(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】抗体/T細胞受容体キメラ構築物およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20230720BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20230720BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230720BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230720BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230720BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20230720BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230720BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230720BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
A61K35/17
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P35/02
C07K14/725
C07K16/28
C07K19/00
C12N5/10
(21)【出願番号】P 2018520406
(86)(22)【出願日】2016-10-21
(86)【国際出願番号】 US2016058305
(87)【国際公開番号】W WO2017070608
(87)【国際公開日】2017-04-27
【審査請求日】2019-10-18
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-17
(32)【優先日】2016-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】321002949
【氏名又は名称】ユーリカ セラピューティックス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ルー, ジンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, ジユアン
(72)【発明者】
【氏名】リュー, チェン
(72)【発明者】
【氏名】リュー, ホン
(72)【発明者】
【氏名】シュー, イーヤン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, スー
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ヴィヴィアン ワイ-ファン
(72)【発明者】
【氏名】ホラン, ルーカス
【合議体】
【審判長】福井 悟
【審判官】高堀 栄二
【審判官】牧野 晃久
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-174681(JP,A)
【文献】特表2014-512812(JP,A)
【文献】特表2015-516818(JP,A)
【文献】国際公開第2014/153470(WO,A2)
【文献】国際公開第97/15669(WO,A1)
【文献】特表平7-505282(JP,A)
【文献】特表2018-512145(JP,A)
【文献】Neoplasia(2000)Vol.2,No.5,p.449-459
【文献】FASEB J.(1992)Vol.6,No.15,p.3370-3378
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/62
C07K14/00-19/00
CA/BIOSIS/WPIDS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的抗原に特異的に結合する抗体-T細胞受容体(TCR)キメラ分子(abTCR)であって、
a)V
H抗体ドメインを含む第1の抗原結合ドメインと第1のTCRサブユニットの第1の膜貫通ドメインを含む第1のT細胞受容体ドメイン(TCRD)とを含む第1のポリペプチド鎖;および
b)V
L抗体ドメインを含む第2の抗原結合ドメインと第2のTCRサブユニットの第2の膜貫通ドメインを含む第2のTCRDとを含む第2のポリペプチド鎖を含み、
前記第1の抗原結合ドメインの前記V
H抗体ドメインと前記第2の抗原結合ドメインの前記V
L抗体ドメインとが、前記標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールを形成し、
前記第1のTCRDと前記第2のTCRDとが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なT細胞受容体モジュール(TCRM)を形成し、
前記標的抗原が、ペプチドとMHCタンパク質とを含む複合体であ
り、
i)第1のTCRサブユニットがTCRγ鎖であり、第2のTCRサブユニットがTCRδ鎖である、またはii)第1のTCRサブユニットがTCRδ鎖であり、第2のTCRサブユニットがTCRγ鎖である、
abTCR。
【請求項2】
(i)前記第1のポリペプチド鎖が、前記第1の抗原結合ドメインと前記第1のTCRDとの間に第1のペプチドリンカーをさらに含み、かつ/または
(ii)前記第2のポリペプチド鎖が、前記第2の抗原結合ドメインと前記第2のTCRDとの間に第2のペプチドリンカーをさらに含み、
(a)前記第1および/または第2のペプチドリンカーが、免疫グロブリンまたはT細胞受容体サブユニット由来の定常ドメインまたはその断片を個々に含み、かつ/または
(b)前記第1および/または第2のペプチドリンカーが、CH1、CH2、CH3、CH4もしくはCL抗体ドメイン、またはそれらの断片を個々に含み、または
(c)前記第1および/または第2のペプチドリンカーが、Cα、Cβ、CγもしくはCδTCRドメイン、またはそれらの断片を個々に含む、請求項1に記載のabTCR。
【請求項3】
前記標的抗原複合体中の前記ペプチドが、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1およびPSAからなる群から選択されるタンパク質に由来する、請求項1または請求項2に記載のabTCR。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか一項に記載のabTCRの前記第1および第2のポリペプチド鎖をコードする核酸(複数可)。
【請求項5】
請求項1から
3のいずれか一項に記載のabTCRをその表面上に提示する、または請求項
4に記載の核酸(複数可)を含むエフェクター細胞。
【請求項6】
前記第1のTCRサブユニットおよび/もしくは前記第2のTCRサブユニットの内因性の発現を有さない、または第1の内因性TCRサブユニットおよび/もしくは第2の内因性TCRサブユニットの発現を遮断するまたは減少させるように改変されている、請求項
5に記載のエフェクター細胞。
【請求項7】
標的抗原を提示する標的細胞を死滅させるための、請求項
5または請求項
6に記載のエフェクター細胞を含む組成物であって、前記組成物が、前記標的細胞と接触されることを特徴とし、前記abTCRが、前記標的抗原に特異的に結合する、組成物。
【請求項8】
請求項
5または請求項
6に記載のエフェクター細胞と、薬学的に許容されるキャリアとを含む、標的抗原関連疾患の処置を必要とする個体において標的抗原関連疾患を処置するための医薬組成物。
【請求項9】
前記標的抗原関連疾患が固形腫瘍を含むがんである、請求項
8に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2015年10月23日に出願された米国仮出願第62/245,944号、2016年3月7日に出願された米国仮出願第62/304,918号、2016年6月3日に出願された米国仮出願第62/345,649号、および2016年8月1日に出願された米国仮出願第62/369,694号の優先権を主張し、これらすべてが、全体において参照によって組み込まれる。
【0002】
本発明は、抗体/T細胞受容体キメラ構築物、ならびに疾患を処置および診断することを含むその使用に関する。
【0003】
ASCIIテキストファイルでの配列表の提出
ASCIIテキストファイルでの以下の提出の内容は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる:コンピューター可読形式(CRF)の配列表(ファイル名:750042000340SEQLIST.txt、データ記録:2016年10月20日、サイズ:104KB)。
【背景技術】
【0004】
T細胞媒介性免疫は、ウイルス、細菌、寄生生物感染症または悪性細胞を排除するために、抗原(Ag)特異的Tリンパ球を発達させる適応性のプロセスである。これには、自己抗原の異常な認識もまた関与し、自己免疫性炎症性疾患をもたらし得る。Tリンパ球のAg特異性は、Ag提示細胞(APC)上の主要組織適合複合体(MHC)分子によって提示される独特の抗原性ペプチドの、T細胞受容体(TCR)を介した認識に基づく(Broereら、Principles of Immunopharmacology、2011年)。各Tリンパ球は、胸腺における成熟化の際の発生的選択の結果として、細胞表面上に独特のTCRを発現する。TCRは、αβヘテロ二量体またはγδヘテロ二量体のいずれかとして2つの形態で存在する。T細胞は、細胞表面上に、αβ形態またはγδ形態のいずれかのTCRを発現する。4つの鎖α/β/γ/δは全て、高度に多型の「免疫グロブリン可変領域」様のN末端ドメインおよび「免疫グロブリン定常領域」様の第2のドメインからなる特徴的な細胞外構造を有する。これらのドメインの各々は、特徴的なドメイン内ジスルフィド架橋を有する。定常領域は、細胞膜に対して近位であり、接続ペプチド、膜貫通領域および短い細胞質テイルが後に続く。ヘテロ二量体TCRの2つの鎖間の共有結合は、細胞外定常ドメインと膜貫通領域とを架橋する短い接続ペプチド配列内に位置する、対応する位置において対形成したTCR鎖のシステイン残基と共にジスルフィド結合を形成するシステイン残基によって形成される(The T cell Receptor Factsbook、2001年)。
【0005】
αβTCRおよびγδTCRは、非多型の膜結合型CD3タンパク質と会合して、TCRヘテロ二量体と3つの二量体シグナル伝達モジュールCD3δ/ε、CD3γ/εおよびCD3ζ/ζまたはζ/ηとからなる、機能的な八量体TCR-CD3複合体を形成する。各サブユニットの膜貫通ドメイン中のイオン化可能な残基は、複合体を一緒に保持する相互作用の極性ネットワークを形成する。T細胞活性化のために、TCRのN末端可変領域は、標的細胞の表面上に提示されるペプチド/MHC複合体を認識するが、CD3タンパク質は、シグナル伝達に関与する(Callら、Cell. 111巻(7号):967~79頁、2002年;The T cell Receptor Factsbook、2001年)。
【0006】
従来型のTCRとも呼ばれるαβTCRは、ほとんどのリンパ球上で発現され、グリコシル化された多型のα鎖およびβ鎖からなる。異なるαβTCRは、その寸法および形状が比較的一定であるMHC II(APC細胞表面上で主に発現される)およびMHC I(全ての有核細胞上で発現される)分子の表面中に包埋された異なるペプチド間を識別できる。γδTCRは、αβTCRに構造的に類似しているが、MHC提示から独立した様式で、炭水化物保有、ヌクレオチド保有またはリン光体保有抗原を認識する(The T cell Receptor Factsbook、2001年;Girardiら、J. Invest. Dermatol. 126巻(1号):25~31頁、2006年;Hayesら、Immunity. 16巻(6号):827~38頁、2002年)。
【0007】
細胞表面タンパク質は、細胞性タンパク質のごく一部を構成するにすぎず、これらのタンパク質のほとんどは、腫瘍特異的ではない。対照的に、変異したまたは発癌性腫瘍関連タンパク質は、典型的には、細胞内に位置し、核、細胞質または分泌性である。ほとんどの細胞内タンパク質は、タンパク質異化およびMHC分子による提示の通常のプロセスの一部として、細胞表面上に曝露される。細胞内タンパク質は、プロテアソームまたはエンドソーム/リソソームによって通常分解され、得られた特異的ペプチド断片は、MHCクラスI/II分子に結合する。これらのペプチド/MHC複合体は、細胞表面でディスプレイされ、この場所で、ペプチド/MHC TCR相互作用を介したT細胞認識のための標的を提供する(Scheinbergら、Oncotarget. 4巻(5号):647~8頁、2013年;Cheeverら、Clin. Cancer Res. 15巻(17号):5323~37頁、2009年)。
【0008】
過去二十年間に、多数の腫瘍抗原の同定と組み合わせた、免疫学および腫瘍生物学における基礎的な進歩は、細胞ベースの免疫療法の分野における顕著な進行をもたらしている。T細胞療法は、細胞ベースの免疫療法の分野において大きな空間を占め、自家のex vivoで拡大増殖されたT細胞を患者に移入することによってがんを処置することを目的とし、いくらかの著しい抗腫瘍応答を生じている(Blattmanら、Science. 305巻(5681号):200~5頁、2004年)。例えば、ex vivoで拡大増殖された天然に存在する腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の投与は、肝臓、肺、軟部組織および脳を含む複数の部位における巨大な浸潤性腫瘍を含むメラノーマ患者において、50~70%の範囲の客観的奏効率を媒介した(Rosenbergら、Nat. Rev. Cancer. 8巻(4号):299~308頁、2008年;Dudley MEら、J. Clin. Oncol. 23巻(10号):2346~57頁、2005年)。
【0009】
TIL療法の広範な適用に対する主要な制限は、抗腫瘍能を有するヒトT細胞を生成することにおける困難である。代替的アプローチとして、外因性の高親和性TCRが、T細胞操作を介して患者の正常な自家T細胞中に導入され得る。リンパ枯渇患者中へのこれらの細胞の養子移入は、メラノーマ、結腸直腸癌および滑膜肉腫などのがんにおいてがん退縮を媒介することが示されている(Kunert Rら、Front. Immunol. 4巻:363頁、2013年)。滑膜肉腫に対する抗NY-ESO-1 TCRを使用する最近の第I相臨床試験は、66%の奏効率を報告し、完全奏功が、T細胞療法を受けている患者の1人において達成された(Robbins PFら、Clin. Cancer Res. 21巻(5号):1019~27頁、2015年)。
【0010】
TCR操作されたT細胞療法の利点の1つは、プロセシングされMHC提示を介して細胞表面に送達される潜在的細胞内腫瘍特異的タンパク質のアレイ全体を標的化できることである。さらに、TCRは、高度に感受性であり、ごくわずかな抗原性ペプチド/MHC分子によって活性化され得、これは次に、サイトカイン分泌、T細胞増殖、および規定された標的細胞の細胞溶解を含む細胞溶解性T細胞応答を誘発し得る。したがって、抗体または小分子療法と比較すると、TCR操作されたT細胞は、数少ないコピーの標的細胞内抗原を有する標的細胞を死滅させるそれらの能力にとって特に役に立つ(Kunert Rら、Front. Immunol. 4巻:363頁、2013年)。
【0011】
しかし、ハイブリドーマまたはディスプレイテクノロジーを介して主に発見された治療抗体とは異なり、標的特異的TCRの同定は、患者T細胞由来の標的ペプチド/MHC特異的TCRクローンの確立、および最適な標的抗原結合親和性を有する正しいα-β鎖の組合せについてのスクリーニングを必要とする。非常にしばしば、ファージ/酵母ディスプレイが、TCRの標的結合親和性をさらに増強するために、患者T細胞由来のTCRのクローニング後に用いられる。プロセス全体は、多くの領域における専門知識を必要とし、時間がかかる(Kobayashi Eら、Oncoimmunology. 3巻(1号):e27258頁、2014年)。TCR発見プロセスにおける困難は、TCR操作されたT細胞療法の広範な適用を大きく妨害してきた。これは、特に、腫瘍細胞上で過剰発現されるが健康な細胞上でも発現される抗原に対するTCR、またはオフ-ターゲットペプチド/MHC複合体を認識するTCRによる、処置関連毒性によっても妨げられてきた(Rosenberg SAら、Science. 348巻(6230号):62~8頁、2015年)。
【0012】
標的化されたがん免疫療法にT細胞を関与させるための異なるアプローチが、近年開発されている。この新しいアプローチは、キメラ抗原受容体T細胞療法(CAR-T)と呼ばれる。これは、モノクローナル抗体の精巧な標的化特異性を、細胞傷害性T細胞によりもたらされる強力な細胞傷害性および長期間持続と合体させる。CARは、細胞表面抗原を認識する細胞外ドメイン、膜貫通領域、および細胞内シグナル伝達ドメインから構成される。細胞外ドメインは、単鎖可変断片(scFv)に融合されたモノクローナル抗体の重鎖および軽鎖由来の抗原結合結合可変領域からなる。細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)、例えば、CD3ζまたはFcRγ由来のもの、および1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメイン、例えば、CD28、4-1BBまたはOX40由来のものを含む(Barrett DMら、Annu. Rev. Med. 65巻:333~47頁、2014年;Davila MLら、Oncoimmunology. 1巻(9号):1577~1583頁、2012年)。T細胞表面上にグラフトされたCARによる標的抗原の結合は、TCR-ペプチド/MHC複合体相互作用とは独立して、T細胞エフェクター機能を誘発できる。したがって、CARを備えたT細胞は、T細胞上のTCRのMHC型とは一致しないが標的細胞表面抗原を発現するものを含む、広範な種々の細胞を攻撃するように再指向され得る。このアプローチは、MHC拘束されたTCR認識の制約を克服し、抗原提示またはMHC分子発現における機能障害を介した腫瘍エスケープを回避する。臨床試験は、神経芽細胞腫(Louis CUら、Blood. 118巻(23号):6050~6056頁、2011年)、B-ALL(Maude, SLら、New England Journal of Medicine 371巻:16号:1507~1517頁、2014年)、CLL(Brentjens, RJら Blood 118巻:18号:4817~4828頁、2011年)およびB細胞リンパ腫(Kochenderfer, JNら Blood 116巻:20号:4099~4102頁、2010年)において、CAR-T療法の臨床的に有意な抗腫瘍活性を示している。1つの研究では、CD19-CAR T療法で処置されたB-ALLを有する30人の患者において、90%の完全寛解率が報告された(Maude, SLら、上記)。
【0013】
全てではないにしても大多数のこれまでに研究されたCARは、高い細胞表面発現を有する腫瘍抗原に指向されている。全ての公知の腫瘍特異的抗原の95%に相当する低コピー数の細胞表面腫瘍抗原および細胞内腫瘍抗原を標的化するために、より強力で有効な操作された細胞療法を開発することが必要である(Cheeverら、Clin. Cancer Res. 15巻(17号):5323~37頁、2009年)。
T細胞受容体エフェクター機能を有する、抗体特異性を有するキメラ受容体分子を操作するためのいくつかの試みが行われてきた。例えば、Kuwana, Yら、Biochem. Biophys. Res. Commun. 149巻(3号):960~968頁、1987年;Gross, Gら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 86巻:10024~10028頁、1989年;Gross, GおよびEshhar, Z、FASEB J. 6巻(15号):3370~3378頁、1992年;米国特許第7,741,465号を参照のこと。今日まで、これらのキメラ受容体の中には、臨床的使用に採用されたものは存在せず、ヒトT細胞において改善された発現および機能性を有する抗体-TCRキメラ受容体の新規設計が必要とされている。
本明細書で言及される全ての刊行物、特許、特許出願および公開された特許出願の開示は、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【非特許文献】
【0015】
【文献】Broereら、Principles of Immunopharmacology、2011年
【文献】The T cell Receptor Factsbook、2001年
【文献】Callら、Cell. 111巻(7号):967~79頁、2002年
【文献】Girardiら、J. Invest. Dermatol. 126巻(1号):25~31頁、2006年
【文献】Hayesら、Immunity. 16巻(6号):827~38頁、2002年
【文献】Scheinbergら、Oncotarget. 4巻(5号):647~8頁、2013年
【文献】Cheeverら、Clin. Cancer Res. 15巻(17号):5323~37頁、2009年
【文献】Blattmanら、Science. 305巻(5681号):200~5頁、2004年
【文献】Rosenbergら、Nat. Rev. Cancer. 8巻(4号):299~308頁、2008年
【文献】Dudley MEら、J. Clin. Oncol. 23巻(10号):2346~57頁、2005年
【文献】Kunert Rら、Front. Immunol. 4巻:363頁、2013年
【文献】Robbins PFら、Clin. Cancer Res. 21巻(5号):1019~27頁、2015年
【文献】Kunert Rら、Front. Immunol. 4巻:363頁、2013年
【文献】Kobayashi Eら、Oncoimmunology. 3巻(1号):e27258頁、2014年
【文献】Rosenberg SAら、Science. 348巻(6230号):62~8頁、2015年
【文献】Barrett DMら、Annu. Rev. Med. 65巻:333~47頁、2014年
【文献】Davila MLら、Oncoimmunology. 1巻(9号):1577~1583頁、2012年
【文献】Louis CUら、Blood. 118巻(23号):6050~6056頁、2011年)、B-ALL(Maude, SLら、New England Journal of Medicine 371巻:16号:1507~1517頁、2014年
【文献】Brentjens, RJら Blood 118巻:18号:4817~4828頁、2011年
【文献】Kochenderfer, JNら Blood 116巻:20号:4099~4102頁、2010年
【文献】Cheeverら、Clin. Cancer Res. 15巻(17号):5323~37頁、2009年
【文献】Kuwana, Yら、Biochem. Biophys. Res. Commun. 149巻(3号):960~968頁、1987年
【文献】Gross, Gら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 86巻:10024~10028頁、1989年
【文献】Gross, GおよびEshhar, Z、FASEB J. 6巻(15号):3370~3378頁、1992年
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本出願は、一態様では、T細胞受容体モジュールに融合した抗体部分(例えば、Fab様抗原結合結合モジュール)を含む構築物(例えば、単離された構築物)を提供する(前記構築物は、本明細書で「抗体-TCRキメラ分子」または「abTCR」とも呼ぶ)。一部の実施形態では、abTCRは、標的抗原に特異的に結合するFab様抗原結合結合モジュールと、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なT細胞受容体モジュール(TCRM)とを含む。一部の実施形態では、標的抗原は、ペプチドとMHCタンパク質(例えば、MHCクラスIタンパク質またはMHCクラスIIタンパク質)とを含む複合体である。一部の実施形態では、標的抗原は細胞表面抗原である。
【0017】
一部の実施形態では、標的抗原に特異的に結合するabTCR(例えば、単離されたabTCR)であって、a)VHおよびCH1抗体ドメインを含む第1の抗原結合結合ドメインと第1のTCRサブユニットの第1の膜貫通ドメインを含む第1のT細胞受容体ドメイン(TCRD)とを含む第1のポリペプチド鎖;ならびにb)VLおよびCL抗体ドメインを含む第2の抗原結合結合ドメインと第2のTCRサブユニットの第2の膜貫通ドメインを含む第2のTCRDとを含む第2のポリペプチド鎖、を含み、第1の抗原結合結合ドメインのVHおよびCH1ドメインと第2の抗原結合結合ドメインのVLおよびCLドメインとが、標的抗原に特異的に結合するFab様抗原結合結合モジュールを形成し、第1のTCRDと第2のTCRDとが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なT細胞受容体モジュール(TCRM)を形成する、abTCRが提供される。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、1つまたは複数のジスルフィド結合を介して連結される。一部の実施形態では、Fab様抗原結合結合モジュールは、第1のポリペプチド鎖中のCH1ドメイン中の残基と第2のポリペプチド鎖中のCLドメイン中の残基との間のジスルフィド結合を含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、第1の抗原結合結合ドメインと第1のTCRDとの間に第1のペプチドリンカーをさらに含む。一部の実施形態では、第2のポリペプチド鎖は、第2の抗原結合結合ドメインと第2のTCRDとの間に第2のペプチドリンカーをさらに含む。一部の実施形態では、第1のペプチドリンカーおよび/または第2のペプチドリンカーは個々に、約5~約50アミノ酸長である。一部の実施形態では、標的抗原は細胞表面抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、タンパク質、炭水化物および脂質からなる群から選択される。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、CD19、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5DまたはFCRL5である。一部の実施形態では、標的抗原は、ペプチドと主要組織適合複合体(MHC)タンパク質とを含む複合体である。
【0018】
一部の実施形態では、標的抗原に特異的に結合するabTCRであって、a)VH抗体ドメインを含む第1の抗原結合ドメインと第1のTCRサブユニットの第1の膜貫通ドメインを含む第1のTCRDとを含む第1のポリペプチド鎖;およびb)VL抗体ドメインを含む第2の抗原結合ドメインと第2のTCRサブユニットの第2の膜貫通ドメインを含む第2のTCRDとを含む第2のポリペプチド鎖、を含み、第1の抗原結合ドメインのVHドメインと第2の抗原結合ドメインのVLドメインとが、標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールを形成し、第1のTCRDと第2のTCRDとが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なT細胞受容体モジュール(TCRM)を形成し、標的抗原が、ペプチドとMHCタンパク質とを含む複合体である、abTCRが提供される。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、第1の抗原結合ドメインと第1のTCRDとの間に第1のペプチドリンカーをさらに含み、第2のポリペプチド鎖は、第2の抗原結合ドメインと第2のTCRDとの間に第2のペプチドリンカーをさらに含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、免疫グロブリンまたはT細胞受容体サブユニット由来の定常ドメインまたはその断片を個々に含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、CH1、CH2、CH3、CH4もしくはCL抗体ドメイン、またはそれらの断片を個々に含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、Cα、Cβ、CγもしくはCδ TCRドメイン、またはそれらの断片を個々に含む。
【0019】
一部の実施形態では、上記abTCR(例えば、単離されたabTCR)のいずれかによれば、第1のTCRDは、第1の膜貫通ドメインのN末端側に、TCRサブユニットの第1の接続ペプチドまたはその断片をさらに含む。第2のTCRDは、第2の膜貫通ドメインのN末端側に、TCRサブユニットの第2の接続ペプチドまたはその断片をさらに含む。一部の実施形態では、TCRMは、第1の接続ペプチド中の残基と第2の接続ペプチド中の残基との間のジスルフィド結合を含む。一部の実施形態では、第1のTCRDは、第1の膜貫通ドメインのC末端側に、TCR細胞内配列を含む第1のTCR細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、第2のTCRDは、第2の膜貫通ドメインのC末端側に、TCR細胞内配列を含む第2のTCR細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、abTCRは、約0.1pM~約500nMの平衡解離定数(Kd)で標的抗原に結合する。一部の実施形態では、TCR関連シグナル伝達モジュールは、CD3δε、CD3γεおよびζζからなる群から選択される。
【0020】
一部の実施形態では、上記abTCR(例えば、単離されたabTCR)のいずれかによれば、第1のポリペプチド鎖は、第1の膜貫通ドメインのC末端側に、共刺激細胞内シグナル伝達配列を含む第1のアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、第2のポリペプチド鎖は、第2の膜貫通ドメインのC末端側に、共刺激細胞内シグナル伝達配列を含む第2のアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、第1の抗原結合ドメインのN末端側に、第1のシグナル伝達ペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、第2のポリペプチド鎖は、第2の抗原結合ドメインのN末端側に、第2のシグナル伝達ペプチドをさらに含む。
【0021】
一部の実施形態では、標的抗原がペプチドと主要組織適合複合体(MHC)タンパク質とを含む複合体である上記abTCR(例えば、単離されたabTCR)のいずれかによれば、ペプチドは、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1およびPSAからなる群から選択されるタンパク質に由来する。
【0022】
一部の実施形態では、上記abTCR(例えば、単離されたabTCR)のいずれかによれば、a)第1のTCRサブユニットはTCRα鎖であり、第2のTCRサブユニットはTCRβ鎖であり;b)第1のTCRサブユニットはTCRβ鎖であり、第2のTCRサブユニットはTCRα鎖であり;c)第1のTCRサブユニットはTCRγ鎖であり、第2のTCRサブユニットはTCRδ鎖であり;またはd)第1のTCRサブユニットはTCRδ鎖であり、第2のTCRサブユニットはTCRγ鎖である。
【0023】
一部の実施形態では、上記abTCR(例えば、単離されたabTCR)のいずれかによれば、abTCRの第1および第2のポリペプチド鎖をコードする核酸が提供される。
【0024】
一部の実施形態では、上記abTCR(例えば、単離されたabTCR)のいずれかによれば、abTCRとCD3δε、CD3γεおよびζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールとを含む複合体が提供される。一部の実施形態では、複合体は、abTCRとCD3δε、CD3γεおよびζζとを含む八量体である。
【0025】
一部の実施形態では、上記abTCR(例えば、単離されたabTCR)のいずれかによれば、abTCRをその表面上に提示するエフェクター細胞が提供される。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、abTCRをコードする核酸を含む。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、第1のTCRサブユニットおよび/または第2のTCRサブユニットを発現しない。例えば、一部の実施形態では、a)第1のTCRサブユニットはTCRγであり、第2のTCRサブユニットはTCRδであり;またはb)第1のTCRサブユニットはTCRδであり、第2のTCRサブユニットはTCRγであり;エフェクター細胞はαβT細胞である。一部の実施形態では、a)第1のTCRサブユニットはTCRγであり、第2のTCRサブユニットはTCRδであり;またはb)第1のTCRサブユニットはTCRδであり、第2のTCRサブユニットはTCRγであり;エフェクター細胞はαβT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、第1の内因性TCRサブユニットおよび/または第2の内因性TCRサブユニットの発現を遮断するまたは減少させるように改変されている。例えば、一部の実施形態では、a)第1のTCRサブユニットはTCRαであり、第2のTCRサブユニットはTCRβであり;またはb)第1のTCRサブユニットはTCRβであり、第2のTCRサブユニットはTCRαであり;エフェクター細胞は、TCRαおよび/またはTCRβの発現を遮断するまたは減少させるように改変されているαβT細胞である。一部の実施形態では、a)第1のTCRサブユニットはTCRγであり、第2のTCRサブユニットはTCRδであり;またはb)第1のTCRサブユニットはTCRδであり、第2のTCRサブユニットはTCRγであり;エフェクター細胞は、TCRγおよび/またはTCRδの発現を遮断するまたは減少させるように改変されているγδT細胞である。
【0026】
一部の実施形態では、上記abTCR(例えば、単離されたabTCR)のいずれかによれば、abTCRをその表面上に提示するエフェクター細胞であって、T細胞であるエフェクター細胞が提供される。一部の実施形態では、T細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
【0027】
一部の実施形態では、上記abTCR(例えば、単離されたabTCR)のいずれかによれば、abTCRをその表面上に提示するエフェクター細胞であって、a)第1のプロモーターの制御下のabTCRの第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸配列を含む第1のベクターと、b)第2のプロモーターの制御下のabTCRの第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸配列を含む第2のベクターとを含む、エフェクター細胞が提供される。
【0028】
一部の実施形態では、上記abTCR(例えば、単離されたabTCR)のいずれかによれば、abTCRをその表面上に提示するエフェクター細胞であって、a)第1のプロモーターの制御下のabTCRの第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸配列と;b)第2のプロモーターの制御下のabTCRの第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸配列とを含むベクターを含む、エフェクター細胞が提供される。
【0029】
一部の実施形態では、上記abTCR(例えば、単離されたabTCR)のいずれかによれば、abTCRをその表面上に提示するエフェクター細胞であって、a)abTCRの第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸配列と;abTCRの第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸配列とを含むベクターを含み、第1および第2の核酸配列が、単一のプロモーターの制御下にある、エフェクター細胞が提供される。
【0030】
一部の実施形態では、上記abTCR(例えば、単離されたabTCR)のいずれかによれば、abTCRをその表面上に提示するエフェクター細胞であって、abTCRの第1のポリペプチド鎖の発現が、abTCRの第2のポリペプチド鎖の発現とは、2倍よりも大きく異なる、エフェクター細胞が提供される。
【0031】
一部の実施形態では、標的抗原を提示する標的細胞を死滅させる方法であって、標的細胞を、上記abTCR(例えば、単離されたabTCR)のいずれかにしたがうabTCRを発現するエフェクター細胞と接触させるステップを含み、abTCRが、標的抗原に特異的に結合する、方法が提供される。
【0032】
一部の実施形態では、標的抗原を提示する標的細胞を死滅させる方法であって、標的細胞を、標的抗原に特異的に結合するabTCRを含むエフェクターαβT細胞と接触させるステップを含み、abTCRが、a)VH抗体ドメインを含む第1の抗原結合ドメインと第1のTCRサブユニットの第1の膜貫通ドメインを含む第1のTCRDとを含む第1のポリペプチド鎖;およびb)VL抗体ドメインを含む第2の抗原結合ドメインと第2のTCRサブユニットの第2の膜貫通ドメインを含む第2のTCRDとを含む第2のポリペプチド鎖、を含み、第1の抗原結合ドメインのVHドメインと第2の抗原結合ドメインのVLドメインとが、標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールを形成し、第1のTCRDと第2のTCRDとが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なT細胞受容体モジュール(TCRM)を形成し、第1のTCRサブユニットがTCRγであり、第2のTCRサブユニットがTCRδであり、または第1のTCRサブユニットがTCRδであり、第2のTCRサブユニットがTCRγである、方法が提供される。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、第1の抗原結合ドメインと第1のTCRDとの間に第1のペプチドリンカーをさらに含み、第2のポリペプチド鎖は、第2の抗原結合ドメインと第2のTCRDとの間に第2のペプチドリンカーをさらに含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、免疫グロブリンまたはT細胞受容体サブユニット由来の定常ドメインまたはその断片を個々に含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、CH1、CH2、CH3、CH4もしくはCL抗体ドメイン、またはそれらの断片を個々に含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、Cα、Cβ、CγもしくはCδTCRドメイン、またはそれらの断片を個々に含む。
【0033】
一部の実施形態では、上記標的細胞を死滅させる方法のいずれかによれば、接触させるステップはin vivoである。一部の実施形態では、接触させるステップはin vitroである。
【0034】
一部の実施形態では、上記abTCR(例えば、単離されたabTCR)のいずれかにしたがうabTCRと薬学的に許容されるキャリアとを含む医薬組成物が提供される。一部の実施形態では、上記実施形態のいずれかにしたがうabTCRをコードする核酸と薬学的に許容されるキャリアとを含む医薬組成物が提供される。一部の実施形態では、上記abTCR(例えば、単離されたabTCR)のいずれかにしたがうabTCRを発現するエフェクター細胞と薬学的に許容されるキャリアとを含む医薬組成物が提供される。
【0035】
一部の実施形態では、それを必要とする個体において標的抗原関連疾患を処置する方法であって、個体に、有効量の、上記abTCR(例えば、単離されたabTCR)のいずれかにしたがうabTCRを発現するエフェクター細胞を含む医薬組成物を投与するステップを含む方法が提供される。
【0036】
一部の実施形態では、それを必要とする個体において標的抗原関連疾患を処置する方法であって、個体に、有効量の、標的抗原に特異的に結合するabTCRを含むエフェクターαβ T細胞を含む組成物を投与するステップを含み、abTCRが、a)VH抗体ドメインを含む第1の抗原結合ドメインと第1のTCRサブユニットの第1の膜貫通ドメインを含む第1のTCRDとを含む第1のポリペプチド鎖;およびb)VL抗体ドメインを含む第2の抗原結合ドメインと第2のTCRサブユニットの第2の膜貫通ドメインを含む第2のTCRDとを含む第2のポリペプチド鎖、を含み、第1の抗原結合ドメインのVHドメインと第2の抗原結合ドメインのVLドメインとが、標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールを形成し、第1のTCRDと第2のTCRDとが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なT細胞受容体モジュール(TCRM)を形成し、第1のTCRサブユニットがTCRγであり、第2のTCRサブユニットがTCRδであり、または第1のTCRサブユニットがTCRδであり、第2のTCRサブユニットがTCRγである、方法が提供される。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、第1の抗原結合ドメインと第1のTCRDとの間に第1のペプチドリンカーをさらに含み、第2のポリペプチド鎖は、第2の抗原結合ドメインと第2のTCRDとの間に第2のペプチドリンカーをさらに含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、免疫グロブリンまたはT細胞受容体サブユニット由来の定常ドメインまたはその断片を個々に含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、CH1、CH2、CH3、CH4もしくはCL抗体ドメイン、またはそれらの断片を個々に含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、Cα、Cβ、CγもしくはCδTCRドメイン、またはそれらの断片を個々に含む。
【0037】
一部の実施形態では、上記標的抗原関連疾患を処置する方法のいずれかによれば、標的抗原関連疾患はがんである。一部の実施形態では、がんは、副腎皮質癌、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、胆管細胞癌、結腸直腸がん、食道がん、グリア芽細胞腫、グリオーマ、肝細胞癌、頭頸部がん、腎臓がん、リンパ腫、白血病、肺がん、メラノーマ、中皮腫、多発性骨髄腫、膵臓がん、褐色細胞腫、形質細胞腫、神経芽細胞腫、卵巣がん、前立腺がん、肉腫、胃がん、子宮がんおよび甲状腺がんからなる群から選択される。一部の実施形態では、標的抗原関連疾患は、ウイルス感染症である。一部の実施形態では、ウイルス感染症は、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、伝染性軟属腫ウイルス(MCV)、ヒトT細胞白血病ウイルス1(HTLV-1)、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)およびC型肝炎ウイルス(HCV)からなる群から選択されるウイルスによって引き起こされる。
【0038】
一部の実施形態では、それを必要とする個体において標的抗原関連疾患を処置する方法であって、個体に、有効量の、上記abTCR(例えば、単離されたabTCR)のいずれかにしたがうabTCRをコードする核酸を含む医薬組成物を投与するステップを含む方法が提供される。
【0039】
一部の実施形態では、上記abTCR(例えば、単離されたabTCR)のいずれかにしたがうabTCRを発現するエフェクター細胞について不均一な細胞集団を富化する方法であって、a)不均一な細胞集団を、標的抗原またはその中に含まれる1つもしくは複数のエピトープを含むリガンドと接触させて、リガンドに結合したエフェクター細胞の複合体を形成するステップ;およびb)不均一な細胞集団から複合体を分離し、それによって、エフェクター細胞について富化された細胞集団を生成するステップを含む方法が提供される。
【0040】
一部の実施形態では、上記abTCR(例えば、単離されたabTCR)のいずれかにしたがう複数のabTCRをコードする配列を含む、核酸ライブラリーが提供される。
【0041】
一部の実施形態では、標的抗原に対して特異的なabTCRをコードする配列について、上記実施形態のいずれかにしたがう核酸ライブラリーをスクリーニングする方法であって、a)abTCRが複数の細胞の表面上で発現されるように、核酸ライブラリーを複数の細胞中に導入するステップ;b)複数の細胞を、標的抗原またはその中に含まれる1つもしくは複数のエピトープを含むリガンドと共にインキュベートするステップ;c)リガンドに結合した細胞を収集するステップ;およびd)ステップc)において収集した細胞から、abTCRをコードする配列を単離し、それによって、標的抗原に対して特異的なabTCRを同定するステップを含む方法が提供される。
【0042】
本明細書に記載される構築物のいずれかを作製する方法、本明細書に記載される方法に適切な製造物品およびキットもまた提供される。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(請求項1)
標的抗原に特異的に結合する抗体-T細胞受容体(TCR)キメラ分子(abTCR)であって、
a)V
H
およびC
H
1抗体ドメインを含む第1の抗原結合ドメインと第1のTCRサブユニットの第1の膜貫通ドメインを含む第1のT細胞受容体ドメイン(TCRD)とを含む第1のポリペプチド鎖;ならびに
b)V
L
およびC
L
抗体ドメインを含む第2の抗原結合ドメインと第2のTCRサブユニットの第2の膜貫通ドメインを含む第2のTCRDとを含む第2のポリペプチド鎖
を含み、
前記第1の抗原結合ドメインの前記V
H
およびC
H
1ドメインと前記第2の抗原結合ドメインの前記V
L
およびC
L
ドメインとが、前記標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールを形成し、
前記第1のTCRDと前記第2のTCRDとが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なT細胞受容体モジュール(TCRM)を形成する、
abTCR。
(請求項2)
前記抗原結合モジュールが、前記C
H
1ドメイン中の残基と前記C
L
ドメイン中の残基との間のジスルフィド結合を含む、請求項1に記載のabTCR。
(請求項3)
前記第1のポリペプチド鎖が、前記第1の抗原結合ドメインと前記第1のTCRDとの間に第1のペプチドリンカーをさらに含む、請求項1または2に記載のabTCR。
(請求項4)
前記第2のポリペプチド鎖が、前記第2の抗原結合ドメインと前記第2のTCRDとの間に第2のペプチドリンカーをさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のabTCR。
(請求項5)
前記第1のペプチドリンカーおよび/または前記第2のペプチドリンカーが個々に、約5~約50アミノ酸長である、請求項3または4に記載のabTCR。
(請求項6)
前記標的抗原が細胞表面抗原である、請求項1から5のいずれか一項に記載のabTCR。
(請求項7)
前記細胞表面抗原が、タンパク質、炭水化物および脂質からなる群から選択される、請求項6に記載のabTCR。
(請求項8)
前記細胞表面抗原が、CD19、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5DまたはFCRL5である、請求項7に記載のabTCR。
(請求項9)
前記標的抗原が、ペプチドと主要組織適合複合体(MHC)タンパク質とを含む複合体である、請求項1から5のいずれか一項に記載のabTCR。
(請求項10)
標的抗原に特異的に結合するabTCRであって、
a)V
H
抗体ドメインを含む第1の抗原結合ドメインと第1のTCRサブユニットの第1の膜貫通ドメインを含む第1のTCRDとを含む第1のポリペプチド鎖;および
b)V
L
抗体ドメインを含む第2の抗原結合ドメインと第2のTCRサブユニットの第2の膜貫通ドメインを含む第2のTCRDとを含む第2のポリペプチド鎖
を含み、
前記第1の抗原結合ドメインの前記V
H
ドメインと前記第2の抗原結合ドメインの前記V
L
ドメインとが、前記標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールを形成し、
前記第1のTCRDと前記第2のTCRDとが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なT細胞受容体モジュール(TCRM)を形成し、
前記標的抗原が、ペプチドとMHCタンパク質とを含む複合体である、
abTCR。
(請求項11)
前記第1のポリペプチド鎖が、前記第1の抗原結合ドメインと前記第1のTCRDとの間に第1のペプチドリンカーをさらに含み、前記第2のポリペプチド鎖が、前記第2の抗原結合ドメインと前記第2のTCRDとの間に第2のペプチドリンカーをさらに含む、請求項10に記載のabTCR。
(請求項12)
前記第1および/または第2のペプチドリンカーが、免疫グロブリンまたはT細胞受容体サブユニット由来の定常ドメインまたはその断片を個々に含む、請求項11に記載のabTCR。
(請求項13)
前記第1および/または第2のペプチドリンカーが、CH1、CH2、CH3、CH4もしくはCL抗体ドメイン、またはそれらの断片を個々に含む、請求項12に記載のabTCR。
(請求項14)
前記第1および/または第2のペプチドリンカーが、Cα、Cβ、CγもしくはCδTCRドメイン、またはそれらの断片を個々に含む、請求項12に記載のabTCR。
(請求項15)
前記第1のTCRDが、前記第1の膜貫通ドメインのN末端側に、TCRサブユニットの第1の接続ペプチドまたはその断片をさらに含む、請求項1から14のいずれか一項に記載のabTCR。
(請求項16)
前記第2のTCRDが、前記第2の膜貫通ドメインのN末端側に、TCRサブユニットの第2の接続ペプチドまたはその断片をさらに含む、請求項1から15のいずれか一項に記載のabTCR。
(請求項17)
前記TCRMが、前記第1の接続ペプチド中の残基と前記第2の接続ペプチド中の残基との間のジスルフィド結合を含む、請求項15または16に記載のabTCR。
(請求項18)
前記第1のTCRDが、前記第1の膜貫通ドメインのC末端側に、TCR細胞内配列を含む第1のTCR細胞内ドメインをさらに含む、請求項1から17のいずれか一項に記載のabTCR。
(請求項19)
前記第2のTCRDが、前記第2の膜貫通ドメインのC末端側に、TCR細胞内配列を含む第2のTCR細胞内ドメインをさらに含む、請求項1から18のいずれか一項に記載のabTCR。
(請求項20)
前記第1のポリペプチド鎖が、前記第1の膜貫通ドメインのC末端側に、共刺激細胞内シグナル伝達配列を含む第1のアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む、請求項1から19のいずれか一項に記載のabTCR。
(請求項21)
前記第2のポリペプチド鎖が、前記第2の膜貫通ドメインのC末端側に、共刺激細胞内シグナル伝達配列を含む第2のアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む、請求項1から20のいずれか一項に記載のabTCR。
(請求項22)
前記第1のポリペプチド鎖が、前記第1の抗原結合ドメインのN末端側に、第1のシグナル伝達ペプチドをさらに含む、請求項1から21のいずれか一項に記載のabTCR。
(請求項23)
前記第2のポリペプチド鎖が、前記第2の抗原結合ドメインのN末端側に、第2のシグナル伝達ペプチドをさらに含む、請求項1から22のいずれか一項に記載のabTCR。
(請求項24)
前記標的抗原複合体中の前記ペプチドが、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1およびPSAからなる群から選択されるタンパク質に由来する、請求項9から23のいずれか一項に記載のabTCR。
(請求項25)
前記分子が、約0.1pM~約500nMの平衡解離定数(K
d
)で前記標的抗原に結合する、請求項1から24のいずれか一項に記載のabTCR。
(請求項26)
前記TCR関連シグナル伝達モジュールが、CD3δε、CD3γεおよびζζからなる群から選択される、請求項1から25のいずれか一項に記載のabTCR。
(請求項27)
前記第1のTCRサブユニットがTCRα鎖であり、前記第2のTCRサブユニットがTCRβ鎖である、請求項1から26のいずれか一項に記載のabTCR。
(請求項28)
前記第1のTCRサブユニットがTCRβ鎖であり、前記第2のTCRサブユニットがTCRα鎖である、請求項1から26のいずれか一項に記載のabTCR。
(請求項29)
前記第1のTCRサブユニットがTCRγ鎖であり、前記第2のTCRサブユニットがTCRδ鎖である、請求項1から26のいずれか一項に記載のabTCR。
(請求項30)
前記第1のTCRサブユニットがTCRδ鎖であり、前記第2のTCRサブユニットがTCRγ鎖である、請求項1から26のいずれか一項に記載のabTCR。
(請求項31)
請求項1から30のいずれか一項に記載のabTCRの前記第1および第2のポリペプチド鎖をコードする核酸(複数可)。
(請求項32)
請求項1から30のいずれか一項に記載のabTCRと、CD3δε、CD3γεおよびζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールとを含む複合体。
(請求項33)
前記abTCRとCD3δε、CD3γεおよびζζとを含む八量体である、請求項32に記載の複合体。
(請求項34)
請求項1から30のいずれか一項に記載のabTCRまたは請求項32もしくは33に記載の複合体をその表面上に提示するエフェクター細胞。
(請求項35)
請求項31に記載の核酸(複数可)を含むエフェクター細胞。
(請求項36)
前記第1のTCRサブユニットおよび/または前記第2のTCRサブユニットを発現しない、請求項34または35に記載のエフェクター細胞。
(請求項37)
a)前記第1のTCRサブユニットがTCRαであり、前記第2のTCRサブユニットがTCRβであり;または
b)前記第1のTCRサブユニットがTCRβであり、前記第2のTCRサブユニットがTCRαであり;
前記エフェクター細胞がγδT細胞である、請求項36に記載のエフェクター細胞。
(請求項38)
a)前記第1のTCRサブユニットがTCRγであり、前記第2のTCRサブユニットがTCRδであり;または
b)前記第1のTCRサブユニットがTCRδであり、前記第2のTCRサブユニットがTCRγであり;
前記エフェクター細胞がαβT細胞である、請求項36に記載のエフェクター細胞。
(請求項39)
第1の内因性TCRサブユニットおよび/または第2の内因性TCRサブユニットの発現を遮断するまたは減少させるように改変されている、請求項34から36のいずれか一項に記載のエフェクター細胞。
(請求項40)
a)前記第1のTCRサブユニットがTCRαであり、前記第2のTCRサブユニットがTCRβであり;または
b)前記第1のTCRサブユニットがTCRβであり、前記第2のTCRサブユニットがTCRαであり;
前記エフェクター細胞が、TCRαおよび/またはTCRβの発現を遮断するまたは減少させるように改変されたαβT細胞である、請求項39に記載のエフェクター細胞。
(請求項41)
a)前記第1のTCRサブユニットがTCRγであり、前記第2のTCRサブユニットがTCRδであり;または
b)前記第1のTCRサブユニットがTCRδであり、前記第2のTCRサブユニットがTCRγであり;
前記エフェクター細胞が、TCRγおよび/またはTCRδの発現を遮断するまたは減少させるように改変されたγδT細胞である、請求項39に記載のエフェクター細胞。
(請求項42)
CD3
+
細胞である、請求項34から41のいずれか一項に記載のエフェクター細胞。
(請求項43)
前記CD3
+
細胞が、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される、請求項42に記載のエフェクター細胞。
(請求項44)
a)第1のプロモーターの制御下の前記abTCRの前記第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸配列を含む第1のベクターと、b)第2のプロモーターの制御下の前記abTCRの前記第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸配列を含む第2のベクターとを含む、請求項34から43のいずれか一項に記載のエフェクター細胞。
(請求項45)
a)第1のプロモーターの制御下の前記abTCRの前記第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸配列と;b)第2のプロモーターの制御下の前記abTCRの前記第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸配列とを含むベクターを含む、請求項34から43のいずれか一項に記載のエフェクター細胞。
(請求項46)
a)前記abTCRの前記第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸配列と;b)前記abTCRの前記第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸配列とを含むベクターを含み、前記第1および第2の核酸配列が、単一のプロモーターの制御下にある、請求項34から43のいずれか一項に記載のエフェクター細胞。
(請求項47)
前記abTCRの前記第1のポリペプチド鎖の発現が、前記abTCRの前記第2のポリペプチド鎖の発現とは、2倍よりも大きく異なる、請求項34から45のいずれか一項に記載のエフェクター細胞。
(請求項48)
標的抗原を提示する標的細胞を死滅させる方法であって、前記標的細胞を、請求項34から47のいずれか一項に記載のエフェクター細胞と接触させるステップを含み、前記abTCRが、前記標的抗原に特異的に結合する、方法。
(請求項49)
標的抗原を提示する標的細胞を死滅させる方法であって、前記標的細胞を、前記標的抗原に特異的に結合するabTCRを含むエフェクターαβT細胞と接触させるステップを含み、前記abTCRが、
a)V
H
抗体ドメインを含む第1の抗原結合ドメインと第1のTCRサブユニットの第1の膜貫通ドメインを含む第1のTCRDとを含む第1のポリペプチド鎖;および
b)V
L
抗体ドメインを含む第2の抗原結合ドメインと第2のTCRサブユニットの第2の膜貫通ドメインを含む第2のTCRDとを含む第2のポリペプチド鎖
を含み、
前記第1の抗原結合ドメインの前記V
H
ドメインと前記第2の抗原結合ドメインの前記V
L
ドメインとが、前記標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールを形成し、
前記第1のTCRDと前記第2のTCRDとが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なT細胞受容体モジュール(TCRM)を形成し、
前記第1のTCRサブユニットがTCRγであり、前記第2のTCRサブユニットがTCRδである、または前記第1のTCRサブユニットがTCRδであり、前記第2のTCRサブユニットがTCRγである、
方法。
(請求項50)
前記第1のポリペプチド鎖が、前記第1の抗原結合ドメインと前記第1のTCRDとの間に第1のペプチドリンカーをさらに含み、前記第2のポリペプチド鎖が、前記第2の抗原結合ドメインと前記第2のTCRDとの間に第2のペプチドリンカーをさらに含む、請求項49に記載の方法。
(請求項51)
前記第1および/または第2のペプチドリンカーが、免疫グロブリンまたはT細胞受容体サブユニット由来の定常ドメインまたはその断片を個々に含む、請求項50に記載の方法。
(請求項52)
前記第1および/または第2のペプチドリンカーが、CH1、CH2、CH3、CH4もしくはCL抗体ドメイン、またはそれらの断片を個々に含む、請求項51に記載の方法。
(請求項53)
前記第1および/または第2のペプチドリンカーが、Cα、Cβ、CγもしくはCδTCRドメイン、またはそれらの断片を個々に含む、請求項51に記載の方法。
(請求項54)
前記接触させるステップがin vivoである、請求項48から53のいずれか一項に記載の方法。
(請求項55)
前記接触させるステップがin vitroである、請求項48から53のいずれか一項に記載の方法。
(請求項56)
請求項1から30のいずれか一項に記載のabTCR、請求項31に記載の核酸(複数可)、または請求項34から47のいずれか一項に記載のエフェクター細胞と、薬学的に許容されるキャリアとを含む医薬組成物。
(請求項57)
それを必要とする個体において標的抗原関連疾患を処置する方法であって、前記個体に、有効量の、請求項51に記載の医薬組成物を投与するステップを含む方法。
(請求項58)
それを必要とする個体において標的抗原関連疾患を処置する方法であって、前記個体に、有効量の、前記標的抗原に特異的に結合するabTCRを含むエフェクターαβT細胞を含む組成物を投与するステップを含み、前記abTCRが、
a)V
H
抗体ドメインを含む第1の抗原結合ドメインと第1のTCRサブユニットの第1の膜貫通ドメインを含む第1のTCRDとを含む第1のポリペプチド鎖;および
b)V
L
抗体ドメインを含む第2の抗原結合ドメインと第2のTCRサブユニットの第2の膜貫通ドメインを含む第2のTCRDとを含む第2のポリペプチド鎖
を含み、
前記第1の抗原結合ドメインの前記V
H
ドメインと前記第2の抗原結合ドメインの前記V
L
ドメインとが、前記標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールを形成し、
前記第1のTCRDと前記第2のTCRDとが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なT細胞受容体モジュール(TCRM)を形成し、
前記第1のTCRサブユニットがTCRγであり、前記第2のTCRサブユニットがTCRδである、または前記第1のTCRサブユニットがTCRδであり、前記第2のTCRサブユニットがTCRγである、
方法。
(請求項59)
前記第1のポリペプチド鎖が、前記第1の抗原結合ドメインと前記第1のTCRDとの間に第1のペプチドリンカーをさらに含み、前記第2のポリペプチド鎖が、前記第2の抗原結合ドメインと前記第2のTCRDとの間に第2のペプチドリンカーをさらに含む、請求項58に記載の方法。
(請求項60)
前記第1および/または第2のペプチドリンカーが、免疫グロブリンまたはT細胞受容体サブユニット由来の定常ドメインまたはその断片を個々に含む、請求項59に記載の方法。
(請求項61)
前記第1および/または第2のペプチドリンカーが、CH1、CH2、CH3、CH4もしくはCL抗体ドメイン、またはそれらの断片を個々に含む、請求項60に記載の方法。
(請求項62)
前記第1および/または第2のペプチドリンカーが、Cα、Cβ、CγもしくはCδTCRドメイン、またはそれらの断片を個々に含む、請求項60に記載の方法。
(請求項63)
前記標的抗原関連疾患ががんである、請求項57から62のいずれか一項に記載の方法。
(請求項64)
前記がんが、副腎皮質癌、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、胆管細胞癌、結腸直腸がん、食道がん、グリア芽細胞腫、グリオーマ、肝細胞癌、頭頸部がん、腎臓がん、白血病、リンパ腫、肺がん、メラノーマ、中皮腫、多発性骨髄腫、膵臓がん、褐色細胞腫、形質細胞腫、神経芽細胞腫、卵巣がん、前立腺がん、肉腫、胃がん、子宮がんおよび甲状腺がんからなる群から選択される、請求項63に記載の方法。
(請求項65)
前記標的抗原関連疾患がウイルス感染症である、請求項57から62のいずれか一項に記載の方法。
(請求項66)
前記ウイルス感染症が、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、伝染性軟属腫ウイルス(MCV)、ヒトT細胞白血病ウイルス1(HTLV-1)、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)およびC型肝炎ウイルス(HCV)からなる群から選択されるウイルスによって引き起こされる、請求項65に記載の方法。
(請求項67)
請求項34から47のいずれか一項に記載のエフェクター細胞について不均一な細胞集団を富化する方法であって、
a)前記不均一な細胞集団を、前記標的抗原またはその中に含まれる1つもしくは複数のエピトープを含むリガンドと接触させて、前記リガンドに結合した前記エフェクター細胞の複合体を形成するステップ;および
b)前記不均一な細胞集団から前記複合体を分離し、それによって、前記エフェクター細胞について富化された細胞集団を生成するステップ
を含む方法。
(請求項68)
請求項1から30のいずれか一項に記載の複数のabTCRをコードする配列を含む核酸ライブラリー。
(請求項69)
標的抗原に対して特異的なabTCRをコードする配列について、請求項68に記載の核酸ライブラリーをスクリーニングする方法であって、
a)前記abTCRが複数の細胞の表面上で発現されるように、前記核酸ライブラリーを前記複数の細胞中に導入するステップ;
b)前記複数の細胞を、前記標的抗原またはその中に含まれる1つもしくは複数のエピトープを含むリガンドと共にインキュベートするステップ;
c)前記リガンドに結合した細胞を収集するステップ;および
d)ステップc)において収集した細胞から、前記abTCRをコードする配列を単離し、それによって、前記標的抗原に対して特異的なabTCRを同定するステップ
を含む方法。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1A】
図1Aは、種々のabTCR構築物設計の概略図である(abTCR-3、abTCR-4、abTCR-5およびabTCR-6)。
【0044】
【
図1B】
図1Bは、abTCR構築物設計の企図するバリエーションを示す図である。
【0045】
【
図2】
図2は、TCR-CD3複合体のアセンブリについての従来のモデルを示す図である。
【0046】
【
図3】
図3は、抗AFP158/HLA
*02:01結合部分を有するabTCR-3、-4、-5、-6または-6MD構築物を用いて個々に形質導入されたJ.RT3-T3.5またはJurkat細胞由来の可溶化物の、抗FLAG(TCRα-およびTCRγ-由来キメラサブユニット)または抗HA抗体(TCRβ-およびTCRδ-由来キメラサブユニット)を用いて染色されたウエスタンブロット分析を示す図である。
【0047】
【
図4A】
図4Aは、抗AFP158/HLA-A
*02:01結合部分を有するabTCR-3、-4、-5、-6または-6MD構築物を用いて個々に形質導入されたJ.RT3-T3.5細胞における表面CD3ε発現のフローサイトメトリー分析を示す図である;細胞は、抗CD3ε抗体を用いて染色された。
【0048】
【
図4B】
図4Bは、抗AFP158/HLA-A
*02:01結合部分を有するabTCR-3、-4、-5、-6または-6MD構築物を用いて個々に形質導入されたJ.RT3-T3.5細胞における表面AFP158/HLA-A
*02:01四量体結合のフローサイトメトリー分析を示す図である;細胞は、フィコエリトリン(PE)-標識AFP158/HLA-A
*02:01四量体を用いて染色された。
【0049】
【
図4C】
図4Cは、抗体によって認識される抗AFP158/HLA-A
*02:01結合部分を有するabTCR-3、-4、-5、-6または-6MD構築物を用いて個々に形質導入されたJ.RT3-T3.5細胞における表面抗イディオタイプ抗体結合のフローサイトメトリー分析を示す図である;細胞は、abTCR構築物の抗AFP158/HLA-A
*02:01結合部分に対する抗イディオタイプ抗体を用いて染色された。
【0050】
【
図5A】
図5Aは、抗AFP158/HLA-A
*02:01結合部分を有するabTCR-3、-4、-5、-6または-6MD構築物を用いて個々に形質導入されたJurkat細胞における表面抗TCRα/β抗体結合のフローサイトメトリー分析を示す図である;細胞は、抗TCRα/β抗体を用いて染色された。
【0051】
【
図5B】
図5Bは、抗AFP158/HLA-A
*02:01結合部分を有するabTCR-3、-4、-5、-6または-6MD構築物を用いて個々に形質導入されたJurkat細胞における表面AFP158/HLA-A
*02:01四量体結合のフローサイトメトリー分析を示す図である;細胞は、PE標識されたAFP158/HLA-A
*02:01四量体を用いて染色された。
【0052】
【
図5C】
図5Cは、抗体によって認識される抗AFP158/HLA-A
*02:01結合部分を有するabTCR-3、-4、-5、-6または-6MD構築物を用いて個々に形質導入されたJurkat細胞における表面抗イディオタイプ抗体結合のフローサイトメトリー分析を示す図である;細胞は、abTCR構築物の抗AFP158/HLA-A
*02:01結合部分に対する抗イディオタイプ抗体を用いて染色された。
【0053】
【
図6】
図6は、抗AFP158/HLA-A
*02:01結合部分を有するabTCR-6またはabTCR-6MD構築物を用いて個々に形質導入されたJ.RT3-T3.5細胞におけるabTCRキメラとのCD3εの共発現のフローサイトメトリー分析を示す図である;細胞は、抗CD3ε抗体およびAFP158/HLA-A
*02:01四量体を用いて共染色された。
【0054】
【
図7】
図7Aは、abTCR形質導入末梢血リンパ球のフローサイトメトリー分析を示す図である;細胞は、抗AFP158/HLA-A
*02:01結合部分を有するabTCR-6MD構築物を用いて形質導入され、抗CD4抗体、抗CD8抗体およびAFP158/HLA-A
*02:01四量体を用いて共染色された。点線四角は、
図7BのCD4/CD8プロットに示される細胞についての四量体
+集団ゲーティングを示す。
図7Bは、偽形質導入または、抗AFP158/HLA-A
*02:01結合部分を有するabTCR-6MD構築物を用いて形質導入され、抗CD4および抗CD8抗体を用いて共染色された末梢血リンパ球上のCD4およびCD8発現のフローサイトメトリー分析を示す図である;CD4およびCD8発現は、未ゲーティング細胞(上の2パネル)または四量体
+ゲーティング細胞(下パネル)について示されている。
【0055】
【
図8】
図8は、外因性abTCR鎖のCD3複合体との会合のウエスタンブロット分析を示す図である;ジギトニン可溶化物は、偽形質導入または、抗AFP158/HLA-A
*02:01結合部分を有するabTCR-6MDを用いて形質導入された初代T細胞から作製された;可溶化物または抗FLAG免疫沈降物は、抗FLAG、抗CD3δ、抗CD3ε、抗CD3γまたは抗CD3ζ抗体を用いてブロットされた。
【0056】
【
図9A】
図9Aは、両方とも同じ抗AFP158/HLA-A
*02:01結合部分可変ドメインを有するCARまたはabTCR-6MDを用いて形質導入された後の初代T細胞における形質導入効率を示す図である;細胞は、PE標識されたAFP158/HLA-A
*02:01四量体を用いて染色された。
【0057】
【
図9B】
図9Bは、両方とも同じ抗AFP158/HLA-A
*02:01結合部分可変ドメインを有するCARまたはabTCR-6MD構築物のいずれかを用いて形質導入されたT細胞によって媒介される、がん細胞株HepG2、SK-HEP-1およびSK-HEP-1-AFP-MGの殺滅を示すグラフである。
【0058】
【
図10】
図10は、標的細胞との共培養後のabTCR形質導入T細胞の脱顆粒のフローサイトメトリー分析を示す図である;T細胞は、両方とも同じ抗AFP158/HLA-A
*02:01結合部分可変ドメインを有するCARまたはabTCR-6MDのいずれかを用いて形質導入された。標的細胞HepG2、SK-HEP-1およびSK-HEP-1-AFP-MGとの共培養後の形質導入された細胞の、AFP158/HLA-A
*02:01四量体、抗CD8抗体または抗CD107a抗体を用いた染色が示されている。
【0059】
【
図11A】
図11Aは、HepG2細胞との共培養後の偽形質導入されたT細胞または、両方とも同じ抗AFP158/HLA-A
*02:01結合部分可変ドメインを有するCARもしくはabTCR-6MDのいずれかを用いて形質導入されたT細胞によるサイトカインパネルの分泌レベルを示す図である。
【0060】
【
図11B】
図11Bは、SK-HEP-1またはSK-HEP-1-AFP-MG細胞のいずれかと共培養された、偽形質導入されたT細胞または、両方とも同じ抗AFP158/HLA-A
*02:01結合部分可変ドメインを有するCARもしくはabTCR-6MDのいずれかを用いて形質導入されたT細胞によるサイトカインパネルの分泌レベルを示す図である。
【0061】
【
図12A】
図12A~12Hは、標的がん細胞の存在を有してまたは有さずにサイトカイン産生についての形質導入T細胞のフローサイトメトリー分析を示す図である;T細胞は、両方とも同じ抗AFP158/HLA-A
*02:01結合部分可変ドメインを有するCARまたはabTCR-6MDのいずれかを用いて形質導入され、SK-HEP-1、SK-HEP-1-AFP-MGまたはHepG2細胞のいずれかと共培養された;次に細胞は、PE標識されたAFP158/HLA-A
*02:01四量体、抗CD4抗体ならびに抗TNF-α抗体(12Aおよび12B)、抗IFNγ抗体(12Cおよび12D)、抗IL-2抗体(12Eおよび12F)または抗IL-6抗体(12Gおよび12H)の1つを用いて共染色された。示される集団は、AFP158/HLA-A
*02:01四量体
+細胞でゲーティングされた。
【0062】
【
図12B】
図12A~12Hは、標的がん細胞の存在を有してまたは有さずにサイトカイン産生についての形質導入T細胞のフローサイトメトリー分析を示す図である;T細胞は、両方とも同じ抗AFP158/HLA-A
*02:01結合部分可変ドメインを有するCARまたはabTCR-6MDのいずれかを用いて形質導入され、SK-HEP-1、SK-HEP-1-AFP-MGまたはHepG2細胞のいずれかと共培養された;次に細胞は、PE標識されたAFP158/HLA-A
*02:01四量体、抗CD4抗体ならびに抗TNF-α抗体(12Aおよび12B)、抗IFNγ抗体(12Cおよび12D)、抗IL-2抗体(12Eおよび12F)または抗IL-6抗体(12Gおよび12H)の1つを用いて共染色された。示される集団は、AFP158/HLA-A
*02:01四量体
+細胞でゲーティングされた。
【0063】
【
図12C】
図12A~12Hは、標的がん細胞の存在を有してまたは有さずにサイトカイン産生についての形質導入T細胞のフローサイトメトリー分析を示す図である;T細胞は、両方とも同じ抗AFP158/HLA-A
*02:01結合部分可変ドメインを有するCARまたはabTCR-6MDのいずれかを用いて形質導入され、SK-HEP-1、SK-HEP-1-AFP-MGまたはHepG2細胞のいずれかと共培養された;次に細胞は、PE標識されたAFP158/HLA-A
*02:01四量体、抗CD4抗体ならびに抗TNF-α抗体(12Aおよび12B)、抗IFNγ抗体(12Cおよび12D)、抗IL-2抗体(12Eおよび12F)または抗IL-6抗体(12Gおよび12H)の1つを用いて共染色された。示される集団は、AFP158/HLA-A
*02:01四量体
+細胞でゲーティングされた。
【0064】
【
図12D】
図12A~12Hは、標的がん細胞の存在を有してまたは有さずにサイトカイン産生についての形質導入T細胞のフローサイトメトリー分析を示す図である;T細胞は、両方とも同じ抗AFP158/HLA-A
*02:01結合部分可変ドメインを有するCARまたはabTCR-6MDのいずれかを用いて形質導入され、SK-HEP-1、SK-HEP-1-AFP-MGまたはHepG2細胞のいずれかと共培養された;次に細胞は、PE標識されたAFP158/HLA-A
*02:01四量体、抗CD4抗体ならびに抗TNF-α抗体(12Aおよび12B)、抗IFNγ抗体(12Cおよび12D)、抗IL-2抗体(12Eおよび12F)または抗IL-6抗体(12Gおよび12H)の1つを用いて共染色された。示される集団は、AFP158/HLA-A
*02:01四量体
+細胞でゲーティングされた。
【0065】
【
図12E】
図12A~12Hは、標的がん細胞の存在を有してまたは有さずにサイトカイン産生についての形質導入T細胞のフローサイトメトリー分析を示す図である;T細胞は、両方とも同じ抗AFP158/HLA-A
*02:01結合部分可変ドメインを有するCARまたはabTCR-6MDのいずれかを用いて形質導入され、SK-HEP-1、SK-HEP-1-AFP-MGまたはHepG2細胞のいずれかと共培養された;次に細胞は、PE標識されたAFP158/HLA-A
*02:01四量体、抗CD4抗体ならびに抗TNF-α抗体(12Aおよび12B)、抗IFNγ抗体(12Cおよび12D)、抗IL-2抗体(12Eおよび12F)または抗IL-6抗体(12Gおよび12H)の1つを用いて共染色された。示される集団は、AFP158/HLA-A
*02:01四量体
+細胞でゲーティングされた。
【
図12F】
図12A~12Hは、標的がん細胞の存在を有してまたは有さずにサイトカイン産生についての形質導入T細胞のフローサイトメトリー分析を示す図である;T細胞は、両方とも同じ抗AFP158/HLA-A
*02:01結合部分可変ドメインを有するCARまたはabTCR-6MDのいずれかを用いて形質導入され、SK-HEP-1、SK-HEP-1-AFP-MGまたはHepG2細胞のいずれかと共培養された;次に細胞は、PE標識されたAFP158/HLA-A
*02:01四量体、抗CD4抗体ならびに抗TNF-α抗体(12Aおよび12B)、抗IFNγ抗体(12Cおよび12D)、抗IL-2抗体(12Eおよび12F)または抗IL-6抗体(12Gおよび12H)の1つを用いて共染色された。示される集団は、AFP158/HLA-A
*02:01四量体
+細胞でゲーティングされた。
【
図12G】
図12A~12Hは、標的がん細胞の存在を有してまたは有さずにサイトカイン産生についての形質導入T細胞のフローサイトメトリー分析を示す図である;T細胞は、両方とも同じ抗AFP158/HLA-A
*02:01結合部分可変ドメインを有するCARまたはabTCR-6MDのいずれかを用いて形質導入され、SK-HEP-1、SK-HEP-1-AFP-MGまたはHepG2細胞のいずれかと共培養された;次に細胞は、PE標識されたAFP158/HLA-A
*02:01四量体、抗CD4抗体ならびに抗TNF-α抗体(12Aおよび12B)、抗IFNγ抗体(12Cおよび12D)、抗IL-2抗体(12Eおよび12F)または抗IL-6抗体(12Gおよび12H)の1つを用いて共染色された。示される集団は、AFP158/HLA-A
*02:01四量体
+細胞でゲーティングされた。
【
図12H】
図12A~12Hは、標的がん細胞の存在を有してまたは有さずにサイトカイン産生についての形質導入T細胞のフローサイトメトリー分析を示す図である;T細胞は、両方とも同じ抗AFP158/HLA-A
*02:01結合部分可変ドメインを有するCARまたはabTCR-6MDのいずれかを用いて形質導入され、SK-HEP-1、SK-HEP-1-AFP-MGまたはHepG2細胞のいずれかと共培養された;次に細胞は、PE標識されたAFP158/HLA-A
*02:01四量体、抗CD4抗体ならびに抗TNF-α抗体(12Aおよび12B)、抗IFNγ抗体(12Cおよび12D)、抗IL-2抗体(12Eおよび12F)または抗IL-6抗体(12Gおよび12H)の1つを用いて共染色された。示される集団は、AFP158/HLA-A
*02:01四量体
+細胞でゲーティングされた。
【0066】
【
図13】
図13は、抗AFP158 abTCRを用いて形質導入され、AFP発現について陽性または陰性であるがん細胞株とインキュベートされたCD4+T細胞におけるサイトカイン発現の標的特異的活性化を示す図である。
【0067】
【
図14】
図14は、両方とも同じ抗AFP158/HLA-A
*02:01結合部分可変ドメインを有するCARまたはabTCR形質導入T細胞における、抗原陽性または陰性標的細胞への曝露の際のT細胞消耗マーカーPD-1、LAG-3およびTIM-3のフローサイトメトリー分析を示す図である。
【0068】
【
図15】
図15は、両方とも同じ抗AFP158/HLA-A
*02:01結合部分可変ドメインを有するCARまたはabTCR形質導入T細胞における、抗原陽性または陰性標的細胞への曝露の際のT細胞分化マーカーCD28、CCR7およびグランザイムBのフローサイトメトリー分析を示す図である。
【0069】
【
図16AB】
図16A~16Cは、両方とも同じ抗AFP158/HLA-A
*02:01結合部分可変ドメインを有する抗AFP158/HLA-A
*02:01 abTCR-6MDまたは抗AFP158/HLA-A
*02:01 abTCR-7のいずれかを用いて形質導入されたT細胞の特徴付けを示す図である。
図16Aは、形質導入T細胞の細胞増殖を示す。
図16Bは、FLAGタグ付き構築物を検出するために抗FLAG抗体を使用するT細胞におけるabTCR-6MDおよびabTCR-7の発現についてのウエスタンブロット分析を示す。CD3ζについての染色は負荷対照として含まれた。
図16Cは、abTCR-6MDまたはabTCR-7のいずれかを用いて形質導入されたT細胞によって媒介されたSK-HEP-1およびSK-HEP-1-AFP-MG細胞の殺滅を示す。
【
図16C】
図16A~16Cは、両方とも同じ抗AFP158/HLA-A
*02:01結合部分可変ドメインを有する抗AFP158/HLA-A
*02:01 abTCR-6MDまたは抗AFP158/HLA-A
*02:01 abTCR-7のいずれかを用いて形質導入されたT細胞の特徴付けを示す図である。
図16Aは、形質導入T細胞の細胞増殖を示す。
図16Bは、FLAGタグ付き構築物を検出するために抗FLAG抗体を使用するT細胞におけるabTCR-6MDおよびabTCR-7の発現についてのウエスタンブロット分析を示す。CD3ζについての染色は負荷対照として含まれた。
図16Cは、abTCR-6MDまたはabTCR-7のいずれかを用いて形質導入されたT細胞によって媒介されたSK-HEP-1およびSK-HEP-1-AFP-MG細胞の殺滅を示す。
【0070】
【
図17】
図17は、偽形質導入T細胞または、両方とも同じ抗CD19結合部分可変ドメインを有するCARもしくはabTCR-6MDのいずれかを用いて形質導入されたT細胞によって媒介されるがん細胞株JeKo-1、IM9、THP-1およびJurkatの殺滅を示すグラフである。
【0071】
【
図18A】
図18Aおよび18Bは、JeKo-1、IM9、THP-1またはJurkat細胞株と共培養された、偽形質導入T細胞または両方とも同じ抗CD19結合部分可変ドメインを有するCARもしくはabTCR-6MDのいずれかを用いて形質導入されたT細胞によるサイトカインパネルの分泌レベルを示す図である。
【
図18B】
図18Aおよび18Bは、JeKo-1、IM9、THP-1またはJurkat細胞株と共培養された、偽形質導入T細胞または両方とも同じ抗CD19結合部分可変ドメインを有するCARもしくはabTCR-6MDのいずれかを用いて形質導入されたT細胞によるサイトカインパネルの分泌レベルを示す図である。
【0072】
【
図19】
図19は、抗CD19 abTCRを用いて形質導入され、CD19発現について陽性または陰性のがん細胞株とインキュベートされたCD4+T細胞におけるサイトカイン発現の標的-特異的活性化を示す図である。
【0073】
【
図20】
図20は、両方とも同じ抗CD19結合部分可変ドメインを有するCARまたはabTCR形質導入T細胞での、抗原陽性または陰性標的細胞への曝露の際のT細胞分化マーカーCD28、CCR7およびグランザイムBのフローサイトメトリー分析を示す図である。
【0074】
【
図21】
図21は、曝露開始後2日目から3日目に色素希釈によって評価された、両方のキメラ受容体が同じ抗CD19結合部分可変ドメインを有するCARまたはabTCR形質導入CD4
+またはCD8
+T細胞の抗原陽性標的細胞への曝露の際の増殖を示す図である。
【0075】
【
図22】
図22は、両方のキメラ受容体が同じ抗CD19結合部分可変ドメインを有するCARまたはabTCR形質導入T細胞上のキメラ受容体の内部移行を示す図であり、表示の時点で、抗CD19結合部分を標的化する抗イディオタイプ抗体を用いて表面キメラ受容体について染色した細胞のフローサイトメトリー分析によって評価された。
【0076】
【
図23】
図23Aおよび23Bは、両方とも同じ抗CD19結合部分可変ドメインを有するabTCR(抗CD19 abTCR-6MD)またはcTCR(抗CD19-cTCR)のいずれかを用いて形質導入されたT細胞の特徴付けを示すグラフである。
図23Aは、abTCRおよびcTCR T細胞の細胞増殖を示す。
図23Bは、偽形質導入T細胞または、abTCRもしくはcTCRのいずれかを用いて形質導入されたT細胞によって媒介されたCD19-陽性がん細胞株Nalm-6の殺滅を示す。
【0077】
【
図24】
図24は、偽形質導入T細胞または、両方とも同じ抗NY-ESO-1結合部分可変ドメインを有するCAR(#35 CAR)もしくはabTCR-6MD(#35 abTCR)のいずれかを用いて形質導入されたT細胞によって媒介される、がん細胞株IM9、Colo205、MDA-231、MCF7、JeKo-1、Raji、Hep1およびJurkatの殺滅を示すグラフである。
【0078】
【
図25】
図25Aは、ヒトPBMCから精製されたNKT細胞のサブセットでのCD3およびCD56の発現のフローサイトメトリー分析を示す図である。
図25Bは、RajiまたはRaji-CD19ko細胞株と共培養された、偽形質導入T細胞または、抗CD19結合部分を有するabTCR-6MDを用いて形質導入されたT細胞によるサイトカインIL-2、GM-CSF、IFNγおよびTNFαの分泌レベルを示すグラフである。対照は、偽形質導入またはabTCR形質導入T細胞のみおよびRajiまたはRaji-CD19ko細胞のみを含む。
【0079】
【
図26】
図26Aは、ヒトPBMCから精製されたTreg細胞のサブセットでのCD25およびCD4の発現のフローサイトメトリー分析を示す図である。
図26Bは、RajiまたはRaji-CD19ko細胞株と共培養された、偽形質導入T細胞または、抗CD19結合部分を有するabTCR-6MDを用いて形質導入されたT細胞によるサイトカインIL-2、GM-CSF、IFNγおよびTNFαの分泌レベルを示すグラフである。
【0080】
【
図27】
