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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】切削加工機および補正方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 15/02 20060101AFI20230720BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20230720BHJP
   G05B 19/404 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
B23Q15/02
B23Q17/00 A
G05B19/404 K
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019088373
(22)【出願日】2019-05-08
(65)【公開番号】P2020183007
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】317009525
【氏名又は名称】DGSHAPE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】須山 晃裕
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-013155(JP,A)
【文献】特開2014-191607(JP,A)
【文献】特開2009-146057(JP,A)
【文献】特開昭60-085852(JP,A)
【文献】特開2007-168013(JP,A)
【文献】特開2008-023692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 15/02、20
B23Q 17/00
G05B 19/404
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差する3軸をX軸、Y軸およびZ軸とする座標系を有し、かつ、前記X軸方向に延びる軸をA軸、前記Y軸方向に延びる軸をB軸、前記Z軸方向に延びる軸をS軸とする切削加工機であって、
前記Z軸方向および前記Y軸方向に移動可能かつ前記S軸回りに回転可能に構成され、棒状の加工ツールおよび棒状の検出ツールのいずれか一方を着脱自在に把持するスピンドルと、
前記X軸方向に移動可能に構成され、前記加工ツールおよび前記検出ツールを収容可能なツールマガジンと、
前記ツールマガジンに接続され、前記加工ツールによって加工される被加工物または前記検出ツールによって検出される検出部材を有する検出治具を保持し、前記B軸回りに回転可能に構成された回転保持部材と、
上面を有し、前記加工ツールまたは前記検出ツールが接触したことを検知するツールセンサと、
前記スピンドル、前記ツールマガジンおよび前記回転保持部材を制御する制御装置と、を備え、
前記検出治具は、第1平面部と、前記第1平面部の裏面に位置する第2平面部と、を有する本体部を有し、
前記本体部には、前記第1平面部から前記第2平面部に亘って第1貫通孔が貫通形成され、
前記検出部材は、前記Y軸方向に延びかつ前記第1貫通孔に配置され、前記検出ツールの第1の点および前記検出ツールのうち前記第1の点とは前記Z軸方向で異なる位置に位置する第2の点と接触する第1棒部材を備え、
前記制御装置は、
前記検出ツールの長さを記憶する記憶部と、
前記検出ツールを把持した前記スピンドルを前記Z軸方向に移動させかつ前記ツールマガジンを前記X軸方向に移動させることにより、前記検出ツールの前記第1の点と前記検出部材とが接触したときの前記スピンドルの第1の座標値を取得する第1取得部と、
前記検出ツールを把持した前記スピンドルを前記Z軸方向に移動させかつ前記ツールマガジンを前記X軸方向に移動させることにより、前記検出ツールの前記第2の点と前記検出部材とが接触したときの前記スピンドルの第2の座標値を取得する第2取得部と、
前記検出ツールを把持した前記スピンドルを前記Z軸方向および前記Y軸方向に移動させることにより、前記検出ツールの第3の点と前記検出部材とが接触したときの前記スピンドルの第3の座標値を取得する第3取得部と、
前記検出ツールを把持した前記スピンドルを前記Z軸方向および前記Y軸方向に移動させることにより、前記検出ツールのうち前記第3の点とは前記Z軸方向で異なる位置に位置する第4の点と前記検出部材とが接触したときの前記スピンドルの第4の座標値を取得する第4取得部と、
前記第1の座標値および前記第2の座標値に基づいて、前記B軸方向から見たときの前記Z軸と前記S軸とのなす第1傾斜角度を算出する第1角度算出部と、
前記第3の座標値および前記第4の座標値に基づいて、前記A軸方向から見たときの前記Z軸と前記S軸とのなす第2傾斜角度を算出する第2角度算出部と、
前記加工ツールを把持した前記スピンドルを前記Z軸方向および前記Y軸方向に移動させ、前記加工ツールの下端部が前記ツールセンサの前記上面に接触したことが前記ツールセンサによって検出されたときの前記スピンドルの位置に基づいて、前記加工ツールの長さを取得する長さ取得部と、
前記検出ツールの長さと前記加工ツールの長さとの差に基づいて、前記加工ツールの前記Z軸方向の補正値Aを算出する第1補正値算出部と、
前記検出ツールの長さと前記加工ツールの長さとの差および前記第1傾斜角度に基づいて、前記加工ツールの前記X軸方向の補正値Bを算出する第2補正値算出部と、
前記検出ツールの長さと前記加工ツールの長さとの差および前記第2傾斜角度に基づいて、前記加工ツールの前記Y軸方向の補正値Cを算出する第3補正値算出部と、
前記加工ツールを把持する前記スピンドルの位置を前記補正値Aおよび前記補正値Bおよび前記補正値Cによって補正する位置補正部と、を備えている、切削加工機。
【請求項2】
前記本体部には、前記第1平面部から前記第2平面部に亘って第2貫通孔が貫通形成され、
前記検出部材は、前記X軸方向に延びかつ前記第2貫通孔に配置され、前記検出ツールの前記第3の点および前記第4の点と接触する第2棒部材を備えている、請求項に記載の切削加工機。
【請求項3】
前記ツールマガジンに接続され、前記B軸回りに回転可能に構成され、前記回転保持部材を前記A軸回りに回転可能に支持する回転支持部材、を備えている、請求項1または2のいずれか一項に記載の切削加工機。
【請求項4】
前記ツールセンサは、前記ツールマガジンの上面から突出するように形成されている、請求項1からのいずれか一項に記載の切削加工機。
【請求項5】
互いに交差する3軸をX軸、Y軸およびZ軸とする座標系を有し、かつ、前記X軸方向に延びる軸をA軸、前記Y軸方向に延びる軸をB軸、前記Z軸方向に延びる軸をS軸とする切削加工機であって、
前記Z軸方向および前記Y軸方向に移動可能かつ前記S軸回りに回転可能に構成され、棒状の加工ツールおよび棒状の検出ツールのいずれか一方を着脱自在に把持するスピンドルと、
