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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】プッシュリフタ装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 83/34 20140101AFI20230720BHJP
   E05B 81/14 20140101ALI20230720BHJP
   B60K 15/05 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
E05B83/34
E05B81/14
B60K15/05 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019123399
(22)【出願日】2019-07-02
(65)【公開番号】P2021008765
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000155067
【氏名又は名称】ミネベアアクセスソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 学
(72)【発明者】
【氏名】北山 瑞希
(72)【発明者】
【氏名】前田 愛彦
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-111903(JP,A)
【文献】特開2019-148160(JP,A)
【文献】特開2019-11601(JP,A)
【文献】特開2016-223150(JP,A)
【文献】特開2013-113059(JP,A)
【文献】特開2000-318450(JP,A)
【文献】特開2016-89383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 83/34
E05B 81/14
B60K 15/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リッドの裏面を押圧して前記リッドを開放するプッシュリフタ装置であって、
前記リッドに対して進退可能に設置されたロッドと、
前記リッドに向かって前記ロッドを付勢する付勢手段と、
前記ロッドに係合して前記ロッドの進出をロックするロック部材と、
前記ロック部材に連結され、回動することで前記ロッドと前記ロック部材との係合を解除する回動部材と、
前記回動部材に連結され、前記回動部材を回動させる操作レバーと、
前記操作レバーに接触して、前記操作レバーの操作方向を規制するガイド部と、を備え、
前記操作レバーは、前記ガイド部側の側面に段差部を有し、
前記段差部及び前記ガイド部の前記段差部側の側面のうち少なくともいずれか一方にはテーパ面が形成され、
前記操作レバーを引いて前記回動部材を回動させると、前記段差部と前記ガイド部とが前記テーパ面において摺動する
ことを特徴とするプッシュリフタ装置。
【請求項2】
前記回動部材には、前記操作レバーが回動可能に連結されるとともに、前記回動部材の回動軸と前記操作レバーの回動軸とが平行に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のプッシュリフタ装置。
【請求項3】
記操作レバーの一部には、脆弱部を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のプッシュリフタ装置。
【請求項4】
前記脆弱部は、他の部位と比較して長手方向と直交する方向を幅狭とする細紐状であることを特徴とする請求項に記載のプッシュリフタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プッシュリフタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載されたプッシュリフタ装置では、フューエルリッドの裏面を押圧してフューエルリッドを開放するため、出力ロッドをリッドに対して進退可能に設置している。
このようなプッシュリフタ装置では、出力ロッドを第1位置に向けて付勢する第1付勢手段と、電動モータと、電動モータに駆動されることにより出力ロッドを第1付勢力F1に抗して第1位置から第2位置に変位させる一方、電動モータが非給電とされることにより第1付勢力に屈して出力ロッドが第1位置に変位することを許容する作動機構とが備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-203274号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のプッシュリフタ装置は、操作部をユーザが手動で操作することにより、非通電状態等であってもリッドを開放できるようにしている。しかしながら、レイアウトの都合上、レバーの初期位置を設定すると、そのままレバーを引いた場合に、機構に過大な負荷がかかり、プッシュリフタ装置が破損してしまう場合が考えられる。
