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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】水中翼船のストラット、及び水中翼船
(51)【国際特許分類】
   B63B 1/26 20060101AFI20230720BHJP
【FI】
B63B1/26
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019176728
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2021054139
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】518022743
【氏名又は名称】三菱造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】武田 信玄
(72)【発明者】
【氏名】初田 広樹
(72)【発明者】
【氏名】久間 康充
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-001180(JP,U)
【文献】実開平06-061689(JP,U)
【文献】特開2011-121412(JP,A)
【文献】特開平06-016173(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103612705(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 1/24- 1/30
B63H 11/00-11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中翼船の船体と前記船体の下方に配置される水中翼とを接続する水中翼船のストラットであって、
前記船体に接続される第1ストラット本体部と、
前記水中翼に固定される第2ストラット本体部と、
前記第1ストラット本体部と前記第2ストラット本体部とを連結する継手部と、を備え、
前記第1ストラット本体部は、前記継手部を挟んで前記水中翼とは反対側に位置し、
前記継手部は、前記第1ストラット本体部及び前記第2ストラット本体部と比較して強度が低く、
前記第1ストラット本体部は、内部にウォータージェットダクトが貫通される、
水中翼船のストラット。
【請求項2】
前記継手部のうち、前記継手部の前記水中翼船の前後方向の前側の一端に位置する前側端縁を含む前側部は、前記継手部のうち前記前側部より後方の後側部と比較して強度が低い請求項1に記載の水中翼船のストラット。
【請求項3】
前記継手部のうち、前記継手部の前記前後方向の後側の他端に位置する後側端縁は、前記前側端縁より上方に位置し、
前記前側端縁は、前記ストラットの下端に位置する請求項2に記載の水中翼船のストラット。
【請求項4】
水中翼船の船体と前記船体の下方に配置される水中翼とを接続する水中翼船のストラットであって、
前記船体に接続される第1ストラット本体部と、
前記水中翼に固定される第2ストラット本体部と、
前記第1ストラット本体部と前記第2ストラット本体部とを連結する継手部と、を備え、
前記第1ストラット本体部は、前記継手部を挟んで前記水中翼とは反対側に位置し、
前記継手部は、前記第1ストラット本体部及び前記第2ストラット本体部と比較して強度が低く、
前記継手部のうち、前記継手部の前記水中翼船の前後方向の前側の一端に位置する前側端縁を含む前側部は、前記継手部のうち前記前側部より後方の後側部と比較して強度が低く、
前記継手部のうち、前記継手部の前記前後方向の後側の他端に位置する後側端縁は、前記前側端縁より上方に位置し、
前記前側端縁は、前記ストラットの下端に位置する、
水中翼船のストラット。
【請求項5】
船体と、
前記船体の下方に配置される水中翼と、
前記船体と前記水中翼とを接続する請求項1から4の何れか一項に記載の水中翼船のストラットと、
を備える水中翼船。
【請求項6】
前記船体の下方に配置され、前記水中翼より前方に位置する前部水中翼と、
前記船体と前記前部水中翼とを接続し、前記ストラットより前方に位置する前部ストラットと、をさらに備える請求項5に記載の水中翼船。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水中翼船のストラット、及び水中翼船に関する。