前記X軸方向に移動可能に構成され、前記加工ツールおよび前記検出ツールを収容可能なツールマガジンと、
前記ツールマガジンに接続され、前記加工ツールによって加工される被加工物または前記検出ツールによって検出される検出部材を有する検出治具を保持し、前記B軸回りに回転可能に構成された回転保持部材と、
上面を有し、前記加工ツールまたは前記検出ツールが接触したことを検知するツールセンサと、を備え
前記検出治具は、第1平面部と、前記第1平面部の裏面に位置する第2平面部と、を有する本体部を有し、
前記本体部には、前記第1平面部から前記第2平面部に亘って第1貫通孔が貫通形成され、
前記検出部材は、前記Y軸方向に延びかつ前記第1貫通孔に配置され、前記検出ツールの第1の点および前記検出ツールのうち前記第1の点とは前記Z軸方向で異なる位置に位置する第2の点と接触する第1棒部材を備えた切削加工機において、前記加工ツールを把持する前記スピンドルの位置を補正する補正方法であって、
前記検出ツールを把持した前記スピンドルを前記Z軸方向に移動させかつ前記ツールマガジンを前記X軸方向に移動させることにより、前記検出ツールの前記第1の点と前記検出部材とが接触したときの前記スピンドルの第1の座標値を取得すること、
前記検出ツールを把持した前記スピンドルを前記Z軸方向に移動させかつ前記ツールマガジンを前記X軸方向に移動させることにより、前記検出ツールの前記第2の点と前記検出部材とが接触したときの前記スピンドルの第2の座標値を取得すること、
前記検出ツールを把持した前記スピンドルを前記Z軸方向および前記Y軸方向に移動させることにより、前記検出ツールの第3の点と前記検出部材とが接触したときの前記スピンドルの第3の座標値を取得すること、
前記検出ツールを把持した前記スピンドルを前記Z軸方向および前記Y軸方向に移動させることにより、前記検出ツールのうち前記第3の点とは前記Z軸方向で異なる位置に位置する第4の点と前記検出部材とが接触したときの前記スピンドルの第4の座標値を取得すること、
前記第1の座標値および前記第2の座標値に基づいて、前記B軸方向から見たときの前記Z軸と前記S軸とのなす第1傾斜角度を算出すること、
前記第3の座標値および前記第4の座標値に基づいて、前記A軸方向から見たときの前記Z軸と前記S軸とのなす第2傾斜角度を算出すること、
前記加工ツールを把持した前記スピンドルを前記Z軸方向および前記Y軸方向に移動させ、前記加工ツールの下端部が前記ツールセンサの前記上面に接触したことが前記ツールセンサによって検出されたときの前記スピンドルの位置に基づいて、前記加工ツールの長さを取得すること、
前記検出ツールの長さと前記加工ツールの長さとの差に基づいて、前記加工ツールの前記Z軸方向の補正値Aを算出すること、
前記検出ツールの長さと前記加工ツールの長さとの差および前記第1傾斜角度に基づいて、前記加工ツールの前記X軸方向の補正値Bを算出すること、
前記検出ツールの長さと前記加工ツールの長さとの差および前記第2傾斜角度に基づいて、前記加工ツールの前記Y軸方向の補正値Cを算出すること、
前記加工ツールを把持する前記スピンドルの位置を前記補正値Aおよび前記補正値Bおよび前記補正値Cによって補正すること、を包含する、補正方法。
【請求項6】
前記本体部には、前記第1平面部から前記第2平面部に亘って第2貫通孔が貫通形成され、
前記検出部材は、前記X軸方向に延びかつ前記第2貫通孔に配置され、前記検出ツールの前記第3の点および前記第4の点と接触する第2棒部材を備えている、請求項に記載の補正方法。
【請求項7】
前記切削加工機は、前記ツールマガジンに接続され、前記B軸回りに回転可能に構成され、前記回転保持部材を前記A軸回りに回転可能に支持する回転支持部材、を備えている、請求項5または6に記載の補正方法。
【請求項8】
前記ツールセンサは、前記ツールマガジンの上面から突出するように形成されている、請求項5から7のいずれか一項に記載の補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削加工機および補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、加工ツールをスピンドルの中心軸回り(以下S軸回りとする)に回転させて被加工物を切削加工する切削加工機が知られている。この種の切削加工機として、例えば、特許文献1には、被加工物を切削加工する加工ツールを把持するスピンドルと、被加工物を保持する保持部とを備えた切削加工機が開示されている。
【0003】
スピンドルは、例えば、XYZ座標系のY軸方向およびZ軸方向に移動可能に設けられており、加工ツールをZ軸方向に延びるS軸回りに回転させるように構成されている。また、保持部は、XYZ座標系のX軸方向に移動可能に設けられており、被加工物をX軸方向に延びるA軸回りおよびY軸方向に延びるB軸回りに回転可能に保持するように構成されている。加工ツールと被加工物との相対的な位置関係を三次元で変化させて、加工ツールによって切削加工される被加工物の部位を適宜変更させることで、被加工物を所望の形状に加工することができる。
【0004】
ここで、上述の切削加工機では、通常は、スピンドルに把持された検出ツールを回転保持部材に保持された検出部材に接触させることによって、スピンドルと回転保持部材との相対的な位置関係を検出して、スピンドルと回転保持部材との位置関係等を補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-13155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、切削加工機を組み立てる際に、スピンドルの中心軸であるS軸はZ軸と平行に設定される。ところが、部品の組み立て誤差や温度変化による熱膨張等によって、Z軸とS軸とが平行にならないことがあり得る。ここで、スピンドルに把持される棒状の加工ツールおよび検出ツールは、相互に長さが異なる場合がある。このため、検出ツールを用いてスピンドルと回転保持部材との位置関係等を補正しても、S軸がZ軸に対して傾いている場合には、検出ツールの先端の位置と加工ツールの先端の位置にずれが生じ得る。この結果、被加工物を所望の形状に切削加工することができない虞がある。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、S軸とZ軸とが平行でない場合であっても、被加工物を所望の形状に切削加工することができる切削加工機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る切削加工機は、互いに交差する3軸をX軸、Y軸およびZ軸とする座標系を有し、かつ、前記Y軸方向に延びる軸をB軸、前記Z軸方向に延びる軸をS軸とする切削加工機である。