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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】流路切替装置の弁機構の検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/26 20060101AFI20230720BHJP
【FI】
G01M3/26 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019165369
(22)【出願日】2019-09-11
(65)【公開番号】P2021043064
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】山岸 正樹
(72)【発明者】
【氏名】東 一裕
(72)【発明者】
【氏名】迫 江美
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-217387(JP,A)
【文献】特開昭53-81180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00-3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスを導入するガス室と、前記ガス室から前記燃料ガスを受け入れるガス流路と、前記ガス室と前記ガス流路との間に配置され前記ガス室と前記ガス流路との圧力差に基づき開閉する弁機構と、前記弁機構をバイパスして前記ガス室と前記ガス流路とを接続するバイパス流路と、前記ガス室にダイヤフラムを介して隣接する大気室と、前記ガス室の上流に配置され前記ダイヤフラムの動作に連動して開閉する減圧弁と、を備える流路切替装置の弁機構の検査方法であって、
前記弁機構が閉じている条件下で、前記ダイヤフラムを前記ガス室に向けて変位させることで前記減圧弁を開いて前記ガス室に前記燃料ガスを補充することにより前記ガス室の圧力を上昇させてから計測した前記弁機構の上流側と下流側との計測時圧力差に基づいて、前記弁機構が正常であるか否かを判断する、ことを特徴とする流路切替装置の弁機構の検査方法。
【請求項2】
前記計測時圧力差が所定圧力差以上の場合には前記弁機構が正常であると判断し、前記計測時圧力差が所定圧力差未満の場合には前記弁機構が異常であると判断する、ことを特徴とする請求項1に記載の流路切替装置の弁機構の検査方法。
【請求項3】
前記バイパス流路は、開閉可能なバイパス流路弁を備え、
前記バイパス流路弁は、前記ダイヤフラムが前記ガス室へと変位させられる前に閉じられる、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の流路切替装置の弁機構の検査方法。
【請求項4】
前記ダイヤフラムを前記ガス室へと変位させるにあたって、前記大気室に空気を吸気させて前記大気室の圧力を大気圧よりも高い圧力に設定することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の流路切替装置の弁機構の検査方法。
【請求項5】
前記大気室に空気を吸気させるにあたって、前記大気室に形成された吸気口から空気を吸気させることを特徴とする請求項4に記載の流路切替装置の弁機構の検査方法。
【請求項6】
前記ダイヤフラムを前記ガス室へと変位させるにあたって、前記ダイヤフラムを前記ガス室へと変位させるために前記流路切替装置に設けられた変位機構を操作することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の流路切替装置の弁機構の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流路切替装置の弁機構の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圧力調整器により減圧された燃料ガスを下流側に導くメイン流路と、メイン流路上に設けられて燃料ガスの流量が設定流量未満であるときに弁閉状態となり、設定流量以上であるときに弁開状態となる弁機構と、弁機構の上流側から下流側までをバイパスするバイパス流路と、を備える装置が開示されている。また、この装置は、弁機構が弁閉状態のときに、燃料ガスがバイパス流路を流れ、弁機構が弁開状態のときに、燃料ガスがメイン流路及びバイパス流路を流れるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-200238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのような装置の維持管理の点検時に、装置内の燃料ガスを抜くと共に、二連球等で弁機構上流側を加圧し、弁機構の上流と下流の空気の圧力差を測定することにより弁機構の性能を検査することが考えられる。
