(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】仮設足場用すき間塞ぎ部材
(51)【国際特許分類】
E04G 5/00 20060101AFI20230720BHJP
【FI】
E04G5/00 301A
(21)【出願番号】P 2019174111
(22)【出願日】2019-09-25
【審査請求日】2022-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】592123923
【氏名又は名称】株式会社タカミヤ
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100095212
【氏名又は名称】安藤 武
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼宮 一雅
(72)【発明者】
【氏名】星野 克之
(72)【発明者】
【氏名】磯部 凌吾
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-032687(JP,A)
【文献】特開2010-216194(JP,A)
【文献】特開2006-241852(JP,A)
【文献】特開2014-040746(JP,A)
【文献】登録実用新案第3215818(JP,U)
【文献】特開2002-089032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 5/00
E04G 7/28
E04G 7/34
E04G 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が乗るための作業足場板と、長さ方向がこの作業足場板の長さ方向となっていて、前記作業足場板に沿って配設される幅木とを含んで構築される仮設足場に、前記作業足場板と前記幅木との間のすき間を塞ぐために配置される仮設足場用すき間塞ぎ部材において、
前記すき間と、前記作業足場板の少なくとも一部とを覆うための覆い部を有し、この覆い部についての前記作業足場板の前記長さ方向の長さ寸法が、前記仮設足場の横架部材に係止するために前記作業足場板の前記長さ方向の両端に設けられているフック部材を露出させる寸法となって
おり、
前記覆い部は、前記幅木側から前記作業足場板側に向かって下り傾斜しており、
前記下り傾斜は、前記幅木側の第1下り傾斜部と、前記作業足場板側の第2下り傾斜部とを含む複数の下り傾斜部による下り傾斜となっており、前記第1下り傾斜部の傾斜角度は、前記第2下り傾斜部の傾斜角度よりも大きくなっているとともに、この第2下り傾斜部は、前記作業者が乗る部分となっていることを特徴とする仮設足場用すき間塞ぎ部材。
【請求項2】
請求項1に記載の仮設足場用すき間塞ぎ部材において、前記第2下り傾斜部についての前記作業足場板の前記長さ方向と直交する幅方向の寸法は、前記第1下り傾斜部についての前記作業足場板の前記長さ方向と直交する幅方向の寸法よりも大きくなっていることを特徴とする仮設足場用すき間塞ぎ部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の仮設足場用すき間塞ぎ部材において、前記第2下り傾斜部の上面には、滑り止め部が形成されていることを特徴とする仮設足場用すき間塞ぎ部材。
【請求項4】
請求項3に記載の仮設足場用すき間塞ぎ部材において、前記滑り止め部は、前記作業足場板の前記長さ方向に延びるそれぞれ複数個の凹条部と凸条部が、前記作業足場板の前記長さ方向と直交する幅方向に並設されることにより形成されたものとなっていることを特徴とする仮設足場用すき間塞ぎ部材。
【請求項5】
請求項4に記載の仮設足場用すき間塞ぎ部材において、前記凹条部と前記凸条部は、前記覆い部についての前記作業足場板の前記長さ方向の全長に渡って連続したものとなっていることを特徴とする仮設足場用すき間塞ぎ部材。
【請求項6】
作業者が乗るための作業足場板と、長さ方向がこの作業足場板の長さ方向となっていて、前記作業足場板に沿って配設される幅木とを含んで構築される仮設足場に、前記作業足場板と前記幅木との間のすき間を塞ぐために配置される仮設足場用すき間塞ぎ部材において、
前記すき間と、前記作業足場板の少なくとも一部とを覆うための覆い部を有し、この覆い部についての前記作業足場板の前記長さ方向の長さ寸法が、前記仮設足場の横架部材に係止するために前記作業足場板の前記長さ方向の両端に設けられているフック部材を露出させる寸法となっており、
前記作業足場板の前記長さ方向と直交する方向となっている前記幅木の厚さ方向のうち、前記作業足場板側の内側において、前記幅木と重ね合わせられる幅木重ね部を有し、この幅木重ね部の下端部から前記覆い部が前記作業足場板側へ延出しており、
