IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ファナック株式会社の特許一覧

特許7316172成形物、電動機、成形物を製造するための装置及び方法
<>
  • 特許-成形物、電動機、成形物を製造するための装置及び方法 図1
  • 特許-成形物、電動機、成形物を製造するための装置及び方法 図2
  • 特許-成形物、電動機、成形物を製造するための装置及び方法 図3
  • 特許-成形物、電動機、成形物を製造するための装置及び方法 図4
  • 特許-成形物、電動機、成形物を製造するための装置及び方法 図5
  • 特許-成形物、電動機、成形物を製造するための装置及び方法 図6
  • 特許-成形物、電動機、成形物を製造するための装置及び方法 図7
  • 特許-成形物、電動機、成形物を製造するための装置及び方法 図8
  • 特許-成形物、電動機、成形物を製造するための装置及び方法 図9
  • 特許-成形物、電動機、成形物を製造するための装置及び方法 図10
  • 特許-成形物、電動機、成形物を製造するための装置及び方法 図11
  • 特許-成形物、電動機、成形物を製造するための装置及び方法 図12
  • 特許-成形物、電動機、成形物を製造するための装置及び方法 図13
  • 特許-成形物、電動機、成形物を製造するための装置及び方法 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】成形物、電動機、成形物を製造するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/26 20060101AFI20230720BHJP
【FI】
B29C45/26
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019177774
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2021053859
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】安田 龍矢
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-090573(JP,A)
【文献】特開2001-293771(JP,A)
【文献】特開平09-011243(JP,A)
【文献】国際公開第2012/172669(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形物であって、
筒状の本体部と、
前記本体部を径方向に貫通する孔、又は前記本体部から径方向に突出する凸部と、を備え、
前記成形物には、型の合わせ面に対応するパーティングラインが形成され、
前記パーティングラインは、
前記孔又は前記凸部から前記本体部の周方向の一方へ延びて端点で終端する第1のラインと、
記端点から前記本体部の軸方向の端部まで延びる第2のラインと、を有する、成形物。
【請求項2】
前記パーティングラインは、前記第2のラインの、前記第1のラインの前記端点とは反対側の端点から前記周方向の一方へ延び、前記本体部の前記端部に配置される第3のラインをさらに有する、請求項1に記載の成形物。
【請求項3】
成形物であって、
筒状の本体部と、
前記本体部を径方向に貫通する孔、又は前記本体部から径方向に突出する凸部と、を備え、
前記成形物には、型の合わせ面に対応するパーティングラインが形成され、
前記パーティングラインは、
前記孔又は前記凸部から前記本体部の周方向の一方へ延びる第1のラインと、
前記第1のラインの前記周方向の一方の端点から前記本体部の軸方向の端部まで延びる第2のラインと、
前記第2のラインの、前記第1のラインの前記端点とは反対側の端点から前記周方向の一方へ延び、前記本体部の前記端部に配置される第3のラインと、を有し、
前記本体部の前記端部には、面取り部、又は丸みのある角部が形成され、
前記第3のラインは、前記面取り部、又は前記丸みのある角部に配置されている、成形物。
【請求項4】
成形物であって、
筒状の本体部と、
前記本体部を径方向に貫通する孔、又は前記本体部から径方向に突出する凸部と、を備え、
前記成形物には、型の合わせ面に対応するパーティングラインが形成され、
前記パーティングラインは、
前記孔又は前記凸部から前記本体部の周方向の一方へ延びる第1のラインと、