本発明は、初期位置のレイアウト設定の自由度を向上させながら、操作方向を規制することができるプッシュリフタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、リッドの裏面を押圧してリッドを開放するプッシュリフタ装置であって、リッドに対して進退可能に設置されたロッドと、リッドに向かってロッドを付勢する付勢手段と、ロッドに係合してロッドの進出をロックするロック部材と、ロック部材に連結され、回動することで前記ロッドと前記ロック部材との係合を解除する回動部材と、回動部材に連結され、回動部材を回動させる操作レバーと、操作レバーに接触して、操作レバーの操作方向を規制するガイド部と、を備え、操作レバーは、ガイド部側の側面に段差部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、リッドの裏面を押圧してリッドを開放するプッシュリフタ装置であって、リッドに対して進退可能に設置されたロッドと、リッドに向かってロッドを付勢する付勢手段と、ロッドに係合してロッドの進出をロックするロック部材と、ロック部材に連結され、回動することでロッドとロック部材との係合を解除する回動部材と、回動部材に連結され、回動部材を回動させる操作レバーと、操作レバーに接触して、操作レバーの操作方向を規制するガイド部と、を備える。操作レバーは、ガイド部側の側面に段差部を有し、段差部及びガイド部の段差部側の側面のうち少なくともいずれか一方にはテーパ面が形成され、操作レバーを引いて回動部材を回動させると、段差部とガイド部とがテーパ面において摺動することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態のプッシュリフタ装置を示し、全体の構成を説明する操作レバー側の側面図である。
図2】実施形態のプッシュリフタ装置で、操作レバーの構成を説明する斜視図である。
図3】実施形態のプッシュリフタ装置で、要部の構成を説明し、操作レバーがガイド部に係止されている様子を説明する一部断面図である。
図4】実施形態のプッシュリフタ装置で、内部の構成を説明する縦断面図である。
図5】実施形態のプッシュリフタ装置で、操作レバーの動作を説明する操作レバー側の側面図である。
図6】実施形態のプッシュリフタ装置で、内部の構成を示し、操作レバーによる操作が行われる前の様子を説明する拡大断面図である。
図7】実施形態のプッシュリフタ装置で、内部の構成を示し、操作レバーによる操作が行われた様子を説明する拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。方向を説明する際には、特に示さない限り、基本的に運転者から見た前後,左右あるいは上下に基づいて説明する。また、「車幅方向」は「左右方向」と同義である。
【0009】
図1は、本発明の実施形態のプッシュリフタ装置1を示すものである。
車両の給油口には、給油口を覆う閉状態から車外側に開放可能となるフューエルリッドが設けられている。フューエルリッドの裏側には、フューエルリッドの裏面を押圧してフューエルリッドを開放するプッシュリフタ装置1が配置されている。
本実施形態のプッシュリフタ装置1は、箱型の本体ケース2と、フューエルリッドに対して進退可能に設置されたロッド3と、フューエルリッドに向かってロッド3を付勢する付勢手段としてのスプリング4(図4参照)とを備えている。
【0010】
また、図1に示すように、プッシュリフタ装置1は、ロッド3に係合してロッド3の進出をロックするロック部材5と、ロック部材5に連結され、回動することでロッド3とロック部材5との係合を解除する回動部材6と、回動部材6に連結され、回動部材6を回動させる操作レバー7と、本体ケース2に設けられて操作レバー7に接触して、操作レバー7の操作方向を規制するガイド部8と、を更に備えている。
【0011】
このうち、本体ケース2は、樹脂製の中空方形箱型で、内部の空間にロッド3、スプリング4、ロック部材5および回転によりロック部材5を直線移動させるモータ9等が収容されている。また、本体ケース2には、下側取付片2bが一体となるように突設されている。本体ケース2は、下側取付片2bによって車体に装着されることにより、ロッド3をフューエルリッドの裏面に当接させて押圧可能な位置に配置される。
【0012】
図4に示すように、ロッド3は、略円柱状に形成されていて、本体ケース2に形成されたロッド孔2aから突出する先端部3aと、主に本体ケース2内に進退可能に収容される中間部3cと、スプリング4により付勢される後端部3bとを有している。
