(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】工具位置検出装置及び工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/22 20060101AFI20230720BHJP
G01B 21/00 20060101ALI20230720BHJP
G05B 19/404 20060101ALN20230720BHJP
【FI】
B23Q17/22 D
G01B21/00 L
G05B19/404 G
(21)【出願番号】P 2019213095
(22)【出願日】2019-11-26
【審査請求日】2022-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000133593
【氏名又は名称】株式会社ツガミ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】風間 浩明
(72)【発明者】
【氏名】近藤 喜大
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-090788(JP,A)
【文献】米国特許第04417490(US,A)
【文献】特開平11-216646(JP,A)
【文献】特開昭61-223509(JP,A)
【文献】中国実用新案第202180213(CN,U)
【文献】国際公開第2001/094061(WO,A1)
【文献】特開2014-087883(JP,A)
【文献】特開2011-093068(JP,A)
【文献】特開平07-266194(JP,A)
【文献】特開平05-050361(JP,A)
【文献】実開平04-109801(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 17/00-23/00
G05B 19/18-19/416
G01B 5/00-5/30
G01B 21/00-21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを把持しつつ軸回転させる主軸に装着されるブラケットと、
平面状に形成される工具検出面を有し、前記工具検出面に工具が接触又は接近することを検出し、前記主軸に前記ブラケットを介して支持される工具センサと、を備え、
前記工具センサは前記主軸の主軸中心線の延長線上に設けられ、
前記ブラケットは前記主軸の先端に位置するチャックナットに装着される、
工具位置検出装置。
【請求項2】
工作機械に搭載される工具位置検出装置であって、
ワークを把持
するコレットチャック及び前記コレットチャックとともに軸回転
する
主軸部を有する主軸
における前記コレットチャックよりも外周側の主軸先端面に
固定されるブラケットと、
平面状に形成される工具検出面を有し、前記工具検出面に工具が接触又は接近することを検出
する工具センサと、
前記主軸の主軸中心線の延長線上に延び、前記ブラケットにおける前記主軸先端面とは反対側に取り付けられ、前記工具センサを支持する支持柱部と、を備え、
前記支持柱部は、
前記主軸中心線の延長線に直交し、前記支持柱部における前記主軸から遠い1つの柱先端面と、
前記主軸中心線の延長線の周囲を囲むように位置し、前記主軸中心線の延長線と平行である複数の柱側面と、を備え、
複数の前記工具検出面のうち、前記柱先端面に対応して設けられる第1工具検出面、及び前記工作機械の高さ方向に平行である前記柱側面に対応して設けられる第2工具検出面は、それぞれ、前記主軸中心線の延長線と同じ高さに位置する、
工具位置検出装置。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の工具位置検出装置と、
前記主軸と、
前記工具、及び前記工具を保持する刃物台を有する工具ユニットと、
前記工具を前記主軸に対して相対的に移動させる移動機構と、
前記主軸及び前記移動機構を制御し、前記移動機構を介して前記工具を前記工具検出面に接触又は接近させたときの前記工具センサの検出結果に基づき工具位置を取得し、取得した前記工具位置と予め設定される基準位置の差に基づき補正量を取得し、取得した前記補正量を加味して前記主軸により把持されたワークを前記工具により加工する制御部と、を備える、
工作機械。
【請求項4】
複数の前記工具検出面のうち第1工具検出面は前記主軸の主軸中心
線と平行であるZ軸方向に直交して延び、
複数の前記工具検出面のうち第2工具検出面は前記Z軸方向に直交するX軸方向に直交して延び、
複数の前記工具検出面のうち第3工具検出面は前記X軸方向及び前記Z軸方向に直交するY軸方向に直交して延び、
前記制御部は、
前記移動機構を介して前記工具を前記工具センサに対して相対的に前記Z軸方向に移動させて前記工具を前記第1工具検出面に接触又は接近させたときの前記工具センサの検出結果に基づき前記Z軸方向における前記工具位置を取得し、
前記移動機構を介して前記工具を前記工具センサに対して相対的に前記X軸方向に移動させて前記工具を前記第2工具検出面に接触又は接近させたときの前記工具センサの検出結果に基づき前記X軸方向における前記工具位置を取得し、
前記移動機構を介して前記工具を前記工具センサに対して相対的に前記Y軸方向に移動させて前記工具を前記第3工具検出面に接触又は接近させたときの前記工具センサの検出結果に基づき前記Y軸方向における前記工具位置を取得する、
請求項
3に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具位置検出装置及び工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工具を刃物台に位置精度高く取り付けるためのツールセッターが知られている。例えば、特許文献1に記載のツールセッターは、位置合わせ用顕微鏡の中心にバイトの先端を合致させることにより縦横位置を決定し、ハイトゲージの先端にバイトの先端を合わせ、高さ位置を決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の構成では、ツールセッターを使用して、バイトの先端の位置合わせを行う必要があり、手間がかかっていた。また、ツールセッターを使用して工具を刃物台に位置精度高く取り付けた場合であっても、主軸及び主軸台等の熱変形によりワークと工具の相対的な位置関係が変化し、精度の高いワークの加工が困難であった。
