(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】半導体デバイス用基板に用いる洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20230720BHJP
C11D 7/22 20060101ALI20230720BHJP
B08B 3/08 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
H01L21/304 647A
C11D7/22
B08B3/08 Z
(21)【出願番号】P 2019117605
(22)【出願日】2019-06-25
【審査請求日】2022-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】山口 哲史
(72)【発明者】
【氏名】山澤 由佳
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-059915(JP,A)
【文献】特開2018-024745(JP,A)
【文献】特開平05-198546(JP,A)
【文献】国際公開第2018/061365(WO,A1)
【文献】特開2009-206141(JP,A)
【文献】特開2017-098368(JP,A)
【文献】国際公開第2014/080917(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
C11D 7/22
B08B 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性重合体(成分A)及び水(成分B)を含有する洗浄剤組成物であって、
成分Aが、主鎖に、下記式(I)で表される構成単位、及び、下記式(II)で表される基を含む構成単位を含有し、
成分Aは、下記式(III)で表される構成を含む水溶性重合体であり、
pHが1以上
3.5以下であり、
酸化セリウム粒子を含む研磨液組成物を用いて研磨された基板である半導体デバイス用基板に用いる洗浄剤組成物。
【化1】
上記式(I)及び(II)中、Mは、それぞれ独立して、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アミンを表す。
【化2】
上記式(III)中、M
1
は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アミンを表し、R
1
及びR
2
は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、X
1
~X
4
は、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族炭化水素基、アリール基、又は-C(=O)Y基を表し、Yは、-OZ
1
又は-NZ
2
Z
3
を表し、Z
1
、Z
2
及びZ
3
は、それぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、脂肪族炭化水素基を表し、かつ、X
1
~X
4
のうち少なくとも1つは-COOM
2
であって、M
2
は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アミンを表し、m及びnは、それぞれ独立に、1以上の自然数を表す。
【請求項2】
SOx又はNOy(ただし、x及びyはそれぞれ独立して1~5の実数である)で表される部分構造を有する化合物を含有しない、請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項3】
成分Aが、ホスフィン酸又はその塩由来の構成単位と、モノエチレン性不飽和カルボン酸又はその塩及びモノエチレン性不飽和カルボン酸誘導体又はその塩から選ばれる少なくとも1種のモノマー由来の構成単位とを含む共重合体である、請求項1又は2に記載の洗浄剤組成物。
【請求項4】
成分Aが、ビス(ポリ-2-カルボキシエチル)ホスフィン酸又はその塩、及び、ビス(ポリ-1、2-ジカルボキシエチル)ホスフィン酸又はその塩から選ばれる少なくとも1種である、請求項1から
3のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
【請求項5】
成分Aの重量平均分子量は、1,000以上である、請求項1から
4のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれかに記載の洗浄剤組成物を用いて被洗浄基板を洗浄する工程を含
み、
被洗浄基板は、酸化セリウム粒子を含む研磨液組成物を用いた研磨後の基板である、基板の洗浄方法。
【請求項7】
被洗浄基板を請求項1から
5のいずれかに記載の洗浄剤組成物を用いて洗浄した後、アルカリ性洗浄剤組成物を用いて洗浄する工程をさらに含む、請求項
6に記載の洗浄方法。
【請求項8】
請求項
6又は
7に記載の洗浄方法を用いて被洗浄基板を洗浄する工程を含
み、
