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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】移動体の走行制御システム
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/00 20060101AFI20230720BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20230720BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20230720BHJP
【FI】
B60W50/00
G08G1/16 C
B60W60/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022003619
(22)【出願日】2022-01-13
【審査請求日】2022-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】522017896
【氏名又は名称】杉田 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(74)【代理人】
【識別番号】100159178
【弁理士】
【氏名又は名称】榛葉 貴宏
(74)【代理人】
【識別番号】100206689
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 恵理子
(72)【発明者】
【氏名】杉田 誠一
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-051942(JP,A)
【文献】国際公開第2017/212927(WO,A1)
【文献】特開2018-167699(JP,A)
【文献】特開2001-334921(JP,A)
【文献】特開2017-177847(JP,A)
【文献】特開2018-065404(JP,A)
【文献】特開2010-271143(JP,A)
【文献】国際公開第2007/083579(WO,A1)
【文献】特開平10-119807(JP,A)
【文献】国際公開第2014/034444(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
H04N 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の周囲を撮像する複数の多眼カメラと、
前記複数の多眼カメラの画像に基づいて、移動体の走行制御を行う制御装置と、を有し、
前記多眼カメラは、3以上の単眼カメラから構成され、前記3以上の単眼カメラのうち少なくとも1つは他の単眼カメラに対して鉛直方向においてずれて配置されており、
前記制御装置は、前記3以上の単眼カメラのそれぞれで撮像した撮像画像を重ね合わせ、重ね合わせた撮像画像を前記単眼カメラの位置関係に基づく方向にずらしていくことで被写体像を一致させ、当該被写体像が一致した撮像画像のずらし量に基づいて、当該被写体像までの距離を算出する、走行制御システム。
【請求項2】
前記3以上の単眼カメラのうち少なくとも3つは水平方向において互いにずれて配置され、
前記制御装置は、前記3以上の単眼カメラのうち少なくとも1つの単眼カメラで撮像された撮像画像を、水平方向および鉛直方向に交差する斜め方向に向かってずらしていくことで被写体像を検出する、請求項1に記載の走行制御システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記3以上の単眼カメラのそれぞれで撮像した撮像画像を重ね合わせた後、1の単眼カメラで撮像した撮像画像を基準画像とし、他の単眼カメラで撮像した撮像画像を、当該撮像画像が前記基準画像に重ならない位置までずらしていくことで、被写体像を検出する、請求項1または2に記載の走行制御システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記多眼カメラを構成する複数の単眼カメラで撮像された各撮像画像を、前記単眼カメラの位置関係に基づいてそれぞれ補正し、補正した各画像を合成することで、前記多眼カメラごとに1枚の合成画像を生成する、請求項1に記載の走行制御システム。
【請求項5】
前記複数の多眼カメラは、遠方を撮像する第1の多眼カメラと、前記第1の多眼カメラよりも上方に配置されるとともに、光軸が下方に傾きを有し、近方を撮像する第2の多眼カメラとを有する請求項1ないし4のいずれかに記載の走行制御システム。
【請求項6】
前方を照射するためのスポットライトを有し、
前記スポットライトは、自車両前方の領域のうちタイヤの延長線上の位置のみを照射し、
前記制御装置は、スポットライトが照射された道路の画像に基づいて、前方における段差または傾斜または水面の有無を検出する、請求項1ないしのいずれかに記載の走行制御システム。
【請求項7】
前記制御装置は、予め記憶した道路の結節点の情報と車線中心軌道の情報とに基づいて、前記結節点間を結ぶ直線と前記車線中心軌道との交点における前記車線中心軌道の接線と、前記結節点間を結ぶ直線とがなす角度を算出し、算出した前記角度に基づいて、目標操舵角を算出する、請求項1ないしのいずれかに記載の走行制御システム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記移動体が交差点で右左折または折り返す場合に、車線の幅員、交差点入口側における旋回内側の道路端から自車両の安全幅までの距離、交差点出口側における旋回内側の道路端から自車両の安全幅までの距離、および、交差点入口側の延長線上に対する出口側のなす角度に基づいて、目標操舵角を算出する、請求項1ないしのいずれかに記載の走行制御システム。
【請求項9】
記憶装置として、短期データ用記憶装置と、中期データ用記憶装置と、長期データ用記憶装置とを有し、
前記短期データ用記憶装置、前記中期データ用記憶装置、および前記長期データ用記憶装置は、それぞれ、短期データが記憶される短期データ用記憶領域、中期データが記憶される中期データ用記憶領域、長期データが記憶される長期データ用記憶領域を共通して有しており、
前記長期データは、前記短期データ用記憶装置、前記中期データ用記憶装置、および前記長期データ用記憶装置の前記長期データ用記憶領域において更新され、
前記中期データは、前記短期データ用記憶装置および前記中期データ用記憶装置の前記中期データ用記憶領域のみにおいて更新され、
前記短期データは、前記短期データ用記憶装置の前記短期データ用記憶領域のみにおいて更新される、請求項1ないしのいずれかに記載の走行制御システム。
【請求項10】
複数の記憶装置を有し、
前記複数の記憶装置のうち、記憶するデータが更新される記憶装置は、FeRAMとキャッシュメモリーとの組み合わせにより構成される、請求項1ないしのいずれに記載の走行制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置が撮像した移動体周囲の撮像画像に基づいて、移動体の走行を制御する走行制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、左右一対のカメラで撮像したステレオ画像に基づいて、車両周囲に存在する物体の位置を検出する技術が知られている(たとえば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-183923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、左右一対のカメラの位置関係を利用して、車両周囲に存在する物体(対象物)を検出している。たとえば、対象物までの距離を得る場合、左右一対のカメラで撮像された同一の対象物(より正確には対象物が有する同一の特徴点)の画像上のずれに基づいて、三角測量の原理を利用して、対象物までの距離を検出することができる。しかしながら、特許文献1では、左右一対のカメラが同じ高さ位置に設置されるため、対象物が道路の白線やガードレール、トレーラーの側面、道路脇の防護壁など、水平方向において検出される特徴点(たとえば特定の色部分やエッジなど)が曖昧な場合には、特徴点を検出することができず対象物までの距離を測れない場合や、対象物がカメラ間距離よりも短い間隔で繰り返す縞模様のある柵や踏切などの場合には、同一特徴点を誤って認識していまい、対象物までの距離を適切に検出することができないという問題があった。
【0005】
本発明は、撮像画像に基づいて移動体の走行を適切に制御することができる走行制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る走行制御システムは、移動体の周囲を撮像する複数の多眼カメラと、前記複数の多眼カメラの画像に基づいて、移動体の走行制御を行う制御装置と、を有し、前記多眼カメラは、3以上の単眼カメラから構成され、前記3以上の単眼カメラのうち少なくとも1つは他の単眼カメラに対して鉛直方向においてずれて配置されており、前記制御装置は、前記3以上の単眼カメラのそれぞれで撮像した撮像画像を重ね合わせ、重ね合わせた撮像画像を前記単眼カメラの位置関係に基づく方向にずらしていくことで被写体像を一致させ、当該被写体像が一致した撮像画像のずらし量に基づいて、当該被写体像までの距離を算出する。
上記走行制御システムにおいて、前記3以上の単眼カメラのうち少なくとも3つは水平方向において互いにずれて配置され、前記制御装置は、前記3以上の単眼カメラのうち少なくとも1つの単眼カメラで撮像された撮像画像を、水平方向および鉛直方向に交差する斜め方向に向かってずらしていくことで被写体像を検出する構成とすることができる。
上記走行制御システムにおいて、前記制御装置は、前記3以上の単眼カメラのそれぞれで撮像した撮像画像を重ね合わせた後、1の単眼カメラで撮像した撮像画像を基準画像とし、他の単眼カメラで撮像した撮像画像を、当該撮像画像が前記基準画像に重ならない位置までずらしていくことで、被写体像を検出する構成とすることができる。
上記走行制御システムにおいて、前記制御装置は、前記多眼カメラを構成する複数の単眼カメラで撮像された各撮像画像を、前記単眼カメラの位置関係に基づいてそれぞれ補正し、補正した各画像を合成することで、前記多眼カメラごとに、1枚の合成画像を生成する構成とすることができる。
上記走行制御システムにおいて、前記複数の多眼カメラは、遠方を撮像する第1の多眼カメラと、前記第1の多眼カメラよりも上方に配置されるとともに、光軸が下方に傾きを有し、近方を撮像する第2の多眼カメラとを有する構成とすることができる。
上記走行制御システムにおいて、前方を照射するためのスポットライトを有し、前記制御装置において、スポットライトが照射された道路の画像に基づいて、前方における段差または傾斜の有無を検出する構成とすることができる。
上記走行制御システムにおいて、前記制御装置は、予め記憶した道路の結節点の情報と車線中心軌道の情報とに基づいて、前記結節点間を結ぶ直線と前記車線中心軌道との交点における前記車線中心軌道の接線と、前記結節点間を結ぶ直線とがなす角度を算出し、算出した前記角度に基づいて、目標操舵角を算出する構成とすることができる。
上記走行制御システムにおいて、前記制御装置は、前記移動体が交差点で右左折または折り返す場合に、車線の幅員、交差点入口側における旋回内側の道路端から自車両の安全幅までの距離、交差点出口側における旋回内側の道路端から自車両の安全幅までの距離、および、交差点入口側の延長線上に対する出口側のなす角度に基づいて、目標操舵角を算出する構成とすることができる。
上記走行制御システムにおいて、記憶装置として、短期データ用記憶装置と、中期データ用記憶装置と、長期データ用記憶装置とを有し、前記短期データ用記憶装置、前記中期データ用記憶装置、および前記長期データ用記憶装置は、それぞれ、短期データが記憶される短期データ用記憶領域、中期データが記憶される中期データ用記憶領域、長期データが記憶される長期データ用記憶領域を共通して有しており、前記長期データは、前記短期データ用記憶装置、前記中期データ用記憶装置、および前記長期データ用記憶装置の前記長期データ用記憶領域において更新され、前記中期データは、前記短期データ用記憶装置および前記中期データ用記憶装置の前記中期データ用記憶領域のみにおいて更新され、前記短期データは、前記短期データ用記憶装置の前記短期データ用記憶領域のみにおいて更新される、構成とすることができる。
上記走行制御システムにおいて、複数の記憶装置を有し、前記複数の記憶装置のうち、記憶するデータが更新される記憶装置は、FeRAMとキャッシュメモリーとの組み合わせにより構成される構成とすることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、少なくとも鉛直方向において互いにずれて配置された複数の単眼カメラから構成される多眼カメラの画像を用いることで、移動体の走行を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】車両を上から見た場合における、本実施形態に係る走行制御システムの構成図である。
図2】車両を左側方から見た場合における、本実施形態に係る走行制御システムの構成図である。
図3】本実施形態に係る多眼カメラの構成を説明するための図である。
図4】(A),(B)は、車両の前後左右にそれぞれ1台の多眼カメラを有する従来の構成例における撮像範囲および死角を説明するための図であり、(C),(D)は、本実施形態に係る多眼カメラ11~114の配置構成における撮像範囲および死角を説明するための図である。
図5】本実施形態に係る走行制御システムの構成図である。
図6】(A)~(C)は、図3(A)に示す多眼カメラを構成する各カメラで同一対象物を撮像した場合の像の一例を示す図であり、(D)は、(A)~(C)に示す画像の合成画像である。
図7】多眼カメラ10を構成する各単眼カメラ10a~10cの画像のずれΔwを修正する方法を説明するための図である。
図8】対象物の位置の把握方法を説明するための図である。
図9】多眼カメラが連続して撮像した画像における障害物の像の変化を説明するための図である。
図10】スポットライトによる段差の有無の検出方法を説明するための図である。
図11】警報音源の位置特定方法を説明するための図である。
図12】本実施形態に係る走行経路の決定方法を説明するための図である。
図13】迂回地点または迂回地域を経由した目的地までの経路決定方法を説明するための図である。
図14】カーブにおける目標操舵角θの算出方法を説明するための図である。
図15】結節点を説明するための図である。
図16】自車両が交差点で右左折または折り返す場合の目標操舵角θの算出方法を説明するための図である。
図17】対象物を回避する場合の目標操舵角γの設定方法を説明するための図である。
図18】自車両の回避距離および自車両と逆走車両の接近距離の算出方法を説明するための図である。
図19】自車両の周囲に設置される位置補正マーカーの一例を示す図である。