先端部3aは、本体ケース2のロッド孔2aに挿通されていて、フューエルリッドの裏面側に当接する先端面をロッド孔2aよりも外方に突設している。
また、先端部3aとロッド孔2aの周縁部との間には、ゴム製のシールリング13およびカバー部材14が設けられている。シールリング13には、先端部3aの進退方向への移動を許容する孔部を形成するとともに、カバー部材14によって脱落不能に装着されている。
【0013】
また、後端部3bと本体ケース2の内側面との間には、スプリング4が配設されている。そして、スプリング4は、ロッド3の後端部3bをロッド軸方向に押圧する。これにより、先端部3aは、ロッド孔2aから外方に突出する方向へ向けて付勢される。
【0014】
さらに、後端部3bの周囲には、外周面に環状に凹設された嵌合溝に嵌合されて、ロッドホルダ部材12が装着されている。そして、ロッドホルダ部材12は、ロッド3はとともに進退方向に移動する。この際、ロッドホルダ部材12は、本体ケース2内で摺動して、円滑にロッド3を進退方向へ移動させる。
本実施形態のロッド3は、スプリング4の付勢力に抗して本体ケース2内に退避する退避位置(図4中実線位置参照)と、ロッド孔2aから先端部3aをさらに突出させて、リッドの裏面を押圧する押圧位置との間で進退可能に設置されている。
【0015】
また、本体ケース2の内部には、ロック部材5が収容されている。ロック部材5は、略直方体形状に形成されていて、ロッド3の軸方向と直交する方向に進退自在となるように設置されている。一方、ロッド3の中間部3cの外周面には、ロック部材5を係合可能とする係止凹溝3dが凹設されている。
ロック部材5は、係止凹溝3dと対向する部分に凸状の係止凸部5aを突設している。本実施形態のロック部材5には、さらに当接片5bが設けられている。そして、係止凸部5aが係止凹溝3dに係止される際、当接片5bは、ロッド3の外側面に当接して、係止凸部5aによる係止を安定させる(図6参照)。
【0016】
図4に示すように、ロック部材5の一側面には、平歯状のラック歯5cが形成されている。ラック歯5cは、モータ9の回転軸に装着されたピニオン歯9aと噛合している。
また、本体ケース2の後側面には、本体ケース2の外部からモータ9に電気信号を送るための接続コネクタ11が固定されている。
そして、モータ9は、接続コネクタ11を介して送られてきた電気信号に基づいて回転軸に装着されたピニオン歯9aを正転または逆転させる。そして、ラック歯5cは、回転軸の正転または逆転に応じて、ロック部材5を直線的に進退させる。
ロック部材5の進退移動により係止凸部5aは、係止凹溝3dに向けて挿抜される。
【0017】
ロック部材5は、係止凸部5aを係止凹溝3dに挿入して係止させている状態では、スプリング4の付勢力に抗して、ロッド3を退避位置に固定することができる。このため、ロッド3の先端部3aは、ロッド孔2aから突出する方向へ移動しない。
そして、ロック部材5が退避して、係止凸部5aが係止凹溝3dから抜出されると、スプリング4の付勢力によってロッド孔2aから突出する方向にロッド3が移動する。
ロッド3の先端部3aは、フューエルリッドの裏面側を車外側に向けて押圧してフューエルリッドを開放することができる。
【0018】
また、フューエルリッドを閉じる際には、フューエルリッドの裏面側によってロッド3の先端部3aを押圧する。これにより、ロック部材5を用いてロック可能な退避位置までロッドを戻す。そして、係止凸部5aを係止凹溝3dに挿入して係止させて、ロッド3が戻らないようにロックする。
【0019】
本実施形態のプッシュリフタ装置1には、非通電時等、モータ9によってロッド3を突出させることが出来ない場合に、手動でフューエルリッドを開放するマニュアル操作用の操作レバー7(図2参照)が設けられている。
マニュアル操作では、図5中矢印aで示すように、操作レバー7を引く操作をユーザが手動で行うことにより、ロッド3を突出させて、フューエルリッドを開放する。
すなわち、ロック部材5のラック歯5cが形成されている側面(図4参照)とは、反対側の側面からは、図5に示すように、円柱状の係合突起5dが突設されている。
【0020】
また、本体ケース2の操作レバー7が設けられる側面には、回動部材6が設けられている。回動部材6は、側面に対して直角に設けられた回動軸6cを回動中心として回動可能に軸支されている。回動部材6には、側面の一部に凹状の凹部6bが形成されている。
さらに、本体ケース2の回動部材6と同じ側面には、ストッパ15が設けられている。ストッパ15は、左,右両側の斜面部を傾斜させた側面視山型で、回動部材6の凹部6bの周方向両側に位置する縦壁部にそれぞれの斜面部15a,15bを当接させる(図6図7参照)。これにより、ストッパ15は、回動部材6の回転可能な角度を一定の範囲に規制することができる。