前記幅木には、この幅木の前記厚さ方向に凹凸となっている凸部と凹部が設けられ、前記幅木重ね部には、これらの凸部と凹部に対応する凸部と凹部が設けられていることを特徴とする仮設足場用すき間塞ぎ部材。
【請求項7】
請求項6に記載の仮設足場用すき間塞ぎ部材において、前記幅木重ね部は、前記幅木の厚さ方向に前記幅木と重ね合わされた状態で、支柱に取り付けられた固定具により固定されていることを特徴とする仮設足場用すき間塞ぎ部材。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の仮設足場用すき間塞ぎ部材において、前記作業足場板は、本体と、この本体から前記作業足場板の長さ方向に突出した状態で設けられている前記フック部材とを有し、前記覆い部についての前記作業足場板の前記長さ方向の前記長さ寸法が、前記本体の長さ寸法と同じ又は略同じになっていることを特徴とする仮設足場用すき間塞ぎ部材。
【請求項9】
請求項1~7のいずれかに記載の仮設足場用すき間塞ぎ部材において、前記作業足場板は、本体と、この本体から前記作業足場板の長さ方向に突出した状態で設けられている前記フック部材とを有し、このフック部材は、前記本体に結合状態となっている基部と、この基部における前記作業足場板の長さ方向外側に設けられ、前記横架部材に係止されるフック部とからなり、前記基部の上面の高さ位置が前記本体の上面の高さ位置と同じ又はこの高さ位置もよりも低くなっていて、前記フック部の上端の高さ位置が前記本体の上面の高さ位置よりも高くなっており、前記覆い部についての前記作業足場板の前記長さ方向の前記長さ寸法が、前記本体の長さ寸法と前記基部の長さ寸法との合計値と同じ又は略同じになっていることを特徴とする仮設足場用すき間塞ぎ部材。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の仮設足場用すき間塞ぎ部材において、前記覆い部における前記作業足場板側の端部は、上下寸法が大きい厚肉部となっていることを特徴とする仮設足場用すき間塞ぎ部材。
【請求項11】
請求項10に記載の仮設足場用すき間塞ぎ部材において、前記覆い部における前記作業足場板側の前記端部の下面は、水平面となっていることを特徴とする仮設足場用すき間塞ぎ部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築作業現場や土木作業現場等の作業現場で構築される仮設足場に用いられるすき間塞ぎ部材に係り、仮設足場の構成要素となっている作業足場板と幅木との間のすき間を塞ぐために用いられる仮設足場用隙間塞ぎ部材に関する。
【背景技術】
【0002】
建築作業現場や土木作業現場等の作業現場で構築される仮設足場には、作業者が乗るための作業足場板と、この作業足場板の上面から工具等の物体が落下することを防止するために、作業足場に沿って配設される幅木とが構成要素になって構築されるものがあり、下記の特許文献1には、作業足場板と、この作業足場板に沿って配設される幅木との間のすき間を塞ぐために配置されるすき間塞ぎ部材が示されており、このすき間塞ぎ部材は、長さ方向が作業足場板の長さ方向となっている幅木の下端部に回動可能に連結されることにより、幅木に対して開閉可能となった部材になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業足場板の長さ方向の両端には、仮設足場の横架部材に係止されるフック部材が設けられており、このフック部材の形状や、高さ寸法、配置位置は、作業足場板の製造会社で異なり、また、同じ製造会社でもこれらが相違する作業足場が製造される場合があるため、フック部材の形状や、高さ寸法、配置位置の相違に影響されることなく、幅木と作業足場板との間のすき間を塞ぐことができるようになる仮設足場用すき間塞ぎ部材が求められる。
【0005】
本発明の目的は、幅木と作業足場板との間のすき間を塞ぐことを、作業足場板のフック部材の形状や、高さ寸法、配置位置の相違に影響されることなく行えるようになる仮設足場用すき間塞ぎ部材を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る仮設足場用すき間塞ぎ部材は、作業者が乗るための作業足場板と、長さ方向がこの作業足場板の長さ方向となっていて、前記作業足場板に沿って配設される幅木とを含んで構築される仮設足場に、前記作業足場板と前記幅木との間のすき間を塞ぐために配置される仮設足場用すき間塞ぎ部材において、前記すき間と、前記作業足場板の少なくとも一部とを覆うための覆い部を有し、この覆い部についての前記作業足場板の前記長さ方向の長さ寸法が、前記仮設足場の横架部材に係止するために前記作業足場板の前記長さ方向の両端に設けられているフック部材を露出させる寸法となっていることを特徴とするものである。
