(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】ドアハンドル構造
(51)【国際特許分類】
E05B 85/16 20140101AFI20230720BHJP
E05B 5/00 20060101ALI20230720BHJP
E05B 5/02 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
E05B85/16 D
E05B5/00 A
E05B5/02 E
E05B5/02 D
(21)【出願番号】P 2019105045
(22)【出願日】2019-06-05
【審査請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000155067
【氏名又は名称】ミネベアアクセスソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 康祐
(72)【発明者】
【氏名】冨士原 泰斗
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-90862(JP,A)
【文献】特開2015-90028(JP,A)
【文献】特開2017-66605(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0273247(US,A1)
【文献】実開平6-8029(JP,U)
【文献】実開平7-29248(JP,U)
【文献】実開昭57-2956(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 85/14-85/18
E05B 77/38
E05B 5/00- 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアパネル内に格納された格納状態と前記ドアパネルから展開した展開状態とを移動可能なドアハンドルと、
アクチュエータによって第一回動中心廻りに回動するアクチュエータレバーと、
前記ドアハンドルと前記アクチュエータレバーとの間に介在して第二回動中心廻りに回動することで、前記アクチュエータレバーの動作を前記ドアハンドルに伝達するハンドルレバーと、を備え、
前記アクチュエータレバーまたは、前記ハンドルレバーのいずれか一方に配置され、配置された部材の回動中心から等距離の円弧状軌跡を描きながら回動する摺動押圧部を有し、
前記アクチュエータレバーが、前記摺動押圧部を介して前記ハンドルレバーを押圧することで前記ハンドルレバーが回動し、前記ドアハンドルが格納状態から展開状態に移動するとともに、
前記ドアハンドルの内側面から、車両内側に向けて突設される連結突部と、
前記ハンドルレバーに形成されて、前記連結突部と係合する係合開口と、
前記係合開口の内周縁に装着される環状のカバー部材と、
前記係合開口の内周縁から突設されて、前記カバー部材を係止する係止爪部と、を備え、
複数設けられた前記係止爪部間の隙間に位置するカバー部材に、前記連結突部を弾接させることを特徴とするドアハンドル構造。
【請求項2】
前記第一回動中心と前記第二回動中心とを結んだ仮想線を想定した場合に、展開状態側の前記摺動押圧部と前記仮想線との最短距離の方が、格納状態側の前記摺動押圧部と前記仮想線との最短距離より長くなるように、前記摺動押圧部の移動範囲を設定したことを特徴とする請求項1に記載のドアハンドル構造。
【請求項3】
前記摺動押圧部は、前記格納状態で前記仮想線上に配置されることを特徴とする請求項2に記載のドアハンドル構造。
【請求項4】
前記ハンドルレバーは、
前記摺動押圧部を介して押圧される入力アーム部と、前記第二回動中心を挟んで水平方向の反対側に位置するラッチ操作アーム部と、を有し、
前記ラッチ操作アーム部には、ラッチ操作を行う受圧部に対して、
前記ドアハンドルの展開による前記ハンドルレバーの回動で押し下げる力を伝達する押圧部を設け、
前記受圧部を前記第二回動中心と同じ上下方向位置となるように設けたことを特徴とする請求項1~
3の何れか一項に記載のドアハンドル構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアハンドル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載されたドアハンドル構造では、ドアパネルに形成された凹部内にドアハンドルが格納される格納状態とドアパネルから展開した展開状態との間で、ドアハンドルが移動可能に構成されている。