前記第1のラインの前記周方向の一方の端点から前記本体部の軸方向の端部まで延びる第2のラインであって、前記軸方向に対して傾斜して延びる、第2のラインと、を有する、成形物。
【請求項5】
成形物であって、
筒状の本体部と、
前記本体部を径方向に貫通する孔、又は前記本体部から径方向に突出する凸部と、を備え、
前記成形物には、型の合わせ面に対応するパーティングラインが形成され、
前記パーティングラインは、
前記孔又は前記凸部から前記本体部の周方向の一方へ延びる第1のラインと、
前記第1のラインの前記周方向の一方の端点から前記本体部の軸方向の端部まで延びる第2のラインと、を有し、
前記成形物は、電動機のモータハウジングである、成形物。
【請求項6】
請求項5に記載の成形物を前記モータハウジングとして備える、電動機。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の成形物を製造するための装置であって、
互いに開閉可能な一対の型であって、互いに閉じられたときに前記成形物を形成するための空間を内部に画定する、一対の型を備え、
前記一対の型は、該一対の型が閉じられたときに互いに接触する前記合わせ面を有し、
前記合わせ面は、
前記孔又は前記凸部に対応する位置から前記周方向の一方へ延び、前記第1のラインを形成する第1の合わせ面と、
前記第1の合わせ面の前記周方向の一方の端縁から前記軸方向の一方へ延び、前記第2のラインを形成する第2の合わせ面と、を有する、装置。
【請求項8】
前記パーティングラインは、前記第2のラインの、前記第1のラインの前記端点とは反対側の端点から前記周方向の一方へ延び、前記本体部の前記端部に配置される第3のラインをさらに有し、
前記合わせ面は、前記第2の合わせ面の、前記第1の合わせ面の前記端縁とは反対側の端縁から前記周方向の一方へ延び、前記第3のラインを形成する第3の合わせ面をさらに有する、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の装置を用いて前記成形物を製造する方法であって、
前記一対の型が前記合わせ面で互いに接触するように該一対の型を閉じた状態で、前記空間に液状の材料を注入し、
前記材料を固形化して前記成形物を成形した後に、前記一対の型を開いて前記成形物を取り出す、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形物、電動機、成形物を製造するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
型の合わせ面に相当する位置に形成されるパーティングラインを所定の位置に配置させている成形物が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-243028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、孔又は凸部が形成された成形物において、型からの成形物の取り出しを可能とする観点から、孔又は凸部の位置にパーティングラインが配置される。このような成形物において、パーティングラインを、製品の外観上、目立たない位置に配置させることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様において、成形物は、筒状の本体部と、本体部を径方向に貫通する孔、又は本体部から径方向に突出する凸部とを備え、成形物には、型の合わせ面に対応するパーティングラインが形成され、パーティングラインは、孔又は凸部から本体部の周方向の一方へ延びる第1のラインと、第1のラインの周方向の一方の端点から本体部の軸方向の端部まで延びる第2のラインとを有する。
【0006】
本開示の他の態様において、電動機は、上記の成形物をモータハウジングとして備える。本開示のさらに他の態様において、上記の成形物を製造するための装置は、互いに開閉可能な一対の型であって、互いに閉じられたときに成形物を形成するための空間を内部に画定する、一対の型を備える。
【0007】
一対の型は、該一対の型が閉じられたときに互いに接触する合わせ面を有し、合わせ面は、孔又は凸部に対応する位置から周方向の一方へ延び、第1のラインを形成する第1の合わせ面と、第1の合わせ面の周方向の一方の端縁から軸方向の一方へ延び、第2のラインを形成する第2の合わせ面とを有する。本開示のさらに他の態様において、上述の装置を用いて成形物を製造する方法は、一対の型が合わせ面で互いに接触するように該一対の型を閉じた状態で、空間に液状の材料を注入し、材料を固形化して成形物を成形した後に、一対の型を開いて成形物を取り出す。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、孔又は凸部を型によって成形することができるとともに、パーティングラインを、一外観上、比較的目立たない位置に配置させることができる。これにより、成形物の審美性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る電動機の側方図である。