前記切削加工機は、前記Z軸方向および前記Y軸方向に移動可能かつ前記S軸回りに回転可能に構成され、棒状の加工ツールおよび棒状の検出ツールのいずれか一方を着脱自在に把持するスピンドルと、前記X軸方向に移動可能に構成され、前記加工ツールおよび前記検出ツールを収容可能なツールマガジンと、前記ツールマガジンに接続され、前記加工ツールによって加工される被加工物または前記検出ツールによって検出される検出部材を有する検出治具を保持し、前記B軸回りに回転可能に構成された回転保持部材と、上面を有し、前記加工ツールまたは前記検出ツールが接触したことを検知するツールセンサと、前記スピンドル、前記ツールマガジンおよび前記回転保持部材を制御する制御装置と、を備えている。前記制御装置は、前記検出ツールの長さを記憶する記憶部と、前記検出ツールを把持した前記スピンドルを前記Z軸方向に移動させかつ前記ツールマガジンを前記X軸方向に移動させることにより、前記検出ツールの第1の点と前記検出部材とが接触したときの前記スピンドルの第1の座標値を取得する第1取得部と、前記検出ツールを把持した前記スピンドルを前記Z軸方向に移動させかつ前記ツールマガジンを前記X軸方向に移動させることにより、前記検出ツールのうち前記第1の点とは前記Z軸方向で異なる位置に位置する第2の点と前記検出部材とが接触したときの前記スピンドルの第2の座標値を取得する第2取得部と、前記第1の座標値および前記第2の座標値に基づいて、前記B軸方向から見たときの前記Z軸と前記S軸とのなす第1傾斜角度を算出する第1角度算出部と、前記加工ツールを把持した前記スピンドルを前記Z軸方向および前記Y軸方向に移動させ、前記加工ツールの下端部が前記ツールセンサの前記上面に接触したことが前記ツールセンサによって検出されたときの前記スピンドルの位置に基づいて、前記加工ツールの長さを取得する長さ取得部と、前記検出ツールの長さと前記加工ツールの長さとの差に基づいて、前記加工ツールの前記Z軸方向の補正値Aを算出する第1補正値算出部と、前記検出ツールの長さと前記加工ツールの長さとの差および前記第1傾斜角度に基づいて、前記加工ツールの前記X軸方向の補正値Bを算出する第2補正値算出部と、前記加工ツールを把持する前記スピンドルの位置を前記補正値Aおよび前記補正値Bによって補正する位置補正部と、を備えている。
【0009】
本発明の切削加工機によると、第1補正値算出部は、加工ツールのZ軸方向の補正値Aを算出し、第2補正値算出部は、加工ツールのX軸方向の補正値Bを算出する。ここで、位置補正部は、加工ツールを把持するスピンドルの位置を補正値Aによって補正するため、加工ツールのZ軸方向の先端位置を検出ツールのZ軸方向の先端位置に一致させることができる。また、位置補正部は、加工ツールを把持するスピンドルの位置を補正値Bによって補正するため、加工ツールのX軸方向の先端位置を検出ツールのX軸方向の先端位置に一致させることができる。これにより、部品の組み立て誤差や温度変化による熱膨張等によって、Z軸とS軸とが平行でない場合であっても、加工ツールとは長さの異なる検出ツールを用いて補正された位置関係に基づいて、被加工物を所望の形状に切削加工することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、S軸とZ軸とが平行でない場合であっても、被加工物を所望の形状に切削加工することができる切削加工機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る切削加工機の斜視図である。
図2】一実施形態に係る切削加工機の正面図である。
図3】一実施形態に係る切削加工機の断面図である。
図4】一実施形態に係る回転保持部材および回転支持部材の平面図である。
図5】一実施形態に係る回転保持部材および回転支持部材の平面図であり、回転保持部材に保持具が取り付けられている状態を示す図である。
図6】一実施形態に係るツールマガジンの斜視図である。
図7】一実施形態に係る移動機構の斜視図である。
図8】一実施形態に係る検出治具の斜視図である。
図9】一実施形態に係る切削加工機の制御系のブロック図である。
図10】一実施形態に係る加工ツールおよび検出ツールを示す模式図である。
図11】B軸方向から見たスピンドルを示す模式図である。
図12】B軸方向から見たときの加工ツールを把持するスピンドルと検出ツールを把持するスピンドルを示す模式図である。
図13】A軸方向から見たスピンドルを示す模式図である。
図14】A軸方向から見たときの加工ツールを把持するスピンドルと検出ツールを把持するスピンドルを示す模式図である。
図15】一実施形態に係る加工ツールを把持するスピンドルの位置を補正する手順を示したフローチャートである。
図16】一実施形態に係る検出治具の検出部材と検出ツールとが接触した状態を示す斜視図である。
図17】検出ツールの第1の点と検出部材とが接触した状態を示す断面図である。
図18】検出ツールの第2の点と検出部材とが接触した状態を示す断面図である。
図19】第1傾斜角度を算出する手順を説明する説明図である。
図20】第2傾斜角度を算出する手順を説明する説明図である。
図21】加工ツールをツールセンサに接触させる直前の状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る切削加工機を説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0013】
図1は、切削加工機10の斜視図である。図2は、切削加工機10の正面図である。図3は、切削加工機10の断面図である。以下の説明では、切削加工機10を正面から見たときに、切削加工機10から遠ざかる方を前方、切削加工機10に近づく方を後方とする。左、右、上、下とは、切削加工機10を正面から見たときの左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を意味するものとする。本実施形態では、切削加工機10は、互いに交差する3軸をX軸、Y軸およびZ軸とするXYZ座標系に配置されている。ここでは、X軸は前後方向に延びる軸である。図3に示すように、本実施形態ではX軸は水平方向からθだけ傾いている。なお、X軸は、水平方向と同じ方向に延びていてもよい。Y軸は左右方向に延びる軸である。Z軸は上下方向に延びる軸である。図3に示すように、本実施形態ではZ軸とX軸とのなす角度をθαとする。なお、Z軸は、鉛直方向と同じ方向に延びていてもよい。また、切削加工機10において、X軸方向に延びる軸をA軸、Y軸方向に延びる軸をB軸、Z軸方向に延びる軸をS軸とする。S軸は、後述するスピンドル60(図2参照)の中心軸である。A軸は、例えば、X軸に平行に設けられている。B軸は、例えば、Y軸に平行に設けられている。符号θA、θB、θSは、それぞれA軸回り、B軸回り、S軸回りの回転方向を示している。ただし、上述した方向は、説明の便宜上定めた方向に過ぎず、切削加工機10の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものではない。
