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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】剪断装置
(51)【国際特許分類】
   B23D 15/08 20060101AFI20230720BHJP
   B23D 15/14 20060101ALI20230720BHJP
   B23D 15/04 20060101ALI20230720BHJP
   B23K 37/00 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
B23D15/08 Z
B23D15/14
B23D15/04
B23K37/00 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023039122
(22)【出願日】2023-03-13
【審査請求日】2023-03-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599095159
【氏名又は名称】株式会社ムラタ溶研
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【弁理士】
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100137648
【弁理士】
【氏名又は名称】吉武 賢一
(72)【発明者】
【氏名】村田 彰久
(72)【発明者】
【氏名】村田 唯介
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-030976(JP,A)
【文献】特開2020-168665(JP,A)
【文献】特開2012-069791(JP,A)
【文献】特開平09-300129(JP,A)
【文献】特許第7055505(JP,B1)
【文献】実開昭60-160992(JP,U)
【文献】実開昭59-146742(JP,U)
【文献】米国特許第04313357(US,A)
【文献】中国実用新案第213318026(CN,U)
【文献】国際公開第2010/084579(WO,A1)
【文献】特開平04-237596(JP,A)
【文献】特開昭61-182876(JP,A)
【文献】特開昭59-047117(JP,A)
【文献】実開昭47-026391(JP,U)
【文献】米国特許第05335499(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第0838294(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 15/00-19/08
B23D 23/00-31/04
B23K 37/00-37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
剪断ヘッドと、剪断ヘッドに設けられる固定刃及び可動刃と、剪断ヘッドの一部を含む位置決め機構とを備え、剪断ヘッドは、互いに平行に延びる第一辺部及び第二辺部と、第一辺部と第二辺部とを各辺部の基端側で連結する連結部とを一体に有する剪断装置であって、
位置決め機構は、第一辺部の先端側に設けられた第一位置決め穴と、第二辺部の先端側に対して出没可能に設けられ、第一位置決め穴に嵌合可能な第一位置決め部材とを有する剪断装置において、
位置決め機構は、第一位置決め部材の先端側に設けられ、第一位置決め部材の出没方向に直交する向きに開口形成される第二位置決め穴と、
第一位置決め穴に対して出没可能に設けられ、第一位置決め部材が第一位置決め穴に嵌合した状態で第二位置決め穴に嵌合可能な第二位置決め部材と
第一位置決め部材を出没方向に沿って往復動可能な第一流体圧シリンダと、
第二位置決め部材を出没方向に沿って往復動可能な第二流体圧シリンダと、
第一及び第二流体圧シリンダに作動流体をそれぞれ供給可能な流体供給源と、をさらに有することを特徴とする剪断装置。
【請求項2】
各流体圧シリンダと流体供給源との間、及び各流体圧シリンダと流体排出路との間に切替え弁が設けられ、
切替え弁は、双方の流体圧シリンダが押出し動作を生じるように各流体圧シリンダと流体供給源との接続状態、及び各流体圧シリンダと流体排出路との接続状態を構成する第一切替え位置と、
双方の流体圧シリンダが引込み動作を生じるように各流体圧シリンダと流体供給源との接続状態、及び各流体圧シリンダと流体排出路との接続状態を構成する第二切替え位置とに切替え可能とされる請求項に記載の剪断装置。
【請求項3】
第一切替え位置において流体供給源と第二流体圧シリンダとの間に、メータイン型のスピードコントローラが配設されている請求項に記載の剪断装置。
【請求項4】
第一流体圧シリンダは複動式シリンダ、第二流体圧シリンダはスプリングでピストンを引込み側に付勢する単動式シリンダである請求項に記載の剪断装置。
【請求項5】
第二切替え位置において流体排出路と第一流体圧シリンダの基端側シリンダ室との間に、メータアウト型のスピードコントローラが配設されている請求項に記載の剪断装置。
【請求項6】
第二切替え位置において流体供給源と第一流体圧シリンダの先端側シリンダ室との間に、メータイン型のスピードコントローラが配設されている請求項又はに記載の剪断装置。
【請求項7】
ピストンが可動刃に連結された可動刃駆動用シリンダと、作動油を供給することで可動刃駆動用シリンダを押出し側に駆動可能な増圧シリンダとをさらに備え、
第一及び第二流体圧シリンダは、流体供給源としてのエアコンプレッサから作動空気の供給を受けて駆動し、
増圧シリンダは、エアコンプレッサからの作動空気の供給を受けて可動刃駆動用シリンダに増圧された作動油を供給可能に構成されている請求項に記載の剪断装置。