【0005】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、工具を位置合わせする手間を低減しつつ、精度の高いワークの加工を実現することができる工具位置検出装置及び工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る工具位置検出装置は、ワークを把持しつつ軸回転させる主軸に装着されるブラケットと、平面状に形成される工具検出面を有し、前記工具検出面に工具が接触又は接近することを検出し、前記主軸に前記ブラケットを介して支持される工具センサと、を備え、前記工具センサは前記主軸の主軸中心線の延長線上に設けられ、前記ブラケットは前記主軸の先端に位置するチャックナットに装着される。
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る工具位置検出装置は、工作機械に搭載される工具位置検出装置であって、ワークを把持するコレットチャック及び前記コレットチャックとともに軸回転する主軸部を有する主軸における前記コレットチャックよりも外周側の主軸先端面に固定されるブラケットと、平面状に形成される工具検出面を有し、前記工具検出面に工具が接触又は接近することを検出する工具センサと、前記主軸の主軸中心線の延長線上に延び、前記ブラケットにおける前記主軸先端面とは反対側に取り付けられ、前記工具センサを支持する支持柱部と、を備え、前記支持柱部は、前記主軸中心線の延長線に直交し、前記支持柱部における前記主軸から遠い1つの柱先端面と、前記主軸中心線の延長線の周囲を囲むように位置し、前記主軸中心線の延長線と平行である複数の柱側面と、を備え、複数の前記工具検出面のうち、前記柱先端面に対応して設けられる第1工具検出面、及び前記工作機械の高さ方向に平行である前記柱側面に対応して設けられる第2工具検出面は、それぞれ、前記主軸中心線の延長線と同じ高さに位置する。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第3の観点に係る工作機械は、前記工具位置検出装置と、前記主軸と、前記工具、及び前記工具を保持する刃物台を有する工具ユニットと、前記工具を前記主軸に対して相対的に移動させる移動機構と、前記主軸及び前記移動機構を制御し、前記移動機構を介して前記工具を前記工具検出面に接触又は接近させたときの前記工具センサの検出結果に基づき工具位置を取得し、取得した前記工具位置と予め設定される基準位置の差に基づき補正量を取得し、取得した前記補正量を加味して前記主軸により把持されたワークを前記工具により加工する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、工具位置検出装置及び工作機械において、工具を位置合わせする手間を低減しつつ、精度の高いワークの加工を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る工作機械の概略平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る工作機械の概略正面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る(a)は工作機械の概略側面図であり、(b)は(a)の一部を拡大した図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る事前設定方法のフローチャートである。
【
図7】本発明の一実施形態に係る工具位置補正方法のフローチャートである。
【
図8】本発明の変形例に係るガイドブッシュ装置を備えた工作機械の一部を示す概略正面図である。
【
図9】本発明の変形例に係るタレット装置を備えた工作機械の一部を示す概略正面図である。
【
図10】本発明の変形例に係るタレット装置を備えた工作機械の一部を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態に係る工具位置検出装置及び工作機械について図面を参照して説明する。
図1に示すように、工作機械1は、ワークを加工するNC(Numerical Control)旋盤である。詳しくは、工作機械1は、工作機械1全体の台であるベッドSと、第1主軸ユニット10と、第1Z軸移動機構13と、工具機構30と、第2主軸ユニット70と、工作機械1を制御する制御部300と、操作入力部301と、ディスプレイ部302と、工具ユニット20と、第2Z軸スライド機構75と、X軸スライド機構76と、工具位置検出装置80,90と、を備える。
【0011】
(第1主軸ユニット10)
図1に示すように、第1主軸ユニット10は、ワークを把持しつつ軸回転させ、ワークの正面側を加工する。第1主軸ユニット10は、ワークを回転可能に支持する正面主軸である第1主軸14と、第1主軸14を回転可能に支持する第1主軸台11と、を備える。
【0012】
図2に示すように、第1Z軸移動機構13は第1主軸ユニット10を第1主軸14の主軸中心Bに沿うZ軸方向に移動させる。第1Z軸移動機構13は、Z軸モータ13zでねじ軸13aを軸回転させることでナット13bとともに第1主軸ユニット10をZ軸方向に移動させる。
【0013】
図4に示すように、第1主軸14は、主軸部14aと、コレットスリーブ14bと、コレットチャック14cと、チャックナット14dと、を備える。
主軸部14aは、円筒状をなし、第1主軸14に内蔵される図示しないモータの駆動力により軸回転する。主軸部14aの外周面にはチャックナット14dが嵌め込まれている。
【0014】
コレットチャック14cは、主軸部14a内に位置し、ワークの外周面を把持可能に、周方向に沿って複数に分割された部材を有する円筒状をなす。コレットチャック14cの外周面には、コレットチャック14cの先端に向かうにつれて径方向外側へ傾斜する傾斜面14c1が形成されている。
【0015】