【0014】
切削加工機10は、被加工物5(図4参照)を切削加工および必要に応じて研磨する装置である。切削加工機10は、例えば、被加工物5を切削加工して歯冠補綴物を作製する。被加工物5の形状は、例えば、円板状である。被加工物5は、ブロック状(例えば角柱状)であってもよい。被加工物5は、ジルコニア、ワックス、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ハイブリッドレジン、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン樹脂)、石膏などの各種の材料によって形成されている。被加工物5の材料としてジルコニアを用いるときには、例えば、半焼結したジルコニアが用いられる。ただし、被加工物5の形状および材料は特に限定されない。
【0015】
図4に示すように、本実施形態では、被加工物5には保持具8が取り付けられている。被加工物5は、保持具8が取り付けられた状態で切削加工機10(図1参照)に収容され、かつ、切削加工される。ここでは、保持具8の中央部分には、挿入孔8aが形成されている。この挿入孔8aに被加工物5が挿入されることで、保持具8に被加工物5が取り付けられる。保持具8は、被加工物5を保持する。
【0016】
図4に示すように、保持具8の後部左側には、保持具8から後方に向かって突出する第1係止突起8bが形成されている。保持具8の前部左側には、保持具8から前方に向かって突出する第2係止突起8cが形成されている。保持具8の後部右側には、第1押し当て溝8dが形成されている。第1押し当て溝8dは、保持具8の後面から前方へ向かって凹んでいる。保持具8の前部右側には、第2押し当て溝8eが形成されている。第2押し当て溝8eは、保持具8の前面から後方に向かって凹んでいる。保持具8の右端部には、2つの位置決め溝8fが形成されている。2つの位置決め溝8fは、保持具8の右面から左方に向かってそれぞれ凹んでいる。
【0017】
図1に示すように、切削加工機10は、箱状に形成されている。切削加工機10は、ケース本体12と、フロントカバー25、制御装置80とを備えている。ケース本体12は、下壁13と、左壁14(図2も参照)と、右壁15と、後壁16(図3も参照)と、上壁17と、前壁18と、区画底壁19(図3参照)と、区画後壁20(図3参照)と、区画上壁21(図3参照)と、区画側壁23(図3参照)とを有している。左壁14は、下壁13の左端から上方に向かって延びている。右壁15は、下壁13の右端から上方に向かって延びている。後壁16は、下壁13の後端から上方に向かって延びている。後壁16の左端は左壁14の後端に接続され、後壁16の右端は右壁15の後端に接続されている。前壁18は、下壁13の前端から上方に向かって延びている。前壁18の左端は左壁14の前端に接続され、前壁18の右端は右壁15の前端に接続されている。前壁18には、開口18A(図2参照)が形成されている。上壁17は、左壁14、右壁15、後壁16および前壁18のそれぞれの上端に接続されている。図3に示すように、区画底壁19は、下壁13より上方に配置されている。区画上壁21は、区画底壁19より上方かつ上壁17より下方に配置されている。区画後壁20は、後壁16より前方かつ前壁18より後方に配置されている。区画側壁23は、左壁14より右方かつ右壁15より左方に配置されている。区画側壁23は、区画底壁19から上方に延びる。区画側壁23は、区画底壁19と区画上壁21と区画後壁20とに接続されている。
【0018】
図3に示すように、切削加工機10には、区画底壁19、左壁14(図2参照)、区画後壁20、区画上壁21、区画側壁23、前壁18によって囲まれた内部空間26が形成されている。内部空間26は、被加工物5の切削加工が行われる加工エリアである。切削加工機10には、区画底壁19、右壁15(図2参照)、区画後壁20、区画上壁21、区画側壁23、前壁18によって囲まれた第1収容空間27(図2参照)が形成されている。第1収容空間27には、後述する移動機構58が収容される。
【0019】
フロントカバー25は、左壁14の前端および右壁15の前端に上下方向に移動自在に設けられている。フロントカバー25が上方に移動してフロントカバー25が開くと、内部空間26が外部と連通する。フロントカバー25が下方に移動してフロントカバー25が閉じると、内部空間26は外部から隔離される。図2では、フロントカバー25が上方に移動して内部空間26が外部と連通している状態が示されている。フロントカバー25には、窓26Aが設けられている。窓26Aは、例えば、透明のアクリル板によって形成されている。作業者は、窓26Aを通じて内部空間26を視認することができる。
【0020】
図2に示すように、切削加工機10は、スピンドル60と、キャリッジ38と、保持具8(図4参照)を保持する保持部材35と、保持部材35を移動させる移動機構58と、を備えている。図3に示すように、スピンドル60の一部およびキャリッジ38は、区画上壁21、左壁14、右壁15、区画後壁20、上壁17および前壁18によって囲まれた第2収容空間28(図3参照)に配置されている。スピンドル60の他の一部は、内部空間26に配置されている。スピンドル60は、区画上壁21に形成された開口21Hに挿通されている。保持部材35は、内部空間26に配置されている。
【0021】
図2に示すように、スピンドル60は、キャリッジ38に搭載されている。スピンドル60は、キャリッジ38によってZ軸方向およびY軸方向に移動可能に構成されている。スピンドル60は、S軸回りθSに回転可能に構成されている。スピンドル60は、後述する加工ツール6Aおよび検出ツール6Bのいずれか一方を着脱自在に把持する。スピンドル60は、円柱状に形成された本体部62と、本体部62に設けられた回転部63と、回転部63の下端に設けられかつ加工ツール6Aおよび検出ツール6Bを把持する把持部64と、を備えている。回転部63が本体部62に対してS軸回りθSに相対的に回転することによって、加工ツール6AがS軸回りθSに回転する。回転部63は、制御装置80に制御される。
【0022】
図10に示すように、被加工物5を切削加工するときには、加工ツール6Aが用いられる。加工ツール6Aにはフランジ7Cが設けられている。加工ツール6Aが後述するツールマガジン40の孔部42(図6参照)に挿入された状態において、フランジ7Cよりも上方に位置する被把持部7Aがツールマガジン40の上面40A(図6参照)から突出する。そして、この被把持部7Aがスピンドル60の把持部64に把持される。フランジ7Cよりも下方には、刃物部7Bが設けられている。回転状態の加工ツール6Aの刃物部7Bが被加工物5に接触することで、被加工物5が切削加工される。加工ツール6Aは、一般に被把持部7Aよりも刃物部7Bの直径DTが小さくなるよう形成されている。加工ツール6Aの刃物部7Bは、被加工物5の材質や、切削加工量に応じて徐々に摩耗する。加工ツール6Aが把持部64に把持されたときのフランジ7Cから刃物部7Bの下端(先端)までの長さLTは、加工ツール6Aごとに異なる。図10に示す例では、長さLTが相互に異なる3つの加工ツール6AA、6ABおよび6ACが図示されている。加工ツール6Aは、金属等の導電性材料により形成されている。