【0005】
しかしながら、前述の検査方法では、検査前には燃料ガスを抜いて空気に置換し、検査後には空気を抜いて燃料ガスに置換する必要がある。
【0006】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、弁機構の検査前後に弁機構の上流及び下流の気体を別の気体に置換することなく弁機構の性能を検査することができる流路切替装置の弁機構の検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る流路切替装置の弁機構の検査方法は、燃料ガスを導入するガス室と、ガス室から燃料ガスを受け入れるガス流路と、ガス室とガス流路との間に配置されガス室とガス流路との間の圧力差に基づき開閉する弁機構と、弁機構をバイパスしてガス室とガス流路とを接続するバイパス流路と、ガス室にダイヤフラムを介して隣接する大気室と、ガス室の上流に配置されダイヤフラムの動作に連動して開閉する減圧弁と、を備える流路切替装置の弁機構の検査方法であって、弁機構が閉じている条件下で、ダイヤフラムをガス室に向けて変位させることで減圧弁を開いてガス室に燃料ガスを補充することによりガス室の圧力を上昇させて計測した弁機構の上流側と下流側との計測時圧力差に基づいて、弁機構が正常であるか否かを判断する、ことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る流路切替装置の弁機構の検査方法によれば、弁機構が閉じて燃料ガスがガス室からガス流路に流れない状態のときに、ガス室は上流から燃料ガスを導入し、ガス室の内部の圧力が上昇する。従って、弁機構の上流にあるガス室の燃料ガスと弁機構の下流にあるガス流路の燃料ガスとの計測時圧力差に基づいて、弁機構の性能が正常であるか否かを、検査することができる。その結果、弁機構の検査前後に弁機構の上流及び下流の気体を別の気体に置換することなく弁機構の性能を検査することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、弁機構の検査前後に弁機構の上流及び下流の気体を別の気体に置換することなく弁機構の性能を検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る漏洩検知システムの弁機構の検査方法を用いる漏洩検知システムの正面図である。
図2】漏洩検知システムを正面から見た断面図である。
図3図2の漏洩検知システムを矢印X方向から見た断面図である。
図4】開いた状態の減圧弁機構の構成を示す拡大断面図である。
図5】閉じた状態の減圧弁機構の構成を示す拡大断面図である。
図6】開いた状態の弁機構の構成を示す拡大断面図である。
図7】閉じた状態の弁機構の構成を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る漏洩検知システム1の弁機構80(図2参照)の検査方法を用いる漏洩検知システム1の正面図である。図2は、漏洩検知システム1を正面から見た断面図である。図1に示すように、漏洩検知システム1(流路切替装置)は、一次調整器10と、二次調整器20と、配管30(ガス流路)と、漏洩検知装置40と、バイパス弁機構50と、を備える。
【0013】
[一次調整器]
一次調整器10は、いわゆる切替機能付きの元調整器であって、左右に接続されるLPガスボンベ(図示せず)のうち、どちらから燃料ガスを導入するかを選択するための操作部となる切替レバー11を正面側に備えている。また、一次調整器10は、内部にダイヤフラム12(図3参照)等を備えており、ダイヤフラム12の動作に応じて内部の弁体を開閉動作させることによって高圧の燃料ガスを中圧とする一次減圧を行う構成となっている。一次減圧された燃料ガスは、二次調整器20に供給される。
【0014】