図27は、偽形質導入T細胞または、それぞれ同じ抗AFP結合部分を有する種々の免疫グロブリンCH1ドメインを有するabTCRを用いて形質導入されたT細胞によって媒介されるがん細胞株HepG2、SK-Hep1およびSK-Hep1-AFP MGの殺滅を示すグラフである。
【0081】
【
図28】
図28は、1または複数の共刺激ドメイン(abTCR-6M-1、abTCR-6M-2、abTCR-6M-3、abTCR-6M-4、abTCR-6M-5、abTCR-6M-6、abTCR-6M-7、abTCR-6M-8)を含有する種々のabTCR構築物設計を示す概略図である。
【0082】
【
図29】
図29は、偽形質導入T細胞または、それぞれ同じ抗AFP結合部分を有する1または複数のC末端共刺激ドメインを有する種々のabTCRを用いて形質導入されたT細胞によって媒介されるがん細胞株HepG2、SK-Hep1およびSK-Hep1-AFP MGの殺滅を示すグラフである。
【0083】
【
図30】
図30は、SK-Hep1またはSK-Hep1-AFP MG細胞株と共培養された、偽形質導入T細胞または、それぞれ同じ抗AFP結合部分を有する1または複数のC末端共刺激ドメインを有する種々のabTCRを用いて形質導入されたT細胞によるサイトカインIL-2、GM-CSF、IFNγおよびTNFαの分泌レベルを示すグラフである。
【0084】
【
図31】
図31は、偽形質導入T細胞または、それぞれ同じ抗CD19結合部分を有する1または複数のC末端共刺激ドメインを有する種々のabTCRを用いて形質導入されたT細胞によって媒介されるがん細胞株Raji、Raji-CD19koおよびJeKo-1の殺滅を示すグラフである。
【0085】
【
図32】
図32は、Raji、Raji-CD19koまたはJeKo-1細胞と共培養された、偽形質導入T細胞または、それぞれ同じ抗CD19結合部分を有する1または複数のC末端共刺激ドメインを有する種々のabTCRを用いて形質導入されたT細胞によるサイトカインIL-2、GM-CSF、IFNγおよびTNFαの分泌レベルを示すグラフである。
【0086】
【
図33】
図33は、偽形質導入T細胞または、抗AFP158/HLA-A
*02:01結合部分を有するabTCR-6MDを用いて形質導入されたT細胞のいずれかの静脈注射を用いて処置されたSK-HEP-1-AFP-MGの皮下マウス異種移植モデルにおける経時的体重変化を示すグラフである。
【0087】
【
図34】
図34Aは、偽形質導入T細胞または、抗AFP158/HLA-A
*02:01結合部分を有するabTCR-6MDを用いて形質導入されたT細胞の静脈注射を用いて処置されたSK-HEP-1-AFP-MGの皮下マウスモデルにおける腫瘍増殖を示すグラフである。
図34Bは、平均腫瘍体積が300mm
3に達したときに、抗AFP158/HLA-A
*02:01結合部分を有するabTCR-6MDを用いて形質導入されたT細胞の単回腫瘍内注射を用いて処置されたまたはされていないSK-HEP-1-AFP-MGの皮下マウスモデルにおける腫瘍増殖を示すグラフである。
【0088】
【
図35】
図35は、種々の抗CD19 abTCR(クローン5、5-3、5-9および5-14)を用いて形質導入されたT細胞で処置したレポーターRaji静脈内異種移植マウスにおける腫瘍増殖を示す図である。偽形質導入T細胞およびT細胞無処置は、対照として含まれた。
【0089】
【
図36】
図36は、偽形質導入T細胞または、両方ともクローン5-13抗CD19結合部分可変ドメインを有するCARもしくはabTCR-6MDのいずれかを用いて形質導入されたT細胞を注射されたRaji異種移植マウスにおけるIL-2、IFN-γ、TNF-αおよびIL-10の血清レベルを示すグラフである。
【0090】
【
図37】
図37は、両方ともクローン5-13抗CD19結合部分可変ドメインを有する、CARまたはabTCR-6MDのいずれかを用いて形質導入されたT細胞を用いて処置されたレポーターRaji異種移植マウスにおける腫瘍増殖の定量を示すグラフである。偽形質導入T細胞は、対照として含まれた。
【0091】
【
図38】
図38は、両方ともクローン5-13抗CD19結合部分可変ドメインを有する、CARまたはabTCR-6MDのいずれかを用いて形質導入されたT細胞を用いて処置されたレポーターRaji異種移植マウスにおける腫瘍由来生物発光についての画像化結果を示す図である。偽形質導入T細胞は、対照として含まれた。グレースケール変換ヒートマップは、マウス画像に重ねたダークスポットとして現れる腫瘍の位置での1秒あたりの総光子を示している。
【0092】
【
図39】
図39は、初回腫瘍細胞移植およびクローン5-13抗CD19 abTCR-6MDを用いて形質導入されたT細胞を用いた処置の7週間後に腫瘍細胞を用いて再チャレンジしたレポーターRaji異種移植マウスにおける腫瘍増殖の定量を示すグラフである。偽形質導入T細胞は、対照として含まれた。
【0093】
【
図40】
図40は、両方ともクローン5-13抗CD19結合部分可変ドメインを有する、CARまたはabTCR-6MDのいずれかを用いて形質導入されたT細胞を用いて処置されたレポーターNALM-6静脈内異種移植マウスにおける腫瘍増殖を示すグラフである。偽形質導入T細胞およびT細胞無処置は、対照として含まれた。
【0094】
【
図41】
図41は、両方ともクローン5-13抗CD19結合部分可変ドメインを有する、CARまたはabTCR-6MDのいずれかを用いて形質導入された細胞を用いて注射されたNALM-6異種移植マウスにおけるIL-2、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、IFN-γおよびTNF-αの血清レベルを示すグラフである。偽形質導入T細胞およびT細胞無処置は、対照として含まれた。
【0095】
【
図42】
図42は、両方ともクローン5-13抗CD19結合部分可変ドメインを有する、CARまたはabTCR-6MDのいずれかを用いて形質導入された細胞を用いて注射されたNALM-6異種移植マウス由来の血液中のキメラ受容体陽性T細胞の、処置後7および13日目の量を示す図である。
【0096】
【
図43】
図43は、両方ともクローン5-13抗CD19結合部分可変ドメインを有する、CARまたはabTCR-6MDのいずれかを用いて形質導入された細胞を用いて注射されたNALM-6異種移植マウス由来の血液中の腫瘍細胞についての、処置後13日目のフローサイトメトリー分析を示す図である。
【0097】
【
図44】
図44は、両方ともクローン5-13抗CD19結合部分可変ドメインを有する、CARまたはabTCR-6MDのいずれかを用いて形質導入された細胞を用いて注射されたNALM-6異種移植マウス由来の骨髄中の腫瘍細胞についての、処置後13日目のフローサイトメトリー分析を示す図である。
【0098】
【
図45】
図45は、両方ともクローン5-13抗CD19結合部分可変ドメインを有する、CARまたはabTCR-6MDのいずれかを用いて形質導入された細胞を用いて注射されたNALM-6異種移植マウス由来の血液中のCD4
+またはCD8
+のいずれかであるCD3
+T細胞上のPD-1発現についてのフローサイトメトリー分析を示す図である。
【0099】
【
図46】
図46は、両方ともクローン5-13抗CD19結合部分可変ドメインを有する、CARまたはabTCR-6MDのいずれかを用いて形質導入された細胞を用いて注射されたNALM-6異種移植マウス由来の骨髄中のCD4
+またはCD8
+のいずれかであるCD3
+T細胞上のPD-1発現についてのフローサイトメトリー分析を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0100】
本出願は、a)標的抗原に特異的に結合する抗体部分、例えば、FabまたはFv断片;およびb)少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なT細胞受容体モジュール(TCRM)を含む、単離されたキメラ抗体/T細胞受容体構築物(本明細書で「abTCR」と呼ぶ)を提供する。
【0101】
本発明者らは、本発明者らのTCR様mAbおよび従来のmAbの結合特異性および親和性を、TCRによって得られる標的特異的な細胞傷害効力および制御された活性化と組み合わせる、一連の新規合成キメラ抗体/TCR構築物を開発した。abTCRを発現するように形質導入された初代T細胞は、内因性CD3分子と会合した安定なTCR様シグナル伝達複合体の効率的な表面発現および形成を示した。T細胞中に操作した場合、abTCRは、MHC依存的(ペプチド/MHC抗原)およびMHC非依存的(細胞表面抗原)構成の両方で、in vitroおよびin vivoの両方で、標的保有腫瘍細胞に対する強力な細胞傷害性を有するT細胞を与えた。標的特異的活性化は、CD4+T細胞、CD8+T細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞および調節性T(Treg)細胞を含む、abTCRを発現するように形質導入された複数の異なるT細胞サブセットについて観察された。さらに、細胞内共刺激配列を含むabTCRは、いずれの共刺激配列も伴わない対応するabTCRと同様に、一部の場合にはabTCRよりも良好に機能することが見出された。
【0102】
CAR T細胞療法を用いて実証された顕著な治癒的潜在力にもかかわらず、臨床試験は、過剰なサイトカイン放出および制御されないT細胞増殖と関連する重症な有害事象を誘発し続けている。理論に束縛されないが、abTCRは、T細胞媒介性死滅を活性化するために内因性CD3複合体とのアセンブリを必要とするTCR活性化を制御する天然に存在する機構によって調節され得、したがって、構成的に活性化されることを回避し得ると考えられている。本発明者らは、abTCR構築物を形質導入したT細胞が、がん細胞死滅における等価な効力を有したままで、同じ抗体可変領域を有する対応するキメラ抗原受容体(CAR)を形質導入したT細胞よりも低いレベルのサイトカイン(例えば、IL-2)およびT細胞消耗マーカー(例えば、PD-1、TIM3およびLAG1)を発現することを見出している。したがって、この戦略は、その細胞傷害性シグナル伝達が内因性T細胞調節機構に応答し、in vivoでより長く機能的に持続する潜在力を有するT細胞が得られる、CARを使用することを超える顕著な技術的利点を提供する。細胞表面抗原またはペプチド/MHC複合体などの特異的抗原へのモノクローナル抗体の精巧に最適化された結合を、免疫細胞を活性化するために内因性シグナル伝達複合体を関与させるT細胞受容体の能力と組み合わせることによって、本発明は、ペプチド/MHC複合体を介した、低コピー数の細胞表面抗原、ならびに細胞内抗原または分泌された抗原の高度に特異的で強力な標的化を可能にする。
【0103】
したがって、本出願は、標的抗原に特異的に結合する抗体部分と少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なTCRMとを含むabTCR(例えば、単離されたabTCR)を提供する。abTCRは、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とを含むヘテロ二量体であり得る。抗体部分は、重鎖可変抗体ドメイン(V
H)および軽鎖可変抗体ドメイン(V
L)を含み得る。一部の実施形態では、抗体部分は、1つもしくは複数の抗体重鎖定常ドメイン、例えば、重鎖定常1抗体ドメイン(C
H1)および/または軽鎖定常抗体ドメイン(C
L)をさらに含む。TCRMは、第1のTCRサブユニットの膜貫通ドメインを含む第1のT細胞受容体ドメイン(TCRD)と、第2のTCRサブユニットの膜貫通ドメインを含む第2のTCRDとを含む。abTCRの第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、1つまたは複数のジスルフィド結合を介して連結され得る。例示的なabTCR構築物設計については、
図1Aを参照のこと。
【0104】
別の態様では、abTCRをコードする1つまたは複数の核酸が提供される。
【0105】
さらに別の態様では、abTCRと少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールとを含む複合体(本明細書で「abTCR-CD3複合体」と呼ぶ)が提供される。複合体は、4つの二量体、abTCR、CD3δε、CD3γεおよびζζを含む八量体であり得る。abTCRもしくはabTCR-CD3複合体を発現するまたはそれと関連する、T細胞などのエフェクター細胞もまた提供される。
【0106】
さらに別の態様では、abTCRを含む組成物が提供される。組成物は、abTCR、またはabTCRを発現するもしくはそれと関連するエフェクター細胞(例えば、abTCRを発現するT細胞)を含む医薬組成物であり得る。
【0107】
処置目的のためにabTCR(またはabTCRを発現するもしくはそれと会合した細胞)を作製および使用する方法、ならびにかかる方法に有用なキットおよび製造物品もまた提供される。abTCR(またはabTCRを発現するもしくはそれと会合した細胞)を使用して疾患を処置する方法がさらに提供される。
【0108】
定義
本明細書で使用する場合、「処置」または「処置する」は、臨床結果を含む有益なまたは所望の結果を得るためのアプローチである。本発明の目的のために、有益なまたは所望の臨床結果には、以下のうち1または複数が含まれるがこれらに限定されない:疾患から生じる1もしくは複数の症状を軽減すること、疾患の程度を弱めること、疾患を安定化すること(例えば、疾患の悪化を防止もしくは遅延させること)、疾患の拡散(例えば、転移)を防止もしくは遅延させること、疾患の再発を防止もしくは遅延させること、疾患の進行を遅延もしくは減速させること、疾患状態を緩和すること、疾患の寛解(部分的もしくは全体的)を提供すること、疾患を処置するために必要とされる1もしくは複数の他の薬物療法の用量を減少させること、疾患の進行を遅延させること、生活の質を増加もしくは改善すること、体重増加を増加させること、および/または生存期間を延長させること。疾患の病理学的結果(例えば、がんにおける腫瘍体積など)の低減もまた、「処置」によって包含される。本発明の方法は、処置のこれらの態様のうちいずれか1または複数を企図する。
【0109】
用語「再発」、「再燃する」または「再燃した」とは、疾患の消失の臨床評価後のがんまたは疾患の復帰を指す。遠隔転移または局所的再発の診断は、再燃とみなされ得る。
【0110】
用語「難治性」または「抵抗性」とは、処置に応答していないがんまたは疾患を指す。
【0111】
「活性化」とは、T細胞に関連して本明細書で使用する場合、検出可能な細胞増殖を誘導するように十分に刺激されたT細胞の状態を指す。活性化は、誘導されたサイトカイン産生、および検出可能なエフェクター機能とも関連し得る。
【0112】
用語「抗体」または「抗体部分」は、全長抗体およびその抗原結合断片を含む。全長抗体は、2つの重鎖および2つの軽鎖を含む。軽鎖および重鎖の可変領域は、抗原結合を担う。両方の鎖中の可変領域は、一般に、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる3つの高度に可変性のループを含む(LC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む軽鎖(LC)CDR、HC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含む重鎖(HC)CDR)。本明細書に開示される抗体および抗原結合断片についてのCDR境界は、Kabat、ChothiaまたはAl-Lazikaniの慣習によって定義または同定され得る(Al-Lazikani 1997年;Chothia 1985年;Chothia 1987年;Chothia 1989年;Kabat 1987年;Kabat 1991年)。重鎖または軽鎖の3つのCDRは、CDRよりも高度に保存され、超可変ループを支持するための足場を形成する、フレームワーク領域(FR)として公知の隣接ストレッチ間に挟まれている。重鎖および軽鎖の定常領域は、抗原結合に関与しないが、種々のエフェクター機能を示す。抗体は、それらの重鎖の定常領域のアミノ酸配列に基づいてクラスに割り当てられる。抗体の5つの主要なクラスまたはアイソタイプは、それぞれ、α、δ、ε、γおよびμ重鎖の存在を特徴とする、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMである。いくつかの主要な抗体クラスは、IgG1(γ1重鎖)、IgG2(γ2重鎖)、IgG3(γ3重鎖)、IgG4(γ4重鎖)、IgA1(α1重鎖)またはIgA2(α2重鎖)などのサブクラスへと分割される。
【0113】
本明細書で使用する用語「抗原結合断片」とは、例えば、ダイアボディ、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv断片、ジスルフィド安定化Fv断片(dsFv)、(dsFv)2、二重特異的dsFv(dsFv-dsFv’)、ジスルフィド安定化ダイアボディ(dsダイアボディ)、単鎖抗体分子(scFv)、scFvダイマー(二価ダイアボディ)、1もしくは複数のCDRを含む抗体の一部分から形成された多特異的抗体、ラクダ化(camelized)単一ドメイン抗体、ナノボディ(nanobody)、ドメイン抗体、二価ドメイン抗体、または抗原に結合するが完全な抗体構造を含まない任意の他の抗体断片を含む抗体断片を指す。抗原結合断片は、親抗体または親抗体断片(例えば、親scFv)が結合する同じ抗原に結合することが可能である。一部の実施形態では、抗原結合断片は、1または複数の異なるヒト抗体由来のフレームワーク領域にグラフトされた、特定のヒト抗体由来の1または複数のCDRを含み得る。
【0114】
「Fab様抗原結合モジュール」とは、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とを含む抗体部分を指し、第1および第2のポリペプチド鎖は、VL抗体ドメイン、CL抗体ドメイン、VH抗体ドメインおよびCH1抗体ドメインを含む。VLおよびCL抗体ドメインは一方の鎖上にあり、VHおよびCH1抗体ドメインは他方の鎖上にあり得、またはVLおよびCH1抗体ドメインは一方の鎖上にあり、VHおよびCL抗体ドメインは他方の鎖上にあり得る。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、ジスルフィド結合によって連結される。
【0115】
本明細書で使用する場合、第1の抗体部分が、等モル濃度の第1の抗体部分の存在下で、第2の抗体部分の標的抗原結合を、少なくとも約50%(例えば、少なくとも約55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%のいずれか)阻害する場合、第1の抗体部分は、標的抗原への結合について第2の抗体部分と「競合する」、または逆もまた同様である。それらの交差競合に基づいて抗体を「ビニングする」ためのハイスループットプロセスは、PCT公開番号WO03/48731に記載されている。
【0116】
本明細書で使用する場合、用語「特異的に結合する」または「~に対して特異的である」とは、生物学的分子を含む分子の不均一な集団の存在下での標的の存在を決定する、測定可能で再現性のある相互作用、例えば、標的と抗体または抗体部分との間の結合を指す。例えば、標的(エピトープであり得る)に特異的に結合する抗体部分は、他の標的へのその結合よりも、高い親和性、結合力で、容易に、および/または長い持続時間で、標的に結合する抗体部分である。一部の実施形態では、抗原に特異的に結合する抗体部分は、他の標的に対するその結合親和性の少なくとも約10倍である結合親和性で、抗原(例えば、細胞表面抗原またはペプチド/MHCタンパク質複合体)の1つまたは複数の抗原決定基と反応する。
【0117】
用語「T細胞受容体」または「TCR」とは、T細胞の表面上で対形成する、αβまたはγδ鎖から構成されるヘテロ二量体受容体を指す。各α、β、γおよびδ鎖は、2つのIg様ドメインから構成される:相補性決定領域(CDR)を介した抗原認識を付与する可変ドメイン(V)と、その後の接続ペプチドおよび膜貫通(TM)領域によって細胞膜にアンカーされる定常ドメイン(C)。TM領域は、CD3シグナル伝達装置のインバリアントサブユニットと会合する。Vドメインの各々は、3つのCDRを有する。これらのCDRは、主要組織適合複合体によってコードされるタンパク質に結合した抗原性ペプチド間の複合体(pMHC)と相互作用する(DavisおよびBjorkman(1988年)Nature、334巻、395~402頁;Davisら(1998年)Annu Rev Immunol、16巻、523~544頁;Murphy(2012年)、xix、868頁)。
【0118】
用語「TCR関連シグナル伝達モジュール」とは、TCR-CD3複合体の一部である細胞質免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を有する分子を指す。TCR関連シグナル伝達モジュールは、CD3γε、CD3δεおよびζζを含む。
【0119】
用語「モジュール」とは、タンパク質またはタンパク質の一部分を指す場合、タンパク質またはタンパク質の一部分が、複数のポリペプチド鎖を含むことを意味する(例えば、二量体タンパク質または二量体タンパク質の一部分)。複数のポリペプチド鎖は、リンカー(例えば、ペプチドリンカー)または化学結合(例えば、ペプチド結合)などによって連結され得る。「モジュール」とは、タンパク質を構成する1つまたは複数のポリペプチドの構造的におよび/または機能的に関連する部分を含むことを意味する。例えば、二量体受容体の膜貫通モジュールは、膜を貫通する、受容体の各ポリペプチド鎖の部分を指し得る。モジュールはまた、単一のポリペプチド鎖の関連部分も指し得る。例えば、単量体受容体の膜貫通モジュールは、膜を貫通する、受容体の単一のポリペプチド鎖の部分を指し得る。
【0120】
用語「T細胞受容体モジュール」または「TCRM」とは、T細胞受容体に由来する配列を含むヘテロ二量体を指す。TCRMは、T細胞受容体膜貫通ドメインを含み、T細胞受容体の接続ペプチドおよび/または細胞内ドメインの全てまたは一部分をさらに含み得る。
【0121】
「単離された」構築物(例えば、abTCR)とは、本明細書で使用する場合、(1)天然に見出されるタンパク質と関連しない構築物、(2)同じ供給源由来の他のタンパク質を含まない構築物、(3)異なる種由来の細胞によって発現される構築物、または(4)天然に存在しない構築物を指す。
【0122】
本明細書で使用する用語「単離された核酸」は、「単離された核酸」が、その起源によって、(1)「単離された核酸」が天然に見出されるポリヌクレオチドの全てもしくは一部分と関連しない、(2)天然では関連しないポリヌクレオチドに作動可能に連結した、または(3)より大きい配列の一部として天然では生じない、ゲノム、cDNAもしくは合成起源またはそれらのある組合せの核酸を意味することを意図する。
【0123】
本明細書で使用する場合、用語「CDR」または「相補性決定領域」は、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドの両方の可変領域内に見出される非連続的な抗原結合部位(antigen combining site)を意味することを意図する。これらの特定の領域は、Kabatら、J. Biol. Chem. 252巻:6609~6616頁(1977年);Kabatら、U.S. Dept. of Health and Human Services、「Sequences of proteins of immunological interest」(1991年);Chothiaら、J. Mol. Biol. 196巻:901~917頁(1987年);およびMacCallumら、J. Mol. Biol. 262巻:732~745頁(1996年)によって記載されており、ここで、定義は、互いに対して比較した場合の、アミノ酸残基の重複またはサブセットを含む。それにもかかわらず、抗体もしくはグラフト化抗体のCDRまたはそのバリアントを指すためのいずれかの定義の適用は、本明細書で定義および使用される用語の範囲内であることが意図される。上で引用した参考文献の各々によって定義されるCDRを包含するアミノ酸残基は、比較として以下の表1に示される。
【表1-1】
【0124】
用語「キメラ抗体」とは、それらが本発明の生物学的活性を示す限り、重鎖および/または軽鎖の一部分が、特定の種に由来するまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同であるが、鎖(複数可)の残部が、別の種に由来するまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体ならびにかかる抗体の断片中の対応する配列と同一または相同である抗体を指す(米国特許第4,816,567号;およびMorrisonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、81巻:6851~6855頁(1984年)を参照のこと)。
【0125】
抗体または抗体部分に関して、用語「半合成」とは、抗体または抗体部分が、1または複数の天然に存在する配列および1または複数の天然に存在しない(即ち、合成)配列を有することを意味する。
【0126】
抗体または抗体部分に関連する用語「完全合成」とは、抗体または抗体部分が、重鎖および軽鎖の両方の6つ全てのCDRの天然に存在しない(即ち、合成)配列を除いて、固定された大部分のまたは全ての天然に存在するVH/VLフレームワークペアリングを有することを意味する。天然に存在しないCDRには、保存的アミノ酸置換または導入されたシステイン残基によって改変されたCDR配列などの改変されたヒトCDR配列を含むものが含まれる。
【0127】
非ヒト(例えば、げっ歯類)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト抗体に由来する最小配列を含むキメラ抗体である。大部分は、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域(HVR)由来の残基が、所望の抗体特異性、親和性および能力を有する、マウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域由来の残基によって置き換えられた、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。一部の例では、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体中にもドナー抗体中にも見出されない残基を含み得る。これらの改変は、抗体性能をさらに洗練するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つの、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、ここで、超可変ループの全てまたは実質的に全ては、非ヒト免疫グロブリンのものと対応し、FRの全てまたは実質的に全ては、ヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体は、任意選択で、免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部分(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのFcもまた含む。さらなる詳細については、Jonesら、Nature 321巻:522~525頁(1986年);Riechmannら、Nature 332巻:323~329頁(1988年);およびPresta、Curr.Op.Struct.Biol.2巻:593~596頁(1992年)を参照のこと。
【0128】
「相同性」とは、2つのポリペプチド間または2つの核酸分子間の配列類似性または配列同一性を指す。2つの比較される配列の両方における位置が、同じ塩基またはアミノ酸単量体サブユニットによって占有される場合、例えば、2つのDNA分子の各々における位置がアデニンによって占有される場合には、分子はその位置において「相同」である。2つの配列間の「相同性のパーセント」または「パーセント配列同一性」は、任意の保存的置換を配列同一性の一部とみなして、比較される位置の数によって除算した、2つの配列によって共有される一致する位置または相同な位置の数に、100を乗算した関数である。例えば、2つの配列中の10個の位置のうち6個が一致するまたは相同である場合には、2つの配列は、60%相同である。例として、DNA配列ATTGCCとTATGGCとは、50%の相同性を共有する。一般に、比較は、2つの配列が最大の相同性を与えるようにアラインされる場合になされる。パーセントアミノ酸配列同一性を決定することを目的としたアラインメントは、例えば、公に入手可能なコンピューターソフトウェア、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、Megalign(DNASTAR)またはMUSCLEソフトウェアを使用して、当業者の技術範囲内の種々の方法で達成され得る。当業者は、比較されている配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要とされる任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメーターを決定することができる。しかし、本明細書の目的のために、%アミノ酸配列同一性値は、配列比較コンピュータープログラムMUSCLEを使用して生成される(Edgar, R.C.、Nucleic Acids Research 32巻(5号):1792~1797頁、2004年;Edgar, R.C.、BMC Bioinformatics 5巻(1号):113頁、2004年)。
【0129】
ヒトIgGの「CH1ドメイン」(「H1」ドメインの「C1」とも呼ぶ)は通常、約アミノ酸118から約アミノ酸215まで及ぶ(EU番号付け系)。
【0130】
特記しない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いの縮重バージョンであり、同じアミノ酸配列をコードする、全てのヌクレオチド配列を含む。タンパク質またはRNAをコードする語句ヌクレオチド配列はまた、タンパク質をコードするヌクレオチド配列が、一部のバージョンにおいてイントロン(複数可)を含み得る程度まで、イントロンを含み得る。
【0131】
用語「作動可能に連結した」とは、後者の発現を生じる、調節配列と異種核酸配列との間の機能的連結を指す。例えば、第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的に関連して配置される場合、第1の核酸配列は、第2の核酸配列と作動可能に連結している。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を与える場合、プロモーターは、コード配列に作動可能に連結している。一般に、作動可能に連結したDNA配列は、連続しており、2つのタンパク質コード領域をつなげることが必要な場合、同じリーディングフレーム中にある。
【0132】
用語「誘導性プロモーター」とは、1つまたは複数の特定のシグナルを添加または除去することによってその活性が調節され得るプロモーターを指す。例えば、誘導性プロモーターは、特定のセットの条件下で、例えば、プロモーターを活性化するおよび/またはプロモーターの抑制を軽減する誘導剤の存在下で、作動可能に連結した核酸の転写を活性化し得る。
【0133】
本明細書に開示されるabTCRまたはabTCRを含む組成物の「有効量」は、具体的に述べられた目的を成し遂げるのに十分な量である。「有効量」は、実験的に、および述べられた目的に関連する公知の方法によって、決定され得る。
【0134】
用語「治療有効量」とは、個体において疾患または障害を「処置する」のに有効な、本明細書に開示されるabTCRまたはabTCRを含む組成物の量を指す。がんの場合、治療有効量の、本明細書に開示されるabTCRまたはabTCRを含む組成物は、がん細胞の数を低減する;腫瘍のサイズまたは重量を低減する;末梢臓器中へのがん細胞浸潤を阻害する(即ち、ある程度まで減速させる、好ましくは停止させる);腫瘍転移を阻害する(即ち、ある程度まで減速させる、好ましくは停止させる);腫瘍成長をある程度まで阻害する;および/またはがんと関連する症状のうち1つもしくは複数をある程度まで軽減することができる。本明細書に開示されるabTCRまたはabTCRを含む組成物が、成長を防止および/または既存のがん細胞を死滅させることができる限りにおいて、これは、細胞分裂抑制性および/または細胞傷害性であり得る。一部の実施形態では、治療有効量は、成長阻害量である。一部の実施形態では、治療有効量は、患者の無増悪生存期間を改善する量である。ウイルス感染症などの感染性疾患の場合、治療有効量の、本明細書に開示されるabTCRまたはabTCRを含む組成物は、病原体が感染した細胞の数を低減する;病原体由来抗原の産生もしくは放出を低減する;非感染細胞への病原体の拡散を阻害する(即ち、ある程度まで減速させる、好ましくは停止させる);および/または感染症と関連する症状のうち1つもしくは複数をある程度まで軽減することができる。一部の実施形態では、治療有効量は、患者の生存を延長させる量である。
【0135】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される」または「薬理学的に適合する」とは、生物学的にも他の点でも望ましくないことのない材料を意味し、例えば、材料は、任意の顕著な望ましくない生物学的影響を引き起こすことも、それが含まれる組成物の他の成分のいずれかと有害な様式で相互作用することもなしに、患者に投与される医薬組成物中に組み入れることができる。薬学的に許容されるキャリアまたは賦形剤は、好ましくは、毒性学的試験および製造試験の必要な標準を満たし、ならびに/または米国食品医薬品局が作成したInactive Ingredient Guide上に含まれる。
【0136】
本明細書に記載される発明の実施形態は、実施形態「からなる」および/または実施形態「から本質的になる」を含むことが理解される。
【0137】
本明細書の「約」値またはパラメーターに対する言及は、その値またはパラメーター自体に対する変動を含む(および記載する)。例えば、「約X」に言及する記載は、「X」の記載を含む。
【0138】
本明細書で使用する場合、値またはパラメーター「ではない」に対する言及は、値またはパラメーター「以外」を一般に意味し記載する。例えば、方法が、X型のがんを処置するために使用されないとは、この方法が、X以外の型のがんを処置するために使用されることを意味する。
【0139】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「1つの、ある(a)」、「もしくは、または、あるいは(or)」および「この、その、前記、該(the)」は、文脈が明らかに他を指定しない限り、複数の指示対象を含む。
【0140】
キメラ抗体/T細胞受容体構築物
一態様では、本発明は、標的抗原(例えば、細胞表面抗原またはペプチド/MHC複合体)に特異的に結合し、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュール(例えば、CD3δε、CD3γεまたはζζ)をリクルートすることが可能な、標的抗原特異的キメラ抗体/T細胞受容体(abTCR)を提供する。一部の実施形態では、abTCRは、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とを含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、例えば、共有結合(例えば、ペプチド結合または他の化学結合)または非共有結合によって連結される。一部の実施形態では、abTCRは、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とを含むヘテロ二量体である。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、少なくとも1つのジスルフィド結合によって連結される。abTCRの特異性は、標的抗原に対する結合特異性を付与する抗体部分に由来する。一部の実施形態では、抗体部分は、VH、CH1、VLおよびCL抗体ドメインを含むFab様抗原結合モジュールである。一部の実施形態では、抗体部分は、VHおよびVL抗体ドメインを含むFv様抗原結合モジュールである。abTCRがTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートする能力は、T細胞受容体モジュール(TCRM)に由来する。一部の実施形態では、TCRMは、TCR(例えば、αβTCRまたはγδTCR)の膜貫通モジュールを含む。一部の実施形態では、TCRMは、TCRの接続ペプチドまたはその断片の一方または両方をさらに含む。一部の実施形態では、膜貫通モジュールおよび接続ペプチドまたはその断片は、同じTCR型(αβまたはγδ)に由来する。一部の実施形態では、膜貫通モジュールはαβTCRに由来し、接続ペプチドもしくはその断片はγδTCRに由来し、または膜貫通モジュールはγδTCRに由来し、接続ペプチドもしくはその断片はαβTCRに由来する。一部の実施形態では、abTCRは、少なくとも1つの細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、abTCRの少なくとも1つの細胞内ドメインのうち1つまたは複数は、TCRの細胞内ドメイン由来の配列を含む。一部の実施形態では、abTCRの少なくとも1つの細胞内ドメインのうち1つまたは複数は、T細胞共刺激シグナル伝達配列を含む。共刺激シグナル伝達配列は、例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83と特異的に結合するリガンドなどを含む共刺激分子の細胞内ドメインの一部分であり得る。一部の実施形態では、抗体部分は、abTCRの細胞外ドメイン中に含まれる。一部の実施形態では、abTCRは、細胞外ドメインの長さを最適化するために、抗体部分とTCRMとの間に1つまたは複数のペプチドリンカーをさらに含む。一部の実施形態では、標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュール(例えば、Fab様またはFv様抗原結合モジュール)に対する言及は、抗原結合モジュールが、a)他の分子に対するその結合親和性の少なくとも約10(例えば、少なくとも約10、20、30、40、50、75、100、200、300、400、500、750、1000またはそれよりも大きい数のいずれかを含む)倍である親和性で、またはb)他の分子への結合に対するそのKdの約1/10倍以下(例えば、約1/10、1/20、1/30、1/40、1/50、1/75、1/100、1/200、1/300、1/400、1/500、1/750、1/1000またはそれ未満のいずれか以下)のKdで、標的抗原に結合することを意味する。結合親和性は、ELISA、蛍光活性化細胞分取(FACS)分析または放射性免疫沈降アッセイ(RIA)などの、当該分野で公知の方法によって決定され得る。Kdは、例えば、Biacore機器を利用する表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイ、または例えば、Sapidyne機器を利用する速度論的排除アッセイ(KinExA)などの、当該分野で公知の方法によって決定され得る。
【0141】
企図されたabTCR構築物には、例えば、細胞表面抗原に特異的に結合するabTCRおよび細胞表面提示されたペプチド/MHC複合体に特異的に結合するabTCRが含まれる。
【0142】
一部の実施形態では、abTCRは、a)VH抗体ドメインおよびCH1抗体ドメインを含む第1の抗原結合ドメインを含む第1のポリペプチド鎖、ならびにb)VL抗体ドメインおよびCL抗体ドメインを含む第2の抗原結合ドメインを含む第2のポリペプチド鎖を含む、Fab様抗原結合モジュールを含む。一部の実施形態では、第1の抗原結合ドメインは、CH1抗体ドメインのアミノ末端側に、VH抗体ドメインを含み、および/または第2の抗原結合ドメインは、CL抗体ドメインのアミノ末端側に、VL抗体ドメインを含む。一部の実施形態では、VL抗体ドメインとCL抗体ドメインとの間にペプチドリンカーが、および/またはVH抗体ドメインとCH1抗体ドメインとの間にペプチドリンカーが存在する。一部の実施形態では、VL抗体ドメインおよびVH抗体ドメインのCDRは全て、同じ抗体部分に由来する。一部の実施形態では、VL抗体ドメインおよびVH抗体ドメインは、1つよりも多い抗体部分に由来する抗体CDRを含む。一部の実施形態では、VL抗体ドメインは、VH抗体ドメインに由来する抗体CDRを含み、および/またはVH抗体ドメインは、VL抗体ドメインに由来する抗体CDRを含む。一部の実施形態では、VL抗体ドメインは、1つの抗体に由来するフレームワーク領域と、別の抗体に由来する1つもしくは複数のCDRとを含み、および/またはVH抗体ドメインは、1つの抗体に由来するフレームワーク領域と、別の抗体に由来する1つもしくは複数のCDRとを含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、例えば、共有結合(例えば、ペプチド結合または他の化学結合)または非共有結合によって連結される。一部の実施形態では、第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとは、ジスルフィド結合によって連結される。一部の実施形態では、第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとは、CH1ドメイン中の残基とCLドメイン中の残基との間のジスルフィド結合によって連結される。一部の実施形態では、CH1ドメインは、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4)、IgA(例えば、IgA1またはIgA2)、IgD、IgMまたはIgE重鎖、任意選択でヒトに由来する。一部の実施形態では、CH1ドメインは、配列番号39および60~69のいずれか1つのアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。一部の実施形態では、CH1ドメインは、それが由来する配列と比較して、1つまたは複数の改変(例えば、アミノ酸の置換、挿入および/または欠失)を含むバリアントである。一部の実施形態では、CLドメインは、カッパまたはラムダ軽鎖、任意選択でヒトに由来する。一部の実施形態では、CLドメインは、配列番号41のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。一部の実施形態では、CLドメインは、それが由来する配列と比較して、1つまたは複数の改変(例えば、アミノ酸の置換、挿入および/または欠失)を含むバリアントである。一部の実施形態では、CH1および/またはCLドメインは、互いに対するそれらの結合親和性を実質的に変更しない1つまたは複数の改変を含む。一部の実施形態では、CH1および/またはCLドメインは、互いに対するそれらの結合親和性を増加させるおよび/または天然に存在しないジスルフィド結合を導入する1つまたは複数の改変を含む。一部の実施形態では、CH1およびCLドメインは、ノブイントゥホール改変を含む(例えば、Carter P. J Immunol Methods. 248巻:7~15頁、2001年を参照のこと)。一部の実施形態では、CH1およびCLドメインは、互いとのそれらの会合を増強するために、静電操縦によって改変される(例えば、WO2006106905およびGunasekaran Kら、J Biol Chem. 285巻:19637~46頁、2010年を参照のこと)。一部の実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、ヒト、ヒト化、キメラ、半合成または完全合成である。
【0143】
一部の実施形態では、abTCRは、a)VL抗体ドメインおよびCH1抗体ドメインを含む第1の抗原結合ドメインを含む第1のポリペプチド鎖、ならびにb)VH抗体ドメインおよびCL抗体ドメインを含む第2の抗原結合ドメインを含む第2のポリペプチド鎖を含む、Fab様抗原結合モジュールを含む。一部の実施形態では、第1の抗原結合ドメインは、CH1抗体ドメインのアミノ末端側に、VL抗体ドメインを含み、および/または第2の抗原結合ドメインは、CL抗体ドメインのアミノ末端側に、VH抗体ドメインを含む。一部の実施形態では、VH抗体ドメインとCL抗体ドメインとの間にペプチドリンカーが、および/またはVL抗体ドメインとCH1抗体ドメインとの間にペプチドリンカーが存在する。一部の実施形態では、VL抗体ドメインおよびVH抗体ドメインのCDRは全て、同じ抗体部分に由来する。一部の実施形態では、VL抗体ドメインおよびVH抗体ドメインは、1つよりも多い抗体部分に由来する抗体CDRを含む。一部の実施形態では、VL抗体ドメインは、VH抗体ドメインに由来する抗体CDRを含み、および/またはVH抗体ドメインは、VL抗体ドメインに由来する抗体CDRを含む。一部の実施形態では、VL抗体ドメインは、1つの抗体に由来するフレームワーク領域と、別の抗体に由来する1つもしくは複数のCDRとを含み、および/またはVH抗体ドメインは、1つの抗体に由来するフレームワーク領域と、別の抗体に由来する1つもしくは複数のCDRとを含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、例えば、共有結合(例えば、ペプチド結合または他の化学結合)または非共有結合によって連結される。一部の実施形態では、第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとは、ジスルフィド結合によって連結される。一部の実施形態では、第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとは、CH1ドメイン中の残基とCLドメイン中の残基との間のジスルフィド結合によって連結される。一部の実施形態では、CH1ドメインは、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4)、IgA(例えば、IgA1またはIgA2)、IgD、IgMまたはIgE重鎖、任意選択でヒトに由来する。一部の実施形態では、CH1ドメインは、配列番号39および60~69のいずれか1つのアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。一部の実施形態では、CH1ドメインは、それが由来する配列と比較して、1つまたは複数の改変(例えば、アミノ酸の置換、挿入および/または欠失)を含むバリアントである。一部の実施形態では、CLドメインは、カッパまたはラムダ軽鎖、任意選択でヒトに由来する。一部の実施形態では、CLドメインは、配列番号41のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。一部の実施形態では、CLドメインは、それが由来する配列と比較して、1つまたは複数の改変(例えば、アミノ酸の置換、挿入および/または欠失)を含むバリアントである。一部の実施形態では、CH1および/またはCLドメインは、互いに対するそれらの結合親和性を実質的に変更しない1つまたは複数の改変を含む。一部の実施形態では、CH1および/またはCLドメインは、互いに対するそれらの結合親和性を増加させるおよび/または天然に存在しないジスルフィド結合を導入する1つまたは複数の改変を含む。一部の実施形態では、CH1およびCLドメインは、ノブイントゥホール改変を含む(例えば、Carter P. J Immunol Methods. 248巻:7~15頁、2001年を参照のこと)。一部の実施形態では、CH1およびCLドメインは、互いとのそれらの会合を増強するために、静電操縦によって改変される(例えば、WO2006106905およびGunasekaran Kら、J Biol Chem. 285巻:19637~46頁、2010年を参照のこと)。一部の実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、ヒト、ヒト化、キメラ、半合成または完全合成である。
【0144】
一部の実施形態では、abTCRは、a)VH抗体ドメインを含む第1の抗原結合ドメインを含む第1のポリペプチド鎖、およびb)VL抗体ドメインを含む第2の抗原結合ドメインを含む第2のポリペプチド鎖を含む、Fv様抗原結合モジュールを含む。一部の実施形態では、VL抗体ドメインのC末端に融合した第1のペプチドリンカーおよび/またはVH抗体ドメインのC末端に融合した第2のペプチドリンカーが存在する。一部の実施形態では、第1および第2のペプチドリンカーは、互いに結合することが可能である。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、免疫グロブリン重鎖および/または軽鎖定常領域に由来する。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、CH3抗体ドメインまたはそのバリアントを含む。一部の実施形態では、ペプチドリンカー中に含まれる免疫グロブリン重鎖定常ドメイン(例えば、CH1またはCH3)は、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4)、IgA(例えば、IgA1またはIgA2)、IgD、IgMまたはIgE重鎖、任意選択でヒトに由来する。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、TCRサブユニット定常領域に由来する。例えば、一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、a)TCRαおよびβサブユニット定常ドメイン;またはb)TCRγおよびδサブユニット定常ドメインに由来する。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、合成である。一部の実施形態では、VL抗体ドメインおよびVH抗体ドメインのCDRは全て、同じ抗体部分に由来する。一部の実施形態では、VL抗体ドメインおよびVH抗体ドメインは、1つよりも多い抗体部分に由来する抗体CDRを含む。一部の実施形態では、VL抗体ドメインは、VH抗体ドメインに由来する抗体CDRを含み、および/またはVH抗体ドメインは、VL抗体ドメインに由来する抗体CDRを含む。一部の実施形態では、VL抗体ドメインは、1つの抗体に由来するフレームワーク領域と、別の抗体に由来する1つもしくは複数のCDRとを含み、および/またはVH抗体ドメインは、1つの抗体に由来するフレームワーク領域と、別の抗体に由来する1つもしくは複数のCDRとを含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、例えば、共有結合(例えば、ペプチド結合または他の化学結合)または非共有結合によって連結される。一部の実施形態では、第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとは、ジスルフィド結合によって連結される。一部の実施形態では、第1のペプチドリンカーと第2のペプチドリンカーとは、ジスルフィド結合によって連結される。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、それが由来する配列と比較して、1つまたは複数の改変(例えば、アミノ酸の置換、挿入および/または欠失)を含むバリアントである。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、互いに対するそれらの結合親和性を実質的に変更しない1つまたは複数の改変を含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、互いに対するそれらの結合親和性を増加させるおよび/または天然に存在しないジスルフィド結合を導入する1つまたは複数の改変を含む。一部の実施形態では、第1および第2のペプチドリンカーは、ノブイントゥホール改変を含む(例えば、Carter P. J Immunol Methods. 248巻:7~15頁、2001年を参照のこと)。一部の実施形態では、第1および第2のペプチドリンカーは、互いとのそれらの会合を増強するために、静電操縦によって改変される(例えば、WO2006106905およびGunasekaran Kら、J Biol Chem. 285巻:19637~46頁、2010年を参照のこと)。一部の実施形態では、Fv様抗原結合モジュールは、ヒト、ヒト化、キメラ、半合成または完全合成である。
【0145】
一部の実施形態では、抗体部分(例えば、Fab様抗原結合モジュールまたはFv様抗原結合モジュール)は、完全ヒト配列と1つまたは複数の合成領域とを含む、半合成である。一部の実施形態では、抗体部分は、完全ヒトVLと、完全ヒトFR1、HC-CDR1、FR2、HC-CDR2、FR3およびFR4領域ならびに合成HC-CDR3を含む半合成VHとを含む、半合成である。一部の実施形態では、半合成VHは、約5~約25(例えば、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25のいずれか)アミノ酸長の配列を有する完全合成HC-CDR3を含む。一部の実施形態では、半合成VHまたは合成HC-CDR3は、約5~約25(例えば、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25のいずれか)アミノ酸長の配列を有する完全合成HC-CDR3領域を含む半合成ライブラリー(例えば、半合成ヒトライブラリー)から取得され、配列中の各アミノ酸は、標準的なヒトアミノ酸マイナスシステインからランダムに選択される。一部の実施形態では、合成HC-CDR3は、約10~約19(例えば、約10、11、12、13、14、15、16、17、18または19のいずれか)アミノ酸長である。一部の実施形態では、抗体部分は、半合成VLと半合成VHとを含む、半合成である。一部の実施形態では、抗体部分は、固定されたヒトVH/VLフレームワークペアリングを有するが、重鎖および軽鎖の両方の6つ全てのCDRについてランダム化された合成配列を有する抗体を含む、完全合成である。
【0146】
抗体部分(例えば、Fab様抗原結合モジュールまたはFv様抗原結合モジュール)は、一部の実施形態では、1つもしくは複数の抗体部分(例えば、モノクローナル抗体)に由来する特定のCDR配列、または1つもしくは複数のアミノ酸置換を含むかかる配列のある特定のバリアントを含む。一部の実施形態では、バリアント配列中のアミノ酸置換は、標的抗原に結合する抗体部分の能力を実質的に低減させない。標的抗原結合親和性を実質的に改善する、または一部の他の特性、例えば、標的抗原の関連バリアントとの特異性および/もしくは交差反応性に影響を与える変更もまた、企図される。
【0147】
TCRMは、a)第1の膜貫通ドメインを含む第1のT細胞受容体ドメイン(TCRD)を含む第1のポリペプチド鎖、およびb)第2の膜貫通ドメインを含む第2のTCRDを含む第2のポリペプチド鎖、を含む。一部の実施形態では、第1の膜貫通ドメインは、第1のTCRサブユニットの膜貫通ドメインであり、および/または第2の膜貫通ドメインは、第2のTCRサブユニットの膜貫通ドメインである。一部の実施形態では、第1のTCRサブユニットは、TCRα鎖(例えば、GenBank受託番号:CCI73895)であり、第2のTCRサブユニットは、TCRβ鎖(例えば、GenBank受託番号:CCI73893)である。一部の実施形態では、第1のTCRサブユニットはTCRβ鎖であり、第2のTCRサブユニットはTCRα鎖である。一部の実施形態では、第1のTCRサブユニットは、TCRγ鎖(例えば、GenBank受託番号:AGE91788)であり、第2のTCRサブユニットは、TCRδ鎖(例えば、GenBank受託番号:AAQ57272)である。一部の実施形態では、第1のTCRサブユニットはTCRδ鎖であり、第2のTCRサブユニットはTCRγ鎖である。一部の実施形態では、第1および/または第2の膜貫通ドメインは、配列番号77~80のアミノ酸配列のうち1つ中に含まれる膜貫通ドメインを個々に含む(例えば、それからなる)。一部の実施形態では、第1および/または第2の膜貫通ドメインは、配列番号1~4のアミノ酸配列のいずれか1つを個々に含む(例えば、それからなる)。一部の実施形態では、第1のTCRDは、膜貫通ドメインのアミノ末端側に、第1の接続ペプチドをさらに含み、および/または第2のTCRDは、膜貫通ドメインのアミノ末端側に、第2の接続ペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、第1の接続ペプチドは、第1のTCRサブユニットの接続ペプチドの全てもしくは一部分を含み、および/または第2の接続ペプチドは、第2のTCRサブユニットの接続ペプチドの全てもしくは一部分を含む。一部の実施形態では、第1の膜貫通ドメインと第1の接続ペプチドとは、異なるTCRサブユニットに由来し、および/または第2の膜貫通ドメインと第2の接続ペプチドとは、異なるTCRサブユニットに由来する。一部の実施形態では、第1および/または第2の接続ペプチドは、配列番号77~80のアミノ酸配列のうち1つ中に含まれる接続ペプチドまたはその断片を個々に含む(例えば、それからなる)。一部の実施形態では、第1および/または第2の接続ペプチドは、配列番号5~12のアミノ酸配列のいずれか1つを個々に含む(例えば、それからなる)。一部の実施形態では、第1のTCRDは、第1の膜貫通ドメインのカルボキシ末端側に、第1のTCR細胞内ドメインをさらに含み、および/または第2のTCRDは、第2の膜貫通ドメインのカルボキシ末端側に、第2のTCR細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、第1のTCR細胞内ドメインは、第1のTCRサブユニットの細胞内ドメインの全てもしくは一部分を含み、および/または第2のTCR細胞内ドメインは、第2のTCRサブユニットの細胞内ドメインの全てもしくは一部分を含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のTCR細胞内ドメインは、配列番号77~80のアミノ酸配列のいずれか1つ中に含まれる細胞内ドメインの全てまたは一部分を個々に含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のTCR細胞内ドメインは、配列番号13~14のアミノ酸配列のいずれか1つを個々に含む。一部の実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCRサブユニットの断片であり、および/または第2のTCRDは、第2のTCR鎖の断片である。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、例えば、共有結合(例えば、ペプチド結合または他の化学結合)または非共有結合によって連結される。一部の実施形態では、第1のTCRDと第2のTCRDとは、ジスルフィド結合によって連結される。一部の実施形態では、第1のTCRDと第2のTCRDとは、第1の接続ペプチド中の残基と第2の接続ペプチド中の残基との間のジスルフィド結合によって連結される。一部の実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γεおよびζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能である。一部の実施形態では、TCRMは、八量体abTCR-CD3複合体を形成するため(即ち、abTCR-CD3複合体形成を促進するため)に、CD3δε、CD3γεおよびζζの各々をリクルートすることが可能である。
【0148】
一部の実施形態では、abTCRは、abTCRの第1のポリペプチド鎖をそれによって形成する、TCRMの第1のポリペプチド鎖のアミノ末端側に、抗体部分(例えば、Fab様抗原結合モジュールまたはFv様抗原結合モジュール)の第1のポリペプチド鎖の融合物、およびabTCRの第2のポリペプチド鎖をそれによって形成する、TCRMの第2のポリペプチド鎖のアミノ末端側に、抗体部分の第2のポリペプチド鎖の融合物、を含む分子である。一部の実施形態では、abTCRは、抗体部分の第1のポリペプチド鎖とTCRMの第1のポリペプチド鎖との間の第1のペプチドリンカー、および/または抗体部分の第2のポリペプチド鎖とTCRMの第2のポリペプチド鎖との間の第2のペプチドリンカーをさらに含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、約5~約70の間(例えば、これらの値の間の任意の範囲を含んで、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65または70のいずれか)アミノ酸長である。一部の実施形態では、abTCRの第1のポリペプチド鎖は、第1の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドをさらに含み、および/またはabTCRの第2のポリペプチド鎖は、第2の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。一部の実施形態では、abTCRの第1のポリペプチド鎖は、第1の膜貫通ドメインのカルボキシ末端側に、第1のアクセサリ細胞内ドメインをさらに含み、および/またはabTCRの第2のポリペプチド鎖は、第2の膜貫通ドメインのカルボキシ末端側に、第2のアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のアクセサリ細胞内ドメインは、TCR共刺激ドメインを含む。一部の実施形態では、TCR共刺激ドメインは、配列番号70または71のアミノ酸配列の全てまたは一部分を含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のアクセサリ細胞内ドメインは、エピトープタグを含む。一部の実施形態では、エピトープタグは、配列番号50~52のアミノ酸配列のいずれか1つを含む。一部の実施形態では、abTCRの第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、例えば、共有結合(例えば、ペプチド結合または他の化学結合)または非共有結合によって連結される。一部の実施形態では、abTCRは、ヘテロ二量体である。
【0149】
一部の実施形態では、標的抗原は細胞表面抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、タンパク質、炭水化物および脂質からなる群から選択される。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、罹患細胞において発現される疾患関連抗原である。一部の実施形態では、標的抗原は、ペプチドとMHCタンパク質とを含む複合体である。ペプチド/MHC複合体には、例えば、罹患細胞において発現される疾患関連抗原に由来するペプチドとMHCタンパク質とを含む表面提示された複合体が含まれる。一部の実施形態では、全長疾患関連抗原は、罹患細胞の表面上では通常発現されない(例えば、疾患関連抗原は、細胞内タンパク質または分泌されたタンパク質である)。一部の実施形態では、疾患はがんであり、疾患関連抗原は、がん細胞において発現される腫瘍関連抗原である。一部の実施形態では、腫瘍関連抗原は、腫瘍性タンパク質である。一部の実施形態では、腫瘍性タンパク質は、癌原遺伝子における変異の結果であり、腫瘍性タンパク質は、変異を含むネオエピトープを含む。例えば、一部の実施形態では、標的抗原は、細胞表面腫瘍関連抗原(例えば、ネオエピトープを含む腫瘍性タンパク質)である。一部の実施形態では、標的抗原は、がん細胞の表面上では通常発現されない腫瘍関連抗原(例えば、ネオエピトープを含む腫瘍性タンパク質)(例えば、細胞内腫瘍関連抗原または分泌された腫瘍関連抗原)に由来するペプチドとMHCタンパク質とを含む複合体である。一部の実施形態では、疾患はウイルス感染症であり、疾患関連抗原は、感染細胞において発現されるウイルス関連抗原である。例えば、一部の実施形態では、標的抗原は、細胞表面ウイルス関連抗原である。一部の実施形態では、標的抗原は、ウイルス感染細胞の表面上では通常発現されないウイルス関連抗原(例えば、細胞内ウイルス関連抗原または分泌されたウイルス関連抗原)に由来するペプチドとMHCタンパク質とを含む複合体である。一部の実施形態では、abTCR構築物は、約0.1pM~約500nMの間(例えば、これらの値の間の任意の範囲を含んで、約0.1pM、1.0pM、10pM、50pM、100pM、500pM、1nM、10nM、50nM、100nMまたは500nMのいずれか)のKdで、標的抗原を結合する。
【0150】
一部の実施形態では、abTCRは、細胞表面抗原に特異的に結合する抗体部分(例えば、Fab様抗原結合モジュールまたはFv様抗原結合モジュール)を含み、細胞表面抗原は、CD19、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5DまたはFCRL5である。完全抗原、例えば、細胞表面抗原への特異的結合は、「MHC拘束されない結合」と呼ばれる場合がある。
【0151】
一部の実施形態では、abTCRは、ペプチドとMHCタンパク質とを含む複合体に特異的に結合する抗体部分(例えば、Fab様抗原結合モジュールまたはFv様抗原結合モジュール)を含み、ペプチドは、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1およびPSAからなる群から選択されるタンパク質に由来する。ペプチドとMHCタンパク質とを含む複合体への特異的結合は、「MHC拘束された結合」と呼ばれる場合がある。
【0152】
一部の実施形態では、abTCRは、疾患関連抗原(例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原)に由来するペプチドとMHCクラスIタンパク質とを含む複合体に特異的に結合する抗体部分(例えば、Fab様抗原結合モジュールまたはFv様抗原結合モジュール)を含み、MHCクラスIタンパク質は、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-E、HLA-FまたはHLA-Gである。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-A、HLA-BまたはHLA-Cである。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Aである。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Bである。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Cである。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-A01、HLA-A02、HLA-A03、HLA-A09、HLA-A10、HLA-A11、HLA-A19、HLA-A23、HLA-A24、HLA-A25、HLA-A26、HLA-A28、HLA-A29、HLA-A30、HLA-A31、HLA-A32、HLA-A33、HLA-A34、HLA-A36、HLA-A43、HLA-A66、HLA-A68、HLA-A69、HLA-A74またはHLA-A80である。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-A02である。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-A*02:01~555のいずれか1つ、例えば、HLA-A*02:01、HLA-A*02:02、HLA-A*02:03、HLA-A*02:04、HLA-A*02:05、HLA-A*02:06、HLA-A*02:07、HLA-A*02:08、HLA-A*02:09、HLA-A*02:10、HLA-A*02:11、HLA-A*02:12、HLA-A*02:13、HLA-A*02:14、HLA-A*02:15、HLA-A*02:16、HLA-A*02:17、HLA-A*02:18、HLA-A*02:19、HLA-A*02:20、HLA-A*02:21、HLA-A*02:22またはHLA-A*02:24である。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-A*02:01である。
【0153】
一部の実施形態では、abTCRは、疾患関連抗原(例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原)に由来するペプチドとMHCクラスIIタンパク質とを含む複合体に特異的に結合する抗体部分(例えば、Fab様抗原結合モジュールまたはFv様抗原結合モジュール)を含み、MHCクラスIIタンパク質は、HLA-DP、HLA-DQまたはHLA-DRである。一部の実施形態では、MHCクラスIIタンパク質は、HLA-DPである。一部の実施形態では、MHCクラスIIタンパク質は、HLA-DQである。一部の実施形態では、MHCクラスIIタンパク質は、HLA-DRである。
【0154】
例えば、一部の実施形態では、a)標的抗原に特異的に結合するFab様抗原結合モジュール、およびb)少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なTCRM、を含むabTCR(例えば、単離されたabTCR)が提供される。一部の実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、VH抗体ドメイン、CH1抗体ドメイン、VL抗体ドメインおよびCL抗体ドメインを含む。一部の実施形態では、CH1ドメインは、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4)重鎖、任意選択でヒトに由来する。一部の実施形態では、CH1ドメインは、それが由来する配列と比較して、1つまたは複数の改変(例えば、アミノ酸の置換、挿入および/または欠失)を含むバリアントである。一部の実施形態では、CLドメインは、カッパまたはラムダ軽鎖、任意選択でヒトに由来する。一部の実施形態では、CLドメインは、それが由来する配列と比較して、1つまたは複数の改変(例えば、アミノ酸の置換、挿入および/または欠失)を含むバリアントである。一部の実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、ヒト、ヒト化、キメラ、半合成または完全合成である。一部の実施形態では、TCRMは、TCR、例えば、αβTCRまたはγδTCRの膜貫通ドメインを含む。一部の実施形態では、TCRMは、TCR、例えば、αβTCRまたはγδTCRの接続ペプチドまたはその断片をさらに含む。一部の実施形態では、膜貫通ドメインおよび接続ペプチドは、αβTCRまたはγδTCRに由来する。一部の実施形態では、膜貫通ドメインはαβTCRに由来し、接続ペプチドはγδTCRに由来する、または膜貫通ドメインはγδTCRに由来し、接続ペプチドはαβTCRに由来する。一部の実施形態では、TCRMは、TCRの細胞外ドメインの少なくとも1つの部分をさらに含む。一部の実施形態では、TCRMは、TCRの細胞内ドメイン由来の配列を含む少なくとも1つのTCR細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、TCRMは、TCRサブユニットの断片を含む。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、abTCRは、第1の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドおよび/または第2の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、abTCRは、少なくとも1つのジスルフィド結合をさらに含む。一部の実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、ジスルフィド結合を含み、および/またはTCRMは、ジスルフィド結合を含む。一部の実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、CH1ドメイン中の残基とCLドメインの残基との間のジスルフィド結合を含み、および/またはTCRMは、第1の接続ペプチド中の残基と第2の接続ペプチド中の残基との間のジスルフィド結合を含む。一部の実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γεおよびζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能である。一部の実施形態では、TCRMは、abTCR-CD3複合体形成を促進する。一部の実施形態では、Fab様抗原結合モジュールとTCRMとの間にはペプチドリンカーが存在する。一部の実施形態では、標的抗原は細胞表面抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、タンパク質、炭水化物および脂質からなる群から選択される。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、疾患関連抗原、例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、CD19、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5DまたはFCRL5である。一部の実施形態では、標的抗原は、表面提示されたペプチド/MHC複合体である。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、疾患関連抗原(例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原)に由来するペプチドとMHCタンパク質とを含む。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、ペプチドとMHCタンパク質とを含み、ペプチドは、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1およびPSAからなる群から選択されるタンパク質に由来する。一部の実施形態では、MHCタンパク質は、MHCクラスIタンパク質である。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Aである。一部の実施形態では、HLA-Aは、HLA-A02である。一部の実施形態では、HLA-A02は、HLA-A*02:01である。
【0155】
一部の実施形態では、a)標的抗原に特異的に結合するFv様抗原結合モジュール、およびb)少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なTCRM、を含むabTCR(例えば、単離されたabTCR)であって、標的抗原がペプチド/MHC複合体である、abTCRが提供される。一部の実施形態では、Fv様抗原結合モジュールは、VH抗体ドメインとVL抗体ドメインとを含む。一部の実施形態では、VL抗体ドメインのC末端に融合した第1のペプチドリンカーおよび/またはVH抗体ドメインのC末端に融合した第2のペプチドリンカーが存在する。一部の実施形態では、第1および第2のペプチドリンカーは、互いに結合することが可能である。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、免疫グロブリン重鎖および/または軽鎖定常領域に由来する。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、TCRサブユニット定常領域に由来する。例えば、一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、a)TCRαおよびβサブユニット定常ドメイン;またはb)TCRγおよびδサブユニット定常ドメインに由来する。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、合成である。一部の実施形態では、Fv様抗原結合モジュールは、ヒト、ヒト化、キメラ、半合成または完全合成である。一部の実施形態では、TCRMは、TCR、例えば、αβTCRまたはγδTCRの膜貫通ドメインを含む。一部の実施形態では、TCRMは、TCR、例えば、αβTCRまたはγδTCRの接続ペプチドまたはその断片をさらに含む。一部の実施形態では、膜貫通ドメインおよび接続ペプチドは、αβTCRまたはγδTCRに由来する。一部の実施形態では、膜貫通ドメインはαβTCRに由来し、接続ペプチドはγδTCRに由来する、または膜貫通ドメインはγδTCRに由来し、接続ペプチドはαβTCRに由来する。一部の実施形態では、TCRMは、TCRの細胞外ドメインの少なくとも1つの部分をさらに含む。一部の実施形態では、TCRMは、TCRの細胞内ドメイン由来の配列を含む少なくとも1つのTCR細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、TCRMは、TCRサブユニットの断片を含む。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、abTCRは、第1の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドおよび/または第2の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、abTCRは、少なくとも1つのジスルフィド結合をさらに含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、ジスルフィド結合を含み、および/またはTCRMは、ジスルフィド結合を含む。一部の実施形態では、TCRMは、第1の接続ペプチド中の残基と第2の接続ペプチド中の残基との間のジスルフィド結合を含む。一部の実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γεおよびζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能である。一部の実施形態では、TCRMは、abTCR-CD3複合体形成を促進する。一部の実施形態では、標的抗原ペプチド/MHC複合体は、疾患関連抗原(例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原)に由来するペプチドとMHCタンパク質とを含む。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、ペプチドとMHCタンパク質とを含み、ペプチドは、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1およびPSAからなる群から選択されるタンパク質に由来する。一部の実施形態では、MHCタンパク質は、MHCクラスIタンパク質である。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Aである。一部の実施形態では、HLA-Aは、HLA-A02である。一部の実施形態では、HLA-A02は、HLA-A*02:01である。
【0156】
一部の実施形態では、標的抗原を特異的に認識するabTCRであって、a)VHおよびCH1抗体ドメインを含む第1の抗原結合ドメインと第1のTCRサブユニットの膜貫通ドメインを含む第1のTCRDとを含む第1のポリペプチド鎖;ならびにb)VLおよびCL抗体ドメインを含む第2の抗原結合ドメインと第2のTCRサブユニットの膜貫通ドメインを含む第2のTCRDとを含む第2のポリペプチド鎖を含み、第1の抗原結合ドメインのVHおよびCH1ドメインと第2の抗原結合ドメインのVLおよびCLドメインとが、標的抗原に特異的に結合するFab様抗原結合モジュールを形成し、第1のTCRDと第2のTCRDとが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なTCRMを形成する、abTCRが提供される。一部の実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、ヒト、ヒト化、キメラ、半合成または完全合成である。一部の実施形態では、第1のTCRサブユニットはTCRα鎖であり、第2のTCRサブユニットはTCRβ鎖である。一部の実施形態では、第1のTCRサブユニットはTCRβ鎖であり、第2のTCRサブユニットはTCRα鎖である。一部の実施形態では、第1のTCRサブユニットはTCRγ鎖であり、第2のTCRサブユニットはTCRδ鎖である。一部の実施形態では、第1のTCRサブユニットはTCRδ鎖であり、第2のTCRサブユニットはTCRγ鎖である。一部の実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCRサブユニットの接続ペプチドもしくはその断片をさらに含み、および/または第2のTCRDは、第2のTCRサブユニットの接続ペプチドもしくはその断片をさらに含む。一部の実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCRサブユニットの細胞外ドメインの一部分をさらに含み、および/または第2のTCRDは、第2のTCRサブユニットの細胞外ドメインの一部分をさらに含む。一部の実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインをさらに含み、および/または第2のTCRDは、第2のTCR細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、第1のTCR細胞内ドメインは、第1のTCRサブユニットの細胞内ドメイン由来の配列を含み、および/または第2のTCR細胞内ドメインは、第2のTCRサブユニットの細胞内ドメイン由来の配列を含む。一部の実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCRサブユニットの断片であり、および/または第2のTCRDは、第2のTCR鎖の断片である。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、abTCRは、第1の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドおよび/または第2の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γεおよびζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能である。一部の実施形態では、TCRMは、abTCR-CD3複合体形成を促進する。一部の実施形態では、第1の抗原結合ドメインと第1のTCRDとの間に第1のペプチドリンカーが、および/または第2の抗原結合ドメインと第2のTCRDとの間に第2のペプチドリンカーが存在する。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、例えば、共有結合(例えば、ペプチド結合または他の化学結合)または非共有結合によって連結される。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、a)第1のTCRDの接続ペプチド中の残基と第2のTCRDの接続ペプチド中の残基との間のジスルフィド結合;および/またはb)第1の抗原結合ドメイン中のCH1抗体ドメイン中の残基と第2の抗原結合ドメイン中のCL抗体ドメイン中の残基との間のジスルフィド結合を介して連結される。一部の実施形態では、CH1ドメインは、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4)重鎖、任意選択でヒトに由来する。一部の実施形態では、CH1ドメインは、それが由来する配列と比較して、1つまたは複数の改変(例えば、アミノ酸の置換、挿入および/または欠失)を含むバリアントである。一部の実施形態では、CLドメインは、カッパまたはラムダ軽鎖、任意選択でヒトに由来する。一部の実施形態では、CLドメインは、それが由来する配列と比較して、1つまたは複数の改変(例えば、アミノ酸の置換、挿入および/または欠失)を含むバリアントである。一部の実施形態では、標的抗原は細胞表面抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、タンパク質、炭水化物および脂質からなる群から選択される。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、疾患関連抗原、例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、CD19、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5DまたはFCRL5である。一部の実施形態では、標的抗原は、表面提示されたペプチド/MHC複合体である。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、疾患関連抗原(例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原)に由来するペプチドとMHCタンパク質とを含む。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、ペプチドとMHCタンパク質とを含み、ペプチドは、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1およびPSAからなる群から選択されるタンパク質に由来する。一部の実施形態では、MHCタンパク質は、MHCクラスIタンパク質である。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Aである。一部の実施形態では、HLA-Aは、HLA-A02である。一部の実施形態では、HLA-A02は、HLA-A*02:01である。
【0157】