【0007】
このように本発明に係る仮設足場用すき間塞ぎ部材は、作業足場板と幅木との間のすき間と、作業足場板の少なくとも一部とを覆うための覆い部を有するものとなっており、この覆い部についての作業足場板の長さ方向の長さ寸法が、仮設足場の横架部材に係止するために作業足場板の長さ方向の両端に設けられているフック部材を露出させる寸法となっているため、覆い部により、作業足場板と幅木との間のすき間と、作業足場板の少なくとも一部とを覆っても、覆い部がフック部材と干渉することはなく、このため、作業足場板のフック部材の形状や、高さ寸法、配置位置の相違に影響されることなく、幅木と作業足場板との間のすき間をすき間塞ぎ部材により有効に塞ぐことができ、これにより、フック部材の形状や、高さ寸法、配置位置が異なる各種の作業足場板を仮設足場に用いることができるようになる。
【0008】
なお、以上の本発明に係る仮設足場用すき間塞ぎ部材において、覆い部についての作業足場板の長さ方向の前記長さ寸法は、上述したようにフック部材を露出させることができる寸法であれば、任意の寸法でよく、このため、作業足場板が、本体と、この本体から作業足場板の長さ方向に突出した状態で設けられているフック部材とを有するものとなっている場合には、覆い部についての作業足場板の長さ方向の前記長さ寸法を、本体の長さ寸法と同じ又は略同じにしてもよい。
【0009】
また、作業足場板が、本体と、この本体から作業足場板の長さ方向に突出した状態で設けられているフック部材とを有するものとなっている場合であって、このフック部材が、本体に結合状態となっている基部と、この基部における作業足場板の長さ方向外側に設けられ、前記横架部材に係止されるフック部とからなり、基部の上面の高さ位置が本体の上面の高さ位置と同じ又はこの高さ位置もよりも低くなっていて、フック部の上端の高さ位置が本体の上面の高さ位置よりも高くなっている場合には、覆い部についての作業足場板の長さ方向の前記長さ寸法を、本体の長さ寸法と基部の長さ寸法との合計値と同じ又は略同じにしてもよい。
【0010】
また、以上の本発明に係る仮設足場用すき間塞ぎ部材において、作業足場板のフック部材を係止させるために仮設足場に設けられる上述の横架部材は、仮設足場を構成する2本の支柱の間に水平に架け渡されている部材であれば任意の部材でよい。このため、この横架部材は、長さ方向の両端部に楔部材が設けられていて、これらの楔部材が、それぞれ独立している2本の支柱に設けられたフランジ部材又はポケット部材に形成されている縦孔状の楔部材挿入部に挿入されることにより、2本の支柱の間に架け渡される水平部材でもよく、あるいは、建枠を用いる仮設足場の横架部材は、建枠を構成している2本の支柱に長さ方向の両端部が溶接等で結合されることにより、これらの支柱同士を結合している水平の結合部材でもよい。
【0011】
また、以上の本発明に係る仮設足場用すき間塞ぎ部材において、覆い部を、作業足場板と幅木との間のすき間と、作業足場板の少なくとも一部とを水平に覆う水平状のものとしてもよく、あるいは、覆い部を、幅木側から作業足場板側に向かって下り傾斜するものにしてもよい。
【0012】
これらのうち、後者のように覆い部を、幅木側から作業足場板側に向かって下り傾斜するものにすると、覆い部の上に落下した工具等の物体を作業足場板側へ転動や滑動等させて移動させることができるため、この物体の除去を容易に行えるようになる。
【0013】
また、このように覆い部を、幅木側から作業足場板側に向かって下り傾斜するものとする場合には、この下り傾斜の角度を、幅木側の端部から作業足場板側の端部までの全体について、同一又は略同一の角度としてもよく、あるいは、覆い部の下り傾斜を、幅木側の第1下り傾斜部と、作業足場板側の第2下り傾斜部とを含む複数の下り傾斜部による下り傾斜とし、第1下り傾斜部の傾斜角度を第2下り傾斜部の傾斜角度よりも大きくするとともに、この第2下り傾斜部を、前記作業者が乗る部分としてもよい。
【0014】
これらのうち、後者のように覆い部の下り傾斜を、幅木側の第1下り傾斜部と、作業足場板側の第2下り傾斜部とを含む複数の下り傾斜部による下り傾斜とし、第1下り傾斜部の傾斜角度を第2下り傾斜部の傾斜角度よりも大きくするとともに、この第2下り傾斜部を、作業者が乗る部分とすると、第1下り傾斜部の上に落下した工具等の物体を、第2下り傾斜部の傾斜角度よりも大きい第1下り傾斜部の傾斜角度によって一層確実に作業足場板側へ移動させることができるとともに、第2下り傾斜部の傾斜角度は第1下り傾斜部の傾斜角度よりも小さいため、この第2下り傾斜部と作業足場板の上面とがなす角度を小さくすることができ、これにより、作業者は第2下り傾斜部の上面に乗って歩行等することができるようにもなる。
