(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】水洗トイレ装置
(51)【国際特許分類】
E03D 11/02 20060101AFI20230720BHJP
E03D 11/17 20060101ALI20230720BHJP
E03D 5/00 20060101ALI20230720BHJP
E03C 1/28 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
E03D11/02 Z
E03D11/17
E03D5/00
E03C1/28 Z
(21)【出願番号】P 2019089604
(22)【出願日】2019-05-10
【審査請求日】2022-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】391005813
【氏名又は名称】株式会社神田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100102749
【氏名又は名称】澤木 紀一
(74)【代理人】
【識別番号】100081787
【氏名又は名称】小山 輝晃
(72)【発明者】
【氏名】折原 雅士
(72)【発明者】
【氏名】亀井 芳男
(72)【発明者】
【氏名】花島 重弘
(72)【発明者】
【氏名】浅井 信幸
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】実開昭49-097551(JP,U)
【文献】特表2015-536392(JP,A)
【文献】特開2012-188838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 11/00-11/18
E03C 1/12-1/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体内の上半部に設けられているボウル部の内面の上部に、オーバーフロー水用の開口を形成し、該ボウル部内に、該開口から該ボウル部の内方に間隙を存して該開口を覆う侵入防止板を設けると共に、該侵入防止板の端縁を迂回して前記ボウル部内から前記開口に至る流水路を形成
し、
前記便器本体の外側面にオーバーフロー水タンクを設け、前記開口が該オーバーフロー水タンクに連通し、
前記ボウル部の上縁端に設けた洗浄水の管路に、前記オーバーフロー水タンク内に進出する分岐管を分岐接続し、該分岐管の下面に、該オーバーフロー水タンク内に洗浄水を吐出する吐出口を形成した水洗トイレ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精神科の病院等において使用されるのに好適な水洗トイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のトイレ装置として、便器のボウル部にトイレットペーパーや布等により詰まって排水ができず汚水がボウル部から溢れるのを防止するために、便器のボウル部の上部にオーバーフロー用の排水口を開口し、該排水口を、前記便器の外部に配設するトラップを介して前記便器の排水管に接続したものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この従来のトイレ装置によると、精神科の病院において精神疾患の患者がトイレにおいて故意に大量のトイレットペーパー或いは布等を便器のボウル部内に突っ込んで該ボウル部の排水口と共に前記オーバーフロー用の排水口の開口をも閉塞してしまって排水が全くされず汚水が前記ボウル部から溢れて床面を水浸しにする問題点があった。
【0005】
本発明はこのような問題点を解消し、汚水がボウル部から溢れるのを確実に防止する水洗トイレ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこの目的を達成すべく、便器本体内の上半部に設けられているボウル部の内面の上部に、オーバーフロー水用の開口を形成し、該ボウル部内に、該開口から該ボウル部の内方に間隙を存して該開口を覆う侵入防止板を設けると共に、該侵入防止板の端縁を迂回して前記ボウル部内から前記開口に至る流水路を形成する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、精神科の病院において精神疾患の患者がトイレにおいて故意に大量のトイレットペーパー或いは布等を便器のボウル部内に突っ込んでも、侵入防止板によりトイレットペーパー或いは布等がオーバーフロー水用の開口を塞ぐことがなく、汚水がボウル部からオーバーフローして床面を水浸しにすることを確実に防止できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施例1の水洗トイレ装置の截断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施するための形態の実施例を以下に示す。
【実施例1】
【0010】
本発明の水洗トイレ装置の実施例1を図面により説明する。
【0011】
図1は本発明の実施例1の水洗トイレ装置の截断正面図、
図2は
図1のII-II線截断面図、
図3は該水洗トイレ装置の右側面図、
図4は要部の拡大断面図、
図5は侵入防止板の正面図である。
【0012】