被洗浄基板は、酸化セリウム粒子を含む研磨液組成物を用いた研磨後の基板である、半導体デバイス用基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体デバイス用基板に用いる洗浄剤組成物、該洗浄剤組成物を用いた基板の洗浄方法及び半導体デバイス用基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路等の半導体デバイスは、処理能力向上に伴い微細化が進んでいる。微細化が進むにしたがって、基板各層における平坦性の高い精度が求められている。さらに、配線等が描かれた、硬さや性質の異なる複数種類の表面を同時に平坦化することが生産効率の面等から求められようになってきている。
【0003】
半導体デバイス用基板の平坦性を確保する技術として化学機械研磨(CMP)が一般的に行われている。CMPでは、研磨砥粒を含む研磨剤(スラリー)を供給しながら研磨パッドを用いて基板表面を研磨し、平坦化する。研磨剤としてシリカスラリーが広く用いられているが、酸化セリウム粒子(セリア)スラリーも用いられている。シリカスラリーは、主に銅等の金属部と二酸化シリコン(SiO2)部を有する基板表面の研磨に利用され、セリアスラリーは、主にSiO2部と窒化ケイ素(Si3N4)部を有する基板表面の研磨に利用されている。そして、シリカスラリーやセリアスラリーを用いたCMPの後は、基板表面に残存する研磨くずや砥粒由来の異物を除去するために、洗浄が必要である。CMP後の基板の洗浄に用いられる洗浄剤組成物として、例えば、下記の洗浄剤組成物が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、アニオン性界面活性剤、水及びpH調整剤を含有し、CMP処理後の基板洗浄用である洗浄液が提案されている。
特許文献2には、セリアを研磨用組成物で研磨した後に得られる研磨済研磨対象物を表面処理するための表面処理組成物であって、カルボキシ基又はその塩を有する単量体由来の構造単位を有する、カルボキシ基含有(共)重合体と、SOx又はNOy(ただし、x及びyはそれぞれ独立して1~5の実数である)で表される部分構造を有する、SOx又はNOy部分構造含有化合物と、分散媒とを含み、pHが1以上8以下である表面処理組成物が提案されている。
特許文献3には、(a)スルホン酸(塩)基を有する単量体、カルボン酸(塩)基を有する単量体、水酸基を有する単量体、エチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドに由来する骨格を有する単量体、及び窒素原子を有する単量体から選ばれる少なくとも1種の単量体、並びに、(b)ビニルホスホン酸(塩)、からなる単量体成分を共重合してなる共重合体(塩)を主成分とする半導体部品用洗浄剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-8751号公報
【文献】国際公開第2018/168207号
【文献】特開2001-64681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
セリアスラリーを用いたCMPの後には、基板表面に残留する研磨砥粒であるセリアの除去を目的として、通常フッ酸洗浄が行われている。一方で、近年、半導体デバイス分野では微細化目的で配線幅を狭くする傾向にあるため、下地を形成している二酸化シリコン等の熱酸化膜のスクラッチや表面荒れの影響が大きくなっている。さらに、フッ酸洗浄では熱酸化膜に対する溶解性が強すぎるためにスクラッチの発生や表面粗さといった課題が発生し、洗浄後の工程に影響し、半導体デバイスの収率の低下及び品質の低下を招いている。そのため、フッ酸に代わり、平坦性を低下させることなく、基板表面に残留するセリアに対する洗浄性に優れる洗浄剤が求められている。しかし、上記特許文献に開示されている洗浄剤組成物では、基板表面に残留するセリアに対する洗浄性が十分ではなかった。
【0007】
そこで、本開示は、一又は複数の実施形態において、基板表面に残留するセリアに対する洗浄性に優れる半導体デバイス用基板に用いる洗浄剤組成物、該洗浄剤組成物を用いた基板の洗浄方法及び半導体デバイス用基板の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、一態様において、水溶性重合体(成分A)及び水(成分B)を含有する洗浄剤組成物であって、成分Aが、主鎖に、下記式(I)で表される構成単位、及び、下記式(II)で表される基を含む構成単位を含有し、pHが1以上5以下であり、半導体デバイス用基板に用いる洗浄剤組成物に関する。
【化1】
上記式(I)及び(II)中、Mは、それぞれ独立して、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アミンを表す。
【0009】
本開示は、一態様において、本開示の洗浄剤組成物を用いて被洗浄基板を洗浄する工程を含む、基板の洗浄方法に関する。
【0010】
本開示は、一態様において、本開示の洗浄方法を用いて被洗浄基板を洗浄する工程を含む、半導体デバイス用基板の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、一実施形態において、基板表面に残留するセリアに対する洗浄性に優れる半導体デバイス用基板に用いる洗浄剤組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、一態様において、セリアを用いたCMP後の基板の洗浄に、特定の水溶性重合体及び水を含有する酸性洗浄剤組成物を用いると、基板表面に残留するセリアを効率よく洗浄できるという知見に基づく。