コレットスリーブ14bは、主軸部14aとコレットチャック14cの間に位置し、円筒状をなす。コレットスリーブ14bは、制御部300による制御のもと、図示しないエアシリンダ等の駆動源によりZ軸方向に移動する。コレットスリーブ14bは、コレットチャック14cの先端側に移動することにより、コレットチャック14cの傾斜面14c1を介して、コレットチャック14cを縮径させる。コレットチャック14cは縮径することによりコレットチャック14c内のワークを把持する。
【0016】
チャックナット14dは、底部に貫通孔が形成された有底筒状をなす。チャックナット14dは、側周部14d1と、先端部14d2と、を備える。側周部14d1は、主軸部14aの外周を囲み、Z軸方向に延びる円筒状をなす。側周部14d1の内周面には、主軸部14aの外周面に螺合するねじ溝が形成されている。先端部14d2は、側周部14d1の工具位置検出装置80に近い端部から側周部14d1の径方向内側に向けて延びる平板リング状をなす。先端部14d2は、コレットチャック14cの先端部の外周を囲む。先端部14d2の工具位置検出装置80に対向する先端面には、ねじ88eの軸部が螺合するねじ孔14d3が形成されている。
【0017】
(工具機構30)
図1及び
図2に示すように、工具機構30は、第1主軸ユニット10により把持されたワークに対して工具35a,36aをX軸方向及びY軸方向に移動させる。工具機構30は、ベッドSに固定された固定台41と、固定台41に固定されるガイドブッシュレス用カバー97と、工具ユニット35,36と、工具ユニット35,36をX軸方向に移動させるX軸移動機構33と、工具ユニット35,36を高さ方向に沿うY軸方向に移動させるY軸移動機構32(
図2参照)と、を備える。Y軸移動機構32及びX軸移動機構33は、第1Z軸移動機構13と同様に、モータ、ねじ軸及びナットにより構成される。第1Z軸移動機構13、Y軸移動機構32又はX軸移動機構33は、制御部300による制御のもと、工具35a,36aを第1主軸14により回転されるワークに対して移動させることによりワークの加工を行う。
【0018】
図3(a)に示すように、工具ユニット35,36は、それぞれ、バイトからなる複数の工具35a,36aと、複数の工具35a,36aをX軸方向に沿うように保持する刃物台35b,36bと、を備える。工具ユニット35,36は、第1主軸14に装着された工具位置検出装置80又は第1主軸14が把持するワークをX軸方向において挟み込むように位置する。
【0019】
図1及び
図2に示すように、固定台41は、主軸中心Bを中心として形成され、主軸中心Bに沿う方向に貫通する空洞部41aを有する。空洞部41aには、工具位置検出装置80又は第1主軸14が把持するワークの周囲に位置するガイドブッシュレス用カバー97が搭載されている。ガイドブッシュレス用カバー97は、工具位置検出装置80又はワークに接触しない。
【0020】
(第2主軸ユニット70)
図2に示すように、第2主軸ユニット70は、Z軸方向に第1主軸ユニット10と向かい合う位置に設けられ、ワークを把持しつつ軸回転させ、ワークの背面側を加工する。第2主軸ユニット70は、ワークを回転可能に支持する背面主軸である第2主軸71と、第2主軸71を回転可能に支持する第2主軸台72と、を備える。第2主軸71は、第1主軸14と同様の構成からなる。
【0021】
図1に示すように、第2Z軸スライド機構75及びX軸スライド機構76は、それぞれ、上述した第1Z軸移動機構13と同様に、モータ、ねじ軸及びナット等からなる。X軸スライド機構76は第2主軸ユニット70をX軸方向に移動させる。第2Z軸スライド機構75は、X軸スライド機構76及び第2主軸ユニット70をZ軸方向に移動させる。従って、第2Z軸スライド機構75及びX軸スライド機構76により、第2主軸ユニット70をZ軸方向及びX軸方向に移動させることができる。
【0022】
(工具ユニット20)
図1に示すように、工具ユニット20は、第2主軸ユニット70に把持されるワークを加工する。工具ユニット20は、ベッドS上に固定された刃物台20bと、刃物台20bに保持される複数の工具20aと、を備える。複数の工具20aは、ドリル、ターニングバイト等から構成され、Z軸方向に沿って延び、X軸方向に並べられる。工具20aの刃先は、Z軸方向における第2主軸71に近づく方向を向く。
【0023】
(工具位置検出装置80,90)
図4に示すように、工具位置検出装置80は、第1主軸14の先端部に装着され、工具35a,36aの接触又は接近を検出する。
図3(b)及び
図4に示すように、工具位置検出装置80は、複数の工具検出面81a,81b,81c,81d,81eを有する工具センサ81と、工具センサ81を支持する支持柱部82と、支持柱部82の基端部を支持するベース板部86と、ベース板部86を第1主軸14に固定するブラケット88と、工具センサ81と制御部300の間を電気的に接続するコード89と、コネクタ部84と、を備える。
【0024】
図4に示すように、ブラケット88は、基礎部88aと、円筒部88bと、を備える。
基礎部88aは、第1主軸14のチャックナット14dの先端面に沿う円環状をなす。基礎部88aには、Z軸方向に貫通する複数の貫通孔88cが形成される。複数の貫通孔88cは、主軸中心Bを中心とした基礎部88aの周方向に並べられている。各貫通孔88cは、コレットチャック14cの各ねじ孔14d3にZ軸方向に一致する位置に設けられる。各貫通孔88cには、各ねじ88eが挿入される。ねじ88eにより、ブラケット88の基礎部88aがチャックナット14dに固定される。
また、基礎部88aには、基礎部88aの中央孔88a1と基礎部88aの外周面の間に形成されるコード通過孔88dが形成される。コード通過孔88dにはコード89が通過する。
【0025】
円筒部88bは、主軸中心Bを軸中心とした円筒状に形成され、基礎部88aの先端面の中央に位置する。円筒部88bには、Z軸方向に貫通する貫通孔88b1が形成されている。円筒部88bの貫通孔88b1の先端側にはコネクタ部84が保持されている。円筒部88bの貫通孔88b1は、基礎部88aの中央孔88a1を介してコード通過孔88dに繋がる。
【0026】