図2図1に示す成形物を、図1中の矢印Bの方向から見た図である。
図3図2に示す成形物を、図2中の矢印Dの方向から見た図である。
図4】一実施形態に係る、成形物を製造する装置の図である。
図5図4に示す一対の型を、図4中の矢印Gの方向から見た図である。
図6】他の実施形態に係る成形物の要部を拡大した拡大図である。
図7】さらに他の実施形態に係る成形物の図であって、図2に対応する。
図8】他の実施形態に係る、成形物を製造する装置の図である。
図9図8に示す型によって成形された成形物の図であって、図7に対応する。
図10】さらに他の実施形態に係る成形物の図であって、図2に対応する。
図11】さらに他の実施形態に係る成形物の図であって、図2に対応する。
図12】さらに他の実施形態に係る成形物の図であって、図2に対応する。
図13】さらに他の実施形態に係る成形物の図であって、図2に対応する。
図14図13に示す成形物を、図13中の矢印Hから見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する種々の実施形態において、同様の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。まず、図1を参照して、一実施形態に係る電動機10について説明する。以下の説明において、軸方向とは、電動機10のロータの回転軸線Aに沿う方向を示し、周方向とは、軸線Aの周りの方向を示し、径方向とは、該軸線Aを中心とする円の半径方向を示す。また、便宜上、図中の矢印Cの方向を軸方向前方、図中の矢印Eの方向を周方向一方、矢印Fの方向を周方向他方として言及する。
【0011】
電動機10は、ロータ12、ステータ14、成形物16及び18を備える。ロータ12は、軸線A周りに回転可能となるように成形物16及び18に支持され、回転シャフト20と、該回転シャフト20の外周面に固設されたロータコア(図示せず)とを有する。回転シャフト20は、軸線Aに沿って真直ぐに延在している。ロータコアは、ステータ14から径方向内方へ僅かに離隔するように該ステータ14の内部に配置され、複数の磁石(図示せず)を内蔵している。
【0012】
ステータ14は、8角形の外形を有する筒状部材であって、軸方向に積層された複数の磁性鋼板から構成されている。ステータ14の内周部には、コイル(図示せず)が巻回されている。成形物16は、ステータ14の軸方向前方の端部に固定されたモータハウジングである。成形物16は、ステータ14と略同じ外形(すなわち、8角形)を有する筒状部材であって、型によって成形される(例えば、アルミダイカスト)。
【0013】
一方、成形物18は、ステータ14の軸方向後方の端部に固定されたモータハウジングである。成形物18は、上述の成形物16と同様に、型によって成形される(例えば、アルミダイカスト)。以下、図2及び図3を参照して、成形物18の詳細について説明する。
【0014】
成形物18は、本体部22、貫通孔24、及び凸部26を備える。本体部22は、ステータ14と略同じ外形(すなわち、8角形)を有する筒状部材である。本体部22は、軸線Aを基準としてステータ14と略同心に配置される。本体部22は、軸方向前方の端面23、及び軸方向後方の端面25を有する。これら端面23及び25の少なくとも一方は、後加工(例えば、切削加工)により、軸方向と略直交する平面に成形されている。
【0015】
凸部26は、本体部22から径方向外方へ突出するように該本体部22に設けられている。凸部26は、径方向から見て四角形の外形を有し、本体部22の8角形の外形の一辺を画定する外面22aに一体に形成されている。貫通孔24は、本体部22及び凸部26を径方向へ貫通するように設けられている。本実施形態においては、貫通孔24は、中心軸線Aを有する円形孔であって、凸部26の外面26aから本体部22の内周面22b(図3)まで、本体部22及び凸部26を貫通している。本実施形態においては、貫通孔24と凸部26とは、略同心に配置されている。
【0016】
