(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】改質フライアッシュの製造方法、及び、改質フライアッシュの製造装置
(51)【国際特許分類】
B09B 3/40 20220101AFI20230720BHJP
B02C 25/00 20060101ALI20230720BHJP
B09B 5/00 20060101ALI20230720BHJP
C04B 18/08 20060101ALI20230720BHJP
F27B 7/10 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
B09B3/40
B02C25/00 C
B09B5/00 N
C04B18/08 Z ZAB
F27B7/10
(21)【出願番号】P 2017242658
(22)【出願日】2017-12-19
【審査請求日】2020-08-05
【審判番号】
【審判請求日】2022-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】弁理士法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辰巳 慶展
(72)【発明者】
【氏名】寺崎 淳一
【合議体】
【審判長】亀ヶ谷 明久
【審判官】安積 高靖
【審判官】関根 裕
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-19440(JP,A)
【文献】特開2008-126117(JP,A)
【文献】特開2014-044026(JP,A)
【文献】特開2017-148762(JP,A)
【文献】特開2017-148790(JP,A)
【文献】国際公開第2008/072299(WO,A1)
【文献】米国特許第5976224(US,A)
【文献】特開2019-107619(JP,A)
【文献】1.山本 武志 ら、フライアッシュの未燃炭素除去技術、電力中央研究所報告、日本、2013.10 発行
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B3/00
B09B5/00
B02C25/00
C04B18/08
F27B7/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フライアッシュを内燃式ロータリーキルンで加熱処理する加熱処理工程と、
前記加熱処理工程で加熱処理されたフライアッシュを所定の粒子径で分級する分級工程と、
前記分級工程で細粒側に分級されたフライアッシュを適合品として回収する回収工程と、
前記分級工程で粗粒側に分級されたフライアッシュを粉砕して、所定の粉末度にする粉砕工程と、
前記粉砕工程で粉砕されたフライアッシュの未燃カーボンの含有率を測定する測定工程と、
前記測定工程で測定された未燃カーボン含有率を所定の目標値と比較することによって、適否を判定する判定工程と、
前記判定工程で適合品と判定されたフライアッシュは回収し、前記判定工程で不適合品と判定されたフライアッシュは前記内燃式ロータリーキルンによる加熱処理工程に戻す選別工程とを備えることを特徴とする改質フライアッシュの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の改質フライアッシュの製造方法において、
前記分級工程における分級点が、75μm以下であることを特徴とする改質フライアッシュの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の改質フライアッシュの製造方法において、
前記粉砕工程における粉末度が、ブレーン比表面積で4000cm
2/g以上であることを特徴とする改質フライアッシュの製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の改質フライアッシュの製造方法において、
前記判定工程における未燃カーボン含有率の目標値が、0.5質量%以下であることを特徴とする改質フライアッシュの製造方法。
【請求項5】
フライアッシュを加熱処理するための内燃式ロータリーキルンと、
前記内燃式ロータリーキルンで加熱処理されたフライアッシュを分級して、その細粒側に適合品を得る分級装置と、
前記分級装置で粗粒側に分級されたフライアッシュを粉砕する粉砕装置と、
前記粉砕装置から供給された、粉砕されたフライアッシュの未燃カーボン含有率を測定する測定装置と、