コード89の第1端部はコネクタ部84に接続され、コード89の第1端部と反対側の第2端部は制御部300に接続される。コード89は、コード89の第1端部から円筒部88bの貫通孔88b1、基礎部88aの中央孔88a1及びコード通過孔88dの順で通過し、ブラケット88の外部に出る。コード89が貫通孔88b1、中央孔88a1及びコード通過孔88dを通過することにより、コード89は外部から保護され、例えば、コード89におけるコネクタ部84に接続される第1端部が折れ曲がることが抑制される。また、コード通過孔88dが基礎部88aに形成されることにより、例えばコード通過孔が円筒部88bに形成される場合に比べて、コード89の曲率を小さくすることができ、コード89への負担を小さくすることができる。
【0027】
ベース板部86は、ブラケット88の円筒部88bの先端面に位置し、円筒部88bの貫通孔88b1の先端側開口部を塞ぐように形成される。ベース板部86は、X軸方向及びY軸方向に沿う正方形の板状をなす。ベース板部86は、複数のねじ87により、ブラケット88の円筒部88bの先端面に固定される。
図3(b)に示すように、複数のねじ87は、ベース板部86の先端面の各角部に位置する。
【0028】
図3(b)及び
図4に示すように、支持柱部82は、主軸中心Bを軸中心とした角柱状をなす。支持柱部82の基端面(
図4の左側の面)はベース板部86の先端側の面(
図4の右側の面)に固定されている。
【0029】
工具センサ81は、工具35a,36aの接触を検出するセンサである。工具センサ81は、例えば、工具検出面81a,81b,81c,81d,81eが押されることにより接点が閉じる接点式のプッシュスイッチである。
なお、工具センサ81は、この接点式のプッシュスイッチに限らず、赤外線、ミリ波、静電容量等を利用した非接触式のセンサであってもよい。すなわち、工具センサ81は、工具35a,36aの接近を検出してもよい。
【0030】
図3(b)に示すように、工具センサ81は、各工具検出面81a,81b,81c,81d,81eを有する複数のセンサ本体部83a,83b,83c,83d,83eを備える。センサ本体部83a,83b,83c,83d,83eは、略円柱状をなし、支持柱部82の先端面82eと複数の側面82a,82b,82c,82dにそれぞれ1つずつ設けられる。センサ本体部83a,83b,83c,83d,83eの支持柱部82から遠い面には、それぞれ対応する平面状の工具検出面81a,81b,81c,81d,81eが形成される。
【0031】
図1の矢印Jで示すように第2主軸71側から工具位置検出装置80を見たとき、
図3(b)に示すように、工具検出面81aはセンサ本体部83aを介して支持柱部82の上側の側面82aに対応して設けられ、工具検出面81bはセンサ本体部83bを介して支持柱部82の左側の側面82bに対応して設けられ、工具検出面81cはセンサ本体部83cを介して支持柱部82の下側の側面82cに対応して設けられ、工具検出面81dはセンサ本体部83dを介して支持柱部82の右側の側面82dに対応して設けられ、工具検出面81eはセンサ本体部83eを介して支持柱部82の先端面82eに対応して設けられる。
【0032】
工具検出面81a,81cは、それぞれY軸方向に直交する方向に延びる。工具検出面81b,81dは、それぞれX軸方向に直交する方向に延びる。工具検出面81eは、Z軸方向に直交する方向に延びる。
工具センサ81は、工具検出面81a,81b,81c,81d,81eに工具35a,36aの刃先が接触した旨を示す検出信号Sa,Sb,Sc,Sd,Seを制御部300に出力する。
検出信号Sa,Scは、Y軸方向における工具35a,36aの刃先の位置を機械座標として特定するために制御部300に利用される。検出信号Sb,Sdは、X軸方向における工具35a,36aの刃先の位置を機械座標として特定するために制御部300に利用される。検出信号Seは、Z軸方向における工具35a,36aの刃先の位置を機械座標として特定するために制御部300に利用される。
【0033】
図5に示すように、工具位置検出装置90は、工具位置検出装置80と同様に、複数の工具検出面91a~91eを有し、工具20a(
図1参照)の接触を検出する工具センサ91と、支持柱部92と、ベース板部96と、基礎部98a及び円筒部98bを有するブラケット98と、工具センサ91と制御部300の間を電気的に接続するコード89と、コネクタ部94と、を備える。
以下、工具位置検出装置90における工具位置検出装置80との相違点を中心に説明する。
図5に示すように、基礎部98aは、第2主軸71のチャックナット71dの外周を囲む外枠部98zを備える。外枠部98zは、基礎部98aのチャックナット71dに対向する面における外周側に位置する。外枠部98zにより、工具位置検出装置90が第2主軸71に対して位置ずれすることが抑制される。
【0034】
(制御部300)
図1に示すように、制御部300は、工作機械1の各部の動作を制御するものである。制御部300は、CPU(Central Processing Unit)を含む処理部310と、処理部310の処理手順を定義したプログラム及び後述する基準機械座標を記憶する記憶部311と、を備える。制御部300は、数値制御によって、第1主軸14、第2主軸71、第1Z軸移動機構13、工具機構30、第2Z軸スライド機構75、X軸スライド機構76及びディスプレイ部302を制御する。
また、制御部300は、工具20a,35a,36aを工具センサ81,91に接触させることにより工具センサ81,91から検出信号Sa,Sb,Sc,Sd,Seを受けて工具20a,35a,36aの刃先位置を3軸(X軸、Y軸及びZ軸)の機械座標として取得し、取得した機械座標と事前に設定される基準機械座標値と差を補正量として補正をかけて加工を行う。この点については後で詳述する。
操作入力部301は、作業者により操作可能なキーボードにより構成され、作業者により操作されると操作信号を制御部300に出力する。
ディスプレイ部302は、制御部300による制御のもと、各種情報を作業者により視認可能に表示する。
【0035】
次に、工作機械1によるワークの加工の一例について説明する。
図1及び