【背景技術】
【0002】
水中翼船は、船体と船体の下方に配置される水中翼とを接続するストラットを備える。水中翼は水中翼船が航行するときに揚力を発生させており、特に、水中翼船が高速航行(翼走)するときには、揚力がストラットを介して船体に伝達され、船体の底部を水面より上方に持ち上げる。
【0003】
翼走中、水中翼やストラットのような船体の下方に配置される下方構造物は水中や水面に位置しており、水中生物や水中浮遊物などの障害物と衝突する場合がある。この衝突によって生じた衝撃力は、ストラットを介して船体にまで伝達され、水中翼船が損傷してしまう。これに対して、例えば、特許文献1には、翼走中に水中翼やストラットに障害物が衝突すると、ストラットがストラットの船体側の一端を中心として水面に向かって近づくように回転する(ストラットがスイングする)ことで、衝突の衝撃力を吸収する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許3910215号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、水中翼船の航行中に下方構造物に障害物が衝突すると、ストラットが水面に向かって近づくようにスイングするので、水中翼の迎角を減少させ、水中翼が発生させる揚力が0以下になることもある。この負の揚力はストラットを介して船体に伝達され、船体が水面に向かって引っ張られて水面に衝突し、水中翼船が大きく損傷する虞がある。
【0006】
本開示は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、航行中に下方構造物(水中翼やストラット)に障害物が衝突したときに、水中翼船の損傷を抑制することができる水中翼船のストラット、及び水中翼船を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示に係る水中翼船のストラットは、水中翼船の船体と前記船体の下方に配置される水中翼とを接続する水中翼船のストラットであって、前記船体に接続される第1ストラット本体部と、前記水中翼に固定される第2ストラット本体部と、前記第1ストラット本体部と前記第2ストラット本体部とを連結する継手部と、を備え、前記第1ストラット本体部は、前記継手部を挟んで前記水中翼とは反対側に位置し、前記継手部は、前記第1ストラット本体部及び前記第2ストラット本体部と比較して強度が低い。
【発明の効果】
【0008】
本開示の水中翼船のストラット及び水中翼船によれば、航行中に水中翼やストラットに障害物が衝突して、水中翼が発生させる負の揚力によって船体が水面に向かって引っ張られても、継手部を優先的に破断させて、水中翼から船体への負の揚力の伝達を妨げ、船体が水面に向かって引っ張られて水面と衝突することによる水中翼船の損傷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の第1実施形態に係る水中翼船の構成を概略的に示す構成図である。
図2】本開示の第1実施形態に係る水中翼船のストラットの構成を概略的に示す構成図である。
図3】本開示の第2実施形態に係る水中翼船のストラットの構成を概略的に示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態による水中翼船のストラット及び水中翼船について、図面に基づいて説明する。かかる実施の形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0011】
<第1実施形態>
(構成)
図1を参照して、本開示の第1実施形態に係る水中翼船1の構成について説明する。図1に示すように、水中翼船1は、海や湖などを航行するものであって、船体2と、水中翼4と、船体2と水中翼4とを接続するストラット6と、を備える。
【0012】
本開示では、水中翼船1が船尾から船首に向かって航行する航行方向を水中翼船1の前後方向前方とする。以下、水中翼船1の前後方向を単に「前後方向」と記載し、水中翼船1の上下方向を単に「上下方向」と記載し、水中翼船1の幅方向を単に「幅方向」と記載する。
【0013】
水中翼4は、船体2の下方に配置され、水中翼船1が航行する際に、特に水中翼船1が高速航行(翼走)する際に、揚力を発生させる部材である。この水中翼4は水中翼船1の船尾側に位置しており、水中翼船1の航行中に船体2の船尾側の底部の一部を水面より上方に持ち上げる後部水中翼に相当する。