【請求項8】
可動刃駆動用シリンダは複動式シリンダであって、
基端側シリンダ室に増圧シリンダが接続されると共に、切替え弁が第二切替え位置にある場合に先端側シリンダ室がエアコンプレッサと接続されている請求項に記載の剪断装置。
【請求項9】
請求項1に記載の剪断装置と、剪断装置で剪断された帯状金属板の端縁同士を溶接可能な溶接トーチとを備えた帯状金属板の突合せ溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剪断装置に関し、特に金属板を剪断により切断するための剪断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、先行する帯状金属板と後続の帯状金属板とを連結するために、先行する帯状金属板をその後端縁で剪断し、後続の帯状金属板をその先端縁で剪断して、切断された互いの端縁同士を突き合わせて溶接する溶接装置が知られている(特許文献1及び特許文献2を参照)。
【0003】
図9は、従来の帯状金属板溶接装置100の一例であり、溶接トーチ101と、剪断装置102とを備えている。剪断装置102は、図9に示す収容位置から、矢印Y1で示す方向に移動することができる。溶接トーチ101は、図9に示す待機位置から、矢印Y2で示す方向に往復動して溶接を行うことができる。
【0004】
この種の溶接装置に組み込まれる剪断装置102は、シャーリング装置、剪断機等とも呼ばれ、一般に、図10及び図11に概略構造として示すように、略コの字状をなす剪断ヘッド103の第一辺部に固定された固定刃104と、第一辺部と平行して延びる剪断ヘッド103の第二辺部に設けられた可動刃105と、剪断ヘッド103に設けられて可動刃105を上下動させる油圧シリンダ106とを備え、可動刃105を上下方向に移動させることにより、帯状金属板を剪断可能としている。なお、図10は可動刃の待機位置、図11は可動刃の剪断位置をそれぞれ示している。
【0005】
従来の剪断装置では、剪断力向上のために、増圧シリンダ(増圧ブースタとも称される。)を設けて可動刃駆動用の油圧シリンダを作動する油圧を高めることにより(特許文献2を参照)、板厚寸法の大きい帯状金属板への対応を図っている。このように、可動刃の駆動力を高めることで、固定刃を支持する剪断ヘッドへの剪断荷重も増大するため、ガタなく帯状金属板を剪断するために剪断ヘッドの剛性を高める必要が生じる。しかしながら、ただ、剪断ヘッドを構成する金属板の板厚寸法を増やす等して剪断ヘッドの剛性を高めたのでは、剪断装置が大型化し、重量の増加を招く。剪断装置の重量が増加することで、剪断装置の駆動装置を巨大化させる必要が生じ、結果、溶接装置の巨大化や製造コストの増大を招くといった問題があった。
【0006】
そこで、本出願人は、剪断ヘッドを大型化することなく剛性を高めるための新たな技術を提案している(特許文献3を参照)。すなわち、この特許文献には、並行状に延びる第一辺部及び第二辺部と、第一辺部及び第二辺部を連設する連設部とを一体に有するコ字状の剪断ヘッドにおいて、第一辺部の先端側に位置決め孔が設けられると共に、第二辺部の先端側に対して出没し、位置決め孔に嵌入可能なピストンロッドが設けられ、このピストンロッドが、可動刃を駆動するための油圧シリンダのピストンロッドと同期して作動するように構成された剪断装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-86686号公報
【文献】特開2018-39090号公報
【文献】特許第7055505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、第二辺部から突出したピストンロッドが第一辺部に設けた位置決め孔に嵌合し得る構造とすることで、特に剪断方向に直交する向きに振れやすい構造(梁構造)をなす第一辺部のガタを効果的に抑制して第一辺部に取り付けられた固定刃の位置精度を高めることが可能となる。しかしながら、上述した剪断装置の剪断対象を板厚寸法のさらに大きな帯状金属板にまで拡げることを目指す場合、これまで以上に巨大な荷重が剪断時に固定刃に作用することを想定して、剪断ヘッドのさらなる剛性向上を図る必要が生じる。あるいは、剪断ヘッドを含めた剪断装置の小型化のために剪断ヘッドの軽量化を目指す場合、剪断ヘッドの剛性低下を防ぐための新たな方策が必要となる。
【0009】
以上の事情に鑑み、本発明は、大型化を避けつつ剪断ヘッドのさらなる剛性向上を可能とする剪断装置を提供することを、解決すべき技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題の解決は、本発明に係る剪断装置によって達成される。すなわち、この剪断装置は、剪断ヘッドと、剪断ヘッドに設けられる固定刃及び可動刃と、剪断ヘッドの一部を含む位置決め機構とを備え、剪断ヘッドは、互いに平行に延びる第一辺部及び第二辺部と、第一辺部と第二辺部とを各辺部の基端側で連結する連結部とを一体に有する剪断装置であって、位置決め機構は、第一辺部の先端側に設けられた第一位置決め穴と、第二辺部の先端側に対して出没可能に設けられ、第一位置決め穴に嵌合可能な第一位置決め部材とを有する剪断装置において、位置決め機構は、第一位置決め部材の先端側に設けられ、第一位置決め部材の出没方向に直交する向きに開口形成される第二位置決め穴と、第一位置決め穴に対して出没可能に設けられ、第一位置決め部材が第一位置決め穴に嵌合した状態で、第二位置決め穴に嵌合可能な第二位置決め部材とをさらに有する点をもって特徴付けられる。
【0011】