[二次調整器]
二次調整器20は、一次減圧された中圧の燃料ガスを低圧とする二次減圧を行うものである。二次調整器20は、一次調整器10と同様に、ガス室Gに面してダイヤフラム21(図2参照)等を備えており、ダイヤフラム21の動作に応じて内部の減圧弁62を開閉動作させることによって二次減圧を行う。二次減圧された燃料ガスは、更に下流側に供給される。なお、二次調整器20では、ガス室Gがメイン流路を構成している。
【0015】
二次調整器20は、燃料ガスの流量が設定流量未満である場合に、燃料ガスを漏洩検知装置40側に導入させる。また、二次調整器20は、燃料ガスの流量が設定流量以上である場合に、燃料ガスの一部を漏洩検知装置40側に導入させると共に、残りの燃料ガスを配管30に導入させる。
【0016】
図3は、図2の漏洩検知システム1を矢印X方向から見た断面図である。この図3を参照しつつ、二次調整器20について更に詳述する。二次調整器20は、筐体20Aと、ダイヤフラム21と、コイルスプリング22(付勢部材)と、軸部材23と、レバー24と、減圧弁機構60と、第1孔部29aと、第2孔部29bと、を備えている。
【0017】
[筐体]
筐体20Aは、蓋部20A1と、筐体本体20A2と、を有する。蓋部20A1は、コイルスプリング22のバネ圧力を調整するために筐体20Aを開き、調整が終わったら筐体20Aを閉じるために設けられている。筐体20Aは、筐体本体20A2で囲まれる領域に、蓋部20A1側から順に大気室Aとガス室Gとを有する。
【0018】
大気室Aは、内部に大気が入る部屋であり、外部と連通することにより内部が大気圧になっている。大気室Aは、ガス室Gにダイヤフラム21を介して隣接する。大気室Aは、空気を吸気させるための吸気口A1を有する。大気室Aには、ユーザが二連球等を用いることによって吸気口A1から空気が吸気される。
【0019】
ガス室Gは、後述する減圧弁62を介して上流の一次調整器10から燃料ガスを一時的に導入する部屋である。また、ガス室Gは、後述する弁機構80を介して下流の配管30に燃料ガスを流動させる。このことから、ガス室Gは、減圧弁62と弁機構80との間に配置されている。ガス室Gは、検査孔201と検査孔202とを有する。
【0020】
検査孔201(図2参照)は、筐体本体20A2のメイン流路28における弁機構80の上流の位置に形成されている。検査孔201は、弁機構80の近傍に配置されている。そして、メイン流路28における弁機構80よりも上流の圧力は、例えば、この検査孔201に圧力センサ(不図示)が挿入されて計測される。
検査孔202(図2参照)は、筐体本体20A2のメイン流路28における弁機構80の下流の位置に形成されている。検査孔201は、弁機構80の近傍に配置されている。そして、メイン流路28における弁機構80よりも下流の圧力は、例えば、この検査孔202に圧力センサ(不図示)が挿入されて計測される。
【0021】
[ダイヤフラム]
ダイヤフラム21は、周縁が筐体20Aに固定された略円形の薄膜であって、ガス室Gと大気室Aとを気密に隔てるものである。ダイヤフラム21は、ガス室Gのガス圧力が下がるとコイルスプリング22の付勢力によってガス室Gの方へと移動し、ガス室Gのガス圧力が上がるとコイルスプリング22の付勢力に抗して大気室Aの方へと移動する。
【0022】
[コイルスプリング]
コイルスプリング22は、ダイヤフラム21を大気室A側からガス室G側へと付勢する部材である。コイルスプリング22の一端部は、ダイヤフラム21に取り付けられている。コイルスプリング22と大気がダイヤフラム21をガス室Gへと付勢する力は、ガス室Gの燃料ガスがダイヤフラム21を大気室Aへと押圧する押圧力と釣り合っている。
【0023】
[軸部材]
軸部材23は、ダイヤフラム21の中心を軸方向に貫通して設けられる部材である。また、軸部材23のガス室G側の先端には、レバー24の基端側が取り付けられている。
【0024】
[レバー]
レバー24は、略L字形状となる部材であり、軸部材23側から一次調整器10側へと延びる部材である。レバー24は、L字の屈曲部分近傍にピン25によって回動可能に筐体20Aに支持されている。
【0025】
[減圧弁機構]