【0014】
ストラット6は、船体2の船尾側の底部と水中翼4とを接続する棒状形状を有する部材である。ストラット6は上下方向に沿って延びており、上端を中心として水面に向かって近づくように回転可能である(ストラット6がスイングする)ように、上端が船体2の船尾側に接続されている。また、下端は水中翼4に固定されている。ストラット6の前端面には、海水や水を吸入するために開口された吸入口7が形成されている。
【0015】
水中翼船1は、前部水中翼8と前部ストラット10とをさらに備えてもよい。前部水中翼8は、水中翼4とは別に設けられる部材であって、船体2の下方に配置され、水中翼船1が航行する際に、特に水中翼船1が高速航行(翼走)する際に、揚力を発生させる部材である。また、前部水中翼8は、水中翼船1の船首側に位置しており、水中翼4より前方に位置している。
【0016】
前部ストラット10は、ストラット6とは別に設けられる部材であって、船体2の船首側の底部と前部水中翼8とを接続する棒状形状を有する部材である。前部ストラット10はストラット6より前方を上下方向に沿って延びており、上端が船体2の船首側の底部に接続され、下端が前部水中翼8に固定されている。
【0017】
また、水中翼船1は、水中翼船1を推進させるための装置である推進装置11をさらに備えてもよい。この推進装置11は、例えば、船体2の後端に配置されるウォータジェットポンプ11A(11)であって、ガスタービンエンジンのような不図示の内燃機関によって駆動されるようになっている。ウォータジェットポンプ11Aが駆動すると、吸入口7から吸入された水や海水がウォータジェットポンプ11A内で加圧され、この加圧された水や海水は船体2の後方に向かって水中や海中に噴射される。
【0018】
次に、図2を参照して、本開示の第1実施形態に係る水中翼船1のストラット6の構成について説明する。図2に示すように、ストラット6は、第1ストラット本体部12と、第2ストラット本体部14と、継手部16と、を備える。
【0019】
第1ストラット本体部12は、ストラット6のうち船体2の船尾側の底部に接続される部分である。つまり、第1ストラット本体部12にはストラット6の上端が含まれる。第1ストラット本体部12の内部にはウォータージェットダクト18が貫通されている。ウォータージェットダクト18は、一端が吸入口7に接続され、他端がウォータジェットポンプ11Aに接続されており、水や海水が流通するものである。また、第1ストラット本体部12は、例えば金属を加工して製造されてもよいが、後述する継手部16によって第2ストラット本体部14と連結可能に製造されるのであれば、プラスチックやセラミックスなど金属以外の材料で製造されてもよい。また、第1ストラット本体部12は、継手部16を挟んで水中翼4とは反対側に位置している。つまり、水中翼4は第1ストラット本体部12に固定されていない。
【0020】
第2ストラット本体部14は、ストラット6のうち水中翼4に固定される部分である。つまり、第2ストラット本体部14にはストラット6の下端が含まれる。第2ストラット本体部14は、第1ストラット本体部12と同じ材料で製造されてもよいし、異なる材料で製造されてもよい。
【0021】
継手部16は、ストラット6のうち第1ストラット本体部12と第2ストラット本体部14とを連結する部分である。継手部16は、例えば、第1ストラット本体部12と第2ストラット本体部14とを溶接した際に形成される部分である。このような継手部16は、溶接脚長を調整することで第1ストラット本体部12及び第2ストラット本体部14と比較して強度が低く、例えば、上下方向に引張されたときの引張強度が低くなるように構成される。
【0022】
また、継手部16は前後方向に沿って連続的に延びるように形成されてもよい。継手部16のうち継手部16の後側の他端に位置する後側端縁20は、ストラット6の後端面の水中翼4側(下側)に位置してもよい。また、後側端縁20は、継手部16のうち継手部16の前側の一端に位置する前側端縁22より上方に位置してもよい。また、前側端縁22はストラット6の下端に位置してもよいし、水中翼4の直前に位置してもよい。
【0023】