図20】本実施形態における記憶装置の構成例を示す図である。
図21】本実施形態における記憶装置が破損時の処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る走行制御システム1を、図に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施形態においては、移動体として車両を例示して説明するが、本発明が適用可能な移動体は、車両に限定されず、船舶(たとえば、旅客船、貨物船、潜水艦など)、航空機(たとえば、飛行機、ヘリコプター、グライダー、飛行船など)などであってもよい。また、車両は自動車に限定されず、バス、バイク、機関車、または電車などであってもよい。
【0010】
図1および図2は、本実施形態に係る走行制御システム1を示す構成図であり、図1は、車両を上方から見た場合の構成図、図2は、車両を左側面から見た場合の構成図を示している。図1および図2に示すように、本実施形態に係る走行制御システム1は、複数の多眼カメラ11~114と、走行制御装置2と、通信装置3と、スポットライト31,32と、複数のマイク41~44と、を有する。なお、図1および図2においては、多眼カメラ11~114の撮像範囲を破線で示す。
【0011】
多眼カメラ11~114は、車両周囲を撮像し、撮像した撮像画像を、走行制御装置2へと送信する。以下においては、複数の多眼カメラ11~114をまとめて多眼カメラ10ともいうものとする。多眼カメラ10は、たとえばCMOSカメラやCCDカメラを使用することができるが、移動による撮像被写体の変形を防ぐために、ローリングシャッター方式ではなく、グローバルシャッター方式あるいはそれと同等の機能を有することが好ましい。本実施形態に係る多眼カメラ10は、それぞれ、少なくとも複数の単眼カメラにより構成されている。図3は、本実施形態に係る多眼カメラ10の構成を説明するための図である。本実施形態では、図3(A),(B)に示すように、多眼カメラ10は、水平方向に並列して配置された単眼カメラ10b,10cと、単眼カメラ10b,10cよりも鉛直方向上方に配置された単眼カメラ10aの3つの単眼カメラから構成される。なお、多眼カメラ10の構成例は、少なくとも1つの単眼カメラが他の単眼カメラよりも鉛直方向上方に位置する位置関係で配列されていれば、特に限定されない。たとえば、図3(A)に示す構成例では単眼カメラ10b~10cが正三角形あるいは二等辺三角形となるような位置関係において配置しているが、図3(B)に示すように、単眼カメラ10b~10cが直角三角形の位置関係となるように、単眼カメラ10aが単眼カメラ10bまたは単眼カメラ10cの真上に配置される構成とすることもできる。
【0012】
本実施形態では、図1および図2に示すように、複数の多眼カメラ11~114が配置されており、複数の多眼カメラ11~114により車両周囲をそれぞれ撮像する。具体的には、多眼カメラ11は、車両前方に配置され車両前方の遠方領域を撮像する。多眼カメラ12は、車両前方に配置され、光軸が斜め下方向に傾きを有し、車両前方の近方領域を撮像する。多眼カメラ13は、車両ルーフの前方側に配置され、光軸が斜め上方向に傾きを有し、車両前方の上空領域(信号機の信号を把握可能な領域)を撮像する。多眼カメラ14は、車両左前方に配置され、車両の左側方領域を撮像する。多眼カメラ15は車両右前方に配置され、車両の右側方領域を撮像する。多眼カメラ16は、車両左前方に配置され、車両左側方から後方に亘る領域を撮像する。多眼カメラ17は、車両右前方に配置され、車両右側方から後方に亘る領域を撮像する。多眼カメラ18は、車両ルーフの後方側に配置され、上に傾きを有し、車両後方の上方領域を撮像する。多眼カメラ19は、車両左後方に配置され、車両の左側方領域を撮像する。多眼カメラ110は車両右後方に配置され、車両の右側方領域を撮像する。多眼カメラ111は、車両左後方に配置され、車両左側方から前方に亘る領域を撮像する。多眼カメラ112は、車両右後方に配置され、車両右側方から前方に亘る領域を撮像する。多眼カメラ113は、車両後方に配置され車両後方の遠方領域を撮像する。多眼カメラ114は、車両後方に配置され、光軸が斜め下方向に傾きを有し、車両後方の近方領域を撮像する。これにより、本実施形態では、多眼カメラ11~114により、水平方向において自車両周囲の360°の範囲を撮像可能とすることができる。また、上下方向においても、前方側では、車両の前端部から、停止線において信号機まで(可能であれば真上方向まで)を捉えることができ、後方側では、車両の後端部から後方車両まで(可能であれば真上方向)までを捉えることが可能となる。
【0013】
本実施形態においては、図1および図2に示すように、多眼カメラ11~114が配置することで、図4(C),(D)に示すように、自車両周囲の大部分の領域を撮像することが可能となる。なお、図4(A),(B)は、自車両の前後左右にそれぞれ1台の多眼カメラを有する従来の構成例における撮像範囲と死角とを説明するための図であり、図4(C),(D)は、本実施形態に係る多眼カメラ11~114の配置構成における撮像範囲と死角とを説明するための図である。また、図4においては、多眼カメラの撮像範囲を白抜きで、死角をハッチングで示している。さらに、図4(A),(C)では、カメラの光軸方向における撮像範囲と死角とを示しており、図4(B),(D)では、地面の高さにおける撮像範囲と死角とを示している。図4(C),(D)に示すように、本実施形態に係る多眼カメラ11~114の配置では、図4(A),(B)に示す従来例と比べて、死角が大きく減り、撮像範囲が増えることがわかる。これにより、自車両の周囲にある障害物をより検知しやすくなり、走行制御の精度を高めることが可能となる。特に、本実施形態においては、図4(D)に示すように、地面の高さにおいて、自車両の近傍領域においても撮像可能となっており、近くに子供(対象物)がしゃがんでいるような場面でも、適切に対象物を検出することができる。
【0014】
スポットライト31,32は、走行制御装置2が自車両前方における段差または傾斜を検出するために、自車両前方に光を照射する。スポットライト31,32の照射範囲は、自車両前方の数メートルから数十メートルとすることができる。また、スポットライト31,32は、自車両前方の領域のうちタイヤの延長線上の位置を照射する構成とすることが好ましい。
【0015】
マイク41~44は、図1および図2に示すように、自車両の四隅に配置され、自車両周囲の音を集音する。マイク41~44で集音された音情報は、走行制御装置2へと送信される。
【0016】
走行制御装置2は、自車両の走行を支援するための装置であり、車両内部に載置される。具体的には、走行制御装置2は、多眼カメラ11~114から取得した撮像画像に基づいて周囲の障害物などを検出し、検出結果に基づいて車両の走行を制御する。図5は、本実施形態に係る走行制御装置2の構成図である。図5に示すように、本実施形態に係る走行制御装置2は、制御装置20と、複数の記憶装置21~24とを有する。制御装置20は、CPUなどの処理回路を有しており、自車両の走行を制御するために、記憶装置21に記憶された走行制御用プログラムを実行することで、車両情報管理機能、画像合成機能、画像認識機能、周囲状況把握機能、周囲音認識機能、空間照合機能、走行制御機能、走行経路決定機能、制限条件制御機能、位置記憶機能、緊急対応機能、操舵制御機能、注意音発生機能、位置記憶機能、および記憶制御機能を実行することができる。以下に、制御装置20の各機能の詳細について説明する。
【0017】
制御装置20の車両情報管理機能は、制御装置20が自車両の走行を制御する際に使用する車両情報を管理する。具体的には、車両情報管理機能は、後述する情報記憶装置24に記憶されている車両種別情報、車両諸元情報、車両装備情報、車両適格者情報、および運転者資格情報を管理する。ここで、車両種別情報とは、自車両の種別が、一般乗用車、路線バス、救急車などの緊急車両、特定の職員専用車両、自衛隊や軍用の車両などのいずれの種別であるかを示す情報である。車両の種別が異なると進入可能通路などの通行条件も異なるため、車両情報管理機能は、自車両の種別を情報記憶装置24に登録し管理することができ、制御装置20は、この車両種別情報に基づいて、自車両の自動運転などを制御することが可能となっている。また、車両装備情報は、雪道での走行を可能とするタイヤチェーンや冬用タイヤの装備などの装着状態を示す情報である。車両情報管理機能が車両装備情報を管理することで、制御装置20は、この車両装備情報に基づいて、雪道の走行の可否などの制御が可能となっている。さらに、車両適格者情報および運転責任者資格情報は、運転者ごとに記憶される情報であり、車両情報管理機能が車両適格者情報および運転責任者資格情報を管理することで、制御装置20は、この車両適格者情報および運転責任者資格情報に基づいて、運転者に適した経路の決定などの制御が可能となっている。
【0018】
制御装置20の画像合成機能は、多眼カメラ10を構成する複数の単眼カメラ10a~10cで撮像された複数の画像を合成処理し、合成画像を生成する。本実施形態では、多眼カメラ10は、少なくとも上下方向に配置された複数の単眼カメラ10a~10cから構成されるため、図6(A)~(C)に示すように、同一の対象物であっても、撮像面で結像される像(あるいは像の位置)が異なる。そのため、画像合成機能は、図6(A)~(C)に示すように各カメラで撮像された画像を、図6(D)に示すように、合成し合成画像を生成する画像処理を行う。なお、図6(A)~(C)は、図3(A)に示すカメラ構成の単眼カメラ10a~10cで同一対象物を撮像した場合の像の一例を示す図であり、図6(D)は、図6(A)~(C)に示す画像の合成画像である。
【0019】
また、図3(A)に示すように、本実施形態の多眼カメラ10が3つの単眼カメラ10a~10cから構成される場合、同じ対象物であっても、図7に示すように、上方に配置された単眼カメラ10aと、下方に配置された単眼カメラ10b,10cとの上下方向の像にずれが生じる。画像合成機能は、このような撮像された対象物の像のずれ量Δwを求めることで、各単眼カメラ10aと単眼カメラ10b,10cとの撮像画像を合成する構成とすることができる。具体的には、画像合成機能は、各単眼カメラ10a~10cから取得した撮像画像を画素単位でずらし、たとえば色を特徴とする特徴点が重なるずれ量Δwを求めることで、単眼カメラ10a~10cから取得した撮像画像を求めたずれ量Δwだけずらして重ねて、合成画像を算出することができる。
【0020】
また、画像合成機能は、求めたずれ量Δwに基づいて、対象物までの距離Lを算出する。ここで、図7は、多眼カメラ10を構成する単眼カメラ10aと単眼カメラ10bとの画像のずれ量Δwから、対象物までの距離Lを求める方法を説明するための図であり、図3(B)に示す多眼カメラ10を側面から見た場合を例示する図である。図7において、対象物までの距離をL、単眼カメラ10aと単眼カメラ10bとの距離をw、焦点距離(35mm換算ではなく実際の焦点距離)をfとした場合に、Δw=w×f/Lの関係が成り立つ。また、左右方向における対象物の像のずれ量Δwも、同様の関係が成り立つ。そのため、対象物までの距離Lは、L=w×f/Δwとして求めることができる。
【0021】
なお、単眼カメラ10a,10b間の距離wと焦点距離fとは固定値であり、ずれ量Δwは対象物まで距離Lの逆数(Δw=w×f/L)として求められるため、w+Δwを底辺の長さとする三角形の高さ(=L+f)はずれ量Δwに応じた値となり、fは固定値であるために距離LもΔwに応じた値となる。また、単眼カメラ10aの光軸と単眼カメラ10bの光軸の両方を通る平面から対象物までの垂直距離(車両の前方に向けた多眼カメラの場合、車幅方向の距離)をLzとすると、単眼カメラ10aと単眼カメラ10b,10cで撮像された各画像は、ともにΔwz=w×f/Lzだけ距離Lz方向にずれて撮像されるため、距離Lz方向におけるずれは、各画像間の比較においては相殺される。そのため、単眼カメラ10aと10bとの配列方向(図3(B)の上下方向)において、ずれ量Δwは生じ、また、対象物までの光軸方向の距離Lによってのみ、ずれ量Δwが変化する。同様に、単眼カメラ10a,10c間においても、単眼カメラ10aと10cとの配列方向(図3(B)の左右方向)において、ずれ量Δwが生じ、対象物までの距離Lに応じて、単眼カメラ10a,10cの画像のずれ量Δwが変化する。さらに、図3(A)に示すカメラ構成においても、単眼カメラ10aと単眼カメラ10b,10cとは、単眼カメラ10aと単眼カメラ10b,10cとを結ぶ直線方向(図3(A)の斜め方向)において、ずれ量Δwが生じ、対象物までの距離Lに応じて、ずれ量Δwが変化する。
【0022】
ここで、図3(B)に示すように、単眼カメラ10aと単眼カメラ10b間の距離、および、単眼カメラ10aと単眼カメラ10c間の距離が共にwである場合の、単眼カメラ10a、単眼カメラ10b、単眼カメラ10cで撮像した画像の正立画像3枚について説明する。なお各単眼カメラで撮像した画像を各イメージセンサの中心、つまり各イメージセンサと各単眼カメラの光軸が交わる位置を中心に重ねると、無限遠と等価の位置に在る対象物は、3枚全ての画像で同じ位置に重なることとなる。また、距離Lにある対象物は、単眼カメラ10aを基準とすると、単眼カメラ10bで撮像した画像では、単眼カメラ10aで撮像した画像に対して、単眼カメラ10aから単眼カメラ10bの方向に向かってΔwずれた位置に撮像され、同様に、単眼カメラ10cで撮像した画像には単眼カメラ10aで撮像した画像に対して単眼カメラ10cに向かってΔwずれた位置で撮像される。つまり、3枚の各画像を重ね、単眼カメラ10bで撮像した画像を、単眼カメラ10aから単眼カメラ10bの方向に向かって徐々にずらし、また、単眼カメラ10cで撮像した画像を、単眼カメラ10aから単眼カメラ10cに向かってずらしていくと、3枚の画像の各部は、距離に応じたずれ位置で3枚の画像部分が全く同じ位置にきて重なる。そして、3枚の画像で重なった各部分の基準カメラ10aの画像位置での距離を求める。このように画像をずらしていき、3枚の画像で重なる所がなくなるまで続けることにより、多眼カメラ10で撮像した全対象物の距離測定が完了し、それを基準カメラ10aでの合成画像、つまり色情報、位置情報、距離情報を持った1枚の合成画像が作成される。なお、単眼カメラの配置が等距離でない場合には、基準単眼カメラ10aからの距離に比例してずらすことにより同様に重ねることができる。具体的には、基準の単眼カメラ10aから単眼カメラ10bまでの距離が2wであった場合には、距離Lの対象物は2Δwずれるため、2倍ずらせば良い。なお、ここでは、3つの単眼カメラからなる多眼カメラ10を例示したが、単眼カメラの数は限定されず、各多眼カメラの各画像を同様にずらすことで、全ての多眼カメラの画像で等距離の対象物の画像が重なる。また、基準位置は必ずしも単眼カメラである必要はない。
【0023】
