場合であっても、計測対象物の面内方向の変位量を精度よく計測できる。
【0008】
本発明の第2観点に係る変位量計測方法は、第1観点に係る変位量計測方法であって、前記複数のサブ領域は、同じ面積である。
【0009】
上記変位量計測方法では、第1変位量算出処理を効率的に実施できる。
【0010】
本発明の第3観点に係る変位量計測方法は、第1観点または第2観点に係る変位量計測方法であって、前記第2変位量算出処理では、前記計測対象物以外に設置される基準格子パターンの変位軸の傾きまたは角度変化量に基づいて、前記計測対象物に設置される前記2次元格子パターンの変位軸の傾きまたは角度変化量を補正する。
【0011】
上記変位量計測方法では、第2変位量算出処理において、計測対象物に設置される2次元格子パターンの変位軸の傾きまたは角度変化量が補正されるため、計測対象物の面内方向の変位量を精度よく計測できる。
【0012】
本発明の第4観点に係る変位量計測方法は、第3観点に係る変位量計測方法であって、前記第2変位量算出処理では、前記基準格子パターンの面内方向の変位量に基づいて、前記2次元格子パターンの面内方向の変位量を補正する。
【0013】
上記変位量計測方法では、第2変位量算出処理において、基準格子パターンの面内方向の変位量に基づいて、2次元格子パターンの面内方向の変位量が補正されるため、計測対象物の面内方向の変位量を精度よく計測できる。
【0014】
本発明の第5観点に係る変位量計測方法は、第1観点~第4観点のいずれか1つに係る変位量計測方法であって、前記第2変位量算出処理では、前記解析領域の中心と、前記計測対象物の任意の点との距離に基づいて、前記2次元格子パターンの面内方向の変位量を補正する。
【0015】
上記変位量計測方法では、計測対象物の任意の点に基づいて、計測対象物の面内方向の変位量を精度よく計測できる。
【0016】
本発明の第6観点に係る変位量計測方法は、第1観点から第5観点のいずれか1つに係る変位量計測方法であって、前記サブ領域設定処理では、3つ以上のサブ領域を設定し、前記格子位置算出処理では、前記複数のサブ領域における前記2次元格子パターンの変位軸の傾きまたは角度変化量の平均値を算出し、前記第2変位量算出処理では、前記複数のサブ領域における前記2次元格子パターンの変位軸の傾きまたは角度変化量の平均値に基づいて、前記2次元格子パターンの面内方向の変位量を補正する。
【0017】
上記変位量計測方法では、サブ領域が多く設定されるため、格子位置算出処理において、2次元格子パターンの変位軸の傾きまたは角度変化量をより精度よく算出できる。
【0018】
本発明の第7観点に係る変位量計測装置は、計測対象物に設置された2次元格子パターンを撮影した画像を用いて前記計測対象物の表面の面内方向の変位量を計測する変位量計測装置であって、撮像装置によって撮影した前記2次元画像から前記2次元格子パターンを含む領域を解析領域として抽出する解析領域抽出部と、前記解析領域から複数のサブ領域を設定するサブ領域設定部と、設定した前記複数のサブ領域のいずれか一つのサブ領域に関する2次元画像を用いて、前記複数のサブ領域における面内方向の変位量を算出する第1変位量算出部と、算出した前記複数のサブ領域の面内方向の変位量に基づいて、前記計測対象物に設置された前記2次元格子パターンの変位軸の傾きまたは角度変化量を算出する格子位置算出部と、前記2次元格子パターンの変位軸の傾きまたは角度変化量に基づいて、前記2次元格子パターンの面内方向の変位量を補正することにより、前記計測対象物の面内方向の変位量を算出する第2変位量算出部と、を含む。
【0019】
上記変位量計測装置によれば、第1観点に係る変位量計測方法と同様の効果が得られる。
【0020】
本発明の第8観点に係る変位量計測システムは、第7観点に係る変位量計測装置と、前記撮像装置と、を含む。
【0021】
上記変位量計測システムによれば、第1観点に係る変位量計測方法と同様の効果が得られる。
【0022】