また、回動部材6には、復帰バネ部材16が設けられていて、操作レバー7が引かれて回動する方向とは、逆の戻り方向に回動部材6を付勢している。
【0021】
さらに、図1に示すように、本体ケース2の操作レバー7が設けられる側面には、ガイド部8が設けられている。ガイド部8は、正面視略門型で、左,右一対設けられた上部柱部8a,下部柱部8bおよびこれらの上部柱部8a,下部柱部8bの各上端部間を連結する連結桁部8cを有している。
このうち、下部柱部8bの内側面には、係止突部8dが形成されている。係止突部8dは、ガイド部8の内側に挿通された操作レバー7の何れかの側面に当接する。また、係止突部8dは、図3に示すように少ない面積で操作レバー7の側面に点接触されている。
【0022】
図6は、操作レバー7が引かれる前の操作されていない状態を示している。この状態では、回動部材6の凹部6bの一側端面が側面視山型のストッパ15の一斜面に復帰バネ部材16の付勢力で押圧されて回動を停止させている。
操作レバー7が操作されていない状態では、ロック部材5の係止凸部5aは、係止凹溝3dに対して挿入されていて、ロッド3をフューエルリッド方向へ突出しないようにロックしている。
【0023】
また、図7に示すように、操作レバー7が引かれると、復帰バネ部材16の付勢力に抗して、回動部材6が回動する。この状態では、回動部材6の凹部6bの他側端面が側面視山型のストッパ15の他方の一斜面に当接するまで、回動可能である。
本実施形態の回動部材6には、係合突起5dと係合する係合レバー6aが一体に設けられている。
係合レバー6aは、係合突起5dと係合しながら回動部材6の回動とともに回動する。これにより、回動部材6の回動で、ロック部材5は、進退方向に直線的に移動して係止凹溝3dに挿抜される。
【0024】
また、係止凸部5aが係止凹溝3dから抜出されると、スプリング4の付勢力によってロッド3がロッド孔2aから突出する方向に移動する。これにより、ロッド3の先端部3aは、フューエルリッドの裏面側を押圧し、フューエルリッドを開放することができる。
【0025】
さらに、回動部材6には、操作レバー7を係合させるフック部17が一体に形成されている。
フック部17の中心軸17aは、回動軸6cから半径方向に所定の間隔を開けて設定されている。このため、フック部17に係合される操作レバー7の直線的な引張力は、回動軸6cを回動中心として回動部材6を回動させる回転方向の力となる。
【0026】
さらに、フック部17の中心軸17aは、操作レバー7が設けられている本体ケース2の側面に対して直角となるように形成されている。これにより、回動部材6の回動軸6cと、フック部17の中心軸17aとは、それぞれ本体ケース2の側面に対して直角でかつ軸線方向が平行となるように設けられている。
【0027】
図2に示すように、本実施形態の操作レバー7は、回動部材6のフック部17に係合する係合口部7aと、幅広の胴部7bと、脆弱部7cと、操作者が指等を引掛ける環状の操作リング部7dとを有している。
このうち、脆弱部7cは、他の部位である胴部7bと比較して長手方向と直交する方向を幅狭とする細紐状となるように形成されている。そして、本実施形態の脆弱部7cは、胴部7bと比較して長手方向と直交する方向の断面積が小さくなるように設定している。
そして、操作レバー7は、厚さ方向の寸法を略同じとして、幅広の胴部7bの中央付近を細く形成した中括れ形状を呈している。
【0028】
本実施形態の脆弱部7cは、回動部材6を回転させて係止凸部5aを係止凹溝3dから抜出するために必要な張力に対しては十分強い強度を有している。
また、フック部17を係合する係合口部7aや、回動部材6を軸支している回動軸6c等のプッシュリフタ装置1の機器が破損する力よりも少ない力で、脆弱部7cは破断されるように構成されている。
【0029】
すなわち、操作レバー7は、操作リング部7dが無理な力で引かれて、長手方向に張力が加わると、フック部17、フック部17と係合している係合口部7aや、回動部材6を軸支している回動軸6cが破損する前に、脆弱部7cが破断される。したがって、フック部17,係合口部7aおよび回動部材6は、破損しにくい。
このように、車室内からの操作にて無理な力が加わると操作レバー7が引きちぎれて、プッシュリフタ装置1の機構を保護する。したがって、破損した操作レバー7のみを交換すれば、緊急解除機能を容易に復旧させることが可能である。
【0030】
また、図2に示すように、本実施形態の操作レバー7では、胴部7bの一部に段差部7eが形成されている(図3参照)。本実施形態では、操作レバー7が引かれる際、ガイド部8の下部柱部8bに、段差部7eが当接しないように避けて引く操作を行うことにより、図5中矢印aで示すように、操作レバー7の方向がほぼ水平となる。
【0031】