ユーザが親指でアンロックボタンを押すと、関連するドアがアンロックされる。ドアハンドルと、ドアハンドルを展開状態に移動させるアクチュエータとの間には、偏心カム機構が設けられている。そして、ドアハンドルは、アクチュエータの駆動により所望の展開速度が与えられて展開状態に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のドアハンドル構造は、偏心カムに高い加工精度が求められる。また、偏心カムに接続されるリンク部材等についても高い加工精度が要求されるとともに、偏心カムに対するリンク部材の位置精度も必要とされ、狙い通り展開速度を得ることは困難であった。
本発明は、位置精度の要求が少なく、容易にドアハンドルの展開速度を設定できるドアハンドル構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ドアパネル内に格納された格納状態とドアパネルから展開した展開状態とを移動可能なドアハンドルと、アクチュエータによって第一回動中心廻りに回動するアクチュエータレバーと、ドアハンドルとアクチュエータレバーとの間に介在して第二回動中心廻りに回動することで、アクチュエータレバーの動作をドアハンドルに伝達するハンドルレバーと、を備え、アクチュエータレバーは、第一回動中心から等距離の円弧状軌跡を描きながらハンドルレバーに当接する摺動押圧部を有し、摺動押圧部がハンドルレバーを押圧することでハンドルレバーが回動し、ドアハンドルが格納状態から展開状態に移動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、ドアパネル内に格納された格納状態と前記ドアパネルから展開した展開状態とを移動可能なドアハンドルと、
アクチュエータによって第一回動中心廻りに回動するアクチュエータレバーと、
前記ドアハンドルと前記アクチュエータレバーとの間に介在して第二回動中心廻りに回動することで、前記アクチュエータレバーの動作を前記ドアハンドルに伝達するハンドルレバーと、を備え、
前記アクチュエータレバーまたは、前記ハンドルレバーのいずれか一方に配置され、配置された部材の回動中心から等距離の円弧状軌跡を描きながら回動する摺動押圧部を有し、
前記アクチュエータレバーが、前記摺動押圧部を介して前記ハンドルレバーを押圧することで前記ハンドルレバーが回動し、前記ドアハンドルが格納状態から展開状態に移動するとともに、
前記ドアハンドルの内側面から、車両内側に向けて突設される連結突部と、
前記ハンドルレバーに形成されて、前記連結突部と係合する係合開口と、
前記係合開口の内周縁に装着される環状のカバー部材と、
前記係合開口の内周縁から突設されて、前記カバー部材を係止する係止爪部と、を備え、
複数設けられた前記係止爪部間の隙間に位置するカバー部材に、前記連結突部を弾接させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態のドアハンドル構造を示し、全体の構成を説明する車両外方から見た斜視図である。
【
図2】実施形態のドアハンドル構造で、要部を
図1中矢印II方向から見た平面図である。
【
図3】実施形態のドアハンドル構造で、
図2中III-III線に沿った位置での構成を説明する断面図である。
【
図4】実施形態のドアハンドル構造で、アクチュエータレバーの回動に伴って、仮想線と摺動押圧部との最短距離が長くなる様子を説明する平面図である。
【
図5】実施形態のドアハンドルで、展開初期の状態を示す平面図である。
【
図6】実施形態のドアハンドルで、展開後期の状態を示す平面図である。
【
図7】実施形態のドアハンドルで、連結突部が係合する係合開口に設けられたカバー部材の構成を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。方向を説明する際には、特に示さない限り、基本的に運転者から見た前後,左右あるいは上下に基づいて説明する。また、「車幅方向」は「左右方向」と同義である。
【0009】
図1は、本発明の実施形態のドアハンドル構造が適用された車両1を示すものである。
車両1のドアパネル2には、ドアを開閉する装置の一部としてドアハンドル機構3が設けられている。
ドアハンドル機構3は、ドアパネル2のハンドル開口内側に沿って装着される厚板状のハンドルベース4と、ハンドルベース4に回動軸6を介して回動自在に設けられるドアハンドル5と、ハンドルベース4の前側下方に装着されて、ドアハンドル5を開閉動させるアクチュエータ11とを備えている。