【0015】
また、このように覆い部の下り傾斜を、幅木側の第1下り傾斜部と、作業足場板側の第2下り傾斜部とを含む複数の下り傾斜部による下り傾斜とし、第1下り傾斜部の傾斜角度を第2下り傾斜部の傾斜角度よりも大きくするとともに、この第2下り傾斜部を、作業者が乗る部分とし、作業者が第2下り傾斜部の上面に乗って歩行等することができるようにする場合には、この第2下り傾斜部の上面には、滑り止め部を形成してもよい。
【0016】
この滑り止め部は、第2下り傾斜部の上面に乗った作業者の滑りを防止又は抑制できるものであれば、任意の形状や構造のものでよく、その一例の滑り止め部は、作業足場板の長さ方向に延びるそれぞれ複数個の凹条部と凸条部が、作業足場板の長さ方向と直交する幅方向に並設されることにより形成されたものである。
【0017】
これによると、第2下り傾斜部に作業足場板側への下り傾斜角度が設けられていても、それぞれ複数個の凹条部と凸条部による滑り止め部により、作業者の滑りを有効に防止又は抑制できるようになる。
【0018】
また、それぞれ複数個の凹条部と凸条部を、覆い部についての作業足場板の長さ方向の全長に渡って連続したものとすることが好ましい。これによると、作業者が覆い部における作業足場板の長さ方向のどの位置の上面に乗っても、作業者の滑りを防止又は抑制できるようになる。
【0019】
また、以上説明した本発明に係る仮設足場用すき間塞ぎ部材は、前述した覆い部が幅木の下端部に回動自在に連結されていることにより、この覆い部が幅木に対して開閉可能となったものでもよく、あるいは、本発明に係る仮設足場用すき間塞ぎ部材は、覆い部が幅木に連結されていなくて、この幅木とは別部材となっているものでもよい。
【0020】
これらのうち、後者のように本発明に係る仮設足場用すき間塞ぎ部材を幅木とは別部材とする場合には、本発明に係る仮設足場用すき間塞ぎ部材を、作業足場板の長さ方向と直交する方向となっている幅木の厚さ方向のうち、作業足場板側の内側において、幅木と重ね合わせられる幅木重ね部を有するものとし、この幅木重ね部の下端部から前述した覆い部を作業足場板側へ延出させるようにしてもよい。
【0021】
これによると、覆い部を幅木の下端部に連結しなくても、幅木と作業足場板との間のすき間を、幅木重ね部と覆い部とよって一層確実に塞ぐことができる。
【0022】
また、このように本発明に係る仮設足場用すき間塞ぎ部材を、作業足場板の長さ方向と直交する方向となっている幅木の厚さ方向のうち、作業足場板側の内側において、幅木と重ね合わせられる幅木重ね部を有するものとし、この幅木重ね部の下端部から前述した覆い部を作業足場板側へ延出させるようにする場合であって、幅木に、この幅木の厚さ方向に凹凸となっている凸部と凹部が設けられている場合には、幅木重ね部には、これらの凸部と凹部に対応する凸部と凹部を設けることが好ましい。これによると、幅木重ね部を幅木に良好な状態で重ね合わせることができる。
【0023】
以上説明した本発明に係る仮設足場用すき間塞ぎ部材は、アルミ又はアルミ合金の押し出し成形品又は引き抜き成形品に、不必要の箇所を切除する加工や、必要とされる孔を設ける孔開け加工等を行うことにより製造してもよく、あるいは、板金にプレス加工や打ち抜き加工、孔開け加工等を行うことにより製造してもよい。
【0024】
また、本発明に係る仮設足場用すき間塞ぎ部材は、作業足場板と幅木とが用いられて構築される仮設足場であれば、任意の用途のために構築される仮設足場に使用することができ、このため、仮設足場は、建築作業のための仮設足場でもよく、土木作業のための仮設足場でもよく、解体作業のための仮設足場でもよく、修理作業のための仮設足場でもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、幅木と作業足場板との間のすき間を塞ぐことを、作業足場板のフック部材の形状や、高さ寸法、配置位置の相違に影響されることなく行えるようになるという効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るすき間塞ぎ部材が用いられて構築されている仮設足場の要部を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、すき間塞ぎ部材の全体を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、すき間塞ぎ部材を示す図であって、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は底面図である。
【
図5】
図5は、すき間塞ぎ部材の拡大した左側面図である。
【
図6】
図6は、
図1及び