図2に示すように、制御部300は、第1主軸14を介してワークを把持しつつ軸回転させた状態で、工具機構30を介して工具35a,36aの刃先をワークに接触させ、第1Z軸移動機構13を介してワークをZ軸方向に送る。これにより、ワークの第1の加工が行われる。制御部300は、第1の加工が完了すると、第1主軸14から第2主軸71にワークを受け渡す。制御部300は、第2主軸71を介してワークを把持しつつ軸回転させた状態で、第2Z軸スライド機構75及びX軸スライド機構76を介してワークに工具20aの刃先を接触させ、ワークをZ軸方向に送る。これにより、ワークの第2の加工が行われる。制御部300は、第2の加工が完了すると、ワークを図示しないシュートに落下させて、加工済みのワークを機外に排出する。以上が工作機械1によるワークの加工の一例である。
【0036】
次に、
図6のフローチャートを参照しつつ、基準機械座標を設定する事前設定方法について説明する。以下では、工具35aに関する事前設定方法が行われる一例について説明する。
図6に示すように、作業者は、工具35aの位置を真の位置に設定する(ステップS101)。このステップS101においては、まず、作業者は、図示しないL字又はコ字等の治具を利用して工具35aを仮位置に取り付ける。そして、作業者は、仮位置での工具35aを利用してワークの試し加工を行い、マイクロメータ等の測定装置を利用して加工後のワークの形状を計測する。次に、作業者は、この計測結果に応じて仮位置から工具35aの位置が真の位置に合うように調整することにより、工具35aを真の位置に取り付ける。これにより、工具35aの位置が真の位置に設定される。
なお、工具35aを真の位置に設定する方法はこれに限らない。例えば、作業者は、試し加工後のワークの計測結果に応じて、操作入力部301を通じて補正値を制御部300に入力する。制御部300は入力された補正値を記憶部311に記憶し、工具35aの位置に合うように真の位置を補正する。これによっても、工具35aの位置が真の位置に設定される。
【0037】
そして、作業者は、工具位置検出装置80を第1主軸14に装着する(ステップS102)。具体的には、作業者は、第1主軸14のチャックナット14dに工具位置検出装置80のブラケット88が固定されるように複数のねじ88eが螺合される。
【0038】
次に、制御部300は、作業者による操作入力部301の操作に応じて、工具35aを工具位置検出装置80の工具センサ81に接触させる(ステップS103)。例えば、
図3(a),(b)に示すように、制御部300は、工具機構30を介して、工具位置検出装置80に対して工具35aをX軸方向に移動させ、
図3(b)の一点鎖線で示すように、工具35aの刃先を工具検出面81dに接触させる。
また、制御部300は、工具機構30を介して、工具位置検出装置80に対して工具35aをY軸方向に移動させ、
図3(b)の一点鎖線で示すように、工具35aの側面を工具検出面81aに接触させる。なお、これに代えて、又はこれとともに、工具35aの側面を工具検出面81cに接触させてもよい。
さらに、制御部300は、第1Z軸移動機構13を介して、工具位置検出装置80をZ軸方向に移動させ、
図3(b)の一点鎖線で示すように、工具35aの側面を工具検出面81eに接触させる。
このステップS103においては、制御部300は、工具35aを順番に工具検出面81a,81b,81c,81d,81eの少なくとも何れかに接触させる自動プログラムを実行させてもよいし、制御部300は、操作入力部301への作業者の手動操作に基づき、工具35aを順番に工具検出面81a,81b,81c,81d,81eに接触させてもよい。
【0039】
そして、制御部300は、工具35aを工具センサ81に接触させたときの工具センサ81の検出結果である検出信号Sa,Sb,Sc,Sd,Seに基づき、工具35aが真の位置に設定されたときの工具位置を示す3軸の機械座標を取得し、この機械座標を基準機械座標として記憶部311に記憶させる(ステップS104)。このステップS103,S104において、例えば、制御部300は、工具35aをX軸方向に移動させて、工具35aが工具センサ81に接触した旨の検出信号Sdを受けたときの工具35aのX軸方向の機械座標を取得し、このX軸の機械座標をX軸の基準機械座標として記憶部311に記憶させる。Y軸方向及びZ軸方向についても同様にY軸及びZ軸の機械座標が取得され、取得されたY軸及びZ軸の機械座標がY軸及びZ軸の基準機械座標として記憶部311に記憶される。
最後に、作業者は、工具位置検出装置80を第1主軸14から取り外す(ステップS105)。以上で、事前設定方法が終了となる。
以上では、工具35aに関する事前設定方法が行われる一例について説明したが、工具機構30に取り付けられる全ての工具35a,36aについてもこれと同様に事前設定方法が行われる。
また、工具20aについての事前設定方法が行われる場合には、ステップS102において工具位置検出装置90が第2主軸71に装着される。ステップS103において工具20aを工具位置検出装置90の工具センサ91に接触させる。このステップS103においては、制御部300は、第2Z軸スライド機構75及びX軸スライド機構76を介して、工具20aを工具位置検出装置90の工具センサ91の工具検出面91a,91b,91c,91d,91eに接触させる。ステップS105において工具位置検出装置90が第2主軸71から取り外される。これらの点を除き、上記工具35aについての事前設定方法が行われる一例と同様である。
【0040】
事前設定方法が行われた後、ワークの加工が実行される。そして、工具20a,35a,36aの交換を行うときには、
図7のフローチャートに示す工具位置補正方法が行われる。以下、
図7のフローチャートを参照しつつ、一例として工具35aが交換された場合の工具位置補正方法について説明する。
作業者は工具35aの交換を行う(ステップS201)。この際、作業者は、図示しないL字又はコ字等の治具を利用して交換に係る工具35aを仮位置に取り付ける。この仮位置にある工具35aは、上記ステップS101で設定された真の位置の工具35aとの間に位置ずれが生じている。
【0041】
そして、作業者は、工具位置検出装置80を第1主軸14に装着する(ステップS202)。次に、制御部300は、作業者による操作入力部301の操作に応じて、工具35aを工具位置検出装置80の工具センサ81に接触させる(ステップS203)。ステップS203においては、上述したステップS103と同様に、制御部300は、工具機構30を介して、工具35aを工具検出面81a,81b,81c,81d,81eの少なくとも何れかに順番に接触させる。