本発明の第7観点に係る変位量計測プログラムは、計測対象物に設置された2次元格子パターンを撮影した2次元画像を用いて前記計測対象物の表面の面内方向の変位量を計測する変位量計測プログラムであって、撮像装置によって撮影した前記2次元画像から前記2次元格子パターンを含む領域を解析領域として抽出する解析領域抽出処理と、前記解析領域から複数のサブ領域を設定するサブ領域設定処理と、設定した前記複数のサブ領域のいずれか一つのサブ領域に関する2次元画像を用いて、前記複数のサブ領域における面内方向の変位量を算出する第1変位量算出処理と、算出した前記複数のサブ領域の面内方向の変位量に基づいて前記計測対象物に設置された前記2次元格子パターンの変位軸の傾きまたは角度変化量を算出する格子位置算出処理と、前記2次元格子パターンの変位軸の傾きまたは角度変化量に基づいて、前記2次元格子パターンの面内方向の変位量を補正することにより、前記計測対象物の面内方向の変位量を算出する第2変位量算出処理と、をコンピュータに実行させる。
【0023】
上記変位量計測プログラムによれば、第1観点に係る変位量計測方法と同様の効果が得られる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に関する変位量計測方法、変位量計測装置、変位量計測システム、および、変位量計測プログラムによれば、計測対象物の面内方向の変位量を精度よく計測できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第1実施形態の変位量計測システムの概略構成図。
図2】2次元格子パターンが設置された鍛造プレス機の正面図。
図3】計測対象物の軸と計測対象物に設置された2次元格子パターンの軸とのずれを説明する図。
図4図1の制御装置に構築される機能ブロックに関する図。
図5】解析領域抽出処理に関する図。
図6】サブ領域設定処理に関する図。
図7】面内変位量算出処理の処理手順の一例を示すフローチャート。
図8】変位量計測システムの試験結果に関する図。
図9】第2実施形態の変位量計測システムを説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る変位量計測装置、および、これを備える変位量計測システムについて説明する。
【0027】
[第1実施形態]
<1.変位量計測システムの全体構成>
図1は、変位量計測システム10(以下では、「システム10」という)の概略構成図である。システム10は、計測対象物100(図2参照)に設置された2次元格子パターン200を撮影した2次画像(以下では、「2次元格子画像」という)を用いて、計測対象物100の面内方向の変位量を計測するシステムである。システム10によれば、計測対象物100の点検作業を短時間で実施できる。計測対象物100は、例えば、鍛造プレス機の上型、射出成型機の可動型、または、インフラ構造物である。インフラ構造物は、例えば、高架道路、橋梁、鉄橋、または、トンネルである。本実施形態の変位量計測システム10は、鍛造プレス機の上型、および、射出成型機の可動型のような、所定の長さのストロークで動作する計測対象物100の点検作業に用いられる。図2に示される例では、計測対象物100は、鍛造プレス機500の上型420である。変位量計測システム10は、変位量計測装置20と、撮像装置30と、を含む。
【0028】
<2.変位量計測システムのハード構成>
変位量計測装置20は、本体21、入力装置22、および、出力装置23を有する。本体21は、記憶装置21Aおよび制御装置21Bを有する。記憶装置21Aおよび制御装置21Bは、バス24を介して通信できるように接続される。記憶装置21Aは、例えば、ハードディスクまたはソリッドステートドライブである。記憶装置21Aは、計測対象物100の面内方向の変位量の算出に関する1または複数のアプリケーションソフトウェア(以下では、「面内変位量算出ソフト」という)を記憶する。
【0029】
制御装置21Bは、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を含み、後述する機能を実行する。制御装置21Bは、入力装置22からの要求に応じて記憶装置21Aに記憶されている面内変位量算出ソフトを実行する。制御装置21Bが面内変位量算出ソフトを実行することによって、変位量計測装置20には、後述する1または複数の機能ブロックが構築される。
【0030】