【0013】
すなわち、本開示は、一態様において、水溶性重合体(成分A)及び水(成分B)を含有する洗浄剤組成物であって、成分Aが、主鎖に、上記式(I)で表される構成単位、及び、上記式(II)で表される基を含む構成単位を含有し、pHが1以上5以下であり、半導体デバイス用基板に用いる洗浄剤組成物(以下、「本開示の洗浄剤組成物」ともいう)に関する。本開示によれば、基板表面に残留するセリアに対する洗浄性に優れる半導体デバイス用基板に用いる洗浄剤組成物を提供できる。そして、本開示の洗浄剤組成物を用いることによって、高品質の半導体デバイス用基板が得られうる。
【0014】
本開示の洗浄剤組成物における効果の作用メカニズムの詳細は不明な部分があるが、以下のように推定される。
下記水溶性重合体(成分A)構造中のホスフィノ基(-P(O)(OM)-)がセリア粒子表面と強く相互作用することにより、下記水溶性重合体(成分A)が効率よくセリアに吸着する。その結果、下記水溶性重合体(成分A)のカルボキシル基がセリア表面に多く露出することにより、セリアの分散性を向上し、基板からのセリアの脱離、再付着を抑制することにより、セリアが効率的に除去されるものと考えられる。
但し、本開示はこのメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0015】
[成分A:水溶性重合体]
本開示の洗浄剤組成物に含まれる水溶性重合体(以下、「成分A」ともいう)は、主鎖に、下記式(I)で表される構成単位(以下、「構成単位a」ともいう)、及び、下記式(II)で表される基を含む構成単位(以下、「構成単位b」ともいう)を含有する。成分Aは、1種単独でもよいし、2種以上の組合せであってもよい。本開示において「水溶性」とは、一又は複数の実施形態において、20℃の水100gに対する溶解度が2g以上であることをいう。また、「主鎖」とは、水溶性重合体(成分A)において、構成単位a及び構成単位bが結合して形成される直鎖構造のうち最も長い部分をいい、「側鎖」とは、前記直鎖から枝分かれしている部分をいう。
【0016】
【0017】
式(I)及び(II)中、Mは、それぞれ独立して、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アミンである。アルカリ金属は、一又は複数の実施形態において、ナトリウム、カリウムが挙げられる。有機アミンは、一又は複数の実施形態において、エチルアミン、メチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、アルカノールアミンが挙げられる。これらの中でも式(I)のMは、一又は複数の実施形態において、洗浄性向上の観点から、水素原子が好ましい。また、式(II)のMは、一又は複数の実施形態において、洗浄性向上の観点から、水素原子が好ましい。
【0018】
成分Aは、一又は複数の実施形態において、構成単位aを形成するモノマーと構成単位bを形成するモノマーとを重合させることにより得ることができる。構成単位aを形成するモノマーとしては、一又は複数の実施形態において、ホスフィン酸又はその塩が挙げられる。ここで、ホスフィン酸とは、次亜リン酸ともいい、HOP(O)H2で表される。構成単位bを形成するモノマーとしては、一又は複数の実施形態において、モノエチレン性不飽和カルボン酸又はその塩、及びモノエチレン性不飽和カルボン酸誘導体又はその塩から選ばれる少なくとも1種のモノマーが挙げられる。構成単位a及び構成単位bはそれぞれ、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
【0019】
モノエチレン性不飽和カルボン酸としては、一又は複数の実施形態において、モノエチレン性不飽和モノカルボン酸、モノエチレン性不飽和ジカルボン酸及びこれらの組み合わせが挙げられる。モノエチレン性不飽和モノカルボン酸は、一又は複数の実施形態において、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、アリル酢酸、プロピリデン酢酸、エチリデンプロピオン酸、ジメチルアクリル酸等が挙げられる。モノエチレン性不飽和ジカルボン酸は、一又は複数の実施形態において、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、フマル酸、メチレンマロン酸、シトラコン酸、これらの不飽和ジカルボン酸の無水物、例えば無水マレイン等、さらに前記無水物を鹸化したものが挙げられる。これらの中でも、モノエチレン性不飽和カルボン酸は、一又は複数の実施形態において、洗浄性向上の観点から、アクリル酸、マレイン酸が好ましい。モノエチレン性不飽和カルボン酸は、一又は複数の実施形態において、そのまま又は中和されて塩の形で使用されうる。
【0020】