【0042】
そして、制御部300は、工具35aを工具位置検出装置80の工具センサ81に接触させたときの工具センサ81からの検出信号Sa,Sb,Sc,Sd,Seに基づき工具交換後の工具位置を示す3軸の機械座標を取得する(ステップS204)。このステップS204においては、例えば、制御部300は、工具35aをX軸方向に移動させて、工具35aが工具センサ81に接触した旨の検出信号Sdを受けたときの工具35aのX軸方向の機械座標を取得する。Y軸方向及びZ軸方向についても同様に機械座標が取得される。
そして、制御部300は、取得した3軸の機械座標と記憶部311に記憶された工具が真の位置に設定されたときの3軸の基準機械座標の差を3軸の補正値として算出し、この算出した3軸の補正値を記憶部311に記憶するとともにディスプレイ部302に表示する(ステップS205)。なお、このステップS205においては、制御部300は、3軸の補正値をディスプレイ部302に表示し、操作入力部301によりこの補正値が決定される旨の操作が行われると、この補正値を記憶部311に記憶してもよい。このように、補正値が自動で制御部300により取得されるため、作業者がワークの試し加工や加工後のワークの計測を通じて補正値を取得する必要がなく、また、作業者が手動で操作入力部301を介して補正値を入力する必要がない。よって、作業者による補正値の入力ミスを防ぐことができる。さらに、補正値を取得し入力する作業にかかる時間が作業者の熟練度によって差が生じることが抑制される。
最後に、作業者は、工具位置検出装置80を第1主軸14から取り外す(ステップS206)。以上で、工具位置補正方法が終了となる。
【0043】
この工具位置補正方法の終了後、制御部300は、ワークの加工を行う際、記憶部311に記憶された3軸の補正値を加味して、第1Z軸移動機構13、工具機構30、第2Z軸スライド機構75及びX軸スライド機構76を制御する。3軸の補正値が加味されるため、精度の高いワークの加工が実現される。
例えば、工具交換後の工具位置を示すX軸の機械座標がX1であり、X軸の基準機械座標がX2であるとしたとき、X軸の補正値ΔXはX1からX2を差し引いた値となる。そして、制御部300は、工具をX軸方向に移動する際に、移動量に補正値ΔXを加算することにより、交換後の工具の刃先位置を真の位置に存在する工具の刃先位置と同じ位置まで移動させることができる。これにより、ワークに対するX軸方向の切り込み量が所望値からずれることが抑制される。
Y軸方向においても同様に、Y軸の移動量にY軸の補正値が加算されることにより、工具35aの刃先が第1主軸14の主軸中心Bからずれること、すなわち、芯高さがずれることが抑制される。また、Z軸の移動量にZ軸の補正値が加算されることにより、Z軸方向におけるワークの切削範囲が所望範囲からずれることが抑制される。
【0044】
上記例では、工具35aが交換された場合の工具位置補正方法について説明したが、この例に限らず、他の工具20a,36aが交換されたときにも、同様に、工具位置補正方法が行われる。例えば、工具20aが交換されたときには、上記ステップS202においては工具位置検出装置90が第2主軸71に装着され、上記ステップS203においては工具位置検出装置90の工具センサ91に工具20aを接触させる。
ワークの試し加工を伴う事前設定方法は最初に1回行われれば、以後、工具を交換した後、ワークの試し加工を伴わない工具位置補正方法だけで済むため、工具交換後の工具の位置合わせが簡単となる。
【0045】
上記例では、工具の交換後に工具位置補正方法が行われたが、これに限らず、工具の刃先が摩耗したときに、工具位置補正方法が行われることで、補正値が摩耗量と対応するため摩耗量を確認できるとともに、摩耗に伴う工具の刃先の位置ずれが補正され、精度の高いワークの加工が実現される。
【0046】
(効果)
以上、説明した一実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)工具位置検出装置80は、ワークを把持しつつ軸回転させる主軸の一例である第1主軸14に装着されるブラケット88と、平面状に形成される工具検出面81a,81b,81c,81d,81eを有し、工具検出面81a,81b,81c,81d,81eに工具35a,36aが接触又は接近することを検出し、第1主軸14にブラケット88を介して支持される工具センサ81と、を備える。
この構成によれば、交換後の工具35a,36aを工具検出面81a,81b,81c,81d,81eに接触又は接近させる。このとき、工具センサ81は、工具検出面81a,81b,81c,81d,81eへの工具35a,36aの接触又は接近を検出することにより、交換後の工具位置を特定するために利用される検出信号Sa,Sb,Sc,Sd,Seを制御部300に出力する。制御部300は、工具センサ81の検出結果に基づき交換後の工具位置を取得し、取得した工具位置と予め記憶される工具が真の位置に設定されたときの基準位置(基準機械座標)の差に基づき補正量を取得し、取得した補正量を加味して第1主軸14により把持されたワークを工具35a,36aにより加工する。このように、補正量を加味することにより、交換後の工具を位置合わせする手間を低減することができる。
また、工具位置検出装置80はブラケット88を介して第1主軸14に装着される。このため、工具位置検出装置80の工具センサ81の検出結果は、第1主軸14及び第1主軸台11等の熱変形の影響を受けた結果となっている。よって、第1主軸14及び第1主軸台11等の熱変形が発生した場合であっても、この熱変形を加味した補正が制御部300により行われる。これにより、精度の高いワークの加工を実現することができる。
【0047】
(2)工具センサ81は第1主軸14の主軸中心Bに沿う位置に設けられる。ブラケット88は第1主軸14の先端に装着される。
この構成によれば、第1主軸14の先端に簡単に工具位置検出装置80を装着することができる。
【0048】
(3)ブラケット88は第1主軸14の先端に位置するチャックナット14dに装着される。