【0010】
図2は、ハンドルベース4を
図1中矢印II方向から見た平面図である。
図2に示すようにドアハンドル機構3は、アクチュエータ11の駆動により、第一回動中心である第一回動軸8a廻りに回動するアクチュエータレバー8と、ドアハンドル5とアクチュエータレバー8との間に介在して、第二回動中心としての第二回動軸9a廻りに回動するハンドルレバー9と、受圧部18を上縁に有して、回転軸部17aを回転中心とする回動によりラッチ操作を行うラッチ切替レバー17とを更に備えている。
【0011】
このうち、ハンドルレバー9は、アクチュエータレバー8に設けられた摺動押圧部としての当接ピン8bを当接させる入力アーム部9bと、ドアハンドル5と係合する係合開口9gが開口形成されたハンドル操作アーム部9cと、第二回動軸9aを挟んで反対側に位置するラッチ操作アーム部9dと、ハンドルベース4とハンドルレバー9との間に設けられる図示しないバネ部材と、ハンドルベース4に装着されて、ハンドルレバー9の回転力を減衰させるダンパギヤ9fに、噛合する扇形のギヤ部9eとを有して、側面視略逆T字型に形成されている。
このうち、バネ部材は、一端をハンドルレバー9に固定して、もう一端をハンドルベース4に固定することにより、ハンドルレバー9が当接ピン8bに当接する方向へ付勢している。
【0012】
図3は、
図2中III-III線に沿った位置におけるドアハンドル機構3の水平断面図である。
図3に示すように、ハンドルベース4には、車外側に向けて開放されたハンドル凹部4aが凹設されている。ハンドル凹部4aには、長円形で平板状のドアハンドル5が回動軸6を介して軸支されて格納されている(
図1参照)。
本実施形態のドアハンドル5の外側面5aは、格納状態で、ドアパネル2の外側面2aと面一となるように形成されている。
【0013】
また、ドアハンドル5は、回動軸6を回動中心として、後端部5cを外側方に向けて展開する。これにより、ドアハンドル5は、ドアパネル2内に格納された格納状態と展開状態(
図3中仮想線参照)との間で移動可能に構成されている。
展開状態では、ユーザがドアハンドル5を、
図3中矢印F3で示す方向にさらに回動させることができる。これにより、ラッチ切替レバー17の受圧部18は、ラッチ操作アーム部9dによって押圧されて回動し、図示しないラッチ機構のラッチ状態が解除される。
【0014】
ドアハンドル5のうち、前端部5b側の回動軸6の裏面側からは、連結突部15が一体に突設されている。また、ハンドルベース4のハンドル凹部4aには、挿通孔4bが開口形成されている。連結突部15の先端は、挿通孔4bに挿通されて、ハンドルレバー9が設けられている車幅方向内側面へ突設されていて、係合開口9gに係合されている。
連結突部15は、車両前後方向への移動により、回動軸6を回動中心としてドアハンドル5を格納状態と展開状態との間で回動させる。
【0015】
図2に示すように、アクチュエータレバー8の先端には、当接ピン8bが設けられている。当接ピン8bは、略円柱状で車両内側方向に向けて凸設されている。当接ピン8bの外径は、第一回動軸8aを回動中心とする当接ピン8bの回転半径よりも十分に小さく設定されている。
当接ピン8bは、第一回動軸8aから等距離の円弧状軌跡を描きながらハンドルレバー9に当接する。
すなわち、当接ピン8bは、ハンドルレバー9の入力アーム部9bに設けられた下縁9hに当接しながら、ハンドルレバー9を持ち上げるように押圧する。
そして、当接ピン8bは、下縁9hに当接する位置を第二回動軸9aから離間する方向に移動させながら、ハンドルレバー9を回動させる。ハンドルレバー9の回動により、ハンドル操作アーム部9cの係合開口9gに係合されている連結突部15は、車両前後方向に移動する。
これにより、アクチュエータ11の回転駆動力は、回動軸方向が90度変換されて、回動軸6を回転中心としてドアハンドル5を展開させることができる。
【0016】
また、ラッチ操作アーム部9dの先端の下縁9i側には、押圧部19が下方に向けて凸設されている。本実施形態では、ラッチ操作アーム部9dの下縁9iおよび入力アーム部9bの下縁9hがほぼ一直線上に形成されている。
そして、ハンドルレバー9の回動により、ラッチ操作アーム部9dの押圧部19がラッチ切替レバー17の受圧部18を押下げて、ラッチ機構のラッチ開放操作が行われる。
【0017】
本実施形態では、ドアハンドル5が格納状態から展開状態へ移動すると、押圧部19がラッチ解除操作を開始する直前の位置あるいは、受圧部18に当接する位置まで移動している。
