(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】ソケット
(51)【国際特許分類】
H01R 33/76 20060101AFI20230720BHJP
H01R 12/57 20110101ALI20230720BHJP
【FI】
H01R33/76 503Z
H01R12/57
(21)【出願番号】P 2019196587
(22)【出願日】2019-10-29
【審査請求日】2022-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094330
【氏名又は名称】山田 正紀
(72)【発明者】
【氏名】橋本 尚貴
(72)【発明者】
【氏名】橋本 信一
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0233628(US,A1)
【文献】特開2018-174017(JP,A)
【文献】特開2004-104102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 33/76
H01R 12/57
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状ハウジング、
前記平板状ハウジングに支持された多数のコンタクト、
前記平板状ハウジングに取り付けられて該平板状ハウジングに沿って延び、前記多数のコンタクトに接触する多数のパッドが下面に形成された電子部品を搭載する際の該平板状ハウジングの面内方向の位置決めとなる枠体、および
前記平板状ハウジングの、搭載される回路基板側を向いた下面に配置され、前記多数のコンタクトの各々に電気的に接続されて該回路基板と電気的に接続される多数の第1の半田ボール、および
前記平板状ハウジングの前記下面に、電気的な接続とは無関係に配置された複数の第2の半田ボールを備えたことを特徴とするソケット。
【請求項2】
前記第2の半田ボールが、前記第1の半田ボールよりも前記平板状ハウジングの縁に寄った位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のソケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触パッドが底面に2次元的に配列された電子部品が装着されるソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
大規模な電子部品は、回路基板に搭載する際に、その回路基板に直接に半田付けするのではなく、ソケットを介して実装されることが多い。すなわち、ソケットが回路基板に半田付けされ、そのソケットに電子部品が装着されることが多い。そのソケットには、電子部品の底面に配列された接触パッドの各々に接触する多数のコンタクトが、平板状のハウジングの第1面から突き出るようにして配列されている。また、そのハウジングの第2面には、第1面の多数のコンタクトそれぞれに対応する多数の半田ボールが配置される。特許文献1には、平板状の支持体と、多数のコンタクトと、多数の半田ボール(バンプ)を備えたソケットが開示されている。
【0003】
このようなソケットのハウジングとして、従来はLCP樹脂が使用されることが多い。ところが、このLCP樹脂は、回路基板とは熱膨張率が異なる。近年では、底面に2次元的に、例えば1mmピッチで5000個もの接触パッドが配列された大規模なCPU等の電子部品が登場してきている。このような電子部品用のソケットのハウジングをLCP樹脂で構成すると、LCP樹脂と回路基板との熱膨張率の違いに起因して、半田付け部に割れが生じるおそれや、ソケットを回路基板に半田付けして常温に戻ったときにソケットに反りが生じるおそれがある。
【0004】
そこで、近年では、ソケットのハウジングとして、回路基板と同じ材質の平板状のハウジングが使われてきている。ソケットのハウジングとして回路基板と同じ材質の平板状ハウジングを採用すれば、熱膨張率の差に起因する問題を抑えた大規模な電子部品用のソケットを構成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ハウジングと回路基板とが同じ材質といっても完全同一ではないので、熱膨張率に若干の差異がある。5,000ピンもの多極のソケットではその際も無視できず、リフロー半田付け後、常温に戻るまでの間に、特に四隅の半田接合部が大きなストレスを受ける。
【0007】
また、多数の接触パッドを有する電子部品を実装すると、半田接合部は垂直荷重によるストレスを受ける。
【0008】
この垂直荷重によるストレスの問題を解決するために、平板状ハウジングの、回路基板側を向いた面の複数箇所に、スペーサを配置することが考えられる。このスペーサを配置してそのスペーサを回路基板に当接させれば、平板状ハウジング上の位置によらず一定の間隔とすることができる。これにより、垂直荷重に起因する半田接合部へのストレスを抑えることができる。