前記測定装置による測定結果を所定の目標値と比較することによって、前記粉砕されたフライアッシュの未燃カーボン含有率の適否を判定する判定装置と、
前記判定装置の判定結果に基づいて、前記粉砕されたフライアッシュの搬送経路を適合品貯蔵設備に連なる経路又は前記内燃式ロータリーキルンに連なる経路に切り替える搬送経路切替装置とを備えていることを特徴とする改質フライアッシュの製造装置。
【請求項6】
請求項5に記載の改質フライアッシュの製造装置において、
前記分級装置は、サイクロンセパレータであることを特徴とする改質フライアッシュの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃式ロータリーキルンを用いた改質フライアッシュの製造方法、及び、内燃式ロータリーキルンを用いた改質フライアッシュの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭火力発電所の微粉炭燃焼ボイラ等から発生する、未燃カーボンを多量に含有するフライアッシュ(石炭灰)を、かかる未燃カーボンを除去してコンクリート等の混和材に使用可能なフライアッシュに改質するための技術開発が進められている。
【0003】
特に、内燃式ロータリーキルンを用いる方法は、改質フライアッシュを効率的に大量製造する方法として有効な方法である。
【0004】
例えば、特許文献1には、サスペンション式プレヒータが付設され、傾斜させて設置したロータリーキルンにフライアッシュを供給し、該フライアッシュを500~1100℃で加熱して、フライアッシュ中に含まれる炭素を燃焼させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、内燃式ロータリーキルンを用いたフライアッシュの加熱処理は、キルンバーナからの直火による加熱処理のために、含有する未燃カーボンが自然発火して焼失する、所謂、未燃カーボンの自燃状態を安定的に生じさせることが困難であり、加熱処理に供したフライアッシュの一部はフライアッシュ粒子同士の融着が生じる程の加熱状態となり、粗粒の改質フライアッシュが生じやすい。
【0007】
かかる粗粒の改質フライアッシュは、粒子がポーラスであると共に、加熱処理において自燃が生じなかった未燃カーボンをその粒子内部に含んでいるため、フライアッシュからの未燃カーボンの除去も不十分な状態である。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、内燃式ロータリーキルンによる加熱処理に供した原料フライアッシュを、無駄なく効率的に、コンクリートの混和材等として使用可能な所定の品位を有する改質フライアッシュとなすための、改質フライアッシュの製造方法、及び、改質フライアッシュの製造装置を提供することを目的とする。
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、内燃式ロータリーキルンによる加熱処理を経たフライアッシュを分級し、得られた粗粒の改質フライアッシュについて、粉砕して細粒化した後、かかる粉砕後の改質フライアッシュの未燃カーボン含有率を確認して、適合品として回収するか、又は、不適合品として再度加熱処理して未燃カーボンを除去することで、加熱処理に供した原料フライアッシュから、無駄なく効率的に、コンクリートの混和材等としての所定の品位を有する改質フライアッシュを得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の改質フライアッシュの製造方法は、フライアッシュを内燃式ロータリーキルンで加熱処理する加熱処理工程と、前記加熱処理工程で加熱処理されたフライアッシュを所定の粒子径で分級する分級工程と、前記分級工程で細粒側に分級されたフライアッシュを適合品として回収する回収工程と、前記分級工程で粗粒側に分級されたフライアッシュを粉砕して、所定の粉末度にする粉砕工程と、前記粉砕工程で粉砕されたフライアッシュの未燃カーボンの含有率を測定する測定工程と、前記測定工程で測定された未燃カーボン含有率を所定の目標値と比較することによって、適否を判定する判定工程と、前記判定工程で適合品と判定されたフライアッシュは回収し、前記判定工程で不適合品と判定されたフライアッシュは前記内燃式ロータリーキルンによる加熱処理工程に戻す選別工程とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、上記目的を達成するために、本発明の改質フライアッシュの製