図2で示されている幅木とすき間塞ぎ部材を固定するための固定金具を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係るすき間塞ぎ部材が用いられた仮設足場1の要部が示されている。この仮設足場1は、複数本の支柱2と、2本の支柱2の間に水平に架け渡された横架部材3と、複数の作業足場板4と、複数の幅木5とを含んで構築され、複数の作業足場板4は、作業足場板4の長さ方向に直列状態で配置され、また、それぞれの幅木5は、作業足場板4の長さ方向と直交する水平方向である作業足場板4の幅方向外側において、作業足場板4に沿って配設され、長さ方向が作業足場板4の長さ方向となっているこれらの幅木5は、これらの幅木5の長さ方向の端部同士が作業足場板4の幅方向である幅木5の厚さ方向に重ねられて、作業足場板4の長さ方向に直列状態で配置されている。
【0028】
それぞれの作業足場板4は、作業者が乗って歩行や作業等を行うための本体6と、作業足場板4の長さ方向の両端において、本体6から作業足場板4の長さ方向に突出した状態で設けられているフック部材7とを有するものとなっており、作業足場板4の長さ方向のそれぞれの端部において、作業足場板4の幅方向に2個ずつ設けられているフック部材7が横架部材3に上から係止されることにより、作業足場板4は仮設足場1に設置される。
【0029】
図2は、
図1の左側面図であり、この
図2に示されているように、作業足場板4と幅木5との間には、すき間Sが存在する。2本の横架部材3の間において、作業足場板4の長さ方向に延びているこのすき間Sを塞ぐために、本実施形態に係るすき間塞ぎ部材10が仮設足場1に設置される。このすき間塞ぎ部材10は、
図1に示されているように、幅木5と同様に、長さ方向が作業足場板4の長さ方向となっているものであって、複数のすき間塞ぎ部材10が、後述するように、これらのすき間塞ぎ部材10の長さ方向の端部の一部同士が重ねられて、作業足場板4の長さ方向に直列状態で配置される。
【0030】
図3には、すき間塞ぎ部材10の全体の斜視図が示され、
図4(A)(B)(C)は、すき間塞ぎ部材10の平面図、正面図、底面図である。また、
図5には、すき間塞ぎ部材10の拡大した左側面図が示され、
図7には、
図2の一部拡大図が示されている。これらの
図3~
図5、
図7から分かるように、すき間塞ぎ部材10は、作業足場板4の長さ方向と直交する方向となっている幅木5の厚さ方向のうち、作業足場板4側の内側において、幅木5と重ね合わせられる幅木重ね部11と、鉛直の立ち上がり状態となっているこの幅木重ね部11の下端部11Cから作業足場板4側へ下り傾斜で延出している覆い部12とを有するものとなっている。また、
図3に示されているように、幅木重ね部11の長さ寸法は、L1であり、覆い部12の長さ寸法は、L1よりも短いL2である。このため、すき間塞ぎ部材10の全体形状は、覆い部12の長さ方向の両端部に、L1とL2の差の半分の長さ寸法L3となっている切欠部13が2個形成された形状となっている。
【0031】
なお、覆い部12の長さ寸法L2は、作業足場板4の本体6の長さ寸法と同じ又は略同じである。また、作業足場板4の長さ方向の両端に設けられているフック部材7の形状や、高さ寸法、配置位置が異なっているそれぞれの作業足場板4において、
図1に示されているように、フック部材7が、本体6に結合状態となっている基部7Aと、この基部7Aにおける作業足場板4の長さ方向外側に設けられ、横架部材3に上から係止されるフック部7Bとからなり、基部7Aの上面の高さ位置が本体6の上面の高さ位置と同じ又はこの高さ位置よりも低くなっていて、フック部7Bの上端の高さ位置が本体6の上面の高さ位置よりも高くなっている場合には、覆い部12の長さ寸法L2を、作業足場板4の本体6の長さ寸法と、作業足場板4の長さ方向の両端に設けられているフック部材7の基部7Aの長さ寸法との合計値と同じ又は略同じにしてもよい。
【0032】
図1や
図2、
図7で示されているように板材の折り曲げ状の形状で形成されている幅木5は、アルミ又はアルミ合金の押し出し成形品又は引き抜き成形品、あるいは、板金のプレス成形品であり、この幅木5には、