【0023】
図10に示すように、切削加工機10の位置補正を行うときには、検出ツール6Bが用いられる。切削加工機10の位置補正とは、スピンドル60と保持部材35との相対的な位置関係を補正することであり、従来公知の方法で行われる。検出ツール6Bにはフランジ9Cが設けられている。検出ツール6Bがツールマガジン40の孔部42(図6参照)に挿入された状態において、フランジ9Cよりも上方に位置する被把持部9Aがツールマガジン40の上面40A(図6参照)から突出する。そして、この被把持部9Aがスピンドル60の把持部64に把持される。フランジ9Cよりも下方には、検出部9Bが設けられている。検出ツール6Bの検出部9Bは、後述する検出治具30の検出部材32(図8参照)と接触する。検出ツール6Bは、検出部9Bの直径DXが一定になるよう形成されている。検出部9Bの直径DXは、加工ツール6Aの刃物部7Bの直径DTより大きい。検出ツール6Bが把持部64に把持されたときのフランジ9Cから検出部9Bの下端(先端)までの長さLX(以下、単に検出ツール6Bの長さLXとする場合がある。)は、加工ツール6Aにおけるフランジ7Cから刃物部7Bの下端(先端)までの長さLT(以下、単に加工ツール6Aの長さLTとする場合がある。)よりも長いことがほとんどである。図10に示す例では、検出ツール6Bの長さLXと加工ツール6AAの長さLTと同じであり、検出ツール6Bの長さLXは加工ツール6ABの長さLTよりもΔP1だけ長く、検出ツール6Bの長さLXは加工ツール6ACの長さLTよりもΔP2だけ長い。検出ツール6Bは、金属等の導電性材料により形成されている。
【0024】
図2に示すように、キャリッジ38は、Z軸方向およびY軸方向に移動自在に設けられている。キャリッジ38は、スピンドル60をZ軸方向およびY軸方向に移動させる。キャリッジ38は、第1キャリッジ38Aと第2キャリッジ38Bとを備えている。第1キャリッジ38Aは、左右方向に延びる一対の第1ガイドシャフト39Aに支持されている。本実施形態では、第1ガイドシャフト39Aが伸びる方向をY軸に設定している。第1キャリッジ38Aは、第1駆動機構38C(図9参照)によって、第1ガイドシャフト39Aに沿ってY軸方向に移動することができる。第1ガイドシャフト39Aは、第2収容空間28(図3参照)内に設けられている。第1ガイドシャフト39Aの左端は、左壁14に接続している。第1ガイドシャフト39Aの右端は、右壁15に接続している。第2キャリッジ38Bは、上下方向に延びる一対の第2ガイドシャフト39Bに支持されている。本実施形態では、第2ガイドシャフト39Bが伸びる方向をZ軸に設定している。第2キャリッジ38Bは、第2駆動機構38D(図9参照)によって、第2ガイドシャフト39Bに沿ってZ軸方向に移動することができる。第2ガイドシャフト39Bは、第1キャリッジ38Aに設けられている。このため、第1キャリッジ38AがY軸方向に移動すると、第2キャリッジ38Bも同様にY軸方向に移動する。第1駆動機構38Cおよび第2駆動機構38Dは、制御装置80(図1参照)に制御される。
【0025】
図2に示すように、保持部材35は、ツールマガジン40と、回転支持部材50と回転保持部材70(図4参照)とを備えている。図2に示すように、ツールマガジン40は、回転支持部材50と移動機構58との間に設けられている。ツールマガジン40は、移動機構58に接続されている。ツールマガジン40は、移動機構58がX軸方向に移動することによって、X軸方向に移動可能に構成されている。図6に示すように、ツールマガジン40は、複数の加工ツール6Aおよび1つの検出ツール6Bを収容することが可能な部材である。ツールマガジン40は、箱状に形成されている。ツールマガジン40の上面40Aには、加工ツール6Aおよび検出ツール6Bを収容する複数の孔部42が形成されている。加工ツール6Aおよび検出ツール6Bは、その上部が露出された状態で孔部42に挿入される。なお、加工ツール6Aまたは検出ツール6Bを交換する際には、スピンドル60の把持部64によって把持されている加工ツール6Aまたは検出ツール6Bを孔部42に戻す。そして、次に使用する加工ツール6Aまたは検出ツール6Bの上方の位置までスピンドル60を移動させ、把持部64の下方に位置する加工ツール6Aの被把持部7A(図10参照)または検出ツール6Bの被把持部9A(図10参照)を把持部64が把持する。
【0026】
図6に示すように、ツールマガジン40の上面40Aには、加工ツール6Aまたは検出ツール6Bが接触したことを検知することができるツールセンサ45が設けられている。ツールセンサ45は、導電性材料から形成された上面45Aを有する。ツールセンサ45は、ツールマガジン40の上面40Aから突出するように形成されている。本実施形態では、加工ツール6Aおよび検出ツール6Bが導電性材料から形成されているため、ツールセンサ45は、加工ツール6Aまたは検出ツール6Bを把持するスピンドル60とツールセンサ45の上面45Aとの間が電気的に導通されることにより、ツールセンサ45と加工ツール6Aまたは検出ツール6Bとの接触を検知することができる。
【0027】
図2に示すように、ツールマガジン40の右方には、保持部材35のツールマガジン40をX軸方向に移動させる移動機構58が設けられている。図7に示すように、移動機構58は、本体ケース59Aと、第3ガイドシャフト59Bと、ガイドキャリッジ59Cと、第1モータ59Dと、連結部材59Eとを備えている。本体ケース59Aは、直方体形状に形成されている。本体ケース59Aは、第1収容空間27(図2参照)に収容されている。第3ガイドシャフト59Bは、前後方向に延びる。本実施形態では、第3ガイドシャフト59Bが伸びる方向をX軸に設定している。第3ガイドシャフト59Bは、本体ケース59A内に配置されている。ガイドキャリッジ59Cは、第3ガイドシャフト59Bに摺動自在に支持されている。ガイドキャリッジ59Cは、第1モータ59Dを駆動することによって、第3ガイドシャフト59Bに沿ってX軸方向に移動することができる。第1モータ59Dは、制御装置80(図1参照)に制御される。ガイドキャリッジ59Cの左方には、ツールマガジン40とガイドキャリッジ59Cとを連結する連結部材59Eが設けられている。
【0028】
図7に示すように、ツールマガジン40には、回転支持部材50を回転可能に支持する回転軸46が設けられている。回転軸46は、Y軸方向に延びている。図4に示すように、回転軸46には、回転支持部材50が連結されている。ツールマガジン40には、回転軸46をB軸回りθBに回転させる第2モータ47(図9参照)が設けられている。第2モータ47は、制御装置80(図1参照)に制御される。第2モータ47が駆動することで、回転軸46がB軸回りθBに回転する。そして、回転軸46の回転に伴い、回転支持部材50はB軸回りθBに回転する。