造装置は、フライアッシュを加熱処理するための内燃式ロータリーキルンと、前記内燃式ロータリーキルンで加熱処理されたフライアッシュを分級して、その細粒側に適合品を得る分級装置と、前記分級装置で粗粒側に分級されたフライアッシュを粉砕する粉砕装置と、前記粉砕装置から供給された、粉砕されたフライアッシュの未燃カーボン含有率を測定する測定装置と、前記測定装置による測定結果を所定の目標値と比較することによって、前記粉砕されたフライアッシュの未燃カーボン含有率の適否を判定する判定装置と、前記判定装置の判定結果に基づいて、前記粉砕されたフライアッシュの搬送経路を適合品貯蔵設備に連なる経路又は前記内燃式ロータリーキルンに連なる経路に切り替える搬送経路切替装置とを備えていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、微粉炭燃焼ボイラ等から供給されたフライアッシュについて、内燃式ロータリーキルンによる加熱処理によって、その未燃カーボン含有率を十分に低減させると共に、加熱処理により粗粒化したフライアッシュについては、分級により分別し、これを粉砕した後、未燃カーボン含有率の測定に供して、所定の未燃カーボン含有率を満足する適合品は回収し、所定の未燃カーボン含有率を満足しない不適合品は再度内燃式ロータリーキルンでの加熱処理に供することにより、加熱処理に供した原料フライアッシュを、無駄なく効率的に、所定の品位を有する改質フライアッシュとなすことができる。
【0013】
本発明においては、内燃式ロータリーキルンで加熱処理されたフライアッシュを分級し、その細粒側に適合品を得るための分級点は、改質フライアッシュの目標品位に応じて任意に設定可能であるが、コンクリートの混和材等として求められる活性度指数の品位を満たす観点からは、好ましくは75μmであり、より好ましくは50μmである。
【0014】
ここで、活性度指数とは、フライアッシュのポゾラン反応性を表す指標であり、JIS A 6201「コンクリート用フライアッシュ」では、活性度指数等に基づいて、フライアッシュをI種からIV種までの4種類に分類しているが、一般的に、コンクリートの混和材等として有効活用されるフライアッシュにはJIS A 6201「コンクリート用フライアッシュ」のIII種以上の活性度指数、すなわち、28日材齢で80%以上、91日材齢で90%以上が要求される。
【0015】
本発明において、内燃式ロータリーキルンで加熱処理されたフライアッシュを分級し、その粗粒側に分級されたフライアッシュを粉砕して得られる粉砕物の粉末度としては、改質フライアッシュの目標品位に応じて任意に設定可能であるが、ブレーン比表面積で4000cm2/g以上となるように粉砕することが好ましく、4500cm2/g以上となるように粉砕することがより好ましく、5000cm2/g以上となるように粉砕することがさらにより好ましい。このようなブレーン比表面積の範囲を設定することで、かかる適合品において、コンクリートの混和材等として求められる活性度指数の品位が満される。
【0016】
ここで、ブレーン比表面積とは、フライアッシュの粒径の細かさを表す指標であり、JIS A 6201「コンクリート用フライアッシュ」に測定方法が規定されているブレーン方法に基づいて測定された比表面積を指す。
【0017】
本発明において、内燃式ロータリーキルンで加熱処理されたフライアッシュを分級し、その粗粒側に分級されたフライアッシュを粉砕して得られる粉砕物の未燃カーボン含有率の目標値としては、改質フライアッシュの目標品位に応じて任意に設定可能であるが、0.5質量%以下とすることが好ましく、0.4質量%以下とすることがより好ましく、0.3質量%以下とすることがさらにより好ましい。このような未燃カーボン含有率の範囲を設定することで、かかる適合品において、コンクリートの混和材等として求められる未燃カーボン含有率の品位が満たされる。
【0018】
本発明の、改質フライアッシュの製造方法あるいは改質フライアッシュの製造装置により得られる改質フライアッシュの品質としては、未燃カーボン含有率が0.5質量%以下であることが好ましく、0.4質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以下であることがさらにより好ましい。また、28日材齢の活性度指数が80%以上、且つ91日材齢の活性度指数が90%以上であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る改質フライアッシュの製造装置の一実施形態を示す概略構成説明図である。