入力装置22は、例えばキーボードであり、本体21と接続される。出力装置23は、例えば、液晶ディスプレイであり、本体21から出力された信号を受信できるように、本体21と接続される。なお、本体21、入力装置22、および、出力装置23は、ノート型パーソナルコンピュータのように、一体的に構成されてもよい。
【0031】
撮像装置30は、2次元格子画像を撮影する撮影処理を実行できるように構成される。本実施形態では、撮像装置30は、カメラである。本実施形態では、撮像装置30は、変位量計測装置20と無線通信または有線通信できるように接続される。撮像装置30が撮影した2次元格子画像は、変位量計測装置20に送信され、例えば、記憶装置21Aに記憶される。
【0032】
<3.2次元格子パターン>
図2に示されるように、計測対象物100を含む鍛造プレス機500には、1または複数の2次元格子パターン200が設置される。本実施形態では、例えば、2つの2次元格子パターン200が鍛造プレス機500に設置される。以下では、2つの2次元格子パターン200を区別するため、2つの2次元格子パターン200のうちの一方を2次元格子パターン210と称し、他方を2次元格子パターン220と称する場合がある。2次元格子パターン210は、鍛造プレス機500の下型410に設置される。2次元格子パターン220は、計測対象物100である上型420に設置される。上型420は、鉛直軸方向に沿って下型410に接近および離間するように所定のストロークで動作する。2次元格子パターン200の具体的な構成は、任意に選択可能である。本実施形態では、2次元格子パターン200は、下型410および上型420に貼り付けられるように構成されるシール部材に印刷される。2次元格子パターン200は、下型410および上型420に直接描かれてもよい。
【0033】
計測対象物100を短時間で点検する観点から、2次元格子パターン200の具体的な構成に関わらず、2次元格子パターン200を計測対象物100に対して傾くことなくなく設置することは極めて困難である。このため、図3に示されるように、計測対象物100の軸XAと、計測対象物100に設置された2次元格子パターン200の軸XBとが、所定角度θXずれることがある。このような状況で、図3の矢印で示されるように、2次元格子パターン200がY方向に変位すると、2次元格子パターン200は、実際には、X方向に変位していないにも関わらず、角度θX分だけ、X方向に変位したように計測されるおそれがある。同様に、計測対象物100に設置された2次元格子パターン200がX方向に変位すると、2次元格子パターン200は、実際には、Y方向に変位していないにも関わらず、角度θX分だけ、Y方向に変位したように計測されるおそれがある。
【0034】
本願発明者は、計測対象物100がインフラ構造物のような静止している物体の場合よりも、鍛造プレス機500の上型420、および、射出成型機の可動型のような、所定の長さのストロークで動作する物体の場合の方が、所定角度θXのずれに起因する上記課題が一層顕著に表れることを見出した。本実施形態のシステム10は、計測対象物100の軸XAに対して、2次元格子パターン200の軸XBの角度が所定角度θXずれている場合であっても、計測対象物100の面内方向の変位量を精度よく計測できるように構成される。
【0035】
<4.変位量計測システムのソフト構成>
図4に示されるように、制御装置21Bが記憶装置21A(図1参照)に記憶されている面内変位量算出ソフトを実行することによって構成される機能ブロックは、例えば、解析領域抽出部41、サブ領域設定部42、第1変位量算出部43、格子位置算出部44、および、第2変位量算出部45を含む。変位量計測装置20にこれらの機能ブロックが構築されることによって、計測対象物100の面内方向の変位量を算出する面内変位量算出処理が実行される。以下では、各機能ブロックの詳細について説明する。なお、本実施形態では、計測対象物100の面内方向の変位量の算出の精度を高めるために、計測対象物100以外の物体である下型410に設置される2次元格子パターン210(以下では、「基準格子パターン」という場合がある)の変位軸の傾きに基づいて、計測対象物100に設置される2次元格子パターン220の変位軸の傾きを補正する。このため、以下の各機能ブロックによって実行される各処理は、2次元格子パターン210および2次元格子パターン220のそれぞれについて実行される。