なお、本実施形態において、生成される合成画像は、図6に示すように、画像のサイズが、単眼カメラ10a~10cの撮像画像と同じサイズとなっている。また、合成画像は、画素ごとの色情報を有するとともに、取得した距離情報を合わせ持つ。合成画像の画像データとして、色情報および距離情報を画素ごとに結び付けたデータとして持つ構成としてよいし、色情報および距離情報が対応可能な形式で色情報と距離情報とを別々に持つ構成としてもよいし、複数の画素のまとまりごとに色情報および距離情報をまとめて持つ構成としてもよい。
【0024】
また、画像合成機能は、複数の単眼カメラ10a~10cで撮像した画像を合成する際に、たとえば、複数の単眼カメラ10a~10cのうち1つの単眼カメラの画像を基準とし、この基準画像に合わせて、他の単眼カメラの画像について基準画像との像のずれΔwを補正することで、複数の単眼カメラ10a~10cで撮像した画像を合成する構成とすることができる。また、画像合成機能は、複数の単眼カメラ10a~10cの中心位置Cを基準として、中心位置Cとの像のずれΔwを補正するように、各単眼カメラ10a~10cの画像を補正した後に、補正した画像を合成する構成とすることができる。
【0025】
加えて、画像合成機能は、多眼カメラ10を構成する各単眼カメラ10a~10cで撮像された画像を成形した後に、合成画像を作成する構成とすることもできる。たとえば、単眼カメラ10a~10cが向いている方向にずれがあり、単眼カメラ10a~10cの光軸が平行していない場合には、単眼カメラ10a~10cの向いている方向が同じとなるように(光軸が平行となるように)画像を成形し、合成画像を作成する構成とすることができる。具体的には、画像合成機能は、各単眼カメラ10a~10cのレンズ中心を通る平面に対して、各単眼カメラ10a~10cの光軸が傾いている分だけ撮像画像を台形補正することで、各単眼カメラ10a~10cの光軸が水平方向である画像に補正することができ(あるいは、各単眼カメラ10a~10cの光軸がレンズ中心を通る平面に対して直角に交差する画像に補正することができ)、全ての単眼カメラ10a~10cの光軸を平行とした画像を得ることができる。
【0026】
このように、本実施形態に係る多眼カメラ10では、複数の単眼カメラ10a~10cが全て水平方向に配置するのではなく、少なくとも2以上の単眼カメラが上下方向(鉛直方向)に配置されている。ここで、複数の単眼カメラが水平方向のみに配列されている場合では、撮像画像の特徴点のうち、水平方向において検出できる特徴点(たとえば特定の色部分)のずれ量Δwに基づいて、対象物までの距離を算出することとなるが、道路の白線やガードレール、トレーラーの側面、道路脇の防護壁など、水平方向に変化の乏しい対象物や、一色で模様も汚れもほとんど無い対象物では、水平方向における特徴点を検出することができず、水平方向のみに配置された単眼カメラ10a~10cで、対象物までの距離を算出することができない場合がある。また、縦縞、横縞、斜め縞、格子縞については、水平方向に同じ模様が繰り返されるため、異なる特徴量を誤って同一の特徴量として認識してずれ量Δwを誤って算出してしまい、対象物までの距離を誤って算出してしまう場合がある。これに対して、本実施形態に係る多眼カメラ10では、少なくとも2以上の単眼カメラ10a~10cが上下方向(鉛直方向)に配置されているため、水平方向の位置直線上の変化が乏しかったり、縦縞、横縞、斜め縞、格子縞などの繰り返し模様がある障害物についても水平方向だけではなく、水平、垂直に渡る全面を一斉に測定できるため、高い精度で対象物までの距離を検出することができる。
【0027】
なお、以下においては、合成画像を撮像することができる仮想の単眼カメラの光軸を、多眼カメラ10の光軸として説明し、合成画像を撮像することができる仮想の単一カメラの撮像範囲を、多眼カメラ10の撮像範囲としても説明する。
【0028】
制御装置20の画像認識機能は、画像合成機能により合成された多眼カメラ10の合成画像に基づいて、自車両の周囲に存在する対象物を認識する。具体的には、画像認識機能は、合成画像に基づいて、自車両の周囲に歩行者、自転車やバイクなどの二輪車、他車両、路肩、中央分離帯、標識、などの対象物を区別せず、全てを対象物として画像認識処理により認識することができる。なお、本実施形態において、制御装置20は、これら対象物の認識を、全て、対象物とその距離の認識だけで行うため、対象物が人か車かあるいは別のものかは区別せず、接近しそうであれば停止または迂回する制御を行う。
【0029】
また、画像認識機能は、多眼カメラ10を構成する各単眼カメラ10a~10cの撮像画像から、対象物までの距離Lを求める構成とすることができる。たとえば、対象物が既知の大きさである場合、画像認識機能は、対象物までの距離Lを、L=Sobj/Sv × f/Spixとして算出することができる。なお、上記式において、Sobjは、既知の対象物のサイズ(m)、Svは対象物の画像上のサイズ(ピクセル)、fは焦点距離(たとえば3.6mmなど)、Spixは正方形画素の縦横サイズ(たとえば0.00188mmなど)を示す。
【0030】
また、画像認識機能は、多眼カメラ10を構成する2以上の単眼カメラで撮像された同一の被写体(対象物)の画像上の位置のずれΔwに基づいて、対象物までの距離xを求める構成とすることもできる。たとえば、多眼カメラ10を構成する3つの単眼カメラ10a~10cがそれぞれ、画素数が4032×3024=12.2Mピクセルであり、イメージセンサのサイズが7.6×5.7ミリ(対角9.5mm)の1/1.7”型であり、焦点距離fが3.6mmであり、カメラ間の距離が120mmである場合において、単眼カメラ10a~10c間において同一の被写体(対象物)が1画素分だけずれて撮像された場合には、対象物までの距離Lは、f×w/Δwで求めることができ、1画素分のΔwは、7.6/4032あるいは5.7/3024となり、0.00188と求めることができる。そのため、この場合、画像認識機能は、対象物までの距離Lは、L=3.6×120/0.00188=229787mmと求めることができる。
【0031】
また、画像認識機能は、対象物までの距離を求める場合に、ずれΔwを画素数ではなく、単眼カメラ間の距離(単眼カメラ10a~10cのレンズ中心間の距離)wにおける割合(%)として用いることもできる。たとえば、上記の規格の単眼カメラ10a~10cにおいて、単眼カメラ10a~10c間において同一の被写体(対象物)が単眼カメラ間距離(単眼カメラ10a~10cのレンズ中心間距離)wの0.4%分だけずれて撮像された場合には、画像認識機能は、対象物までの距離Lを、3.6×120/(0.004×w)=900mmとして求めることができる。
【0032】
また、本実施形態において、画像認識機能は、対象物までの距離が異なる単眼カメラ10a~10cで対象物を撮像した場合の対象物までの距離xをd0/(Q0-1)で求めることができる。なお、上記式において、d0は、対象物が存在する方向に対する2つの単眼カメラ間の距離(単位はメートル)であり、Q0は、対象物に近い方の単眼カメラで撮像した対象物の画像サイズに対する、対象物から遠い方の単眼カメラで撮像した対象物の画像サイズの比率である。また、画像認識機能は、算出した対象物までの距離xに基づいて、対象物の実際のサイズSobj(単位はメートル)を求めることができる。具体的には、画像認識機能は、対象物の実際のサイズSobjを、Sv0×x/f×Spixで求めることができる。なお、上記式において、Sv0は対象物に近い方の単眼カメラの対象物の画像上のサイズ(単位はピクセル)であり、fはカメラの焦点距離(たとえば3.6mmなど)であり、Spixは正方形画素の縦横のサイズ(たとえば0.00188mmなど)である。
【0033】
また、自車両が走行して対象物に近づくとその分だけ対象物の像も大きく撮像されるため、画像認識機能は、連続して撮像した対象物の大きさの変化と自車両の走行距離との関係に基づいて、対象物までの距離、あるいは、対象物と接近するまでの時間を求める構成とすることもできる。たとえば、対象物が信号機や道路付属構造体などの固定物である場合は、対象物までの距離xは、x=dl/(Q-1)で求めることができる。なお、上記式において、dlは画像取得間隔における自車両の走行距離(単位はメートル)、Qは画像取得間隔経過前の画像サイズに対する経過後の画像サイズの比率を示す。
【0034】
加えて、画像認識機能は、対象物の振る舞い、サイズ、距離が不明の場合は、直近の画像を取得した時刻から対象物と接触するまでの時間ta(単位は秒)を(1/Sva)/(1/Svb-1/Sva)×dT/1000で求めることができる。なお、上記式において、Svaは直近で撮像した画像上の対象物のサイズ(単位はピクセル)、Svbは直近の1つ前に撮像した画像上の対象物のサイズ(単位はピクセル)、dtは撮像間隔および自車両の走行制御の切り替えにかかる時間の合計(たとえば、206.25ミリ秒など)である。
【0035】
次に、制御装置20の周囲状況把握機能について説明する。周囲状況把握機能は、画像合成機能により作成された複数の合成画像に基づいて、自車両周囲の状況(自車両周囲に存在する障害物などの対象物の位置、方向、相対移動速度など)を把握する。具体的に、周囲状況把握機能は、複数の多眼カメラ10で同じタイミングで撮像された合成画像を同期することで、空間的および時間的にずれがない状態で、自車両周囲の状況を3次元で把握することができる。また、本実施形態において、周囲状況把握機能は、時系列に沿って自車両周囲の状況を3次元で連続して認識することで、自車両周囲に存在する障害物(対象物)との相対移動速度を求めることができ、さらに、対象物との相対加速度を求めることもできる。
【0036】
たとえば、多眼カメラ10の撮像間隔を206.25msとすると、各対象物は、自車両との相対速度が30km/hの場合は1.72mずつ近づき、自車両との相対移動速度が40km/hの場合は2.29mずつ近づき、自車両との相対移動速度が80km/hの場合は4.58mずつ近付くこととなる。また、対象物は、自車両と対象物との相対加速度が1m/sの場合は0.02m余分に近づき、自車両と対象物との相対加速度が2m/sの場合は0.04m余分に近づき、自車両と対象物との相対加速度が2m/sの場合は0.06m余分に近づくこととなる。そのため、周囲状況把握機能は、自車両と対象物との距離と、自車両と対象物の相対移動速度および相対移動加速度に基づいて、自車両と対象物とが接近するまでの時間を算出し、警報や走行制御を行うことができる。
【0037】
また、本実施形態では、上述したように、多眼カメラ10が複数の単眼カメラ10a~10cから構成されているため、多眼カメラ10ごとに、対象物までの距離や位置を算出することができるが、複数の多眼カメラ10の合成画像を用いて、対象物までの位置を補正することで、対象物までの位置をより高い精度で求めることが可能となる。ここで、本実施形態においては、多眼カメラ10が、様々な方向に向いている。そのため、周囲状況把握機能は、多眼カメラ10の向きを考慮して、複数の多眼カメラ10の合成画像から対象物の位置を求めることができる。以下に、図8を参照して、複数の多眼カメラ10の合成画像に基づく、対象物の位置の把握方法について説明する。なお、図8は、対象物の位置の把握方法を説明するための図である。なお、以下においては、多眼カメラ10の光軸に直交する水平面上の方向を、交差方向として説明する。
【0038】
たとえば、図1に示す多眼カメラ15と多眼カメラ110のように、同じ方向に向いている複数の多眼カメラ10の合成画像から対象物の位置を把握する場合には、図8(A)に示すように、多眼カメラ10,10から対象物1までの光軸方向における距離はLX1で変わらないため、周囲状況把握機能は、各多眼カメラ10,10において、対象物1までの光軸方向における距離が一致するように、各多眼カメラ10,10の合成画像から得られた対象物までの光軸方向における距離を補正することができる。また、多眼カメラ10,10において、対象物1までの交差方向(光軸X1,X2と直交する交差方向)における距離LY1,LY2は、隣り合う多眼カメラ10,10の光軸X1,X2間の距離W1の分だけずれるため、周囲状況把握機能は、多眼カメラ10,10の光軸X1,X2間の距離W1を用いて、各多眼カメラ10,10から対象物1までの交差方向における距離を求めることができる。たとえば、周囲状況把握機能は、対象物1に対しては、各多眼カメラ10,10から対象物1までの交差方向における距離LY1,LY2の和がW1となるように、各多眼カメラ10の合成画像から得られた対象物までの交差方向における距離を補正することができる。また、周囲状況把握機能は、対象物2に対しては、多眼カメラ10から対象物までの交差方向における距離をLY2”とした場合に、多眼カメラ10から対象物2までの交差方向における距離がW1+LY2”となるように、各多眼カメラ10,10の合成画像から得られた対象物までの交差方向における距離を補正することができる。そして、周囲状況把握機能は、各多眼カメラ10,10の位置と、補正した各多眼カメラ10,10から対象物2までの光軸方向および交差方向の距離とに基づいて、対象物2の位置を求めることができる。
【0039】
また、図1に示す多眼カメラ17と多眼カメラ110のように、多眼カメラ10が異なる方向に向いており、かつ、多眼カメラ10の光軸が交差する場合には、図8(B)に示すように、多眼カメラ10,10から対象物までの光軸方向における距離LX3,LX4と、多眼カメラ10,10から対象物までの交差方向における距離LY3,LY4とは、下記式に示す関係を有する。なお、下記式において、θは、多眼カメラ10に対する多眼カメラ10の光軸の傾斜角度であり、Lhは多眼カメラ10の基準カメラ(基準とする単眼カメラ)のレンズ中心位置から多眼カメラ10の基準カメラのレンズ中心位置までのY方向における距離であり、Lvは多眼カメラ10の基準カメラのレンズ中心位置から多眼カメラ10の基準カメラのレンズ中心位置までのX方向における距離である。
LX3=LX4×Cosθ-LY4×Sinθ+Lv
LY3=LX4×Sinθ+LY4×Cosθ-Lh
周囲状況把握機能は、上記式の関係を満たすように、各多眼カメラ10の合成画像から得られた対象物までの光軸方向および交差方向における距離を補正し、補正した各多眼カメラ10から対象物までの光軸方向および交差方向の距離と、各多眼カメラ10の位置とに基づいて、対象物の位置を求めることができる。
【0040】
さらに、図1に示す多眼カメラ17と多眼カメラ113や、図2に示す多眼カメラ18と多眼カメラ113のように、多眼カメラ10が異なる方向に向いており、かつ、多眼カメラ10の光軸が交差しない場合には、図8(C)に示すように、多眼カメラ10,10から対象物までの光軸方向における距離LX5,LX6と、多眼カメラ10,10から対象物までの交差方向における距離LY5,LY6とは、下記式に示す関係を有する。なお、下記式において、θは、多眼カメラ10に対する多眼カメラ10の光軸の傾斜角度であり、Lhは多眼カメラ10の基準カメラのレンズ中心位置から多眼カメラ10の基準カメラのレンズ中心位置までのY方向における距離であり、Lvは多眼カメラ10の基準カメラのレンズ中心位置から多眼カメラ10の基準カメラのレンズ中心位置までのX方向における距離である。
