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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】配管洗浄バルブ
(51)【国際特許分類】
   B08B 9/032 20060101AFI20230720BHJP
   B01F 23/20 20220101ALI20230720BHJP
   B08B 3/08 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
B08B9/032 328
B01F23/20
B08B3/08 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021107130
(22)【出願日】2021-06-28
(65)【公開番号】P2023005312
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2021-09-13
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599127597
【氏名又は名称】株式会社昭和バルブ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】中川 哲
(72)【発明者】
【氏名】中川 陽介
(72)【発明者】
【氏名】元田 修
【合議体】
【審判長】窪田 治彦
【審判官】山崎 孔徳
【審判官】柿崎 拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-200707(JP,A)
【文献】実開昭58-22566(JP,U)
【文献】特開2012-96216(JP,A)
【文献】特開2007-21392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 9/032
B01F 23/20
B08B 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が流れる配管に接続される流入口及び流出口とこれらを連通する内部流路とを有した本体と、
前記内部流路を塞ぐ閉位置と該内部流路を開通させる開位置との間で移動可能に設けられた弁体と、
前記弁体に上流側から下流側に貫通するように設けられた1又は複数の貫通孔と、
前記閉位置において前記貫通孔を液体が通過する際に、配管を洗浄するファインバブルを発生するバブル発生機構とを備えており、
前記開位置において前記貫通孔に液体が通過しないように構成されて いることを特徴とする配管洗浄バルブ。
【請求項2】
前記バブル発生機構が、通過する液体を減圧してキャビテーションを引き起こしファインバブルを発生させるものであることを特徴とする請求項1記載の配管洗浄バルブ。
【請求項3】
前記バブル発生機構が、ノズル状をなすものであることを特徴とする請求項2記載の配管洗浄バルブ。
【請求項4】
上下開閉弁、左右開閉弁又は90°回転式開閉弁 であることを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の配管洗浄バルブ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管に接続されてその内部を流れる液体をコントロールするバルブに関するものであり、特に配管洗浄機能を有したものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配管の内部を洗浄するための種々の装置が考えられている。例えば、特許文献1には、配管に直列に接続される筒状の装置が記載されている。この装置は、側周面からエアーを取り込み、取り込んだエアーを微細化して配管を洗浄するマイクロバブルを生成するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-55373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような配管洗浄装置は、配管に取り付けたままにしておくわけにはいかず、配管の洗浄が終了すれば取り外さなければならないという不具合がある。
【0005】
というのも、この種の配管洗浄装置は、マイクロバブルを発生させるための狭隘部等があって流路抵抗が大きく、取り付けたままの状態では小流量しか流せなくなるからである。また、常にマイクロバルブが発生しているため、常時の洗浄による配管の早期劣化も懸念される。
【0006】
そこで、本願発明は、開閉弁等のような配管に取り付けられるバルブの弁体にファインバブルを発生させる機能を設けるという従来にない全く新たな発想により、前記不具合を解決すべく図ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本願発明に係る配管洗浄バルブは、
液体が流れる配管に接続される流入口及び流出口とこれらを連通する内部流路とを有した本体と、
前記内部流路を塞ぐ閉位置と該内部流路を開通させる開位置との間で移動可能に設けられた弁体と、
前記弁体に上流側から下流側に貫通するように設けられた1又は複数の貫通孔と、
前記閉位置において前記貫通孔を液体が通過する際に、配管を洗浄するファインバブルを発生するバブル発生機構とを備えていることを特徴とする。