この構成によれば、チャックナット14dを利用して第1主軸14に簡単に工具位置検出装置80を装着することができる。チャックナット14dは、第1主軸14においてワークを把持する機能を有しない。このため、工具位置検出装置80のチャックナット14dへの着脱を繰り返すことによりチャックナット14dに外力が加わっても、第1主軸14におけるワークを把持する機能を阻害することが抑制される。また、既存のチャックナットを、ねじ孔14d3が形成されたチャックナット14dに交換するだけで、簡単に、第1主軸14に工具位置検出装置80を装着可能とすることができる。さらに、工具位置検出装置80はチャックナット14dと一体で第1主軸14に着脱されてもよい。
【0049】
(4)工具位置検出装置80は、ブラケット88に固定され、ブラケット88に対して第1主軸14の反対側に位置し、第1主軸14の主軸中心Bに沿って延び、工具センサ81を支持する支持柱部82を備える。支持柱部82は、主軸中心Bに直交し、支持柱部82における第1主軸14から遠い1つの先端面82eと、主軸中心Bの周囲を囲むように位置し、主軸中心Bに沿って延びる複数の側面82a,82b,82c,82dと、を備える。複数の工具検出面81a,81b,81c,81d,81eは、支持柱部82の先端面82e及び複数の側面82a,82b,82c,82dに対応してそれぞれ一つずつ設けられる。
この構成によれば、工具検出面81a,81b,81c,81d,81eを空間的に効率よく支持柱部82に配置することができる。よって、工具センサ81の大型化を抑制しつつ、多数の工具検出面81a,81b,81c,81d,81eを設けることができる。よって、様々な位置に設けられる多種の工具を工具検出面81a,81b,81c,81d,81eに接触可能に工具センサ81を構成することができる。
【0050】
(5)工作機械1は、第1主軸14の先端に着脱可能に形成される工具位置検出装置80と、第1主軸14と、工具35a,36a、及び工具35a,36aを保持する刃物台35b,36bを有する工具ユニット35,36と、工具35a,36aを第1主軸14に対して相対的に移動させる移動機構の一例である第1Z軸移動機構13及び工具機構30と、第1主軸14及び移動機構(第1Z軸移動機構13及び工具機構30)を制御し、移動機構を介して工具35a,36aを工具検出面81a,81b,81c,81d,81eに接触又は接近させたときの工具センサ81の検出結果に基づき工具交換後の工具位置を機械座標として取得し、取得した機械座標と予め設定される基準位置の一例である基準機械座標の差に基づき補正量を取得し、工具位置検出装置80が第1主軸14から取り外された状態で、取得した補正量を加味して第1主軸14により把持されたワークを工具35a,36aにより加工する制御部300と、を備える。
この構成によれば、補正量を加味してワークの加工が行われるため、第1主軸14により把持されたワークに対する工具35a,36aの位置がずれることが抑制される。これにより、精度の高いワークの加工を実現することができる。
【0051】
(6)複数の工具検出面81a,81b,81c,81d,81eのうち第1工具検出面の一例である工具検出面81eは第1主軸14の主軸中心Bに沿うZ軸方向に直交して延びる。複数の工具検出面81a,81b,81c,81d,81eのうち第2工具検出面の一例である工具検出面81b,81dはZ軸方向に直交するX軸方向に直交して延びる。複数の工具検出面81a,81b,81c,81d,81eのうち第3工具検出面の一例である工具検出面81a,81cはX軸方向及びZ軸方向に直交するY軸方向に直交して延びる。制御部300は、移動機構(第1Z軸移動機構13及び工具機構30)を介して工具35aをZ軸方向に移動させて工具35aを工具検出面81eに接触又は接近させたときの工具センサ81の検出結果に基づきZ軸方向における工具位置を機械座標として取得する。制御部300は、移動機構を介して工具35aをX軸方向に移動させて工具35aを工具検出面81b,81dの少なくとも何れかに接触又は接近させたときの工具センサ81の検出結果に基づきX軸方向における工具位置を機械座標として取得する。制御部300は、移動機構を介して工具35aをY軸方向に移動させて工具35aを工具検出面81a,81cの少なくとも何れかに接触又は接近させたときの工具センサ81の検出結果に基づきY軸方向における工具位置を機械座標として取得する。
この構成によれば、制御部300は、工具センサ81の検出結果に基づき、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の3軸方向における工具位置を機械座標として取得可能となる。よって、3軸方向における交換後の工具位置ずれを補正することができ、精度の高いワークの加工を実現することができる。
なお、工具位置検出装置90も、工具位置検出装置80と同様に、上記(1)~(5)の作用効果を奏する。
【0052】
なお、本発明は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。以下に、変形の一例を説明する。
【0053】
(変形例)
上記実施形態においては、工作機械1はワークを支持しないガイドブッシュレス用カバー97を備えていたが、ガイドブッシュレス用カバー97に代えて、ワークを支持するガイドブッシュ装置を備えていてもよい。例えば、
図8に示すように、ガイドブッシュ装置99は、ワーク支持部99aと、取付部99bと、を備える。
ワーク支持部99aは第1主軸14により把持されたワークを外周から支持する。ワーク支持部99aは主軸中心Bを中心とした略円筒状をなす。取付部99bは、ワーク支持部99aを外周から保持し、複数のボルト99cにより固定台41に取り付けられる。取付部99bは、主軸中心Bを中心とした略円筒状をなし、取付部99bのZ軸方向に沿って貫通する空洞部にはワーク支持部99aが固定されている。
また、工具位置検出装置80のブラケット188は、基礎部188aと、円筒部188bと、を備える。ブラケット188の円筒部188bの外径はワーク支持部99aの内径よりも小さく、ブラケット188の円筒部188bはワーク支持部99aのZ軸方向に沿って貫通する貫通孔99dに挿通可能に形成されている。円筒部188bの先端にはベース板部186を介して工具センサ81が保持される。工具センサ81は、ワーク支持部99aの先端側(