モノエチレン性不飽和カルボン酸誘導体は、一又は複数の実施形態において、エステル誘導体、アミド誘導体、及びこれらの組み合わせが挙げられる。モノエチレン性不飽和カルボン酸のエステル誘導体は、一又は複数の実施形態において、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシフェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。モノエチレン性不飽和カルボン酸のアミド誘導体は、一又は複数の実施形態において、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-ジ-n-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-エチル(メタ)アクリルアミド、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)などの(メタ)アクリル酸アミド類が挙げられる。
【0021】
成分Aとしては、一又は複数の実施形態において、洗浄性向上の観点から、ホスフィン酸又はその塩由来の構成単位と、モノエチレン性不飽和カルボン酸又はその塩、及びモノエチレン性不飽和カルボン酸誘導体又はその塩から選ばれる少なくとも1種のモノマー由来の構成単位とを含む共重合体が挙げられる。
【0022】
成分Aは、一又は複数の実施形態において、洗浄性向上の観点から、下記式(III)で表される構成を含む水溶性重合体であることが好ましい。下記(III)で表される構成を含む水溶性重合体の具体例としては、例えば、ビス(ポリ-2-カルボキシエチル)ホスフィン酸又はその塩、及び、ビス(ポリ-1,2-ジカルボキシエチル)ホスフィン酸又はその塩から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0023】
【0024】
上記式(III)中、M1は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アミンを表し、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、X1~X4は、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族炭化水素基、アリール基、又は-C(=O)Y基を表し、Yは、-OZ1又は-NZ2Z3を表し、Z1、Z2及びZ3は、それぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、脂肪族炭化水素基を表し、かつ、X1~X4のうち少なくとも1つは-COOM2であって、M2は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アミンを表し、m及びnは、それぞれ独立に、1以上の自然数を表す。
【0025】
上記式(III)において、構成単位aであるホスフィノ基(-P(O)(OM1)-)の両隣の構成単位は、同じであってもよく(R1=R2かつX1=X3かつX2=X4)、異なってもよい。上記式(III)のM1及びM2におけるアルカリ金属及び有機アミンは、式(I)のMの一又は複数の実施形態をとりうる。式(III)のM1は、一又は複数の実施形態において、洗浄性向上の観点から、水素原子が好ましく、式(III)のM2は、一又は複数の実施形態において、同様の観点から、水素原子が好ましい。また、上記式(III)におけるR1及びR2は、洗浄性向上の観点から、水素原子が好ましい。上記式(III)におけるX1及びX3は、洗浄性向上の観点から、水素原子又は-COOHが好ましい。また、上記式(III)におけるX2及びX4は、洗浄性向上の観点から、-COOHが好ましい。上記式(III)におけるn及びmの数は、一又は複数の実施形態において、洗浄性向上の観点から、m+nが、2以上50以下が好ましく、より好ましくは3以上20以下である。
【0026】
成分Aを構成する全構成単位中に占める構成単位aの含有量は、一又は複数の実施形態において、洗浄性向上の観点から、1モル%以上50モル%以下が好ましく、5モル%以上40モル%以下がより好ましく、5モル%以上35モル%以下が更に好ましく、5モル%以上33モル%以下が更に好ましい。構成単位aが2種以上の組み合わせである場合、構成単位aの含有量はそれらの合計含有量である。
【0027】
成分Aを構成する全構成単位中に占める構成単位bの含有量は、一又は複数の実施形態において、洗浄性向上の観点から、50モル%以上99モル%以下が好ましく、60モル%以上95モル%以下がより好ましく、67モル%以上95モル%以下が更に好ましく、70モル%以上95モル%以下が更に好ましい。構成単位bが2種以上の組合せの場合、構成単位bの含有量はそれらの合計含有量である。
【0028】
本開示において、成分Aを構成する全構成単位中に占めるある構成単位の含有量(モル%)として、合成条件によっては、前記水溶性重合体の合成の全工程で反応槽に仕込まれた全構成単位を導入するための化合物中に占める前記反応槽に仕込まれた該構成単位を導入するための化合物量(モル%)を使用してもよい。また、本明細書において、成分Aを構成するある2つの構成単位の構成比(モル比)として、合成条件によっては、前記水溶性重合体の合成の全工程で反応槽に仕込まれた該2つの構成単位を導入するための化合物量比(モル比)を使用してもよい。
【0029】
成分Aは、上述した構成単位a及び構成単位b以外に、その他の構成単位をさらに有していてもよい。成分Aを構成する全構成単位中に占めるその他の構成単位の含有率は、洗浄性向上の観点から、0モル%以上30モル%以下が好ましく、0モル%以上20モル%以下がより好ましく、0モル%以上10モル%以下が更に好ましく、0モル%以上5モル%以下が更により好ましく、実質的に0モル%又は0モル%が更により好ましい。