このように、本発明に係る剪断装置では、位置決め機構の構成要素として、第一位置決め部材の先端側に新たな位置決め穴を設けると共に、第一位置決め穴に対して出没可能に構成され、第一位置決め部材が第一位置決め穴に嵌合した状態で、第二位置決め穴に嵌合可能な第二位置決め部材を設けるようにした。この構成によれば、第一位置決め穴と嵌合した状態の第一位置決め部材を第二位置決め部材により高精度にかつ強固に位置決めした状態で固定することができる。よって、例えば大きな剪断荷重が作用した際、第一位置決め部材と第一位置決め穴との嵌合構造により位置決めされた状態を第二位置決め部材と第二位置決め穴との嵌合構造により維持して、ガタの発生を抑制することができる。あるいは、迅速に位置決めを図るべく第一位置決め部材と第一位置決め穴とのはめ合いを緩めに設定した場合であっても、嵌合後の第一位置決め部材を第二位置決め部材により適切な位置に修正することができる。以上より、本発明に係る剪断装置によれば、板厚寸法の大きな金属板に対しても所望の切断線に沿って正確に切断することが可能となる。
【0012】
また、本発明に係る剪断装置は、位置決め機構が、第一位置決め部材を出没方向に沿って往復動可能な第一流体圧シリンダと、第二位置決め部材を出没方向に沿って往復動可能な第二流体圧シリンダと、第一及び第二流体圧シリンダに作動流体をそれぞれ供給可能な流体供給源とをさらに有してもよい。
【0013】
このように構成することで、各流体圧シリンダを駆動するための装置(流体供給源)が一つで済む。よって、例えばこれら流体圧シリンダと流体供給源を全て剪断ヘッドに集約でき、剪断装置のさらなる小型化が可能となる。
【0014】
また、本発明に係る剪断装置において、各流体圧シリンダと流体供給源との間、及び各流体圧シリンダと流体排出路との間に切替え弁が設けられ、切替え弁は、双方の流体圧シリンダが押出し動作を生じるように各流体圧シリンダと流体供給源との接続状態、及び各流体圧シリンダと流体排出路との接続状態を構成する第一切替え位置と、双方の流体圧シリンダが引込み動作を生じるように各流体圧シリンダと流体供給源との接続状態、及び各流体圧シリンダと流体排出路との接続状態を構成する第二切替え位置とに切替え可能とされてもよい。
【0015】
この構成によれば、二つの位置決め部材を一度に作動させることができるので、効率よくかつ迅速に固定刃の位置決め及びその解除動作が可能となる。
【0016】
また、本発明に係る剪断装置において、第一切替え位置において流体供給源と第二流体圧シリンダとの間に、メータイン型のスピードコントローラが配設されてもよい。
【0017】
メータイン型のスピードコントローラは、シリンダへの流体供給時における流体の絞り調整を図る機器であるから、上述のようにシリンダの押出し動作を図る第一切替え位置において流体供給源と第二流体圧シリンダとの間にメータイン型のスピードコントローラを配設することによって、第二流体圧シリンダのピストンに連結される第二位置決め部材の押出し速度を抑制し、又は第二位置決め部材の動き出しを遅らせることができる。よって、第一位置決め部材が第一位置決め穴にある程度まで嵌合した状態で、あるいは嵌合し終えた状態で第二位置決め部材を第一位置決め穴への侵入動作を開始することができる。従って、上述のように共通の流体供給源から流体を供給する場合であっても、無理なく第二位置決め部材を第一位置決め部材に設けた第二位置決め穴に嵌合させることが可能となる。
【0018】
また、本発明に係る剪断装置において、第一流体圧シリンダは複動式シリンダで、第二流体圧シリンダはスプリングでピストンを引込み側に付勢する単動式シリンダであってもよい。
【0019】
このように、流体圧制御に比べて応答性に優れたスプリングの弾性復元力により第二流体圧シリンダを引込むことにより、第一位置決め部材よりも先に第二位置決め部材を第二位置決め穴から引き抜くことができる。これにより、共通の流体圧で双方の位置決め部材の往復動を制御する場合においても、双方の位置決め部材を対応する位置決め穴から無理なく引き抜いて位置決め前の状態に復帰させることが可能となる。
【0020】
また、本発明に係る剪断装置において、第二切替え位置において流体排出路と第一流体圧シリンダの基端側シリンダ室との間に、メータアウト型のスピードコントローラが配設されてもよい。
【0021】
メータアウト型のスピードコントローラは、シリンダ室からの流体排出時における流体の絞り調整を図る機器であるから、上述のように流体圧シリンダの引込み動作を図る第二切替え位置において流体排出路と第一流体圧シリンダとの間にメータアウト型のスピードコントローラを配設することによって、引込み時に作動流体が排出される基端側シリンダ室からの流体の排出を抑制して、第一位置決め部材の引込み動作を遅らせることが可能となる。よって、第二位置決め部材をより確実に第二位置決め穴から引き抜くことが可能となる。
【0022】
また、本発明に係る剪断装置において、第二切替え位置において流体供給源と第一流体圧シリンダの先端側シリンダ室との間に、メータイン型のスピードコントローラが配設されてもよい。
【0023】
このように、複動式シリンダとした第二流体圧シリンダの先端側シリンダ室への流体の供給を遅らせることによっても、第一位置決め部材の引込み動作を遅らせて、第二位置決め部材をより確実に第二位置決め穴から引き抜くことが可能となる。
【0024】
また、本発明に係る剪断装置は、ピストンが可動刃に連結された可動刃駆動用シリンダと、作動油を供給することで可動刃駆動用シリンダを押出し側に駆動可能な増圧シリンダとをさらに備えてもよい。また、この場合、第一及び第二流体圧シリンダは、流体供給源としてのエアコンプレッサから作動空気の供給を受けて駆動し、増圧シリンダは、エアコンプレッサからの作動空気の供給を受けて可動刃駆動用シリンダに増圧された作動油を供給可能に構成されてもよい。
【0025】