減圧弁機構60は、弁棒61と、減圧弁62(弁体)と、被覆部材63と、弁座64と、を備える。減圧弁機構60は、一次調整器10からの燃料ガスを二次調整器20に導入可能であると共に遮断可能である弁である。弁棒61は、一次調整器10と二次調整器20との間で挿通される部材である。弁棒61の基端部は、レバー24の先端部と接続されている。従って、弁棒61は、レバー24の動作に応じて動作する。減圧弁62は、弁棒61の先端に接続されている。減圧弁62は、ガス室Gの上流に配置されている。減圧弁62は、ダイヤフラム21及びレバー24の動作に連動して開閉する。被覆部材63は、弁棒61及び減圧弁62を覆う部材である。弁座64は、被覆部材63の内側に突出しつつ開口し、減圧弁62に接触されて押し付けられる部位である。
【0026】
減圧弁62が弁座64に接触されて押し付けられると弁閉状態となり、一次調整器10と二次調整器20のガス室Gとの間では、燃料ガスの直接的な流動が遮断される。また、減圧弁62が弁座64から離間すると弁開状体となり、一次調整器10と二次調整器20のガス室Gとの間では、燃料ガスが直接的に流動する。
【0027】
[第1孔部]
第1孔部29aは、メイン流路28のうち、減圧弁機構60の弁座64と弁機構80の弁座82との間に形成されている。第1孔部29aは、図2に示した導入口41aに接続されている。なお、弁座82は、筐体本体20A2に形成されたメイン流路28内に取り付けられて、弁軸ガイド84を支持し、弁閉するときの弁体81の位置を位置決めする部材である。
【0028】
[第2孔部]
第2孔部29bは、メイン流路28のうち弁機構80の弁座82の下流側に形成されている。第2孔部29bは、図2に示した排出口51bに接続されている。
【0029】
ここで、前述した二次調整器20の作用を以下に説明する。二次調整器20は、図3に示すように、ダイヤフラム21が所定位置にあるときに、減圧弁62を弁座64に接触させて押し付けて弁閉状態とし、燃料ガスの導入を遮断している。このような状態から燃料ガスが使用されると、ガス室Gの圧力が低下する。ガス室Gの圧力が低下すると、コイルスプリング22の付勢力によってダイヤフラム21がガス室G側に変位する。このとき、軸部材23もガス室G側に変位し、軸部材23の先端に取り付けられたレバー24はピン25を中心として矢印L1方向に回動する(図4参照)。この回動によって、減圧弁62は開く方向に変位する(図4参照)。以上により、減圧弁62は弁座64から離れて弁開状態となり、燃料ガスがガス室Gに導入される。
【0030】
その後、ガス室Gに燃料ガスが導入されると、ガス室Gの圧力が上昇する。これにより、ダイヤフラム21は、コイルスプリング22の付勢力に抗して大気室Aに向かって変位する(図3参照)。このとき、軸部材23も大気室Aに向かって変位し、レバー24はピン25を中心として前述とは逆方向である矢印L2方向に回動する(図5参照)。この回動によって、減圧弁62は閉じる方向に変位する(図5参照)。以上により、減圧弁62は弁座64に接触されて押し付けられて燃料ガスの導入を遮断する。これによって、減圧弁62が閉じられる。以後、二次調整器20は、上記の動作を繰り返しながら、燃料ガスを減圧する。
【0031】
[配管]
配管30は、ガス室Gの下流に配置され、ガス室Gから燃料ガスを受け入れる流路である。
【0032】
[弁機構]
図6は、開いた状態の弁機構80の構成を示す拡大断面図である。図7は、閉じた状態の弁機構80の構成を示す拡大断面図である。弁機構80は、ガス室Gと配管30との間に配置され、ガス室Gと配管30との間の圧力差に基づき開閉する機構である。また、弁機構80は、この開閉機能によって、以下の動作も行っていると言える。
【0033】
弁機構80は、ガス室Gと配管30との間が所定圧力差以上の場合に開いて、燃料ガスを、直接的にガス室Gから配管30へと流し、同時に上流側バイパス流路41及び下流側バイパス流路51を経由してガス室Gから配管30へと流すように動作する。この場合には、燃料ガスのルートは、直接的に流すルートと、上流側バイパス流路41及び下流側バイパス流路51を経由するルートの2方向ルートとなる。
弁機構80は、ガス室Gと配管30との間が所定圧力差未満の場合に閉じて、燃料ガスを、直接的にガス室Gから配管30へと流させず、上流側バイパス流路41及び下流側バイパス流路51を経由してガス室Gから配管30へと流すように動作する。この場合には、燃料ガスのルートは、上流側バイパス流路41及び下流側バイパス流路51を経由する1方向ルートになる。