一部の実施形態では、標的抗原を特異的に認識するabTCRであって、a)VH抗体ドメインを含む第1の抗原結合ドメインと第1のTCRサブユニットの膜貫通ドメインを含む第1のTCRDとを含む第1のポリペプチド鎖;およびb)VL抗体ドメインを含む第2の抗原結合ドメインと第2のTCRサブユニットの膜貫通ドメインを含む第2のTCRDとを含む第2のポリペプチド鎖、を含み、第1の抗原結合ドメインのVHドメインと第2の抗原結合ドメインのVLドメインとが、標的抗原に特異的に結合するFv様抗原結合モジュールを形成し、第1のTCRDと第2のTCRDとが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なTCRMを形成し、標的抗原がペプチド/MHC複合体である、abTCRが提供される。一部の実施形態では、Fv様抗原結合モジュールは、ヒト、ヒト化、キメラ、半合成または完全合成である。一部の実施形態では、第1のTCRサブユニットはTCR α鎖であり、第2のTCRサブユニットはTCRβ鎖である。一部の実施形態では、第1のTCRサブユニットはTCRβ鎖であり、第2のTCRサブユニットはTCRα鎖である。一部の実施形態では、第1のTCRサブユニットはTCRγ鎖であり、第2のTCRサブユニットはTCRδ鎖である。一部の実施形態では、第1のTCRサブユニットはTCRδ鎖であり、第2のTCRサブユニットはTCRγ鎖である。一部の実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCRサブユニットの接続ペプチドもしくはその断片をさらに含み、および/または第2のTCRDは、第2のTCRサブユニットの接続ペプチドもしくはその断片をさらに含む。一部の実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCRサブユニットの細胞外ドメインの一部分をさらに含み、および/または第2のTCRDは、第2のTCRサブユニットの細胞外ドメインの一部分をさらに含む。一部の実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインをさらに含み、および/または第2のTCRDは、第2のTCR細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、第1のTCR細胞内ドメインは、第1のTCRサブユニットの細胞内ドメイン由来の配列を含み、および/または第2のTCR細胞内ドメインは、第2のTCRサブユニットの細胞内ドメイン由来の配列を含む。一部の実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCRサブユニットの断片であり、および/または第2のTCRDは、第2のTCR鎖の断片である。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、abTCRは、第1の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドおよび/または第2の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γεおよびζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能である。一部の実施形態では、TCRMは、abTCR-CD3複合体形成を促進する。一部の実施形態では、第1の抗原結合ドメインと第1のTCRDとの間に第1のペプチドリンカーが、および/または第2の抗原結合ドメインと第2のTCRDとの間に第2のペプチドリンカーが存在する。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、免疫グロブリン重鎖および/または軽鎖定常領域に由来する。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、TCRサブユニット定常領域に由来する。例えば、一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、a)TCRαおよびβサブユニット定常ドメイン;またはb)TCRγおよびδサブユニット定常ドメインに由来する。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、合成である。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、例えば、共有結合(例えば、ペプチド結合または他の化学結合)または非共有結合によって連結される。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、a)第1のTCRDの接続ペプチド中の残基と第2のTCRDの接続ペプチド中の残基との間のジスルフィド結合;および/またはb)第1のペプチドリンカー中の残基と第2のペプチドリンカー中の残基との間のジスルフィド結合を介して連結される。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、それが由来する配列と比較して、1つまたは複数の改変(例えば、アミノ酸の置換、挿入および/または欠失)を含むバリアントである。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、互いに対するそれらの結合親和性を実質的に変更しない1つまたは複数の改変を含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、互いに対するそれらの結合親和性を増加させるおよび/または天然に存在しないジスルフィド結合を導入する1つまたは複数の改変を含む。一部の実施形態では、標的抗原ペプチド/MHC複合体は、疾患関連抗原(例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原)に由来するペプチドとMHCタンパク質とを含む。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、ペプチドとMHCタンパク質とを含み、ペプチドは、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1およびPSAからなる群から選択されるタンパク質に由来する。一部の実施形態では、MHCタンパク質は、MHCクラスIタンパク質である。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Aである。一部の実施形態では、HLA-Aは、HLA-A02である。一部の実施形態では、HLA-A02は、HLA-A*02:01である。
【0158】
一部の実施形態では、標的抗原を特異的に認識するabTCRであって、a)VHおよびCH1抗体ドメインを含む第1の抗原結合ドメインとTCRα鎖の膜貫通ドメインを含む第1のTCRDとを含む第1のポリペプチド鎖;ならびにb)VLおよびCL抗体ドメインを含む第2の抗原結合ドメインとTCRβ鎖の膜貫通ドメインを含む第2のTCRDとを含む第2のポリペプチド鎖、を含み、第1の抗原結合ドメインのVHおよびCH1ドメインと第2の抗原結合ドメインのVLおよびCLドメインとが、標的抗原に特異的に結合するFab様抗原結合モジュールを形成し、第1のTCRDと第2のTCRDとが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なTCRMを形成する、abTCRが提供される。一部の実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、ヒト、ヒト化、キメラ、半合成または完全合成である。一部の実施形態では、第1のTCRDは、TCRα鎖の接続ペプチドもしくはその断片をさらに含み、および/または第2のTCRDは、TCRβ鎖の接続ペプチドもしくはその断片をさらに含む。一部の実施形態では、第1のTCRDは、TCRα鎖の細胞外ドメインの一部分をさらに含み、および/または第2のTCRDは、TCRβ鎖の細胞外ドメインの一部分をさらに含む。一部の実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインをさらに含み、および/または第2のTCRDは、第2のTCR細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、第1のTCR細胞内ドメインは、TCRα鎖の細胞内ドメイン由来の配列を含み、および/または第2のTCR細胞内ドメインは、TCRβ鎖の細胞内ドメイン由来の配列を含む。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、abTCRは、第1の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドおよび/または第2の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γεおよびζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能である。一部の実施形態では、TCRMは、abTCR-CD3複合体形成を促進する。一部の実施形態では、第1の抗原結合ドメインと第1のTCRDとの間に第1のペプチドリンカーが、および/または第2の抗原結合ドメインと第2のTCRDとの間に第2のペプチドリンカーが存在する。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、例えば、共有結合(例えば、ペプチド結合または他の化学結合)または非共有結合によって連結される。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、a)第1のTCRDの接続ペプチド中の残基と第2のTCRDの接続ペプチド中の残基との間のジスルフィド結合;および/またはb)第1の抗原結合ドメイン中のCH1抗体ドメイン中の残基と第2の抗原結合ドメイン中のCL抗体ドメイン中の残基との間のジスルフィド結合を介して連結される。一部の実施形態では、標的抗原は細胞表面抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、タンパク質、炭水化物および脂質からなる群から選択される。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、疾患関連抗原、例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、CD19、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5DまたはFCRL5である。一部の実施形態では、標的抗原は、表面提示されたペプチド/MHC複合体である。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、疾患関連抗原(例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原)に由来するペプチドとMHCタンパク質とを含む。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、ペプチドとMHCタンパク質とを含み、ペプチドは、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1およびPSAからなる群から選択されるタンパク質に由来する。一部の実施形態では、MHCタンパク質は、MHCクラスIタンパク質である。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Aである。一部の実施形態では、HLA-Aは、HLA-A02である。一部の実施形態では、HLA-A02は、HLA-A*02:01である。
【0159】
一部の実施形態では、標的抗原を特異的に認識するabTCRであって、a)VHおよびCH1抗体ドメインを含む第1の抗原結合ドメインとTCRβ鎖の膜貫通ドメインを含む第1のTCRDとを含む第1のポリペプチド鎖;ならびにb)VLおよびCL抗体ドメインを含む第2の抗原結合ドメインとTCRα鎖の膜貫通ドメインを含む第2のTCRDとを含む第2のポリペプチド鎖、を含み、第1の抗原結合ドメインのVHおよびCH1ドメインと第2の抗原結合ドメインのVLおよびCLドメインとが、標的抗原に特異的に結合するFab様抗原結合モジュールを形成し、第1のTCRDと第2のTCRDとが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なTCRMを形成する、abTCRが提供される。一部の実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、ヒト、ヒト化、キメラ、半合成または完全合成である。一部の実施形態では、第1のTCRDは、TCRβ鎖の接続ペプチドもしくはその断片をさらに含み、および/または第2のTCRDは、TCRα鎖の接続ペプチドもしくはその断片をさらに含む。一部の実施形態では、第1のTCRDは、TCRβ鎖の細胞外ドメインの一部分をさらに含み、および/または第2のTCRDは、TCRα鎖の細胞外ドメインの一部分をさらに含む。一部の実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインをさらに含み、および/または第2のTCRDは、第2のTCR細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、第1のTCR細胞内ドメインは、TCRβ鎖の細胞内ドメイン由来の配列を含み、および/または第2のTCR細胞内ドメインは、TCRα鎖の細胞内ドメイン由来の配列を含む。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、abTCRは、第1の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドおよび/または第2の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γεおよびζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能である。一部の実施形態では、TCRMは、abTCR-CD3複合体形成を促進する。一部の実施形態では、第1の抗原結合ドメインと第1のTCRDとの間に第1のペプチドリンカーが、および/または第2の抗原結合ドメインと第2のTCRDとの間に第2のペプチドリンカーが存在する。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、例えば、共有結合(例えば、ペプチド結合または他の化学結合)または非共有結合によって連結される。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、a)第1のTCRDの接続ペプチド中の残基と第2のTCRDの接続ペプチド中の残基との間のジスルフィド結合;および/またはb)第1の抗原結合ドメイン中のCH1抗体ドメイン中の残基と第2の抗原結合ドメイン中のCL抗体ドメイン中の残基との間のジスルフィド結合を介して連結される。一部の実施形態では、標的抗原は細胞表面抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、タンパク質、炭水化物および脂質からなる群から選択される。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、疾患関連抗原、例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、CD19、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5DまたはFCRL5である。一部の実施形態では、標的抗原は、表面提示されたペプチド/MHC複合体である。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、疾患関連抗原(例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原)に由来するペプチドとMHCタンパク質とを含む。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、ペプチドとMHCタンパク質とを含み、ペプチドは、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1およびPSAからなる群から選択されるタンパク質に由来する。一部の実施形態では、MHCタンパク質は、MHCクラスIタンパク質である。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Aである。一部の実施形態では、HLA-Aは、HLA-A02である。一部の実施形態では、HLA-A02は、HLA-A*02:01である。
【0160】
一部の実施形態では、標的抗原を特異的に認識するabTCRであって、a)VHおよびCH1抗体ドメインを含む第1の抗原結合ドメインとTCRγ鎖の膜貫通ドメインを含む第1のTCRDとを含む第1のポリペプチド鎖;ならびにb)VLおよびCL抗体ドメインを含む第2の抗原結合ドメインとTCRδ鎖の膜貫通ドメインを含む第2のTCRDとを含む第2のポリペプチド鎖、を含み、第1の抗原結合ドメインのVHおよびCH1ドメインと第2の抗原結合ドメインのVLおよびCLドメインとが、標的抗原に特異的に結合するFab様抗原結合モジュールを形成し、第1のTCRDと第2のTCRDとが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なTCRMを形成する、abTCRが提供される。一部の実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、ヒト、ヒト化、キメラ、半合成または完全合成である。一部の実施形態では、第1のTCRDは、TCRγ鎖の接続ペプチドもしくはその断片をさらに含み、および/または第2のTCRDは、TCRδ鎖の接続ペプチドもしくはその断片をさらに含む。一部の実施形態では、第1のTCRDは、TCRγ鎖の細胞外ドメインの一部分をさらに含み、および/または第2のTCRDは、TCRδ鎖の細胞外ドメインの一部分をさらに含む。一部の実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインをさらに含み、および/または第2のTCRDは、第2のTCR細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、第1のTCR細胞内ドメインは、TCRγ鎖の細胞内ドメイン由来の配列を含み、および/または第2のTCR細胞内ドメインは、TCRδ鎖の細胞内ドメイン由来の配列を含む。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、abTCRは、第1の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドおよび/または第2の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γεおよびζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能である。一部の実施形態では、TCRMは、abTCR-CD3複合体形成を促進する。一部の実施形態では、第1の抗原結合ドメインと第1のTCRDとの間に第1のペプチドリンカーが、および/または第2の抗原結合ドメインと第2のTCRDとの間に第2のペプチドリンカーが存在する。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、例えば、共有結合(例えば、ペプチド結合または他の化学結合)または非共有結合によって連結される。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、a)第1のTCRDの接続ペプチド中の残基と第2のTCRDの接続ペプチド中の残基との間のジスルフィド結合;および/またはb)第1の抗原結合ドメイン中のCH1抗体ドメイン中の残基と第2の抗原結合ドメイン中のCL抗体ドメイン中の残基との間のジスルフィド結合を介して連結される。一部の実施形態では、標的抗原は細胞表面抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、タンパク質、炭水化物および脂質からなる群から選択される。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、疾患関連抗原、例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、CD19、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5DまたはFCRL5である。一部の実施形態では、標的抗原は、表面提示されたペプチド/MHC複合体である。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、疾患関連抗原(例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原)に由来するペプチドとMHCタンパク質とを含む。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、ペプチドとMHCタンパク質とを含み、ペプチドは、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1およびPSAからなる群から選択されるタンパク質に由来する。一部の実施形態では、MHCタンパク質は、MHCクラスIタンパク質である。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Aである。一部の実施形態では、HLA-Aは、HLA-A02である。一部の実施形態では、HLA-A02は、HLA-A*02:01である。
【0161】
一部の実施形態では、標的抗原を特異的に認識するabTCRであって、a)VHおよびCH1抗体ドメインを含む第1の抗原結合ドメインとTCRδ鎖の膜貫通ドメインを含む第1のTCRDとを含む第1のポリペプチド鎖;ならびにb)VLおよびCL抗体ドメインを含む第2の抗原結合ドメインとTCRγ鎖の膜貫通ドメインを含む第2のTCRDとを含む第2のポリペプチド鎖、を含み、第1の抗原結合ドメインのVHおよびCH1ドメインと第2の抗原結合ドメインのVLおよびCLドメインとが、標的抗原に特異的に結合するFab様抗原結合モジュールを形成し、第1のTCRDと第2のTCRDとが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なTCRMを形成する、abTCRが提供される。一部の実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、ヒト、ヒト化、キメラ、半合成または完全合成である。一部の実施形態では、第1のTCRDは、TCRδ鎖の接続ペプチドもしくはその断片をさらに含み、および/または第2のTCRDは、TCRγ鎖の接続ペプチドもしくはその断片をさらに含む。一部の実施形態では、第1のTCRDは、TCRδ鎖の細胞外ドメインの一部分をさらに含み、および/または第2のTCRDは、TCRγ鎖の細胞外ドメインの一部分をさらに含む。一部の実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインをさらに含み、および/または第2のTCRDは、第2のTCR細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、第1のTCR細胞内ドメインは、TCRδ鎖の細胞内ドメイン由来の配列を含み、および/または第2のTCR細胞内ドメインは、TCRγ鎖の細胞内ドメイン由来の配列を含む。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、abTCRは、第1の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドおよび/または第2の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γεおよびζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能である。一部の実施形態では、TCRMは、abTCR-CD3複合体形成を促進する。一部の実施形態では、第1の抗原結合ドメインと第1のTCRDとの間に第1のペプチドリンカーが、および/または第2の抗原結合ドメインと第2のTCRDとの間に第2のペプチドリンカーが存在する。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、例えば、共有結合(例えば、ペプチド結合または他の化学結合)または非共有結合によって連結される。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、a)第1のTCRDの接続ペプチド中の残基と第2のTCRDの接続ペプチド中の残基との間のジスルフィド結合;および/またはb)第1の抗原結合ドメイン中のCH1抗体ドメイン中の残基と第2の抗原結合ドメイン中のCL抗体ドメイン中の残基との間のジスルフィド結合を介して連結される。一部の実施形態では、標的抗原は細胞表面抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、タンパク質、炭水化物および脂質からなる群から選択される。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、疾患関連抗原、例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、CD19、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5DまたはFCRL5である。一部の実施形態では、標的抗原は、表面提示されたペプチド/MHC複合体である。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、疾患関連抗原(例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原)に由来するペプチドとMHCタンパク質とを含む。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、ペプチドとMHCタンパク質とを含み、ペプチドは、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1およびPSAからなる群から選択されるタンパク質に由来する。一部の実施形態では、MHCタンパク質は、MHCクラスIタンパク質である。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Aである。一部の実施形態では、HLA-Aは、HLA-A02である。一部の実施形態では、HLA-A02は、HLA-A*02:01である。
【0162】
一部の実施形態では、標的抗原を特異的に認識するabTCRであって、a)VHおよびCH1抗体ドメインを含む第1の抗原結合ドメインと配列番号1~4のいずれか1つのアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)膜貫通ドメインを含む第1のTCRDとを含む第1のポリペプチド鎖;ならびにb)VLおよびCL抗体ドメインを含む第2の抗原結合ドメインと配列番号1~4のいずれか1つのアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)膜貫通ドメインを含む第2のTCRDとを含む第2のポリペプチド鎖、を含み、第1の抗原結合ドメインのVHおよびCH1ドメインと第2の抗原結合ドメインのVLおよびCLドメインとが、標的抗原に特異的に結合するFab様抗原結合モジュールを形成し、第1のTCRDと第2のTCRDとが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なTCRMを形成する、abTCRが提供される。一部の実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、ヒト、ヒト化、キメラ、半合成または完全合成である。一部の実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCRサブユニットの第1の接続ペプチドもしくはその断片をさらに含み、および/または第2のTCRDは、第2のTCRサブユニットの第2の接続ペプチドもしくはその断片をさらに含み、第1および/または第2の接続ペプチドは、配列番号5~12のいずれか1つのアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。一部の実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインをさらに含み、および/または第2のTCRDは、第2のTCR細胞内ドメインをさらに含み、第1および/または第2のTCR細胞内ドメインは、配列番号13~14のいずれか1つのアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。一部の実施形態では、abTCRは、a)配列番号70もしくは71のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)少なくとも1つのT細胞共刺激シグナル伝達配列;および/またはb)配列番号50~52のいずれか1つのアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)エピトープタグを含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、abTCRは、第1の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドおよび/または第2の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含み、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γεおよびζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能である。一部の実施形態では、TCRMは、abTCR-CD3複合体形成を促進する。一部の実施形態では、第1の抗原結合ドメインと第1のTCRDとの間に第1のペプチドリンカーが、および/または第2の抗原結合ドメインと第2のTCRDとの間に第2のペプチドリンカーが存在する。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、例えば、共有結合(例えば、ペプチド結合または他の化学結合)または非共有結合によって連結される。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、a)第1のTCRDの接続ペプチド中の残基と第2のTCRDの接続ペプチド中の残基との間のジスルフィド結合;および/またはb)第1の抗原結合ドメイン中のCH1抗体ドメイン中の残基と第2の抗原結合ドメイン中のCL抗体ドメイン中の残基との間のジスルフィド結合を介して連結される。一部の実施形態では、標的抗原は細胞表面抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、タンパク質、炭水化物および脂質からなる群から選択される。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、疾患関連抗原、例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、CD19、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5DまたはFCRL5である。一部の実施形態では、標的抗原は、表面提示されたペプチド/MHC複合体である。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、疾患関連抗原(例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原)に由来するペプチドとMHCタンパク質とを含む。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、ペプチドとMHCタンパク質とを含み、ペプチドは、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1およびPSAからなる群から選択されるタンパク質に由来する。一部の実施形態では、MHCタンパク質は、MHCクラスIタンパク質である。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Aである。一部の実施形態では、HLA-Aは、HLA-A02である。一部の実施形態では、HLA-A02は、HLA-A*02:01である。
【0163】
一部の実施形態では、標的抗原を特異的に認識するabTCRであって、a)VH抗体ドメインを含む第1の抗原結合ドメインと配列番号1~4のいずれか1つのアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)膜貫通ドメインを含む第1のTCRDとを含む第1のポリペプチド鎖;およびb)VL抗体ドメインを含む第2の抗原結合ドメインと配列番号1~4のいずれか1つのアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)膜貫通ドメインを含む第2のTCRDとを含む第2のポリペプチド鎖、を含み、第1の抗原結合ドメインのVHドメインと第2の抗原結合ドメインのVLドメインとが、標的抗原に特異的に結合するFv様抗原結合モジュールを形成し、第1のTCRDと第2のTCRDとが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なTCRMを形成し、標的抗原がペプチド/MHC複合体である、abTCRが提供される。一部の実施形態では、Fv様抗原結合モジュールは、ヒト、ヒト化、キメラ、半合成または完全合成である。一部の実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCRサブユニットの第1の接続ペプチドもしくはその断片をさらに含み、および/または第2のTCRDは、第2のTCRサブユニットの第2の接続ペプチドもしくはその断片をさらに含み、第1および/または第2の接続ペプチドは、配列番号5~12のいずれか1つのアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。一部の実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインをさらに含み、および/または第2のTCRDは、第2のTCR細胞内ドメインをさらに含み、第1および/または第2のTCR細胞内ドメインは、配列番号13~14のいずれか1つのアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。一部の実施形態では、abTCRは、a)配列番号70もしくは71のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)少なくとも1つのT細胞共刺激シグナル伝達配列;および/またはb)配列番号50~52のいずれか1つのアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)エピトープタグを含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、abTCRは、第1の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドおよび/または第2の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含み、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γεおよびζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能である。一部の実施形態では、TCRMは、abTCR-CD3複合体形成を促進する。一部の実施形態では、第1の抗原結合ドメインと第1のTCRDとの間に第1のペプチドリンカーが、および/または第2の抗原結合ドメインと第2のTCRDとの間に第2のペプチドリンカーが存在する。一部の実施形態では、第1および第2のペプチドリンカーは、互いに結合することが可能である。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、免疫グロブリン重鎖および/または軽鎖定常領域に由来する。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、TCRサブユニット定常領域に由来する。例えば、一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、a)TCRαおよびβサブユニット定常ドメイン;またはb)TCRγおよびδサブユニット定常ドメインに由来する。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、合成である。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、例えば、共有結合(例えば、ペプチド結合または他の化学結合)または非共有結合によって連結される。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、a)第1のTCRDの接続ペプチド中の残基と第2のTCRDの接続ペプチド中の残基との間のジスルフィド結合;および/またはb)第1のペプチドリンカー中の残基と第2のペプチドリンカー中の残基との間のジスルフィド結合を介して連結される。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、それが由来する配列と比較して、1つまたは複数の改変(例えば、アミノ酸の置換、挿入および/または欠失)を含むバリアントである。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、互いに対するそれらの結合親和性を実質的に変更しない1つまたは複数の改変を含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、互いに対するそれらの結合親和性を増加させるおよび/または天然に存在しないジスルフィド結合を導入する1つまたは複数の改変を含む。一部の実施形態では、標的抗原ペプチド/MHC複合体は、疾患関連抗原(例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原)に由来するペプチドとMHCタンパク質とを含む。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、ペプチドとMHCタンパク質とを含み、ペプチドは、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1およびPSAからなる群から選択されるタンパク質に由来する。一部の実施形態では、MHCタンパク質は、MHCクラスIタンパク質である。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Aである。一部の実施形態では、HLA-Aは、HLA-A02である。一部の実施形態では、HLA-A02は、HLA-A*02:01である。
【0164】
一部の実施形態では、標的抗原を特異的に認識するabTCRであって、a)アミノ末端からカルボキシ末端の順に、VHおよびCH1抗体ドメインを含む第1の抗原結合ドメインと、配列番号5~12のいずれか1つのアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)接続ペプチドを含む第1のTCRDと、配列番号1~4のいずれか1つのアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)膜貫通ドメインとを含む第1のポリペプチド鎖;ならびにb)アミノ末端からカルボキシ末端の順に、VLおよびCL抗体ドメインを含む第2の抗原結合ドメインと、配列番号5~12のいずれか1つのアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)接続ペプチドを含む第2のTCRDと、配列番号1~4のいずれか1つのアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)膜貫通ドメインとを含む第2のポリペプチド鎖、を含み;第1の抗原結合ドメインのVHおよびCH1ドメインと第2の抗原結合ドメインのVLおよびCLドメインとが、標的抗原に特異的に結合するFab様抗原結合モジュールを形成し、第1のTCRDと第2のTCRDとが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なTCRMを形成する、abTCRが提供される。一部の実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、ヒト、ヒト化、キメラ、半合成または完全合成である。一部の実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインをさらに含み、および/または第2のTCRDは、第2のTCR細胞内ドメインをさらに含み、第1および/または第2のTCR細胞内ドメインは、配列番号13~14のいずれか1つのアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。一部の実施形態では、abTCRは、a)配列番号70もしくは71のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)少なくとも1つのT細胞共刺激シグナル伝達配列;および/またはb)配列番号50~52のいずれか1つのアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)エピトープタグを含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、abTCRは、第1の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドおよび/または第2の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含み、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γεおよびζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能である。一部の実施形態では、TCRMは、abTCR-CD3複合体形成を促進する。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、a)第1のTCRDの接続ペプチド中の残基と第2のTCRDの接続ペプチド中の残基との間のジスルフィド結合;および/またはb)第1の抗原結合ドメイン中のCH1抗体ドメイン中の残基と第2の抗原結合ドメイン中のCL抗体ドメイン中の残基との間のジスルフィド結合を介して連結される。一部の実施形態では、標的抗原は細胞表面抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、タンパク質、炭水化物および脂質からなる群から選択される。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、疾患関連抗原、例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、CD19、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5DまたはFCRL5である。一部の実施形態では、標的抗原は、表面提示されたペプチド/MHC複合体である。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、疾患関連抗原(例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原)に由来するペプチドとMHCタンパク質とを含む。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、ペプチドとMHCタンパク質とを含み、ペプチドは、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1およびPSAからなる群から選択されるタンパク質に由来する。一部の実施形態では、MHCタンパク質は、MHCクラスIタンパク質である。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Aである。一部の実施形態では、HLA-Aは、HLA-A02である。一部の実施形態では、HLA-A02は、HLA-A*02:01である。
【0165】
一部の実施形態では、標的抗原を特異的に認識するabTCRであって、a)アミノ末端からカルボキシ末端の順に、VH抗体ドメインを含む第1の抗原結合ドメインと、配列番号5~12のいずれか1つのアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)接続ペプチドを含む第1のTCRDと、配列番号1~4のいずれか1つのアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)膜貫通ドメインとを含む第1のポリペプチド鎖;およびb)アミノ末端からカルボキシ末端の順に、VL抗体ドメインを含む第2の抗原結合ドメインと、配列番号5~12のいずれか1つのアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)接続ペプチドを含む第2のTCRDと、配列番号1~4のいずれか1つのアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)膜貫通ドメインとを含む第2のポリペプチド鎖、を含み、第1の抗原結合ドメインのVHドメインと第2の抗原結合ドメインのVLドメインとが、標的抗原に特異的に結合するFv様抗原結合モジュールを形成し、第1のTCRDと第2のTCRDとが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なTCRMを形成し、標的抗原がペプチド/MHC複合体である、abTCRが提供される。一部の実施形態では、Fv様抗原結合モジュールは、ヒト、ヒト化、キメラ、半合成または完全合成である。一部の実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCRサブユニットの第1の接続ペプチドもしくはその断片をさらに含み、および/または第2のTCRDは、第2のTCRサブユニットの第2の接続ペプチドもしくはその断片をさらに含み、第1および/または第2の接続ペプチドは、配列番号5~12のいずれか1つのアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。一部の実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインをさらに含み、および/または第2のTCRDは、第2のTCR細胞内ドメインをさらに含み、第1および/または第2のTCR細胞内ドメインは、配列番号13~14のいずれか1つのアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。一部の実施形態では、abTCRは、a)配列番号70もしくは71のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)少なくとも1つのT細胞共刺激シグナル伝達配列;および/またはb)配列番号50~52のいずれか1つのアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)エピトープタグを含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、abTCRは、第1の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドおよび/または第2の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含み、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γεおよびζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能である。一部の実施形態では、TCRMは、abTCR-CD3複合体形成を促進する。一部の実施形態では、第1の抗原結合ドメインと第1のTCRDとの間に第1のペプチドリンカーが、および/または第2の抗原結合ドメインと第2のTCRDとの間に第2のペプチドリンカーが存在する。一部の実施形態では、第1および第2のペプチドリンカーは、互いに結合することが可能である。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、免疫グロブリン重鎖および/または軽鎖定常領域に由来する。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、TCRサブユニット定常領域に由来する。例えば、一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、a)TCRαおよびβサブユニット定常ドメイン;またはb)TCRγおよびδサブユニット定常ドメインに由来する。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、合成である。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、例えば、共有結合(例えば、ペプチド結合または他の化学結合)または非共有結合によって連結される。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、a)第1のTCRDの接続ペプチド中の残基と第2のTCRDの接続ペプチド中の残基との間のジスルフィド結合;および/またはb)第1のペプチドリンカー中の残基と第2のペプチドリンカー中の残基との間のジスルフィド結合を介して連結される。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、それが由来する配列と比較して、1つまたは複数の改変(例えば、アミノ酸の置換、挿入および/または欠失)を含むバリアントである。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、互いに対するそれらの結合親和性を実質的に変更しない1つまたは複数の改変を含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、互いに対するそれらの結合親和性を増加させるおよび/または天然に存在しないジスルフィド結合を導入する1つまたは複数の改変を含む。一部の実施形態では、標的抗原ペプチド/MHC複合体は、疾患関連抗原(例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原)に由来するペプチドとMHCタンパク質とを含む。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、ペプチドとMHCタンパク質とを含み、ペプチドは、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1およびPSAからなる群から選択されるタンパク質に由来する。一部の実施形態では、MHCタンパク質は、MHCクラスIタンパク質である。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Aである。一部の実施形態では、HLA-Aは、HLA-A02である。一部の実施形態では、HLA-A02は、HLA-A*02:01である。
【0166】
一部の実施形態では、標的抗原を特異的に認識するabTCRであって、a)アミノ末端からカルボキシ末端の順に、第1の抗原結合ドメインと配列番号15のアミノ酸配列を含む第1のTCRDとを含む第1のポリペプチド鎖;およびb)アミノ末端からカルボキシ末端の順に、第2の抗原結合ドメインと配列番号16のアミノ酸配列を含む第2のTCRDとを含む第2のポリペプチド鎖、を含み;第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとが、標的抗原に特異的に結合するFab様抗原結合モジュールを形成し、第1のTCRDと第2のTCRDとが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なTCRMを形成する、abTCRが提供される。一部の実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、ヒト、ヒト化、キメラ、半合成または完全合成である。一部の実施形態では、abTCRは、a)配列番号70もしくは71のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)少なくとも1つのT細胞共刺激シグナル伝達配列;および/またはb)配列番号50~52のいずれか1つのアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)エピトープタグを含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、abTCRは、第1の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドおよび/または第2の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含み、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γεおよびζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能である。一部の実施形態では、TCRMは、abTCR-CD3複合体形成を促進する。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、a)第1のTCRDの接続ペプチド中の残基と第2のTCRDの接続ペプチド中の残基との間のジスルフィド結合;および/またはb)Fab様抗原結合モジュール中のCH1抗体ドメイン中の残基とCL抗体ドメイン中の残基との間のジスルフィド結合を介して連結される。一部の実施形態では、標的抗原は細胞表面抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、タンパク質、炭水化物および脂質からなる群から選択される。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、疾患関連抗原、例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、CD19、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5DまたはFCRL5である。一部の実施形態では、標的抗原は、表面提示されたペプチド/MHC複合体である。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、疾患関連抗原(例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原)に由来するペプチドとMHCタンパク質とを含む。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、ペプチドとMHCタンパク質とを含み、ペプチドは、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1およびPSAからなる群から選択されるタンパク質に由来する。一部の実施形態では、MHCタンパク質は、MHCクラスIタンパク質である。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Aである。一部の実施形態では、HLA-Aは、HLA-A02である。一部の実施形態では、HLA-A02は、HLA-A*02:01である。
【0167】
一部の実施形態では、標的抗原を特異的に認識するabTCRであって、a)アミノ末端からカルボキシ末端の順に、第1の抗原結合ドメインと配列番号17のアミノ酸配列を含む第1のTCRDとを含む第1のポリペプチド鎖;およびb)アミノ末端からカルボキシ末端の順に、第2の抗原結合ドメインと配列番号18のアミノ酸配列を含む第2のTCRDとを含む第2のポリペプチド鎖、を含み;第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとが、標的抗原に特異的に結合するFab様抗原結合モジュールを形成し、第1のTCRDと第2のTCRDとが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なTCRMを形成する、abTCRが提供される。一部の実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、ヒト、ヒト化、キメラ、半合成または完全合成である。一部の実施形態では、abTCRは、a)配列番号70もしくは71のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)少なくとも1つのT細胞共刺激シグナル伝達配列;および/またはb)配列番号50~52のいずれか1つのアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)エピトープタグを含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、abTCRは、第1の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドおよび/または第2の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含み、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γεおよびζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能である。一部の実施形態では、TCRMは、abTCR-CD3複合体形成を促進する。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、a)第1のTCRDの接続ペプチド中の残基と第2のTCRDの接続ペプチド中の残基との間のジスルフィド結合;および/またはb)Fab様抗原結合モジュール中のCH1抗体ドメイン中の残基とCL抗体ドメイン中の残基との間のジスルフィド結合を介して連結される。一部の実施形態では、標的抗原は細胞表面抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、タンパク質、炭水化物および脂質からなる群から選択される。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、疾患関連抗原、例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、CD19、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5DまたはFCRL5である。一部の実施形態では、標的抗原は、表面提示されたペプチド/MHC複合体である。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、疾患関連抗原(例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原)に由来するペプチドとMHCタンパク質とを含む。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、ペプチドとMHCタンパク質とを含み、ペプチドは、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1およびPSAからなる群から選択されるタンパク質に由来する。一部の実施形態では、MHCタンパク質は、MHCクラスIタンパク質である。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Aである。一部の実施形態では、HLA-Aは、HLA-A02である。一部の実施形態では、HLA-A02は、HLA-A*02:01である。
【0168】
一部の実施形態では、標的抗原を特異的に認識するabTCRであって、a)アミノ末端からカルボキシ末端の順に、第1の抗原結合ドメインと配列番号19のアミノ酸配列を含む第1のTCRDとを含む第1のポリペプチド鎖;およびb)アミノ末端からカルボキシ末端の順に、第2の抗原結合ドメインと配列番号20のアミノ酸配列を含む第2のTCRDとを含む第2のポリペプチド鎖、を含み;第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとが、標的抗原に特異的に結合するFab様抗原結合モジュールを形成し、第1のTCRDと第2のTCRDとが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なTCRMを形成する、abTCRが提供される。一部の実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、ヒト、ヒト化、キメラ、半合成または完全合成である。一部の実施形態では、abTCRは、a)配列番号70もしくは71のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)少なくとも1つのT細胞共刺激シグナル伝達配列;および/またはb)配列番号50~52のいずれか1つのアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)エピトープタグを含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、abTCRは、第1の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドおよび/または第2の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含み、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γεおよびζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能である。一部の実施形態では、TCRMは、abTCR-CD3複合体形成を促進する。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、a)第1のTCRDの接続ペプチド中の残基と第2のTCRDの接続ペプチド中の残基との間のジスルフィド結合;および/またはb)Fab様抗原結合モジュール中のCH1抗体ドメイン中の残基とCL抗体ドメイン中の残基との間のジスルフィド結合を介して連結される。一部の実施形態では、標的抗原は細胞表面抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、タンパク質、炭水化物および脂質からなる群から選択される。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、疾患関連抗原、例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、CD19、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5DまたはFCRL5である。一部の実施形態では、標的抗原は、表面提示されたペプチド/MHC複合体である。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、疾患関連抗原(例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原)に由来するペプチドとMHCタンパク質とを含む。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、ペプチドとMHCタンパク質とを含み、ペプチドは、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1およびPSAからなる群から選択されるタンパク質に由来する。一部の実施形態では、MHCタンパク質は、MHCクラスIタンパク質である。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Aである。一部の実施形態では、HLA-Aは、HLA-A02である。一部の実施形態では、HLA-A02は、HLA-A*02:01である。
【0169】
一部の実施形態では、標的抗原を特異的に認識するabTCRであって、a)アミノ末端からカルボキシ末端の順に、第1の抗原結合ドメインと配列番号21のアミノ酸配列を含む第1のTCRDとを含む第1のポリペプチド鎖;およびb)アミノ末端からカルボキシ末端の順に、第2の抗原結合ドメインと配列番号22のアミノ酸配列を含む第2のTCRDとを含む第2のポリペプチド鎖、を含み;第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとが、標的抗原に特異的に結合するFab様抗原結合モジュールを形成し、第1のTCRDと第2のTCRDとが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なTCRMを形成する、abTCRが提供される。一部の実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、ヒト、ヒト化、キメラ、半合成または完全合成である。一部の実施形態では、abTCRは、a)配列番号70もしくは71のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)少なくとも1つのT細胞共刺激シグナル伝達配列;および/またはb)配列番号50~52のいずれか1つのアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)エピトープタグを含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、abTCRは、第1の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドおよび/または第2の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含み、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γεおよびζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能である。一部の実施形態では、TCRMは、abTCR-CD3複合体形成を促進する。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、a)第1のTCRDの接続ペプチド中の残基と第2のTCRDの接続ペプチド中の残基との間のジスルフィド結合;および/またはb)Fab様抗原結合モジュール中のCH1抗体ドメイン中の残基とCL抗体ドメイン中の残基との間のジスルフィド結合を介して連結される。一部の実施形態では、標的抗原は細胞表面抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、タンパク質、炭水化物および脂質からなる群から選択される。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、疾患関連抗原、例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、CD19、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5DまたはFCRL5である。一部の実施形態では、標的抗原は、表面提示されたペプチド/MHC複合体である。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、疾患関連抗原(例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原)に由来するペプチドとMHCタンパク質とを含む。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、ペプチドとMHCタンパク質とを含み、ペプチドは、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1およびPSAからなる群から選択されるタンパク質に由来する。一部の実施形態では、MHCタンパク質は、MHCクラスIタンパク質である。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Aである。一部の実施形態では、HLA-Aは、HLA-A02である。一部の実施形態では、HLA-A02は、HLA-A*02:01である。
【0170】
一部の実施形態では、AFPペプチドおよびMHC Iタンパク質を含む複合体を特異的に認識するabTCRであって、a)配列番号23のアミノ酸配列を含む第1のabTCRドメインを含む第1のポリペプチド鎖;およびb)配列番号24のアミノ酸配列を含む第2のabTCRドメインを含む第2のポリペプチド鎖を含む、abTCRが提供される。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、1つまたは複数のジスルフィド結合を介して連結される。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、エピトープタグは、配列番号50~52のアミノ酸配列のいずれか1つを含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、第1のabTCRドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドをさらに含み、および/または第2のポリペプチド鎖は、第2のabTCRドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。
【0171】
一部の実施形態では、AFPペプチドおよびMHC Iタンパク質を含む複合体を特異的に認識するabTCRであって、a)配列番号25のアミノ酸配列を含む第1のabTCRドメインを含む第1のポリペプチド鎖;およびb)配列番号26のアミノ酸配列を含む第2のabTCRドメインを含む第2のポリペプチド鎖を含む、abTCRが提供される。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、1つまたは複数のジスルフィド結合を介して連結される。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、エピトープタグは、配列番号50~52のアミノ酸配列のいずれか1つを含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、第1のabTCRドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドをさらに含み、および/または第2のポリペプチド鎖は、第2のabTCRドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。
【0172】
一部の実施形態では、AFPペプチドおよびMHC Iタンパク質を含む複合体を特異的に認識するabTCRであって、a)配列番号27のアミノ酸配列を含む第1のabTCRドメインを含む第1のポリペプチド鎖;およびb)配列番号28のアミノ酸配列を含む第2のabTCRドメインを含む第2のポリペプチド鎖を含む、abTCRが提供される。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、1つまたは複数のジスルフィド結合を介して連結される。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、エピトープタグは、配列番号50~52のアミノ酸配列のいずれか1つを含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、第1のabTCRドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドをさらに含み、および/または第2のポリペプチド鎖は、第2のabTCRドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。
【0173】
一部の実施形態では、AFPペプチドおよびMHC Iタンパク質を含む複合体を特異的に認識するabTCRであって、a)配列番号29のアミノ酸配列を含む第1のabTCRドメインを含む第1のポリペプチド鎖;およびb)配列番号30のアミノ酸配列を含む第2のabTCRドメインを含む第2のポリペプチド鎖を含む、abTCRが提供される。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、1つまたは複数のジスルフィド結合を介して連結される。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、エピトープタグは、配列番号50~52のアミノ酸配列のいずれか1つを含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、第1のabTCRドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドをさらに含み、および/または第2のポリペプチド鎖は、第2のabTCRドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。
【0174】
一部の実施形態では、AFPペプチドおよびMHC Iタンパク質を含む複合体を特異的に認識するabTCRであって、a)配列番号31のアミノ酸配列を含む第1のabTCRドメインを含む第1のポリペプチド鎖;およびb)配列番号32のアミノ酸配列を含む第2のabTCRドメインを含む第2のポリペプチド鎖を含む、abTCRが提供される。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、1つまたは複数のジスルフィド結合を介して連結される。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、エピトープタグは、配列番号50~52のアミノ酸配列のいずれか1つを含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、第1のabTCRドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドをさらに含み、および/または第2のポリペプチド鎖は、第2のabTCRドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。
【0175】
一部の実施形態では、AFPペプチドおよびMHC Iタンパク質を含む複合体を特異的に認識するabTCRであって、a)配列番号33のアミノ酸配列を含む第1のabTCRドメインを含む第1のポリペプチド鎖;およびb)配列番号34のアミノ酸配列を含む第2のabTCRドメインを含む第2のポリペプチド鎖を含む、abTCRが提供される。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、1つまたは複数のジスルフィド結合を介して連結される。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、エピトープタグは、配列番号50~52のアミノ酸配列のいずれか1つを含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、第1のabTCRドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドをさらに含み、および/または第2のポリペプチド鎖は、第2のabTCRドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。
【0176】
一部の実施形態では、AFPペプチドおよびMHC Iタンパク質を含む複合体を特異的に認識するabTCRであって、a)配列番号35のアミノ酸配列を含む第1のabTCRドメインを含む第1のポリペプチド鎖;およびb)配列番号36のアミノ酸配列を含む第2のabTCRドメインを含む第2のポリペプチド鎖を含む、abTCRが提供される。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、1つまたは複数のジスルフィド結合を介して連結される。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、エピトープタグは、配列番号50~52のアミノ酸配列のいずれか1つを含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、第1のabTCRドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドをさらに含み、および/または第2のポリペプチド鎖は、第2のabTCRドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。
【0177】
一部の実施形態では、AFPペプチドおよびMHC Iタンパク質を含む複合体を特異的に認識するabTCRであって、配列番号38のアミノ酸配列を含む(一部の実施形態ではそれからなる)VH抗体ドメイン、または少なくとも約95%(例えば、少なくとも約96%、97%、98%または99%のいずれか)の配列同一性を有するそのバリアント、および配列番号40のアミノ酸配列を含む(一部の実施形態ではそれからなる)VL抗体ドメイン、または少なくとも約95%(例えば、少なくとも約96%、97%、98%または99%のいずれか)の配列同一性を有するそのバリアントを含む抗原結合モジュールを含む、abTCRが提供される。
【0178】
したがって、一部の実施形態では、上記abTCRのいずれかにしたがう、AFPペプチドおよびMHC Iタンパク質を含む複合体を特異的に認識するabTCRであって、Fab様抗原結合モジュールのVH抗体ドメインが、配列番号38のアミノ酸配列を含む(一部の実施形態ではそれからなる)配列、または少なくとも約95%(例えば、少なくとも約96%、97%、98%または99%のいずれか)の配列同一性を有するそのバリアントで置き換えられ、Fab様抗原結合モジュールのVL抗体ドメインが、配列番号40のアミノ酸配列を含む(一部の実施形態ではそれからなる)配列、または少なくとも約95%(例えば、少なくとも約96%、97%、98%または99%のいずれか)の配列同一性を有するそのバリアントで置き換えられる、abTCRが提供される。
【0179】
一部の実施形態では、CD19を特異的に認識するabTCRであって、a)配列番号42のアミノ酸配列を含む第1のabTCRドメインを含む第1のポリペプチド鎖;およびb)配列番号43のアミノ酸配列を含む第2のabTCRドメインを含む第2のポリペプチド鎖を含む、abTCRが提供される。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、1つまたは複数のジスルフィド結合を介して連結される。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、エピトープタグは、配列番号50~52のアミノ酸配列のいずれか1つを含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、第1のabTCRドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドをさらに含み、および/または第2のポリペプチド鎖は、第2のabTCRドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。
【0180】
一部の実施形態では、CD19を特異的に認識するabTCRであって、a)配列番号42のアミノ酸配列を含む第1のabTCRドメインを含む第1のポリペプチド鎖;およびb)配列番号54のアミノ酸配列を含む第2のabTCRドメインを含む第2のポリペプチド鎖を含む、abTCRが提供される。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、1つまたは複数のジスルフィド結合を介して連結される。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、エピトープタグは、配列番号50~52のアミノ酸配列のいずれか1つを含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、第1のabTCRドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドをさらに含み、および/または第2のポリペプチド鎖は、第2のabTCRドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。
【0181】
一部の実施形態では、CD19を特異的に認識するabTCRであって、a)配列番号55のアミノ酸配列を含む第1のabTCRドメインを含む第1のポリペプチド鎖;およびb)配列番号54のアミノ酸配列を含む第2のabTCRドメインを含む第2のポリペプチド鎖を含む、abTCRが提供される。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、1つまたは複数のジスルフィド結合を介して連結される。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、エピトープタグは、配列番号50~52のアミノ酸配列のいずれか1つを含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、第1のabTCRドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドをさらに含み、および/または第2のポリペプチド鎖は、第2のabTCRドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。
【0182】
一部の実施形態では、CD19を特異的に認識するabTCRであって、a)配列番号56のアミノ酸配列を含む第1のabTCRドメインを含む第1のポリペプチド鎖;およびb)配列番号54のアミノ酸配列を含む第2のabTCRドメインを含む第2のポリペプチド鎖を含む、abTCRが提供される。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、1つまたは複数のジスルフィド結合を介して連結される。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、エピトープタグは、配列番号50~52のアミノ酸配列のいずれか1つを含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、第1のabTCRドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドをさらに含み、および/または第2のポリペプチド鎖は、第2のabTCRドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。
【0183】
一部の実施形態では、CD19を特異的に認識する、本明細書に記載される実施形態のいずれかにしたがうabTCRであって、配列番号45のアミノ酸配列を含む(一部の実施形態ではそれからなる)VH抗体ドメイン、または少なくとも約95%(例えば、少なくとも約96%、97%、98%または99%のいずれか)の配列同一性を有するそのバリアント、および配列番号46のアミノ酸配列を含む(一部の実施形態ではそれからなる)VL抗体ドメイン、または少なくとも約95%(例えば、少なくとも約96%、97%、98%または99%のいずれか)の配列同一性を有するそのバリアントを含む抗原結合モジュールを含む、abTCRが提供される。
【0184】
一部の実施形態では、CD19を特異的に認識する、本明細書に記載される実施形態のいずれかにしたがうabTCRであって、配列番号45のアミノ酸配列を含む(一部の実施形態ではそれからなる)VH抗体ドメイン、または少なくとも約95%(例えば、少なくとも約96%、97%、98%または99%のいずれか)の配列同一性を有するそのバリアント、および配列番号57のアミノ酸配列を含む(一部の実施形態ではそれからなる)VL抗体ドメイン、または少なくとも約95%(例えば、少なくとも約96%、97%、98%または99%のいずれか)の配列同一性を有するそのバリアントを含む抗原結合モジュールを含む、abTCRが提供される。
【0185】
一部の実施形態では、CD19を特異的に認識する、本明細書に記載される実施形態のいずれかにしたがうabTCRであって、配列番号58のアミノ酸配列を含む(一部の実施形態ではそれからなる)VH抗体ドメイン、または少なくとも約95%(例えば、少なくとも約96%、97%、98%または99%のいずれか)の配列同一性を有するそのバリアント、および配列番号57のアミノ酸配列を含む(一部の実施形態ではそれからなる)VL抗体ドメイン、または少なくとも約95%(例えば、少なくとも約96%、97%、98%または99%のいずれか)の配列同一性を有するそのバリアントを含む抗原結合モジュールを含む、abTCRが提供される。
【0186】
一部の実施形態では、CD19を特異的に認識する、本明細書に記載される実施形態のいずれかにしたがうabTCRであって、配列番号59のアミノ酸配列を含む(一部の実施形態ではそれからなる)VH抗体ドメイン、または少なくとも約95%(例えば、少なくとも約96%、97%、98%または99%のいずれか)の配列同一性を有するそのバリアント、および配列番号57のアミノ酸配列を含む(一部の実施形態ではそれからなる)VL抗体ドメイン、または少なくとも約95%(例えば、少なくとも約96%、97%、98%または99%のいずれか)の配列同一性を有するそのバリアントを含む抗原結合モジュールを含む、abTCRが提供される。
【0187】
一部の実施形態では、NY-ESO-1 157-165ペプチドおよびMHC Iタンパク質を含む複合体を特異的に認識する、本明細書に記載される実施形態のいずれかにしたがうabTCRであって、配列番号72のアミノ酸配列を含む(一部の実施形態ではそれからなる)VH抗体ドメイン、または少なくとも約95%(例えば、少なくとも約96%、97%、98%または99%のいずれか)の配列同一性を有するそのバリアント、および配列番号73のアミノ酸配列を含む(一部の実施形態ではそれからなる)VL抗体ドメイン、または少なくとも約95%(例えば、少なくとも約96%、97%、98%または99%のいずれか)の配列同一性を有するそのバリアントを含む抗原結合モジュールを含む、abTCRが提供される。
【0188】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるabTCRのいずれかにしたがう、標的抗原への結合について第2の抗原結合モジュールと競合する第1の抗原結合モジュールを含むabTCRが提供される。一部の実施形態では、第1の抗原結合モジュールは、第2の抗原結合モジュールと同じまたは実質的に同じエピトープに結合する。一部の実施形態では、標的抗原への第1の抗原結合モジュールの結合は、標的抗原への第2の抗原結合モジュールの結合を、少なくとも約70%(例えば、少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%のいずれか)阻害し、または逆もまた同様である。一部の実施形態では、第1の抗原結合モジュールおよび第2の抗原結合モジュールは、標的抗原への結合について交差競合する、即ち、第1および第2の抗原結合モジュールの各々は、標的抗原への結合について他方と競合する。
【0189】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるabTCRのいずれかにしたがうabTCRであって、第1の抗原結合ドメインがVLおよびCH1抗体ドメインを含み、第2の抗原結合ドメインがVHおよびCL抗体ドメインを含むように、VLおよびVHドメインが相互交換される、abTCRが提供される。
【0190】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるabTCRのいずれかにしたがうabTCRと、CD3δε、CD3γεおよびζζからなる群から選択される少なくとも1つのシグナル伝達モジュールとを含む複合体が提供される。一部の実施形態では、複合体は、CD3δε、CD3γεおよびζζの各々を含む。したがって、一部の実施形態では、abTCR、CD3δε、CD3γεおよびζζを含む複合体が提供される。