【0036】
<4-1.解析領域抽出部>
解析領域抽出部41は、2次元格子画像300(図5参照)から2次元格子パターン200を含む領域を解析領域50として抽出する解析領域抽出処理を実行する。解析領域50は、2次元格子画像300のうちの2次元格子パターン200が写っている領域の全体であってもよく、一部であってもよい。本実施形態では、解析領域抽出部41は、解析領域抽出処理において、2次元格子画像300のうちの2次元格子パターン200が写っている領域の一部を解析領域50として抽出する。解析領域50の形状は、任意に選択可能である。本実施形態では、解析領域50の形状は、正方形である。解析領域50の形状は、長方形、ひし形、三角形、五角形以上の多角形、円、または、楕円であってもよい。
【0037】
<4-2.サブ領域設定部>
サブ領域設定部42は、解析領域50を分割することによって複数のサブ領域60を設定するサブ領域設定処理を実行する。サブ領域設定処理において設定されるサブ領域60の数は、2以上であれば任意に選択可能である。本実施形態では、サブ領域設定部42は、サブ領域設定処理において、2つのサブ領域60を設定する。以下では、2つのサブ領域を第1サブ領域61および第2サブ領域62と称する場合がある。複数のサブ領域60の形状は、任意に選択可能である。本実施形態では、複数のサブ領域60の形状は、長方形である。複数のサブ領域60の形状は、正方形、ひし形、三角形、五角形以上の多角形、円、または、楕円であってもよい。なお、複数のサブ領域60の設定は、ユーザによって実行されてもよい。複数のサブ領域60の設定がユーザによって実行される場合、サブ領域設定部42は、複数のサブ領域60の形状および面積が一致するように、ユーザによって設定されたサブ領域60の形状を補正することが好ましい。なお、サブ領域60は、1画素単位で設定されてもよい。
【0038】
<4-3.第1変位量算出部>
第1変位量算出部43は、サブ領域設定部42によって設定された複数のサブ領域60のいずれか一つのサブ領域60に関する2次元画像を用いて、複数のサブ領域60における面内方向の変位量を算出する第1変位量算出処理を実行する。本実施形態では、第1変位量算出部43は、第1変位量算出処理において、複数のサブ領域61、62のうちの第1サブ領域61に関する2次元画像を用いて、複数のサブ領域61、62の面内方向の変位量を算出する。
【0039】
第1変位量算出部43は、第1変位量算出処理において、第1サブ領域61に関する2次元画像を用いて、第1サブ領域61におけるX方向の変位量dAx、第1サブ領域61におけるY方向の変位量dAy、第2サブ領域62におけるX方向の変位量dBx、および、第2サブ領域62におけるY方向の変位量dByを算出する。本実施形態では、サブ領域設定部42によって2つのサブ領域、換言すれば、第1サブ領域61および第2サブ領域62が設定されるため、第1サブ領域61は、基準のサブ領域となる。このため、第1サブ領域61におけるX方向の変位量dAx、および、第1サブ領域61におけるY方向の変位量dAyは、0である。なお、変位量dAx、dAy、dBx、dByの算出は、例えば、特許文献1に記載の公知の方法を用いて実施できる。
【0040】
<4-4.格子位置算出部>
格子位置算出部44は、第1変位量算出部43によって算出された複数のサブ領域61、62の面内方向の変位量dAx、dAy、dBx、dByに基づいて、計測対象物100に設置された2次元格子パターン200の変位軸の傾きを算出する格子位置算出処理を実行する。
【0041】
格子位置算出部44は、格子位置算出処理において、2次元格子パターン200の傾きtanθを以下の式(1)または(2)に基づいて算出する。
tanθ=(dBy-dAy)/(dBx-dAx)・・・(1)
tanθ=(dBx-dAx)/(dBy-dAy)・・・(2)
【0042】