図8の右端側)においてワーク支持部99aの貫通孔99dの外部に露出する。
図8に示すブラケット188の円筒部188bは、ワーク支持部99aの貫通孔99d内に進入可能となるように上記実施形態におけるブラケット88の円筒部88b(
図4参照)に比べて内径及び外径が小さく、かつ、Z軸方向の長さが長く形成される。
このように、工作機械1にガイドブッシュ装置99が設けられた場合であっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0054】
上記実施形態においては、工作機械1は、工具ユニット35,36を含む工具機構30を備えていたが、工具機構30に代えて、又は工具機構30とともに、工具ユニットの一例であるタレット装置を備えていてもよい。例えば、
図9及び
図10に示すように、タレット装置110は、複数の工具111,112と、刃物台の一例であるタレット115と、駆動部118と、ハウジング119(
図10参照)と、を備える。
ハウジング119は回転軸Aを中心にタレット115を回転可能に支持する。
タレット115は、正多角形(本実施形態では、正八角形)の柱状に形成された部材であり、タレット115の中心軸に沿う回転軸Aを中心に回転する。
複数の工具111,112は、タレット115の外周面に交換可能に保持され、タレット115の回転軸Aを中心とした回転方向に沿って並べられる。複数の工具112は、ドリルにより構成され、回転軸Aに直交する方向に外側に向かって延びる。複数の工具111は、バイトにより構成され、回転軸Aに沿う方向に延びる。
駆動部118は、制御部300による制御のもと、タレット115をX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に沿って移動させ、タレット115を回転軸Aを中心に回転させる。駆動部118は、複数のモータ及び複数のボールねじ等を備える。上述した事前設定方法のステップS103及び工具位置補正方法のステップS203において、制御部300は、駆動部118を介して、タレット装置110の工具111,112を工具センサ81に接触させる。このように、工作機械1にタレット装置110が設けられた場合であっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0055】
上記実施形態においては、工作機械1は、第1主軸14及び第2主軸71に装着可能な2つの工具位置検出装置80,90を備えていたが、2つの工具位置検出装置80,90のうち何れか一方が省略されてもよい。また、第1主軸14及び第2主軸71のうち何れか一方が省略されてもよい。
【0056】
上記実施形態において、
図6及び
図7のフローチャートにおいて、作業者が行っている作業の少なくとも一部は、作業者の代わりに、制御部300による制御のもと作業ロボットが行ってもよい。
【0057】
上記実施形態における
図6のフローチャートにおいて、ステップS101とステップS102の順番は逆であってもよい。また、
図7のフローチャートにおいて、ステップS201とステップS202の順番は逆であってもよい。
【0058】
上記実施形態における工具検出面81a,81b,81c,81d,81eのうち何れか一つ又は複数を省略してもよい。
【0059】
上記実施形態においては、ブラケット88は第1主軸14のチャックナット14dに装着されていたが、これに限らず、第1主軸14のチャックナット14d以外の部位に装着されてもよい。例えば、ブラケット88は第1主軸14のコレットチャック14cに把持されることにより第1主軸14に装着されてもよい。
【0060】
上記実施形態においては、第1主軸14に装着された工具位置検出装置80は工具35a,36aの位置を検出するために設けられ、第2主軸71に装着された工具位置検出装置90は工具20aの位置を検出するために設けられていた。しかし、これに限らず、第1主軸14に装着された工具位置検出装置80は工具20aの位置を検出するために設けられ、第2主軸71に装着された工具位置検出装置90は工具35a,36aの位置を検出するために設けられてもよい。
また、工具位置検出装置80,90が協働して同じ工具の位置を検出してもよい。
さらに、工具20a,35a,36aの種類、数及び位置は上記実施形態に限らず、変更可能である。
【0061】
上記実施形態においては、工具位置検出装置80の中心は第1主軸14の主軸中心Bに一致するように設けられていたが、工具位置検出装置80の中心は第1主軸14の主軸中心Bに対してずれていてもよい。この場合、工具位置検出装置80全体が第1主軸14の主軸中心Bに対してずれていてもよいし、工具位置検出装置80のうち工具センサ81及び支持柱部82が第1主軸14の主軸中心Bに対してずれていてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…工作機械、10…第1主軸ユニット、11…第1主軸台、13…第1Z軸移動機構、14…第1主軸、14d,71d…チャックナット、14d3…ねじ孔、20,35,36…工具ユニット、20a,35a,36a,111,112…工具、20b,35b,36b…刃物台、115…タレット、30…工具機構、32…Y軸移動機構、33…X軸移動機構、41…固定台、70…第2主軸ユニット、71…第2主軸、72…第2主軸台、75…第2Z軸スライド機構、76…X軸スライド機構、80,90…工具位置検出装置、81,91…工具センサ、81a~81e,91a~91e…工具検出面、82,92…支持柱部、82a~82d…側面、82e…先端面、83a~83e…センサ本体部、84,94…コネクタ部、86,96,186…ベース板部、87,88e…ねじ、88,98,188…ブラケット、88a,98a,188a…基礎部、88b,98b,188b…円筒部、88a1…中央孔、88c,88b1,99d…貫通孔、88d…コード通過孔、89,99…コード、97…ガイドブッシュレス用カバー、98z…外枠部、99…ガイドブッシュ装置、99a…ワーク支持部、99b…取付部、99c…ボルト、110…タレット装置、118…駆動部、119…ハウジング、300…制御部、301…操作入力部、302…ディスプレイ部、310…処理部、311…記憶部、A…回転軸、B…主軸中心、S…ベッド、Sa~Se…検出信号