ステータ14に巻回されたコイルからの引き出し線、又は、成形物18の内部に設けられたエンコーダ等の電子機器(図示せず)からの信号線は、貫通孔24を通して、電動機10の外部に引き出される。本体部22の軸方向後方の端部には、面取り部30が形成されている。面取り部30は、本体部22の全周に亘って周方向に延在するように、端面25の径方向外縁に設けられている。
【0017】
図2に示すように、成形物18には、パーティングライン32が形成されている。パーティングライン32は、後述する一対の型によって成形物18を成形したときに、該一対の型の合わせ面に対応する位置に形成される微小突起である。本実施形態においては、パーティングライン32は、ライン32a、ライン32b、ライン32c、ライン32d、及びライン32eを有する。
【0018】
ライン32a(第1のライン)は、貫通孔24及び凸部26の中心(すなわち、軸線A)と略同じ軸方向位置に配置され、貫通孔24から端点Pまで周方向一方へ真直ぐに延びている。なお、本実施形態においては、端点Pは、凸部26の周方向一方の端面26bよりも周方向一方側にあり、外面22aの周方向一方の端縁22c(すなわち、本体部22の8角形の外形の一辺)上に配置されている。
【0019】
ライン32b(第2のライン)は、端点Pから、本体部22の軸方向後方の端部まで延びている。具体的には、ライン32bは、端点Pから、面取り部30の軸方向前側の縁30aに配置された端点Pまで、軸方向に対して傾斜して真直ぐに延在している。ライン32a及び32bの間の角度θは、鈍角(例えば、120°)に設定される。
【0020】
ライン32c(第3のライン)は、端点Pから端点Pまで、面取り部30の縁30aに沿って周方向一方へ延在している。本実施形態においては、端点Pは、面取り部30の縁30aに配置され、ライン32cは、その全域が面取り部30の縁30aに配置されるように、周方向へ延在している。
【0021】
一方、ライン32e(第1のライン)は、ライン32aと同様に、貫通孔24及び凸部26の中心(軸線A)と略同じ軸方向位置に配置され、貫通孔24から端点Pまで周方向他方へ真直ぐに延びている。本実施形態においては、端点Pは、凸部26の周方向他方の端面26cよりも周方向他方側にあり、外面22aの周方向他方の端縁22d(すなわち、本体部22の8角形の外形の一辺)上に配置されている。
【0022】
ライン32d(第2のライン)は、端点Pから、本体部22の軸方向後方の端部まで延びている。具体的には、ライン32dは、端点Pから端点Pまで、軸方向に対して傾斜して真直ぐに延在している。ライン32e及び32dの間の角度θは、鈍角(例えば、120°)に設定される。なお、角度θとθとは、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0023】
次に、図4及び図5を参照して、上述の成形物18を製造するための装置50について説明する。装置50は、一対の型52及び54、ピン56、駆動部57、材料供給装置63、並びに、押し出し装置61を備える。一対の型52及び54は、互いに開閉可能に設けられている。より具体的には、型54は、固定されている一方、型52は、型54に対して接近及び離反するように移動可能に設けられている。なお、図4は、型52及び54が互いに閉じられている状態を示している。
【0024】
一対の型52及び54は、図4に示すように閉じられたときに、上記の本体部22を形成するための筒状の空間58と、上記の凸部26を形成するための空間59とを内部に画定する。空間58を画定する型54の底面53の径方向外縁部には、上記の面取り部30を形成する筒状の傾斜面55が形成されている。
【0025】
一対の型52及び54は、型孔60、及び合わせ面62を有する。型孔60は、上述の貫通孔24に対応する、中心軸線Aを有する円形孔であって、型52及び54が閉じられたときに該型52及び54の間に画定される。型孔60は、空間59に連通しており、空間59に対して軸線Aを基準として同心に配置されている。
【0026】
合わせ面62は、一対の型52及び54が閉じられたときに互いに接触する型52の面と型54の面とから構成され、合わせ面62a、62b、62c、62d、及び62eを有する。合わせ面62a(第1の合わせ面)は、型孔60の中心(すなわち、軸線A)と略同じ軸方向位置に配置され、該型孔60から周方向一方へ延びている。合わせ面62aは、軸方向と略直交する平面である。合わせ面62aは、上述のライン32aを形成する。
【0027】