【0029】
図2に示すように、回転支持部材50は、回転軸46を介してツールマガジン40に接続されている。回転支持部材50は、B軸回りθBに回転可能に構成されている。回転支持部材50は、回転保持部材70をA軸回りθAに回転可能に支持している。図4に示すように、回転支持部材50は、平面視において、略U字形状に形成されている。回転支持部材50は、第1部分51と、第2部分52と、第3部分53とを備えている。第1部分51は、X軸方向に延びている。第1部分51には、回転軸46が連結されている。第2部分52は、第1部分51の後端から左方に向かって延びている。第3部分53は、第1部分51の前端から左方に向かって延びている。第2部分52と第3部分53とは、互いに対向している。回転保持部材70は、第2部分52の左部、および、第3部分53の左部に回転可能に支持されている。なお、第3部分53には、第3モータ55を収容するケース56が設けられている。第3モータ55は、回転保持部材70をA軸回りθAに回転させる。第3モータ55は、制御装置80(図1参照)に制御される。回転支持部材50は、移動機構58(図2参照)がX軸方向に移動することによって、X軸方向に移動する。
【0030】
図5に示すように、回転保持部材70は、保持具8を着脱自在に保持する。即ち、回転保持部材70は、保持具8を介して被加工物5および検出治具(図8参照)を着脱自在に保持する。回転保持部材70は、X軸方向に移動可能に構成されている。即ち、回転保持部材70は、移動機構58(図2参照)がX軸方向に移動することによって、X軸方向に移動する。回転保持部材70は、A軸回りθAおよびB軸回りθBに回転可能に構成されている。回転保持部材70は、保持本体71と、第1位置決め部72と、第2位置決め部73と、第1固定機構74と、第2固定機構75と、第3位置決め部76とを備えている。
【0031】
図4に示すように、保持本体71は、平面視において、略U字形状に形成されている。保持本体71は、保持具8を介して被加工物5および検出治具30(図8参照)を保持する。
【0032】
図5に示すように、第1位置決め部72、第2位置決め部73および第3位置決め部76は、回転保持部材70の保持本体71に対する保持具8の位置決めを行う機能を有する。第1位置決め部72、第2位置決め部73および第3位置決め部76は、保持本体71に設けられている。例えば、保持具8を図4の矢印Y1の方向に移動させて、保持具8を回転保持部材70に取り付けるとき、保持具8の第1係止突起8bは第1位置決め部72に接触し、保持具8の第2係止突起8cは第2位置決め部73に接触し、保持具8の位置決め溝8fに第3位置決め部76が接触する。これにより、回転保持部材70の保持本体71に対する保持具8の位置決めが行われる。
【0033】
第1固定機構74および第2固定機構75は、手動により操作される。第1固定機構74および第2固定機構75は、保持具8を保持本体71に固定する機能を有する。回転保持部材70の保持本体71に対する保持具8の位置決めがされている状態で、作業者が第1固定機構74および第2固定機構75を図5の矢印H1の方向に回転させることによって、第1固定機構74が保持具8の第1押し当て溝8dに押し当てられて係止し、第2固定機構74が保持具8の第2押し当て溝8eに押し当てられて係止する。これにより、保持具8は回転保持部材70に保持される。なお、保持具8を回転保持部材70から取り外すときには、作業者は第1固定機構74および第2固定機構75を図5の矢印H2の方向に回転させて、保持具8を図5の矢印Y2の方向に移動させる。
【0034】
図8に示すように、本実施形態では、検出治具30には、保持具8が取り付けられている。検出治具30は、保持具8が取り付けられた状態で回転保持部材70(図4参照)に保持される。検出治具30は、保持具8の挿入孔8aに挿入されて保持されている。検出治具30は、円板状に形成された本体部31と、本体部31に形成された検出部材32と、を備えている。本体部31は、第1平面部31Aと、第1平面部31Aの裏側に位置する第2平面部31Bとを有している。本体部31には、第1平面部31Aから第2平面部31Bに亘って1つの第1貫通孔33Aと2つの第2貫通孔33Bとが貫通形成されている。第1貫通孔33Aは、X軸方向に延びる長孔である。第2貫通孔33Bは、Y軸方向に延びる長孔である。検出部材32は、Y軸方向に延びかつ第1貫通孔33Aに配置された第1棒部材34Aと、X軸方向に延びかつ第2貫通孔33Bに配置された第2棒部材34Bとを備えている。第1棒部材34Aおよび第2棒部材34Bは、円柱状に形成されている。第1棒部材34Aは、検出ツール6Bの第1の点M1(図11参照)および第2の点M2(図11参照)と接触する。第2棒部材34Bは、検出ツール6Bの第3の点M3図13参照)および第4の点M4(図13参照)と接触する。
【0035】
図9に示すように、切削加工機10の全体の動作は、制御装置80によって制御されている。制御装置80の構成は特に限定されない。制御装置80は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェアの構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータなどの外部機器から印刷データなどを受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、プログラムや各種データを格納するメモリなどの記憶装置と、を備えている。図1に示すように、制御装置80は、ケース本体12の内部に設けられている。ただし、制御装置80はケース本体12の内部に設けられていなくてもよい。
【0036】
図9に示すように、制御装置80は、回転部63、第1駆動機構38C、第2駆動機構38D、第1モータ59D、第2モータ47および第3モータ55と通信可能に接続され、これらを制御する。制御装置80は、スピンドル60のZ軸方向およびY軸方向の移動、加工ツール6AのS軸回りθSの回転、および、保持部材35の移動および回転(即ちツールマガジン40のX軸方向の移動と回転支持部材50のB軸回りθBの回転と回転保持部材70のA軸回りθAの回転)を制御する。
【0037】
図9に示すように、制御装置80は、記憶部81と、第1取得部82と、第2取得部83と、第1角度算出部84と、長さ取得部85と、第1補正値算出部86と、第2補正値算出部87と、第3取得部88と、第4取得部89と、第2角度算出部90と、第3補正値算出部91と、位置補正部92とを備えている。制御装置80の各部の機能は、プログラムによって実現されている。このプログラムは、例えばCDやDVDなどの記録媒体から読み込まれる。なお、このプログラムは、インターネットを通じてダウンロードされるものであってもよい。また、制御装置80の各部の機能は、プロセッサおよび/または回路などによって実現可能なものであってもよい。なお、これら各部の具体的な機能については後述する。