LX5=LX6×Sinθ-LY6×Cosθ+Lv
LY5=LX6×Cosθ+LY6×Sinθ-Lh
この場合も、周囲状況把握機能は、上記式の関係を満たすように、各多眼カメラ10の合成画像から得られた対象物までの光軸方向および交差方向における距離を補正し、補正した各多眼カメラ10から対象物までの光軸方向および交差方向の距離と、各多眼カメラ10の位置とに基づいて、対象物の位置を求めることができる。
【0041】
さらに、周辺状況把握機能は、多眼カメラ10が連続して撮像した画像から、多眼カメラ10に対して、対象物(被写体)が存在する方向を把握することができる。ここで、図9は、多眼カメラ10が連続して撮像した画像における障害物の像の変化を説明するための図である。なお、図9(A)~(C)においては、上部に連続して撮像された画像内での対象物の像の位置の変化を示しており、対象物が多眼カメラ10から離れている場合の像を実線で示し、対象物が多眼カメラ10から近い場合の像を破線で示している。また、図9(A)~(C)の下側では、障害物と多眼カメラ11~114との位置関係(実空間上での位置関係)を模擬的に示している。たとえば、図9(A)に示すように、対象物が多眼カメラ11~114の光軸上に位置し、光軸に沿って接近する場合、連続して撮像された画像では、対象物の像が画像の中心に位置したまま大きくなる。また、図9(B)に示すように、対象物が多眼カメラ11~114の撮像範囲の画角に沿って接近する場合、対象物は撮像画像の一定の位置において大きくなる。一方で、図9(C)に示すように、多眼カメラ11~114が撮像範囲を横断するように接近する場合、対象物の像は対象物が存在していた位置から画像の中央側(あるいは外側)へと移動しながら大きくなる。周辺状況把握機能は、このような対象物の像の位置の変化に基づいて、多眼カメラ11~114に対して対象物がどこに位置し、またどのように接近するかを把握することができ、これにより、対象物と自車両とが接近しないように退避制御を行うことができる。
【0042】
なお、多眼カメラ10の撮像間隔がLED照明や信号機などの点滅周期と同じとなると、常に撮像画像が暗くなってしまい、信号機の点灯など周囲の状況を検出できないおそれがある。そのため、本実施形態では、多眼カメラ10の撮像間隔がLED照明や信号機などの点滅周波数と異なるタイミングとなるように、撮像間隔の制御が行われる。ここで、電源周波数のほとんどは世界的に50Hzまたは60Hzに統一されている。平滑化されていない単純な全波整流で、LED信号機を点灯させた時、50Hzの場合で10ms間隔、60Hzの場合で8.33ms間隔で点滅することになる。なお、平滑化されていれば常に明るく見えるので問題は無い。そこで、本実施形態では、撮像間隔を、50Hzと60Hzの点滅間隔の半分(5msおよび4.165ms)の平均である4.583msの奇数倍(たとえば1回の画像処理時間が50msでは撮像間隔を50.413ms間隔、画像処理時間が100msでは撮像間隔を105.409ms間隔、画像処理時間が200msでは撮像間隔を206.25ms間隔)とする。これにより、まれに2回連続で暗くなることはあっても、約1回おきに明るい状態で撮像することが可能となり、条件が悪くても、撮像を3回以上行えば、信号機の状態を検知することが可能となる。
【0043】
また、多眼カメラ13は、車両ルーフ上に配置され、光軸が斜め上方向に傾くように設置され、車両前方上方(車両前方上空)を撮像するため、周辺状況把握機能は、自車両が停止線で停止し信号機に接近した場合でも、信号機の信号を検出することが可能となっている。これにより、たとえば信号機が見える位置において、自車両が停止するように、車両の制御を行うことができる。
【0044】
加えて、周辺状況把握機能は、スポットライト31,32により照射された光を検出することで、自車両前方の段差や傾斜の有無を検出することができる。ここで、図10は、スポットライト31,32による段差や傾斜の有無の検出方法を説明するための図である。たとえば、図10(A)に示すように、自車両前方に上りの段差がある場合、スポットライト31,32がこの段差部分に照射されるため、平坦な道路に照射される場合と比べて、照射位置は高くなる。そのため、周辺状況把握機能は、多眼カメラ10から取得した撮像画像に基づいて、スポットライト31,32の照射位置が高くなったことを検出した場合に、上りの段差があると認識することができる。また、図10(B)に示すように、自車両前方に下りの段差がある場合、スポットライト31,32の光が反射されないため、スポットライト31,32の光を検出することができない。そのため、周辺状況把握機能は、多眼カメラ10から取得した撮像画像において、スポットライト31,32の照射が検出できない場合に、下りの段差があると認識することができる。さらに、図10(C)に示すように、自車両前方に下りの傾斜がある場合、スポットライト31,32の光がこの傾斜に沿って伸びた形状となるため、周辺状況把握機能は、多眼カメラ10から取得した撮像画像に基づいて、スポットライト31,32の光の形状が前方に伸びた形状となることを検出した場合に、下りの傾斜があると認識することができ、さらにスポットライト光が突き刺さったような形状となった場合には段差の向こう側が水面である可能性が高いことが認識できる。また、図示はしていないが、自車両前方に上りの傾斜がある場合には、下りの傾斜がある場合と反対に、スポットライト31,32の光の形状が縮んだ形状となるため、この形状を検出した場合に、上りの傾斜があると認識することができる。
【0045】
次に、制御装置20の周囲音認識機能について説明する。周囲音認識機能は、自車両周囲の音を認識することで、自車両周囲の状況を把握する機能である。本実施形態では、4つのマイク41~44が自車両の四隅に配置されており、これらマイク41~44により自車両周囲の音が集音される。そして、周囲音認識機能は、集音した音のうち、緊急車両が発する音や、警報音などの特定の周波数の音を検出し、これらの音の音圧や、ドップラー効果による周波数変化に基づいて、自車両周囲の状況を把握する。
【0046】
まず、周囲音認識機能による警報音源の位置特定方法について説明する。図11は、警報音源の位置特定方法を説明するための図である。図11(A)に示すように、自車両の左前端のマイク42での警報の音圧をPa、右前端のマイク41での警報の音圧をPbとし、音源から左前端のマイク42までの距離La、音源から右前端のマイク41までの距離をLb、そして音源での音圧をPoとすると、PaとPbは音源からの距離の自乗に反比例し、Pa=Po/La^2およびPb=Po/Lb^2との関係が成り立つ。ここでそれぞれの両辺の平方根分の1を計算し、Da=1/√(Pa)=La/√(Po)およびDb=1/√(Pb)=Lb/√(Po)とおくと、√(Po)は距離に拘らない固定値なので、Da,Dbは距離に比例した値となる。Da=Dbであれば、自車両の進行方向における中心線上に音源が存在する。よって、周囲音認識機能は、Da,Dbを求め、Da=Dbであれば、左前端のマイク41と右前端のマイク42から等距離に音源が存在すると分かるので、自車両の進行方向における中心線上に音源が存在すると特定することができる。また、周囲音認識機能は、Da≠Dbである場合、Da:Dbが同一の比となる地点をプロットした円上に音源が存在すると特定することができる。たとえば、図11(A)に示す例において、マイク42とマイク41との組み合わせにおいて、Da:Db=2:1となっているとする。この場合、マイク42の位置A(座標0,0)から、マイク41の位置B(座標0,AW)まで2/3となる地点X(座標0,2/3AW)と、位置Aから位置Bの延長線上に位置Aから位置Bまでの距離だけずらした地点Y(座標0,2AW)を直径とする円上に、音源が存在すると認識することができる。そして、周囲音認識機能は、それぞれのマイク41~44の組み合わせについて、このような円を算出し、算出した円の交点が、音源が存在する位置として特定することで、音源の位置を認識することができる。
【0047】
具体的には、周囲音認識機能は、PaとPbから求めた円の中心点(Cabx,Caby)と半径Rabは上述式より、中心点座標(Cabx,Caby)=(0,Da/(Da+Db)×Aw+(Aw/((Da-Db)/Db)+Aw+Da/(Da+Db)×Aw)/2)として求めることができ、半径Rab=(Aw/((Da-Db)/Db)+Aw+Da/(Da+Db)×Aw)/2として求めることができる。また、右後端のマイク43での警報の音圧をPcとした場合、周囲音認識機能は、PbとPcから求めた円の中心点(Cacx,Cacy)と半径Rbcを、上述式より、中心点座標(Cbcx,Cbcy)=(Db/(Db+Dc)×Al+(Al/((Db-Dc)/Dc)+Al+Db/(Db+Dc)×Al)/2,Al)として求めることができ、半径Rbc=(Al/((Db-Dc)/Dc)+Al+Db/(Db+Dc)×Al)/2として求めることができる。
【0048】
そして、周囲音認識機能は、Pa,Pbに基づいて描画した円と、Pb,Pcに基づいて描画した円との交点を、音源が存在する位置として認識する。ここで、Pa,Pbに基づいて描画した円については、Rab^2=(x-Cabx)^2+(y-Caby)^2=x^2-2×Cabx×x+Cabx^2+y^2-2Caby×y+Caby^2との関係が成り立ち、Pb,Pcに基づいて描画した円については、Rbc^2=(x-Cbcx)^2+(y-Cbc)^2=x^2-2×Cbcx×x+Cbcx^2+y^2-2Cbxy×y+Cbcy^2との関係が成り立つ。さらに、上記式から、Rab^2-Rbc^2=(-2×Cabx+2×Cbcx)×x+Cabx^2-Cbcx^2-(2×Caby-2×Cbcy)×y+Caby^2-Cbcy^2が導くことができ、この式を整理すると、(2k×Caby-2×Cbcy)×y=(2×Cbcx-2×Cabx)×x+Cabx^2-Cbcx^2+Caby^2-Rab^2+Rbc^2となり、yについて求めると、y=((2×Cbcx-2×Cabx)×x+Cabx^2-Cbcx^2+Caby^2-Cbcy^2-Rab^2+Rbc^2)/(2×Caby-2×Cbcy)となる。ここで、上記式における、(2×Cbcx-2×Cabx)/(2×Caby-2×Cbcy)をA01とおき、Cabx^2-Cbcx^2+Caby^2-Cbcy^2-Rab^2+Rbc^2)×(2×Caby-2×Cbcy)をB01とおくと、上記式は、y=A01×x+B01として表すことができる。
【0049】
さらに、0=(x-Cabx)^2+(y-Caby)^2-Rab^2の関係式が成り立つため、これを上記A01,B01を用いて展開すると、0=(x-Cabx)^2+(A01×x+B01-Caby)^2-Rab^2=x^2-2×Cabx×x+Cabx^2+2×A01×(B01-Caby)×x+(B01-Caby)^2-Rab^2=x^2+A01^2×x^2-2×Cabx×x+2×A01×(B01-Caby)×x+Cabx^2+(B01-Caby)^2-Rab^2=(A01+1)×x^2+(2×A01×(B01-Caby)-2×Cabx+(B01-Caby)^2-Rab^2となる。さらに、上記式において、A01+1をA02とし、2×A01×(B01-Caby)-2×Cabx-2×CabxをB02とし、Cabx^2+(B01-Caby)^2-Rab^2をC02とすると、上記式は、x=(-B02±√(B02^2-4×A02×C02))/2×A02で表すことができる。さらに、A03=B02/(2×A02)、B03=√(B02^2-4×A02×C02)/(2×A02)とすると、x=A03±B03として表すことができる。ここで、上記A01,A02,A03,B01,B02,B03,C01,C02に使用する変数は全て予め取得できるため、これらの数値は定数として扱うことができる。
【0050】
さらに、y=A01×x+B01であるから、x=A03±B03を代入すると、y=A01×(A03-B03)+B01となり、xは、X0=A03-B03またはX1=A03+B03となり、yは、Y0=A01×(A03-B03)+B01またはY1=A01×(A03+B03)+B01となる。これにより、周囲音認識機能は、RabとRbcの2つの交点座標を(X0,Y0)、(X1,Y1)で求めることができる。同様に、周囲音認識機能は、RbcとRcd、RcdとRabとの組み合わせについて求めた円で共通する2つの交点を求め、図11(B)に示すように、求めた2つの交点のうち自車両と重ならない一方を音源の位置として認識することができる。なお、音源が水平方向で大音量のもの1つだけであれば、交点は2つに集約され、自車両と重ならない交点を音源の位置として認定できるが、音源の高さ方向における位置が誤差となって現れる可能性がある。そのため、自車両の上部や下部にもマイクを追加する構成とすることができる。また、音源までの距離が約340m×206.25ms=70.125mで割った時にN=1以上であれば、206.25ms間隔の離散データのN段前まで、警報の距離と位置データを反映させることが好ましい。さらに、周囲音認識機能は、各マイク41~44から取得した警報音については、警報の周波数帯域ごとの最大値を対象とすることが好ましい。また、複数の警報を検知した場合には、それぞれの帯域で音源位置座標を求めることが好ましい。
【0051】
さらに、周囲音認識機能は、周囲の警告音の周波数を特定することで、緊急車両の存在など、自車両周囲の状況を認識する構成とすることができる。ここで、緊急車両としては、救急自動車、消防自動車、パトロールカー、ガス救急自動車などが挙げられる。救急自動車は、周波数770Hzの音を0.65秒発した後に、周波数960Hzの音を0.65秒発することを1.3間隔で繰り返してサイレンを鳴らす。また、消防自動車は、周波数約300Hz~850Hzのサイレンを6秒ごと(吹鳴4秒休止2秒)に鳴らす。パトロールカーは、周波数約870Hz±50Hzのサイレンを4秒または8秒間、単発で鳴らす。さらに、ガス緊急自動車は、周波数約400Hz~850Hzの警告音を6秒間隔(吹鳴4秒、休止2秒)で鳴らす。周囲音認識機能は、このような特定の周波数のパターンを検出することで、どのような種類の緊急車両が自車両の周囲に存在するかを把握することができる。また、周囲音認識機能は、緊急車両が発する警光灯も併せて検出することで、緊急車両をより高精度に検出する構成とすることもできる。
【0052】
また、周囲音認識機能は、周囲の警報音として、踏切警報機の音、可動橋の警報器の音、自動車のクラクション、警察官などによるホイッスルの音などを検出することもできる。また、周囲音認識機能は、踏切警報機の音の検出に加えて、列車の通過音を検出することで、列車の走行状況も認識することができる。また、周囲音認識機能は、可動橋の警報音に加えて、可動橋の遮断機の開閉により生じる音を検出することや、可動橋の開閉時間も考慮することで、可動橋の状況を高い精度で認識する構成とすることもできる。さらに、周囲音認識機能は、自動車のクラクションとして、たとえば周波数300Hz~900Hzの複数音を検出することができる。さらに、周囲音認識機能は、警察のホイッスルとして、日本では周波数3500Hz周辺、パリでは周波数2600Hz周辺の音を検出することができる。