【0008】
ファインバブル発生機構としては、例えば気体(エアー)を液体内に導入してこれをせん断するといったタイプのものでも構わないが、エアー導入口が必要となるし、例えば土中や水中に埋設する場合には、相応の長さのエアー導入管も必要になるなど、構造の複雑化や部品点数の増加を招く場合がある。これに対し、前記バブル発生機構が、通過する液体を減圧してキャビテーションを引き起こしファインバブルを発生させるタイプのものであれば、構造を簡単化できるし、配管の取付場所も問わないので好適である。
具体的なバブル発生機構の実施態様としては、ノズル状をなすものを挙げることができる。
また、ゲートタイプなどの全開閉弁型のものであればなお好ましい。なお、ここでいう開閉弁には、立型上下開閉弁、横型左右開閉弁、90°回転式開閉弁等の全ての開閉弁が含まれる。
【発明の効果】
【0009】
このような配管洗浄バルブであれば、ファインバブルによって配管を洗浄できるのはもちろんであるが、配管に取り付けたままにしておいても、通常使用時において弁体を開位置してさえおけば、流路に抵抗は発生しないので所望の流量を流せるし、ファインバブルも発生しないので、これによる配管の不測の劣化も防止できる。
すなわち、従来の配管洗浄装置では、前述したように、配管洗浄の都度、着脱する手間がかかるし、逆に配管洗浄装置を配管に固定してしまえば配管内の不安定な流れを継続的に生じさせることになり、キャビテーションによる配管内の損傷を引き起こすことになるが、本発明によれば、そのような不具合を解決できる。
また、例えば一般的に用いられている既存のバルブの弁体に改造を施すだけでも実現できるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態における配管洗浄バルブを液体の流れ方向に沿って切った断面図であり、弁体が開位置にあることを示す図面である。
図2】同実施形態における配管洗浄バルブを液体の流れ方向と直交する方向に沿って切った片側断面図であり、弁体が開位置にあることを示す図面である。
図3】同実施形態における配管洗浄バルブを液体の流れ方向に沿って切った断面図であり、弁体が閉位置にあることを示す図面である。
図4】同実施形態における配管洗浄バルブを液体の流れ方向と直交する方向に沿って切った片側断面図であり、弁体が閉位置にあることを示す図面である。
図5図3に示すA部の拡大図である。
図6】本発明の他の実施形態における弁体とバブル発生機構を示す部分断面図である。
図7】本発明のさらに他の実施形態における弁体とバブル発生機構を液体の流れ方向に沿って切った模式的断面図である。
図8】同実施形態における弁体とバブル発生機構を液体の流れ方向と直交する方向から視た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る配管洗浄バルブ100について説明する。
【0012】
この配管洗浄バルブ100は、図1図4に示すように、水等の液体が流れる配管10、20上に設置されて、その液体の流れをコントロールする、いわゆるゲート型のものである。
【0013】
具体的にこのものは、内部流路1aを有した本体1と、弁体2と、該弁体2を前記内部流路1aの延伸方向とは直交する方向(以下、直交方向ともいう。)に進退駆動して、前記内部流路1aを遮断する閉位置(図3図4に示す。)及び該弁体2が前記内部流路1aを開通させる開位置(図1図2に示す。)との間で移動させる駆動機構4とを備えている。
【0014】
各部を詳述する。
前記本体1は、例えば金属鋳造製のものであり、前記内部流路1aの流入口1bには上流側配管10が接続されてここから液体が導入され、前記内部流路1aの流出口1cには下流側配管20が接続されて内部流路1aを経た液体が該下流側配管20に導出されるように構成してある。
【0015】
前記弁体2は、前記内部流路1aの内径よりもやや大きな径の平面視(前記延伸方向から視て)円盤状をなすものである。この弁体2は、円環状をなす弁体弁座21を有しており、閉位置においては、前記内部流路1aの延伸方向中央部に設けられた円環状をなす本体弁座11にこの弁体弁座21が密接することにより、内部流路1aを遮断する。
【0016】
なお、ここでの弁体2は、側面視(前記直交方向から視て)楔形状をなすウェッジタイプのものにしてあるが、これに限られるものではない。
【0017】
前記駆動機構4は、前記本体1の側周壁に設けられた挿通孔に進退可能に嵌入する弁棒41と、該弁棒41の基端部に形成されているオネジ溝に螺合するハンドル42とを備えた外ねじ式のものである。そして、前記ハンドル42を正逆回転させることにより、弁棒41及びこの先端に接続された弁体2が、直交方向に螺進退するように構成してある。
【0018】
なお、駆動機構4のタイプは外ねじ式に限られず、内ねじ式でもよいし、その他のタイプでも構わない。また、この実施形態での駆動機構4は、操作者によるハンドル42の回転操作で動作する手動式のものであるが、ギアにより動作するものや、モータなどを利用した自動開閉式のものでも構わない。
【0019】
しかして、この実施形態では、前記弁体2の厚み方向に貫通する、すなわち内部流路1aの延伸方向に沿って貫通する複数の貫通孔5が形成してあり、この貫通孔5に、液体の通過に伴ってファインバブルを発生するバブル発生機構6を設けている。