図7に示されているように、作業足場板4から見て幅木5の厚さ方向に凹凸となった凸部5Aと凹部5Bが、それぞれ複数個ずつ上下方向に交互に形成されているとともに、縦断面形状が幅木5の厚さ方向となっている横向きに台形状又は略台形状となっているこれらの凸部5Aと凹部5Bは、幅木5の全長に渡って連続して形成されている。幅木5と同様に、板材の折り曲げ状の形状で形成されているすき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11にも、作業足場板4から見て幅木5の厚さ方向に凹凸となった凸部11Aと凹部11Bが形成され、これらの凸部11Aと凹部11Bは、それぞれ1個ずつ上下方向に形成されているとともに、凸部11Aと凹部11Bも、縦断面形状が幅木5の厚さ方向となっている横向きに台形状又は略台形状となっている。このため、幅木重ね部11の凸部11Aと凹部11Bは、幅木5の凸部5Aと凹部5Bに対応する形状及び寸法となっており、このため、すき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11を、作業足場板4の長さ方向と直交する方向となっている幅木5の厚さ方向のうち、作業足場板4側の内側において、幅木重ね部11の凸部11A、凹部11Bと幅木5の凸部5A、凹部5Bとを嵌合させて、幅木5と良好に重ね合わせることができるようになっている。
【0033】
図7に示されているように、すき間塞ぎ部材10の覆い部12は、幅木5側の第1下り傾斜部14と、作業足場板4側の第2下り傾斜部15とからなり、
図5に示されているように、第1下り傾斜部14における幅木5側の端部が、すき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11の下端部11Cに接続されているとともに、第2下り傾斜部15における幅木5側の端部が、第1下り傾斜部14における作業足場板4側の端部に接続されている。また、作業足場板4の本体6の上面と同じになっている水平面16に対する第1下り傾斜部14の傾斜角度は、αであり、水平面16に対する第2下り傾斜部15の傾斜角度は、αよりも小さいβであり、したがって、第1下り傾斜部14の傾斜角度αは、第2下り傾斜部15の傾斜角度βよりも大きくなっている。
【0034】
また、
図5に示されているように、第2下り傾斜部15の作業足場板4側の端部となっている覆い部12の作業足場板4側の端部12Aは、上下寸法が大きい厚肉部となっており、この端部12Aの下面12Bは水平面となっているため、
図1に示されているように、すき間塞ぎ部材10が仮設足場1の所定箇所に設置されたときに、この端部12Aの下面12Bを作業足場板4の本体6の上面に良好に面接触させることができるようになっている。
【0035】
また、
図3に示されているように、第1下り傾斜部14についての作業足場板4の長さ方向と直交する幅方向における幅寸法は、W1であり、第2下り傾斜部15についての作業足場板4の長さ方向と直交する幅方向における幅寸法は、W1よりも大きいW2となっている。
【0036】
さらに、
図3に示されているように、覆い部12のうち、第2下り傾斜部15の上面には、滑り止め部17が形成されており、この滑り止め部17は、
図5に拡大されて示されているように、縦断面形状が三角形状又は略三角形状となっている微小の複数個の凸条部17Aと、縦断面形状が逆三角形状又は略逆三角形状となっている微小の複数個の凹条部17Bとが、作業足場板4の幅方向となっている第2下り傾斜部15の幅方向に交互に形成されたものとなっており、これらの凸条部17Aと凹条部17Bは、作業足場板4の長さ方向となっている第2下り傾斜部15の全長、これを言い換えると、第2下り傾斜部15が設けられている覆い部12の全長に渡って形成されているため、滑り止め部17は、覆い部12の全長に渡って連続したものとなっている。また、このような滑り止め部17は、覆い部12の幅方向に間隔を開けて複数個、本実施形態では3個設けられている。
【0037】
図1で説明したように、作業足場板4に沿って配設される幅木5は、長さ方向の端部同士がこれらの幅木5の厚さ方向に重ねられて、作業足場板4の長さ方向に直列状態で配置され、また、幅木重ね部11が、幅木5の厚さ方向のうち、作業足場板4側の内側に重ね合わせられるすき間塞ぎ部材10は、幅木重ね部11の長さ方向の端部同士が幅木5の厚さ方向に重ねられて、作業足場板4の長さ方向に直列状態で配置される。そして、このように幅木5と、すき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11とを幅木5の厚さ方向に重ね合わせた状態で固定するための固定具18が、
図1に示されているように、支柱2に取り付けられている。この固定具18は、
図6に示されているように、クランプ19と、このクランプ19を構成する部材であって、中心軸20を中心に開閉自在となっている2個の挟着部材21,22のうち、一方の挟着部材21に溶接部23で結合された押え部材24とからなるものである。
【0038】