【0191】
異なる態様は、以下の種々のセクションにおいてさらに詳細に議論される。
【0192】
核酸
abTCRをコードする核酸分子もまた企図される。一部の実施形態では、本明細書に記載されるabTCRのいずれかによれば、abTCRをコードする核酸(または核酸のセット)が提供される。
【0193】
本発明は、本発明の核酸が挿入されたベクターもまた提供する。
【0194】
簡潔にまとめると、abTCRをコードする核酸によるabTCRの発現は、その核酸が、例えば、プロモーター(例えば、リンパ球特異的プロモーター)および3’非翻訳領域(UTR)を含む5’および3’調節エレメントに作動可能に連結するように、適切な発現ベクター中に核酸を挿入することによって達成され得る。ベクターは、真核生物宿主細胞における複製および組込みに適切であり得る。典型的なクローニングベクターおよび発現ベクターは、転写ターミネーターおよび翻訳ターミネーター、開始配列、ならびに所望の核酸配列の発現の調節に有用なプロモーターを含む。
【0195】
本発明の核酸はまた、標準的な遺伝子送達プロトコールを使用して、核酸免疫および遺伝子治療のために使用され得る。遺伝子送達のための方法は、当該分野で公知である。例えば、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第5,399,346号、同第5,580,859号、同第5,589,466号を参照のこと。一部の実施形態では、本発明は、遺伝子治療ベクターを提供する。
【0196】
核酸は、いくつかの型のベクター中にクローニングされ得る。例えば、核酸は、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルスおよびコスミドが含まれるがこれらに限定されないベクター中にクローニングされ得る。特に目的とするベクターには、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクターおよび配列決定ベクターが含まれる。
【0197】
さらに、発現ベクターは、ウイルスベクターの形態で細胞に提供され得る。ウイルスベクターテクノロジーは、当該分野で周知であり、例えば、Sambrookら(2001年、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New York)中、ならびに他のウイルス学および分子生物学のマニュアル中に記載されている。ベクターとして有用なウイルスには、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルスおよびレンチウイルスが含まれるがこれらに限定されない。一般に、適切なベクターは、少なくとも1種の生物において機能的な複製起点、プロモーター配列、簡便な制限エンドヌクレアーゼ部位、および1または複数の選択可能なマーカーを含む(例えば、WO01/96584;WO01/29058;および米国特許第6,326,193号を参照のこと)。
【0198】
いくつかのウイルスベースの系が、哺乳動物細胞中への遺伝子移入のために開発されている。例えば、レトロウイルスは、遺伝子送達系のための簡便なプラットフォームを提供する。選択された遺伝子は、当該分野で公知の技術を使用して、ベクター中に挿入され得、レトロウイルス粒子中にパッケージングされ得る。次いで、組換えウイルスは、単離され得、in vivoまたはex vivoのいずれかで、対象の細胞に送達され得る。いくつかのレトロウイルス系が、当該分野で公知である。一部の実施形態では、アデノウイルスベクターが使用される。いくつかのアデノウイルスベクターが、当該分野で公知である。一部の実施形態では、レンチウイルスベクターが使用される。レンチウイルスなどのレトロウイルスに由来するベクターは、導入遺伝子の長期の安定な組込みおよび娘細胞におけるその伝播を可能にするので、長期遺伝子移入を達成するのに適切なツールである。レンチウイルスベクターは、肝細胞などの非増殖性細胞を形質導入できるという点で、マウス白血病ウイルスなどのオンコ-レトロウイルス(onco-retrovirus)に由来するベクターを越えるさらなる利点を有する。これらは、低い免疫原性のさらなる利点もまた有する。
【0199】
さらなるプロモーターエレメント、例えば、エンハンサーは、転写開始の頻度を調節する。典型的には、これらは、開始部位の30~110bp上流の領域中に位置するが、いくつかのプロモーターは、開始部位の下流にも機能的エレメントを含むことが最近示されている。プロモーターエレメント間のスペーシングは、エレメントが互いに対して反転されるまたは移動される場合にプロモーター機能が保存されるように、しばしば柔軟である。チミジンキナーゼ(tk)プロモーターでは、プロモーターエレメント間のスペーシングは、活性が減退し始める前に、50bp離れて増加され得る。
【0200】
適切なプロモーターの一例は、最初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列である。このプロモーター配列は、それに作用的に連結した任意のポリヌクレオチド配列の高いレベルの発現を駆動することが可能な強い構成的プロモーター配列である。適切なプロモーターの別の例は、伸長成長因子(Elongation Growth Factor)-1α(EF-1α)である。しかし、サルウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳癌ウイルス(MMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の長い末端反復(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン・バーウイルス最初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ならびに、これらに限定されないが、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘモグロビンプロモーターおよびクレアチンキナーゼプロモーターなどのヒト遺伝子プロモーターが含まれるがこれらに限定されない、他の構成的プロモーター配列もまた使用され得る。さらに、本発明は、構成的プロモーターの使用に限定されるべきではない。誘導性プロモーターもまた、本発明の一部として企図される。誘導性プロモーターの使用は、かかる発現が所望される場合には作用的に連結したポリヌクレオチド配列の発現のスイッチをオンにし、または発現が所望されない場合には発現のスイッチをオフにすることが可能な分子スイッチを提供する。誘導性プロモーターの例には、メタロチオネイン(metallothionine)プロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーターおよびテトラサイクリンプロモーターが含まれるがこれらに限定されない。
【0201】
さらに、本発明は、構成的プロモーターの使用に限定されるべきではない。誘導性プロモーターもまた、本発明の一部として企図される。誘導性プロモーターの使用は、かかる発現が所望される場合には作用的に連結したポリヌクレオチド配列の発現のスイッチをオンにし、または発現が所望されない場合には発現のスイッチをオフにすることが可能な分子スイッチを提供する。真核生物細胞における使用のための例示的な誘導性プロモーター系には、ホルモン調節されるエレメント(例えば、Mader, S.およびWhite, J. H.(1993年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90巻:5603~5607頁を参照のこと)、合成リガンド調節されるエレメント(例えば、Spencer, D. M.ら(1993年)Science 262巻:1019~1024頁を参照のこと)および電離放射線調節されるエレメント(例えば、Manome, Y.ら(1993年)Biochemistry 32巻:10607~10613頁;Datta, R.ら(1992年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89巻:1014~10153頁を参照のこと)が含まれるがこれらに限定されない。in vitroまたはin vivo哺乳動物系における使用のためのさらなる例示的な誘導性プロモーター系は、Gingrichら(1998年)Annual Rev. Neurosci 21巻:377~405頁に概説されている。
【0202】
本発明における使用のための例示的な誘導性プロモーター系は、Tet系である。かかる系は、Gossenら(1993年)によって記載されたTet系に基づく。例示的な実施形態では、目的のポリヌクレオチドは、1つまたは複数のTetオペレーター(TetO)部位を含むプロモーターの制御下にある。不活性状態では、Tetリプレッサー(TetR)がTetO部位に結合し、プロモーターからの転写を抑制する。活性状態では、例えば、テトラサイクリン(Tc)、アンヒドロテトラサイクリン、ドキシサイクリン(Dox)、またはそれらの活性アナログなどの誘導剤の存在下では、誘導剤は、TetOからのTetRの放出を引き起こし、それによって、転写が起こるのを可能にする。ドキシサイクリンは、1-ジメチルアミノ-2,4a,5,7,12-ペンタヒドロキシ-11-メチル-4,6-ジオキソ-1,4a,11,11a,12,12a-ヘキサヒドロテトラセン-3-カルボキサミドの化学名を有する、テトラサイクリンファミリーの抗生物質のメンバーである。
【0203】
一実施形態では、TetRは、哺乳動物細胞、例えば、マウスまたはヒト細胞における発現のために、コドン最適化される。ほとんどのアミノ酸は、遺伝コードの縮重に起因して1つよりも多いコドンによってコードされ、核酸によってコードされるアミノ酸配列におけるいずれの変更も伴わずに、所与の核酸のヌクレオチド配列におけるかなりのバリエーションを可能にする。しかし、多くの生物が、「コドンバイアス」(即ち、所与のアミノ酸についての特定のコドン(複数可)の使用へのバイアス)としても公知の、コドン使用法における差異を示す。コドンバイアスは、mRNA翻訳の効率を次に増加させる、特定のコドンのためのtRNAの優勢な種の存在と相関する場合が多い。したがって、特定の生物(例えば、原核生物)に由来するコード配列は、コドン最適化を介して、異なる生物(例えば、真核生物)における改善された発現のために調整され得る。
【0204】
Tet系の他の特定のバリエーションには、以下の「Tet-Off」および「Tet-On」系が含まれる。Tet-Off系では、転写は、TcまたはDoxの存在下では不活性である。その系では、単純ヘルペスウイルス由来のVP16の強いトランス活性化性ドメインに融合したTetRから構成される、テトラサイクリン制御性トランス活性化因子タンパク質(tTA)が、テトラサイクリン応答性プロモーターエレメント(TRE)の転写制御下にある標的核酸の発現を調節する。TREは、プロモーター(一般に、ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)最初期プロモーターに由来するミニマルプロモーター配列)に融合したTetO配列コンカテマーから構成される。TcまたはDoxの非存在下では、tTAはTREに結合し、標的遺伝子の転写を活性化する。TcまたはDoxの存在下では、tTAは、TREに結合できず、標的遺伝子からの発現は不活性なままである。
【0205】
逆に、Tet-On系では、転写は、TcまたはDoxの存在下で活性である。Tet-On系は、逆テトラサイクリン制御性トランス活性化因子、rtTAに基づく。tTAと同様、rtTAは、TetRリプレッサーおよびVP16トランス活性化ドメインから構成される融合タンパク質である。しかし、TetR DNA結合部分における4アミノ酸の変化が、Doxの存在下で標的導入遺伝子のTRE中のtetO配列のみを認識できるように、rtTAの結合特徴を変更させる。したがって、Tet-On系では、TRE調節される標的遺伝子の転写は、Doxの存在下でのみrtTAによって刺激される。
【0206】
別の誘導性プロモーター系は、E.coli由来のlacリプレッサー系である(Brownら、Cell 49巻:603~612頁(1987年)を参照のこと)。lacリプレッサー系は、lacオペレーター(lacO)を含むプロモーターに作動可能に連結した目的のポリヌクレオチドの転写を調節することによって機能する。lacリプレッサー(lacR)は、LacOに結合し、そうして、目的のポリヌクレオチドの転写を防止する。目的のポリヌクレオチドの発現は、適切な誘導剤、例えば、イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)によって誘導される。
【0207】
ポリペプチドまたはその一部分の発現を評価するために、細胞中に導入される発現ベクターは、ウイルスベクターを介してトランスフェクトまたは感染されることが求められる細胞の集団からの発現細胞の同定および選択を促進するために、選択可能なマーカー遺伝子もしくはレポーター遺伝子のいずれかまたはそれら両方もまた含み得る。他の態様では、選択可能なマーカーは、DNAの別々の小片上に保有され得、共トランスフェクション手順において使用され得る。選択可能なマーカーおよびレポーター遺伝子の両方には、宿主細胞における発現を可能にする適切な調節配列が隣接し得る。有用な選択可能なマーカーには、例えば、抗生物質耐性遺伝子、例えばneoなどが含まれる。
【0208】
レポーター遺伝子は、潜在的にトランスフェクトされた細胞を同定するため、および調節配列の機能性を評価するために使用される。一般に、レポーター遺伝子は、レシピエント生物または組織中に存在することもそれらによって発現されることもなく、ある容易に検出可能な特性、例えば、酵素活性によってその発現が明らかにされるポリペプチドをコードする、遺伝子である。レポーター遺伝子の発現は、DNAがレシピエント細胞中に導入された後の適切な時点でアッセイされる。適切なレポーター遺伝子には、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌型アルカリホスファターゼまたは緑色蛍光タンパク質遺伝子をコードする遺伝子が含まれ得る(例えば、Ui-Telら、2000年 FEBS Letters 479巻:79~82頁)。適切な発現系は、周知であり、公知の技術を使用して調製され得るまたは商業的に取得され得る。一般に、レポーター遺伝子の最も高いレベルの発現を示す最小の5’隣接領域を有する構築物が、プロモーターとして同定される。かかるプロモーター領域は、レポーター遺伝子に連結され得、プロモーター駆動性の転写をモジュレートする能力について薬剤を評価するために使用され得る。
【0209】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるabTCRのいずれかにしたがうabTCRをコードする核酸が提供される。一部の実施形態では、abTCRをコードする核酸は、abTCRの第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸配列およびabTCRの第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸配列を含む。一部の実施形態では、第1の核酸配列は、第1のベクター上に位置し、第2の核酸配列は、第2のベクター上に位置する。一部の実施形態では、第1および第2の核酸配列は、同じベクター上に位置する。ベクターは、例えば、哺乳動物発現ベクターおよびウイルスベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルスおよびレンチウイルスに由来するもの)からなる群から選択され得る。一部の実施形態では、第1の核酸配列は、第1のプロモーターの制御下にあり、第2の核酸配列は、第2のプロモーターの制御下にある。一部の実施形態では、第1および第2のプロモーターは、同じ配列を有する。一部の実施形態では、第1および第2のプロモーターは、異なる配列を有する。一部の実施形態では、第1および第2の核酸配列は、マルチシストロン性(例えば、バイシストロン性)ベクター中の単一のプロモーターの制御下で、単一の転写物として発現される。例えば、Kim, JHら、PLoS One 6巻(4号):e18556頁、2011年を参照のこと。一部の実施形態では、第1、第2および/または単一のプロモーターは、誘導性である。一部の実施形態では、第1の核酸配列は、宿主細胞(例えば、T細胞)における第2の核酸配列の発現レベルとほぼ同じである、宿主細胞における発現レベルを有する。一部の実施形態では、第1の核酸配列は、宿主細胞(例えば、T細胞)における第2の核酸配列の発現レベルの少なくとも約2(例えば、少なくとも約2、3、4、5またはそれよりも多くのいずれか)倍である、宿主細胞における発現レベルを有する。一部の実施形態では、第1の核酸配列は、宿主細胞(例えば、T細胞)における第2の核酸配列の発現レベルの約1/2倍以下(例えば、約1/2、1/3、1/4、1/5またはそれ未満のいずれか以下)である、宿主細胞における発現レベルを有する。発現は、mRNAレベルまたはタンパク質レベルで決定され得る。mRNA発現のレベルは、ノーザンブロッティング、定量的RT-PCR、マイクロアレイ分析などを含む、種々の周知の方法を使用して、核酸から転写されたmRNAの量を測定することによって決定され得る。タンパク質発現のレベルは、免疫細胞化学的染色、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウエスタンブロット分析、発光アッセイ、質量分析、高速液体クロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析などを含む公知の方法によって測定され得る。
【0210】
したがって、一部の実施形態では、本明細書に記載されるabTCRのいずれかにしたがうabTCRをコードする核酸であって、a)abTCRの第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸配列、およびb)abTCRの第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸配列を含み、第1の核酸配列が、第1のベクター(例えば、レンチウイルスベクター)上に位置し、第1のプロモーターに作動可能に連結し、第2の核酸配列が、第2のベクター(例えば、レンチウイルスベクター)上に位置し、第2のプロモーターに作動可能に連結する、核酸が提供される。一部の実施形態では、第1および第2のプロモーターは、同じ配列を有する。一部の実施形態では、第1および第2のプロモーターは、異なる配列を有する。一部の実施形態では、第1および/または第2のプロモーターは、誘導性である。一部の実施形態では、第1の核酸配列は、宿主細胞(例えば、T細胞)における第2の核酸配列の発現レベルとほぼ同じである、宿主細胞における発現レベルを有する。一部の実施形態では、第1の核酸配列は、宿主細胞(例えば、T細胞)における第2の核酸配列の発現レベルの少なくとも約2(例えば、少なくとも約2、3、4、5またはそれよりも多くのいずれか)倍である、宿主細胞における発現レベルを有する。一部の実施形態では、第1の核酸配列は、宿主細胞(例えば、T細胞)における第2の核酸配列の発現レベルの約1/2倍以下(例えば、約1/2、1/3、1/4、1/5またはそれ未満のいずれか以下)である、宿主細胞における発現レベルを有する。一部の実施形態では、第1および/または第2のベクターは、ウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクター)である。
【0211】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるabTCRのいずれかにしたがうabTCRをコードする核酸を含むベクター(例えば、レンチウイルスベクター)であって、a)abTCRの第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸配列に作動可能に連結した第1のプロモーター;およびb)abTCRの第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸配列に作動可能に連結した第2のプロモーターを含む、ベクターが提供される。一部の実施形態では、第1および第2のプロモーターは、同じ配列を有する。一部の実施形態では、第1および第2のプロモーターは、異なる配列を有する。一部の実施形態では、第1および/または第2のプロモーターは、誘導性である。一部の実施形態では、第1の核酸配列は、宿主細胞(例えば、T細胞)における第2の核酸配列の発現レベルとほぼ同じである、宿主細胞における発現レベルを有する。一部の実施形態では、第1の核酸配列は、宿主細胞(例えば、T細胞)における第2の核酸配列の発現レベルの少なくとも約2(例えば、少なくとも約2、3、4、5またはそれよりも多くのいずれか)倍である、宿主細胞における発現レベルを有する。一部の実施形態では、第1の核酸配列は、宿主細胞(例えば、T細胞)における第2の核酸配列の発現レベルの約1/2倍以下(例えば、約1/2、1/3、1/4、1/5またはそれ未満のいずれか以下)である、宿主細胞における発現レベルを有する。一部の実施形態では、ベクターは、ウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクター)である。
【0212】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるabTCRのいずれかにしたがうabTCRをコードする核酸を含むベクター(例えば、レンチウイルスベクター)であって、a)abTCRの第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸配列;およびb)abTCRの第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸配列を含み;第1および第2の核酸配列が、単一のプロモーターの制御下にある、ベクターが提供される。一部の実施形態では、プロモーターは、第1の核酸配列の5’末端に作動可能に連結し、第1の核酸配列の3’末端を第2の核酸配列の5’末端に連結する、内部リボソーム進入部位(IRES)、および自己切断性2Aペプチド(例えば、P2A、T2A、E2AまたはF2A)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リンカーが存在し、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、プロモーターの制御下で単一のRNAとして転写される。一部の実施形態では、プロモーターは、第2の核酸配列の5’末端に作動可能に連結し、第2の核酸配列の3’末端を第1の核酸配列の5’末端に連結する、内部リボソーム進入部位(IRES)、および自己切断性2Aペプチド(例えば、P2A、T2A、E2AまたはF2A)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リンカーが存在し、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、プロモーターの制御下で単一のRNAとして転写される。一部の実施形態では、プロモーターは、誘導性である。一部の実施形態では、ベクターは、ウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクター)である。
【0213】
遺伝子を細胞中に導入し発現させる方法は、当該分野で公知である。発現ベクターに関して、ベクターは、当該分野の任意の方法によって、宿主細胞、例えば、哺乳動物、細菌、酵母または昆虫の細胞中に容易に導入され得る。例えば、発現ベクターは、物理的、化学的または生物学的手段によって、宿主細胞中に移入され得る。
【0214】
ポリヌクレオチドを宿主細胞中に導入するための物理的方法には、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、微粒子銃、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどが含まれる。ベクターおよび/または外因性核酸を含む細胞を産生するための方法は、当該分野で周知である。例えば、Sambrookら(2001年、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New York)を参照のこと。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドの宿主細胞中への導入は、リン酸カルシウムトランスフェクションによって実施される。
【0215】
目的のポリヌクレオチドを宿主細胞中に導入するための生物学的方法には、DNAベクターおよびRNAベクターの使用が含まれる。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、哺乳動物、例えば、ヒト細胞中に遺伝子を挿入するための最も広く使用される方法になっている。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルス1、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスなどに由来し得る。例えば、米国特許第5,350,674号および同第5,585,362号を参照のこと。
【0216】
ポリヌクレオチドを宿主細胞中に導入するための化学的手段には、コロイド分散系、例えば、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、ならびに水中油エマルジョン、ミセル、混合ミセルおよびリポソームを含む脂質ベースの系が含まれる。in vitroおよびin vivoで送達ビヒクルとして使用するための例示的なコロイド系は、リポソーム(例えば、人工膜小胞)である。
【0217】
非ウイルス送達系が利用される場合、例示的な送達ビヒクルは、リポソームである。脂質製剤の使用が、核酸の宿主細胞中への導入(in vitro、ex vivoまたはin vivo)のために企図される。別の態様では、核酸は、脂質と会合し得る。脂質と会合した核酸は、リポソームの水性内部中に封入され得、リポソームの脂質二重層内に散在され得、リポソームおよびオリゴヌクレオチドの両方と結合する連結分子を介してリポソームに結合され得、リポソーム中に捕捉され得、リポソームと複合体形成され得、脂質を含む溶液中に分散され得、脂質と混合され得、脂質と組み合わされ得、脂質中に懸濁物として含まれ得、ミセルと共に含まれもしくはミセルと複合体形成され得、または脂質と他の方法で会合し得る。脂質、脂質/DNAまたは脂質/発現ベクター会合組成物は、溶液中の任意の特定の構造に限定されない。例えば、これら組成物は、二重層構造中に、ミセルとして、または「崩壊した」構造で、存在し得る。これらはまた、溶液中に単に散在して、サイズまたは形状が均一ではない凝集体をおそらくは形成し得る。脂質は、天然に存在する脂質または合成脂質であり得る脂肪性物質である。例えば、脂質には、細胞質中に天然に存在する脂肪滴、ならびに長鎖脂肪族炭化水素ならびにその誘導体、例えば、脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコールおよびアルデヒドを含む化合物のクラスが含まれる。
【0218】
外因性核酸を宿主細胞中に導入するためまたは細胞を本発明の阻害剤に他の方法で曝露させるために使用される方法に関わらず、宿主細胞中の組換えDNA配列の存在を確認するために、種々のアッセイが実施され得る。かかるアッセイには、例えば、サザンおよびノーザンブロッティング、RT-PCRおよびPCRなどの、当業者に周知の「分子生物学的」アッセイ;例えば、免疫学的手段(ELISAおよびウエスタンブロット)によるまたは本発明の範囲内に入る薬剤を同定するための本明細書に記載されるアッセイによる、特定のペプチドの存在または非存在を検出するなどの「生化学的」アッセイが含まれる。
【0219】
abTCRエフェクター細胞
一部の実施形態では、本明細書に記載されるabTCRのいずれかにしたがうabTCRをその表面上に提示するエフェクター細胞(例えば、T細胞)が提供される。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、abTCRをコードする核酸を含み、abTCRは核酸から発現され、エフェクター細胞表面に局在化される。一部の実施形態では、abTCRは、外因的に発現され、エフェクター細胞と組み合わされる。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、T細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、abTCRのTCRDが由来するTCRサブユニットを発現しない。例えば、一部の実施形態では、エフェクター細胞はαβT細胞であり、導入されたabTCRのTCRDは、TCRδおよびγ鎖に由来する配列を含み、またはT細胞はγδT細胞であり、導入されたabTCRのTCRDは、TCRαおよびβ鎖に由来する配列を含む。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、abTCRのTCRDが由来する内因性TCRサブユニットの一方または両方の発現を遮断するまたは減少させるように改変されている。例えば、一部の実施形態では、エフェクター細胞は、TCRαおよび/またはβ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているαβT細胞であり、導入されたabTCRのTCRDは、TCRαおよびβ鎖に由来する配列を含み、あるいはエフェクター細胞は、TCRγおよび/またはδ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているγδT細胞であり、導入されたabTCRのTCRDは、TCRγおよびδ鎖に由来する配列を含む。遺伝子発現を破壊するための細胞の改変には、例えば、RNA干渉(例えば、siRNA、shRNA、miRNA)、遺伝子編集(例えば、CRISPRベースまたはTALENベースの遺伝子ノックアウト)などを含む当該分野で公知の任意のかかる技術が含まれる。例えば、一部の実施形態では、本明細書に記載されるabTCRのいずれかにしたがうabTCRをコードする核酸を含むエフェクター細胞(例えば、T細胞)であって、abTCRが核酸から発現され、エフェクター細胞表面に局在化される、エフェクター細胞が提供される。一部の実施形態では、abTCRをコードする核酸は、abTCRの第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸配列およびabTCRの第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸配列を含む。一部の実施形態では、第1の核酸配列は、第1のベクター上に位置し、第2の核酸配列は、第2のベクター上に位置する。一部の実施形態では、第1および第2の核酸配列は、同じベクター上に位置する。ベクターは、例えば、哺乳動物発現ベクターおよびウイルスベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルスおよびレンチウイルスに由来するもの)からなる群から選択され得る。一部の実施形態では、ベクターのうち1つまたは複数は、エフェクター細胞の宿主ゲノム中に組み込まれる。一部の実施形態では、第1の核酸配列は、第1のプロモーターの制御下にあり、第2の核酸配列は、第2のプロモーターの制御下にある。一部の実施形態では、第1および第2のプロモーターは、同じ配列を有する。一部の実施形態では、第1および第2のプロモーターは、異なる配列を有する。一部の実施形態では、第1および第2の核酸は、単一のプロモーターの制御下にある。一部の実施形態では、第1、第2および/または単一のプロモーターは、誘導性である。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖の発現は、第2のポリペプチド鎖の発現とほぼ同じである。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖の発現は、第2のポリペプチド鎖の発現の少なくとも約2(例えば、少なくとも約2、3、4、5またはそれよりも多くのいずれか)倍である。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖の発現は、第2のポリペプチド鎖の発現の約1/2倍以下(例えば、約1/2、1/3、1/4、1/5またはそれ未満のいずれか以下)である。発現は、mRNAレベルまたはタンパク質レベルで決定され得る。mRNA発現のレベルは、ノーザンブロッティング、定量的RT-PCR、マイクロアレイ分析などを含む、種々の周知の方法を使用して、核酸から転写されたmRNAの量を測定することによって決定され得る。タンパク質発現のレベルは、免疫細胞化学的染色、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウエスタンブロット分析、発光アッセイ、質量分析、高速液体クロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析などを含む公知の方法によって測定され得る。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
【0220】
したがって、一部の実施形態では、本明細書に記載されるabTCRのいずれかにしたがうabTCRをその表面上に発現するabTCRエフェクター細胞(例えば、T細胞)であって、a)abTCRの第1のポリペプチド鎖をコードする核酸配列に作動可能に連結した第1のプロモーターを含む第1の核酸、およびb)abTCRの第2のポリペプチド鎖をコードする核酸配列に作動可能に連結した第2のプロモーターを含む第2の核酸、を含み、第1のポリペプチド鎖が第1の核酸から発現され、第2のポリペプチド鎖が第2の核酸から発現されて、abTCRを形成し、abTCRが、エフェクター細胞の表面に局在する、abTCRエフェクター細胞が提供される。一部の実施形態では、第1および第2のプロモーターは、同じ配列を有する。一部の実施形態では、第1および第2のプロモーターは、異なる配列を有する。一部の実施形態では、第1および/または第2のプロモーターは、誘導性である。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖の発現は、第2のポリペプチド鎖の発現とほぼ同じである。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖の発現は、第2のポリペプチド鎖の発現の少なくとも約2(例えば、少なくとも約2、3、4、5またはそれよりも多くのいずれか)倍である。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖の発現は、第2のポリペプチド鎖の発現の約1/2倍以下(例えば、約1/2、1/3、1/4、1/5またはそれ未満のいずれか以下)である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、abTCRのTCRDが由来するTCRサブユニットを発現しない。例えば、一部の実施形態では、エフェクター細胞はαβT細胞であり、導入されたabTCRのTCRDは、TCRδおよびγ鎖に由来する配列を含み、またはエフェクター細胞はγδT細胞であり、導入されたabTCRのTCRDは、TCRαおよびβ鎖に由来する配列を含む。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、abTCRのTCRDが由来する内因性TCRサブユニットの一方または両方の発現を遮断するまたは減少させるように改変されている。例えば、一部の実施形態では、エフェクター細胞は、TCRαおよび/またはβ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているαβT細胞であり、導入されたabTCRのTCRDは、TCRαおよびβ鎖に由来する配列を含み、あるいはエフェクター細胞は、TCRγおよび/またはδ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているγδT細胞であり、導入されたabTCRのTCRDは、TCRγおよびδ鎖に由来する配列を含む。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。一部の実施形態では、ベクターは、エフェクター細胞の宿主ゲノム中に組み込まれるウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクター)である。
【0221】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるabTCRのいずれかにしたがうabTCRをその表面上に発現するabTCRエフェクター細胞(例えば、T細胞)であって、a)abTCRの第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸配列に作動可能に連結した第1のプロモーターを含む第1のベクター、およびb)abTCRの第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸配列に作動可能に連結した第2のプロモーターを含む第2のベクター、を含み、第1のポリペプチド鎖が第1の核酸配列から発現され、第2のポリペプチド鎖が第2の核酸配列から発現されて、abTCRを形成し、abTCRが、エフェクター細胞の表面に局在する、abTCRエフェクター細胞が提供される。一部の実施形態では、第1および第2のプロモーターは、同じ配列を有する。一部の実施形態では、第1および第2のプロモーターは、異なる配列を有する。一部の実施形態では、第1および/または第2のプロモーターは、誘導性である。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖の発現は、第2のポリペプチド鎖の発現とほぼ同じである。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖の発現は、第2のポリペプチド鎖の発現の少なくとも約2(例えば、少なくとも約2、3、4、5またはそれよりも多くのいずれか)倍である。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖の発現は、第2のポリペプチド鎖の発現の約1/2倍以下(例えば、約1/2、1/3、1/4、1/5またはそれ未満のいずれか以下)である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、abTCRのTCRDが由来するTCRサブユニットを発現しない。例えば、一部の実施形態では、エフェクター細胞はαβT細胞であり、導入されたabTCRのTCRDは、TCRδおよびγ鎖に由来する配列を含み、またはエフェクター細胞はγδT細胞であり、導入されたabTCRのTCRDは、TCRαおよびβ鎖に由来する配列を含む。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、abTCRのTCRDが由来する内因性TCRサブユニットの一方または両方の発現を遮断するまたは減少させるように改変されている。例えば、一部の実施形態では、エフェクター細胞は、TCRαおよび/またはβ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているαβT細胞であり、導入されたabTCRのTCRDは、TCRαおよびβ鎖に由来する配列を含み、あるいはエフェクター細胞は、TCRγおよび/またはδ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているγδT細胞であり、導入されたabTCRのTCRDは、TCRγおよびδ鎖に由来する配列を含む。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。一部の実施形態では、第1および第2のベクターは、エフェクター細胞の宿主ゲノム中に組み込まれるウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクター)である。
【0222】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるabTCRのいずれかにしたがうabTCRをその表面上に発現するabTCRエフェクター細胞(例えば、T細胞)であって、a)abTCRの第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸配列に作動可能に連結した第1のプロモーター、およびb)abTCRの第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸配列に作動可能に連結した第2のプロモーターを含むベクターを含み、第1のポリペプチド鎖が第1の核酸配列から発現され、第2のポリペプチド鎖が第2の核酸配列から発現されて、abTCRを形成し、abTCRが、エフェクター細胞の表面に局在する、abTCRエフェクター細胞が提供される。一部の実施形態では、第1および第2のプロモーターは、同じ配列を有する。一部の実施形態では、第1および第2のプロモーターは、異なる配列を有する。一部の実施形態では、第1および/または第2のプロモーターは、誘導性である。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖の発現は、第2のポリペプチド鎖の発現とほぼ同じである。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖の発現は、第2のポリペプチド鎖の発現の少なくとも約2(例えば、少なくとも約2、3、4、5またはそれよりも多くのいずれか)倍である。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖の発現は、第2のポリペプチド鎖の発現の約1/2倍以下(例えば、約1/2、1/3、1/4、1/5またはそれ未満のいずれか以下)である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、abTCRのTCRDが由来するTCRサブユニットを発現しない。例えば、一部の実施形態では、エフェクター細胞はαβT細胞であり、導入されたabTCRのTCRDは、TCRδおよびγ鎖に由来する配列を含み、またはエフェクター細胞はγδT細胞であり、導入されたabTCRのTCRDは、TCRαおよびβ鎖に由来する配列を含む。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、abTCRのTCRDが由来する内因性TCRサブユニットの一方または両方の発現を遮断するまたは減少させるように改変されている。例えば、一部の実施形態では、エフェクター細胞は、TCRαおよび/またはβ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているαβT細胞であり、導入されたabTCRのTCRDは、TCRαおよびβ鎖に由来する配列を含み、あるいはエフェクター細胞は、TCRγおよび/またはδ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているγδT細胞であり、導入されたabTCRのTCRDは、TCRγおよびδ鎖に由来する配列を含む。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。一部の実施形態では、第1および第2のベクターは、エフェクター細胞の宿主ゲノム中に組み込まれるウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクター)である。
【0223】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるabTCRのいずれかにしたがうabTCRをその表面上に発現するabTCRエフェクター細胞(例えば、T細胞)であって、a)abTCRの第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸配列に作動可能に連結した第1のプロモーター、およびb)abTCRの第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸配列に作動可能に連結した第2のプロモーターを含む、宿主ゲノム組み込みされたレンチウイルスベクターを含み、第1のポリペプチド鎖が第1の核酸配列から発現され、第2のポリペプチド鎖が第2の核酸配列から発現されて、abTCRを形成し、abTCRが、エフェクター細胞の表面に局在する、abTCRエフェクター細胞が提供される。一部の実施形態では、第1および第2のプロモーターは、同じ配列を有する。一部の実施形態では、第1および第2のプロモーターは、異なる配列を有する。一部の実施形態では、第1および/または第2のプロモーターは、誘導性である。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖の発現は、第2のポリペプチド鎖の発現とほぼ同じである。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖の発現は、第2のポリペプチド鎖の発現の少なくとも約2(例えば、少なくとも約2、3、4、5またはそれよりも多くのいずれか)倍である。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖の発現は、第2のポリペプチド鎖の発現の約1/2倍以下(例えば、約1/2、1/3、1/4、1/5またはそれ未満のいずれか以下)である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、abTCRのTCRDが由来するTCRサブユニットを発現しない。例えば、一部の実施形態では、エフェクター細胞はαβT細胞であり、導入されたabTCRのTCRDは、TCRδおよびγ鎖に由来する配列を含み、またはエフェクター細胞はγδT細胞であり、導入されたabTCRのTCRDは、TCRαおよびβ鎖に由来する配列を含む。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、abTCRのTCRDが由来する内因性TCRサブユニットの一方または両方の発現を遮断するまたは減少させるように改変されている。例えば、一部の実施形態では、エフェクター細胞は、TCRαおよび/またはβ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているαβT細胞であり、導入されたabTCRのTCRDは、TCRαおよびβ鎖に由来する配列を含み、あるいはエフェクター細胞は、TCRγおよび/またはδ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているγδT細胞であり、導入されたabTCRのTCRDは、TCRγおよびδ鎖に由来する配列を含む。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、内因性TCR鎖の一方または両方の発現を遮断するまたは減少させるように改変されている。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
【0224】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるabTCRのいずれかにしたがうabTCRをその表面上に発現するabTCRエフェクター細胞(例えば、T細胞)であって、a)abTCRの第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸配列、およびb)abTCRの第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸配列を含むベクターを含み、第1および第2の核酸配列が、単一のプロモーターの制御下にあり、第1のポリペプチド鎖が第1の核酸配列から発現され、第2のポリペプチド鎖が第2の核酸配列から発現されて、abTCRを形成し、abTCRが、エフェクター細胞の表面に局在する、abTCRエフェクター細胞が提供される。一部の実施形態では、プロモーターは、第1の核酸配列の5’末端に作動可能に連結し、第1の核酸配列の3’末端を第2の核酸配列の5’末端に連結する、内部リボソーム進入部位(IRES)、および自己切断性2Aペプチド(例えば、P2A、T2A、E2AまたはF2A)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リンカーが存在し、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、プロモーターの制御下で単一のRNAとして転写される。一部の実施形態では、プロモーターは、第2の核酸配列の5’末端に作動可能に連結し、第2の核酸配列の3’末端を第1の核酸配列の5’末端に連結する、内部リボソーム進入部位(IRES)、および自己切断性2Aペプチド(例えば、P2A、T2A、E2AまたはF2A)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リンカーが存在し、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、プロモーターの制御下で単一のRNAとして転写される。一部の実施形態では、プロモーターは、誘導性である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、abTCRのTCRDが由来するTCRサブユニットを発現しない。例えば、一部の実施形態では、エフェクター細胞はαβT細胞であり、導入されたabTCRのTCRDは、TCRδおよびγ鎖に由来する配列を含み、またはエフェクター細胞はγδT細胞であり、導入されたabTCRのTCRDは、TCRαおよびβ鎖に由来する配列を含む。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、abTCRのTCRDが由来する内因性TCRサブユニットの一方または両方の発現を遮断するまたは減少させるように改変されている。例えば、一部の実施形態では、エフェクター細胞は、TCRαおよび/またはβ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているαβT細胞であり、導入されたabTCRのTCRDは、TCRαおよびβ鎖に由来する配列を含み、あるいはエフェクター細胞は、TCRγおよび/またはδ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているγδT細胞であり、導入されたabTCRのTCRDは、TCRγおよびδ鎖に由来する配列を含む。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。一部の実施形態では、ベクターは、エフェクター細胞の宿主ゲノム中に組み込まれるウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクター)である。
【0225】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるabTCRのいずれかにしたがうabTCRをその表面上に発現するabTCRエフェクター細胞(例えば、T細胞)であって、a)abTCRの第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸配列、およびb)abTCRの第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸配列を含む、宿主ゲノム組み込みされたレンチウイルスベクターを含み、第1および第2の核酸配列が、単一のプロモーターの制御下にあり、第1のポリペプチド鎖が第1の核酸配列から発現され、第2のポリペプチド鎖が第2の核酸配列から発現されて、abTCRを形成し、abTCRが、エフェクター細胞の表面に局在する、abTCRエフェクター細胞が提供される。一部の実施形態では、第1の核酸配列の5’末端に作動可能に連結したプロモーターが存在し、第1の核酸配列の3’末端を第2の核酸配列の5’末端に連結する、内部リボソーム進入部位(IRES)、および自己切断性2Aペプチド(例えば、P2A、T2A、E2AまたはF2A)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リンカーが存在し、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、プロモーターの制御下で単一のRNAとして転写される。一部の実施形態では、第2の核酸配列の5’末端に作動可能に連結したプロモーターが存在し、第2の核酸配列の3’末端を第1の核酸配列の5’末端に連結する、内部リボソーム進入部位(IRES)、および自己切断性2Aペプチド(例えば、P2A、T2A、E2AまたはF2A)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リンカーが存在し、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、プロモーターの制御下で単一のRNAとして転写される。一部の実施形態では、プロモーターは、誘導性である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、abTCRのTCRDが由来するTCRサブユニットを発現しない。例えば、一部の実施形態では、エフェクター細胞はαβT細胞であり、導入されたabTCRのTCRDは、TCRδおよびγ鎖に由来する配列を含み、またはエフェクター細胞はγδT細胞であり、導入されたabTCRのTCRDは、TCRαおよびβ鎖に由来する配列を含む。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、abTCRのTCRDが由来する内因性TCRサブユニットの一方または両方の発現を遮断するまたは減少させるように改変されている。例えば、一部の実施形態では、エフェクター細胞は、TCRαおよび/またはβ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているαβT細胞であり、導入されたabTCRのTCRDは、TCRαおよびβ鎖に由来する配列を含み、あるいはエフェクター細胞は、TCRγおよび/またはδ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているγδT細胞であり、導入されたabTCRのTCRDは、TCRγおよびδ鎖に由来する配列を含む。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
【0226】
一部の実施形態では、abTCRをその表面上に発現するabTCRエフェクター細胞(例えば、T細胞)であって、a)アミノ末端からカルボキシ末端の順に、第1の抗原結合ドメインと配列番号15のアミノ酸配列を含む第1のTCRDとを含む第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸配列;およびb)アミノ末端からカルボキシ末端の順に、第2の抗原結合ドメインと配列番号16のアミノ酸配列を含む第2のTCRDとを含む第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸配列、を含み;第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとが、標的抗原に特異的に結合するFab様抗原結合モジュールを形成し、第1のTCRDと第2のTCRDとが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なTCRMを形成する、abTCRエフェクター細胞が提供される。一部の実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、ヒト、ヒト化、キメラ、半合成または完全合成である。一部の実施形態では、abTCRは、a)配列番号70もしくは71のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)少なくとも1つのT細胞共刺激シグナル伝達配列;および/またはb)配列番号50~52のいずれか1つのアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)エピトープタグを含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、abTCRは、第1の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドおよび/または第2の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含み、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γεおよびζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能である。一部の実施形態では、TCRMは、abTCR-CD3複合体形成を促進する。一部の実施形態では、第1の核酸配列の5’末端に作動可能に連結したプロモーターが存在し、第1の核酸配列の3’末端を第2の核酸配列の5’末端に連結する、内部リボソーム進入部位(IRES)、および自己切断性2Aペプチド(例えば、P2A、T2A、E2AまたはF2A)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リンカーが存在し、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、プロモーターの制御下で単一のRNAとして転写される。一部の実施形態では、第2の核酸配列の5’末端に作動可能に連結したプロモーターが存在し、第2の核酸配列の3’末端を第1の核酸配列の5’末端に連結する、内部リボソーム進入部位(IRES)、および自己切断性2Aペプチド(例えば、P2A、T2A、E2AまたはF2A)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リンカーが存在し、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、プロモーターの制御下で単一のRNAとして転写される。一部の実施形態では、プロモーターは、誘導性である。一部の実施形態では、標的抗原は細胞表面抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、タンパク質、炭水化物および脂質からなる群から選択される。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、疾患関連抗原、例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、CD19である。一部の実施形態では、標的抗原は、表面提示されたペプチド/MHC複合体である。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、疾患関連抗原(例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原)に由来するペプチドとMHCタンパク質とを含む。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、ペプチドとMHCタンパク質とを含み、ペプチドは、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1およびPSAからなる群から選択されるタンパク質に由来する。一部の実施形態では、MHCタンパク質は、MHCクラスIタンパク質である。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Aである。一部の実施形態では、HLA-Aは、HLA-A02である。一部の実施形態では、HLA-A02は、HLA-A*02:01である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、γδT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、TCRαおよび/またはβ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているαβT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
【0227】
一部の実施形態では、abTCRをその表面上に発現するabTCRエフェクター細胞(例えば、T細胞)であって、a)アミノ末端からカルボキシ末端の順に、第1の抗原結合ドメインと配列番号17のアミノ酸配列を含む第1のTCRDとを含む第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸配列;およびb)アミノ末端からカルボキシ末端の順に、第2の抗原結合ドメインと配列番号18のアミノ酸配列を含む第2のTCRDとを含む第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸配列、を含み;第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとが、標的抗原に特異的に結合するFab様抗原結合モジュールを形成し、第1のTCRDと第2のTCRDとが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なTCRMを形成する、abTCRエフェクター細胞が提供される。一部の実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、ヒト、ヒト化、キメラ、半合成または完全合成である。一部の実施形態では、abTCRは、a)配列番号70もしくは71のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)少なくとも1つのT細胞共刺激シグナル伝達配列;および/またはb)配列番号50~52のいずれか1つのアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)エピトープタグを含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、abTCRは、第1の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドおよび/または第2の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含み、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γεおよびζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能である。一部の実施形態では、TCRMは、abTCR-CD3複合体形成を促進する。一部の実施形態では、第1の核酸配列の5’末端に作動可能に連結したプロモーターが存在し、第1の核酸配列の3’末端を第2の核酸配列の5’末端に連結する、内部リボソーム進入部位(IRES)、および自己切断性2Aペプチド(例えば、P2A、T2A、E2AまたはF2A)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リンカーが存在し、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、プロモーターの制御下で単一のRNAとして転写される。一部の実施形態では、第2の核酸配列の5’末端に作動可能に連結したプロモーターが存在し、第2の核酸配列の3’末端を第1の核酸配列の5’末端に連結する、内部リボソーム進入部位(IRES)、および自己切断性2Aペプチド(例えば、P2A、T2A、E2AまたはF2A)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リンカーが存在し、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、プロモーターの制御下で単一のRNAとして転写される。一部の実施形態では、プロモーターは、誘導性である。一部の実施形態では、標的抗原は細胞表面抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、タンパク質、炭水化物および脂質からなる群から選択される。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、疾患関連抗原、例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、CD19、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5DまたはFCRL5である。一部の実施形態では、標的抗原は、表面提示されたペプチド/MHC複合体である。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、疾患関連抗原(例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原)に由来するペプチドとMHCタンパク質とを含む。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、ペプチドとMHCタンパク質とを含み、ペプチドは、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1およびPSAからなる群から選択されるタンパク質に由来する。一部の実施形態では、MHCタンパク質は、MHCクラスIタンパク質である。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Aである。一部の実施形態では、HLA-Aは、HLA-A02である。一部の実施形態では、HLA-A02は、HLA-A*02:01である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、γδT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、TCRαおよび/またはβ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているαβT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
【0228】
一部の実施形態では、abTCRをその表面上に発現するabTCRエフェクター細胞(例えば、T細胞)であって、a)アミノ末端からカルボキシ末端の順に、第1の抗原結合ドメインと配列番号19のアミノ酸配列を含む第1のTCRDとを含む第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸配列;およびb)アミノ末端からカルボキシ末端の順に、第2の抗原結合ドメインと配列番号20のアミノ酸配列を含む第2のTCRDとを含む第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸配列、を含み;第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとが、標的抗原に特異的に結合するFab様抗原結合モジュールを形成し、第1のTCRDと第2のTCRDとが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なTCRMを形成する、abTCRエフェクター細胞が提供される。一部の実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、ヒト、ヒト化、キメラ、半合成または完全合成である。一部の実施形態では、abTCRは、a)配列番号70もしくは71のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)少なくとも1つのT細胞共刺激シグナル伝達配列;および/またはb)配列番号50~52のいずれか1つのアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)エピトープタグを含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、abTCRは、第1の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドおよび/または第2の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含み、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γεおよびζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能である。一部の実施形態では、TCRMは、abTCR-CD3複合体形成を促進する。一部の実施形態では、第1の核酸配列の5’末端に作動可能に連結したプロモーターが存在し、第1の核酸配列の3’末端を第2の核酸配列の5’末端に連結する、内部リボソーム進入部位(IRES)、および自己切断性2Aペプチド(例えば、P2A、T2A、E2AまたはF2A)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リンカーが存在し、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、プロモーターの制御下で単一のRNAとして転写される。一部の実施形態では、第2の核酸配列の5’末端に作動可能に連結したプロモーターが存在し、第2の核酸配列の3’末端を第1の核酸配列の5’末端に連結する、内部リボソーム進入部位(IRES)、および自己切断性2Aペプチド(例えば、P2A、T2A、E2AまたはF2A)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リンカーが存在し、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、プロモーターの制御下で単一のRNAとして転写される。一部の実施形態では、プロモーターは、誘導性である。一部の実施形態では、標的抗原は細胞表面抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、タンパク質、炭水化物および脂質からなる群から選択される。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、疾患関連抗原、例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、CD19、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5DまたはFCRL5である。一部の実施形態では、標的抗原は、表面提示されたペプチド/MHC複合体である。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、疾患関連抗原(例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原)に由来するペプチドとMHCタンパク質とを含む。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、ペプチドとMHCタンパク質とを含み、ペプチドは、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1およびPSAからなる群から選択されるタンパク質に由来する。一部の実施形態では、MHCタンパク質は、MHCクラスIタンパク質である。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Aである。一部の実施形態では、HLA-Aは、HLA-A02である。一部の実施形態では、HLA-A02は、HLA-A*02:01である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、αβT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、TCRγおよび/またはδ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているγδT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
【0229】
一部の実施形態では、abTCRをその表面上に発現するabTCRエフェクター細胞(例えば、T細胞)であって、a)アミノ末端からカルボキシ末端の順に、第1の抗原結合ドメインと配列番号21のアミノ酸配列を含む第1のTCRDとを含む第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸配列;およびb)アミノ末端からカルボキシ末端の順に、第2の抗原結合ドメインと配列番号22のアミノ酸配列を含む第2のTCRDとを含む第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸配列、を含み;第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとが、標的抗原に特異的に結合するFab様抗原結合モジュールを形成し、第1のTCRDと第2のTCRDとが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なTCRMを形成する、abTCRエフェクター細胞が提供される。一部の実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、ヒト、ヒト化、キメラ、半合成または完全合成である。一部の実施形態では、abTCRは、a)配列番号70もしくは71のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)少なくとも1つのT細胞共刺激シグナル伝達配列;および/またはb)配列番号50~52のいずれか1つのアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)エピトープタグを含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、abTCRは、第1の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドおよび/または第2の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含み、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γεおよびζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能である。一部の実施形態では、TCRMは、abTCR-CD3複合体形成を促進する。一部の実施形態では、第1の核酸配列の5’末端に作動可能に連結したプロモーターが存在し、第1の核酸配列の3’末端を第2の核酸配列の5’末端に連結する、内部リボソーム進入部位(IRES)、および自己切断性2Aペプチド(例えば、P2A、T2A、E2AまたはF2A)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リンカーが存在し、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、プロモーターの制御下で単一のRNAとして転写される。一部の実施形態では、第2の核酸配列の5’末端に作動可能に連結したプロモーターが存在し、第2の核酸配列の3’末端を第1の核酸配列の5’末端に連結する、内部リボソーム進入部位(IRES)、および自己切断性2Aペプチド(例えば、P2A、T2A、E2AまたはF2A)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リンカーが存在し、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、プロモーターの制御下で単一のRNAとして転写される。一部の実施形態では、プロモーターは、誘導性である。一部の実施形態では、標的抗原は細胞表面抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、タンパク質、炭水化物および脂質からなる群から選択される。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、疾患関連抗原、例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、CD19、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5DまたはFCRL5である。一部の実施形態では、標的抗原は、表面提示されたペプチド/MHC複合体である。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、疾患関連抗原(例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原)に由来するペプチドとMHCタンパク質とを含む。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、ペプチドとMHCタンパク質とを含み、ペプチドは、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1およびPSAからなる群から選択されるタンパク質に由来する。一部の実施形態では、MHCタンパク質は、MHCクラスIタンパク質である。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Aである。一部の実施形態では、HLA-Aは、HLA-A02である。一部の実施形態では、HLA-A02は、HLA-A*02:01である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、αβT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、TCRγおよび/またはδ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているγδT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
【0230】
一部の実施形態では、abTCRをその表面上に発現するabTCRエフェクター細胞(例えば、T細胞)であって、a)配列番号23のアミノ酸配列を含む第1のabTCRドメインを含むabTCRの第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸配列、およびb)配列番号24のアミノ酸配列を含む第2のabTCRドメインを含むabTCRの第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸配列、を含み、第1のポリペプチド鎖が第1の核酸配列から発現され、第2のポリペプチド鎖が第2の核酸配列から発現されて、abTCRを形成し、abTCRが、エフェクター細胞の表面に局在する、abTCRエフェクター細胞が提供される。一部の実施形態では、第1の核酸配列の5’末端に作動可能に連結したプロモーターが存在し、第1の核酸配列の3’末端を第2の核酸配列の5’末端に連結する、内部リボソーム進入部位(IRES)、および自己切断性2Aペプチド(例えば、P2A、T2A、E2AまたはF2A)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リンカーが存在し、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、プロモーターの制御下で単一のRNAとして転写される。一部の実施形態では、第2の核酸配列の5’末端に作動可能に連結したプロモーターが存在し、第2の核酸配列の3’末端を第1の核酸配列の5’末端に連結する、内部リボソーム進入部位(IRES)、および自己切断性2Aペプチド(例えば、P2A、T2A、E2AまたはF2A)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リンカーが存在し、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、プロモーターの制御下で単一のRNAとして転写される。一部の実施形態では、プロモーターは、誘導性である。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、エピトープタグは、配列番号50~52のアミノ酸配列のいずれか1つを含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、第1のabTCRドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドをさらに含み、および/または第2のポリペプチド鎖は、第2のabTCRドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、γδT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、TCRαおよび/またはβ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているαβT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
【0231】
一部の実施形態では、abTCRをその表面上に発現するabTCRエフェクター細胞(例えば、T細胞)であって、a)配列番号25のアミノ酸配列を含む第1のabTCRドメインを含むabTCRの第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸配列、およびb)配列番号26のアミノ酸配列を含む第2のabTCRドメインを含むabTCRの第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸配列、を含み、第1のポリペプチド鎖が第1の核酸配列から発現され、第2のポリペプチド鎖が第2の核酸配列から発現されて、abTCRを形成し、abTCRが、エフェクター細胞の表面に局在する、abTCRエフェクター細胞が提供される。一部の実施形態では、第1の核酸配列の5’末端に作動可能に連結したプロモーターが存在し、第1の核酸配列の3’末端を第2の核酸配列の5’末端に連結する、内部リボソーム進入部位(IRES)、および自己切断性2Aペプチド(例えば、P2A、T2A、E2AまたはF2A)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リンカーが存在し、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、プロモーターの制御下で単一のRNAとして転写される。一部の実施形態では、第2の核酸配列の5’末端に作動可能に連結したプロモーターが存在し、第2の核酸配列の3’末端を第1の核酸配列の5’末端に連結する、内部リボソーム進入部位(IRES)、および自己切断性2Aペプチド(例えば、P2A、T2A、E2AまたはF2A)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リンカーが存在し、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、プロモーターの制御下で単一のRNAとして転写される。一部の実施形態では、プロモーターは、誘導性である。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、エピトープタグは、配列番号50~52のアミノ酸配列のいずれか1つを含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、第1のabTCRドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドをさらに含み、および/または第2のポリペプチド鎖は、第2のabTCRドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、γδT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、TCRαおよび/またはβ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているαβT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
【0232】
一部の実施形態では、abTCRをその表面上に発現するabTCRエフェクター細胞(例えば、T細胞)であって、a)配列番号27のアミノ酸配列を含む第1のabTCRドメインを含むabTCRの第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸配列、およびb)配列番号28のアミノ酸配列を含む第2のabTCRドメインを含むabTCRの第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸配列、を含み、第1のポリペプチド鎖が第1の核酸配列から発現され、第2のポリペプチド鎖が第2の核酸配列から発現されて、abTCRを形成し、abTCRが、エフェクター細胞の表面に局在する、abTCRエフェクター細胞が提供される。一部の実施形態では、第1の核酸配列の5’末端に作動可能に連結したプロモーターが存在し、第1の核酸配列の3’末端を第2の核酸配列の5’末端に連結する、内部リボソーム進入部位(IRES)、および自己切断性2Aペプチド(例えば、P2A、T2A、E2AまたはF2A)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リンカーが存在し、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、プロモーターの制御下で単一のRNAとして転写される。一部の実施形態では、第2の核酸配列の5’末端に作動可能に連結したプロモーターが存在し、第2の核酸配列の3’末端を第1の核酸配列の5’末端に連結する、内部リボソーム進入部位(IRES)、および自己切断性2Aペプチド(例えば、P2A、T2A、E2AまたはF2A)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リンカーが存在し、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、プロモーターの制御下で単一のRNAとして転写される。一部の実施形態では、プロモーターは、誘導性である。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、エピトープタグは、配列番号50~52のアミノ酸配列のいずれか1つを含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、第1のabTCRドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドをさらに含み、および/または第2のポリペプチド鎖は、第2のabTCRドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、γδT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、TCRαおよび/またはβ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているαβT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