【0009】
しかしながら、スペーサを配置すると、そのスペーサという部品が増え、その組立工数が増えてコストを押し上げる要因となる。
【0010】
本発明は、新たな部品を追加することなく、半田接合部へのストレスを抑えたソケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成する本発明のソケットは、
平板状ハウジング、
平板状ハウジングに支持された多数のコンタクト、
平板状ハウジングに取り付けられてその平板状ハウジングに沿って延び、多数のコンタクトに接触する多数のパッドが下面に形成された電子部品を搭載する際の平板状ハウジングの面内方向の位置決めとなる枠体、および
平板状ハウジングの、搭載される回路基板側を向いた下面に配置され、多数のコンタクトの各々に電気的に接続されて回路基板と電気的に接続される多数の第1の半田ボール、および
平板状ハウジングの下面に、電気的な接続とは無関係に配置された複数の第2の半田ボールを備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明のソケットは、上記の第2の半田ボールを備えている。このため、全体としての半田付け強度が増し、第1の半田ボールへのストレスを緩和し、半田接合不良を防止する。
【0013】
ここで、本発明のソケットにおいて、上記第2の半田ボールが、第1の半田ボールよりも平板状ハウジングの縁に寄った位置に配置されていることが好ましい。
【0014】
上記の第1の半田ボールは、平板状ハウジングの中央部には密に配置される。ただし、平板状ハウジングの縁に寄った位置には、第1の半田ボールが配置された領域と配置されていない領域との境界が存在するなど、第1の半田ボールが密には配置されていない領域が存在する。そこで、この縁に寄った領域の第2の半田ボールを配置すると、半田接合部へのストレスがさらに効果的に抑えられる。
【発明の効果】
【0015】
以上の本発明のソケットによれば、スペーサ等の別部品を追加することなく、半田接合部へのストレスを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態としてのソケットの斜視図である。
【
図2】
図1のソケットの、平板状ハウジングの一部を示した図である。
【
図3】平板状ハウジングの第2面を上に向けた姿勢のソケットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態としてのソケットの斜視図である。
【0019】
このソケット10は、平板状ハウジング20と、例えば5000個もの多数のコンタクト30(
図2参照)と、各々がコ字状を成す2個の枠体40とを備えている。
図1では、コンタクト30は図示が省略されている。また、このソケット10は、ばね部材50および着座部材60を備えている。以下、ソケット10の各構成要素について順に説明する。
【0020】
図2は、
図1のソケットの、平板状ハウジングの一部を示した図である。
図2(A)~(E)は、その一部の、それぞれ斜視図(A)、平面図(B)、正面図(C)、
図2(B)に示す矢印X-Xに沿う断面図(D)、および側面図(E)である。
【0021】
平板状ハウジング20には、
図2(D)に示すような、多数のスルーホール21が形成されている。それらのスルーホール21の内壁面は、導電性金属のめっきで形成された導電層である。
【0022】
その平板状ハウジング20には、その第1面20Aから突き出るように多数のコンタクト30が配列されている。それらのコンタクト30は、
図2(D)に示すように、圧入部31がスルーホール21内に挿し込まれて、スルーホール21の内壁面の導電層と電気的に導通している。これらのコンタクト30は、平板状ハウジング20の第1面(上面)20Aに対面するように搭載される電子部品(不図示)の底面に配列された接触パッドに接触して電気的に導通する。
【0023】
また、平板状ハウジング20の第2面20Bには、コンタクト30の各々に対応する半田ボール80が配列されている。それらの半田ボール80は、対応するスルーホール21の内壁面の導電層と電気的に導通している。これにより、各スルーホール21内の導電層を介して各コンタクト30と各半田ボール80が電気的に導通している。このソケット10は、回路基板(不図示)上に搭載され、半田ボール80による半田付けにより、回路基板と電気的に導通した状態となる。
【0024】
また、平板状ハウジング20には、その各縁に沿う位置に、位置決め孔22(
図4参照)が形成されている。一方、枠体40に下面には、その位置決め孔22に対応した位置に位置決め用のボス41(
図4参照)が設けられている。これらのボス41が位置決め孔22に圧入されることで、枠体40が平板状ハウジング20に位置決めされるとともに固定される。
【0025】