本実施形態では、サブ領域設定部42は、解析領域50をX軸の方向に分割することによって複数のサブ領域60を設定する。このため、格子位置算出部44は、格子位置算出処理において、2次元格子パターン200の傾きtanθを式(1)に基づいて算出する。サブ領域設定部42が解析領域50をY軸の方向に分割することによって複数のサブ領域60を設定する場合、格子位置算出部44は、格子位置算出処理において、2次元格子パターン200の傾きtanθを式(2)に基づいて算出する。格子位置算出部44は、格子位置算出処理において、式(1)および(2)よって算出される傾きの平均値を2次元格子パターン200の傾きtanθとしてもよい。以下では、基準格子パターンである2次元格子パターン210の傾きを傾きtanθAと称し、2次元格子パターン220の傾きを傾きtanθBと称する。
【0043】
<4-5.第2変位量算出部>
第2変位量算出部45は、2次元格子パターン200の変位軸の傾きに基づいて、計測対象物100の面内方向の変位量Dx、Dyを補正する第2変位量算出処理を実行する。第2変位量算出部45は、第2変位量算出処理において、以下の式(3)、(4)に示されるように、基準格子パターンである2次元格子パターン210の変位軸の傾きに基づいて、2次元格子パターン220の変位軸の傾きを補正することによって、計測対象物100の補正後の面内方向の変位量HDx、HDyを算出する。さらに、第2変位量算出部45は、第2変位量算出処理において、計測された2次元格子パターン210の面内方向の変位量ADx、ADyに基づいて、計測された2次元格子パターン220の面内方向の変位量Dx、Dyを補正することによって、計測対象物100の補正後の面内方向の変位量HDx、HDyを算出する。このため、撮像装置30が振動等した場合であっても変位量HDx、HDyを精度よく算出できる。
HDx=Dx+[Dy・(tanθB-tanθA)]-ADx・・・(3)
HDy=Dy+[Dx・(tanθB-tanθA)]-ADy・・・(4)
【0044】
図7を参照して、面内変位量算出処理の処理手順の一例について説明する。
制御装置21Bは、例えば、記憶装置21Aに任意の2次元格子画像300が保存され、かつ、ユーザからの要求があった場合に面内変位量算出処理を開始する。
【0045】
ステップS11では、制御装置21Bは、解析領域抽出ステップを実行する。ステップS11が終了すると、2次元格子画像300から解析領域50が抽出される。
【0046】
ステップS12では、制御装置21Bは、サブ領域設定ステップを実行する。ステップS12が終了すると、解析領域50にサブ領域61、62が設定される。
【0047】
ステップS13では、制御装置21Bは、第1変位量算出ステップを実行する。ステップS13が終了すると、変位量dAx、dAy、dBx、dByが算出される。
【0048】
ステップS14では、制御装置21Bは、格子位置算出処理を実行する。ステップS14が終了すると、基準格子パターンである2次元格子パターン210の傾きtanθA、および、2次元格子パターン220の傾きtanθBが算出される。
【0049】
ステップS15では、制御装置21Bは、第2変位量算出処理を実行する。ステップS15が終了すると、計測対象物100の補正後の面内方向の変位量HDx、HDyが算出される。
【0050】
<5.第1実施形態の効果>
以上のように構成されたシステム10によれば、次の効果を得ることができる。
2次元格子パターン220の変位軸の傾きに基づいて、計測対象物100の面内方向の変位量Dx、Dyを補正するため、計測対象物100の軸に対して、2次元格子パターン220の軸の角度がずれている場合であっても、計測対象物100の面内方向の変位量を精度よく計測できる。
【0051】
また、システム10によれば、計測対象物100に対する2次元格子パターン220の設置角度のずれをキャンセルして、計測対象物100の面内方向の変位量を算出できる。このため、例えば、実際は、計測対象物100が面内方向において、X方向またはY方向に変位しているにも関わらず、計測対象物100に対する2次元格子パターン220の設置角度のずれによって計測対象物100のX方向またはY方向の変位がキャンセルされて、計測対象物100のX方向またはY方向の変位が計測されない、といった事態が生じにくい。
【0052】
<6.本実施形態の変位量計測システムの計測結果>