棒材の折り曲げ品であるこの押え部材24は、溶接部23で挟着部材21に結合されて下方向に延びている第1延出部24Aと、この第1延出部24Aの下端から水平方向に延びている第2延出部24Bと、この第2延出部24Bの端部から下方向に延びている第3延出部24Cとからなるクランク形状のものである。また、挟着部材21には、ボルト部材25の基端部がピン26で回動自在に連結され、このボルト部材25を他方の挟着部材22に設けられている凹部22Aに挿入し、ボルト部材25に螺合されているナット27を回転操作して締め付けると、クランプ19は支柱2に挟着固定される。このため、ナット27を緩めることにより、支柱2を中心にクランプ19を回動させることができ、この回動を行うことにより、幅木5と、この幅木5に重ね合わせられているすき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11とに対して、幅木5の厚さ方向についてのクランプ19から押え部材24の第3延出部24Cまでの距離を変更することができるため、2個の幅木5の長さ方向の端部同士を重ね、さらに、2個のすき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11の端部同士を重ねても、
図7に示されているように、幅木5とすき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11とを、押え部材24の第3延出部24Cにより支柱2側に押え込んで固定することができる。
【0039】
なお、
図3に示されているように、すき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11の長さ方向の両端部には、長孔による孔28が形成され、また、
図1に示されているように、幅木5の長さ方向の両端部にも、長孔による孔29が形成されている。これらの孔28,29がすき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11と幅木5とに設けられている理由は、作業者が通る作業者用通路を複数個の作業足場板4により形成し、これらの作業足場板4のうち、2個の作業足場板4を平面視で直角に配置することにより作業者用通路のコーナー部を形成する場合においては、これらの作業足場板4に沿って配置されるそれぞれ2個ずつの幅木5及びすき間塞ぎ部材10も、平面視で直角に配置されるため、コーナー部に立設される支柱に結合された固定具に設けられているピン部材を、これらの幅木5及びすき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11に設けられた孔28,29に貫通させることにより、これらの幅木5及びすき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11を上記固定具により固定できるようにするためである。
【0040】
以上説明した本実施形態に係るすき間塞ぎ部材10は、アルミ製又はアルミ合金製である。すなわち、このすき間塞ぎ部材10は、アルミ又はアルミ合金の押し出し成形品又は引き抜き成形品に、前述した切欠部13を形成する切除加工や、孔28を設ける孔開け加工等を行うことにより製造されている。
【0041】
本実施形態に係るすき間塞ぎ部材10が、
図1で示されている仮設足場1に設置されるときには、この
図1に示されているように、すき間塞ぎ部材10の長さ方向の両端部の位置を作業足場板4の長さ方向の両端部の位置と一致又は略一致させて、すき間塞ぎ部材10は仮設足場1に設置される。これにより、すき間塞ぎ部材10の覆い部12は、
図2及び
図7で示されているように、作業足場板4と幅木5との間のすき間Sと、作業足場板4の本体6のうちの一部とを覆うことになり、このため、覆い部12により覆われるすき間Sの長さ方向の範囲内において、工具等の物体がすき間Sから落下することは防止される。また、覆い部12の長さ寸法L2は、作業足場板4の本体6の長さ寸法と同じ又は略同じになっていて、この長さ寸法L2は、すき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11の長さ寸法L1よりも短いため、この覆い部12が、作業足場板4の長さ方向の両端に設けられているフック部材7の上面を覆うことはなく、これらのフック部材7を露出させることができる。
【0042】
このため、仮設足場1に設置される作業足場板4として、フック部材7の形状や、高さ寸法、配置位置が異なっている各種の作業足場板が用いられても、これらの作業足場板のフック部材はすき間塞ぎ部材10の下面、一層具体的には覆い部12の下面と干渉することはない。このため、本実施形態に係るすき間塞ぎ部材10によると、作業足場板4と幅木5との間のすき間Sを塞ぐことを、作業足場板4のフック部材7の形状や、高さ寸法、配置位置の相違に影響されることなく行えることになり、フック部材の形状や、高さ寸法、配置位置が異なっている各種の作業足場板を仮設足場1に用いることができる。
【0043】