【0030】
成分Aを構成する全構成単位中における構成単位aと構成単位bのモル比率(構成単位a/構成単位b)は、洗浄性向上の観点から、1/99以上50/50以下であることが好ましく、5/95以上40/60以下がより好ましく、5/95以上30/70以下が更に好ましい。
【0031】
成分Aの重量平均分子量は、洗浄性向上の観点から、1,000以上が好ましく、1、250以上がより好ましく、1、500以上が更に好ましく、そして、100,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましく、20,000以下が更に好ましい。より具体的には、成分Aの重量平均分子量は、1,000以上100,000以下が好ましく、1,250以上50,000以下がより好ましく、1、500以上20,000以下が更に好ましい。本開示において、成分Aの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて実施例に記載の条件で測定した値とする。
【0032】
本開示の洗浄剤組成物の洗浄時における成分Aの含有量は、洗浄性向上の観点から、00.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、5質量%以下が好ましく、2.5質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましい。より具体的には、成分Aの含有量は、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上2.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上1質量%以下が更に好ましい。成分Aが2種以上の組合せの場合、成分Aの含有量はそれらの合計含有量である。
【0033】
[成分B:水]
本開示の洗浄剤組成物に含まれる水(以下、「成分B」ともいう)としては、イオン交換水、RO水、蒸留水、純水、超純水が使用されうる。本開示の洗浄剤組成物の洗浄時における成分Bの含有量は、成分A及び必要に応じて配合される後述する任意成分を除いた残余とすることができる。
【0034】
[成分C:pH調整剤]
本開示の洗浄剤組成物は、pH調整剤(以下、「成分C」ともいう)をさらに含むことができる。成分Cとしては、例えば、硫酸、硝酸等の無機酸;オキシカルボン酸、多価カルボン酸、アミノポリカルボン酸、アミノ酸等の有機酸;及びそれらの金属塩やアンモニウム塩、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アミン等の塩基性物質;等が挙げられる。成分Cは、1種単独でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
【0035】
[その他の成分]
本開示の洗浄剤組成物は、上述した成分A、成分B、及び成分C以外に、必要に応じてその他の成分を含有することができる。その他の成分としては、成分A以外の水溶性重合体、成分A以外の界面活性剤、キレート剤、可溶化剤、防腐剤、防錆剤、殺菌剤、抗菌剤、シリコーン系消泡剤、酸化防止剤、エステル類、アルコール類等が挙げられる。本開示の洗浄剤組成物の洗浄時におけるその他の成分の含有量は、本開示の効果を妨げない観点から、0質量%以上2質量%以下が好ましく、0質量%以上1.5質量%以下がより好ましく、0質量%以上1.3質量%以下がさらに好ましく、0質量%以上1質量%以下がよりさらに好ましい。
【0036】
本開示の洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、SOx又はNOy(ただし、x及びyはそれぞれ独立して1~5の実数である)で表される部分構造を有する化合物を含有しないものである。
【0037】
本開示の洗浄剤組成物の洗浄時のpHは、洗浄性向上の観点から、5以下であって、4以下が好ましく、3.5以下がより好ましい。本開示において「洗浄時のpH」とは、25℃における洗浄剤組成物の使用時(希釈後)のpHであり、pHメータを用いて測定できる。具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
【0038】
[洗浄剤組成物の製造方法]
本開示の洗浄剤組成物は、例えば、成分A、成分B及び必要に応じて任意成分(成分C、その他の成分)を公知の方法で配合することにより製造できる。例えば、本開示の洗浄剤組成物は、少なくとも成分A及び成分Bを配合してなるものとすることができる。したがって、本開示は、一態様において、少なくとも成分A及び成分Bを配合する工程を含む、洗浄剤組成物の製造方法に関する。本開示において「配合する」とは、成分A、成分B及び必要に応じて任意成分(成分C、その他の成分)を同時に又は任意の順に混合することを含む。本開示の洗浄剤組成物の製造方法において、各成分の配合量は、上述した本開示の洗浄剤組成物の各成分の含有量と同じとすることができる。
【0039】
本開示において「洗浄剤組成物の洗浄時における各成分の含有量」とは、一又は複数の実施形態において、洗浄工程に使用される、すなわち、洗浄への使用を開始する時点(使用時)での洗浄剤組成物の各成分の含有量をいう。