【0233】
一部の実施形態では、abTCRをその表面上に発現するabTCRエフェクター細胞(例えば、T細胞)であって、a)配列番号29のアミノ酸配列を含む第1のabTCRドメインを含むabTCRの第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸配列、およびb)配列番号30のアミノ酸配列を含む第2のabTCRドメインを含むabTCRの第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸配列、を含み、第1のポリペプチド鎖が第1の核酸配列から発現され、第2のポリペプチド鎖が第2の核酸配列から発現されて、abTCRを形成し、abTCRが、エフェクター細胞の表面に局在する、abTCRエフェクター細胞が提供される。一部の実施形態では、第1の核酸配列の5’末端に作動可能に連結したプロモーターが存在し、第1の核酸配列の3’末端を第2の核酸配列の5’末端に連結する、内部リボソーム進入部位(IRES)、および自己切断性2Aペプチド(例えば、P2A、T2A、E2AまたはF2A)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リンカーが存在し、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、プロモーターの制御下で単一のRNAとして転写される。一部の実施形態では、第2の核酸配列の5’末端に作動可能に連結したプロモーターが存在し、第2の核酸配列の3’末端を第1の核酸配列の5’末端に連結する、内部リボソーム進入部位(IRES)、および自己切断性2Aペプチド(例えば、P2A、T2A、E2AまたはF2A)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リンカーが存在し、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、プロモーターの制御下で単一のRNAとして転写される。一部の実施形態では、プロモーターは、誘導性である。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、エピトープタグは、配列番号50~52のアミノ酸配列のいずれか1つを含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、第1のabTCRドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドをさらに含み、および/または第2のポリペプチド鎖は、第2のabTCRドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、αβT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、TCRγおよび/またはδ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているγδT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
【0234】
一部の実施形態では、abTCRをその表面上に発現するabTCRエフェクター細胞(例えば、T細胞)であって、a)配列番号31のアミノ酸配列を含む第1のabTCRドメインを含むabTCRの第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸配列、およびb)配列番号32のアミノ酸配列を含む第2のabTCRドメインを含むabTCRの第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸配列、を含み、第1のポリペプチド鎖が第1の核酸配列から発現され、第2のポリペプチド鎖が第2の核酸配列から発現されて、abTCRを形成し、abTCRが、エフェクター細胞の表面に局在する、abTCRエフェクター細胞が提供される。一部の実施形態では、第1の核酸配列の5’末端に作動可能に連結したプロモーターが存在し、第1の核酸配列の3’末端を第2の核酸配列の5’末端に連結する、内部リボソーム進入部位(IRES)、および自己切断性2Aペプチド(例えば、P2A、T2A、E2AまたはF2A)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リンカーが存在し、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、プロモーターの制御下で単一のRNAとして転写される。一部の実施形態では、第2の核酸配列の5’末端に作動可能に連結したプロモーターが存在し、第2の核酸配列の3’末端を第1の核酸配列の5’末端に連結する、内部リボソーム進入部位(IRES)、および自己切断性2Aペプチド(例えば、P2A、T2A、E2AまたはF2A)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リンカーが存在し、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、プロモーターの制御下で単一のRNAとして転写される。一部の実施形態では、プロモーターは、誘導性である。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、エピトープタグは、配列番号50~52のアミノ酸配列のいずれか1つを含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、第1のabTCRドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドをさらに含み、および/または第2のポリペプチド鎖は、第2のabTCRドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、αβT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、TCRγおよび/またはδ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているγδT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
【0235】
一部の実施形態では、abTCRをその表面上に発現するabTCRエフェクター細胞(例えば、T細胞)であって、a)配列番号33のアミノ酸配列を含む第1のabTCRドメインを含むabTCRの第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸配列、およびb)配列番号34のアミノ酸配列を含む第2のabTCRドメインを含むabTCRの第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸配列、を含み、第1のポリペプチド鎖が第1の核酸配列から発現され、第2のポリペプチド鎖が第2の核酸配列から発現されて、abTCRを形成し、abTCRが、エフェクター細胞の表面に局在する、abTCRエフェクター細胞が提供される。一部の実施形態では、第1の核酸配列の5’末端に作動可能に連結したプロモーターが存在し、第1の核酸配列の3’末端を第2の核酸配列の5’末端に連結する、内部リボソーム進入部位(IRES)、および自己切断性2Aペプチド(例えば、P2A、T2A、E2AまたはF2A)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リンカーが存在し、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、プロモーターの制御下で単一のRNAとして転写される。一部の実施形態では、第2の核酸配列の5’末端に作動可能に連結したプロモーターが存在し、第2の核酸配列の3’末端を第1の核酸配列の5’末端に連結する、内部リボソーム進入部位(IRES)、および自己切断性2Aペプチド(例えば、P2A、T2A、E2AまたはF2A)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リンカーが存在し、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、プロモーターの制御下で単一のRNAとして転写される。一部の実施形態では、プロモーターは、誘導性である。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、エピトープタグは、配列番号50~52のアミノ酸配列のいずれか1つを含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、第1のabTCRドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドをさらに含み、および/または第2のポリペプチド鎖は、第2のabTCRドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、αβT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、TCRγおよび/またはδ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているγδT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
【0236】
一部の実施形態では、abTCRをその表面上に発現するabTCRエフェクター細胞(例えば、T細胞)であって、a)配列番号35のアミノ酸配列を含む第1のabTCRドメインを含むabTCRの第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸配列、およびb)配列番号36のアミノ酸配列を含む第2のabTCRドメインを含むabTCRの第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸配列、を含み、第1のポリペプチド鎖が第1の核酸配列から発現され、第2のポリペプチド鎖が第2の核酸配列から発現されて、abTCRを形成し、abTCRが、エフェクター細胞の表面に局在する、abTCRエフェクター細胞が提供される。一部の実施形態では、第1の核酸配列の5’末端に作動可能に連結したプロモーターが存在し、第1の核酸配列の3’末端を第2の核酸配列の5’末端に連結する、内部リボソーム進入部位(IRES)、および自己切断性2Aペプチド(例えば、P2A、T2A、E2AまたはF2A)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リンカーが存在し、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、プロモーターの制御下で単一のRNAとして転写される。一部の実施形態では、第2の核酸配列の5’末端に作動可能に連結したプロモーターが存在し、第2の核酸配列の3’末端を第1の核酸配列の5’末端に連結する、内部リボソーム進入部位(IRES)、および自己切断性2Aペプチド(例えば、P2A、T2A、E2AまたはF2A)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リンカーが存在し、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、プロモーターの制御下で単一のRNAとして転写される。一部の実施形態では、プロモーターは、誘導性である。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、エピトープタグは、配列番号50~52のアミノ酸配列のいずれか1つを含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、第1のabTCRドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドをさらに含み、および/または第2のポリペプチド鎖は、第2のabTCRドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、αβT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、TCRγおよび/またはδ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているγδT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
【0237】
一部の実施形態では、abTCRをその表面上に発現するabTCRエフェクター細胞(例えば、T細胞)であって、a)配列番号42のアミノ酸配列を含む第1のabTCRドメインを含むabTCRの第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸配列、およびb)配列番号43のアミノ酸配列を含む第2のabTCRドメインを含むabTCRの第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸配列、を含み、第1のポリペプチド鎖が第1の核酸配列から発現され、第2のポリペプチド鎖が第2の核酸配列から発現されて、abTCRを形成し、abTCRが、エフェクター細胞の表面に局在する、abTCRエフェクター細胞が提供される。一部の実施形態では、第1の核酸配列の5’末端に作動可能に連結したプロモーターが存在し、第1の核酸配列の3’末端を第2の核酸配列の5’末端に連結する、内部リボソーム進入部位(IRES)、および自己切断性2Aペプチド(例えば、P2A、T2A、E2AまたはF2A)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リンカーが存在し、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、プロモーターの制御下で単一のRNAとして転写される。一部の実施形態では、第2の核酸配列の5’末端に作動可能に連結したプロモーターが存在し、第2の核酸配列の3’末端を第1の核酸配列の5’末端に連結する、内部リボソーム進入部位(IRES)、および自己切断性2Aペプチド(例えば、P2A、T2A、E2AまたはF2A)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リンカーが存在し、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、プロモーターの制御下で単一のRNAとして転写される。一部の実施形態では、プロモーターは、誘導性である。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、エピトープタグは、配列番号50~52のアミノ酸配列のいずれか1つを含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、第1のabTCRドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドをさらに含み、および/または第2のポリペプチド鎖は、第2のabTCRドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、αβT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、TCRγおよび/またはδ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているγδT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
【0238】
一部の実施形態では、abTCRをその表面上に発現するabTCRエフェクター細胞(例えば、T細胞)であって、a)配列番号42のアミノ酸配列を含む第1のabTCRドメインを含むabTCRの第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸配列、およびb)配列番号54のアミノ酸配列を含む第2のabTCRドメインを含むabTCRの第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸配列、を含み、第1のポリペプチド鎖が第1の核酸配列から発現され、第2のポリペプチド鎖が第2の核酸配列から発現されて、abTCRを形成し、abTCRが、エフェクター細胞の表面に局在する、abTCRエフェクター細胞が提供される。一部の実施形態では、第1の核酸配列の5’末端に作動可能に連結したプロモーターが存在し、第1の核酸配列の3’末端を第2の核酸配列の5’末端に連結する、内部リボソーム進入部位(IRES)、および自己切断性2Aペプチド(例えば、P2A、T2A、E2AまたはF2A)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リンカーが存在し、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、プロモーターの制御下で単一のRNAとして転写される。一部の実施形態では、第2の核酸配列の5’末端に作動可能に連結したプロモーターが存在し、第2の核酸配列の3’末端を第1の核酸配列の5’末端に連結する、内部リボソーム進入部位(IRES)、および自己切断性2Aペプチド(例えば、P2A、T2A、E2AまたはF2A)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リンカーが存在し、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、プロモーターの制御下で単一のRNAとして転写される。一部の実施形態では、プロモーターは、誘導性である。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、エピトープタグは、配列番号50~52のアミノ酸配列のいずれか1つを含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、第1のabTCRドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドをさらに含み、および/または第2のポリペプチド鎖は、第2のabTCRドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、αβT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、TCRγおよび/またはδ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているγδT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
【0239】
一部の実施形態では、abTCRをその表面上に発現するabTCRエフェクター細胞(例えば、T細胞)であって、a)配列番号55のアミノ酸配列を含む第1のabTCRドメインを含むabTCRの第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸配列、およびb)配列番号54のアミノ酸配列を含む第2のabTCRドメインを含むabTCRの第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸配列、を含み、第1のポリペプチド鎖が第1の核酸配列から発現され、第2のポリペプチド鎖が第2の核酸配列から発現されて、abTCRを形成し、abTCRが、エフェクター細胞の表面に局在する、abTCRエフェクター細胞が提供される。一部の実施形態では、第1の核酸配列の5’末端に作動可能に連結したプロモーターが存在し、第1の核酸配列の3’末端を第2の核酸配列の5’末端に連結する、内部リボソーム進入部位(IRES)、および自己切断性2Aペプチド(例えば、P2A、T2A、E2AまたはF2A)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リンカーが存在し、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、プロモーターの制御下で単一のRNAとして転写される。一部の実施形態では、第2の核酸配列の5’末端に作動可能に連結したプロモーターが存在し、第2の核酸配列の3’末端を第1の核酸配列の5’末端に連結する、内部リボソーム進入部位(IRES)、および自己切断性2Aペプチド(例えば、P2A、T2A、E2AまたはF2A)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リンカーが存在し、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、プロモーターの制御下で単一のRNAとして転写される。一部の実施形態では、プロモーターは、誘導性である。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、エピトープタグは、配列番号50~52のアミノ酸配列のいずれか1つを含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、第1のabTCRドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドをさらに含み、および/または第2のポリペプチド鎖は、第2のabTCRドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、αβT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、TCRγおよび/またはδ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているγδT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
【0240】
一部の実施形態では、abTCRをその表面上に発現するabTCRエフェクター細胞(例えば、T細胞)であって、a)配列番号56のアミノ酸配列を含む第1のabTCRドメインを含むabTCRの第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸配列、およびb)配列番号54のアミノ酸配列を含む第2のabTCRドメインを含むabTCRの第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸配列、を含み、第1のポリペプチド鎖が第1の核酸配列から発現され、第2のポリペプチド鎖が第2の核酸配列から発現されて、abTCRを形成し、abTCRが、エフェクター細胞の表面に局在する、abTCRエフェクター細胞が提供される。一部の実施形態では、第1の核酸配列の5’末端に作動可能に連結したプロモーターが存在し、第1の核酸配列の3’末端を第2の核酸配列の5’末端に連結する、内部リボソーム進入部位(IRES)、および自己切断性2Aペプチド(例えば、P2A、T2A、E2AまたはF2A)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リンカーが存在し、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、プロモーターの制御下で単一のRNAとして転写される。一部の実施形態では、第2の核酸配列の5’末端に作動可能に連結したプロモーターが存在し、第2の核酸配列の3’末端を第1の核酸配列の5’末端に連結する、内部リボソーム進入部位(IRES)、および自己切断性2Aペプチド(例えば、P2A、T2A、E2AまたはF2A)をコードする核酸からなる群から選択される核酸リンカーが存在し、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、プロモーターの制御下で単一のRNAとして転写される。一部の実施形態では、プロモーターは、誘導性である。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、エピトープタグは、配列番号50~52のアミノ酸配列のいずれか1つを含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、第1のabTCRドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドをさらに含み、および/または第2のポリペプチド鎖は、第2のabTCRドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、αβT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、TCRγおよび/またはδ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているγδT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
【0241】
本明細書に記載される一部のかかる実施形態のいずれかでは、abTCRエフェクター細胞は、類似の条件下で比較した場合、対応するCARエフェクター細胞(例えば、abTCRの抗体部分を含むCAR、例えば、abTCRの抗体可変ドメインを構成するscFvを含むCARをその表面上に提示するエフェクター細胞)と比較して、より低い割合のキメラ受容体内在化を有する。例えば、一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞は、類似の条件下でのキメラ受容体エフェクター細胞の標的抗原依存的刺激後に、対応するCARエフェクター細胞と比較して、より低い割合のキメラ受容体内在化を有する。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞は、abTCRの標的抗原による刺激の約90分後に、約50%未満(例えば、これらの値の間の任意の範囲を含んで、約45、40、35、30、25、20、15、10または5%未満のいずれか)のabTCR内在化を有する。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞は、abTCR T細胞である。
【0242】
本明細書に記載される一部のかかる実施形態のいずれかでは、abTCRエフェクター細胞は、類似の条件下で比較した場合、対応するCARエフェクター細胞(例えば、abTCRの抗体部分を含むCARをその表面上に提示するエフェクター細胞)と比較して、より低い割合および/または発生率の疲弊を有する。エフェクター細胞の疲弊は、例えば、PD-1、TIM-3およびLAG-3を含むがこれに限定されない疲弊マーカーの発現レベルを測定することによって、当該分野で公知の任意の手段によって決定され得る。例えば、一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞は、類似の条件下でのキメラ受容体エフェクター細胞の標的抗原依存的刺激後に、対応するCARエフェクター細胞と比較して、より低い発現レベルの1つまたは複数の疲弊マーカー(例えば、PD-1、TIM-3またはLAG-3)を有する。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞は、類似の条件下でのキメラ受容体エフェクター細胞の標的抗原依存的刺激後に、対応するCARエフェクター細胞と比較して、1つまたは複数の疲弊マーカー(例えば、PD-1、TIM-3またはLAG-3)について陽性であることの、より低い発生率を有する。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞は、abTCRの標的抗原による刺激後に、1つまたは複数の疲弊マーカー(例えば、PD-1、TIM-3またはLAG-3)について陽性であることの、約50%未満(例えば、これらの値の間の任意の範囲を含んで、約45、40、35、30、25、20、15、10、5、4、3、2、1%未満のいずれか)の発生率を有する。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞は、abTCR T細胞である。発生率は、例えば、キメラ受容体エフェクター細胞の集団中の、疲弊マーカーについて陽性のキメラ受容体エフェクター細胞の百分率を定量することによって、当該分野で公知の任意の手段によって計算され得、疲弊マーカーについて陽性の細胞の百分率が発生率である。
【0243】
本明細書に記載される一部のかかる実施形態のいずれかでは、abTCRエフェクター細胞は、類似の条件下で比較した場合、対応するCARエフェクター細胞(例えば、abTCRの抗体部分を含むCARをその表面上に提示するエフェクター細胞)と比較して、より低い割合および/または発生率の最終分化を有する。最終分化は、例えば、CD28、CCR7およびグランザイムBを含むがこれに限定されない分化マーカーの発現レベルを測定することによって、当該分野で公知の任意の手段によって決定され得る。例えば、一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞は、類似の条件下の対応するCARエフェクター細胞と比較して、より低い発現レベルの1つまたは複数の最終分化マーカー(例えば、グランザイムB)および/あるいはより高い発現の1つまたは複数の非最終分化マーカー(例えば、CD28またはCCR7)を有する。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞は、類似の条件下の対応するCARエフェクター細胞と比較して、1つまたは複数の最終分化マーカー(例えば、グランザイムB)について陽性であることの、より低い発生率、および/あるいは1つまたは複数の非最終分化マーカー(例えば、CD28またはCCR7)について陽性であることの、より高い発生率を有する。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞は、abTCRの標的抗原による刺激後に、1つまたは複数の最終分化マーカー(例えば、グランザイムB)について陽性であることの、約50%未満(例えば、これらの値の間の任意の範囲を含んで、約45、40、35、30、25、20、15、10、5、4、3、2、1%未満のいずれか)の発生率、および/あるいは1つまたは複数の非最終分化マーカー(例えば、CD28またはCCR7)について陽性であることの、約10%よりも高い(例えば、これらの値の間の任意の範囲を含んで、約15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90または95%のいずれかよりも高い)発生率を有する。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞は、abTCR T細胞である。発生率は、例えば、キメラ受容体エフェクター細胞の集団中の、最終分化マーカーについて陽性のキメラ受容体エフェクター細胞の百分率を定量することによって、当該分野で公知の任意の手段によって計算され得、最終分化マーカーについて陽性の細胞の百分率が発生率である。
【0244】
本明細書に記載される一部のかかる実施形態のいずれかでは、abTCRエフェクター細胞は、類似の条件下で比較した場合、対応するCARエフェクター細胞(例えば、abTCRの抗体部分を含むCARをその表面上に提示するエフェクター細胞)と比較してより高い割合の増殖を有する。増殖は、例えば、色素希釈を測定することによって、当該分野で公知の任意の手段によって決定され得る。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞は、abTCR T細胞である。
【0245】
abTCRの調製
一部の実施形態では、本明細書に記載されるabTCRのいずれかによれば、抗体部分は、モノクローナル抗体由来の配列を含むFab様抗原結合モジュールである。一部の実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、モノクローナル抗体由来のVH、CH1、VLおよびCLドメインを含む。モノクローナル抗体は、例えば、KohlerおよびMilstein、Nature、256巻:495頁(1975年)ならびにSergeevaら、Blood、117巻(16号):4262~4272頁によって記載されるものなどのハイブリドーマ法を使用して調製され得る。
【0246】
ハイブリドーマ法では、ハムスター、マウスまたは他の適切な宿主動物が、典型的には、免疫剤に特異的に結合する抗体を産生するまたは産生することが可能なリンパ球を惹起するために、免疫剤で免疫される。あるいは、リンパ球は、in vitroで免疫され得る。免疫剤には、目的のタンパク質のポリペプチドもしくは融合タンパク質、または少なくとも2つの分子を含む複合体、例えば、ペプチドおよびMHCタンパク質を含む複合体が含まれ得る。一般に、ヒト起源の細胞が所望される場合、末梢血リンパ球(「PBL」)が使用され、または非ヒト哺乳動物供給源が所望される場合、脾臓細胞もしくはリンパ節細胞が使用される。次いで、リンパ球は、ハイブリドーマ細胞を形成するために、ポリエチレングリコールなどの適切な融合剤を使用して、不死化細胞株と融合される。例えば、Goding、Monoclonal Antibodies: Principles and Practice(New York: Academic Press、1986年)、59~103頁を参照のこと。不死化細胞株は通常、形質転換された哺乳動物細胞、特に、げっ歯類、ウシおよびヒト起源の骨髄腫細胞である。通常、ラットまたはマウス骨髄腫細胞株が使用される。ハイブリドーマ細胞は、未融合の不死化細胞の成長または生存を阻害する1または複数の物質を好ましくは含む、適切な培養培地中で培養され得る。例えば、親細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマ用の培養培地は、典型的には、HGPRT欠損細胞の成長を防止する、ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む(「HAT培地」)。
【0247】
一部の実施形態では、不死化細胞株は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベル発現を支持し、HAT培地などの培地に対して感受性である。一部の実施形態では、不死化細胞株は、例えば、Salk Institute Cell Distribution Center、San Diego、CaliforniaおよびAmerican Type Culture Collection、Manassas、Virginiaから取得され得る、マウス骨髄腫株である。ヒト骨髄腫およびマウス-ヒトヘテロ骨髄腫(heteromyeloma)細胞株もまた、ヒトモノクローナル抗体の産生について記載されている。Kozbor、J. Immunol.、133巻:3001頁(1984年);Brodeurら Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications(Marcel Dekker, Inc.: New York、1987年)51~63頁。
【0248】
次いで、ハイブリドーマ細胞が培養される培養培地は、ポリペプチドに対するモノクローナル抗体の存在についてアッセイされ得る。ハイブリドーマ細胞によって産生されたモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降によって、またはin vitro結合アッセイ、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)もしくは酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって決定され得る。かかる技術およびアッセイは、当該分野で公知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、MunsonおよびPollard、Anal. Biochem.、107巻:220頁(1980年)のスキャッチャード分析によって決定され得る。
【0249】
所望のハイブリドーマ細胞が同定された後、それらのクローンは、限界希釈手順によってサブクローニングされ得、標準的な方法によって成長され得る。Goding、上記。この目的のために適切な培養培地には、例えば、ダルベッコ改変イーグル培地およびRPMI-1640培地が含まれる。あるいは、ハイブリドーマ細胞は、哺乳動物において腹水としてin vivoで成長され得る。
【0250】
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、従来の免疫グロブリン精製手順、例えば、プロテインA-Sepharose、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析またはアフィニティクロマトグラフィーなどによって、培養培地または腹水から単離または精製され得る。
【0251】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるabTCRのいずれかによれば、抗体部分は、抗体部分ライブラリー(例えば、scFvまたはFab断片を提示するファージライブラリー)から選択されたクローン由来の配列を含むFab様抗原結合モジュールである。クローンは、所望の活性(単数または複数)を有する抗体断片についてコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって同定され得る。例えば、ファージディスプレイライブラリーを生成し、所望の結合特徴を有する抗体についてかかるライブラリーをスクリーニングするための種々の方法が、当該分野で公知である。かかる方法は、例えば、Hoogenboomら、Methods in Molecular Biology 178巻:1~37頁(O’Brienら編、Human Press、Totowa、N.J.、2001年)において概説され、例えば、McCaffertyら、Nature 348巻:552~554頁;Clacksonら、Nature 352巻:624~628頁(1991年);Marksら、J.Mol.Biol.222巻:581~597頁(1992年);MarksおよびBradbury、Methods in Molecular Biology 248巻:161~175頁(Lo編、Human Press、Totowa、N.J.、2003年);Sidhuら、J.Mol.Biol.338巻(2号):299~310頁(2004年);Leeら、J.Mol.Biol.340巻(5号):1073~1093頁(2004年);Fellouse、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101巻(34号):12467~12472頁(2004年);ならびにLeeら、J.Immunol.Methods 284巻(1~2号):119~132頁(2004年)においてさらに記載されている。
【0252】
ある特定のファージディスプレイ法では、Winterら、Ann. Rev. Immunol.、12巻:433~455頁(1994年)に記載されるように、VH遺伝子およびVL遺伝子のレパートリーが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって別々にクローニングされ、ファージライブラリー中にランダムに組み換えられ、これは次いで、抗原結合ファージについてスクリーニングされ得る。ファージは、典型的には、単鎖Fv(scFv)断片またはFab断片のいずれかとして、抗体断片をディスプレイする。免疫された供給源由来のライブラリーは、ハイブリドーマを構築する必要なしに、免疫原に対する高親和性抗体を提供する。あるいは、Griffithsら、EMBO J、12巻:725~734頁(1993年)によって記載されるように、いずれの免疫もなしに、広範な非自己抗原およびまた自己抗原に対する抗体の単一の供給源を提供するために、ナイーブレパートリーが、(例えば、ヒトから)クローニングされ得る。最後に、ナイーブライブラリーは、HoogenboomおよびWinter、J. Mol. Biol.、227巻:381~388頁(1992年)に記載されるように、高度に可変性のCDR3領域をコードし、in vitroで再構成を達成するために、再構成されていないV遺伝子セグメントを幹細胞からクローニングし、ランダム配列を含むPCRプライマーを使用することによって、合成によっても作製され得る。ヒト抗体ファージライブラリーを記載している特許公報には、例えば、米国特許第5,750,373号、ならびに米国特許公開第2005/0079574号、同第2005/0119455号、同第2005/0266000号、同第2007/0117126号、同第2007/0160598号、同第2007/0237764号、同第2007/0292936号および同第2009/0002360号が含まれる。
【0253】
Fab様抗原結合モジュールは、標的抗原(例えば、ペプチド/MHCクラスI/II複合体または細胞表面抗原)に対して特異的な抗体についてライブラリーをスクリーニングするためのファージディスプレイを使用して調製され得る。ライブラリーは、少なくとも1×109(例えば、少なくとも約1×109、2.5×109、5×109、7.5×109、1×1010、2.5×1010、5×1010、7.5×1010または1×1011のいずれか)の独特のヒト抗体断片の多様性を有するヒトscFvファージディスプレイライブラリーであり得る。一部の実施形態では、ライブラリーは、全てのヒト重鎖および軽鎖サブファミリーを包含する、健康なドナー由来のヒトPMBCおよび脾臓から抽出されたDNAから構築されるナイーブヒトライブラリーである。一部の実施形態では、ライブラリーは、種々の疾患を有する患者、例えば、自己免疫性疾患を有する患者、がん患者、および感染性疾患を有する患者から単離されたPBMCから抽出されたDNAから構築されるナイーブヒトライブラリーである。一部の実施形態では、ライブラリーは、重鎖CDR3が完全にランダム化され、(システインを除く)全てのアミノ酸が任意の所与の位置において等しく存在する可能性がある、半合成ヒトライブラリーである(例えば、Hoet, R.M.ら、Nat. Biotechnol. 23巻(3号):344~348頁、2005年を参照のこと)。一部の実施形態では、半合成ヒトライブラリーの重鎖CDR3は、約5~約24(例えば、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24のいずれか)アミノ酸の長さを有する。一部の実施形態では、ライブラリーは、完全合成ファージディスプレイライブラリーである。一部の実施形態では、ライブラリーは、非ヒトファージディスプレイライブラリーである。
【0254】
高い親和性で標的抗原に結合するファージクローンは、固体支持体(例えば、溶液パニングにはビーズ、または細胞パニングには哺乳動物細胞など)に結合した標的抗原へのファージの反復結合と、その後の、非結合ファージの除去および特異的に結合したファージの溶出とによって選択され得る。溶液パニングの一例では、標的抗原は、固体支持体への固定化のためにビオチン化され得る。ビオチン化標的抗原は、ファージライブラリーおよび固体支持体、例えば、ストレプトアビジンとコンジュゲートしたDynabeads M-280と混合され、次いで、標的抗原-ファージ-ビーズ複合体が単離される。次いで、結合したファージクローンが溶出され、発現および精製のために、E.coli XL1-Blueなどの適切な宿主細胞を感染させるために使用される。細胞パニングの一例では、AFPペプチドを負荷したT2細胞(TAP欠損、HLA-A*02:01+リンパ芽球細胞株)が、ファージライブラリーと混合され、その後、細胞が収集され、結合したクローンが溶出され、発現および精製のために適切な宿主細胞を感染させるために使用される。パニングは、標的抗原に特異的に結合するファージクローンについて富化するために、溶液パニング、細胞パニングまたは両方の組合せのいずれかを用いて複数(例えば、約2、3、4、5、6またはそれよりも多くのいずれか)ラウンド実施され得る。富化されたファージクローンは、例えばELISAおよびFACSを含む当該分野で公知の任意の方法によって、標的抗原への特異的結合について試験され得る。
【0255】
ヒトおよびヒト化抗体部分
abTCR抗体部分は、ヒトまたはヒト化であり得る。非ヒト(例えば、マウス)抗体部分のヒト化形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小の配列を典型的には含む、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはそれらの断片(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、または抗体の他の抗原結合サブ配列)である。ヒト化抗体部分には、レシピエントのCDR由来の残基が、所望の特異性、親和性および能力を有するマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基によって置き換えられた、ヒト免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはそれらの断片(レシピエント抗体)が含まれる。一部の場合には、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。ヒト化抗体部分は、レシピエント抗体部分中にも、インポートされたCDRまたはフレームワーク配列中にも見出されない残基もまた含み得る。一般に、ヒト化抗体部分は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み得、ここで、CDR領域の全てまたは実質的に全ては、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全てまたは実質的に全ては、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。例えば、Jonesら、Nature、321巻:522~525頁(1986年);Riechmannら、Nature、332巻:323~329頁(1988年);Presta、Curr. Op. Struct. Biol.、2巻:593~596頁(1992年)を参照のこと。
【0256】
一般に、ヒト化抗体部分は、非ヒトである供給源由来のものの中に導入された1つまたは複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、「インポート」残基と呼ばれる場合が多く、これらは典型的には、「インポート」可変ドメインから取られる。一部の実施形態によれば、ヒト化は、ヒト抗体部分の対応する配列をげっ歯類のCDRまたはCDR配列で置換することによって、Winterおよび共同研究者ら(Jonesら、Nature、321巻:522~525頁(1986年);Riechmannら、Nature、332巻:323~327頁(1988年);Verhoeyenら、Science、239巻:1534~1536頁(1988年))の方法に従って本質的に実施され得る。したがって、かかる「ヒト化」抗体部分は、実質的にインタクト未満のヒト可変ドメインが、非ヒト種由来の対応する配列によって置換されている、抗体部分である(米国特許第4,816,567号)。実際には、ヒト化抗体部分は、典型的には、一部のCDR残基およびおそらくは一部のFR残基が、げっ歯類抗体中の類似の部位由来の残基によって置換された、ヒト抗体部分である。
【0257】
ヒト化の代替法として、ヒト抗体部分が生成され得る。例えば、免疫の際に、内因性免疫グロブリン産生の非存在下でヒト抗体の完全レパートリーを産生することが可能なトランスジェニック動物(例えば、マウス)を産生することが現在可能である。例えば、キメラおよび生殖系列変異体マウスにおける抗体重鎖連結領域(JH)遺伝子のホモ接合性欠失が、内因性抗体産生の完全な阻害を生じることが記載されている。かかる生殖系列変異体マウス中へのヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子アレイの移入は、抗原チャレンジの際にヒト抗体の産生を生じる。例えば、Jakobovitsら、PNAS USA、90巻:2551頁(1993年);Jakobovitsら、Nature、362巻:255~258頁(1993年);Bruggemannら、Year in Immunol.、7巻:33頁(1993年);米国特許第5,545,806号、第5,569,825号、第5,591,669号;第5,545,807号;およびWO97/17852を参照のこと。あるいは、ヒト抗体は、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全に不活性化されたトランスジェニック動物、例えば、マウス中にヒト免疫グロブリン遺伝子座を導入することによって作製され得る。チャレンジの際に、遺伝子再構成、アセンブリおよび抗体レパートリーを含むあらゆる点において、ヒトにおいて見られたものと密接に類似したヒト抗体産生が観察される。このアプローチは、例えば、米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;および同第5,661,016号、ならびにMarksら、Bio/Technology、10巻:779~783頁(1992年);Lonbergら、Nature、368巻:856~859頁(1994年);Morrison、Nature、368巻:812~813頁(1994年);Fishwildら、Nature Biotechnology、14巻:845~851頁(1996年);Neuberger、Nature Biotechnology、14巻:826頁(1996年);LonbergおよびHuszar、Intern. Rev. Immunol.、13巻:65~93頁(1995年)中に記載されている。
【0258】
ヒト抗体はまた、in vitroで活性化されたB細胞(米国特許第5,567,610号および同第5,229,275号を参照のこと)によって、またはファージディスプレイライブラリーを含む当該分野で公知の種々の技術を使用することによって、生成され得る。HoogenboomおよびWinter、J. Mol. Biol.、227巻:381頁(1991年);Marksら、J. Mol. Biol.、222巻:581頁(1991年)。ColeらおよびBoernerらの技術は、ヒトモノクローナル抗体の調製のためにも利用可能である。Coleら、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R. Liss、77頁(1985年)およびBoernerら、J. Immunol.、147巻(1号):86~95頁(1991年)。
【0259】
バリアント
一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体のアミノ酸配列バリアントが企図される。例えば、抗体の結合親和性および/または他の生物学的特性を改善することが望まれ得る。抗体のアミノ酸配列バリアントは、抗体をコードするヌクレオチド配列中に適切な改変を導入することによって、またはペプチド合成によって調製され得る。かかる改変には、例えば、抗体のアミノ酸配列からの欠失、および/またはかかるアミノ酸配列中への挿入、および/またはかかるアミノ酸配列内の残基の置換が含まれる。最終構築物が所望の特徴、例えば、抗原結合を有することを条件として、欠失、挿入および置換の任意の組合せが、最終構築物に到達するために作製され得る。
【0260】
一部の実施形態では、1または複数のアミノ酸置換を有する抗体バリアントが提供される。置換変異誘発のための目的の部位には、HVRおよびFRが含まれる。アミノ酸置換は、目的の抗体中に導入され得、産物は、所望の活性、例えば、保持/改善された抗原結合、または減少した免疫原性について、スクリーニングされ得る。
【0261】
【0262】
アミノ酸は、共通する側鎖特性に従って異なるクラスへとグループ分けされ得る:
a.疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
b.中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
c.酸性:Asp、Glu;
d.塩基性:His、Lys、Arg;
e.鎖配向に影響を与える残基:Gly、Pro;
f.芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0263】
非保存的置換は、これらのクラスのうち1つのメンバーを別のクラスに交換することを伴う。
【0264】
例示的な置換バリアントは、例えば、ファージディスプレイベースの親和性成熟技術を使用して簡便に生成され得る親和性成熟抗体である。簡潔に述べると、1または複数のCDR残基が変異され、バリアント抗体部分がファージ上にディスプレイされ、特定の生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。変更(例えば、置換)は、例えば、抗体部分の親和性を改善するために、HVR中に作製され得る。かかる変更は、HVR「ホットスポット」、即ち、体細胞成熟プロセスの間に高頻度で変異を受けるコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury、Methods Mol. Biol. 207巻:179~196頁(2008年)を参照のこと)および/または特異性決定残基(SDR)中に作製され得、得られたバリアントVHまたはVLは、結合親和性について試験される。二次ライブラリーから構築および再選択することによる親和性成熟は、例えば、Hoogenboomら、Methods in Molecular Biology 178巻:1~37頁(O’Brienら編、Human Press、Totowa、NJ(2001年))に記載されている。
【0265】
親和性成熟の一部の実施形態では、多様性が、種々の方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャッフリングまたはオリゴヌクレオチド指向性変異誘発(oligonucleotide-directed mutagenesis))のいずれかによる成熟のために選択された可変遺伝子中に導入される。次いで、二次ライブラリーが作り出される。次いで、ライブラリーは、所望の親和性を有する任意の抗体部分のバリアントを同定するためにスクリーニングされる。多様性を導入するための別の方法には、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4~6残基)がランダム化されるHVR指向性アプローチが関与する。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異誘発またはモデル化を使用して、特異的に同定され得る。特に、CDR-H3およびCDR-L3が標的化される場合が多い。
【0266】
一部の実施形態では、置換、挿入または欠失が、かかる変更が抗原に結合する抗体部分の能力を実質的に低減させない限り、1または複数のHVR内に存在し得る。例えば、結合親和性を実質的に低減させない保存的変更(例えば、本明細書で提供される保存的置換)が、HVR中に作製され得る。かかる変更は、HVR「ホットスポット」またはSDRの外側にあり得る。上で提供されたバリアントVH配列およびVL配列の一部の実施形態では、各HVRのいずれかが変更されていない、または1、2もしくは3つ以下のアミノ酸置換を含む。
【0267】
変異誘発のために標的化され得る抗体の残基または領域の同定のために有用な方法は、CunninghamおよびWells(1989年)Science、244巻:1081~1085頁によって記載されるように、「アラニンスキャニング変異誘発」と呼ばれる。この方法では、標的残基(例えば、荷電残基、例えば、arg、asp、his、lysおよびglu)の1つの残基または群が同定され、抗体部分と抗原との相互作用が影響を受けるかどうかを決定するために、中性または負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)によって置き換えられる。さらなる置換が、初期の置換に対する機能的感受性を明らかに示すアミノ酸位置において導入され得る。あるいは、またはさらに、抗原-抗体部分の複合体の結晶構造が、抗体部分と抗原との間の接触点を同定するために決定され得る。かかる接触残基および隣接残基は、置換のための候補として標的化または排除され得る。バリアントは、それらが所望の特性を含むかどうかを決定するためにスクリーニングされ得る。
【0268】
アミノ酸配列挿入には、1残基から100またはそれより多くの残基を含むポリペプチドまでの長さの範囲のアミノ末端および/またはカルボキシル末端融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を有する抗体部分が含まれる。抗体部分の他の挿入バリアントには、酵素(例えば、ADEPTのため)または抗体部分の血清半減期を増加させるポリペプチドへの、抗体部分のNまたはC末端への融合が含まれる。
【0269】
誘導体
一部の実施形態では、本明細書に記載のabTCRのいずれかにしたがうabTCRは、当該分野で公知であり容易に入手可能なさらなる非タンパク質性部分を含むように、さらに改変され得る。abTCRの誘導体化に適切な部分には、水溶性ポリマーが含まれるがこれらに限定されない。水溶性ポリマーの非限定的な例には、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、およびデキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコール(propropylene glycol)ホモポリマー、ポリプロピレンオキシド(prolypropylene oxide)/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにそれらの混合物が含まれるがこれらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性に起因して、製造における利点を有し得る。ポリマーは、任意の分子量のものであり得、分岐鎖または非分岐鎖であり得る。abTCRに結合したポリマーの数は変動し得、1よりも多いポリマーが結合される場合、それらは同じまたは異なる分子であり得る。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数および/または型は、改善すべきabTCRの特定の特性または機能、abTCR誘導体が規定された条件下で治療に使用されるかどうかなどが含まれるがこれらに限定されない考慮事項に基づいて決定され得る。
【0270】
一部の実施形態では、abTCRと放射線への曝露によって選択的に加熱され得る非タンパク質性部分とのコンジュゲートが提供される。一部の実施形態では、非タンパク質性部分は、カーボンナノチューブである(Kamら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102巻:11600~11605頁(2005年))。放射線は、任意の波長のものであり得、これには、通常の細胞を害さないが、abTCR-非タンパク質性部分に対して近位の細胞が殺滅される温度まで非タンパク質性部分を加熱する波長が含まれるがこれに限定されない。
【0271】
abTCRエフェクター細胞の調製
本発明は、一態様では、abTCRを発現するエフェクター細胞(例えば、リンパ球、例えば、T細胞)を提供する。abTCRを発現するエフェクター細胞(例えば、T細胞)(abTCRエフェクター細胞、例えば、abTCR T細胞)を調製する例示的な方法は、本明細書で提供される。
【0272】
一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞(例えば、abTCR T細胞)は、標的抗原(例えば、疾患関連抗原)に特異的に結合するabTCR(例えば、本明細書に記載されるabTCRのいずれか)をコードする1つまたは複数の核酸(例えば、レンチウイルスベクターを含む)をエフェクター細胞中に導入することによって生成され得る。エフェクター細胞中への1つまたは複数の核酸の導入は、核酸について本明細書に記載されるものなどの、当該分野で公知の技術を使用して達成され得る。一部の実施形態では、本発明のabTCRエフェクター細胞(例えば、abTCR T細胞)は、in vivoで複製することができ、標的抗原の発現と関連する疾患(例えば、がんまたはウイルス感染症)の持続性の制御をもたらし得る長期持続を生じる。
【0273】
一部の実施形態では、本発明は、リンパ球注入を使用する、例えば、がんもしくはウイルス感染症を含む、標的抗原の発現と関連する疾患および/もしくは障害(本明細書で「標的抗原陽性」または「TA陽性」疾患または障害とも呼ぶ)を有するまたは疾患および/もしくは障害を発症するリスクがある患者の処置のために、本明細書に記載されるabTCRのいずれかにしたがう、標的抗原に特異的に結合するabTCRを発現する遺伝子改変されたT細胞を投与することに関する。一部の実施形態では、自家リンパ球注入が、処置において使用される。自家PBMCは、処置を必要とする患者から収集され、T細胞は、本明細書に記載されており、当該分野で公知の方法を使用して活性化および拡大増殖され、次いで、患者に注入して戻される。
【0274】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるabTCRのいずれかにしたがう、標的抗原に特異的に結合するabTCRを発現するT細胞(本明細書で「abTCR T細胞」とも呼ぶ)が提供される。本発明のabTCR T細胞は、ロバストなin vivo T細胞拡大増殖を受け得、血液および骨髄において延長された量の時間にわたって高いレベルで持続する標的抗原特異的メモリー細胞を確立できる。一部の実施形態では、患者に注入される本発明のabTCR T細胞は、標的抗原関連疾患を有する患者においてin vivoで、標的抗原提示細胞、例えば、標的抗原提示がんまたはウイルス感染細胞を排除できる。一部の実施形態では、患者に注入される本発明のabTCR T細胞は、少なくとも1つの従来の処置に対して難治性である標的抗原関連疾患を有する患者においてin vivoで、標的抗原提示細胞、例えば、標的抗原提示がんまたはウイルス感染細胞を排除できる。
【0275】
T細胞の拡大増殖および遺伝子改変の前に、T細胞の供給源が被験体から取得される。T細胞は、末梢血単核球、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染の部位由来の組織、腹水、胸水、脾臓組織および腫瘍を含むいくつかの供給源から取得され得る。本発明の一部の実施形態では、当該分野で利用可能ないくつものT細胞株が使用され得る。本発明の一部の実施形態では、T細胞は、Ficoll(商標)分離などの当業者に公知のいくつもの技術を使用して被験体から収集された血液の単位から取得され得る。一部の実施形態では、個体の循環血由来の細胞は、アフェレーシスによって取得される。アフェレーシス産物は、典型的には、T細胞を含むリンパ球、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球および血小板を含む。一部の実施形態では、アフェレーシスによって収集された細胞は、血漿画分を除去するため、および引き続く処理ステップに適切な緩衝液または培地中に細胞を配置するために、洗浄され得る。一部の実施形態では、細胞は、リン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄される。一部の実施形態では、洗浄溶液は、カルシウムを欠き、マグネシウムを欠き得る、または全てではないものの、多くの二価カチオンを欠き得る。当業者が容易に理解するように、洗浄ステップは、当業者に公知の方法によって、例えば、製造業者の指示に従って半自動化「フロースルー」遠心分離機(例えば、Cobe 2991細胞プロセッサー、Baxter CytoMateまたはHaemonetics Cell Saver 5)を使用することによって達成され得る。洗浄後、細胞は、種々の生体適合性緩衝液、例えば、無Ca2+、無Mg2+PBS、PlasmaLyte A、または緩衝剤ありもしくはなしの他の食塩水溶液中に再懸濁され得る。あるいは、アフェレーシス試料の望ましくない成分が除去され得、細胞が培養培地中に直接再懸濁され得る。
【0276】
一部の実施形態では、T細胞は、赤血球を溶解させ、例えば、PERCOLL(商標)勾配を介した遠心分離によって、または向流遠心分離溶出(counterflow centrifugal elutriation)によって単球を枯渇させることによって、末梢血リンパ球から単離される。T細胞の特定の下位集団、例えば、CD3+、CD28+、CD4+、CD8+、CD45RA+およびCD45RO+T細胞は、陽性または陰性選択技術によってさらに単離され得る。例えば、一部の実施形態では、T細胞は、所望のT細胞の陽性選択に十分な期間にわたる、抗CD3/抗CD28(即ち、3×28)結合体化ビーズ、例えば、DYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 Tとのインキュベーションによって単離される。一部の実施形態では、期間は、約30分間である。一部の実施形態では、期間は、30分間から36時間またはそれ超まで(これらの値のの間の全ての範囲を含む)である。一部の実施形態では、期間は、少なくとも1、2、3、4、5または6時間である。一部の実施形態では、期間は、10~24時間である。一部の実施形態では、インキュベーション期間は、24時間である。白血病を有する患者からのT細胞の単離のために、より長いインキュベーション時間、例えば24時間の使用が、細胞収量を増加させ得る。より長いインキュベーション時間は、他の細胞型と比較して少ないT細胞が存在する任意の状況において、例えば、腫瘍組織からまたは免疫無防備状態の個体から腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を単離することにおいて、T細胞を単離するために使用され得る。さらに、より長いインキュベーション時間の使用は、CD8+T細胞の捕捉の効率を増加させ得る。したがって、この時間を単純に短縮もしくは延長させることによって、T細胞は、CD3/CD28ビーズに結合するようになり、および/またはビーズ対T細胞の比率を増加もしくは減少させることによって、T細胞の下位集団は、培養開始の時点で、もしくはプロセスの間の他の時点で、有利にまたは不利に優先的に選択され得る。さらに、ビーズまたは他の表面上の抗CD3および/または抗CD28抗体の比率を増加または減少させることによって、T細胞の下位集団は、培養開始の時点で、または他の所望の時点で、有利にまたは不利に優先的に選択され得る。当業者は、複数ラウンドの選択もまた本発明との関連において使用され得ることを認識している。一部の実施形態では、活性化および拡大増殖プロセスにおいて、選択手順を実施し、「選択されていない」細胞を使用することが望まれ得る。「選択されていない」細胞はまた、さらなるラウンドの選択に供され得る。
【0277】
陰性選択によるT細胞集団の富化は、陰性選択された細胞に独自の表面マーカーに対する抗体の組合せを用いて達成され得る。1つの方法は、陰性選択される細胞上に存在する細胞表面マーカーに対するモノクローナル抗体のカクテルを使用する、負の磁気免疫付着(negative magnetic immunoadherence)もしくはフローサイトメトリーを介した細胞分取および/または選択である。例えば、陰性選択によってCD4+細胞を富化するために、モノクローナル抗体カクテルは、典型的には、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DRおよびCD8に対する抗体を含む。一部の実施形態では、CD4+、CD25+、CD62Lhi、GITR+およびFoxP3+を典型的には発現する調節性T細胞を富化または陽性選択することが望まれ得る。あるいは、一部の実施形態では、T調節細胞は、抗CD25結合体化ビーズまたは他の類似の選択方法によって枯渇される。
【0278】
陽性または陰性選択による細胞の所望の集団の単離のために、細胞の濃度および表面(例えば、ビーズなどの粒子)を変えることができる。一部の実施形態では、細胞とビーズとの最大の接触を確実にするために、ビーズおよび細胞が一緒に混合される体積を顕著に減少させる(即ち、細胞の濃度を増加させる)ことが望まれ得る。例えば、一部の実施形態では、約20億細胞/mlの濃度が使用される。一部の実施形態では、約10億細胞/mlの濃度が使用される。一部の実施形態では、約100百万細胞/ml超が使用される。一部の実施形態では、約10、15、20、25、30、35、40、45または50百万細胞/mlのいずれかの細胞の濃度が使用される。一部の実施形態では、約75、80、85、90、95または100百万細胞/mlのいずれかの細胞の濃度が使用される。一部の実施形態では、約125または約150百万細胞/mlの濃度が使用される。高い濃度を使用すると、増加した細胞収量、細胞活性化および細胞拡大増殖が生じ得る。さらに、高い細胞濃度の使用は、目的の標的抗原を弱く発現し得る細胞、例えばCD28陰性T細胞の、または多くの腫瘍細胞が存在する試料(即ち、白血病血液、腫瘍組織など)からの、より効率的な捕捉を可能にする。細胞のかかる集団は、治療的価値を有し得、取得が望まれる。例えば、高濃度の細胞を使用すると、通常はより弱いCD28発現を有するCD8+T細胞のより効率的な選択が可能になる。
【0279】
本発明の一部の実施形態では、T細胞は、処置後に患者から直接取得される。これに関して、ある特定のがん処置、特に、免疫系を損傷する薬物による処置の後、患者が処置から通常は回復している期間中の処置の直後に、取得されたT細胞の品質は、ex vivoで拡大増殖するそれらの能力について、最適であり得るまたは改善され得ることが観察されている。同様に、本明細書に記載された方法を使用するex vivo操作の後、これらの細胞は、増強された生着およびin vivo拡大増殖のための好ましい状態にあり得る。したがって、本発明との関連において、この回復期の間に、T細胞、樹状細胞、または造血系統の他の細胞を含む血液細胞を収集することが企図される。さらに、一部の実施形態では、動員(例えば、GM-CSFによる動員)および条件付けレジメンが、被験体において、特定の細胞型の再増殖、再循環、再生および/または拡大増殖が、特に、治療後の規定された時間ウインドウの間に好まれる状態を作り出すために使用され得る。例示的な細胞型には、T細胞、B細胞、樹状細胞、および免疫系の他の細胞が含まれる。
【0280】
望ましいabTCRを発現させるためのT細胞の遺伝子改変の前であれ後であれ、T細胞は、例えば、米国特許第6,352,694号;第6,534,055号;第6,905,680号;第6,692,964号;第5,858,358号;第6,887,466号;第6,905,681号;第7,144,575号;第7,067,318号;第7,172,869号;第7,232,566号;第7,175,843号;第5,883,223号;第6,905,874号;第6,797,514号;第6,867,041号;および米国特許出願公開第20060121005号に記載される方法を一般に使用して、活性化および拡大増殖され得る。
【0281】
一般に、本発明のT細胞は、それに結合したCD3/TCR複合体関連シグナルを刺激する薬剤およびT細胞の表面上の共刺激分子を刺激するリガンドを有する表面との接触によって拡大増殖される。特に、T細胞集団は、例えば、表面上に固定された抗CD3抗体もしくはその抗原結合断片、または抗CD2抗体との接触によって、あるいはカルシウムイオノフォアと併せたタンパク質キナーゼC活性化因子(例えば、ブリオスタチン)との接触によって、刺激され得る。T細胞の表面上のアクセサリ分子の共刺激のために、アクセサリ分子を結合するリガンドが使用される。例えば、T細胞の集団は、T細胞の増殖を刺激するのに適切な条件下で、抗CD3抗体および抗CD28抗体と接触させられ得る。CD4+T細胞またはCD8+T細胞のいずれかの増殖を刺激するために、抗CD3抗体および抗CD28抗体。抗CD28抗体の例には、9.3、B-T3、XR-CD28(Diaclone、Besanson、France)が含まれ、当該分野で一般に公知である他の方法と同様に使用され得る(can be used as can other methods commonly known in the art)(Bergら、Transplant Proc.30巻(8号):3975~3977頁、1998年;Haanenら、J.Exp.Med.190巻(9号):1319~1328頁、1999年;Garlandら、J.Immunol.Meth.227巻(1~2号):53~63頁、1999年)。
【0282】
本明細書に記載される任意のかかる実施形態の一部では、abTCRエフェクター細胞の調製は、abTCRエフェクター細胞の最小限の疲弊を生じるまたは疲弊を実質的に生じない。例えば、一部の実施形態では、調製は、約50%未満(例えば、約45、40、35、30、25、20、15、10または5%未満のいずれか)の、疲弊していくabTCRエフェクター細胞を生じる。エフェクター細胞の疲弊は、本明細書に記載される任意の手段を含む、当該分野で公知の任意の手段によって決定され得る。
【0283】
本明細書に記載される任意のかかる実施形態の一部では、abTCRエフェクター細胞の調製は、abTCRエフェクター細胞の最小限の最終分化を生じるまたは最終分化を実質的に生じない。例えば、一部の実施形態では、調製は、約50%未満(例えば、約45、40、35、30、25、20、15、10または5%未満のいずれか)の、最終分化していくabTCRエフェクター細胞を生じる。エフェクター細胞の分化は、本明細書に記載される任意の手段を含む、当該分野で公知の任意の手段によって決定され得る。
【0284】
本明細書に記載される任意のかかる実施形態の一部では、abTCRエフェクター細胞の調製は、abTCRエフェクター細胞上のabTCRの最小限の内在化を生じるまたは内在化を実質的に生じない。例えば、一部の実施形態では、調製は、約50%未満(例えば、約45、40、35、30、25、20、15、10または5%未満のいずれか)の、内在化されていくabTCRエフェクター細胞上のabTCRを生じる。abTCRエフェクター細胞上のabTCRの内在化は、本明細書に記載される任意の手段を含む、当該分野で公知の任意の手段によって決定され得る。
【0285】
遺伝子改変
一部の実施形態では、本発明のabTCRエフェクター細胞(例えば、abTCR T細胞)は、本明細書に記載されるabTCRをコードするウイルスベクターで、エフェクター細胞(例えば、本明細書に記載される方法によって調製されるT細胞)を形質導入することによって生成される。ウイルスベクター送達系には、エフェクター細胞への送達後にエピソームまたは組み込まれたゲノムのいずれかを有する、DNAおよびRNAウイルスが含まれる。遺伝子療法手順の概説については、Anderson、Science 256巻:808~813頁(1992年);NabelおよびFeigner、TIBTECH 11巻:211~217頁(1993年);MitaniおよびCaskey、TIBTECH 11巻:162~166頁(1993年);Dillon、TIBTECH 11巻:167~175頁(1993年);Miller、Nature 357巻:455~460頁(1992年);Van Brunt、Biotechnology 6巻(10号):1149~1154頁(1988年);Vigne、Restorative Neurology and Neuroscience 8巻:35~36頁(1995年);KremerおよびPerricaudet、British Medical Bulletin 51巻(l号):31~44頁(1995年);ならびにYuら、Gene Therapy 1巻:13~26頁(1994年)を参照のこと。一部の実施形態では、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターであり、abTCRエフェクター細胞は、abTCRエフェクター細胞ゲノム中に組み込まれたレンチウイルスベクターを含む。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞は、そのゲノム中に組み込まれたレンチウイルスベクターを含むabTCR T細胞である。
【0286】
一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞は、内因性TCR鎖の一方または両方の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているT細胞である。例えば、一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞は、TCRαおよび/またはβ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているαβT細胞であり、あるいはabTCRエフェクター細胞は、TCRγおよび/またはδ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているγδT細胞である。遺伝子発現を破壊するための細胞の改変には、例えば、RNA干渉(例えば、siRNA、shRNA、miRNA)、遺伝子編集(例えば、CRISPRベースまたはTALENベースの遺伝子ノックアウト)などを含む当該分野で公知の任意のかかる技術が含まれる。
【0287】
一部の実施形態では、T細胞の内因性TCR鎖の一方または両方の低減された発現を有するabTCR T細胞は、CRISPR/Cas系を使用して生成される。CRISPR/Cas系の遺伝子編集の概説については、例えば、Jian WおよびMarraffini LA、Annu. Rev. Microbiol. 69巻、2015年;Hsu PDら、Cell、157巻(6号):1262~1278頁、2014年;ならびにO'Connell MRら、Nature 516巻:263~266頁、2014年を参照のこと。一部の実施形態では、T細胞の内因性TCR鎖の一方または両方の低減された発現を有するabTCR T細胞は、TALENベースのゲノム編集を使用して生成される。
【0288】
富化
一部の実施形態では、本明細書に記載されるabTCRエフェクター細胞のいずれかにしたがうabTCRエフェクター細胞について不均一な細胞集団を富化する方法が提供される。
【0289】
標的抗原に特異的に結合するabTCRエフェクター細胞(例えば、abTCR T細胞)の特定の下位集団は、陽性選択技術によって富化され得る。例えば、一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞(例えば、abTCR T細胞)は、所望のabTCRエフェクター細胞の陽性選択に十分な期間にわたる、標的抗原コンジュゲートビーズとのインキュベーションによって富化される。一部の実施形態では、期間は約30分間である。一部の実施形態では、期間は、30分間から36時間またはそれより長くまでの範囲である(これらの値の間の全ての範囲を含む)。一部の実施形態では、期間は、少なくとも1、2、3、4、5または6時間である。一部の実施形態では、期間は、10~24時間である。一部の実施形態では、インキュベーション期間は、24時間である。不均一な細胞集団中に低レベルで存在するabTCRエフェクター細胞の単離のために、より長いインキュベーション時間、例えば、24時間の使用は、細胞収量を増加させ得る。より長いインキュベーション時間は、他の細胞型と比較して少ないabTCRエフェクター細胞が存在する任意の状況において、abTCRエフェクター細胞を単離するために使用され得る。当業者は、複数ラウンドの選択もまた、本発明との関連において使用され得ることを認識している。
【0290】
陽性選択によるabTCRエフェクター細胞の所望の集団の単離のために、細胞の濃度および表面(例えば、ビーズなどの粒子)を変えることができる。一部の実施形態では、細胞とビーズとの最大の接触を確実にするために、ビーズと細胞とが一緒に混合される体積を顕著に減少させる(即ち、細胞の濃度を増加させる)ことが望まれ得る。例えば、一部の実施形態では、約20億細胞/mlの濃度が使用される。一部の実施形態では、約10億細胞/mlの濃度が使用される。一部の実施形態では、約100百万細胞/mlよりも高くが使用される。一部の実施形態では、約10、15、20、25、30、35、40、45または50百万細胞/mlのいずれかの細胞の濃度が使用される。一部の実施形態では、約75、80、85、90、95または100百万細胞/mlのいずれかの細胞の濃度が使用される。一部の実施形態では、約125または約150百万細胞/mlの濃度が使用される。高い濃度を使用することは、増加した細胞収量、細胞活性化および細胞拡大増殖を生じ得る。さらに、高い細胞濃度の使用は、abTCRを弱く発現し得るabTCRエフェクター細胞のより効率的な捕捉を可能にする。
【0291】
本明細書に記載される任意のかかる実施形態の一部では、富化は、abTCRエフェクター細胞の最小限の疲弊を生じるまたは疲弊を実質的に生じない。例えば、一部の実施形態では、富化は、約50%未満(例えば、約45、40、35、30、25、20、15、10または5%未満のいずれか)の、疲弊していくabTCRエフェクター細胞を生じる。エフェクター細胞の疲弊は、本明細書に記載される任意の手段を含む、当該分野で公知の任意の手段によって決定され得る。
【0292】
本明細書に記載される任意のかかる実施形態の一部では、富化は、abTCRエフェクター細胞の最小限の最終分化を生じるまたは最終分化を実質的に生じない。例えば、一部の実施形態では、富化は、約50%未満(例えば、約45、40、35、30、25、20、15、10または5%未満のいずれか)の、最終分化していくabTCRエフェクター細胞を生じる。エフェクター細胞の分化は、本明細書に記載される任意の手段を含む、当該分野で公知の任意の手段によって決定され得る。
【0293】
本明細書に記載される任意のかかる実施形態の一部では、富化は、abTCRエフェクター細胞上のabTCRの最小限の内在化を生じるまたは内在化を実質的に生じない。例えば、一部の実施形態では、富化は、約50%未満(例えば、約45、40、35、30、25、20、15、10または5%未満のいずれか)の、内在化されていくabTCRエフェクター細胞上のabTCRを生じる。abTCRエフェクター細胞上のabTCRの内在化は、本明細書に記載される任意の手段を含む、当該分野で公知の任意の手段によって決定され得る。
【0294】
本明細書に記載される任意のかかる実施形態の一部では、富化は、abTCRエフェクター細胞の増加した増殖を生じる。例えば、一部の実施形態では、富化は、少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、1000%またはそれよりも多くのいずれか)の、富化後のabTCRエフェクター細胞の数における増加を生じる。
【0295】
したがって、一部の実施形態では、標的抗原に特異的に結合するabTCRを発現するabTCRエフェクター細胞について不均一な細胞集団を富化する方法であって、a)不均一な細胞集団を、標的抗原またはその中に含まれる1つもしくは複数のエピトープを含むリガンドと接触させて、リガンドに結合したabTCRエフェクター細胞を含む複合体を形成するステップ;およびb)不均一な細胞集団から複合体を分離し、それによって、abTCRエフェクター細胞について富化された細胞集団を生成するステップを含む方法が提供される。一部の実施形態では、リガンドは、固体支持体に固定化される。一部の実施形態では、固体支持体は、粒状物(例えば、ビーズ)である。一部の実施形態では、固体支持体は、表面(例えば、ウェルの底)である。一部の実施形態では、リガンドは、タグで標識される。一部の実施形態では、タグは、蛍光分子、親和性タグまたは磁性タグである。一部の実施形態では、方法は、リガンドからabTCRエフェクター細胞を溶出させるステップ、および溶出物を回収するステップをさらに含む。
【0296】
ライブラリースクリーニング
標的抗原に対して特異的な候補abTCR構築物を単離するために、abTCRライブラリー、例えば、複数のabTCRをコードする核酸のライブラリーを発現する細胞が、標的抗原またはその中に含まれる1つもしくは複数のエピトープを含むリガンドに曝露され、その後、リガンドに特異的に結合するライブラリーの親和性メンバーが単離され得る。一部の実施形態では、リガンドは、固体支持体上に固定化される。一部の実施形態では、支持体は、ビーズ、マイクロタイタープレート、イムノチューブ、またはかかる目的に有用な、当該分野で公知の任意の材料の表面であり得る。一部の実施形態では、タグ化されたリガンド標的(例えば、ビオチン化リガンド)に対する相互作用は、溶液中で起こる。一部の実施形態では、手順には、非特異的で非反応性のライブラリーメンバーを除去するための、1回または複数の洗浄するステップ(パニング)が含まれる。一部の実施形態では、溶液中の複合体を精製するために、それらは、固定化によってまたは遠心分離によって捕捉される。一部の実施形態では、親和性メンバーは、可溶性ビオチン化リガンド上で捕捉され、その後、ストレプトアビジンビーズ上に親和性複合体(親和性メンバーおよびリガンド)が固定化される。一部の実施形態では、固体支持体は、ビーズである。一部の実施形態では、ビーズには、例えば、磁性ビーズ(例えば、Bangs Laboratories、Polysciences inc.、Dynal Biotech、Miltenyi BiotechまたはQuantum Magneticから)、非磁性ビーズ(例えば、PierceおよびUpstate technology)、単分散ビーズ(例えば、Dynal BiotechおよびMicroparticle Gmbh)および多分散ビーズ(例えば、Chemagen)が含まれる。磁性ビーズの使用は、文献(Uhlen, Mら(1994年)、Advances in Biomagnetic Separation、BioTechniques press、Westborough、MA)中に徹底的に記載されている。一部の実施形態では、親和性メンバーは、陽性選択によって精製される。一部の実施形態では、親和性メンバーは、望ましくないライブラリーメンバーを除去するために、陰性選択によって精製される。一部の実施形態では、親和性メンバーは、陽性選択ステップおよび陰性選択ステップの両方によって精製される。
【0297】
一般に、ライブラリー構築物を調製するために使用される技術は、公知の遺伝子操作技術に基づく。これに関して、ライブラリー中の、発現されるabTCRをコードする核酸配列は、使用される発現系の型に適切な発現ベクター中に取り込まれる。CD3+細胞などの細胞におけるディスプレイでの使用に適切な発現ベクターは、当該分野で周知であり、記載されている。例えば、一部の実施形態では、発現ベクターは、ウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクターである。
【0298】
一部の実施形態では、本明細書に記載される実施形態のいずれか1つにしたがう複数のabTCRをコードする配列を含む、核酸ライブラリーが提供される。一部の実施形態では、核酸ライブラリーは、複数のabTCRをコードするウイルスベクターを含む。一部の実施形態では、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。