【0038】
記憶部81は、検出ツール6Bの長さを記憶する。具体的には、記憶部81は、検出ツール6Bのフランジ9Cから検出部9Bの下端までの長さLX(図10参照)を記憶する。
【0039】
次に、加工ツール6Aを把持するスピンドル60の位置を補正する手順について説明する。ここで、スピンドル60は、通常Z軸と平行となるように設けられる。即ち、S軸とZ軸とが平行となるように設けられる。しかし、例えば、図11に示すように、部品の組み立て誤差等によりB軸方向(即ちY軸方向)から見てS軸がZ軸に対して傾いている場合があり得る。即ち、スピンドル60がZ軸に対して傾いていることがあり得る。このような場合に、検出ツール6Bを用いて位置補正を行いスピンドル60の原点を設定した後に、検出ツール6Bとは長さが異なる加工ツール6Aをスピンドル60に把持させると、図12に示すように、加工ツール6Aを把持するスピンドル60が原点に位置するときの加工ツール6Aの先端の位置と、検出ツール6Bを把持するスピンドル60が原点に位置するときの検出ツール6Bの先端の位置とにずれが生じる。即ち、Z軸方向にΔZのずれが生じかつX軸方向にΔXZのずれが生じる。このような状態で、被加工物5の切削加工を開始すると、意図しない成果物になる虞がある。また、図13に示すように、A軸方向(即ちX軸方向)から見てS軸がZ軸に対して傾いている場合があり得る。この場合には、図14に示すように、Z軸方向にΔZのずれが生じかつY軸方向にΔYZのずれが生じる。このときも同様に、意図しない成果物になる虞がある。なお、図12および図14では、加工ツール6Aを一点鎖線で表している。図15は、加工ツール6Aを把持するスピンドル60の位置を補正する手順を示したフローチャートである。ここでは、加工ツール6Aの長さLTと検出ツール6Bの長さLXとが異なる場合を例に説明する。
【0040】
まず、ステップS10において、第1取得部82は、第1の座標値C1(X1、Z1)を取得する。図16に示すように、第1取得部82は、検出ツール6Bを把持したスピンドル60をZ軸方向に移動させかつツールマガジン40(図6参照)をX軸方向に移動させて、検出ツール6Bを検出部材32に接触させる。ここでは、ツールマガジン40をX軸方向に移動させることによって、回転保持部材70も同様にX軸方向に移動する。図17に示すように、第1取得部82は、検出ツール6Bの第1の点M1(図11も参照)を検出部材32(ここでは第1棒部材34A)に接触させる。第1の座標値C1(X1、Z1)は、検出ツール6Bの第1の点M1と検出部材32(ここでは第1棒部材34A)とが接触したときのスピンドル60の座標値である。なお、ステップS10、ステップS20、ステップS40およびステップS50では、回転保持部材70はA軸の原点に位置しかつ回転支持部材50はB軸の原点に位置する。即ち、回転保持部材70はA軸回りθAに回転しておらず、回転支持部材50はB軸回りθBに回転していない。また、検出ツール6Bと検出部材32とが接触したときには、電流が流れるように構成されているため、第1取得部82、第2取得部83、第3取得部88および第4取得部89は、電流が流れたときのスピンドル60の位置に基づいて、それぞれ、第1の座標値C1(X1、Z1)、第2の座標値C2(X2、Z2)、第3の座標値C3(Y1、Z1)および第4の座標値C4(Y2、Z2)を取得することができる。
【0041】
ステップS20において、第2取得部83は、第2の座標値C2(X2、Z2)を取得する。第2取得部83は、検出ツール6Bを把持したスピンドル60をZ軸方向に移動させかつツールマガジン40(図6参照)をX軸方向に移動させて、検出ツール6Bを検出部材32に接触させる。図18に示すように、第2取得部83は、検出ツール6Bの第2の点M2(図11も参照)を検出部材32(ここでは第1棒部材34A)に接触させる。第2の座標値C2(X2、Z2)は、検出ツール6Bの第2の点M2と検出部材32(ここでは第1棒部材34A)とが接触したときのスピンドル60の座標値である。第2の点M2は、第1の点M1よりもフランジ9Cから離れて位置する。即ち、第1の点M1は、第2の点M2よりもフランジ9Cの近くに位置する。
【0042】
ステップS30において、図19に示すように、第1角度算出部84は、第1の座標値C1(X1、Z1)および第2の座標値C2(X2、Z2)に基づいて、B軸方向(即ちY軸方向)から見たときのZ軸とS軸とのなす第1傾斜角度θXを算出する。第1傾斜角度θXは、θX=α=atan{(X2-X1)/(Z2-Z1)}=atan(ΔZZ/ΔXZ)となる。
【0043】
ステップS40において、第3取得部88は、第3の座標値C3(Y1、Z1)を取得する。第3取得部88は、検出ツール6Bを把持したスピンドル60をZ軸方向およびY軸方向に移動させ、検出ツール6Bを検出部材32に接触させる。第3取得部88は、検出ツール6Bの第3の点M3(図13参照)を検出部材32(ここでは第2棒部材34B)に接触させる。第3の座標値C3(Y1、Z1)は、検出ツール6Bの第3の点M3と検出部材32(ここでは第2棒部材34B)とが接触したときのスピンドル60の座標値である。
【0044】
ステップS50において、第4取得部89は、第4の座標値C4(Y2、Z2)を取得する。第4取得部89は、検出ツール6Bを把持したスピンドル60をZ軸方向およびY軸方向に移動させて、検出ツール6Bを検出部材32に接触させる。第4取得部89は、検出ツール6Bの第4の点M4(図13参照)を検出部材32(ここでは第2棒部材34B)に接触させる。第4の座標値C4(Y2、Z2)は、検出ツール6Bの第4の点M4と検出部材32(ここでは第2棒部材34B)とが接触したときのスピンドル60の座標値である。第4の点M4は、第3の点M3よりもフランジ9Cから離れて位置する。即ち、第3の点M3は、第4の点M4よりもフランジ9Cの近くに位置する。
【0045】
ステップS60において、図20に示すように、第2角度算出部90は、第3の座標値C3(Y1、Z1)および第4の座標値C4(Y2、Z2)に基づいて、A軸方向(即ちX軸方向)から見たときのZ軸とS軸とのなす第2傾斜角度θYを算出する。第2傾斜角度θYは、θY=α=atan{(Y2-Y1)/(Z2-Z1)}=atan(ΔZZ/ΔYZ)となる。
【0046】