上述のように、可動刃駆動用シリンダを押出し側に駆動可能な増圧シリンダをさらに設ける場合、第一及び第二流体圧シリンダを駆動させるためのエアコンプレッサを利用して増圧シリンダを駆動させることにより、エアコンプレッサによる作動空気の生成及び供給をより効果的に活用することができる。また、上述のように構成すれば、エアコンプレッサが一台で済むので、剪断装置の大型化を避けつつ、剪断力の強化と剪断ヘッドの剛性向上を共に達成することが可能となる。
【0026】
また、本発明に係る剪断装置において、可動刃駆動用シリンダは複動式シリンダであって、基端側シリンダ室に増圧シリンダが接続されると共に、切替え弁が第二切替え位置にある場合に先端側シリンダ室にエアコンプレッサが接続されてもよい。
【0027】
このように構成すれば、可動刃駆動用シリンダの引込み動作についても各流体圧シリンダ駆動用のエアコンプレッサを活用することができる。もちろん、エアコンプレッサは一台で足りるので、剪断装置の大型化を懸念する必要もない。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明に係る剪断装置によれば、大型化を避けつつ剪断ヘッドのさらなる剛性向上を図ることが可能となるので、帯状金属板の板厚増加にも容易に対応することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態に係る剪断装置の正面図であって、剪断装置の剪断機構の構成を概念的に示す図である。
図2図1に示す位置決め機構の全体構成を概念的に示すA-A断面図である。
図3図1に示す可動刃を拡大した図である。
図4図1に示す剪断装置であって、可動刃が切込み位置にある正面図である。
図5図1に示す剪断装置であって、可動刃が剪断終了位置にある正面図である。
図6図2に示す位置決め機構の動作態様の一例を示すA-A断面図であって、第一位置決め部材が第一位置決め穴に嵌合した状態を示すA-A断面図である。
図7図2に示す位置決め機構の動作態様の一例を示すA-A断面図であって、第二位置決め部材が第二位置決め穴に嵌合した状態を示すA-A断面図である。
図8図2に示す位置決め機構の動作態様の一例を示すA-A断面図であって、第二位置決め部材が第二位置決め穴から引き抜かれた状態を示すA-A断面図である。
図9】従来の帯状金属板溶接装置を示す斜視図である。
図10】従来の剪断装置の概略構成を示す正面図である。
図11図10に示す剪断装置の作動状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態に係る剪断装置の内容を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態では水平姿勢をなす金属板を剪断可能に、すなわち鉛直上下方向に剪断可能なように剪断装置が配置される場合を例にとって説明する。もちろん、剪断装置の配置態様や使用態様はこれには限られない。剪断対象の形態又は剪断作業を実施する場所によって剪断方向は任意に設定可能である。
【0031】
図1及び図2は本実施形態に係る剪断装置1を示している。このうち、図1は、剪断装置1の主な構成を概念的に示す平面図、図2は、図1に示す剪断装置1の要部(後述する位置決め機構7)のA-A断面図をそれぞれ示している。図1に示すように、この剪断装置1は、剪断ヘッド2と、固定刃3と、可動刃4と、可動刃駆動用シリンダとしての第一駆動用シリンダ5及び第二駆動用シリンダ6と、位置決め機構7とを備える。本実施形態では、剪断装置1は、増圧シリンダ8をさらに備える。以下では、まず剪断装置1の剪断機構をなす各要素の説明及び剪断態様の一例を説明した後、位置決め機構7の詳細について説明する。
【0032】
剪断ヘッド2は、互いに平行に延びる第一辺部2a及び第二辺部2bと、第一辺部2aと第二辺部2bとを基端側で連結する連結部2cとを一体に有する。固定刃3は、剪断ヘッド2の第一辺部2aに固定されている。可動刃4は、剪断ヘッド2の第二辺部2bに対して上下動可能に取り付けられている。
【0033】
可動刃4の長手方向一方側には第一駆動用シリンダ5の第一ピストンロッド9が連結されると共に、可動刃4の長手方向他方側には第二駆動用シリンダ6の第二ピストンロッド10が連結されている。ここで、第一ピストンロッド9と第二ピストンロッド10とは互いに平行に設けられている。
【0034】
固定刃3の刃先は第一辺部2aと平行で、可動刃4の刃先は第一辺部2aに対して傾斜した状態に形成されている。もちろん、可動刃4の刃先を水平に形成してもよい。
【0035】
図3に示すように、可動刃4の長手方向一方側に形成された第一軸孔4aに、第一ピボット軸9aが挿通されている。また、可動刃4の長手方向他方側に形成された第二軸孔4bに、第二ピボット軸10aが挿通されている。本図示例では、図3に示すように、第一軸孔4aと第二軸孔4bは、いずれも可動刃4の長手方向を長軸とする長孔形状をなしている。このように構成することで、第一軸孔4aと第一ピボット軸9aとの間、及び第二軸孔4bと第二ピボット軸10aとの間に、後述する所定の遊びが設けられ、可動刃4は、第一ピストンロッド9及び第二ピストンロッド10とルーズジョイントにより連結された状態となる。
【0036】
第一駆動用シリンダ5と第二駆動用シリンダ6には、作動流体としての作動油を供給又は排出するための作動油路11が接続されている(図1を参照)。本実施形態では、作動油路11のうち第一駆動用シリンダ5との間で作動油の流通を図るための第一作動油路11aから第二駆動用シリンダ6との間で作動油の流通を図るための第二作動油路11bが分岐しており、第二作動油路11b上にスピードコントローラ12が配設されている。このスピードコントローラ12は、メータイン型のスピードコントローラであり、絞り12aにより第二駆動用シリンダ6に向かう作動油の速度、ひいては第二駆動用シリンダ6の作動タイミングを調整可能としている。