【
図2】
図1に示す装置で行われる処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明に係る改質フライアッシュの製造方法及び改質フライアッシュの製造装置の実施形態について、説明する。
【0021】
図1には、本発明に係る改質フライアッシュの製造装置の一実施形態が示される。
図1において、実線の矢印はフライアッシュの流れを、一点鎖線の矢印は制御信号の流れを、破線の矢印はガスの流れをそれぞれ示している。
【0022】
図1に示すように、この改質フライアッシュの製造装置1は、微粉炭燃焼ボイラ等から供給された受入フライアッシュF1と、後述の不適合品フライアッシュF8とを混合して第2フライアッシュF2となすフライアッシュ混合装置2と、フライアッシュ混合装置2から供給された第2フライアッシュF2を加熱処理する内燃式ロータリーキルン3と、内燃式ロータリーキルン3から排出された加熱フライアッシュF3を分級するフライアッシュ分級装置4と、フライアッシュ分級装置4から排出された第1適合品フライアッシュF4を回収して改質フライアッシュ貯蔵設備8に供給するフライアッシュ回収装置5と、フライアッシュ回収装置5から改質フライアッシュ貯蔵設備8に供給される第1適合品フライアッシュF4の未燃カーボン含有率及び粉末度を測定するフライアッシュ測定装置M1と、フライアッシュ分級装置4から排出された粗粒フライアッシュF5を粉砕するフライアッシュ粉砕装置6と、フライアッシュ粉砕装置6から排出される粉砕フライアッシュF6の未燃カーボン含有率を測定するフライアッシュ測定装置M2と、フライアッシュ測定装置M2の測定結果に基づいて粉砕フライアッシュF6を、第2適合品フライアッシュF7又は不適合品フライアッシュF8に仕分けする制御装置21と、制御装置21からの指示に従って、粉砕フライアッシュF6が適合品の場合には粉砕フライアッシュF6を第2適合品フライアッシュF7として改質フライアッシュ貯蔵設備8に供給し、粉砕フライアッシュF6が不適合品の場合には粉砕フライアッシュF6を不適合品フライアッシュF8としてフライアッシュ混合装置2に供給するフライアッシュ搬送経路切替装置7から構成される。以下には、この改質フライアッシュの製造装置1を、単に「製造装置1」と称し、さらに詳細に説明する。
【0023】
なお、一般に、石炭火力発電所等の微粉炭燃焼ボイラから供給されるフライアッシュであって、含有する未燃カーボンの除去が必要となる品位の低いフライアッシュである受入フライアッシュF1は、概ねブレーン比表面積が2000cm2/g~4000cm2/gである。
【0024】
図1に示す実施形態では、受入フライアッシュF1を、フライアッシュ混合装置2において不適合品フライアッシュF8と混合して第2フライアッシュF2となし、これを内燃式ロータリーキルン3へ連続的に供給している。ここで、不適合品フライアッシュF8は、未燃カーボン含有率が目標設定値を満足していないフライアッシュであって、フライアッシュ粉砕装置6によって十分に細粒化されている。
【0025】
フライアッシュ混合装置2における、受入フライアッシュF1と不適合品フライアッシュF8の混合は、単にそれらフライアッシュを積層等したりするだけでもよいが、内燃式ロータリーキルン3に供給する第2フライアッシュF2の品質を平均化させるために、フライアッシュ混合装置2内で十分に混合するのが好ましい。そのために、フライアッシュ混合装置2に備えられるフライアッシュ用容器には、パドルやリボンなどの回転翼や、各種排ガスを利用したエアレーション等の混合撹拌機構を有するものが好ましい。
【0026】
フライアッシュ混合装置2からは、所定量の第2フライアッシュF2が、内燃式ロータリーキルン3に供給される。この第2フライアッシュF2の供給には、容積式定量供給機や重量式定量供給機等の一般的な粉体定量供給装置を用いることができる。
【0027】
内燃式ロータリーキルン3は、供給された第2フライアッシュF2を、適当な酸素雰囲気内で、第2フライアッシュF2が含有する未燃カーボンが自燃を生じるように加熱できるものであれば特に制限されず、天然ガスや重油等の微粉炭以外の各種燃料が使用でき、又、サスペンションプレヒーター等の予熱装置が付設されていてもよい。
【0028】
次に、