【0053】
なお、ドップラー効果による周波数f'は、f’=f×Aとして求めることができ、上記Aは、A=(V-Vo)/(V-Vs)で求めることができる。なお、V=音速、Vo=観察者の速度(m/s)、Vs=音源の速度(m/s)である。なお、音速は気温により変化するため、摂氏-50度から摂氏+60度の範囲でもドップラー効果による周波数f’を検出できるようにするために、音源周波数の0.95倍から1.3倍の周波数の音を検知対象とすることが好ましい。周囲音認識機能は、ドップラー効果による周波数の変化を検出することで、音源である対象物が接近してきているかを把握することもできる。
【0054】
空間照合機能は、車線の中央線、各車線の全幅、道路の全幅、信号機の位置座標、一時停止線の位置座標、標高、方位、道路の傾斜角度などの地理空間情報、画像認識結果や走行情報により得られた走行距離や角度から、自車両の位置や姿勢を確認し、また補正する機能を有する。
【0055】
走行制御機能は、周囲状況把握機能や周囲音認識機能により認識された周囲状況に基づいて、自車両の走行を制御する。たとえば、走行制御機能は、周囲状況把握機能により、対象物と自車両とが接触する可能性がある場合(たとえば、このまま走行した場合に自車両と対象物とが所定時間内に接触する可能性がある場合)に、警報や走行制御などを行う構成とすることができる。また、走行制御機能は、周囲状況把握機能により、自車両の前方に段差があることが検出された場合や、傾斜があることが検出された場合には、警告や走行停止などの走行制御を行うことができる。また、走行制御機能は、周囲音認識機能により自車両周囲の音を検出することで、たとえば、緊急車両のサイレンや警報を検出した場合には、自車両を停止し、あるいは、路側側に移動させることができる。
【0056】
次に、制御装置20の走行経路決定機能について説明する。走行経路決定機能は、自車両が走行する走行経路を決定する。図12は、本実施形態に係る走行経路の決定方法を説明するための図である。走行経路決定機能は、区分地理情報に基づいて、出発地から目的地までの走行経路を決定する。ここで、区分地理情報には、分岐合流点と進行路の情報とが含まれており、図12に示すように、分岐合流点とは、各交差点(IC、JCT、環状交差点等、相互乗り入れする地点を含む)の入口の座標、標高、方位を始点とし、出口の座標、標高、方位を終点とする経路であり、進行路は上記出口の座標、標高、方位を始点とし、次の候補の交差点の入口の座標、標高、方位を終点とする経路である。走行経路決定機能は、出発地から目的地までにおいて、目的地の座標や標高に近い分岐合流点または進行路を優先して順次選択することで、出発地から目的地までの走行経路を決定することができる。また、走行経路決定機能は、分岐合流点または進行路を順次選択する場合には、前の分岐合流点または進行路の終点と、同じ座標、標高、方位となる始点の分岐合流点または進行路を選択して、目的地までの経路を決定する。なお、区分地理情報は、分岐合流点での進行可能方向の情報を含んでおり、走行経路決定機能は、たとえば、右折と折り返し禁止の交差点においては、左折と直進のみを経路として決定することができる。また、分岐合流点および進行路は、細街路、基幹道路、高速道路などの道路レベルを属性情報として有することができ、走行経路決定機能は、次の分岐合流点または進行路を選択する場合には、前の分岐合流点または進行路よりも高いレベル(たとえば、細街路、基幹道路および高速道路では後者ほどレベルが高い)の分岐合流点または進行路を優先的に選択することが好ましい。また、走行経路決定機能は、次の分岐合流点までの距離よりも次の目的地までの距離が近い場合は、道路レベルに関係なく全ての道路を選択可能とすることもできる。さらに、走行経路決定機能は、複雑な進行路や頻繁に使用する道路には、予め記録された複数の連続した道路をまとめた経路グループを用意し、通常の経路同様に扱うこともできる。また、走行経路決定機能は、道路が往路車線と復路車線で分離している場合には、往路車線の進行方向の右端および復路車線の進行方向の右端をそれぞれ別の走行軌道とすることができる。また、本実施形態においては、片側車線のみの情報をまとめ、たとえば、交差点や分岐合流地点の入口を始点とし、次の交差点や分岐合流地点の入口を終点とし、必要に応じて分割した一括りのデータのまとまりを、区分地理情報として管理することもできる。また、各地点情報は地球座標、標高、進行方向、必要に応じて前後左右の傾斜角度の情報を有し、地点間の距離や方角などは地球座標間の距離、方角計算により行われる構成とすることができる。これにより、どんなに複雑な立体交差でも全ての進行路を区分け管理することが可能であると同時に、片方向の進行路データを基準として管理する方式のため、信号機なども全て、一意に決めることが可能となっている。
【0057】
また、走行経路決定機能は、図13に示すように、目的地が、自車両が通り抜けることができない湾、山、谷などの通り抜け禁止エリアの先にあり目的地まで迂回せずに到達できない場合には、目的地に最も近い経路を選択するのではなく、まず、目的地に到達するための迂回地点を設定し、この迂回地点を経由して目的地まで走行可能な経路を設定することができる。具体的には、走行経路決定機能は、迂回地点を当初の目的地として、上述した方法により経路を決定するとともに、迂回地点からは、当初の目的地を目的地として上述した方法により経路を決定することができる。また、迂回地点に代えて、一定の範囲を有する迂回地域を設定し、この迂回地域まで走行した後に、自車両が迂回地域の範囲内に入った場合に、そこから最終目的地までの経路を決定する構成とすることができる。なお、迂回地域の形状は特に限定されず、たとえば、特定の迂回地点を中心とする矩形または円形の範囲として設定することができる。また、迂回地点や迂回地域は複数設定する構成とすることもできる。また、海や山などで行けない地域がある時には、交差点データに、その方向、距離、追加する迂回地域を予め設定する構成とすることができる。なお、図13は、迂回地点または迂回地域を経由した目的地までの経路決定方法を説明するための図である。
【0058】
さらに、走行経路決定機能は、カーフェリーの使用を許可している場合には、運航計画、乗船費用、乗船予約を確認し、時間帯も利用可能であれば、カーフェリーの発着所間を進路として扱い、目的地リストの次の目的地の前に、発着所をそれぞれ迂回地点として追加する構成とすることができる。また、走行経路決定機能は、1本の道しか通過できない進路に対しても、その1本の道の入り口を目的地リストに迂回地点として追加する構成とすることができる。
【0059】
加えて、走行経路決定機能は、目的地リストを作成し、目的地リストに登録された目的地を順次目的地と設定することができる。また、目的地リスト内の目的地は、公共の施設や行楽地などのグローバルデータと、自宅や知人宅あるいは勤め先などのローカルデータで構成することができる。また、レストランやトイレなどは、種別名選択により近くの場所を指定する構成とすることができ、一般に流通しているマップ情報から取得する構成とすることもできる。また、目的地リストには、搭乗者全員か、特定搭乗者の増減情報も登録する構成とすることができる。
【0060】
制限条件制御機能は、所定の制限条件を参照して、自車両の走行を制御する。具体的には、制御条件制御機能は、制限条件として、潮汐に基づく制限、一定時間における通学路やバス専用路の走行制限、フェリーの運用時刻、吊り橋の走行可能時間などに基づく制限、あるいは、走行路の状態や天候などに基づく制限を考慮して、自車両の走行を制御することができる。たとえば、制限条件制御機能が、潮汐情報に基づいて、自車両の走行を制御する場合、走行地点での潮汐計算結果を長期データとして情報記憶装置24に記憶しておき、海岸線を走行する際に、制限条件制御機能は、情報記憶装置24に記憶している潮汐情報および予測誤差に基づいて、海岸線の走行を回避するなど、自車両の走行を制御する構成とすることができる。また、制限条件制御機能が、一定時間における通学路やバス専用路の走行制限、フェリーの運用時刻、吊り橋の走行可能時間などに基づいて、自車両の走行を制御する場合、これら時間が不規則なものは長期データとして情報記憶装置24に記憶し、また、規則的な場合には計算により算出することで、制限条件制御機能は、走行可能な経路の設定や、走行速度の制限に基づく走行など、自車両の走行を制御する構成とすることができる。さらに、制限条件制御機能が、走行路の状態や天候に基づいて、自車両の走行を制御する場合、タイヤの対地摩擦係数や自車両の加速度情報、さらには、気温、湿度、天候(天気予報情報も含まれる)に基づいて、走行速度や走行経路の変更など、自車両の走行を制御する構成とすることができる。また、この場合、自車両のタイヤの幅や劣化状態を加味して、自車両の走行を制御する構成とすることもできる。たとえば、スポーツカーでの加速度を高めるためのタイヤは+0.1、通常の新品タイヤは±0、一定期間以上使用したタイヤは-0.1などとして対地摩擦係数を補正する構成とすることができる。また、積雪時、路面凍結時の雪用タイヤなども予め区分しておき、車両情報として記憶しておく構成とすることもできる。
【0061】
また、輻輳データに関しては、事故などの発生時のデータは別途記憶しておき、それ以外の輻輳データは、暦と関連付けて長期データとして記録しておくことが好ましい。図示しないサーバが、各車両からアップロードされた輻輳データに関する通知情報を収集し、各車両に配信することで、輻輳データを車両間で共有する構成とすることもできる。また、図示しないサーバが、区分地理情報に基づく各エリアにおける移動体の通過時間を、通過開始時刻の時間帯別に平均し、それらを月別、日付、曜日別に平均し、特定の月日や月と週さらに祭日などでの単休日、あるいは、2連休、3連休、4連休以上の休日などでも分け、その前日、連休の場合はその前半、中日、後半で道路片側ごとに集計し、各区分地理情報、すなわち道路片側の1部分ごとの輻輳データとして、その比率を計算し算出する構成とすることもできる。
【0062】
さらに、対地摩擦係数や輻輳データについては、平均値、移動平均値、および標準偏差のほかに、人間の記憶機構に近い記憶平均と記憶標準偏差も併用する構成とすることができる。記憶平均と記憶標準偏差は、等比級数で1/2^1,1/2^2,1/2^3,・・・を足し合わせていくと「1」に近づくという性質を応用したものである。たとえば、直近の輻輳データの加重を1/2とし、その前の輻輳データの加重を1/4とし、さらに前の輻輳データの加重を1/8とし、これらの合計値を輻輳データとして記憶することができる。このような記憶平均値では、移動平均と似た値となるが、古い輻輳データほど占める割合、つまり重み付けが指数関数的に減って行くという、人間の記憶に似ている性質を有し、記憶平均を算出するのにデータの個数や合計を規定して別に保存する必要もない。さらに、通常の移動平均の場合には、たとえば100個の移動平均では新しい輻輳データを記憶する場合には、最も古いデータを順次削除する必要が有るため、100個のデータを全て順番に記録しておく必要があるが、この記憶平均では、そのような必要がなく、経時変化に対応した計算を行うことができる。なお、この記憶平均は近年人工知能での利用の高まってきた一般的にMMA(修正移動平均)と呼ばれるものと基本的には同等であり、EMA(指数移動平均)の一種となる。
【0063】
たとえば、基底Nが10の場合、新しい値をxとし、それまでの蓄積データをAveとすると、新しい輻輳データの平均値mAvは、mAV=x/N+mAv*(N-1)/N=x/10+mAv*9/10=0.1x+0.9mAvで求めることができる。また、この比率を示す部分である、1/Nと(N-1)/Nの和は1となり、この比率の総和を1に保つことで、基底値を毎回変えても、式を分割してデータごとに扱いを変えることも可能である。また記憶平均の場合、初期値は最初のデータを代入するのが一般的で簡単であるが、最初の方は基底値を小さくし、途中から当初予定していた値に変えて、初期値による変動を抑えるという方法も採れる。また、過去の全てのデータを保持する場合には、既存のデータから大きく外れた異常データを含んだ場合に、異常データに引きずられてしまう場合もあるので、記憶標準偏差により異常データを除外することや、基底値の調整で新たな状況として再度出発するなどの方法を採用してもよい。
【0064】
また、記憶標準偏差では、記憶平均と同様に各データの分散の記憶平均の平方根を取るという形式で行うことができるが、時系列の関係で、記憶標準偏差を算出した後に記憶平均を算出する。なお、1つ前の輻輳データを保存しておけば順番を変えても構わない。記憶標準偏差mSdは、分散mSをms=(x-mAv)^2/N+mS*(N-1)/Nとした場合に、mSd=√mSとして求めることができる。なお、計算のたびに、基底値を1,2,3,・・・とすれば、記憶平均値mAvは通常の平均値と同じとなり、記憶標準偏差は通常の標準偏差と同じとなる。
【0065】
このように、記憶平均値および記憶標準偏差を求めることで、対地摩擦係数や輻輳データなど経時変化や環境条件による変化が大きいデータについて、経時変化や環境条件での影響を抑え、より現時点に適したデータとして求めることができる。
【0066】
位置記憶機能は、停止時の自車両の位置を記憶しておき、移動再開時に、記憶しておいた自車両の位置から地図情報などの情報を取得することで、移動再開時に適切な情報で走行制御を行うことを可能とする。また、フェリーなどの運搬体で停止した場合には、運搬体内での位置に加え、停車時に、運搬先の情報を予め収集することで、移動再開時に走行制御を直ぐに行うことができる。
【0067】
緊急対応機能は、自車両が位置する場所や条件に基づいて、予め用意された装備や運転者が携帯する機器を利用して、予め設定された準備処理、事前処理、実処理、後処理などの対応措置を実行する。たとえば、緊急対応機能は、運転者が携帯するスマートフォンの電話機能やメール機能と連携することで、緊急連絡を所定の連絡先に自動で連絡する構成とすることができる。なお、緊急連絡の受け側である緊急回線設備も、当該連絡に対応可能なように構成しておくことが好ましい。
【0068】
次に、制御装置20の操舵制御機能について説明する。操舵制御機能は、自車両がカーブにおいて旋回する際の目標操舵角θを設定し、自車両の操舵角がこの目標操舵角となるように、操舵制御を行う。より具体的には、操舵制御機能は、区分地理情報として予め記憶されている道路の結節点の情報と、車線中心軌道の情報とに基づいて、自車両がカーブにおいて旋回する際の目標操舵角θを設定する。ここで、図14は、カーブにおける目標操舵角θの算出方法を説明するための図である。図14に示す例では、車両が外側の車線1を走行する場合と、内側の車線2を走行する場合を例示して説明する。また、図15は、結節点を説明するための図である。まず、図15を参照して、結節点について説明する。