【0040】
本開示の洗浄剤組成物は、分離や析出等を起こして保管安定性を損なわない範囲で水(成分B)の量を減らした濃縮物として調製してもよい。洗浄剤組成物の濃縮物は、輸送及び貯蔵の観点から、希釈倍率10倍以上の濃縮物とすることが好ましく、保管安定性の観点から、希釈倍率100倍以下の濃縮物とすることが好ましい。洗浄剤組成物の濃縮物は、使用時に各成分が上述した含有量(すなわち、洗浄時の含有量)になるよう水で希釈して使用することができる。さらに洗浄剤組成物の濃縮物は、使用時に各成分を別々に添加して使用することもできる。本開示において洗浄剤組成物の濃縮物の「使用時」又は「洗浄時」とは、洗浄剤組成物の濃縮物が希釈された状態をいう。
【0041】
[被洗浄基板]
被洗浄基板としては、一又は複数の実施形態において、セリアを含む研磨液組成物を用いた研磨後の基板、セリアを含む研磨液組成物を用いたCMP後の基板、基板表面にセリア砥粒由来の異物が付着した基板等が挙げられる。基板としては、例えば、シリコン基板、ガラス基板、セラミックス基板等の半導体デバイス用基板が挙げられる。半導体デバイス用基板は、一又は複数の実施形態において、半導体デバイス用基板の製造に用いられる基板である。被洗浄基板の表面材料は特に限定されず、例えば、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、熱シリコン酸化膜、ノンドープシリケートガラス膜、リンドープシリケートガラス膜、ボロンドープシリケートガラス膜、リンボロンドープシリケートガラス膜、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)膜、プラズマCVD酸化膜、シリコン窒化膜、シリコンカーバイド膜、シリコンオキサイドカーバイド膜、又はシリコンオキサイドカーバイドナイトライド膜等が挙げられる。さらに、ガラス、石英、水晶、セラミックス等も挙げられる。一又は複数の実施形態において、被洗浄基板は、これら材料単独で構成される基板でもよいし、2種以上の材料がある分布を持ってパターニングされた基板や積層された基板でもよい。
【0042】
[基板の洗浄方法]
本開示は、一態様において、本開示の洗浄剤組成物を用いて被洗浄基板を洗浄する工程(以下、「本開示の酸性洗浄工程」ともいう)を含む、基板の洗浄方法(以下、「本開示の洗浄方法」ともいう)に関する。本開示の酸性洗浄工程は、一又は複数の実施形態において、被洗浄基板に本開示の洗浄剤組成物を接触させる工程を含む。本開示の酸性洗浄工程は、一又は複数の実施形態において、被洗浄基板を本開示の洗浄剤組成物に接触させた後、水でリンスし、乾燥する工程を含むことが好ましい。被洗浄基板としては、上述した基板を用いることができる。
【0043】
本開示の酸性洗浄工程における洗浄方式としては、例えば、ブラシ洗浄やパッドを用いた洗浄が挙げられる。
ブラシ洗浄とは、一又は複数の実施形態において、基板表面に洗浄剤組成物を供給しながら、基板表面に洗浄ブラシを押し当てて基板と洗浄ブラシとを相対的に動かして基板表面を洗浄する方法である。洗浄ブラシとしては、例えば、ロールブラシ、ペンシルブラシ等が挙げられる。
パッドを用いた洗浄とは、一又は複数の実施形態において、基板表面にパッドを押し当て、基板とパッドとの間に洗浄剤組成物を供給しながら、基板とパッドとを相対的に動かすことにより基板表面を洗浄する方法である。パッドとしては、例えば、一般的なCMP研磨で用いられる発泡ポリウレタン製パッド、不織布、フッ素樹脂、スエードパッド(バフ)等が挙げられる。スエードパッドを用いた洗浄は、バフ洗浄ともよばれている。
上述したブラシ洗浄やパッドを用いた洗浄以外にも、例えば、浸漬洗浄、超音波洗浄、揺動洗浄、スプレー洗浄、スピンナー等の回転を利用した洗浄等が挙げられる。
上述した洗浄方式は、単独で実施してもよいし、複数組み合わせて実施してもよい。
【0044】
本開示の洗浄剤組成物が濃縮物である場合、本開示の洗浄方法は、一又は複数の実施形態において、洗浄剤組成物の濃縮物を希釈する希釈工程をさらに含むことができる。本開示の洗浄方法であれば、基板表面に残留するセリアを効率よく除去できる。
【0045】
本開示の洗浄方法は、一又は複数の実施形態において、被洗浄基板を本開示の洗浄剤組成物を用いて洗浄する工程(本開示の酸性洗浄工程)の後、アルカリ剤及び水を含む洗浄剤組成物(以下、「本開示のアルカリ性洗浄剤組成物」ともいう)を用いて洗浄する工程(以下、「アルカリ洗浄工程」ともいう)をさらに含むことができる。アルカリ洗浄工程は、一又は複数の実施形態において、本開示の酸性洗浄工程で得られた基板に本開示のアルカリ性洗浄剤組成物を接触させる工程を含むことができる。アルカリ洗浄工程の洗浄方式としては、上述の酸性洗浄工程と同じ洗浄方式が挙げられる。アルカリ洗浄工程は、一又は複数の実施形態において、本開示の酸性洗浄工程で得られた基板に本開示のアルカリ性洗浄剤組成物を接触させた後、水でリンスし、乾燥する工程をさらに含んでもよい。
【0046】
アルカリ洗浄工程で使用する本開示のアルカリ性洗浄剤組成物の25℃におけるpHは、洗浄性向上の観点から、10以上が好ましく、10.5以上がより好ましく、11以上更に好ましく、12以上が更に好ましい。