【0037】
また、本実施形態では、作動油路11の上流側に増圧シリンダ8が接続されている。増圧シリンダ8は、大径シリンダ8a及び小径シリンダ8bと、大径シリンダ8a内を摺動する大径ピストン8c及び小径シリンダ8b内を摺動する小径ピストン8dとを有する。大径ピストン8cは大径シリンダ8a内に作動空気の加圧室8eを区画形成し、小径ピストン8dは小径シリンダ8b内に作動油の増圧室8fを区画形成している。増圧室8fには作動油路11が接続され、加圧室8eには作動気体路13が接続される(詳細は後述する)。上記構成の増圧シリンダ8は、例えば剪断ヘッド2の連結部2c内に収容される(図1を参照)。
【0038】
次に、上記構成の剪断装置1の動作態様の一例を説明する。まず、図1に示すように、可動刃4が待機位置(下端位置)にある状態から、作動油路11を通じて加圧された作動油を第一駆動用シリンダ5及び第二駆動用シリンダ6に供給する。この際、第二駆動用シリンダ6につながる第二作動油路11b上にはメータイン型のスピードコントローラ12が配設されている。そのため、第二作動油路11bを通じて第二駆動用シリンダ6に向けて供給された作動油は、絞り12aによりその流れ(供給速度)が抑制され、図4に示すように、第二ピストンロッド10の作動が制限された状態で、第一ピストンロッド9が先行して押し出される。第一ピストンロッド9は、第一駆動用シリンダ5のピストン5aがシリンダヘッド側のストロークエンドに達する位置まで押し出され、ストロークエンド位置で停止する。第一ピストンロッド9がストロークエンドに達して停止した位置では、図4に示すように、可動刃4の刃先の長手方向一端側が、固定刃3の刃先と交差し、図示しない金属板の端縁部を剪断する切込み位置にある。
【0039】
第一ピストンロッド9が押し出される際、第二ピボット軸10aが支点となり、第一ピボット軸9aが力点となることにより、第二種テコの原理に基づいて可動刃4を作動させる。このような作動を可能にするために、第一軸孔4aと第一ピボット軸9aとの間、及び、第二軸孔4bと第二ピボット軸10aとの間に所定の遊び(図3を参照)が設けられ、可動刃4と、第一ピストンロッド9及び第二ピストンロッド10とがルーズジョイントにより連結されている。上記遊びの大きさは、可動刃4の寸法、第一軸孔4aと第二軸孔4bとの距離、第一ピストンロッド9及び第二ピストンロッド10のストローク長等によって適宜設定される。
【0040】
上述したように第二種テコの原理によって可動刃4を作動させることにより、小さな作動油圧力で大きな剪断力を発生させ得る。また、第一ピストンロッド9が第二ピストンロッド10より先に剪断方向へ作動してストロークエンドに達しているため、シャー角が大きくなり、剪断力が増す。
【0041】
第一ピストンロッド9がストロークエンドに達すると、第一駆動用シリンダ5に作動油をそれ以上供給できなくなるため、その分の作動油は、第二作動油路11bを通じて第二駆動用シリンダ6に作動油が供給される。これにより、第二ピストンロッド10が実質的に作動し始め、固定刃3と可動刃4との交差が進行して剪断動作が進行する。第二ピストンロッド10が押し出される際、第一ピボット軸9aが支点となり、第二ピボット軸10aが力点となることにより、第二種テコの原理によって可動刃4を剪断動作させる。第二ピストンロッド10の作動開始時にシャー角が増加しているため、大きな剪断力を得ることができる。
【0042】
剪断後に可動刃4を待機位置に戻す際、第一駆動用シリンダ5及び第二駆動用シリンダ6から作動油が排出される。この際、第二作動油路11b上にスピードコントローラ12を構成する逆止弁12bを設けておくことにより、第二駆動用シリンダ6からの作動油の排出が円滑に行われ、可動刃4を待機位置に迅速に戻すことが可能となる。
【0043】
以下、本発明の特徴的構成である位置決め機構7の詳細を説明する。
【0044】
位置決め機構7は、相対的に片持ち支持の形態となる第一辺部2aを相対的に両持ち支持の形態となる第二辺部2bに対して位置決めを行うための機構である。図1及び図2に示すように、この位置決め機構7は、第一位置決め穴14と、第一位置決め部材としての第一位置決めピン15と、第二位置決め穴16と、第二位置決め部材としての第二位置決めピン17とを有する。本実施形態では、位置決め機構7は、第一流体圧シリンダ18と、第二流体圧シリンダ19と、流体供給源としてのエアコンプレッサ20と、作動気体排出路21とをさらに有する。
【0045】
第一辺部2aの先端には、図1に示すように、第一辺部2aを延長する第一延長部22が取付けられている。また、第二辺部2bの先端には、第二辺部2bを延長する第二延長部23が取付けられている。第一位置決め穴14は、第一延長部22のうち第二辺部2bの第二延長部23と対向する面(ここでは下面22a)に開口形成されている。これに対して、第一位置決めピン15は、第二延長部23のうち第一辺部2aの第一延長部22と対向する面(ここでは上面23a)に対して出没可能に設けられる。そして、第一位置決めピン15は、上面23aから所定距離だけ突出した状態(ここではストロークエンドの状態)で、第一位置決め穴14と嵌合可能に構成されている。
【0046】
第二位置決め穴16は、図1及び図2に示すように、第一位置決めピン15の軸方向所定位置にかつ第一位置決めピン15の出没方向に直交する向きに開口形成されている。本実施形態では、第二位置決め穴16は、第一位置決めピン15を径方向に貫通するように形成されている(図2を参照)。これに対して、第二位置決めピン17は、第一位置決め穴14に対して出没可能なように第一延長部22に設けられる。また、第一位置決めピン15が第一位置決め穴14に嵌合した状態では、第一位置決めピン15に設けた第二位置決め穴16に第二位置決めピン17が嵌合可能に構成されている。