ストラット6の上下方向の長さを上下方向距離L1とし、ストラット6の下端を上下方向距離L1に対する0%の位置とし、ストラット6の上端に向かうにつれて増加し、ストラット6の上端を上下方向距離L1に対する100%の位置として定義した場合に、後側端縁20の位置は上下方向距離L1に対する50%以下の位置である。第1実施形態では、後側端縁20の位置は上下方向距離L1に対する20%以下の位置になっている。
【0024】
(作用・効果)
本開示の第1実施形態に係る水中翼船1のストラット6の作用・効果について説明する。水中翼船1の航行中に、水中翼4やストラット6に水中生物や水中浮遊物などの障害物が衝突すると、ストラット6がスイングするなどして水中翼4の迎角が減少する。水中翼4の迎角が減少すると、水中翼4が発生させる揚力が0以下になり、船体2の船尾側の底部が水面に向かって引っ張られ、船体2の船尾側の底部が水面に衝突することがある。
【0025】
しかしながら、第1実施形態によれば、ストラット6のうち、継手部16は第1ストラット本体部12及び第2ストラット本体部14と比較して引張強度が低い。このため、水中翼4が発生させる負の揚力によってストラット6が下方に向かって引っ張られても、継手部16を優先的に破断させ、水中翼4に固定される第2ストラット本体部14をストラット6から離脱させることができる。このため、第2ストラット本体部14(水中翼4)から第1ストラット本体部12(船体2)への負の揚力の伝達を妨げることができる。よって、船体2の船尾側の底部が水面に向かって引っ張られることを抑制し、船体2の船尾側の底部が水面と衝突することによる水中翼船1の損傷を抑制することができる。
【0026】
また、第1実施形態によれば、後側端縁20はストラット6の後端面の水中翼4側に、且つ前側端縁22より上方に位置している。前側端縁22はストラット6の下端に、且つ水中翼4の直前に位置している。このため、継手部16を水中翼4に接近させ、第2ストラット本体部14の体積を第1ストラット本体部12の体積より小さくすることが容易となる。よって、継手部16の全部が破断したときにストラット6から離脱する第2ストラット本体部14の量を減らすことができる。
【0027】
また、第1実施形態によれば、ウォータージェットダクト18は第1ストラット本体部12の内部を貫通しているので、水中翼4やストラット6に障害物が衝突して、水中翼4が負の揚力を発生させても、上述したように継手部16を優先的に破断させることによって第2ストラット本体部14から第1ストラット本体部12への負の揚力の伝達が妨げられる。つまり、ウォータージェットダクト18への負の揚力の伝達も妨げられる。よって、水中翼4やストラット6に障害物が衝突した際に、ウォータージェットダクト18が変形または破断してしまう可能性を低減することができる。
【0028】
船体2は、船体2の後部が船体2の前部と比較して幅方向の寸法が大きくかつ底部が水平に近い構造になるように構成されることが多い。このため、水中翼船1が前後方向に並んで配置される2つの水中翼(水中翼4、前部水中翼8)を備える場合、船体2の船尾側の底部が水中翼4が発生させる負の揚力によって水面に向かって引っ張られることで水面に衝突する面積は、船体2の船首側の底部が前部水中翼8が発生させる負の揚力によって水面に向かって引っ張られることで水面に衝突する面積よりも大きくなる。このため、水中翼4やストラット6に障害物が衝突したときの方が、水中翼船1の損傷が大きくなりやすい。しかしながら、第1実施形態によれば、ストラット6は、水中翼4と船体2の船尾側の底部とを接続する部材であるので、水中翼4やストラット6に障害物が衝突した際に、上述したように継手部16が破断して水中翼4から船体2の船尾側の底部への負の揚力の伝達を妨げる。このため、船体2の船尾側の底部が水面に向かって引っ張られることを抑制し、船体2の船尾側の底部が水面と衝突することによる水中翼船1の損傷を抑制することができる。
【0029】
尚、第1実施形態では、後側の水中翼(水中翼4)と船体2とを接続するストラット6が、第1ストラット本体部12、第2ストラット本体部14、及び継手部16を備える場合について説明したが、本開示はこの実施形態に限定されない。例えば、前部ストラット10や前部水中翼8に障害物が衝突したときに、前部水中翼8を前部ストラット10から離脱可能であるように前部ストラット10の一部を破断させるため、前部ストラット10が第1ストラット本体部、第2ストラット本体部、及び継手部を備えてもよい。
【0030】