図1に示すように、枠体40は、平板状ハウジング20に立設して平板状ハウジング20の縁に沿って延びている。そして、この枠体40は、電子部品を搭載する際の電子部品の側面を案内して平板状ハウジング20の面内方向の位置決めをしている。ただし、この枠体40による位置決めのみでは位置決め精度が十分であるとは言えず、このソケット10では、以下のようにして位置決めの高精度化が行われている。
【0026】
このソケット10には、3個の弾性金属製のばね部材50が備えられている。それらのうち2個のばね部材50は、枠体40の第1辺42に支持されている。また、残りの1個のばね部材50は、枠体40の、第1辺42とは対面しない第2辺43に支持されている。これらのばね部材50は、搭載されてきた電子部品を、ばね部材50が支持された辺とは対面する辺(基準辺)44,45に押し当てる役割を有する。すなわち、第1辺42に支持されたばね部材50は、電子部品をその第1辺42と対面する第3辺44に押し当てている。また、第2辺43に支持されたばね部材50は、電子部品をその第2辺43と対面する第4辺45に押し当てている。第4辺45には、第2辺43に支持されたばね部材50に押された電子部品が押し当てられる、内向きに膨出した受け部451が形成されている。また、図示されていないが、第3辺44にも同様に、第1辺42に支持されたばね部材50に押された電子部品が押し当てられる、内向きに膨出した受け部が形成されている。なお、辺43,には、電子部品の取付方法を決定する半円柱状のキー部材が電子部品の切欠き(不図示)に対応して設けられている。
【0027】
また、着座部材60は、平板状ハウジング20の第1面20Aと搭載される電子部品の底面との間の間隔を、平板状ハウジング20の場所によらず一定の間隔となるように規制する部材である。きわめて多数の接触パッドを有する大寸法の電子部品を搭載するソケットの場合、そのソケットを構成する平板状ハウジングも大面積のハウジングとなる。このため、面積が大きい分、わずかな反りであっても平板状ハウジングの中央部分と縁に近い部分とでは第1面20A(
図2参照)の高さが無視できない程度に異なるおそれがある。これは、すなわち、搭載された電子部品の底面の接触パッドとコンタクト30との間の接触圧が、無視できない程度に異なることを意味している。そこで、このソケット10は、その接触圧が平板状ハウジング20上の位置によらず一定となるように、着座部材60を備えている。この着座部材60は、不図示の圧入部を備え、その圧入部が平板状ハウジング20に形成された挿し込み孔23(
図3参照)に圧入されることにより、平板状ハウジングに固定されている。
【0028】
図3は、平板状ハウジングの第2面を上に向けた姿勢のソケットの斜視図である。
【0029】
また、
図4は、
図3に示す円Rの部分の拡大図である。
【0030】
図3には、多数の半田ボール80が示されている。これらの半田ボール80は、実際には、平板状ハウジング20の第2面(下面)20Bの、一周に亘る縁部20Dと、着座部材60(
図1参照)の圧入部が圧入される挿し込み孔23の周囲とを除く中央部20Cの全域に配置されている。ただし、この配置された半田ボール80を全て描いても煩雑なだけであり、ここでは、一部のみの図示に留めている。この中央部20Cに配置された半田ボールは、コンタクト30(
図2参照)を介して、電子部品と回路基板との間の電気的な接続を担っている半田ボール81である。また、半田ボール80は、平板状ハウジング20の第2面20Bの縁部20Dと第2面20Bの中心付近20Eにも形成されている。この縁部20Dに形成された半田ボール82および中心付近20Eに形成された半田ボール83は、電気的な接続には関係しておらず、平板状ハウジング20の、回路基板への固定や垂直荷重を受ける半田ボールである。ここで、中央部20Cに配置された半田ボール81および中心付近20Eに形成された半田ボール83は、本発明にいう第1の半田ボールの一例に相当する。また、縁部20Dに配置された半田ボール82は、本発明にいう第2の半田ボールの一例に相当する。
【0031】
このソケット10には、平板状ハウジング20の第2面20Bの縁部20Dにも半田ボール82が配置されている。そして、これら縁部20Dの半田ボール82が、中央部20Cに配置された半田ボール81とともに、平板状ハウジング20の、回路基板への固定を担当している。
【0032】
また、第2面20Bの中心付近20Eに配置された半田ボール83は、平板状ハウジング20の回路基板への固定を担当するとともに、電子部品からの垂直荷重を受ける。
【0033】
このように、本実施形態のソケット10によれば、半田接合部へのストレスが低減する。
【符号の説明】
【0034】
10 ソケット
20 平板状ハウジング
20A 第1面(上面)
20B 第2面(下面)
21 スルーホール
30 コンタクト
40 枠体
81 半田ボール(第1の半田ボール)
82 半田ボール(第2の半田ボール)