図1に示す実施形態では、内燃式ロータリーキルン3から排出された加熱フライアッシュF3は、フライアッシュ分級装置4において分級される。フライアッシュ分級装置4としては、例えば、サイクロン型又はルーバー型慣性分級機及び振動篩装置等、粉粒体の分級処理に一般的に使用されている乾式分級機を用いればよい。また、サイクロンセパレータは、本発明の目的のために好適に用いられる。
【0029】
フライアッシュ分級装置4において加熱フライアッシュF3の適合/不適合を分別するための分級点は、改質フライアッシュの目標品位に応じて任意に設定可能であるが、コンクリートの混和材等として求められる活性度指数の品位を満たす観点からは、75μm以下とするのが好ましく、50μm以下とするのがより好ましい。すなわち、このような分級点を設定することで、得られる第1適合品フライアッシュF4において、JIS A 6201「コンクリート用フライアッシュ」のIII種以上の活性度指数、すなわち、28日材齢で80%以上、91日材齢で90%以上が満たされる。
【0030】
さらに、第1適合品フライアッシュF4の活性度指数を向上させるために、フライアッシュ分級装置4では、内燃式ロータリーキルン3から排出されて未だ高温状態である加熱フライアッシュF3を、冷却用ガスCA1で急冷するのが好ましい。これにより、高温状態の加熱フライアッシュF3内で進行する非晶質相の結晶化を停止させることができ、活性度指数の低下を抑制することができる。ここで、冷却用ガスCA1には、大気等を使用すればよい。
【0031】
図1に示す実施形態では、細粒のフライアッシュである第1適合品フライアッシュF4は、フライアッシュ分級装置4から排出される搬送ガスCA2に含有されて、フライアッシュ回収装置5に送られる。ここで、フライアッシュ回収装置5への搬送ガスCA2の送気は、排気ファン9によって行われる。
【0032】
フライアッシュ回収装置5としては、細かなフライアッシュをも確実に回収できる観点から、バグフィルタを用いることが好ましい。
【0033】
フライアッシュ回収装置5で固気分離され、回収された第1適合品フライアッシュF4は、改質フライアッシュ貯蔵設備8に供給され、後述の第2適合品フライアッシュF7と混合されて、改質フライアッシュF9となる。
【0034】
また、フライアッシュ回収装置5からの排ガスGは、排気ファン9によって大気解放される。
【0035】
なお、
図1に示す実施形態では、フライアッシュ回収装置5から改質フライアッシュ貯蔵設備8に供給された第1適合品フライアッシュF4は、搬送経路の途中で、フライアッシュ測定装置M1によって未燃カーボン含有率及び粉末度が測定される。そして、フライアッシュ測定装置M1は、その測定結果を制御装置21に送信する。
【0036】
フライアッシュ測定装置M1及び後述のフライアッシュ測定装置M2が有する未燃カーボン含有率の測定装置としては、例えば、強熱減量値から間接的に未燃カーボン含有率を求めることができる熱天秤分析装置、又は、特開平11-258155号公報に開示されている青色発光体を光源とした反射光量測定装置等のオンライン対応装置などを用いればよい。
【0037】
さらに、フライアッシュ測定装置M1が備える粉末度測定装置としては、例えば、乾式レーザ回析・散乱法を用いたオンライン粒子径分布測定器が好適である。
【0038】
次に、フライアッシュ分級装置4において不適合とされた粗粒フライアッシュF5は、フライアッシュ粉砕装置6に供給されて細粒化される。ここで、フライアッシュ粉砕装置6は、粗粒フライアッシュF5を所定の粉末度に粉砕できる乾式粉砕装置ならば様式は限定されないが、なかでもボールミル、ロールミル、ローラーミル(竪型ミル)が好適に使用できる。
【0039】
フライアッシュ粉砕装置6から排出された粉砕フライアッシュF6は、搬送経路の途中で、フライアッシュ測定装置M2によって未燃カーボン含有率が測定される。そして、フライアッシュ測定装置M2は、その測定結果を制御装置21に送信する。
【0040】
一方、制御装置21は、受信したフライアッシュ測定装置M2からの未燃カーボン含有率の測定結果が、所定の目標設定値を満足する場合は粉砕フライアッシュF6を適合品と判定し、目標設定値から逸脱する場合は粉砕フライアッシュF6を不適合品と判定して、その判断結果を、直ちにフライアッシュ搬送経路切替装置7に送信する。すなわち、ここで制御装置21は、フライアッシュF6が適合品であるか不適合品であるかを判定する判定装置を構成している。かかる未燃カーボン含有率の目標設定値は、改質フライアッシュの目標品位に応じて任意に設定可能であるが、例えば、得られる改質フライアッシュF9にコンクリートの混和材等の用途を想定する場合、0.5質量%以下することが好ましく、0.4質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以下であることがさらにより好ましい。