弁機構80は、前述したように、燃料ガスのルートを、前述の2方向ルート及び前述の1方向ルートのいずれかに切り替える。
【0034】
なお、理論的には、ガス室Gと配管30との間の所定圧力差は、弁機構80に上流側からかかる燃料ガスの圧力から、弁機構80に下流側からかかる燃料ガスの圧力及びコイルバネ85のバネ圧力を、差し引いたものと言える。このことから、ガス室Gと配管30との間の所定圧力差以上とは、「ガス室Gと配管30との間の実際の圧力差+コイルバネ85のバネ圧力」以上のことであるとも言え、反対に、ガス室Gと配管30との間の所定圧力差未満とは、「ガス室Gと配管30との間の実際の圧力差+コイルバネ85のバネ圧力」未満のことであるとも言える。従って、弁機構80の開閉は、ガス室Gと配管30との間が所定圧力差以上であるか所定圧力差未満であるかにより行われると言っても良いと考えられる。
図6及び図7に示すように、弁機構80は、弁体81と、弁座82と、弁軸83と、弁軸ガイド84と、コイルバネ85と、を備えている。
【0035】
弁体81は、弁座82に対して接触離間可能なものである。弁体81は、図6のように下方へ移動するときに弁座82から離間状態となり、燃料ガスを点線矢印のように通過させる。弁体81は、図7のように上方へ移動するときに弁座82に対して接触状態となり、燃料ガスの通過を妨げる。ここで、弁体81は、上面に弁座82と接触する第1接触部81aを有する。第1接触部81aは平面となっている。
【0036】
弁座82は、弁体81が接触する部位である。弁座82に対して弁体81が接触状態となることでメイン流路28(図3参照)は遮断状態となる。この弁座82は、筐体本体20A2のメイン流路28に取り付けられ、ゴム等の弾性体によって形成されている。弁座82は、下面に弁体81と接触する第2接触部82aを有する。第2接触部82aは、下方に向かって突出するシール突起部82Rを有する。第2接触部82aは、シール突起部82Rの部分以外が平面で形成されている。シール突起部82Rは、弁座82の一部であるからゴム等の弾性体によって形成されている。シール突起部82Rは、弁体81の第1接触部81aがシール突起部82Rに接触して潰すように変形させることにより、シール性を向上させるものである。
【0037】
弁軸83は、弁体81から上方に延びる棒状部材である。
弁軸ガイド84は、弁軸83を包囲し、弁軸83が摺動するのをガイドするものである。この弁軸ガイド84は、弁体81よりも上方の弁軸83を支持箇所Kにおいて支持するものである。しかも、支持箇所Kは図6及び図7に示されるように1箇所のみとなっている。なお、支持箇所Kは複数箇所であっても良い。
【0038】
コイルバネ85は、弁軸83の周囲に設けられ、弁体81を弁座82側に付勢するものである。このコイルバネ85は、可能な限りバネ荷重が小さいものが好ましい。
【0039】
[漏洩検知装置]
漏洩検知装置40は、二次調整器20と並列的に設けられるものであって、微少漏洩を検出するためのものである。漏洩検知装置40は、図2に示されるように、上流側バイパス流路41と、漏洩検知センサ32と、を有する。
【0040】
[上流側バイパス流路]
上流側バイパス流路41は、図2に示されるように、ガス室Gと下流側バイパス流路51との間を連結する流路である。上流側バイパス流路41は、導入口41aと、排出口41bと、を有し、導入口41aから排出口41bまでの流路を形成する。導入口41aは、二次調整器20のガス室Gから燃料ガスを導入する。排出口41bは、導入した燃料ガスを下流側バイパス流路51へと排出する。
【0041】
[漏洩検知センサ]
漏洩検知センサ32は、図2に示されるように、上流側バイパス流路41に対向するように配置され、例えば超音波式流量検知ユニットによって構成され、多層ユニット(図示せず)内に超音波信号を送信して受信するための2つの超音波送受信器と、2つの超音波送受信器にて送受信された超音波信号の伝搬時間から流量を計測するための計測基板と、を備えている。
【0042】
ここで、二次調整器20よりも下流側において小さな配管亀裂等が発生した場合、微少な漏洩が発生する。微少漏洩時には弁機構80を弁開状態とする圧力差を発生させないことから、燃料ガスは漏洩検知装置40の上流側バイパス流路41を通じて流れることとなる。漏洩検知センサ32は、このような微少流量を検知することとなる。
【0043】