なお、本実施形態に係るすき間塞ぎ部材10の覆い部12の長さ寸法L2は、上述したように、作業足場板4の本体6の長さ寸法と同じ又は略同じになっているが、フック部材7の形状や、高さ寸法、配置位置が異なっているそれぞれの作業足場板において、前述したように、作業足場板4の長さ方向の両端に設けられているフック部材7が、本体6に結合状態となっている基部7Aと、この基部7Aにおける作業足場板4の長さ方向外側に設けられ、横架部材3に上から係止されるフック部7Bとからなる場合であって、基部7Aの上面の高さ位置が本体6の上面の高さ位置と同じ又はこの高さ位置よりも低くなっていて、フック部7Bの上端の高さ位置が本体6の上面の高さ位置よりも高くなっている場合においては、覆い部12の長さ寸法L2を、作業足場板4の本体6の長さ寸法とフック部材7の基部7Aの長さ寸法との合計値と同じ又は略同じにしてもよい。これによると、覆い部12によってフック部材7の基部7Aの上面も覆うことができるため、覆い部12によって覆うことができるすき間Sについての作業足場板4の長さ方向の長さを一層大きくすることができる。
【0044】
また、本実施形態に係るすき間塞ぎ部材10において、覆い部12は、幅木5と重ね合わせられる幅木重ね部11の下端部11Cから作業足場板4側へ延びている。このため、フック部材の高さ寸法が異なる各種の作業足場板のうちに、幅木5に近い箇所に配置される作業足場板があっても、この作業足場板と幅木5との間のすき間Sを覆い部12により覆うことができる。また、覆い部12は、第1下り傾斜部14と第2下り傾斜部15とからなり、この第2下り傾斜部15の幅寸法W2は、
図3で説明したように、第1下り傾斜部14の幅寸法W1よりも大きいため、フック部材の高さ寸法が異なる各種の作業足場板のうちに、幅木5から離れた箇所に配置される作業足場板があっても、この作業足場板と幅木5との間のすき間Sを覆い部12により覆うことができる。
【0045】
また、本実施形態に係るすき間塞ぎ部材10の覆い部12は、幅木5側から作業足場板4側に向かって下り傾斜しているため、覆い部12の上に工具等の物体が落下した場合には、この物体は作業足場板4側へ転動や滑動して移動することになるため、この物体の除去を容易に行える。
【0046】
また、覆い部12は、前述したように、幅木5側の第1下り傾斜部14と、作業足場板4側の第2下り傾斜部15とからなり、第1下り傾斜部の傾斜角度αは、第2下り傾斜角度の傾斜角度βよりも大きいため、第1下り傾斜部14の上に落下した工具等の物体を一層確実に作業足場板4側へ移動させることができる。
【0047】
さらに、第2下り傾斜部15の傾斜角度βは、第1下り傾斜部14の傾斜角度αよりも小さいため、この第2下り傾斜部15と作業足場板4の本体6の上面とがなす角度を小さくすることができ、これにより、作業者は第2下り傾斜部15の上面に乗って歩行等することができる。
【0048】
また、この第2下り傾斜部15の上面には滑り止め部17が形成されているため、この滑り止め部17により、第2下り傾斜部15の上面に乗った作業者の滑りを防止又は抑制できるようになる。また、この滑り止め部17は、第2下り傾斜部15の上面において、覆い部12の幅方向に間隔をあけて複数個設けられているため、第2下り傾斜部15の上面に乗った作業者が、この第2下り傾斜部15の下り傾斜方向に滑ることを有効に防止又は抑制できるようになる。
【0049】
さらに、それぞれの滑り止め部17は、作業足場板4の長さ方向に延びるそれぞれ複数個の凸条部17Aと凹条部17Bが、作業足場板の長さ方向と直交する幅方向に交互に並設されることにより形成されたものになっているとともに、それぞれの凸条部17Aと凹条部17Bは、覆い部12についての作業足場板4の長さ方向の全長に渡って連続して形成されているため、作業者が第2下り傾斜部15における作業足場板4の長さ方向のどの位置の上面に乗っても、作業者の滑りを防止又は抑制できる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、建築作業現場や土木作業現場等の作業現場で構築される仮設足場において、作業足場板と幅木との間のすき間を塞ぐために利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 仮設足場
2 支柱
3 横架部材
4 作業足場板
5 幅木
5A 凸部
5B 凹部
6 本体
7 フック部材
7A 基部
7B フック部
10 すき間塞ぎ部材
11 幅木重ね部
11A 凸部
11B 凹部
11C 下端部
12 覆い部
14 第1下り傾斜部
15 第2下り傾斜部
17 滑り止め部
17A 凸条部
17B 凹条部
S すき間
L1 幅木重ね部の長さ寸法
L2 覆い部の長さ寸法
α 第1下り傾斜部の傾斜角度
β 第2下り傾斜部の傾斜角度