合わせ面62b(第2の合わせ面)は、合わせ面62aの周方向一方の端縁Qから軸方向後側へ延びている。具体的には、合わせ面62bは、平面であって、端縁Qから、該端縁Qとは反対側の端縁Qまで、軸方向に対して傾斜するように延在している。合わせ面62bは、上述のライン32bを形成する。
【0028】
合わせ面62c(第3の合わせ面)は、端縁Qから端縁Qまで、周方向一方へ延在する環状平面であって、軸方向と略直交する。合わせ面62cは、上述のライン32cを形成する。端縁Q及びQと合わせ面62cとは、上述した傾斜面55の軸方向前端と同じ軸方向位置に、配置される。
【0029】
一方、合わせ面62e(第1の合わせ面)は、合わせ面62aと同様に、型孔60の中心(軸線A)と略同じ軸方向位置に配置され、型孔60から端縁Qまで周方向他方へ延びている。合わせ面62eは、軸方向と略直交する平面であって、上述のライン32eを形成する。
【0030】
合わせ面62d(第2の合わせ面)は、合わせ面62eの周方向他方の端縁Qから軸方向後側へ延びている。具体的には、合わせ面62eは、平面であって、端縁Qから端縁Qまで、軸方向に対して傾斜するように延在している。合わせ面62dは、上述のライン32dを形成する。
【0031】
ピン56は、型孔60と同心に配置された、該型孔60と同じ外形を有する円柱状部材である。ピン56は、空間58及び59に対して径方向へ進退可能となるように、型孔60に挿入されている。ピン56は、例えば、オペレータによって手動で進退されてもよいし、又は、装置50は、ピン56を自動で移動させる第2の駆動部(シリンダ、又はモータ等)をさらに備えてもよい。ピン56は、上述の貫通孔24を形成する。
【0032】
駆動部57は、例えばシリンダ又はモータを有し、型52を型54に対して移動させて、型52及び54を開閉させる。材料供給装置63は、成形物18の液状材料を、スプール64、ランナ66、及びゲート68を通して、一対の型52及び54の内部の空間58及び59に注入し、充填する。なお、本実施形態においては、スプール64、ランナ66、及びゲート68は、型54に設けられている。しかしながら、スプール64、ランナ66、及びゲート68は、型52に設けられてもよい。
【0033】
押し出し装置61は、型52及び54によって成形物18を成形して該型52及び54を開いた後に、一方の型52に接着している成形物18に力を加えて、該成形物18を該型52から引き離す。具体的には、押し出し装置61は、型52に軸方向に進退可能に設けられた押し出しピンと、該押し出しピンを駆動する第3の駆動部(ともに図示せず)とを有し、押し出しピンによって型52に接着している成形物18を軸方向後方へ押す。これにより、成形物18を型52から引き離し、型52及び54から取り出すことができる。
【0034】
次に、装置50を用いて成形物18を製造する方法について説明する。まず、駆動部57は、一対の型52及び54が合わせ面62で互いに接触するように、該一対の型52及び54を閉じる(いわゆる、型締め)。このとき、ピン56は、型孔60を通して空間58及び59に挿入され、該空間58及び59を径方向に横断する前進位置に配置される。次いで、材料供給装置63は、成形物18の液状材料を空間58及び59に注入し、充填する。
【0035】
次いで、オペレータは、空間58及び59に充填された材料を冷却し、該材料を固形化する。これにより、空間58及び59において成形物18が成形される。次いで、オペレータ(又は、第2の駆動部)は、ピン56が空間58及び59から抜去される後退位置まで該ピン56を径方向外方へ移動させる。次いで、駆動部57は、型52を軸方向前方へ移動させて型54から離反させ、これにより型52及び54を開く。
【0036】
このとき、成形物18は、型52に接着されており、該型52とともに軸方向前方へ移動する。次いで、押し出し装置61は、第3の駆動部によって押し出しピンを軸方向後方へ移動させ、該押し出しピンによって型52に接着している成形物18を押す。その結果、成形物18が型52から離反して、型52及び54から取り出される。
【0037】
このようにして、合わせ面62に対応する位置にパーティングライン32が形成された成形物18が製造される。上述したように、このパーティングライン32は、貫通孔24及び凸部26から延びるライン32a、32eと、該ライン32a、32eから本体部22の軸方向後方の端部まで延びるライン32b、32dとを有している。
【0038】
この構成によれば、貫通孔24及び凸部26を型52及び54によって成形することができるとともに、パーティングライン32を、ライン32a、32b、32d、32e以外の周方向区間(本実施形態においては、ライン32b)において、本体部22の軸方向の端部に配置することができる。