【0069】
結節点は、自車両が走行する車線中心軌道に所定の間隔で設けた仮想の地点であり、図15に示す例では、結節点J1,J2を示す。また、結節点J1とJ2とを結ぶ直線をLとし、直線Lと、結節点J1における車線中心軌道Oとの接線L1とがなす角度をθ1とし、直線Lと、結節点J2における車線中心軌道Oとの接線L2とがなす角度をθ2とする。
【0070】
この場合、操舵制御機能は、車線1における目標操舵角θ(結節点J1からJ2までの目標操舵角θ)を、θ(Dx1)=(Dx1/Dy1×(θ2-θ1)+θ1)-(θ2+θ1)×2×(1-ABS(1-Dx1/Dy1×2))として求めることができる。ここで、Dx1は、車線1において結節点J1から進んだ距離(単位はメートル)であり、Dy1は、結節点J1からJ2までの距離(結節点間距離)である。なお、結節点間距離Dy1は、Dy1[m]=Dy-Ws×0.5×(Sin(θ2)+Sin(θ1))で求めることができ、上記式において、Dyは車線中心軌道O上における結節点距離(単位をメートル)を示し、Wsは車線の幅員(単位はメートル)を示す。同様に、操舵制御機能は、車線2における目標操舵角θ(結節点J3からJ4までの目標操舵角θ)を、車線2における結節点J3から進んだ距離Dx2を引数として、θ(Dx2)=(Dx2/Dy2×(θ4-θ3)+θ3)-(θ4+θ3)×2×(1-ABS(1-Dx2/Dy2×2))として求めることができる。ここで、Dx2は、車線2において結節点J3から進んだ距離(単位はメートル)であり、Dy2は、結節点J3からJ4までの距離(結節点間距離)である。なお、結節点間距離Dy2は、Dy2[m]=Dy-Ws×0.5×(Sin(θ4)+Sin(θ3))で求めることができる。なお、上記式により、操舵制御機能は、車線1および車線2においても、Dx1,Dx2がゼロの場合の(すなわち、結節点J1,J3上での)目標操舵角θをθ1として算出することとなり、Dx1,Dx2がDy1,Dy2の場合の(すなわち、結節点J2,J4上での)目標操舵角θをθ2として算出することとなる。
【0071】
また、操舵制御機能は、自車両が交差点で右左折または折り返す場合には、図16(A)に示すように、目標操舵角θを算出することができる。ここで、図16(A)に示すように、車線の幅員をWs(単位はメートル)、交差点入口側における旋回内側の道路端から自車両の安全幅(自車両が安全に走行できる道路の安全幅(図16(B)を参照)までの距離をLa、交差点出口側における旋回内側の道路端から自車両の安全幅(自車両が安全に走行できる道路の安全幅(図16(B)を参照)までの距離をLb、交差点入口側の延長線上に対する出口側のなす角度をθrとする。この場合、交差点のうち、2つの直線移動経路と1点のカーブの角を通る円の半径Rは、T^2×R^2-(2×Lb/SS×TT+2×La)×R+(Lb^2/SS^2+La^2)=0より、R=((2×Lb/SS×TT+2×La)+√((2×Lb/SS×TT+2×La)^2-4×TT^2×(Lb^2/SS^2+La^2))/(2×TT^2)として求めることができる。なお、上記式において、SSはSinθrであり、TTは1/Tan(θr/2)であるものとする。
【0072】
操舵制御機能は、このように算出したRを用いて、交差点の曲がり角の手前の√(R^2-(R-La^2))-Lfrontに自車両の先端部が差し掛かった地点から旋回を開始し、目標操舵角θ=Atan(Lfront/R+安全幅/2))となるように、操舵制御を行う。なお、後退時は、√(R^2-(R-La^2))-リアハングオーバーに自車両の後端部が差し掛かった地点から旋回を開始することが好ましい。また、操舵制御機能は、R<実用内側最小回転半径-最大突起高さ-余裕代となる場合は、上記LaおよびLbをできるだけ外側にずらすことが好ましい。なお道幅が安全幅よりも狭い道路は通行不可とすることが望ましい。
【0073】
さらに、本実施形態において、操舵制御機能は、対象物を回避する場合には、下記に説明するように、自車両の操舵角を制御するための目標操舵角γを設定し、この目標操舵角γとなるように、自車両の操舵角を設定する構成とすることができる。ここで、図17は、対象物を回避する場合の目標操舵角γの設定方法を説明するための図である。具体的に、操舵制御機能は、まず、自車両の最小回転半径Rを、下記式にて求めることができる。
【数1】
すなわち、最小回転半径Rを算出するための上記式の右辺を分解すると、左前輪だけによる最小回転半径RLは、RL=L/Sinαで求めることができ、右前輪だけによる最小回転半径RRは、RR=√(L^2+(L/Tanβ+Tf)^2)で求めることができる。そして、左右前輪でそれぞれ計算した最小回転半径の平均Rが、R=(RL+RR)/2で求められる。このように、アッカーマン機構で設定された両前輪のそれぞれが少しずつ滑りながら最小回転半径を描き、回転中心での左前輪の角度α’および右前輪の角度β’はそれぞれ、 α'=Asin(L/R)、β'=Atan(L/(R×Cosα’-Tf))で求められ、両輪の最小回転半径の平均Rは、R=L/Sinα'と書き換えられる。
【0074】
また、回転中心から後軸延長線上への外側前輪中心の垂線位置Rleftは、Rleft=R×Cosα'で求められ、回転中心から後軸両車輪間中心までの距離は、Rcenter=Rleft-Tf/2=R×Cosα'-Tf/2=R×Cos(Asin(L/R)-Tf/2として求められる。さらに、後軸から最前端までの距離Lfrontは、Lfront=L+Ofで求められる。
【0075】
そして、両前輪の合成により最前端中央に仮想前輪を設定した場合、仮想前輪の操舵角度γは、γ=Atan(Lfront/Rcenter)=Atan((L+Of)/(R×Cos(Asin(L/R))-Tf/2))で求められる。なお、ここで左右旋回時の最小回転半径Rの時における角度γの値は車両固有の最大値であり、これを超えない様に留意する必要がある。さらに、仮想前輪による回転半径Rrは、Rγ=(L+Of)/Sinγで求められる。
【0076】
また、図17に示す実用内側最小回転半径Rminは、Rmin=Rγ×Cosγ-全幅/2=(L+Of)/Sinγ×Cosγ-全幅/2=(L+Of)/Tanγ-全幅/2で求めることができる。自車両の平面形状が長方形に近い形状である場合、実用外側最小回転半径Rmaxは、Rmax=√((Rmin+全幅)^2+(L+Of)^2)=√((L+Of)/Tanγ+全幅/2)^2+(L+Of)^2)で求めることができる。
【0077】
図17に示す例において、操舵角度γにおいて自車両が通過するために必要とする内側幅Urと全体幅Wfは、以下の通り算出することができる。
Ur=Rmin-√(Rmin^2-(L+Of)^2)=(L+Of)/Tanγ-全幅/2-√(((L+Of)/Tanγ-全幅/2)^2-(L+Of)^2)
Wf=Rmin-√(Rmin^2-(L+Of)^2)+全幅=(L+Of)/Tanγ+全幅/2-√(((L+Of)/Tanγ-全幅/2)^2-(L+Of)^2)
【0078】
操舵制御機能は、自車両の旋回時に、WrあるいはUrに他の対象物が入り込まないように、操舵角度γを制御することで、移動体が対象物と接触することを避けることができる。なお、外側前輪での最小回転半径Rが必要な時には、γとRγとにより、R=√((Cosγ×Rγ+Tf/2)^2+L^2)と求めることもできる。また、操舵制御機能は、自車両のタイヤを含む機構や軸間制御方式、車軸数など固有の種別に合わせた前進後退時の旋回軌跡に差異があれば補正する構成とすることもできる。
【0079】
さらに、操舵制御機能は、自車両が他車両を含む対象物を回避するように、操舵制御を行うことができる。具体的には、操舵制御機能は、連続して撮像された画像上において、自車両に接近する同一対象物の位置変位量が3画素以上となった場合に、当該対象物を回避するように、走行制御を行う。ここで、自車両が、自車両の走行車線を逆走する逆走車両を回避する場面を例示して説明する。たとえば、自車両と逆走車両との全幅がそれぞれ2.5m以内とした場合、左あるいは右方向に旋回して逆走車両を回避するためには、自車両の最後尾が現在位置から2.5m以上左または右方向に移動することができれば、衝突を回避することが可能となる。さらに、自車両の最後尾が現在位置から5.0m以上左または右方向に移動することができれば、逆走車両が真っすぐ進行し、自車両が片方向にしか退避できない場合も、逆走車両の回避が可能である。
【0080】
ここで、多眼カメラ10の撮像間隔が206.25msであり、自車両および逆走車両の速度が120km/hである場合、自車両と逆走車両との相対移動速度は、240km/h(秒速66.67m)となり、1回の撮像間隔(206.25ms)の間に自車両と逆走車両とが接近する距離は13.75mとなる。また、多眼カメラ10を構成する各単眼カメラ10a~10cの間隔Wが120mmの場合、同一位置に存在する同一対象物を撮像した場合に、画像に1画素の差分が生じるのが、単眼カメラから対象物までの距離が230mの場合であり、この230mという距離が、1画素分の位置、方角の測定限界(分解能)となる。なお、複数の単眼カメラ10a~10cにより三角測量を行う場合には、逆走車両との距離が遠い程、距離の測定誤差は大きくなる。
【0081】
ここで、自車両が走行速度V0で走行し、対地摩擦係数をμ、重力加速度をgとすると、図18(A)で示す旋回半径Rγは、Rγ=V0^2/μgで求めることができる。また、旋回する円の円周長TγはTγ=2πRγ、周回角速度ω(角度/s)はω=V0/(2πRγ)×360で求めることができる。たとえば、自車両が走行速度V0を120km/h(=33.33m/s)としたまま走行し、対地摩擦係数μを0.7とし、重力加速度gを9.8とすると、操舵制御機能は、旋回半径Rγを、Rγ=V0^2/μg=33.33^2/(0.7×0.9)=161.97mと求めることができる。また、操舵制御機能は、自車両が旋回する円の円周長TγをTγ=2πRγ=2×3.1416×161.97=1017.7mと求めることができ、周回角速度ω(角度/s)をω=V0/(2πRγ)×360=33.33/(2×3.1416×161.97)×360=11.791度/sと求めることができる。なおここで走行時の旋回での横方向への実際の加速度(遠心力)と直進での前後方向への実際の加速度を測定する3次元加速度センサーを制御装置20に設けることにより、実際の対地摩擦係数μを測定することもできる。また、旋回時の横方向と直進時の前後方向の実測加速度をa(単位はm/s)とすると、ここでの対地摩擦計数の計算式は旋回時、直進時ともに、μ=|a|/gとなる。
【0082】
また、回避経過時間をTeとした場合、回避角度γ=ω×Teで求めることができる。さらに、図18(B)に示すように、最外壁Rxは、Rx=√(Rγ^2-Lfront^2)+全幅/2で求められ、図18(A)に示すように、回避距離EはE=Rx×(1-Cos(γ))-Or×Sin(γ)で、回避時前進距離DtはDt=Rx×Sin(γ)+Lfront×Cos(γ)-Lfrontで求めることができる。なお、上記式において、Orは、両後輪から最後端までの距離である。そのため、上記場面例において、操舵制御機能は、最外壁Rxを、Rx=√(Rγ^2-Lfront^2)+全幅/2=162.81mとして求めることができる。また、撮像間隔dTが0.20625msで行われる場合、自車両の制御切換え間隔も同じく0.20625msで行われることとなり、この場合、経過時間tにおける、自車両の回避距離Eと、自車両と逆走車両の接近距離Dは、下記の通りとなる。なお、自車両と逆走車両との接近距離Dは、逆走車両が自車両と同じ速度で走行すると仮定してD=V0×dT×2で求める。
t=0dTの場合: E=0m D=0m
t=1dTの場合: E=0.108m D=13.750m
t=2dTの場合: E=0.509m D=27.500m
t=3dTの場合: E=1.202m D=41.250m
t=4dTの場合: E=2.186m D=55.000m
t=5dTの場合: E=3.460m D=68.750m
t=6dTの場合: E=5.021m D=82.500m
【0083】
この場合において、自車両と逆走車両との全幅を最大2.5mと想定した場合、回避距離Eが2.5mを超えれば、自車両は逆走車両を回避することができ、さらに回避距離Eが5.0mを超えれば安全に回避することができるものと考えられる。すなわち、上述の例では、回避行動を開始してからの経過時間が5dT以上であれば、回避距離Eは2.5m以上の3.460mとなり、逆走車両を回避することが可能であり、経過時間が6dT以上であれば、回避距離Eは5.0m以上の5.021mとなり、安全に回避することが可能となる。そして、回避行動を開始してからの経過時間が5dT以上あれば、接近距離Dは68.750mとなり、経過時間が6dT以上であれば、接近距離Dは82.500mとなるため、自車両と逆走車両とがこの接近距離Dよりも遠く離れている時刻から回避行動を開始する必要がある。
【0084】
本実施形態では、逆走車両の画像の変位量(逆走車両を検出してからの各単眼カメラ10a~10cの画像間の変位量)が3画素となった際に、逆走車両の画像の変位量が2画素におけるdT間隔での撮像回数に基づいて、自車両と逆走車両との接近速度を算出し、算出した接近速度に基づいて、画像処理完了後(dT+1)より回避行動を開始する。そのため、逆走車両の画像変位量が3画素となった後の画像処理完了後の、自車両と逆走車両との距離が68.750m以上または82.500m以上あることが必要とされる。
【0085】
ここで、単眼カメラ10a~10cの焦点距離をf、単眼カメラ10a~10cの配置間隔をw、単眼カメラ10a~10cの撮像素子1ピクセルのサイズをPixs、画像変位量(単位はピクセル)をdPとすると、画像変位量に対する距離Dist(単位はメートル)は、Dist(dP)=f×w/(Pixs×dP)/1000で求めることができる。そうすると、画像変位量が3画素となった後の画像処理完了後の自車両と逆走車両との距離が68.750m以上必要とする場合、Dist(3)-2×2×V0×dT>68.750m、すなわち、f×w/(Pixs×dP)/1000-4×V0×dT>68.750mを満たせばよい。ここで、単眼カメラ10a~10cの焦点距離fを3.6mm、単眼カメラ10a~10cの撮像素子1ピクセルのサイズPixsを0.00188mmとした場合、上記式について単眼カメラ10a~10cの配置間隔wを求めると、w>(68.750+4×V0×dT)×(Pixs×3)×1000/f=(68.750+4×33.33×0.20625)×(0.00188×3)×1000/3.6=150.79mmとなる。そのため、操舵制御機能は、単眼カメラ10a~10cの配置間隔wを150.79mm以上とすることで、画像変位量が3画素をトリガーとして回避行動を開始することで、逆走車両との接近を回避することが可能となる。たとえば、単眼カメラ10a~10cの配置間隔wがw=155mmの場合、画像変位量2画素分の距離の幅は49.468mなので、その中で206.26ms間隔の撮像が行われる回数が3回での自車両と逆走車両との相対移動速度は、216~432Km/h、4回では173~288Km/h、5回では144~216km/hとなる。