図8を参照して、変位量計測システム10による計測対象物100の面内方向の変位量の計測結果について説明する。計測対象物100は、鍛造プレス機500の上型420である。基準格子パターンである2次元格子パターン210は、鍛造プレス機500の下型410に設置される。2次元格子パターン220は、鍛造プレス機500の上型420に設置される。2次元格子パターン220の軸は、計測対象物100の軸に対して、所定角度ずれた状態で設置される。上型420は、下型410に対して接近するように、30mm移動する。撮像装置30は、鍛造プレス機500の正面に設置される。撮像装置30と鍛造プレス機500との距離は、1mである。撮像装置30のフレームレートは、100fpsである。2次元格子パターン200の格子のピッチは、5mmである。解析領域50の画像サイズは、128×128ピクセルである。
【0053】
図8に示されるように、2次元格子パターン210の傾きtanθA、および、2次元格子パターン220の傾きtanθBを用いてX方向の変位量を補正しない場合、上型420のY方向の移動に伴い、上型420がX方向に大きく変位しているように計測される。一方、変位量計測システム10では、2次元格子パターン210の傾きtanθA、および、2次元格子パターン220の傾きtanθBを用いてX方向の変位量を補正しているため、上型420がY方向に移動しても、上型420がX方向に実質的に変位していないことが精度よく計測されている。
【0054】
[第2実施形態]
第2実施形態のシステム10は、格子位置算出処理および第2変位量算出処理において、第1実施形態と異なり、その他の構成は、第1実施形態と同様である。以下では、第2実施形態のシステム10について、第1実施形態のシステム10と異なる部分を中心に説明する。
【0055】
<7.第2実施形態のシステム>
図9に示されるように、計測対象物100の面内方向の変位量の計測においては、2次元格子パターン210、220が回転することにより、角度が変化することがある。図9の実線は、初期位置の2次元格子パターン210および2次元格子パターン220を示している。図9の破線は、初期位置から角度が変化した場合の2次元格子パターン210および2次元格子パターン220を示している。本実施形態のシステム10は、2次元格子パターン200の角度が変化した場合であっても、計測対象物100の面内方向のHDx、HDyを精度よく算出できるように構成される。
【0056】
本実施形態のシステム10では、格子位置算出部44は、格子位置算出処理において、第1変位量算出部43によって算出された複数のサブ領域61、62の面内方向の変位量dAx、dAy、dBx、dByに基づいて、計測対象物100に設置された2次元格子パターン200の角度変化量を算出する。
【0057】
格子位置算出部44は、格子位置算出処理において、2次元格子パターン200の角度が変化した後の設置角度θを第1実施形態の式(1)または(2)の逆三角関数に基づいて算出する。以下では、基準格子パターンである2次元格子パターン210の設置角度を設置角度θAと称し、2次元格子パターン220の設置角度を設置角度θBと称する。また、2次元格子パターン210の角度変化量を角度変化量ΔθAと称し、2次元格子パターン220の角度変化量を角度変化量ΔθBと称する。角度変化量ΔθAは、解析領域50の中心軸XA1に対する設置角度θAにおける2次元格子パターン210の中心軸XA2の角度である。角度変化量ΔθBは、解析領域50の中心軸XB1に対する設置角度θBにおける2次元格子パターン220の中心軸XB2の角度である。
【0058】
第2変位量算出部45は、2次元格子パターン210、220の角度変化量ΔθA、ΔθBに基づいて、計測対象物100の面内方向の変位量Dx、Dyを補正する第2変位量算出処理を実行する。第2変位量算出部45は、第2変位量算出処理において、以下の式(5)、(6)に示されるように、基準格子パターンである2次元格子パターン210の角度変化量ΔθAに基づいて、2次元格子パターン220の角度変化量ΔθBを補正することによって、計測対象物100の補正後の面内方向の変位量HDx、HDyを算出する。さらに、第2変位量算出部45は、第2変位量算出処理において、計測された2次元格子パターン210の面内方向の変位量ADx、ADyに基づいて、計測された2次元格子パターン220の面内方向の変位量Dx、Dyを補正することによって、計測対象物100の補正後の面内方向の変位量HDx、HDyを算出する。このため、撮像装置30が振動等によって傾いた場合であっても変位量HDx、HDyを精度よく算出できる。