【0299】
一部の実施形態では、標的抗原に対して特異的なabTCRをコードする配列について、本明細書に記載される実施形態のいずれかにしたがう核酸ライブラリーをスクリーニングする方法であって、a)abTCRが複数の細胞の表面上で発現されるように、核酸ライブラリーを複数の細胞中に導入するステップ;b)複数の細胞を、標的抗原またはその中に含まれる1つもしくは複数のエピトープを含むリガンドと共にインキュベートするステップ;c)リガンドに結合した細胞を収集するステップ;およびd)ステップc)において収集した細胞から、abTCRをコードする配列を単離し、それによって、標的抗原に対して特異的なabTCRを同定するステップを含む方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、1回または複数の洗浄ステップをさらに含む。一部の実施形態では、1回または複数の洗浄ステップは、ステップb)とステップc)との間に実施される。一部の実施形態では、複数の細胞は、複数のCD3+細胞である。一部の実施形態では、リガンドは、固体支持体上に固定化される。一部の実施形態では、固体支持体は、ビーズである。一部の実施形態では、リガンドに結合した細胞を収集するステップは、固体支持体に結合したリガンドから細胞を溶出させること、および溶出物を収集することを含む。一部の実施形態では、リガンドは、タグで標識される。一部の実施形態では、タグは、蛍光分子、親和性タグまたは磁性タグである。一部の実施形態では、リガンドに結合した細胞を収集するステップは、細胞と標識されたリガンドとを含む複合体を単離することを含む。一部の実施形態では、細胞は、複合体から解離される。
【0300】
MHCタンパク質
MHCクラスIタンパク質は、主要組織適合複合体(MHC)分子の2つの主要なクラスのうちの一方であり(他方はMHCクラスIIである)、身体のほぼ全ての有核細胞上で見出される。それらの機能は、細胞内由来のタンパク質の断片をT細胞にディスプレイすることである;健康な細胞は無視されるが、外来タンパク質または変異したタンパク質を含む細胞は、免疫系によって攻撃される。MHCクラスIタンパク質は、細胞質ゾルタンパク質に由来するペプチドを提示するので、MHCクラスI提示の経路は、細胞質ゾル経路または内因性経路と呼ばれる場合が多い。クラスI MHC分子は、プロテアソームによる細胞質ゾルタンパク質の分解から主に生成されるペプチドを結合する。次いで、MHC I:ペプチド複合体は、細胞の原形質膜中に挿入される。ペプチドは、クラスI MHC分子の細胞外部分に結合される。したがって、クラスI MHCの機能は、細胞内タンパク質を細胞傷害性T細胞(CTL)にディスプレイすることである。しかし、クラスI MHCは、交差提示として公知のプロセスにおいて、外因性タンパク質から生成されたペプチドもまた提示できる。
【0301】
MHCクラスIタンパク質は、2つのポリペプチド鎖αおよびβ2-ミクログロブリン(β2M)からなる。2つの鎖は、β2Mとα3ドメインとの相互作用を介して非共有結合される。α鎖だけが多型であり、HLA遺伝子によってコードされるが、β2Mサブユニットは多型ではなく、β-2ミクログロブリン遺伝子によってコードされる。α3ドメインは、原形質膜貫通性であり、T細胞のCD8共受容体と相互作用する。α3-CD8相互作用は、MHC I分子を適所に維持するが、細胞傷害性T細胞の表面上のT細胞受容体(TCR)は、そのα1-α2ヘテロ二量体リガンドに結合し、カップリングされたペプチドを抗原性についてチェックする。α1およびα2ドメインは、ペプチドが結合する溝を形成するようにフォールディングする。MHCクラスIタンパク質は、8~10アミノ酸長のペプチドを結合する。
【0302】
MHCクラスII分子は、樹状細胞、単核食細胞、一部の内皮細胞、胸腺上皮細胞およびB細胞などの抗原提示細胞上でのみ通常見出される分子のファミリーである。クラスIIペプチドによって提示される抗原は、細胞外タンパク質(クラスIのように細胞質ゾルタンパク質であるわけではない)に由来する;したがって、MHCクラスII依存的経路の抗原提示は、エンドサイトーシス経路または外因性経路と呼ばれる。MHCクラスII分子の負荷は、食作用によって生じる;細胞外タンパク質は、エンドサイトーシスされ、リソソーム中で消化され、得られたエピトープ性ペプチド断片は、細胞表面へのそれらの移動の前にMHCクラスII分子上に負荷される。
【0303】
MHCクラスI分子と同様、クラスII分子もまたヘテロ二量体であるが、この場合、2つの同種のペプチド、αおよびβ鎖からなる。α1、α2などのサブ指定とは、HLA遺伝子内の別々のドメインを指す;各ドメインは通常、遺伝子内の異なるエクソンによってコードされ、一部の遺伝子は、リーダー配列、膜貫通配列などをコードするさらなるドメインを有する。MHCクラスII分子の抗原結合溝は、両方の末端において開放であるが、クラスI分子上の対応する溝は各末端において閉鎖されているので、MHCクラスII分子によって提示される抗原は、より長く、一般的には15アミノ酸残基長と24アミノ酸残基長との間である。
【0304】
ヒト白血球抗原(HLA)遺伝子は、MHC遺伝子のヒトバージョンである。ヒトにおける3つの主要なMHCクラスIタンパク質は、HLA-A、HLA-BおよびHLA-Cであり、3つのマイナーなMHCクラスIタンパク質は、HLA-E、HLA-FおよびHLA-Gである。ヒトにおける抗原提示に関与する3つの主要なMHCクラスIIタンパク質は、HLA-DP、HLDA-DQおよびHLA-DRであり、他のMHCクラスIIタンパク質、HLA-DMおよびHLA-DOは、抗原の内部プロセシングおよび負荷に関与する。HLA-Aは、ヒトにおいて、最も速く進化するコード配列を有する遺伝子の中にランクされる。2013年12月の時点で、1740個の活性タンパク質および117個のヌルタンパク質をコードする、2432個の公知のHLA-A対立遺伝子が存在した。HLA-A遺伝子は、第6染色体の短腕上に位置し、HLA-Aの構成要素であるより大きいα鎖をコードする。HLA-Aα鎖のバリエーションは、HLA機能のカギである。このバリエーションは、集団中の遺伝的多様性を促進する。各HLAは、ある特定の構造のペプチドに対して異なる親和性を有するので、より多くの種類のHLAは、細胞表面上に「提示」されるより多くの種類の抗原を意味し、集団のサブセットが任意の所与の外来侵入者に対して抵抗性である可能性を増強する。これは、単一の病原体がヒト集団全体を全滅させる能力を有する可能性を減少させる。各個体は、最大で2つの型のHLA-Aを発現でき、一方の型は、それらの両親の各々由来である。一部の個体は、両親から同じHLA-Aを受け継ぎ、それら個体のHLA多様性を減少させる;しかし、個体の大部分は、2つの異なるコピーのHLA-Aを受け取る。この同じパターンは、全てのHLA群にも当てはまる。言い換えると、1人のヒトは、2432個の公知のHLA-A対立遺伝子のうち1つまたは2つのいずれかだけを発現できる。
【0305】
全ての対立遺伝子は、4桁の分類、例えば、HLA-A*02:12を少なくとも与えられる。Aは、対立遺伝子が属するHLA遺伝子を示す。血清型による分類がカテゴリー化を単純化するように、多くのHLA-A対立遺伝子が存在する。桁の次の対は、この割り当てを示す。例えば、HLA-A*02:02、HLA-A*02:04およびHLA-A*02:324は全て、A2血清型のメンバーである(*02接頭辞によって指定される)。この群は、HLA適合性を担う主要な因子である。これの後ろの全ての数は、血清型決定によっては決定できず、遺伝子配列決定を介して指定される。2番目のセットの桁は、どのHLAタンパク質が産生されるかを示す。これらは、発見の順に割り当てられ、2013年12月の時点で、456個の異なるHLA-A02タンパク質が公知である(名称HLA-A*02:01~HLA-A*02:456が割り当てられている)。最も短い可能なHLA名は、これらの詳細の両方を含む。それを越えた各延長は、タンパク質を変化させてもさせなくてもよいヌクレオチド変化を示す。
【0306】
一部の実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、疾患関連抗原(例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原)に由来するペプチドとMHCクラスIタンパク質とを含む複合体に特異的に結合し、MHCクラスIタンパク質は、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-E、HLA-FまたはHLA-Gである。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-A、HLA-BまたはHLA-Cである。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Aである。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Bである。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Cである。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-A01、HLA-A02、HLA-A03、HLA-A09、HLA-A10、HLA-A11、HLA-A19、HLA-A23、HLA-A24、HLA-A25、HLA-A26、HLA-A28、HLA-A29、HLA-A30、HLA-A31、HLA-A32、HLA-A33、HLA-A34、HLA-A36、HLA-A43、HLA-A66、HLA-A68、HLA-A69、HLA-A74またはHLA-A80である。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-A02である。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-A*02:01~555のいずれか1つ、例えば、HLA-A*02:01、HLA-A*02:02、HLA-A*02:03、HLA-A*02:04、HLA-A*02:05、HLA-A*02:06、HLA-A*02:07、HLA-A*02:08、HLA-A*02:09、HLA-A*02:10、HLA-A*02:11、HLA-A*02:12、HLA-A*02:13、HLA-A*02:14、HLA-A*02:15、HLA-A*02:16、HLA-A*02:17、HLA-A*02:18、HLA-A*02:19、HLA-A*02:20、HLA-A*02:21、HLA-A*02:22またはHLA-A*02:24である。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-A*02:01である。HLA-A*02:01は、全ての白人の39~46%で発現され、したがって、本発明における使用のためのMHCクラスIタンパク質の適切な選択を示す。
【0307】
一部の実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、疾患関連抗原(例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原)に由来するペプチドとMHCクラスIIタンパク質とを含む複合体に特異的に結合し、MHCクラスIIタンパク質は、HLA-DP、HLA-DQまたはHLA-DRである。一部の実施形態では、MHCクラスIIタンパク質は、HLA-DPである。一部の実施形態では、MHCクラスIIタンパク質は、HLA-DQである。一部の実施形態では、MHCクラスIIタンパク質は、HLA-DRである。
【0308】
Fab様抗原結合モジュールを生成する際の使用に適切なペプチドは、例えば、当業者に公知のコンピューター予測モデルを使用して、HLA(例えば、HLA-A*02:01)結合モチーフ、ならびにプロテアソームおよび免疫プロテアソームの切断部位の存在に基づいて、決定され得る。MHC結合部位を予測するために、かかるモデルには、ProPred1(SinghおよびRaghava、ProPred: prediction of HLA-DR binding sites. BIOINFORMATICS 17巻(12号):1236~1237頁、2001年により詳細に記載されている)およびSYFPEITHI(Schulerら SYFPEITHI, Database for Searching and T-Cell Epitope Prediction.、Immunoinformatics Methods in Molecular Biology、409巻(1号):75~93頁、2007年を参照のこと)が含まれるがこれらに限定されない。
【0309】
適切なペプチドが同定されると、ペプチド合成が、当業者に周知のプロトコールに従って行われ得る。それらの比較的小さいサイズに起因して、本発明のペプチドは、従来のペプチド合成技術に従って、溶液中でまたは固体支持体上で直接合成され得る。種々の自動合成器が市販されており、公知のプロトコールに従って使用され得る。溶液相中でのペプチドの合成は、合成ペプチドの大規模産生のための十分確立された手順になっており、したがって、本発明のペプチドを調製するための適切な代替法である(例えば、John Morrow StewartおよびMartinら Application of Almez-mediated Amidation Reactions to Solution Phase Peptide Synthesis、Tetrahedron Letters 39巻、1517~1520頁、1998年によるSolid Phase Peptide Synthesisを参照のこと)。
【0310】
医薬組成物
本明細書に記載される実施形態のいずれかにしたがうabTCR、本明細書に記載される実施形態のいずれかにしたがうabTCRをコードする核酸、または本明細書に記載される実施形態のいずれかにしたがうabTCRエフェクター細胞を含む組成物(例えば、医薬組成物、本明細書で製剤とも呼ぶ)もまた本明細書で提供される。一部の実施形態では、組成物は、本明細書に記載されるabTCRのいずれかにしたがうabTCRをその表面上に提示するエフェクター細胞(例えば、T細胞)を含むabTCRエフェクター細胞組成物(例えば、医薬組成物)である。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞組成物は、医薬組成物である。
【0311】
組成物は、同じ細胞型の、および同じabTCRを発現するabTCRエフェクター細胞を含む均一な細胞集団、または異なる細胞型の、および/もしくは異なるabTCRを発現するabTCRエフェクター細胞を含む複数のabTCRエフェクター細胞集団を含む不均一な細胞集団を含み得る。組成物は、abTCRエフェクター細胞ではない細胞をさらに含み得る。
【0312】
したがって、一部の実施形態では、同じ細胞型の、および同じabTCRを発現するabTCRエフェクター細胞(例えば、abTCR T細胞)の均一な細胞集団を含むabTCRエフェクター細胞組成物が提供される。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞は、T細胞である。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞組成物は、医薬組成物である。
【0313】
一部の実施形態では、異なる細胞型の、および/または異なるabTCRを発現するabTCRエフェクター細胞を含む複数のabTCRエフェクター細胞集団を含む不均一な細胞集団を含むabTCRエフェクター細胞組成物が提供される。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞は、T細胞である。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞の各集団は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される細胞型のものである。一部の実施形態では、組成物中のabTCRエフェクター細胞は全て、同じ細胞型のものである(例えば、abTCRエフェクター細胞は全て、細胞傷害性T細胞である)。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞の少なくとも1つの集団は、他とは異なる細胞型のものである(例えば、abTCRエフェクター細胞の1つの集団は、細胞傷害性T細胞からなり、abTCRエフェクター細胞の他の集団は、ナチュラルキラーT細胞からなる)。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞の各集団は、同じabTCRを発現する。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞の少なくとも1つの集団は、他とは異なるabTCRを発現する。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞の各集団は、他とは異なるabTCRを発現する。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞の各集団は、同じ標的抗原に特異的に結合するabTCRを発現する。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞の少なくとも1つの集団は、他とは異なる標的抗原に特異的に結合するabTCRを発現する(例えば、abTCRエフェクター細胞の1つの集団は、pMHC複合体に特異的に結合し、abTCRエフェクター細胞の他の集団は、細胞表面受容体に特異的に結合する)。abTCRエフェクター細胞の少なくとも1つの集団が異なる標的抗原に特異的に結合するabTCRを発現する一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞の各集団は、同じ疾患または障害と関連する標的抗原に特異的に結合するabTCRを発現する(例えば、標的抗原の各々は、乳がんなどのがんと関連する)。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞組成物は、医薬組成物である。
【0314】
したがって、一部の実施形態では、本明細書に記載される実施形態のいずれかにしたがう複数のabTCRエフェクター細胞集団を含むabTCRエフェクター細胞組成物であって、組成物中のabTCRエフェクター細胞が全て、同じ細胞型のものであり(例えば、abTCRエフェクター細胞は全て、細胞傷害性T細胞である)、abTCRエフェクター細胞の各集団が、他とは異なるabTCRを発現する、abTCRエフェクター細胞組成物が提供される。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞は、T細胞である。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞の各集団は、同じ標的抗原に特異的に結合するabTCRを発現する。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞の少なくとも1つの集団は、他とは異なる標的抗原に特異的に結合するabTCRを発現する(例えば、abTCRエフェクター細胞の1つの集団は、pMHC複合体に特異的に結合し、abTCRエフェクター細胞の他の集団は、細胞表面受容体に特異的に結合する)。abTCRエフェクター細胞の少なくとも1つの集団が異なる標的抗原に特異的に結合するabTCRを発現する一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞の各集団は、同じ疾患または障害と関連する標的抗原に特異的に結合するabTCRを発現する(例えば、標的抗原の各々は、乳がんなどのがんと関連する)。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞組成物は、医薬組成物である。
【0315】
一部の実施形態では、本明細書に記載される実施形態のいずれかにしたがう複数のabTCRエフェクター細胞集団を含む組成物であって、abTCRエフェクター細胞の少なくとも1つの集団が、他とは異なる細胞型のものである、組成物が提供される。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞の集団は全て、異なる細胞型のものである。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞は、T細胞である。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞の各集団は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される細胞型のものである。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞の各集団は、同じabTCRを発現する。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞の少なくとも1つの集団は、他とは異なるabTCRを発現する。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞の各集団は、他とは異なるabTCRを発現する。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞の各集団は、同じ標的抗原に特異的に結合するabTCRを発現する。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞の少なくとも1つの集団は、他とは異なる標的抗原に特異的に結合するabTCRを発現する(例えば、abTCRエフェクター細胞の1つの集団は、pMHC複合体に特異的に結合し、abTCRエフェクター細胞の他の集団は、細胞表面受容体に特異的に結合する)。abTCRエフェクター細胞の少なくとも1つの集団が異なる標的抗原に特異的に結合するabTCRを発現する一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞の各集団は、同じ疾患または障害と関連する標的抗原に特異的に結合するabTCRを発現する(例えば、標的抗原の各々は、乳がんなどのがんと関連する)。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞組成物は、医薬組成物である。
【0316】
組成物の調製の間の種々の時点において、細胞を凍結保存することが必要または有益であり得る。用語「凍結された/凍結する」および「凍結保存された/凍結保存する」は、相互交換可能に使用され得る。凍結することには、フリーズドライすることが含まれる。
【0317】
当業者に理解されるように、細胞の凍結は、破壊的であり得る(Mazur, P.、1977年、Cryobiology 14巻:251~272頁を参照のこと)が、かかる損傷を防止するために利用可能な多数の手順が存在する。例えば、損傷は、(a)凍結保護剤の使用、(b)凍結速度の制御、および/または(c)分解反応を最小化するのに十分に低い温度における貯蔵、によって回避され得る。例示的な凍結保護剤には、ジメチルスルホキシド(DMSO)(LovelockおよびBishop、1959年、Nature 183巻:1394~1395頁;Ashwood-Smith、1961年、Nature 190巻:1204~1205頁)、グリセロール、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidine)(Rinfret、1960年、Ann. N.Y. Acad. Sci. 85巻:576頁)、ポリエチレングリコール(SloviterおよびRavdin、1962年、Nature 196巻:548頁)、アルブミン、デキストラン、スクロース、エチレングリコール、i-エリスリトール、D-リビトール、D-マンニトール(Roweら、1962年、Fed. Proc. 21巻:157頁)、D-ソルビトール、i-イノシトール、D-ラクトース、塩化コリン(Benderら、1960年、J. Appl. Physiol. 15巻:520頁)、アミノ酸(Phan The TranおよびBender、1960年、Exp. Cell Res.20巻:651頁)、メタノール、アセトアミド、グリセロールモノアセテート(Lovelock、1954年、Biochem. J. 56巻:265頁)および無機塩(Phan The TranおよびBender、1960年、Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 104巻:388頁;Phan The TranおよびBender、1961年、Radiobiology, Proceedings of the Third Australian Conference on Radiobiology、llbery編、Butterworth、London、59頁)が含まれる。特定の実施形態では、DMSOが使用され得る。(例えば、20~25%の濃度になるような)血漿の添加は、DMSOの保護効果を強化し得る。1%のDMSO濃度は、4℃を上回る温度では毒性であり得るので、DMSOの添加後、細胞は、凍結まで0℃で維持され得る。
【0318】
細胞の凍結保存では、緩徐な制御された冷却速度が重要であり得、異なる凍結保護剤(Rapatzら、1968年、Cryobiology 5巻(1号):18~25頁)および異なる細胞型は、異なる最適な冷却速度を有する(幹細胞の生存およびそれらの移植能に対する冷却速度の効果については、例えば、RoweおよびRinfret、1962年、Blood 20巻:636頁;Rowe、1966年、Cryobiology 3巻(1号):12~18頁;Lewisら、1967年、Transfusion 7巻(1号):17~32頁;ならびにMazur、1970年、Science 168巻:939~949頁を参照のこと)。水が氷になる融解相の熱は、最小であるべきである。冷却手順は、例えば、プログラム可能な凍結デバイスまたはメタノール浴手順の使用によって実施され得る。プログラム可能な凍結装置は、最適な冷却速度の決定を可能にし、標準的な再現性のある冷却を促進する。
【0319】
特定の実施形態では、DMSO処理された細胞は、氷上で事前冷却され、次に機械的冷蔵庫(例えば、HarrisまたはRevco)中-80℃に配置される冷却メタノールを含むトレイに移され得る。メタノール浴および試料の熱電対測定は、1℃~3℃/分の冷却速度が好まれ得ることを示す。少なくとも2時間後、検体は、-80℃の温度に達していることができ、液体窒素(-196℃)中に直接配置され得る。
【0320】
徹底的な凍結後、細胞は、長期凍結貯蔵容器に迅速に移され得る。好ましい実施形態では、試料は、液体窒素(-196℃)または蒸気(-1℃)中に凍結貯蔵され得る。かかる貯蔵は、高度に効率的な液体窒素冷蔵庫の有用性によって促進される。
【0321】
細胞の操作、凍結保存および長期貯蔵のためのさらなる考慮事項および手順は、以下の例示的な参考文献中に見出すことができる:米国特許第4,199,022号;同第3,753,357号;および同第4,559,298号;Gorin、1986年、Clinics In Haematology 15巻(1号):19~48頁;Bone-Marrow Conservation, Culture and Transplantation、Proceedings of a Panel、Moscow、1968年7月22~26日、International Atomic Energy Agency、Vienna、107~186頁;LiveseyおよびLinner、1987年、Nature 327巻:255頁;Linnerら、1986年、J. Histochem. Cytochem. 34巻(9号):1123~1135頁;Simione、1992年、J. Parenter. Sci. Technol. 46巻(6号):226~32頁。
【0322】
凍結保存後、凍結された細胞は、当業者に公知の方法に従って使用のために解凍され得る。凍結された細胞は、好ましくは、迅速に解凍され、解凍後即座に冷却される。特定の実施形態では、凍結された細胞を含むバイアルは、温水浴中にその首まで浸漬され得る;穏やかな回転が、解凍される際の細胞懸濁物の混合を確実にし、温水から内部氷塊への熱伝達を増加させる。氷が完全に融解したら直ぐに、バイアルは氷上に即座に配置され得る。
【0323】
特定の実施形態では、解凍の間に細胞凝集を防止するための方法が使用され得る。例示的な方法には以下が含まれる:凍結の前および/または後のDNaseの添加(Spitzerら、1980年、Cancer 45巻:3075~3085頁)、低分子量デキストランおよびシトレート、ヒドロキシエチルデンプン(Stiffら、1983年、Cryobiology 20巻:17~24頁)など。[0162]当業者に理解されるように、ヒトに対して毒性である凍結保護剤が使用される場合、それは、治療的使用の前に除去するべきである。DMSOは、重大な毒性を有さない。
【0324】
例示的なキャリアおよび細胞の投与様式は、米国特許出願公開第2010/0183564号の14~15頁に記載されている。さらなる医薬キャリアは、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第21版、David B. Troy編、Lippicott Williams & Wilkins(2005年)に記載されている。
【0325】
特定の実施形態では、細胞は、培養培地から回収され、洗浄され、治療有効量でキャリア中に濃縮され得る。例示的なキャリアには、食塩水、緩衝食塩水、生理食塩水、水、ハンクス溶液、リンゲル溶液、Nonnosol-R(Abbott Labs)、Plasma-Lyte A(R)(Baxter Laboratories,Inc.、Morton Grove、IL)、グリセロール、エタノール、およびそれらの組合せが含まれる。
【0326】
特定の実施形態では、キャリアには、ヒト血清アルブミン(HSA)もしくは他のヒト血清成分または胎仔ウシ血清が補充され得る。特定の実施形態では、注入のためのキャリアには、5%HASまたはデキストロースを含む緩衝食塩水が含まれる。さらなる等張剤には、三価またはそれよりも高い糖アルコールを含む多価糖アルコール、例えば、グリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトールまたはマンニトールが含まれる。
【0327】
キャリアには、緩衝剤、例えば、クエン酸緩衝液、コハク酸緩衝液、酒石酸緩衝液、フマル酸緩衝液、グルコン酸緩衝液、シュウ酸緩衝液、乳酸緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液および/またはトリメチルアミン塩が含まれ得る。
【0328】
安定剤とは、機能が増量剤から、容器の壁への細胞の粘着を防止するのに役立つ添加剤までの範囲であり得る賦形剤の広いカテゴリーを指す。典型的な安定剤には、多価糖アルコール;アミノ酸、例えば、アルギニン、リシン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アラニン、オルニチン、L-ロイシン、2-フェニルアラニン、グルタミン酸およびスレオニン;有機糖または糖アルコール、例えば、ラクトース、トレハロース、スタキオース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、リビトール、ミオイノシトール(myoinisitol)、ガラクチトール、グリセロールおよびシクリトール、例えば、イノシトール;PEG;アミノ酸ポリマー;硫黄含有還元剤、例えば、尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、アルファ-モノチオグリセロールおよびチオ硫酸ナトリウム;低分子量ポリペプチド(即ち、<10残基);タンパク質、例えば、HSA、ウシ血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;単糖、例えば、キシロース、マンノース、フルクトースおよびグルコース;二糖、例えば、ラクトース、マルトースおよびスクロース;三糖、例えば、ラフィノース、ならびに多糖、例えば、デキストランが含まれ得る。
【0329】
必要または有益な場合、組成物は、注射の部位における疼痛を和らげるために、リドカインなどの局所麻酔薬を含み得る。
【0330】
例示的な防腐剤には、フェノール、ベンジルアルコール、メタ-クレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、ベンザルコニウムハライド、塩化ヘキサメトニウム、アルキルパラベン、例えば、メチルパラベンまたはプロピルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノールおよび3-ペンタノールが含まれる。
【0331】
組成物内の細胞の治療有効量は、102細胞よりも高い、103細胞よりも高い、104細胞よりも高い、105細胞よりも高い、106細胞よりも高い、107細胞よりも高い、108細胞よりも高い、109細胞よりも高い、1010細胞よりも高い、または1011細胞よりも高いとすることができる。
【0332】
本明細書に開示される組成物および製剤では、細胞は一般に、1リットルもしくはそれ未満、500mlもしくはそれ未満、250mlもしくはそれ未満または100mlもしくはそれ未満の体積中にある。したがって、投与される細胞の密度は、典型的には、104細胞/ml、107細胞/mlまたは108細胞/mlよりも高い。
【0333】
本明細書に記載されるabTCRをコードする核酸のいずれかを含むabTCR核酸組成物(例えば、医薬組成物、本明細書で製剤とも呼ぶ)もまた本明細書で提供される。一部の実施形態では、abTCR核酸組成物は、医薬組成物である。一部の実施形態では、abTCR核酸組成物は、等張化剤、賦形剤、希釈剤、増粘剤、安定剤、緩衝液および/もしくは防腐剤;ならびに/または水性ビヒクル、例えば、精製水、糖水溶液、緩衝液溶液、生理食塩水、ポリマー水溶液もしくは無RNase水のいずれかをさらに含む。添加されるかかる添加剤および水性ビヒクルの量は、abTCR核酸組成物の使用の形態に従って適切に選択され得る。
【0334】
本明細書に開示される組成物および製剤は、例えば、注射、注入、灌流または洗浄による投与のために調製され得る。組成物および製剤は、骨髄、静脈内、真皮内、動脈内、結節内、リンパ内、腹腔内、病巣内、前立腺内、腟内、直腸内、外用、髄腔内、腫瘍内、筋肉内、小胞内および/または皮下注射のためにさらに製剤化され得る。
【0335】
in vivo投与に使用される製剤は、滅菌でなければならない。これは、例えば、滅菌濾過膜を介した濾過によって容易に達成される。
【0336】
abTCRを使用する処置の方法
本発明のabTCRおよび/または組成物は、例えば、がんおよび感染性疾患(例えば、ウイルス感染症)を含む、標的抗原(TA)発現と関連する疾患および/または障害(本明細書で「標的抗原陽性」または「TA陽性」疾患または障害とも呼ぶ)を処置するために、個体(例えば、哺乳動物、例えば、ヒト)に投与され得る。したがって、本出願は、一部の実施形態では、個体において標的抗原陽性疾患(例えば、がんまたはウイルス感染症)を処置するための方法であって、個体に、有効量の、抗体部分を含むabTCR、例えば、本明細書に記載されるabTCRのいずれか1つを含む組成物(例えば、医薬組成物)を投与するステップを含む方法を提供する。一部の実施形態では、組成物は、abTCRと関連する細胞(例えば、エフェクター細胞)をさらに含む。一部の実施形態では、がんは、例えば、副腎皮質癌、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、胆管細胞癌、結腸直腸がん、食道がん、グリア芽細胞腫、グリオーマ、肝細胞癌、頭頸部がん、腎臓がん、肺がん、メラノーマ、中皮腫、多発性骨髄腫、膵臓がん、褐色細胞腫、形質細胞腫、神経芽細胞腫、卵巣がん、前立腺がん、肉腫、胃がん、子宮がんおよび甲状腺がんからなる群から選択される。一部の実施形態では、ウイルス感染症は、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、伝染性軟属腫ウイルス(MCV)、ヒトT細胞白血病ウイルス1(HTLV-1)、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)およびC型肝炎ウイルス(HCV)からなる群から選択されるウイルスによって引き起こされる。
【0337】
例えば、一部の実施形態では、それを必要とする個体において標的抗原関連疾患(例えば、がんまたはウイルス感染症)を処置する方法であって、個体に、有効量の、a)標的抗原に特異的に結合するFab様抗原結合モジュール、およびb)少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なTCRMを含むabTCR(例えば、単離されたabTCR)をそれらの表面上に提示するエフェクター細胞(例えば、T細胞またはナチュラルキラー細胞)を含む組成物を投与するステップを含む方法が提供される。一部の実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、VH抗体ドメイン、CH1抗体ドメイン、VL抗体ドメインおよびCL抗体ドメインを含む。一部の実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、ヒト、ヒト化、キメラ、半合成または完全合成である。一部の実施形態では、TCRMは、TCR、例えば、αβTCRまたはγδTCRの膜貫通ドメインを含む。一部の実施形態では、TCRMは、TCRの接続ペプチドまたはその断片をさらに含む。一部の実施形態では、TCRMは、TCRの細胞外ドメインの少なくとも1つの部分をさらに含む。一部の実施形態では、abTCRは、少なくとも1つの細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、少なくとも1つの細胞内ドメインは、TCRの細胞内ドメイン由来の配列、共刺激細胞内シグナル伝達配列、エピトープタグ、またはそれらの組合せのいずれかを含む。一部の実施形態では、abTCRは、少なくとも1つのジスルフィド結合をさらに含む。一部の実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、ジスルフィド結合を含み、および/またはTCRMは、ジスルフィド結合を含む。一部の実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、CH1ドメイン中の残基とCLドメインの残基との間のジスルフィド結合を含み、および/またはTCRMは、第1の接続ペプチド中の残基と第2の接続ペプチド中の残基との間のジスルフィド結合を含む。一部の実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γεおよびζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能である。一部の実施形態では、TCRMは、abTCR-CD3複合体形成を促進する。一部の実施形態では、Fab様抗原結合モジュールとTCRMとの間にはペプチドリンカーが存在する。一部の実施形態では、標的抗原は細胞表面抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、タンパク質、炭水化物および脂質からなる群から選択される。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、疾患関連抗原、例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、CD19、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5DまたはFCRL5である。一部の実施形態では、標的抗原は、表面提示されたペプチド/MHC複合体である。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、疾患関連抗原(例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原)に由来するペプチドとMHCタンパク質とを含む。一部の実施形態では、方法は、abTCRエフェクター細胞の最小限の疲弊を生じるまたは疲弊を実質的に生じない。一部の実施形態では、方法は、abTCRエフェクター細胞の最小限の最終分化を生じるまたは最終分化を実質的に生じない。一部の実施形態では、方法は、abTCRエフェクター細胞上のabTCRの最小限の内在化を生じるまたは内在化を実質的に生じない。一部の実施形態では、方法は、abTCRエフェクター細胞の増加した増殖を生じる。
【0338】
一部の実施形態では、それを必要とする個体において標的抗原関連疾患(例えば、がんまたはウイルス感染症)を処置する方法であって、個体に、有効量の、a)標的抗原に特異的に結合するFv様抗原結合モジュール、およびb)少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なTCRMを含むabTCR(例えば、単離されたabTCR)をそれらの表面上に提示するエフェクター細胞(例えば、T細胞またはナチュラルキラー細胞)を含む組成物を投与するステップを含み、標的抗原がペプチド/MHC複合体である、方法が提供される。一部の実施形態では、Fv様抗原結合モジュールは、VH抗体ドメインとVL抗体ドメインとを含む。一部の実施形態では、VL抗体ドメインのC末端に融合した第1のペプチドリンカーおよび/またはVH抗体ドメインのC末端に融合した第2のペプチドリンカーが存在する。一部の実施形態では、第1および第2のペプチドリンカーは、互いに結合することが可能である。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、免疫グロブリン重鎖および/または軽鎖定常領域に由来する。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、TCRサブユニット定常領域に由来する。例えば、一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、a)TCRαおよびβサブユニット定常ドメイン;またはb)TCRγおよびδサブユニット定常ドメインに由来する。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、合成である。一部の実施形態では、Fv様抗原結合モジュールは、ヒト、ヒト化、キメラ、半合成または完全合成である。一部の実施形態では、TCRMは、TCR、例えば、αβTCRまたはγδTCRの膜貫通ドメインを含む。一部の実施形態では、TCRMは、TCR、例えば、αβTCRまたはγδTCRの接続ペプチドまたはその断片をさらに含む。一部の実施形態では、膜貫通ドメインおよび接続ペプチドは、αβTCRまたはγδTCRに由来する。一部の実施形態では、膜貫通ドメインはαβTCRに由来し、接続ペプチドはγδTCRに由来する、または膜貫通ドメインはγδTCRに由来し、接続ペプチドはαβTCRに由来する。一部の実施形態では、TCRMは、TCRの細胞外ドメインの少なくとも1つの部分をさらに含む。一部の実施形態では、TCRMは、TCRの細胞内ドメイン由来の配列を含む少なくとも1つのTCR細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、TCRMは、TCRサブユニットの断片を含む。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、abTCRは、第1の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドおよび/または第2の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、abTCRは、少なくとも1つのジスルフィド結合をさらに含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のペプチドリンカーは、ジスルフィド結合を含み、および/またはTCRMは、ジスルフィド結合を含む。一部の実施形態では、TCRMは、第1の接続ペプチド中の残基と第2の接続ペプチド中の残基との間のジスルフィド結合を含む。一部の実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γεおよびζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能である。一部の実施形態では、TCRMは、abTCR-CD3複合体形成を促進する。一部の実施形態では、標的抗原ペプチド/MHC複合体は、疾患関連抗原(例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原)に由来するペプチドとMHCタンパク質とを含む。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、ペプチドとMHCタンパク質とを含み、ペプチドは、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1およびPSAからなる群から選択されるタンパク質に由来する。一部の実施形態では、MHCタンパク質は、MHCクラスIタンパク質である。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Aである。一部の実施形態では、HLA-Aは、HLA-A02である。一部の実施形態では、HLA-A02は、HLA-A*02:01である。一部の実施形態では、方法は、abTCRエフェクター細胞の最小限の疲弊を生じるまたは疲弊を実質的に生じない。一部の実施形態では、方法は、abTCRエフェクター細胞の最小限の最終分化を生じるまたは最終分化を実質的に生じない。一部の実施形態では、方法は、abTCRエフェクター細胞上のabTCRの最小限の内在化を生じるまたは内在化を実質的に生じない。一部の実施形態では、方法は、abTCRエフェクター細胞の増加した増殖を生じる。
【0339】
一部の実施形態では、それを必要とする個体において標的抗原関連疾患(例えば、がんまたはウイルス感染症)を処置する方法であって、個体に、有効量の、標的抗原を特異的に認識するabTCRをそれらの表面上に提示するエフェクター細胞(例えば、T細胞またはナチュラルキラー細胞)を含む組成物を投与するステップを含み、abTCRが、a)VHおよびCH1抗体ドメインを含む第1の抗原結合ドメインと第1のTCRサブユニットの膜貫通ドメインを含む第1のTCRDとを含む第1のポリペプチド鎖;ならびにb)VLおよびCL抗体ドメインを含む第2の抗原結合ドメインと第2のTCRサブユニットの膜貫通ドメインを含む第2のTCRDとを含む第2のポリペプチド鎖、を含み、第1の抗原結合ドメインのVHおよびCH1ドメインと第2の抗原結合ドメインのVLおよびCLドメインとが、標的抗原に特異的に結合するFab様抗原結合モジュールを形成し、第1のTCRDと第2のTCRDとが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なTCRMを形成する、方法が提供される。一部の実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、ヒト、ヒト化、キメラ、半合成または完全合成である。一部の実施形態では、第1のTCRサブユニットはTCRα鎖であり、第2のTCRサブユニットはTCRβ鎖である。一部の実施形態では、第1のTCRサブユニットはTCRβ鎖であり、第2のTCRサブユニットはTCRα鎖である。一部の実施形態では、第1のTCRサブユニットはTCRγ鎖であり、第2のTCRサブユニットはTCRδ鎖である。一部の実施形態では、第1のTCRサブユニットはTCRδ鎖であり、第2のTCRサブユニットはTCRγ鎖である。一部の実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCRサブユニットの接続ペプチドもしくはその断片をさらに含み、および/または第2のTCRDは、第2のTCRサブユニットの接続ペプチドもしくはその断片をさらに含む。一部の実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCRサブユニットの細胞外ドメインの一部分をさらに含み、および/または第2のTCRDは、第2のTCRサブユニットの細胞外ドメインの一部分をさらに含む。一部の実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインをさらに含み、および/または第2のTCRDは、第2のTCR細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、第1のTCR細胞内ドメインは、第1のTCRサブユニットの細胞内ドメイン由来の配列を含み、および/または第2のTCR細胞内ドメインは、第2のTCRサブユニットの細胞内ドメイン由来の配列を含む。一部の実施形態では、abTCRは、第1の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドおよび/または第2の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γεおよびζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能である。一部の実施形態では、TCRMは、abTCR-CD3複合体形成を促進する。一部の実施形態では、第1の抗原結合ドメインと第1のTCRDとの間に第1のペプチドリンカーが、および/または第2の抗原結合ドメインと第2のTCRDとの間に第2のペプチドリンカーが存在する。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、例えば、共有結合(例えば、ペプチド結合または他の化学結合)または非共有結合によって連結される。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、a)第1のTCRDの接続ペプチド中の残基と第2のTCRDの接続ペプチド中の残基との間のジスルフィド結合;および/またはb)第1の抗原結合ドメイン中のCH1抗体ドメイン中の残基と第2の抗原結合ドメイン中のCL抗体ドメイン中の残基との間のジスルフィド結合を介して連結される。一部の実施形態では、標的抗原は細胞表面抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、タンパク質、炭水化物および脂質からなる群から選択される。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、疾患関連抗原、例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、CD19、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5DまたはFCRL5である。一部の実施形態では、標的抗原は、表面提示されたペプチド/MHC複合体である。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、疾患関連抗原(例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原)に由来するペプチドとMHCタンパク質とを含む。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、ペプチドとMHCタンパク質とを含み、ペプチドは、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1およびPSAからなる群から選択されるタンパク質に由来する。
【0340】
一部の実施形態では、それを必要とする個体において標的抗原関連疾患(例えば、がんまたはウイルス感染症)を処置する方法であって、個体に、有効量の、標的抗原を特異的に認識するabTCRをそれらの表面上に提示するエフェクター細胞(例えば、T細胞またはナチュラルキラー細胞)を含む組成物を投与するステップを含み、abTCRが、a)VHおよびCH1抗体ドメインを含む第1の抗原結合ドメインとTCRα鎖の膜貫通ドメインを含む第1のTCRDとを含む第1のポリペプチド鎖;ならびにb)VLおよびCL抗体ドメインを含む第2の抗原結合ドメインとTCRβ鎖の膜貫通ドメインを含む第2のTCRDとを含む第2のポリペプチド鎖、を含み、第1の抗原結合ドメインのVHおよびCH1ドメインと第2の抗原結合ドメインのVLおよびCLドメインとが、細胞表面抗原に特異的に結合するFab様抗原結合モジュールを形成し、第1のTCRDと第2のTCRDとが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なTCRMを形成する、方法が提供される。一部の実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、ヒト、ヒト化、キメラ、半合成または完全合成である。一部の実施形態では、第1のTCRDは、TCRα鎖の接続ペプチドもしくはその断片をさらに含み、および/または第2のTCRDは、TCRβ鎖の接続ペプチドもしくはその断片をさらに含む。一部の実施形態では、第1のTCRDは、TCRα鎖の細胞外ドメインの一部分をさらに含み、および/または第2のTCRDは、TCRβ鎖の細胞外ドメインの一部分をさらに含む。一部の実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインをさらに含み、および/または第2のTCRDは、第2のTCR細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、第1のTCR細胞内ドメインは、TCRα鎖の細胞内ドメイン由来の配列を含み、および/または第2のTCR細胞内ドメインは、TCRβ鎖の細胞内ドメイン由来の配列を含む。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、abTCRは、第1の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドおよび/または第2の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γεおよびζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能である。一部の実施形態では、TCRMは、abTCR-CD3複合体形成を促進する。一部の実施形態では、第1の抗原結合ドメインと第1のTCRDとの間に第1のペプチドリンカーが、および/または第2の抗原結合ドメインと第2のTCRDとの間に第2のペプチドリンカーが存在する。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、例えば、共有結合(例えば、ペプチド結合または他の化学結合)または非共有結合によって連結される。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、a)第1のTCRDの接続ペプチド中の残基と第2のTCRDの接続ペプチド中の残基との間のジスルフィド結合;および/またはb)第1の抗原結合ドメイン中のCH1抗体ドメイン中の残基と第2の抗原結合ドメイン中のCL抗体ドメイン中の残基との間のジスルフィド結合を介して連結される。一部の実施形態では、標的抗原は細胞表面抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、タンパク質、炭水化物および脂質からなる群から選択される。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、疾患関連抗原、例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、CD19、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5DまたはFCRL5である。一部の実施形態では、標的抗原は、表面提示されたペプチド/MHC複合体である。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、疾患関連抗原(例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原)に由来するペプチドとMHCタンパク質とを含む。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、ペプチドとMHCタンパク質とを含み、ペプチドは、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1およびPSAからなる群から選択されるタンパク質に由来する。一部の実施形態では、MHCタンパク質は、MHCクラスIタンパク質である。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Aである。一部の実施形態では、HLA-Aは、HLA-A02である。一部の実施形態では、HLA-A02は、HLA-A*02:01である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、γδT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、TCRαおよび/またはβ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているαβT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
【0341】
一部の実施形態では、それを必要とする個体において標的抗原関連疾患(例えば、がんまたはウイルス感染症)を処置する方法であって、個体に、有効量の、標的抗原を特異的に認識するabTCRをそれらの表面上に提示するエフェクター細胞(例えば、T細胞またはナチュラルキラー細胞)を含む組成物を投与するステップを含み、abTCRが、a)VHおよびCH1抗体ドメインを含む第1の抗原結合ドメインとTCRβ鎖の膜貫通ドメインを含む第1のTCRDとを含む第1のポリペプチド鎖;ならびにb)VLおよびCL抗体ドメインを含む第2の抗原結合ドメインとTCRα鎖の膜貫通ドメインを含む第2のTCRDとを含む第2のポリペプチド鎖、を含み、第1の抗原結合ドメインのVHおよびCH1ドメインと第2の抗原結合ドメインのVLおよびCLドメインとが、細胞表面抗原に特異的に結合するFab様抗原結合モジュールを形成し、第1のTCRDと第2のTCRDとが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なTCRMを形成する、方法が提供される。一部の実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、ヒト、ヒト化、キメラ、半合成または完全合成である。一部の実施形態では、第1のTCRDは、TCRβ鎖の接続ペプチドもしくはその断片をさらに含み、および/または第2のTCRDは、TCRα鎖の接続ペプチドもしくはその断片をさらに含む。一部の実施形態では、第1のTCRDは、TCRβ鎖の細胞外ドメインの一部分をさらに含み、および/または第2のTCRDは、TCRα鎖の細胞外ドメインの一部分をさらに含む。一部の実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインをさらに含み、および/または第2のTCRDは、第2のTCR細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、第1のTCR細胞内ドメインは、TCRβ鎖の細胞内ドメイン由来の配列を含み、および/または第2のTCR細胞内ドメインは、TCRα鎖の細胞内ドメイン由来の配列を含む。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、abTCRは、第1の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドおよび/または第2の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γεおよびζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能である。一部の実施形態では、TCRMは、abTCR-CD3複合体形成を促進する。一部の実施形態では、第1の抗原結合ドメインと第1のTCRDとの間に第1のペプチドリンカーが、および/または第2の抗原結合ドメインと第2のTCRDとの間に第2のペプチドリンカーが存在する。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、例えば、共有結合(例えば、ペプチド結合または他の化学結合)または非共有結合によって連結される。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、a)第1のTCRDの接続ペプチド中の残基と第2のTCRDの接続ペプチド中の残基との間のジスルフィド結合;および/またはb)第1の抗原結合ドメイン中のCH1抗体ドメイン中の残基と第2の抗原結合ドメイン中のCL抗体ドメイン中の残基との間のジスルフィド結合を介して連結される。一部の実施形態では、標的抗原は細胞表面抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、タンパク質、炭水化物および脂質からなる群から選択される。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、疾患関連抗原、例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、CD19、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5DまたはFCRL5である。一部の実施形態では、標的抗原は、表面提示されたペプチド/MHC複合体である。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、疾患関連抗原(例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原)に由来するペプチドとMHCタンパク質とを含む。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、ペプチドとMHCタンパク質とを含み、ペプチドは、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1およびPSAからなる群から選択されるタンパク質に由来する。一部の実施形態では、MHCタンパク質は、MHCクラスIタンパク質である。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Aである。一部の実施形態では、HLA-Aは、HLA-A02である。一部の実施形態では、HLA-A02は、HLA-A*02:01である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、γδT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、TCRαおよび/またはβ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているαβT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
【0342】
一部の実施形態では、それを必要とする個体において標的抗原関連疾患(例えば、がんまたはウイルス感染症)を処置する方法であって、個体に、有効量の、標的抗原を特異的に認識するabTCRをそれらの表面上に提示するエフェクター細胞(例えば、T細胞またはナチュラルキラー細胞)を含む組成物を投与するステップを含み、abTCRが、a)VHおよびCH1抗体ドメインを含む第1の抗原結合ドメインとTCRγ鎖の膜貫通ドメインを含む第1のTCRDとを含む第1のポリペプチド鎖;ならびにb)VLおよびCL抗体ドメインを含む第2の抗原結合ドメインとTCRδ鎖の膜貫通ドメインを含む第2のTCRDとを含む第2のポリペプチド鎖、を含み、第1の抗原結合ドメインのVHおよびCH1ドメインと第2の抗原結合ドメインのVLおよびCLドメインとが、細胞表面抗原に特異的に結合するFab様抗原結合モジュールを形成し、第1のTCRDと第2のTCRDとが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なTCRMを形成する、方法が提供される。一部の実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、ヒト、ヒト化、キメラ、半合成または完全合成である。一部の実施形態では、第1のTCRDは、TCRγ鎖の接続ペプチドもしくはその断片をさらに含み、および/または第2のTCRDは、TCRδ鎖の接続ペプチドもしくはその断片をさらに含む。一部の実施形態では、第1のTCRDは、TCRγ鎖の細胞外ドメインの一部分をさらに含み、および/または第2のTCRDは、TCRδ鎖の細胞外ドメインの一部分をさらに含む。一部の実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインをさらに含み、および/または第2のTCRDは、第2のTCR細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、第1のTCR細胞内ドメインは、TCRγ鎖の細胞内ドメイン由来の配列を含み、および/または第2のTCR細胞内ドメインは、TCRδ鎖の細胞内ドメイン由来の配列を含む。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、abTCRは、第1の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドおよび/または第2の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γεおよびζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能である。一部の実施形態では、TCRMは、abTCR-CD3複合体形成を促進する。一部の実施形態では、第1の抗原結合ドメインと第1のTCRDとの間に第1のペプチドリンカーが、および/または第2の抗原結合ドメインと第2のTCRDとの間に第2のペプチドリンカーが存在する。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、例えば、共有結合(例えば、ペプチド結合または他の化学結合)または非共有結合によって連結される。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、a)第1のTCRDの接続ペプチド中の残基と第2のTCRDの接続ペプチド中の残基との間のジスルフィド結合;および/またはb)第1の抗原結合ドメイン中のCH1抗体ドメイン中の残基と第2の抗原結合ドメイン中のCL抗体ドメイン中の残基との間のジスルフィド結合を介して連結される。一部の実施形態では、標的抗原は細胞表面抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、タンパク質、炭水化物および脂質からなる群から選択される。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、疾患関連抗原、例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、CD19、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5DまたはFCRL5である。一部の実施形態では、標的抗原は、表面提示されたペプチド/MHC複合体である。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、疾患関連抗原(例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原)に由来するペプチドとMHCタンパク質とを含む。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、ペプチドとMHCタンパク質とを含み、ペプチドは、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1およびPSAからなる群から選択されるタンパク質に由来する。一部の実施形態では、MHCタンパク質は、MHCクラスIタンパク質である。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Aである。一部の実施形態では、HLA-Aは、HLA-A02である。一部の実施形態では、HLA-A02は、HLA-A*02:01である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、αβT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、TCRγおよび/またはδ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているγδT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
【0343】
一部の実施形態では、それを必要とする個体において標的抗原関連疾患(例えば、がんまたはウイルス感染症)を処置する方法であって、個体に、有効量の、標的抗原を特異的に認識するabTCRをそれらの表面上に提示するエフェクター細胞(例えば、T細胞またはナチュラルキラー細胞)を含む組成物を投与するステップを含み、abTCRが、a)VHおよびCH1抗体ドメインを含む第1の抗原結合ドメインとTCRδ鎖の膜貫通ドメインを含む第1のTCRDとを含む第1のポリペプチド鎖;ならびにb)VLおよびCL抗体ドメインを含む第2の抗原結合ドメインとTCRγ鎖の膜貫通ドメインを含む第2のTCRDとを含む第2のポリペプチド鎖、を含み、第1の抗原結合ドメインのVHおよびCH1ドメインと第2の抗原結合ドメインのVLおよびCLドメインとが、細胞表面抗原に特異的に結合するFab様抗原結合モジュールを形成し、第1のTCRDと第2のTCRDとが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なTCRMを形成する、方法が提供される。一部の実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、ヒト、ヒト化、キメラ、半合成または完全合成である。一部の実施形態では、第1のTCRDは、TCRδ鎖の接続ペプチドもしくはその断片をさらに含み、および/または第2のTCRDは、TCRγ鎖の接続ペプチドもしくはその断片をさらに含む。一部の実施形態では、第1のTCRDは、TCRδ鎖の細胞外ドメインの一部分をさらに含み、および/または第2のTCRDは、TCRγ鎖の細胞外ドメインの一部分をさらに含む。一部の実施形態では、第1のTCRDは、第1のTCR細胞内ドメインをさらに含み、および/または第2のTCRDは、第2のTCR細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、第1のTCR細胞内ドメインは、TCRδ鎖の細胞内ドメイン由来の配列を含み、および/または第2のTCR細胞内ドメインは、TCRγ鎖の細胞内ドメイン由来の配列を含む。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、abTCRは、第1の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドおよび/または第2の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γεおよびζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能である。一部の実施形態では、TCRMは、abTCR-CD3複合体形成を促進する。一部の実施形態では、第1の抗原結合ドメインと第1のTCRDとの間に第1のペプチドリンカーが、および/または第2の抗原結合ドメインと第2のTCRDとの間に第2のペプチドリンカーが存在する。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、例えば、共有結合(例えば、ペプチド結合または他の化学結合)または非共有結合によって連結される。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、a)第1のTCRDの接続ペプチド中の残基と第2のTCRDの接続ペプチド中の残基との間のジスルフィド結合;および/またはb)第1の抗原結合ドメイン中のCH1抗体ドメイン中の残基と第2の抗原結合ドメイン中のCL抗体ドメイン中の残基との間のジスルフィド結合を介して連結される。一部の実施形態では、標的抗原は細胞表面抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、タンパク質、炭水化物および脂質からなる群から選択される。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、疾患関連抗原、例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、CD19、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5DまたはFCRL5である。一部の実施形態では、標的抗原は、表面提示されたペプチド/MHC複合体である。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、疾患関連抗原(例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原)に由来するペプチドとMHCタンパク質とを含む。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、ペプチドとMHCタンパク質とを含み、ペプチドは、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1およびPSAからなる群から選択されるタンパク質に由来する。一部の実施形態では、MHCタンパク質は、MHCクラスIタンパク質である。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Aである。一部の実施形態では、HLA-Aは、HLA-A02である。一部の実施形態では、HLA-A02は、HLA-A*02:01である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、αβT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、TCRγおよび/またはδ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているγδT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
【0344】
一部の実施形態では、それを必要とする個体において標的抗原関連疾患(例えば、がんまたはウイルス感染症)を処置する方法であって、個体に、有効量の、標的抗原を特異的に認識するabTCRをそれらの表面上に提示するエフェクター細胞(例えば、T細胞またはナチュラルキラー細胞)を含む組成物を投与するステップを含み、abTCRが、a)アミノ末端からカルボキシ末端の順に、第1の抗原結合ドメインと配列番号15のアミノ酸配列を含む第1のTCRDとを含む第1のポリペプチド鎖;およびb)アミノ末端からカルボキシ末端の順に、第2の抗原結合ドメインと配列番号16のアミノ酸配列を含む第2のTCRDとを含む第2のポリペプチド鎖、を含み;第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとが、標的抗原に特異的に結合するFab様抗原結合モジュールを形成し、第1のTCRDと第2のTCRDとが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なTCRMを形成する、方法が提供される。一部の実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、ヒト、ヒト化、キメラ、半合成または完全合成である。一部の実施形態では、abTCRは、a)配列番号70もしくは71のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)少なくとも1つのT細胞共刺激シグナル伝達配列;および/またはb)配列番号50~52のいずれか1つのアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)エピトープタグを含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、abTCRは、第1の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドおよび/または第2の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含み、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γεおよびζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能である。一部の実施形態では、TCRMは、abTCR-CD3複合体形成を促進する。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、a)第1のTCRDの接続ペプチド中の残基と第2のTCRDの接続ペプチド中の残基との間のジスルフィド結合;および/またはb)Fab様抗原結合モジュール中のCH1抗体ドメイン中の残基とCL抗体ドメイン中の残基との間のジスルフィド結合を介して連結される。一部の実施形態では、標的抗原は細胞表面抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、タンパク質、炭水化物および脂質からなる群から選択される。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、疾患関連抗原、例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、CD19、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5DまたはFCRL5である。一部の実施形態では、標的抗原は、表面提示されたペプチド/MHC複合体である。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、疾患関連抗原(例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原)に由来するペプチドとMHCタンパク質とを含む。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、ペプチドとMHCタンパク質とを含み、ペプチドは、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1およびPSAからなる群から選択されるタンパク質に由来する。一部の実施形態では、MHCタンパク質は、MHCクラスIタンパク質である。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Aである。一部の実施形態では、HLA-Aは、HLA-A02である。一部の実施形態では、HLA-A02は、HLA-A*02:01である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、γδT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、TCRαおよび/またはβ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているαβT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
【0345】
一部の実施形態では、それを必要とする個体において標的抗原関連疾患(例えば、がんまたはウイルス感染症)を処置する方法であって、個体に、有効量の、標的抗原を特異的に認識するabTCRをそれらの表面上に提示するエフェクター細胞(例えば、T細胞またはナチュラルキラー細胞)を含む組成物を投与するステップを含み、abTCRが、a)アミノ末端からカルボキシ末端の順に、第1の抗原結合ドメインと配列番号17のアミノ酸配列を含む第1のTCRDとを含む第1のポリペプチド鎖;およびb)アミノ末端からカルボキシ末端の順に、第2の抗原結合ドメインと配列番号18のアミノ酸配列を含む第2のTCRDとを含む第2のポリペプチド鎖、を含み;第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとが、標的抗原に特異的に結合するFab様抗原結合モジュールを形成し、第1のTCRDと第2のTCRDとが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なTCRMを形成する、方法が提供される。一部の実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、ヒト、ヒト化、キメラ、半合成または完全合成である。一部の実施形態では、abTCRは、a)配列番号70もしくは71のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)少なくとも1つのT細胞共刺激シグナル伝達配列;および/またはb)配列番号50~52のいずれか1つのアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)エピトープタグを含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、abTCRは、第1の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドおよび/または第2の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含み、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γεおよびζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能である。一部の実施形態では、TCRMは、abTCR-CD3複合体形成を促進する。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、a)第1のTCRDの接続ペプチド中の残基と第2のTCRDの接続ペプチド中の残基との間のジスルフィド結合;および/またはb)Fab様抗原結合モジュール中のCH1抗体ドメイン中の残基とCL抗体ドメイン中の残基との間のジスルフィド結合を介して連結される。一部の実施形態では、標的抗原は細胞表面抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、タンパク質、炭水化物および脂質からなる群から選択される。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、疾患関連抗原、例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、CD19、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5DまたはFCRL5である。一部の実施形態では、標的抗原は、表面提示されたペプチド/MHC複合体である。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、疾患関連抗原(例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原)に由来するペプチドとMHCタンパク質とを含む。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、ペプチドとMHCタンパク質とを含み、ペプチドは、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1およびPSAからなる群から選択されるタンパク質に由来する。一部の実施形態では、MHCタンパク質は、MHCクラスIタンパク質である。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Aである。一部の実施形態では、HLA-Aは、HLA-A02である。一部の実施形態では、HLA-A02は、HLA-A*02:01である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、γδT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、TCRαおよび/またはβ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているαβT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
【0346】