このため、ユーザは、ドアパネル2から突出しているドアハンドル5をさらに引出す方向に展開させると、ハンドルレバー9の回動によりラッチ操作アーム部9dの押圧部19が受圧部18を押下げて、ラッチ機構のラッチ開放操作が行われる。
【0018】
本実施形態では、
図4に示すように、当接ピン8bの二つの位置を比較するため、アクチュエータレバー8の回転方向で、左下側に位置する当接ピン8bを格納状態側、格納状態側よりも右上側に位置する当接ピン8bを展開状態側と規定する。
これにより、
図4に示すように、第一回動軸8aおよび第二回動軸9aを繋いだ仮想線Lを想定した場合に、展開状態側の当接ピン8bと仮想線Lとの最短距離L2の方が、格納状態側の当接ピン8bと仮想線Lとの最短距離L1より長くなるように、当接ピン8bの移動範囲が設定されている。
このため、アクチュエータレバー8の回転角度当たりのハンドルレバー9の移動量を徐々に減少させて、ドアハンドル5の展開速度を徐々に低下させることができる。また、アクチュエータレバー8の回動が進むとハンドルレバー9を押す力は、徐々に低下する。このため、ドアハンドル5の展開完了の際の振動を低減できる。
なお、ハンドルレバー9側に当接ピン8bが設けられている場合でも同様である。
【0019】
ハンドルレバー9の回動初期では、アクチュエータレバー8の回転駆動力がハンドルレバー9を回動させる成分F1となり、効率よくドアハンドル5に伝達される。
そして、
図6に示すように、ドアハンドル5の展開が進むと、当接ピン8bと仮想線Lとの最短距離が長くなる。このため、アクチュエータレバー8を押上げる成分F2が回転角度の増加と共に減少する。
【0020】
さらに、
図7に示すように、係合開口9gの内周縁には、環状のカバー部材20が装着されている。カバー部材20は樹脂製で、一対の長辺部21,21と、短辺部22,22とを設け、これらの端部間をそれぞれ連結することにより略長方形の環状としている。
このうち、短辺部22,22には、それぞれ係合開口9gの内周縁に係止される外向きの外掛爪部24,24が一体に形成されている。この外掛爪部24は、カバー部材20を係合開口9gから外れ落ちないように係止すると共に、短辺方向に沿ってカバー部材20をスライド移動可能とするように装着される。
また、カバー部材20の外周縁には、長辺部21および短辺部22よりも厚さ寸法の薄いフランジ部23が全周に亘り一体に設けられている。
【0021】
さらに、係合開口9gの内周縁からは、一対の係止爪部9j,9jが一定寸法離間されて突設されている。
係止爪部9jは、一方の長辺部21の側面に当接されている。これにより、カバー部材20は、他方の長辺部21が反対側の開口周縁に押圧される。
そして、これらの一対の係止爪部9j,9jは、フランジ部23の上側から覆うように係止してラップさせている。
このため、一対の係止爪部9j,9j間の隙間30に位置するカバー部材20の一方の長辺部21に、連結突部15を弾接させて、クッション性を持たせることができる。
また、他方の長辺部21は、反対側の開口周縁に押圧されて、連結突部15の押圧力を効率よくハンドルレバー9の回転力に変換することができる。
【0022】
また、
図2に示すように、本実施形態のラッチ切替レバー17は、回転軸部17aを回転中心として回動可能な長板状のレバー本体17bと、レバー本体17bの上縁側ほぼ中央に設けられる受圧部18と、レバー本体17bの回動先端に設けられて、図示しないラッチ機構と連結される連結部17cと、を有している。
このうち、回動する押圧部19が初めに当接する受圧部18の上下方向の位置は、第二回動軸9aの上下方向の位置とほぼ同じとなるように揃えられている。すなわち、受圧部18の待機位置は、第二回動軸9aと同じ水平線H上となるように配置されている。
【0023】
そして、レバー本体17bの回転軸部17aの上下方向の位置は、第二回動軸9aの位置よりも低い位置に設定されている。これにより、ラッチ操作アーム部9dは、押圧部19以外の部分がラッチ切替レバー17に干渉しない。
ラッチ操作アーム部9dは、回動角度がほぼ水平となると受圧部18を押下げる方向に、押圧部19を当接させる。このため、展開状態となったドアハンドル5をユーザが手前に引いて更に回動させると、引き始めから効率的に押圧部19へ伝達することができる。
【0024】
次に、本実施形態のドアハンドル構造の作用効果について説明する。