【0020】
具体的に、このバブル発生機構6は、例えばキャビテーション方式を利用したものであり、図5に示すように、前記貫通孔5の途中または出口に設けられたノズル状の狭隘部61を備えている。そして、この狭隘部61を液体が通過する際に減圧されることにより、液体内に溶存していた気体をファインバブルとして析出させる。ここでは、このバブル発生機構6によって、いわゆるマイクロバブルと称される直径1~100μmのファインバブルが発生する。
次に、このような構成のバルブの動作について簡単に説明する。
【0021】
操作者がハンドル42を回転させて弁体2を前記開位置に移動させると、弁体弁座21が本体弁座11から隔離し、上流側配管10から流れ込んだ液体は、該配管洗浄バルブ100の内部流路1aを、弁体2による抵抗を受けることなく通過して、下流側配管20に導かれる。その際、弁体2は内部流路1aに干渉しない位置にまで退避しており、内部流路1aを流れる液体に対する実質的な抵抗は発生しないし、前記貫通孔5には液体が実質的には流れないため、ファインバブルも発生しない。
【0022】
他方、操作者がハンドル42を回転させて弁体2を前記閉位置に移動させると、弁体弁座21と本体弁座22とが密着して、弁体2の貫通孔5以外からの液体の流通を完全に遮断し、弁体2の上流側から流れ込んだ液体は弁体2の貫通孔5のみを通ることとなる。このとき、前記狭隘部61で液体が加速されるとともに減圧され、液体内に溶存していた気体がファインバブルとして析出する。このファインバブルは液体とともに下流側配管20に導出され、このファインバブルの消泡時に生じる衝撃やラジカルなどにより、下流側配管20の内壁の汚れ等を洗い流す。
【0023】
以上に述べた配管洗浄バルブ100によれば、配管洗浄のときにだけ、弁体2を閉位置に移動させてファインバブルを発生させればよく、配管に取り付けたままにしておいても、通常使用時において弁体2を開位置してさえおけば、流路に抵抗は発生しないので所望の流量を流せるし、ファインバブルも発生しないので、これによる配管の不測の劣化も生じない。
【0024】
したがって、配管洗浄の都度、着脱しなければならないといった手間はかからない。
また、この実施形態では、一般的に用いられている既存のバルブの弁体部分を改造するだけで実現できるので、価格や信頼性を担保できる。
なお、本発明は前記実施形態に限られない。
【0025】
例えば、前記実施形態において、貫通孔5は内部流路1aの延伸方向(液体の流れ方向)と平行に設定されていたが、これを、図6に示すように、内部流路1aの軸線を中心にして下流側に向かうにつれ拡開するような向きに設定し、ファインバブルが配管の周壁に向かって放射状に進むようにしてもよい。なお、図6では、貫通孔5に狭隘部が設けられていないが、ここでは貫通孔5自体が小径でありバブル発生機構6としての機能を発揮するようにしてある。
【0026】
また、図示しないが、各貫通孔5の向きを互いに捻じりの関係となるようにして、ファインバブルが渦巻き状に進むようにしたり、あるいは、各貫通孔5の向きを内部流路1aの軸線に対して全て同じ斜めの角度となるように設定して、ファインバブルが配管の周壁の所定箇所に向かうようにするなど、下流側配管20において、汚れが付きやすい場所や汚れの種類によって、ファインバブルの主たる進行方向を種々変更するようにしてもよい。
【0027】
さらに、図7図8に示すように、バブル発生機構6として、プロペラ翼63を利用したものでも構わない。この例では、弁体2の内部に支軸62(図では上下方向に延伸しているが横方向など、支軸の延伸方向は任意である。)を設け、この支軸62にプロペラ翼63を取り付けている。プロペラ翼63は、外部動力又は水流により回転するが、その回転によりプロペラ翼63の表面近傍の液体が加速され減圧されることで溶存気体がファインバブルとして析出する。
バブル発生機構としては、上述したキャビテーション方式のみならず、エジェクター方式、旋回流方式、加圧溶解方式、超音波方式などを採用してもよいし、
これらを組み合わせてもかまわない。
なお、このような種々の方式の中には、気体(エアー)を液体内に導入してこれをファイン化するものも含まれる。この場合、例えば、バルブ内部流路の上流側口径部に気体を送る配管を取り付けるなどすればよい。
【0028】
ファインバブルは、前記実施形態では、いわゆるマイクロバブルと称される直径1~100μmの大きさであったが、さらに微細なナノバブルと称される直径数十~数百μmの大きさでもよい。なお、この発明でのファインバブルとは、配管洗浄機能が発揮される直径であればよく、前記マイクロバブルやナノバブルはもちろん、それ以上あるいはそれ以下の直径のものでも構わない。
【0029】
バルブのタイプは、ゲートバルブに限られず、バタフライバルブ、ボールバルブ、エキセントリックバルブ等でもよい。
その他、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。

【符号の説明】
【0030】
100・・・配管洗浄バルブ
10、20・・・配管
1・・・本体
11・・・本体弁座
1a・・・内部流路
2・・・弁体
21・・・弁体弁座
5・・・貫通孔
6・・・バブル発生機構
1b・・・流入口
1c・・・流出口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8