【0041】
制御装置21からの信号を受信したフライアッシュ搬送経路切替装置7は、粉砕フライアッシュF6が適合品の場合は搬送経路を改質フライアッシュ貯蔵設備8に向け、粉砕フライアッシュF6が不適合品の場合は搬送経路をフライアッシュ混合装置2に向ける。
【0042】
フライアッシュ搬送経路切替装置7によって、改質フライアッシュ貯蔵設備8に搬送された第2適合品フライアッシュF7は、改質フライアッシュ貯蔵設備8において第1適合品フライアッシュF4と混合されて、改質フライアッシュF9となる。
【0043】
この場合、改質フライアッシュ貯蔵設備8に備えられるフライアッシュ用容器には、第1適合品フライアッシュF4と第2適合品フライアッシュF7を十分に混合して、改質フライアッシュF9の品質を安定化させるために、パドルやリボンなどの回転翼等による混合撹拌機構が付設されているのが好ましい。
【0044】
一方、フライアッシュ搬送経路切替装置7によって、フライアッシュ混合装置2に搬送された不適合品フライアッシュF8は、フライアッシュ混合装置2において受入フライアッシュF1と混合されて、第2フライアッシュF2として内燃式ロータリーキルン3に供給され、再度加熱処理に供される。
【0045】
また、
図1に示すように、製造装置1は、さらに、フライアッシュ測定装置M1による測定結果に基づいて、各装置の運転制御を行ってもよい。
【0046】
具体的には、例えば、第1適合品フライアッシュF4の未燃カーボン含有率が目標設定値よりも大きい場合や、第1適合品フライアッシュF4の粉末度が目標設定値よりも大きい場合には、フライアッシュ分級装置4を制御して分級点を小径側に調整する等により、その目標設定の範囲内に収めるようにすることができる。
【0047】
次に、
図2に示すフローチャートを更に参照して、製造装置1で行われる処理について説明する。
【0048】
まず、フライアッシュ分級装置4を、所定の分級点となるように運転する(
図2/STEP01)。ここで、設定する分級点は、改質フライアッシュの目標品位に応じて任意に設定可能であるが、例えば、得られる改質フライアッシュF9にコンクリートの混和材等の用途を想定する場合、かかる活性度指数がJIS A 6201「コンクリート用フライアッシュ」のIII種以上(28日材齢が80%以上且つ91日材齢が90%以上)となるようにすることが好ましい。より具体的には、そのような活性度指数の品位を満たすためには、フライアッシュ分級装置5における分級点を、分級点は75μm以下に設定することが好ましく、50μm以下に設定することがより好ましい。
【0049】
そして、フライアッシュ混合装置2及び内燃式ロータリーキルン3を稼動して、加熱フライアッシュF3をフライアッシュ分級装置4に供給する(
図2/STEP02)。
【0050】
フライアッシュ分級装置4によって細粒側に分級され、フライアッシュ回収装置5で回収された第1適合品フライアッシュF4を、改質フライアッシュ貯蔵設備8に供給する(
図2/STEP03)。
【0051】
フライアッシュ分級装置4によって粗粒側に分級された粗粒フライアッシュF5を、フライアッシュ粉砕装置6に供給して、粉砕フライアッシュF6を得る(
図2/STEP04)。
【0052】
フライアッシュ粉砕装置6で得られる粉砕フライアッシュF6のブレーン比表面積は、改質フライアッシュの目標品位に応じて任意に設定可能であるが、例えば、得られる改質フライアッシュF9にコンクリートの混和材等の用途を想定する場合、ブレーン比表面積で4000cm2/g以上となるよう粉砕することが好ましく、4500cm2/g以上となるよう粉砕することがより好ましく、5000cm2/g以上となるよう粉砕することがさらにより好ましい。このようなブレーン比表面積の範囲を設定することで、後段の判定工程で得られる第2適合品フライアッシュF7は、JIS A 6201「コンクリート用フライアッシュ」のIII種以上の活性度指数、すなわち、28日材齢で80%以上、91日材齢で90%以上の品質を有するようになる。
【0053】
なお、フライアッシュ粉砕装置6で得られる粉砕フライアッシュF6のブレーン比表面積の上限については、10000cm2/g以下が好ましい。粉砕フライアッシュF6のブレーン比表面積が10000cm2/gよりも大きくなると、後段の判定工程において第2適合品フライアッシュF7と判定されてコンクリートの混和材として活用された場合、コンクリートの粘性の増大や、単位水量の増加による強度発現性の低下などを招いてしまう場合がある。