【0047】
本開示のアルカリ性洗浄剤組成物に含まれるアルカリ剤としては、無機アルカリ及び有機アルカリの少なくとも一方が挙げられる。無機アルカリとしては、例えば、アンモニア、水酸化カリウム、及び水酸化ナトリウム等が挙げられる。有機アルカリとしては、例えば、ジメチルアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)等が挙げられる。これらのアルカリ剤は、1種単独でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
【0048】
本開示のアルカリ性洗浄剤組成物の洗浄時におけるアルカリ剤の含有量は、洗浄性向上の観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.03質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上が更に好ましく、そして、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下が更に好ましい。より具体的には、アルカリ剤の含有量は、0.01質量%以上1質量%以下が好ましく、0.05質量%以上0.5質量%以下がより好ましく、0.05質量%以上0.1質量%以下が更に好ましい。アルカリ剤が2種以上の組合せである場合、アルカリ剤の含有量はそれらの合計含有量をいう。
【0049】
本開示のアルカリ性洗浄剤組成物に含まれる水としては、イオン交換水、RO水、蒸留水、純水、超純水が使用されうる。本開示のアルカリ性洗浄剤組成物の洗浄時における水の含有量は、本開示のアルカリ剤及び必要に応じて配合される後述する任意成分を除いた残余とすることができる。
【0050】
本開示のアルカリ性洗浄剤組成物には、上述したアルカリ剤及び水以外に、界面活性剤、キレート剤、エーテルカルボキシレート、脂肪酸、消泡剤、アルコール類、防腐剤、酸化防止剤等のその他の成分が含まれていていてもよい。本開示のアルカリ性洗浄剤組成物の洗浄時におけるその他の成分の含有量は、本開示の効果を妨げない観点から、0質量%以上2質量%以下が好ましく、0質量%以上1.5質量%以下がより好ましく、0質量%以上1質量%以下が更に好ましい。
【0051】
本開示のアルカリ性洗浄剤組成物は、例えば、アルカリ剤、水及び必要に応じてその他の成分を公知の方法で配合することにより製造できる。また、本開示のアルカリ性洗浄剤組成物は、保管安定性を損なわない範囲で水の量を減らした濃縮物として調製してもよい。アルカリ性洗浄剤組成物の濃縮物の希釈倍率は、例えば、10~100倍が挙げられる。アルカリ性洗浄剤組成物の濃縮物は、使用時に各成分が上述した含有量(すなわち、洗浄時の含有量)になるよう水で希釈して使用できる。本開示のアルカリ性洗浄剤組成物が濃縮物である場合、本開示の洗浄方法は、アルカリ性洗浄剤組成物の濃縮物を希釈する希釈工程をさらに含むことができる。
【0052】
[半導体デバイス用基板の製造方法]
本開示は、一態様において、本開示の洗浄方法を用いて、被洗浄基板を洗浄する洗浄工程を含む、半導体デバイス用基板の製造方法(以下、「本開示の基板製造方法」ともいう)に関する。被洗浄基板としては、上述した基板を用いることができる。本開示の基板製造方法の洗浄工程における洗浄方法や洗浄条件は、上述した本開示の洗浄方法と同じとすることができる。本開示の基板製造方法は、一又は複数の実施形態において、(1)セリアを含む研磨液組成物を用いてCMPを行う工程、及び、(2)本開示の洗浄方法を用いて工程(1)で研磨された基板を洗浄する工程、を含むことができる。
【0053】
ここで、CMPを行う工程の具体例を以下に示す。
まず、シリコン基板を酸化炉内で酸素に晒して二酸化シリコン層を含むシリコン基板を形成する。次いで、シリコン基板の二酸化シリコン層側、例えば二酸化シリコン層上に、窒化珪素(Si3N4)膜を、例えばCVD法(化学気相成長法)にて形成する。次に、このようにして得られたシリコン基板と前記シリコン基板の一方の主面側に配置された窒化珪素膜とを含む基板、例えば、シリコン基板とシリコン基板の一方の主面上に配置された窒化珪素膜とを含む基板、又はシリコン基板とシリコン基板の一方の主面上に配置された窒化珪素膜とからなる基板に、フォトリソグラフィー技術を用いて窒化珪素膜を貫通し溝底がシリコン基板内に達したトレンチを形成する。次いで、例えばシランガスと酸素ガスを用いたCVD法により、トレンチ埋め込み用の酸化珪素(SiO2)膜を形成し、前記トレンチに酸化珪素が埋め込まれ、トレンチ及び窒化珪素膜が酸化珪素膜で覆われた被研磨基板を得る。酸化珪素膜の形成により、前記トレンチは酸化珪素膜の酸化珪素で満たされ、窒化珪素膜の前記シリコン基板側の面の反対面は酸化珪素膜によって被覆される。このようにして形成された酸化珪素膜のシリコン基板側の面の反対面は、下層の凸凹に対応して形成された、段差を有する。次いで、CMP法により、酸化珪素膜を、少なくとも窒化珪素膜のシリコン基板側の面の反対面が露出するまでセリアスラリーで研磨し、より好ましくは、酸化珪素膜の表面と窒化珪素膜の表面とが面一になるまで酸化珪素膜を研磨する。
【0054】