また、第1実施形態では、継手部16を水中翼4に接近させるために、後側端縁20は前側端縁22より上方に位置し、前側端縁22はストラット6の下端に位置していたが、本開示はこの実施形態に限定されない。例えば、継手部16は、ストラット6に水中翼4が固定される固定部分の周囲に形成されてもよい。
【0031】
<第2実施形態>
(構成)
図3を参照して、本開示の第2実施形態に係る水中翼船1のストラット6の構成について説明する。第2実施形態では、継手部16に前側部24及び後側部26が含まれる点で第1実施形態とは異なる。第2実施形態において、第1実施形態の構成要件と同じものは同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0032】
図3に示すように、継手部16は、前側部24及び後側部26をさらに含んでもよい。前側部24は継手部16のうち前側端縁22を含む部分である。後側部26は継手部16のうち前側部24より後方の部分であって、前側部24の後端25から後方に向かって連続的に延びている部分である。この後側部26には後側端縁20が含まれてもよい。また、前側部24は、例えば、後側部26より溶接脚長が小さくなるように調整されており、後側部26と比較して強度が低い。
【0033】
継手部16の前後方向の長さを前後方向距離L2とし、前側端縁22を前後方向距離L2に対する0%の位置とし、後側端縁20に向かうにつれて増加し、後側端縁20を前後方向距離L2に対する100%の位置として定義した場合に、前側部24の後端25の位置は前後方向距離L2に対する20%以上の位置であり、第2実施形態では、前側部24の後端25の位置は前後方向距離L2に対する50%の位置にある。
【0034】
(作用・効果)
第2実施形態の作用・効果について説明する。第2実施形態によれば、前側部24は後側部26と比較して強度が低いので、水中翼4に対して前方から障害物が衝突した際に、前側部24を後側部26より先に破断させて、この衝突によって生じた衝撃力を前側部24で吸収することができる。このため、衝撃力によるストラット6の変位を抑制し、水中翼4の迎角の減少を抑制することができるので、水中翼4が負の揚力を発生することを防止したり、水中翼4が発生させる負の揚力の大きさを低減したりすることができる。
【0035】
尚、前側部24が後側部26と比較して強度が低くなるのであれば、溶接脚長を調整する以外の方法を適用してもよく、例えば、第1ストラット本体部12と第2ストラット本体部14とを溶接する際に、前側部24を形成するために添加する添加剤と後側部26を形成するために添加する添加剤とが異なるものであってもよい。
【0036】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0037】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0038】
(1)本開示に係る水中翼船のストラットは、水中翼船(1)の船体(2)と前記船体の下方に配置される水中翼(4)とを接続する水中翼船のストラット(6)であって、前記船体に接続される第1ストラット本体部(12)と、前記水中翼に固定される第2ストラット本体部(14)と、前記第1ストラット本体部と前記第2ストラット本体部とを連結する継手部(16)と、を備え、前記第1ストラット本体部は、前記継手部を挟んで前記水中翼とは反対側に位置し、前記継手部は、前記第1ストラット本体部及び前記第2ストラット本体部と比較して強度が低い。
【0039】
上記(1)に記載の構成によれば、ストラットは、船体に接続される第1ストラット本体部と水中翼に固定される第2ストラット本体部とに区切られており、継手部によって第1ストラット本体部と第2ストラット本体部とが連結されている。そして、第1ストラット本体部は継手部を挟んで水中翼は反対側に位置し、継手部は第1ストラット本体部及び第2ストラット本体部と比較して強度が低い。このため、水中翼船の航行中に、ストラットや水中翼に障害物が衝突し、水中翼が発生させる揚力が0以下になり、船体が水面に向かって引っ張られても、継手部を優先的に破断させ、第2ストラット本体部(水中翼)から第1ストラット本体部(船体)への負の揚力の伝達を妨げることができる。よって、船体が水面に向かって引っ張られることを抑制し、船体が水面と衝突することによる水中翼船の損傷を抑制することができる。