【0039】
したがって、パーティングライン32を、一部の周方向区間(ライン32b)において、外観上、比較的目立たない位置に配置させることができるので、成形物18の審美性を向上させることができる。また、仮に、パーティングライン32を、ライン32a、32b、32d、32e以外の周方向区間で、後加工(例えば、切削加工)により除去する場合において、該周方向区間でパーティングライン32が本体部22の軸方向の端部に配置されていることから、該周方向区間でパーティングライン32を加工し易くなる。
【0040】
また、本実施形態においては、パーティングライン32は、面取り部30に配置されたライン32bを有している。この構成によれば、ライン32bを、外観上、より効果的に目立たなくすることができる。また、本実施形態においては、ライン32bは、面取り部30の縁30aに配置されている。この構成によれば、ライン32bを、さらに効果的に目立たなくすることができるので、後加工によるパーティングライン32の処理を省略することもできる。なお、ライン32bは、面取り部30の縁30aに限らず、面取り部30の平面部に形成されてもよい。
【0041】
また、本体部22において、面取り部30の代わりに、丸みのある角部が形成されてもよい。このような形態を図6に示す。図6に示す形態においては、本体部22の軸方向後方の端部に、丸みのある角部30’(いわゆる、R部)が形成されている。そして、ライン32cは、丸みのある角部30’の縁30a’に沿って延びている。この丸みのある角部30’は、一対の型によって成形されてもよいし、後加工(切削加工)によって形成されてもよい。
【0042】
次に、図7を参照して、他の実施形態に係る成形物18’について説明する。成形物18’は、上述の成形物18の代わりに、電動機10に適用可能である。成形物18’は、上述の成形物18と、パーティングライン32’において相違する。具体的には、パーティングライン32’は、ライン32a、32b、32d、及びライン32eを有する一方、ライン32cを有していない。
【0043】
次に、図8を参照して、成形物18’を製造するための装置50’について説明する。装置50’は、上述の装置50と、一対の型52’及び54’において、相違する。具体的には、一対の型52’及び54’は、型孔60、及び合わせ面62’を有し、該合わせ面62’は、合わせ面62a、62b’、62c’、62d’、及び62eを有する。
【0044】
合わせ面62b’(第2の合わせ面)は、平面であって、端縁Qから軸方向後方へ延び、該端縁Qとは反対側の端縁Q’まで、軸方向に対して傾斜するように延在している。合わせ面62c’(第3の合わせ面)は、端縁Q’から端縁Q’まで、周方向一方へ延在する環状平面であって、軸方向と略直交する。ここで、端縁Q’及びQ’と合わせ面62c’とは、型54’の底面53と同じ軸方向位置に配置されている。
【0045】
合わせ面62d’(第2の合わせ面)は、平面であって、端縁Qから軸方向後方へ延び、端縁Qから端縁Q’まで、軸方向に対して傾斜するように延在している。型54’には、上述した傾斜面55が形成されておらず、一対の型52’及び54’は、互いに閉じられたときに、空間58’を内部に画定する。
【0046】
次に、装置50’を用いて成形物18’を製造する方法について説明する。まず、駆動部57は、一対の型52’及び54’が合わせ面62’で互いに接触するように、該一対の型52’及び54’を閉じる(いわゆる、型締め)。このとき、ピン56は、型孔60を通して空間58’及び59を横断する前進位置に配置される。次いで、材料供給装置63は、液状の材料を空間58’及び59に注入し、充填する。
【0047】
次いで、オペレータは、空間58’及び59に充填された材料を冷却し、該材料を固形化する。次いで、オペレータ(又は、第2の駆動部)は、ピン56を後退位置に配置するように該ピン56を径方向外方へ移動させる。次いで、駆動部57は、型52’及び54’を開き、押し出し装置61は、押し出しピンを駆動させて、成形物を型52’及び54’から取り出す。
【0048】
このときに成形される成形物を図9に示す。図9に示す成形物18”は、上述の成形物18’と、以下の構成において相違する。すなわち、成形物18”には、パーティングライン32”が形成され、該パーティングライン32”は、ライン32a、32b’、32c’、32d’、及びライン32eを有する。
【0049】