一部の実施形態では、それを必要とする個体において標的抗原関連疾患(例えば、がんまたはウイルス感染症)を処置する方法であって、個体に、有効量の、標的抗原を特異的に認識するabTCRをそれらの表面上に提示するエフェクター細胞(例えば、T細胞またはナチュラルキラー細胞)を含む組成物を投与するステップを含み、abTCRが、a)アミノ末端からカルボキシ末端の順に、第1の抗原結合ドメインと配列番号19のアミノ酸配列を含む第1のTCRDとを含む第1のポリペプチド鎖;およびb)アミノ末端からカルボキシ末端の順に、第2の抗原結合ドメインと配列番号20のアミノ酸配列を含む第2のTCRDとを含む第2のポリペプチド鎖、を含み;第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとが、標的抗原に特異的に結合するFab様抗原結合モジュールを形成し、第1のTCRDと第2のTCRDとが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なTCRMを形成する、方法が提供される。一部の実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、ヒト、ヒト化、キメラ、半合成または完全合成である。一部の実施形態では、abTCRは、a)配列番号70もしくは71のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)少なくとも1つのT細胞共刺激シグナル伝達配列;および/またはb)配列番号50~52のいずれか1つのアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)エピトープタグを含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、abTCRは、第1の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドおよび/または第2の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含み、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γεおよびζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能である。一部の実施形態では、TCRMは、abTCR-CD3複合体形成を促進する。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、a)第1のTCRDの接続ペプチド中の残基と第2のTCRDの接続ペプチド中の残基との間のジスルフィド結合;および/またはb)Fab様抗原結合モジュール中のCH1抗体ドメイン中の残基とCL抗体ドメイン中の残基との間のジスルフィド結合を介して連結される。一部の実施形態では、標的抗原は細胞表面抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、タンパク質、炭水化物および脂質からなる群から選択される。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、疾患関連抗原、例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、CD19、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5DまたはFCRL5である。一部の実施形態では、標的抗原は、表面提示されたペプチド/MHC複合体である。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、疾患関連抗原(例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原)に由来するペプチドとMHCタンパク質とを含む。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、ペプチドとMHCタンパク質とを含み、ペプチドは、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1およびPSAからなる群から選択されるタンパク質に由来する。一部の実施形態では、MHCタンパク質は、MHCクラスIタンパク質である。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Aである。一部の実施形態では、HLA-Aは、HLA-A02である。一部の実施形態では、HLA-A02は、HLA-A*02:01である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、αβT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、TCRγおよび/またはδ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているγδT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
【0347】
一部の実施形態では、それを必要とする個体において標的抗原関連疾患(例えば、がんまたはウイルス感染症)を処置する方法であって、個体に、有効量の、標的抗原を特異的に認識するabTCRをそれらの表面上に提示するエフェクター細胞(例えば、T細胞またはナチュラルキラー細胞)を含む組成物を投与するステップを含み、abTCRが、a)アミノ末端からカルボキシ末端の順に、第1の抗原結合ドメインと配列番号21のアミノ酸配列を含む第1のTCRDとを含む第1のポリペプチド鎖;およびb)アミノ末端からカルボキシ末端の順に、第2の抗原結合ドメインと配列番号22のアミノ酸配列を含む第2のTCRDとを含む第2のポリペプチド鎖、を含み;第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとが、標的抗原に特異的に結合するFab様抗原結合モジュールを形成し、第1のTCRDと第2のTCRDとが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なTCRMを形成する、方法が提供される。一部の実施形態では、Fab様抗原結合モジュールは、ヒト、ヒト化、キメラ、半合成または完全合成である。一部の実施形態では、abTCRは、a)配列番号70もしくは71のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)少なくとも1つのT細胞共刺激シグナル伝達配列;および/またはb)配列番号50~52のいずれか1つのアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)エピトープタグを含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、abTCRは、第1の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドおよび/または第2の抗原結合ドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含み、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、TCRMは、CD3δε、CD3γεおよびζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能である。一部の実施形態では、TCRMは、abTCR-CD3複合体形成を促進する。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とは、a)第1のTCRDの接続ペプチド中の残基と第2のTCRDの接続ペプチド中の残基との間のジスルフィド結合;および/またはb)Fab様抗原結合モジュール中のCH1抗体ドメイン中の残基とCL抗体ドメイン中の残基との間のジスルフィド結合を介して連結される。一部の実施形態では、標的抗原は細胞表面抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、タンパク質、炭水化物および脂質からなる群から選択される。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、疾患関連抗原、例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原である。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、CD19、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5DまたはFCRL5である。一部の実施形態では、標的抗原は、表面提示されたペプチド/MHC複合体である。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、疾患関連抗原(例えば、腫瘍関連抗原またはウイルスがコードする抗原)に由来するペプチドとMHCタンパク質とを含む。一部の実施形態では、ペプチド/MHC複合体は、ペプチドとMHCタンパク質とを含み、ペプチドは、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1およびPSAからなる群から選択されるタンパク質に由来する。一部の実施形態では、MHCタンパク質は、MHCクラスIタンパク質である。一部の実施形態では、MHCクラスIタンパク質は、HLA-Aである。一部の実施形態では、HLA-Aは、HLA-A02である。一部の実施形態では、HLA-A02は、HLA-A*02:01である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、αβT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、TCRγおよび/またはδ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているγδT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
【0348】
一部の実施形態では、それを必要とする個体においてAFP関連疾患を処置する方法であって、個体に、有効量の、abTCRをそれらの表面上に提示するエフェクター細胞(例えば、T細胞またはナチュラルキラー細胞)を含む組成物を投与するステップを含み、abTCRが、a)配列番号23のアミノ酸配列を含む第1のabTCRドメインを含む第1のポリペプチド鎖;およびb)配列番号24のアミノ酸配列を含む第2のabTCRドメインを含む第2のポリペプチド鎖を含み、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とが、1つまたは複数のジスルフィド結合を介して連結される、方法が提供される。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、エピトープタグは、配列番号50~52のアミノ酸配列のいずれか1つを含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、第1のabTCRドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドをさらに含み、および/または第2のポリペプチド鎖は、第2のabTCRドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、γδT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、TCRαおよび/またはβ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているαβT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
【0349】
一部の実施形態では、それを必要とする個体においてAFP関連疾患を処置する方法であって、個体に、有効量の、abTCRをそれらの表面上に提示するエフェクター細胞(例えば、T細胞またはナチュラルキラー細胞)を含む組成物を投与するステップを含み、abTCRが、a)配列番号25のアミノ酸配列を含む第1のabTCRドメインを含む第1のポリペプチド鎖;およびb)配列番号26のアミノ酸配列を含む第2のabTCRドメインを含む第2のポリペプチド鎖を含み、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とが、1つまたは複数のジスルフィド結合を介して連結される、方法が提供される。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、エピトープタグは、配列番号50~52のアミノ酸配列のいずれか1つを含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、第1のabTCRドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドをさらに含み、および/または第2のポリペプチド鎖は、第2のabTCRドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、γδT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、TCRαおよび/またはβ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているαβT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
【0350】
一部の実施形態では、それを必要とする個体においてAFP関連疾患を処置する方法であって、個体に、有効量の、abTCRをそれらの表面上に提示するエフェクター細胞(例えば、T細胞またはナチュラルキラー細胞)を含む組成物を投与するステップを含み、abTCRが、a)配列番号27のアミノ酸配列を含む第1のabTCRドメインを含む第1のポリペプチド鎖;およびb)配列番号28のアミノ酸配列を含む第2のabTCRドメインを含む第2のポリペプチド鎖を含み、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とが、1つまたは複数のジスルフィド結合を介して連結される、方法が提供される。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、エピトープタグは、配列番号50~52のアミノ酸配列のいずれか1つを含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、第1のabTCRドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドをさらに含み、および/または第2のポリペプチド鎖は、第2のabTCRドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、γδT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、TCRαおよび/またはβ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているαβT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
【0351】
一部の実施形態では、それを必要とする個体においてAFP関連疾患を処置する方法であって、個体に、有効量の、abTCRをそれらの表面上に提示するエフェクター細胞(例えば、T細胞またはナチュラルキラー細胞)を含む組成物を投与するステップを含み、abTCRが、a)配列番号29のアミノ酸配列を含む第1のabTCRドメインを含む第1のポリペプチド鎖;およびb)配列番号30のアミノ酸配列を含む第2のabTCRドメインを含む第2のポリペプチド鎖を含み、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とが、1つまたは複数のジスルフィド結合を介して連結される、方法が提供される。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、エピトープタグは、配列番号50~52のアミノ酸配列のいずれか1つを含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、第1のabTCRドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドをさらに含み、および/または第2のポリペプチド鎖は、第2のabTCRドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、αβT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、TCRγおよび/またはδ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているγδT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
【0352】
一部の実施形態では、それを必要とする個体においてAFP関連疾患を処置する方法であって、個体に、有効量の、abTCRをそれらの表面上に提示するエフェクター細胞(例えば、T細胞またはナチュラルキラー細胞)を含む組成物を投与するステップを含み、abTCRが、a)配列番号31のアミノ酸配列を含む第1のabTCRドメインを含む第1のポリペプチド鎖;およびb)配列番号32のアミノ酸配列を含む第2のabTCRドメインを含む第2のポリペプチド鎖を含み、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とが、1つまたは複数のジスルフィド結合を介して連結される、方法が提供される。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、エピトープタグは、配列番号50~52のアミノ酸配列のいずれか1つを含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、第1のabTCRドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドをさらに含み、および/または第2のポリペプチド鎖は、第2のabTCRドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、αβT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、TCRγおよび/またはδ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているγδT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
【0353】
一部の実施形態では、それを必要とする個体においてAFP関連疾患を処置する方法であって、個体に、有効量の、abTCRをそれらの表面上に提示するエフェクター細胞(例えば、T細胞またはナチュラルキラー細胞)を含む組成物を投与するステップを含み、abTCRが、a)配列番号33のアミノ酸配列を含む第1のabTCRドメインを含む第1のポリペプチド鎖;およびb)配列番号34のアミノ酸配列を含む第2のabTCRドメインを含む第2のポリペプチド鎖を含み、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とが、1つまたは複数のジスルフィド結合を介して連結される、方法が提供される。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、エピトープタグは、配列番号50~52のアミノ酸配列のいずれか1つを含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、第1のabTCRドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドをさらに含み、および/または第2のポリペプチド鎖は、第2のabTCRドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、αβT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、TCRγおよび/またはδ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているγδT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
【0354】
一部の実施形態では、それを必要とする個体においてAFP関連疾患を処置する方法であって、個体に、有効量の、abTCRをそれらの表面上に提示するエフェクター細胞(例えば、T細胞またはナチュラルキラー細胞)を含む組成物を投与するステップを含み、abTCRが、a)配列番号35のアミノ酸配列を含む第1のabTCRドメインを含む第1のポリペプチド鎖;およびb)配列番号36のアミノ酸配列を含む第2のabTCRドメインを含む第2のポリペプチド鎖を含み、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とが、1つまたは複数のジスルフィド結合を介して連結される、方法が提供される。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、エピトープタグは、配列番号50~52のアミノ酸配列のいずれか1つを含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、第1のabTCRドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドをさらに含み、および/または第2のポリペプチド鎖は、第2のabTCRドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、αβT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、TCRγおよび/またはδ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているγδT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
【0355】
一部の実施形態では、それを必要とする個体においてCD19関連疾患を処置する方法であって、個体に、有効量の、abTCRをそれらの表面上に提示するエフェクター細胞(例えば、T細胞またはナチュラルキラー細胞)を含む組成物を投与するステップを含み、abTCRが、a)配列番号42のアミノ酸配列を含む第1のabTCRドメインを含む第1のポリペプチド鎖;およびb)配列番号43のアミノ酸配列を含む第2のabTCRドメインを含む第2のポリペプチド鎖を含み、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とが、1つまたは複数のジスルフィド結合を介して連結される、方法が提供される。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、エピトープタグは、配列番号50~52のアミノ酸配列のいずれか1つを含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、第1のabTCRドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドをさらに含み、および/または第2のポリペプチド鎖は、第2のabTCRドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、αβT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、TCRγおよび/またはδ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているγδT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
【0356】
一部の実施形態では、それを必要とする個体においてCD19関連疾患を処置する方法であって、個体に、有効量の、abTCRをそれらの表面上に提示するエフェクター細胞(例えば、T細胞またはナチュラルキラー細胞)を含む組成物を投与するステップを含み、abTCRが、a)配列番号42のアミノ酸配列を含む第1のabTCRドメインを含む第1のポリペプチド鎖;およびb)配列番号54のアミノ酸配列を含む第2のabTCRドメインを含む第2のポリペプチド鎖を含み、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とが、1つまたは複数のジスルフィド結合を介して連結される、方法が提供される。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、エピトープタグは、配列番号50~52のアミノ酸配列のいずれか1つを含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、第1のabTCRドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドをさらに含み、および/または第2のポリペプチド鎖は、第2のabTCRドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、αβT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、TCRγおよび/またはδ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているγδT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
【0357】
一部の実施形態では、それを必要とする個体においてCD19関連疾患を処置する方法であって、個体に、有効量の、abTCRをそれらの表面上に提示するエフェクター細胞(例えば、T細胞またはナチュラルキラー細胞)を含む組成物を投与するステップを含み、abTCRが、a)配列番号55のアミノ酸配列を含む第1のabTCRドメインを含む第1のポリペプチド鎖;およびb)配列番号54のアミノ酸配列を含む第2のabTCRドメインを含む第2のポリペプチド鎖を含み、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とが、1つまたは複数のジスルフィド結合を介して連結される、方法が提供される。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、エピトープタグは、配列番号50~52のアミノ酸配列のいずれか1つを含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、第1のabTCRドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドをさらに含み、および/または第2のポリペプチド鎖は、第2のabTCRドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、αβT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、TCRγおよび/またはδ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているγδT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
【0358】
一部の実施形態では、それを必要とする個体においてCD19関連疾患を処置する方法であって、個体に、有効量の、abTCRをそれらの表面上に提示するエフェクター細胞(例えば、T細胞またはナチュラルキラー細胞)を含む組成物を投与するステップを含み、abTCRが、a)配列番号56のアミノ酸配列を含む第1のabTCRドメインを含む第1のポリペプチド鎖;およびb)配列番号54のアミノ酸配列を含む第2のabTCRドメインを含む第2のポリペプチド鎖を含み、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖とが、1つまたは複数のジスルフィド結合を介して連結される、方法が提供される。一部の実施形態では、abTCRは、T細胞共刺激シグナル伝達配列(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30またはCD40由来)および/またはエピトープタグ(例えば、HA、FLAGまたはmyc)を含む少なくとも1つのアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、エピトープタグは、配列番号50~52のアミノ酸配列のいずれか1つを含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、第1のabTCRドメインのアミノ末端側に、第1のシグナルペプチドをさらに含み、および/または第2のポリペプチド鎖は、第2のabTCRドメインのアミノ末端側に、第2のシグナルペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のシグナルペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、αβT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、TCRγおよび/またはδ鎖の発現を遮断するまたは減少させるように改変されているγδT細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
【0359】
それを必要とする個体において標的抗原関連疾患を処置する方法であって、個体に、異なるabTCRを発現する複数のエフェクター細胞を含む組成物を投与するステップを含む、方法もまた企図される。したがって、一部の実施形態では、本明細書に記載される個体において標的抗原関連疾患を処置するための方法のいずれかによれば、組成物は、本明細書に記載される不均一なabTCRエフェクター細胞組成物である。
【0360】
例えば、一部の実施形態では、それを必要とする個体において標的抗原関連疾患(例えば、がんまたはウイルス感染症)を処置する方法であって、個体に、有効量の、本明細書に記載される実施形態のいずれかにしたがう複数のabTCRエフェクター細胞集団を含む不均一なabTCRエフェクター細胞組成物を投与するステップを含み、組成物中のabTCRエフェクター細胞が全て、同じ細胞型のものであり(例えば、abTCRエフェクター細胞は全て、細胞傷害性T細胞である)、abTCRエフェクター細胞の各集団が、他とは異なるabTCRを発現し、abTCRエフェクター細胞の少なくとも1つの集団が、標的抗原に特異的に結合するabTCRを発現する、方法が提供される。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞は、T細胞である。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞の各集団は、標的抗原に特異的に結合するabTCRを発現する。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞の少なくとも1つの集団は、異なる標的抗原に特異的に結合するabTCRを発現する。abTCRエフェクター細胞の少なくとも1つの集団が異なる標的抗原に特異的に結合するabTCRを発現する一部の実施形態では、異なる標的抗原の各々は、標的抗原関連疾患と関連する。
【0361】
一部の実施形態では、それを必要とする個体において標的抗原関連疾患(例えば、がんまたはウイルス感染症)を処置する方法であって、個体に、有効量の、本明細書に記載される実施形態のいずれかにしたがう複数のabTCRエフェクター細胞集団を含む不均一なabTCRエフェクター細胞組成物を投与するステップを含み、abTCRエフェクター細胞の少なくとも1つの集団が、他とは異なる細胞型のものであり、abTCRエフェクター細胞の少なくとも1つの集団が、標的抗原に特異的に結合するabTCRを発現する、方法が提供される。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞の集団は全て、異なる細胞型のものである。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞は、T細胞である。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞の各集団は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される細胞型のものである。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞の各集団は、同じabTCRを発現する。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞の少なくとも1つの集団は、他とは異なるabTCRを発現する。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞の各集団は、他とは異なるabTCRを発現する。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞の各集団は、標的抗原に特異的に結合するabTCRを発現する。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞の少なくとも1つの集団は、異なる標的抗原に特異的に結合するabTCRを発現する。abTCRエフェクター細胞の少なくとも1つの集団が異なる標的抗原に特異的に結合するabTCRを発現する一部の実施形態では、異なる標的抗原の各々は、標的抗原関連疾患と関連する。
【0362】
一部の実施形態では、それを必要とする個体において複数の標的抗原と関連する疾患を処置する方法であって、個体に、有効量の、本明細書に記載される実施形態のいずれかにしたがう複数のabTCRエフェクター細胞集団を含む不均一なabTCRエフェクター細胞組成物を投与するステップを含み、組成物中のabTCRエフェクター細胞が全て、同じ細胞型のものであり(例えば、abTCRエフェクター細胞は全て、細胞傷害性T細胞である)、abTCRエフェクター細胞の各集団が、他とは異なるabTCRを発現し、複数の標的抗原の各標的抗原について、abTCRエフェクター細胞の少なくとも1つの集団が、標的抗原に特異的に結合するabTCRを発現する、方法が提供される。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞は、T細胞である。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される。
【0363】
一部の実施形態では、それを必要とする個体において複数の標的抗原と関連する疾患を処置する方法であって、個体に、有効量の、本明細書に記載される実施形態のいずれかにしたがう複数のabTCRエフェクター細胞集団を含む不均一なabTCRエフェクター細胞組成物を投与するステップを含み、abTCRエフェクター細胞の少なくとも1つの集団が、他とは異なる細胞型のものであり、複数の標的抗原の各標的抗原について、abTCRエフェクター細胞の少なくとも1つの集団が、標的抗原に特異的に結合するabTCRを発現する、方法が提供される。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞の集団は全て、異なる細胞型のものである。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞は、T細胞である。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞の各集団は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される細胞型のものである。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞の各集団は、他とは異なるabTCRを発現する。
【0364】
一部の実施形態では、個体は、哺乳動物(例えば、ヒト、非ヒト霊長類、ラット、マウス、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコなど)である。一部の実施形態では、個体は、ヒトである。一部の実施形態では、個体は、臨床患者、臨床試験の志願者、実験動物などである。一部の実施形態では、個体は、約60歳未満(例えば、約50歳未満、約40歳未満、約30歳未満、約25歳未満、約20歳未満、約15歳未満、または約10歳未満のいずれかを含む)である。一部の実施形態では、個体は、約60歳超(例えば、約70歳超、約80歳超、約90歳超、または約100歳超のいずれかを含む)である。一部の実施形態では、個体は、本明細書に記載される疾患または障害(例えば、がんまたはウイルス感染症)のうちの1つまたは複数と診断されているまたはそれに環境的もしくは遺伝的にかかりやすい。一部の実施形態では、個体は、本明細書に記載される1つまたは複数の疾患または障害に関連づけられる1つまたは複数の危険因子を有する。
【0365】
一部の実施形態では、本発明のabTCRエフェクター細胞組成物は、標的抗原発現が関与する疾患または障害を処置するために、第2、第3または第4の薬剤(例えば、抗新生物剤、成長阻害剤、細胞傷害剤または化学療法剤を含む)と組み合わせて投与される。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞組成物は、サイトカイン(例えば、IL-2)と組み合わせて投与される。一部の実施形態では、abTCRは、MHCタンパク質の発現を増加させる薬剤および/またはMHCタンパク質によるペプチドの表面提示を増強する薬剤と組み合わせて投与される。一部の実施形態では、薬剤には、例えば、IFN受容体アゴニスト、Hsp90阻害剤、p53発現のエンハンサー、および化学療法剤が含まれる。一部の実施形態では、薬剤は、例えば、IFNγ、IFNβおよびIFNαを含むIFN受容体アゴニストである。一部の実施形態では、薬剤は、例えば、タネスピマイシン(17-AAG)、アルベスピマイシン(17-DMAG)、レタスピマイシン(IPI-504)、IPI-493、CNF2024/BIIB021、MPC-3100、Debio 0932(CUDC-305)、PU-H71、Ganetespib(STA-9090)、NVP-AUY922(VER-52269)、HSP990、KW-2478、AT13387、SNX-5422、DS-2248およびXL888を含むHsp90阻害剤である。一部の実施形態では、薬剤は、例えば、5-フルオロウラシルおよびヌトリン-3を含む、p53発現のエンハンサーである。一部の実施形態では、薬剤は、例えば、トポテカン、エトポシド、シスプラチン、パクリタキセルおよびビンブラスチンを含む化学療法剤である。
【0366】
一部の実施形態では、それを必要とする個体において標的抗原陽性疾患を処置する方法であって、個体に、サイトカイン(例えば、IL-2)と組み合わせて、本明細書に記載される実施形態のいずれかにしたがうabTCRエフェクター細胞組成物を投与するステップを含む方法が提供される。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞組成物とサイトカインとは、同時に投与される。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞組成物とサイトカインとは、逐次投与される。
【0367】
一部の実施形態では、それを必要とする個体において標的抗原陽性疾患を処置する方法であって、標的抗原を発現する細胞が、それらの表面上に、標的抗原とMHCクラスIタンパク質とを含む複合体を通常は提示しないまたは比較的低いレベルで提示し、個体に、MHCクラスIタンパク質の発現を増加させる薬剤および/またはMHCクラスIタンパク質による標的抗原の表面提示を増強する薬剤と組み合わせて、本明細書に記載される実施形態のいずれかにしたがうabTCRエフェクター細胞組成物を投与するステップを含む、方法が提供される。一部の実施形態では、薬剤には、例えば、IFN受容体アゴニスト、Hsp90阻害剤、p53発現のエンハンサー、および化学療法剤が含まれる。一部の実施形態では、薬剤は、例えば、IFNγ、IFNβおよびIFNαを含むIFN受容体アゴニストである。一部の実施形態では、薬剤は、例えば、タネスピマイシン(17-AAG)、アルベスピマイシン(17-DMAG)、レタスピマイシン(IPI-504)、IPI-493、CNF2024/BIIB021、MPC-3100、Debio 0932(CUDC-305)、PU-H71、Ganetespib(STA-9090)、NVP-AUY922(VER-52269)、HSP990、KW-2478、AT13387、SNX-5422、DS-2248およびXL888を含むHsp90阻害剤である。一部の実施形態では、薬剤は、例えば、5-フルオロウラシルおよびヌトリン-3を含む、p53発現のエンハンサーである。一部の実施形態では、薬剤は、例えば、トポテカン、エトポシド、シスプラチン、パクリタキセルおよびビンブラスチンを含む化学療法剤である。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞組成物と薬剤とは、同時に投与される。一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞組成物と薬剤とは、逐次投与される。
【0368】
一部の実施形態では、それを必要とする個体において標的抗原関連疾患(例えば、がんまたはウイルス感染症)を処置する方法であって、個体に、有効量の、本明細書に記載される実施形態のいずれかにしたがうabTCRをコードする核酸を含む組成物を投与するステップを含む方法が提供される。遺伝子送達のための方法は、当該分野で公知である。例えば、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第5,399,346号、同第5,580,859号、同第5,589,466号を参照のこと。
【0369】
がんの処置は、例えば、腫瘍の退縮、腫瘍の重量またはサイズの減少、進行までの時間、生存の持続時間、無増悪生存期間、奏効率、応答の持続時間、生活の質、タンパク質の発現および/または活性によって評価することができる。例えば放射線画像法による応答の測定を含む、療法の有効性を決定するための手法を用いることができる。
【0370】
一部の実施形態では、処置の有効性は、腫瘍成長阻害の百分率(%TGI)として測定され、これは、方程式100-(T/C×100)(式中、Tは、処置される腫瘍の相対的な腫瘍体積の平均であり、Cは、無処置の腫瘍の相対的な腫瘍体積の平均である)を使用して算出される。一部の実施形態では、%TGIは、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、または95%超である。
【0371】
ウイルス感染症の処置は、例えば、ウイルス負荷、生存の持続時間、生活の質、タンパク質発現および/または活性によって評価され得る。
【0372】
疾患
abTCRエフェクター細胞は、一部の実施形態では、標的抗原と関連するがんを処置するために有用であり得る。本明細書に記載される方法のいずれかを使用して処置され得るがんには、血管新生されていない腫瘍、またはまだ実質的に血管新生されていない腫瘍、ならびに血管新生された腫瘍が含まれる。がんは、非固形腫瘍(例えば、血液学的腫瘍、例えば、白血病およびリンパ腫)を含み得、または固形腫瘍を含み得る。本発明のabTCRエフェクター細胞で処置されるがんの型には、癌腫、芽細胞腫および肉腫、ならびにある特定の白血病またはリンパ様悪性腫瘍、良性および悪性の腫瘍、ならびに悪性腫瘍、例えば、肉腫、癌腫およびメラノーマが含まれるがこれらに限定されない。成体腫瘍/がんおよび小児腫瘍/がんもまた含まれる。
【0373】
血液学的がんは、血液または骨髄のがんである。血液学的(または血行性)がんの例には、急性白血病(例えば、急性リンパ球性白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病ならびに骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性および赤白血病)、慢性白血病(例えば、慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病、慢性骨髄性白血病および慢性リンパ球性白血病)、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(低悪性度および高悪性度形態)、多発性骨髄腫、形質細胞腫、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、重鎖病、骨髄異形成症候群、ヘアリー細胞白血病および脊髄形成異常症を含む白血病が含まれる。
【0374】
固形腫瘍は、嚢胞も液体領域も通常は含まない、組織の異常な塊である。固形腫瘍は、良性であっても、または悪性であってもよい。異なる型の固形腫瘍は、それらを形成する細胞の型によって命名される(例えば、肉腫、癌腫およびリンパ腫)。固形腫瘍、例えば、肉腫および癌腫の例には、副腎皮質癌、胆管細胞癌、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫および他の肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、胃がん、リンパ様悪性腫瘍、膵臓がん、乳がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がん、肝細胞癌、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、甲状腺がん(例えば、甲状腺髄様癌および甲状腺乳頭癌)、褐色細胞腫、皮脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、ヘパトーマ、胆管癌、絨毛癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん(例えば、子宮頸癌および前侵襲性子宮頸部形成異常)、結腸直腸がん、肛門、肛門管または肛門直腸のがん、膣がん、外陰部のがん(例えば、扁平上皮細胞癌、上皮内癌、腺癌および線維肉腫)、陰茎がん、口咽頭がん、食道がん、頭部がん(例えば、扁平上皮細胞癌)、頸部がん(例えば、扁平上皮細胞癌)、精巣がん(例えば、セミノーマ、奇形腫、胎児性癌、奇形癌、絨毛癌、肉腫、ライディッヒ細胞腫瘍、線維腫、線維腺腫、腺腫様腫瘍および脂肪腫)、膀胱癌、腎臓がん、メラノーマ、子宮のがん(例えば、子宮内膜癌)、尿路上皮がん(例えば、扁平上皮細胞癌、移行上皮癌、腺癌、尿管がんおよび膀胱がん)、およびCNS腫瘍(例えば、グリオーマ(例えば、脳幹グリオーマおよび混合グリオーマ)、グリア芽細胞腫(多形性グリア芽細胞腫としても公知)、星状細胞腫、CNSリンパ腫、胚細胞腫、髄芽細胞腫、シュワン細胞腫、頭蓋咽頭腫(craniopharyogioma)、上衣(細胞)腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏枝グリオーマ、髄膜腫(menangioma)、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫および脳転移)が含まれる。
【0375】
がんの処置は、例えば、腫瘍の退縮、腫瘍の重量またはサイズの収縮、進行までの時間、生存の持続期間、無増悪生存期間、全体的奏効率、応答の持続期間、生活の質、タンパク質の発現および/または活性によって評価することができる。例えば放射線画像法による応答の測定を含む、療法の有効性を決定するため手法を用いることができる。
【0376】
abTCRエフェクター細胞は、他の実施形態では、病原体関連(例えば、ウイルスがコードする)抗原を標的化することによって感染性疾患を処置するために有用であり得る。予防または処置される感染症は、例えば、ウイルス、細菌、原生生物または寄生生物によって引き起こされ得る。標的抗原は、病原体によって引き起こされる疾患の原因となる、または病原体が感染した宿主において免疫学的応答を誘導することが可能な、病原性タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドであり得る。abTCRエフェクター細胞によって標的化され得る病原性抗原には、Acinetobacter baumannii、Anaplasma属、Anaplasma phagocytophilum、Ancylostoma braziliense、Ancylostoma duodenale、Arcanobacterium haemolyticum、Ascaris lumbricoides、Aspergillus属、アストロウイルス科、Babesia属、Bacillus anthracis、Bacillus cereus、Bartonella henselae、BKウイルス、Blastocystis hominis、Blastomyces dermatitidis、Bordetella pertussis、Borrelia burgdorferi、Borrelia属、Borrelia spp、Brucella属、Brugia malayi、ブニヤウイルス科、Burkholderia cepaciaおよび他のBurkholderia種、Burkholderia mallei、Burkholderia pseudomallei、カリシウイルス科、Campylobacter属、Candida albicans、Candida spp、Chlamydia trachomatis、Chlamydophila pneumoniae、Chlamydophila psittaci、CJDプリオン、Clonorchis sinensis、Clostridium botulinum、Clostridium difficile、Clostridium perfringens、Clostridium perfringens、Clostridium spp、Clostridium tetani、Coccidioides spp、コロナウイルス、Corynebacterium diphtheriae、Coxiella burnetii、クリミアコンゴ出血熱ウイルス、Cryptococcus neoformans、Cryptosporidium属、サイトメガロウイルス(CMV)、デングウイルス(DEN-1、DEN-2、DEN-3およびDEN-4)、Dientamoeba fragilis、エボラウイルス(EBOV)、Echinococcus属、Ehrlichia chaffeensis、Ehrlichia ewingii、Ehrlichia属、Entamoeba histolytica、Enterococcus属、エンテロウイルス属、エンテロウイルス、主にコクサッキーAウイルスおよびエンテロウイルス71(EV71)、Epidermophyton spp、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、Escherichia coli O157:H7、O111およびO104:H4、Fasciola hepaticaおよびFasciola gigantica、FFIプリオン、Filarioidea上科、フラビウイルス、Francisella tularensis、Fusobacterium属、Geotrichum candidum、Giardia intestinalis、Gnathostoma spp、GSSプリオン、グアナリトウイルス、Haemophilus ducreyi、Haemophilus influenzae、Helicobacter pylori、ヘニパウイルス(ヘンドラウイルス、ニパーウイルス)、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス1および2(HSV-1およびHSV-2)、Histoplasma capsulatum、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)、Hortaea werneckii、ヒトボカウイルス(HBoV)、ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)およびヒトヘルペスウイルス7(HHV-7)、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、ヒトパラインフルエンザウイルス(HPIV)、ヒトT細胞白血病ウイルス1(HTLV-1)、日本脳炎ウイルス、JCウイルス、フニンウイルス、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)、Kingella kingae、Klebsiella granulomatis、クーループリオン、ラッサウイルス、Legionella pneumophila、Leishmania属、Leptospira属、Listeria monocytogenes、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、マチュポウイルス、Malassezia spp、マールブルグウイルス、麻疹ウイルス、Metagonimus yokagawai、Microsporidia phylum、伝染性軟属腫ウイルス(MCV)、ムンプスウイルス、Mycobacterium lepraeおよびMycobacterium lepromatosis、Mycobacterium tuberculosis、Mycobacterium ulcerans、Mycoplasma pneumoniae、Naegleria fowleri、Necator americanus、Neisseria gonorrhoeae、Neisseria meningitidis、Nocardia asteroides、Nocardia spp、Onchocerca volvulus、Orientia tsutsugamushi、オルトミクソウイルス科(インフルエンザ)、Paracoccidioides brasiliensis、Paragonimus spp、Paragonimus westermani、パルボウイルスB19、Pasteurella属、Plasmodium属、Pneumocystis jirovecii、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、ライノウイルス属、ライノウイルス、Rickettsia akari、Rickettsia属、Rickettsia prowazekii、Rickettsia rickettsii、Rickettsia typhi、リフトバレー熱ウイルス、ロタウイルス、風疹ウイルス、サビアウイルス、Salmonella属、Sarcoptes scabiei、SARSコロナウイルス、Schistosoma属、Shigella属、シンノンブルウイルス、ハンタウイルス、Sporothrix schenckii、Staphylococcus属、Staphylococcus属、Streptococcus agalactiae、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus pyogenes、Strongyloides stercoralis、Taenia属、Taenia solium、ダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV)、Toxocara canisまたはToxocara cati、Toxoplasma gondii、Treponema pallidum、Trichinella spiralis、Trichomonas vaginalis、Trichophyton spp、Trichuris trichiura、Trypanosoma brucei、Trypanosoma cruzi、Ureaplasma urealyticum、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、大痘瘡または小痘瘡、vCJDプリオン、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、Vibrio cholerae、ウエストナイルウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス、Wuchereria bancrofti、黄熱病ウイルス、Yersinia enterocolitica、Yersinia pestis、ならびにYersinia pseudotuberculosisに由来する抗原が含まれるがこれらに限定されない。
【0377】
一部の実施形態では、abTCRエフェクター細胞は、発癌性感染性疾患、例えば、発癌性ウイルスによる感染症を処置するために使用される。発癌性ウイルスには、CMV、EBV、HBV、KSHV、HPV、MCV、HTLV-1、HIV-1およびHCVが含まれるがこれらに限定されない。abTCRの標的抗原は、Tax、E7、E6/E7、E6、HBx、EBNAタンパク質(例えば、EBNA3A、EBNA3CおよびEBNA2)、v-サイクリン、LANA1、LANA2、LMP-1、k-bZIP、RTA、KSHV K8、およびそれらの断片が含まれるがこれらに限定されないウイルス腫瘍性タンパク質であり得る。Ahuja, Richaら、Curr. Sci.、2014年を参照のこと。
【0378】
製造物品およびキット
本発明の一部の実施形態では、標的抗原陽性疾患、例えば、がん(例えば、副腎皮質癌、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、胆管細胞癌、結腸直腸がん、食道がん、グリア芽細胞腫、グリオーマ、肝細胞癌、頭頸部がん、腎臓がん、肺がん、メラノーマ、中皮腫、多発性骨髄腫、膵臓がん、褐色細胞腫、形質細胞腫、神経芽細胞腫、卵巣がん、前立腺がん、肉腫、胃がん、子宮がんまたは甲状腺がん)またはウイルス感染症(例えば、CMV、EBV、HBV、KSHV、HPV、MCV、HTLV-1、HIV-1またはHCVによる感染症)の処置に有用な材料を含む製造物品が提供される。製造物品は、容器、および、容器上のまたは容器に付随する標識または添付文書を含み得る。適切な容器としては、例えば、ビン、バイアル、シリンジなどが挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの種々の材料から形成されたものであってよい。一般に、容器は、本明細書に記載の疾患または障害の処置に有効である組成物を保持し、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、静脈内溶液バッグまたは皮下注射針で穴をあけることができる止め栓を有するバイアルであってよい)。組成物中の少なくとも1つの活性剤は、本発明のabTCRをその表面上に提示するエフェクター細胞である。標識または添付文書は、組成物が特定の状態を処置するために使用されるものであることを示す。標識または添付文書は、abTCRエフェクター細胞組成物の患者への投与に関する指示をさらに含む。本明細書に記載のコンビナトリアル治療を含む製造物品およびキットも企図される。
【0379】
添付文書とは、市販の治療用製品の市販パッケージに慣例的に含まれる、そのような治療用製品の使用にかかわる適応症、使用法、投与量、投与、禁忌および/または警告についての情報を含有する指示を指す。一部の実施形態では、添付文書は、組成物が、標的抗原陽性がん(例えば、副腎皮質癌、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、胆管細胞癌、結腸直腸がん、食道がん、グリア芽細胞腫、グリオーマ、肝細胞癌、頭頸部がん、腎臓がん、肺がん、メラノーマ、中皮腫、多発性骨髄腫、膵臓がん、褐色細胞腫、形質細胞腫、神経芽細胞腫、卵巣がん、前立腺がん、肉腫、胃がん、子宮がんまたは甲状腺がん)を処置するために使用されるものであることを示す。他の実施形態では、添付文書は、組成物が、標的抗原陽性ウイルス感染症(例えば、CMV、EBV、HBV、KSHV、HPV、MCV、HTLV-1、HIV-1またはHCVによる感染症)を処置するために使用されるものであることを示す。
【0380】
さらに、製造物品は、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝食塩水、リンゲル液およびブドウ糖溶液などの、薬学的に許容される緩衝液を含む第2の容器をさらに含み得る。製造物品は、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、およびシリンジを含む、商業的観点および使用者の観点から望ましい他の材料をさらに含み得る。
【0381】
任意選択で製造物品と組み合わせた、本明細書に記載される標的抗原陽性疾患または障害の処置のためなどの種々の目的に有用なキットもまた提供される。本発明のキットは、abTCRエフェクター細胞組成物(または単位剤形および/または製造物品)を含む1つまたは複数の容器を含み、一部の実施形態では、本明細書に記載される方法のいずれかにしたがう使用のための別の薬剤(例えば、本明細書に記載される薬剤)および/または指示をさらに含む。キットは、処置に適切な個体の選択の説明をさらに含み得る。本発明のキット中で提供される指示は、典型的には、標識または添付文書(例えば、キット中に含まれる紙シート)上の書面による指示であるが、機械可読指示(例えば、磁気または光学記憶ディスク上に保持される指示)もまた許容される。
【0382】
例えば、一部の実施形態では、キットは、abTCRをその表面上に提示するエフェクター細胞を含む組成物を含む。一部の実施形態では、キットは、a)abTCRをその表面上に提示するエフェクター細胞を含む組成物、およびb)有効量の少なくとも1つの他の薬剤を含み、他の薬剤は、MHCタンパク質の発現を増加させるおよび/またはMHCタンパク質によるペプチドの表面提示を増強する(例えば、IFNγ、IFNβ、IFNα、またはHsp90阻害剤)。一部の実施形態では、キットは、a)abTCRをその表面上に提示するエフェクター細胞を含む組成物、およびb)標的抗原陽性疾患(例えば、がんまたはウイルス感染症)の処置のために個体にabTCRエフェクター細胞組成物を投与することについての指示を含む。一部の実施形態では、キットは、a)abTCRをその表面上に提示するエフェクター細胞を含む組成物、b)有効量の少なくとも1つの他の薬剤であって、MHCタンパク質の発現を増加させるおよび/またはMHCタンパク質によるペプチドの表面提示を増強する(例えば、IFNγ、IFNβ、IFNα、またはHsp90阻害剤)、他の薬剤、ならびにc)標的抗原陽性疾患(例えば、がんまたはウイルス感染症)の処置のために個体にabTCRエフェクター細胞組成物および他の薬剤(複数可)を投与することについての指示を含む。abTCRエフェクター細胞組成物および他の薬剤(複数可)は、別々の容器中に存在していてもよく、単一の容器中に存在していてもよい。例えば、キットは、1つの別個の組成物を含んでもよく、2つまたはそれよりも多い組成物であって、1つの組成物がabTCRエフェクター細胞を含み、別の組成物が他の薬剤を含む、組成物を含んでもよい。
【0383】
一部の実施形態では、キットは、a)abTCRを含む組成物、およびb)abTCRをエフェクター細胞(例えば、個体に由来する、エフェクター細胞、例えば、T細胞またはナチュラルキラー細胞)と組み合わせて、abTCRをそれらの表面上に提示するエフェクター細胞を含む組成物を形成し、標的抗原陽性疾患(例えば、がんまたはウイルス感染症)の処置のために個体にabTCRエフェクター細胞組成物を投与することについての指示を含む。一部の実施形態では、キットは、a)abTCRを含む組成物、およびb)エフェクター細胞(例えば、細胞傷害性細胞)を含む。一部の実施形態では、キットは、a)abTCRを含む組成物、b)エフェクター細胞(例えば、細胞傷害性細胞)、およびc)abTCRをエフェクター細胞と組み合わせて、abTCRをその表面上に提示するエフェクター細胞を含む組成物を形成し、標的抗原陽性疾患(例えば、がんまたはウイルス感染症)の処置のために個体にabTCRエフェクター細胞組成物を投与することについての指示を含む。
【0384】
一部の実施形態では、キットは、abTCRをコードする核酸(または核酸のセット)を含む。一部の実施形態では、キットは、a)abTCRをコードする核酸(または核酸のセット)、およびb)核酸(または核酸のセット)を発現するための宿主細胞(例えば、エフェクター細胞)を含む。一部の実施形態では、キットは、a)abTCRをコードする核酸(または核酸のセット)、ならびにb)i)宿主細胞(例えば、エフェクター細胞、例えば、T細胞)においてabTCRを発現させること、ii)abTCRを発現する宿主細胞を含む組成物を調製すること、およびiii)abTCRを発現する宿主細胞を含む組成物を、標的抗原陽性疾患(例えば、がんまたはウイルス感染症)の処置のために個体に投与することに関する指示を含む。一部の実施形態では、宿主細胞は、個体に由来する。一部の実施形態では、キットは、a)abTCRをコードする核酸(または核酸のセット)、b)核酸(または核酸のセット)を発現するための宿主細胞(例えば、エフェクター細胞)、ならびにc)i)宿主細胞においてabTCRを発現させること、ii)abTCRを発現する宿主細胞を含む組成物を調製すること、およびiii)abTCRを発現する宿主細胞を含む組成物を、標的抗原陽性疾患(例えば、がんまたはウイルス感染症)の処置のために個体に投与することに関する指示を含む。
【0385】
本発明のキットは、適切なパッケージ中に入れられる。適切なパッケージとしては、これらに限定されないが、バイアル、ビン、ジャー、フレキシブル包装(例えば、密封Mylarまたはプラスチックバッグ)などが挙げられる。キットは、任意選択で、緩衝液などの追加的な成分および説明情報も提供し得る。したがって、本出願は、バイアル(例えば、密封バイアル)、ビン、ジャー、フレキシブル包装などを含む製造物品も提供する。
【0386】
abTCRエフェクター細胞組成物の使用に関する指示は、一般に、投与量、投薬スケジュール、および意図した処置のための投与経路に関する情報を含む。容器は、単位用量、バルクパッケージ(例えば、多用量パッケージ)またはサブ単位用量であり得る。例えば、延長された期間、例えば、1週間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、2週間、3週間、4週間、6週間、8週間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間またはそれよりも長くのいずれかにわたって個体の有効な処置を提供するために十分な投与量の、本明細書に開示されるabTCRエフェクター細胞組成物を含むキットが提供され得る。キットは、薬局、例えば、病院薬局および調剤薬局における貯蔵および使用に十分な量で包装された、abTCRおよび医薬組成物の複数の単位用量、ならびに使用についての指示もまた含み得る。
【0387】
本発明の範囲および主旨の中でいくつかの実施形態が可能であることが当業者には理解されよう。ここで以下の非限定的な例に言及することにより、本発明をより詳細に記載する。以下の例は、本発明をさらに例示するものであるが、当然、いかなる形でもその範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
例示的な実施形態
【0388】
(実施形態1)
標的抗原に特異的に結合する抗体-T細胞受容体(TCR)キメラ分子(abTCR)であって、
a)VHおよびCH1抗体ドメインを含む第1の抗原結合ドメインと第1のTCRサブユニットの第1の膜貫通ドメインを含む第1のT細胞受容体ドメイン(TCRD)とを含む第1のポリペプチド鎖;ならびに
b)VLおよびCL抗体ドメインを含む第2の抗原結合ドメインと第2のTCRサブユニットの第2の膜貫通ドメインを含む第2のTCRDとを含む第2のポリペプチド鎖
を含み、
前記第1の抗原結合ドメインの前記VHおよびCH1ドメインと前記第2の抗原結合ドメインの前記VLおよびCLドメインとが、前記標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールを形成し、
前記第1のTCRDと前記第2のTCRDとが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なT細胞受容体モジュール(TCRM)を形成する、
abTCR。
【0389】
(実施形態2)
前記抗原結合モジュールが、前記CH1ドメイン中の残基と前記CLドメイン中の残基との間のジスルフィド結合を含む、実施形態1に記載のabTCR。
【0390】
(実施形態3)
前記第1のポリペプチド鎖が、前記第1の抗原結合ドメインと前記第1のTCRDとの間に第1のペプチドリンカーをさらに含む、実施形態1または2に記載のabTCR。
【0391】
(実施形態4)
前記第2のポリペプチド鎖が、前記第2の抗原結合ドメインと前記第2のTCRDとの間に第2のペプチドリンカーをさらに含む、実施形態1から3のいずれか一項に記載のabTCR。
【0392】
(実施形態5)
前記第1のペプチドリンカーおよび/または前記第2のペプチドリンカーが個々に、約5~約50アミノ酸長である、実施形態3または4に記載のabTCR。
【0393】
(実施形態6)
前記標的抗原が細胞表面抗原である、実施形態1から5のいずれか一項に記載のabTCR。
【0394】
(実施形態7)
前記細胞表面抗原が、タンパク質、炭水化物および脂質からなる群から選択される、実施形態6に記載のabTCR。
【0395】
(実施形態8)
前記細胞表面抗原が、CD19、ROR1、ROR2、BCMA、GPRC5DまたはFCRL5である、実施形態7に記載のabTCR。
【0396】
(実施形態9)
前記標的抗原が、ペプチドと主要組織適合複合体(MHC)タンパク質とを含む複合体である、実施形態1から5のいずれか一項に記載のabTCR。
【0397】
(実施形態10)
標的抗原に特異的に結合するabTCRであって、
a)VH抗体ドメインを含む第1の抗原結合ドメインと第1のTCRサブユニットの第1の膜貫通ドメインを含む第1のTCRDとを含む第1のポリペプチド鎖;および
b)VL抗体ドメインを含む第2の抗原結合ドメインと第2のTCRサブユニットの第2の膜貫通ドメインを含む第2のTCRDとを含む第2のポリペプチド鎖
を含み、
前記第1の抗原結合ドメインの前記VHドメインと前記第2の抗原結合ドメインの前記VLドメインとが、前記標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールを形成し、
前記第1のTCRDと前記第2のTCRDとが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なT細胞受容体モジュール(TCRM)を形成し、
前記標的抗原が、ペプチドとMHCタンパク質とを含む複合体である、
abTCR。
【0398】
(実施形態11)
前記第1のポリペプチド鎖が、前記第1の抗原結合ドメインと前記第1のTCRDとの間に第1のペプチドリンカーをさらに含み、前記第2のポリペプチド鎖が、前記第2の抗原結合ドメインと前記第2のTCRDとの間に第2のペプチドリンカーをさらに含む、実施形態10に記載のabTCR。
【0399】
(実施形態12)
前記第1および/または第2のペプチドリンカーが、免疫グロブリンまたはT細胞受容体サブユニット由来の定常ドメインまたはその断片を個々に含む、実施形態11に記載のabTCR。
【0400】
(実施形態13)
前記第1および/または第2のペプチドリンカーが、CH1、CH2、CH3、CH4もしくはCL抗体ドメイン、またはそれらの断片を個々に含む、実施形態12に記載のabTCR。
【0401】
(実施形態14)
前記第1および/または第2のペプチドリンカーが、Cα、Cβ、CγもしくはCδTCRドメイン、またはそれらの断片を個々に含む、実施形態12に記載のabTCR。
【0402】
(実施形態15)
前記第1のTCRDが、前記第1の膜貫通ドメインのN末端側に、TCRサブユニットの第1の接続ペプチドまたはその断片をさらに含む、実施形態1から14のいずれか一項に記載のabTCR。
【0403】
(実施形態16)
前記第2のTCRDが、前記第2の膜貫通ドメインのN末端側に、TCRサブユニットの第2の接続ペプチドまたはその断片をさらに含む、実施形態1から15のいずれか一項に記載のabTCR。
【0404】
(実施形態17)
前記TCRMが、前記第1の接続ペプチド中の残基と前記第2の接続ペプチド中の残基との間のジスルフィド結合を含む、実施形態15または16に記載のabTCR。
【0405】
(実施形態18)
前記第1のTCRDが、前記第1の膜貫通ドメインのC末端側に、TCR細胞内配列を含む第1のTCR細胞内ドメインをさらに含む、実施形態1から17のいずれか一項に記載のabTCR。
【0406】
(実施形態19)
前記第2のTCRDが、前記第2の膜貫通ドメインのC末端側に、TCR細胞内配列を含む第2のTCR細胞内ドメインをさらに含む、実施形態1から18のいずれか一項に記載のabTCR。
【0407】
(実施形態20)
前記第1のポリペプチド鎖が、前記第1の膜貫通ドメインのC末端側に、共刺激細胞内シグナル伝達配列を含む第1のアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む、実施形態1から19のいずれか一項に記載のabTCR。
【0408】
(実施形態21)
前記第2のポリペプチド鎖が、前記第2の膜貫通ドメインのC末端側に、共刺激細胞内シグナル伝達配列を含む第2のアクセサリ細胞内ドメインをさらに含む、実施形態1から20のいずれか一項に記載のabTCR。
【0409】
(実施形態22)
前記第1のポリペプチド鎖が、前記第1の抗原結合ドメインのN末端側に、第1のシグナル伝達ペプチドをさらに含む、実施形態1から21のいずれか一項に記載のabTCR。
【0410】
(実施形態23)
前記第2のポリペプチド鎖が、前記第2の抗原結合ドメインのN末端側に、第2のシグナル伝達ペプチドをさらに含む、実施形態1から22のいずれか一項に記載のabTCR。
【0411】
(実施形態24)
前記標的抗原複合体中の前記ペプチドが、WT-1、AFP、HPV16-E7、NY-ESO-1、PRAME、EBV-LMP2A、HIV-1およびPSAからなる群から選択されるタンパク質に由来する、実施形態9から23のいずれか一項に記載のabTCR。
【0412】
(実施形態25)
前記分子が、約0.1pM~約500nMの平衡解離定数(Kd)で前記標的抗原に結合する、実施形態1から24のいずれか一項に記載のabTCR。
【0413】
(実施形態26)
前記TCR関連シグナル伝達モジュールが、CD3δε、CD3γεおよびζζからなる群から選択される、実施形態1から25のいずれか一項に記載のabTCR。
【0414】
(実施形態27)
前記第1のTCRサブユニットがTCRα鎖であり、前記第2のTCRサブユニットがTCRβ鎖である、実施形態1から26のいずれか一項に記載のabTCR。
【0415】
(実施形態28)
前記第1のTCRサブユニットがTCRβ鎖であり、前記第2のTCRサブユニットがTCRα鎖である、実施形態1から26のいずれか一項に記載のabTCR。
【0416】
(実施形態29)
前記第1のTCRサブユニットがTCRγ鎖であり、前記第2のTCRサブユニットがTCRδ鎖である、実施形態1から26のいずれか一項に記載のabTCR。
【0417】
(実施形態30)
前記第1のTCRサブユニットがTCRδ鎖であり、前記第2のTCRサブユニットがTCRγ鎖である、実施形態1から26のいずれか一項に記載のabTCR。
【0418】
(実施形態31)
実施形態1から30のいずれか一項に記載のabTCRの前記第1および第2のポリペプチド鎖をコードする核酸(複数可)。
【0419】
(実施形態32)
実施形態1から30のいずれか一項に記載のabTCRと、CD3δε、CD3γεおよびζζからなる群から選択される少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールとを含む複合体。
【0420】
(実施形態33)
前記abTCRとCD3δε、CD3γεおよびζζとを含む八量体である、実施形態32に記載の複合体。
【0421】
(実施形態34)
実施形態1から30のいずれか一項に記載のabTCRまたは実施形態32もしくは33に記載の複合体をその表面上に提示するエフェクター細胞。
【0422】
(実施形態35)
実施形態31に記載の核酸(複数可)を含むエフェクター細胞。
【0423】
(実施形態36)
前記第1のTCRサブユニットおよび/または前記第2のTCRサブユニットを発現しない、実施形態34または35に記載のエフェクター細胞。
【0424】
(実施形態37)
a)前記第1のTCRサブユニットがTCRαであり、前記第2のTCRサブユニットがTCRβであり;または
b)前記第1のTCRサブユニットがTCRβであり、前記第2のTCRサブユニットがTCRαであり;
前記エフェクター細胞がγδT細胞である、実施形態36に記載のエフェクター細胞。
【0425】
(実施形態38)
a)前記第1のTCRサブユニットがTCRγであり、前記第2のTCRサブユニットがTCRδであり;または
b)前記第1のTCRサブユニットがTCRδであり、前記第2のTCRサブユニットがTCRγであり;
前記エフェクター細胞がαβT細胞である、実施形態36に記載のエフェクター細胞。
【0426】
(実施形態39)
第1の内因性TCRサブユニットおよび/または第2の内因性TCRサブユニットの発現を遮断するまたは減少させるように改変されている、実施形態34から36のいずれか一項に記載のエフェクター細胞。
【0427】
(実施形態40)
a)前記第1のTCRサブユニットがTCRαであり、前記第2のTCRサブユニットがTCRβであり;または
b)前記第1のTCRサブユニットがTCRβであり、前記第2のTCRサブユニットがTCRαであり;
前記エフェクター細胞が、TCRαおよび/またはTCRβの発現を遮断するまたは減少させるように改変されたαβT細胞である、実施形態39に記載のエフェクター細胞。
【0428】
(実施形態41)
a)前記第1のTCRサブユニットがTCRγであり、前記第2のTCRサブユニットがTCRδであり;または
b)前記第1のTCRサブユニットがTCRδであり、前記第2のTCRサブユニットがTCRγであり;
前記エフェクター細胞が、TCRγおよび/またはTCRδの発現を遮断するまたは減少させるように改変されたγδT細胞である、実施形態39に記載のエフェクター細胞。
【0429】
(実施形態42)
CD3+細胞である、実施形態34から41のいずれか一項に記載のエフェクター細胞。
【0430】
(実施形態43)
前記CD3+細胞が、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞およびサプレッサーT細胞からなる群から選択される、実施形態42に記載のエフェクター細胞。
【0431】
(実施形態44)
a)第1のプロモーターの制御下の前記abTCRの前記第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸配列を含む第1のベクターと、b)第2のプロモーターの制御下の前記abTCRの前記第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸配列を含む第2のベクターとを含む、実施形態34から43のいずれか一項に記載のエフェクター細胞。
【0432】
(実施形態45)
a)第1のプロモーターの制御下の前記abTCRの前記第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸配列と;b)第2のプロモーターの制御下の前記abTCRの前記第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸配列とを含むベクターを含む、実施形態34から43のいずれか一項に記載のエフェクター細胞。
【0433】
(実施形態46)
a)前記abTCRの前記第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸配列と;b)前記abTCRの前記第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸配列とを含むベクターを含み、前記第1および第2の核酸配列が、単一のプロモーターの制御下にある、実施形態34から43のいずれか一項に記載のエフェクター細胞。
【0434】
(実施形態47)
前記abTCRの前記第1のポリペプチド鎖の発現が、前記abTCRの前記第2のポリペプチド鎖の発現とは、2倍よりも大きく異なる、実施形態34から45のいずれか一項に記載のエフェクター細胞。
【0435】
(実施形態48)
標的抗原を提示する標的細胞を死滅させる方法であって、前記標的細胞を、実施形態34から47のいずれか一項に記載のエフェクター細胞と接触させるステップを含み、前記abTCRが、前記標的抗原に特異的に結合する、方法。
【0436】
(実施形態49)
標的抗原を提示する標的細胞を死滅させる方法であって、前記標的細胞を、前記標的抗原に特異的に結合するabTCRを含むエフェクターαβT細胞と接触させるステップを含み、前記abTCRが、
a)VH抗体ドメインを含む第1の抗原結合ドメインと第1のTCRサブユニットの第1の膜貫通ドメインを含む第1のTCRDとを含む第1のポリペプチド鎖;および
b)VL抗体ドメインを含む第2の抗原結合ドメインと第2のTCRサブユニットの第2の膜貫通ドメインを含む第2のTCRDとを含む第2のポリペプチド鎖
を含み、
前記第1の抗原結合ドメインの前記VHドメインと前記第2の抗原結合ドメインの前記VLドメインとが、前記標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールを形成し、
前記第1のTCRDと前記第2のTCRDとが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なT細胞受容体モジュール(TCRM)を形成し、
前記第1のTCRサブユニットがTCRγであり、前記第2のTCRサブユニットがTCRδである、または前記第1のTCRサブユニットがTCRδであり、前記第2のTCRサブユニットがTCRγである、
方法。
【0437】
(実施形態50)
前記第1のポリペプチド鎖が、前記第1の抗原結合ドメインと前記第1のTCRDとの間に第1のペプチドリンカーをさらに含み、前記第2のポリペプチド鎖が、前記第2の抗原結合ドメインと前記第2のTCRDとの間に第2のペプチドリンカーをさらに含む、実施形態49に記載の方法。
【0438】
(実施形態51)
前記第1および/または第2のペプチドリンカーが、免疫グロブリンまたはT細胞受容体サブユニット由来の定常ドメインまたはその断片を個々に含む、実施形態50に記載の方法。
【0439】
(実施形態52)
前記第1および/または第2のペプチドリンカーが、CH1、CH2、CH3、CH4もしくはCL抗体ドメイン、またはそれらの断片を個々に含む、実施形態51に記載の方法。
【0440】
(実施形態53)
前記第1および/または第2のペプチドリンカーが、Cα、Cβ、CγもしくはCδTCRドメイン、またはそれらの断片を個々に含む、実施形態51に記載の方法。
【0441】
(実施形態54)
前記接触させるステップがin vivoである、実施形態48から53のいずれか一項に記載の方法。
【0442】
(実施形態55)
前記接触させるステップがin vitroである、実施形態48から53のいずれか一項に記載の方法。
【0443】
(実施形態56)
実施形態1から30のいずれか一項に記載のabTCR、実施形態31に記載の核酸(複数可)、または実施形態34から47のいずれか一項に記載のエフェクター細胞と、薬学的に許容されるキャリアとを含む医薬組成物。
【0444】
(実施形態57)
それを必要とする個体において標的抗原関連疾患を処置する方法であって、前記個体に、有効量の、実施形態51に記載の医薬組成物を投与するステップを含む方法。
【0445】
(実施形態58)
それを必要とする個体において標的抗原関連疾患を処置する方法であって、前記個体に、有効量の、前記標的抗原に特異的に結合するabTCRを含むエフェクターαβT細胞を含む組成物を投与するステップを含み、前記abTCRが、
a)VH抗体ドメインを含む第1の抗原結合ドメインと第1のTCRサブユニットの第1の膜貫通ドメインを含む第1のTCRDとを含む第1のポリペプチド鎖;および
b)VL抗体ドメインを含む第2の抗原結合ドメインと第2のTCRサブユニットの第2の膜貫通ドメインを含む第2のTCRDとを含む第2のポリペプチド鎖
を含み、
前記第1の抗原結合ドメインの前記VHドメインと前記第2の抗原結合ドメインの前記VLドメインとが、前記標的抗原に特異的に結合する抗原結合モジュールを形成し、
前記第1のTCRDと前記第2のTCRDとが、少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達モジュールをリクルートすることが可能なT細胞受容体モジュール(TCRM)を形成し、
前記第1のTCRサブユニットがTCRγであり、前記第2のTCRサブユニットがTCRδである、または前記第1のTCRサブユニットがTCRδであり、前記第2のTCRサブユニットがTCRγである、
方法。
【0446】
(実施形態59)
前記第1のポリペプチド鎖が、前記第1の抗原結合ドメインと前記第1のTCRDとの間に第1のペプチドリンカーをさらに含み、前記第2のポリペプチド鎖が、前記第2の抗原結合ドメインと前記第2のTCRDとの間に第2のペプチドリンカーをさらに含む、実施形態58に記載の方法。
【0447】
(実施形態60)
前記第1および/または第2のペプチドリンカーが、免疫グロブリンまたはT細胞受容体サブユニット由来の定常ドメインまたはその断片を個々に含む、実施形態59に記載の方法。
【0448】
(実施形態61)
前記第1および/または第2のペプチドリンカーが、CH1、CH2、CH3、CH4もしくはCL抗体ドメイン、またはそれらの断片を個々に含む、実施形態60に記載の方法。
【0449】
(実施形態62)
前記第1および/または第2のペプチドリンカーが、Cα、Cβ、CγもしくはCδTCRドメイン、またはそれらの断片を個々に含む、実施形態60に記載の方法。
【0450】
(実施形態63)
前記標的抗原関連疾患ががんである、実施形態57から62のいずれか一項に記載の方法。
【0451】
(実施形態64)
前記がんが、副腎皮質癌、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、胆管細胞癌、結腸直腸がん、食道がん、グリア芽細胞腫、グリオーマ、肝細胞癌、頭頸部がん、腎臓がん、白血病、リンパ腫、肺がん、メラノーマ、中皮腫、多発性骨髄腫、膵臓がん、褐色細胞腫、形質細胞腫、神経芽細胞腫、卵巣がん、前立腺がん、肉腫、胃がん、子宮がんおよび甲状腺がんからなる群から選択される、実施形態63に記載の方法。
【0452】
(実施形態65)
前記標的抗原関連疾患がウイルス感染症である、実施形態57から62のいずれか一項に記載の方法。
【0453】
(実施形態66)
前記ウイルス感染症が、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、伝染性軟属腫ウイルス(MCV)、ヒトT細胞白血病ウイルス1(HTLV-1)、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)およびC型肝炎ウイルス(HCV)からなる群から選択されるウイルスによって引き起こされる、実施形態65に記載の方法。
【0454】
(実施形態67)
実施形態34~47のいずれか1つに記載のエフェクター細胞について不均一な細胞集団を富化する方法であって、
a)不均一な細胞集団を、固体支持体に固定化された標的抗原と接触させて、固体支持体上の標的抗原に結合したエフェクター細胞の複合体を形成するステップ;および
b)不均一な細胞集団から複合体を分離し、それによって、エフェクター細胞について富化された細胞集団を生成するステップ
を含む方法。
【0455】
(実施形態68)
実施形態1から30のいずれか一項に記載の複数のabTCRをコードする配列を含む核酸ライブラリー。
【0456】
(実施形態69)
標的抗原に対して特異的なabTCRをコードする配列について、実施形態68に記載の核酸ライブラリーをスクリーニングする方法であって、
a)abTCRが複数のCD3+細胞の表面上で発現されるように、核酸ライブラリーを複数のCD3+細胞中に導入するステップ;
b)複数のCD3+細胞を、標識された標的抗原と共にインキュベートするステップ;
c)標識された標的抗原と結合したCD3+細胞を収集するステップ;および
d)ステップc)において収集した細胞から、abTCRをコードする配列を単離し、それによって、標的抗原に対して特異的なabTCRを同定するステップ
を含む方法。
【実施例】
【0457】
材料および方法
細胞試料、細胞株および抗体