【0054】
粉砕フライアッシュF6の未燃カーボン含有率をフライアッシュ測定装置M2で測定し、かかる測定結果を受信した制御装置21は、目標設定値を基準に、搬送されている粉砕フライアッシュF6を適合品又は不適合品に判定する(
図2/STEP05)。
【0055】
粉砕フライアッシュF6の未燃カーボン含有率の目標設定値としては、例えば、得られる改質フライアッシュF9の用途をコンクリートの混和材等とする場合は、上述した通り0.5質量%以下等に設定すればよい。
【0056】
制御装置21は、粉砕フライアッシュF6の適合品又は不適合品の判定結果から、当該粉砕フライアッシュF6の搬送先を決定して、フライアッシュ搬送経路切替装置7に搬送先を指示する。
【0057】
すなわち、粉砕フライアッシュF6が適合品の場合、フライアッシュ搬送経路切替装置7は、当該粉砕フライアッシュF6を第2適合品フライアッシュF7として改質フライアッシュ貯蔵設備8に供給する。
【0058】
一方、粉砕フライアッシュF6が不適合品の場合、フライアッシュ搬送経路切替装置7は、当該粉砕フライアッシュF6を不適合品フライアッシュF8としてフライアッシュ混合装置2に供給する。
【0059】
フライアッシュ混合装置2に供給された不適合品フライアッシュF8は、含有する未燃カーボンを減ずるために、再度、内燃式ロータリーキルン3に供給される(
図2/STEP06)。
【0060】
改質フライアッシュ貯蔵設備8に供給された第2適合品フライアッシュF7は、第1適合品フライアッシュF4と混合されて、改質フライアッシュF9となる(
図2/STEP07)。
【0061】
最後に、上記に説明した製造装置1を用いてフライアッシュを処理したときの試験結果について説明する。
【0062】
加熱フライアッシュF3として、未燃カーボン含有率5質量%の受入フライアッシュF1を、内燃式ロータリーキルン3で加熱処理して、未燃カーボン含有率が1.0質量%となったものを用いた。
【0063】
上記加熱フライアッシュF3を、目開きが125μm、75μm及び53μmの3種類のふるいを用い、各ふるいの通過分のフライアッシュ(
図1に示す実施形態の第1適合品フライアッシュF4に相当)について、未燃カーボン含有率と活性度指数を比較した。試験結果を表1に示す。
【0064】
なお、フライアッシュの未燃カーボン含有率の測定は、JIS M 8819「石炭類及びコークス類-機器分析装置による元素分析方法」に準拠して、活性度指数の測定は、JIS A 6201「コンクリート用フライアッシュ」の付属書C「フライアッシュのモルタルによるフロー値比及び活性度指数の試験方法」に準拠して、それぞれ測定した。
【0065】
【0066】
表1の結果より、フライアッシュ分級装置4の分級点は、75μm以下であれば、コンクリートの混和材等として問題なく使用可能な改質フライアッシュが回収できることが分かる。
【0067】
次に、表1の75μmふるい試験におけるふるい残分(
図1に示す実施形態の粗粒フライアッシュF5に相当)を用いて、フライアッシュ粉砕装置6によりブレーン比表面積を3000cm
2/g、4000cm
2/g及び5000cm
2/gに粉砕した場合の活性度指数を比較した。試験結果を表2に示す。なお、75μmふるい残分の未燃カーボン含有率は、1.4質量%であった。
【0068】
【0069】
表2の結果より、フライアッシュ粉砕装置6により粉砕して得られる粉砕フライアッシュF6のブレーン比表面積は、これが4000cm2/g以上であれば、コンクリートの混和材として一般的に要求される活性度指数を満足できることが分かる。
【符号の説明】
【0070】
1…改質フライアッシュの製造装置、2…フライアッシュ混合装置、3…内燃式ロータリーキルン、4…フライアッシュ分級装置、5…フライアッシュ回収装置、6…フライアッシュ粉砕装置、7…フライアッシュ搬送経路切替装置、8…改質フライアッシュ貯蔵設備、9…排気ファン、21…制御装置、CA1…冷却用空気、CA2…搬送空気、F1…受入フライアッシュ、F2…第2フライアッシュ、F3…加熱フライアッシュ、F4…第1適合品フライアッシュ、F5…粗粒フライアッシュ、F6…粉砕フライアッシュ、F7…第2適合品フライアッシュ、F8…不適合品フライアッシュ、F9…改質フライアッシュ、G…排ガス、M1,M2…フライアッシュ測定装置