【0086】
同様に、画像変位量が3画素のとなった後の画像処理完了後の自車両と逆走車両との距離が82.500m以上必要とする場合には、w>(82.500+4×V0×dT)×(Pixs×3)×1000/f=172.33mmとなる。そのため、操舵制御機能は、単眼カメラ10a~10cの配置間隔wを172.33mm以上とすることで、画像変位量が3画素をトリガーとして回避行動を開始することで、逆走車両との接近を回避することが可能となる。たとえば、単眼カメラ10a~10cの配置間隔w=175mmの場合、画像変位量2画素の距離の幅は55.851mなので、その中で206.25ms間隔の撮像が行われる回数が3回での自車両と逆走車両との相対速度は、244~487Km/h、4回では195~325Km/h、5回では162~244Km/h、6回では139~195Km/hとなる。
【0087】
このように、画像変位量2画素分での撮像回数で相対移動速度を求めることで、対象物が遠方に位置し、遠距離において左右方向で1,2画素の視差しか得られない場合でも、対象物が近接する前に(3画素分の視差が得られる前に)、逆走車両との相対移動速度をある程度の精度で求めることができ、より早い段階で自車両の制御を開始することができる。そして、対象物が近接した場合には(3画素分の視差が得られる場合には)、逆走車両との相対移動速度をより正確に把握することで、逆走車両を適切に回避することが可能となる。なお、画像変位量の2画素の際の撮像回数を用いるのは、1画素の際の撮像回数を用いた場合に、誤差や隣接する背景の干渉が大きくなることを避けるためである。
【0088】
次に、制御装置20の注意音発生機能について説明する。注意音発生機能は、周囲に歩行者が歩行している場合に、歩行者に接近した際に、自車両が存在することを気付かせるための注意音を発生する。音の種類は、特に限定されず、たとえばエンジン音を合成して発生させることができる。また、注意音は、自動運転中のみに発生させる構成とすることもできる。さらに、周囲に騒音がある場合には、歩行者が注意音に気付かない場合があるため、周囲の騒音をマイク41~44で集音しておき、たとえば、自車両が現在の速度で3秒後に到達する位置における音量を、周囲の騒音よりも3db以上、好ましくは10db以上大きな注意音を発生する構成とすることができる。なお、夜間でも、自車両が3秒後に到達する位置よりも遠い位置において、注意音は減衰し、周囲の騒音量以下となるため、近隣に対する騒音を有効に防止することができる。また、注意音の音色も特に限定されず、複数の周波数の音を順次発生させる構成としてもよし、同一の音色の音を継続し、あるいは断続的に発生させてもよいが、周囲音を測定する間だけは、測定する周波数と同じ周波数の注意音の発生は一時的に止めることが好ましい。なお、車両の種類によっては、性能としてここでの必要音量よりも大きい音を発生する車種も存在する。そのような車両においては、必要音量以上の音が発生する場合に、このような注意音発生機能を実行しない構成とすることもできる。ただし、このような場合であっても、注意音発生機能は、車両が発生する音とは異なる周波数を測定し、車両が発生する音とは異なる周波数の注意音を発生させる構成とすることができる。
【0089】
次に、制御装置20の位置補正機能について説明する。位置補正機能は、自車両周辺に設置されている位置補正マーカーを読み取ることで、自車両の位置を補正する機能である。ここで、図19は、自車両の周囲に設置される位置補正マーカーの一例を示す図である。たとえば、位置補正マーカーは、図19(A)~(C)に示すように、QRコード(登録商標)などの形式で表示することができ、図19(A)に示すように、自車両が下を通過するアーチの正面や、図19(B)に示すように、走行路の路面上、あるいは、図19(C)に示すように、道路の路側に設置した標識などに表示することができる。位置補正機能は、多眼カメラ10で撮像された画像に基づいて、これら位置補正マーカーとその位置を読み取り、たとえばGPSで検出した自車両の位置を補正することができる。なお、位置補正マーカーは、固定位置に設置され、座標、標高、向きも決まっているので、他の位置補正マーカーと区別する必要がない場合、あるいは、位置を確認する必要がない場合には、位置補正マーカーを認識することで自車両の位置を把握できる構成であればよく、QRコードなどのコードを使用する必要はない。
【0090】
また、位置補正機能は、地理空間情報を用いて、自車両の位置座標や標高を補正する機能も有する。地理空間情報の中には、信号機、中央線(センターライン)、車線境界線、一時停止線、横断歩道や、交差点、環状交差点など、道路設置物、標識線、構造物などの座標、標高が保存されている。位置補正機能は、たとえば画像認識によりこれら道路設置物、標識線、構造物を検出し、自車両までの距離と自車位置に対する方角を求めることで、これら道路設置物、標識線、構造物の位置から自車両の位置や自車両の向きを逆算して求め補正することができる。
【0091】
次に、制御装置20の位置記憶機能について説明する。位置記憶機能は、自車両が自宅に到着した場合、会社に到着した場合、またはフェリーに乗船した場合などに、自車両の電源がオフとされた場合に、自車両の位置座標、標高、向いている方向などを記憶し、自車両の電源が再度オンとなった場合に、自車両が電源がオフとなった際の自車両の位置座標、標高、方向などの情報を直ぐに把握できるようにする機能である。従来、自車両の位置座標、標高、方向などの情報はRAMなどの揮発性記憶装置に記憶され、電源がオフとなった場合に消去され、電源がオンとなったタイミングで、再度、自車両の位置座標、標高、方向などの情報が再取得されていた。本実施形態では、位置記憶機能により、電源がオフとなった場合に、これら情報が、不揮発性の記憶装置に記憶され、電源がオンとなった場合には、不揮発性の記憶装置から取得することで、電源オンとなって直ぐに正確な情報を用いて運転を開始することができる。また、自車両がフェリーに乗船する場合には、位置記憶機能は、乗船口からの経路と出口までの経路、乗船時と到着時のフェリーの出入り口の座標と向きも記憶する構成とすることができる。これにより、フェリーにより自車両の位置座標や向きが変わった場合でも、自車両をフェリーの出口まで適切に案内することができる。なお、フェリーの出口に上述した位置補正マーカーがあれば、フェリーから降りた際の位置にずれがあったり、運輸上のトラブルから違う場所に到着したような場合でも、位置補正機能により、到着した場所の位置を適切に把握することができる。
【0092】
次に、本実施形態に係る記憶装置21~26について説明する。複数の記憶装置21~26は、プログラム記憶装置21、時計暦データ用記憶装置22、位置座標データ用記憶装置23、および複数の情報記憶装置24~26から構成される。プログラム記憶装置21は、自車両の走行を制御するための走行制御プログラムおよび必要な車両情報を記憶する記憶装置である。また、時計暦データ用記憶装置22は、時計データや暦データを記憶するための記憶装置である。位置座標データ用記憶装置23は、自車両の位置情報を記憶するための記憶装置である。また、情報記憶装置24~26は、地理空間情報を記憶するための記憶装置である。以下に、情報記憶装置24~26の詳細について説明する。
【0093】
本実施形態に係る走行制御システム1は、図5に示すように、車両外部に外部情報サーバ5を有している。自車両に内蔵される通信装置3は、インターネット上に配置された外部情報サーバ5と通信することで、地理空間情報を外部情報サーバ5から受信し、受信した地理空間情報を、走行制御装置2に送信することができる。具体的には、外部情報サーバ5は、各車両の走行制御のために地理空間情報をインターネット上で収集しており、収集した地理空間情報を記憶している。走行制御装置2は、外部情報サーバ5から、通信装置3を介して地理空間情報を受信し、受信した地理空間情報を、複数の情報記憶装置24~26に記憶する。
【0094】
情報記憶装置24~26は、地理空間情報を記憶する記憶装置である。本実施形態では、情報記憶装置として、図5に示すように、長期データ用記憶装置24と、中期データ用記憶装置25と、短期データ用記憶装置26とを有している。また、長期データ用記憶装置24、中期データ用記憶装置25、および、短期データ用記憶装置26は、それぞれ長期データ用記憶領域241,251,261と、中期データ用記憶領域242,252,262と、短期データ用記憶領域243,253,263とを有している。なお、長期データ、中期データ、短期データの詳細については後述するが、本実施形態において、制御装置20の記憶制御機能は、長期データを参照する場合には、長期データ用記憶装置24にアクセスし、中期データを参照する場合には、中期データ用記憶装置25にアクセスし、短期データを参照する場合には、短期データ用記憶装置26にアクセスする。
【0095】
また、制御装置20の記憶制御機能は、外部情報サーバ5から取得した地理空間情報を、各情報記憶装置24~26の長期データ用記憶領域241,251,261、中期データ用記憶領域242,252,262、短期データ用記憶領域243,253,263へとそれぞれ振り分ける機能を有する。また、地理空間情報は、外部情報サーバ5が収集した状態のままの生データと、制御装置20で使用できるように、外部情報サーバ5において収集した生データを加工した加工データとに分けられる。長期データ用記憶装置24、中期データ用記憶装置25および短期データ用記憶装置26は、収集された地理空間情報(生データ)をそのまま蓄積する領域と、生データが加工された加工データを蓄積する領域とをさらに有する。なお、本実施形態において、長期データ用記憶装置24、中期データ用記憶装置25および短期データ用記憶装置26は、全く同じデータ構成となっている。
【0096】
本実施形態では、外部情報サーバ5が生データを収集する際に、外部情報サーバ5により、生データの整合性チェック(たとえば、互いに接続される2つの道路の交差座標が一致しているか、データが極端に逸脱していないか、あるいは、地理上の座標が危険地帯上にないかなどの確認)が行われる。また、外部情報サーバ5は、収集した生データと予め用意した更新のための閾値とを比較し、所定の条件を満たすか(生データを加工し情報記憶装置24の情報を更新する必要があるか)を判定する。たとえば、信号機や標識物などが曲がっている場合や、地震や経年変化で徐々にずれた場合など、信号機や標識物の位置の補正が必要な場合に、外部情報サーバ5には、個別に測定された新しい座標、標高が記憶されるが、これら座標や標高があり得ない値であったり、異なる自動運転システムで得られた座標系であり誤差が大きい場合には、外部情報サーバ5は、たとえば補正前の座標や標高に対して1~2m前後の閾値を設けることができる。この場合、外部情報サーバ5は、閾値を超えた座標や標高などのデータを無視するか、あるいは、車種や座標取得方式の違いにより変換可能であれば変換して記憶する構成とすることができる。また、外部情報サーバ5は、前述の記憶平均や記憶標準偏差を用いて異常データを除外し、地理空間情報に不整合(たとえば出入り口の座標や方向のズレ)が出ないように整合性チェックを行うこともできる。
【0097】
また、本実施形態において、外部情報サーバ5は、データの特性に応じて、外部情報サーバ5が記憶するデータの更新期間をデータごとに設定し、既存データに対する新規データの変化量がデータに支障の出ない誤差程度である場合、あるいは、前回更新日時から所定のデータ更新期間を経過していない場合には、データを更新しない構成とすることができる。ここで、本実施形態において、外部情報サーバ5が収集する地理空間情報は、更新頻度に応じて、長期データ、中期データ、短期データに分けられる。長期データ、中期データおよび短期データの詳細は後述するが、外部情報サーバ5はデータの変化量が誤差を超える変化量である場合にのみ、データの更新を行う構成とすることができる。
【0098】
そして、外部情報サーバ5は、整合性チェックをクリアし、また、更新のための条件を満たした場合に、データを記憶する構成とすることができる。また、インターネット上で収集された大量の生データを、各車両の制御装置20においてそのまま処理することが困難な場合があるため、外部情報サーバ5は、収集した生データについて、標準偏差を求めて極端なデータを削除したり、時系列に並べたり、平均を求めたりすることで、生データの加工を行い、加工データとして記憶することもできる。また、外部情報サーバ5は、他の車種の車両や他の走行制御システムにおいて取得されたデータが外部情報サーバ5にアップロードされた場合には、車種やシステムの違いにより、本実施形態に係る走行制御装置2でそのまま使えない場合もあるため、そのような場合には、一般化するか、車種の違いを補正する加工を行う構成とすることもできる。そして、外部情報サーバ5は、記憶した生データおよび加工データを、各車両に配信する。各車両では、制御装置20の記憶制御機能が、通信装置3を介して、外部情報サーバ5からデータを受信し、受信したデータを情報記憶装置24~26の各記憶領域241~243,251~253,261~263に振り分け、記憶領域241~243,251~253,261~263に記憶されているデータを更新する。また、この場合、データ構成単位ごとに、更新の開始時と完了時のそれぞれの日時も記録される。なお、データ書式に変更があれば、データ構成ごとに、リビジョンも保存することが好ましい。また、記憶制御機能は、走行制御装置2の記憶部に受信したデータを一時保存し、各記憶領域241~243,251~253,261~263に既に記憶されている更新対象のデータと、これから記憶領域241~243,251~253,261~263に振り分ける更新用のデータとを比較し、これから記憶領域241~243,251~253,261~263に振り分けるデータの方が、リビジョンが高い、あるいは、更新開始日時が新しく、かつ、更新完了日時が更新開始日時よりも新しい場合に、一時保存した更新用のデータで、更新対象データを更新する構成とすることができる。
【0099】