【0059】
HDx=[Dx・cos(ΔθB-ΔθA)+Dy・sin(ΔθB-ΔθA)]-[ADx・cos(ΔθA)+ADy・sin(ΔθA)]・・・(5)
【0060】
HDy=[Dy・cos(ΔθB-ΔθA)-Dx・sin(ΔθB-ΔθA)]-[ADy・cos(ΔθA)-ADx・sin(ΔθA)]・・・(6)
【0061】
また、図9に示される例では、計測対象物100のうちの計測対象である任意の点100Xと解析領域50の中心50Xとは一致しているが、点100Xと中心50Xとは一致していなくてもよい。点100Xは、計測対象物100上であれば、2次元格子パターン210内に位置してもよく、2次元格子パターン210の外に位置してもよい。点100Xと中心50Xとが一致していない場合、第2変位量算出処理では、以下の式(7)、(8)に示されるように、中心50Xと、任意の点100Xとの距離(x、y)に基づいて、2次元格子パターン210の面内方向の変位量を補正することが好ましい。
【0062】
HDx=((Dx+x)・cos(ΔθB-ΔθA)+(Dy+y)・sin(ΔθB-ΔθA))-(ADx・cos(ΔθA)+ADy・sin(ΔθA))・・・(7)
【0063】
HDy=((Dy+y)・cos(ΔθB-ΔθA)-(Dx+x)・sin(ΔθB-ΔθA))-(ADy・cos(ΔθA)-ADx・sin(ΔθA))・・・(8)
【0064】
<8.第2実施形態の効果>
第2実施形態のシステム10によれば、第1実施形態のシステム10によって得られる効果に加えて、次の効果を得ることができる。
【0065】
2次元格子パターン220の角度変化量ΔθBに基づいて、計測対象物100の面内方向の変位量Dx、Dyを補正するため、2次元格子パターン220の角度が変化した場合であっても、計測対象物100の面内方向の変位量HDx、HDyを精度よく算出できる。また、計測対象物100の軸に対して、2次元格子パターン220の軸の角度がずれている場合、換言すれば、計測対象物100に対して2次元格子パターン220が傾いて設置されている場合であっても、計測対象物100の面内方向の変位量HDx、HDyを精度よく算出できる。
【0066】
<9.変形例>
上記各実施形態は本発明に関する変位量計測方法、変位量計測装置、変位量計測システム、および、変位量計測プログラムが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に関する変位量計測方法、変位量計測装置、変位量計測システム、および、変位量計測プログラムは、各実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その一例は、各実施形態の構成の一部を置換、変更、もしくは、省略した形態、または、各実施形態に新たな構成を付加した形態である。以下に各実施形態の変形例の幾つかの例を示す。なお、以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲において、互いに組み合わせることができる。
【0067】
<9-1>
第1実施形態において、面内変位量算出処理の具体的な内容は、任意に変更可能である。例えば、サブ領域設定部42は、サブ領域設定処理において、第1サブ領域61および第2サブ領域62に加えて、第3サブ領域を設定することもできる。この場合、第1変位量算出部43は、第1変位量算出処理において、第1サブ領域61に関する2次元画像を用いて、変位量dAx、dAy、dBx、dByに加えて、第3サブ領域のX方向の変位量dCx、および、第3サブ領域のY方向の変位量dCyを算出する。
【0068】
格子位置算出部44は、格子位置算出処理において、変位量dAx、dAy、dBx、dByを用いて、2次元格子パターン220の傾きtanθ1を以下の式(9)または(10)に基づいて算出する。
tanθ1=(dBy-dAy)/(dBx-dAx)・・・(9)
tanθ1=(dBx-dAx)/(dBy-dAy)・・・(10)
【0069】