本開示の基板製造方法は、被洗浄基板の洗浄に本開示の洗浄剤組成物を用いることにより、CMP後の基板表面に残留する砥粒や研磨屑等の異物が低減され、異物が残留することに起因する後工程における不良発生が抑制されるから、信頼性の高い半導体デバイス用基板の製造が可能になる。さらに、本開示の洗浄方法を行うことにより、CMP後の基板表面の砥粒や研磨屑等の残渣の洗浄が容易になることから、洗浄時間が短縮化でき、半導体デバイス用基板の製造効率を向上できる。
【実施例】
【0055】
以下に、実施例により本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0056】
1.洗浄剤組成物の調製(実施例1~7、参考例1、比較例2~4)
水溶性重合体(成分A又は非成分A)を所定濃度となるように水(成分B)に配合し、必要に応じてpH調整剤(成分C)を用いてpH調整を行い、実施例1~7、参考例1及び比較例2~4の洗浄剤組成物を調製した。pH調整には、1質量%硝酸水溶液又は1規定のアンモニア水を用いた。表2に示す成分A又は非成分Aの含有量は、洗浄剤組成物の使用時における含有量(質量%、有効分)である。表2に示すpHは、25℃における洗浄剤組成物のpHである。
【0057】
水溶性重合体(成分A又は非成分A)としては、表1に示す構成を有する水溶性重合体A1~A4を用いた。
【0058】
【0059】
水(成分B)及びpH調整剤(成分C)としては、以下のものを用いた。
(成分B)
水[栗田工業株式会社製の連続純水製造装置(ピュアコンティ PC-2000VRL型)とサブシステム(マクエース KC-05H型)を用いて製造した超純水]
(成分C)
硝酸[富士フィルム和光純薬製]
アンモニア水[富士フィルム和光純薬製]
【0060】
2.各種パラメータの測定方法
[洗浄剤組成物のpH]
洗浄剤組成物の25℃におけるpHは、pHメータ(東亜ディーケーケー株式会社製、HM-30G)を用いて測定した値であり、pHメータの電極を洗浄剤組成物に浸漬して1分後の数値である。
【0061】
[水溶性重合体の重量平均分子量の測定方法]
カラム:TSKgel α-M+TSKgel α-M(東ソー製)
溶離液:60mmol/L リン酸,50mmol/L LiBr/DMF
温度:40℃
流速:1.0ml/分
試料サイズ:5mg/ml
検出器:RI
標準物質:ポリスチレン(分子量3600、30000:西尾工業株式会社社製。9.64万、842万:東ソー株式会社製、92.9万:Chemco社製)
【0062】
3.洗浄性の評価
調製した実施例1~7、参考例1及び比較例2~4の洗浄剤組成物を用いて下記の評価を行った。
【0063】
[洗浄評価用試験片の作製]
水に正帯電のセリア(平均一次粒径:45nm)及び2-ヒドロキシピリジン-N-オキシドを混合し、アンモニア水を用いることにより、pHを5に調整し、各濃度が0.15質量%、0.015質量%である研磨液組成物を調製した。研磨前の試験片として、シリコンウエハ(12インチ)の片面に、TEOS-プラズマCVD法で厚さ2000nmの酸化珪素膜を形成したものから、40mm×40mmに切り出した酸化珪素膜試験片を用いた。また、研磨装置には定盤径380mmのテクノライズ社製「R15M-TRK1」を、研磨パッドにはニッタ・ハース株式会社製の積層パッド「IC1000/SUBA400」を用いた。研磨装置の定盤に、研磨パッドを貼り付け、試験片をホルダーにセットし、試験片の酸化珪素膜を形成した面が下になるように、すなわち酸化珪素膜が研磨パッドに接するように、ホルダーを研磨パッドに載せた。さらに、試験片にかかる荷重が300g重/cm2となるように、錘をホルダーに載せ、研磨パッドを貼り付けた定盤の中心に、研磨液組成物を50mL/分の速度で滴下しながら、定盤及びホルダーのそれぞれを同じ回転方向に90回転/分で30秒間回転させて、酸化珪素膜試験片の研磨を行い、洗浄評価用試験片を作製した。
【0064】
[洗浄性の評価]
まず、洗浄評価用試験片を洗浄剤組成物(実施例1~7、参考例1、比較例2~4)に浸漬し、マグネチックスターラーを用いて回転数500rpmで30秒間攪拌し、水ですすぐ。次いで、アルカリ性洗浄剤組成物(アルカリ剤:TMAH、0.06質量%、pH12.3)に浸漬し、マグネチックスターラーを用いて回転数500rpm)で30秒間攪拌し、水ですすぐ。
その後、試験片を、硫酸:20質量%及び過酸化水素:12質量%を含む混合液に浸漬する(浸漬温度:60℃、浸漬時間:12時間)。そして、混合液中のセリウム(Ce)イオン濃度をICP発光分光分析装置(アジレント・テクノロジー社製の“Afilent 5110”)を用いて測定する。測定したセリウムイオン濃度からセリア(CeO2)溶解量(ppb)を算出する。参考例1の値を100として相対値を表2に示す。値が小さいほど、洗浄後の基板のセリア付着量が少なく、洗浄性に優れると評価できる。
【0065】
【0066】
表2に示すとおり、実施例1~7の洗浄剤組成物は、参考例1及び比較例2~4の洗浄剤組成物に比べて、セリア付着量が少なく、洗浄性に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本開示の洗浄剤組成物は、半導体デバイス用基板の製造工程で用いられる洗浄剤組成物として有用であり、セリアが付着した基板の洗浄工程の短縮化及び製造される半導体デバイス用基板の性能・信頼性の向上が可能となり、半導体装置の生産性を向上できる。