情報記憶装置24~26の長期データ用記憶領域241,251,261は、地理空間情報のうち、更新頻度が比較的少ない長期データが記憶される記憶領域である。長期データは、主に、区分地理情報と、車両情報とから構成される。区分地理情報は、走行予定進路などの進路情報(たとえば上述した分岐合流点や進行路の情報)に加えて、進路座標、進路形状情報(たとえば上述した道路の結節点や車線中心位置の情報を含む)、進路に付随する標識情報、進路を管轄する組織(国際組織、国、または自治体)とその法規法令情報が含まれる。また、区分地理情報は、図12図13に示すように、進行路情報の地理を中心とした構成要素(道路の分岐箇所や安全地帯など)の情報も含む。また、車両情報には、自車両の諸元、自車両の装備や装着状態、搭乗責任者や搭乗者の資格、所属、優先設定情報などが含まれる。車両情報は、長期データとして、長期データ用記憶領域241,251,261に保存される。ただし、車両情報は長期データ用記憶領域241,251,261にそのまま記憶されず、まずは、制御装置20の記憶制御機能により、長期データ用記憶領域241,251,261に反映すべきか否かの判定が行われ、反映しなくても許容される範囲にある場合には長期データ用記憶領域241,251,261への反映が避けられる。そのため、長期データ用記憶領域241,251,261は、概ね1か月以上の間隔で更新される傾向にある。また、長期データ用記憶領域241,251,261に登録される長期データは、収集されたままの生データではなく、更新しやすい形態に加工、変更、修正された加工データとすることが好ましい。
【0100】
情報記憶装置24~26の中期データ用記憶領域242,252,262は、地理空間情報のうち更新頻度が中程度の中期データが記憶される記憶領域である。中期データは、長期データの次に重要な情報であり、たとえば、工事情報、道路規制情報、装備情報、また長期にわたる大量の積雪や復旧に時間のかかる停電や陥没、倒壊などの災害情報が含まれる。また、中期データとして、自車両のタイヤの摩耗情報や駆動用のバッテリーの寿命など徐々に変化し管理が必要な情報であって、数日または数週間単位のデータ寿命またはデータ更新が必要な車両情報を含む構成とすることができる。なお、中期データに含まれる車両情報は、外部情報サーバ5から受信する中期データとは異なり、自車両が備える車両状況監視系から取得した車両情報や、メンテナンス時に外部から入力された車両情報が、記憶制御機能により中期データ用記憶領域252,262に書き込まれ、更新される。中期データ用記憶領域252,262においても、制御装置20の記憶制御機能により、中期データを反映するか否かの判断が行われ、必要最低限の更新のみが行われる。そのため、中期データ用記憶領域252,262は、おおむね1日以上、または1週間以上の間隔で更新される傾向にある。ただし、事故や災害などが発生したことを示す緊急性の高い中期データについては、速やかに中期データ用記憶領域252,262において更新される。中期データ用記憶領域252,262に登録される中期データは、長期データと同様に、収集されたままの生データではなく、利用しやすい形態に加工、変更、修正された加工データとすることが好ましいが、緊急性の高い中期データについては生データのまま登録する構成とすることができる。また、長期データ用記憶装置24内の中期データ用記憶領域242は記憶装置の破損対策にのみ使用するため、通常はデータ更新を行わない。これにより、長期データ用記憶装置24への読み書き回数を低減させ寿命も延ばすことができる。
【0101】
情報記憶装置24~26の短期データ用記憶領域243,253,263は、地理空間情報のうち更新頻度が比較的多い短期データが記憶される記憶領域である。短期データとしては、たとえば、輻輳データ、積雪量などの天候データ、さらに自車両の位置座標データなどが含まれる。短期データは、生データのまま、短期データ用記憶領域263に登録することができるが、一部は加工または変更して短期データ用記憶領域263に登録することができる。外部情報サーバ5により収集された生データを、そのまま短期データとして、短期データ用記憶領域263で更新することができるが、自車両とネットワーク回線網との接続が常に確立されるとは限らないため、輻輳データは特定の曜日や休日で統計的に処理し、積雪量に関しては状況からの予測も交えて中期データ側にも記憶する構成とすることができる。なお、短期データに関しては生データとダウンロード対象の短期データとを分けなくとも良い。また、長期データ用記憶装置24内の短期データ用記憶領域243と中期データ用記憶装置25内の短期データ用記憶領域253は記憶装置の破損対策にのみ使用するため、通常はデータ更新を行わない。これにより長期データ用記憶装置24と中期データ用記憶装置25への読み書き回数を低減させ寿命も延ばす。
【0102】
本実施形態において、記憶装置21~26は、たとえば、図20に示す構成例とすることができる。不揮発性記憶装置に主に使用されているフラッシュメモリーには寿命があり、突然読み書きできなくなることもあるが、自動運転における記憶装置の破損は事故に直結することも考えられるため、用途に合わせて記憶するデータの振り分けが必要である。また、マスクROMを使用した記憶装置は、データが安定しているが一度書き込んでしまうと書き直しがきかないため、データ更新をする時には記憶装置自体の交換が必要となる。つまり交換可能な形態とすることが好ましい。交換可能な記憶装置として、HDDやフラッシュメモリーが挙げられるが、HDDは、振動、大きな加速度に弱く、振動対策には限界がある。一方で、フラッシュメモリーは、ブロックで構成され、データはブロック単位で書き込まれる。フラッシュメモリーは、高温になるほどデータの保持時間が短くなるが、データの保持には極小のキャパシターが使用されるため、誤り訂正コードを用いるなどすることで、一般に、ブロック単位の書き込み可能回数は10万回前後、データ保持時間も10万時間を達成することができる。ただし、同じフラッシュメモリーでも大容量のSSDではさらにメーカが保証しているデータの保持時間が3ヶ月から1年程度のものも多い。そのため、SSDを含むフラッシュメモリーを利用する場合には、高温にならない箇所に設置すると同時に、各極小キャパシターを再充電するために各記憶装置24~26上の長期データや中期データもデータが消えない程度の間隔、つまり少なくとも使用するSSDのメーカ保証保持時間よりも十分に短い時間間隔で定期的にデータを更新することが好ましい。また、SSDのメーカ保証時間よりも長い時間、自車両を起動しなかった場合には、起動後の最初の使用時前には、全てのSSDのデータを走行制御装置2で外部情報サーバ5からダウンロードし更新することが好ましい。
【0103】
本実施形態では、図20に示すように、走行制御プログラムを記憶する記憶装置21はマスクROMで構成し、時計データと暦データなどを記憶する記憶装置22はバッテリーバックアップSRAMに記憶、更新する構成とすることができる。また、位置座標データを記憶・更新する記憶装置23は、SSDまたはバッテリーバックアップSRAMで構成することができる。さらに、情報記憶装置24~26は、SSDで構成し、重要な道路などの地理情報データは、長期データ用記憶領域241,251,261、中期データ用記憶領域252,262で多重化して記憶しておくことが好ましい。また、長期データの次に重要な事故情報や道路規制情報、長期にわたる災害情報などのデータは、中期データ用記憶領域252,262で多重化して記憶しておくことが好ましい。なお、位置座標データは、短期データ用記憶領域263の中に用意してもよい。
【0104】
また、フラッシュメモリーで構成されているメモリーには、SDメモリーカード、SSD、USBメモリー、eMMCなどがあるが、バッテリーバックアップメモリーなど一部のものを除き、不揮発性メモリーと呼ばれるもののほとんどが該当する。また、記憶装置としてHDDやSSDなどを使用する場合に、記憶装置を複数台用意しデータを多重記憶するレイド(RAID)と呼ばれる信頼性向上の方式があり、どれか1つのHDDが破損した場合には、支障が生じにくいが、更なる破損が発生する前にHDDの交換と復旧作業が必要となり、その間、使用できなくなる。しかも、通常はレイドを組む時に使用するHDDやSSDはほぼ同時期に製造され、同様の頻度で使用されることが多いため、破損の時期も近いものになりやすい。特に、自動運転においては組み込み式となり、運転者が走行中に道の真中で交換、復旧作業をすることは不可能に近く、致命的となり得るため、レイド構成ではフラッシュメモリーを使用した記憶装置の破損に対してはカバーできない。これに対して、近年、FeRAMと呼ばれるフラッシュメモリーに代わるメモリーが利用されている。FeRAMは、フラッシュメモリーのようなブロック構成ではなく、RAMのようにアドレス単位での読み書きができる。また、フラッシュメモリーが基本的に書き込みで破損して行くのに対し、FeRAMは、アドレス単位での読み書き両方で破壊が進んで行き、フラッシュメモリーの書き込み回数がブロック当たり10万回前後に比べると10兆回の寿命があるため、実用上、問題が発生しにくい。ここで、メモリー破壊の発生において、どの部分で破壊が発生するかは、偶然に近いものであるが、データ部分が壊れた場合、データの誤り訂正コードで修復可能な範囲であれば良いが、それを越えるとデータ異常となる。また、ファイルシステム部分などのように共通で使用される箇所はアクセス回数も集中するため、その分、壊れやすく、壊れた場合にはメモリー全体に影響を及ぼし、SSDやeMMCなどのフラッシュメモリーを使用した場合、全てのデータの読み書きができなくなることがある。これに対して、FeRAMでは、集中したアドレスへの頻繁な読み書きに対して若干弱さを有するが、集中したアドレスへの頻繁な読み書きに対してその効果を最大限に発揮し、その先にあるメモリーの代替を行うキャッシュメモリーというものが一般に知られている。そこで、FeRAMでは、前段に専用のキャッシュメモリー(SRAM)を配置することにより、FeRAMへの読み書きアドレスの集中をキャッシュメモリーが大幅に軽減させることができるため寿命を大幅に延ばすことが可能と考えられる。そのため、図20に示すように、走行制御プログラムを記憶する記憶装置21はマスクROM、または、FeRAMとキャッシュメモリーの組み合わせで構成し、位置座標を記憶する記憶装置23、および情報記憶装置24~26では、FeRAMとキャッシュメモリーの組み合わせで構成することができる。
【0105】
また、本実施形態において、走行制御装置2は、長期データ用記憶装置24、中期データ用記憶装置25および短期データ用記憶装置26のうちいずれかで、誤り訂正コードによる訂正の限界を超え、データエラーが顕在化した時には、その記憶装置を使用しないようにし、正常動作中の記憶装置の用途を順に変更する。具体的には、走行制御装置2の記憶制御機能は、正常時には、図21(A)に示すように、外部情報サーバ5から受信したデータを、長期データ、中期データ、短期データとして、長期データ用記憶装置24、中期データ用記憶装置25および短期データ用記憶装置26にそれぞれ記憶する。一方、たとえば、図21(B)に示すように、短期データ用記憶装置26が破損した場合には、走行制御装置2は、長期データ用記憶装置24および中期データ用記憶装置25はそのままとし、短期データ、あるいはRAM上に記憶された位置座標データのみを中期データ用記憶装置25に新たに記憶させる。また、図示していないが、中期データ用記憶装置25が破損した場合は、走行制御装置2は、短期データ用記憶装置26を中期データ用記憶装置25とし、中期データと長期データおよび現在座標の更新のみを行わせる。さらに、図示していないが、長期データ用記憶装置24が破損した場合は、中期データ用記憶装置25を長期データ用記憶装置24とし、短期データ用記憶装置26を中期データ用記憶装置25とし、中期データと長期データおよび現在座標の更新のみを行わせる。
【0106】
また、図21(C)に示すように、記憶装置が2台破損した場合には、残りの記憶装置を長期データ用記憶装置24とし現在座標のみを長期データ用記憶装置24に記憶し、できるだけ速やかに自車両を安全でデータ更新可能な場所に移動し、記憶装置を交換させるようにする。なお、図21(E),(F)に示すように、破損した記憶装置と新しい記憶装置を交換した時には、走行制御装置2は、新しい記憶装置を長期データ用記憶装置24とし、新しい記憶装置に長期データを書き込んでから使用する。また、現在座標は、バッテリーバックアップSRAMも併用した方がより確実で好ましい。
【0107】
以上のように、本実施形態に係る走行制御システム1では、自車両の周囲を撮像する複数の多眼カメラ10と、複数の多眼カメラ10の画像に基づいて、移動体の走行制御を行う走行制御装置2と、を有し、多眼カメラ10は、少なくとも鉛直方向において互いにずれて配置された複数の単眼カメラ10a~10cから構成されている。これにより、本実施形態では、多眼カメラ10を構成する単眼カメラ10a~10cの上下方向(鉛直方向)の位置の差に基づいて画像認識が可能となり、多眼カメラ10ごとに、立体物である対象物の形状や、対象物の縞模様などを適切に認識することが可能となる。さらに、複数の単眼カメラ10a~10cの画像に基づいて対象物の検出結果を、複数の多眼カメラ10の画像に基づいてさらに補正することが可能であり、対象物の検出精度を高めることが可能となる。
【0108】
以上、本発明の好ましい実施形態例について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の記載に限定されるものではない。上記実施形態例には様々な変更・改良を加えることが可能であり、そのような変更または改良を加えた形態のものも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0109】
また、上述した実施形態では、多眼カメラ11~114を備える構成を例示したが、これに限定されず、たとえば、車両ルーフの中央側に配置され、車両の上空に存在する物体を検出する多眼カメラをさらに備える構成とすることができる。また、本発明を、船舶などの水上移動が可能な移動体に適用する場合には、多眼カメラ11~114を水面よりも高い位置に配置するとともに、移動体の下側にも多眼カメラを配置し移動体の下側に存在する物体を検出する構成とすることもできる。また、本願発明をバイクなど運転者が跨る移動体に適用する場合には、運転者の身体により多眼カメラの検出が阻害されないように、多眼カメラの向きを調整する構成とすることが好ましい。
【符号の説明】
【0110】
1…走行制御システム
10,11~114…多眼カメラ
10a~10c…単眼カメラ
2…走行制御装置
20…制御装置
21~23…記憶装置
24…長期データ用記憶装置
241…長期データ用記憶領域
242…中期データ用記憶領域
243…短期データ用記憶領域
25…中期データ用記憶装置
251…長期データ用記憶領域
252…中期データ用記憶領域
253…短期データ用記憶領域
26…短期データ用記憶装置
261…長期データ用記憶領域
262…中期データ用記憶領域
263…短期データ用記憶領域
3…通信装置
41~44…マイク
5…外部情報サーバ
【要約】
【課題】撮像画像に基づいて移動体の走行を適切に制御することができる走行制御システムを提供する。
【解決手段】移動体の周囲を撮像する複数の多眼カメラ10と、複数の多眼カメラ10の画像に基づいて、移動体の走行制御を行う制御装置20と、を有し、多眼カメラ10は、少なくとも鉛直方向において互いにずれて配置された複数の単眼カメラ10a~10cから構成されている、走行制御システム。
【選択図】図1
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