本実施形態のドアハンドル機構3では、車両1のドアパネル2にユーザが近づいて近接センサが動作し、若しくは、ドアリモコンスイッチ等が操作される。これにより、
図2に示すアクチュエータ11のアクチュエータレバー8が第一回動軸8aを回動中心として、等角速度で回動を開始する。
【0025】
アクチュエータレバー8の当接ピン8bは、
図4に示すように、第一回動軸8aから等距離の円弧状軌跡を描きながら入力アーム部9bの下縁9hに当接して、押圧する。ドアハンドル5の格納状態または格納状態から展開が開始される展開初期では、
図5に示すように、アクチュエータレバー8の回動駆動力の成分F1がハンドルレバー9の回動方向と一致して、ほぼ直角に下縁9hに当接して押上げる。
このため、アクチュエータ11の回動駆動力は、効率よく入力アーム部9bに伝達されて、バネ部材の付勢力に抗して、ハンドルレバー9を
図2中左廻りに回動させる。
【0026】
ハンドルレバー9の回動が進むと、
図6に示すように、下縁9hに当接している当接ピン8bの位置は、摺動しながら第二回動軸9aから離間する方向に移動する。このため、アクチュエータレバー8の回転量に対するハンドルレバー9の回転量が徐々に減少する。
そして、ハンドルレバー9は、徐々に回転速度を減速させて、ドアハンドル5を展開状態で停止させる(
図1中仮想線参照)。
本実施形態のドアハンドル5は、減速しながら停止する。しかも、本実施形態の係合開口9gに設けられたカバー部材20が、一対の係止爪部9j,9j間の隙間30に位置する一方の長辺部21に、連結突部15を弾接させる。したがって、さらにクッション性が与えられ、振動や騒音を減少させて、商品性を向上させることができる。
【0027】
このように構成された本実施形態のドアハンドル構造では、第一回動軸8aおよび第二回動軸9a間の距離を調整するだけで、ドアハンドル5の展開速度を容易に変更できる。
この際、位置精度の要求が少ないため、たとえば、偏心カムや接続されるリンク部材等を用いるもののように、高い加工精度が要求されることがない。
また、本実施形態の当接ピン8bの外径は、第一回動軸8aを回動中心とする当接ピン8bの回転半径よりも十分に小さく設定されている。このため、偏心カムのように加工精度が要求されることがない。
【0028】
そして、ドアハンドル5が格納状態から展開状態に移動すると、これとともに、ラッチ機構によるラッチ解除が開始される直前の位置まで、ラッチ操作アーム部9dを回動させて、押圧部19を受圧部18に当接させることができる。
受圧部18は、第二回動軸9aと同じ上下方向位置となるように、同じ水平線H上に揃えられて配置されている。
さらに本実施形態の係合開口9gに設けられたカバー部材20は、他方の長辺部21を、反対側の開口周縁に押圧して連結突部15の押圧力を効率よくハンドルレバー9の回転力に変換する。
したがって、ユーザは、ドアハンドル5の引き始めから効率的にラッチを解除する操作力を押圧部19に伝達することができる。
【0029】
上述してきたように、本実施形態の車両1は、ドアパネル2内に格納された格納状態とドアパネル2から展開した展開状態とを移動可能なドアハンドル5と、アクチュエータ11によって第一回動軸8a廻りに回動するアクチュエータレバー8と、ドアハンドル5とアクチュエータレバー8との間に介在して第二回動軸9a廻りに回動することで、アクチュエータレバー8の動作をドアハンドル5に伝達するハンドルレバー9と、を備えている。アクチュエータレバー8は、第一回動軸8aから等距離の円弧状軌跡を描きながらハンドルレバー9に当接する当接ピン8bを有し、当接ピン8bがハンドルレバー9を押圧することで、ハンドルレバー9が回動し、ドアハンドル5が格納状態から展開状態に移動する。
【0030】
このため、位置精度の要求が少なく、容易にドアハンドル5の展開速度を設定でき、加工性および取付性が良好なドアハンドル構造が提供される。
例えば、ハンドルレバー9の第二回動軸9aとアクチュエータレバー8の第一回動軸8aを規定するのみで所定の展開速度を達成することが出来る。すなわち、本実施形態は、ドアハンドル5の展開速度を可変とするために、高い加工精度および位置精度を求められる偏心カムやリンク部材などを必要としない。このため、加工や取付けのための工数や費用を低減することが出来る。
【0031】
また、
図4に示すように、第一回動軸8aおよび第二回動軸9a中心を繋いだ仮想線Lを想定し、格納状態の当接ピン8bと仮想線Lとの最短距離と比べて、展開状態側の当接ピン8bと仮想線Lとの最短距離の方が長くなるように、当接ピン8bの移動範囲が設定されている。