さらに、本実施形態の操作レバー7の段差部7eには、テーパ面7fが設けられている。テーパ面7fは、脆弱部7cから胴部7bに向けて長手方向と直交する幅方向寸法が広がるように徐変させた傾斜面を含む。さらに、本実施形態の段差部7eは、操作レバー7の幅方向両側に中心軸を挟んでほぼ対称となるように傾斜する一対のテーパ面7fを有している。
【0032】
例えば、図1に示すように、ロッド3がロック部材5によってロックされている退避状態(図6参照)では、操作レバー7の操作リング部7dが接続コネクタ11を避けるように下方に位置する。
一方、操作レバー7の反対側の係合口部7aを係止するフック部17は、高い位置にある。しかしながら、図3に示すように、操作リング部7d側の係止突部8dは、手前の細紐状の脆弱部7cとの接続部分で段差部7eを係止する。
【0033】
下部柱部8bの配置位置により、図5中仮想線で示すように、退避状態における操作リング部7dの配置を下げることができる。さらに、この実施形態では、脆弱部7cが細紐状である。このため、さらに操作リング部7dの配置を下げることができる。
したがって、操作リング部7dは、接続コネクタ11の下方に離間して配置される。これにより、操作者は容易に操作リング部7dを摘んで指に掛けて引くことが出来る。
【0034】
そして、図3中矢印b方向に操作リング部7dを引くと、段差部7eが下部柱部8bの内側面に沿って乗上がり、操作リング部7dを持上げる。よって、一旦、操作レバー7は、ほぼ水平になり、操作リング部7dは、車室内側にほぼ水平に引かれる。
【0035】
そして、本実施形態のテーパ面7fは、脆弱部7cから胴部7bに向けて長手方向と直交する幅方向寸法が広がるように徐変させた傾斜面を含む。このため、段差部7eは、円滑に係止突部8dに摺接しながら係止を解除することができる。
図5中実線で示すように段差部7eは、係止突部8dを乗り越え、操作レバー7のほぼ水平方向に向けて引く操作に伴い回動部材6は、回動を開始する。
【0036】
この際、ガイド部8の特に下部柱部8bの内側面は、内側に挿通された操作レバー7の胴部7bの側面を円滑にスライドガイドする。
このため、回動部材6のフック部17の上下方向位置が回転により移動しても、操作レバー7は、ほぼ水平方向への直線的に引くことができる。したがって、室内側のトリムに操作開口部を形成する場合、操作に必要とされる操作開口部の開口面積を拡大させる必要がない。
【0037】
しかも、操作レバー7の力を効果的に回動部材6からロック部材5に伝達することができる。
操作レバー7の移動に伴い、回動部材6は、回動軸6cを中心として回転する。そして、回動部材6と共に回転する係合レバー6aによって、ロック部材5は、押上げられる(図5参照)。
ロッド3は、係止凹溝3dの係止凸部5aが挿入されて係止されているロック状態(図6参照)から、係止凸部5aが抜出されて、ロックが解除される(図7参照)。
図4に示すように、ロッド3は、スプリング4の付勢力によってロッド孔2aから突出する方向へ付勢されている。
このため、ロックの解除により、ロッド3は、ロッド孔2aから突出する方向へ移動して、先端部3aの先端面をフューエルリッドの裏面側に当接させて押圧する。
【0038】
次に、本実施形態のプッシュリフタ装置の作用効果について説明する。
本実施形態のプッシュリフタ装置1は、図4に示すように、フューエルリッドに対して進退可能に設置されたロッド3と、フューエルリッドに向かってロッド3を付勢する付勢手段としてのスプリング4とを備えている。
【0039】
また、図1に示すように、プッシュリフタ装置1は、ロッド3に係合してロッド3の進出をロックするロック部材5と、ロック部材5に連結され、回動することでロッド3とロック部材5との係合を解除する回動部材6と、回動部材6に連結され、回動部材6を回動させる操作レバー7と、操作レバー7に接触して、操作レバー7の操作方向を規制するガイド部8と、を更に備えている。
そして、操作レバー7は、ガイド部8側の側面に段差部7eを有している。
【0040】
かかる構成によれば、初期位置のレイアウト設定の自由度を向上させながら、操作方向を規制することができるプッシュリフタ装置1を提供することができる。
すなわち、ガイド部8によって操作レバー7のガイド部8側の側面の一部が係止されるこれにより、所望の位置に操作レバー7の初期位置を設定できる。
また、段差部7eが当接しないように避けて引く操作を行ったり、あるいは、操作中に段差部7eがガイド部8を乗り越えることによって、操作レバー7の操作方向を車室内方向にほぼ水平に規制できる。たとえば、操作者は、図3中矢印bで示す下方に操作レバー7を引くと、ガイド部8により操作レバー7はガイドされて、図5中矢印aで示すほぼ水平の方向に操作レバー7を引くように促される。
【0041】
さらにレバー操作に用いる室内側の開口部の開口面積を小さく設定することができる。