サブ領域設定部42が解析領域50をX軸の方向に分割することによって複数のサブ領域60を設定する場合、格子位置算出部44は、格子位置算出処理において、2次元格子パターン220の傾きtanθ1を式(9)に基づいて算出する。サブ領域設定部42が解析領域50をY軸の方向に分割することによって複数のサブ領域60を設定する場合、格子位置算出部44は、格子位置算出処理において、2次元格子パターン220の傾きtanθ1を式(10)に基づいて算出する。
【0070】
さらに、格子位置算出部44は、格子位置算出処理において、変位量dAx、dAy、dCx、dCyを用いて、2次元格子パターン220の傾きtanθ2を以下の式(11)または(12)に基づいて算出する。
tanθ2=(dCy-dAy)/(dCx-dAx)・・・(11)
tanθ2=(dCx-dAx)/(dCy-dAy)・・・(12)
【0071】
サブ領域設定部42が解析領域50をX軸の方向に分割することによって複数のサブ領域60を設定する場合、格子位置算出部44は、格子位置算出処理において、2次元格子パターン220の傾きtanθ2を式(11)に基づいて算出する。サブ領域設定部42が解析領域50をY軸の方向に分割することによって複数のサブ領域60を設定する場合、格子位置算出部44は、格子位置算出処理において、2次元格子パターン220の傾きtanθ2を式(12)に基づいて算出する。
【0072】
格子位置算出部44は、格子位置算出処理において、傾きtanθ1および傾きtanθ2の平均の傾きtanθ3を算出する。格子位置算出部44は、傾きtanθ3を2次元格子パターン220の傾きtanθBとして決定する。
【0073】
このように、サブ領域設定処理において設定されるサブ領域60の数に応じて、複数のサブ領域60毎に算出される傾きの平均値を2次元格子パターン220の傾きtanθBとして用いることにより、計測対象物100の面内方向の変位量を精度よく計測できる。なお、この変形例は、サブ領域設定処理で設定されるサブ領域60の数が4つ以上の場合であっても、同様に適用可能である。また、この変形例は、第2実施形態にも同様に適用できる。第2実施形態の変形例では、複数のサブ領域60毎に算出される設置角度の平均値を2次元格子パターン220の設置角度θBとして用いて角度変化量ΔθBの平均値を算出してもよい。
【0074】
<9-2>
第1実施形態において、第2変位量算出部45は、第2変位量算出処理において、基準格子パターンである2次元格子パターン210の変位軸の傾きに基づいて、2次元格子パターン220の変位軸の傾きを補正したが、2次元格子パターン220の変位軸の傾きを補正しなくてもよい。同様に、第2実施形態において、第2変位量算出部45は、第2変位量算出処理において、基準格子パターンである2次元格子パターン210の角度変化量ΔθAに基づいて、2次元格子パターン220の角度変化量ΔθBを補正したが、2次元格子パターン220の角度変化量ΔθBを補正しなくてもよい。この場合、式(3)、(4)における角度変化量ΔθAは、0とすることができる。
【0075】
<9-3>
第1実施形態および第2実施形態において、第2変位量算出部45は、第2変位量算出処理において、2次元格子パターン210の面内方向の変位量ADx、ADyに基づいて、2次元格子パターン220の面内方向の変位量Dx、Dyを補正したが、変位量ADx、ADyに基づいて変位量Dx、Dyを補正しなくてもよい。
【0076】
<9-4>
上記実施形態では、変位量計測装置20は、撮像装置30と無線通信または有線通信できるように接続されていたが、変位量計測装置20と撮像装置30とは、通信可能に接続されていなくてもよい。この場合、撮像装置30によって撮影された2次元格子画像300は、例えば、USBフラッシュメモリまたはSDメモリカード等の補助記憶装置に保存される。変位量計測装置20は、補助記憶装置から2次元格子画像300を取得することによって、面内変位量算出処理を実行する。
【符号の説明】
【0077】
10:変位量計測システム
20:変位量計測装置
30:撮像装置
41:解析領域抽出部
42:サブ領域設定部
43:第1変位量算出部
44:格子位置算出部
45:第2変位量算出部
50:解析領域
60:サブ領域
100:計測対象物
200:2次元格子パターン
300:2次元格子画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9