ライン32b’は、一対の型52’及び54’の合わせ面62b’に対応する位置に、形成される。ライン32b’は、端点Pから端点P’まで、軸方向に対して傾斜して真直ぐに延在している。ライン32c’は、一対の型52’及び54’の合わせ面62c’に対応する位置に、形成される。ライン32c’は、端点P’から端点P’まで、周方向一方へ延在している。
【0050】
ここで、端点P’及びP’は、本体部22’の軸方向後方の端面25の位置に、配置されている。したがって、ライン32c’は、端面25の径方向外縁に形成されている。ライン32d’は、一対の型52’及び54’の合わせ面62d’に対応する位置に、形成される。ライン32d’は、端点Pから端点P’まで、軸方向に対して傾斜して真直ぐに延在している。このように、一対の型52’及び54’によって、成形物18”が成形される。
【0051】
成形物18”の成形後、オペレータは、成形物18”の本体部22’の軸方向後方の端部を、加工機等を用いて面取り加工し、該端部に面取り部30を形成する。その結果、図7に示すように、面取り部30が形成された本体部22を有する成形物18’が製造される。この面取り加工によって、面取り部30が形成されるとともに、図9に示すライン32b’及び32d’の軸方向後方の端部と、ライン32c’とが除去され、図7に示すパーティングライン32’が形成されることになる。
【0052】
成形物18’によれば、貫通孔24及び凸部26を型52’及び54’によって成形することができるとともに、パーティングライン32’の一部(すなわち、ライン32b’及び32d’の軸方向後方の端部と、ライン32c’)が除去されることで、該パーティングライン32’を目立たなくすることができる。
【0053】
なお、上記の成形物18、18’から、貫通孔24を省略することができる。このような形態を図10に示す。図10に示す成形物70は、上述の成形物18と、以下の構成において相違する。すなわち、成形物70においては、凸部26及び本体部22に、貫通孔24が形成されていない。
【0054】
また、成形物70には、パーティングライン72が形成され、該パーティングライン72は、ライン73、32b、32c、及び32dを有する。ライン73(第1のライン)は、凸部26の中心(軸線A)を通過し、端点Pと端点Pとの間で周方向に真直ぐ延在している。
【0055】
この成形物70の凸部26には、例えば、後加工により貫通孔24を形成することもできる。又は、成形物70の凸部26にタップ穴を形成し、該タップ穴に電動機10を持ち上げるための把手(例えば、アイボルト)を締結してもよい。この場合、該把手をクレーン等で持ち上げて、電動機10を運搬することができる。
【0056】
なお、ライン73は、凸部26の中心を必ずしも通過する必要はなく、凸部26の軸方向区間内において、該凸部26の中心から軸方向にずれてもよい。このような形態を、図11に示す。図11に示す成形物70’には、パーティングライン74が形成され、該パーティングライン74は、ライン73’、32b”、32c、及び32d”を有する。ライン73’は、凸部26の中心(軸線A)から軸方向後方へずれた位置で、端点P’と端点P’との間で周方向へ真直ぐに延在している。
【0057】
また、ライン32b”は、端点P’と端点Pとの間で軸方向に対して傾斜して延在し、ライン32d”は、端点P’と端点Pとの間で軸方向に対して傾斜して延在している。以上のような成形物70、70’も、一対の型よって成形することできる。この場合、上述のピン56は省略され、該一対の型は、ライン73、73’を形成する合わせ面を有する。
【0058】
また、上述の貫通孔24が、凸部26と同様の外形を有する場合は、ライン32a、32eは、貫通孔の中心と同じ軸方向の位置に配置する必要はなく、該貫通孔の軸方向区間内において、該貫通孔の中心から軸方向にずれてもよい。このような形態を、図12に示す。
【0059】
図12に示す成形物76は、上述の成形物70’と、以下の構成において相違する。すなわち、成形物76は、上述の凸部26を有していない一方、本体部22を径方向に貫通する貫通孔78を有している。貫通孔78は、径方向から見て四角形の外形を有し、貫通孔78を画定する周方向一方の端面78aと周方向他方の端面78bとは、軸方向と平行である。
【0060】
また、成形物76には、パーティングライン79が形成され、該パーティングライン79は、ライン32a’、32b”、32c、32d”、及び32e’を有する。ライン32a’は、貫通孔78の中心(軸線A)から軸方向後方へずれた位置で、該貫通孔78から端点P’まで周方向一方へ真直ぐに延在している。