たとえば、回動部材6に回動させるレバーを直接取付ける場合、レバーが円弧を描き、大きな室内側の開口部を必要とする。このような場合に比べて、本実施形態のプッシュリフタ装置は、開口面積を小さく設定することができる。
そして、ガイド部8によって、所望の方向に操作レバー7を向けて操作方向を変更可能である。
このため、本実施形態のプッシュリフタ装置1は、モータ9が正常に機能しない非通電状態等であっても、操作レバー7を引くだけで、容易にフューエルリッドを開放することができ、使い勝手を良好なものとすることができる。
【0042】
さらに、図1に示すように、回動部材6には、操作レバー7が回動可能に連結されるとともに、回動部材6の回動軸6cと操作レバー7の中心軸17aとが平行に設けられている。
かかる構成よれば、回動部材6に設けられた操作レバー7を係合するフック部17の中心軸17aは、回動部材6の回動軸6c廻りの回動により移動する。フック部17に係合される操作レバー7の直線的な引張力は、回動軸6cを回動中心として回動部材6を回動させる回転方向の力となる。このため、操作レバー7による操作が円滑にロック解除まで伝達される。したがって、さらに使い勝手を良好なものとすることができる。
【0043】
また、図1に示すように、ガイド部8に設けられた係止突部8dは、操作レバー7に接触して、操作レバー7の操作方向を規制する。かかる構成よれば、たとえば、接続コネクタ11を避けた低い位置からほぼ水平に操作レバー7の操作リング部7dを摘んで指にかける操作が行える。このため、さらに使い勝手を良好なものとすることができる。
【0044】
さらに、段差部7eは、テーパ面7fを有している。
かかる構成よれば、係止突部8dは、テーパ面7fの形状に沿って、円滑に段差部を乗り越えることができる。このため、さらに使い勝手を良好なものとすることができる。
【0045】
また、少なくとも操作レバー7の一部には、脆弱部7cが設けられている。
かかる構成によれば、装置が破損する前に、脆弱部7cが破断する。このため、プッシュリフタ装置1の機構を構成する要部が保護される。
【0046】
さらに、脆弱部7cは、長手方向と直交する方向を幅狭とする細紐状である。
かかる構成によれば、脆弱部7cが細紐状の部分から破断しても、破損した操作レバー7のみを交換すれば、プッシュリフタ装置1の緊急解除機能を容易に復旧させることが可能である。
【0047】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について削除し、若しくは他の構成の追加・置換をすることが可能である。上記実施形態に対して可能な変形は、たとえば以下のようなものである。
【0048】
本実施形態では、車両の給油口に設けられるフューエルリッドのプッシュリフタ装置1を用いて説明してきたが特にこれに限らない。たとえば、電動車の充電開口のリッド等、リッドの裏面側から押圧して開放できるリッドであれば、どのようなリッドに適用してもよい。
【0049】
また、本実施形態では、操作レバー7の幅方向両側に中心軸を挟んでほぼ対称となるように傾斜して一対のテーパ面7f,7fが両側に形成されている。しかしながら、特にこれに限らず、係止突部8d側の一方にテーパ面7fが設けられているものであってもよく、テーパ面7fや脆弱部7cの形状、数量および材質が特に限定されるものではない。
【0050】
さらに、本実施形態では、段差部7eにテーパ面7fを設けたものを示して説明してきたが特にこれに限らない。たとえば、テーパ面7fが無くてもよく、スロープや複数段の階段状の斜面等、段差部7eの形状が特に限定されるものではなく、操作レバー7のガイド部8側の側面に形成されるものであればどのようなものであってもよい。
【0051】
また、本実施形態では、ガイド部8に、係止突部8dを形成して操作レバー7の側面に点接触することにより摩擦を減少させているが特にこれに限らない。たとえば、ガイド部8に、テーパ面を形成してもよく、ガイド部8の形状は、操作レバー7に接触して、操作レバー7の操作方向を規制するものであればどのような形状であってもよい。
さらに、テーパ面は、段差部7eまたは、ガイド部8側の側面のうち、少なくとも何れか一方に形成されていればよい。そして、段差部7eにより、操作レバー7の初期の配置が設定できて、図5中矢印aで示すように、操作レバー7を引く操作の方向をほぼ水平とすることが出来れば特にテーパ面を設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0052】
3 ロッド
4 スプリング(付勢手段)
5 ロック部材
6 回動部材
7 操作レバー
7e 段差部
8 ガイド部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7