[バイパス弁機構]
バイパス弁機構50は、下流側バイパス流路51と、バイパス流路弁52と、を有する。
【0044】
[下流側バイパス流路]
下流側バイパス流路51は、図2に示されるように、上流側バイパス流路41と配管30との間を連結する流路である。下流側バイパス流路51は、導入口51aと、排出口51bと、を有し、導入口51aから排出口51bまでの流路を形成する。導入口51aは、上流側バイパス流路41から燃料ガスを導入する。排出口51bは、導入した燃料ガスを配管30へと排出する。
前述した上流側バイパス流路41及び下流側バイパス流路51は、全体として、弁機構80をバイパスしてガス室Gと配管30とを接続する。
【0045】
[バイパス流路弁]
バイパス流路弁52は、下流側バイパス流路51を開閉可能な弁機構である。なお、この意味では、バイパス流路弁52は、上流側バイパス流路41及び下流側バイパス流路51の全体としてのバイパス流路を開閉可能な弁機構であるとも言える。
【0046】
次に、本実施形態に係る漏洩検知システム1の弁機構80の検査方法を説明する。需要者側において燃料ガスの使用がない場合、減圧弁62が閉じている。
【0047】
この状態において、検査者は、バイパス流路弁52(図1図2参照)を閉じる。それから、検査者は、二連球等によって吸気口A1(図3参照)から空気を大気室Aに吸気させて、大気室Aの圧力を大気圧よりも高い圧力に設定する。言いかえれば、大気室Aの大気圧をPair、大気室Aに吸気させた空気の圧力をPα、ダイヤフラム21の面積をS、コイルスプリング22の付勢力をW、ガス室Gの圧力をPgasとした場合に、(Pair+Pα)・S+W>Pgas・Sの関係式が成り立つように、大気室Aに空気を吸気させる。
【0048】
これにより、ダイヤフラム21がガス室Gに向けて変位し、この変位に応じて動作するレバー24によって減圧弁62が開く。減圧弁62が開くと、ガス室Gに燃料ガスが導入されてガス室Gの圧力が上昇する。このために、ダイヤフラム21が大気室Aへと変位し、この変位に応じて動作するレバー24によって減圧弁62が閉じる。
【0049】
検査者は、ガス室Gの圧力(弁機構80の上流側の圧力)を圧力センサ(不図示)によって検知し、配管30の圧力(弁機構80の下流側の圧力)を圧力センサ(不図示)によって検知し、ガス室Gと配管30との間の計測時圧力差を測定する。検査者は、ガス室G(弁機構80の上流側の部屋)と配管30(弁機構80の下流側の部屋)との計測時圧力差に基づいて弁機構80が正常であるか否かを判断する。例えば、検査者は、計測時圧力差が所定圧力差以上の場合には、弁機構80が正常であると判断する。また、検査者は、計測時圧力差が所定圧力差未満の場合には、弁機構80が異常であると判断する。
【0050】
このようにして、本実施形態に係る漏洩検知システム1によれば、燃料ガスを導入するガス室Gと、ガス室Gから燃料ガスを受け入れる配管30と、ガス室Gと配管30との間に配置されガス室Gと配管30との圧力差に基づき開閉する弁機構80と、弁機構80をバイパスしてガス室Gと配管30とを接続する上流側バイパス流路41及び下流側バイパス流路51と、ガス室Gにダイヤフラム21を介して隣接する大気室Aと、ガス室Gの上流に配置されダイヤフラム21の動作に連動して開閉する減圧弁62と、を備える。
このような漏洩検知システム1の弁機構80の検査方法において、弁機構80が閉じている条件下で、ダイヤフラム21をガス室Gに向けて変位させることで減圧弁62を開いてガス室Gに燃料ガスを補充することによりガス室Gの圧力を上昇させて計測した弁機構80の上流側と下流側との計測時圧力差に基づいて、弁機構80が正常であるか否かを判断する。
【0051】
この方法によれば、弁機構80が閉じて燃料ガスがガス室Gから配管30に流れない状態のときに、ガス室Gは上流から燃料ガスを導入し、ガス室Gの内部の圧力が上昇する。従って、弁機構80の上流側にあるガス室Gの燃料ガスと弁機構80の下流側にある配管30の燃料ガスとの計測時圧力差に基づいて、弁機構80の性能が正常であるか否かを、検査することができる。その結果、弁機構80の検査前後に弁機構80の上流及び下流の気体を別の気体に置換することなく弁機構の性能を検査することができる。
【0052】