【0047】
また、本実施形態では、第一位置決めピン15はその先端にテーパ面など先端に向かうについて外径寸法が縮小する縮径面15aを有している。同様に、第二位置決めピン17はその先端にテーパ面など先端に向かうにつれて外径寸法が縮小する縮径面17aを有している。縮径面15aは、第一位置決めピン15が第一辺部2aの延長部(第一延長部22)に設けた第一位置決め穴14に嵌合を開始する際の案内面として機能し得る。同様に、縮径面17aは、第二位置決めピン17が第一位置決めピン15に設けた第二位置決め穴16に嵌合を開始する際の案内面として機能し、また第二位置決めピン17が第二位置決め穴16からの引抜き動作を開始する際の案内面としても機能し得る。
【0048】
第一流体圧シリンダ18は、第一位置決めピン15をその出没方向に沿って往復動可能に構成されている。本実施形態では、図1に示すように、第一流体圧シリンダ18のピストンロッド又はその延長部が第一位置決めピン15を構成している。また、本実施形態では、第一流体圧シリンダ18は複動式シリンダであって、第二延長部23の内壁部23bと、内壁部23bで囲まれた空間に収容されたピストン18aとで第一流体圧シリンダ18の基端側シリンダ室18b1と、先端側シリンダ室18b2とが区画形成されている。
【0049】
第二流体圧シリンダ19は、第二位置決めピン17をその出没方向に沿って往復動可能に構成されている。本実施形態では、図2に示すように、第二流体圧シリンダ19のピストンロッド又はその延長部が第二位置決めピン17を構成している。また、本実施形態では、第二流体圧シリンダ19は単動式シリンダであって、第一延長部22の内壁部22bと、内壁部22bで囲まれた空間に収容されたピストン19aとで第二流体圧シリンダ19の基端側シリンダ室19b1と、先端側シリンダ室19b2とが区画形成されている。この場合、先端側シリンダ室19b2に圧縮ばね24が収容され、ピストン19aの押出し動作に伴い圧縮ばね24にピストン19aを押戻す向きの弾性復元力を蓄積可能としている(図7を参照)。
【0050】
上記構成の第一流体圧シリンダ18と第二流体圧シリンダ19とは、所定構造の作動気体路13を介してエアコンプレッサ20と作動気体排出路21とに接続されている。また、作動気体路13のうち各流体圧シリンダ18,19とエアコンプレッサ20との間、及び各流体圧シリンダ18,19と作動気体排出路21との間には作動気体の流れを切り替える切替え弁25が配設されている(図2を参照)。
【0051】
この切替え弁25は、例えば図2に示す5ポート-2位置電磁弁であって、第一及び第二流体圧シリンダ18,19がともに押出し動作を生じるように各流体圧シリンダ18,19とエアコンプレッサ20との接続状態、又は各流体圧シリンダ18,19と作動気体排出路21との接続状態を構成する第一切替え位置P1(図6に示す位置)と、第一及び第二流体圧シリンダ18,19がともに引込み動作を生じるように各流体圧シリンダ18,19とエアコンプレッサ20との接続状態、又は各流体圧シリンダ18,19と作動気体排出路21との接続状態を構成する第二切替え位置P2(図2に示す位置)とに切替え可能に構成されている。
【0052】
具体的に、切替え弁25が第一切替え位置P1にある場合、図6に示すように、第一流体圧シリンダ18の基端側シリンダ室18b1は、作動気体路13を構成する第一気体路13aを介して、エアコンプレッサ20と接続されている。また、第二流体圧シリンダ19の基端側シリンダ室19b1は、第一気体路13a及び第一気体路13aから分岐した第二気体路13bを介して、エアコンプレッサ20と接続されている。
【0053】
また、切替え弁25が第一切替え位置P1にある場合、第一流体圧シリンダ18の先端側シリンダ室18b2は、作動気体路13を構成する第三気体路13cを介して、作動気体排出路21と接続されている。
【0054】
一方、切替え弁25が第二切替え位置P2にある場合、第一流体圧シリンダ18の先端側シリンダ室18b2は、第三気体路13cを介して、エアコンプレッサ20と接続されている。また、第一流体圧シリンダ18の基端側シリンダ室18b1は、第一気体路13aを介して、作動気体排出路21と接続されると共に、第二流体圧シリンダ19の基端側シリンダ室19b1は、第一気体路13a及び第二気体路13bを介して、作動気体排出路21と接続されている。
【0055】
一方、第二流体圧シリンダ19の先端側シリンダ室19b2は、切替え弁25の切替え位置の如何に関わらず、常に何れの気体流通のための要素(エアコンプレッサ20,作動気体排出路21)とも接続されない。
【0056】
また、本実施形態では、第二気体路13b上にメータイン型のスピードコントローラ26が配設されている。よって、切替え弁25が第一切替え位置P1にある場合、第二流体圧シリンダ19の基端側シリンダ室19b1への作動気体の供給速度、ひいては第二流体圧シリンダ19の押出し動作に係る作動タイミングが調整される。
【0057】
また、本実施形態では、第一気体路13a上にメータアウト型のスピードコントローラ27が配設されている。よって、切替え弁25が第一切替え位置P2にある場合、第一流体圧シリンダ18の基端側シリンダ室18b1からの作動気体の排出速度、ひいては第一流体圧シリンダ18の引込み動作に係る作動タイミングが調整される。
【0058】
また、本実施形態では、第三気体路13c上にメータイン型のスピードコントローラ28が配設されている。よって、切替え弁25が第二切替え位置P2にある場合、第一流体圧シリンダ18の先端側シリンダ室18b2への作動気体の供給速度、ひいては第一流体圧シリンダ18の引込み動作に係る作動タイミングが調整される。