1は実施例1の水洗トイレ装置、2は該水洗トイレ装置1のステンレス製の便器本体、3は該便器本体2内の上半部に設けられ汚物を受ける部分のステンレス製のボウル部を示し、該ボウル部3の下部の汚水開口3Aには、主トラップ4を介在した汚水管5の先端部が接続されており、又、前記便器本体2の上縁部内で前記ボウル部3の上縁端上に、洗浄水を噴射する複数の噴射口が形成されている洗浄水のステンレス製の管路6が設けられている。
【0013】
又、前記ボウル部3の内面の上部で前記管路6の真下に複数のオーバーフロー用の開口7が形成されており、これら開口7において、中央の主開口7Aは、前記ボウル部3の上縁部の切欠き部により前記管路6の真下に左右に延びる横長の長方形状に形成され、又、前記主開口7Aの左右の補助開口7B、7Cも、前記主開口7Aと同様に前記ボウル部3の上縁部の切欠き部により前記管路6の真下に左右に延びる横長の長方形状に形成さている。
【0014】
8は侵入防止板を示し、該侵入防止板8は、
図5に示す如く左右に長い逆台形状のステンレス製の垂直板からなり、該垂直板を湾曲状に曲げて
図4に示す如く前記管路6の内側に固定すると共に便座9の下面に当接し、該侵入防止板8を、前記主開口7Aと前記補助開口7B、7Cから前記ボウル部3の内方に指が入らず異物も挟みにくい狭い間隙Gを存してこれら主開口7Aと補助開口7B、7Cを覆うように設け、該侵入防止板8の下端縁を迂回して前記ボウル部3内からこれら主開口7Aと補助開口7B、7Cに至るオーバーフロー水の流水路7Dを形成する。ここで、前記間隙Gは10ミリメートルが好ましい。
【0015】
又、前記便器本体2の外周面で前記主開口7Aの外方位置に、着脱式のステンレス製のオーバーフロー水タンク10を設け、該オーバーフロー水タンク10には前記主開口7Aから直接に連通し、又、前記補助開口7B、7Cからも前記ボウル部3の外周上縁部の外方に形成した流路11を介して連通しており、該該オーバーフロー水タンク10の底面の開口10Aにはトラップ12を介在した排水管13が接続している。
【0016】
又、前記管路6には前記オーバーフロー水タンク10内の上方部に延長する分岐管14を接続し、該分岐管14は、先端を閉塞すると共に下側面に前記オーバーフロー水タンク10内に洗浄水を吐出する吐出口14Aを形成した。
【0017】
次に本実施例1の水洗トイレ装置1の作用と効果を説明する。
【0018】
トイレ装置1の通常の使用においては、使用者が用を足した後に洗浄水の例えば操作ボタンを押すことにより、洗浄水が前記管路6の複数の噴射口より噴射して前記ボウル部3内の汚物を、前記汚水開口3Aを介して前記汚水管5より排出する。
【0019】
ところが、精神疾患の患者がトイレにおいて大量のトイレットペーパー或いは布等を便器本体2のボウル部3内に突っ込んで前記汚水開口3Aからの汚水の排出を止めてしまうと、汚水は、前記流水路7Dを経て
図4のF矢印の如く流れて前記主開口7Aと補助開口7B、7Cに至り、
図2のX矢印の如く前記主開口7Aから、又
図2のY矢印やZ矢印の如く左右の前記補助開口7B、7Cから前記オーバーフロー水タンク10内に流入し、その後、該オーバーフロー水タンク10の底面の開口10Aからトラップ12を介在した前記排水管13より流出する。
【0020】
このとき、トイレットペーパー或いは布等の一部が前記主開口7A或いは左右の前記補助開口7B、7Cに汚水と共に侵入しようとしても前記侵入防止板8により侵入が防止され、前記主開口7Aと左右の前記補助開口7B、7Cからの汚水の流出が維持され、汚水がオーバーフローすることがない。又、万が一、前記トイレットペーパー或いは布等の一部が前記侵入防止板8の下端縁の下方を回り込んで前記主開口7A或いは左右の前記補助開口7B、7Cのいずれか一方を塞ぐようなことがあっても他方の開口から汚水の流出が可能であるので、汚水がオーバーフローすることがない。
【0021】
ここで、前記オーバーフロー水タンク10においては、便器を使用して洗浄水を前記管路6の複数の噴射口より噴射する毎に該管路6内の洗浄水の一部が前記分岐管14内に流入して前記吐出口14Aより前記オーバーフロー水タンク10内に補充して前記トラップ12内に洗浄水を満たし、悪臭の逆流を防止している。又、逆に該トラップ12から汚水が逆流しても該オーバーフロー水タンク10内で留まり、汚水が前記主開口7A或いは左右の前記補助開口7B、7Cに至ることがない。
【0022】
又、前記オーバーフロータンク10が着脱式に形成されているので、該オーバーフロー水タンク10内の汚水による感染症や悪臭が発生するおそれがある場合には、該オーバーフロー水タンク10を前記便器本体2の外周面から外して該オーバーフロー水タンク10内の清掃を容易に行なうことができる。
【0023】
尚、前記実施例では、前記開口7A、7B、7Cを前記ボウル部3の上縁部の切欠き部により前記管路6の真下に左右に延びる横長の長方形状に形成したが、前記ボウル部3に開口を直接形成してもよく、又、前記開口は1個或いは複数個あればいずれの個数でもよい。
【0024】
又、前記侵入防止板8については、前記オーバーフロー用の開口の内方で間隙を存し、且つこれら開口を覆うように形成されていれば、いずれの形状であってもよく、又、前記流水路7Dについては、前記侵入防止板8の上端縁或いは側端縁を迂回するように形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の水洗トイレ装置は、特に精神科の病院等において使用される。
【符号の説明】
【0026】
1 水洗トイレ装置
2 便器本体
3 ボウル部
6 洗浄水管路
7 オーバーフロー用開口
7D 流水路
8 侵入防止板
10 オーバーフロー水タンク
12 トラップ
13 排水管
14 分岐管
14A 吐出口
D 間隙