【0061】
一方、ライン32e’は、貫通孔78の中心(軸線A)から軸方向後方へずれた位置で、該貫通孔78から端点P’まで周方向他方へ真直ぐに延在している。この成形物76も、一対の型よって成形することできる。この場合、上述のピン56は、貫通孔78と同じ外形を有し、該貫通孔78は、該ピン56によって形成される。
【0062】
なお、成形物16は、成形物18、18’(18”)、70、70’又は76と同じ形状を有し、上述の装置50又は50’によって製造されてもよい。また、端点P(又はP)は、外面22aの端縁22c(又は22d)から周方向へずれた位置にあってもよい。
【0063】
ステータ14、成形物18、18’、18”、70、70’又は76の外形は、8角形以外の多角形でもよいし、又は、円形、楕円形等、如何なる形状でもよい。また、ライン32a、32a’、32b、32b’、32b”、32c、32c’、32d、32d’、32d”、32e、32e’、又は73’は、曲線でもよい。また、ライン32b、32b’、又は32b”(第2のライン)は、軸方向(軸線A)と平行に延びてもよい。
【0064】
また、貫通孔24、78、又は凸部26は、周方向に並ぶように複数設けられてもよい。このような実施形態を図13及び図14に示す。図13及び図14に示す成形物80は、上述の成形物18と、以下の構成において相違する。すなわち、成形物80は、凸部82をさらに備える。凸部82は、貫通孔24及び凸部26から周方向一方へずれた位置に配置され、本体部22の外面22eから径方向外方へ突出するように該外面22eに一体に形成されている。
【0065】
成形物80には、パーティングライン84が形成され、該パーティングライン84は、ライン32a、ライン32b、ライン32c、ライン32f、ライン32g、ライン32h、ライン32c、ライン32d、及びライン32eを有する。ライン32c(第3のライン)は、端点Pから端点Pまで、面取り部30の縁30aに沿って周方向一方へ延在している。端点Pは、端点Pから周方向一方側において、面取り部30の縁30aに配置されている。
【0066】
一方、ライン32g(第1のライン)は、凸部82を通過し、端点Pと端点Pとの間で周方向に真直ぐ延在している。ライン32f(第2のライン)は、端点Pから端点Pまで、軸方向に対して傾斜して真直ぐに延在している。ライン32h(第2のライン)は、端点Pから端点Pまで、軸方向に対して傾斜して真直ぐに延在している。端点Pは、面取り部30の縁30aに配置されている。
【0067】
ライン32c(第3のライン)は、端点Pから端点Pまで、面取り部30の縁30aに沿って周方向一方へ延在している。凸部82は、上述の把手締結用のタップ穴を形成するための要素として用いることができる。この成形物80を成形するための一対の型は、パーティングライン84を形成する合わせ面を有するものであることが理解されよう。
【0068】
なお、上述の凸部26の周方向の端面26b及び26cは、軸方向と概ね平行であるが、実際上は、その間の周方向幅がライン32a、32e、73、73’の位置で最大となるように軸方向に対して傾斜するテーパ面となっている。同様に、上述の凸部82の周方向の両端面は、軸方向と概ね平行であるが、実際上は、その間の周方向幅がライン32gの位置で最大となるように軸方向に対して傾斜するテーパ面となっている。
【0069】
また、上述の実施形態においては、成形物18、18’、70、70’76、又は80が電動機10のモータハウジングである場合について述べたが、これに限らず、如何なる装置の如何なる部品であってもよい。例えば、成形物18、18’、70、70’76、又は80は、2つの管を連結するジョイント部材であってもよいし、又は、管が内部に相通されて該管を他の部材に固定する拘束具等であってもよい。以上、実施形態を通じて本開示を説明したが、上述の実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0070】
10 電動機
16,18 成形物
22,22’ 本体部
24,78 貫通孔
26,82 凸部
32,32’,32”、72,74,79,84 パーティングライン
32a,32a’,32b,32b’,32b”,32c,32c’,32c,32c,32d,32d’,32d”,32e,32e’,32f,32g,32h,73’ ライン
52,52’,54,54’ 型
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14