【0059】
また、本実施形態では、切替え弁25が第一切替え位置P1にある場合、増圧シリンダ8の大径シリンダ8a内に区画形成される加圧室8eは、第一気体路13a及び第一気体路13aから分岐した第四気体路13dを介して、エアコンプレッサ20と接続されている。また、増圧シリンダ8の大径ピストン8cにより大径シリンダ8a内に区画形成される引込み室8gは、第三気体路13c及び第三気体路13cから分岐した第五気体路13eを介して、作動気体排出路21と接続されている。
【0060】
一方、切替え弁25が第二切替え位置P2にある場合、増圧シリンダ8の加圧室8eは、第一気体路13a及び第四気体路13dを介して、作動気体排出路21と接続されると共に、引込み室8gは、第三気体路13c及び第五気体路13eを介して、エアコンプレッサ20と接続されている。
【0061】
また、図1に示すように、可動刃駆動用シリンダとしての第一駆動用シリンダ5及び第二駆動用シリンダ6がともに複動式シリンダの場合、第一及び第二駆動用シリンダ5,6の先端側シリンダ室が、切替え弁25が第二切替え位置P2にある場合において、エアコンプレッサ20と接続されてもよい。この場合、各駆動用シリンダ5,6の基端側シリンダ室に作動油、先端側シリンダ室に作動気体がそれぞれ供給、又は排出される。
【0062】
次に、上記構成の位置決め機構7を用いた剪断装置1の使用態様の一例を、本発明の作用効果と共に説明する。
【0063】
まず、図1及び図2に示す状態から、切替え弁25の切替え位置を第二切替え位置P2から第一切替え位置P1に切替える。これにより、第一流体圧シリンダ18の基端側シリンダ室18b1とエアコンプレッサ20とが接続されると共に、第二流体圧シリンダ19の基端側シリンダ室19b1とエアコンプレッサ20とが接続される(図6を参照)。これにより、エアコンプレッサ20で圧縮された作動気体(ここでは作動空気)が第一気体路13aを通じて第一流体圧シリンダ18の基端側シリンダ室18b1に供給されてピストン18aを押し上げる。よって、第一流体圧シリンダ18が押出し動作を開始し、ピストン18aに連結された第一位置決めピン15が第二延長部23の上面23aより上方に突出して、第一延長部22に設けられた第一位置決め穴14と嵌合する(図6を参照)。これにより、第一位置決めピン15に対する第一位置決め穴14の位置決めがなされた状態となる。
【0064】
一方、第二流体圧シリンダ19の基端側シリンダ室19b1にもエアコンプレッサ20で圧縮された作動気体が供給されるが、第二流体圧シリンダ19と切替え弁25とを接続する第二気体路13b上には、メータイン型のスピードコントローラ26が配設されている。そのため、第二気体路13bを通じて第二流体圧シリンダ19に向けて供給された作動気体は、スピードコントローラ26の絞り(図6を参照)によりその供給速度が抑制される。これにより、図6に示すように、第二流体圧シリンダ19のピストン19aと連結された第二位置決めピン17の押出し動作が制限されると共に、第一位置決めピン15が先行して押し出される。この結果、第二位置決めピン17が第一位置決め穴14に侵入する前に、第一位置決めピン15が第一値決め穴14の軸方向所定位置、ここでは第一流体圧シリンダ18のストロークエンドに対応する位置にまで嵌合される(図6を参照)。
【0065】
然る後、第二流体圧シリンダ19が押出し動作を開始し、位置決めピン17が遅れて第一位置決め穴14に侵入する。この際、第一位置決め穴14に既に第一位置決めピン15が嵌合しており、第二位置決めピン17の前方に、第二位置決め穴16が位置している(図6を参照)。よって、第二位置決めピン17を前進させることで、第二位置決めピン17が第二位置決め穴16に嵌合される(図7を参照)。
【0066】
なお、多少のタイミングのずれ(ゆらぎ)により、若干早く第二位置決めピン17が第一位置決め穴14への侵入を開始する場合もあり得るが、その際、図1等に示すように、第二位置決めピン17の先端に縮径面17aを設けることで、縮径面17aが案内面として機能し、第二位置決めピン17を円滑に第二位置決め穴16に嵌合させ得る。以上の動作により、第一延長部22が、第一及び第二位置決めピン15,17の二重の嵌合により強固に位置決め固定された状態となる(図7を参照)。
【0067】
また、本実施形態では、切替え弁25を第一切替え位置P1に切替えた状態で、エアコンプレッサ20と増圧シリンダ8とが第四気体路13dを介して接続された状態となる。そのため、第一位置決めピン15による位置決め動作の開始と共に、増圧シリンダ8の加圧室8eに圧縮された作動気体が供給される。これにより大径ピストン8cと小径ピストン8dとの外径比に応じて、小径ピストン8dで区画形成される増圧室8fの作動油が増圧され、作動油路11を通じて、第一駆動用シリンダ5及び第二駆動用シリンダ6に供給される。よって、固定刃と可動刃4との間に生じる剪断力を高めることが可能となる。また、上記構成によれば、先に第一辺部2a(の第一延長部22)が第二延長部23に対して位置決めされた状態で可動刃4の剪断動作が生じるので、共通の駆動源(ここではエアコンプレッサ20)を用いて剪断機構と位置決め機構7とに同時に作動流体の供給を開始しつつも、第一辺部2aを先に確実にかつ強固に位置決め固定した状態で、剪断動作を行うことが可能となる。
【0068】