【0040】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の構成において、前記継手部のうち、前記継手部の前記水中翼船の前後方向の前側の一端に位置する前側端縁(22)を含む前側部(24)は、前記継手部のうち前記前側部より後方の後側部(26)と比較して強度が低い。
【0041】
上記(2)に記載の構成によれば、継手部の前側部は継手部の後側部と比較して強度が低いので、水中翼に対して前方から障害物が衝突した際に、継手部の前側部を継手部の後側より先に破断させて、この衝突によって生じた衝撃力を継手部の前側部で吸収することができる。このため、衝撃力によるストラットの変位を抑制し、水中翼の迎角の減少を抑制することができるので、水中翼が負の揚力を発生させることを防止したり、水中翼が発生させる負の揚力の大きさを低減したりすることができる。
【0042】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)に記載の構成において、前記継手部のうち、前記継手部の前記前後方向の後側の他端に位置する後側端縁(20)は、前記前側端縁より上方に位置し、前記前側端縁は、前記ストラットの下端に位置する。
【0043】
上記(3)に記載の構成によれば、継手部を水中翼に接近させ、第2ストラット本体部の体積を第1ストラット本体部の体積より小さくすることができるので、継手部の全部が破断したときにストラットから離脱する第2ストラット本体部の量を減らすことができる。
【0044】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)から(3)の何れか1つに記載の構成において、前記第1ストラット本体部は、内部にウォータージェットダクト(18)が貫通される。
【0045】
上記(4)に記載の構成によれば、ウォータージェットダクトは第1ストラット本体部の内部を貫通するので、水中翼やストラットに障害物が衝突して、水中翼が負の揚力を発生させても、上記(1)で説明したように継手部を優先的に破断させることによって第2ストラット本体部から第1ストラット本体部への負の揚力の伝達が妨げられるので、ウォータージェットダクトへの負の揚力の伝達も妨げられる。よって、水中翼やストラットに障害物が衝突した際に、ウォータージェットダクトが変形してしまう可能性を低減することができる。
【0046】
(5)本開示に係る水中翼船は、船体と、前記船体の下方に配置される水中翼と、前記船体と前記水中翼とを接続する上記(1)から(4)の何れか1つに記載の水中翼船のストラットと、を備える。
【0047】
上記(5)に記載の構成によれば、船体が水面と衝突することによる水中翼船の損傷を抑制することができる水中翼船を提供することができる。
【0048】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)に記載の構成において、前記船体の下方に配置され、前記水中翼より前方に位置する前部水中翼(8)と、前記船体と前記前部水中翼とを接続し、前記ストラットより前方に位置する前部ストラット(10)と、をさらに備える。
【0049】
船体は、船体の後部が船体の前部と比較して幅方向の寸法が大きくなるように構成されることが多い。船体の幅方向の寸法が大きくなると、船体が水面に向かって引っ張られたときに水面と衝突する面積が大きくなり、水中翼船の損傷は大きくなりやすい。このため、水中翼船が水中翼と、水中翼より前方に位置する前部水中翼を備える場合、水中翼が発生させる負の揚力が船体に伝達することを妨げることが重要である。
【0050】
上記(6)に記載の構成によれば、ストラットは前部ストラットより後方に位置し、水中翼は前部水中翼より後方に位置するので、上記(1)で記載したように、水中翼やストラットに障害物が衝突した際に、ストラットの継手部を破断させ、船体の後部が水面と衝突することによる水中翼船の損傷を抑制することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 水中翼船
2 船体
4 水中翼
6 ストラット
7 吸入口
8 前部水中翼
10 前部ストラット
11 推進装置
11A ウォータジェットポンプ
12 第1ストラット本体部
14 第2ストラット本体部
16 継手部
18 ウォータージェットダクト
20 後側端縁
22 前側端縁
24 前側部
26 後側部
L1 上下方向距離
L2 前後方向距離
図1
図2
図3