細胞株HepG2(ATCC HB-8065;HLA-A2+、AFP+)、SK-HEP-1(ATCC HTB-52;HLA-A2+、AFP-)、Raji(ATCC CCL-86;CD19+)、CA46(ATCC CRL-1648;CD19+)、Jurkat(ATCC CRL-2899、CD19-)、J.RT3-T3.5(ATCC TIB-153)、Jeko-1(ATCC CRL-3006;CD19+)、THP-1(ATCC TIB-202、CD19-)、Daudi(ATCC CCL-213;CD19+)、HeLa(ATCC CCL-2)、MDA-MB-231(ATCC HTB-26)およびMCF-7(ATCC HTB-22)は、American Type Culture Collectionから取得した。Jurkatは、T細胞白血病由来のヒトTリンパ球細胞株である。J.RT3-T3.5は、T細胞受容体β鎖を欠いているJurkat細胞由来変異株である。Rajiは、CD19を発現するBurkittリンパ腫細胞株である。Raji-CD19ノックアウト(Raji-CD19KO)株は、CRISPR技術によって生成された。3つの異なるガイド配列は、Raji細胞中のCD19を標的化するように設計された。CRISPR-Cas9ベクターはOrigeneから購入し、各ガイドは、pCas-Guideベクターに別々にクローニングした。電気穿孔法の3日後、各ガイドによるノックアウト効率をフローサイトメトリーによって評価し、最良のCD19ノックアウトプールを限界希釈によってクローン選択のために選択した。選択されたクローンを配列決定によって完全なCD19ノックアウトとして確認した。別の対照細胞株、SK-HEP-1-AFP-MGは、AFPペプチドAFP158(配列番号53)を発現するミニ遺伝子カセットを用いてSK-HEP-1細胞株を形質導入することによって生成し、AFP158/HLA-A*02:01複合体の高レベルの細胞表面発現を生じた。すべての細胞株を10%FBSおよび2mMグルタミンを補充したRPMI1640またはDMEMにおいて37℃/5%CO2で培養した。
【0458】
FITCまたはAPCにコンジュゲートしたヒトHLA-A02(クローンBB7.2)に対するモノクローナルAb、およびFITCまたはAPCにコンジュゲートしたそのアイソタイプ対照マウスIgG 2b、ヒトまたはマウスCD3に対する抗体、ヒトT細胞受容体の種々のサブユニット、3xFlagタグ、HAタグ、PEまたはFITCとコンジュゲートしたヤギF(ab)2抗ヒトIgGおよび蛍光コンジュゲートヤギF(ab’)2抗マウスIg’s(Invitrogen)を購入した。AFP158/HLA-A*02:01-特異的抗体に対する抗イディオタイプ抗体を開発し、Eureka Therapeuticsにおいて組織内で産生した。フローサイトメトリーデータをBD FACSCanto IIを使用して収集し、FlowJoソフトウェアパッケージを使用して分析した。
【0459】
すべてのペプチドは、Elim Biopharmaによって合成され、購入した。ペプチドは、純度>90%であった。ペプチドを10mg/mLでDMSOに溶解するまたは生理食塩水に希釈し、-80℃で凍結した。ビオチン化単鎖AFP158/HLA-A*02:01および対照ペプチド/HLA-A*02:01複合体モノマーをペプチドを組換えHLA-A*02:01およびベータ-2ミクログロブリン(β2M)と再フォールディングさせることによって生成した。モノマーをBirA酵素によってHLA-A*02:01細胞外ドメイン(ECD)のC末端に連結されたBSPペプチドを介してビオチン化した。蛍光標識ペプチド/HLA-A*02:01四量体を形成するために蛍光標識ストレプトアビジンをビオチン化ペプチド/HLA-A*02:01複合体モノマーと混合した。
【0460】
ヒトCD19特異的またはAFP158/HLA-A*02:01-特異的CARまたはabTCRを含有するレンチウイルスは、例えばキメラ構築物をコードするベクターを用いた293T細胞のトランスフェクションによって産生した。初代ヒトT細胞を、100U/mlのインターロイキン-2(IL-2)の存在下でCD3/CD28ビーズ(Dynabeads(登録商標)、Invitrogen)で1日刺激した後の形質導入に使用した。濃縮レンチウイルスをRetronectin(Takara)でコーティングした6ウェルプレート中のT細胞にアプライし、96時間置いた。抗AFPおよび抗CD19キメラ構築物の形質導入効率を、それぞれビオチン化AFP158/HLA-A*02:01四量体(「AFP158四量体」)およびPEコンジュゲートストレプトアビジンまたは抗myc抗体を使用して、フローサイトメトリーにより評価した。反復フローサイトメトリー分析を、その後5日目および3~4日ごとに行った。
【0461】
細胞株をabTCR構築物の2つのサブユニットをコードする1つまたは2つのベクターのいずれかを用いて形質導入した。形質導入5日後、細胞可溶化物を抗HA(抗HAタグ抗体-ChIP Grade、Abcam)または抗Flag抗体(ウサギで産生された抗Flag抗体、Sigma)を使用するウエスタンブロットのために生成した。
【0462】
腫瘍細胞傷害性をCytox 96 Non-radioactive LDH Cytotoxicity Assay(Promega)によってアッセイした。CD3+T細胞をCD14、CD16、CD19、CD20、CD36、CD56、CD66b、CD123、グリコホリンA発現細胞を陰性に枯渇させるEasySep Human T Cell Isolation Kit(StemCell Technologies)を使用してPBMC富化全血から調製した。ヒトT細胞は、例えば、CD3/CD28 Dynabeads(Invitrogen)を製造者のプロトコールに従って用いて活性化し、拡大増殖させた。活性化T細胞(ATC)を10%FBSに加えて100U/ml IL-2を含むRPMI1640培地中で培養および維持し、7~14日目に使用した。活性化T細胞(エフェクター細胞)および標的細胞を種々のエフェクターおよび標的の比(例えば、2.5:1または5:1)で16時間共培養し、細胞傷害性についてアッセイした。
【0463】
(実施例1)
抗体-T細胞受容体(abTCR)キメラ設計
4つの異なる抗体-T細胞受容体キメラ構築物(abTCR)設計(abTCR-3、abTCR-4、abTCR-5およびabTCR-6)を、企図されるバリエーションも含んで、
図1Aおよび1Bに示す。これらの設計では、抗体Fab断片の重鎖(IgV
H-IgC
H1)および軽鎖(IgV
L-IgC
L)ドメインは、可変および定常ドメインを欠いており、T細胞表面上に発現され得るキメラ抗体-TCRヘテロ二量体を形成するようにそれらの接続ペプチド(定常ドメイン後の領域)のすべてまたは一部を含むT細胞受容体α/β鎖またはγ/δ鎖断片のアミノ末端に融合される。abTCR設計それぞれのIgV
HおよびIgV
Lドメインは、抗原結合特異性を決定し、IgC
H1およびIgC
Lと合わせてFab断片に似た構造を形成する。天然TCRでは、Vα/VβまたはVδ/VγドメインはTCRの抗原結合ドメインを形成する。これらの設計は、Vα-Cα/Vβ-CβまたはVδ-Cδ/Vγ-Cγ領域をIgV
H-IgC
H1またはIgV
L-IgC
Lで置き換え、それによりCD3δε、CD3γεおよびCD3ζζなどの天然TCR複合体中のアクセサリ分子と会合する構築物の能力を維持しながら、構築物への抗体の結合特異性を付与している。これらの設計は、抗体の可変ドメインがTCR定常領域に連結され、Vα/Vβ領域だけをIgV
H/IgV
Lで置き換えている、GrossおよびEshhar(Endowing T cells with antibody specificity using chimeric T cell receptors、FASEB J. 1992年(15巻):3370頁)によって記載されたcTCR設計とは異なっている。
【0464】
他のabTCR設計では、ペプチドおよびMHCタンパク質(MHC限定抗体部分)を含む複合体に対して特異的である抗体Fv断片の重鎖(IgVH)および軽鎖(IgVL)ドメインは、可変ドメインを欠いており、それらの接続ペプチド(定常ドメイン後の領域)のすべてまたは一部を含むT細胞受容体α/β鎖またはγ/δ鎖断片のアミノ末端に融合される。これらのabTCR設計の一部では、T細胞受容体α/β鎖またはγ/δ鎖断片は、TCR定常ドメインのすべてまたは一部を含む。かかる設計の1つ、abTCR-7ではIgVHは、定常ドメインを含むTCRδ断片に融合されており、IgVLは定常ドメインを含むTCRγ断片に融合されている。これらの設計は、抗体可変ドメインが非MHC限定結合のためのものである、GrossおよびEshhar(上記)によって記載されたcTCR設計とは異なっている。
【0465】
abTCR-3(IgVH-IgCH1-TCRα/IgVL-IgCL-TCRβ)設計では、抗体重鎖の可変ドメインおよび第1の定常ドメイン(IgVH-IgCH1)は、TCRα鎖のアミノ末端部分をVα-Cα領域後の細胞外ドメイン中の接続ペプチドと境界を接するまたはその中の位置まで置き換えている。対応する抗体軽鎖の可変ドメインおよび定常ドメイン(IgVL-IgCL)は、TCRβ鎖のアミノ末端部分をVβ-Cβ領域後の細胞外ドメイン中の接続ペプチドと境界を接するまたはその中の位置まで置き換えている。abTCR-4(IgVH-IgCH1-TCRβ/IgVL-IgCL-TCRα)設計では、抗体重鎖の可変ドメインおよび第1の定常ドメイン(IgVH-IgCH1)は、TCRβ鎖のアミノ末端部分をVβ-Cβ領域後の細胞外ドメイン中の接続ペプチドと境界を接するまたはその中の位置まで置き換えている。対応する抗体軽鎖の可変ドメインおよび定常ドメイン(IgVL-IgCL)は、TCRα鎖のアミノ末端部分をVα-Cα領域後の細胞外ドメイン中の接続ペプチドと境界を接するまたはその中の位置まで置き換えている。キメラαおよびβ鎖は、1つはIgCLとIgCH1ドメインとの間、1つはTCRαおよびβ鎖中の接続ペプチド間の、2つのジスルフィド結合を通じて二量体化される。3x-FlagタグはTCRα鎖細胞質性領域のC末端に任意選択で融合されており、HAタグはTCRβ鎖細胞質性領域のC末端に任意選択で融合されている。
【0466】
1つのabTCR-3実施形態では、一方の鎖は、配列番号23の配列(抗AFP158/HLA-A*02:01-abTCR-3)を含み、ここで抗AFP158/HLA-A*02:01抗体(配列番号38)のIgVHドメインは配列番号15、接続ペプチドの一部をVα-Cα領域後のTCRα鎖の細胞外ドメインに含むTCRα鎖の一部に融合されたIgCH1ドメイン(配列番号39)に融合されており、他方の鎖は、配列番号24の配列を含み、ここで抗AFP158/HLA-A*02:01抗体(配列番号40)のIgVLドメインは配列番号16、Vβ-Cβ領域後のTCRβ鎖の細胞外ドメインに接続ペプチドの一部を含むTCRβ鎖のカルボキシ部分に融合されたIgCLドメイン(配列番号41)に融合されている。1つのabTCR-4実施形態では、一方の鎖は、配列番号25(抗AFP158/HLA-A*02:01-abTCR-4)の配列を含み、ここで抗AFP158/HLA-A*02:01抗体(配列番号40)のIgVLドメインは配列番号15、Vα-Cα領域後のTCRα鎖の細胞外ドメイン中に接続ペプチドの一部を含むTCRα鎖の一部に融合されたIgCLドメイン(配列番号41)に融合されており、他方の鎖は、配列番号26の配列を含み、ここで抗AFP158/HLA-A*02:01抗体(配列番号38)のIgVHドメインは配列番号16、Vβ-Cβ領域後のTCRβ鎖の細胞外ドメインに接続ペプチドの一部を含むTCRβ鎖のカルボキシ部分に融合されたIgCH1ドメイン(配列番号39)に融合されている。
【0467】
abTCR-5(IgVH-IgCH1-TCRγ/IgVL-IgCL-TCRδ)設計では、抗体重鎖の可変ドメインおよび第1の定常ドメイン(IgVH-IgCH1)は、TCRγ鎖のアミノ末端部分をVγ-Cγ領域後のTCRγ鎖の細胞外ドメイン中の接続ペプチドと境界を接するまたはその中の位置まで置き換えている。対応する抗体軽鎖の可変ドメインおよび定常ドメイン(IgVL-IgCL)は、TCRδ鎖のアミノ末端部分をVδ-Cδ領域後のTCRδ鎖の細胞外ドメイン中の接続ペプチドと境界を接するまたはその中の位置まで置き換えている。abTCR-6(IgVH-IgCH1-TCRδ/IgVL-IgCL-TCRγ)設計では、抗体重鎖の可変ドメインおよび第1の定常ドメイン(IgVH-IgCH1)は、TCRδ鎖のアミノ末端部分をVδ-Cδ領域後のTCRδ鎖の細胞外ドメイン中の接続ペプチドと境界を接するまたはその中の位置まで置き換えている。対応する抗体軽鎖の可変ドメインおよび定常ドメイン(IgVL-IgCL)は、TCRγ鎖のアミノ末端部分をVγ-Cγ領域後のTCRγ鎖の細胞外ドメイン中の接続ペプチドと境界を接するまたはその中の位置まで置き換えている。キメラγおよびδ鎖は、1つはIgCLとIgCH1ドメインとの間、1つはTCRγおよびδ鎖中の接続ペプチド間の、2つのジスルフィド結合を通じて二量体化される。3xflagタグはTCRγ鎖細胞質性領域のC末端に任意選択で融合されており、HAタグはTCRδ鎖細胞質性領域のC末端に任意選択で融合されている。
【0468】
1つのabTCR-5実施形態では、一方の鎖は配列番号30の配列(抗AFP158/HLA-A*02:01-abTCR-5)を含み、ここで抗AFP158/HLA-A*02:01抗体(配列番号38)のIgVHドメインは配列番号20、Vγ-Cγ領域後のTCRγ鎖の細胞外ドメイン中に接続ペプチドの一部を含むTCRγ鎖の一部に融合されたIgCH1ドメイン(配列番号39)に融合されており、他方の鎖は、配列番号29の配列を含み、ここで抗AFP158/HLA-A*02:01抗体(配列番号40)のIgVLドメインはIgCLドメイン(配列番号41)および次いで配列番号19、Vδ-Cδ領域後のTCRδ鎖の細胞外ドメイン中の接続ペプチドの一部を含むTCRδ鎖のカルボキシ部分に融合されている。1つのabTCR-6実施形態では、一方の鎖は配列番号34の配列(抗AFP158/HLA-A*02:01-abTCR-6)を含み、ここで抗AFP158/HLA-A*02:01抗体(配列番号40)のIgVLドメインは配列番号20、Vγ-Cγ領域後のTCRγ鎖の細胞外ドメイン中に接続ペプチドの一部を含むTCRγ鎖の一部に融合されたIgCLドメイン(配列番号41)に融合されており、他方の鎖は、配列番号33の配列を含み、ここで抗AFP158/HLA-A*02:01抗体(配列番号38)のIgVHドメインは配列番号19、Vδ-Cδ領域後のTCRδ鎖の細胞外ドメイン中の接続ペプチドの一部を含むTCRδ鎖のカルボキシ末端部分に融合されたIgCH1ドメイン(配列番号39)に融合されている。
【0469】
図1Bに例示のとおり、4つのabTCR設計それぞれのバリエーションもまた企図される。かかるバリエーションは(i)IgCとTCRとの融合によって形成される接合部に残基を付加することによる伸長または(ii)TCR接続ペプチドのN-末端で残基を欠失させることによる短縮、などの細胞外ドメインの長さの変更を含む場合がある。abTCR-6のかかるバリエーションの実施形態は、abTCR-6MDであり、ここで一方の鎖は配列番号36の配列(抗AFP158/HLA-A
*02:01-abTCR-6MD)を含み、ここで抗AFP158/HLA-A
*02:01抗体(配列番号40)のIgV
Lドメインは、配列番号22、TCRγ鎖中のVγ-Cγ領域の後に接続ペプチドのより長い(abTCR-6と比較して)部分を含むTCRγ鎖のカルボキシ末端部分に融合されたIgC
Lドメイン(配列番号41)に融合されており、他方の鎖は、配列番号35の配列を含み、ここで抗AFP158/HLA-A
*02:01抗体(配列番号38)のIgV
Hドメインは配列番号21、TCRδ鎖のVδ-Cδ領域後の接続ペプチドのより長い(abTCR-6と比較して)部分を含むTCRδ鎖のカルボキシ末端部分に融合されたIgC
H1ドメイン(配列番号39)に融合されている。abTCR-5のかかるバリエーションの実施形態はabTCR-5MDであり、ここで一方の鎖は配列番号31の配列(抗AFP158/HLA-A
*02:01-abTCR-5MD)を含み、ここで抗AFP158/HLA-A
*02:01抗体(配列番号40)のIgV
Lドメインは配列番号21、TCRδ鎖のVδ-Cδ領域後の接続ペプチドのより長い(abTCR-5と比較して)部分を含むTCRδ鎖のカルボキシ末端部分に融合されたIgC
Lドメイン(配列番号41)に融合されており、他方の鎖は、配列番号32の配列を含み、ここで抗AFP158/HLA-A
*02:01抗体(配列番号38)のIgV
Hドメインは配列番号22、TCRγ鎖のVγ-Cγ領域後の接続ペプチドのより長い(abTCR-5と比較して)部分を含むTCRγ鎖のカルボキシ末端部分に融合されたIgC
H1ドメイン(配列番号39)に融合されている。abTCR-4のかかるバリエーションの実施形態はabTCR-4MDであり、ここで一方の鎖は配列番号27の配列(抗AFP158/HLA-A
*02:01-abTCR-4MD)を含み、ここで抗AFP158/HLA-A
*02:01抗体(配列番号40)のIgV
Lドメインは配列番号17、Vα-Cα領域後の接続ペプチドのより長い(abTCR-4と比較して)部分を含むTCRα鎖のカルボキシ末端部分に融合されたIgC
Lドメイン(配列番号41)に融合されており、他方の鎖は、配列番号28の配列を含み、ここで抗AFP158/HLA-A
*02:01抗体(配列番号38)のIgV
Hドメインは配列番号18、Vβ-Cβ領域後の接続ペプチドのより長い(abTCR-4と比較して)部分を含むTCRβ鎖のカルボキシ末端部分に融合されたIgC
H1ドメイン(配列番号39)に融合されている。
【0470】
さらなるバリエーションは、さらなるエフェクタードメイン(例えば、CD28の細胞内ドメイン)のTCRα/β/δ/γ鎖のいずれかのC末端への融合を含む場合がある。別のバリエーションは、IgVとIgCドメインとの間のリンカー領域の変更を含む場合がある。
【0471】
(実施例2)
T細胞株におけるabTCRの発現
成熟T細胞ではTCR-CD3複合体は、
図2に示すとおり、無処置複合体を形成するように膜内および膜外接触を通じて会合すると考えられている4つの二量体モジュール:TCRαβ(またはTCRγδ)、CD3δε、CD3γεおよびCD3ζζからなる(Wucherpfennig KWら、Structural biology of the T-cell receptor: insights into receptor assembly, ligand recognition, and initiation of signaling. Cold Spring Harb Perspect Biol. 2010年4月;2巻(4号):a005140から)。複合体アセンブリは小胞体(ER)で生じる。完全なTCR-CD3複合体だけが、ゴルジ装置に移入され、グリコシル化工程を通り、T細胞の細胞膜に輸送される。不完全なTCRは、ゴルジから、それらが分解されるリソソームに方向付けられる。
【0472】
T細胞におけるabTCR発現を検査し、CD3分子をリクルートし、T細胞表面でのabTCR-CD3複合体の発現を可能にすることにabTCRが内因性TCRと同様に機能し得るかどうかを検討するために、abTCR構築物を変異Jurkat T細胞株、J.RT3-T3.5に導入した。Jurkat、αβTCR陽性白血病T細胞株とは異なり、J.RT3-T3.5はTCRβサブユニット発現を欠いているJurkat変異株である。TCR-CD3複合体のアセンブリはTCRβサブユニット無しでは損なわれることから、J.RT3-T3.5細胞ではTCRおよびCD3は、いずれも細胞膜に輸送され得ない。
【0473】
ウエスタンブロットによるabTCR発現の検出
5セットのabTCR構築物(abTCR-3、-4、-5、-6、-6MD)を、抗AFP158/HLA-A
*02:01抗体のIgV
HおよびIgV
L領域を用いて生成した。J.RT3-T3.5およびJurkat細胞は、abTCR-3(配列番号23および24)、abTCR-4(配列番号25および26)、abTCR-5(配列番号29および30)、abTCR-6(配列番号33および34)またはabTCR-6MD(配列番号35および36)構築物を用いて形質導入し、abTCRの個々のサブユニットの発現を抗Flagまたは抗HA抗体を使用するウエスタンブロットにおいて検出した(
図3)。各構築物について2つのサブユニットを2つの別々のレンチウイルスベクターにサブクローニングした。完全なabTCRヘテロ二量体を発現するために、T細胞を両方のベクターを用いて形質導入した。TCRβおよびTCRδキメラをHAを用いてタグ付けした一方で、TCRαおよびTCRγキメラはabTCRサブユニットのC末端に結合された3xFlagを用いてタグ付けした。HAまたは3xFlagタグを有するTCR鎖は、
図3で各abTCR設計についての表示の下に括弧で示されている。
【0474】
J.RT3-T3.5およびJurkatの両方でのHAタグ付きキメラの内(
図3、抗HAパネル)、abTCR-3中のIgV
L-IgC
L-TCRβサブユニットは、最も高い発現を示し、abTCR-6およびabTCR-6MD中のIgV
H-IgC
H1-TCRδサブユニット、ならびにabTCR-4中のIgV
H-IgC
H1-TCRβサブユニットが続いた。3xFlagタグ付きキメラの内(
図3、抗flagパネル)、最も高い発現は、abTCR-6およびabTCR-6MD中のIgV
L-IgC
L-TCRγについて観察され、ab-TCR-4中のIgV
L-IgC
L-TCRαが続いた。abTCR-5(IgV
H-IgC
H1-TCRγ/IgV
L-IgC
L-TCRδ)について両鎖は、検査した5セットの構築物の内で最も低い発現量を示した。abTCR-6MDについてのTCRδ鎖は、abTCR6と同様のレベルで発現された一方で、abTCR-6MDについてのTCRγ鎖はabTCR6について観察されたよりも低いレベルで発現された。形質導入された細胞の百分率および形質導入細胞内の発現レベルの両方がウエスタンブロットにおいて検出されるシグナルに寄与する。したがって次にフローサイトメトリーを細胞表面でのabTCR発現レベルを決定するために実施した。
【0475】
フローサイトメトリーによるabTCR細胞表面発現およびTCR-CD3複合体形成の検出
上に記載の5対のキメラabTCR鎖(abTCR-3、-4、-5、-6、-6MD)をJ.RT3-T3.5(
図4A~4C)およびJurkat(
図5A~5C)細胞に個々に形質導入した。abTCR構築物を用いて形質導入された細胞を、次の:(i)J.RT3-T3.5細胞でのCD3ε発現のレスキューを評価するための抗CD3ε抗体(
図4A)、(ii)Jurkat細胞でのTCRαβの内因性発現へのabTCR構築物の影響を評価するための抗TCRαβ抗体(
図5A)、(iii)形質導入abTCR構築物による抗原結合を評価するためのPE標識されたAFP158/HLA-A
*02:01四量体(
図4Bおよび5B)、ならびに(iv)キメラ構築物の表面発現を評価するためにabTCRキメラ(
図4Cおよび5C)において使用された抗AFP158/HLA-A
*02:01抗体に対する抗イディオタイプ抗体、によって評価した。
【0476】
J.RT3-T3.5細胞について、偽形質導入はAFP158/HLA-A
*02:01四量体および抗イディオタイプ抗体への結合を付与せず、細胞表面にCD3ε発現を生じなかった(
図4A~4C)。抗イディオタイプ抗体は、abTCR-3およびabTCR-4を用いて形質導入されたJ.RT3-T3.5細胞においてabTCR陰性ピークから伸びる肩を検出した。対照的に、abTCR-5、-6および-6MDを用いて形質導入された細胞は、抗イディオタイプ抗体を用いて染色した場合に高蛍光強度で別々のピークを示した(
図4C)。abTCR構築物は、標的抗原AFP158四量体に結合し得ることに機能性である(
図4B)。abTCR-6MDにおける、より高いAFP158四量体陽性ピークによって明らかであるとおり、abTCR-6と比較してさらに多くの細胞集団がabTCR-6MD構築物を発現した。しかしabTCR-6MD形質導入細胞は、AFP158四量体陽性ピークが類似する平均蛍光強度(MFI)を有することから、細胞あたりのコピー数でabTCR-6形質導入細胞と類似する発現が見られる。さらに、abTCR構築物の発現は、J.RT3-T3.5細胞でのCD3εの細胞表面発現をレスキューした(
図4A)。これは、TCRの定常ドメインがCD3鎖との相互作用をもたらしたことから予測外である(KuhnsおよびDavis、TCR Signaling Emerges from the Sum of Many Parts、Front Immunol. 2012年;3巻:159頁、WangおよびReinherz、The structural basis of αβ T-lineage immune recognition: TCR docking topologies, mechanotransduction, and co-receptor function、Immunol Rev. 2012年、250巻:102頁によって概説されている)。キメラがTCR定常ドメインをIgCを用いて置き換えていることから、本発明者らは、TCR定常ドメインがTCR複合体を含むCD3アセンブリのために必要ないことを実証した。abTCR-6およびabTCR-6MD形質導入細胞を抗CD3εおよびAFP158/HLA-A
*02:01四量体で共染色し、フローサイトメトリーによって分析した場合に、本発明者らは、CD3ε
+J.RT3-T3.5細胞もまたAFP158四量体陽性であることを確認した(
図6)。これは、外因性abTCRキメラが、それらの同族抗原に結合でき、J.RT3-T3.5細胞上のCD3複合体の細胞表面発現をレスキューする機能的受容体を形成することを示している。
【0477】
同じセットの実験を、abTCR-3、-4、-5、-6および-6MD構築物を抗AFP158/HLA-A
*02:01抗体と共に使用してJurkat細胞(αβTCR陽性T細胞株)においてもまた行った(
図5A~5C)。結果は、AFP158四量体染色(
図5B)および抗イディオタイプ抗体結合(
図5C)に関してJ.RT3-T3.5細胞において観察されたものと一致している。形質転換細胞を、内因性TCRα/β鎖の発現へのabTCR構築物の影響を決定するために抗TCRα/β抗体でもまた染色した。偽形質導入Jurkat細胞が高レベルのTCRα/βを発現した一方で、TCRα/β陰性集団がそれぞれのabTCR形質転換細胞においてTCRα/βピークの左側の肩として検出された(
図5A)。これらのデータは、abTCRキメラの発現がCD3鎖について競合しており、内因性TCRα/βの表面発現の低減を生じていることを示唆している。
【0478】
ウエスタンブロットおよびフローサイトメトリー実験からの観察を合わせて、本発明者らはabTCR-3および-4形質導入細胞において、一部の内因性TCRαサブユニットがabTCRキメラの外因性β鎖と対形成し、細胞表面に輸送され得るTCR-CD3複合体を形成することを仮定する。あるいは、abTCR-3および-4は、抗イディオタイプ抗体へのエピトープの曝露を限定する異なるコンホメーションを有する可能性がある。abTCR-3-形質導入J.RT3-T3.5およびJurkat細胞では、IgV
L-IgC
L-TCRβ鎖の高レベル発現(ウエスタンブロットあたり、
図3)は、細胞表面にCD3εを発現するJ.RT3-T3.5細胞の高い百分率(
図4A)および、abTCR-3を用いて形質導入されたJurkat細胞のサブセットでの内因性TCRα/β発現の低減を生じた。abTCR-4形質導入細胞では、IgV
H-IgC
H1-TCRβ鎖もまた、J.RT3-T3.5細胞でのCD3ε発現およびJurkat細胞での内因性TCRα/β発現の低減を生じたが、キメラabTCRβ鎖発現がabTCR-3と比較してabTCR-4では低いことから程度は低かった(ウエスタンブロットあたり、
図3)。
【0479】
abTCR-3および-4形質導入細胞について、TCRαβ+T細胞での外因性TCRβキメラの内因性TCRα鎖との対形成は、外因性TCRαキメラ鎖との正しい対形成のために利用可能なTCRβキメラ鎖のプールを低減すると予測される。キメラがTCRδおよびTCRγ鎖を用いて生成されるabTCR-5、-6または-6MD構築物を発現する場合にTCRαβ+T細胞においてこれは問題でない。abTCR陽性ピークでの高MFIは、abTCR-5、-6または-6MD構築物を発現するJ.RT3-T3.5およびJurkat細胞の両方での正しく対形成したキメラの数の多さと一致する。反対に、キメラがTCRαおよびTCRβ鎖を用いて生成されるTCRδγ+T細胞での発現のためのabTCR-3および-4構築物の使用は、外因性キメラ鎖と内因性TCRδおよびTCRγ鎖との対形成を回避するために好ましい。
【0480】
(実施例3)
初代T細胞でのabTCRの発現
abTCR構築物をT細胞株に良好に形質導入でき、CD3複合体と共に機能性抗原結合受容体として細胞表面に発現できたことを実証し、次いで本発明者らは初代T細胞でのabTCRの発現を検査した。
【0481】
CD4+およびCD8+初代T細胞において発現されたabTCR
末梢血リンパ球を健常ドナーから単離し、抗AFP158/HLA-A
*02:01結合部分(配列番号35および36)をコードするabTCR-6MD構築物を用いて形質導入した。abTCRγおよびδサブユニットを初代ヒトT細胞を形質導入するために同じレンチウイルスベクターにサブクローニングした。形質導入の5日後、abTCR-T細胞および偽形質導入細胞をAFP158四量体ならびにCD4およびCD8抗体を用いて共染色し、フローサイトメトリーによって分析した。
図7Aは、CD8対抗原(AFP158四量体)の結合の散布図を示しており、一方
図7Bは、CD8対CD4の散布図を示している。偽形質導入T細胞ではCD4:CD8の比は、約2:1である(
図7B上パネル)。同じCD4:CD8の比がabTCR-6MD構築物を用いて形質導入された細胞において観察された(
図7B中央パネル)。本発明者らは、CD4:CD8の比がabTCR-6MD形質導入細胞中のAFP158四量体
+集団においてもまた約2:1であることを見出した(
図7B下パネルおよび
図7Aでのゲーティングを参照のこと)。これは、abTCRキメラがCD4
+およびCD8
+初代T細胞の両方で発現され得ることを示している。
【0482】
外因性abTCR鎖はCD3複合体と物理的に会合する
T細胞株におけるabTCR発現がJ.RT3-T3.5細胞でのCD3εの表面発現をレスキューできたと仮定して、本発明者らは初代T細胞において発現されたabTCR構築物がCD3複合体中の個々の鎖と物理的に会合するかどうかを共免疫沈降(co-ip)によって検査した。初代T細胞を抗CD3および抗CD28を使用して刺激し、次いで偽形質導入または、抗AFP158/HLA-A
*02:01結合部分(配列番号35および36)をコードするabTCR-6MD構築物を用いて形質導入した。形質導入の12日後、abTCR-T細胞をAFP158四量体+細胞を富化させるためにSK-HEP-1-AFP-MGとさらに12日間共培養した。次いで細胞をジギトニン(0.1%)溶解緩衝液を用いて溶解し、抗Flag抗体を3xFlagタグを介してTCRγ鎖をi.p.するために使用した。
図8に示すとおりCD3δ、CD3ε、CD3γおよびCD3ζ鎖をabTCRγキメラを用いて同時免疫沈降し、形質導入abTCRキメラが内因性CD3複合体と物理的に会合したことを実証した。抗Flag免疫沈降で偽形質導入試料において観察されたCD3εより大きなMWを有するバンドは、非特異的バンドである。
【0483】
同様の共免疫沈降実験をJRT3-T3.5およびJurkat細胞株において行う。JRT3-T3.5およびJurkat細胞株を抗AFP158/HLA-A*02:01結合部分(配列番号35および36)をコードするabTCR-6MD構築物を用いて形質導入する。形質導入5日後、CELLection biotin binder kitをJRT3-T3.5およびJurkat細胞株からAFP158四量体+集団を精製するために使用する。abTCR-6MDを用いて形質導入され、AFP158四量体を用いて精製されたJurkatおよびJRT3-T3.5細胞をそれぞれJurkat-abTCR-pureおよびJRT3-T3.5-abTCR-pureと命名する。JRT3-T3.5、JRT3-T3.5-abTCR-pure、JurkatおよびJurkat-abTCR-pure細胞を拡大増殖させ、0.1%ジギトニン溶解緩衝液中で溶解する。共免疫沈降を抗Flag抗体(Sigma)およびDynabeads Protein G for immunoprecipitation(Life Technologies)を使用して標準的プロトコールに従って実施する。
【0484】
(実施例4)
同じ抗AFP158/HLA-A
*02:01可変ドメインを含有するabTCR-6MDおよびCAR構築物を用いて形質導入されたT細胞の生物学的活性の特徴付け
abTCR形質導入T細胞は抗原陽性がん細胞を特異的に殺滅し得る
初代T細胞を偽形質導入または、抗AFP158/HLA-A
*02:01 scFv(配列番号37)を含有するCARもしくは同じ抗AFP158/HLA-A
*02:01可変ドメイン(配列番号35および36)を含有するabTCR-6MDをコードするレンチウイルスベクターを用いて形質導入した。形質導入効率をPE標識されたAFP158/HLA-A
*02:01四量体を用いる染色によって決定した(
図9A)。同様の形質導入率(CARTについて32%およびabTCRについて34%)を有するT細胞集団をがん細胞株を殺滅するそれらの能力を検査するために使用した。2.5:1のエフェクターおよび標的の比で3つの細胞株を使用した:HepG2(AFP+/HLA-A2+)、SK-HEP-1(AFP-/HLA-A2+)およびSK-HEP-1-AFP-MG(AFPミニ遺伝子を用いて形質導入されたSK-HEP-1)。特異的溶解を16時間インキュベーション後に、Cytox 96 Non-radioactive Cytotoxicity Assay(Promega)を使用して測定した。
図9Bに示すとおり、CARおよび、抗AFP158/HLA-A
*02:01結合部分を有するabTCR-6MDの両方を用いて形質導入されたT細胞は、抗原陽性細胞株HepG2およびSK-HEP-1-AFP-MGの殺滅を方向付けたが、抗原陰性細胞株SK-HEP-1の殺滅はもたらさなかった。abTCR形質導入細胞において観察された特異的溶解のレベルは、CAR-T細胞についてのもとの同等である。
【0485】
abTCR形質導入T細胞は抗原刺激で脱顆粒する
abTCR対CAR形質導入T細胞での生物学的活性をさらに特徴付けるために、本発明者らは、脱顆粒活性の測定としてCD107a表面発現を検出するためのフローサイトメトリーアッセイを使用した。抗AFP158/HLA
*02:01結合部分を有するabTCRおよびCAR形質導入T細胞は、上のとおり生成され、HepG2、SK-HEP-1およびSK-HEP-1-AFP-MG細胞と4時間、抗CD107a抗体とprotein transport inhibitor cocktail(eBioscience)の1:200希釈物の存在下で同時インキュベートした。標的細胞との同時インキュベーション後、形質導入T細胞をAFP158/HLA四量体および抗CD8を用いて染色した。四量体陽性、CD8陽性T細胞での脱顆粒を
図10右パネルに示す。CD107a発現によって測定された最も高いレベルの脱顆粒は、SK-HEP-1-AFP-MG(実線、灰色)に続くHepG2(点線、灰色)との同時インキュベーションで観察された一方で、脱顆粒はabTCRおよびCARの両方の形質導入T細胞を用いた親抗原陰性SK-HEP-1(実線、白色)では観察されなかった。同じ標的細胞が使用される場合に脱顆粒のレベルは、abTCRおよびCAR形質導入細胞の間で同様であった。これは、上記のT細胞媒介細胞溶解データと一致する。合わせて考えて本発明者らは、abTCR形質導入T細胞が脱顆粒において抗原陽性がん細胞に対してCAR形質導入細胞と同等に応答性であり(
図10)、細胞殺滅を媒介する(
図9)ことを実証した。
【0486】
腫瘍細胞殺滅におけるabTCRおよびCAR T細胞よるサイトカイン産生および分泌
abTCRまたはCARのいずれかを用いて形質導入され、同様の形質導入率を有するT細胞を生成し、上記のとおり標的細胞と同時インキュベートした。
図9Bに示すin vitro殺滅アッセイ後のIL-2、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、GM-CSF、IFN-γおよびTNF-αの培地への放出をMagpix multiplex system(Luminex)をBio-plex Pro Human Cytokine 8-plex Assay(BioRad)と共に使用して測定した。アッセイの検出限界に達するようにSK-HEP-1-AFP-MG標的反応由来の上清は25倍希釈したが、他のすべての試料は希釈しなかった。サイトカイン濃度を、培地、標的単独およびエフェクター単独由来のサイトカイン放出を減算した後に公知の標準曲線を用いて決定した。
【0487】
本発明者らは、HepG2の表面上のAFP158/HLA-A
*02:01複合体の数を高分解能顕微鏡を使用して細胞あたり約100であると推定した(データ示さず)。かかる低コピー数のペプチド/HLA複合体では、抗AFP158/HLA-A
*02:01抗体を使用するフローサイトメトリーは顕著なMFIシフトを検出し得なかった。対照的に、SK-HEP-1-AFP-MG細胞でのAFPミニ遺伝子の発現はフローサイトメトリーによるMFIでの1ログシフトを生じ、SK-HEP-1-AFP-MG細胞上でのAFP158/HLA-A
*02:01複合体のレベルがHepG2におけるものよりも顕著に高かったことを示している。HepG2を標的細胞として使用する場合、8つのヒトサイトカイン(IL-2、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、GM-CSF、IFN-γ、TNF-α)のパネルをabTCRまたはCAR形質導入T細胞を用いた16時間の同時インキュベーション後に測定し、IL-8、IL-10、GM-CSF、IFN-γ、TNF-αが培地において検出可能であった(
図11A)。サイトカイン放出は、CAR形質導入試料と比較した場合にabTCRを形質導入試料において一貫して低かった。同じアッセイをSK-HEP-1-AFP-MGを用いて行った場合、本発明者らが検査した8つのサイトカインの内7つの分泌は、abTCR-またはCAR形質導入初代T細胞との同時インキュベーションで検出された(
図11B)。検査した各サイトカインにおいて、培地中で検出されたサイトカインのレベルは、CAR-T試料と比較してabTCR形質導入T細胞を含有する試料において同様または低く、一部は2分の1未満であった(例えば、IL-2、IFN-γ、TNF-α)。SK-HEP-1細胞のみもまた、T細胞の非存在下で検出可能なレベル(バックグラウンドを約3000pg/ml超える)のIL-6およびIL-8を示した。
【0488】
培地中に検出されるサイトカインの供給源としての形質導入T細胞の寄与を決定するために、同様の形質導入効率(34%)を有するabTCRおよびCAR形質導入T細胞を2.5:1の比で標的細胞と、サイトカイン分泌を妨げるためのprotein transport inhibitor cocktail(eBioscience Cat#00498003)を用いて共培養した。処置4時間後、T細胞をAFP158/HLA-A
*02:01四量体および抗CD4抗体を抗TNF-α、抗IFN-γ、抗IL-2または抗IL-6抗体と共に用いて染色した。フローサイトメトリーを使用し、AFP158四量体
+細胞(
図12A~12H)でゲーティングして、本発明者らは、抗原陽性標的細胞と共培養された場合に、abTCRおよびCAR形質導入T細胞の両方において細胞内TNF-α、IFN-γおよびIL-2は発現されたが、IL-6はされなかったことを実証した。検討した各サイトカインについて、細胞内サイトカインのレベルは、標的細胞上での抗原発現のレベルに相関してHepG2よりもSK-HEP-1-AFP-MGにおいて一貫して高かった。各標的細胞集団に関して検査した各サイトカインについてabTCRに対するCAR形質導入細胞の間で細胞内サイトカインに顕著な差異はなかった。これは、サイトカイン放出アッセイにおいて見られた差異がサイトカインフィードバックによるものである可能性があることを示唆している。形質導入T細胞での細胞内IL-6の非存在は、
図11Bで培地中に検出されたIL-6の供給源がSK-HEP-1細胞由来であり、T細胞ではないことを示唆している。
【0489】
CD4+T細胞でのabTCRの活性化が特異的生物学的応答をもたらし得るかどうかを決定するために、本発明者らはAFPを発現しているがん細胞株を用いた刺激後のCD4
+、抗AFP158 abTCR発現T細胞での細胞内サイトカイン発現を調査した。上に記載のとおりCD3+T細胞を抗AFP158 abTCRを用いて形質導入し、がん細胞株SK-HEP1-MG(AFP
+)、SK-HEP1(AFP
-)またはHEPG2(AFP
+)と共にタンパク質輸送阻害剤の存在下で4時間、インキュベートした。陰性対照として、abTCR形質導入T細胞をいずれのがん細胞株も非存在でインキュベートした。インキュベーション後、T細胞を抗IFNγ、抗IL2または抗TNFα抗体を用いて染色し、AFP-四量体-PEおよび抗CD4を用いて共染色した。abTCR発現についてゲーティングした細胞をフローサイトメトリーによって粒度およびサイトカイン発現について分析した(
図13、Y軸は側方散乱、X軸はサイトカイン染色)。IFNγ、IL2およびTNFαの発現は、AFP
+がん細胞株SK-HEP1-MGおよびHEPG2を用いた抗AFP158 abTCR形質導入T細胞のインキュベーション後に誘導されたが、AFP
-細胞株SK-HEP1を用いて、またはいずれのがん細胞株も非存在でインキュベートした場合はされず、CD4+T細胞でのabTCRの抗原特異的活性化を示している。
【0490】
標的細胞との共培養後のabTCRおよびCAR T細胞におけるT細胞消耗マーカーの発現
抗原刺激の際にabTCRおよびCAR形質導入細胞上に発現される消耗マーカーのレベルを検討するために、CD3+T細胞をEasySep Human T Cell Isolation Kit(StemCell Technologies)を使用してPBMC富化全血から調製し、上記のとおりCD3/CD28 Dynabeadsを用いて活性化させた。活性化および拡大増殖させた細胞集団は、フローサイトメトリーによって>99%CD3+であった。次いでこれらの細胞を抗AFP158/HLA-A*02:01 scFv(配列番号37)を含有するCARまたは同じ抗AFP158/HLA-A*02:01可変ドメイン(配列番号35および36)を含有するabTCR-6MDをコードするレンチウイルスベクターを用いて7~9日間形質導入した。形質導入細胞をエフェクターおよび標的の比2.5:1で標的細胞と16時間共培養し、AFP158四量体および抗CD8抗体を消耗マーカーPD-1、TIM-3またはLAG-3に対する抗体と共に用いて共染色した。形質導入T細胞上の消耗マーカーのレベルを四量体+(即ち、形質導入された)T細胞でのゲーティングによってフローサイトメトリーによって分析した。独立したフローサイトメトリー実験では、本発明者らはCD8-であった四量体+T細胞がCD4+であった(データ示さず)ことを決定した。
【0491】
PD-1の上方制御がCD8
-四量体
+T細胞において観察された一方でLAG-1およびTIM-3の上方制御が、AFP(HepG2およびSK-HEP-1-AFP-MG)を発現する標的細胞への曝露後にCD8
+四量体
+T細胞において観察された(
図14)。すべての場合において、CAR形質導入T細胞において観察された消耗マーカーレベルの上方制御は、abTCR形質導入T細胞において観察されたものと同等またはより高かった。これは、abTCR形質導入T細胞が低レベルのT細胞消耗を生じる場合があり、in vivoでのより長いT細胞持続性をもたらしていることを示唆している。検査条件下で各消耗マーカーについて陽性の細胞のパーセントを決定し、表2に示す。
【表2】
【0492】
abTCRおよびCAR T細胞でのT細胞分化マーカーの発現
抗AFP158 abTCRがin vitro拡大増殖の際にT細胞の分化を遅延させ得るかどうかを決定するために、本発明者らは、3つのT細胞分化マーカー、メモリーT細胞マーカーCCR7およびCD28、ならびに最終分化マーカー、グランザイムBの細胞表面発現を測定した。抗AFP158/HLA-A
*02:01 scFv(配列番号37)を含有するCARまたは同じ抗AFP158/HLA-A
*02:01可変ドメイン(配列番号35および36)を含有するabTCR-6MDをコードするレンチウイルスベクターを用いてT細胞を形質導入し、これらのマーカーに対する抗体を用いて染色し、フローサイトメトリーによってウイルス形質導入後10~12日目に分析した(
図15)。結果は、CD4
+およびCD8
+T細胞の両方についてabTCR T細胞がCAR T細胞よりも多くのCCR7およびCD28を発現したが、グランザイムBは少なかったことを示し、抗AFP158 abTCR T細胞がin vitroでのT細胞拡大増殖後に抗AFP158 CAR T細胞よりも分化していないことを示唆している。
【0493】
抗AFP abTCR-6MDとabTCR-7構築物との比較
抗AFP158/HLA-A
*02:01 abTCR-6MDを発現するように形質導入された初代T細胞の細胞増殖を同じ抗体可変ドメインを有する抗AFP158/HLA-A
*02:01 abTCR-7を用いて形質導入されたT細胞のものと比較した。6.7×10
5T細胞を0日目に100U/ml IL-2の存在下でαCD3/αCD28ビーズ(1:1の割合)によって活性化させた。活性化T細胞を抗AFP158/HLA-A
*02:01 abTCR-6MD(配列番号35のアミノ酸配列を有するTCRδキメラサブユニットおよび配列番号36のアミノ酸配列を有するTCRγキメラサブユニット)をコードするレンチウイルスベクターまたは、抗AFP158/HLA-A
*02:01 abTCR-7(配列番号81のアミノ酸配列を有するTCRδキメラサブユニットおよび配列番号82のアミノ酸配列を有するTCRγキメラサブユニット)をコードするレンチウイルスベクターのいずれかでMOI4で1日目に形質導入した。次いで形質導入T細胞を培養し、IL-2の存在下で9~10日間拡大増殖させた。細胞数を1日目、5日目、7日目および9日目に計数した。
図16Aに示すとおりabTCR-6-MD形質導入T細胞は、9日目までにおよそ2倍の生細胞を有して、abTCR-7形質導入T細胞よりも早く増殖した。形質導入T細胞でのabTCR-6MDおよびabTCR-7構築物の発現を9日目にFLAGタグ付き構築物についてのウエスタンブロット分析によって評価した。簡潔に述べると、500万形質導入T細胞を100μl溶解緩衝液に溶解し、可溶化物13μlをNuPage systemを使用して4~12%ポリアクリルアミドゲル上で分離した。マウス抗FLAG抗体(1μg/ml)をabTCRガンマ鎖を検出するために使用し、マウス抗CD3ゼータ(1μg/ml)を内因性CD3を検出するために使用した。
図16Bに示すとおりabTCR-7構築物は、abTCR-6MD構築物よりも高いレベルで発現された。対応する抗CD3ζバンドで標準化した可溶化物についての抗FLAGバンドの強度をImageJソフトウェアを使用して定量し、abTCR-6MDと比較したabTCR-7の発現の20%の相対的増加を示した。
【0494】
抗AFP158/HLA-A
*02:01 abTCR-6MD T細胞の標的細胞殺滅活性を抗AFP158/HLA-A
*02:01 abTCR-7 T細胞のものと比較した。初代T細胞を偽形質導入または、上に記載のとおり抗AFP158/HLA-A
*02:01 abTCR-6MDもしくは抗AFP158/HLA-A
*02:01 abTCR-7構築物のいずれかをコードするレンチウイルスベクターを用いて形質導入した。abTCR-6MDまたはabTCR-7を用いて形質導入されたT細胞をSK-HEP-1(AFP-/HLA-A2+)およびSK-HEP-1-AFP-MG(AFPミニ遺伝子を用いて形質導入されたSK-HEP-1)細胞を殺滅するそれらの能力についてエフェクターおよび標的の比5:1で検査した。特異的殺滅のレベルを16時間で上に記載のとおり測定した。
図16Cに示すとおり、抗AFP158/HLA-A
*02:01結合部分を有するabTCR-6MD構築物は、同じ抗体可変ドメインを有するabTCR-7と比較して、AFP陽性SK-HEP-1-AFP-MG細胞と同様の特異的溶解を方向付けた。
【0495】
(実施例5)
abTCR-6MDおよび、同じ抗ヒトCD19可変ドメインを有するCAR構築物を用いて形質導入されたT細胞の生物学的活性の特徴付け
実施例4では、使用された抗体部分は抗原としてペプチド/MHC複合体に結合するTCR模倣物であった。abTCR設計が伝統的抗体標的(細胞表面抗原)とも作用することを実証するために、同様の実験設定をヒトCD19に対する抗体に基づいた構築物を使用して実行した。
【0496】
CD19 abTCR形質導入T細胞はCD19陽性がん細胞を殺滅し得る
初代T細胞を偽形質導入または、抗CD19結合ドメインを含有するCAR(配列番号44、IgV
Hドメインを有するscFv、配列番号45、およびIgV
Lドメイン、配列番号46を含む、例示的抗CD19抗体由来)または同じ抗CD19可変ドメインを含有するabTCR-6MD(配列番号42および43)をコードするレンチウイルスベクターを用いて形質導入した。CARまたはabTCR(両方とも形質導入率25%)を用いて形質導入されたT細胞をB細胞株JeKo-1(CD19
+)、IM9(CD19
+)、Jurkat(CD19
-)およびTHP-1(CD19
-)を、エフェクターおよび標的の比5:1で殺滅するそれらの能力を検査するために使用した。特異的殺滅のレベルを
図9Bについての記載と同じ方法を使用して16時間で測定した。
図17に示すとおり、抗CD19結合部分を有するCARおよびabTCR-6MDの両方はCD19陽性JeKo-1およびIM9細胞の殺滅を同様のレベルで方向付けたが、CD19陰性であるJurkatおよびTHP-1は殺滅しなかった。
【0497】
腫瘍細胞殺滅でのabTCRおよびCAR T細胞によるサイトカイン分泌
上記がん殺滅実験において使用されたものと同じ形質導入されたT細胞集団を標的細胞としてのJeKo-1、IM9、THP-1およびJurkatとそれらとを共インキュベートすることによるサイトカイン放出アッセイにおいて使用した。8つのヒトサイトカインのパネル(IL-2、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、GM-CSF、IFN-γ、TNF-α)を16時間後に測定した。検査したすべてのサイトカインは、CD19
+標的細胞との共インキュベーションの際にCAR形質導入T細胞の培地中で検出されたが、CD19
-細胞ではされなかった(
図18Aおよび18B)。abTCR形質導入T細胞を用いた共インキュベーション試料では、IL-10を除く検査したすべてのサイトカインの放出は、CD19
+細胞を含むabTCR試料において低かった。抗CD19抗体構築物でのこれらの発見は、抗AFP158/HLA-A
*02:01抗体構築物のものと同様であり:同様のがん細胞殺滅がCAR-TおよびabTCR形質導入細胞において観察された一方で、サイトカイン放出のレベルはabTCR形質導入T細胞が使用された場合に低かった。これは、高レベルのサイトカイン放出が望ましくない生理学的作用を生じる設定においてabTCRを使用することに有利である可能性がある。
【0498】
CD4+T細胞でのabTCRの活性化が特異的生物学的応答をもたらし得るかどうかを決定するために、本発明者らはCD19を発現しているがん細胞株を用いた刺激後のCD4
+、抗CD19 abTCR発現T細胞での細胞内サイトカイン発現を調査した。CD3+T細胞をクローン5-13 abTCR-6MD(配列番号56および54のアミノ酸配列を含む抗CD19クローン5-13結合部分を有するabTCR-6MD)を用いて形質導入し、がん細胞株Raji(CD19
+)、Raji-CD19KO(CD19
-)またはJeko-1(CD19
+)と共にタンパク質輸送阻害剤の存在下で4時間、インキュベートした。陰性対照として、abTCR形質導入T細胞をいずれのがん細胞株も非存在でインキュベートした。インキュベーション後、T細胞を抗IFNγ、抗IL2または抗TNFα抗体を用いて染色し、抗ヒトFab(CD19)および抗CD4を用いて共染色した。abTCR発現についてゲーティングした細胞をフローサイトメトリーによって粒度およびサイトカイン発現について分析した(
図19、Y軸は側方散乱、X軸はサイトカイン染色)。IFNγ、IL2およびTNFαの発現は、CD19
+がん細胞株RajiおよびJeko-1を用いた抗CD19 abTCR形質導入T細胞のインキュベーション後では誘導されたが、CD19
-細胞株Raji-CD19KOを用いて、またはいずれのがん細胞株も非存在でインキュベートした場合はされず、CD4+T細胞でのabTCRの抗原特異的活性化を示している。
【0499】
標的細胞との共培養後のabTCRおよびCAR T細胞でのT細胞消耗マーカーの発現
抗原刺激の際に抗CD19 abTCRおよびCAR形質導入細胞で発現される消耗マーカーのレベルを抗AFP158キメラ受容体について上に記載のとおり決定した。細胞をクローン5-13 abTCR-6MDまたは同じ抗CD19可変ドメインを含有するCARを用いて形質導入した。標的細胞株は、Raji(CD19+)、Raji-CD19KO(CD19-)およびJeko-1(CD19+)を含んだ。検査条件下で各消耗マーカーについて陽性の細胞のパーセントを決定し、表3に示す。
【表3】
【0500】
abTCRおよびCAR T細胞でのT細胞分化マーカーの発現
抗CD19 abTCRがin vitro拡大増殖の際にT細胞の分化を遅延させ得るかどうかを決定するために、本発明者らは、3つのT細胞分化マーカー、メモリーT細胞マーカーCCR7およびCD28、ならびに最終分化マーカー、グランザイムBの細胞表面発現を測定した。T細胞をクローン 5-13abTCR-6MDまたは同じ抗CD19可変ドメインを有するCARを用いて形質導入し、これらのマーカーに対する抗体を用いて染色し、フローサイトメトリーによってウイルス形質導入後10~12日目に分析した(
図20)。結果は、CD4
+およびCD8
+T細胞の両方についてabTCR T細胞がCAR T細胞よりも多くのCCR7およびCD28を発現したが、グランザイムBは少なかったことを示し、クローン5-13 abTCR T細胞がin vitroでのT細胞拡大増殖後に対応する CAR T細胞よりも分化していないことを示唆しており、抗AFP158キメラ受容体について観察されたものと一致していた。
【0501】
abTCRおよびCAR T細胞の増殖
abTCR T細胞があまり分化しておらず、CAR T細胞よりも高い増殖能力を有するかどうかをさらに決定するために、本発明者らは抗原陽性がん細胞とのエンゲージメント後のabTCRおよびCAR T細胞のCFSE蛍光、細胞分割の指標における変化をモニターした。T細胞をクローン5-13 abTCR-6MDまたは同じ抗CD19可変ドメインを有するCARを用いたウイルス形質導入10日後にCFSE色素を用いて標識し、ベースライン蛍光をフローサイトメトリーによって記録した。標識T細胞をRaji細胞(CD19+がん細胞株)とサイトカイン不含有培地中でインキュベートした。CFSE蛍光を2日目および3日目にCD4+およびCD8+T細胞についてフローサイトメトリーによって測定した(
図21)。2日目と3日目の間のCFSE蛍光強度の減少は、細胞増殖の量を示し、CAR T細胞よりもabTCR T細胞において顕著に高く、クローン5-13 abTCR T細胞が対応するCAR T細胞よりも多くの細胞分割を受けていることを示している。
【0502】
abTCRおよびCAR T細胞のキメラ受容体内部移行
T細胞表面abTCRとCARとの内部移行率を比較するために、T細胞をクローン5-13 abTCR-6MDまたは、同じ抗CD19可変ドメインを含有するCARを用いて形質導入し、CypHer5E、酸性pH6.5で蛍光を発するPH感受性色素を用いて標識した抗CD19結合部分を認識する抗イディオタイプ抗体を用いて氷上、30分間染色した。次いで細胞を37℃で表示の時間インキュベートし、固定し、粒度およびキメラ受容体発現についてフローサイトメトリーによって分析した(
図22、Y軸は側方散乱、X軸はCypHer5E染色)。結果は、ほとんどすべてのCARが染色後90分までに内部移行されたことを示している。対照的にabTCRは、ずっと低い率で内部移行され、大部分のabTCRは90分間でさえ細胞表面上に残っていた。
【0503】
抗CD19 abTCRとcTCR構築物との比較
抗CD19 abTCR-6MDを発現するように形質導入された初代T細胞の細胞増殖を同じ抗体可変ドメインおよび膜貫通ドメインを有するがTCRδおよびTCRγポリペプチド由来の定常領域を含む抗CD19キメラ構築物(cTCR)を用いて形質導入されたT細胞のものと比較した。6.7×10
5個のT細胞を0日目に100U/ml IL-2の存在下でαCD3/αCD28ビーズ(1:1の割合)によって活性化させた。活性化T細胞を抗CD19 abTCR-6MD(配列番号56のアミノ酸配列を有するTCRδキメラサブユニットおよび配列番号54のアミノ酸配列を有するTCRγキメラサブユニット)をコードするレンチウイルスベクターまたは、抗CD19 cTCR(配列番号75のアミノ酸配列を有するTCRδキメラサブユニットおよび配列番号76のアミノ酸配列を有するTCRγキメラサブユニット)をコードするレンチウイルスベクターのいずれかでMOI4で1日目に形質導入した。次いで形質導入T細胞を培養し、IL-2の存在下で9~10日間拡大増殖させた。細胞数を1日目、5日目、7日目および9日目に計数した。
図23Aに示すとおりabTCR形質導入T細胞は、9日目に1.7倍超の生細胞数を有して、cTCR形質導入T細胞よりも早く増殖した。
【0504】
抗CD19 abTCR T細胞の標的細胞殺滅活性を抗CD19 cTCR T細胞のものと比較した。初代T細胞を偽形質導入または、抗CD19 abTCR-6MDもしくは抗CD19 cTCRのいずれかをコードするレンチウイルスベクターを用いて形質導入した。abTCRまたはcTCRを用いて形質導入されたT細胞をエフェクターおよび標的の比5:1でCD19陽性標的細胞株Nalm-6を殺滅させるそれらの能力について検査した。特異的殺滅のレベルを上に記載のとおり16時間で測定した。
図23Bに示すとおり、抗CD19結合部分を有するabTCR-6MD構築物は、同じ抗CD19可変ドメインを有するcTCRよりもCD19陽性Nalm-6細胞のより多い特異的溶解を方向付けた。
【0505】
(実施例6)
abTCR-6MDおよび、同じ抗NY-ESO-1/HLA-A
*02:01可変ドメインを有するCAR構築物を用いて形質導入されたT細胞の生物学的活性の特徴付け
抗NY-ESO-1/HLA-A
*02:01 abTCR形質導入T細胞はNY-ESO-1陽性がん細胞を殺滅し得る
初代T細胞を偽形質導入または、CARもしくは、配列番号73のアミノ酸配列を有するIgV
Lドメインおよび配列番号72のアミノ酸配列を有するIgV
Hドメインを含む抗NY-ESO-1/HLA-A
*02:01結合部分を含有するabTCR-6MDのいずれかを発現するように形質導入した。CARは、N-末端からC末端までを有するscFv、IgV
Lドメイン、リンカー(配列番号74)およびIgV
Hドメインを含んだ。CARまたはabTCRを用いて形質導入されたT細胞は、フローサイトメトリーによってアッセイされたとおりそれらのそれぞれのキメラ受容体を同様のレベルで発現し、エフェクターおよび標的の比5:1で細胞株IM9(HLA-A2
+、NY-ESO-1
+)、Colo205(HLA-A2
+、NY-ESO-1
-)、MDA-231(HLA-A2
+、NY-ESO-1
-)、MCF7(HLA-A2
+、NY-ESO-1
-)、JeKo-1(HLA-A2
+、NY-ESO-1
+)、Raji(HLA-A2
+、NY-ESO-1
-)、Hep1(HLA-A2
+、NY-ESO-1
-)およびJurkat(HLA-A2
+、NY-ESO-1
-)を殺滅するそれらの能力を検査するために使用した。特異的殺滅のレベルを上の記載と同じ方法を使用して16時間で測定した。
図24に示すとおり、CARおよび、抗NY-ESO-1/HLA-A
*02:01結合部分を有するabTCR-6MDの両方がNY-ESO-1陽性JeKo-1およびIM9細胞の殺滅を同様のレベルで方向付けたが、NY-ESO-1陰性である他の細胞は殺滅させなかった。
【0506】
腫瘍細胞殺滅におけるabTCRおよびCAR T細胞によるサイトカイン分泌
上記がん殺滅実験において使用したものと同じ形質導入T細胞集団を、それらをIM9、Colo205、MDA-231、MCF7、JeKo-1、Hep1およびJurkat細胞と共インキュベーションすることによってサイトカイン放出アッセイにおいて使用した。4つのヒトサイトカイン(IL-2、GM-CSF、IFN-γ、TNF-α)のパネルを16時間後に測定した。検査したすべてのサイトカインは、NY-ESO-1+標的細胞との共インキュベーションの際にCARおよびabTCR形質導入T細胞の培地で検出されたが、大部分のNY-ESO-1-細胞ではされなかった(データ示さず)。重要なことにabTCR形質導入T細胞共インキュベーションによって検査したNY-ESO-1+標的細胞の大部分から放出されたサイトカインのレベルは、CAR形質導入T細胞共インキュベーションによるものより顕著に低かった(データ示さず)。
【0507】
(実施例7)
abTCR-6MD構築物を用いて形質導入されたナチュラルキラーT(NKT)細胞および制御性T(Treg)細胞の生物学的活性の特徴付け
抗CD19 abTCR形質導入NKT細胞
ビオチン抗体カクテルおよび抗ビオチンマイクロビーズを用いる非CD3
+/CD56
+細胞(非NKT細胞)の間接磁気標識化によってNKT細胞をヒトPBMCから単離し、CD3
+/CD56
+NKT細胞について富化するために非NKT細胞を枯渇させた。富化NKT細胞集団についてCD3およびCD56の表面発現をフローサイトメトリーによって評価し、
図25Aに示す。NKT細胞を抗CD3/抗CD28ビーズによって活性化し、抗CD19 abTCRをコードするレンチウイルスを用いて形質導入し、10%FBSおよびIL-2(100U/ml)を含有するRPMI-1640中で拡大増殖させた。形質導入効率は、抗CD19結合部分に特異的な抗イディオタイプ抗体を用いるフローサイトメトリーによって測定して80%超であった。NKT細胞をCD19発現RajiまたはRaji CD19-ノックアウト(CD19ko)がん細胞株とエフェクターおよび標的の比5:1で16時間共インキュベートし、培地中のサイトカイン放出(IL-2、GM-CSF、IFNγ、TNFα)の測定が続いた(
図25B)。抗CD19 abTCR形質導入NKT細胞は、CD19-陽性Raji細胞とインキュベートされた場合に、検査したそれぞれのサイトカインを放出するが、CD19陰性Raji CD19ko細胞とインキュベートされた場合には放出しないように活性化されたが、偽形質導入NKT細胞はされず、CD19抗原を含む形質導入されたabTCRのがん細胞への結合を通じてNKT細胞が特異的に活性化され得ることを示している。
【0508】
抗CD19 abTCR形質導入Treg細胞
Treg細胞をCD4
+/CD25
+Treg細胞の直接磁気標識化によってヒトPBMCから単離した。単離されたTreg細胞集団についてCD4およびCD25の表面発現をフローサイトメトリーによって評価し、
図26Aに示す。Treg細胞を抗CD3/抗CD28ビーズによって活性化し、抗CD19 abTCRをコードするレンチウイルスを用いて形質導入し、10%FBSおよびIL-2(100U/ml)を含有するRPMI-1640中で拡大増殖させた。形質導入効率は、抗CD19結合部分に特異的な抗イディオタイプ抗体を用いるフローサイトメトリーによって測定して80%であった。Treg細胞をCD19発現RajiまたはRaji CD19-ノックアウト(CD19ko)がん細胞株とエフェクターおよび標的の比5:1で16時間共インキュベートし、培地中のIL-10サイトカイン放出の測定が続いた(
図26B)。抗CD19 abTCR形質導入Treg細胞は、CD19陽性Raji細胞とインキュベートされた場合にIL-10を放出するが、CD19陰性Raji CD19ko細胞とインキュベートされた場合には放出しないように活性化されたが、偽形質導入Treg細胞はされず、CD19抗原を含む形質導入abTCRのがん細胞への結合を通じてTreg細胞が特異的に活性化され得ることを示している。
【0509】
(実施例8)
異なる抗体重鎖定常ドメインを有するabTCRを用いて形質導入されたT細胞の生物学的活性の特徴付け
先の実施例ではabTCR構築物において使用された抗体部分は、配列番号39のアミノ酸配列を有するIgG1 CH1ドメインを含有した。abTCR設計が他の免疫グロブリン重鎖由来のCH1ドメインとも作用することを実証するために、標的細胞殺滅アッセイをIgG1(配列番号39)、IgG2(配列番号60、61もしくは62)、IgG3(配列番号63)またはIgG4(配列番号64)のいずれか由来のCH1ドメインを有する抗AFP158/HLA-A
*02:01抗体に基づく構築物を使用して上に記載のとおり実行した。abTCRを用いて形質導入されたT細胞を表面発現の指標としてAFP158四量体結合についてアッセイし(表4)、HepG2(AFP+/HLA-A2+)、SK-HEP-1(AFP-/HLA-A2+)およびSK-HEP-1-AFP-MG(AFPミニ遺伝子を用いて形質導入されたSK-HEP-1)細胞を殺滅するそれらの能力について検査した。特異的溶解を16時間インキュベーション後にCytox 96 Non-radioactive Cytotoxicity Assay(Promega)を使用して測定した。
図27に示すとおり、抗AFP158/HLA-A
*02:01結合部分を有するabTCRのいずれかを用いて形質導入されたT細胞は、抗原陽性細胞株HepG2およびSK-HEP-1-AFP-MGの殺滅を方向付けたが、抗原陰性細胞株SK-HEP-1の殺滅はもたらさなかった。重要なことに、非IgG1 CH1ドメイン含有abTCRの表面発現はIgG1 CH1含有abTCRと比較して低かったが(表4を参照のこと)、それらは同様のレベルの標的細胞殺滅を生じ、それらの機能特性が増強されていることを示唆している。
【表4】
【0510】
(実施例9)
共刺激ドメイン含有abTCRを用いて形質導入されたT細胞の生物学的活性の特徴付け
C末端共刺激ドメインを含むabTCR設計の実現可能性を実証するために、種々の抗AFP158/HLA-A
*02:01 abTCR構築物をCD28および/または4-1BB由来の共刺激断片を使用して設計した(
図28)。abTCRは、配列番号36のアミノ酸配列を含有するTCRγキメラサブユニットおよび配列番号35のアミノ酸配列を含有するTCRδキメラサブユニットからなった。CD28共刺激ドメインを有するabTCRサブユニットは、それらのC末端に融合した配列番号70のアミノ酸配列を有し、4-1BB共刺激ドメインを有するサブユニットはそれらのC末端に融合した配列番号71のアミノ酸配列を有した。abTCR構築物をJ.RT3-R3.5細胞に形質導入し、abTCR発現およびCD3表面発現レスキューをフローサイトメトリーを使用して上に記載のとおりアッセイした。結果を表5に要約する。abTCRの発現およびCD3発現をレスキューするそれらの能力は、共刺激ドメインを含むまたは含まない種々のabTCR構築物の間で同様であった。別の実験では初代T細胞を、abTCR構築物を用いて形質導入し、フローサイトメトリーによってCD8発現およびAFP158四量体結合についてアッセイした(表6)。abTCRを用いて形質導入された初代T細胞をAFP158四量体結合およびCD4またはCD8発現のいずれかについてゲーティングし、フローサイトメトリーによってCCR7、CD45RA、CD28およびグランザイムBの発現についてアッセイした(表7)。これらの結果は、ウイルス形質導入および形質導入されたT細胞の分化が共刺激ドメインを含むまたは含まない種々のabTCR構築物間で同様であることを示している。標的細胞殺滅アッセイをabTCR構築物を使用して上に記載のとおり実行した。abTCRを用いて形質導入されたT細胞をHepG2(AFP+/HLA-A2+)、SK-HEP-1(AFP-/HLA-A2+)およびSK-HEP-1-AFP-MG(AFPミニ遺伝子を用いて形質導入されたSK-HEP-1)細胞を殺滅するそれらの能力についてアッセイした。
図29に示すとおり、abTCRのいずれかを用いて形質導入されたT細胞は、抗原陽性細胞株HepG2およびSK-HEP-1-AFP-MGの殺滅を方向付けたが、抗原陰性細胞株SK-HEP-1の殺滅はもたらさなかった。
【0511】
共刺激ドメインを含有するabTCR構築物をさらに特徴付けるために、種々のabTCRを用いて形質導入されたT細胞を4つの異なる集団(CD8+/abTCR+;CD8+/abTCR-;CD4+/abTCR+;CD4+/abTCR-)にゲーティングし、HepG2、SK-HEP-1およびSK-HEP-1-AFP-MG細胞とのインキュベーション後にT細胞消耗マーカーPD-1、TIM-3およびLAG-3の発現についてフローサイトメトリーによってアッセイした。C末端共刺激ドメインを含有する種々のabTCRを用いて形質導入されたT細胞は、いずれの共刺激ドメインも欠いているabTCRを用いて形質導入されたT細胞と比較して、標的陽性細胞HepG2およびSK-HEP-1-AFP-MGによる活性化後にT細胞消耗の顕著な増加を示さなかった(データ示さず)。種々のabTCRを用いて形質導入されたT細胞を、それらをSK-HEP-1およびSK-HEP-1-AFP-MG細胞と共インキュベートすることによって上に記載のサイトカイン放出アッセイにおいて使用した。4つのヒトサイトカイン(IL-2、GM-CSF、IFN-γ、TNF-α)のパネルを16時間後に測定した。検査したすべてのサイトカインは、abTCRを用いて形質導入されたT細胞のAFP
+SK-HEP-1-AFP-MG細胞との共インキュベーションの際に培地中に検出したが、AFP
-SK-HEP-1細胞ではしなかった(
図30)。C末端共刺激ドメインを含有する種々のabTCRを用いて形質導入されたT細胞は、いずれの共刺激ドメインも欠いているabTCRを用いて形質導入されたT細胞と比較して標的陽性SK-HEP-1-AFP-MG細胞による活性化後にサイトカイン放出の顕著な増加を示さず、一部の場合ではサイトカイン放出の低減を示した。
【0512】
標的細胞殺滅、T細胞消耗およびサイトカイン放出実験を、上に記載し、
図28に示すとおりのCD28および/または4-1BB由来の共刺激断片を使用して設計された抗CD19 abTCR構築物を使用して繰り返した。abTCRは、配列番号54のアミノ酸配列を含有するTCRγキメラサブユニットおよび配列番号56のアミノ酸配列を含有するTCRδキメラサブユニットからなった。抗AFP158/HLA-A
*02:01 abTCR構築物と同様に、共刺激ドメインを含有する抗CD19 abTCRを用いて形質導入されたT細胞は、いずれの共刺激ドメインも含まない抗CD19 abTCR構築物を用いて形質導入されたT細胞と同様に挙動した(
図31および32)。
【表5】
【表6】
【表7】
【0513】
(実施例10)
abTCR形質導入T細胞のin vivo有効性研究
ヒト肝細胞癌異種移植モデルでの抗AFP158/HLA-A
*02:01抗体についてのin vivo抗腫瘍性活性
抗AFP158/HLA-A
*02:01結合部分(配列番号35および36)を含有するabTCR-6MD構築物を用いて形質導入されたT細胞のin vivo抗腫瘍性活性をSCID-beigeマウスにおいてSK-HEP-1-AFP-MGの皮下(s.c.)モデルを使用して検査した。SK-HEP-1-AFP-MG細胞をSCID-beigeマウスの右側腹部にマウス1匹あたり5×10
6細胞s.c.移植した。平均腫瘍体積が100mm
3に達したら、動物を腫瘍体積に基づいて:(i)偽形質導入T細胞および(ii)abTCR形質導入T細胞、を受ける2つの群にランダム化した(1群あたりマウス8匹)。動物をランダム化の直後にマウス1匹あたり10
7の偽またはabTCR形質導入を2週間ごとに1回、3回用量で静脈注射(i.v.)によって処置した。マウスを全身健康状態、有害応答の可能性およびある場合は腫瘍体積の変化について注意深くモニターした。偽およびabTCR形質導入T細胞の両方が現在の用量およびスケジュールを十分に許容した。投薬に関連する体重変化は、研究全体を通じて観察されなかった(
図33)。SK-HEP-1-AFP-MG腫瘍は偽またはabTCR形質導入T細胞のi.v.投与後に継続して増殖したが、abTCR形質導入T細胞で処置した腫瘍の増殖速度は偽T処置腫瘍と比較して減速した。
図34Aに示すとおり、腫瘍増殖曲線の分離は、投薬開始後20日目に始まった。31日目に、abTCR形質導入T細処置腫瘍において23%増殖阻害が観察された(t検定、p=0.018)。
【0514】
abTCR形質導入T細胞の抗腫瘍性活性をより大きなSK-HEP-1-AFP-MG s.c.腫瘍でさらに評価した。SK-HEP-1-AFP-MG腫瘍を有するマウスでの研究では、平均腫瘍体積が300mm
3に達したら動物を2つの群にランダム化した(n=1群あたりマウス4匹)。動物は、無処置またはマウス1匹あたり10
7abTCR形質導入T細胞の単回腫瘍内注射(i.t.)のいずれかを受けた。
図34Bに示すとおり、abTCR形質導入T細胞のi.t.送達は、経時的な腫瘍体積における変化によって測定される大きなSK-HEP-1-AFP-MG腫瘍の増殖速度を減速させた。無処置とabTCR形質導入T細胞で処置した大きなSK-HEP-1-AFP-MG腫瘍との間での曲線下面積の比較は、2つの群間で統計的有意差を示した(両側t検定、p=0.04)。合わせて、abTCR形質導入T細胞のi.v.およびi.t.投与の両方がSK-HEP-1-AFP-MGの確立されたs.c.異種移植の増殖を顕著に阻害した。
【0515】
リンパ腫異種移植モデルでの抗CD19抗体についてのin vivo抗腫瘍性活性
CARおよび、例示的抗hCD19抗体結合部分を含むabTCRを用いて形質導入されたT細胞のin vivo抗腫瘍性活性をNOD SCIDガンマ(NSG)マウスにおけるCD19陽性ヒトリンパ腫異種移植モデルにおいて検査する。Raji-luc-GFP細胞をComparative Biosciences,Inc.(Sunnyville、California 94085)から購入し、RPMI培地+10%FBSおよび1%L-グルタミンにおいて37℃、5%CO2を用いた加湿雰囲気中で培養する。Raji-luc-GFP細胞は、CD19陽性バーキットリンパ腫細胞株、Raji由来であり、ホタルルシフェラーゼ(luc)および緑色蛍光タンパク質の両方をコードする二重レポーター遺伝子を用いる安定トランスフェクション後に、生物発光画像法を使用してin vivoで追跡可能な細胞を生じる。NSGマウスをJackson Laboratories(Bar Harbor、ME USA 04609)から購入し、実験の前に少なくとも7日間順化させる。Raji-luc-GFP細胞をPBSに再懸濁し、NSGマウスに尾静脈を通じて1×106細胞/100μl/マウスで静脈内(i.v.)移植する。腫瘍移植5日後、動物をXenogen IVIS imaging systemを使用して腫瘍負荷の評価のために画像化する。マウスを光子発光に基づいて6.7×105光子の平均光子発光で次の4つの群にランダム化する(n=1群あたりマウス6匹):(i)無処置、(ii)偽形質導入ヒトT細胞、(iii)抗CD19 CAR-T処置、および(iv)抗hCD19 abTCR T細胞処置。ランダム化の直後に動物を偽または抗CD19 CAR-T細胞を用いてマウス1匹あたり107細胞の用量で、2週間ごとに1回、3回用量で、i.v.で処置する。
【0516】
動物は、投薬後は注意深くモニターする。Xenogen IVIS systemを使用する生物発光画像法を1週間に1回、8週間まで撮る。
【0517】
動物研究を抗CD19結合部分を有するabTCR-6MDを用いて形質導入されたT細胞のin vivo抗腫瘍能力を評価するために上に記載のとおり実行した。
【0518】
6~8週齢メスNSGマウスをこの研究において使用した。Raji-luc-GFP細胞株をRPMI培地+10%FBSおよび1%L-グルタミン、37℃、5%CO2を用いた加湿雰囲気中で培養した。Raji-luc-GFP細胞をPBS中に再懸濁し、1×106細胞/100μl/マウスでNSGマウス40匹にi.v.移植した。
【0519】
腫瘍移植4日後、腫瘍増殖を確認するためにIvis Spectrumを使用してマウスを画像化した。次いでマウスを光子発光に基づいて、次の処置のために6つの群にランダム化した(n=マウス6匹/群):1)ビヒクル(PBS);2)偽(8×106個の偽形質導入T細胞);3)クローン5 abTCR(配列番号42および54のアミノ酸配列を含む抗CD19クローン5結合部分を有するabTCR-6MDを用いて形質導入された8×106個のT細胞);4)クローン5-3 abTCR(配列番号42および43のアミノ酸配列を含む抗CD19クローン5-3結合部分を有するabTCR-6MDを用いて形質導入された8×106個のT細胞);5)クローン5-9 abTCR(配列番号55および54のアミノ酸配列を含む抗CD19クローン5-9結合部分を有するabTCR-6MDを用いて形質導入された8×106個のT細胞);ならびに6)クローン5-13 abTCR(配列番号56および54のアミノ酸配列を含む抗CD19クローン5-13結合部分を有するabTCR-6MDを用いて形質導入された8×106個のT細胞)。
【0520】
動物は、腫瘍移植後は注意深くモニターし、800万受容体陽性T細胞を投薬した。動物を秤量し、Xenogen画像法を研究期間について1週間に2回行った。次の状態を示す動物を安楽死させ「条件死」と記録した:a)急性有害応答:努力呼吸、振戦、受動的行動(食欲の喪失および嗜眠);b)初期体重の25%超の体重喪失;ならびにc)マウス移動に影響する四肢麻痺。
【0521】
この実験の結果を、腫瘍由来の総フラックス発光をabTCR細胞または対照の投薬後日数に対してプロットする
図35に示す。4つすべてのCD19-abTCR T細胞はin vivoでCD19陽性Raji腫瘍を標的化し、溶解して、腫瘍増殖を阻害するabTCRプラットフォームでの抗CD19抗体の有効性を実証している。
【0522】
別の実験では、腫瘍を移植されなかったNSGマウスを抗CD19 abTCR-6MDまたは、同じ結合配列を有する抗CD19 CARを用いて形質導入されたT細胞8×106を用いて処置し、これらの形質導入T細胞のin vivoでの効果を比較した。抗CD19 CAR T細胞を用いて処置したマウスは24時間以内に死んだ、一方で抗CD19 abTCR T細胞を用いて処置したマウスは5週間後に生存していた。この結果は、abTCR構築物を発現しているT細胞が、CARを発現しているものよりも安全であることを示している。
【0523】
抗CD19 abTCRと抗CD19 CARの比較
Raji B細胞リンパ腫Raji-luc-GFP細胞をNSGマウスに上に記載のとおり移植した。次いでマウスにクローン5-13 abTCR-6MD(配列番号56および54のアミノ酸配列を含む抗CD19クローン5-13結合部分を有するabTCR-6MD)を用いて形質導入された5×10
6個のabTCR
+T細胞、クローン5-13 CAR(抗CD19クローン5-13結合部分を有するCAR)を用いて形質導入された5×10
6個のCAR
+T細胞、または5×10
6個の偽T細胞を、注射試料あたりマウス8匹の群に注射した。血清をT細胞移植24時間後に収集し、血清中のヒトサイトカインの濃度をLuminex Magpix machineを使用して上に記載のとおり測定した。サイトカイン測定結果を
図36に示す。腫瘍負荷を既に記載のとおりルシフェラーゼ活性によって測定し、結果を
図37(定量)および27(画像法)に示す。
【0524】
クローン5-13 CARとクローン5-13 abTCR T細胞との間の直接比較では、マウスに注射されたabTCR T細胞はCAR T細胞と比較して早期の時点で急速な腫瘍退縮を生じた一方で、CAR T細胞を注射されたマウスは約5日後まで腫瘍退縮を示さなかった。本実験全体を通じてクローン5-13 abTCR T細胞は、クローン5-13 CAR T細胞よりも高いin vivo腫瘍阻害有効性を示した。24時間でのサイトカイン測定結果は、クローン5-13 abTCR T細胞を用いて処置されたマウスもまたサイトカイン分泌レベルがCAR T細胞処置マウスよりも低減していたことを示している。これらの結果は、abTCR T細胞がCAR T細胞よりも低いサイトカイン分泌効果にも関わらず、高い腫瘍阻害効力を有することから、抗腫瘍有効性がサイトカインの過産生を必要としないことの証拠を提供している。
【0525】
腫瘍移植7週間後、クローン5-13 abTCR T細胞を用いて処置したマウスで検出可能な腫瘍を有するものはなかった。この時点で偽T細胞処置群由来のマウス3匹およびクローン5-13 abTCR T細胞処置群由来のマウス3匹を、5×10
5個のRajiリンパ腫細胞を用いるi.v.移植によって再チャレンジした。腫瘍負荷をルシフェラーゼ活性によって既に記載のとおり測定し、結果を
図39に示す。偽T細胞処置群由来のマウスにおいて腫瘍が急速に増殖する一方で、クローン5-13 abTCR形質導入T細胞を用いる先行処置は、Rajiリンパ腫細胞移植を用いる再チャレンジ後の腫瘍の増殖を妨げ、abTCR形質導入T細胞が抗原に応答するそれらの能力を継続し、維持していることを示している。
【0526】
別の実験では5×106個のクローン5-3 abTCR-6MD(配列番号42および43のアミノ酸配列を含む抗CD19クローン5-3結合部分を有するabTCR-6MD)T細胞または、5×106個のクローン5-3 CAR(抗CD19クローン5-3結合部分を有するCAR、配列番号44)T細胞のいずれかの注射の24時間後にNSGマウスから血清を、収集した。マウス血清中のサイトカインの濃度を上に記載のとおり測定した。高レベルのT細胞由来ヒトサイトカインおよびマウス由来IL-6をクローン5-3 CAR T細胞を用いて処置したマウスにおいて見出した。対照的に、クローン5-3 abTCRを用いて処置されたマウスは、血清サイトカインレベルの劇的な低下を示し(データ示さず)、abTCR T細胞についてサイトカイン過産生への効果の低減のさらなる証明を提供している。
【0527】
白血病異種移植モデルにおける抗CD19抗体についてのin vivo抗腫瘍性活性
例示的抗hCD19抗体結合部分を含有するCARまたはabTCRを用いて形質導入されたT細胞のin vivo抗腫瘍性活性をNSGマウスでのCD19陽性ヒト白血病異種移植モデルにおいて検査した。NALM-6-luc-GFP細胞は、Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのEric Smithの研究室からの贈与であり、RPMI培地+10%FBS中、37℃、5%CO2を用いた加湿雰囲気中で培養した。NALM-6-luc-GFP細胞は、CD19陽性急性リンパ性白血病細胞株、NALM-6由来であり、ホタルルシフェラーゼ(luc)および緑色蛍光タンパク質の両方をコードする二重レポーター遺伝子を用いる安定トランスフェクション後に、生物発光画像法を使用してin vivoで追跡可能な細胞を生じる。NSGマウスをJackson Laboratories(Bar Harbor、ME USA 04609)から購入し、実験の前に少なくとも3日間順化させる。NALM-6-luc-GFP細胞をPBSに再懸濁し、6~8週齢メスNSGマウス30匹に尾静脈を通じて5×105細胞/100μl/マウスで静脈内(i.v.)移植する。腫瘍移植4日後、動物をXenogen IVIS imaging systemを使用して腫瘍負荷の評価のために画像化した。マウスを光子発光に基づいて次の4群にランダム化した:(i)ビヒクル、PBSのみ(n=マウス6匹);(ii)10×106個の偽形質導入ヒトT細胞(n=マウス6匹);(iii)5×106個のクローン5-13 CAR T細胞(抗CD19クローン5-13結合部分を有するCARを用いて形質導入されたT細胞)(n=マウス8匹);ならびに(iv)5×106個のクローン5-13 abTCR-6MD T細胞(配列番号56および54のアミノ酸配列を含む抗CD19クローン5-13結合部分を有するabTCR-6MDを用いて形質導入されたT細胞)(n=マウス8匹)。
【0528】
動物は、腫瘍移植後は注意深くモニターし、受容体陽性T細胞を投薬した。動物を秤量し、Xenogen画像法を研究期間について1週間に2回行った。次の状態を示す動物を安楽死させ「条件死」と記録した:a)急性有害応答:努力呼吸、振戦、受動的行動(食欲の喪失および嗜眠);b)初期体重の25%超の体重喪失;ならびにc)マウス移動に影響する四肢麻痺。
【0529】
この実験の結果を、各処置群についての腫瘍由来の平均総フラックス発光を処置後日数に対してプロットした
図40に示す。クローン5-13 abTCR T細胞およびクローン5-13 CAR T細胞の両方がin vivoでCD19陽性NALM-6腫瘍を標的化および溶解し、複数のがんモデルにおいて腫瘍増殖を阻害するabTCRプラットフォームでの抗CD19抗体の有効性を実証している。
【0530】
処置24時間後に血液を1群あたり3匹のマウスからサイトカイン測定のために収集し、結果を
図41に示す。リンパ腫異種移植モデルと同様に、白血病異種移植モデルでの抗CD19 abTCR T細胞を用いた処置は、抗CD19 CAR T細胞を用いた処置よりも低いレベルのサイトカイン分泌を生じた。
【0531】
処置後7日目および13日目に血液を各群の代表的なマウスから収集し、Affymetrix eBioscience,Inc.からの「123count eBeads」キットを使用して、血液1μlあたりのCD3+T細胞、CAR/abTCR発現T細胞および腫瘍細胞の数およびT細胞上のPD-1発現のレベルを決定するためにフローサイトメトリーによって分析した。処置13日後に1群あたりマウス2匹を安楽死させ、骨髄抽出物をCD3+/CAR/abTCR T細胞、腫瘍細胞の存在およびT細胞上のPD-1発現レベルについてフローサイトメトリーによって分析した。
【0532】
abTCR T細胞を投与されたマウスは、投与後7および13日目の両方でCAR T細胞を投与されたマウスについて観察されたものよりも高いレベルのキメラ受容体発現T細胞をそれらの血液中に有し(
図42)、abTCR T細胞がこのモデルにおいてそれらの対応するCAR T細胞よりも高いレベルの生存率および/または増殖を有することを示している。
図43および44に示すとおり、CAR T細胞またはabTCR T細胞のいずれかで処置したマウスが、ビヒクルおよび偽処置対照動物と比較して処置後13日目に末梢血および骨髄の両方において腫瘍細胞の低減を示した(FITC染色によって示された)一方で、末梢血および骨髄の両方における腫瘍細胞の低減はabTCR T細胞を用いて処置された動物に対してより大きかった。
図45および46に示すとおり、末梢血および骨髄の両方由来のT細胞の表面上のPD-1、T細胞消耗マーカーの発現レベルは、CD4
+およびCD8
+T細胞の両方について、abTCR T細胞を用いて処置したマウスにおいての方が、CAR T細胞を用いて処置したものよりも低く、偽処置マウスにおいて観察されたレベルに匹敵した。これらの結果は、abTCR発現T細胞がCAR発現T細胞よりも消耗しにくい可能性があることを示唆している。
【表8-1】
【表8-2】
【表8-3】
【表8-4】
【表8-5】
【表8-6】
【表8-7】
【表8-8】
【表8-9】
【表8-10】
【配列表】