以上のようにして剪断動作を完了した後、上述の如く可動刃4を下降させると共に、各位置決めピン15,17の位置決め状態を解除する。具体的には、図7に示す状態から、切替え弁25を第一切替え位置P1から第二切替え位置P2に切替えて、第一流体圧シリンダ18の基端側シリンダ室18b1と第二流体圧シリンダ19の基端側シリンダ室19b1をともに作動気体排出路21に接続する。また、第一流体圧シリンダ18の先端側シリンダ室18b2をエアコンプレッサ20に接続する。これにより、第一流体圧シリンダ18に対しては押出し側となる基端側シリンダ室18b1から第一気体路13aを通じて作動気体が排出されると共に、引込み側となる先端側シリンダ室18b2には第三気体路13cを通じて作動気体が供給される。また、第二流体圧シリンダ19に対しては押出し側となる基端側シリンダ室19b1から作動気体が第二気体路13bを通じて排出される。
【0069】
ここで、第二流体圧シリンダ19は単動式シリンダであり、第二切替え位置P2への切替えにより、圧縮ばね24の弾性復元力により第二位置決めピン17の引込み動作が機械的に迅速に行われる。一方、第二切替え位置P2において、第一流体圧シリンダ18と作動気体排出路21とを接続する第一気体路13a上には、メータアウト型のスピードコントローラ27が配設されている。そのため、第一気体路13aを通じて第一流体圧シリンダ18の基端側シリンダ室18b1から排出された作動気体は、スピードコントローラ27の絞り(図8を参照)によりその排出速度が抑制される。これにより、第一流体圧シリンダ18の引込み動作が制限され、第一位置決めピン15が第二位置決めピン17に遅れて第一位置決め穴14からの引抜き動作を開始する。この結果、第二位置決めピン17が第二位置決め穴16から引き抜かれた後に、第一位置決めピン15の第一位置決め穴14からの引抜き動作が実質的に開始されるので、双方の位置決めピン15,17同士が干渉することなく対応する位置決め穴14,16から各々の位置決めピン15,17を引抜くことが可能となる。
【0070】
また、本実施形態では、第二切替え位置P2において、第一流体圧シリンダ18の先端側シリンダ室18b2とエアコンプレッサ20とを接続する第三気体路13c上にメータイン型のスピードコントローラ28が配設されている。そのため、第三気体路13cを通じて第一流体圧シリンダ18の先端側シリンダ室18b2へと向かう作動気体は、スピードコントローラ28の絞り(図8を参照)によりその供給速度が抑制される。これによっても、第一流体圧シリンダ18の引込み動作が制限されるので、より確実に、第二位置決めピン17との干渉をより確実に防止して、第一位置決めピン15を第一位置決め穴14から引抜くことが可能となる。
【0071】
また、本実施形態では、第二切替え位置P2において、増圧シリンダ8の加圧室8eと作動気体排出路21とを接続すると共に、大径ピストン8cを介して加圧室8eと隣接する引込み室8gとエアコンプレッサ20とを接続しているため、大径ピストン8cを引込み側に向けて円滑に摺動させることができ、ひいては可動刃4を迅速に下降させることが可能となる。
【0072】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明に係る剪断装置は、上記例示の構成に限られることなく、本発明の範囲内において種々の変更が可能なことはもちろんである。
【0073】
例えば上記実施形態では、第一位置決め部材をピン形状(第一位置決めピン15)とし、第一位置決めピン15を径方向に貫通する第二位置決め穴16に同じくピン形状をなす第二位置決め部材を嵌合して位置決め固定を図る構造を例示したが、もちろんこれ以外の構造をとることも可能である。例えば図示は省略するが、スペース上の制約が許せば、第一位置決め部材を板形状とし、この板形状をなす第一位置決め部材を板厚方向に貫通する一又は複数の第二位置決め穴を設けて、一又は複数の第二位置決め穴に対応する第二位置決めピンを嵌合可能な構造としてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 剪断装置
2 剪断ヘッド
2a 第一辺部
2b 第二辺部
2c 連結部
3 固定刃
4 可動刃
4a 第一軸孔
4b 第二軸孔
5 第一駆動用シリンダ
6 第二駆動用シリンダ
7 位置決め機構
8 増圧シリンダ
8e 加圧室
8f 増圧室
9 第一ピストンロッド
9a 第一ピボット軸
10 第二ピストンロッド
10a 第二ピボット軸
11 作動油路
12,26,27,28 スピードコントローラ
12a 絞り
12b 逆止弁
13 作動気体路
14 第一位置決め穴
15 第一位置決めピン
15a 縮径面
16 第二位置決め穴
17 第二位置決めピン
17a 縮径面
18 第一流体圧シリンダ
18b1 基端側シリンダ室
18b2 先端側シリンダ室
19 第二流体圧シリンダ
19b1 基端側シリンダ室
19b2 先端側シリンダ室
20 エアコンプレッサ
21 作動気体排出路
22 第一延長部
23 第二延長部
24 圧縮ばね
25 切替え弁
101 溶接トーチ
P1 第一切替え位置(押出し時)
P2 第二切替え位置(引込み時)
【要約】
【課題】剪断ヘッドのさらなる剛性向上を構造的に可能とする剪断装置を提供する。
【解決手段】剪断装置1は、剪断ヘッド2と、剪断ヘッド2に設けられる固定刃3及び可動刃4とを備える。剪断ヘッド2は、互いに平行に延びる第一辺部2a及び第二辺部2bと、第一辺部2aと第二辺部2bとを各辺部2a,2bの基端側で連結する連結部2cとを一体に有する。第一辺部2aの先端側に第一位置決め穴14が設けられ、第二辺部2bの先端側に第二辺部2bに対して出没可能に構成され、第一位置決め穴14に嵌合可能な第一位置決め部材15が設けられる。第一位置決め部材15の先端側に、第一位置決め部材15の出没方向に直交する向きに開口形成される第二位置決め穴16が設けられ、第一位置決め穴14に対して出没可能に構成され、第一位置決め部材15が第一位置決め穴14に嵌合した状態で、第二位置決め穴16に嵌合可能な第二位置決め部材17が設けられる。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11