ステップS70において、長さ取得部85は、スピンドル60の把持部64に把持されている加工ツール6Aの長さLTを取得する。図10に示すように、加工ツール6Aの長さLTは、それぞれ異なっているため、長さ取得部85によって、加工ツール6Aの長さLTを取得する必要がある。図21に示すように、長さ取得部85は、加工ツール6Aを把持したスピンドル60をZ軸方向およびY軸方向に移動させ、加工ツール6Aの刃物部7Bの下端部がツールセンサ45の上面45Aに接触させる。そして、長さ取得部85は、加工ツール6Aの刃物部7Bの下端部がツールセンサ45の上面45Aに接触したことがツールセンサ45によって検出されたときのスピンドル60の位置に基づいて、加工ツール6Aの長さLTを取得する。加工ツール6Aとツールセンサ45の上面45Aとが接触したときには、電流が流れるように構成されているため、長さ取得部85は、電流が流れたときのスピンドル60の位置に基づいて、加工ツール6Aの長さLTを取得する。なお、ステップS70の前には、スピンドル60によって把持されていた検出ツール6Bはツールマガジン40の孔部42に戻され、これから使用する加工ツール6Aがスピンドル60に把持される。
【0047】
ステップS80において、第1補正値算出部86は、検出ツール6Bの長さLXと加工ツール6Aの長さLTとの差(LX-LT)に基づいて、加工ツール6AのZ軸方向の補正値Aを算出する。ここでは、補正値Aは、A=LX-LT=ΔZとなる。
【0048】
ステップS90において、第2補正値算出部87は、検出ツール6Bの長さLXと加工ツール6Aの長さLTとの差(LX-LT)および第1傾斜角度θXに基づいて、加工ツール6AのX軸方向の補正値Bを算出する。ここでは、補正値Bは、B=tan(θX)×(LX-LT)=(ΔXZ/ΔZZ)×ΔZとなる。
【0049】
ステップS100において、第3補正値算出部91は、検出ツール6Bの長さLXと加工ツール6Aの長さLTとの差(LX-LT)および第2傾斜角度θYに基づいて、加工ツール6AのY軸方向の補正値Cを算出する。ここでは、補正値Cは、C=tan(θY)×(LX-LT)=(ΔYZ/ΔZZ)×ΔZとなる。
【0050】
ステップS110において、位置補正部92は、加工ツール6Aを把持するスピンドル60の位置を補正値Aおよび補正値Bおよび補正値Cによって補正する。即ち、位置補正部92は、検出ツール6Bによって切削加工機10の位置補正が行われて設定された原点に補正値Aおよび補正値Bおよび補正値Cを加えて、加工ツール6Aの原点を新たに設定する。
【0051】
以上のように、本実施形態の切削加工機10によると、第1補正値算出部86は、加工ツール6AのZ軸方向の補正値Aを算出し、第2補正値算出部87は、加工ツール6AのX軸方向の補正値Bを算出する。ここで、位置補正部92は、加工ツール6Aを把持するスピンドル60の位置を補正値Aによって補正するため、加工ツール6AのZ軸方向の先端位置を検出ツール6BのZ軸方向の先端位置に一致させることができる。また、位置補正部92は、加工ツール6Aを把持するスピンドル60の位置を補正値Bによって補正するため、加工ツール6AのX軸方向の先端位置を検出ツール6BのX軸方向の先端位置に一致させることができる。これにより、部品の組み立て誤差や温度変化による熱膨張等によって、Z軸とS軸とが平行でない場合(S軸がX軸に対して傾斜している)であっても、加工ツール6Aとは長さの異なる検出ツール6Bを用いて補正された位置関係に基づいて、被加工物5を所望の形状に切削加工することができる。
【0052】
本実施形態の切削加工機10では、制御装置80は、第3の座標値C3(Y1、Z1)および第4の座標値C4(Y2、Z2)に基づいて、A軸方向から見たときのZ軸とS軸とのなす第2傾斜角度θYを算出する第2角度算出部90と、検出ツール6Bの長さLXと加工ツール6Aの長さLTとの差(LX-LT)および第2傾斜角度θYに基づいて、加工ツール6AのY軸方向の補正値Cを算出する第3補正値算出部91と、を備えている。ここで、位置補正部92は、加工ツール6Aを把持するスピンドル60の位置を補正値Cによって補正するため、加工ツール6AのY軸方向の先端位置を検出ツール6BのY軸方向の先端位置に一致させることができる。これにより、部品の組み立て誤差や温度変化による熱膨張等によって、Z軸とS軸とが平行でない場合(S軸がY軸に対して傾斜している)であっても、検出ツール6Bを用いて補正された位置関係に基づいて、被加工物5を所望の形状に切削加工することができる。
【0053】
本実施形態の切削加工機10では、検出部材32は、Y軸方向に延びかつ本体部31に形成された第1貫通孔33Aに配置され、検出ツール6Bの第1の点M1および第2の点M2と接触する第1棒部材34Aを備えている。これにより、検出ツール6Bを容易に第1棒部材34Aに接触させることができる。
【0054】
本実施形態の切削加工機10では、検出部材32は、X軸方向に延びかつ本体部31に形成された第2貫通孔33Bに配置され、検出ツール6Bの第3の点M3および第4の点M4と接触する第2棒部材34Bを備えている。これにより、検出ツール6Bを容易に第2棒部材34Bに接触させることができる。
【0055】
本実施形態の切削加工機10は、ツールマガジン40に接続され、B軸回りθBに回転可能に構成され、回転保持部材70をX軸方向に延びるA軸回りθAに回転可能に支持する回転支持部材50、を備えている。これにより、被加工物5をA軸回りθAに回転させることができるため、被加工物5の形状のバリエーションが増加する。
【0056】
本実施形態の切削加工機10では、ツールセンサ45は、ツールマガジン40の上面40Aから突出するように形成されている。これにより、ツールセンサ45用の別のスペースを必要としないため、加工空間を広く確保することができる。
【0057】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の各実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。
【0058】
上述した実施形態では、回転保持部材70はA軸回りθAに回転可能に構成されていたが、回転支持部材50は、回転保持部材70を回転不能に保持してもよい。
【0059】
上述した実施形態では、ツールセンサ45は、ツールセンサ45とスピンドル60との間が電気的に導通することにより、ツールセンサ45と加工ツール6Aとの接触を検知するよう構成されていたが、これに限定されない。ツールセンサ45は、例えば、感圧センサーを備えており、加工ツール6Aの接触を感圧センサーにより検知するよう構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0060】
5 被加工物
6A 加工ツール
6B 検出ツール
10 切削加工機
30 検出治具
32 検出部材
35 保持部材
40 ツールマガジン
45 ツールセンサ
60 スピンドル
70 回転保持部材
80 制御装置
82 第1取得部
83 第2取得部
84 第1角度算出部
85 長さ取得部
86 第1補正値算出部
87 第2補正値算出部
88 第3取得部
89 第4取得部
90 第2角度算出部
91 第3補正値算出部
92 位置補正部
図1
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