また、計測時圧力差が所定圧力差以上の場合には弁機構80が正常であると判断し、計測時圧力差が所定圧力差未満の場合には弁機構80が異常であると判断する。そのために、計測時圧力差が所定圧力差以上の場合には、ガス室Gと配管30との間に隙間が無いように弁機構80が確実に閉じている可能性が高いために、弁機構80の機能が正常であることが判断できる。また、計測時圧力差が所定圧力差未満の場合には、ガス室Gと配管30との間に隙間があって弁機構80が確実に閉じていない可能性があるために、弁機構80の機能が異常であることが判断できる。
【0053】
また、下流側バイパス流路51は、下流に対して開閉可能なバイパス流路弁52を備え、バイパス流路弁52は、ダイヤフラム21がガス室Gへと変位させられる前に閉じられる。そのために、ガス室Gの圧力に変化が無い状態にして正確に弁機構80の性能が検査できる。
【0054】
また、ダイヤフラム21をガス室Gへと変位させるにあたって、大気室Aに空気を吸気させて大気室Aの圧力を大気圧よりも高い圧力に設定する。そのために、検査者は、ガス室Gの燃料ガスを抜いて空気に入れ替えることなくガス室Gの圧力を容易に上げることができる。
【0055】
また、大気室Aに空気を吸気させるにあたって、大気室Aに形成された吸気口A1から空気を吸気させる。そのために、ダイヤフラム21に対して容易にガス室Gに向かう圧力を付与することができる。
【0056】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、可能な範囲で適宜他の技術を組み合わせてもよい。
【0057】
[変形例1]
例えば本実施形態に係る方法が適用される漏洩検知システム1は、ダイヤフラム21をガス室Gへと変位させるにあたって、大気室Aに空気が吸気可能な吸気機構が設けられているが、これに限らず、空気を吸気しないで直接的にダイヤフラム21をガス室Gへと変位させるために変位機構が設けられてもよい。例えば、筐体20Aを弾性部材で形成し、検査者が弾性部材である筐体20Aをガス室G側に押圧することによりダイヤフラム21をガス室G側に変位させる変位機構が適用されていてもよい。この場合に、検査者は、そのような変位機構を操作することにより、ダイヤフラム21を変位させて減圧弁62を操作して、弁機構80を検査する。
【0058】
あるいは、筐体20Aにダイヤフラム21を変位させるための道具を挿入可能な道具挿入孔が形成された構成であってもよい。この場合に、検査者は、そのダイヤフラム変位用の道具を道具挿入孔に挿入してダイヤフラム21を変位させて減圧弁62を操作して、弁機構80を検査する。
【0059】
[変形例2]
また、本実施形態では、漏洩検知システム1は、2段階減圧の構成であったが、これに限らず、1段階減圧の構成であっても良い。
【0060】
[変形例3]
また、本実施形態では、筐体20Aは、蓋部20A1と、筐体本体20A2と、を有する構成であったが、これに限らず、蓋部20A1と筐体本体20A2とが一体化されていて蓋部20A1が取り外し不可の構成であっても良い。
【0061】
[変形例4]
また、本実施形態では、二次調整器20は内弁式であるが、これに限らず、外弁式であっても良い。
【符号の説明】
【0062】
1 :漏洩検知システム(流路切替装置)
10 :一次調整器
11 :切替レバー
20 :二次調整器
20A :筐体
20A1 :蓋部
20A2 :筐体本体
21 :ダイヤフラム
22 :コイルスプリング(付勢部材)
23 :軸部材
24 :レバー
25 :ピン
28 :メイン流路
29a :第1孔部
29b :第2孔部
30 :配管(ガス流路)
32 :漏洩検知センサ
40 :漏洩検知装置
41 :上流側バイパス流路(バイパス流路)
41a :導入口
41b :排出口
45 :弁座
50 :バイパス弁機構
51 :下流側バイパス流路(バイパス流路)
51a :導入口
51b :排出口
52 :バイパス流路弁
60 :減圧弁機構
61 :弁棒
62 :減圧弁
63 :被覆部材
64 :弁座
80 :弁機構
81 :弁体
81a :第1接触部
82 :弁座
82a :第2接触部
82R :シール突起部
83 :弁軸
84 :弁軸ガイド
85 :コイルバネ
201 :検査孔
202 :検査孔
A :大気室
A1 :吸気口
G :ガス室
Pgas :圧力
K :支持箇所
X :矢印
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7