【0032】
すなわち、格納状態または格納状態から展開が開始される展開初期の位置(格納状態側:
図5参照)のハンドルレバー9を回転させる方向の回転駆動力の成分F1と比べて、展開状態の位置(展開状態側:
図6参照)では、ハンドルレバー9を回転させる方向の回転駆動力の成分F2は減少している。
したがって、アクチュエータレバー8の回転角度当たりのハンドルレバー9の移動量を徐々に減少させて、ドアハンドル5の展開速度を徐々に低下させることができる。また、アクチュエータレバー8の回動が進むとハンドルレバー9を押す力は、徐々に低下する。よって、ドアハンドル5の展開完了の際の振動を低減でき、ドアハンドルの商品性を向上させることができる。
【0033】
さらに、
図5に示すように、当接ピン8bは、格納状態で仮想線L上に配置される。
このため、アクチュエータレバー8の回転駆動力は、当接ピン8bを介してハンドルレバー9に効率よく伝達される。また、ハンドルレバー9の長手方向寸法を短く設定して、周辺に配置される他の部品のレイアウトの自由度を向上させることができる。
【0034】
そして、
図7に示すように、ドアハンドル5の内側面から、車両内側に向けて突設され
る連結突部15と、ハンドルレバー9に形成されて、連結突部15と係合する係合開口9
gと、係合開口9gの内周縁に装着される環状のカバー部材20と、係合開口9gの内周
縁から突設されて、カバー部材20を係止
する係止爪部9jと、を備えている。
複数設けられた係止爪部9j,9j間の隙間30に位置するカバー部材20の長辺部2
1に、連結突部15を弾接させる。
【0035】
このため、係合開口9gの内周縁から突設された係止爪部9jがカバー部材20と連結突部15との間に形成される間隔をつめてガタつきを減少させることができる。したがって、さらにドアハンドル5の振動を抑制することができる。
また、係止爪部9j,9j間の隙間に位置するカバー部材20の長辺部21に、連結突部15が弾接する。このため、連結突部15およびハンドルレバー9間の組付けのバラツキが吸収される。
【0036】
図2に示すように、ハンドルレバー9は、当接ピン8bが当接する入力アーム部9bと、第二回動軸9aを挟んで水平方向の反対側に位置するラッチ操作アーム部9dとを有し、ラッチ操作アーム部9dには、図示しないラッチ機構のラッチ操作を行うラッチ切替レバー17の受圧部18に対して、アクチュエータ11からの駆動力を伝達する押圧部19を設けている。
そして、受圧部18の上下方向位置は、第二回動軸9aの上下方向位置と揃えられている。
【0037】
このように構成されたドアハンドル機構3では、ラッチ操作アーム部9dに設けられた押圧部19を介して、第二回動軸9aと同じ上下方向位置に設けられた受圧部18にアクチュエータ11の駆動力が効率よく伝達される。また、ドアハンドル5と連結するハンドルレバー9を用いて、ラッチ操作を行える。このため、それぞれ部品を設ける必要がなく、部品効率が良好である。
【0038】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について削除し、若しくは他の構成の追加・置換をすることが可能である。上記実施形態に対して可能な変形は、たとえば以下のようなものである。
【0039】
本実施形態では、当接ピン8bが当接される下縁9hが直線状に形成されているが、特にこれに限らず、例えば、下縁9hは湾曲した曲線状であってもよく、複数の異なる曲率の曲線が組わせられたものであってもよい。すなわち、下縁9hの形状が特に上述した本実施形態に限定されるものではない。
【0040】
さらに、本実施形態では、アクチュエータレバーは板状の部材であるが、例えば円盤状の部材でもよい。また、摺動押圧部として当接ピン8bをアクチュエータレバー8に設けているが、特にこれに限らない。たとえば、ハンドルレバー9に当接ピンを設けてもよく、アクチュエータレバー8が摺動押圧部を介してハンドルレバー9を押圧することでハンドルレバー9が回動し、ドアハンドル5が格納状態から展開状態に移動する構成であれば、どの位置にどのような形状の摺動押圧部が設けられていてもよい。すなわち、アクチュエータレバー8および摺動押圧部の形状、数量および材質が特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0041】
1 車両
2 ドアパネル
2a 外側面
5 ドアハンドル
8 アクチュエータレバー
8a 第一回動軸
8b 当接ピン(摺動押圧部)
9 ハンドルレバー
9a 第二回動軸